説明

発射セル

ノードを第1電位にプリチャージする第1手段であって、発射抵抗器を通して電流を制御するように構成したスイッチに該ノードを結合させる第1手段と、該ノードと第2電位との間に1個のトランジスタのみを有する経路を通して、該ノードを第2電位に選択的に放電する第2手段と、を含むシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
流体吐出システムの1実施形態としてのインクジェット印刷システムには、印字ヘッドと、液体インクを印字ヘッドに提供するインク供給部と、印字ヘッドを制御する電子制御装置とを含めてもよい。流体吐出装置の1実施形態としての印字ヘッドは、複数のオリフィス又はノズルを通してインク滴を吐出する。電子部品を使用して、オリフィスを通るインク滴の吐出を制御してもよい。
【0002】
これらの電子部品を製作するのに用いる製造プロセスが変化するにつれ、多くの場合最新のプロセスを用いてそうした電子部品を製作することが望ましくなっている。そうすることで、メーカーは例えば生産効率を高くでき、コストを節約でき、又は製品歩留まりを高くできることから、利益を得られるであろう。しかしながら、最新プロセスを用いるということには、異なるプロセスを用いて構築した前製品と同様にその製品が動作するように製品を製造する、という課題があるであろう。
【発明の概要】
【0003】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を成す添付図を参照するが、図には、例示目的で、開示対象を実施してもよい具体的な実施形態を示している。当然ながら、他の実施形態を利用してもよく、構造又は論理的変更は、本開示の範囲から逸脱せずに、これを行うことができるものとする。従って、以下の詳細な説明は、狭義で解釈すべきではなく、本開示の範囲は、付記した請求項によって規定されるものとする。
【0004】
1実施形態によれば、印字ヘッドダイの発射抵抗器を選択的に付勢するように構成した、プリチャージ(予備充電)する発射セルが提供される。発射抵抗器を発射セルによって付勢すると、発射抵抗器は、ノズルを通して、ダイの気化室内にあるインク滴を印刷媒体に向けて吐出させる。発射セルは、プリチャージサイクル中にセルをプリチャージする高圧入力信号と、選択的放電サイクル中に発射抵抗器を選択的に付勢させる低圧論理回路とを用いて、動作する。高圧入力信号を減衰したものを用いて、プリチャージサイクル中に低圧論理回路をバイアスする。この論理回路には、単一のトランジスタを有する少なくとも1つの放電経路を含み、トランジスタは、発射抵抗器を通して基準電位に至る電流を制御するスイッチに、選択的に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】インクジェット印刷システムの1実施形態を示すブロック図である。
【図2】印字ヘッドダイの1実施形態の一部を示す図である。
【図3】印字ヘッドダイの1実施形態におけるインク送給スロットに沿って位置する滴生成装置のレイアウトを示す図である。
【図4A】プリチャージする発射セルの1実施形態に関する動作を説明する図である
【図4B】プリチャージする発射セルの1実施形態に関する動作を説明する図である
【図4C】プリチャージする発射セルの1実施形態に関する動作を説明する図である。
【図5】プリチャージする発射セルの1実施形態を示す図である。
【図6】減衰回路の1実施形態を示す図である。
【図7】プリチャージする発射セルの1実施形態に関する更なる詳細について示す図である。
【図8】プリチャージする発射セルの群列を有する印字ヘッドダイの、1実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、インクジェット印刷システム20の1実施形態を示すブロック図である。インクジェット印刷システム20は、インクジェット印字ヘッド組立体22等の流体吐出装置と、インク供給組立体24等の流体供給組立体とを含む、流体吐出システムの1実施形態を構成する。インクジェット印刷システム20にはまた、取付用組立体26と、媒体移送組立体28と、電子制御装置30とを含む。少なくとも1つの電源32により、インクジェット印刷システム20の様々な電気部品に電力を供給する。
【0007】
1実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22には、少なくとも1個の印字ヘッド又は印字ヘッドダイ40を含み、印字ヘッド又は印字ヘッドダイ40は、インク滴を、複数のオリフィス又はノズル34を通して印刷媒体36に向けて吐出し、それにより印刷媒体36に印刷する。印字ヘッド40は、流体吐出装置の1実施形態である。印刷媒体36を、任意の種類の適当なシート材料、例えば紙、カードストック、透明フィルム、マイラー、織物等としてもよい。典型的には、インクジェット印字ヘッド組立体22と印刷媒体36を互いに対して移動させながら、ノズル34からインクを正確に連続して吐出して、文字、記号、及び/又は他のグラフィックス若しくは画像を印刷媒体36上に印刷するように、ノズル34を1列又は複数の列若しくはアレイに配列する。以下の説明では、インクジェット印字ヘッド組立体22からインクを吐出させることについて言及するが、当然ながら、清澄流体等の他の液体、流体又は可流動物質を、インクジェット印字ヘッド組立体22から吐出してもよい。
【0008】
流体供給組立体の1実施形態としてのインク供給組立体24は、インクを印字ヘッド組立体22に提供し、インク収容用貯留部38を含む。インク供給組立体24とインクジェット印字ヘッド組立体22で、一方向のインク給送システム又は再循環インク給送システムの何れかを形成できる。一方向インク給送システムでは、インクジェット印字ヘッド組立体22に提供するインクの略全てを、印刷中に消費する。再循環インク給送システムでは、印字ヘッド組立体22へ提供するインクの一部だけを、印刷中に消費する。この場合、印刷中に消費されなかったインクは、インク供給組立体24に戻される。
【0009】
1実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22及びインク供給組立体24をインクジェットカートリッジ又はペンに一緒に収容する。インクジェットカートリッジ又はペンを、流体吐出装置の1実施形態とする。別の実施形態では、インク供給組立体24を、インクジェット印字ヘッド組立体22から分離し、インクをインクジェット印字ヘッド組立体22に、供給チューブ(図示せず)等のインタフェース接続を通して提供する。何れの実施形態でも、インク供給組立体24の貯留部38を、取外し、取替え、及び/又は再充填してもよい。1実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22及びインク供給組立体24をインクジェットカートリッジに一緒に収容する場合には、貯留部38には、カートリッジ内に設置する局所的貯留部を含み、またカートリッジから分離して設置する大貯留部を含んでもよい。この場合、分離した大貯留部を、局所的貯留部を再充填するのに役立てる。従って、分離した大貯留部及び/又は局所的貯留部を、取外し、取替え、及び/又は再充填してもよい。
【0010】
取付用組立体26により、インクジェット印字ヘッド組立体22を媒体移送組立体28に対して位置決めし、媒体移送組立体28により、印刷媒体36をインクジェット印字ヘッド組立体22に対して位置決めする。その結果、印刷ゾーン37が、インクジェット印字ヘッド組立体22と印刷媒体36との間の領域で、ノズル34に隣接して画定される。1実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22を走査型印字ヘッド組立体とする。この場合、取付用組立体26には、インクジェット印字ヘッド組立体22を媒体移送組立体28に対して移動させて、印刷媒体36を走査するキャリッジ(図示せず)を含む。別の実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22を、非走査型印字ヘッド組立体とする。この場合、取付用組立体26により、インクジェット印字ヘッド組立体22を媒体移送組立体28に対して所定位置に固定する。従って、媒体移送組立体28により、印刷媒体36をインクジェット印字ヘッド組立体22に対して位置決めする。
【0011】
電子制御装置又は印刷制御装置30は、インクジェット印字ヘッド組立体22と、取付用組立体26と、媒体移送組立体28との通信のために、典型的には、プロセッサ、ファームウェア、他の電子機器、又はそれらの組合せを含む。電子制御装置30は、データ39をコンピュータ等のホストシステムから受信し、通常、一時的にデータ39を保存するメモリを含む。典型的には、電子、赤外線、光学又は他の情報伝達経路に沿って、インクジェット印刷システム20にデータ39を送信する。データ39で、例えば、印刷する文書及び/又はファイルを表す。この場合、データ39は、インクジェット印刷システム20のための印刷ジョブを形成し、1つ又は複数の印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータを含む。
【0012】
1実施形態では、電子制御装置30により、ノズル34からインク滴を吐出するインクジェット印字ヘッド組立体22を制御する。この場合、電子制御装置30により、文字、記号及び/又は他のグラフィックス若しくは画像を印字媒体36に形成する吐出インク滴のパターンを規定する。吐出インク滴のパターンを、印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータによって決定する。
【0013】
1実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22は、印字ヘッド40を含む。別の実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22を、ワイドアレイ又はマルチヘッド式印字ヘッド組立体とする。ワイドアレイの1実施形態では、インクジェット印字ヘッド組立体22は、印字ヘッドダイ40を担持するキャリアを含み、印字ヘッドダイ40と電子制御装置30との間で電気通信を提供し、印字ヘッドダイ40とインク供給組立体24との間で流体連通を提供する。
【0014】
図2は、印字ヘッドダイ40の1実施形態の一部を説明する図である。印字ヘッドダイ40には、印刷又は流体吐出要素42のアレイを含む。印刷要素42を、インク送給スロット46を有する基板44上に形成する。この場合、インク送給スロット46により、液体インクの印刷要素42への供給を提供する。インク送給スロット46は、流体送給源の1実施形態である。流体送給源の他の実施形態として、対応する気化室に送給する個別のインク送給孔と、対応する流体吐出要素群に夫々送給する複数の短いインク送給溝とを含むが、これらに限定されない。薄膜構造体48はインク送給流路54を有し、インク送給流路54は、基板44に形成したインク送給スロット46と連通している。オリフィス層50は、表面50aと、表面50aに形成したノズル開口部34とを有する。オリフィス層50はノズル室又は気化室56も有し、ノズル室又は気化室56は、ノズル開口部34及び薄膜構造体48のインク送給流路54と連通している。発射抵抗器52を気化室56内に位置決めし、リード線58により、発射抵抗器52を、選択した発射抵抗器を通して電流の印加を制御する回路と電気的に結合させる。ここで参照される滴生成装置60には、発射抵抗器52と、ノズル室又は気化室56と、ノズル開口部34とを含まれる。
【0015】
印刷中、インクは、インク送給スロット46から気化室56へとインク送給流路54を介して流れる。発射抵抗器52の付勢時に気化室56内のインク滴をノズル開口部34を介して(例えば、発射抵抗器52の平面に略垂直に)、印刷媒体36に向けて吐出するように、ノズル開口部34を動作可能に発射抵抗器52と結合させる。
【0016】
印字ヘッドダイ40の例示的な実施形態としては、サーマル印字ヘッド、圧電印字ヘッド、静電印字ヘッド、又は多層構造体に一体化できる当該技術分野で既知のいかなる種類の流体吐出装置でもよい。基板44を、例えば、シリコン、ガラス、セラミック、又は安定した重合体で形成し、薄膜構造体48を、二酸化珪素、炭素ケイ素、窒化珪素、タンタル、ポリシリコンガラス、若しくは他の適当な材料製の1層又は複数の保護層又は絶縁層を含むように形成する。また、薄膜構造体48は、少なくとも1層の導電層を含み、該導電層で、発射抵抗器52及びリード線58を規定する。例えば、導電層を、アルミニウム、金、タンタル、タンタルアルミニウム、又は他の金属若しくは合金を含むよう形成する。1実施形態では、以下で詳細に説明するような、発射セル回路を、基板44及び薄膜構造体48等の基板及び薄膜層に実装する。
【0017】
1実施形態では、オリフィス層50は、光画像化可能なエポキシ樹脂、例えば、SU8(マイクロケム(Micro-Chem)社、マサチューセッツ州ニュートンにより市販)と呼ばれるエポキシ樹脂からなる。オリフィス層50をSU8又は他の重合体で作製する例示的技術については、米国特許第7,226,149号で詳細に記載されており、同特許を参照として本明細書に組み込むものとする。
【0018】
図3は、印字ヘッドダイ40の1実施形態におけるインク送給スロット46に沿って位置する滴生成装置60を説明した図である。インク送給スロット46は、対向するインク送給スロット辺46a及び46bを含む。滴生成装置60を、各インク送給スロット辺46a及び46bに沿って配設する。計n個の滴生成装置60を、インク送給スロット46に沿って設置し、m個の滴生成装置60をインク送給スロット側46aに沿って設置すると、n-m個の滴生成装置滴生成装置60がインク送給スロット側46bに沿って設置される。1実施形態では、nを、インク送給スロット46に沿って位置する200個の滴生成装置60とし、mを、対向するインク送給スロット辺46a及び46b夫々に沿って位置する100個の滴生成装置60とする。他の実施形態では、適当な数の滴生成装置60を、インク送給スロット46に沿って配設できる。
【0019】
インク送給スロット46により、インクを、インク送給スロット46に沿って配設したn個の滴生成装置60夫々に提供する。n個の滴生成装置60夫々は、発射抵抗器52と、気化室56と、ノズル34を含む。n個の気化室56夫々を、インク送給スロット46に、少なくとも1つのインク送給流路54を通して流体的に結合させる。滴生成装置60の発射抵抗器52を、制御された順番で付勢して、気化室56からノズル34を通して流体を吐出させ、画像を印刷媒体36に印刷する。
【0020】
図2は、印字ヘッドダイ40の1実施形態の一部を説明する図である。印字ヘッドダイ40には、印刷又は印刷要素42のアレイを含む。印刷要素42を基板44に形成し、基板44はインク送給スロット46を有する。このようにして、インク送給スロット46により、液体インクを印刷要素42に供給する。インク送給スロット46は、流体送給源の1実施形態である。流体送給源の他の実施形態として、対応する気化室に送給する個別のインク送給孔や、対応する流体吐出要素群に夫々送給する複数の短いインク送給溝が挙げられるが、これらに限定されるものではない。薄膜構造体48は、インク送給流路54を有し、インク送給流路54は、基板44に形成したインク送給スロット46と連通している。層50は、上面50aと、上面50aに形成したノズル開口部34とを有する。層50はノズル室又は気化室56も有し、ノズル室又は気化室56は、ノズル開口部34及び薄膜構造体48のインク送給流路54と連通している。発射抵抗器52を気化室56内に配置し、リード線58により、発射抵抗器52を、選択した発射抵抗器を通して電流の印加を制御する回路と、電気的に結合させる。ここで参照する滴生成装置60は、発射抵抗器52と、ノズル室又は気化室56と、ノズル開口部34とを含む。
【0021】
印刷中、インクは、インク送給スロット46から気化室56へとインク送給流路54を介して流れる。発射抵抗器52の付勢時に、気化室56内のインク滴を(例えば、発射抵抗器52の平面に略垂直な)ノズル開口部34を通して印刷媒体36に向けて吐出させるように、ノズル開口部34を発射抵抗器52と動作可能に結合させる。
【0022】
印字ヘッドダイ40の例示的な実施形態としては、サーマル印字ヘッド、圧電印字ヘッド、静電印字ヘッド、又は多層構造体に一体化できる当該技術分野で既知のいかなる種類の流体吐出装置が挙げられる。基板44を、例えば、シリコン、ガラス、セラミック、又は安定した重合体で形成し、薄膜構造体48を、二酸化珪素、炭素ケイ素、窒化珪素、タンタル、ポリシリコンガラス、又は他の適当な材料製の1層又は複数の保護層又は絶縁層を含むように形成する。また薄膜構造体48は、発火抵抗器52及びリード線58を規定する少なくとも1層の導電層を含む。この導電層を、例えば、アルミニウム、金、タンタル、タンタル-アルミニウム、又は他の金属若しくは金属合金を含むよう作製する。
【0023】
1実施形態では、層50には、光画像化可能なエポキシ樹脂、例えば、SU8(マイクロケム(Micro-Chem)社、マサチューセッツ州ニュートンにより市販)と呼ばれるエポキシ樹脂からなる。層50をSU8又は他の重合体で作製する例示的技術については、米国特許出願公開第2005/0270332号で詳細に記載されており、同特許を参照として本明細書に組み込むものとする。しかしながら、他の適当な材料を採用しても、層50を形成できる。
【0024】
図3は、印字ヘッドダイ40の1実施形態のインク送給スロット46に沿って設置する滴生成装置60を説明する図である。インク送給スロット46は、対向するインク送給スロット辺46a及び46bを含む。滴生成装置60を、各インク送給スロット辺46a及び46bに沿って配設する。計n個の滴生成装置60をインク送給スロット46に沿って設置し、m個の滴生成装置60をインク送給スロット辺46aに沿って設置すると、n-m個の滴生成装置60がインク送給スロット辺46bに沿って設置される。1実施形態では、nを、インク送給スロット46に沿って設置する200個の滴生成装置60とし、mを、対向するインク送給スロット辺46a及び46b夫々に沿って設置する100個の滴生成装置60とする。他の実施形態では、適当な数の滴生成装置60を、インク送給スロット46に沿って配設できる。
【0025】
インク送給スロット46により、インクを、インク送給スロット46に沿って配設したn個の滴生成装置60夫々に提供する。n個の滴生成装置60夫々は、発射抵抗器52と、気化室56と、ノズル34を含む。n個の気化室56夫々を、インク送給スロット46に、少なくとも1つのインク送給流路54を通して流体的に結合させる。滴生成装置60の発射抵抗器52を、制御された順番で付勢して、気化室56からノズル34を通して流体を吐出させ、画像を印刷媒体36に印刷する。
【0026】
図4A〜図4Cは、プリチャージする発射セル70の1実施形態に関する動作を説明する図である。図4Aを参照すると、プリチャージする発射セル70は、駆動スイッチを用いて、セレクト信号(SEL)、2つのアドレス信号((ADDAと(ADDB)、データ信号((DATA)、発射信号(FIRE)に応じて、発射抵抗器52を選択的に付勢するよう、動作する。図2を参照して上述したように、付勢すると、発射抵抗器52により、気化室56内のインク滴をノズル開口部34を通して印字媒体36に向けて吐出する。
【0027】
駆動スイッチ72を、ドレイン−ソース経路を有するトランジスタとし、トランジスタは、一端部で発射抵抗器52の一方の端子に、他端部でグランド等の基準電位に、電気的に結合する。発射抵抗器52のもう一方の端子は、発射信号を受信する発射線に電気的に結合する。発射信号には、駆動スイッチ72をオンにする(即ち、導通する)と発射抵抗器52を付勢し、駆動スイッチ72をオフにする(即ち、導通しない)と発射抵抗器52を付勢しない、エネルギパルスを含む。従って、駆動スイッチ72は、発射抵抗器52に印加するエネルギー(即ち、通過電流)を制御する。駆動スイッチ72のゲートを、ノード76と電気的に結合し、該ノードをまた、プリチャージトランジスタ74のドレイン−ソース経路及び選択的放電回路78に、電気的に結合する。
【0028】
発射セル70は、順次的で相互排他的な2つのサイクル、すなわちプリチャージサイクル及び選択的放電サイクルで動作する。図4Cでは、たとえば発射信号、プリチャージ信号、セレクト信号、アドレス信号、データ信号のプリチャージサイクルである、時間t1とt2との間、t3とt4との間の、信号レベルについて説明している。図4Cでは、たとえば発射信号、プリチャージ信号、セレクト信号、アドレス信号、データ信号の選択的放電サイクルである、時間t2とt3との間、t4とt5との間の信号レベルについて説明している。
【0029】
各プリチャージサイクル中、図4A及び図4Cで示したように、プリチャージ信号により、高電圧パルスを、プリチャージトランジスタ74を通過させてプリチャージノード76に提供して、駆動スイッチ72をオンするのに十分なプリチャージ電圧レベルにする。プリチャージサイクル中、セレクト信号を低論理レベルにして、選択的放電回路78がノード76をプリチャージサイクル中に放電しないようにし、ノード76がプリチャージ電圧レベルに充電され、レベルを維持できるようにする。
【0030】
各選択的放電サイクル中、プリチャージ信号を低論理レベルとし、セレクト信号を高論理レベルに遷移させる。アドレス信号及びデータ信号により、各選択的放電サイクルの駆動スイッチ72の動作を、ノード76をプリチャージ電圧レベルに維持する(即ち、駆動スイッチ72をオンしたままの状態にする)或はノード76をグランド又は別の基準電位に放電する(即ち、駆動スイッチ72をオフする)ことによって、制御する。発射信号をアサートすると、駆動スイッチ72がオンの場合には、発射抵抗器52は付勢され、駆動スイッチ72がオフの場合は、発射抵抗器52は付勢されない。
【0031】
図4Cで示した実施形態では、アドレス信号及びデータ信号は、各信号名の前に記号「〜」で表したように、低レベルで、夫々アクティブである。この実施形態では、選択的放電サイクル中に、発射信号をアサートした際にアドレス信号及びデータ信号が全て低論理レベルである場合にのみ、発射抵抗器52を付勢する。選択的吐出サイクル中に、発射信号をアサートした際に1つ又は複数のアドレス信号若しくはデータ信号が高論理レベルとなる場合、発射抵抗器52を付勢しない。従って、図4Cの例では時間t2とt3との間の選択的放電サイクル中に発射抵抗器52を付勢するが、これは全てのアドレス信号及びデータ信号が低論理レベルとなるからである。同様に、時間t4とt5との間の選択的放電サイクル中には発射抵抗器52を付勢しないが、これは1つ又は複数のアドレス信号及びデータ信号が高論理レベルとなるからである。
【0032】
図4Bで示す1実施形態では、選択的放電回路78の1実施形態78Aは、セレクト信号が制御するパスゲートとして構成したトランジスタ82と、アドレス信号及びデータ信号が制御するNORゲートとして構成した3個の並列トランジスタ86、88、90を含む。プリチャージサイクル中、セレクト信号によりトランジスタ82をオフにし、ノード76がトランジスタ86、88、90の何れかを通してグランドに放電しないようにする。選択的放電サイクル中、トランジスタ86、88、90の何れかが夫々のアドレス線又はデータ線によってオンである場合、セレクト信号により、トランジスタ82をオンにして、ノード76をグランドに放電する。
【0033】
1実施形態では、発射セル70を、抵抗器と、NMOSトランジスタと、高電圧NMOS(HVNMOS)トランジスタとだけを使用するCMOSプロセスで、構築してもよい。特に、駆動スイッチ72をHVNMOSトランジスタとして構築し、また、トランジスタ74と選択的放電回路78とを、低電圧の薄いゲート酸化物を有するNMOSトランジスタで構築してもよい。更に、高電圧入力信号を、プリチャージ信号のソースとしてもよく、高電圧入力信号を使用してノード76をプリチャージしてもよい。
【0034】
CMOSプロセスで形成すると、トランジスタ74や選択的放電回路78の何れのトランジスタも、ゲート端子の高電圧に耐えられないかも知れない。ゲート端子が高電圧となる結果、ゲートとソース接続との間が高電圧になり、CMOSトランジスタの薄いゲート酸化物に損傷を与える可能性がある。高電圧入力信号をプリチャージ信号用ソースとして使用するために、この高電圧入力信号を、駆動スイッチ72に適した電圧レベルに減衰する。しかしながら、高電圧入力信号を減衰するために用いる回路により、発射セル70の動作周波数が制限されるかもしれない。
【0035】
更に、CMOSトランジスタの電気容量は、他のプロセスで形成したトランジスタと比較して高い可能性がある。また、CMOSプロセスで形成したトランジスタの電気容量が高いので、発射セル70の動作周波数が制限されるかもしれない。
【0036】
例えば、図4Bの実施形態では、選択的放電回路78Aは、CMOSプロセスで形成した場合、ノード76を高い動作周波数で十分放電できない。CMOSプロセスのこうした低電圧での動作や高電気容量では、直列構成のトランジスタ82及び並列のトランジスタ86、88及び90は、高動作周波数において、ノード76を放電して駆動スイッチ72がオンしたままにならないようにするのに十分なほど速くは、ノード76を基準電位に電気的に結合できない。ノード76で放電が不完全又は部分的になると、発射を選択していない滴生成装置60で誤った小発射(sub-firing)が発生するかも知れない。また小発射により、印字ヘッドダイ40の温度が上昇し、次の選択的放電サイクルでのノード76の放電が更に遅延するかも知れない。こうした更なる遅延で、更なる小発射が起き、その結果熱暴走状態となるかも知れない。
【0037】
図5は、プリチャージする発射セル70及び入力減衰回路102の1実施形態を説明する図である。図5の実施形態では、プリチャージする発射セル70は、高電圧入力信号(SEL15)、及び高電圧入力信号を入力減衰回路102で減衰した低電圧のもの(SEL_8P5及びPSEL)を受信する。また、プリチャージする発射セル70には、分布型レベルシフタ104(即ち、ダイオード接続トランジスタ)と、選択的放電回路78Bの1実施形態を含む。
【0038】
入力減衰回路102により、高電圧入力信号(SEL15)を受信し、高電圧入力信号を減衰して、高電圧信号の低電圧信号(SEL_8P5及びPSEL)を生成する。1実施形態では、入力減衰回路102により、印字ヘッドダイ40の外部にあるソース(図示せず)からSEL15を受信し、SEL15を約15ボルトの信号とする。他の実施形態では、SEL15を印字ヘッドダイ40のソースから受信してもよい、及び/又は、SEL15は別の電圧レベルを有してもよい。1実施形態では、入力減衰回路102により、SEL15を用いて約8.5ボルトの信号となるSEL_8P5、及びSEL15を用いて約6ボルト信号となるPSELを、生成する。他の実施形態では、入力減衰回路102により、他の電圧レベルでSEL15及びPSELを生成する。入力減衰回路102により、SEL_8P5及びPSELを発射セル70に提供する。入力減衰回路102の実施形態に関する更なる詳細について、以下で図6を参照して記載する。
【0039】
発射セル70は、SEL15をソースから、SEL_8P5及びPSELを入力減衰回路102から受信する。SEL15は、分布型レベルシフタ104のソース端子に接続し、SEL_8P5は、分布型レベルシフタ104のゲート端子に接続する。レベルシフタ104は、ソース端子で、SEL_8P5より約1.5ボルト低い電位となるプリチャージ信号(PRE)を生成するよう、動作する。従って、1実施形態では、分布型レベルシフタ104は、SEL15及びSEL_8P5を用いて約7ボルトの信号となるよう、PREを生成する。分布型レベルシフタ104のソース端子は、トランジスタ74のゲート及びドレイン端子に接続すると共に、選択的放電回路78Bにも接続して、分布型レベルシフタ104がPREをトランジスタ74及び選択的放電回路78Bに提供可能にする。PSELを入力減衰回路102から選択的放電回路78Bに提供する。
【0040】
SEL15、SEL_8P5、PSEL、PRE全てが実質的に同期して生成され、図4Cに示したPREの信号規約に従う。発射セル70のプリチャージサイクル中、PREにより、トランジスタ74を通して、ノード76をPREより約1.5ボルト低い電位にプリチャージする。トランジスタ74のソース端子は、ノード76に接続する。従って、1実施形態では、PREによりノード76を約5.5ボルトにプリチャージする。
【0041】
選択的放電回路78Bを、発射セル70のプリチャージサイクル中に、ノード76と基準電位(例えば、グランド)との間に導電経路を提供しないように、及び発射セル70の選択的放電サイクル中に、ノード76と基準電位との間に導電経路を選択的に提供するように構成する。選択的放電サイクル中に、ノード76と基準電位との間に導電経路を選択的に提供することによって、選択的放電回路78Bでノード76を基準電位に選択的に放電してもよい。選択的放電回路78Bでノード76を基準電位に放電する場合、ノード76に直接接続している駆動スイッチ72のゲート端子を、プリチャージ電位から基準電位まで低下させて、駆動スイッチ72をオフにし、発射抵抗器52を付勢しないようにする。選択的放電回路78Bでノード76を基準電位に放電しない場合、駆動スイッチ72のゲート端子を、基準電位に対してプリチャージ電位に維持し、駆動スイッチ72をオンにして、発射抵抗器52をFIRE信号で付勢可能にする。
【0042】
選択的放電回路78Bは、放電経路回路106と、放電経路回路108と、バッファ回路110とを含む。放電経路回路106により、データ(〜DATA)信号及びセレクト(SEL)信号に応じて、発射セル70の各選択的放電サイクル中に、ノード76を基準電位に選択的に放電する。放電経路回路106は、ノード76と基準電位との間に1個のトランジスタのみを有する導電経路(例えば、図7で示したMN14)を含む。該トランジスタのドレイン端子をノード76に直接接続し、該トランジスタのソース端子を基準電位に直接接続して、それにより十分な電圧を該トランジスタのゲート接続に印加した際に、該トランジスタのソース−ドレイン経路が導電経路となるようにする。論理回路(例えば、図7のパスゲートPASS2)は、データ信号及びセレクト信号を入力として受信し、出力を該トランジスタのゲート接続に提供して、該トランジスタの動作を制御する。この論理回路は、図4Cで示した及び上述した〜DATA及びSELの信号規約に従い、動作する。従って、論理回路は該トランジスタをオンにしてノード76を放電し、該トランジスタをオフにしてノード76が該トランジスタを通して放電しないようにする。また、放電経路回路106は、PSELに応答し、該放電経路トランジスタをプリチャージサイクル中に確実にオフにするよう構成した回路(例えば、図7に示したトランジスタMN13)を、含む。
【0043】
放電経路回路108は、発射セル70の各選択的放電サイクル中に、バッファ回路110からの出力信号に応じて、ノード76を基準電位に選択的に放電する。バッファ回路110は、アドレス信号((ADDA及び(ADDB)及びセレクト信号(SEL)に応じて、出力信号を生成する。放電経路回路108は、ノード76と基準電位との間に1個のトランジスタ(例えば、図7に示したトランジスタMN1)だけを有する導電経路を含む。該トランジスタのドレイン端子は、ノード76に直接接続し、該トランジスタのソース端子は、基準電位に直接接続して、それにより十分な電圧を該トランジスタのゲート接続に印加すると、該トランジスタのソース-ドレイン経路が導電経路となるようにする。バッファ回路110は、アドレス信号及びセレクト信号を入力として受信し、出力信号を該トランジスタのゲート接続に提供して、該トランジスタの動作を制御する。バッファ回路110は、図4で示し、上述した〜ADDA、〜ADDB、SELの信号規約に従い動作する。従って、バッファ回路110は該トランジスタをオンにしてノード76を放電し、該トランジスタをオフにして該トランジスタを通してノード76が放電されないようにする。また放電経路回路108は、PSELに応答し、プリチャージサイクル中に該放電経路トランジスタを確実にオフにするように構成した回路(例えば、図7に示したトランジスタMN9)を含む。
【0044】
各選択的放電サイクル中(即ち、次のプリチャージサイクルの前)に、放電経路回路108でノード76を確実に十分に放電するために、バッファ回路110は、プリチャージ信号PREが供給した電荷を蓄積する、1個又は複数のバッファ(例えば、図7に示すコンデンサを形成するように接続したトランジスタMN2及びMN11)を含む。プリチャージ信号は、バッファ回路110からの出力信号により放電経路回路108の放電経路トランジスタを、ノード76を十分に放電させる程速くオンにするように、各プリチャージサイクル中にこれらのバッファをバイアスする。また、バッファ回路110には、PSELに応答し、確実にバッファをプリチャージサイクル中に放電させないように構成した回路(例えば、図7に示したトランジスタMN4及びMN8)を含む。
【0045】
図5の実施形態では、発射セル70を、CMOSプロセスを用いて、抵抗器(例えば、発射抵抗器52)と、NMOSトランジスタ(例えば、トランジスタ74及び選択的放電回路78B)と、高電圧NMOS(HVNMOS)トランジスタ(例えば、駆動スイッチ72及び分布型レベルシフタ104)とだけで構築してもよい。1実施形態では、HVNMOSトランジスタを、横方向二重拡散MOS(LDMOS)トランジスタとして、形成してもよい。
【0046】
他の実施形態では、アドレス信号に加えてデータ信号を使用して放電経路回路108を制御し、放電経路回路106を省略してもよい。この実施形態では、バッファ回路110でデータ信号を受信し、バッファ回路110は、アドレス信号又はデータ信号の何れかを選択的放電サイクル中にアサートした場合、放電経路回路108でノード76を放電させる。この実施形態では、セレクト信号をアサートする前にデータ信号を有効にするようにして、データ信号を生成してもよい。
【0047】
図6は、入力減衰回路102の1実施形態を説明する図である。入力減衰回路102で、高電圧入力信号SEL15を受信し、高電圧入力信号を減衰して、低電圧信号SEL_7、SEL_8P5、PSELを生成する。SEL15を約15ボルトの信号とした1実施形態では、入力減衰回路102で、SEL_7、SEL_8P5、PSELを、夫々約7ボルト、8.5ボルト、6ボルトの信号となるように、生成する。
【0048】
入力減衰回路102は、抵抗分圧回路122を含む。抵抗分圧回路122により、SEL15を分圧して、夫々の出力電圧を有する信号124と126と生成する。SEL15を約15ボルトの信号とすると、抵抗分圧回路122により、信号124と126とを、夫々約10ボルトと7.5ボルトの信号となるよう、生成する。また、入力減衰回路102は、レベルシフタ128、130、132(即ち、ダイオード接続トランジスタ)を含む。レベルシフタ128、130、132は、SEL15を減衰して、低電圧出力信号を生成する。また、レベルシフタ128、130、132は、プリチャージノード76とバイアスバッファ回路110とに、十分な電流を提供するバッファを形成する。
【0049】
SEL15は、レベルシフタ128のソース端子に接続し、信号124はレベルシフタ128のゲート端子に接続する。レベルシフタ128は、ソース端子で信号124より約1.5ボルト低い電位を有するSEL_8P5を生成する。従って、1実施形態では、レベルシフタ128は、SEL_8P5を約8.5ボルトの信号となるよう生成する。
【0050】
また、SEL15はレベルシフタ130のソース端子に接続し、信号126はレベルシフタ130のゲート端子に接続する。レベルシフタ130は、ソース端子で信号126より約1.5ボルト低い電位を有するPSELを生成する。従って、1実施形態では、レベルシフタ130は、PSELを約6ボルトの信号となるよう生成する。
【0051】
SEL15は更に、レベルシフタ132のソース端子に接続し、SEL_8P5はレベルシフタ132のゲート端子に接続する。レベルシフタ132は、ソース端子でSEL_8P5より約1.5ボルト低い電位を有するSEL_7を生成する。従って、1実施形態では、レベルシフタ132は、SEL_7を約7ボルトの信号となるよう生成する。
【0052】
入力減衰回路102は、レベルシフタ128、130、132夫々の出力と基準電位(例えば、グランド)との間を接続するプルダウン抵抗134、136、138を、更に含む。プルダウン抵抗134、136、138は夫々、軽負荷をかけて、レベルシフタ128、130、132夫々から最小量の電流を引込み、SEL_8P5、SEL_7、PSELの差を、確実にレベルシフタ128、130、132夫々のゲートでの信号より約1.5ボルト低い状態にする。
【0053】
他の実施形態では、ダイオード又はダイオード接続トランジスタのスタックを、抵抗分圧回路122の代わりに使用してもよい。
【0054】
発射セル70の他の実施形態では、SEL_7をプリチャージ信号PREとして使用し、分布型レベルシフタ104を省略してもよい。
【0055】
図7は、プリチャージする発射セル70の1実施形態における、放電経路回路106と、放電経路回路108と、バッファ回路110の更なる詳細について説明する図である。
【0056】
上述したように、SEL15、SEL_8P5、PSEL、PREを、プリチャージサイクル中にアサートし、選択的放電サイクル中にデアサートする。セレクト信号SELを、プリチャージサイクル中にデアサートし、選択的放電サイクル中にアサートする。アドレス信号〜ADDA及び〜ADDBとデータ信号〜DATAを、図7の実施形態では、アクティブロー信号とする。
【0057】
放電経路回路106は、PSEL、SEL、〜DATAに応じて動作して、ノード76をプリチャージサイクル中にプリチャージ可能にし、選択的放電サイクル中にノード76を選択的に放電可能にする。放電経路回路106は、ノード76に直接接続したドレイン端子、基準電位に直接接続したソース端子、パスゲートPASS2からの出力に接続したゲート端子を有する放電経路トランジスタMN14を含む。トランジスタMN14を、パスゲートPASS2からの出力でトランジスタMN14がオンするのに応じて、ノード76がドレイン−ソース経路(即ち、放電ノード76)を通過して基準電位に接続するように、またパスゲートPASS2からの出力でトランジスタMN14がオフするのに応じて、ノード76が基準電位に接続しないように構成する。セレクト信号SELは、パスゲートPASS2をオンにして、データ信号〜DATAを、パスゲートPASS2の出力として、トランジスタMN14のゲート端子に伝送する。
【0058】
放電経路回路106のトランジスタMN13は、トランジスタMN14のゲート端子に接続したドレイン端子と、基準電位に接続したソース端子と、PSELに接続したゲート端子とを有する。トランジスタMN13を、PSELがオンにするのに応じてトランジスタMN14のゲート端子を基準電位に接続(即ち、トランジスタMN14をオフに)するように、またPSELがオフにするのに応じてトランジスタMN14のゲート端子を基準電位に接続しない(即ち、トランジスタMN14をオンにする)ように、構成する。
【0059】
放電経路回路108は、PSEL及びバッファ回路110からの出力142に応じて、ノード76をプリチャージサイクル中にプリチャージ可能にし、選択的放電サイクル中にノード76を選択的に放電可能にするよう、動作する。放電経路回路108は、ノード76に直接接続したドレイン端子と、基準電位に直接接続したソース端子と、バッファ回路110の出力142に接続したゲート端子とを有する放電経路トランジスタMN1を含む。トランジスタMN1を、出力142がオンにするのに応じてノード76がドレイン−ソース経路を通して基準電位に接続(即ち、ノード76を放電)するように、また出力142がオフにするのに応じて、ノード76が基準電位に接続しないように構成する。
【0060】
放電経路回路108のトランジスタMN9は、トランジスタMN1のゲート端子に接続したドレイン端子と、基準電位に接続したソース端子と、PSELに接続したゲート端子とを有する。トランジスタMN9を、PSELがオンにするのに応じて、トランジスタMN1のゲート端子が基準電位に接続(即ち、トランジスタMN1をオフに)するように、またPSELがオフにするのに応じて、トランジスタMN1のゲート端子が基準電位に接続しない(即ち、トランジスタMN1をオンにする)ように、構成する。
【0061】
バッファ回路110は、PSEL、PRE、SEL、〜ADDA、〜ADDBに応じて、プリチャージサイクル中に出力142をデアサートし、選択的放電サイクル中に出力142を選択的にアサートするように、動作する。
【0062】
プリチャージサイクル中、バッファ回路110により確実に、出力142をデアサートしてトランジスタMN1をオフにし、ノード76を、トランジスタMN1を通して放電せずに、プリチャージ可能にする。そうするために、トランジスタMN11は、ノード144に対するコンデンサとして動作し、プリチャージサイクル中に、プリチャージ信号PREによって、コンデンサをダイオード接続トランジスタMN5を通して充電する。この充電したコンデンサにより、トランジスタMN3をオンにして、トランジスタMN1のゲート端子を基準電位に接続し、プリチャージサイクル中にはトランジスタMN1をオフにする。セレクト信号SELによって制御するパスゲートPASS3を、プリチャージサイクル中にオフにすると、ノード144がNORゲートの出力から切断されて、ノード144がプリチャージ信号PREによって充電可能になる。
【0063】
また、プリチャージ信号PREは、プリチャージサイクル中にバッファ回路110でノード146をバイアスして、そのように選択された場合、次の選択的放電サイクル中に、トランジスタMN1を通してノード76を確実に十分放電する。プリチャージ信号PREは、トランジスタMN2で形成したノード146のコンデンサを、ダイオード接続トランジスタMN7を通して充電する。PSELにより、トランジスタMN4をオンにして、トランジスタMN8のゲート端子を基準電位に接続し、プリチャージサイクル中にはトランジスタMN8をオフにして、コンデンサノード146を充電可能にする。
【0064】
選択的放電サイクル中、バッファ回路110は、アドレス信号〜ADDA及び〜ADDBのどちらか又は両方をアサートする場合に、出力142をアサートし、アドレス信号〜ADDA及び〜ADDBの両方をデアサートする場合に、出力142をデアサートする。出力142をアサートした場合、出力142がノード76を放電経路回路108により放電させて、駆動スイッチ72をオフにし、発射抵抗器52を付勢させないようにする。出力142をデアサートした場合、出力142はノード76を放電経路回路108により放電させない。
【0065】
アドレス信号のどちらか又は両方をアサートすると、NORゲート出力はデアサートされる。セレクト信号SELは、パスゲートPASS3をオンにして、NORゲートの出力をノード144のコンデンサの電荷に接続する。NORゲートの出力はデアサートされているので、ノード144は、NORゲートを介して放電し、トランジスタMN3及びMN8をオフにする。トランジスタMN3及びMN8をオフにすると、ノード146は充電状態のまま、トランジスタMN6がオンになる。その結果、セレクト信号は出力142を、ダイオード接続トランジスタMN10及びオンにしたトランジスタMN6を通して、アサートする。
【0066】
両方のアドレス信号をデアサートするとNORゲート出力はアサートされ、NORゲート出力が、オンにしたパスゲートPASS3を通してノード144のコンデンサの電荷に結合し、トランジスタMN3及びMN8をオンにする。ノード144を、NORゲート出力ノードより高電気容量にして、NORゲート出力をアサートした場合でも、トランジスタMN3及びMN8を確実にオンにするように設計してもよい。トランジスタMN8は、ノード146を放電して、トランジスタMN6をオフにし、セレクト信号が出力142をアサートしないようにする。トランジスタMN3により、ノード142を基準電位まで引き下げて、出力142をデアサートする。
【0067】
上記実施形態では、NORゲートを形成するために使用したトランジスタを、比較的小型にして、アドレス信号〜ADDA及び〜ADDBを駆動するアドレスドライバに対する全体の負荷を軽減させてもよい。バッファ回路110を使用して、比較的小さなNORゲートトランジスタの出力で、比較的大きなプルダウントランジスタMN1を駆動可能にしてもよい。
【0068】
他の実施形態では、アドレス信号に加えてデータ信号を使用して放電経路回路108を制御し、放電経路回路106を省略してもよい。この実施形態では、バッファ回路110のNORゲートが、データ信号をアドレス信号と共に受信する。NORゲート出力は、アドレス信号又はデータ信号のいずれかがアサートされるとデアサートされ、アドレス信号とデータ信号の全てをデアサートした場合は、アサートされる。従って、データ信号はまた、選択的放電サイクル中にノード144のコンデンサの電荷についても制御する。この実施形態では、セレクト信号をアサートする前にデータ信号が有効となるよう、データ信号を生成する。
【0069】
図8は、プリチャージする発射セル70のアレイ150を有する印字ヘッドダイ40の、1実施形態を説明する図である。
【0070】
アレイ150を、1組の発射群152(1)〜152(M)に配列するが、Mを、1以上の整数(例えば、Mを4又は6としてもよい)とする。各発射群152には、任意の適当な数の列(例えば、13列)と行(例えば、8行)に配列する発射セル70を含む。発射群152の各列を、アドレス信号対〜ADD(1)から〜ADD(N)夫々を用いて選択するが、Nを3以上の整数とする。アドレス信号対〜ADD(1)から〜ADD(N)の各対夫々を、夫々の列の各発射セル70で、〜ADDA及び〜ADDB信号と接続する。発射群152の各行を、データ信号〜DATA(1)から〜DATA(P)夫々を用いて選択するが、Pを1以上の整数とする。各データ信号〜DATA(1)から〜DATA(P)夫々を、夫々の行の各発射セル70で、〜DATA信号と接続する。
【0071】
発射群152(1)〜152(M)夫々を、発射信号FIRE(1)〜FIRE(M)、セレクト信号SEL(1)〜SEL(M)、SEL15(1)〜SEL15(M)、SEL_8P5(1)〜SEL_8P5(M)、PSEL(1)〜PSEL(M)を受信するように、構成する。発射群152(1)〜152(M)夫々を、基準電位GND(例えば、グランド)に接続する。
【0072】
1実施形態では、1発射群152用のセレクト信号SELを、次の発射群152用のSEL15、SEL_8P5及びPSEL信号と同期させてもよい。例えば、SEL(1)を、SEL15(2)、SEL_8P5(2)及びPSEL(2)と同期させてもよく、SEL(2)を、SEL15(3)、SEL_8P5(3)及びPSEL(3)等と同期させてもよい。他の実施形態では、1発射群152用のセレクト信号SELを、他の適当な方法で、1つ以上の他の発射群152用のSEL15、SEL_8P5及びPSEL信号と、同期又は非同期にしてもよい。
【0073】
他の実施形態では、発射群152(1)〜152(M)夫々は、様々な数の列及び/又は行を有してもよい。更に、他の実施形態では、各発射群152は、様々な数の列及び/又は行で様々な数の発射セル70を有してもよい。
【0074】
本明細書では、実施形態について説明するために、具体的な実施形態を例示し、説明したが、当業者は、多種多様な変形及び/又は均等物を、図示及び説明した具体的な実施形態の代わりに、本開示の範囲を逸脱することなく、実施してもよい、と理解するであろう。当業者は、本開示を極めて多種多様な実施形態で実施してもよいことを、容易に理解するであろう。本出願は、本明細書で論じた開示実施形態の如何なる改良又は変更もこれを包含するものとする。従って、明らかに、本開示の範囲を、請求項及び請求項の均等物によって限定するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射抵抗器と、
ノードに結合し、前記発射抵抗器を通して電流を制御するよう構成したスイッチと、
前記ノードを第1電位にプリチャージする第1手段と、
第1トランジスタと、
前記ノードと前記第2電位との間に前記第1トランジスタのみを有する第1経路を少なくとも通して、前記ノードを第2電位に選択的に放電する第2手段と、
を備えるシステム。
【請求項2】
第2トランジスタと、
前記ノードと前記第2電位との間に前記第2トランジスタのみを有する第2経路を通して、前記ノードを第2電位に選択的に放電する第3手段と、
を更に備えること、を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1手段が使用する信号を減衰して、前記ノードをプリチャージする第3手段、
を更に備えること、を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第1プリチャージサイクル中に前記第2手段をバイアスして、前記第1プリチャージサイクルに続く第2プリチャージサイクル前に、前記ノードを確実に十分に放電する第3手段、
を更に備えること、を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2手段をバイアスするために使用する信号を減衰させる第4手段、
を更に備えること、を特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2手段は、少なくとも1つのアドレス信号に応答すること、を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2手段は、データ信号に応答すること、を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記スイッチは、前記ノードに接続したゲート端子を有するトランジスタを含むこと、を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
付勢するとインクをノズルから吐出させるように構成した発射抵抗器と、前記発射抵抗器に印加するエネルギーを制御するスイッチとを提供すること、
前記スイッチの端子を第1電位にプリチャージするように構成した第1回路を提供すること、
前記スイッチを前記第1電位にプリチャージした後で、第1トランジスタのみを含む第1経路を少なくとも通して、前記スイッチの前記端子を第2電位に選択的に接続する、第2回路を提供すること、
を含むこと、を特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1電位により前記スイッチをオンにし、前記第2電位により前記スイッチをオフにすること、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1回路により、第3回路で減衰した信号を少なくとも1つ用いて、前記スイッチの端子を前記第1電位にプリチャージすること、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第2回路により、セレクト信号及び少なくとも1つのアドレス信号に応じて、前記スイッチの端子を前記第2電位に選択的に接続すること、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2回路により、セレクト信号及びデータ信号に応じて、前記スイッチの端子を前記第2電位に選択的に接続すること、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
発射抵抗器と、
ノードに接続し、前記発射抵抗器を通して電流を制御するよう構成したスイッチと、
前記ノードをプリチャージするよう構成したプリチャージ回路と、
前記ノードに接続した第1端子と基準電位に接続した第2端子とを有し、前記ノードを前記基準電位に選択的に放電するように構成した第1トランジスタと、
を備えること、を特徴とする発射セル。
【請求項15】
前記ノードに接続した第1端子と前記基準電位に接続した第2端子とを有し、前記ノードを前記基準電位に選択的に放電するように構成した第2トランジスタ、
を更に備えること、を特徴とする請求項14に記載の発射セル。
【請求項16】
前記第1トランジスタを、少なくとも1つのアドレス信号に応じて、前記ノードを前記基準電位に選択的に放電するように構成すること、及び前記第2トランジスタを、データ信号に応じて、前記ノードを前記基準電位に選択的に放電するように構成すること、を特徴とする請求項15に記載の発射セル。
【請求項17】
入力信号、及び、該入力信号から生成した減衰信号、とからプリチャージ信号を生成するように構成した分布型レベルシフタを、更に備え、
前記プリチャージ回路を、前記プリチャージ信号を用いて前記ノードをプリチャージするように構成すること、
を特徴とする請求項14に記載の発射セル。
【請求項18】
前記プリチャージ信号によってバイアスされ、前記第1トランジスタの動作を制御するように構成されたバッファ回路、
を更に備えること、を特徴とする請求項17に記載の発射セル。
【請求項19】
前記発射抵抗器と、前記スイッチと、前記プリチャージ回路と、前記第1トランジスタとを、CMOSプロセスを用いて形成すること、を特徴とする請求項14に記載の発射セル。
【請求項20】
前記スイッチには、前記ノードに直接結合したゲート接続を有する第2トランジスタを含むこと、を特徴とする請求項14に記載の発射セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−510850(P2011−510850A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545840(P2010−545840)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/053153
【国際公開番号】WO2009/099439
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】