説明

発泡スチロール廃棄物の減容化方法

【課題】
容積が大きい発泡スチロール廃棄物の減容を簡単な設備で、かつ安全に行って爾後の発泡スチロール廃棄物の処理を容易にし、環境問題の解消に寄与する。
【解決手段】
開閉可能な発泡スチロール投入口2を槽1上面に有し、槽内下部に網状部4を介して回収タンク5及び網状部上部側面に取り出し口6を有すると共に、槽内上部に減容液噴射手段を設けた減容槽内1に廃棄された発泡スチロールを適宜大きさとして投入し、投入口2を閉鎖して引火点が100℃以上の減容液を用いて噴射し、発泡スチロールをゲル化せしめる一方、減容液を随時、網状部4を通して回収し、槽内上部の噴射手段に循環使用し、所要のゲル化が終わると、投入口を開いて噴射を止め、網状部上に残留した減容化されたゲル状態の発泡スチロールを取り出し口6より取り出し、減容発泡スチロールを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種容器や梱包材として広く使用されている発泡スチロール製品廃棄物の処理,再生を図るための減容化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロールは価格が安く、成形が容易であることから現在、魚箱等の容器類,家電製品の梱包材など種々の用途に広く使用されているが、使用済みのこれら発泡スチロールは大量の廃棄物として環境問題の要因となっている。
【0003】
そこで近時、環境保護の観点からこれら発泡スチロール廃棄物の再生が試みられ溶液と水を入れタンクの下方部に溶液攪拌羽根を設け、ホッパーより供給された発泡スチロールをタンク中で溶解させる処理方法(例えば特許文献1参照)や、処理槽内部を減圧状態として発泡スチロール溶融液を噴射し、発泡スチロールを溶融し、生成されたポリスチレン溶液と発泡スチロール溶融液とを回収し、回収されたポリスチレン溶液と発泡スチロール溶融液の混合液体を濃度に基づいて処理槽に戻し、基準値を超えている混合液体は回収タンクで回収し、再生に使用する方法(例えば特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
しかし、これらの各方法は、発泡スチロールを溶融液と共に溶融し、混合体として取り出し再生処理する方法であり、設備が複雑となりコストも高くなる問題があった。しかもこれらの処理においては使用する溶融液は通常、リモネン液であり、引火点が51℃と低く、危険物取り扱い許可が必要であると共に、減圧状態で行わなければならない難もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−330531号公報
【特許文献2】特開2003−238731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の如き実状に鑑み、特に発泡スチロールは体積が大きいと共に嵩張るため再生処理に先立ち予め減容化することが良策であり、かつ減容化のみの場合には装置も簡単でコストも低くなり、廃棄物処理業者においても容易に据付、実施が可能であることを踏まえて減圧装置を必要としない簡単な装置で、コストも安く、しかも安全性に勝れた減容化方法を提案し、従来より環境保護の観点より問題のあった発泡スチロール廃棄物の再生を容易にして環境問題の解消に寄与することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記目的に適合する本発明は、先ず基本的に発泡スチロール廃棄物に引火点100℃以上の減容液を噴射して付与し、溶融することなく混和して脱気,減容し、ゲル状態として減容された発泡スチロールゲルを得ることを特徴とする。
【0008】
請求項2はより具体的な方法であり、開閉可能な発泡スチロール投入口を槽上面に有し、槽内下部に網状部を介して回収タンクと、該網状部上部側面に取り出し口を有すると共に、槽内上部に噴射手段を設けた減容槽内に廃棄された発泡スチロールを適宜大きさとして投入し、投入口を閉鎖して引火点が100℃以上の減容液を用いて噴射し、発泡スチロールをゲル化せしめる一方、該減容液を随時、網状部を通して回収しつつ、槽内上部の噴射手段に循環使用すると共に、所要のゲル化終了後、減容液噴射を止め、投入口を開いて網状部上に残留した減容化されたゲル状態の発泡スチロールを取り出し口より取り出し、減容発泡スチロールを得る方法よりなる。ここで引火点が100℃以上の減容液としては特に引火点103℃の二塩基酸エステル(DBE)を用いるのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明方法により発泡スチロール廃棄物を適宜大きさとして減容槽に投入し、引火点が100℃の減容液の循環使用を図りつつ減容するときは、特に減圧装置を使用することなしに減容槽内で発泡スチロールは次第にゲル化し、所定のゲル化状態に達したとき随時、取り出し口より取り出すことができ、発泡スチロールの処分を特にリサイクル業者に委託する必要なく、産業廃棄料を不要とすることができるのみならず、ゲル状態に圧縮された発泡スチロールは随時、リサイクル処理業者に売り、再生処理に付される利点がある。
【0010】
しかも、本発明減容化方法は減容のみでスチロール溶融液などを用いて発泡スチロールを溶融してリサイクル処理するものではないので装置が減圧装置などは不要で簡単で済み、更に減容液として引火点100℃以上の液を用いているので許可を要する危険物ではないため、処理設備設置場所が限定されることがないので安全で産業廃棄物収集業者において容易に実施可能である効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用する減容槽の構造を示す正面図である。
【図2】上記減容槽の左側面図である。
【図3】上記減容槽の右側面図である。
【図4】上記減容槽の平面図である。
【図5】図1におけるA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、更に添付図面に基づいて本発明減容化方法を詳述する。図1〜図5は本発明減容化方法に使用する減容装置の1例を示し、図において1は減容槽であり、台車車輪9により移動可能となっており、上面側一側に減容される発泡スチロールを投入する投入口2が開閉可能な扉2′を有して設けられていると共に、槽1内部の上部側には槽内に減容液を噴射する噴射手段3が、一方、槽内下部には減容される発泡スチロールSと、減容化のために噴射された減容液とを分離して、減容液のみを下部の回収タンク5内に回収するための網状部4が設けられており、更に減容槽1の上記網状部4の上部側面には減容された発泡スチロールSを取り出す取り出し口6が設けられている。
【0013】
ここで、減容液は上記の如く減容槽1内において上部の噴射手段3、例えば噴射孔を有する噴射バイブにより槽内に投入された、適宜大きさに割断された発泡スチロール廃棄物に対し随時、あるいはタイマー制御により噴射されるが、この噴射手段3は前記回収タンク5との間に循環パイプ8が設けられて回収された減容液を順次、循環用ポンプ7を介して循環使用するようになっている。
【0014】
なお、使用する減容液は特に引火点が100℃以上で危険物に当たらない溶剤が使用される。例えばエステル系合成油を主成分とするDBE(二塩基酸エステル)は引火点が103℃,発火点が370℃と高く好適である。しかし、このDBEの使用に当たっては水など発泡スチロール以外の異物を混入しないよう留意する必要がある。
【0015】
次に本発明減容化方法の作業工程について述べる。先ず発泡スチロール廃棄物を大きいときは分断して適宜、減容槽1内に収容し易い大きさとして投入口の扉2′を開けて槽内に投入し、扉2′を閉じて減容液を噴射手段3を通じて噴射し、所要時間、通常、タイマー制御により噴射して発泡スチロールのゲル化を進めた後、所要のゲル状態になると投入口を開き、槽内の脱気された空気を解放し、タイマー制御で噴射を止めて減容された発泡スチロールを取り出す。なお、槽内に投入された発泡スチロールに減容液が噴射されるときは、減容液はスチロール溶融液と異なり、発泡スチロールを溶融することはなく、発泡スチロール内に滲透し、発泡スチロールを柔軟ゲル化する。そして、このとき発泡スチロールをゲル化を進めるため捏ねることも好ましく、これによって投入された発泡スチロールはよりゲル状態となり、減容化される。例えば発泡スチロール1Lについて実施したところ粉のゲル化に進むのに約5分、完全なゲル状態になるのに約20分程度で減容化が達成された。
【0016】
一方、減容液はゲル状態の発泡スチロールと分離し、随時、下部の網状部4を介して回収タンク5に落下、収容される。そのため、減容槽1底部は網状部4,回収タンク5側に向かって傾斜を有していることが好ましく、これにより減容液は網状部4及び回収タンク5に流れ易くなる。なお、上記作業過程において減容液に引火点が高い液が用いられるため、従来の如く減圧装置を使用して処理する必要なく設備は簡単で済む。
【0017】
かくして減容液により減容化化が進められ、減容液が下部の回収タンクに分離されると共に減容されたゲル状態の発泡スチロール減容物は取り出し口より適宜、取り出し、再生処理業者等に渡す。発泡スチロールは通常、用途に応じて30〜80倍の倍率で発泡されていて、空気含有量が多く、上記減容によって脱気が進められることから、脱気されたゲル状態の発泡スチロールは極めて小容量となり取り出し口より容易に取り出すことができる。この取り出した減容された発泡スチロールは小容量に減容されるだけであるから、特に従前の発泡スチロール廃棄物を溶融して処理する場合の如く産廃業者に頼む必要はなくなり、従って産廃料は不要となるのみならず、ゲル状態の発泡スチロールをリサイクル業者に販売することにより、成形材料として使用に供する経済効果が期待される。
【符号の説明】
【0018】
S:発泡スチロール
1:減容槽
2:投入口
3:噴射手段
4:網状部
5:回収タンク
6:取り出し口
7:循環用ポンプ
8:循環パイプ
9:台車車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡スチロール廃棄物に引火点が100℃以上の減容液を噴射して付与し、溶融することなく混和して脱気,減容し、ゲル状態として減容された発泡スチロールを得ることを特徴とする発泡スチロール廃棄物の減容化方法。
【請求項2】
開閉可能な発泡スチロール投入口を槽上面に有し、槽内下部に網状部を介して回収タンクと、網状部上部側面に取り出し口を有すると共に、槽内上部に減容液噴射手段を設けた減容槽内に廃棄された発泡スチロールを適宜大きさとして投入し、投入口を閉鎖して引火点が100℃以上の減容液を用いて噴射し、発泡スチロールをゲル化せしめる一方、減容液を随時、網状部を通して回収しつつ、槽内上部の噴射手段に循環使用すると共に、所要のゲル化終了後、減容液噴射を止め、上部の投入口を開いて脱気し、網状部上に残留した減容化されたゲル状態の発泡スチロールを取り出し口より取り出し、減容された発泡スチロールを得ることを特徴とする発泡スチロール廃棄物の減容化方法。
【請求項3】
引火点が100℃以上の減容液に引火点103℃の二塩基酸エステル(DBE)を用いる請求項1または2記載の発泡スチロール廃棄物の減容化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144633(P2012−144633A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3686(P2011−3686)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(511010196)
【Fターム(参考)】