発光装置
【課題】有機EL素子の発光部の温度の均熱化を図ることが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置Aは、透光性基板1および透光性基板1の一表面側に形成された有機EL素子2を有する素子基板3と、透光性基板1の上記一表面側に対向配置され接合部4を介して素子基板3に接合された封止部材5とを備えている。封止部材5は、素子基板3との対向面に凹所51が形成されており、上記対向面における凹所51の周部を全周に亘って素子基板3と接合することで素子基板3との間に有機EL素子2の発光部20を気密封止している。また、発光装置Aは、封止部材5における有機EL素子2側とは反対側に配置され封止部材5よりも熱伝導率の高いシート部材6を備えている。
【解決手段】発光装置Aは、透光性基板1および透光性基板1の一表面側に形成された有機EL素子2を有する素子基板3と、透光性基板1の上記一表面側に対向配置され接合部4を介して素子基板3に接合された封止部材5とを備えている。封止部材5は、素子基板3との対向面に凹所51が形成されており、上記対向面における凹所51の周部を全周に亘って素子基板3と接合することで素子基板3との間に有機EL素子2の発光部20を気密封止している。また、発光装置Aは、封止部材5における有機EL素子2側とは反対側に配置され封止部材5よりも熱伝導率の高いシート部材6を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)を備えた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図20および図21に示すように、熱可塑性樹脂からなる基板101と、基板101上に形成された有機EL素子103と、基板101に溶着されて基板101とともにパッケージを構成するキャップ105とを備えたものが知られている(特許文献1)。ここで、キャップ105は、基板101と同じ材料により形成されている。また、基板101とキャップ105とで囲まれた中空部106には、気体(窒素ガス)が充填されている。なお、特許文献1には、上述の基板101とキャップ105との界面をなくすように基板101とキャップ105とを超音波溶着法により溶着する封止方法によれば、ダークスポットの成長を抑制できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3278611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機EL素子103は、発光にともない発熱する。しかしながら、図20および図21に示した構成では、有機EL素子103とキャップ105との間に中空部106が存在し、基板101およびキャップ105が熱可塑性樹脂により形成されているので、有機EL素子103の温度が面内でばらついて発光状態が面内でばらついてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、有機EL素子の発光部の温度の均熱化を図ることが可能な発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装置は、透光性基板および前記透光性基板の一表面側に形成された有機EL素子を有する素子基板と、前記透光性基板の前記一表面側において前記有機EL素子の発光部を覆い前記素子基板に接合部を介して接合され前記素子基板との間に前記発光部を気密封止した封止部材とを備えた発光装置であって、前記封止部材と前記発光部との間に空間を有し、前記封止部材における前記発光部側とは反対側に、前記封止部材よりも熱伝導率の高いシート部材が配置されていることを特徴とする。
【0007】
この発光装置において、前記シート部材は、少なくとも、前記封止部材への前記発光部の投影領域の全域を覆う大きさであることが好ましい。
【0008】
この発光装置において、前記シート部材は、前記封止部材における前記接合部の投影領域の内側に収まる大きさであることが好ましい。
【0009】
この発光装置において、前記シート部材は、銅もしくはアルミニウムにより形成されてなることが好ましい。
【0010】
この発光装置において、前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側の表面に前記表面が平面である場合に比べて放熱面積を増大させる面積増大部が設けられてなることが好ましい。
【0011】
この発光装置において、前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側に前記シート部材の基材よりも放射率の高い熱放射部が設けられてなることが好ましい。
【0012】
この発光装置において、前記シート部材の厚みが少なくとも0.1mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発光装置においては、有機EL素子の発光部の温度の均熱化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の発光装置の概略断面図である。
【図2】同上の発光装置の概略背面図である。
【図3】同上の発光装置の背面図である。
【図4】同上の発光装置を示し、(a)は図3のB−B’概略断面図、(b)は図3のC−C’概略断面図、(c)は図3のG−G’概略断面図である。
【図5】同上の発光装置を示し、(a)は図3のD−D’概略断面図、(b)は図3のF−F’概略断面図である。
【図6】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図7】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図8】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図9】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図10】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図11】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図12】同上の発光装置におけるシート部材の厚みと面内温度上昇値との関係説明図である。
【図13】同上の発光装置に関し、(a)はシート部材の大きさの説明図、(b)は温度分布図である。
【図14】同上の発光装置に関し、(a)はシート部材の大きさの説明図、(b)は温度分布図である。
【図15】同上の発光装置に関し、(a)はシート部材の大きさの説明図、(b)は温度分布図である。
【図16】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図17】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図18】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図19】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図20】従来例の有機EL素子をパッケージ内に封止した構造の概略断面図である。
【図21】従来例の有機EL素子をパッケージ内に封止した構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の発光装置(面状発光装置)Aについて図1〜図5に基づいて説明する。
【0016】
発光装置Aは、透光性基板1および透光性基板1の一表面側に形成された有機EL素子2を有する素子基板(有機EL素子モジュール)3と、透光性基板1の上記一表面側に対向配置され接合部4を介して素子基板3に接合された封止部材(カバー基板)5とを備えている。また、発光装置Aは、封止部材5における有機EL素子2側とは反対側に配置され封止部材5よりも熱伝導率の高いシート部材6を備えている。ここにおいて、封止部材5は、素子基板3との対向面に凹所51が形成されており、上記対向面における凹所51の周部を全周に亘って素子基板3と接合してある。これにより、発光装置Aは、有機EL素子2の発光部20が、透光性基板1と封止部材5と接合部4とで囲まれた気密空間内に収納されている。また、発光装置Aは、封止部材5における凹所51の内底面に、水分を吸着する吸湿材(図示せず)を配置してある。
【0017】
有機EL素子2は、図4および図5に示すように、透光性基板1の上記一表面側に配置され透明導電膜からなる第1電極21と、第1電極21における透光性基板1側とは反対側に配置され有機材料からなる発光層を含む有機EL層22と、有機EL層22における第1電極21側とは反対側に配置され金属膜からなる第2電極23とを備えている。
【0018】
また、有機EL素子2は、第1電極21と有機EL層22と第2電極23とが重なる発光部20の側方に配置され第1電極21に電気的に接続された第1端子部T1と、発光部20の側方に配置され第2電極23に電気的に接続された第2端子部T2とを備えている。ここで、第2電極23は、第2電極23から延設された引出配線23bを介して、第2端子部T2と電気的に接続されている。
【0019】
また、有機EL素子2は、第1電極21よりも比抵抗の小さな材料からなり第1電極21における透光性基板1側とは反対側の表面の周部に沿って形成され第1電極21に電気的に接続された補助電極26を備えている。また、有機EL素子2は、透光性基板1の上記一表面側において補助電極26および第1電極21の側縁を覆う絶縁膜29を備えている。有機EL素子2は、この絶縁膜29により、補助電極26および第1電極21と第2電極23との短絡が防止されるようになっている。なお、補助電極26は、第1電極21における透光性基板1側とは反対側の表面の周部の全周に沿った矩形枠状に形成されているが、必ずしも矩形枠状である必要はなく、第1電極21に電気的に接続されていれば、一部が開放された形状(例えば、C字状やU字状など)や、複数個に分断されていてもよい。
【0020】
有機EL素子2は、透光性基板1の厚み方向において透光性基板1と第1電極21と発光層と第2電極23とが重なる領域が、上述の発光部20を構成しており、発光部20以外の領域が、非発光部となる。ここで、有機EL素子2は、第1電極21、有機EL層22および第2電極23それぞれの平面視形状を、透光性基板1よりも小さな矩形状(図示例では、正方形状)としてある。したがって、発光部20の平面視形状は、透光性基板1よりも小さな矩形状(図示例では、正方形状)となる。また、補助電極26は、平面視形状を矩形枠状(図示例では、正方枠状)としてある。また、絶縁膜29は、平面視形状を矩形枠状(図示例では、正方枠状)としてある。
【0021】
有機EL素子2は、矩形状の発光部20の所定の平行な2辺の各々に沿ってm個(図3の例では、m=2)の第2端子部T2と〔m+1〕個(図1の例では、3個)の第1端子部T1とが、第2端子部T2の幅方向の両側に第1端子部T1が位置するように配置されている。したがって、図3に示した例では、透光性基板1の長手方向の両端部の各々に、第1端子部T1と第2端子部T2とを備えている。具体的には、有機EL素子2は、透光性基板1の長手方向の両端部の各々において、3つの第1端子部T1が透光性基板1の短手方向に離間して配置されており、透光性基板1の短手方向において隣り合う第1端子部T1間に第2端子部T2が配置されている。本実施形態では、透光性基板1の上記一表面において長手方向を規定方向としており、素子基板3は、透光性基板1の上記一表面において規定方向の両端部の各々に第1端子部T1および第2端子部T2が配置されている。
【0022】
ここで、第1端子部T1は、透明導電性酸化物層24(以下、第1透明導電性酸化物層24とも称する)と金属層27(以下、第1金属層27とも称する)との積層構造を有している。また、第2端子部T2は、透明導電性酸化物層25(以下、第2透明導電性酸化物層25とも称する)と金属層28(以下、第2金属層28とも称する)との積層構造を有している。
【0023】
また、シート部材6の平面形状は、封止部材5よりも小さく且つ発光部20よりも大きな矩形状(図示例では、正方形状)としてある。
【0024】
以下、発光装置Aの各構成要素について詳細に説明する。
【0025】
発光装置Aは、透光性基板1の他表面を光出射面(発光面)として用いるものである。したがって、発光装置Aでは、透光性基板1の上記他表面のうち、第1電極21、有機EL層22、第2電極23の3つが重複して投影される領域が発光面となる。透光性基板1は、平面視形状を長方形状としてあるが、これに限らず、例えば、正方形状、多角形状、円形状などでもよい。
【0026】
透光性基板1としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック基板を用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエーテルサルフォン(PES)基板、ポリカーボネート(PC)基板などを用いてもよい。プラスチック基板を用いる場合は、プラスチック基板の表面にSiON膜、SiN膜などを成膜して水分の透過を抑えるようにしてもよい。
【0027】
透光性基板1としてガラス基板を用いる場合には、透光性基板1の上記一表面の凹凸が有機EL素子2のリーク電流などの発生原因となることがある(有機EL素子2の劣化原因となることがある)。このため、透光性基板1としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意することが好ましい。透光性基板1の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。これに対して、透光性基板1としてプラスチック基板を用いる場合には、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることが可能である。
【0028】
有機EL素子2は、第1電極21が陽極、第2電極23が陰極を構成している。そして、有機EL素子2は、第1電極21と第2電極23との間に介在する有機EL層22が、第1電極21側から順に、ホール輸送層、上述の発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。
【0029】
上述の有機EL層22の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、第1電極21とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、第1電極21と第2電極23とで挟んで電圧を印加すれば発光する機能を有する有機EL層22を1つの発光ユニットとして、複数の発光ユニットを光透過性および導電性を有する中間層を介して積層して電気的に直列接続したマルチユニット構造(つまり、1つの第1電極21と1つの第2電極23との間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットを備えた構造)を採用してもよい。
【0030】
陽極を構成する第1電極21は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。第1電極21の電極材料としては、例えば、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、IZO(Indium Zinc Oxide)、ヨウ化銅など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、第1電極21は、透光性基板1の上記一表面側に、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0031】
なお、第1電極21のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、第1電極21の膜厚は、第1電極21の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0032】
また、陰極を構成する第2電極23は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。第2電極23の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。第2電極23の電極材料としては、発光層から放射された光に対する反射率が高く、且つ、抵抗率の低い金属が好ましく、アルミニウムや銀が好ましい。
【0033】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0034】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、第1電極21との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0035】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0036】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq3等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0037】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiO2やSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0038】
また、引出配線23bの材料は、第2電極23と同じ材料を採用している。ここで、引出配線23bの厚さは、第2電極23と同じ厚さに設定してある。そして、引出配線23bは、第2電極23と連続して形成されている。したがって、本実施形態の発光装置Aは、製造時に、引出配線23bと第2電極23とを同時に形成することができる。また、引出配線23bは、第2端子部T2の第2透明導電性酸化物層25における接合部4との接合用領域25aよりも内側に形成されている部位上まで延設されている。引出配線23bの幅(配線幅)寸法は、第1端子部T1との短絡を防止し、且つ、第1端子部T1との間に所定の絶縁距離を確保できるように、第2端子部T2の幅寸法よりもやや小さい値に設定してある。引出配線23bの幅寸法は、第2端子部T2の幅以下であることが好ましいが、エレクトロマイグレーション耐性を高めるために、できるだけ大きな値が好ましい。
【0039】
また、第1透明導電性酸化物層24および第2透明導電性酸化物層25の材料は、透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide:TCO)であり、例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなどを採用することができる。また、第1透明導電性酸化物層24および第2透明導電性酸化物層25の材料を、第1電極21と同じ材料とし、第1電極21と第1透明導電性酸化物層24と第2透明導電性酸化物層25とを同じ厚さに設定してある。
【0040】
また、第1金属層27および第2金属層28の材料は、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、クロム、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、マグネシウムなどの金属や、これら金属の少なくとも1種を含む合金などが好ましい。また、第1金属層27および第2金属層28は、単層構造に限らず、多層構造を採用してもよい。例えば、第1金属層27および第2金属層28は、MoNb層/AlNd層/MoNb層の3層構造を採用することができる。この3層構造において、下層のMoNb層は、下地との密着層として設け、上層のMoNb層は、AlNd層の保護層として設けることが好ましい。また、本実施形態では、第1金属層27の材料と第2金属層28の材料とを同じとし、第1金属層27と第2金属層28とを同じ厚さに設定してある。なお、第1金属層27および第2金属層28は、第2電極23と同じ材料を採用してもよい。
【0041】
また、補助電極26の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、クロム、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、マグネシウムなどの金属や、これら金属の少なくとも1種を含む合金などが好ましい。また、補助電極26は、単層構造に限らず、多層構造を採用してもよい。例えば、補助電極26は、MoNb層/AlNd層/MoNb層の3層構造を採用することができる。この3層構造において、下層のMoNb層は、下地との密着層として設け、上層のMoNb層は、AlNd層の保護層として設けることが好ましい。本実施形態の発光装置Aでは、補助電極26の材料と第1金属層27および第2金属層28の材料とを同じにしてある。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、製造時に、補助電極26と第1金属層27および第2金属層28とを同時に形成することが可能となり、低コスト化を図れる。
【0042】
また、絶縁膜29の材料としては、例えば、ポリイミドを採用しているが、これに限らず、例えば、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを採用することができる。
【0043】
上述の有機EL素子2では、第1電極21と第2電極23との間に有機EL層22のみが介在する領域が上述の発光部20を構成しており、発光部20の平面形状が絶縁膜29の内周縁の形状と同じ矩形状(図示例では、正方形状)になっている。ここで、発光装置Aは、平面視において有機EL素子2の発光部20以外の部分が非発光部となる。
【0044】
また、封止部材5としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック基板を用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエーテルサルフォン(PES)基板、ポリカーボネート(PC)基板などを用いてもよい。プラスチック基板を用いる場合は、プラスチック基板の表面にSiON膜、SiN膜などを成膜して水分の透過を抑えるようにしてもよい。封止部材5の材料としては、透光性基板1の材料との線膨張率差の小さな材料が好ましく、封止部材5と透光性基板1との線膨張率差に起因して発生する応力を低減する観点からは線膨張率差が等しい材料がより好ましい。
【0045】
封止部材5は、上述のように、接合部4を介して素子基板3と接合されている。これにより、封止部材5は、素子基板3との間に発光部20を気密封止する。また、有機EL素子2は、素子基板3の厚み方向において、封止部材5と発光部20との間に、空間を有している。ここで、接合部4と素子基板3との界面は、接合部4と第1端子部T1との第1界面と、接合部4と第2端子部T2との第2界面と、接合部4と透光性基板1との第3界面とがある。
【0046】
接合部4の材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを採用してもよい。エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂としては、光硬化型(紫外線硬化型)の接着剤、熱硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤などを用いることができる。また、また、接合部4の材料としては、接着剤に無機フィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を混入させたものを用いることが好ましい。このように無機フィラーを混入させた接着剤を用いて接合部4を形成した場合には、水分の透過率を更に低減することが可能となる。また、接合部4の材料としては、フリット材(例えば、ガラスフリットなど)を用いてもよい。
【0047】
接着剤やフリット材は、粘度および所望の厚みに応じて、ロールコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、スリットコート法、スキージ塗布法などの印刷法により、素子基板3と封止部材5との一方の所定位置に印刷することができる。
【0048】
また、本実施形態の発光装置Aでは、封止部材5における凹所51の開口サイズを絶縁膜29の外周形状のサイズよりも大きく設定してあり、封止部材5の周部が接合部4を介して素子基板3に接合されている。これにより、発光装置Aは、第1電極21および第2電極23が外部に露出しないので、耐湿性を高めることが可能となる。ここで、有機EL素子2のうち外部に露出するのは、第1端子部T1および第2端子部T2の各々の一部である。
【0049】
ここにおいて、第1端子部T1は、上述のように第1透明導電性酸化物層24と第1金属層27との積層構造を有しているが、第1透明導電性酸化物層24のみにより構成される接合用領域24aを、接合部4の周方向に沿って第1端子部T1の幅方向の全長に亘って設けてある。また、第2端子部T2は、上述のように第2透明導電性酸化物層25と第2金属層28との積層構造を有しているが、第2透明導電性酸化物層25のみにより構成される接合用領域25aを、接合部4の周方向に沿って第2端子部T2の幅方向の全長に亘って設けてある。したがって、接合部4と第1端子部T1との第1界面は、接合部4と第1透明導電性酸化物層24との界面により構成され、接合部4と第2端子部T2との第2界面は、接合部4と第2透明導電性酸化物層25との界面により構成されている。これにより、本実施形態の発光装置Aは、接合部4と第1端子部T1および第2端子部T2との接合強度を向上させることが可能となり、しかも、第1金属層27および第2金属層28の経時変化で酸化が生じて第1界面および第2界面の状態が変化することを防止することが可能となり、信頼性を向上させることが可能となる。
【0050】
吸湿材としては、例えば、酸化カルシウム系の乾燥剤(酸化カルシウムをガラスに練り込んだゲッタ)などを用いることができる。吸湿材は、封止部材5への発光部20の投影領域の中央部とは重ならないように配置することが好ましく、発光部20の投影領域との重なりが少ない方がより好ましい。また、非発光部の面積が大きくてもよい場合は、発光部20の投影領域と重ならないように配置することが好ましい。
【0051】
シート部材6は、均熱板として機能するものである。シート部材6の材料としては、各種の金属の中で熱伝導率が高い金属が好ましく、銅を採用している。要するに、シート部材6は、金属シートにより形成してあり、この金属シートの材料として銅を採用している。シート部材6の材料は、銅に限らず、例えば、アルミニウム、青銅、砲金、金、真鍮などでもよい。ここにおいて、金属シートからなるシート部材6は、接着部材(図示せず)により封止部材5に固着されている。接着部材は、熱伝導率の高い材質で形成されていることが好ましい。また、接着部材は、厚みが0.1mm以下のものが好ましい。接着部材としては、例えば、両面テープを用いることができ、両面テープとしては、例えば、テサテープ株式会社製のテサテープ4972(基材がPET、粘着剤がアクリル系粘着剤、厚みが0.048mm)や、日栄化工株式会社製のNeo Fix 10、Neo Fix 30、Neo Fix 50、Neo Fix 60、Neo Fix 80、Neo Fix 100(いずれの商品も基材がPET、粘着剤がアクリル系粘着剤)など、カプトン(登録商標)両面テープなどを用いることができる。また、シート部材6は、封止部材5よりも熱伝導率の高い材料により形成されたものであればよく、金属シートに限らず、例えば、カーボンシート(炭素繊維シート)や、電気絶縁性および熱伝導性を有するシリコーンゲルやエラストマーのシートを用いてもよい。この種のシリコーンゲルのシートとしては、例えば、サーコン(登録商標)などを用いることができる。
【0052】
以下、本実施形態の発光装置Aの製造方法について図6〜図12を参照しながら説明する。
【0053】
まず、ガラス基板からなる透光性基板1の上記一表面側に、同一の透明導電性酸化物(例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなど)からなる、第1電極21、第1透明導電性酸化物層24および第2透明導電性酸化物層25を蒸着法やスパッタ法などを利用して同時に形成することによって、図6に示す構造を得る。
【0054】
次に、透光性基板1の上記一表面側に、例えば、同一の金属材料などからなる、補助電極26、第1金属層27および第2金属層28を蒸着法やスパッタ法などを利用して同時に形成することによって、図7に示す構造を得る。
【0055】
続いて、透光性基板1の上記一表面側に、樹脂材料(例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂など)からなる絶縁膜29を形成することによって、図8に示す構造を得る。
【0056】
その後、透光性基板1の上記一表面側に、有機EL層22を例えば蒸着法などにより形成することによって、図9に示す構造を得る。なお、有機EL層22の形成方法は蒸着法に限らず、例えば、塗布法などでもよく、有機EL層22の材料に応じて適宜選択すればよい。
【0057】
続いて、透光性基板1の上記一表面側に、同一の金属材料(例えば、アルミニウム、銀など)からなる第2電極23および引出配線23bを蒸着法やスパッタ法などを利用して形成することによって、図10に示す構造の素子基板3を得る。
【0058】
その後、素子基板3に、接合部4の材料である接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ガラスフリットなど)4aをディスペンサなどにより塗布することによって、図11に示す構造を得る。ここにおいて、接合部4となる接着剤4aを塗布する塗布工程では、素子基板3の周部に接着剤4aを矩形枠状に塗布しているが、有機EL素子モジュール3ではなく、カバー基板5における凹所51の周部に接合部4の接着剤4aを矩形枠状に塗布するようにしてもよい。なお、接合部4となる接着剤4aを塗布する塗布装置は、ディスペンサに限らず、例えば、スクリーン印刷装置、ダイコーター、スリットコーターなどを用いてもよい。
【0059】
いずれにしても接合部4となる接着剤4aを塗布した後、予め吸湿材およびシート部材6を貼り付けた封止部材5を重ね合わせ、接着剤4aを未硬化の状態から硬化させることで接合することによって、図1に示す構造の発光装置Aを得る。接着剤4aを未硬化の状態から硬化させるにあたっては、接着剤4aが紫外線硬化型の場合には例えば紫外線LEDから紫外線を照射して接着剤4aを硬化させる。また、接着剤4aが熱硬化型の場合には接着剤4aを加熱することにより接着剤4aを硬化させる。なお、吸湿材としては、例えば、シール型の乾燥剤や塗布型の乾燥剤を用いることが可能であり、塗布型の乾燥剤を用いる場合の硬化工程は、接合部4の材料である接着剤4aとの組み合わせに応じて、封止部材5と素子基板3との重ね合わせ前に単独で行うか、接着剤4aを硬化させる硬化工程で兼ねるかのいずれかであればよい。塗布型の乾燥剤を塗布する方法としては、例えば、ディスペンサ、スクリーン印刷装置、メタルマスク、ダイコーター、スリットコーターなどを用いる方法を採用することができる。
【0060】
ここで、封止部材5への吸湿材の貼付工程、素子基板3もしくは封止部材5に接着剤4aを塗布する塗布工程、素子基板3と封止部材5とを重ね合わせる重ね合わせ工程、接着剤4aを硬化させる硬化工程は、例えば、露点−65℃の窒素ガス雰囲気中で行うようにしている。したがって、素子基板3と封止部材5とで囲まれた空間には、窒素ガスが封入されている。なお、シート部材6は、接合部4となる接着剤4aを硬化させた後で、封止部材5に貼り付けるようにしてもよい。
【0061】
本実施形態の発光装置Aでは、発光部20の平面サイズを80mm□に設定してあるが、これに限らず、例えば、30〜300mm□程度の範囲で適宜設定すればよい。また、第2端子部T2の幅方向の両側に配置される2つの第1端子部T1、T1の中心間距離を30mmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。また、第1電極21の厚さを110nm〜300nm程度の範囲、有機EL層22の厚さを150nm〜300nm程度の範囲、第2電極23の厚さを70nm〜300nm程度の範囲、絶縁膜29の厚さを0.7μm〜1μm程度の範囲、補助電極26、第1金属膜27および第2金属膜28の厚さを300nm〜600nm程度の範囲で適宜設定してあるが、これらの値は特に限定するものではない。
【0062】
また、補助電極26の幅については、幅が広くなるほど、補助電極26のインピーダンスが低下し、発光部20の輝度の面内ばらつきは低減されるが、非発光部の面積が増加して光束が低下するので、0.3mm〜3mm程度の範囲で設定することが好ましい。本実施形態の発光装置Aを複数個並べて光源とする照明器具では、補助電極26の幅を狭くするほど、隣り合う発光部20間の距離を小さくでき、見栄えが良くなる。また、第1端子部T1および第2端子部T2と透光性基板1の周縁との距離は、0.2mmに設定してあるが、この値は特に限定するものではなく、例えば、0.1〜2mm程度の範囲で適宜設定することが好ましい。発光装置Aの非発光部の面積を小さくするには、第1端子部T1および第2端子部T2と透光性基板1の周縁との距離を短くすることが好ましいが、第1端子部T1および第2端子部T2と他の金属部材(例えば、照明器具の金属製の器具本体など)との間に所定の沿面距離を確保する必要がある場合には、この沿面距離よりも長い値に設定することが好ましい。
【0063】
以上説明した本実施形態の発光装置Aでは、封止部材5と発光部20との間に空間を有し、封止部材5における発光部20側とは反対側に、封止部材5よりも熱伝導率の高いシート部材6が配置されているので、有機EL素子2の発光部20の温度の均熱化を図ることが可能となって発光部20の温度の面内ばらつきを低減することが可能となり、しかも、放熱性を向上させることが可能となる。しかして、発光装置Aでは、有機EL素子2の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図ることが可能となる。
【0064】
本実施形態の発光装置Aにおけるシート部材6の厚みは、少なくとも0.1mmであることが好ましい。ここで、発光部20の平面サイズを80mm□、透光性基板1を無アルカリガラス基板、封止部材5をソーダガラス基板、接合部4の材料である接着剤4aをエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製のXNR5570-B1)、シート部材6を銅箔からなる金属シート、接着部材を日栄化工株式会社製のNeo Fix 10、第1電極21の材料をITO、第2電極23の材料をアルミニウム、発光部20の厚み方向における発光部20と封止部材5との距離を0.5mm、封止部材5においてシート部材6と重なる部分の厚みを0.6mmとした構成において、シート部材6の厚みを変化させた場合に、有機EL素子2への通電電流を275mAとした場合の発光部20の温度を発光面側から赤外線カメラ(サーモビューア)により測定して得られた結果を図12に示す。図12は、横軸がシート部材6の厚みであり、縦軸が面内温度上昇値である。また、図12中のA1は温度上昇値の面内分布における最大値(Tmax)、同図中のA2は温度上昇値の面内分布における最小値(Tmin)、同図中のA3は上述の最大値と最小値との差分値(ΔT=Tmax−Tmin)である。
【0065】
図12から、シート部材6の厚みを0(シート部材6がない場合)から増加させたときに、厚みが0.1mmで差分値がほぼ収束していることが分かる。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6の厚みを、少なくとも0.1mmとすることにより、シート部材6の温度の面内均一性を向上させることが可能となり、発光部20の温度の均熱化を図ることが可能となる。
【0066】
また、シート部材6は、少なくとも、封止部材5への発光部20の投影領域の全域を覆う大きさ(平面サイズ)であることが好ましい。ここで、発光部20の平面サイズを80mm□、透光性基板1を無アルカリガラス基板、封止部材5をソーダガラス基板、接合部4の材料である接着剤4aをエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製のXNR5570-B1)、シート部材6を銅箔からなる金属シート、接着部材を両面テープの一種であるテサテープ4972、第1電極21の材料をITO、第2電極23の材料をアルミニウム、発光部20の厚み方向における発光部20と封止部材5との距離を0.5mm、封止部材5においてシート部材6と重なる部分の厚みを0.6mm、シート部材6の厚みを0.1mmとして、シート部材6の平面サイズを変化させた試料について、有機EL素子2への通電電流を250mAとした場合の発光部20の温度を赤外線カメラにより測定して得られた結果を図13〜図15に示す。なお、シート部材6は、厚み方向に沿った中心線が発光部20の厚み方向に沿った中心線と揃うように配置してある。また、シート部材6を接着部材を介して封止部材5に貼り付ける際には、ゴムローラを装着したシート貼付器を用いた。
【0067】
図13(b)は同図(a)のようにシート部材6の平面サイズを83mm×83mmとして封止部材5への発光部20の投影領域の全域を覆った試料についてのサーモグラフィである。また、図14(b)は同図(a)のようにシート部材6の平面サイズを83mm×71.3mmとして封止部材5への発光部20の投影領域の全域を完全には覆っていない試料についてのサーモグラフィである。また、図15(b)は同図(a)のようにシート部材6の平面サイズを55mm×55mmとして封止部材5への発光部20の投影領域の中央部のみを覆った試料についてのサーモグラフィである。なお、図13(b)、図14(b)および図15(b)それぞれの図中の黒文字の数値は、発光部20の中心並びに四隅の各々の温度であり、括弧内の黒文字の数値は、点灯前の温度からの温度上昇値であり、ΔTについては上述のように、温度上昇値の面内分布における最大値(Tmax)と最小値(Tmin)との差分値(ΔT=Tmax−Tmin)である。
【0068】
図13〜図15から、シート部材6の平面サイズを大きくするにつれて、差分値が小さくなり、温度上昇値の面内ばらつきが小さくなっていることが分かる。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6の大きさを、封止部材5への発光部20の投影領域の全域を覆う大きさとすることにより、発光部20の温度のより一層の均熱化を図ることが可能となる。なお、シート部材6の大きさを、封止部材5への発光部20の投影領域の80%以上を覆う大きさとすることにより、発光部20の温度の均熱化を図ることが可能となる。
【0069】
また、シート部材6は、封止部材5における接合部4の投影領域の内側に収まる大きさであることが好ましい。これにより、発光装置Aでは、シート部材6により封止部材5を完全に覆ってしまう場合に比べて、接合部4の外観検査が容易になる。
【0070】
また、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6として、銅もしくはアルミニウムにより形成された金属シート(銅箔もしくはアルミニウム箔)を用いることにより、低コスト化を図ることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の発光装置Aでは、図16〜図19それぞれに示すように、シート部材6における封止部材5側とは反対側の表面に当該表面が平面で有る場合に比べて放熱面積を増大させる面積増大部62を設けてもよい。なお、図16〜図19それぞれにおける(a)は、封止部材5側とは反対側から見た概略平面図であり、(b)は、概略断面図である。
【0072】
図16に示したシート部材6における面積増大部62は、凹部により構成されており、複数の面積増大部62が全体として平面視ストライプ状に形成されている。また、図17に示したシート部材6における面積増大部62は、断面三角形状の凸部により構成され、全体として平面視格子状に形成されている。また、図18に示したシート部材6における面積増大部62は、半球状の凸部により構成され、全体として2次元アレイ状に配置されている。また、図19に示したシート部材6における面積増大部62は、シート部材6の表面を粗面化加工することにより形成してある。なお、図16〜図18それぞれに示した面積増大部62は、例えば、エンボス加工によって形成することができる。
【0073】
発光装置Aは、上述の面積増大部62を設けることにより、放熱性を更に向上させることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6において、封止部材5側とは反対側にシート部材6の基材よりも放射率の高い熱放射部(図示せず)を設けてもよい。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6の放射率が高くなって放熱性が更に向上し、有機EL素子2の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図ることが可能となる。放熱性を更に向上させることが可能となる。
【0075】
熱放射部は、例えば、シート部材6の基材である金属シートが電解銅箔の場合、電解銅箔の一表面側(封止部材5側とは反対側に位置させる表面側)を黒色酸化処理(黒色処理)することにより形成することができる。なお、金属シートがアルミニウム箔の場合の黒色酸化処理は、アルマイト処理である。
【0076】
また、熱放射部は、シート部材6の一表面側(封止部材5側とは反対側に位置させる表面側)にシート部材6の基材に比べて放射率の高い媒体(例えば、黒色系や白色系のアクリル樹脂や塗料など)を塗装することにより形成してもよい。この場合には、放熱性が向上するだけでなく、シート部材6の耐食性を高めることができるという利点もある。
【0077】
また、本実施形態の発光装置Aでは、上述のように、有機EL素子2が、第1電極21、有機EL層22、第2電極23、第1端子部T1、第2端子部T2および補助電極26を備え、透光性基板1の上記一表面において上記規定方向の両端部の各々に第1端子部T1および第2端子部T2が配置されていることが好ましい。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、高輝度化および輝度の面内均一性の向上を図ることが可能となる。また、本実施形態の発光装置Aを上記規定方向に直交する方向に複数個並べて光源とする照明器具では、隣り合う発光部20間の距離を小さくでき、見栄えが良くなる。
【0078】
また、本実施形態の発光装置Aでは、上述のように、第1端子部T1および第2端子部T2が、各々、透明導電性酸化物層24,25と金属層27,28との積層構造を有し、透明導電性酸化物層24,25のみが接合部4と接していることが好ましい。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、高輝度化および輝度の面内均一性の向上を図れ、そのうえ、接合部4と第1端子部T1および第2端子部T2との接合強度を向上させることが可能となる。しかも、第1金属層27および第2金属層28の経時変化で酸化が生じて第1界面および第2界面の状態が変化することを防止することが可能となり、信頼性を向上させることが可能となる。本実施形態の発光装置Aと、第1端子部T1および第2端子部T2で金属層27,28を接合部4と接するようにした比較例とで、発光部20において発光しないエリア(ダークエリア)が、発光部20のエッジから規定距離だけ進行するのにかかる時間を比較したところ、本実施形態の発光装置Aの方が、より長い時間を要することが確認された。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、水分や酸素を遮断する性能であるガスバリア性の向上を図れ、長寿命化を図ることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態の発光装置Aでは、第1端子部T1の幅の合計寸法と第2端子部T2の幅の合計寸法とを同じ値に設定することにより、有機EL素子2へ流す電流を大きくすることが可能となり、また、発光効率の向上を図れる。また、本実施形態の発光装置Aでは、引出配線23bに臨界電流密度(金属がアルミニウムの場合には1×105A/cm2)以上の電流が長時間にわたって流れると、エレクトロマイグレーションが起こり、断線が起こりやすくなってしまう懸念がある。これに対して、ITOなどのTCOにより形成され第1電極21に連続した第1透明導電性酸化物層24は、引出配線23bに比べて、臨界電流密度が大きく、臨界電流密度に対するマージンが大きい。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、第2端子部T2の幅の合計寸法を第1端子部T1の幅の合計寸法よりも大きくすることでエレクトロマイグレーション耐性(以下、EM耐性と略称する)を向上させることが可能となる。なお、図3について見れば、第2端子部T2の幅の合計寸法とは、4個の第2端子部T2の幅(図3における上下方向の寸法)の合計寸法であり、第1端子部T1の幅の合計寸法とは、6個の第1端子部T1の幅(図3における上下方向の寸法)の合計寸法である。
【0080】
また、本実施形態の発光装置Aは、平面視形状が矩形状の発光部20の所定の平行な2辺の各々に沿ってm個(m≧1)の第2端子部T2と〔m+1〕個の第1端子部T1とが、第2端子部T2の幅方向の両側に第1端子部T1が位置するように配置されており、第1透明導電性酸化物層24と第2透明導電性酸化物層25とが同じ厚さに設定されている。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、接合部4の第1端子部T1および第2端子部T2に対する接合強度や密着性を揃えることが可能となり、信頼性をより向上させることが可能となる。
【0081】
ところで、透光性基板1の平面視形状は、矩形状の場合、長方形状に限らず、正方形状でもよい。透光性基板1の平面視形状が正方形状の場合は、発光部20の平面形状を長方形状とし、当該長方形状の発光部20における2つの短辺を上記所定の2辺とすればよい。また、透光性基板1の平面視形状を長方形状として、発光部20の平面視形状を透光性基板1とは非相似の長方形状として、当該長方形状の発光部20における2つの長辺を上記所定の2辺としてもよい。
【0082】
上述の有機EL素子2では、透明導電膜からなる第1電極21が陽極を構成し、第1電極21よりもシート抵抗が小さな第2電極23が陰極を構成しているが、第1電極21が陰極を構成し、第2電極23が陽極を構成してもよく、いずれにしても、透明導電膜からなる第1電極21を通して光を取り出すことが可能であればよい。
【0083】
また、実施形態で説明した発光装置Aは、例えば、照明用の光源として好適に用いることができるが、照明用に限らず、他の用途に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
A 発光装置
1 透光性基板
2 有機EL素子
3 素子基板
4 接合部
5 封止部材
6 シート部材
20 発光部
51 凹所
62 面積増大部
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)を備えた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図20および図21に示すように、熱可塑性樹脂からなる基板101と、基板101上に形成された有機EL素子103と、基板101に溶着されて基板101とともにパッケージを構成するキャップ105とを備えたものが知られている(特許文献1)。ここで、キャップ105は、基板101と同じ材料により形成されている。また、基板101とキャップ105とで囲まれた中空部106には、気体(窒素ガス)が充填されている。なお、特許文献1には、上述の基板101とキャップ105との界面をなくすように基板101とキャップ105とを超音波溶着法により溶着する封止方法によれば、ダークスポットの成長を抑制できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3278611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機EL素子103は、発光にともない発熱する。しかしながら、図20および図21に示した構成では、有機EL素子103とキャップ105との間に中空部106が存在し、基板101およびキャップ105が熱可塑性樹脂により形成されているので、有機EL素子103の温度が面内でばらついて発光状態が面内でばらついてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、有機EL素子の発光部の温度の均熱化を図ることが可能な発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装置は、透光性基板および前記透光性基板の一表面側に形成された有機EL素子を有する素子基板と、前記透光性基板の前記一表面側において前記有機EL素子の発光部を覆い前記素子基板に接合部を介して接合され前記素子基板との間に前記発光部を気密封止した封止部材とを備えた発光装置であって、前記封止部材と前記発光部との間に空間を有し、前記封止部材における前記発光部側とは反対側に、前記封止部材よりも熱伝導率の高いシート部材が配置されていることを特徴とする。
【0007】
この発光装置において、前記シート部材は、少なくとも、前記封止部材への前記発光部の投影領域の全域を覆う大きさであることが好ましい。
【0008】
この発光装置において、前記シート部材は、前記封止部材における前記接合部の投影領域の内側に収まる大きさであることが好ましい。
【0009】
この発光装置において、前記シート部材は、銅もしくはアルミニウムにより形成されてなることが好ましい。
【0010】
この発光装置において、前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側の表面に前記表面が平面である場合に比べて放熱面積を増大させる面積増大部が設けられてなることが好ましい。
【0011】
この発光装置において、前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側に前記シート部材の基材よりも放射率の高い熱放射部が設けられてなることが好ましい。
【0012】
この発光装置において、前記シート部材の厚みが少なくとも0.1mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発光装置においては、有機EL素子の発光部の温度の均熱化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の発光装置の概略断面図である。
【図2】同上の発光装置の概略背面図である。
【図3】同上の発光装置の背面図である。
【図4】同上の発光装置を示し、(a)は図3のB−B’概略断面図、(b)は図3のC−C’概略断面図、(c)は図3のG−G’概略断面図である。
【図5】同上の発光装置を示し、(a)は図3のD−D’概略断面図、(b)は図3のF−F’概略断面図である。
【図6】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図7】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図8】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図9】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図10】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図11】同上の発光装置の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図12】同上の発光装置におけるシート部材の厚みと面内温度上昇値との関係説明図である。
【図13】同上の発光装置に関し、(a)はシート部材の大きさの説明図、(b)は温度分布図である。
【図14】同上の発光装置に関し、(a)はシート部材の大きさの説明図、(b)は温度分布図である。
【図15】同上の発光装置に関し、(a)はシート部材の大きさの説明図、(b)は温度分布図である。
【図16】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図17】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図18】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図19】同上の発光装置におけるシート部材の他の構成例を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図20】従来例の有機EL素子をパッケージ内に封止した構造の概略断面図である。
【図21】従来例の有機EL素子をパッケージ内に封止した構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の発光装置(面状発光装置)Aについて図1〜図5に基づいて説明する。
【0016】
発光装置Aは、透光性基板1および透光性基板1の一表面側に形成された有機EL素子2を有する素子基板(有機EL素子モジュール)3と、透光性基板1の上記一表面側に対向配置され接合部4を介して素子基板3に接合された封止部材(カバー基板)5とを備えている。また、発光装置Aは、封止部材5における有機EL素子2側とは反対側に配置され封止部材5よりも熱伝導率の高いシート部材6を備えている。ここにおいて、封止部材5は、素子基板3との対向面に凹所51が形成されており、上記対向面における凹所51の周部を全周に亘って素子基板3と接合してある。これにより、発光装置Aは、有機EL素子2の発光部20が、透光性基板1と封止部材5と接合部4とで囲まれた気密空間内に収納されている。また、発光装置Aは、封止部材5における凹所51の内底面に、水分を吸着する吸湿材(図示せず)を配置してある。
【0017】
有機EL素子2は、図4および図5に示すように、透光性基板1の上記一表面側に配置され透明導電膜からなる第1電極21と、第1電極21における透光性基板1側とは反対側に配置され有機材料からなる発光層を含む有機EL層22と、有機EL層22における第1電極21側とは反対側に配置され金属膜からなる第2電極23とを備えている。
【0018】
また、有機EL素子2は、第1電極21と有機EL層22と第2電極23とが重なる発光部20の側方に配置され第1電極21に電気的に接続された第1端子部T1と、発光部20の側方に配置され第2電極23に電気的に接続された第2端子部T2とを備えている。ここで、第2電極23は、第2電極23から延設された引出配線23bを介して、第2端子部T2と電気的に接続されている。
【0019】
また、有機EL素子2は、第1電極21よりも比抵抗の小さな材料からなり第1電極21における透光性基板1側とは反対側の表面の周部に沿って形成され第1電極21に電気的に接続された補助電極26を備えている。また、有機EL素子2は、透光性基板1の上記一表面側において補助電極26および第1電極21の側縁を覆う絶縁膜29を備えている。有機EL素子2は、この絶縁膜29により、補助電極26および第1電極21と第2電極23との短絡が防止されるようになっている。なお、補助電極26は、第1電極21における透光性基板1側とは反対側の表面の周部の全周に沿った矩形枠状に形成されているが、必ずしも矩形枠状である必要はなく、第1電極21に電気的に接続されていれば、一部が開放された形状(例えば、C字状やU字状など)や、複数個に分断されていてもよい。
【0020】
有機EL素子2は、透光性基板1の厚み方向において透光性基板1と第1電極21と発光層と第2電極23とが重なる領域が、上述の発光部20を構成しており、発光部20以外の領域が、非発光部となる。ここで、有機EL素子2は、第1電極21、有機EL層22および第2電極23それぞれの平面視形状を、透光性基板1よりも小さな矩形状(図示例では、正方形状)としてある。したがって、発光部20の平面視形状は、透光性基板1よりも小さな矩形状(図示例では、正方形状)となる。また、補助電極26は、平面視形状を矩形枠状(図示例では、正方枠状)としてある。また、絶縁膜29は、平面視形状を矩形枠状(図示例では、正方枠状)としてある。
【0021】
有機EL素子2は、矩形状の発光部20の所定の平行な2辺の各々に沿ってm個(図3の例では、m=2)の第2端子部T2と〔m+1〕個(図1の例では、3個)の第1端子部T1とが、第2端子部T2の幅方向の両側に第1端子部T1が位置するように配置されている。したがって、図3に示した例では、透光性基板1の長手方向の両端部の各々に、第1端子部T1と第2端子部T2とを備えている。具体的には、有機EL素子2は、透光性基板1の長手方向の両端部の各々において、3つの第1端子部T1が透光性基板1の短手方向に離間して配置されており、透光性基板1の短手方向において隣り合う第1端子部T1間に第2端子部T2が配置されている。本実施形態では、透光性基板1の上記一表面において長手方向を規定方向としており、素子基板3は、透光性基板1の上記一表面において規定方向の両端部の各々に第1端子部T1および第2端子部T2が配置されている。
【0022】
ここで、第1端子部T1は、透明導電性酸化物層24(以下、第1透明導電性酸化物層24とも称する)と金属層27(以下、第1金属層27とも称する)との積層構造を有している。また、第2端子部T2は、透明導電性酸化物層25(以下、第2透明導電性酸化物層25とも称する)と金属層28(以下、第2金属層28とも称する)との積層構造を有している。
【0023】
また、シート部材6の平面形状は、封止部材5よりも小さく且つ発光部20よりも大きな矩形状(図示例では、正方形状)としてある。
【0024】
以下、発光装置Aの各構成要素について詳細に説明する。
【0025】
発光装置Aは、透光性基板1の他表面を光出射面(発光面)として用いるものである。したがって、発光装置Aでは、透光性基板1の上記他表面のうち、第1電極21、有機EL層22、第2電極23の3つが重複して投影される領域が発光面となる。透光性基板1は、平面視形状を長方形状としてあるが、これに限らず、例えば、正方形状、多角形状、円形状などでもよい。
【0026】
透光性基板1としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック基板を用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエーテルサルフォン(PES)基板、ポリカーボネート(PC)基板などを用いてもよい。プラスチック基板を用いる場合は、プラスチック基板の表面にSiON膜、SiN膜などを成膜して水分の透過を抑えるようにしてもよい。
【0027】
透光性基板1としてガラス基板を用いる場合には、透光性基板1の上記一表面の凹凸が有機EL素子2のリーク電流などの発生原因となることがある(有機EL素子2の劣化原因となることがある)。このため、透光性基板1としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意することが好ましい。透光性基板1の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。これに対して、透光性基板1としてプラスチック基板を用いる場合には、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることが可能である。
【0028】
有機EL素子2は、第1電極21が陽極、第2電極23が陰極を構成している。そして、有機EL素子2は、第1電極21と第2電極23との間に介在する有機EL層22が、第1電極21側から順に、ホール輸送層、上述の発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。
【0029】
上述の有機EL層22の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、第1電極21とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、第1電極21と第2電極23とで挟んで電圧を印加すれば発光する機能を有する有機EL層22を1つの発光ユニットとして、複数の発光ユニットを光透過性および導電性を有する中間層を介して積層して電気的に直列接続したマルチユニット構造(つまり、1つの第1電極21と1つの第2電極23との間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットを備えた構造)を採用してもよい。
【0030】
陽極を構成する第1電極21は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。第1電極21の電極材料としては、例えば、ITO、酸化錫、酸化亜鉛、IZO(Indium Zinc Oxide)、ヨウ化銅など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、第1電極21は、透光性基板1の上記一表面側に、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0031】
なお、第1電極21のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、第1電極21の膜厚は、第1電極21の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0032】
また、陰極を構成する第2電極23は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。第2電極23の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。第2電極23の電極材料としては、発光層から放射された光に対する反射率が高く、且つ、抵抗率の低い金属が好ましく、アルミニウムや銀が好ましい。
【0033】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0034】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、第1電極21との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0035】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0036】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq3等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0037】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiO2やSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0038】
また、引出配線23bの材料は、第2電極23と同じ材料を採用している。ここで、引出配線23bの厚さは、第2電極23と同じ厚さに設定してある。そして、引出配線23bは、第2電極23と連続して形成されている。したがって、本実施形態の発光装置Aは、製造時に、引出配線23bと第2電極23とを同時に形成することができる。また、引出配線23bは、第2端子部T2の第2透明導電性酸化物層25における接合部4との接合用領域25aよりも内側に形成されている部位上まで延設されている。引出配線23bの幅(配線幅)寸法は、第1端子部T1との短絡を防止し、且つ、第1端子部T1との間に所定の絶縁距離を確保できるように、第2端子部T2の幅寸法よりもやや小さい値に設定してある。引出配線23bの幅寸法は、第2端子部T2の幅以下であることが好ましいが、エレクトロマイグレーション耐性を高めるために、できるだけ大きな値が好ましい。
【0039】
また、第1透明導電性酸化物層24および第2透明導電性酸化物層25の材料は、透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide:TCO)であり、例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなどを採用することができる。また、第1透明導電性酸化物層24および第2透明導電性酸化物層25の材料を、第1電極21と同じ材料とし、第1電極21と第1透明導電性酸化物層24と第2透明導電性酸化物層25とを同じ厚さに設定してある。
【0040】
また、第1金属層27および第2金属層28の材料は、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、クロム、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、マグネシウムなどの金属や、これら金属の少なくとも1種を含む合金などが好ましい。また、第1金属層27および第2金属層28は、単層構造に限らず、多層構造を採用してもよい。例えば、第1金属層27および第2金属層28は、MoNb層/AlNd層/MoNb層の3層構造を採用することができる。この3層構造において、下層のMoNb層は、下地との密着層として設け、上層のMoNb層は、AlNd層の保護層として設けることが好ましい。また、本実施形態では、第1金属層27の材料と第2金属層28の材料とを同じとし、第1金属層27と第2金属層28とを同じ厚さに設定してある。なお、第1金属層27および第2金属層28は、第2電極23と同じ材料を採用してもよい。
【0041】
また、補助電極26の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、クロム、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、マグネシウムなどの金属や、これら金属の少なくとも1種を含む合金などが好ましい。また、補助電極26は、単層構造に限らず、多層構造を採用してもよい。例えば、補助電極26は、MoNb層/AlNd層/MoNb層の3層構造を採用することができる。この3層構造において、下層のMoNb層は、下地との密着層として設け、上層のMoNb層は、AlNd層の保護層として設けることが好ましい。本実施形態の発光装置Aでは、補助電極26の材料と第1金属層27および第2金属層28の材料とを同じにしてある。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、製造時に、補助電極26と第1金属層27および第2金属層28とを同時に形成することが可能となり、低コスト化を図れる。
【0042】
また、絶縁膜29の材料としては、例えば、ポリイミドを採用しているが、これに限らず、例えば、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを採用することができる。
【0043】
上述の有機EL素子2では、第1電極21と第2電極23との間に有機EL層22のみが介在する領域が上述の発光部20を構成しており、発光部20の平面形状が絶縁膜29の内周縁の形状と同じ矩形状(図示例では、正方形状)になっている。ここで、発光装置Aは、平面視において有機EL素子2の発光部20以外の部分が非発光部となる。
【0044】
また、封止部材5としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック基板を用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエーテルサルフォン(PES)基板、ポリカーボネート(PC)基板などを用いてもよい。プラスチック基板を用いる場合は、プラスチック基板の表面にSiON膜、SiN膜などを成膜して水分の透過を抑えるようにしてもよい。封止部材5の材料としては、透光性基板1の材料との線膨張率差の小さな材料が好ましく、封止部材5と透光性基板1との線膨張率差に起因して発生する応力を低減する観点からは線膨張率差が等しい材料がより好ましい。
【0045】
封止部材5は、上述のように、接合部4を介して素子基板3と接合されている。これにより、封止部材5は、素子基板3との間に発光部20を気密封止する。また、有機EL素子2は、素子基板3の厚み方向において、封止部材5と発光部20との間に、空間を有している。ここで、接合部4と素子基板3との界面は、接合部4と第1端子部T1との第1界面と、接合部4と第2端子部T2との第2界面と、接合部4と透光性基板1との第3界面とがある。
【0046】
接合部4の材料としては、エポキシ樹脂を用いているが、これに限らず、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを採用してもよい。エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂としては、光硬化型(紫外線硬化型)の接着剤、熱硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤などを用いることができる。また、また、接合部4の材料としては、接着剤に無機フィラー(例えば、シリカ、アルミナなど)を混入させたものを用いることが好ましい。このように無機フィラーを混入させた接着剤を用いて接合部4を形成した場合には、水分の透過率を更に低減することが可能となる。また、接合部4の材料としては、フリット材(例えば、ガラスフリットなど)を用いてもよい。
【0047】
接着剤やフリット材は、粘度および所望の厚みに応じて、ロールコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、スリットコート法、スキージ塗布法などの印刷法により、素子基板3と封止部材5との一方の所定位置に印刷することができる。
【0048】
また、本実施形態の発光装置Aでは、封止部材5における凹所51の開口サイズを絶縁膜29の外周形状のサイズよりも大きく設定してあり、封止部材5の周部が接合部4を介して素子基板3に接合されている。これにより、発光装置Aは、第1電極21および第2電極23が外部に露出しないので、耐湿性を高めることが可能となる。ここで、有機EL素子2のうち外部に露出するのは、第1端子部T1および第2端子部T2の各々の一部である。
【0049】
ここにおいて、第1端子部T1は、上述のように第1透明導電性酸化物層24と第1金属層27との積層構造を有しているが、第1透明導電性酸化物層24のみにより構成される接合用領域24aを、接合部4の周方向に沿って第1端子部T1の幅方向の全長に亘って設けてある。また、第2端子部T2は、上述のように第2透明導電性酸化物層25と第2金属層28との積層構造を有しているが、第2透明導電性酸化物層25のみにより構成される接合用領域25aを、接合部4の周方向に沿って第2端子部T2の幅方向の全長に亘って設けてある。したがって、接合部4と第1端子部T1との第1界面は、接合部4と第1透明導電性酸化物層24との界面により構成され、接合部4と第2端子部T2との第2界面は、接合部4と第2透明導電性酸化物層25との界面により構成されている。これにより、本実施形態の発光装置Aは、接合部4と第1端子部T1および第2端子部T2との接合強度を向上させることが可能となり、しかも、第1金属層27および第2金属層28の経時変化で酸化が生じて第1界面および第2界面の状態が変化することを防止することが可能となり、信頼性を向上させることが可能となる。
【0050】
吸湿材としては、例えば、酸化カルシウム系の乾燥剤(酸化カルシウムをガラスに練り込んだゲッタ)などを用いることができる。吸湿材は、封止部材5への発光部20の投影領域の中央部とは重ならないように配置することが好ましく、発光部20の投影領域との重なりが少ない方がより好ましい。また、非発光部の面積が大きくてもよい場合は、発光部20の投影領域と重ならないように配置することが好ましい。
【0051】
シート部材6は、均熱板として機能するものである。シート部材6の材料としては、各種の金属の中で熱伝導率が高い金属が好ましく、銅を採用している。要するに、シート部材6は、金属シートにより形成してあり、この金属シートの材料として銅を採用している。シート部材6の材料は、銅に限らず、例えば、アルミニウム、青銅、砲金、金、真鍮などでもよい。ここにおいて、金属シートからなるシート部材6は、接着部材(図示せず)により封止部材5に固着されている。接着部材は、熱伝導率の高い材質で形成されていることが好ましい。また、接着部材は、厚みが0.1mm以下のものが好ましい。接着部材としては、例えば、両面テープを用いることができ、両面テープとしては、例えば、テサテープ株式会社製のテサテープ4972(基材がPET、粘着剤がアクリル系粘着剤、厚みが0.048mm)や、日栄化工株式会社製のNeo Fix 10、Neo Fix 30、Neo Fix 50、Neo Fix 60、Neo Fix 80、Neo Fix 100(いずれの商品も基材がPET、粘着剤がアクリル系粘着剤)など、カプトン(登録商標)両面テープなどを用いることができる。また、シート部材6は、封止部材5よりも熱伝導率の高い材料により形成されたものであればよく、金属シートに限らず、例えば、カーボンシート(炭素繊維シート)や、電気絶縁性および熱伝導性を有するシリコーンゲルやエラストマーのシートを用いてもよい。この種のシリコーンゲルのシートとしては、例えば、サーコン(登録商標)などを用いることができる。
【0052】
以下、本実施形態の発光装置Aの製造方法について図6〜図12を参照しながら説明する。
【0053】
まず、ガラス基板からなる透光性基板1の上記一表面側に、同一の透明導電性酸化物(例えば、ITO、AZO、GZO、IZOなど)からなる、第1電極21、第1透明導電性酸化物層24および第2透明導電性酸化物層25を蒸着法やスパッタ法などを利用して同時に形成することによって、図6に示す構造を得る。
【0054】
次に、透光性基板1の上記一表面側に、例えば、同一の金属材料などからなる、補助電極26、第1金属層27および第2金属層28を蒸着法やスパッタ法などを利用して同時に形成することによって、図7に示す構造を得る。
【0055】
続いて、透光性基板1の上記一表面側に、樹脂材料(例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂など)からなる絶縁膜29を形成することによって、図8に示す構造を得る。
【0056】
その後、透光性基板1の上記一表面側に、有機EL層22を例えば蒸着法などにより形成することによって、図9に示す構造を得る。なお、有機EL層22の形成方法は蒸着法に限らず、例えば、塗布法などでもよく、有機EL層22の材料に応じて適宜選択すればよい。
【0057】
続いて、透光性基板1の上記一表面側に、同一の金属材料(例えば、アルミニウム、銀など)からなる第2電極23および引出配線23bを蒸着法やスパッタ法などを利用して形成することによって、図10に示す構造の素子基板3を得る。
【0058】
その後、素子基板3に、接合部4の材料である接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ガラスフリットなど)4aをディスペンサなどにより塗布することによって、図11に示す構造を得る。ここにおいて、接合部4となる接着剤4aを塗布する塗布工程では、素子基板3の周部に接着剤4aを矩形枠状に塗布しているが、有機EL素子モジュール3ではなく、カバー基板5における凹所51の周部に接合部4の接着剤4aを矩形枠状に塗布するようにしてもよい。なお、接合部4となる接着剤4aを塗布する塗布装置は、ディスペンサに限らず、例えば、スクリーン印刷装置、ダイコーター、スリットコーターなどを用いてもよい。
【0059】
いずれにしても接合部4となる接着剤4aを塗布した後、予め吸湿材およびシート部材6を貼り付けた封止部材5を重ね合わせ、接着剤4aを未硬化の状態から硬化させることで接合することによって、図1に示す構造の発光装置Aを得る。接着剤4aを未硬化の状態から硬化させるにあたっては、接着剤4aが紫外線硬化型の場合には例えば紫外線LEDから紫外線を照射して接着剤4aを硬化させる。また、接着剤4aが熱硬化型の場合には接着剤4aを加熱することにより接着剤4aを硬化させる。なお、吸湿材としては、例えば、シール型の乾燥剤や塗布型の乾燥剤を用いることが可能であり、塗布型の乾燥剤を用いる場合の硬化工程は、接合部4の材料である接着剤4aとの組み合わせに応じて、封止部材5と素子基板3との重ね合わせ前に単独で行うか、接着剤4aを硬化させる硬化工程で兼ねるかのいずれかであればよい。塗布型の乾燥剤を塗布する方法としては、例えば、ディスペンサ、スクリーン印刷装置、メタルマスク、ダイコーター、スリットコーターなどを用いる方法を採用することができる。
【0060】
ここで、封止部材5への吸湿材の貼付工程、素子基板3もしくは封止部材5に接着剤4aを塗布する塗布工程、素子基板3と封止部材5とを重ね合わせる重ね合わせ工程、接着剤4aを硬化させる硬化工程は、例えば、露点−65℃の窒素ガス雰囲気中で行うようにしている。したがって、素子基板3と封止部材5とで囲まれた空間には、窒素ガスが封入されている。なお、シート部材6は、接合部4となる接着剤4aを硬化させた後で、封止部材5に貼り付けるようにしてもよい。
【0061】
本実施形態の発光装置Aでは、発光部20の平面サイズを80mm□に設定してあるが、これに限らず、例えば、30〜300mm□程度の範囲で適宜設定すればよい。また、第2端子部T2の幅方向の両側に配置される2つの第1端子部T1、T1の中心間距離を30mmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。また、第1電極21の厚さを110nm〜300nm程度の範囲、有機EL層22の厚さを150nm〜300nm程度の範囲、第2電極23の厚さを70nm〜300nm程度の範囲、絶縁膜29の厚さを0.7μm〜1μm程度の範囲、補助電極26、第1金属膜27および第2金属膜28の厚さを300nm〜600nm程度の範囲で適宜設定してあるが、これらの値は特に限定するものではない。
【0062】
また、補助電極26の幅については、幅が広くなるほど、補助電極26のインピーダンスが低下し、発光部20の輝度の面内ばらつきは低減されるが、非発光部の面積が増加して光束が低下するので、0.3mm〜3mm程度の範囲で設定することが好ましい。本実施形態の発光装置Aを複数個並べて光源とする照明器具では、補助電極26の幅を狭くするほど、隣り合う発光部20間の距離を小さくでき、見栄えが良くなる。また、第1端子部T1および第2端子部T2と透光性基板1の周縁との距離は、0.2mmに設定してあるが、この値は特に限定するものではなく、例えば、0.1〜2mm程度の範囲で適宜設定することが好ましい。発光装置Aの非発光部の面積を小さくするには、第1端子部T1および第2端子部T2と透光性基板1の周縁との距離を短くすることが好ましいが、第1端子部T1および第2端子部T2と他の金属部材(例えば、照明器具の金属製の器具本体など)との間に所定の沿面距離を確保する必要がある場合には、この沿面距離よりも長い値に設定することが好ましい。
【0063】
以上説明した本実施形態の発光装置Aでは、封止部材5と発光部20との間に空間を有し、封止部材5における発光部20側とは反対側に、封止部材5よりも熱伝導率の高いシート部材6が配置されているので、有機EL素子2の発光部20の温度の均熱化を図ることが可能となって発光部20の温度の面内ばらつきを低減することが可能となり、しかも、放熱性を向上させることが可能となる。しかして、発光装置Aでは、有機EL素子2の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図ることが可能となる。
【0064】
本実施形態の発光装置Aにおけるシート部材6の厚みは、少なくとも0.1mmであることが好ましい。ここで、発光部20の平面サイズを80mm□、透光性基板1を無アルカリガラス基板、封止部材5をソーダガラス基板、接合部4の材料である接着剤4aをエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製のXNR5570-B1)、シート部材6を銅箔からなる金属シート、接着部材を日栄化工株式会社製のNeo Fix 10、第1電極21の材料をITO、第2電極23の材料をアルミニウム、発光部20の厚み方向における発光部20と封止部材5との距離を0.5mm、封止部材5においてシート部材6と重なる部分の厚みを0.6mmとした構成において、シート部材6の厚みを変化させた場合に、有機EL素子2への通電電流を275mAとした場合の発光部20の温度を発光面側から赤外線カメラ(サーモビューア)により測定して得られた結果を図12に示す。図12は、横軸がシート部材6の厚みであり、縦軸が面内温度上昇値である。また、図12中のA1は温度上昇値の面内分布における最大値(Tmax)、同図中のA2は温度上昇値の面内分布における最小値(Tmin)、同図中のA3は上述の最大値と最小値との差分値(ΔT=Tmax−Tmin)である。
【0065】
図12から、シート部材6の厚みを0(シート部材6がない場合)から増加させたときに、厚みが0.1mmで差分値がほぼ収束していることが分かる。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6の厚みを、少なくとも0.1mmとすることにより、シート部材6の温度の面内均一性を向上させることが可能となり、発光部20の温度の均熱化を図ることが可能となる。
【0066】
また、シート部材6は、少なくとも、封止部材5への発光部20の投影領域の全域を覆う大きさ(平面サイズ)であることが好ましい。ここで、発光部20の平面サイズを80mm□、透光性基板1を無アルカリガラス基板、封止部材5をソーダガラス基板、接合部4の材料である接着剤4aをエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製のXNR5570-B1)、シート部材6を銅箔からなる金属シート、接着部材を両面テープの一種であるテサテープ4972、第1電極21の材料をITO、第2電極23の材料をアルミニウム、発光部20の厚み方向における発光部20と封止部材5との距離を0.5mm、封止部材5においてシート部材6と重なる部分の厚みを0.6mm、シート部材6の厚みを0.1mmとして、シート部材6の平面サイズを変化させた試料について、有機EL素子2への通電電流を250mAとした場合の発光部20の温度を赤外線カメラにより測定して得られた結果を図13〜図15に示す。なお、シート部材6は、厚み方向に沿った中心線が発光部20の厚み方向に沿った中心線と揃うように配置してある。また、シート部材6を接着部材を介して封止部材5に貼り付ける際には、ゴムローラを装着したシート貼付器を用いた。
【0067】
図13(b)は同図(a)のようにシート部材6の平面サイズを83mm×83mmとして封止部材5への発光部20の投影領域の全域を覆った試料についてのサーモグラフィである。また、図14(b)は同図(a)のようにシート部材6の平面サイズを83mm×71.3mmとして封止部材5への発光部20の投影領域の全域を完全には覆っていない試料についてのサーモグラフィである。また、図15(b)は同図(a)のようにシート部材6の平面サイズを55mm×55mmとして封止部材5への発光部20の投影領域の中央部のみを覆った試料についてのサーモグラフィである。なお、図13(b)、図14(b)および図15(b)それぞれの図中の黒文字の数値は、発光部20の中心並びに四隅の各々の温度であり、括弧内の黒文字の数値は、点灯前の温度からの温度上昇値であり、ΔTについては上述のように、温度上昇値の面内分布における最大値(Tmax)と最小値(Tmin)との差分値(ΔT=Tmax−Tmin)である。
【0068】
図13〜図15から、シート部材6の平面サイズを大きくするにつれて、差分値が小さくなり、温度上昇値の面内ばらつきが小さくなっていることが分かる。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6の大きさを、封止部材5への発光部20の投影領域の全域を覆う大きさとすることにより、発光部20の温度のより一層の均熱化を図ることが可能となる。なお、シート部材6の大きさを、封止部材5への発光部20の投影領域の80%以上を覆う大きさとすることにより、発光部20の温度の均熱化を図ることが可能となる。
【0069】
また、シート部材6は、封止部材5における接合部4の投影領域の内側に収まる大きさであることが好ましい。これにより、発光装置Aでは、シート部材6により封止部材5を完全に覆ってしまう場合に比べて、接合部4の外観検査が容易になる。
【0070】
また、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6として、銅もしくはアルミニウムにより形成された金属シート(銅箔もしくはアルミニウム箔)を用いることにより、低コスト化を図ることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の発光装置Aでは、図16〜図19それぞれに示すように、シート部材6における封止部材5側とは反対側の表面に当該表面が平面で有る場合に比べて放熱面積を増大させる面積増大部62を設けてもよい。なお、図16〜図19それぞれにおける(a)は、封止部材5側とは反対側から見た概略平面図であり、(b)は、概略断面図である。
【0072】
図16に示したシート部材6における面積増大部62は、凹部により構成されており、複数の面積増大部62が全体として平面視ストライプ状に形成されている。また、図17に示したシート部材6における面積増大部62は、断面三角形状の凸部により構成され、全体として平面視格子状に形成されている。また、図18に示したシート部材6における面積増大部62は、半球状の凸部により構成され、全体として2次元アレイ状に配置されている。また、図19に示したシート部材6における面積増大部62は、シート部材6の表面を粗面化加工することにより形成してある。なお、図16〜図18それぞれに示した面積増大部62は、例えば、エンボス加工によって形成することができる。
【0073】
発光装置Aは、上述の面積増大部62を設けることにより、放熱性を更に向上させることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6において、封止部材5側とは反対側にシート部材6の基材よりも放射率の高い熱放射部(図示せず)を設けてもよい。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、シート部材6の放射率が高くなって放熱性が更に向上し、有機EL素子2の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図ることが可能となる。放熱性を更に向上させることが可能となる。
【0075】
熱放射部は、例えば、シート部材6の基材である金属シートが電解銅箔の場合、電解銅箔の一表面側(封止部材5側とは反対側に位置させる表面側)を黒色酸化処理(黒色処理)することにより形成することができる。なお、金属シートがアルミニウム箔の場合の黒色酸化処理は、アルマイト処理である。
【0076】
また、熱放射部は、シート部材6の一表面側(封止部材5側とは反対側に位置させる表面側)にシート部材6の基材に比べて放射率の高い媒体(例えば、黒色系や白色系のアクリル樹脂や塗料など)を塗装することにより形成してもよい。この場合には、放熱性が向上するだけでなく、シート部材6の耐食性を高めることができるという利点もある。
【0077】
また、本実施形態の発光装置Aでは、上述のように、有機EL素子2が、第1電極21、有機EL層22、第2電極23、第1端子部T1、第2端子部T2および補助電極26を備え、透光性基板1の上記一表面において上記規定方向の両端部の各々に第1端子部T1および第2端子部T2が配置されていることが好ましい。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、高輝度化および輝度の面内均一性の向上を図ることが可能となる。また、本実施形態の発光装置Aを上記規定方向に直交する方向に複数個並べて光源とする照明器具では、隣り合う発光部20間の距離を小さくでき、見栄えが良くなる。
【0078】
また、本実施形態の発光装置Aでは、上述のように、第1端子部T1および第2端子部T2が、各々、透明導電性酸化物層24,25と金属層27,28との積層構造を有し、透明導電性酸化物層24,25のみが接合部4と接していることが好ましい。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、高輝度化および輝度の面内均一性の向上を図れ、そのうえ、接合部4と第1端子部T1および第2端子部T2との接合強度を向上させることが可能となる。しかも、第1金属層27および第2金属層28の経時変化で酸化が生じて第1界面および第2界面の状態が変化することを防止することが可能となり、信頼性を向上させることが可能となる。本実施形態の発光装置Aと、第1端子部T1および第2端子部T2で金属層27,28を接合部4と接するようにした比較例とで、発光部20において発光しないエリア(ダークエリア)が、発光部20のエッジから規定距離だけ進行するのにかかる時間を比較したところ、本実施形態の発光装置Aの方が、より長い時間を要することが確認された。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、水分や酸素を遮断する性能であるガスバリア性の向上を図れ、長寿命化を図ることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態の発光装置Aでは、第1端子部T1の幅の合計寸法と第2端子部T2の幅の合計寸法とを同じ値に設定することにより、有機EL素子2へ流す電流を大きくすることが可能となり、また、発光効率の向上を図れる。また、本実施形態の発光装置Aでは、引出配線23bに臨界電流密度(金属がアルミニウムの場合には1×105A/cm2)以上の電流が長時間にわたって流れると、エレクトロマイグレーションが起こり、断線が起こりやすくなってしまう懸念がある。これに対して、ITOなどのTCOにより形成され第1電極21に連続した第1透明導電性酸化物層24は、引出配線23bに比べて、臨界電流密度が大きく、臨界電流密度に対するマージンが大きい。したがって、本実施形態の発光装置Aでは、第2端子部T2の幅の合計寸法を第1端子部T1の幅の合計寸法よりも大きくすることでエレクトロマイグレーション耐性(以下、EM耐性と略称する)を向上させることが可能となる。なお、図3について見れば、第2端子部T2の幅の合計寸法とは、4個の第2端子部T2の幅(図3における上下方向の寸法)の合計寸法であり、第1端子部T1の幅の合計寸法とは、6個の第1端子部T1の幅(図3における上下方向の寸法)の合計寸法である。
【0080】
また、本実施形態の発光装置Aは、平面視形状が矩形状の発光部20の所定の平行な2辺の各々に沿ってm個(m≧1)の第2端子部T2と〔m+1〕個の第1端子部T1とが、第2端子部T2の幅方向の両側に第1端子部T1が位置するように配置されており、第1透明導電性酸化物層24と第2透明導電性酸化物層25とが同じ厚さに設定されている。これにより、本実施形態の発光装置Aでは、接合部4の第1端子部T1および第2端子部T2に対する接合強度や密着性を揃えることが可能となり、信頼性をより向上させることが可能となる。
【0081】
ところで、透光性基板1の平面視形状は、矩形状の場合、長方形状に限らず、正方形状でもよい。透光性基板1の平面視形状が正方形状の場合は、発光部20の平面形状を長方形状とし、当該長方形状の発光部20における2つの短辺を上記所定の2辺とすればよい。また、透光性基板1の平面視形状を長方形状として、発光部20の平面視形状を透光性基板1とは非相似の長方形状として、当該長方形状の発光部20における2つの長辺を上記所定の2辺としてもよい。
【0082】
上述の有機EL素子2では、透明導電膜からなる第1電極21が陽極を構成し、第1電極21よりもシート抵抗が小さな第2電極23が陰極を構成しているが、第1電極21が陰極を構成し、第2電極23が陽極を構成してもよく、いずれにしても、透明導電膜からなる第1電極21を通して光を取り出すことが可能であればよい。
【0083】
また、実施形態で説明した発光装置Aは、例えば、照明用の光源として好適に用いることができるが、照明用に限らず、他の用途に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
A 発光装置
1 透光性基板
2 有機EL素子
3 素子基板
4 接合部
5 封止部材
6 シート部材
20 発光部
51 凹所
62 面積増大部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板および前記透光性基板の一表面側に形成された有機EL素子を有する素子基板と、前記透光性基板の前記一表面側において前記有機EL素子の発光部を覆い前記素子基板に接合部を介して接合され前記素子基板との間に前記発光部を気密封止した封止部材とを備えた発光装置であって、前記封止部材と前記発光部との間に空間を有し、前記封止部材における前記発光部側とは反対側に、前記封止部材よりも熱伝導率の高いシート部材が配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記シート部材は、少なくとも、前記封止部材への前記発光部の投影領域の全域を覆う大きさであることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記シート部材は、前記封止部材における前記接合部の投影領域の内側に収まる大きさであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記シート部材は、銅もしくはアルミニウムにより形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側の表面に前記表面が平面である場合に比べて放熱面積を増大させる面積増大部が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側に前記シート部材の基材よりも放射率の高い熱放射部が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記シート部材の厚みが少なくとも0.1mmであることを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項1】
透光性基板および前記透光性基板の一表面側に形成された有機EL素子を有する素子基板と、前記透光性基板の前記一表面側において前記有機EL素子の発光部を覆い前記素子基板に接合部を介して接合され前記素子基板との間に前記発光部を気密封止した封止部材とを備えた発光装置であって、前記封止部材と前記発光部との間に空間を有し、前記封止部材における前記発光部側とは反対側に、前記封止部材よりも熱伝導率の高いシート部材が配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記シート部材は、少なくとも、前記封止部材への前記発光部の投影領域の全域を覆う大きさであることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記シート部材は、前記封止部材における前記接合部の投影領域の内側に収まる大きさであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記シート部材は、銅もしくはアルミニウムにより形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側の表面に前記表面が平面である場合に比べて放熱面積を増大させる面積増大部が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記シート部材は、前記封止部材側とは反対側に前記シート部材の基材よりも放射率の高い熱放射部が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記シート部材の厚みが少なくとも0.1mmであることを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−212555(P2012−212555A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77504(P2011−77504)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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