説明

発光装置

【課題】発光装置の発光領域を正面から見た場合における色度変化を軽減しつつ、視野角の変化による色度の変化を軽減した発光装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光装置は、1以上の発光領域から光を出射する発光部と、前記発光部を覆って、前記1以上の発光領域から出射される光を透過する透過部と、を備え、前記透過部は、前記発光領域の発光面の法線方向から見て、前記1以上の発光領域に重なる第1領域と前記透過部において前記第1領域よりも外側に位置する第2領域とを備え、前記第2領域は、前記第1領域よりも色が濃い有色透明である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の発光装置として、例えば、有機EL(electroluminescence)を利用した発光装置がある。このような、発光装置では、出射した光について、発光装置の観察者の視野角の変化(観察者の目の位置の変化)により色度の変化が生じるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には、発光位置から反射層までの光学距離をL1とし、第2の電極側の素子端部の反射界面から反射層までの光学距離をL2とし、取り出したい出射光の波長域の中心波長をλとしたとき、L1を波長λの光が干渉により強めあう光学距離とし、L2を波長λの光が干渉により弱めあう光学距離とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−244713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、光の干渉を利用しているため、発光装置の発光領域を正面から見た場合における発光装置が出射する光の色度が本来の発光装置が出射する光の色度と異なってしまう場合がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、発光装置の発光領域を正面から見た場合における色度変化を軽減しつつ、かつ視野角の変化による色度の変化を軽減した発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る発光装置は、
1以上の発光領域から光を出射する発光部と、
前記発光部を覆って、前記1以上の発光領域から出射される光を透過する透過部と、を備え、
前記透過部は、前記発光領域の発光面の法線方向から見て、前記1以上の発光領域に重なる第1領域と前記透過部において前記第1領域よりも外側に位置する第2領域とを備え、
前記第2領域は、前記第1領域よりも色が濃い有色透明である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る発光装置によれば、発光時における色度の視野角による変化が軽減され、正面における色度が本来の色度と異なってしまうことが軽減又は防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成要素の位置関係を説明するための図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成要素の位置関係を説明するための図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成要素の位置関係を説明するための図。
【図4】図3におけるX−X線の概略断面図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る発光装置の色度補正板の透過率スペクトルを示す図。
【図6】本発明の第1実施形態に係る発光装置の色度補正板がある場合とない場合の光のスペクトルを示す図。
【図7】本発明の第1実施形態に係る発光装置の色度補正板がある場合とない場合の光の色度を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る発光装置の色度補正板と色の濃さとの関係を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る発光装置の色度補正板の透過率を示す図。
【図10】本発明の実施形態の変形例に係る発光装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。下記の実施形態及び図面の内容に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。なお、図面において、同一の構成要素が複数描かれている場合には、その一部にのみ符号を付している場合がある。
【0011】
また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略している。なお、以下での光とは可視光をいう。
【0012】
(実施形態1)
図1乃至4のように、発光装置100は、基板101と、第1電極102aと、引き出し線102bと、発光層103と、第2電極104aと、引き出し線104bと、封止部105と、絶縁膜109と、円偏光板111と、色度補正板(透過部)110と、を備える。図1は、基板101と、第1電極102aと、引き出し線102bと、発光層103と、第2電極104aと、引き出し線104bと、絶縁膜109についての位置関係を説明する図である。図2は、基板101と、第1電極102aと、引き出し線102bと、絶縁膜109と、についての位置関係を説明する図である。図3は、発光層103の、一部を露出させて描いた平面図である。図4は、図3における発光装置100の断面図である。なお、図において、絶縁膜109、円偏光板111等が覆う各要素は、適宜透かして描かれている。
【0013】
基板101は、ガラス基板等からなる透明基板である。
【0014】
第1電極102aは、基板101の表面上に所定形状(ここでは、帯状)に形成された透明電極である。第1電極102aは、所定形状の引き出し線102bと繋がっている。引き出し線102bは、導電線であり、第1電極102aと発光装置100の外部とを電気的に接続するためのものである。第1電極102aと引き出し線102bとは、それぞれ複数形成される。第1電極102aと引き出し線102bとは、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)によって形成される。例えば、基板101上に、スパッタによって電極層を形成、この電極層をフォトリソグラフィーによって所定形状にパターニングする。これによって、第1電極102aと引き出し線102bとは、基板101上に所定形状に形成される。第1電極102aは、ここでは、陽極になる。
【0015】
絶縁膜109は、第1電極102aと引き出し線102bとが形成された基板101上に形成される。絶縁膜109は、第1電極102aと第2電極104aとを絶縁するとともに、発光層103の形状を規定する。絶縁膜109は、引き出し線102bの一部、第1電極102aの一部等を覆うような形状で形成される。絶縁膜109は、外形が矩形で、引き出し線102bの一部が露出するように形成される。また、絶縁膜109は、開口109aを有し、この開口109aによって、第1電極102aが露出する。絶縁膜109は、例えば、ポリイミド系の電気絶縁性材料をスピン塗布等によって形成される。
【0016】
発光層103は、絶縁膜109の開口109a内に形成される。発光層103は、例えば、正孔輸送層、発光機能層、電子輸送層を備える積層体からなる。これらの層は、例えば、第1電極102a側から順に正孔輸送層、発光機能層、電子輸送層の順で積層される。正孔輸送層は、第1電極102aから発光層に注入される正孔について、第1電極102aと発光機能層とを橋渡しする。電子輸送層は、後述の第2電極104a(陰極)から発光機能層に注入される電子について、第2電極104aと発光機能層とを橋渡しする。発光機能層は、前記の正孔及び電子が注入されて実際に発光する層である。正孔輸送層、発光機能層、電子輸送層は、例えば、真空蒸着法によって形成される。また、正孔輸送層は、例えばα−NPDなどによって形成され、発光機能層は、例えばAlqなどによって形成され、電子輸送層は、例えばBCPなどによって形成される。発光層103は、例えば、白色に発光する。発光層103は、帯状に形成され、長尺方向が第1電極102aの長尺方向と直交している。発光層103は、複数形成されている。
【0017】
第2電極104aは、発光層103を覆うように所定形状で形成された電極であり、発光層103が出射する光を基板101側に反射する。第2電極104aは、一部が開口109a内に形成されるとともに、他の部分が絶縁膜109上に形成される。第2電極104aは、帯状に形成され、長尺方向が第1電極102aの長尺方向と直交している。第2電極104aは、所定形状の引き出し線104bと繋がっている。引き出し線104bは、導電線であり、第2電極104aと発光装置100の外部とを電気的に接続するためのものである。引き出し線104bは、一部が絶縁膜109上に形成されるとともに、他の部分が絶縁膜109が形成されていない基板101上に形成される。第2電極104aと引き出し線104bとは、それぞれ複数形成される。第2電極104aと引き出し線104bとは、例えば、アルミによって構成される。第2電極104aと引き出し線104bとは、真空蒸着法によって形成される。第2電極104aは、陰極になる。
【0018】
封止部105は、第2電極104a、絶縁膜109等を覆い、基板101上に形成された第2電極104a等の各要素を封止して保護する。封止部105は、絶縁膜109と同様の外形の形状(矩形)で形成され、引き出し線102b及び104bの一部が露出するように形成される。封止部105は、封止板105aと封止材105bとを備える。封止板105aは、ガラス基板等によって構成される封止用の基板である。封止材105bは、封止板105aと第2電極104a等の各要素が形成された基板101とを密着させる。封止材105bは、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系の接着剤である。
【0019】
円偏光板111は、入射する光の偏光方向を円偏光に変換する。円偏光板111は、基板101の裏面(前記発光層103等が形成された面とは反対側の面)上に貼り付けられることによって配置される。
【0020】
上記で説明した構成は、発光装置100の基本的な構成であり、これらの構成は、公知のものを採用できる。基板101の裏面の法線方向から見て(図4では下側から見て)、第1電極102aと第2電極104aとが交差する発光層103の領域が発光する領域になる。任意の第1電極102aと第2電極104aとに電圧を印加すると、発光層103における、この第1電極102aと第2電極104aとが交差する領域が発光する。発光によって発光層103から出射される光は、第1電極102a、基板101、円偏光板111等を透過し、色度補正板110に入射する。色度補正板110に入射した光は、色度補正板110を透過して外部に出射する(図4の矢印参照)。なお、発光層103から出射される光の一部は、第2電極104aで適宜反射して、基板101、円偏光板111等を透過し、色度補正板に入射する。基板101の裏面の法線方向から見て第1電極102aと第2電極104aとが交差する各領域が、発光・非発光を制御する最小単位である画素A(点線で囲んだ領域)になる。第1電極102aと第2電極104aとは、引き出し線102b及び104bとを介して発光装置100の外部の図示しないドライバに接続される。ドライバは所定のデータに基づいて、所定の第1電極102aと第2電極104aとに電圧を印加する。これによって、所望の位置の画素Aが発光する。なお、ここでは、第1電極102aと、発光層103と、第2電極104aと、によって、発光部が構成される。また、画素Aを、発光部の発光領域とする。また、基板101の裏面の法線方向は、発光部の発光領域の発光面(ここでは、第1電極102aの基板101側の面)の法線方向となる。
【0021】
色度補正板110は、発光層103が出射する光の色度を補正する。色度補正板110は、第1領域110aと、第2領域110bとを有する。基板101の裏面の法線方向から見て、複数の発光領域を覆う部分(発光領域と重なる部分)が第1領域110aになる。特に、ここでは、第1領域110aは、複数の発光領域が集合した領域に重なる部分である。また、基板101の裏面の法線方向から見て、第2領域110bは、第1領域110a(発光領域)に隣接するとともに、色度補正板110において、第1領域110aよりも外側に位置する。つまり、基板101の裏面の法線方向から見て、第2領域110bは発光領域の周囲に位置し、発光領域を覆っていない。第2領域110bは、第1領域110aを囲む。
【0022】
第1領域110aは、無色透明である。第2領域110bは、有色透明である。色度補正板110(第1領域110a及び第2領域110b)は、合成樹脂によって一枚の板状に一体的に形成される。第2領域110bは、例えば、合成樹脂に所定の顔料が混ぜられて形成される。第2領域110bは、この顔料等の着色材によって所定の色に着色されて有色透明となっている。無色透明とは、白色光が透過したときに色度が略変化しない状態(理想的には、全く変化しない状態)であり、例えば、着色材等によって着色されていない(又は略着色されていない)状態をいい、有色透明とは、着色材等によって着色された状態という。なお、以下で言及される、色の濃い薄い(以下、適宜色の濃度とも表現する。)は、例えば、着色材の含有量の多少等による着色の度合いで表すことができ、色が濃いとは、例えば、着色材等の量が多く着色の度合いが大きいことをいい、色が薄いとは、例えば、着色材等の量が少なく(無い場合も含む。)着色の度合いが小さいことをいう。また、色が変化するとは、着色材等の量が変化して着色の度合いが変化することをいう。
【0023】
円偏光板111から出射される光(従来の発光装置が出射する光、以下、出射光という。)の色度は、特に出射光が白色光等の複数の波長の光の集合である場合に、視野角θによって変化する。ここで、視野角θとは、発光領域の中心へのユーザ等の視線についての角度であり、基板101の裏面の法線方向(発光領域の中心の法線方向)に対して傾いた方向の角度である(図4参照)。視野角θは、発光装置の正面、つまり、基板101の裏面の法線方向に観察者の目がある場合には、0になる。出射光の色度が視野角θによって変化する理由は、第2電極104aにおける反射、第1電極102a及び基板101等の屈折率等を原因として、視野角θが変化すると光学的距離(屈折率×距離)が変化し、これによって光の干渉、散乱等の度合いが異なってしまうことにある。特に、視野角θが大きくなるにつれて、所定の波長域の光が特に弱くなっていく。これによって、出射光のスペクトルのバランス(各波長域の相対的な値)が変化してしまい、色度が異なることになる。
【0024】
そこで、本実施形態では、視野角θが0°より大きいような、斜めに出射される光は、色度補正板110の第2領域110bを通るように、色度補正板110を構成して配置する。具体的には、第1領域110aと第2領域110bとの厚さ、位置等を調整し、斜めに出射される光が色度補正板110の第2領域110bを通るように、色度補正板110を構成して配置する。第2領域110bは、有色透明であり、ある波長域の光の透過率は良く、ある波長域の光の透過率は低い。これによって、視野角θが大きい方向に進む光は、第2領域110bを透過し、この第2領域110bで、上記弱くなる波長域とは異なる他の波長域の光が透過されにくい。これによって、本来のスペクトル(視野角θが0°の場合のスペクトル)に比べてスペクトルのバランスが変化しにくくなり、色度の変化が低減される。また、第1領域110aは、第2領域110bよりも色が薄い(ここでは、無色透明)であるため、出射光の色度は第2領域110bよりも変化しない(特にここでは殆ど変化しない)。以上から本実施形態における発光装置100によれば、発光時における色度の視野角による変化が軽減され、正面における色度が本来の色度と異なってしまうことが軽減又は防止される。また、本実施形態における発光装置100によれば、発光装置100の基本的な構成を従来の発光装置と同様にできる。このため、例えば、第1電極102aを薄くする等して、光学的距離の変化を抑えるといった工夫も不要になる。第1電極102aが薄くなると、抵抗値が増加し、発光装置100を発光させる駆動電圧が大きくなってしまうといった不都合が生じる。
【0025】
以下、本実施形態の実施例を説明する。
【0026】
(実施例1)
本実施例に係る発光装置は、発光装置100と同様の断面構成を有する。そして、発光装置100は、製法、材料等についても上記で例示したものを採用した。また、ここでは、発光層103は白色に発光する。上記の画素A間のドットピッチ(画素Aの始まりから次の画素Aの始まりまでの長さ)は、縦横、それぞれ、0.16mmとした。また、画素Aのサイズは、0.145mm×0.145mmとした。また、画素Aは、64×128の数でマトリクス状に配置されている。このような発光パネル(発光装置100から色度補正板110を除いたもの)は、表示装置として約1インチの大きさとなる。
【0027】
発光パネルの発光領域(画素Aの集合の領域)の外側には、引き出し線102b,104b等が位置する。発光パネルの外形は、約30mm×約19mmであるが、発光領域は、約23mm×約12mmである。また、円偏光板111の厚さは、約300μmである。
【0028】
色度補正板110は、厚さ約2mmであり、外形は発光パネルと略同様である。第1領域110aは、発光領域に重なる。第2領域110bは、例えばフタロシアニン顔料を含有している。第1領域110aは、無色透明であり、波長が430nm〜800nmである光の透過率が98%の領域になっている。このため、第1領域110aは、各波長の光を略均一に透過する。発光パネルが出射する白色光が第1領域110aを透過したときの透過スペクトルを図5に示す(図5の0°)。発光パネルが出射する白色光の色度は、第1領域110aを通過する場合には、殆ど変化しない。
【0029】
第2領域110bは、発光パネルが出射する白色光のうち、高波長領域の光の透過率が低下するように、着色された領域である。視野角45°の位置で発光パネルが出射する白色光が第1領域110aと第2領域110bとを透過したときの透過スペクトルを図5に示す(図5の45°)。この第2領域110bは、低い波長の光についての透過率が高波長領域の透過率よりも高いので、青みがかった色を有する。
【0030】
発光パネルから斜め方向(θ>0)に出射する光は、第1領域110aを透過し、第2領域110bを透過するので、この光は、第2領域110bでスペクトルが変化する(特にここでは、高波長領域が低い値になる。)。これによって、発光パネルから斜め方向に出射し、第2領域110bを透過して出射する光は、色度が補正される。なお、上記のような発光装置100では、一般に、視野角が大きくなる程、波長が短い領域の光のスペクトルの値が小さくなる。このため、第2領域110bでは、低波長領域の透過率が高波長領域の透過率よりも高くなっていることによって、上記のようにスペクトルのバランスが変化しにくくなり、色度の変化が低減されることになる。
【0031】
図6に、発光パネルが出射した光(色度補正板がない場合の光)の放射強度(輝度)のスペクトルを、視野角が0°の位置、45°の位置で測定した測定結果と、発光装置100が出射した光(色度補正板110を通過した光)の放射強度(輝度)のスペクトルを、視野角が0°の位置、45°の位置で測定した測定結果とを示すものである。
【0032】
発光パネルが出射した光のスペクトルでは、視野角が0°の位置と、45°の位置とを比べると、45°の位置では、視野角が0°の位置に比べ、低波長領域(470nm付近の領域)の光の輝度が他の波長領域の光の輝度よりも大きく下がっている(図6参照)。このため、発光パネルでは、視野角の大きさの変化によって、低波長領域の輝度が下がり、光の色度が変化してしまっていることが分かる。
【0033】
発光装置100が出射した光のスペクトルでは、視野角が0°の位置と、45°の位置とを比べると、低波長領域と、高波長領域(580nm付近の領域)とで、輝度が45°の位置で低下しているが、スペクトルの形状(スペクトルのバランス)は、略同様である。これは、第2領域110bの透過率が高波長領域の光について低いため、第2領域110bが高波長領域の光を低波長領域の光よりも透過させないためである。このため、発光装置100が出射した光の色度は、視野角が0°の位置と、45°の位置とで略変わらないことになる。また、0°のときのスペクトルの形状(スペクトルのバランス)も、色度補正板110が有るときと無いときで略同様になっている。このため、色度補正板110があっても、視野角が小さいときは、発光装置100が出射した光の色度は色度補正板110が無いときに比べ略変化しないことになる。
【0034】
このことは、図7に示された表においても裏付けられている。図7の表は、発光パネルが出射した光の色度を、視野角が0°の位置、45°の位置で測定した測定結果と、発光装置100が出射した光の色度を、視野角が0°の位置、45°の位置で測定した測定結果とを示すものである。図7のように、発光パネルが出射した光の色度は、0°の位置と、45°の位置とで変化しているが、発光装置100が出射した光の色度は、視野角が0°の位置と、45°の位置とで略変わっていない。このため、色度補正板110が、色度を補正していることになる。さらに、視野角が0°において、色度補正板110があってもなくても、色度は略変化していない。
【0035】
以上から明らかなように、本実施形態における構成を有する発光装置100(第1領域110aは無色透明で、第2領域110bは有色透明である発光装置100)では、発光時における色度の視野角による変化が軽減され、正面における色度が本来の色度と異なってしまうことが軽減又は防止されることになる。なお、第1領域110aよりも第2領域110bの方が、色が濃い有色透明になっていればよく、第1領域110aが有色透明であってもよい場合もある。これによっても、発光時における色度の視野角による変化が軽減され、正面における色度が本来の色度と異なってしまうことが軽減される。
【0036】
なお、発光パネルから斜め方向に出射する光は、θの大きさによって、第2領域110bを通過する距離が異なる(色度補正板110の厚さ×1/cosθとなる。)。このため、この視野角θに応じた色度の補正が可能になる。
【0037】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1の色度補正板110が色度補正板210に変更される(図8参照)。色度補正板110の第2領域110bは、基板101の裏面の法線方向から見て、均一に着色されており、色の濃さは均一であった。色度補正板210は、基板101の裏面の法線方向から見て、第1領域210a(第1領域110aに対応する。詳細な説明は上記参照。)の中心から第2領域210b(第2領域110bに対応する。詳細な説明は上記参照。)の縁にかけて、徐々に色が濃くなるように(濃度が高くなるように)形成される。これによって、色度補正板210は、全体として有色透明であるが、外側に行くにつれて徐々に色が濃くなっている(図8参照)。図8は、色度補正板210と色の濃さとの関係を示す図である。このような色度補正板210は、合成樹脂に含有させる顔料の量を外側に行くにつれて徐々に増やしていくことによって得られる。なお、第1領域210aは、少なくとも一部が有色透明であればよく、例えば、中央の領域は無色透明であってもよい。これによって、視野角が0°の場合の色度の変化がより抑制できる。
【0038】
上記のように、発光パネルから出射される光のうちの所定の波長領域の光は、視野角が大きくなるにつれて、輝度が小さくなる。このため、この変化に応じて、色度補正板110の色の濃さを調整することによって、色度についてより適正な補正がなされる。例えば、色度補正板210は、図9に示すような透過特性を有するものとして形成するとよい。これによって、視野角が大きくなるにつれて高波長領域について透過率が下がっているため実施形態1と同様に、色度についてより適正な補正がなされる(但し、正面の輝度が実施形態1よりも落ちる場合がある。)。なお、図9は、発光装置100に色度補正板110の代わりに色度補正板210を採用した場合において、発光パネルが出射する光について、視野角θを徐々に変化させた位置での、波長が470nmの光の透過率と580nmの光の透過率とを測定した測定結果である。
【0039】
なお、実施形態2では、色が徐々に変化していくとしたが、第1領域210aの中心から所定距離以上の領域については、色が変化しなくてもよい。また、色は、所定の距離毎に色が所定量濃くなるというように、非連続的に変化してもよい。また、第1領域210aのみ、無色透明であってもよい。第2領域210bは第1領域210aから第1距離にある領域が第1距離よりも短い第2距離にある領域よりも色が濃ければ、上記効果がある程度得られる。また、色が変化するとは、基板101の法線方向から見て色が変化することをいう。色度補正板210は、着色された領域が異なる複数のフィルムを重ね合わせて形成されてもよい。
【0040】
実施形態2についての他の説明は、実施形態1の説明に準じるので説明を省略する。
【0041】
(変形例)
上記各実施形態については、様々な変更が可能である。例えば、発光領域は、1つであってもよい。これによっても、上記と同様の効果が得られる。この場合には、基板101の裏面の法線方向から見て、第1領域110aは、一の発光領域に重なる領域となり、第2領域110bは、第1領域110aよりも色度補正板110における外側に位置し、例えば、この第1領域110aの周囲を囲む。また、第1領域110aは、基板101の裏面の法線方向から見て、各画素Aの間(図3参照)と重なる位置において第2領域110bと同様の有色透明な領域を備えても良い。つまり、有色透明な領域が、基板101の裏面の法線方向から見て、格子状に形成されてもよい。これによって、より適切な色度補正が可能になる。
【0042】
また、色度補正板110又は210が基板101の代わりになってもよい(図10参照)。なお、図10では、色度補正板110を採用しているが、同様に色度補正板210であってもよい。この場合、例えば、色度補正板110又は210の表面(光の出射面の反対の面)に、発光部等が積層して形成される。これによって、発光装置は薄型になる。この場合、色度補正板110は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)等の合成樹脂板等によって構成される。また、色度補正板110は、合成樹脂板等に形成されたバリア層を備えても良い。バリア層は発光装置内への水の侵入を防ぐためのものである。また、バリア層は、例えば、SiO、SiN、SiON、SiOC等によって、膜厚200nm〜600nmで形成される。色度補正板110又は210は、発光部よりも、発光装置の光出射面側に有ればよい。発光パネルの構造は、上記に限らず、様々な構造を採用できる。
【0043】
また、上記では、発光装置は画素Aを有するディスプレイ等として説明したが、発光装置は、照明装置であってもよい。また、上記では、パッシブ型の有機EL発光装置について説明したが、発光装置は、アクティブ型の有機EL発光装置であってもよく、視野角によって出射する光のスペクトルが変化する他の発光装置(例えば、液晶装置)等であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
100 発光装置
102a 第1電極
102b 引き出し線
103 発光層
104a 第2電極
104b 引き出し線
105 封止部
109 絶縁膜
110 色度補正板(透過部)
110a 第1領域
110b 第2領域
111 円偏光板
210 色度補正板(透過部)
210a 第1領域
210b 第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の発光領域から光を出射する発光部と、
前記発光部を覆って、前記1以上の発光領域から出射される光を透過する透過部と、を備え、
前記透過部は、前記発光領域の発光面の法線方向から見て、前記1以上の発光領域に重なる第1領域と前記透過部において前記第1領域よりも外側に位置する第2領域とを備え、
前記第2領域は、前記第1領域よりも色が濃い有色透明である、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1領域は、無色透明である、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1領域は、少なくとも一部が有色透明である、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2領域は、前記第1領域から第1距離にある領域が前記第1距離よりも短い第2距離にある領域よりも色が濃い、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光部は、第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に挟まれ、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加した場合に発光する発光層と、を備え、
前記発光領域は、前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光部は、複数の前記発光領域を備え、
前記第1領域は、前記複数の発光領域が集合した領域に重なっている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1領域は、前記発光領域の発光面の法線方向から見て、前記複数の発光領域の間に重なる領域が有色透明である、
ことを特徴する請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1領域は、少なくとも一部が無色透明である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光部は、透明基板の一方の面側に形成され、
前記透過部は、透明基板の前記一方の面とは反対側の面側に形成された、
こと特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光部は、透明基板の一方の面側に形成され、
前記透過部は、前記透明基板である、
こと特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−150960(P2011−150960A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12868(P2010−12868)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】