説明

発光装置

【課題】発光層を塗布法によって形成するさいに不要な部位に塗布されたインキを除去する工程が不要な構造、および放熱機構を備える発光装置を提供する。
【解決手段】支持基板と、所定の配列方向に沿って前記支持基板上に設けられ、直列接続される複数の有機EL素子とを備える発光装置であって、発光層は、前記複数の有機EL素子に跨って、前記所定の配列方向に沿って延在し、前記一対の電極はそれぞれ、前記支持基板の厚み方向一方から見て、幅方向に、発光層から突出するように延在する延在部を有し、前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記配列方向に隣り合う有機EL素子の他方の電極にまで前記延在部から前記配列方向に延在し、該他方の電極に接続される接続部をさらに有し、1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに、前記延在部及び/又は接続部から延在する放熱部を備える、発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「エレクトロルミネッセンス」を「EL」と記載することがある。)は、電圧を印加することによって発光する発光素子の一種であり、一対の電極と、この一対の電極間に配置される発光層とを含んで構成される。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに陰極から電子が注入される。これら正孔と電子とが発光層において結合することにより発光が生じる。
【0003】
このような有機EL素子を直列に接続した発光装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
図7は複数(図7では3個)の有機EL素子1が直列接続された発光装置2を模式的に示す図である。図7(1)は発光装置2の平面図であり、図7(2)は発光装置2の断面図である。
【0005】
図7に示す発光装置2は3個の有機EL素子1を備える。これら3個の有機EL素子1は、所定の配列方向Xに沿って支持基板3上に配置され、直列接続されている。各有機EL素子1は一対の電極4,5と、この電極間に設けられる発光層6を備える。以下では一対の電極4,5のうちの支持基板3寄りに配置される一方の電極を第1電極4と記載し、第1電極4よりも支持基板3から離間して配置される他方の電極を第2電極5と記載する。なお製造工程の簡易さや素子特性などを勘案して、第1および第2電極4,5間には発光層6のみならず、発光層とは異なる所定の層が設けられることもある。
【0006】
図7に示すように各有機EL素子1の第1電極4は、互いに配列方向Xに所定の間隔をあけて離散的に配置されるため、互いに電気的に接続されていない。同様に各有機EL素子1の第2電極5は、互いに配列方向Xに所定の間隔をあけて配置されるため、相互に電気的に接続されていない。
【0007】
他方、配列方向Xに隣り合う有機EL素子1の第1電極4と、第2電極5とは互いに接して接続されており、電気的に接続されている。これによって複数の有機EL素子1は直列接続を構成する。具体的には第1電極4は、配列方向Xの一方(以下、「配列方向Xの一方」を「左方」といい、「配列方向Xの他方」を右方ということがある。)の端部(以下、左端部ということがある。)が、左方に隣り合う有機EL素子1の第2電極5の右方の端部(以下、右端部ということがある。)に重なる位置まで延在するように形成され、左方に隣り合う有機EL素子1の第1電極4と接して接続されており、電気的に接続されている。このように配列方向Xに隣り合う有機EL素子1の第1電極4と第2電極5とが電気的に接続されることにより、複数の有機EL素子1が直列接続を構成する。
【0008】
つぎに図8を参照して照明装置の製造方法を説明する。
まず支持基板3上に第1電極4を形成する。具体的には支持基板3上に、配列方向Xに所定の間隔をあけて離散的に3つの第1電極4を形成する(図8(1)参照)
【0009】
つぎに発光層6となる材料を含むインキを、所定の塗布法によって支持基板3上に塗布する。一般に塗布法は意図する部位にのみ選択的にインキをパターン塗布することがむずかしいため、第1電極4間などの不要な部位にもインキが塗布される(図8(2)参照)。そのためインキを塗布した後に、不要な部位に塗布されたインキを除去する工程が必要となる(図8(3)参照)。インキの除去は、たとえばインキが可溶な溶剤を含ませた布や綿棒などを使ってインキを拭き取る方法や、レーザーアブレーション法などによっておこなうことができる。その後、第2電極5をパターン形成する(図8(4)参照)。これによって、直列接続された3個の有機EL素子1を備える発光装置2を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−257855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来の技術では、不要な部位に塗布されたインキを除去する工程が必要となるため、工程数が増加するという問題がある。さらに不要な部位に塗布されたインキを除去するさいに、発光層に異物が混入するおそれもある。
【0012】
また直列接続を構成する有機EL素子の個数の増加にともなって、発光装置を駆動するさいに発生する熱量も増加し、この熱によって有機EL素子の劣化が加速される。そのため、発生する熱を効率的に放熱する機構を備える発光装置が求められている。
【0013】
したがって本発明の目的は、発光層を塗布法によって形成するさいに不要な部位に塗布されたインキを除去する工程が不要な構造、および放熱機構を備える発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、支持基板と、所定の配列方向に沿って前記支持基板上に設けられ、直列接続される複数の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える発光装置であって、
各有機エレクトロルミネッセンス素子はそれぞれ、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、
前記発光層は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子に跨って、前記所定の配列方向に沿って延在しており、
前記一対の電極はそれぞれ、前記支持基板の厚み方向一方から見て、前記支持基板の厚み方向および前記配列方向のいずれにも垂直な幅方向に、発光層から突出するように延在する延在部を有し、
前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記配列方向に隣り合う有機エレクトロルミネッセンス素子の他方の電極にまで前記延在部から前記配列方向に延在し、該他方の電極に接続される接続部をさらに有し、
前記一対の電極のうちのいずれか1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに、前記延在部及び/又は接続部から延在する放熱部を備える、発光装置に関する。
【0015】
また本発明は、前記延在部は、前記厚み方向一方から見て、前記幅方向の一方に発光層から突出するように延在する第1延在部と、前記幅方向の他方に発光層から突出するように延在する第2延在部とを含む発光装置に関する。
【0016】
また本発明は、前記放熱部を備える1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極よりも、熱伝導率に膜厚を積算した値が大きい、発光装置に関する。
【0017】
また本発明は、前記電極に接して設けられる補助電極をさらに有し、
該補助電極は、当該補助電極に接する電極よりも熱伝導率が高い発光装置に関する。
【0018】
また本発明は、前記放熱部は熱伝導率が30W/(m・K)以上である、発光装置に関する。
【0019】
また本発明は、前記放熱部は膜厚が100nm以上である、発光装置に関する。
【0020】
また本発明は、支持基板と、所定の配列方向に沿って前記支持基板上に設けられ、直列接続される複数の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える発光装置であり、各有機エレクトロルミネッセンス素子はそれぞれ、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、前記発光層は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子に跨って、前記所定の配列方向に沿って延在しており、前記一対の電極はそれぞれ、前記支持基板の厚み方向一方から見て、前記支持基板の厚み方向および前記配列方向のいずれにも垂直な幅方向に、発光層から突出するように延在する延在部を有し、前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記配列方向に隣り合う有機エレクトロルミネッセンス素子の他方の電極にまで前記延在部から前記配列方向に延在し、該他方の電極に接続される接続部をさらに有し、前記一対の電極のうちのいずれか1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに、前記延在部及び/又は接続部から延在する放熱部を備える、発光装置の製造方法であって、
前記発光層となる材料を含むインキを、前記複数の有機EL素子に跨って前記所定の配列方向に沿って連続的に塗布し、塗布した塗膜を固化することにより発光層を形成する工程を含む発光装置の製造方法に関する。
【0021】
また本発明は、前記インキを塗布する方法が、キャップコート法、スリットコート法、スプレーコート法または印刷法である発光装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発光層を塗布法によって形成するさいに不要な部位に塗布されたインキを除去する工程が不要な構造、および放熱機構を備える発光装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の発光装置11を示す平面図である。
【図2】発光装置11の製造工程を説明するための図である。
【図3】発光装置11の製造工程を説明するための図である。
【図4】第2実施形態の発光装置31を模式的に示す図である。
【図5】第3実施形態の発光装置41を模式的に示す図である。
【図6】第4実施形態の発光装置61を示す図である。
【図7】複数の有機EL素子1が直列接続された発光装置2を模式的に示す図である。
【図8】発光装置2の製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1)発光装置の構成
以下ではまず図面を参照して発光装置の構成について説明する。本実施形態の発光装置はたとえば照明装置、液晶表示装置およびスキャナなどの光源に用いられる。図1は本発明の第1実施形態の発光装置11を模式的に示す平面図である。発光装置11は、支持基板12と、この支持基板12上に設けられ、直列接続される複数の有機EL素子13とを備える。
【0025】
所定の配列方向Xは支持基板12の厚み方向Zに垂直な方向に設定される。すなわち配列方向Xは支持基板12の主面に平行に設定される。本実施形態では図1に示すように複数の有機EL素子13は所定の直線に沿って配列しているが、所定の曲線に沿って配列されていてもよい。なお所定の曲線に沿って複数の有機EL素子13が配列されている場合、配列方向Xは前記所定の曲線の接線方向に相当する。
【0026】
支持基板12上に設けられる有機EL素子13の個数は設計に応じて適宜設定される。以下では3個の有機EL素子13が設けられた形態の発光装置11について説明する。
【0027】
各有機EL素子13はそれぞれ一対の電極14,15と、この電極14,15間に設けられる発光層16とを備える。一対の電極14,15のうちのいずれか一方の電極が有機EL素子13の陽極として機能し、いずれか他方の電極が有機EL素子13の陰極として機能する。以下では一対の電極14,15のうちで支持基板12寄りに配置される電極を第1電極14と記載し、支持基板12から離間して配置される他方の電極を第2電極15と記載する。
【0028】
第1および第2電極14,15間には少なくとも1層の発光層16が設けられる。なお第1および第2電極14,15間には、1層の発光層16に限らず、複数の発光層や発光層とは異なる層が必要に応じて設けられることがある。
【0029】
発光層16は複数の有機EL素子13に跨って配列方向Xに沿って延在している。本実施形態では直列接続される複数の有機EL素子13において、配列方向Xの一端(図1では左端)に設けられる有機EL素子13の発光層16から、配列方向Xの他端(図1では右端)に設けられる有機EL素子13の発光層16まで、配列方向Xに沿って延在する発光層が連続して一体的に形成されている。なお第1および第2電極14,15間には、必要に応じて発光層とは異なる所定の層が設けられることがあるが、このような形態では、所定の層は複数の有機EL素子13に跨って配列方向Xに沿って延在していてもよく、また有機EL素子13ごとに離間するように形成されていてもよい。なお発光層16とは異なる所定の層が塗布法によって形成される場合には、この発光層16とは異なる所定の層は、発光層16と同様に、複数の有機EL素子13に跨って配列方向Xに沿って延在していることが好ましい。後述するように、不要な部位に形成された層を除去する工程を省略できるためである。
【0030】
第1および第2電極14,15(一対の電極)はそれぞれ延在部17,18を有する。この延在部17,18は、支持基板12の厚み方向Z一方から見て(以下、「平面視で」ということがある。)、前記支持基板の厚み方向Zおよび前記配列方向Xに垂直な幅方向Yに、発光層16から突出するように延在する。第1電極14の延在部17は第1電極14と一体的に形成されている。また第2電極15の延在部18は第2電極15と一体的に形成されている。各有機EL素子13を構成する第1電極14と第2電極15(一対の電極)とは、有機EL素子13ごとには互いに接触するようには構成されておらず、平面視で第1電極14の延在部17と第2電極15の延在部18とは重ならないように配置されている。本実施形態では第1電極14の延在部17は、第1電極14において、第2電極15と対向する部分の左方の端部(以下、左端部ということがある)から幅方向Yに延在する。第2電極15の延在部18は、第2電極15において、第1電極14との対向部の右方の端部(以下、右端部ということがある)から幅方向Yに延在している。そのため第1電極14の延在部17と第2電極15の延在部18とは平面視で重ならず、電気的に絶縁されている。
【0031】
第1および第2電極14,15(一対の電極)の一方の電極は接続部を有する。この接続部は、配列方向Xに隣り合う有機EL素子の他方の電極にまで延在部から配列方向Xに延在し、該他方の電極に接続される。なお接続部は、第1および第2電極14,15(一対の電極のうち)の一方の電極のみに限らず、第1および第2電極14,15(一対の電極のうち)の他方の電極も有していてもよい。すなわち第1および第2電極14,15(一対の電極のうち)の他方の電極も、配列方向Xに隣り合う有機EL素子の一方の電極にまで延在部から配列方向Xに延在し、該一方の電極に接続される接続部を有していてもよい。
【0032】
本実施形態では第1および第2電極14,15(一対の電極)の一方の電極に相当する第2電極15が接続部19を有する。すなわち第2電極15は、右方に配置される有機EL素子の第1電極14(他方の電極)の延在部17にまで、第2電極15の延在部18から右方に延在する接続部19を備える。このように第2電極15の接続部19は、右方に配置される有機EL素子の第1電極14(他方の電極)の延在部17と平面視で重なり、この重なる部分で直接的に第1電極14(他方の電極)と接続される。
【0033】
平面視で発光層16から幅方向Yに延在する延在部18は、幅方向Yの一方または他方に設けられるが、幅方向Yの両方に設けられることが好ましい。すなわち延在部17,18は、平面視で、前記幅方向の一方に発光層から突出するように延在する第1延在部17a,18aと、幅方向Yの他方に発光層16から突出するように延在する第2延在部17b,18bとを含むことが好ましい。平面視で発光層16から幅方向Yの両方に延在する延在部17,18を備えることにより、隣り合う有機EL素子13の第1電極14と第2電極15とが幅方向Yの両方の端部で接続されることになる。
【0034】
一対の電極のうちのいずれか1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに延在する放熱部が、前記延在部及び/又は接続部から延在している。
【0035】
図1に示す本実施形態では一対の電極のうちのいずれか1つの電極として、第2電極15が放熱部を有する。なお他の実施形態では第1電極14が放熱部を有していてもよい。
【0036】
放熱部20は、幅方向Yの一方または他方に設けられるが、幅方向Yの両方に設けられることが好ましい。すなわち放熱部20は、平面視で、発光層16から前記幅方向の一方に延在する第1放熱部20aと、発光層16から幅方向Yの他方に延在する第2放熱部20bとを含むことが好ましい。このように平面視で発光層16から幅方向Yの両方に延在する放熱部20を備えることにより、放熱効果をより向上することができる。このような放熱部として図1に示す本実施形態では、第1放熱部20aは、第1延在部18aおよび接続部19から幅方向Yの一方に延在し、第2放熱部20bは、第2延在部18bおよび接続部19から幅方向Yの他方に延在している。
【0037】
第1放熱部20aは、第1電極14の幅方向Yの一方の端部よりも、幅方向Yの一方に延在し、第2放熱部20bは、第1電極14の幅方向Yの他方の端部よりも、幅方向Yの他方に延在する。すなわち放熱部を有する電極(本実施形態では第2電極)は、放熱部を有さない電極(本実施形態では第1電極)よりも、放熱部の構成分だけ、幅方向Yの一方及び/又は他方に突出するように延在している。
【0038】
以上ように放熱部20を設けることにより発光装置の放熱効果を高めることができる。
【0039】
なお放熱部20を設けるためのスペースを確保するために、発光装置が大型化することもありうるが、たとえば発光装置の設計上、不可避的に設けられる空いたスペースに放熱部20を設けることによって、発光装置の大型化を抑制することができる。通常、有機EL素子は支持基板上の全面に設けられるわけではなく、配線などの設計によっては放熱部20を設けることが可能なスペースが存在することもある。このようなスペースに放熱部20を設けることによって装置の大型化を抑制することができる。
【0040】
放熱部20は熱伝導性の高い部材によって構成することが好ましい。本実施形態では放熱部20は一体的に形成される電極(本実施形態では第2電極15)と同じ材料によって構成されるため、その熱伝導性は一体的に形成される電極(本実施形態では第2電極15)と同じである。そのため電極を熱伝導性の高い部材によって構成することが好ましい。そこで、放熱部を備える1つの電極(本実施形態では第2電極15)は、当該1つの電極と対となる電極(本実施形態では第1電極14)よりも、熱伝導率に膜厚を積算した値が大きいことが好ましい。
【0041】
前記放熱部は熱伝導率が30W/(m・K)以上であることが好ましい。なおこの放熱部を備える電極も同様にその熱伝導率が30W/(m・K)以上であることが好ましい。このように放熱部を備える電極を熱伝導率の高い部材によって構成することで、発光装置の放熱特性を向上することができる。熱伝導率が30W/(m・K)以上の放熱部を含む電極は、たとえばアルミニウム、銅、銀、金、鉄、ケイ素、および炭素などを含む薄膜によって構成することができる。
【0042】
また放熱部の膜厚は100nm以上であることが好ましい。なおこの放熱部を備える電極も同様にその膜厚が100nm以上であることが好ましい。このように放熱部を備える電極の膜厚を厚くすることによってその熱伝導性を高めることができ、放熱部に熱を効率的に拡散することができる。なお放熱特性の観点からは放熱部を備える電極の膜厚に上限がとくに設定されるわけではないが、放熱部を備える電極を形成するさいに要する時間などを考慮すると、膜厚の上限は200μm程度である。
【0043】
図1に示すように本実施形態では第2電極15が放熱部を備えるが、前述したように第1電極14が放熱部を備えていてもよい。このように一対の電極のうちのいずれの電極が放熱部を備えるかはとくに限定されないが、放熱部を備える電極は、有機EL素子の型に応じて選択されることが好ましい。
【0044】
有機EL素子には、(1)ボトムエミッション型の構成のものと、(2)トップエミッション型の構成のものとがある。ボトムエミッション型の有機EL素子は支持基板を通して光を外界に出射し、トップエミッション型の有機EL素子は、支持基板とは反対側から光を外界に出射する。ボトムエミッション型の有機EL素子では、第1電極14を通して光が出射するため、第1電極14が光透過性を示す電極によって構成る一方で、第2電極は通常光を反射する電極によって構成される。またトップエミッション型の有機EL素子では第2電極を通して光が出射するため、第2電極15が光透過性を示す電極によって構成される一方で、第1電極14は通常光を反射する電極によって構成される。
【0045】
一般に、熱伝導率に膜厚を積算した値は、光透過性を示す電極よりも、不透光性を示す電極の方が高いため、不透光性を示す電極が放熱部を備えることが好ましい。したがってボトムエミッション型の有機EL素子では、通常は第2電極が不透光性を示す電極によって構成されるため、この第2電極が放熱部を備えることが好ましい。他方、トップエミッション型の有機EL素子では、通常は第1電極が不透光性を示す電極によって構成されるため、この第1電極が放熱部を備えることが好ましい。
【0046】
直列接続を構成する複数の有機EL素子13のうちで最も左方に配置される有機EL素子13の第1電極14と、最も右方に配置される有機EL素子13の第2電極とは、所定の配線を介して電力供給部(不図示)に電気的に接続される。これによって電力供給部から、直列接続を構成する複数の有機EL素子13に電力が供給され、各有機EL素子が発光する。
【0047】
各有機EL素子13は接続部から給電される。本実施形態では平面視で発光層16から幅方向Yの両方に延在する延在部17,18を備えることにより、各有機EL素子13は幅方向Yの両方の端部から給電される。有機EL素子13は、給電される部位から離間するほど電圧降下によって輝度が低下する。本実施形態では延在部17,18から幅方向Yに離間するほど、すなわち幅方向Yの中央部ほど電圧降下によって輝度が低下するが、各有機EL素子13は幅方向Yの両方の端部から給電されるため、幅方向Yの一方の端部から給電される素子構成に比べると電圧降下の影響を抑制することができ、ひいては輝度ムラを抑制することができる。
【0048】
2)発光装置の製造方法
本発明の発光装置の製造方法は、支持基板と、所定の配列方向に沿って前記支持基板上に設けられ、直列接続される複数の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える発光装置であり、各有機エレクトロルミネッセンス素子はそれぞれ、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、前記発光層は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子に跨って、前記所定の配列方向に沿って延在しており、前記一対の電極はそれぞれ、前記支持基板の厚み方向一方から見て、前記支持基板の厚み方向および前記配列方向のいずれにも垂直な幅方向に、発光層から突出するように延在する延在部を有し、前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記配列方向に隣り合う有機エレクトロルミネッセンス素子の他方の電極にまで前記延在部から前記配列方向に延在し、該他方の電極に接続される接続部をさらに有し、前記一対の電極のうちのいずれか1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに延在する放熱部が、前記延在部及び/又は接続部から延在している、発光装置の製造方法であって、前記発光層となる材料を含むインキを、前記複数の有機EL素子に跨って前記所定の配列方向に沿って連続的に塗布し、塗布した塗膜を固化することにより発光層を形成する工程を含む。
【0049】
以下、図2および図3を参照して発光装置の製造方法について説明する。まず支持基板12を用意する。第1電極14が光透過性を示す電極からなる場合、支持基板12には光透過性を示す基板を用いる。なお第2電極15が光透過性を示す電極からなる場合は、支持基板12には、光透過性を示す基板、または不透光性を示す基板のいずれかを用いることができる。本工程では有機EL素子13を駆動する駆動回路(不図示)があらかじめ形成されている支持基板12を用意してもよい。
【0050】
つぎに支持基板12上に第1電極14をパターン形成する(図2参照)。ボトムエミッション型素子の場合、第1電極は光透過性の電極材料を用いる。
【0051】
たとえばスパッタリング法または蒸着法によって、導電体膜を支持基板12上に成膜し、つぎにフォトリソグラフィによって導電体膜を所定の形状にパターニングすることによって、第1電極14をパターン形成する。なおフォトリソグラフィ工程をおこなうことなく、マスク蒸着法などによって所定の部位にのみ第1電極14をパターン形成してもよい。また導電性材料を含むインキを所定の塗布法によって塗布成膜し、この塗膜を固化することにより第1電極14を形成してもよい。また、ラミネート法によって導電性薄膜を転写することにより第2電極14を形成してもよい。また第1電極14があらかじめ形成された支持基板12を用意してもよい。
【0052】
つぎに支持基板12上に発光層16を形成する(図3参照)。たとえば発光層16となる材料を含むインキを、複数の有機EL素子13に跨って配列方向Xに沿って連続的に塗布し、塗布した塗膜を固化することにより発光層16を形成することができる。
【0053】
インキを塗布する方法としては、キャップコート法、スリットコート法、スプレーコート法、印刷法、インクジェット法、ノズルプリンティング法などをあげることができ、これらのなかでも大面積を効率的に塗布することが可能なキャップコート法、スリットコート法、スプレーコート法および印刷法が好ましい。
【0054】
つぎに支持基板12上に第2電極15を形成する。第2電極15を形成する工程では、接続部19および放熱部20も同一の工程で形成することが好ましい。第2電極15の成膜方法としては蒸着法があげられ、メタルマスクなどを用いてパターンを形成することができる。また導電性材料を含むインキを所定の塗布法によって塗布成膜し、この塗膜を固化することにより第2電極14を形成してもよい。また、ラミネート法によって導電性薄膜を転写することにより第2電極14を形成してもよい。
【0055】
以上説明した発光装置11は、平面視で発光層16が形成される領域から幅方向Yに突出した領域において、隣り合う有機EL素子13の第1電極14と第2電極15とが接続されることにより隣り合う有機EL素子13が直列接続されるので、隣り合う有機EL素子13の第1電極14と第2電極15とを有機EL素子13間の領域において接続する必要がない。そのため隣り合う有機EL素子13間の領域に発光層などが形成されていてもよく、これによって塗布法で発光層を形成するさいに、隣り合う有機EL素子13間の領域に形成される発光層を除去する工程を省略することができる。したがって微細なパターン塗布が比較的不得手なキャップコート法などの塗布法であっても、直列接続される複数の有機EL素子13を簡便に作製することができる。
【0056】
また放熱部20を設けることにより、有機EL素子の発光部で発生する熱を拡散させることができ、輝度低下が抑制された放熱特性の高い発光装置を実現することができる。
【0057】
図4は本発明の第2実施形態の発光装置31を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置31は前述の第1実施形態の発光装置11とは第2電極15の形状のみが異なるので、第2電極15についてのみ説明し、第1実施形態と対応する部分については同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0058】
本実施形態では右端に配置される有機EL素子13の第2電極15は、放熱部として、発光層16から右方に突出するように延在する部位33をさらに備える。この部位33は、第2電極15の幅方向Yの中央部から右方に延在するとともに、第2電極15の幅方向Yの一方の端部および他方の端部からも右方に延在していることが好ましい。
【0059】
また左端に配置される有機EL素子13の第2電極15は、放熱部が、左方にも延在する部位32をさらに備える。この部位32は、第1電極14の幅方向Yの端部を幅方向Yに延長した領域であって、かつ当該端部とは所定の間隙をあけて設けられる。
【0060】
このように、放熱部を配置することが可能な領域に放熱部を拡大して設けることにより、より放熱特性の高い発光装置を実現することができる。
【0061】
なお他の実施の形態として第1電極が放熱部を備える形態では、左端に配置される有機EL素子の第1電極は、放熱部として、発光層から左方に突出するように延在する部位をさらに備える。この部位は、第1電極の幅方向Yの中央部から左方に延在するとともに、第1電極の幅方向Yの一方および他方からも左方に延在していることが好ましい。また右端に配置される有機EL素子の第1電極は、放熱部が右方にも延在する部位をさらに備える。この部位は、第2電極の幅方向Yの端部を幅方向Yに延長した領域であって、かつ当該端部とは所定の間隙をあけて設けられる。
【0062】
図5は本発明の第3実施形態の発光装置41を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置41は、第1電極に接して設けられる補助電極をさらに有する。本実施形態の発光装置41は前述の各実施形態の発光装置とは補助電極の有無のみが異なるので、補助電極についてのみ説明し、前述した各実施形態と対応する部分については同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。図5では補助電極を示す領域にハッチングを施している。
【0063】
補助電極は第1電極14および第2電極15(一対の電極)のうちの少なくとも一方の電極に接して設けられる。たとえば第1電極14と第2電極15とに補助電極が接して設けられる場合には、第1電極14に接して設けられる補助電極と、第2電極に接して設けられる補助電極との2つの補助電極が設けられる。
【0064】
補助電極は、当該補助電極に接する電極よりも熱伝導率が高い部材によって構成されることが好ましい。
【0065】
補助電極42が、第1電極14および第2電極15(一対の電極)のうちのいずれかの電極にのみ接して設けられる場合、第1電極14および第2電極15(一対の電極)のうちで、熱伝導率に膜厚を積算した値の小さい電極に接して補助電極42を設けることが好ましい。
【0066】
一般に、熱伝導率に膜厚を積算した値は、不透光性を示す電極よりも、光透過性を示す電極の方が小さいため、光透過性を示す電極に接して補助電極42を設けることが好ましい。したがってボトムエミッション型の有機EL素子では、第1電極が光透過性を示す電極によって構成されるため、この第1電極に接して補助電極を設けることが好ましい(図5参照)。他方、トップエミッション型の有機EL素子では、第2電極が光透過性を示す電極によって構成されるため、この第2電極に接して補助電極を設けることが好ましい。
【0067】
補助電極42は当該補助電極42が接する電極よりも熱伝導率が高いため、通常は不透明である。光透過性を示す電極に不透明な補助電極42を接して設ける場合、この補助電極42が光を遮ることがある。そのため補助電極42は平面視で、発光層16が原理的に発光しない領域に設けられることが好ましい。
【0068】
発光層16は、平面視で第1電極14と第2電極15とが対向する領域(以下、対向領域ということがある。)で原理的に発光可能である。そのため原理的に発光しない領域とは、平面視で第1電極14と第2電極15との対向領域を除く領域に相当する。したがって補助電極42は平面視で第1電極14と第2電極15との対向領域を除く領域に設けられることが好ましい。
【0069】
補助電極の材料としては、熱伝導率の高い材料が好適に用いられ、Al、Ag、Cu、Au、Wなどをあげることができる。また補助電極にはAl−Nd、Ag−Pd−Cuなどの合金を用いてもよい。補助電極の厚みは求められる熱拡散の効率などによって適宜設定され、例えば50nm〜200μmである。補助電極は単層によって構成されていてもよく、また複数の層が積層された積層体であってもよい。例えば支持基板12(ガラス基板等)や第1電極14(ITO薄膜等)との密着性の向上させること、および金属表面を酸素や水分から保護することなどを目的として、所定の機能を発揮する層を、熱伝導率の高い材料からなる薄膜に積層してもよい。例えばMo、Mo−NbおよびCrなどから成る薄膜で、熱伝導率の高い材料からなる薄膜を挟持した構成の積層体を補助電極として用いることができる。
【0070】
なお前述した各実施形態では複数の有機EL素子によって1つの直列接続が構成された発光装置を示しているが、複数の有機EL素子によって複数の直列接続が構成された発光装置であっても本発明を好適に適用することができる。また直列接続と並列接続とを併用して構成された発光装置であっても本発明を好適に適用することができる。
【0071】
図6は本発明の第4実施形態の発光装置61を示す図である。本実施形態の発光装置61は、2列の直列接続を並列接続した構成の発光装置である。各直列接続は、3個の有機EL素子が直列接続されて構成される。2列の直列接続は、一端同士および他端同士が電気的に接続され、並列接続される。
【0072】
発光装置61のように、支持基板のサイズや有機EL素子の配置によっては、放熱部が設置可能な場所にのみ、放熱部を設置してもよい。
【0073】
複数の有機EL素子によって1つの直列接続が構成された発光装置では、有機EL素子の数が増加するほど、素子を駆動する駆動源の電圧が高くなるが、並列接続を併用することによって、駆動源に要求される供給電圧を適度に抑制することができる。
【0074】
以下では支持基板12および有機EL素子13の構成についてさらに詳細に説明する。
【0075】
前述したように第1および第2電極14,15間には発光層16のみならず、発光層16とは異なる所定の層がさらに設けられることがある。陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子輸送層、電子注入層および正孔ブロック層などをあげることができる。
【0076】
正孔ブロック層は正孔の輸送を堰き止める機能を有する。なお電子注入層及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0077】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。
【0078】
正孔注入層は陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する。正孔輸送層は陽極側の表面に接する層からの正孔注入を改善する機能を有する。電子ブロック層は電子の輸送を堰き止める機能を有する。なお正孔注入層及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
【0079】
なお電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層ということがあり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層ということがある。
【0080】
本実施形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
以下同じ。)
【0081】
本実施形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のj)に示す層構成をあげることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
j)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
【0082】
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。
電荷発生層としては、たとえば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜をあげることができる。
【0083】
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のk)に示す層構成をあげることができる。
k)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
【0084】
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0085】
なお電荷発生層を設けずに、複数の発光層を直接積層させた有機EL素子を構成してもよい。
【0086】
<支持基板>
支持基板は有機EL素子を製造する工程において化学的に変化しないものが好適に用いられ、たとえばガラス、プラスチック、高分子フィルム、およびシリコン板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。なお有機EL素子を駆動する駆動回路が予め形成されている駆動用基板を支持基板として用いてもよい。支持基板を通して光が出射する構成のボトムエミッション型の有機EL素子を支持基板に搭載する場合、支持基板には光透過性を示す基板が用いられる。
【0087】
<陽極および陰極>
陽極および陰極の少なくとも1つの電極は透光性電極から構成される。光透過性を示す電極としては、ITO、ZTOなどの金属酸化物や、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの透明導電性樹脂を用いてもよい。このような光透過性を示す電極は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、あるいはインキを用いた印刷法、インクジェット法などにより形成することができる。
【0088】
陽極および陰極のうちの1つの電極には熱伝導性が高い電極を用いる。通常、熱伝導性が高い電極材料は不透光性の電極として用いられる。熱伝導性が高い電極材料としては前述したように、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、ケイ素、炭素などを用いることができる。熱伝導性が高い電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0089】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウムおよび酸化アルミニウムなどの金属酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリンおよびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0090】
正孔注入層の成膜方法としては、たとえば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。たとえば所定の塗布法によって正孔注入材料を含む溶液を塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔注入層を形成することができる。
【0091】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0092】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0093】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0094】
これらのうちで正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などの高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0095】
正孔輸送層の成膜方法としては、たとえば正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。たとえば所定の塗布法によって正孔輸送材料を含む溶液を塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔輸送層を形成することができる。低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーをさらに混合した溶液を用いて成膜してもよい。
【0096】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、たとえばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
【0097】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、たとえばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0098】
正孔輸送層の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0099】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。たとえば発光効率の向上や、発光波長を変化させるためにドーパントは加えられる。なお発光層に含まれる有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。低分子化合物よりも溶媒への溶解性が一般的に高い高分子化合物は塗布法に好適に用いられるため、発光層は高分子化合物を含むことが好ましく、高分子化合物としてポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10の化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する発光材料としては、たとえば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0100】
(色素系材料)
色素系材料としては、たとえば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などをあげることができる。
【0101】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、たとえばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、たとえばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0102】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどをあげることができる。
【0103】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0104】
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0105】
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などをあげることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、たとえばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどをあげることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0106】
発光層は、たとえば溶液からの成膜によって形成される。たとえば発光材料を含む溶液を所定の塗布法によって塗布し、さらにこれを固化することによって発光層は形成される。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜するさいに用いられる溶媒と同様の溶媒をあげることができる。
【0107】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などをあげることができる。
【0108】
電子輸送層の成膜法としては、たとえば蒸着法および溶液からの成膜法などをあげることができる。なお溶液から成膜する場合には高分子バインダーを併用してもよい。
【0109】
電子輸送層の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0110】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどをあげることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどをあげることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、たとえばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【符号の説明】
【0111】
1 有機EL素子
2 発光装置
3 支持基板
4 第1電極
5 第2電極
6 発光層
11 発光装置
12 支持基板
13 有機EL素子
14 第1電極
15 第2電極
16 発光層
17,18 延在部
19 接続部
20 放熱部
31 発光装置
32,33 部位
41 発光装置
42 補助電極
61 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、所定の配列方向に沿って前記支持基板上に設けられ、直列接続される複数の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える発光装置であって、
各有機エレクトロルミネッセンス素子はそれぞれ、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、
前記発光層は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子に跨って、前記所定の配列方向に沿って延在しており、
前記一対の電極はそれぞれ、前記支持基板の厚み方向一方から見て、前記支持基板の厚み方向および前記配列方向のいずれにも垂直な幅方向に、発光層から突出するように延在する延在部を有し、
前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記配列方向に隣り合う有機エレクトロルミネッセンス素子の他方の電極にまで前記延在部から前記配列方向に延在し、該他方の電極に接続される接続部をさらに有し、
前記一対の電極のうちのいずれか1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに、前記延在部及び/又は接続部から延在する放熱部を備える、発光装置。
【請求項2】
前記延在部は、前記厚み方向一方から見て、前記幅方向の一方に発光層から突出するように延在する第1延在部と、前記幅方向の他方に発光層から突出するように延在する第2延在部とを含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記放熱部を備える1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極よりも、熱伝導率に膜厚を積算した値が大きい、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記電極に接して設けられる補助電極をさらに有し、
該補助電極は、当該補助電極に接する電極よりも熱伝導率が高い請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
前記放熱部は熱伝導率が30W/(m・K)以上である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記放熱部は膜厚が100nm以上である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
支持基板と、所定の配列方向に沿って前記支持基板上に設けられ、直列接続される複数の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える発光装置であり、各有機エレクトロルミネッセンス素子はそれぞれ、一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とを備え、前記発光層は、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子に跨って、前記所定の配列方向に沿って延在しており、前記一対の電極はそれぞれ、前記支持基板の厚み方向一方から見て、前記支持基板の厚み方向および前記配列方向のいずれにも垂直な幅方向に、発光層から突出するように延在する延在部を有し、前記一対の電極のうちの一方の電極は、前記配列方向に隣り合う有機エレクトロルミネッセンス素子の他方の電極にまで前記延在部から前記配列方向に延在し、該他方の電極に接続される接続部をさらに有し、前記一対の電極のうちのいずれか1つの電極は、当該1つの電極と対となる電極の端部よりも、前記発光層から離間する向きに、前記延在部及び/又は接続部から延在する放熱部を備える、発光装置の製造方法であって、
前記発光層となる材料を含むインキを、前記複数の有機EL素子に跨って前記所定の配列方向に沿って連続的に塗布し、塗布した塗膜を固化することにより発光層を形成する工程を含む発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記インキを塗布する方法が、キャップコート法、スリットコート法、スプレーコート法または印刷法である請求項7に記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113918(P2012−113918A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260924(P2010−260924)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】