説明

発光装置

本発明は、アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードの間に配置される発光領域を含む発光装置であって、前記発光領域は励起子生成層及び燐光性層を含み、前記励起子生成層は有機材料を含み、前記励起子生成層の有機材料は1重項及び3重項励起子を生成し、1重項励起子からの蛍光性発光によって発光し、前記燐光性層は前記励起子生成層から3重項励起子を受領し、前記3重項励起子からの燐光性発光によって発光する発光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光共役ポリマーを使用した発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光共役ポリマーは、次世代の情報技術に基づいた商品のための発光装置に使用される材料の新しい重要な分野である。無機半導体及び有機染料材料とは逆に、ポリマーの使用の主な関心は薄膜の溶液プロセスを使用した低コスト製造性の範囲に向いている。最近10年間、高効率の材料又は効率的な装置構造の開発によって有機発光ダイオード(OLEDs)の発光効率の改良に多大な労力が費やされてきた。
【0003】
OLEDにおいては、対向電極から注入された電子と正孔が結合して2つのタイプの励起を形成する。すなわち、スピン対称3重項とスピン非対称1重項であり、理論的な比率は3:1である。1重項からの相対的な崩壊は速い(蛍光性)が、3重項からの崩壊(燐光性)はスピン保存の必要性から公式には禁じられている。
【0004】
蛍光性OLEDの最大内部量子効率は25%に限定されるという理解によって、1重項及び3重項を燐光性ドープ材に変換するというアイディアが考え出された。このような燐光材は、典型的には、有機材料から1重項及び3重項励起子を受け取ることができ、発光、特に両者からの電子発光を行う。
【0005】
ここ数年間、燐光性材料を半導体層に混合することによって組み込むことが研究されてきた。特に、これは白色発光装置に応用されてきた。
【0006】
効率的な白色発光を得るために、いくつかの手段があった。一般照明のための十分な質の白色を得るためには、通常多くの異なる発光体からの光を結合する必要がある。例えば、青色と黄色の結合又は青色と緑色の結合である。これを行うための多くの潜在的なスキームは、例えば、青色光の量が他の色より速く衰退するなどの異なる寿命の問題を生じる。異なる寿命を避けるための1つの方法は、下方転換法を使用することである。「下方転換法」においては、最も多く必要とされるエネルギーの光子を製造する1つの基本源がある。いくつか又は多くのこれら光子は蛍光体として知られる材料に吸収され、より低いエネルギー(より長い波長)を再放射する。これらの下方転換「蛍光体」は、その名前に反して吸収した光を蛍光又は燐光として再放射することができるものと当業者には理解されている。
【0007】
標準の蛍光管は照明用の白色光生成する下方転換の使用の一例である。この場合、光子の源は主として青色光を与える水銀放電である。ガラス管の表面の蛍光体がこれら光子のいくつかを黄色領域の波長に変換し、青色及び黄色の混合が白色として知覚される。蛍光管はフラットパネルディスプレイには使用できず、したがって、より最新のOLEDはこれらより大きな利点を有している。
【0008】
Applied Physics Letters 80(19),3470−3472,2002は他の手法を開示している。すなわち、青色蛍光を発光する電子発光材料を含む有機発光ポリマーの使用である。有機装置の外側の蛍光体又は染料はいくつかの「青色」光子を吸収し、低いエネルギーの光子を再放射し、これによって青色発光の一部を黄色に下方転換する。青色及び黄色発光は結合して白色発光を形成する。
【0009】
全ての発光材料ではなくても多くの、この装置の青色電子発光材料は1重項及び3重項励起を生成する。しかしながら、この装置(すなわち、青色及び下方転換された黄色)における全ての発光は順に1重項から引き出される電子発光材料の青色発光から引き出される。すなわち、青色電子発光材料によって生成される3重項励起は取り入れられない。3重項励起に対する1重項励起の非は最大で1:3である。(例えば、Chem.Phys. lett.,1993,210,61,Nature(London),2001,409,494,Synth.Met.,2002,125,55及びこれに引用される引用文献において検討されている)。結果として、この装置の効率の理論的最大値は25%の低さである。
【0010】
白色燐光性装置の1つの例は、Advanced Materials,2002,14,No.2,“Controlling Exciton Diffusion in Multilar White Phosphorescent Organic Light Emitting Devices”に開示されている。この開示は、白色有機発光装置に関するものである。白色有機発光装置(WOLEDs)は、フラットパネルディスプレイの欠点に低コストで代替し、ゆくゆくは照明に使用できるので関心を呼んでいる。白色発光は異なる層が1つのポリマー混合層又は複合有機/無機構造、白色発光材料又は励起錯体から可視光線の異なる波長を発光する多層OLED構造から得られるとも言われている。
【0011】
Advanced Materilas 2002,14,No.2は、効率的に白色発光を生成する、青色(6wt%,FIrpic:CBP)、黄色(8wt%,Bt2Ir(acac):BCP)及び赤色(8wt.%,Btp2Ir(acac):CBP)蛍光体がドープされた2層OLEDに結合された発光領域について報告している。この2つの装置構造は次のとおりである。
【0012】
1−基板/ITOアノード/REDOT:PSS/正孔輸送層(HLT)NPD/青色発光領域(EMR)/遮断層(BCP)/赤色EMR/BCP/カソード、及び
2−基板/ITOアノード/PEDOT:PSS/正孔輸送層(HLT)NPD/青色発光領域(EMR)/遮断層(BCP)/赤色EMR/BCP/カソード
化合物FIrpic及びBtIr(acac)は、1重項及び3重項励起を吸収し、3重項分子励起状態(燐光性)から発光することにより発光する。これら燐光性装置は、3重項励起子が捕獲される結果、前記蛍光装置より高い効率を有している。しかしながら、これら装置は2つの欠点を有している。第1は、燐光性化合物からの青色発光は高い3重項エネルギーレベル及びさらにより高い3重項エネルギードープ剤を要求する。これらは、特に、要求が高いが、結果として、FIrpicからの青色発光は1931 CIE座標によって定義される。第2に、前記2つの発光種の色は装置寿命を通じて変化し、その結果これら装置の色安定性は問題である。
【0013】
Advanced Materials 2002,14,No.2によると、3重項励起の拡散の制御は望ましい色バランスを得るための手段となる。3重項は1重項より長い数等級の光度の寿命を有し、これによってより長い拡散長を有し、発光層を10nmより厚くすることを可能にする。
【0014】
ドープ剤の濃度、HTLに関係する異なる色領域の位置(励起形成が起こる場所)及び各層の厚さを変化させることにより、Advanced Materials 2002,14,No.2はOLED発光のCIE座標は広い範囲にわたって調整されることを教えている。
【0015】
装置2において、遮断層は薄いBCPであり、FIrpic及びBtp2Ir(acac)ドープされた層の間に配置される。この層は、FIrpicドープされた層からカソードに向けた正孔の流れを遅らせ、これによってより多くの励起子がFIrpic層において形成するようにし、FIrpicドープされた層における形成後励起子カソードに向けて拡散するのを防止すると言われている。
【0016】
Advanced Materials 2002,14,No.2の装置1及び2の発光領域に使用されるホスト材料−ドープ剤系は溶液プロセス可能ではない。さらに、青色EMRは適切な色を有する青色光、並びに青色蛍光及び外部からの下方変換に基づく白色装置の性能を超える効率を示すことはない。
【非特許文献1】Advanced Materials,2002,14,No.2,“Controlling Exciton Diffusion in Multilar White Phosphorescent Organic Light Emitting Devices”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記に鑑みて、好ましくは溶液プロセスが可能で、効率的な白色有機発光装置(WOLED)を提供する必要性が存在する。
【0018】
本発明の目的は、したがって、新しい有機発光装置、特に、新しいWOLEDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードの間に配置される発光領域を含み、前記発光領域は励起子生成層及び燐光性層を含み、前記励起子生成層は有機材料を含み、前記励起子生成層の有機材料は1重項及び3重項励起子を生成し、1重項励起子からの蛍光性発光によって発光し、前記燐光性層は前記励起子生成層から3重項励起子を受領し、前記3重項励起子からの燐光性発光によって発光する発光装置を提供することによってこの必要性を少なくとも部分的に満たすものである。
【0020】
本発明の装置においては、1重項及び3重項励起子は1つの発生源から生じると考えられる。しかしながら、1重項励起子は、崩壊して3重項励起子とは異なる材料から光を生成する。よって、光は2つの場所から生成される。すなわち、1重項励起子を受け取る励起子生成層の有機材料と3重項励起子を受け取る燐光性層である。
【0021】
3重項励起子は励起子生成層から燐光性層に移動する。これは、例えば、(1)1重項遮断層を有することにより、又は(2)前記燐光性層に到達するのに3重項励起子のみが十分拡散することができることを保証することによって達成され得る。本発明のこれら2つの実施態様については、下記にさらに詳しく検討される。
【0022】
励起生成層は1重項励起から蛍光性発行によって直接的に発光する。3重項励起子は燐光によって放射を生じする燐光性層中に拡散する。
【0023】
本発明の装置構造は幅広い波長の色にわたって光を生成するために使用され得る。これは、例えば、励起子生成層の適切な厚さ及び組成の選択、並びに燐光性層の適切な厚さ及び組成の選択によって達成される。本発明の装置は、白色光の製造に特に有利であることがわかった。
【0024】
白色照明の目的のためには、発光色は、3000〜8000K、好ましくは6000〜7000Kの黒色体発光体に等しくすべきである。装置が白色光を発光するためには、好ましくは、励起子生成層は青色発光材料を含み、燐光性材料は黄色発光材料を含む。青色光は、CIE座標においてx<0.3、y<0.3の範囲であることが特徴付けられる。黄色光は、CIE座標においてx>0.3、y>0.3の範囲であることが特徴付けられる。
【0025】
CIE座標は発光された光の波長I(λ)から導かれる。第1のTristimulus値X、Y、Zは発光波長と次の標準CIE観察者関数との重複から計算される。
【化1】

Y及びZについても、同様の式が適用される。
次いで、CIE座標(x及びy)は、次の式を用いて計算される。
x=X/(X+Y+Z)及びy=Y/(X+Y+Z)
【0026】
本発明の装置はフラットパネルディスプレイの光源として使用されるのに有利である。また、装置は、3重項及び1重項励起子を受取るので高い効率を有する。さらに、本発明の装置は燐光性の効率性の利点と発光に至る冷光放射性起源として1つの化学部位を使用することによる色安定性の優位性を併せ持つ。有利なことに、本発明の装置は薄膜形成材料の溶液プロセスによって低コストで製造することができる。
【0027】
励起子生成層は有機材料を含む。励起子生成層の有機材料はいずれの適切な材料でよい。励起子生成層の有機材料は好ましくはポリマーを含む。好ましくは、ポリマーはトリアリールアミン繰り返し単位を含む。特に好ましいトリアリールアミン繰り返し単位は式1−6に示されている。
【化2】

X、Y、A、B、C及びDは独立してH又は置換基から選ばれる。より好ましくは、X、Y、A、B、C及びDの1又は2以上は、選択的に置換される、分岐又は直鎖のアルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリール及びアリールアルキル基からなる群より独立して選択される。最も好ましくは、X、Y、A及びBはC1−10アルキルである。式1の繰り返し単位が最も好ましい。
【0028】
最も好ましくは、ポリマーは1又は2以上の式1−6の繰り返し単位及びアリーレン繰り返し単位を含むコポリマーである。特に好ましいアリーレン繰り返し単位は選択的に置換されるフルオレン、スピロフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン及びオリゴ−フェニレン繰り返し単位である。
【0029】
他の実施態様において、励起子生成層の有機材料は、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)のような低分子化合物を含む。さらに他の実施態様において、有機材料は、WO99/21935に開示されるような青色発光核及びアリーレンビニレンデンドロン又はWO02/067343に開示されるようなアリーレンデンドロンを含むデンドリマーを含むことができる。
励起子生成層は前記有機材料単独又は1又は2以上の電荷輸送化合物で混合されることができる。
【0030】
好ましくは、励起子生成層の有機材料はCIE座標x<0.3、y<0.7を有する青色発光に至る青色蛍光材料である。
【0031】
励起子生成層は適切な方法で製造過程において蒸着される。例えば、励起子生成層は溶液プロセスによって蒸着される。
【0032】
燐光性層は燐光材料とホスト材料を含む、燐光材料は、燐光材料の濃度が高い場合に生じる燐光性クエンチを避けるためにホスト材料中に分散される。ホスト材料は不活性材料であり得るが恐らく電荷の輸送を行うことができる。燐光性材料が励起子生成層とカソードの間に位置するとき、ホスト材料は好ましくは良好な電子輸送体である。すなわち、ホスト材料のLUMOレベルは励起子生成層のLUMOレベルよりせいぜい0.1eV深い程度であり、より好ましくは励起子生成層のLUMOレベルより深くなく、最も好ましくは励起子生成層のLUMOレベルより深くない。適切な電子輸送ホスト材料は、例えば、Appl.Phys.Lett.,2000,77(6)p.904−906に開示されるような2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−フェナントロリン(BCP)、1,3−ビス(N,N−t−ブチル−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(OXD7),及び3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を含む。
【0033】
ホスト材料は、燐光性材料と混合されるか、又は化学的に結合ざれる。
【0034】
燐光性層においては、燐光は単一の発光体から、又は共に混合され若しくは別の層として存在する異なる発光体から生じる。1つの実施態様において、燐光性材料は、CIE座標x>0.3、y>0.3を有する黄色の発光に至る黄色燐光性材料を含む。
【0035】
他の実施態様においては、燐光性層は赤色燐光性材料及び緑色燐光性材料を含む、赤色燐光性材料はCIE座標x0.55〜0.7、y0.45〜0.30、好ましくは、x0.65、y0.33を有する赤色発光に至る。緑色燐光性材料はCIE座標x0.45〜0.25、y0.45〜0.60、好ましくは、x0.3、y0.6を有する赤色発光に至る。
【0036】
燐光性層は好ましくは燐光性有機材料を含み、特に、燐光性金属錯体を含む。適切な金属錯体は式(I)の錯体を含む。
ML (I)
Mは金属であり、L1、L2及びL3は配位基(配位子)であり、qは整数であり、r及びsはそれぞれ独立して0又は整数であり、(a.q)+(b.r)+(c.s)はMにおいて有効な配位位置の数に等しい。この式で、aはLの配位位置の数であり、bはLの配位位置の数であり、cはLの配位位置の数である。
【0037】
重元素Mは、迅速な相互系の横断及び3重項からの発光を可能にする強力なスピン起動結合を誘導する。好ましい重金属は、d−ブロック金属、特に2列及び3列、すなわち元素39〜48及び72〜80、特に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金を含む。
【0038】
d−ブロック金属は、ポリフィリンのような炭素又は窒素ドナーを有する金属錯体又は式(VI)の2座配位子を形成する。
【化3】

Ar及びArは、同じか異なり、選択的に置換されるアリール又はヘテロアリール基から独立して選択される。X及びYは同じか異なり、炭素又は窒素から独立して選択される。Ar及びArは、ともに縮合され得る。Xが炭素であり、Yが窒素である配位子は特に好ましい。
【0039】
2座配位子の例は下記に例示される。
【化4】

各Ar及びArは1又は2以上の置換基を有する。特に好ましい置換基は、WO02/45466号、WO02/44189号、US2002−117662号及びUS2002−182441号に開示される、錯体の発光を青色シフトするために使用されるフルオリン又はトリフルオロメチル、日本国特願2002−324679に開示されるアルキル又はアルコキシ基、WO02/81448に開示される発光材料に使用される発光材料として使用されるときに錯体に正孔輸送するのを促進するために使用されるカルバゾール、WO02/68435及びEP1245659に開示される、他の基を付着させるために配位子を機能化させる働きを有する臭素、塩素又はヨウ素、WO02/66552に開示される金属錯体の溶液プロセス性を得る又は高めるために使用されるデンドロンを含む。
【0040】
WO03/091355に開示されるように、燐光性金属錯体もポリマー又はオリゴマー鎖に存在することができ、その場合、金属錯体は、ポリマー又はオリゴマー鎖からの分岐又は末端基として、単一単位又は繰返し単位として存在することができる。
【0041】
d−ブロック元素と共に使用される適切な他の配位子は、ジケトネート、特にアセ散るアセトン(acac)、すなわち、置換され得るトリアリールフォスフィン及びピリジンを含む。
【0042】
燐光性層は、任意の適切な手法によって装置の製造の過程で蒸着される。例えば、燐光性材料は溶液プロセス又は真空蒸着によって蒸着され得る。
【0043】
好ましくは、燐光性の厚さは5〜200nmの範囲である。より好ましくは、燐光性層の厚さは10〜50nmの範囲である。
【0044】
励起子生成層から拡散され、燐光性層の燐光性材料によって受け取られ、発光される3重項励起子のためには、燐光性層の3重項エネルギーレベルTは励起子生成材料の励起のTレベルより0.1eV以上大きくないことが好ましい。より好ましくは、燐光性材料のTレベルは励起子生成材料のTレベルより大きくない。最も好ましくは、燐光性材料のTレベルは、励起子生成材料のTレベルより低い。
【0045】
第1の実施態様によれば、1重項励起子遮断層が励起子生成層と燐光性層の間に位置する。
【0046】
1重項励起子遮断層は1重項励起子の拡散を防止し、これによってこれらを励起子生成層に保持する。1重項遮断層はこれらをクエンチせずに3重項励起子の拡散を可能にする。
【0047】
第1の実施態様によれば、好ましくは、1重項励起子層は、S(1重項励起子のための最低エネルギーレベル)は、励起子生成層のSより0.1eV以上高いことが好ましい。また、好ましくは、1重項励起子層のT(3重項励起子の最低エネルギーレベル)は、励起子生成層のTより高くないことが好ましい。これは、図2に示されている。
【0048】
1重項層の適切な材料は当業者に知られている。1重項遮断層の好ましい材料はスチルベンである。
【0049】
1重項遮断層は、3重項励起子が貫通して拡散できるほど十分し薄くなければならない。好ましくは、1重項遮断層の厚さは10〜70nmの範囲である。より好ましくは、1重項遮断層の厚さは20〜50nmの範囲である。
【0050】
1重項遮断層は任意の適切な手法によって装置の製造過程で蒸着される。例えば、1重項遮断層は溶液プロセスによって蒸着される。
【0051】
第1の実施態様において、励起生成層は装置のアノード側に位置し、燐光性材料は装置のカソード側に位置する。
【0052】
励起子生成層は3重項励起子が貫通して拡散できるように十分薄くなければならない。第1の実施態様において、好ましくは励起子生成層の厚さは50nmまでである。
【0053】
第2の実施態様によれば、装置は、低い電子移動性を有する正孔輸送層、その上に形成される電子輸送層、低い正孔移動性を有する励起子生成層を含む。この構造は、再結合ゾーンがアノードに近く、1重項励起子はその短い半減期のため燐光性層まで拡散できないように十分な厚さの励起子生成層有することを確保するために使用される。第2の実施態様において、励起子生成層は3重項励起子がその長い寿命のために燐光性層まで拡散できるような厚さである。
【0054】
第2の実施態様において、好ましくは、励起子生成層の厚さは10〜50nmの範囲である。1重項遮断層が存在しない場合、励起子生成層は1重項励起子が拡散して外に出ないように十分厚く、しかし3重項励起子が拡散して外に出ない程度に薄い必要がある。
【0055】
第2の実施態様において、励起子の生成は、再結合ゾーンにおいて、又は発光層と正孔輸送層(HTL)(又はHTLが存在しない場合はアノード)の境界で生じる。これは上記の2つの層における正孔と電子の相対的な移動性のためである。正孔はアノードから注入され、電子はカソードから注入される。第2の実施態様において、励起子生成層は装置のアノード側に配置され、燐光性層は装置のカソード側に配置される。この場合、再結合ゾーンは励起子生成層にある。正孔と電子が結合して励起子を生成するためには、電子は燐光性層を通過して励起子生成層の再結合ゾーンに到達しなければならない。したがって、燐光性層は電子輸送できなければならない。
【0056】
第2の実施態様が好ましい。
【0057】
アノードは任意の適切な材料を含むことができる。インジウム錫酸化物(ITO)アノードが好ましい。導電性ポリマー層は好ましくはアノード上に供給される。ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルフォネート)は好ましい導電性ポリマーである。
【0058】
カソードは任意の適切な材料を含むことができる。カソードは、アルミニウムのようなより高い仕事関数のキャップ材料を選択的に有する、カルシウム又はバリウムのような3eV以下の仕事関数を有する金属を含むことができる。
【0059】
あるいは、カソードは金属フッ化物又は酸化物(例えば、LiF)及び金属層(例えば、Al)のような電子注入材料の薄膜を含むことができる。追加の層を蒸着するときに装置の既存層を無傷に保つことが多層装置の製造過程で注意されなければならないことは当業者に理解されるであろう。溶液プロセスによって、これは達成される。例えば、下層が溶解しない溶媒から追加の層を蒸着することである。あるいは、追加の層の蒸着前に下層を不溶性に変えることによって達成することができる。本発明の目的のためには、「溶液プロセス可能な材料/層」という用語は、(i)完成した装置における材料/層、これ自体が溶解性である(したがって、溶液プロセスを可能にする)、及び(ii)装置の製造過程において溶液蒸着後の完成した装置において不溶性に変えられた材料/層(典型的には、前駆体材料)の両者を意味する。
【0060】
好ましい溶液プロセス技術は発光装置のようなパターニングされない装置のためのスピンコートである。インクジェット印刷は、画素形成して高密度情報含有ディスプレイのために好ましい溶液プロセスである。
【0061】
本発明の他の側面は、上記に定義された発光装置を含む照明装置(例えば、フラット照明パネル)を供給する。このような照明装置は、液晶表示装置のバックライトとして使用できる。
【0062】
他の側面は、上記で定義された発光装置を製造する方法を提供する。この方法においては、好ましくは、励起子生成層及び/又は燐光性層は溶液プロセスによって蒸着される。存在する場合は、好ましくは、1重項励起子遮断層は溶液プロセス法によって蒸着される。また、存在する場合は、正孔輸送層は好ましくは溶液プロセスによって蒸着される。
【0063】
本発明を、添付の図面を参照することにより詳しく説明する。
【0064】
図1は、本発明の第1の実施態様の装置構造を示す。
【0065】
図2は、本発明の第1の実施態様の装置における励起子生成層と燐光性層におけるグランド状態(S)に対する1重項(S)及び3重項(T)励起子のエネルギーを示す。図示されるように、層♯1は1重項遮断層であり、層♯2は励起子生成層である。
【0066】
図3は、本発明の第2の実施態様の装置構造を示す。
【0067】
実施例
ガラス基板(Applied Films, Colorado,USAより入手可能)上に支持されたインジウム錫酸化物アノード上にPEDOT/PSS(H C Stack,Leverkusen,GermanyからBaytron P(登録商標)として入手可能)がスピンコートにより蒸着される。下記に示され、WO99/54385に開示される「F8−TFB」の10nm厚さ層はキシレン溶液からスピンコートによりPEDOT/PSS層にスピンコートにより蒸着され、WO2004/023573に開示されるように180℃で1時間加熱される。下記に図示され、WO2003/095586に開示される青色ポリマーP1は、25nmの厚さの励起生成層を形成するためにF8−TFB層上に蒸着され、その上に50nmの厚さの黄色発光の燐光性層を形成するために重量比で10:90のBtIr(acac):BCP混合物が蒸発により蒸着され、最後に、LiFの薄膜を含むカソード及びアルミニウムのキャップ層がBCP層上に蒸着された。
【0068】
装置は、装置を覆って金属封入層(Saes Getters SpAより入手可能)を置き、密封層を形成するために接着することによりカプセル化された。
【化5】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施態様の装置構造を示す。
【図2】本発明の第1の実施態様の装置の励起子生成層と燐光性層におけるSに対するS及びSのエネルギーを示す。
【図3】本発明の第2の実施態様の装置構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードの間に配置される発光領域を含む発光装置であって、前記発光領域は励起子生成層及び燐光性層を含み、前記励起子生成層は有機材料を含み、前記励起子生成層の有機材料は1重項及び3重項励起子を生成し、1重項励起子からの蛍光性発光によって発光し、前記燐光性層は前記励起子生成層から3重項励起子を受領し、前記3重項励起子からの燐光性発光によって発光する発光装置。
【請求項2】
前記装置は白色発光装置である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記白色発光は、青色光と黄色光が含まれる請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記励起子生成層の有機材料はポリマーを含む請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記励起子生成層は単一材料からなる請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記励起子生成層の有機材料は青色蛍光性材料からなる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記励起子生成層は溶液プロセス可能である請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記燐光性層は黄色燐光性材料を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記燐光性層は燐光性有機ポリマー又はオリゴマー、又は低重量分子金属錯体を含む請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記燐光性層は溶液プロセス可能である請求項1ないし9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記励起子生成層と前記燐光性層の間に1重項励起子遮断層が位置する請求項1ないし9のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記1重項励起子遮断層はスチルベンを含む請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記1重項励起子遮断層の厚さは10〜70nmの範囲である請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記1重項励起子遮断層は溶液プロセス可能である請求項11ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記励起子生成層は装置のアノード側に配置され、前記燐光性層は装置のカソード側に配置される請求項1ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記励起子性生成層の厚さは10ないし50nmの範囲である請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、前記アノードと前記発光領域の間に配置される正孔輸送層を含む請求項1ないし16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかで定義される装置を含む照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−516440(P2008−516440A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535241(P2007−535241)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003864
【国際公開番号】WO2006/038020
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】