説明

発泡ポリフッ化ビニリデン構造物

本発明は、たとえばKynar(登録商標)樹脂からの、発泡フルオロポリマー、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)の構造物に関する。その発泡構造物は、連続で、自立式で、サイジング処理されていて、高密度スキンを有している。その発泡構造物は、発泡剤および成核剤を使用したプロセスにおいて生産される。その構造物は、その生産プロセス(良好な溶融粘度のPVDFフォームを必要とする)の過程で、特定の形状にサイジング処理される。一つのプロセスにおいては、成核剤を含むマスターバッチが使用される。その発泡物品は、シート、フィルム、形材、チューブ、パイプ、物品、ロッド、フォーム−コア構造物、またはその他の自立式の形状物とすることができる。発泡させたチューブ、パイプ、ロッド、シート、およびコンジットが特に有用である。本発明の発泡構造物は、対応する非発泡PVDF構造物に比較して、より軽量、より可撓性、そしてより高い耐衝撃性があるということによる付加価値を与える。それはさらに、より高いヒステリシス、より高い遮断性、より低い誘電率、およびより高い圧縮性も有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立式で、サイジング処理されていて、高密度スキンを有する、発泡させたフルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の構造物に関する。その発泡構造物は、発泡剤および成核剤を使用したプロセスにおいて生産される。その構造物は、その生産プロセス(良好な溶融粘度のPVDFフォームを必要とする)の過程で、特定の形状にサイジング処理される。一つのプロセスにおいては、成核剤を含むマスターバッチが使用される。その発泡物品は、シート、フィルム、形材(profile)、チューブ、パイプ、またはその他の自立式の形状物もしくは物品とすることができる。発泡させたチューブ、パイプ、およびコンジットが特に有用である。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデンは、多くの好ましい物理的性質を有しているために、多くの用途において好適な材料となっている。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、顕著な靱性および高い弾性を有し、高い耐薬品性、耐候性、耐浸透性、および難燃性を有している。コーティングおよび溶融加工可能な用途のいずれにおいても、それは広く使用されている。残念ながら、PVDFの密度が比較的高く、より一般的な他の樹脂よりも高価となる可能性がある。
【0003】
PVDFの優れた物理的性質および化学的性質をほとんど、またはまったく低下させずに、その密度を下げ、コストを下げることが望まれている。
【0004】
PVDFの密度を低下させるための一つの方法は、PVDFフォームを形成させることによるものである。残念ながら、溶融強度が低く、溶融状態における気泡の生成を調節するのが困難であるために、PVDFの発泡が、一般的には、バッチプロセスか、支持体を用いた発泡か、たとえばラテックスの凍結のようないくつかの普通ではない(exotic)プロセスのいずれかに限定されてしまう。バッチプロセスにおいては、まず中実のPVDF、典型的には押出法によるフィルムの形に成形し、放射線によって架橋させ、長時間かけて加圧下にガスに浸漬させ、次いで高温下で発泡させて、典型的にはスラブとする。この方法を使用するのでは、充実スキン(solid skin)を有する中空または長尺の物品、たとえばパイプを作成することは不可能である。溶融強度が低いことを克服するための支持発泡技術においては、発泡ポリマーが崩壊するのを防止するために、キャリヤーまたはワイヤーの上もしくは周りに押出し加工する。このケースで押出加工されたフォームは、特に大きなサイズの用途の場合においては、キャリヤーの支持なしでは、それ自体を保持できないであろう。したがって、その製品をサイジング処理したり、中空の自立式形材を作ったりすることは不可能である。その結果として、この方法は、PVDFのワイヤーコーティングの作成に限定される。
【0005】
溶融強度の問題を克服し、コストを低減させるための一つの手段は、PVDFと他のポリマーたとえばアクリル樹脂とのアロイを形成させて、結晶化度を低下させ、その発泡過程を改良することである。残念ながら、この方法では、PVDFフォームの有利な性質、特に高い結晶化度に関連する性質が損なわれる。
【0006】
米国特許第4,781,433号明細書には、光ファイバーケーブルのための発泡PVDFジャケットが記載されている。発泡剤濃縮物を使用してPVDFが成形して、移動しているワイヤーの上に直接的に押出加工した発泡PVDFを製造している。そのPVDFフォームは、サイジング処理もされないし、また自立式でもない。
【0007】
米国特許第7,081,216号明細書には、PVDFエマルションを凍結させてから融解させることによる、PVDFフォームの成形が記載されている。このプロセスは、充実スキンを有する中空であるかまたは長尺で薄い物品を製造するには有用でない。
【0008】
国際公開第08/137393号パンフレットには、コンジットとして有用な発泡PVDFの筒状物品が記載されている。サイジング、溶融粘度、および成核剤についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,781,433号明細書
【特許文献2】米国特許第7,081,216号明細書
【特許文献3】国際公開第08/137393号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
驚くべきことには、本願出願人らは、充実スキンを有する、有用な、自立式の発泡させたフルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の構造物を、連続的生産プロセスにおいて成形することが可能であることを今や見出した。高密度スキン層を有するサイジング処理した構造物を製造するためには、そのフォームが、当業界では見たこともないような高い溶融粘度であることが必要である。良好で均質なフォームを形成させるためには、成核剤もまた必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のものを含む、自立式のフルオロポリマー、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)の発泡構造物に関する;
a)60〜99.99重量パーセントのフルオロポリマー、好ましくはPVDF;
b)0.01〜5重量パーセントの残存(residual)成核剤;(0.1〜2)
ここで、前記発泡構造物が、未発泡であるa)の前記フルオロポリマーよりも少なくとも3%は低い密度を有し;ここで前記構造物が、サイジング処理されており;そして
ここで、前記構造物が、少なくとも2ミクロンの厚みの高密度スキンを有し、そしてここで、前記スキンが、平均して、1mm2あたり20個未満のボイドを含んでいる。
【0012】
本発明はさらに、以下のものを含む、フルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデンの発泡において使用するためのマスターバッチ濃縮物にも関する:
a)5〜99.99重量パーセントの、50〜175℃の溶融温度または50〜110℃のTgを有するキャリヤー樹脂;
b)全ポリマー固形分を基準にして、0.01〜95重量パーセントの、1種または複数の成核剤;および
c)任意選択により、0.01〜95重量パーセントの、1種または複数のその他の添加剤。
【0013】
本発明はさらに、以下の工程を含む、サイジング処理した、フルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデンのフォームを製造するためのプロセスにも関する:
a)キャリヤー樹脂、および全ポリマー固形分を基準にして0.01〜95重量パーセントの1種または複数の成核剤を含む、1種または複数のマスターバッチ濃縮物を形成させる工程;
b)マスターバッチの0.1〜95重量パーセントでフルオロポリマー、好ましくはポリフッ化ビニリデンの樹脂を含む前記(1種または複数の)マスターバッチ濃縮物を、5〜99.9重量パーセントのフルオロポリマーとブレンドして、均質なフルオロポリマー/マスターバッチブレンド物を形成させる工程;
c)押出機を通過させてそのフルオロポリマー/マスターバッチのブレンド物を加工して、フルオロポリマー、ガス、およびマスターバッチの成分の均質な混合物を製造する工程;
d)押出機の終端、アダプター、および/またはダイの中でそのフルオロポリマー/ガスの混合物を冷却する工程;
e)そのフルオロポリマー/ガスの混合物を押出機から押出加工または射出成形して、フルオロポリマーフォームを形成させる工程;および
f)そのフルオロポリマーフォームを、サイザーを通過させて、高密度スキンを有する成形されたフルオロポリマーフォーム構造物を形成させる工程;および
g)得られた構造物を冷却する工程;および
任意選択により、そうして得られた冷却構造物を切断して、所望のサイズとする工程。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のポリビニリデンフォームの顕微鏡写真である。優れたセル構造と高密度スキンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、成核剤および発泡剤を使用してフルオロポリマーから製造し、次いで、サイジング処理することにより、高密度スキンを有する自立式のフルオロポリマーフォーム構造物を製造した、フォームに関する。そのフルオロポリマーがポリフッ化ビニリデン(PVDF)であるのが好ましい。
【0016】
本明細書で使用するとき、発泡構造物に関連して「自立式の(self−supporting)」という用語は、以下の意味合いを有している:a)すべての構造物において、本発明のフォームは、フォームが破裂することなくダイから引き抜くことができる;b)すべての構造物において、そのフォームが、そのフォームをサイジング処理するのに、いかなる内部的または外部的支持体を必要としない;および、c)パイプまたはチューブの場合においては、そのパイプまたはチューブが崩れることはなく、その内部の開口は維持されるであろう。たとえばワイヤーのような補強要素が、その発泡構造物の内部に存在していてもよいが、サイジング処理したフォームを製造するのに、その存在が必要であるという訳ではない。
【0017】
フルオロポリマー
本発明のフルオロポリマーとしては、少なくとも50重量パーセントの1種または複数のフルオロモノマーを含むポリマーが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。本発明において使用するとき、「フルオロモノマー」という用語は、フリーラジカル重合反応をすることが可能な、フッ素化されたオレフィン系不飽和モノマーを意味している。本発明において使用するのに適したフルオロモノマーとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、エチレンテトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ならびにそれらそれぞれのコポリマー。好ましいフルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデンのホモポリマーまたはコポリマー、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロ化エチレン−プロピレンコポリマー(EFEP)、およびポリテトラフルオロエチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。フルオロターポリマーもまた考えられるが、それに含まれるのは、たとえばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンおよびフッ化ビニリデンモノマー単位を有するようなターポリマーである。そのフルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であれば、最も好ましい。本発明においては、PVDFに着目して例示しているが、PVDFとして例示した場合でも、他のフルオロポリマーが当てはめられるということは、通常の技量を有する当業者ならば認識するであろう。
【0018】
本発明のポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、PVDFのホモポリマー、コポリマー、またはポリマーアロイである。本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーとしては、フッ化ビニリデン(VDF)を重合させることにより製造したホモポリマー、ならびにフッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー、およびさらに高級なポリマーが挙げられるが、ここで、そのフッ化ビニリデン単位が、ポリマー中のすべてのモノマー単位の全重量の、51重量パーセント、好ましくは70パーセントを超える量で含まれ、より好ましくは、モノマー単位の全重量の75パーセントを超える量で含まれる。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー、およびさらに高級なポリマー(本明細書においては、一般化して「コポリマー」と呼ぶ)は、フッ化ビニリデンを、以下のものからなる群からの1種または複数のモノマーと反応させることによって作成することができる:フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、部分的もしくは全面的にフッ素化されたアルファ−オレフィンたとえば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、およびヘキサフルオロプロペンの1種または複数、部分的にフッ素化されたオレフィン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロ化ビニルエーテルたとえば、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテル、およびペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、フッ素化ジオキソールたとえば、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)およびペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アリル型、部分フッ素化アリル型、もしくはフッ素化アリル型モノマーたとえば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルもしくは3−アリルオキシプロパンジオール、ならびにエテンまたはプロペン。フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、およびヘキサフルオロプロペン(HFP)と共に形成させたコポリマーまたはターポリマーが好ましい。
【0019】
好ましいコポリマーとしては、約60〜約99重量パーセントのVDFと、それに対応する約1〜約40パーセントのHFPを含むもの;VDFとCTFEとのコポリマー;VDF/HFP/TFEのターポリマー;およびVDFとEFEPとのコポリマーが挙げられる。
【0020】
本発明のPVDFは、PVDFと、混和性、半混和性、または相溶性のポリマーとのアロイであってもよい。PVDFのアロイのほとんどのものでは、PVDFの特性が減退するので、好ましいPVDFは、アロイになっていないものである。しかしながら、全PVDFポリマーアロイの25パーセントまでの少量の他のポリマーが添加されていてもよい。他のフルオロポリマー(たとえば、ポリフッ化ビニルおよびPTFE)、TPU、および(メタ)アクリル系ポリマーが、有用なポリマーアロイを作り出すことが可能な有用なポリマーの例である。
【0021】
発泡剤
本発明において有用な発泡剤は、化学的もしくは物理的発泡剤のいずれか、またはそれらの混合物とすることができる。化学的発泡剤の場合においては、化学物質をその分解温度より高い温度に加熱して分解させることによって、ガスが発生する。物理的発泡剤の場合においては、ガスをポリマーの中に直接導入するか、または液状の発泡剤をその蒸発温度よりも高い温度に加熱して蒸発させることによって、ガスを導入する。化学的発泡剤は、より高い密度のフォーム(70%密度低下まで)に主として使用され、それに対して物理的発泡剤では、軽量フォーム(10倍の密度低下より大)を製造することができる。
【0022】
化学的発泡剤は、固体であっても流体であってもよい。有用な発泡剤として以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:アゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、スルホニルセミカルバジド、4,4−オキシベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、5−フェニルテトラゾール、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボン酸ジイソプロピル、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホヒドラジド、無水イサト酸、N,N’−ジメチル−N,N’ジニトロテレフタルアミド、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、無水クエン酸、トリヒドラジノトリアジン、N,N’−ジニトロソ−ペンタメチレンテトラミン、およびp−トルエンスルホニルヒドラジド、または、2種以上の前記発泡剤のブレンド物。本発明においては、発泡剤の混合物もまた考慮される。
【0023】
成核剤
本発明のフォームは、成核剤を用いて形成されるが、それらは、均質なフォームを製造するのに役立つ。化学的発泡剤を使用した場合には、成核剤を使用するのが好ましいが、物理的発泡剤を使用した場合には、調節されたフォームを形成させるためには成核剤を使用することが必要である。2種以上の成核剤の混合物を使用することもできる。有用な成核剤として以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム水酸化物、タングステン酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸鉛、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノシリケート、カーボンブラック、グラファイト、非有機顔料、アルミナ、二硫化モリブデン、ステアリン酸亜鉛、PTFE粒子、非混和性ポリマー粒子、およびメタケイ酸カルシウム。好ましい成核剤は、炭酸カルシウムである。粒径が小さく、表面が粗い成核剤が好ましい。
【0024】
添加剤
発泡剤および成核剤に加えて、本発明のPVDFにはさらに、PVDF配合物に典型的に添加される他の添加剤、非限定的に挙げれば、たとえば耐衝撃性改良剤、UV安定剤、可塑剤、充填剤、着色剤、顔料、染料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤、トナー、顔料、および分散助剤などを含んでいてもよい。
【0025】
生産プロセス
本発明のサイジング処理したPVDF発泡構造物は、押出し混合プロセスと、それに続くサイジング操作によって形成させる。そのフォームは、押出機の中で1種または複数の化学的発泡剤を分解させてガスを発生させるか、または、押出機中の溶融ポリマーの中にガス状もしくは液状の発泡剤を直接注入することによって製造する。次いで、その押出加工したフォームをサイザーまたはその他の装置の中を通過させて、高密度スキンを有する最終的な形状および寸法の構造物を形成させる。それらの発泡物品は、自立型の構造物として生産され、そのフォームが崩れるのを防止するためのワイヤーまたはコアのようなキャリヤーを必要としない。特定の範囲の、ポリマーの粘度、加工温度、発泡剤担持量、成核剤担持量、およびサイジング条件を使用することによって、本発明のPVDFフォーム構造物が製造されるということが見出された。
【0026】
一般的に、結晶質および半晶質のポリマーを発泡させることは、非晶質ポリマーを発泡させるよりも、はるかに困難であるが、その主な理由は、融点を通過する際のそれらの粘度の変化が急激であること、さらにはそれらの溶融強度が低いことにある。本発明では、結晶質PVDF、半晶質PVDF、および非晶質PVDFのポリマーおよびコポリマーの発泡ポリマー構造物を製造することができる。
【0027】
化学的発泡剤を使用してフォームを製品するためのプロセスは通常、押出機の中で実施される。本明細書で使用するとき「押出機(extruder)」という用語は、ポリマー、発泡剤、および成核剤の均質な混合物がフォームとして押出される、熱成形装置を意味している。本発明において有用な押出機としては、単軸および二軸スクリュー押出機、吹込み成形装置、および射出成形装置などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。フィルム、シート、形材、チューブ、パイプ、またはロッドを製造する単軸または二軸スクリュー押出機の場合においては、押出しおよびサイジングのプロセスは、連続プロセスである。吹込み成形および射出成形においては、そのプロセスは非連続であって、物品のための部品の物品が得られる。押出機の内部で、発泡剤および成核剤の存在下に、ポリマーがその融点より高い温度に加熱される。化学的発泡剤を使用する場合には、その温度をその発泡剤の分解温度よりも高い温度に上昇させて、ガスを発生させ、次いでそれを高圧下で溶融ポリマーに吸収させる。別な方法として、溶融ポリマーの中にガスまたは流体を注入することも可能である。ガスは、ポリマーにとっては優れた可塑剤である。結晶質ポリマーの場合においては、ガスを加えることによって、ポリマーの溶融温度と粘度の両方を実質的に低下させることになるであろう。そうして得られた混合物は、極めて低い溶融強度および低い粘度を有しているので、発泡させるには不適切であるが、その理由は、溶融混合物の溶融強度が低いと、製品をサイジングさせるのに必要なドローダウンを妨げ、サイジング装置に到達する前や、さらにはサイジング装置の中で、溶融物の破裂を招くからである。さらに、粘度がそのように低いと、安定性の問題も起こって、不均質で、大きく、時には崩れた気泡が生成する可能性がある。
【0028】
低粘度および低溶融強度の問題は、ダイから出る前にそのポリマー/ガス混合物を冷却することによって克服できることを、本願出願人は見出した。この方法では、粘度および溶融強度が増大し、形成されたフォームが、安定で、かつ十分な絞り性(drawability)を有する。
【0029】
本発明で良好なフォームを得るための基本点は、押出機の中で、ポリマーを溶融させ、発泡剤を分解させるのに十分な熱を発生させ、次いで後段において、そうして生成したポリマー/ガス混合物を冷却して溶融粘度を上昇させることにある。押出機、アダプター、およびダイの温度プロファイルを注意深く選択して、これらの条件を作り出すようにしなければならない。押出機の終端の圧力、溶融物の温度およびダイのプロファイルもまた、調節するべき重要なパラメーターである。
【0030】
ポリマー/ガス混合物がダイから出て、大気圧に曝露されるときに、それが十分な溶融強度および粘度を有しているのが理想的である。この時点において、ポリマーの中に溶解されているガスが溶液状態から出て、ポリマーの中に気泡を発生させる。これらの気泡は、ポリマー中のガスがほとんどなくなり、ポリマーがさらに冷却されて、さらなる膨張に抵抗が生じるまでは、成長する。気泡中のガスの圧力とポリマー溶融物の引張粘度との間でバランスがとれるようになったところで、フォームの膨張が停止する。そこで、フォームはサイザーに送られる準備ができている。
【0031】
本発明の一つの実施態様においては、フォーム−コアパイプ、ロッドまたはその他の構造物が形成される。このプロセスにおいては、押出加工したPVDFフォームの外側(および、パイプまたはチューブでは内側)の上に、中実のPVDFスキンが共押出しされる。PVDFのスキン層は、そのフォームのコアと同一の組成であっても、異なった組成であってもよい。
【0032】
サイジング
本明細書で使用するとき、「サイジング処理した(sized)」または「サイジング(sizing)」という用語は、PVDFフォームが、成形、キャリブレーション、および冷却操作にかけられ、そこで、そのフォームがある程度圧縮されて、高精度および高密度スキンを有する特定の構造物を生じる生産プロセスを意味している。
【0033】
パイプ、チューブ、形材の場合においては、サイジングは、典型的には、サイザーリングの存在下または非存在下、水もしくは水スプレーの存在下または非存在下、そして真空の存在下または非存在下に、サイジングタンクまたは真空タンク中で起きる。サイジングは、波形のパイプまたはチューブの場合であれば、コルゲーターによって起こすこともできるし、シートまたはフィルムの場合であれば、3本ロールスタックまたは同様のプロセスを使用してサイジングを実施することができる。射出成形部品の場合のサイジングは、金型中で起こすこともできる。これらのプロセスのいずれにおいても、調節された精度および高密度スキンを有する構造物が製造される。
【0034】
その高密度スキンは、2ミクロンを超える、好ましくは10ミクロンを超える、より好ましくは20ミクロンを超える厚みを有しており、30、40、さらには50ミクロンもの厚みにすることも可能である。いくつかの用途においては、より厚いスキンが望まれるが、それは、サイジングプロセスにおいて形成させることができる。高密度スキンは、任意選択により、その充実スキンの利点に害を及ぼさない、フォーム気泡を含んでいてもよい。本発明の高密度の充実スキンは、スキンの1×1mmの面積の中に平均して20個以下のフォーム気泡、好ましくは1mm2あたり9個未満のフォーム気泡を有していてよい。
【0035】
マスターバッチ
本発明の好ましい実施態様においては、そのPVDF発泡構造物が、適切なキャリヤーの中に成核剤、(化学的発泡剤が使用されている場合ならば)少なくとも1種の発泡剤、および任意のその他の添加剤を含む、1種または複数のマスターバッチ濃縮物を使用して製造される。マスターバッチの目的は、低レベルで使用される成分をより高い精度で添加することであって、PVDFの内部の成分に優れて均質な混合を与えるような方法で実施して、均質なフォームが形成されるようにする。さらに、それらの添加剤は通常、ポリマーペレットに添加することを必要とする微細な粉体の形状であって、押出機のホッパー中で相分離を起こす可能性がある。
【0036】
マスターバッチには、最終製品において要求される添加剤を高い濃度(時には、10〜50倍以上)で含んでいる。一般的には、次いでそのマスターバッチを、ドライブレンドの形態でPVDFペレットと混合し、押出機のホッパーに導入する。このプロセスは、濃縮物のレットダウン(letting down)と呼ばれている。そのレットダウンプロセスにおいては、マスターバッチ中の添加剤の濃度、さらには最終製品における添加剤の所要量に依存して、数パーセントから、任意選択により50%を超える量の間のマスターバッチ濃縮物が、ポリマー樹脂に添加される。
【0037】
それぞれがPVDFの中に混合されるべき添加剤の1種または複数を含む、複数のマスターバッチを有しておくことも可能である。マスターバッチを複数用意しておく利点の一つは、生産時に、生産者が添加剤の比率を調整することが可能となることであろう。複数のマスターバッチの一例は、第一のマスターバッチが成核剤を含み、第二のマスターバッチが発泡剤を含むといったものであろう。
【0038】
マスターバッチを使用したPVDFフォームの生産
マスターバッチを使用して本発明のフォームを形成させるためのプロセス工程は以下のとおりである:
a)それぞれが、キャリヤー樹脂と、以下の、発泡剤、成核剤、および/またはその他の添加剤の1種または複数とを含む、1種または複数のマスターバッチ濃縮物を形成させる工程;
b)前記マスターバッチ濃縮物をフルオロポリマー(好ましくはポリフッ化ビニリデン)樹脂とブレンドして、均質なフルオロポリマー/マスターバッチブレンド物を形成させる工程;
c)押出機を通過させてそのフルオロポリマー/マスターバッチブレンド物を加工して、(1種または複数の)マスターバッチの成分の均質な分散を起こさせ、その発泡剤を活性化させ、フルオロポリマー、ガス、成核剤、およびマスターバッチの成分の均質なフルオロポリマー混合物を製造する工程;
d)押出機の終端、アダプターおよび/またはダイにおいて、前記フルオロポリマー混合物を冷却する工程;
e)そのフルオロポリマー混合物を押出機から押出加工または射出成形して、フルオロポリマーフォームを形成させる工程;
f)そのフルオロポリマーフォームを、サイザーを通過させて、高密度スキンを有する成形されたフルオロポリマーフォーム構造物を形成させる工程;
g)得られた構造物を冷却する工程;および
h)任意選択により、そのようにして得られた冷却されたフルオロポリマーフォーム構造物を切断して、所望のサイズにする工程。
【0039】
工程a)
マスターバッチポリマー濃縮物は、一般的には、二軸スクリュー押出機の中で調製して、ブレンド物の中の添加剤の混合均質性を最大化させる。混合が不十分な濃縮物は、レットダウンプロセスの後に押出加工工程c)を通してさえも、劣った製品しか得られないであろう。濃縮物を調製するために、キャリアポリマーのペレットおよび添加剤を押出機のホッパーに、通常は別々の流れとして加え、次いで押出機の内部で溶融および混合をさせ、最後に押出機の終端でペレット化させる。別な方法としては、バッチ式粉体ブレンダーの中でキャリヤー樹脂と添加剤との粉体混合物を調製し、次いでその粉体を、二軸スクリュー押出機に導入して、メルトブレンドさせ、ペレット化させることが挙げられるであろう。この第二の方法の利点は、粉体の形態でいくらかのブレンドが可能であることであって、キャリヤー樹脂の中に添加剤を分散させるための労力が少なくなるであろう。
【0040】
マスターバッチフォーム濃縮物の調製は難しく、押出機の中で適切に混合しながら、発泡剤の分解温度とキャリヤー樹脂の溶融温度との間のバランスをとる必要がある。押出機の中の温度が発泡剤の分解温度を超えることは許されないが、その理由は、ガスが発生すると発泡剤の効果が低下し、発泡したペレットとなってしまうからである。その一方で、キャリアポリマーは、押出機内部での良好な混合を可能とする目的でその粘度を低下させるためには、その溶融温度より高い温度に加熱する必要がある。したがって、発泡剤の分解温度は、キャリアポリマーの加工温度よりも高くするべきである。このために、ある特定の樹脂と組み合わせて使用することが可能な発泡剤が特定のものに限定されることになる。いくつかの場合においては、溶融温度が低いアクリル樹脂またはワックスをキャリヤー樹脂として使用して、低い分解温度を有する発泡剤のためのマスターバッチを作り出す。さらに、PVDFとの相溶性を有するポリマーは極めて少ない。いくつかの有用なキャリヤーとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリ(メタクリル酸エチル)(PEMA)、ポリ(アクリル酸メチル)(PMA)、ポリ(アクリル酸エチル)(PEA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリ(ビニルメチルケトン)(PVMK)、熱可塑性ウレタン(TPU)、およびその他の(メタ)アクリル系ポリマー。一つの実施態様においては、PVDFベースのキャリヤーが使用されるが、その理由は、純粋なPVDFフォームが、その良好な化学的および物理的性質のために、極めて望ましく、それらのPVDFフォームの品質が、非相溶性のポリマーを加えることによって損なわれる可能性があるからである。
【0041】
上述の要件を満たす好ましいキャリヤー樹脂は、低融点および低粘度のPVDFコポリマー、たとえばPVDF−ヘキサフルオロプロペン(HFP)コポリマー粉体である。そのキャリヤー樹脂は、2種以上の異なったキャリヤー樹脂のブレンド物からなっていてもよい。粉体の形状のキャリヤーを使用することによって、押出機における混合の必要性が低下するが、その一方で、低溶融温度−低粘度のキャリヤー樹脂を使用することによって、より低い温度で加工することが可能となり、しかも良好な混合が達成される。キャリヤー樹脂の溶融温度は、50〜175℃の間、好ましくは75〜150℃の間とすることが可能であろうが、そのキャリヤーが非晶質ならば、それが50〜110℃、好ましくは60〜105℃のTgを有する。
【0042】
マスターバッチにおける発泡剤の担持量は、0.1〜95%、好ましくは1〜50%、最も好ましくは1〜20%である。マスターバッチにおける成核剤の担持量は、0.01〜95%、好ましくは0.05〜20%、最も好ましくは0.1〜5%である。
【0043】
本願出願人は、局所的な剪断加熱が最小で、最適な混合が得られるような、二軸スクリュー押出機のための特殊な低剪断スクリューを開発し、使用した。この技術によって、既存の技術を使用しては不可能であった、PVDFフォーム濃縮物の調製が可能となったのである。たとえば、分解温度が130℃かまたはさらに低い発泡剤を含む完全フッ素化フォーム濃縮物が製造される。その低分解温度の発泡剤は、PVDFを発泡させるのに適したガスのユニークな組成を発生させる。低分解温度発泡剤のさらなる利点は、工程(c)における押出機を、生産プロセスの際に、より低い温度で運転して、エネルギーが節約できるし、また、工程(d)においてアダプターおよびダイの中におけるポリマー−ガスのブレンド物の冷却のレベルを下げることができる点にある。多くの場合において、ダイにおける冷却の効率が高くなると、ライン速度を上げ、またフォーム密度を低下させながらも、表面および気泡の品質は維持できるようになる。
【0044】
工程b)
マスターバッチは、ドライブレンドによってPVDF樹脂に添加し、単軸スクリューもしくは二軸スクリュー押出機中で転動させることができる。二軸スクリュー押出機では、ドライブレンド法を実施し、さらにはマスターバッチおよびPVDFを計量フィードすることを可能とする。マスターバッチの担持量は、マスターバッチとPVDFとの合計重量を基準にして、0.1〜95重量パーセント、好ましくは1〜50%、最も好ましくは5〜20%である。最終製品の中の発泡剤の量はそのタイプに依存するが、典型的には、マスターバッチとPVDFとの合計重量を基準にして、0.1〜25%、好ましくは0.2〜10%の範囲である。最終製品の中の成核剤の量は、その粒径と表面粗さに依存するが、マスターバッチとPVDFとの合計重量を基準にして、0.01〜5%、好ましくは0.02〜2%の範囲である。この用途には、230℃、100S-1で4.0〜55.0キロポワズの粘度を有するPVDF樹脂を使用することができよう。好ましい粘度範囲は、15.0〜55.0キロポワズ、より好ましい範囲は20.0〜55.0キロポワズである。
【0045】
工程c)
押出機の温度およびPVDF/マスターバッチ材料の滞留時間は、その樹脂と発泡剤の組合せに適したものとするべきである。その発泡剤がガスまたは流体であるならば、この時点でPVDF/マスターバッチの中にそれを注入する。その温度は、ポリマーを溶融させ、(その発泡剤が化学的発泡剤、液体、または固体であるならば)その発泡剤を分解させるのに十分な高さとするべきである。さらに、ポリマー/発泡剤混合物の押出機中における滞留時間は、それらのガスをポリマー溶融物の中に吸収させるのに十分な長さとするべきである。単軸スクリュー押出機においては、その滞留時間は、スクリュー速度によって調節し、その温度は、外部加熱要素によって調節する。ガスの組入れは、押出機の終端で混合セクションを使用することによって加速させてもよい。しかしながら、ポリマーと発生したガスとの間に十分な親和性が存在しているのなら、その吸収の過程は、混合要素の助けを借りなくても達成することができる。ポリマーの中のガスの濃度をあまり高くする必要がない、密度低下が低いような場合には、このことがさらにあてはまる。二軸スクリュー押出機の場合には、その滞留時間および分散は、スクリュー速度に加えてスクリューの設計によっても調節される。温度は、剪断の大きさと、さらには外部加熱要素とによって調節される。密度低下を高くする場合には、二軸スクリュー押出機を使用することが特に有利であるが、それは、このタイプの押出機では優れた混合が実現される可能性があるからである。スクリュー要素を改良して、比較的短時間のあいだにポリマーの中に大量のガスを組み入れるようにすることができる。押出機における温度プロファイルは、第一のゾーンでのポリマーの溶融温度よりも低いところから始めて、PVDFの溶融温度および発泡剤の分解温度に基づいた所望の温度にまで徐々に上げていくべきである。押出機の流れ方向で、温度をあまり早く上げすぎないように適切な注意を払うべきであるが、その理由は、昇温が早すぎると、早めに発泡剤の分解が起きてしまって、発生したガスが、押出機のホッパーから逃げ出してしまうことが起こりうるからである。典型的には、押出機の四つのゾーンにおいて、第一のゾーンが、発泡剤の分解温度よりも100゜F低く、第二のゾーンでは50゜F低く、第三のゾーンでは発泡剤の分解温度よりも25゜F低く、そして第四のゾーンが分解温度になるようにする。PVDFフォーム製品を、1インチ、1.5インチ、および2.5インチの単軸スクリュー押出機を含めた一連の機械で作製したが、汎用スクリュー、バリヤースクリューとMaddockミキシングヘッド、およびバリヤースクリューとEganミキシングヘッドを含めた一連のスクリューを使用した。L/Dが(20:1)から(27:1)までの一連のスクリューと、(3:1)から(4.5:1)までの範囲の圧縮比を使用することで、本発明の教示に従う各種のPVDFフォームが満足のいくレベルで作成された。
【0046】
工程d)
押出機の終端では、そのポリマー/ガス混合物は、適切な粘度と強度とを有する溶融物を製造するには、高すぎる温度となっているであろう。したがって、押出機の終端のところで、アダプターおよび/またはダイの中でその混合物を冷却して、ダイから出るより前にその粘度を上昇させる。より長い押出機では、この冷却過程を、押出機の終端で開始させることも可能であろう。射出成形の場合においては、その冷却工程は最小限とすることができる。
【0047】
このように冷却することのさらなる利点は、上流側の圧力が高くなり、それによって、ダイの中での早すぎる発泡、シャークスキン、および貧弱なセル構造が防止される点にある。溶融物は通常、ダイから押し出される前に、約100゜Fにまで冷却されている必要がある。この温度は、樹脂の推奨される加工温度よりも100〜150゜F低いものとなるであろう。いくつかのケースにおいては、溶融物の温度をその樹脂の溶融温度よりも低くすると、ベストなフォームが得られるであろう。ダイの出口における溶融物の温度は、その樹脂の溶融温度の50゜F下から120゜F上までの間である。好適な範囲は、その樹脂の溶融温度の30゜F下から80゜F上までであり、最も好ましい範囲は、20゜F下から30゜F上までである。ポリマーとガスとの混合物は、押出機の中におけるポリマーの滞留時間のあいだにその発泡剤が完全に分解するのに必要とされる温度より高い温度に加熱するべきではない。押出機の終端における溶融物の温度が高すぎると、アダプターおよびダイのところでの冷却工程が極めて困難、ないしは不可能となるであろう。比較的短い距離のあいだに温度を低下させようとすると、いくつかのケースでは、冷たい空気をダイの周囲または内側に送る必要が生じる。PVDFフォーム製品は、クロスヘッドスパイラルマンドレルダイ、インラインスパイラルマンドレルダイ、スパイダーダイ、およびコートハンガーダイでも製作した。
【0048】
工程e)
適切な加工条件と、低レベルのフォーム濃縮物担持量を用いると、その押出し物がダイから出る際に、最小限の気泡しか生成しないことが認められる。この押出し物は、見た目が幾分か透明で、極めて滑らかな表現仕上がりを有している。ダイの出口よりも後で、気泡の発生が始まるであろう。フォーム濃縮物のレベルが高すぎると、その押出し物が、過発泡を起こし、直ちに溶融強度を劇的に低下させ、いくつかのケースにおいては、フォームガスがその溶融した材料から逃げ出すために、激しいはじけ現象(popping)が起きるであろう。その押出し物は極めて強く変色し、その表面仕上がりは極めて粗いものとなるであろう。気泡の発生がダイの内部でも起こり、そのために、その物品の表面または内部で、不均質で、崩壊するかまたは破裂した気泡が生成する。適切な量の発泡濃縮物を用いた場合には、ダイから出てきた物質が、ダイからほぼ1/16インチのところまでは透明であることが観察され、次いで整然とした順序で、気泡の発生が起きるであろう。その表面仕上がりは極めて滑らかであり、その押出し物は均質に膨張するであろう。発泡が、ダイを出た後に直ちに起こるということが重要であるが、なぜならば、これが最も調節されたフォーム生成となるからであろう。
【0049】
良好な加工条件とすると、透明な溶融物がダイから出てくる。ダイからほぼ1/16インチのところで、そのフォームの気泡の生成が始まり、その押出し物が膨張し始めるであろう。膨張の過程は、ダイから約1インチ〜2インチのところで安定化するであろう。このところで、その押出し物が滑らかな表面を有しているべきであって、設計した線速度で引張したときに破裂してはならない。PVDFフォームで必要とされるドローダウン比、ドローバランスおよび収縮は、中実のPVDFと極めて類似していることが見出された。精密な許容差を有するPVDFフォームを製造するためには、1.1〜2.0のドローダウン比、0.99〜1.02のドローバランス、および3%〜6%の収縮補償(shrinkage compensation)が必要とされるであろう。ダイスウェルは、密度低下の大きさの関数であり、特定の最終製品寸法とするための工具設計にかなり大きく影響する。ダイリップとキャリブレーターの入口との間の最適な距離が、約1インチ〜2インチの間であることもまた見出された。
【0050】
工程f)
本特許の目的のためのサイザーは、冷却し、付形し(shape)、成形し(form)、フォームの崩壊を防止し、あるいはPVDFフォームを適切なサイズとするための、いかなる装置であってもよい。パイプおよびチューブのためのこれらサイザーの例としては、サイザーリングの存在下または非存在下、水もしくは水スプレーの存在下または非存在下、真空の存在下または非存在下、または上記の因子を組合せた、サイジングタンクまたは真空タンクが挙げられる。発泡PVDFフィルムのためのサイザーとしては、カレンダー有りまたは無しの、2本もしくは3本ロールスタックが挙げられる。波形パイプのためサイザーとしては、各種のタイプのコルゲーター装置が挙げられる。射出成形部品のためのサイザーとしては、金型が挙げられる。サイザーを通過させた結果として、適切に加工された物品は、高密度のPVDFスキンを有することになるであろう。このスキンは、その発泡構造物に良好な表面仕上がりを与え、機械的性質および浸透性に役立つであろう。サイザーにおける冷却強度が、スキンの厚みおよび表面仕上がりに対する主たる誘因の一つである。たとえば、真空タンク中でPVDFフォームパイプをサイジングするためには、水は、その外側表面を迅速に冷却するであろうが、そのパイプの内側を冷却するには効果がない。その結果として、スキンは、内側よりも外側の上で厚くなるであろう。より厚いパイプの場合、その溶融物の温度が高すぎると、そのパイプの内側における発泡作用が、真空タンクの中にまで十分に続いていて、破裂した気泡を有する、粗くブリスターの発生した内側表面となってしまう。この場合、唯一の解決法は、溶融物の温度を下げるか、水の温度を下げるか、または配合物中の濃縮物の量を下げるかである。典型的には、90゜Fの冷却水の温度が、開始させるのに適した良好な温度であることが見出された。水の温度が冷たすぎると、表面上にチャタリング(chattering)を起こす可能性があり、また水の温度が高すぎると、薄いスキンを有する不透明な外観となる可能性がある。発泡させた溶融物は通常、成形装置の中を通過させるが、その装置は、典型的には、冷却タンクの内側に取り付けられているのに対して、タンクの中の水の表面で真空が引かれている。ほとんどの中空物品の場合には、水温32℃で、10〜20水真空を有する長さ15’のタンクで十分であることが見出された。タンクの中における好適なサイザーは、0.75インチ〜3.5インチの間の長さを有する黄銅製のプレートで構成されたものであろう。これらのプレートの間の距離を変化させて、製作する製品の特性に合わせることができる。
【0051】
工程g)
サイジング操作の後で、そのサイジング処理したフォームを、室温にまで冷却する。
【0052】
工程h)
そのサイジング処理したフォーム構造物は、(たとえば、ブロー成形または射出成形プロセスの場合のように)成形したままで使用してもよいし、あるいは任意選択により、(たとえば連続パイプまたは形材プロセスの場合のように)それらを切断して、予め定められたサイズとしてもよい。
【0053】
フォームの性質
最終的な構造物は、良好な機械的性質および外観を与える高密度スキン層を有することになるであろう。そのフォームは、60〜99.9重量パーセントのフルオロポリマー(好ましくはPVDF)、0.01〜5重量パーセントの残存成核剤を含み、任意選択により他の添加剤も含むであろう。そのフォームは、良好な機械的安定性を有し、そして元の密度の50%にまで密度低下させたPVDF発泡構造物では、耐力特性が存在していて、そのために、それらは、圧力に耐えうるパイプとして、または荷重を担持することが可能なロッドもしくは形材として有用となるであろう。その発泡構造物は、前記非発泡PVDFよりも、少なくとも3%低い、より好ましくは少なくとも25%低い密度を有している。その密度低下は、その非発泡PVDF材料よりは、35%低いか、50%低いか、さらには100分の1に達するほど低い密度を有するであろう。それらの構造物は、典型的には、相互に組み合わせるか、または標準的なカップリングまたはフィッティングにとりつけられ、高精度に生産することができる。たとえば、4インチのスケジュール40パイプは、4.500インチの外形(許容差±0.009インチ)および0.251インチの厚み(許容差±0.016インチ)を有する。本発明の発泡PVDFは、サイジングを通過するだけの溶融強度を有しており、キャリブレーションによって、そのような精密な許容差におさまるPVDFフォーム構造物を成形し、サイジングすることが可能となる。さらに、そのようにして形成させた高密度スキンが、機械的強度において役立っている。
【0054】
フォーム気泡サイズは可能な限り小さいのが好ましい。気泡サイズは、できれば1ミクロン程度の大きさとする。一般的には、気泡サイズは10〜250ミクロンの範囲、より典型的には50〜150ミクロンの範囲とする。
【0055】
PVDF発泡構造物の利点は、それらの可撓性が高いことである。リールに巻き取ることができないような中実のPVDFパイプでも、同じ寸法で発泡体の形態では、十分リールに巻き取れるほどの可撓性を有しているであろう。任意選択により、高弾性率の非発泡PVDF部品を切断すると、マイクロクラックを起こす可能性がある。PVDF発泡構造物ならば、マイクロクラックなしにきれいに切断できる。
【0056】
本発明の発泡構造物のまた別な利点は、非発泡PVDFに比較して、より高い耐衝撃性、より高いヒステリシス、より低い誘電率、およびより高い圧縮性があることである。それらの発泡構造物はさらに、その発泡構造物から製作された物品に対して、より高い遮断性、すなわち断熱性と遮音性のいずれをも与える。
【0057】
使用
本発明の発泡PVDF構造物は、それらの中実の相当品と同じ用途で使用することが可能であろう。それらは、より軽く、輸送コストを低減し、取扱いがより容易になるという利点を有している。それらの構造物が、より軽いために、それらは、軽量性が重視される、たとえば航空宇宙用のパイプ、コンジットおよびフィルムなどに用途を見出すことができるであろう。PVDFフォーム構造物が有用となりうるまた別な用途は、化学物質の排水、燃料輸送、化学物質輸送、およびプレナムコンジットのためのパイプである。発泡PVDFフィルムは、燃料および化学物質の貯蔵と同様に、包装材としても使用することができる。単層または多層のPVDFフォームチューブは、自動車、飲料、医療、医薬、および化粧品産業における用途を有することもできるであろう。圧縮性が向上したために、本発明の発泡構造物は、ガスケット材料としても、より有用となる。
【0058】
本発明のフォームから製作した容器は、良好な遮断性と難燃性を有するであろう。
【実施例】
【0059】
実施例
特に断らない限り、パーセントはすべて重量パーセントであり、分子量はすべて重量平均分子量である。Kynar(登録商標)は、Arkema Inc.の商標である。
【0060】
実施例1
以下の手順を用いて、密度1.213g/ccの3/8インチのKYNARのPVDFフォームチューブを作成したが、このものは32%の重量低下となっている。
【0061】
10%の小粒のアゾジカルボンアミド化学的発泡剤、1%の成核剤(表面積:22m2/g)、および89%のKYNAR2821ベース樹脂(融点:140〜145℃、溶融粘度:12.0〜20.0キロポワズ)からなる濃縮物のマスターバッチが5%、そしてKYNAR2800(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)が95%、の混合物を調製した。
【0062】
スクリューは直径1.5インチの汎用計量スクリューで、26:1のL/Dを有し、圧縮比3:1のものである。
【0063】
ピンとダイを2本脚スパイダーダイに取り付けたが、スパイダーの脚を通してチューブの中心に空気を流し込むポートを備えていた。0.040インチの壁厚を有する3/8インチのチューブ材料を製作するために、内径0.397インチのダイおよび外径0.306インチのピンを選択した。このピンとダイで、1.021のドローバランスおよび1.194のドローダウン比が得られることになるであろう。ピンとダイの長さは4.350インチである。ピンのベースは直径1.150インチであり、ランド長さは1.200インチである。ダイのベースは直径1.750インチであり、ランド長さは1.200インチである。
【0064】
3/8インチのチューブ材料の場合、プレート間ギャップが0.060インチ、全高0.905インチの4枚のサイジングプレートを有する、0.390インチのプレートサイザーを使用した。サイザーの開口部は、円周の周りに機械加工した1/8インチの半径を有している。サイザーの構成材料は黄銅である。収縮があるので、サイザーでは大きめのサイズとしておく必要がある。温度プロファイルは、表1に示したような設定にした。
【0065】
【表1】

【0066】
10’で2段の水真空冷却タンクで、水温を90゜Fに調節するように設定した。2本ベルトの引取機で、9.6ft/分のライン速度で材料を引き取るように設定した。
【0067】
実施例2
KYNAR2800ベース樹脂(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)に対して、成核剤有りおよび無しのマスターバッチを10%添加することによって、KYNARのPVDFフォームの3/8インチチューブ(壁厚:0.040インチ)を押出加工した。その成核剤のマスターバッチは、22m2/gの表面積を有するCaCO3であった。そのマスターバッチ中の化学的発泡剤は、大粒径のアゾジカルボンアミドであった。成核剤を含まないマスターバッチは、10%の化学的発泡剤、および90%のKYNAR2821(融点:140〜145℃、溶融粘度:12.0〜20.0キロポワズ)を有していた。成核剤を含むマスターバッチは、1%のCaCO3、10%の化学的発泡剤、および89%のKYNAR2821−10を有していた。それらの原料を、1.5インチ単軸スクリュー押出機中、以下のプロセス条件で加工した(表2)。
【0068】
【表2】

【0069】
この検討から、成核剤を用いないチューブ材料は、1.160g/ccの密度を有していることが判ったが、これは35.20%の重量低下である。成核剤を用いたチューブ材料は、0.931g/ccの密度を有していたが、これは47.99%の密度低下である。成核剤によって、密度低下の効率が36%向上し、極めて良好な表面仕上がりを有するチューブが得られた。
【0070】
実施例3
10%のp−トルエンスルホニルセミカルバジド化学的発泡剤マスターバッチ(ROWA Group USA製)、および90%のKYNAR2800−00(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)を使用して、0.035インチの壁厚を有する3/8インチのチューブを製作した。それらの原料を、1.5インチの単軸スクリュー押出機中、以下の表3に示したような加工押出機条件で加工した。
【0071】
【表3】

【0072】
バレルのゾーン4の温度を変化させた。温度を変化させると以下のような性質が観察された(表4)。
【0073】
【表4】

【0074】
実施例4
0.040インチの壁厚を有する3/8インチのチューブを製作した。95%のKYNAR2800(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)と5%のマスターバッチとを使用してブレンド物としたが、そのマスターバッチは、1%のCaCO3(Specialty Minerals製、表面積:22m2/g)、10%の小粒のアゾジカルボンアミド(Rowa Group USA製)、および89%のKYNAR2821−10(融点:140〜145℃、溶融粘度:12.0〜20.0キロポワズ)からなっていた。それらの原料を、1.5インチ単軸スクリュー押出機中、以下の加工条件で加工した(表5)。
【0075】
【表5】

【0076】
押出機の最後の二つのバレルゾーンの温度を変化させた。押出機温度を変化させることによって、以下のような性質が観察された(表6)。
【0077】
【表6】

【0078】
実施例5
1.5インチ単軸スクリュー押出機の上で、3/8インチのKYNARのPVDFフォームチューブを製作した。95%のKYNAR2800−00(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)と5%のマスターバッチとを使用してブレンド物としたが、そのマスターバッチは、1%のCaCO3(Specialty Minerals製、表面積:22m2/g)、10%の小粒のアゾジカルボンアミド、および89%のKYNAR2821(融点:140〜145℃、溶融粘度:12.0〜20.0キロポワズ)からなっていた。2本脚のスパイダーダイを使用してチューブを製作し、0.040インチの壁厚を有する3/8インチのチューブ材料を製作した。ダイドローバランスが1.021、ドローダウン比が1.194であった。0.390インチの黄銅プレートサイザーおよび2段の水真空タンクを用いて、そのチューブのキャリブレーションを行った。以下はその加工条件である(表7)。
【0079】
【表7】

【0080】
そのチューブは、1.213g/ccの密度(これは、32%の重量低下である)を有し、極めて良好な表面仕上がりであった。
【0081】
実施例6
1インチ単軸スクリュー押出機の上で、KYNARのPVDFフォームフィルムを製作した。95%のKYNAR2800(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)と5%のマスターバッチとを使用してブレンド物としたが、そのマスターバッチは、1%のCaCO3(Specialty Minerals製、表面積:22m2/g)、10%の小粒のアゾジカルボンアミド、および89%のKYNAR2821−10(融点:140〜145℃、溶融粘度:12.0〜20.0キロポワズ)からなっていた。そのフィルムを、幅が8インチ、ダイリップランド長さが1インチのキャストフィルムコートハンガーダイを通過させて押出加工して、10ミル未満のフィルム厚みに最適化させると、そのフォームフィルムは、幅5.75インチ、厚み0.015インチとなった。そのフィルムを、3本ロールスタックを通してから巻き上げた。以下はその加工条件である(表8)。
【0082】
【表8】

【0083】
そのフィルムは1.2841g/ccの密度を有していたが、これは28%の重量低下である。
【0084】
実施例7
ストランドダイを使用した1.5インチ単軸スクリュー押出機の上でロッドを製作することにより、各種の発泡剤の評価を行った。そのストランドダイは、長さ4.00インチ、内径0.125インチ、開口径1.5インチ、ランド長さ0.500インチのものであった。濃縮物のマスターバッチは、10%の化学的発泡剤、1%の成核剤、および89%のKYNAR2821ベース樹脂(融点:140〜145℃、溶融粘度:12.0〜20.0キロポワズ)からなっている。これらの比率はそれぞれ、重量基準で測定したものである。その成核剤は、22m2/gの表面積を有するCaCO3であった。このマスターバッチを、フォーム濃縮物と呼ぶ。次いでそのフォーム濃縮物を、重量%で、KYNAR2800樹脂(融点:140〜145℃、溶融粘度:23.0〜27.0キロポワズ)に添加する。
【0085】
それぞれの化学的発泡剤の分解温度が異なるので、温度プロファイルを変化させた。次の表9に、それぞれの化学的発泡剤および得られる密度低下を示す。
【0086】
【表9】

【0087】
次の表10に、上の表に列記した密度を達成するために使用した温度プロファイルを示す。
【0088】
【表10】

【0089】
実施例8
2.5インチの単軸スクリュー押出機を使用して、KYNARのPVDFフォームパイプを製作した。ブレンド物では、95%のKynar760(融点:165〜172℃、溶融粘度:23.0〜29.0キロポワズ)と5%のマスターバッチを使用したが、そのマスターバッチには、5%のクエン酸一ナトリウム、1%のCaCO3(表面積:22m2/g)、および94%のKynar2501−20(融点:117〜123.5℃、溶融粘度:6.0〜15.0キロポワズ)を含んでいた。パイプは、3脚のスパイダーダイを通して押出加工し、外径1.900インチ、壁厚0.145インチ、内径1.610インチのスケジュール40、1−1/2パイプを製作した。そのダイドローバランスが1.246、ドローダウン比が0.943であった。1.950インチのサイザーおよび2段の水真空タンクを用いて、そのパイプのキャリブレーションを行った。以下はその加工条件である(表11)。
【0090】
【表11】

【0091】
そのパイプは、1.114g/ccの密度(これは、38%の重量低下である)を有し、内側、外側ともに極めて良好な表面仕上がりであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立式の発泡フルオロポリマー構造物であって、
a)60〜99.99重量パーセントのフルオロポリマー;
b)0.01〜5重量パーセントの残存成核剤;(0.1〜2)、
を含み、
前記発泡構造物が、未発泡であるa)の前記フルオロポリマーよりも少なくとも3%は低い密度を有し;前記構造物が、サイジング処理されており;そして
前記構造物が、少なくとも2ミクロンの厚みの高密度スキンを有し、そして、前記スキンが、平均して、1mm2あたり20個未満のボイドを含んでいる、発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項2】
前記フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む、請求項1に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項3】
前記構造物が、パイプ、形材、フィルム、シート、もしくはロッド、または、多層のパイプ、形材、フィルム、シート、ロッド、部品、物品、フォーム−コア構造物、もしくはフォーム−コアパイプの部品である、請求項1に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項4】
前記PVDFが、少なくとも51重量パーセントのフッ化ビニリデンモノマー単位を含むコポリマーを含む、請求項2に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項5】
前記PVDFが、少なくとも60重量パーセントのフッ化ビニリデンモノマー単位と、1〜40重量パーセントの、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびペルフルオロ化エチレン−プロピレンコポリマー(EFEP)からなる群から選択される1種または複数のモノマー単位と、を含むコポリマーを含む、請求項4に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項6】
前記残存成核剤が、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、タングステン酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸鉛、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノシリケート、カーボンブラック、グラファイト、非有機顔料、アルミナ、二硫化モリブデン、ステアリン酸亜鉛、PTFE粒子、およびメタケイ酸カルシウムからなる群から選択される、請求項1に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項7】
耐衝撃性改良剤、UV安定剤、可塑剤、充填剤、着色剤、顔料、染料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤、トナー、顔料、および分散助剤からなる群から選択される1種または複数の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項8】
0.1〜2重量パーセントの前記残存成核剤を含む、請求項1に記載の発泡フルオロポリマー構造物。
【請求項9】
フルオロポリマーを発泡させるのに使用するためのマスターバッチ濃縮物であって、
a)5〜99.99重量パーセントの、50〜175℃の溶融温度または50〜110℃のTgを有するキャリヤー樹脂;
b)全ポリマー固形分を基準にして、0.01〜95重量パーセントの、1種または複数の成核剤;および
c)任意選択により、0.01〜95重量パーセントの、1種または複数のその他の添加剤、
を含むマスターバッチ濃縮物。
【請求項10】
0.1〜95重量パーセントの、1種または複数の、100℃〜300℃の分解温度を有する固体発泡剤をさらに含む、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項11】
前記マスターバッチが、ペレットの形態にある、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項12】
前記キャリヤー樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性ウレタン(TPU)、またはポリフッ化ビニリデンを含む、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項13】
前記キャリヤー樹脂が、低融点PVDFコポリマーを含む、請求項12に記載のマスターバッチ。
【請求項14】
前記PVDFコポリマーが、50〜90重量パーセントのフッ化ビニリデンモノマー単位、および10〜50重量パーセントのヘキサフルオロプロペン単位を含む、請求項13に記載のマスターバッチ。
【請求項15】
前記マスターバッチが、異なった組成を有する2種以上の異なったマスターバッチの形態にある、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項16】
耐衝撃性改良剤、UV安定剤、可塑剤、充填剤、着色剤、顔料、染料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤、トナー、顔料、および分散助剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項17】
前記マスターバッチが、ペレットまたは粉体の形態にある、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項18】
サイジング処理されたフルオロポリマーフォームを製造するための方法であって、
a)キャリヤー樹脂、および全ポリマー固形分を基準にして0.01〜95重量パーセントの1種または複数の成核剤を含む、1種または複数のマスターバッチ濃縮物を形成させる工程;
b)マスターバッチの0.1〜95重量パーセントで少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂を含む前記(1種または複数の)マスターバッチ濃縮物を、5〜99.9重量パーセントのフルオロポリマーとブレンドして、均質なフルオロポリマー/マスターバッチのブレンド物を形成させる工程;
c)押出機を通過させて前記フルオロポリマー/マスターバッチのブレンド物を加工して、フルオロポリマー、ガス、および前記マスターバッチの成分の均質な混合物を製造する工程;
d)前記押出機の終端、アダプター、および/またはダイの中で前記フルオロポリマー/ガスの混合物を冷却する工程;
e)前記フルオロポリマー/ガスの混合物を前記押出機から押出加工して、フルオロポリマーフォームを形成させる工程;および
f)前記フルオロポリマーフォームを、サイザーを通過させて、高密度スキンを有する成形されたフルオロポリマーフォーム構造物を形成させる工程;および
g)前記得られた構造物を冷却する工程;および
h)任意選択により、前記得られた冷却構造物を切断して、所望のサイズとする工程、
を含む、方法。
【請求項19】
前記フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マスターバッチが、全ポリマー固形分を基準にして1〜95重量パーセントで発泡剤をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記マスターバッチ(a)が、ポリマー固形分の重量を基準にして、0.5〜20%の成核剤および1〜20重量パーセントの発泡剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
マスターバッチとフルオロポリマーの前記ブレンド工程が、単軸スクリュー押出機の中で起きる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記押出機に、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、吹込み成形機、または射出成形機が含まれる、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−525472(P2012−525472A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508544(P2012−508544)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/032038
【国際公開番号】WO2010/126773
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】