説明

発光装置の製造方法

【課題】サイアロン系蛍光体を用いた高効率な発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施の形態によれば、基板の表面に、発光素子を実装し、基板上に発光素子が実装された領域が開口されたマスクを載置し、マスク上に下記一般式(1)で表わされる組成を有し、板状粒子で、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、開口部を充填した樹脂以外の樹脂を、スキージを用いてマスク表面から除去し、マスクを基板上から除去し、樹脂を硬化させる熱処理を行う発光装置の製造方法である。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y≦0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色の発光ダイオード(LED)にYAG:Ceなどの黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている。従来、LEDは赤色、緑色、青色と単色で発光するものであり、白色または中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかった。しかし、現在では、発光ダイオードと、蛍光体とを組合せることにより、上述の煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得ることができるようになっている。
【0003】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。これらLEDランプは高効率化が強く望まれており、加えて一般照明用途には高演色化、バックライト用途には高色域化の要請がある。高効率化には、蛍光体の高効率化が必要であり、高演色化あるいは高色域化には、青色の励起光と青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体および青色で励起され赤色の発光を示す蛍光体を組み合わせた白色光源が望ましい。
【0004】
また、高負荷LEDは駆動により発熱し、蛍光体の温度が100〜200℃程度まで上昇することが一般的である。このような温度上昇が起こると蛍光体の発光強度は一般に低下する。このため蛍光体は、温度が上昇した場合であっても発光強度の低下(温度消光)が少ないことが望まれている。
【0005】
かかるLEDランプに用いるのに適当な、青色光で励起された場合に緑色の発光を示す蛍光体の例として、サイアロン系蛍光体がある。サイアロン系蛍光体によれば、高効率かつ温度消光の小さい発光が得られる。このため、サイアロン系蛍光体を用いることで、高効率、高演色かつ色ずれの小さな発光装置が実現される。
【0006】
もっとも、サイアロン系蛍光体を用いた発光装置においても更なる高効率化が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−31201号公報
【特許文献2】特開2010−106127号公報
【特許文献3】特開2010−56277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、サイアロン系蛍光体を用いた高効率な発光装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施の形態の発光装置の製造方法は、基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、前記基板上に前記発光素子が実装された領域が開口されたマスクを載置し、前記マスク上に下記一般式(1)で表わされる組成を有し、上記光で励起した際、波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示し、板状粒子で、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、前記開口部を充填した前記樹脂以外の前記樹脂を、スキージを用いて前記マスク表面から除去し、前記マスクを前記基板上から除去し、前記樹脂を硬化させる熱処理を行う。
(M1−x1Eu3−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】蛍光体の発光効率の粒径依存性を示す図である。
【図2】評価に用いた緑色蛍光体(G)の一例のSEM写真である。
【図3】第1の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図4】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図5】第2の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図6】第2の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図7】第3の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図8】第4の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図9】第5の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図10】第5の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図11】第6の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図12】第6の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図13】第7の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図14】第8の実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図15】第9の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図16】第10の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図17】第11の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図18】第12の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図19】第13の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図20】第14の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図21】実施例1のLEDチップの配線図である。
【図22】実施例3の緑色蛍光体のXRDプロファイルである。
【図23】実施例25の緑色蛍光体のXRDプロファイルである。
【図24】実施例25の赤色蛍光体のXRDプロファイルである。
【図25】実施例27の赤色蛍光体のXRDプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。
【0012】
下記一般式(1)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は緑色蛍光体(G)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色にわたる領域の発光、すなわち波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示す。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0013】
また、下記一般式(2)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は赤色蛍光体(R)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長580〜700nmの間にピークを有する発光を示す。
(M’1−x2Eux2SiAlO (2)
(上記一般式(2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x2、a、b、c、dは、次の関係を満たす。0<x≦1、0.55<a<0.95、2.0<b<3.9、0<c<0.6、4<d<5.7)
【0014】
図1は、蛍光体の発光効率の粒径依存性を示す図である。上記緑色蛍光体(G)または上記赤色蛍光体(R)の平均粒径を変化させた蛍光体を含有する蛍光体層を備えたLEDを作成し、積分球を用いて、全光束を測定し、この全光束を注入電流と印加電圧の積で割り、発光効率を評価している。
【0015】
図2は、評価に用いた緑色蛍光体(G)の一例のSEM写真である。なお、本明細書中、平均粒径とは、SEM写真の視野内の蛍光体粒子をランダムに複数個抽出し、個々に測定した粒子の最大径の平均値を意味するものとする。もっとも、平均値を算出する際、1μm未満の微細な粒子は除外するものとする。
【0016】
蛍光体が樹脂等に分散されている場合には、その断面をSEM観察することにより、平均粒径を算出することが可能である。
【0017】
図1から明らかなように、緑色蛍光体の場合は、発光効率に顕著な粒径依存性があるのに対し、赤色蛍光体の場合は明瞭な粒径依存性がないことが明らかになった。図1より、高い発光効率を得る観点から、上記緑色蛍光体においては、粒径が12μm以上であることが望ましく、20μm以上であることがより望ましく、50μm以上であることがさらに望ましい。
【0018】
なお、ここで用いた緑色蛍光体の組成は、(Sr0.92Eu0.08)Si4.75AlON7.33である。上記一般式(1)で表わされる緑色蛍光体は、SrAlSi1321をベースとし、その構成元素であるSr、Si、Al、OまたはNが他の元素で置き換わったり、Euなどの他の金属元素が固溶したりしたものであるといえる。したがって、実質的に同一の結晶構造を有する。よって、上記発光効率の粒径依存性についても、同様の特性を示すものと考えられる。
【0019】
本発明は、発明者らによって見出された、上記一般式(1)で表わされる緑色蛍光体に固有の発光効率の粒径依存性に関する知見を基に完成されたものである。
【0020】
なお、実施の形態で得られる上記一般式(1)で表される緑色蛍光体の結晶構造は、斜方晶であり、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、図22、23に示すように、30.5−30.9°、25.6−30.0°、31.8−32.2°、37.2−37.6°、37.0−37.4°、29.3−29.7°、34.0−34.4°、21.7―22.1°、48.9―49.3°、45.7−46.1°、62.8−63.2°、15.2−15.6°、61.3−61.7°、40.5−40.9°、55.8°−56.2°の回折角度(2θ)、15箇所のうち、少なくとも6箇所に同時に回折ピークを示す一成分を含有するものである。
【0021】
さらに、実施の形態で得られる上記一般式(2)で表される赤色蛍光体の結晶構造は、斜方晶であり、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、図24、25に示すように、31.6−31.8°、30.9−31.1°、24.85−25.05°、35.25−35.45°、15.0−15.25°、56.4−56.65°、36.1−36.25°、33.0―33.20°、23.1―23.20°、29.3−29.6°、26.95−26.15°の回折角度(2θ)、11箇所のうち、少なくとも9箇所に同時に回折ピークを示す一成分を含有するものである。
【0022】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、基板上に設けられ、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、発光素子上に配置された蛍光体層を備え、蛍光体層が下記一般式(1)で表わされる組成を有し、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0023】
図3は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。基板10に実装された複数の励起光源用青色LEDチップ12を有している。各LEDチップ12は、例えば金のワイヤ14を介して図示しない配線に接続されている。そして、この配線を介して外部から駆動電流がLEDチップ12に供給されることにより、LEDチップ12が励起用の青色光を発生する。
【0024】
LEDチップ12上には、半球形状の透明樹脂層16が設けられている。さらに、この樹脂層16を覆うように、LEDチップ12から発生された青色光を吸収して赤色光に変換する赤色蛍光体が透明な樹脂中に分散された第1の蛍光体層18が配置されている。
【0025】
第1の蛍光体層18中の赤色蛍光体は、例えば、下記一般式(2)で表わされる組成を有する蛍光体である。
(M’1−x2Eux2SiAlO (2)
(上記一般式(2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVA族元素から選択される元素であり、Euは発光中心元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x2<1、0.55<a<0.95、2.0<b<3.9、0<c<0.6、4<d<5.7)
【0026】
ここで、M’はSr(ストロンチウム)であることが望ましい。また、M’は、Srに加え、Ca(カルシウム)等の他の元素を約10mol%以下の割合で混ぜても良い。
【0027】
第1の蛍光体層18を覆うように、LEDチップ12から発生される青色光を吸収して緑色光に変換する緑色蛍光体が透明な樹脂中に分散された第2の蛍光体層20が設けられている。
【0028】
第2の蛍光体層中の緑色蛍光体は、下記一般式(1)で表わされる組成を有し、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体である。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0029】
ここで、MはSrであることが望ましい。また、Mは、Srに加え、Ca(カルシウム)等の他の元素を約10mol%以下の割合で混ぜても良い。
【0030】
上述のように、第2の蛍光体層20中の緑色蛍光体の平均粒径を12μm以上することで、高い発光効率を得ることが可能となる。さらに、高い発光効率を得る観点から平均粒径は、20μm以上であることが望ましく、50μm以上であることがより望ましい。
【0031】
また、蛍光体粒子と樹脂との比率については、蛍光体粒子が蛍光体層に対して、10重量%以上であることが望ましく、20重量%以上であることがより望ましく、30重量%以上であることがさらに望ましい。これは、蛍光体層中の樹脂の比率が大きくなると、樹脂による光の吸収が大きくなるおそれがあるからである。
【0032】
本実施の形態によれば、上記のように組成と平均粒径を限定した緑色蛍光体を用いることで高効率な発光装置が実現される。
【0033】
さらに、第2の蛍光体層20を覆うように、半球状の透明樹脂層22が設けられている。この透明樹脂層22の外表面は大気(空気)に接している。この透明樹脂層22は、LEDチップ12から発生される青色光および第1の蛍光体層18からの赤色光、第2の蛍光体層20からの緑色光が、大気との界面となる上記外表面で全反射されることを抑制する機能を有する。
【0034】
透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる4層構造の積層膜は半球の形状をしている。
【0035】
本実施の形態の発光装置においては、LEDチップ12に電流を流すと、透明樹脂層22から出力される光は、LEDチップ12から発生され、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を通過した青色光と、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20からの赤色光および緑色光が合わさった白色光となる。
【0036】
上記のように構成された本実施の形態の発光装置においては、LEDチップ12から発生される青色光を通過する透明樹脂層16、この青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体が透明樹脂中に分散された第1の蛍光体層18、この青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体透明樹脂中に分散された第1の蛍光体層20、および大気との界面となる外表面で上記青色光、赤色光および緑色光が全反射されることを抑制する機能を有する透明樹脂層22からなる積層構造が、半球状に形成されているため、発光色のばらつきや、見る角度による色合いが異なることを抑制することができる。また、LEDチップ12からの励起光を集光することが可能となり、光取り出し効率を高めることが可能となる。また、各層間に空気層が介在することを抑制することが可能となり、樹脂の透過率および蛍光体の発光効率の劣化を抑制することが可能となる。
【0037】
次に、本実施の形態の発光装置の製造方法について説明する。上述のように、本実施の形態で用いられる緑色蛍光体には、発光効率に粒径依存性があり、粒径が大きくなるほど、発光効率が向上する。一方、蛍光体の粒径が大きくなると、蛍光体層の形成の際に、ディスペンサ(液体定量吐出装置)を用いて発光素子上に蛍光体が分散された樹脂を滴下する手法を採用することが困難になる。なぜなら、ディスペンサのシリンジ(注射筒)の径が限定されているため、粒径が大きくなることで目詰まりが生ずるおそれがあるからである。
【0038】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、基板上に発光素子が実装された領域が開口されたマスクを載置し、マスク上に下記一般式(1)で表わされる組成を有し、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、開口部を充填した樹脂以外の樹脂を、スキージを用いてマスク表面から除去し、マスクを基板上から除去し、樹脂を硬化させる熱処理を行う。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0039】
本実施の形態の発光装置の製造方法においては、上記構成により、ディスペンサを用いないで発光装置を製造する。よって、安定した製造方法で高効率の発光装置を製造することが可能になる。
【0040】
図4は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の表面に、励起光源用青色LEDチップ12を実装する。次に、基板10上に青色LED12が実装された領域が開口された例えば、金属のマスク24を載置し、マスク24上に透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、マスク24上の広範囲に塗布する。透明樹脂16は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0041】
次に、開口部を充填した透明樹脂26以外の透明樹脂26を、スキージ28を用いてマスク24表面から除去する(図4(a))。
【0042】
その後、マスク24を基板10上から除去し、基板10に対し透明樹脂26を硬化させる熱処理を行い透明樹脂層16を形成する(図4(b))。
【0043】
次に、基板10上に青色LED12が実装された領域に対応する開口部を有する金属のマスク30を載置する。このマスク30は、マスク24よりも開口部が広く設計されている。マスク30上に赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、マスク30上の広範囲に塗布する。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0044】
次に、開口部を充填したバインダー樹脂32以外のバインダー樹脂32を、スキージ28を用いてマスク30表面から除去する(図4(c))。
【0045】
その後、マスク30を基板10上から除去し、バインダー樹脂32を硬化させる熱処理を行い第1の蛍光体層18を形成する(図4(d))。
【0046】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を形成し、図3に示す発光装置が製造される。
【0047】
第2の蛍光体層に含まれる上記一般式(1)緑色蛍光体は、例えば、元素Mの窒化物、またはその他シアナミド等の炭化物、Alなどの元素やSiなどの元素の、窒化物、酸化物、または炭化物、および発光中心元素Rの酸化物、窒化物、または炭酸塩を出発原料として用いて、合成することが可能である。
【0048】
より具体的には、元素MとしてSrを含有し、発光中心元素としてEuを含有する蛍光体を目的とする場合には、Sr、AlN、Si、AlおよびEuNを出発原料として用いることができる。Srの代わりにCa、Ba、Srの代わりにCa、Ba、SrNあるいはSrN等、もしくはこれらの混合物を用いても良い。
【0049】
これらの出発原料を所望の組成になるよう秤量混合し、得られた混合粉末を焼成することにより、目的の蛍光体を得ることできる。混合にあたっては、例えば、グローブボックス中で乳鉢混合するといった手法が上げられる。また、るつぼの材質は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボン、窒化アルミニウム、サイアロン、酸化アルミ、モリブデンあるいはタングステン等を用いることが可能である。
【0050】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、透明樹脂層、第1の蛍光体層、第2の蛍光体層、透明樹脂層からなる積層膜が、個々のLEDチップ上に個別に形成されるのではなく、複数のLEDチップを一括して覆うシート状に形成される点以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0051】
図5は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる積層膜が、LEDチップ10を一括して覆う平面的なシート状に形成される。
【0052】
図6は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の表面に、励起光源用青色LEDチップ12を実装する。次に、基板10上に青色LED12が実装された領域が一括して開口された例えば、金属のマスク34を載置し、マスク34上に透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、マスク34上の広範囲に塗布する。透明樹脂16は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0053】
次に、開口部を充填した透明樹脂26以外の透明樹脂26を、スキージ28を用いてマスク34表面から除去する(図6(a))。
【0054】
その後、マスク24を基板10上から除去し、基板10に対し、透明樹脂26を硬化させる熱処理を行い、透明樹脂層16を形成する(図6(b))。
【0055】
次に、基板10上に青色LED12が実装された領域に対応する開口部を有する金属のマスク36を載置する。このマスク36は、マスク34よりも開口部が広く設計されている。マスク28上に赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、マスク28上の広範囲に塗布する。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0056】
次に、開口部を充填したバインダー樹脂32以外のバインダー樹脂32を、スキージ28を用いてマスク36表面から除去する(図6(c))。
【0057】
その後、マスク36を基板10上から除去し、バインダー樹脂32を硬化させる熱処理を行い第1の蛍光体層18を形成する(図6(d))。
【0058】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を形成し、図5に示す発光装置が製造される。
【0059】
本実施の形態によれば、基板に対するマスクの合わせ精度を緩和することが可能である。したがって、発光装置の生産性および歩留まりが向上するという効果が得られる。
【0060】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の発光装置の製造方法は、図3に示す第1の実施の形態の発光装置を製造する別の製造方法である。
【0061】
本実施の形態の発光装置の製造方法は、基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、発光素子より大きな径の凹部を有する金型上に、下記一般式(1)で表わされる組成を有し、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、基板と金型を、発光素子が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外の樹脂を基板および金型の表面上から除去し、基板と金型を凹部の樹脂が発光素子上に残存するよう引き離し、基板に対し樹脂を硬化させる熱処理を行う。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0062】
図7は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の表面に、励起光源用青色LEDチップ12を実装する(図7(a))。次に、青色LEDチップ12より大きな径の凹部を有する金型38を準備する(図7(b))。
【0063】
次に、金型38上に、透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、金型38上の広範囲に塗布する(図7(c))。透明樹脂26は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0064】
次に、基板10と金型38を、LEDチップ12が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外の透明樹脂26を基板10および金型38の表面上から除去する(図7(d))。
【0065】
その後、基板10と金型38を透明樹脂16がLEDチップ12上に残存するよう引き離し、基板10に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、透明樹脂層16を形成する。
【0066】
次に、青色LEDチップ12より大きな径の凹部を有する金型40を準備する。この金型40の凹部の径および深さは、金型38よりも大きくなるよう設計されている。そして、金型40上に、赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、金型40上の広範囲に塗布する(図7(e))。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0067】
次に、基板10と金型40を、LEDチップ12が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外のバインダー樹脂32を基板10および金型40の表面上から除去する。
【0068】
その後、基板10と金型40をバインダー樹脂32がLEDチップ12上に残存するよう引き離し、基板に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、図3の第1の蛍光体層18を形成する。
【0069】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を形成し、図3に示す発光装置が製造される。
【0070】
本実施の形態の発光装置の製造方法においても、上記構成により、ディスペンサを用いないで発光装置を製造する。よって、安定した製造方法で高効率の発光装置を製造することが可能になる。
【0071】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の発光装置の製造方法は、図5に示す第2の実施の形態の発光装置を製造する別の製造方法である。
【0072】
図8は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の表面に、励起光源用青色LEDチップ12を実装する(図8(a))。次に、青色LEDチップ12より大きな径であり、複数のLEDチップ12が一括して包含されるような凹部を有する金型42を準備する(図8(b))。
【0073】
次に、金型42上に、透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、金型42上の広範囲に塗布する(8(c))。透明樹脂26は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0074】
次に、基板10と金型42を、複数のLEDチップ12が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外の透明樹脂26を基板10および金型42の表面上から除去する(図8(d))。
【0075】
その後、基板10と金型42を透明樹脂26がLEDチップ12上に残存するよう引き離し、基板10に対し透明樹脂26を硬化させる熱処理を行い、透明樹脂層16を形成する。
【0076】
次に、青色LEDチップ12より大きな径の凹部を有する金型44を準備する。この金型44の凹部の径および深さは、金型42よりも大きくなるよう設計されている。そして、金型44上に、赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、金型44上の広範囲に塗布する(図8(e))。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0077】
次に、基板10と金型44を、LEDチップ12が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外のバインダー樹脂32を基板10および金型44の表面上から除去する。
【0078】
その後、基板10と金型44をバインダー樹脂32がLEDチップ12上に残存するよう引き離し、基板に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、図5の第1の蛍光体層18を形成する。
【0079】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を形成し、図5に示す発光装置が製造される。
【0080】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、半球の形状をしている透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる4層構造の積層膜が変形可能な樹脂シート上に形成される点で、第1の実施の形態の発光装置と異なっている。第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0081】
図9は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。基板10に実装された複数の励起光源用青色LEDチップ12を有している。基板10には複数の凹部46が設けられる。各LEDチップ10は、凹部46内に配置される。凹部46内のLEDチップ10は、例えば金のワイヤ14を介して図示しない配線に接続されている。そして、この配線を介して外部から駆動電流がLEDチップ12に供給されることにより、LEDチップ12が励起用の青色光を発生する。
【0082】
LEDチップ10は、凹部46内に透明樹脂層48で封止されている。そして、LEDチップ10の真上の透明樹脂層48を覆うように変形可能な透明な樹脂シート50が設けられている。
【0083】
樹脂シート50の凹部46上の領域以外には、Ag微粒子もしくは酸化チタン微粒子などの近紫外から可視域の光を反射する材料が樹脂に分散された反射層52が設けられている。
【0084】
また、樹脂シート50のLEDチップ12上には、半球形状の透明樹脂層16が設けられている。さらに、この樹脂層16を覆うように、LEDチップ12から発生された青色光を吸収して赤色光に変換する赤色蛍光体が透明な樹脂中に分散された第1の蛍光体層18が設けられている。
【0085】
第1の蛍光体層18中の赤色蛍光体は、例えば、下記一般式(2)で表わされる組成を有する蛍光体である。
(M’1−x2Eux2SiAlO (2)
(上記一般式(2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x2、a、b、c、dは、次の関係を満たす。0<x2<1、0.55<a<0.95、2.0<b<3.9、0<c<0.6、4<d<5.7)
【0086】
ここで、M’はSrであることが望ましい。
【0087】
第1の蛍光体層18を覆うように、LEDチップ12から発生される青色光を吸収して緑色光に変換する緑色蛍光体が透明な樹脂中に分散された第2の蛍光体層20が設けられている。
【0088】
第2の蛍光体層中の緑色蛍光体は、下記一般式(1)で表わされる組成を有し、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体である。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVA族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0089】
ここで、MはSrであることが望ましい。
【0090】
上述のように、第2の蛍光体層20中の緑色蛍光体の平均粒径を12μm以上することで、高い発光効率を得ることが可能となる。さらに、高い発光効率を得る観点から平均粒径は、20μm以上であることが望ましく、50μm以上であることがより望ましい。
【0091】
本実施の形態によれば、上記のように組成と粒径を限定した緑色蛍光体を用いることで高効率な発光装置が実現される。
【0092】
さらに、第2の蛍光体層20を覆うように、半球状の透明樹脂層22が設けられている。この透明樹脂層22の外表面は大気(空気)に接している。この透明樹脂層22は、LEDチップ12から発生される青色光および第1の蛍光体層18からの赤色光、第2の蛍光体層20からの緑色光が、大気との界面となる上記外表面で全反射されることを抑制する機能を有する。
【0093】
透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる4層構造の半球の形状をしている。
【0094】
本実施の形態の発光装置においては、LEDチップ12に電流を流すと、樹脂層22から出力される光は、LEDチップ12から発生され、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を通過した青色光と、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20からの赤色光および緑色光が合わさった白色光となる。
【0095】
上記のように構成された本実施の形態の発光装置においては、LEDチップ12から発生される青色光を通過する透明樹脂層16、この青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体が透明樹脂中に分散された第1の蛍光体層18、この青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体透明樹脂中に分散された第1の蛍光体層20、および大気との界面となる外表面で上記青色光、赤色光および緑色光が全反射されることを抑制する機能を有する透明樹脂層22からなる積層構造が、樹脂シート50上に半球状に形成されているため、発光色のばらつきや、見る角度による色合いが異なることを抑制することができる。また、LEDチップ12からの励起光を集光することが可能となり、光取り出し効率を高めることが可能となる。また、各層間に空気層が介在することを抑制することが可能となり、樹脂の透過率および蛍光体の発光効率の劣化を抑制することが可能となる。
【0096】
そして、本実施形態の発光装置においては、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる半球状の積層構造が形成された以外の領域には、近紫外から可視域の光を反射する材料が樹脂に分散された反射層52が設けられていること、および透明樹脂層22が大気との界面となる外表面で上記青色光、赤色光および緑色光が全反射されるのを抑制する機能を有していることにより、高輝度の光を可及的に高い発光効率で出力することが可能となる。なお、反射層52に更に放熱フィラーを分散させれば、放熱性を向上させることができる。
【0097】
次に、本実施の形態の発光装置の製造方法について説明する。上述のように、本実施の形態で用いられる緑色蛍光体には、発光効率に粒径依存性があり、粒径が大きくなるほど、発光効率が向上する。一方、蛍光体の粒径が大きくなると、蛍光体層の形成の際に、ディスペンサ(液体定量吐出装置)を用いて発光素子上に蛍光体が分散された樹脂を滴下する手法を採用することが困難になる。なぜなら、ディスペンサのシリンジ(注射筒)の径が限定されているため、粒径が大きくなることで目詰まりが生ずるおそれがあるからである。
【0098】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、発光素子が発する光を透過する領域を有し、かつ、変形可能な樹脂シートを準備し、樹脂シート上に領域が開口されたマスクを載置し、マスク上に下記一般式(1)で表わされる組成を有し、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、開口部を充填した樹脂以外の樹脂を、スキージを用いてマスク表面から除去し、マスクを樹脂シート上から除去し、樹脂を硬化させる熱処理を行い、樹脂シートを、上記領域が発光素子上に位置するよう貼り合わせる。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0099】
本実施の形態の発光装置の製造方法においては、上記構成により、ディスペンサを用いないで発光装置を製造する。よって、安定した製造方法で高効率の発光装置を製造することが可能になる。
【0100】
図10は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の凹部46に、励起光源用青色LEDチップ12を透明樹脂層48で封止して実装する(図10(a))。
【0101】
次に、LEDチップ12が発する光を透過する領域を有し、かつ、変形可能な樹脂シート50を準備する。ここで、光を透過する領域とは、樹脂シート50の反射層52以外の領域である。
【0102】
次に、樹脂シート50上に上記領域が開口された例えば、金属のマスク54を載置し、マスク54上に透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、マスク54上の広範囲に塗布する。透明樹脂26は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0103】
次に、開口部を充填した透明樹脂26以外の透明樹脂26を、スキージ28を用いてマスク54表面から除去する(図10(b))。
【0104】
その後、マスク54を樹脂シート50上から除去し、樹脂シート50に対し、透明樹脂26を硬化させる熱処理を行い透明樹脂層16を形成する(図10(c))。
【0105】
次に、樹脂シート50上に上記領域が開口された金属のマスク56を載置する。このマスク56は、マスク54よりも開口部が広く設計されている。マスク56上に赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、マスク56上の広範囲に塗布する。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0106】
次に、開口部を充填したバインダー樹脂32以外のバインダー樹脂32を、スキージ28を用いて樹脂シート50表面から除去する(図10(d))。
【0107】
その後、マスク56を樹脂シート50上から除去し、バインダー樹脂32を硬化させる熱処理を行い第1の蛍光体層18を形成する(図10(e))。
【0108】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を樹脂シート50上に形成する。その後、基板10と樹脂シート50を、光を透過する領域が、LEDチップ12上に位置するよう張り合わせる(図10(f))。このようにして、図9に示す発光装置が製造される。
【0109】
第2の蛍光体層に含まれる上記一般式(1)の緑色蛍光体は、例えば、元素Mの窒化物、またはその他シアナミド等の炭化物、Alなどの元素やSiなどの元素の、窒化物、酸化物、または炭化物、および発光中心元素Rの酸化物、窒化物、または炭酸塩を出発原料として用いて、合成することが可能である。
【0110】
より具体的には、元素MとしてSrを含有し、発光中心元素RとしてEuを含有する蛍光体を目的とする場合には、Sr、AlN、Si、AlおよびEuNを出発原料として用いることができる。Srの代わりにCa、Ba、Srの代わりにCa、Ba、SrNあるいはSrN等、もしくはこれらの混合物を用いても良い。
【0111】
これらの出発原料を所望の組成になるよう秤量混合し、得られた混合粉末を焼成することにより、目的の蛍光体を得ることできる。混合にあたっては、例えば、グローブボックス中で乳鉢混合するといった手法が上げられる。また、るつぼの材質は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボン、窒化アルミニウム、サイアロン、酸化アルミ、モリブデンあるいはタングステン等を用いることが可能である。
【0112】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、透明樹脂層、第1の蛍光体層、第2の蛍光体層、透明樹脂層からなる積層膜が、個々のLEDチップ上に個別に形成されるのではなく、複数のLEDチップを一括して覆うシート状に形成される点以外は、第5の実施の形態と同様である。したがって、第5の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0113】
図11は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる積層膜が、LEDチップ10を一括して覆うシート状に形成される。
【0114】
図12は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の凹部46に、励起光源用青色LEDチップ12を透明樹脂層48で封止して実装する。(図12(a))。
【0115】
次に、LEDチップ12が発する光を透過する領域を有し、かつ、変形可能な樹脂シート50を準備する。次に、樹脂シート50上に、上記領域が開口された例えば、金属のマスク58を載置し、マスク58上に透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、マスク54上の広範囲に塗布する。透明樹脂26は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0116】
次に、開口部を充填した透明樹脂26以外の透明樹脂26を、スキージ28を用いてマスク54表面から除去する(図12(b))。
【0117】
その後、マスク58を樹脂シート50上から除去し、透明樹脂26を硬化させる熱処理を行い透明樹脂層16を形成する(図12(c))。
【0118】
次に、樹脂シート50上に上記領域が開口された金属のマスク60を載置する。このマスク60は、マスク58よりも開口部が広く設計されている。マスク60上に赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、マスク60上の広範囲に塗布する。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0119】
次に、開口部を充填したバインダー樹脂32以外のバインダー樹脂32を、スキージ28を用いて樹脂シート50表面から除去する(図12(d))。
【0120】
その後、マスク60を樹脂シート50上から除去し、樹脂シート50に対し、バインダー樹脂32を硬化させる熱処理を行い第1の蛍光体層18を形成する(図12(e))。
【0121】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を形成し、図11に示す発光装置が製造される。
【0122】
本実施の形態によれば、基板に対するマスクの合わせ精度を緩和することが可能である。したがって、発光装置の生産性および歩留まりが向上するという効果が得られる。
【0123】
(第7の実施の形態)
本実施の形態の発光装置の製造方法は、図9に示す第5の実施の形態の発光装置を製造する別の製造方法である。
【0124】
本実施の形態の発光装置の製造方法は、基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、発光素子が発する光を透過する領域を有し、かつ、変形可能な樹脂シートを準備し、発光素子より大きな径の凹部を有する金型上に、下記一般式(1)で表わされる組成を有し、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、樹脂シートと金型を、重ねて押し合わせ、凹部以外の樹脂を樹脂シートおよび金型の表面上から除去し、樹脂シートと金型を凹部の樹脂が残存するよう引き離し、樹脂シートに対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、樹脂シートを、上記樹脂が発光素子上に位置するよう貼り合わせる。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素であり、Euは、発光中心元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。0<x1<1、−0.1<y<0.3、−3<z≦1、−3<u−w≦1.5)
【0125】
図13は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の凹部46に、励起光源用青色LEDチップ12を透明樹脂層48で封止して実装する(図13(a))。次に、青色LEDチップ12より大きな径の凹部を有する金型38を準備する(図13(b))。
【0126】
次に、LEDチップ12が発する光を透過する領域を有し、かつ、変形可能な樹脂シート50を準備する。ここで、光を透過する領域とは、樹脂シート50の反射層52が設けられた以外の領域を意味する。
【0127】
次に、金型38上に、透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、金型38上の広範囲に塗布する(図13(c))。透明樹脂26は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0128】
次に、樹脂シート50と金型38を、上記領域が凹部に対応する位置にくるように重ねて押し合わせ、凹部以外の透明樹脂26を樹脂シート50および金型38の表面上から除去する(図13(d))。
【0129】
その後、樹脂シート50と金型38を金型38部分の透明樹脂26が樹脂シート50上に残存するよう引き離し、樹脂シート50に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、透明樹脂層16を形成する。
【0130】
次に、透明樹脂層16より大きな径の凹部を有する金型40を準備する。この金型40の凹部の径は、金型38よりも大きくなるよう設計されている。そして、金型40上に、赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、金型40上の広範囲に塗布する。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0131】
次に、樹脂シート50と金型40を、透明樹脂層16が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外のバインダー樹脂32を樹脂シート50および金型40の表面上から除去する(図13(e))。
【0132】
その後、樹脂シート50と金型40をバインダー樹脂32が透明樹脂層16上に残存するよう引き離し、基板に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、第1の蛍光体層18を形成する。
【0133】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を樹脂シート50上に形成する。その後、基板10と樹脂シート50を、光を透過する領域が、LEDチップ12上に位置するよう張り合わせる(図13(f))。このようにして、図9に示す発光装置が製造される。
【0134】
本実施の形態の発光装置の製造方法においても、上記構成により、ディスペンサを用いないで発光装置を製造する。よって、安定した製造方法で高効率の発光装置を製造することが可能になる。
【0135】
(第8の実施の形態)
本実施の形態の発光装置の製造方法は、図11に示す第6の実施の形態の発光装置を製造する別の製造方法である。
【0136】
図14は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す模式断面図である。まず、基板10の凹部46に、励起光源用青色LEDチップ12を透明樹脂層48で封止して実装する(図14(a))。次に、青色LEDチップ12より大きな径であり、複数のLEDチップ12が一括して包含されるような凹部を有する金型42を準備する(図14(b))。
【0137】
次に、LEDチップ12が発する光を透過し、かつ、変形可能な樹脂シート50を準備する。
【0138】
次に、金型42上に、透明樹脂26を、ディスペンサを用いず、金型42上の広範囲に塗布する(図14(c))。透明樹脂26は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0139】
次に、樹脂シート50と金型42を、重ねて押し合わせ、凹部以外の透明樹脂26を樹脂シート50および金型42の表面上から除去する(図14(d))。
【0140】
その後、樹脂シート50と金型42を金型42部分の透明樹脂26が樹脂シート50上に残存するよう引き離し、樹脂シート50に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、透明樹脂層16を形成する。
【0141】
次に、透明樹脂層16より大きな径の凹部を有する金型44を準備する。この金型44の凹部の径は、金型42よりも大きく深くなるよう設計されている。そして、金型42上に、赤色蛍光体が分散されたバインダー樹脂32を、ディスペンサを用いず、金型44上の広範囲に塗布する。バインダー樹脂32は、例えば、シリコーン樹脂である。
【0142】
次に、樹脂シート50と金型44を、透明樹脂層16が凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、凹部以外のバインダー樹脂32を樹脂シート50および金型44の表面上から除去する(図14(e))。
【0143】
その後、樹脂シート50と金型44をバインダー樹脂32が透明樹脂層16上に残存するよう引き離し、基板に対し樹脂を硬化させる熱処理を行い、第1の蛍光体層18を形成する。
【0144】
その後、同様のプロセスを繰り返し、第2の蛍光体層20および透明樹脂層22を樹脂シート50上に形成する。その後、基板10と樹脂シート50を、LEDチップ12上に位置するよう張り合わせる(図14(f))。このようにして、図11に示す発光装置が製造される。
【0145】
本実施の形態の発光装置の製造方法においても、上記構成により、ディスペンサを用いないで発光装置を製造する。よって、安定した製造方法で高効率の発光装置を製造することが可能になる。
【0146】
(第9の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、基板が凹曲面型であること以外は第5の実施の形態と同様である。したがって、第5の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0147】
図15は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。凹曲面型の基板62上にLEDチップ12が実装されている。変形可能な樹脂シート50を用いることで、このような凹曲面型の基板62を有する高効率な発光装置が実現可能である。
【0148】
(第10の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、透明樹脂層、第1の蛍光体層、第2の蛍光体層、透明樹脂層からなる積層膜が、個々のLEDチップ上に個別に形成されるのではなく、複数のLEDチップを一括して覆うシート状に形成される点以外は、第9の実施の形態と同様である。したがって、第9の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0149】
図16は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。凹曲面型の基板62上にLEDチップ12が実装されている。そして、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる積層膜が、LEDチップ12を一括して覆うシート状に形成される。変形可能な樹脂シート50を用いることで、このような凹曲面型の基板62を有する高効率な発光装置が実現可能である。
【0150】
(第11の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、基板が凸曲面型であること以外は第5の実施の形態と同様である。したがって、第5の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0151】
図17は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。凸曲面型の基板64上にLEDチップ12が実装されている。変形可能な樹脂シート50を用いることで、このような凸曲面型の基板64を有する高効率な発光装置が実現可能である。
(第12の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、透明樹脂層、第1の蛍光体層、第2の蛍光体層、透明樹脂層からなる積層膜が、個々のLEDチップ上に個別に形成されるのではなく、複数のLEDチップを一括して覆うシート状に形成される点以外は、第11の実施の形態と同様である。したがって、第11の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0152】
図18は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。凸曲面型の基板64上にLEDチップ12が実装されている。そして、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる積層膜が、LEDチップ12を一括して覆うシート状に形成される。変形可能な樹脂シート50を用いることで、このような凸曲面型の基板64を有する高効率な発光装置が実現可能である。
【0153】
(第13の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、基板が円筒型であること以外は第5の実施の形態と同様である。したがって、第5の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0154】
図19は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。円筒型の基板70上にLEDチップ12が実装されている。変形可能な樹脂シート50を用いることで、このような円筒型の基板70を有する高効率な発光装置が実現可能である。
(第14の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、透明樹脂層、第1の蛍光体層、第2の蛍光体層、透明樹脂層からなる積層膜が、個々のLEDチップ上に個別に形成されるのではなく、複数のLEDチップを一括して覆うシート状に形成される点以外は、第13の実施の形態と同様である。したがって、第13の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0155】
図20は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。円筒型の基板70上にLEDチップ12が実装されている。そして、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層20、透明樹脂層22からなる積層膜が、LEDチップ12を一括して覆うシート状に形成される。
【0156】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0157】
例えば、発光装置に使用する励起光を発生する発光素子は、紫外領域または青色の発光をする半導体発光素子であれば足りる。窒化ガリウム系化合物半導体を用いたLEDについて、実施形態および実施例で説明したが、これに限られるものではない。
【0158】
また、蛍光体は、発光素子として青色LEDが用いられた場合は、黄色発光蛍光体、黄色蛍光体と赤色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と黄色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせに限られず、橙色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と青緑色蛍光体との組み合わせ、橙色蛍光体と青緑色蛍光体との組み合わせも考えられる。さらに、発光素子として近紫外LEDが用いられた場合は、赤色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と黄色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせなどが考えられる。2種類以上の蛍光体を用いる場合には、蛍光体間の再吸収を防ぐため、より長波長発光する蛍光体を内側に、短波長発光する蛍光体を外側に塗布した多層構造塗布が好ましい。加えて、長波長発光蛍光体と短波長発光の蛍光体の間に透明樹脂層を挟む構造の多層塗布とすることがより好ましい。
【0159】
また、実施の形態においては、赤色蛍光体と緑色蛍光体とが異なる蛍光体層に含有される場合を例に説明したが、2つの蛍光体が混合され同一の蛍光体層に含有されても構わない。
【0160】
また、実施の形態においては、赤色蛍光体にサイアロン系蛍光体を適用する場合を例に説明した。温度消光を抑制する観点からはサイアロン系蛍光体、特に上記一般式(2)で表される蛍光体を適用することが望ましいが、その他の赤色蛍光体を適用するものであっても構わない。
【0161】
さらに、封止樹脂の基材となるバインダー樹脂は、発光素子(励起素子)のピーク波長近傍およびこれよりも長波長領域で実質的に透明であれば、その種類を問わず用いることができる。一般的なものとしては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン誘導体、またはオキセタン樹脂、またはアクリル樹脂、またはシクロオレフィン樹脂、またはユリア樹脂、またはフッ素樹脂、またはポリイミド樹脂などが考えられる。
【0162】
そして、実施の形態の説明においては、発光装置、発光装置の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる発光装置、発光装置の製造方法に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0163】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての発光装置、発光装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0164】
(実施例1)
図9に示した第5の実施の形態の発光装置を、図10を用いて説明した第5の実施の形態の発光装置の製造方法を用いて製造した。この際、表1の実施例1の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用した。また、表2の実施例1の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に提供した。このようにして得られた、実施例1の発光装置を800mAで駆動したときに得られた全光束を、積分球を用いて評価を行った。結果を表3に示す。なお、ピーク波長の評価は蛍光体単体に青色LEDによる励起光を照射し、発光する光の波長を測定した。
【0165】
なお、表1には、上記一般式(1)におけるx1、y、z、uおよびwの値を示した。また、表2には、上記一般式(2)におけるx2、a、b、cおよびdの値を示した
【0166】
【表1】

【表2】

【0167】
以下、実施例1の発光装置の製造方法を図9および図10を参照しつつ説明する。
【0168】
まず、InGaN系化合物半導体を活性層として用い、p側/n側電極が形成された16個の青色LEDチップ12(図10)を準備した。引き出し電極となるパターニングされたCuメタルと絶縁層との積層基板である平面型の実装基板10の複数の凹部46のそれぞれに青色LEDチップ10をSn−Ag−Cuペーストを用いて固定する。
【0169】
図21は、実施例1のLEDチップの配線図である。図21に示すように、固定された複数のLEDチップ10を、4直列4並列となるように接続し、アノード電極60とカソード電極62を形成する。このとき、アノード側の引き出し電極と青色LEDチップ10のp側電極とはAuワイヤ14(図10)を用いて電気的接続を行い、カソード側の引き出し電極と、青色LEDチップ10のn側電極とはSn−Ag−Cuペーストを介して電気的接続を確保した。その後、これらのLEDチップ10は、シリコーン樹脂を塗布して封止し、Auワイヤ14を保護する。
【0170】
一方、これらのLEDチップ10が位置することになる領域部分は透明で、それ以外の部分にはAgの微粒子が分散された反射層52が形成されているシリコーン系薄膜樹脂シート50を真空印刷装置に装填する。この樹脂シート50は、厚さが0.1mmであって、片側のみ接着剤が塗布されている。
【0171】
マスクの開口径がφ1mm〜φ3mmであるメタルマスク54を用いて、上記樹脂シート50上にシリコーン系透明樹脂26を半球状となるように、低圧下で、シリコーン系透明樹脂中の気泡を脱砲しながら、1回目の印刷工程により形成する。その後、透明樹脂26が形成された樹脂シート50を、大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、透明樹脂層16を形成する。
【0172】
次に、バインダー樹脂であるシリコーン樹脂に、表2の実施例1の欄に示す赤色蛍光体が分散された樹脂32を、マスク開口径を1回目印刷時よりもやや大きくしたメタルマスク56を用いて、1回目の印刷工程で形成した半球状の透明樹脂層16の全てを覆うように均一な層厚で半球状に2回目の印刷工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第1の蛍光体層18を形成する。
【0173】
さらに、表1の実施例1の欄に示す緑色蛍光体が分散された樹脂を、マスク開口径を2回目印刷時よりもやや大きくしたメタルマスクを用いて、2回目の印刷工程で形成した半球状の第1の蛍光体層18の全てを覆うように均一な層厚で半球状に3回目の印刷工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第2の蛍光体層層20を形成する。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20の積層膜の形状は半球状となっている。
【0174】
次に、マスクの開口径が3回目の印刷工程時よりもやや大きくしたメタルマスクを用いて、シリコーン系透明樹脂を、3回目の印刷工程で塗布された第2の蛍光体層層20を均一な層厚で覆うように、4回目の印刷工程により形成する。この印刷工程により、LEDチップの真上方向の層厚aと真横方向の層厚bとの比(=a/b)が1.0になるように、透明樹脂が形成される。
【0175】
その後、150℃で30分保持することにより、常圧で乾燥させて、4回目の印刷工程で塗布された透明樹脂を硬化させ、透明樹脂層22を形成し、多層構造の蛍光体塗布シートを作製した。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20および透明樹脂層22の積層膜の形状は半球状となっている。
【0176】
この蛍光体塗布シート(樹脂シート)を、減圧チャンバー内で、残留大気を除去した後、上記平面型の実装基板10と張り合わせて、図9に示す発光装置を作製した。
【0177】
(実施例2〜6)
表1の実施例2〜6の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表2の実施例2〜6の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に提供すること以外は、実施例1と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0178】
(比較例1、2)
表1の比較例1、2の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表2の比較例1、2の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例1と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0179】
平均粒径が12μm以上の実施例1〜6は比較例1、2に比べて、高光束であることが確認された。実施例によって、高輝度の平面型の発光装置が得られた。本実施例の発光装置をヒートシンクに接合させて、連続点灯試験を行ったところ、蓄熱からくる光束の低下も抑えることができた。したがって、本実施例の発光装置は、色ずれが少なく、高輝度、高効率で放熱性の優れたものであった。
【0180】
【表3】

【0181】
(実施例7)
図9に示した第5の実施の形態の発光装置を、図13を用いて説明した第7の実施の形態の発光装置の製造方法を用いて製造した。この際、表4の実施例7の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用した。また、表5の実施例7の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用した。
【0182】
このようにして得られた、実施例7の発光装置を800mAで駆動したときに得られた全光束を、積分球を用いて評価を行った。結果を表6に示す。なお、ピーク波長の評価は蛍光体単体に青色LEDによる励起光を照射し、発光する光の波長を測定した。
【0183】
なお、表1には、上記一般式(1)におけるx1、y、z、uおよびwの値を示した。また、表2には、上記一般式(2)におけるx2、a、b、cおよびdの値を示した。
【0184】
【表4】

【表5】

【0185】
次に、実施例7の発光装置の製造方法を図9および図13を参照しつつ説明する。
【0186】
まず、InGaN系化合物半導体を活性層として用い、p側/n側電極が形成された16個の青色LEDチップ12(図13)を準備した。引き出し電極となるパターニングされたCuメタルと絶縁層との積層基板である平面型の実装基板10の複数の凹部46のそれぞれに青色LEDチップ10をSn−Ag−Cuペーストを用いて固定する。
【0187】
実施例1の場合と同様、図21に示すように、固定された複数のLEDチップ10を、4直列4並列となるように接続し、アノード電極60とカソード電極62を形成する。このとき、アノード側の引き出し電極と青色LEDチップ10のp側電極とはAuワイヤ14(図13)を用いて電気的接続を行い、カソード側の引き出し電極と、青色LEDチップ10のn側電極とはSn−Ag−Cuペーストを介して電気的接続を確保した。その後、これらのLEDチップ10は、シリコーン樹脂を塗布して封止し、Auワイヤ14を保護する。
【0188】
一方、これらのLEDチップ10が位置することになる領域部分は透明で、それ以外の部分にはAgの微粒子が分散された反射層52が形成されているシリコーン系薄膜樹脂シート50をモールド成型装置に装填する。この樹脂シート50は、厚さが0.1mmであって、片側のみ接着剤が塗布されている。
【0189】
φ1mm〜φ3mmの半球状の金型38を用いて、上記樹脂シート50上にシリコーン系透明樹脂26を半球状となるように、低圧下で、シリコーン系透明樹脂中の気泡を脱砲しながら、1回目の成型工程により形成する。その後、透明樹脂26が形成された樹脂シート50を、大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、透明樹脂層16を形成する。
【0190】
次に、バインダー樹脂であるシリコーン樹脂に表5の実施例7の欄に示す赤色蛍光体が分散された樹脂32を、開口径を1回目印刷時よりもやや大きく深くした金型40を用いて、1回目の成型工程で形成した半球状の透明樹脂層16の全てを覆うように均一な層厚で半球状に2回目の成型工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第1の蛍光体層18を形成する。
【0191】
さらに、表4の実施例7の欄に示す緑色蛍光体が分散された樹脂を、開口径を2回目成型時よりもやや大きく深くした金型を用いて、2回目の成型工程で形成した半球状の第1の蛍光体層18の全てを覆うように均一な層厚で半球状に3回目の成型工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第2の蛍光体層層20を形成する。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20の積層膜の形状は半球状となっている。
【0192】
次に、開口径が3回目の成型工程時よりもやや大きく深くした金型を用いて、シリコーン系透明樹脂を、3回目の成型工程で塗布された第2の蛍光体層層20を均一な層厚で覆うように、4回目の成型工程により形成する。この成型工程により、LEDチップの真上方向の層厚aと真横方向の層厚bとの比(=a/b)が1.0になるように、透明樹脂が形成される。
【0193】
その後、150℃で30分保持することにより、常圧で乾燥させて、4回目の成型工程で塗布された透明樹脂を硬化させ、透明樹脂層22を形成し、多層構造の蛍光体塗布シートを作製した。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20および透明樹脂層22の積層膜の形状は半球状となっている。
【0194】
この蛍光体塗布シート(樹脂シート)を、減圧チャンバー内で、残留大気を除去した後、上記平面型の実装基板10と張り合わせて、図9に示す発光装置を作製した。
【0195】
(実施例8〜12)
表4の実施例8〜12の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、および、表5の実施例8〜12の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例7と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例7と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0196】
(比較例3)
表4の比較例3の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表5の比較例3の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例7と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例7と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0197】
平均粒径が12μm以上の実施例7〜12は比較例3に比べて、高光束であることが確認された。実施例によって、高輝度の平面型の発光装置が得られた。本実施例の発光装置をヒートシンクに接合させて、連続点灯試験を行ったところ、蓄熱からくる光束の低下も抑えることができた。したがって、本実施例の発光装置は、色ずれが少なく、高輝度、高効率で放熱性の優れたものであった。
【0198】
【表6】

【0199】
(比較例4〜6)
図9に示した第5の実施の形態の発光装置を、図13を用いて説明した第7の実施の形態の発光装置の製造方法を用いて製造することを試みた。この際、表7の比較例4〜6の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用することを試みた。また、表8の比較例4〜6の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用することを試みた。
【0200】
なお、表7には、上記一般式(1)におけるx1、y、z、uおよびwの値を示した。また、表8には、上記一般式(2)におけるx2、a、b、cおよびdの値を示した。
【0201】
表7の比較例4、5、6の蛍光体、表8の比較例4,5の蛍光体はサイアロン系化合物を母体とするものの、一般式(1)、(2)の条件を満たさない。また、表8の比較例6はサイアロン系化合物を母体とするものではない。
【0202】
【表7】

【0203】
【表8】

【0204】
表7、8に示すように、いずれの蛍光体も単体で発光が微弱で発光装置を作製するためには、不十分な特性であったため発光装置をつくるにいたらなかった。
【0205】
(実施例13)
図11に示した第6の実施の形態の発光装置を、図12を用いて説明した第6の実施の形態の発光装置の製造方法を用いて製造した。この際、表9の実施例13の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用した。また、表10の実施例13の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用した。
【0206】
このようにして得られた、実施例13の発光装置を800mAで駆動したときに得られた全光束を、積分球を用いて評価を行った。結果を表11に示す。なお、ピーク波長の評価は蛍光体単体に青色LEDによる励起光を照射し、発光する光の波長を測定した。
【0207】
なお、表1には、上記一般式(1)におけるx1、y、z、uおよびwの値を示した。また、表2には、上記一般式(2)におけるx2、a、b、cおよびdの値を示した
【0208】
【表9】

【0209】
【表10】

【0210】
以下、実施例13の発光装置の製造方法を図11および図12を参照しつつ説明する。
【0211】
まず、InGaN系化合物半導体を活性層として用い、p側/n側電極が形成された16個の青色LEDチップ12(図12)を準備した。引き出し電極となるパターニングされたCuメタルと絶縁層との積層基板である平面型の実装基板10の複数の凹部46のそれぞれに青色LEDチップ10をSn−Ag−Cuペーストを用いて固定する。
【0212】
そして、図21に示すように、固定された複数のLEDチップ10を、4直列4並列となるように接続し、アノード電極60とカソード電極62を形成する。このとき、アノード側の引き出し電極と青色LEDチップ10のp側電極とはAuワイヤ14(図11)を用いて電気的接続を行い、カソード側の引き出し電極と、青色LEDチップ10のn側電極とはSn−Ag−Cuペーストを介して電気的接続を確保した。その後、これらのLEDチップ10は、シリコーン樹脂を塗布して封止し、Auワイヤ14を保護する。
【0213】
一方、これらのLEDチップ10が位置することになる領域部分は透明で、それ以外の部分にはAgの微粒子が分散された反射層52が形成されているシリコーン系薄膜樹脂シート50を真空印刷装置に装填する。この樹脂シート50は、厚さが0.1mmであって、片側のみ接着剤が塗布されている。
【0214】
マスクの開口径が25mm〜30mm□であるメタルマスク58を用いて、上記樹脂シート50上にシリコーン系透明樹脂26を平面状となるように、低圧下で、シリコーン系透明樹脂中の気泡を脱砲しながら、1回目の印刷工程により形成する。その後、透明樹脂26が形成された樹脂シート50を、大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、透明樹脂層16を形成する。
【0215】
次に、バインダー樹脂であるシリコーン樹脂に表10の実施例13の欄に示す赤色蛍光体が分散された樹脂32を、マスク開口径を1回目印刷時よりもやや大きくしたメタルマスク60を用いて、1回目の印刷工程で形成した平面状の透明樹脂層16の全てを覆うように均一な層厚で平面状に2回目の印刷工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第1の蛍光体層18を形成する。
【0216】
さらに、表9の実施例13の欄に示す緑色蛍光体が分散された樹脂を、マスク開口径を2回目印刷時よりもやや大きくしたメタルマスクを用いて、2回目の印刷工程で形成した平面状の第1の蛍光体層18の全てを覆うように均一な層厚で平面状に3回目の印刷工程
により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第2の蛍光体層層20を形成する。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20の積層膜の形状は平面状となっている。
【0217】
次に、マスクの開口径が3回目の印刷工程時よりもやや大きくしたメタルマスクを用いて、シリコーン系透明樹脂を、3回目の印刷工程で塗布された第2の蛍光体層層20を均一な層厚で覆うように、4回目の印刷工程により形成する。この印刷工程により、LEDチップの真上方向の層厚aと真横方向の層厚bとの比(=a/b)が1.0になるように、透明樹脂が形成される。
【0218】
その後、150℃で30分保持することにより、常圧で乾燥させて、4回目の印刷工程で塗布された透明樹脂を硬化させ、透明樹脂層22を形成し、多層構造の蛍光体塗布シートを作製した。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20および透明樹脂層22の積層膜の形状は平面状となっている。
【0219】
この蛍光体塗布シート(樹脂シート)を、減圧チャンバー内で、残留大気を除去した後、上記平面型の実装基板10と張り合わせて、図11に示す発光装置を作製した。
【0220】
(実施例14〜18)
表9の実施例14〜18の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表10の実施例14〜18の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例19と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例13と同様の評価を行った。結果を表11に示す。
【0221】
(比較例7)
表9の比較例7の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表10の比較例7の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例13と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例13と同様の評価を行った。結果を表11に示す。
【0222】
平均粒径が12μm以上の実施例13〜18は比較例7に比べて、高光束であることが確認された。実施例によって、高輝度の平面型の発光装置が得られた。本実施例の発光装置をヒートシンクに接合させて、連続点灯試験を行ったところ、蓄熱からくる光束の低下も抑えることができた。したがって、本実施例の発光装置は、色ずれが少なく、高輝度、高効率で放熱性の優れたものであった。
【0223】
【表11】

【0224】
(実施例19)
図11に示した第6の実施の形態の発光装置を、図14を用いて説明した第8の実施の形態の発光装置の製造方法を用いて製造した。この際、表12の実施例19の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用した。また、表13の実施例19の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用した。
【0225】
このようにして得られた、実施例19の発光装置を800mAで駆動したときに得られた全光束を、積分球を用いて評価を行った。結果を表14に示す。なお、ピーク波長の評価は蛍光体単体に青色LEDによる励起光を照射し、発光する光の波長を測定した。
【0226】
なお、表1には、上記一般式(1)におけるx1、y、z、uおよびwの値を示した。また、表2には、上記一般式(2)におけるx2、a、b、cおよびdの値を示した。
【0227】
【表12】

【0228】
【表13】

【0229】
次に、実施例19による発光装置の製造方法を図11および図14を参照しつつ説明する。
【0230】
まず、InGaN系化合物半導体を活性層として用い、p側/n側電極が形成された16個の青色LEDチップ12(図14)を準備した。引き出し電極となるパターニングされたCuメタルと絶縁層との積層基板である平面型の実装基板10の複数の凹部46のそれぞれに青色LEDチップ10をSn−Ag−Cuペーストを用いて固定する。
【0231】
実施例13の場合と同様、図21に示すように、固定された複数のLEDチップ10を、4直列4並列となるように接続し、アノード電極60とカソード電極62を形成する。このとき、アノード側の引き出し電極と青色LEDチップ10のp側電極とはAuワイヤ14(図13)を用いて電気的接続を行い、カソード側の引き出し電極と、青色LEDチップ10のn側電極とはSn−Ag−Cuペーストを介して電気的接続を確保した。その後、これらのLEDチップ10は、シリコーン樹脂を塗布して封止し、Auワイヤ14を保護する。
【0232】
一方、これらのLEDチップ10が位置することになる領域部分は透明で、それ以外の部分にはAgの微粒子が分散された反射層52が形成されているシリコーン系薄膜樹脂シート50をモールド成型装置に装填する。この樹脂シート50は、厚さが0.1mmであって、片側のみ接着剤が塗布されている。
【0233】
25mm〜30mm□、深さ0.3mm〜1.0mmの角型の金型42を用いて、上記樹脂シート50上にシリコーン系透明樹脂26を平面状となるように、低圧下で、シリコーン系透明樹脂中の気泡を脱砲しながら、1回目の成型工程により形成する。その後、透明樹脂26が形成された樹脂シート50を、大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、透明樹脂層16を形成する。
【0234】
次に、バインダー樹脂であるシリコーン樹脂に表13の実施例19の欄に示す赤色蛍光体が分散された樹脂32を、開口径を1回目成型時よりもやや大きく深くした金型44を用いて、1回目の成型工程で形成した平面状の透明樹脂層16の全てを覆うように均一な層厚で平面状に2回目の成型工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第1の蛍光体層18を形成する。
【0235】
さらに、表12の実施例19の欄に示す緑色蛍光体が分散された樹脂を、開口径を2回目成型時よりもやや大きく深くした金型を用いて、2回目の成型工程で形成した平面状の第1の蛍光体層18の全てを覆うように均一な層厚で平面状に3回目の成型工程により形成する。その後、樹脂シート50を大気中、常圧で、150℃で30分保持することにより硬化させ、第2の蛍光体層層20を形成する。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20の積層膜の形状は平面状となっている。
【0236】
次に、マスクの開口径が3回目の成型工程時よりもやや大きく、深くした金型を用いて、シリコーン系透明樹脂を、3回目の成型工程で塗布された第2の蛍光体層層20を均一な層厚で覆うように、4回目の成型工程により形成する。この成型工程により、LEDチップの真上方向の層厚aと真横方向の層厚bとの比(=a/b)が1.0になるように、透明樹脂が形成される。
【0237】
その後、150℃で30分保持することにより、常圧で乾燥させて、4回目の成型工程で塗布された透明樹脂を硬化させ、透明樹脂層22を形成し、多層構造の蛍光体塗布シートを作製した。これにより、透明樹脂層16、第1の蛍光体層18、第2の蛍光体層層20および透明樹脂層22の積層膜の形状は平面状となっている。
【0238】
この蛍光体塗布シート(樹脂シート)を、減圧チャンバー内で、残留大気を除去した後、上記平面型の実装基板10と張り合わせて、図11に示す発光装置を作製した。
【0239】
(実施例20〜24)
表12の実施例20〜24の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表13の実施例20〜24の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例19と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例19と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0240】
(比較例8)
表12の比較例8の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表13の比較例8の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例19と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例19と同様の評価を行った。結果を表14に示す。
【0241】
平均粒径が12μm以上の実施例19〜24は比較例8に比べて、高光束であることが確認された。実施例によって、高輝度の平面型の発光装置が得られた。本実施例の発光装置をヒートシンクに接合させて、連続点灯試験を行ったところ、蓄熱からくる光束の低下も抑えることができた。したがって、本実施例の発光装置は、色ずれが少なく、高輝度、高効率で放熱性の優れたものであった。
【0242】
【表14】

【0243】
(比較例9〜11)
図11に示した第6の実施の形態の発光装置を、図14を用いて説明した第8の実施の形態の発光装置の製造方法を用いて製造することを試みた。この際、表15の比較例9〜11の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用することを試みた。また、表16の比較例9〜11の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用することを試みた。
【0244】
なお、表15には、上記一般式(1)におけるx1、y、z、uおよびwの値を示した。また、表16には、上記一般式(2)におけるx2、a、b、cおよびdの値を示した。
【0245】
比較例9、10の蛍光体はサイアロン系化合物を母体とするものの、一般式(1)、(2)の条件を満たさない。また、表16中の比較例11はサイアロン系化合物を母体とするものではない。
【0246】
【表15】

【0247】
【表16】

【0248】
表15、16に示すように、いずれの蛍光体も単体で発光が微弱で発光装置を作製するためには、不十分な特性であったため発光装置をつくるにいたらなかった。
【0249】
(実施例25〜29)
表17の実施例25〜29の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表18の実施例25〜29の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例1と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0250】
(比較例12、13)
表17の比較例12、13の欄に示した組成、ピーク波長、平均粒径を有する緑色蛍光体を第2の蛍光体層に適用し、表18の比較例12、13の欄に示した組成、ピーク波長を有する赤色蛍光体を第1の蛍光体層に適用すること以外は、実施例1と同様の方法で発光装置を製造した。また、実施例1と同様の評価を行った。結果を表19に示す。
【0251】
【表17】

【0252】
【表18】

【0253】
平均粒径が12μm以上の実施例25〜29は比較例12、13に比べて、高光束であることが確認された。実施例によって、高輝度の平面型の発光装置が得られた。本実施例の発光装置をヒートシンクに接合させて、連続点灯試験を行ったところ、蓄熱からくる光束の低下も抑えることができた。したがって、本実施例の発光装置は、色ずれが少なく、高輝度、高効率で放熱性の優れたものであった。特に実施例25〜29は材料組成の点で改良されたもので、比較例12、13に比べて蓄熱からくる光束の低下が少なく温度特性の優れた発光装置が得られた。
【0254】
【表19】

【符号の説明】
【0255】
10 基板
12 LEDチップ
14 ワイヤ
16 透明樹脂層
18 第1の蛍光体層
20 第2の蛍光体層
22 透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、
前記基板上に前記発光素子が実装された領域が開口されたマスクを載置し、
前記マスク上に下記一般式(1)で表わされる組成を有し、前記光で励起した際、波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示し、板状粒子で、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、
前記開口部を充填した前記樹脂以外の前記樹脂を、スキージを用いて前記マスク表面から除去し、
前記マスクを前記基板上から除去し、
前記樹脂を硬化させる熱処理を行うことを特徴とする発光装置の製造方法。
(M1−x1Eu3−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5)
【請求項2】
基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、
前記発光素子より大きな径の凹部を有する金型上に、下記一般式(1)で表わされる組成を有し、前記光で励起した際、波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示し、板状粒子で、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、
前記基板と前記金型を、前記発光素子が前記凹部に嵌め込まれるように重ねて押し合わせ、前記凹部以外の前記樹脂を前記基板および前記金型の表面上から除去し、
前記基板と前記金型を前記樹脂が前記発光素子上に残存するよう引き離し、
前記基板に対し前記樹脂を硬化させる熱処理を行うことを特徴とする発光装置の製造方法。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5
【請求項3】
基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、
前記発光素子が発する光を透過する領域を有し、かつ、変形可能な樹脂シートを準備し、
前記樹脂シート上に前記領域に対応する開口部を有するマスクを載置し、
前記マスク上に下記一般式(1)で表わされる組成を有し、前記光で励起した際、波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示し、板状粒子で、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、
前記開口部を充填した前記樹脂以外の前記樹脂を、スキージを用いて前記マスク表面から除去し、
前記マスクを前記樹脂シート上から除去し、
前記樹脂シートに対し前記樹脂を硬化させる熱処理を行い、
前記樹脂シートを、前記領域が前記発光素子上に位置するよう貼り合わせることを特徴とする発光装置の製造方法。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはSr、Ba、Ca、Mgから選択される元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5)
【請求項4】
基板の表面に、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子を実装し、
前記発光素子が発する光を透過する領域を有し、前記光で励起した際、波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示し、板状粒子で、かつ、変形可能な樹脂シートを準備し、
前記発光素子より大きな径の凹部を有する金型上に、下記一般式(1)で表わされる組成を有し、かつ、平均粒径が12μm以上の蛍光体を含む樹脂を塗布し、
前記樹脂シートと前記金型を、重ねて押し合わせ、前記凹部以外の前記樹脂を前記樹脂シートおよび前記金型の表面上から除去し、
前記樹脂シートと前記金型を、前記凹部の前記樹脂が前記樹脂シート上に残存するよう引き離し、
前記樹脂シートに対し前記樹脂を硬化させる熱処理を行い、
前記樹脂シートを、前記樹脂が前記発光素子上に位置するよう貼り合わせることを特徴とする発光装置の製造方法。
(M1−x1Eux13−ySi13−zAl3+z2+u21−w (1)
(上記一般式(1)中、MはSr、Ba、Ca、Mgから選択される元素である。x1、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5)
【請求項5】
前記基板に設けられた凹部に、前記発光素子を透明樹脂で封止することによって実装することを特徴とする請求項3または請求項4記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記平均粒径が20μm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の発光装置。
【請求項7】
前記平均粒径が50μm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の発光装置の製造方法。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図2】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−169653(P2012−169653A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93748(P2012−93748)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【分割の表示】特願2011−177804(P2011−177804)の分割
【原出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】