発振装置および無線通信装置
【課題】低消費電力で微弱な無線信号を受信する。
【解決手段】本発明の一態様としての発振装置は、クロック回路と、電源電流源と、発振回路とを備える。前記クロック回路は、クロック信号を生成する。前記電源電流源は、前記クロック信号に従って、電源電流を生成する。前記発振回路は、前記電源電流と、入力信号に基づき発振し、前記クロック信号の周波数より高い発振周波数を有する発振信号を生成する。
【解決手段】本発明の一態様としての発振装置は、クロック回路と、電源電流源と、発振回路とを備える。前記クロック回路は、クロック信号を生成する。前記電源電流源は、前記クロック信号に従って、電源電流を生成する。前記発振回路は、前記電源電流と、入力信号に基づき発振し、前記クロック信号の周波数より高い発振周波数を有する発振信号を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線信号を検出する発振装置、および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号を検出して信号を処理する無線受信回路方式として、発振装置を用いる方法がある。この方式は、高周波発振器とこれを制御するクエンチ回路を、信号検出部に含める。高周波発振器はクエンチ回路から鋸波の発振制御信号を受け、発振開始時間等を測定し、外部からの入力信号の有無を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開10-256928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の方式はクエンチ回路が常に動作し、鋸波の発振制御信号を高周波発振器に入力するため、鋸波の周期ごとに発振することになる。このため、発振装置は消費電力が大きくなり、上記構成は、低消費電力回路としては不向きであった。また、所望信号周波数と発振回路の発振周波数が一致しないため、特性の劣化や干渉波の影響が受けやすい課題があった。
【0005】
本発明の一側面は、低消費電力で微弱な無線信号を受信する発振装置、および無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての発振装置は、クロック回路と、電源電流源と、発振回路を備える。
【0007】
前記クロック回路は、クロック信号を生成する。
【0008】
前記電源電流源は、前記クロック信号に従って、電源電流を生成する。
【0009】
前記発振回路は、前記電源電流と、所定レベル以上の受信信号に基づき発振し、前記クロック信号の周波数より高い発振周波数を有する発振信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る発振装置のブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る発振装置の回路図。
【図3】本発明の一実施形態に係る発振装置の制御シーケンス図。
【図4】クロック信号、短パルス信号、RF信号、発振器発振信号、受信信号の動作タイミングチャート。
【図5】電流調整の説明図。
【図6】本発明の一実施形態に係る発振装置を備えた無線装置のブロック図。
【図7】発振回路を用いて送信信号を生成する無線装置のブロック図。
【図8】本発明の一実施形態に係る発振装置を用いた無線通信回路制御システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る発振装置のブロック構成図である。
【0013】
図1の発振装置は、アンテナ202、発振回路101、電流源回路103、振幅検知回路102、短パルス発生回路104、クロック回路105、信号処理回路106、制御回路107を具備する。
【0014】
発振回路101は、制御可能な発振周波数を有し、電流源回路103から電源電流が与えられる。アンテナ202から発振回路101への入力が無信号状態では発振回路101が発振せず、所望パワーもしくはそれより大きい信号(受信信号)が入力されたときに発振回路101が発振するように、電源電流の値は制御される。電流値の制御は制御回路107が行う。発振回路101の発振周波数の調整も、制御回路107の制御の下、行われる。発振周波数の調整は、外部基準入力信号を参照し、当該信号に同調するように行われる。
【0015】
クロック回路105は、低周波のクロック信号を生成する(後述する図4(A)参照)。
【0016】
短パルス発生回路104は、低周波のクロック信号のエッジを検出し、クロック波長に比べて十分短い短パルスを生成する(後述する図4(B)参照)。
【0017】
短パルス発生回路104は、この短パルス信号を、電流源回路103に入力する。電流源回路103は、パルス信号が入力されたときのみ、電源電流を生成して、発振回路101に入力する。これにより、電流源回路103へ短パルスが入力されたときのみ、発振回路101に電源電流が入力されるようになる。電源電流入力時、アンテナ202から無線信号が入力されない場合は、発振回路101は発振せず、消費電流も少ない。アンテナ202から所望入力信号パワー以上で発振周波数とほぼ等しい無線信号が入力された場合、発振回路101は発振する。
【0018】
振幅検知回路102は、この発振信号の振幅を、基準値を元に検知し、high/lowの2値信号(復調信号)を生成する。
【0019】
信号処理回路106は、この復調信号の内容(パターン)を判別する。この復調信号が所望信号に合致する判別した場合、信号処理回路106は、外部機器へ制御信号を出力する。制御信号は、たとえば外部機器を電源オンまたは電源オフにする信号である。
【0020】
図2は、図1の発振装置の構成を詳細化して示す。図1の制御回路107は、第1制御回路107aと第2制御回路107bに分かれている。
【0021】
発振回路101の内部は、正帰還トランジスタ301、302、入力トランジスタ303、304、インダクタ305、306、およびキャパシタ307で構成されている。
【0022】
正帰還トランジスタ301、302は相補構成を有する。それぞれのゲート端子にはドレイン端子が同じ位相で信号が入力されるため、振動が増幅される。またインダクタ305、306とキャパシタ307で共振回路が形成され、共振周波数信号が入力されると振動が持続する。従ってこれらの回路で発振器が構成される。アンテナ202からの無線信号は、整合回路201でインピーダンス整合と単相/差動変換がおこなわれ、差動電気信号が発振回路101へ入力される。入力トランジスタ303、304は差動電気信号を発振回路101内部に入力する。
【0023】
発振周波数の調整は、第2制御回路107bにより以下のように行われる。外部基準入力信号を入力した状態で、第2制御回路107bによりキャパシタ307の容量値を調整し、インダクタ305、306と共振周波数を調整する。振幅検出回路102で検出される発振振幅が最大となる点で、キャパシタ307の値を固定する。
【0024】
発振レベルの調整は、第1制御回路107aにより以下のように行われる。発振回路101への入力を無信号入力状態として、第1制御回路107aによって電流源回路103の電源電流をゼロから段階的に増加させる。電流が増えていくと、ある電流を境に発振回路101は発振を始める。この発振振幅を振幅検出回路102で検出し、第1制御回路107aに通知する。第1制御回路107aは、発振が起きない電流値を記憶する。たとえば発振が起こったときの電源電流のm(mは1以上の整数)段前の電源電流値を記憶する。次に、ある所定の入力パワーの信号を発振器101に入力し、このときに発振回路101は発振することを、振幅検出回路102で検出確認する。すなわち制御回路107は、無信号入力状態で発振が起きず、ある所定の入力パワーの信号の入力時に発振するような電源電流値を検出して、記憶する。発振レベル調整の詳細は、後述する。
【0025】
以上のようにして、発振周波数の調整と、発振レベルの調整が完了する。
【0026】
図3に、本実施形態に係る発振装置の制御シーケンスを示す。
【0027】
発振装置が電源オン状態となり(S1)、この後、発振回路101の発振周波数の調整を実施し(S2)、さらにその次に、電流源回路103の電流値調整を実施する(S3)。
【0028】
この状態で、発振装置は信号待ち受け状態となり、無線信号の入力を待ち受ける(S4)。
【0029】
この間に、タイマ等で規定期間が経過し、もしくは温度変化等のイベントが発生したときは、ステップS2に戻り、再度、発振周波数調整および電流値調整を実施する。これは、温度や、電圧系の状態に応じて、発振周波数や、発振する電源電流値がシフトするためである。
【0030】
信号待ち受け時に、アンテナ202から無線信号が入力されると、信号検出処理(S5)がおこなわれる。すなわち、発振回路101により発振周波数信号が抽出され、抽出信号に基づき、振幅検知部102で2値信号(復調信号)が生成される。信号処理回路106で、復調信号が所望のものに相当するかの判別がおこなわれる。所望のものでない場合は、ステップS4の信号待ち受けに戻る。
【0031】
復調信号が所望のものである場合は、信号処理回路106は、外部機器等の制御信号を出力する。例えば、外部機器の主電源をオフの状態からオンの状態に変更する制御信号を、出力する。その後、発振装置は、電源オフとなる。
【0032】
図4(A)〜図4(E)にクロック信号、短パルス信号、RF(Radio Frequency)信号、発振器発振信号、受信信号の動作タイミングチャートを示す。
【0033】
クロック信号の周期は、アンテナ202で受信するRF信号の周期より十分に長く、RF信号に乗るデータのデータレートの基本周期より十分に短いものを用いる(図4(A))。
【0034】
短パルス信号は、クロック信号のエッジを検出し、クロック波長に比べ十分に短いパルス幅のパルス信号として生成される(図4(B))。
【0035】
たとえばクロック周期は100us、短パルスのパルス幅は1usである。この短パルスのパルス幅に合わせて、発振回路101に電源電流が供給される。これによって電流のデューティー比が1/100となり、消費電力が削減できる。
【0036】
なお図4(B)の例では、エッジの立ち上がりタイミングで短パルスを生成しているが、立ち上がりエッジからずれたタイミング(たとえば立ち上がりエッジから立ち下がりエッジの途中)で、短パルスを生成してもよい。
【0037】
RF信号は、高周波の搬送波に乗った低いデータレートの信号であり、オンオフキーイングで送出される(図4(C))。例えばRF信号が2.45GHz帯のマイクロ波で、データレートが1kb/sとすると、基本周期は1000usとなる。
【0038】
発振回路101は、短パルスがオンのとき即ち、発振器電源電流が供給されかつRF信号がオン信号となっているとき、RF信号に反応して、発振状態となり、発振信号を出力する(図4(D))。また、RF信号がオフ信号となっている場合、発振器は無振動の定常状態を保つ(図4(D))。
【0039】
このように、発振および定常状態を検波し、振幅検知部102でオンオフキーイングの信号の有無を判別する(図4(E))。
【0040】
図5に、電流調整のシーケンスを示す。横軸は時間で、縦軸は発振回路101の電源電流の値を示す。
【0041】
図4(B)で示した短パルスに合わせて、時間とともに1ステップごとに発振回路101への電流の供給量を増やしていく。このとき発振回路101のRF入力部は、接地等の処置をして、外部ノイズが入力されないようにする。最初は発振が起こらない電流を供給し、徐々に電流を増やし、図中の発振閾値を超える電流が供給されると、発振器は自励発振を始める。この状態を記憶し、そのステップからm段(mは1以上の整数)前の電流値に戻す。図では2段前に戻している。この状態を電流設定値とすることで、無信号では無振動の定常状態であり、微弱なRF信号が入力されると発振が開始する構成となる。
【0042】
図6に、本実施形態に係る発振装置を搭載した無線機器のブロック図を示す。
【0043】
Tx部407、Rx部406はそれぞれ無線機器の送信機、受信機である。
【0044】
発振装置401は、これらの送信機および受信機とは別に設けられる。アンテナ402からの信号を、スイッチ405を介して待ち受ける。Tx部407からは、基準周波数となる信号を、スイッチ404を介して、発振装置401に入力するための経路もある。この基準周波数となる信号は、上述した外部基準入力信号に相当し、発振周波数の調整の際に用いられる。なおスイッチ404、405と、アンテナ402の間には、トランス403が設けられている。信号処理回路408は、Tx部407およびRx部406での送受信信号を処理する。
【0045】
信号待ち受け時には、Tx部407およびRx部406の電源をオフとして、発振装置401のみが信号を待ち受ける。所望の無線信号を発振装置401で受信すると、発振装置401は、Tx部407およびRx部406の電源をオンとする制御信号を出力し、Tx部407、Rx部406はそれぞれ電源オンとなる。またスイッチ405を発振装置401からRX部406へ切り替え、またスイッチ404を、発振装置401からトランス403へ切り換える。
【0046】
このように本実施形態に係る発振装置を用いることによって、信号待ち受け時には、常時信号を待ち受けながらも、低消費電力化が為されている。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、高感度および超低消費電力な信号待ち受け回路の提供が可能となる。
【0048】
図6は、発振回路を送信に用いる場合のブロック図である。図1の構成に、送信制御部110が追加されている。図1と同一名称の要素には同一の符号を付して、拡張された処理を除き、重複する説明を省略する。
【0049】
送信制御部110は、送信信号を送出する場合に、発振回路111への電源電流を制御する。送信信号の変調方式をオンオフキーイングとすると、送信制御部110は、オン信号送出時間の間、自励発振する電流レベルの電流が発振回路101に供給し続けられるように、電流源回路103を制御する。オフ信号の間は、発振回路101への電流供給が停止されるように、電流源回路103を制御する。このようにして送信信号に合わせて発振器を発振させて、信号送信を行う。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、高感度および超低消費電力な送信回路の提供が可能となる。
【0051】
図8に、本実施形態に係る発振装置を用いた無線通信回路制御システム(無線通信装置)のブロック図を示す。
【0052】
起動信号検知回路501は、発振装置502、信号処理回路503、電源スイッチ504、505を備える。
【0053】
無線通信回路511は、Tx部514、Rx部513、スイッチ512、信号処理回路515を備える。
【0054】
電源521は、起動信号検知回路501と無線通信回路511へ電力を供給する電源である。
【0055】
信号待ち受け時には、電源スイッチ505をオフにして、無線通信回路511への電源供給を停止するとともに、電源スイッチ504をオンして、起動信号検知回路501に電源が供給されるようにする。
【0056】
無線信号がアンテナ506を介して発振装置502で受信されると、信号処理回路503で当該無線信号が所望信号かを判別し、所望信号であれば、電源スイッチ505をオンへ切り替える。その後、無線通信回路511で正常に無線通信が行われた場合、信号処理回路515から起動信号検知回路501の電源スイッチ504をオフする制御信号を出力し、起動信号検知回路501の発振装置における信号処理回路は、無線通信回路511が通信を終了するまで電源オフ状態となる。
【0057】
このように本実施形態に係る発振装置を用いたシステムを用いることによって、信号待ち受け時には無線通信回路511が完全にオフ状態とできるため、常時信号を待ち受けながらも低消費電力化が為される。
【0058】
上記実施形態では、無線通信回路511へ電力供給が供給され正常に無線通信が行われた場合に、起動信号検知回路501における発振装置および信号処理回路への電源供給を停止したが、これら発振装置および信号処理回路への電力供給を停止せずに、そのまま継続して、行っても良い。
【符号の説明】
【0059】
202:アンテナ
201:整合回路
101:発振回路
102:振幅検知回路
103:電流源回路
104:短パルス発生回路
105:クロック回路
106:信号処理回路
107:制御回路
110:送信制御部
301:正帰還トランジスタ
302:正帰還トランジスタ
303:入力トランジスタ
304:入力トランジスタ
305:インダクタ
306:インダクタ
307:キャパシタ
401:発振装置
402:アンテナ
403:トランス
404:スイッチ
405:スイッチ
406:受信機
407:送信機
408:信号処理部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線信号を検出する発振装置、および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号を検出して信号を処理する無線受信回路方式として、発振装置を用いる方法がある。この方式は、高周波発振器とこれを制御するクエンチ回路を、信号検出部に含める。高周波発振器はクエンチ回路から鋸波の発振制御信号を受け、発振開始時間等を測定し、外部からの入力信号の有無を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開10-256928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の方式はクエンチ回路が常に動作し、鋸波の発振制御信号を高周波発振器に入力するため、鋸波の周期ごとに発振することになる。このため、発振装置は消費電力が大きくなり、上記構成は、低消費電力回路としては不向きであった。また、所望信号周波数と発振回路の発振周波数が一致しないため、特性の劣化や干渉波の影響が受けやすい課題があった。
【0005】
本発明の一側面は、低消費電力で微弱な無線信号を受信する発振装置、および無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての発振装置は、クロック回路と、電源電流源と、発振回路を備える。
【0007】
前記クロック回路は、クロック信号を生成する。
【0008】
前記電源電流源は、前記クロック信号に従って、電源電流を生成する。
【0009】
前記発振回路は、前記電源電流と、所定レベル以上の受信信号に基づき発振し、前記クロック信号の周波数より高い発振周波数を有する発振信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る発振装置のブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る発振装置の回路図。
【図3】本発明の一実施形態に係る発振装置の制御シーケンス図。
【図4】クロック信号、短パルス信号、RF信号、発振器発振信号、受信信号の動作タイミングチャート。
【図5】電流調整の説明図。
【図6】本発明の一実施形態に係る発振装置を備えた無線装置のブロック図。
【図7】発振回路を用いて送信信号を生成する無線装置のブロック図。
【図8】本発明の一実施形態に係る発振装置を用いた無線通信回路制御システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る発振装置のブロック構成図である。
【0013】
図1の発振装置は、アンテナ202、発振回路101、電流源回路103、振幅検知回路102、短パルス発生回路104、クロック回路105、信号処理回路106、制御回路107を具備する。
【0014】
発振回路101は、制御可能な発振周波数を有し、電流源回路103から電源電流が与えられる。アンテナ202から発振回路101への入力が無信号状態では発振回路101が発振せず、所望パワーもしくはそれより大きい信号(受信信号)が入力されたときに発振回路101が発振するように、電源電流の値は制御される。電流値の制御は制御回路107が行う。発振回路101の発振周波数の調整も、制御回路107の制御の下、行われる。発振周波数の調整は、外部基準入力信号を参照し、当該信号に同調するように行われる。
【0015】
クロック回路105は、低周波のクロック信号を生成する(後述する図4(A)参照)。
【0016】
短パルス発生回路104は、低周波のクロック信号のエッジを検出し、クロック波長に比べて十分短い短パルスを生成する(後述する図4(B)参照)。
【0017】
短パルス発生回路104は、この短パルス信号を、電流源回路103に入力する。電流源回路103は、パルス信号が入力されたときのみ、電源電流を生成して、発振回路101に入力する。これにより、電流源回路103へ短パルスが入力されたときのみ、発振回路101に電源電流が入力されるようになる。電源電流入力時、アンテナ202から無線信号が入力されない場合は、発振回路101は発振せず、消費電流も少ない。アンテナ202から所望入力信号パワー以上で発振周波数とほぼ等しい無線信号が入力された場合、発振回路101は発振する。
【0018】
振幅検知回路102は、この発振信号の振幅を、基準値を元に検知し、high/lowの2値信号(復調信号)を生成する。
【0019】
信号処理回路106は、この復調信号の内容(パターン)を判別する。この復調信号が所望信号に合致する判別した場合、信号処理回路106は、外部機器へ制御信号を出力する。制御信号は、たとえば外部機器を電源オンまたは電源オフにする信号である。
【0020】
図2は、図1の発振装置の構成を詳細化して示す。図1の制御回路107は、第1制御回路107aと第2制御回路107bに分かれている。
【0021】
発振回路101の内部は、正帰還トランジスタ301、302、入力トランジスタ303、304、インダクタ305、306、およびキャパシタ307で構成されている。
【0022】
正帰還トランジスタ301、302は相補構成を有する。それぞれのゲート端子にはドレイン端子が同じ位相で信号が入力されるため、振動が増幅される。またインダクタ305、306とキャパシタ307で共振回路が形成され、共振周波数信号が入力されると振動が持続する。従ってこれらの回路で発振器が構成される。アンテナ202からの無線信号は、整合回路201でインピーダンス整合と単相/差動変換がおこなわれ、差動電気信号が発振回路101へ入力される。入力トランジスタ303、304は差動電気信号を発振回路101内部に入力する。
【0023】
発振周波数の調整は、第2制御回路107bにより以下のように行われる。外部基準入力信号を入力した状態で、第2制御回路107bによりキャパシタ307の容量値を調整し、インダクタ305、306と共振周波数を調整する。振幅検出回路102で検出される発振振幅が最大となる点で、キャパシタ307の値を固定する。
【0024】
発振レベルの調整は、第1制御回路107aにより以下のように行われる。発振回路101への入力を無信号入力状態として、第1制御回路107aによって電流源回路103の電源電流をゼロから段階的に増加させる。電流が増えていくと、ある電流を境に発振回路101は発振を始める。この発振振幅を振幅検出回路102で検出し、第1制御回路107aに通知する。第1制御回路107aは、発振が起きない電流値を記憶する。たとえば発振が起こったときの電源電流のm(mは1以上の整数)段前の電源電流値を記憶する。次に、ある所定の入力パワーの信号を発振器101に入力し、このときに発振回路101は発振することを、振幅検出回路102で検出確認する。すなわち制御回路107は、無信号入力状態で発振が起きず、ある所定の入力パワーの信号の入力時に発振するような電源電流値を検出して、記憶する。発振レベル調整の詳細は、後述する。
【0025】
以上のようにして、発振周波数の調整と、発振レベルの調整が完了する。
【0026】
図3に、本実施形態に係る発振装置の制御シーケンスを示す。
【0027】
発振装置が電源オン状態となり(S1)、この後、発振回路101の発振周波数の調整を実施し(S2)、さらにその次に、電流源回路103の電流値調整を実施する(S3)。
【0028】
この状態で、発振装置は信号待ち受け状態となり、無線信号の入力を待ち受ける(S4)。
【0029】
この間に、タイマ等で規定期間が経過し、もしくは温度変化等のイベントが発生したときは、ステップS2に戻り、再度、発振周波数調整および電流値調整を実施する。これは、温度や、電圧系の状態に応じて、発振周波数や、発振する電源電流値がシフトするためである。
【0030】
信号待ち受け時に、アンテナ202から無線信号が入力されると、信号検出処理(S5)がおこなわれる。すなわち、発振回路101により発振周波数信号が抽出され、抽出信号に基づき、振幅検知部102で2値信号(復調信号)が生成される。信号処理回路106で、復調信号が所望のものに相当するかの判別がおこなわれる。所望のものでない場合は、ステップS4の信号待ち受けに戻る。
【0031】
復調信号が所望のものである場合は、信号処理回路106は、外部機器等の制御信号を出力する。例えば、外部機器の主電源をオフの状態からオンの状態に変更する制御信号を、出力する。その後、発振装置は、電源オフとなる。
【0032】
図4(A)〜図4(E)にクロック信号、短パルス信号、RF(Radio Frequency)信号、発振器発振信号、受信信号の動作タイミングチャートを示す。
【0033】
クロック信号の周期は、アンテナ202で受信するRF信号の周期より十分に長く、RF信号に乗るデータのデータレートの基本周期より十分に短いものを用いる(図4(A))。
【0034】
短パルス信号は、クロック信号のエッジを検出し、クロック波長に比べ十分に短いパルス幅のパルス信号として生成される(図4(B))。
【0035】
たとえばクロック周期は100us、短パルスのパルス幅は1usである。この短パルスのパルス幅に合わせて、発振回路101に電源電流が供給される。これによって電流のデューティー比が1/100となり、消費電力が削減できる。
【0036】
なお図4(B)の例では、エッジの立ち上がりタイミングで短パルスを生成しているが、立ち上がりエッジからずれたタイミング(たとえば立ち上がりエッジから立ち下がりエッジの途中)で、短パルスを生成してもよい。
【0037】
RF信号は、高周波の搬送波に乗った低いデータレートの信号であり、オンオフキーイングで送出される(図4(C))。例えばRF信号が2.45GHz帯のマイクロ波で、データレートが1kb/sとすると、基本周期は1000usとなる。
【0038】
発振回路101は、短パルスがオンのとき即ち、発振器電源電流が供給されかつRF信号がオン信号となっているとき、RF信号に反応して、発振状態となり、発振信号を出力する(図4(D))。また、RF信号がオフ信号となっている場合、発振器は無振動の定常状態を保つ(図4(D))。
【0039】
このように、発振および定常状態を検波し、振幅検知部102でオンオフキーイングの信号の有無を判別する(図4(E))。
【0040】
図5に、電流調整のシーケンスを示す。横軸は時間で、縦軸は発振回路101の電源電流の値を示す。
【0041】
図4(B)で示した短パルスに合わせて、時間とともに1ステップごとに発振回路101への電流の供給量を増やしていく。このとき発振回路101のRF入力部は、接地等の処置をして、外部ノイズが入力されないようにする。最初は発振が起こらない電流を供給し、徐々に電流を増やし、図中の発振閾値を超える電流が供給されると、発振器は自励発振を始める。この状態を記憶し、そのステップからm段(mは1以上の整数)前の電流値に戻す。図では2段前に戻している。この状態を電流設定値とすることで、無信号では無振動の定常状態であり、微弱なRF信号が入力されると発振が開始する構成となる。
【0042】
図6に、本実施形態に係る発振装置を搭載した無線機器のブロック図を示す。
【0043】
Tx部407、Rx部406はそれぞれ無線機器の送信機、受信機である。
【0044】
発振装置401は、これらの送信機および受信機とは別に設けられる。アンテナ402からの信号を、スイッチ405を介して待ち受ける。Tx部407からは、基準周波数となる信号を、スイッチ404を介して、発振装置401に入力するための経路もある。この基準周波数となる信号は、上述した外部基準入力信号に相当し、発振周波数の調整の際に用いられる。なおスイッチ404、405と、アンテナ402の間には、トランス403が設けられている。信号処理回路408は、Tx部407およびRx部406での送受信信号を処理する。
【0045】
信号待ち受け時には、Tx部407およびRx部406の電源をオフとして、発振装置401のみが信号を待ち受ける。所望の無線信号を発振装置401で受信すると、発振装置401は、Tx部407およびRx部406の電源をオンとする制御信号を出力し、Tx部407、Rx部406はそれぞれ電源オンとなる。またスイッチ405を発振装置401からRX部406へ切り替え、またスイッチ404を、発振装置401からトランス403へ切り換える。
【0046】
このように本実施形態に係る発振装置を用いることによって、信号待ち受け時には、常時信号を待ち受けながらも、低消費電力化が為されている。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、高感度および超低消費電力な信号待ち受け回路の提供が可能となる。
【0048】
図6は、発振回路を送信に用いる場合のブロック図である。図1の構成に、送信制御部110が追加されている。図1と同一名称の要素には同一の符号を付して、拡張された処理を除き、重複する説明を省略する。
【0049】
送信制御部110は、送信信号を送出する場合に、発振回路111への電源電流を制御する。送信信号の変調方式をオンオフキーイングとすると、送信制御部110は、オン信号送出時間の間、自励発振する電流レベルの電流が発振回路101に供給し続けられるように、電流源回路103を制御する。オフ信号の間は、発振回路101への電流供給が停止されるように、電流源回路103を制御する。このようにして送信信号に合わせて発振器を発振させて、信号送信を行う。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、高感度および超低消費電力な送信回路の提供が可能となる。
【0051】
図8に、本実施形態に係る発振装置を用いた無線通信回路制御システム(無線通信装置)のブロック図を示す。
【0052】
起動信号検知回路501は、発振装置502、信号処理回路503、電源スイッチ504、505を備える。
【0053】
無線通信回路511は、Tx部514、Rx部513、スイッチ512、信号処理回路515を備える。
【0054】
電源521は、起動信号検知回路501と無線通信回路511へ電力を供給する電源である。
【0055】
信号待ち受け時には、電源スイッチ505をオフにして、無線通信回路511への電源供給を停止するとともに、電源スイッチ504をオンして、起動信号検知回路501に電源が供給されるようにする。
【0056】
無線信号がアンテナ506を介して発振装置502で受信されると、信号処理回路503で当該無線信号が所望信号かを判別し、所望信号であれば、電源スイッチ505をオンへ切り替える。その後、無線通信回路511で正常に無線通信が行われた場合、信号処理回路515から起動信号検知回路501の電源スイッチ504をオフする制御信号を出力し、起動信号検知回路501の発振装置における信号処理回路は、無線通信回路511が通信を終了するまで電源オフ状態となる。
【0057】
このように本実施形態に係る発振装置を用いたシステムを用いることによって、信号待ち受け時には無線通信回路511が完全にオフ状態とできるため、常時信号を待ち受けながらも低消費電力化が為される。
【0058】
上記実施形態では、無線通信回路511へ電力供給が供給され正常に無線通信が行われた場合に、起動信号検知回路501における発振装置および信号処理回路への電源供給を停止したが、これら発振装置および信号処理回路への電力供給を停止せずに、そのまま継続して、行っても良い。
【符号の説明】
【0059】
202:アンテナ
201:整合回路
101:発振回路
102:振幅検知回路
103:電流源回路
104:短パルス発生回路
105:クロック回路
106:信号処理回路
107:制御回路
110:送信制御部
301:正帰還トランジスタ
302:正帰還トランジスタ
303:入力トランジスタ
304:入力トランジスタ
305:インダクタ
306:インダクタ
307:キャパシタ
401:発振装置
402:アンテナ
403:トランス
404:スイッチ
405:スイッチ
406:受信機
407:送信機
408:信号処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を生成するクロック回路と、
前記クロック信号に従って、電源電流を生成する電源電流源と、
前記電源電流と、所定レベル以上の受信信号に基づき発振し、前記クロック信号の周波数より高い発振周波数を有する発振信号を生成する発振回路と、
を備えた発振装置。
【請求項2】
前記受信信号が存在しないときに前記発振回路が発振しない値に、前記電源電流を制御する第1の制御回路、
をさらに備えた発振装置。
【請求項3】
前記第1の制御回路は、前記受信信号が存在しない状態で、前記電源電流を段階的に増加させ、前記発振回路が発振した電流値からm(mは1以上の整数)段戻した値に、前記電源電流を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記クロック信号のエッジを検出し、前記クロック信号の波長より短いパルス幅の短パルス信号を生成する短パルス生成回路をさらに備え、
前記電源電流源は、前記短パルス信号に従って、前記電源電流を生成する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
基準周波数信号を元に、前記発振回路の発振周波数を制御する第2の制御回路
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項6】
前記発振回路は、正帰還増幅回路、インダクタ、キャパシタ、信号入力バッファ回路によって構成される
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項7】
前記発振信号の振幅を検知し、前記振幅に応じた復調信号を生成する振幅検知回路と、
前記復調信号を処理する信号処理回路と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項8】
前記信号処理回路は、前記復調信号が、所定の信号に合致することを検出したら、外部機器へ制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項7に記載の発振装置。
【請求項9】
基準周波数信号を元に、前記発振回路の発振周波数を制御する第2の制御回路を備え、
電源オン時、前記第2および第1の制御回路による前記発振周波数および前記電源電流の調整が行われ、
前記信号処理回路により前記制御信号が出力された後、電源オフにされる
ことを特徴とする請求項8に記載の発振装置。
【請求項10】
前記電源電流を制御して前記発振回路の発振および非発振を制御することで、前記発振信号に基づく送信信号を生成する送信制御部、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項11】
請求項1に記載の発振装置を含む起動信号検知回路と
無線を介して通信を行うための無線通信回路と、
前記起動信号検知回路および前記無線通信回路に電力を供給するための電源と、
を備え、
前記電源は、
前記発振装置の信号待ち受け時、前記起動信号検知回路へ電力を供給し、
前記発振装置から前記発振信号が出力されたとき、前記無線通信回路に前記電力を供給する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項1】
クロック信号を生成するクロック回路と、
前記クロック信号に従って、電源電流を生成する電源電流源と、
前記電源電流と、所定レベル以上の受信信号に基づき発振し、前記クロック信号の周波数より高い発振周波数を有する発振信号を生成する発振回路と、
を備えた発振装置。
【請求項2】
前記受信信号が存在しないときに前記発振回路が発振しない値に、前記電源電流を制御する第1の制御回路、
をさらに備えた発振装置。
【請求項3】
前記第1の制御回路は、前記受信信号が存在しない状態で、前記電源電流を段階的に増加させ、前記発振回路が発振した電流値からm(mは1以上の整数)段戻した値に、前記電源電流を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記クロック信号のエッジを検出し、前記クロック信号の波長より短いパルス幅の短パルス信号を生成する短パルス生成回路をさらに備え、
前記電源電流源は、前記短パルス信号に従って、前記電源電流を生成する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
基準周波数信号を元に、前記発振回路の発振周波数を制御する第2の制御回路
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項6】
前記発振回路は、正帰還増幅回路、インダクタ、キャパシタ、信号入力バッファ回路によって構成される
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項7】
前記発振信号の振幅を検知し、前記振幅に応じた復調信号を生成する振幅検知回路と、
前記復調信号を処理する信号処理回路と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項8】
前記信号処理回路は、前記復調信号が、所定の信号に合致することを検出したら、外部機器へ制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項7に記載の発振装置。
【請求項9】
基準周波数信号を元に、前記発振回路の発振周波数を制御する第2の制御回路を備え、
電源オン時、前記第2および第1の制御回路による前記発振周波数および前記電源電流の調整が行われ、
前記信号処理回路により前記制御信号が出力された後、電源オフにされる
ことを特徴とする請求項8に記載の発振装置。
【請求項10】
前記電源電流を制御して前記発振回路の発振および非発振を制御することで、前記発振信号に基づく送信信号を生成する送信制御部、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項11】
請求項1に記載の発振装置を含む起動信号検知回路と
無線を介して通信を行うための無線通信回路と、
前記起動信号検知回路および前記無線通信回路に電力を供給するための電源と、
を備え、
前記電源は、
前記発振装置の信号待ち受け時、前記起動信号検知回路へ電力を供給し、
前記発振装置から前記発振信号が出力されたとき、前記無線通信回路に前記電力を供給する
ことを特徴とする無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−55613(P2013−55613A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194283(P2011−194283)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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