説明

発光顔料により前処理された金属

本発明は紫外線を照射されると発光する粒状の無機顔料を含み、pH値が4乃至1である金属表面防食処理用の極めてクロム含有量の少ない水性剤に係わる。本発明の水性剤を調製するための濃縮物、または金属表面の処理にそのまま使用することができる濃縮物もまた本発明に含まれる。本発明の方法はこのような水性剤で金属表面を処理するステップと、金属基材防食被覆層中に沈着および/またはその表面に固定される本発明の無機顔料に起因する金属表面の発光を極力均一化することによって処理工程の質を工学的に評価するステップと、これらのステップから派生的に得られる、処理工程および/または被覆層品質を最適化するためのステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛又は亜鉛めっき鋼、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金の化学的表面処理の分野にある。本発明は、粒子状無機顔料を含有する金属表面を防食処理するための、実質的にクロムを含まない水性剤であって、顔料が、紫外線照射により発光(luminesce)し、かつそのpHが1以上4以下である水性剤に関する。本発明はまた、本発明の水性剤のための濃縮物として作用するか、又は金属表面を処理するために、そのまま直接使用することができる濃縮物も主に本発明に包含される。本発明による方法は、前記処理剤で金属表面を処理するステップと、金属基体の防食層内に本発明の無機顔料を含浸かつ/又は表面固定化することに起因する金属表面の発光を極力均一にすることによって処理工程の質を光学的に評価するステップとを含む。処理済金属表面の発光が好ましくは可視光領域内で発生し肉眼で識別可能であるような、防食処理の光学評価は、種々の後処理の可能性を拡大する。このような光学評価は、防食有機−無機ハイブリッド層内に発光顔料が存在しなければ、工業被覆プロセスにおいては可能ではなく、従って本発明の更なる態様を成す。
【背景技術】
【0002】
腐食から防護するための金属表面の化学処理は、実質的に、りん酸塩処理及び化成処理を包含し、後者の化成処理は、極めて薄い非晶質の、主に無機の保護膜を形成し、この処理は、肉眼に見えるようには金属表面を変化させることはない。干渉色の出現は、100nmを上回る被覆層厚に対してしか観察することはできない。干渉色が視角に対して強く依存することにより、防食処理済金属表面の全体的に均一な印象は生じない。不動態化化成処理としてクロメート化成被覆を施すことによってのみ、集中的に着色された金属表面が生成される。その結果として、金属表面のクロメート化成被覆に関する多年にわたる経験から、当業者は化成処理から生じる着色層を得ることに慣れている。このとき当業者は処理により所期の効果を実現できたかどうかを視覚的に即座に認識することができる。クロメート化成被覆は、使用される化学物質の毒性により、そして既存のヨーロッパ・ガイドライン(2000/53/EC; 2005/673/EC)により、クロムを含まない別の化成処理に事実上替えなければならないので、それぞれの処理を代表する金属表面の光学的可視改良をもたらす処理浴及び処理方法が必要である。例えばX線蛍光測定による、無色層の高価な表面分析検査が日常的に適用されているが、これは極めてコストが高く、さらに、ランダム試料タイプの品質管理の性質しか有していない。
【0003】
従来技術において、無色化成処理層を生成する金属表面のための典型的な防食処理法が、国際公開WO 00/71626号パンフレット及びまだ公開されていない独国特許出願第102005059314.3号明細書に記載されている。「金属表面の化成」は、金属基体に対する腐食作用によって開始される、ほとんど完全に無機でありかつ非晶質である保護膜の析出を意味するものと、当業者によって理解される。この場合、この化成処理層は、処理剤からのアニオン及びカチオンの両方、並びに、腐食攻撃による表面の化成処理中に溶解されて離れ、或る程度層内に埋め込まれた、金属基体のカチオンから成っている。加えて、化成処理浴はほとんど、有機高分子化合物を含有する。これらの有機高分子化合物は通常は錯化特性を示すが、しかし専ら浴成分を安定化するために作用することはなく、むしろ化成処理層の成分として、さらに堆積される有機ラッカー系の付着に対して好都合な影響を与えるように選択される。従って、化成処理層は、有機−無機ハイブリッド層を形成し、有機成分は、化成処理剤の関連組成、及び化成剤が適用される様式を通して大幅に変化させることができる。
【0004】
これに関しては、国際公開WO 00/71626号には、クロム非含有防食剤が開示されており、この防食剤は、水、及び
a) 0.5乃至100g/リットルの、チタン(IV)、珪素(IV)、及び/又はジルコニウム(IV)のヘキサフルオライドアニオン
b) 0乃至100g/リットルのりん酸
c) 0乃至100g/リットルの、コバルト、ニッケル、バナジウム、鉄、マンガン、モリブデン、又はタングステンの化合物のうちの1種又は複数種
d) 0.5乃至30重量%の、少なくとも1種の水溶性及び/又は水分散性皮膜形成有機ポリマー又はコポリマー
e) 0.1乃至10重量%の有機ホスホン酸
f) 必要により付加的な補助剤及び添加剤
を含むものである。
【0005】
これと関連して、化成処理は「塗布・乾燥型」法で行われるので、化成処理層内の有機ポリマー成分含有量は、処理剤中のポリマー成分含有量で調節することができる。
【0006】
まだ公開されていない独国特許出願第102005059314.3号明細書に、金属表面の防食処理のための「ウェット・イン・ウェット(wet in wet)」法が記載されており、ここでは、B、Si、Ti、Zr及びHf元素から選択された少なくとも1種の元素のふっ化物錯体の酸性水溶液と、金属表面とを接触させる。この酸性水溶液はさらに、少量のポリアリルアミン、並びに種々の金属イオン、例えば銅(II)イオン、芳香族カルボン酸及び粒子状シリカを含む。この「ウェット・イン・ウェット」法では、化成被覆層が生成される。この化成被覆層は、ほとんど全体が無機成分から成っており、そして、処理直後に、しかも中間乾燥ステップなしに電着塗装を施される。
【0007】
上述の文献において、生成された化成処理層は無色であり半透明であるので、処理済金属表面がメタリックの明るい色に見えることは明らかである。クロムを含まない着色化成処理層を金属上に生成するための周知の方法は、有機色素、例えばアリザリン(国際公開WO 00/26437号パンフレット)、蛍光有機化合物、例えばスチルベン誘導体又はクマリン誘導体(米国特許第5,516,696)、又は例えばモリブデンの遷移金属化合物(国際公開第94/25640号パンフレット)を添加することを含む。
【0008】
他方において、国際公開WO 2005/116294号パンフレットには、有機ポリマーの存在において行われる化成処理のための処理剤が開示されており、この有機ポリマーは、第1に防食作用を増強し、そして第2に発色団置換基を含有しているので、金属表面上にこのポリマーが存在していることを肉眼で知覚することができる。ここでは、発光マーカー置換基は、トルイジン・ブルー及びニュートラル・レッドから選択される。このような処理剤の利点は、発光分子、すなわち色の知覚をもたらすマーカー分子が、ポリマー構造に永久に結合されることである。従って、発光現象は化成処理層の存在に明らかに起因するので、必要に応じて、化成被覆層の層厚を推測することもできる。
【0009】
上述の方法で不都合な点は、ポリマー成分が所定量を下回る、有機−無機ハイブリッド層である化成処理層は、発光現象が著しく低下するため、もはや肉眼だけでは認知することができないことにある。しかし原則として、化成処理層内で高いポリマー成分を実現しなければならないときには、発色団又は発光マーカー分子を有する膜形成ポリマーの誘導体化は、特に「塗布・乾燥型処理」の場合、合成に際して多くの労力を要し高価である。
【0010】
化成処理における付加的な成分として粒子状無機顔料を含有することが有利であることが最近判った。このような顔料は、これらがナノスケール粒子として存在する限り、丁度ポリマー成分のように、化成処理層に対する塗料付着性及び耐食性を改善するのに役立つ。こうして、DE10161383号明細書には、平均粒径6乃至150nmのアルミニウム、バリウム、セリウム、カルシウム、ランタン、珪素、チタン、イットリウム、亜鉛又はジルコニウムの化合物から選択された粒子無機系が、「塗布・乾燥型」処理における層形成のために使用される防食処理剤の付加的な成分として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 00/71626A
【特許文献2】US 5,516,696
【特許文献3】WO 94/25640A
【特許文献4】WO 2005/116294A
【特許文献5】DE 10161383A
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ヨーロッパガイドライン 2000/53/EC
【非特許文献2】ヨーロッパガイドライン 2005/673/EC
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、高い耐食性及び良好な塗料付着性を有する被覆層が単一ステップで生成され、また紫外線により照射されると発光を発する(luminesce)、クロムを含まない薬剤及び金属表面の防食処理方法を提供することである。さらに、防食被覆層の有機含有量と無機含有量との比が広範囲にわたって調節可能であることが望ましく、また発光現象の強度がこの比から実質的に独立していることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、少なくとも1種の粒子状無機顔料を含有する、金属表面を防食処理するための、クロムを含まない水性防食処理剤であって、粒子状無機顔料が、紫外線により照射され、かつ水性防食処理剤のpH値が1以上4以下であるときに発光する、水性防食処理剤によって達成される。
【0015】
定義によれば、処理溶液はクロムを含まず、すなわちこれは、意図的に添加されたクロム化合物を含まない。しかし、例えば容器材料から浸出することにより生じた不純物としての微量のクロムを排除することはできない。
【0016】
「発光現象(Luminescence)」は一般に、光量子の放出による、電子励起原子、分子、及び/又は固体状態の放射緩和を意味するものと当業者によって理解されている。本発明において好ましい発光のタイプは、紫外線の照射によって生じさせられる蛍光及び/又はりん光である。粒子状無機顔料を電子励起するために本発明に従って典型的に使用される紫外線の波長は、200nmよりも短くてはならず、好ましくは280nmよりも短くてはならず、特に好ましくは320nmよりも短くてはならない。励起放射線(「紫外線」)の長波の上限はほぼ400nmであるが、しかし、可視光領域内に拡げることもできる。
【0017】
本発明において使用可能な無機発光顔料は、「母材」と、少なくとも1種のドーピング元素とを含む。本発明によれば、「母材」は、その元素が少量のいわゆるドーピング元素によって部分置換されている材料として定義される。ドーピング元素は、母材を形成する元素とは異なる。
【0018】
本発明において使用される粒子状無機顔料は、少なくとも部分的に結晶性であるか、或いは、結晶性ドメインを有している。この結晶性ドメインにおいて、規則的に反復する元素セル内の格子元素(例えば原子又はイオン)は、三次元格子を形成するように立体規則構造をとっている。本発明において使用されるべき無機顔料粒子の内部のこれらの結晶性ドメインは、以下に「主格子」として表記された結晶性基本構造を形成する。このタイプの主格子を好適な外来原子でドーピングすることにより、好適な波長の光で照射すると発光することになる。個々の外来原子は、光エネルギーを受けると、励起電子原子状態に変えられ、次いでより低いエネルギーの光量子を放出することにより、緩和して電子基底状態に戻る。
【0019】
発光顔料の母材が金属又は半金属の酸化物、硫化物、又は酸化物−硫化物から選択されると、本発明にとって好ましい。ここでは、アルミニウム(好ましくはAl3+)、ゲルマニウム(好ましくはGe4+)、珪素(好ましくはSi4+)、スカンジウム(好ましくはSc3+)、イットリウム(好ましくはY3+)、ランタン(好ましくはLa3+)、セリウム(好ましくはCe3+)、プラセオジミウム(好ましくはPr3+)、ネオジミウム(好ましくはNd3+)、サマリウム(好ましくはSm3+)、ユーロピウム(好ましくはEu3+)、ガドリニウム(好ましくはGd3+)、テルビウム(好ましくはTb3+)、ジスプロシウム(好ましくはDy3+)、ホルミウム(好ましくはHo3+)、エルビウム(好ましくはEr3+)、ツリウム(好ましくはTm3+)、イッテルビウム(好ましくはYb3+)、又はルテチウム(好ましくはLu3+)から成る群のうちの少なくとも1つから金属又は半金属を選択することも好ましい。
【0020】
具体的には、ベロブスカイトの格子構造から派生する主格子、例えばMg2GeO6、BaMgAl1017、CeMgAl1019、及びY23、並びに類似の硫化物主格子又は混合型酸化物−硫化物主格子が好ましい。
【0021】
母材は好ましくは、周期律表の第III族又は第IV族の遷移金属又は希土類金属の金属の少なくとも1種の金属カチオンから選択されたドーピング元素でドープされる。ドーピング元素の定義によれば、ドーピング元素として選択された金属は、母材の金属とは異なることは明らかである。ドーピング元素は、少なくとも1種の金属カチオンMn2+、Mn4+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、又は、Lu3+から選択されることがやはり好ましい。
【0022】
本発明との関連において、このようなドープ型母材は、紫外線で照射されると可視光領域内で発光する粒子状無機顔料の形態、そして特に人の眼で知覚され得る、すなわち十分な強度で発光する粒子状無機顔料の形態を成していると特に好ましい。このためには、本発明の処理剤又は濃縮物の発光特性ではなく、顔料自体の発光特性を考えるべきである。
【0023】
本発明との関連において、粒子又は粒径は「一次粒子」のサイズに基づいて分類される。「一次粒子」は、例えば結晶格子の形の一次イオン力又は共有結合力により一緒に保持された粒子を意味するものと理解される。一次粒子とは対照的に、「二次粒子」は、弱いイオン力又は極性に基づく他の力により一次粒子の外面又は結晶粒界で互いに付着し合う2つ又は3つ以上の一次粒子から成る凝集体を意味するものと理解される。これらの粒子は、例えば単純な機械的分散によって、かつ/又は分散剤の添加によって、低いエネルギー消費で互いに分裂させ、これにより、一次粒子間に存在する弱い結合力を排除又は低減することができる。
【0024】
これらの粒子の効果的な一体化、又は概ね良好な膜形成特性が、良好な塗料付着特性及び防食特性を有するマーカー材料としての粒子状無機発光顔料を本発明に従って使用することの前提条件である。結果として、本発明に基づく処理剤又は濃縮物が含む無機顔料粒子は100粒のうち、好ましくは、少なくとも1粒、好ましくは少なくとも10粒が、2μm以下、好ましくは0.2μm以下、特に好ましくは0.02μm以下の粒径を示す。
【0025】
基本的には、あらゆる粒子測定法が、本発明による顔料粒子の粒径分布を測定するのに適しており、光回折原理に基づく測定法が好ましい。本発明との関連において提示された粒径データは、ドイツ国Herrsching、Malvern InstrumentsのMASTERSIZER X装置(version 1.2b)を用いて行われた測定値を意味する。この装置の動作原理は、粒径が回折角と関連するという点において光ビームの回折に基づいている。光回折の測定は瞬時に行われ、そして本発明による処理剤又は濃縮物中でいつでも実施可能である。
【0026】
他の粒径測定法は例えば粒度分析である。粒度分析では、調査するべき少量の粉末の均質懸濁液を好適な分散剤中に製造し、次いで沈降させておく。もちろん、本発明による分散型処理剤又は濃縮物を、粒径測定のためのこのような沈降分析を目的として直接使用することもできる。粒子(球体であると想定する)のサイズ及び密度と、これら粒子の沈降速度との間のストークの法則によって与えられる関係から、粒径のパーセント分布に対して、沈降経過全体にわたって結論を引き出すことができる。ナノスケール分散体の粒径分布は、超遠心分離法によって測定することもできる。この超遠心分離法では、沈降は最大105倍の重力で行うことができる。他の粒径測定法は、顕微鏡法、電子顕微鏡法、篩分析、及び表面密度の測定などである。
【0027】
本発明による処理剤又は濃縮物は、無機顔料の主に懸濁液又は分散体として存在するので、処理剤又は濃縮物の調製直後のリアルタイムの粒径測定が理にかなっている。沈降過程及び/又は凝集過程は、このような懸濁液又は分散体の安定性を定義するので、本発明による当該処理剤又は濃縮物に対して最大貯蔵時間又は最大処理時間が定義される。従って、本発明の根底を成す問題点を最適に解決するためには、処理剤又は濃縮物中の粒子状無機発光顔料の上述の好ましい粒径に対する連続測定プロセス制御が必要である。結果として、本発明による処理剤又は濃縮物中の最初に添加された顔料成分の少なくとも50重量%が、懸濁液として及び/又は分散体として存在するべきであり、この場合、無機顔料粒子は100粒のうち、好ましくは、少なくとも1粒、好ましくは少なくとも10粒が、2μm以下、好ましくは0.2μm以下、特に好ましくは0.02μm以下の粒径を示す。
【0028】
分散体及び/又は懸濁液中の定義済粒径までの顔料粒子の含有量のパーセンテージ数は、実験により測定された粒径分布N(D)から下記のように計算される:
【数1】

上記式中、Dmaxは、この直径Dmax以下の粒子の数画分が測定される際の粒径の上限である。
【0029】
紫外線で照射されると発光し、また具体的には浸漬法、いわゆる「リンス法」のための配合物を同時に形成する本発明の処理剤中に含まれる粒子状無機顔料成分量は、好ましくは0.05g/リットル以上、特に好ましくは0.5g/リットル以上であり、そして好ましくは10g/リットル以下である。
【0030】
本発明による処理剤中に含まれる粒子状無機顔料は、前記表面と処理剤とを接触させることにより、1以上4以下の規定pHで、水相から金属表面上に析出させられることによって層を形成する。このことは、金属表面に近接した一次粒子が不安定化及び凝集を被ることから発生する。分散された顔料粒子のこのような層形成不安定化それ自体は、金属表面の腐食性エッチングによって生じる金属表面におけるpHの増大によって引き起こされる。pHの増大は、処理溶液内部に、数マイクロメートル(10-4cm)にわたって広がることができる。
【0031】
この被覆層の耐食性及び安定性は今や、金属表面の、ふっ化物錯体の種々のカチオンを含む無機層への化成を誘発するチタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体を本発明による処理剤に添加する結果として、著しく改善することができ、発光顔料が金属表面上により効果的に定着するという結果を伴う。
【0032】
特に浸漬法、いわゆる「リンス法」のための被着溶液を同時に形成する本発明の処理剤は、好ましくは、全部で0.01g/リットル以上、好ましくは0.025g/リットル以上、かつ2g/リットル以下、好ましくは1g/リットル以下、特に0.5g/リットル以下のチタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素、並びに少なくとも所定の量のふっ化物を含み、この場合、TiとF及び/又はZrとF及び/又はSiとFとの原子比が1:1乃至1:6であるようになっている。ここでは、上記Tiイオン、Zrイオン及び/又はSiイオンは、ヘキサフルオライド錯体、例えばヘキサフルオライド酸又は上記濃度範囲の水溶性塩、例えばナトリウム塩の形態で添加することができる。この場合、原子比は1:6である。しかし、6つ未満のフルオライドイオンがそれぞれ中心元素Ti、Zr又はSiに結合されている錯体化合物を添加することもできる。これらの錯体化合物は、中心元素Ti、Zr又はSiのうちの少なくとも1つ、並びにこれらの中心元素のうちの1つの少なくとも1種の付加的な化合物がこの溶液に添加されると自ずから形成されることが可能である。付加的な化合物の一例としては、上記3種の中心元素の同じ又は別の元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、及び/又は酸化物が挙げられる。
【0033】
本発明のさらなる態様において、発光顔料のより効率的な結合を可能にするために、そしてその他の点では純粋な無機防食被覆層の塗料付着性を高めるために、本発明による処理剤は、水分散性及び/又は水溶性ポリマー、又は同様の層形成特性を有するポリマー混合物を含むこともできる。この場合、水性のポリマー含有剤で処理すると、金属表面上に有機−無機層被膜が形成される。層上の有機成分量又は無機成分量は、第1に本発明による処理剤の組成によって、そして第2には被着法によって、広範囲にわたって調節することができる。
【0034】
水分散性及び/又は水溶性ポリマー又はポリマー混合物は、種々の群、とりわけエポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂、フェノール−アルデヒド樹脂、カルボン酸基を含有するポリマー、高分子アルコール、高分子アルコールとカルボン酸基を含有するポリマーとのエステル化生成物、アミノ基を含有するポリマー、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー、及びホスフィン酸基、ホスホン酸基又はリン酸エステル基を含有するポリマーから選択することができる。
【0035】
具体的には、ポリビニルフェノールと、アルデヒド及び有機ヒドロキシル基含有アミンとのマンニッヒ反応による付加反応生成物として得られるアミノ置換型ポリビニルフェノール化合物が、フェノールアルデヒド樹脂として使用される。このようなポリ−4−ビニルフェノール化合物の例は、国際公開第00/26437号及び本願において引用された文献、例えば具体的には米国特許第5 281 282号明細書に見いだすことができる。
【0036】
更なる好ましい水溶性及び/又は水分散性有機ポリマーは:
a) ポリビニルアルコール、又はその水溶性及び/又は水分散性部分エステル、
b) 不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸又はこれらのアミドのポリマー又はコポリマー、
c) 群a)及びb)のポリマーのエステル、
d) ビニルピロリドンのポリマー又はコポリマー、
e) ビスフェノールAのジグリシジルエーテルのポリマー、
f) アルキレンホスホン酸又はアルキレンホスフィン酸及び1種又は2種以上の不飽和カルボン酸のコポリマー
から選択される。
【0037】
群a)のポリマーに関して、「部分エステル」は、アルコール基のうちの一部だけがエステル化されていることを意味するものと理解され、このエステル形成は、非高分子カルボン酸から生じる。具体的には、このエステル化は、炭素原子数1乃至4の一塩基性カルボン酸によって実現することができる。
【0038】
群b)のポリマー又はコポリマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のホモポリマー又はコポリマーから選択することができる。これらの酸基は、アミド基で部分置換するか又はアルコール、具体的には炭素原子数1乃至4の単純アルコールでエステル化することができる。具体例は、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びグリセロールプロポキシトリアクリレートの、又はこれらを有するホモポリマー及びコポリマーである。これらの具体例は、例えば国際公開第95/14117号明細書から知られている。加えて、群b)のポリマーは、マレイン酸モノマーを含むポリマーから選択することもできる。この場合の具体例はマレイン酸−メチルビニルエーテルコポリマーである。
【0039】
群a)のポリマーは一般に、遊離アルコール基を含み、群b)のポリマーは遊離カルボン酸基を含む。こうして、これらの双方のポリマーは、ブレンドとして一緒に添加することができるだけでなく、ポリマーa)のアルコール基とポリマーb)のカルボン酸基との少なくとも部分的なエステル化が発生した形態で添加することもできる。このことは、国際公開WO 94/12570号明細書により詳細に論じられている。記載の教示内容は、本発明との関連において応用することもできる。
【0040】
加えて、処理溶液は群d)のポリマーを含むことができる。このようなポリマー、及び化成処理のために処理溶液中でこれらのポリマーを使用することは、独国特許出願公開第100 05 113号明細書、及び同DE−A−101 31 723号明細書により詳細に記載されている。
【0041】
さらに、付加的なポリマーは、米国特許US−A5 356 490号明細書により詳細に記載されているように群e)のポリマーから選択することができる。
【0042】
有機ポリマーの平均分子量は、好ましくは少なくとも10,000ダルトンである。ポリマーが好ましくは酸性の処理溶液中に所期濃度範囲内で溶解可能又は分散可能である限り、分子量の上限はさほど重要ではない。例えば分子量の上限は50,000,000、特に20,000,000、そして具体的に好ましくは10,000,000ダルトンであることが可能である。5,000,000ダルトンの上限で十分なこともある。平均分子量は、好ましくは50,000ダルトンよりも多く、特に100,000ダルトンよりも多い。平均分子量は、例えばポリエチレングリコール標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィによって測定することができる。
【0043】
特に浸漬法、いわゆる「リンス法(Rinse−methods)」のための被着溶液を同時に形成する本発明の処理剤中の水分散性及び/又は水溶性ポリマー又はポリマー混合物成分量は、1ppm以上、特に好ましくは50ppm以上、そして好ましくは1000ppm以下である。
【0044】
本発明による処理剤のpHは、1を大きく下回るべきではない。それというのもpH値が低くなると、金属表面に対するエッチング作用がますます強くなるからである。好ましくはpH値は2以上であり、特には2.5以上である。pH値が6を上回ると、無機発光粒子の化成処理層及び/又は層形成析出物はもはや十分には生成されない。この処理剤は、好ましくは、4以下、特に3.5以下のpH値で機能する。
【0045】
本発明の処理剤により処理から生じる被覆層の耐食性及び/又は塗料付着性をさらに改善する任意の成分として、本発明の処理剤中には、種々異なる補助剤及び添加剤を含むこともできる。
【0046】
これらは、可視光領域内で発光することのない酸安定な粒子状無機顔料、好ましくはシリケート、特に好ましくはSiO2を含む。酸安定な粒子状無機顔料成分は、0.05g/リットル以上10g/リットル以下である。
【0047】
本発明の処理剤に添加することができる粒子形態の更なる無機化合物は特に好ましくは、炭酸化合物、酸化物、シリケート、又はスルフェート、特にアルミニウム、バリウム、セリウム、カルシウム、ランタン、珪素、チタン、イットリウム、亜鉛及び/又はジルコニウムを基剤とするコロイド粒子又は非晶質粒子、特に、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化セリウム、希土類混合酸化物、二酸化珪素、シリケート、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、及び/又は酸化ジルコニウムである。
【0048】
紫外線で照射されたときに発光することのない酸安定な粒子状無機顔料は、酸安定な無機顔料粒子100粒のうち少なくとも1粒、好ましくは少なくとも10粒の粒径が2μm、好ましくは0.2μm、特に好ましくは0.02μmを上回らないような、粒径分布を有する。本発明に従って処理又は被覆された基体、具体的には、1μmを上回る層厚の層被膜中に高いポリマー成分含有量を有する基体が溶接されるように意図されている場合、無機顔料よりも高い又はこれと同じ導電率を有する粒子形態の化合物、具体的には、アルミニウム、鉄、又はモリブデンの酸化物、りん酸塩、りん化物、又は硫化物、特にりん化アルミニウム、又は酸化鉄、りん化鉄、少なくとも1種のモリブデン化合物、例えば硫化モリブデン、グラファイト、及び/又はカーボンブラックを内蔵することが有利な場合がある。これらの粒子は、本発明に従って生成された層から任意に若干突出するような、平均粒径を有することもできる。
【0049】
さらに、本発明の処理剤は付加的に、銅のカチオン、及び/又はモリブデン、タングステン及び/又はバナジウムのオキソアニオンを、5ppm以上200ppm以下の量で含むこともできる。
【0050】
本発明の処理剤は、りんのオキソアニオン、好ましくはリン酸アニオンを、りん元素に換算して、0.5g/リットル以上20g/リットル以下のオキソアニオン含有量で含むこともできる。
【0051】
少なくとも部分的にアルミニウムから成る、処理されるべき表面に対するエッチング速度を高めるために、ひいては化成処理層及び/又は無機物の析出を加速するために、本発明の処理剤は、さらにフルオライドイオンを含むことができる。フルオライドイオンの画分は0.05g/リットル以上5g/リットル以下である。
【0052】
金属基体に対するエッチング攻撃を増大させる、当業者に知られている防食りん酸塩処理分野に由来する「促進剤」を、均質な皮膜を析出するために使用することができる。従って、本発明による処理剤は、下記「促進剤」のうちの少なくとも1つを含むことができる:
0.3乃至4g/リットル 塩素酸イオン、
0.01乃至0.2g/リットル 亜硝酸イオン、
0.05乃至4g/リットル ニトログアニジン、
0.05乃至4g/リットル N−メチルモルホリン−N−オキサイド、
0.2乃至2g/リットル m−ニトロベンゼンスルホン酸イオン、
0.05乃至2g/リットル m−ニトロベンゾエートイオン、
0.05乃至2g/リットル p−ニトロフェノール、
1乃至150mg/リットル 遊離形態又は結合形態の過酸化水素、
0.1乃至10g/リットル 遊離形態又は結合形態のヒドロキシルアミン、
0.1乃至10g/リットル 還元糖
【0053】
本発明の更なる態様は、好適に希釈されると本発明の処理剤をもたらす、又は被着のため、すなわち金属表面を処理するための濃縮水性組成物として直接使用することができる濃縮物を提供することにある。このような本発明の濃縮物の直接の使用は、いわゆる「非リンス」法にとくに適している。この「非リンス」法では、定義された液膜が金属基体上に(例えばローラ被着又はスクイージングによる噴霧によって)被着され、続いて層を形成するために乾燥される。これらのタイプの「非リンス」濃縮物は、好適な特定の温度(「膜形成温度」)で均質な皮膜を形成する高含有量の水中溶解可能な、及び/又は水中分散可能なポリマーを有している。
【0054】
従って、本発明は、金属表面の防食処理のための水性濃縮物を含み、水で10倍以上200倍以下だけ希釈すると、前記濃縮物は、上記好ましい組成による本発明の処理剤をもたらす。
【0055】
好ましくは前記濃縮物は、10倍以上200倍以下の倍数で希釈されたときには、
a) 全部で0.01g/リットル以上、好ましくは0.025g/リットル以上、かつ2g/リットル以下、好ましくは1g/リットル以下、特に0.5g/リットル以下の含有量を有する、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体;
b) 1ppm以上、特に好ましくは50ppm以上、そして好ましくは1000ppm以下の画分を有する、少なくとも1種の水中分散可能な、及び/又は水中溶解可能なポリマー;又は
c) a)及びb)の両方
を含む本発明の処理剤のいずれかをもたらし、この濃縮物中には、紫外線で照射されると発光する粒子状無機顔料が、0.05g/リットル以上、特に好ましくは0.5g/リットル以上、そして好ましくは10g/リットル以下の含有量で含まれる。
【0056】
本発明はまた、10倍以上200倍以下の倍数でだけ希釈されたとき、
a) 0.05g/リットル以上、特に好ましくは0.5g/リットル以上、そして好ましくは10g/リットル以下の含有量の、紫外線で照射されると発光する粒子状無機顔料;
b) 1ppm以上、特に好ましくは50ppm以上、そして好ましくは1000ppm以下の含有量を有する、少なくとも1種の水分散性及び/又は水溶性ポリマー;又は
c) a)及びb)の両方
を含む本発明の処理剤のいずれかをもたらす濃縮物を包含し、この濃縮物中には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体は、全部で0.01g/リットル以上、好ましくは0.025g/リットル以上、かつ2g/リットル以下、好ましくは1g/リットル以下、特に0.5g/リットル以下の含有量で含まれる。
【0057】
本発明はさらに、10倍以上200倍以下に希釈すると、
a) 0.05g/リットル以上、特に好ましくは0.5g/リットル以上、そして好ましくは10g/リットル以下の量の、紫外線で照射されると発光する粒子状無機顔料;
b) 1ppm以上、特に好ましくは50ppm以上、そして好ましくは1000ppm以下の含有量の、少なくとも1種の水分散性及び/又は水溶性ポリマー;及び
c) 全部で0.01g/リットル以上、好ましくは0.025g/リットル以上、かつ2g/リットル以下、好ましくは1g/リットル以下、特に0.5g/リットル以下の含有量を有する、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体
を含む本発明の処理剤をもたらす濃縮物を包含し、
上記の1種又は2種以上の任意成分が適当な、好ましい量で濃縮物中に含まれる。
【0058】
さらに、本発明による濃縮物は、クロム化合物を実質的に含まず、クロム化合物の含有量は、元素クロムに換算して、好ましくは100ppm未満である。
【0059】
さらに、本発明による濃縮物のpH値は、10倍以上200倍以下の倍数で希釈されたときに、1以上4以下になるようになっている。従って、濃縮物のpH値は1未満であってもよいが、しかし0.3未満であってはならない。
【0060】
本発明による方法は、このような処理剤で金属表面を処理するステップと、金属層の腐食前に保護層内に含浸されかつ/又は表面固定化された本発明による無機顔料に起因する金属表面の発光を極力均一にすることによって処理工程の質を光学的に評価するステップと、これらのステップから派生的に得られる、処理工程及び/又は被覆層品質を最適化するための付加的な工程ステップとを含む。
【0061】
従って、本発明はまた、上記の方法(「リンス」法/「リンスなし」法)のうちの1つ又は2つ以上に従って処理された金属基体を包含し、このように処理された基体は、紫外線で照射されると発光し、そして好ましくはこの発光は、可視光領域内で観察することができる。
【0062】
このように処理又は被覆された金属基体は、自動車製造における車体組立、船舶の建造、建設業界、並びに白もの(大型)家電製品製造のために使用することができる。
【0063】
本発明の処理剤、濃縮物、及び方法で処理することができる金属表面は、好ましくは、亜鉛及び亜鉛合金、亜鉛めっき鋼又は合金めっき鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金、チタン及びチタン合金から選択される。金属表面は、上記金属又はこれらの合金自体の表面であってよいが、例えば上記金属又はこれらの合金でめっきされた、鋼のような基体の表面であってもよい。後者の例は、電気めっき鋼、又は溶融亜鉛めっき鋼、アルミめっき鋼、又は亜鉛/アルミニウム合金の被膜を有するGalvalume(登録商標)又はGalfan(登録商標)のような被覆鋼である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の無機顔料を含む水性防食処理剤であって、前記粒子状無機顔料が、紫外線照射により、発光しかつそのpH値が1以上4以下であることを特徴とする、金属表面の防食処理用水性防食処理剤。
【請求項2】
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のフッ化物錯体の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の水性防食処理剤。
【請求項3】
更に少なくとも1種の水分散性及び/又は水溶性ポリマーを含む、請求項1に記載の水性防食処理剤。
【請求項4】
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、シリコン、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体の少なくとも1種と、水分散性及び/又は水溶性ポリマーの少なくとも1種との双方を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項5】
前記粒子状顔料が、周期律表の第III族又は第IV族の遷移金属又は希土類金属のカチオンの1種以上によりドープされた主格子構造型の無機化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項6】
前記粒子状無機顔料の主格子構造(host lattice)が、酸化物により構成されている、請求項5に記載の水性防食処理剤。
【請求項7】
前記粒子状無機顔料が、人の可視光領域において、知覚可能な程度に発光する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項8】
含有される無機顔料の少なくとも1/100、好ましくは、少なくとも10/100が、2μm以下の、好ましくは0.2μm以下の、さらに好ましくは、0.02μm以下の粒径を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項9】
ポリビニルフェノールと、アルデヒド及び有機ヒドロキシル基含有アミンとのマンニッヒ反応による付加反応生成物が、前記水分散性及び/又は水溶性ポリマーとして用いられる請求項3乃至8のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項10】
前記水分散性及び/又は水溶性ポリマーがポリビニルアルコール、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルのポリマー、及び/又は、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸及びこれらの酸のエステル又はアミドのポリマー及びコポリマーから選ばれる、請求項3乃至9のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項11】
前記水分散性及び/又は水溶性ポリマーの含有量が、1ppm以上1000ppm以下である、請求項3〜10のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項12】
紫外線照射により発光する粒子状無機顔料の含有量が、0.05g/リットル以上10g/リットル以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項13】
前記チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体の含有量が、0.1g/リットル以上2g/リットル以下である、請求項2及び4乃至11のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項14】
可視光領域では発光しない1種以上の、酸安定性の粒子状無機顔料を更に含み、前記酸安定性な粒子状無機顔料が好ましくは、シリケート、更に好ましくは、SiO2であり、前記酸安定な粒子状無機顔料の含有量が、0.05g/リットル以上10g/リットル以下である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項15】
銅のカチオン及び/又はモリブデン、タングステン及び/又はバナジウムのオキソアニオンを、5ppm以上200ppm以下の含有量でさらに含む、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項16】
りんのオキソアニオン、好ましくはりん酸アニオンを、りん元素に換算して、0.5g/リットル以上20g/リットル以下の含有量で、さらに含有する、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項17】
フッ化物イオンを、0.05g/リットル以上5g/リットル以下の含有量でさらに含む、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項18】
ニトログアニジン、N−メチルモルホリン−N−オキサイド、m−ニトロベンゼンスルホン酸イオン、m−ニトロベンゾエートイオン、p−ニトロフェノール、ヒドロキシルアミン、過酸化水素、亜硝酸イオン、及び/又は、還元糖から選ばれた反応促進剤をさらに含む、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の水性防食処理剤。
【請求項19】
クロム化合物を実質的に含まず、好ましくはクロム化合物の含有量は元素クロムに換算して、100ppm未満である請求項1乃至18に記載の水性防食処理剤。
【請求項20】
水により10倍以上200倍以下に希釈することによって、請求項2乃至18のいずれか1項に記載の水性防食処理剤が得られる、金属表面を防食処理するための水性濃縮液。
【請求項21】
請求項12に記載されているような、紫外線照射により発光する粒子状無機顔料をさらに含む請求項20に記載の濃縮液。
【請求項22】
請求項13に記載の、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、アルミニウム、ゲルマニウム、すず又はほう素元素のふっ化物錯体をさらに含む、請求項20又は21に記載の濃縮液。
【請求項23】
請求項14乃至22のいずれか1項に記載の少なくとも1種の成分をさらに含む、請求項20乃至22のいずれか1項に記載の濃縮液。
【請求項24】
クロム化合物を実質的に含まず、好ましくはクロム化合物の含有量が、元素クロムに換算して100ppm未満である、請求項20乃至23のいずれか1項に記載の濃縮液。
【請求項25】
pH値が、4以下0.3以上である請求項21乃至24のいずれか1項に記載の濃縮液。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載の水性防食処理剤又はその濃縮液に、清浄化された金属表面を接触させる、金属表面の防食処理方法。
【請求項27】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載の水性防食処理剤又はその濃縮液に、清浄化された金属表面を接触させた後に、前記金属表面に付着した水性被覆層を乾燥し、それによって前記乾燥後に形成された皮膜層の厚さが、5μm以下、好ましくは1μm以下、但し、少なくとも0.02μmとなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記金属表面を、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の水性防食処理剤に接触させた直後に、中間乾燥工程なしで、続いて追加の洗浄工程、後処理工程及び/又は被覆工程を施す、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
追加の洗浄工程、後処理工程及び/又は被覆工程を施す、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記工程により処理された金属表面を、中間洗浄工程を施し、又は施さずに、先ず紫外線照射に供し、処理された金属表面の全面における発光現象の均一度について光学的評価を施し、発光が不均質の場合、下記:
(A)請求項26又は27の方法を、紫外線照射を施したときの発光が金属表面の全面においてできるだけ均質になるまで繰り返えすこと、
(B)金属表面の、全く発光を生じない部分又は、金属全面に比較して、発光の評価値が非常に低い部分を、請求項26又は27に記載の方法によって、部分的に処理し、紫外線照射したとき、金属表面の全面の発光ができるだけ均一になるまで、前記処理を繰り返えすこと、
(C)金属表面の清浄化を生ずる少なくとも1つのパラメーターを、請求項26又は27の金属表面の追加処理が、処理された金属表面の全面の発光現象ができるだけ均質になるように、調整すること、
(D)請求項1乃至25の少なくとも1項に記載の水性防食処理剤又はその濃縮液の少なくとも1つの成分の量を増加させて、請求項1乃至25において特定された各成分の量が、一つ残らず過剰であることはなく、また不足であることもないようにして、請求項26又は27の方法による金属表面の追加処理が、処理された金属表面の全面の発光現象ができるだけ均一に生ずるようにすること、又は
(E)前記金属表面の全面の後不動態化を、後続の工程において施すこと、
が施される、請求項26又は27の方法。
【請求項31】
前記発光現象の光学的評価、及びその結果により施される処理工程(A−E)の両方が、人の介在なしで、自動的に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法により処理された金属基体が、紫外線の照射により発光する、請求項26乃至31の少なくとも1項に記載の方法により処理された金属基体。
【請求項33】
発光した光が、人の眼による可視光領域において観察される、請求項32に記載の金属基体。
【請求項34】
自動車製造における車体組立、船舶の建造、組立て工業及び白物(大型)家電製品製造における請求項32又は33に記載の金属基体の使用。

【公表番号】特表2010−518185(P2010−518185A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547552(P2009−547552)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063648
【国際公開番号】WO2008/092528
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】