説明

発泡体とその製造方法並びにその用途

【課題】柔軟性及び可撓性と、剛性(腰)、圧縮回復性及び反発力とを両立できる発泡体とその製造方法並びにその用途を提供する。
【解決手段】融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性樹脂組成物を押出機11の口金13から押し出して内部に連続気泡を形成しつつ、口金13から押出発泡された吐出発泡体に、ノズル14から水を噴霧して急冷して独立気泡を形成した後、未だ気泡が成長過程の発泡体に、回転ロール15の針16を侵入させて発泡体の内部のガスを放出させる。この方法により、内部の連続気泡相と、連続気泡相の周囲に形成された独立気泡相と、この独立気泡相の表面に形成されたスキン層とを備えた発泡体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物又は建造物などの隙間を充填するのに有用な発泡体(又は発泡シール材)及びその製造方法、並びに発泡体(又は発泡シール材)の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物又は建造物並びに配設工事などにおいて、各種部材の隙間(例えば、埋設配管、型枠などの隙間)には目地止め材が利用されている。この目地止め材には、柔軟性、可撓性とともに、剛性(腰)、圧縮回復性などが要求される。このような目地止め材として、発泡体を用いることが提案されている。
【0003】
特開2001−353763号公報(特許文献1)には、加温された貫通孔形成用針が設けられている針ロールと受ロールとを用い、該針ロールと受ロールとを回転させながら、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂など)の押出発泡シートを針ロールと受ロールとの間隙を通過させ、孔径0.02〜1.0mmの貫通孔が5〜100個/cm設けられ、連続気泡率が70%以上、見かけ密度が0.013〜0.18g/cm、気泡数が0.3〜50個/mm、平均気泡径が、押出方向、幅方向及び厚み方向で所定の条件を満足するポリオレフィン系樹脂連続気泡押出発泡シートを得ることが記載されている。この押出発泡シートは、独立気泡と連続気泡とが混在した形態を有しているためか、柔軟性、可撓性、圧縮後の厚み回復、吸音性などに優れている。しかし、孔が貫通しているため、発泡シートの剛性(腰)及び反発力が低下し、隙間を充填するシール材としては適していない。
【0004】
特開2002−265661号公報(特許文献2)には、少なくとも一方の回転ロール表面に多数の針状物が植設された一対の回転ロール間に独立気泡発泡体を連続的に供給し、上記回転ロール表面の針状物を上記独立気泡発泡体に突き刺して該独立気泡発泡体の独立気泡を互いに連通させて連続気泡化する連続気泡発泡体の製造方法が開示されている。また、特開2002−265662号公報(特許文献3)には、上記針状物の加熱下で一対の回転ロール間に独立気泡発泡体を連続的に供給する方法が開示されている。これらの方法では、発泡体表面に凹凸や皺を生じさせることなく、独立気泡同士を確実に互いに連通させて連続気泡化できる。しかし、前記方法では、独立気泡が連続気泡化されているため、発泡シートの剛性(腰)及び反発力が低下し、隙間を充填するシール材としては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−353763号公報(特許請求の範囲、発明の効果)
【特許文献2】特開2002−265661号公報(特許請求の範囲、発明の効果)
【特許文献3】特開2002−265662号公報(特許請求の範囲、発明の効果)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、柔軟性、可撓性に優れ、しかも剛性(腰)、圧縮回復性及び反発力の大きな発泡体(又は発泡シール材)とその製造方法並びにその用途(目地止め材)を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、表面に針孔の開口部又は針孔跡が殆どなく表面が平滑で外観特性に優れる発泡体(又は発泡シール材)とその製造方法並びにその用途(目地止め材)を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、弾力性と非透過性又は非浸透性とを備えた発泡体(又は発泡シール材)とその製造方法並びにその用途(目地止め材)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、(1)融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を口金から押出発泡させると、気泡の成長過程で気泡内の発泡ガスが融点の低い第1の熱可塑性樹脂の被膜を破裂させて内部に連通気泡が形成されること、(2)金型温度を口金温度よりも高くして押出発泡し、押出発泡体の表面を急冷すると、融点の高い第2の熱可塑性樹脂が固化して内部の連通化に寄与した発泡ガスが外部に逃げることができず、内部に空洞を有する発泡体が得られること、(3)気泡の成長過程でこの発泡体に針を刺して、前記空洞を形成する要因となる内部ガスを外部に放出すると、針孔が独立気泡相での融着などにより塞がり、均一な表面を形成でき、内部に空洞のない発泡体が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の発泡体は、融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を含み、連続気泡と独立気泡とを有する。この発泡体は、内部に形成された連続気泡相と、この連続気泡相の周囲に形成された独立気泡相と、この独立気泡相の表面に形成されたスキン層とを備えている。前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された複数の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン及びエチレン含有共重合体から選択された複数のエチレン系樹脂を含んでいてもよい。複数の熱可塑性樹脂の融点差は、例えば、20〜75℃程度であってもよい。発泡体の形態は、特に制限されず用途に応じて選択でき、例えば、板状、シート状、柱状又は異形状(断面半円状、断面台形状など)の形態であってもよい。
【0011】
本発明の方法では、融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性樹脂組成物を口金から押出し、気泡の成長過程で、口金から押し出された発泡体の表面を急冷するとともに、発泡体の内部に針を侵入させて、内部ガスを逃散させることにより前記発泡体を製造する。この方法では、金型温度が口金温度よりも高い条件で発泡性樹脂組成物を押出して内部に連続気泡を形成しつつ、発泡体の表面を急冷して独立気泡を形成し、気泡成長過程(内部が流動性を有する加熱状態)で発泡体の内部に針を侵入させて内部のガスを逃散又は排出させてもよい。また、針孔を効率よく塞ぐため、発泡体の内部に複数の針を侵入させた後、発泡体を養生してもよい。
【0012】
本発明は、前記発泡体で形成された発泡シール材も包含する。
【0013】
なお、本明細書中、「ポリエチレン」とは、エチレン単独重合体の他、エチレンと、少量(例えば、0.01〜10モル%程度)のα−オレフィンとの共重合体も含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、発泡体が内部から外側に向かって順次連続気泡相と独立発泡相とスキン層とを備えているため、連続気泡相により柔軟性、可撓性を向上させ、独立気泡相により剛性(腰)、圧縮回復性及び反発力を向上できる。そのため、相矛盾するこれらの特性を両立できる。また、スキン層を有するため、表面に針孔の開口部又は針孔跡が殆どなく表面が平滑で外観特性を向上できるとともに、弾力性と非透過性又は非浸透性(又はバリア性)をも備えている。そのため、本発明の発泡体は、発泡シール材(目地止め材)などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の発泡体の概略断面斜視図である。
【図2】図2は本発明の発泡体の製造工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発泡体は、融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性熱可塑性樹脂組成物で形成される。図1は本発明の発泡体の概略断面斜視図である。この例では、オレフィン系樹脂(ポリエチレンと融点の異なる複数のエチレン系樹脂)で断面四角形状の発泡体1が形成され、この発泡体1の内部には、主に連続気泡の気泡構造を有する連続気泡相2が形成され、この連続気泡相の周囲には主に独立気泡の気泡構造を有する独立気泡相3が形成され、この独立気泡相の表面(又は発泡体の表面)にはスキン層4が形成されている。なお、連続気泡相2と独立気泡相3との境界は明確ではないが、この発泡体1の断面形状において、連続気泡相2と独立気泡相3との面積割合は、おおよそ60/40〜80/20程度に形成されている。また、製造工程で独立気泡相3に針を侵入させ抜き取っているが、スキン層4を貫通する針孔は独立気泡相内で塞がれている。
【0017】
このような気泡構造を有する発泡体は、複数の層を積層した積層構造ではなく単一の気泡構造を有しており、柔軟性及び可撓性と剛性及び圧縮回復性を向上できる。さらに、スキン層4に隣接する独立気泡相で針孔が塞がれているため非透過性又は非浸透性(バリア性)を付与できる。そのため、部材間の間隙に充填すると、間隙を緊密に充填してシールでき、外部からの水分などの侵入を阻害できる。そのため、前記発泡体1はシール材として適している。
【0018】
軟質熱可塑性樹脂は、組成物全体として軟質であればよく、例えば、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂など)、塩化ビニル系樹脂(可塑化された塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など)、ビニルエステル系樹脂(ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。軟質熱可塑性樹脂は、通常、オレフィン系樹脂(特に、エチレン系樹脂)及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種を含んでいる。
【0019】
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン共重合体など)、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのプロピレン共重合体など)、ポリブテン系樹脂などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂(又は軟質熱可塑性樹脂)のうち、少なくともエチレン系樹脂を含むのが好ましい。
【0020】
エチレン系樹脂のうちポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。なお、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレンは、エチレンと、少量(例えば、0.01〜5モル%、特に0.1〜3モル%程度)の共重合性α−オレフィンとの共重合体も包含する。また、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンと、少量(例えば、0.01〜10モル%、好ましくは1〜8モル%、特に、2〜7モル%程度)の共重合性α−オレフィン(エチレンを除くα−オレフィン)との共重合体も包含する。共重合性α−オレフィン(エチレン以外のα−オレフィン)としては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1などのα−C3−10オレフィンなどが例示できる。これらのα−オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、LLDPEは、メタロセン触媒を用いて調製できる。これらのポリエチレンは、単独で又は組み合わせて使用してもよい。これらのポリエチレンのうち、低密度ポリエチレン[低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)など、特にLDPEなど]が好ましい。
【0021】
前記エチレン共重合体(エチレン含有共重合体)は、エチレンとエチレン以外の単量体(又は極性単量体)との共重合体であってもよい。エチレン以外の単量体(又は極性単量体)としては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などのα−C3−10オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニルなどの有機酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸などの酸性基含有単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸C1−12アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有単量体;環状オレフィンなどが例示できる。これらの非α−オレフィン系単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
環状オレフィンとしては、例えば、単環式オレフィン[例えば、シクロペンテン、シクロヘプテンなどのシクロC3−10アルケン、シクロペンタジエンなどのシクロC3−10アルカジエンなど];二環式オレフィン[例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなどのC4−20ビシクロアルケンなど)、ノルボルナジエン類(例えば、上記例示のノルボルネン類に対応する2,5−ノルボルナジエン類)など]、三環式オレフィン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC6−25トリシクロアルカジエンなど]、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8−30テトラシクロアルケンなど]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10−35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12−40ヘキサシクロアルケン)など]などの多環式オレフィンなどが挙げられる。
【0023】
これらの環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、多環式オレフィン(特に、ノルボルネン類などの二環式オレフィン)が好ましい。
【0024】
非α−オレフィン系単量体は、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−2アルキルエステル(アクリル酸エチルなど)、二又は三環式オレフィン(ノルボルネン類など)であってもよい。また、エチレン共重合体(エチレン含有共重合体)は、ランダム共重合体又は交互共重合体であってもよい。
【0025】
前記エチレン共重合体のエチレン単位の割合(エチレン含量)は、共重合体全体に対して、50モル%以上(例えば、60〜99モル%程度)、好ましくは65モル%以上(例えば、65〜98モル%程度)、さらに好ましくは70〜97モル%(例えば、80〜95モル%程度)であってもよく、60〜99モル%(例えば、75〜98モル%)程度であってもよい。なお、エチレン共重合体がエチレンとα−オレフィンとの共重合体であるとき、エチレン含量は、前記ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPEなど)のエチレン含量と異なる範囲、例えば、50〜90モル%(例えば、55〜87モル%)、好ましくは60〜85モル%(例えば、65〜80モル%)程度の範囲から選択できる。
【0026】
オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂)の数平均分子量は、8,000〜500,000程度の範囲から選択でき、10,000〜300,000、好ましくは15,000〜200,000、さらに好ましくは20,000〜150,000(例えば、25,000〜100,000)程度であってもよい。上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを用いて測定した値である。
【0027】
オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂)の融点は、65〜170℃、好ましくは70〜160℃、さらに好ましくは80〜150℃(例えば、90〜120℃)程度であってもよい。また、ポリエチレンの融点は、例えば、100〜132℃、好ましくは102〜130℃(例えば、105〜125℃)、さらに好ましくは110〜130℃(例えば、115〜125℃)程度であってもよい。また、エチレン共重合体の融点は、非α−オレフィンの種類と含有量などに応じて、例えば、65〜150℃、好ましくは70〜140℃、さらに好ましくは80〜130℃程度であってもよい。なお、融点に代えてガラス転移温度を用いることもでき、融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定できる。
【0028】
温度190℃、荷重21.2Nの条件下、エチレン系樹脂のメルトフローレートは、例えば、0.2〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、さらに好ましくは3〜40g/10分程度であってもよい。ASTM D1238に準拠したポリエチレンのメルトフローレートは、例えば、1〜60g/10分、好ましくは3〜50g/10分、さらに好ましくは5〜40g/10分(例えば、8〜30g/10分)程度であってもよい。また、ポリエチレンのメルトフローレートは、温度190℃、荷重21.2Nにおいて、例えば、2〜20g/10分(例えば、4〜8g/10分)、好ましくは3〜10g/10分(例えば、4.5〜7g/10分)、さらに好ましくは5〜6.5g/10分(例えば、5〜6g/10分)程度であってもよい。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー(ポリプロピレン、ポリエチレンなどをハードセグメントとし、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどをソフトセグメントとしたブロック共重合体など)、スチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEPSブロック共重合体)など)、ポリエステル系エラストマー(ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステル(ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコールなど)又は脂肪族ポリエーテル(ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)をソフトセグメントとするブロック共重合体など)、ポリアミド系エラストマー(ナイロン6,ナイロン12などのポリアミドをハードセグメントとし、前記脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体など)、ポリウレタン系エラストマーなどが例示できる。
【0030】
これらの樹脂のうち融点の異なる複数の樹脂が組み合わせて樹脂組成物として使用される。この樹脂組成物は、エチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種をベース成分として含むのが好ましい。特に、ポリエチレン及びエチレン含有共重合体から選択された複数のエチレン系樹脂を含むのが好ましい。すなわち、樹脂組成物は、少なくともエチレン系樹脂(ポリエチレン及び/又はエチレン共重合体)をベース成分として含むのが好ましい。また、樹脂組成物は複数のエチレン系樹脂で構成してもよい。より具体的には、樹脂組成物(例えば、エチレン系樹脂組成物)は、ポリエチレン[特に、LDPE、LLDPEなどの低密度ポリエチレン]と、エチレン共重合体[エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−有機酸ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体などのエチレン−環状オレフィン共重合体などから選択された少なくとも一種]とを含んでいてもよい。
【0031】
本発明では、前記樹脂のうち、融点の異なる複数の樹脂を組み合わせて使用する。複数の樹脂の融点差は、例えば、10〜100℃(例えば、20〜80℃)程度の範囲から選択され、通常、25〜75℃、好ましくは30〜70℃(例えば、35〜65℃)、さらに好ましくは40〜60℃(例えば、45〜55℃)程度であってもよい。融点差が大きいほど、内部の連続気泡とこの連続気泡を覆う独立気泡とを形成しやすくなる。
【0032】
融点の異なる複数の樹脂の量的割合は、連続気泡と独立気泡とを形成可能な範囲から選択でき、例えば、第1の樹脂(例えば、ポリエチレン又は低融点樹脂)と第2の樹脂(例えば、エチレン含有共重合体又は高融点樹脂)との割合は、前者/後者(重量比)=10/90〜90/10(例えば、20/80〜85/15)程度の範囲から選択でき、通常、30/70〜80/20、好ましくは40/60〜75/25(例えば、35/65〜95/5)、40/60〜70/30(例えば、45/55〜65/35)程度であってもよい。
【0033】
なお、軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン系樹脂)は、他の樹脂、例えば、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)などと併用してもよい。軟質熱可塑性樹脂とスチレン系樹脂との重量割合は、例えば、前者/後者=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜60/40、さらに好ましくは100/0〜70/30程度であってもよい。
【0034】
前記発泡性樹脂組成物は、発泡剤(又は発泡助剤)、発泡核剤を含んでいてもよい。前記発泡剤としては、物理発泡に用いられる揮発性発泡剤や、化学発泡に用いられる分解性発泡剤などが挙げられる。揮発性発泡剤としては、例えば、不活性又は不燃性ガス(窒素、炭酸ガス、フロン、代替フロンなど)、水、有機系物理発泡剤[例えば、脂肪族炭化水素(プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン(n−ペンタン、イソペンタンなど)、ヘキサン(n−ヘキサンなど)など)、芳香族炭化水素(トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(三塩化フッ化メタンなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、石油エーテルなど)、ケトン類(アセトンなど)など]が挙げられる。また、分解性発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩又はその塩;クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど);2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミドなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物;N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)などのニトロソ化合物;テレフタルアジドなどのアジド化合物などが挙げられる。これらの発泡剤のうち、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素、クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)などを用いる場合が多い。これらの発泡剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0035】
発泡剤の割合は、複数の樹脂(又は樹脂成分)の総量100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜35重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよい。
【0036】
発泡核剤としては、前記発泡剤の項で例示の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩又はその塩;クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)などの他、ケイ酸化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。発泡核剤のうち、特に、タルクなどのケイ酸化合物などを使用すると、気泡構造を均一化できる。
【0037】
発泡核剤の割合は、複数の樹脂(又は樹脂成分)の総量の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部程度であってもよい。
【0038】
前記樹脂組成物は、収縮防止剤、例えば、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸アミドなどを含んでいてもよい。より具体的に、脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など)と多価アルコール(例えば、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど)とのエステルとしては、例えば、パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが挙げられる。これらの収縮防止剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。収縮防止剤の割合は、例えば、複数の樹脂全体(樹脂成分全体)100重量部に対して0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部、特に0.5〜10重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。また、収縮防止剤の割合は、例えば、前記発泡剤100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.05〜2重量部(例えば、0.1〜1重量部)程度であってもよい。
【0039】
前記樹脂組成物は、添加剤、例えば、相溶化剤、気泡調整剤、安定剤[酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など]、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、有機又は無機充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、着色剤(染料や顔料など)、可塑剤、表面平滑剤、収縮防止剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。各添加剤の割合は、それぞれ、複数の樹脂(又は樹脂成分)の総量100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.15〜20重量部(例えば、0.2〜15重量部)、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
【0040】
樹脂組成物は、各成分を、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて予備混合してもよい。また、発泡剤、発泡核剤、添加剤成分は、それぞれ、前記樹脂組成物(樹脂ペレットなどを含む)に予め含有させてもよく、発泡成形過程で樹脂組成物に添加又は圧入してもよい。
【0041】
本発明の発泡体は、連続気泡と独立気泡とを有する。特に、連続気泡と独立気泡とが偏った形態で分布している。すなわち、発泡体の内部には主に連続気泡が占める連続気泡相が形成され、この連続気泡相の周囲には、主に独立気泡が占める独立気泡相が形成されている。さらに、独立気泡相の表面には、通常、スキン層が形成されている。
【0042】
発泡体内部に形成された連続気泡相の連続気泡の平均径は、例えば、0.1〜3mm(例えば、0.3〜2.5mm)、好ましくは0.5〜2mm(0.5〜1.5mm)、さらに好ましくは、0.5〜1mm程度であってもよい。なお、連続気泡の平均径は、n個の気泡について、短径と長径とを測定して、短径と長径との加算平均[(短径+長径)/2]を算出し、平均値を求めることができる。
【0043】
連続気泡相の周囲に形成された独立気泡相の独立気泡の平均径は、例えば、0.1〜2mm(例えば、0.2〜1.5mm)、好ましくは0.2〜1mm(0.25〜0.8mm)、さらに好ましくは0.3〜0.6mm程度であってもよい。独立気泡の平均径も上記連続気泡の平均径と同様にして算出できる。
【0044】
連続気泡相と独立気泡相との面積割合は、特に制限されず用途に応じて、前者/後者=10/90〜90/10(例えば、20/80〜80/20)程度の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=40/60〜80/20(例えば、50/50〜80/20)、好ましくは55/45〜75/25(例えば、60/40〜70/30)程度であってもよい。なお、連続気泡相と独立気泡相との境界は、独立気泡と連続気泡とが混在し、明瞭でない場合があるが、断面の観察によりおおよその平均的な面積割合として算出できる。より具体的には、発泡体の切断面を、界面活性剤を含む着色水溶液に浸漬すると、連続気泡では浸透圧により吸水して着色し、独立気泡は着色しない。このことを利用して、着色部の面積と着色していない独立気泡部との面積比を測定することにより、連続気泡相と独立気泡相との面積割合を求めることができる。
【0045】
また、発泡体全体に対する連続気泡の面積割合は、例えば、20〜80%(例えば、25〜75%)、好ましくは30〜70%(例えば、35〜65%)、さらに好ましくは40〜60%程度であってもよい。
【0046】
発泡体の発泡倍率は、5〜150倍(例えば、10〜100倍)程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、10〜70倍(例えば、15〜65倍)、好ましくは20〜50倍(例えば、20〜40倍)程度であってもよく、10〜30倍(例えば、15〜25倍)程度であってもよい。
【0047】
発泡体の見掛け密度(g/cm)は、例えば、発泡倍率に応じて選択でき、例えば、0.014〜0.1、好ましくは0.02〜0.05(例えば、0.025〜0.05)、さらに好ましくは0.033〜0.1(例えば、0.04〜0.067)程度であってもよい。見掛け密度D(g/cm)は次式により算出できる。
【0048】
D=W/V
(式中、Wは試験片の質量(g)、Vは試験片の体積(cm)を示す)
なお、通常、発泡体の表面にはスキン層が形成されている。そのため、スキン層により非浸透性又は非透過性(バリア性)を確保でき、止水性及びシール性を高めることができる。
【0049】
本発明の発泡体の形態は、特に制限されず被保護体(又は物品)の形態に応じて選択でき、例えば、棒状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、柱状などの三次元的形状であってもよい。発泡体は、通常、板状、シート状、柱状又は異形状(断面半円状、断面台形状など)の形態を有する場合が多い。このような形態の発泡体は、少なくとも一方の面が平坦面又は凹凸面であってもよく、一方の面が凹凸面に形成され、他方の面が凹凸面であってもよい。この凹凸面は、発泡体の長手方向に沿って形成する場合が多い。凹凸面を形成することにより、シール部でのシール材の滑りを防止でき、シール性を高めることができる。凹凸部の高さは特に制限されず、例えば、シート状発泡体全体の厚み(最大厚み)の3〜70%(好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜30%)程度であってもよい。
【0050】
板状又はシート状発泡体の厚み(又は平均厚み)は、例えば、2〜50mm(例えば、3〜30mm)程度の範囲から選択でき、5〜25mm、好ましくは7〜20mm(例えば、7〜17mm)程度であってもよく、5〜15mm(例えば、8〜12mm)程度であってもよい。柱状発泡体の断面の寸法は、用途に応じて、例えば、高さ5〜100mm(例えば、10〜70mm)、好ましくは15〜60mm(例えば、20〜50mm)程度であってもよく、幅5〜70mm(例えば、10〜50mm)、好ましくは10〜40mm(例えば、15〜30mm)程度であってもよい。
【0051】
[製造方法]
前記構造の発泡体は、前記発泡性樹脂組成物を押し出して発泡させる発泡工程と、押し出された発泡体の表面を急冷する急冷工程と、発泡体の内部に針を侵入させ(又は突き刺して)て内部のガスを逃散又は放出させるガス開放工程とを経ることにより製造できる。本発明の方法は、さらに、ガス開放工程の後、発泡体を養生させる養生工程を有していてもよい。
【0052】
図2は本発明の発泡体の製造工程を説明するための概略図である。図示のように、前記発泡性樹脂組成物は押出機11に供給され、加熱溶融混練され、金型12及び口金13を経て大気下に押し出される(又は吐出される)。図示する方法は、口金13から吐出した溶融物を、発泡して膨張させ、セル壁を破壊して連続気泡を形成する発泡工程と、口金13から押出発泡された吐出発泡体(溶融状態の発泡体)の周面に対して、ノズル14からミスト状水滴を噴霧して急冷する急冷工程と、この急冷部の下流域であって、かつ未だ気泡が成長過程で発泡体に針を侵入させて(針を刺して)発泡体の内部のガスを放出させるガス開放工程と、このガス開放工程を経た発泡体を養生させるための養生工程とを含んでいる。このガス開放工程では、急冷部の下流域には、表面に複数の針(又はピン)16を備えたロール15が回転可能に配設されており、未だ気泡が成長過程の発泡体の内部に針(又はピン)16を侵入させている。以下に、上記各工程について詳細に説明する。
【0053】
[発泡工程]
発泡工程では、口金からの押し出しに伴って吐出した溶融物は発泡・膨張し、気泡が成長する。その際、口金から吐出された吐出発泡体(溶融状態の発泡体)が連続気泡を形成する押出温度領域(金型温度が口金温度よりも高い条件)で押出発泡させている。金型温度は口金温度よりも高ければよく、金型温度は、樹脂の種類に応じて、例えば、60〜200℃(好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは80〜160℃)程度である。具体的には、ポリエチレンを用いる場合、金型温度は、例えば、70〜200℃、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜120℃程度である。金型温度と口金温度との温度差は、例えば、1〜50℃(例えば、20〜40℃)、好ましくは2〜30℃、さらに好ましくは3〜20℃(例えば、5〜10℃)程度であってもよい。
【0054】
このような発泡工程では、口金から吐出した溶融物は、気泡ガスにより発泡してセルが成長するとともに、発泡セルが破壊され、主に連続気泡の気泡構造が形成される。なお、樹脂組成物を発泡させるためには、前記のように、発泡成分(発泡剤、発泡助剤)は押出機の途中部から注入してもよい。
【0055】
[冷却又は急冷工程]
口金から押出発泡された吐出発泡体(溶融状態の発泡体)の周面を急冷することにより、融点の異なる複数の樹脂のうち高融点の樹脂が吐出発泡体の表面で固化し、スキン層が形成されるとともに、表層部では、気泡内のガスによる被膜破壊(セルの破壊)が抑制され、独立気泡が形成される。なお、吐出発泡体の内部は熱く流動性を有している(又は溶融状態である)ため、気泡が成長し、この気泡の成長過程で、吐出発泡体の内部に連続気泡が形成される。そのため、通常、口金から押し出された吐出発泡体は、気泡の成長過程でその表面が冷却又は急冷される。このような冷却又は急冷工程により、内部に主に連通気泡(又は連続気泡)の気泡構造を有する連続気泡相が形成され、この連続気泡相の周囲に主に独立気泡の気泡構造を有する独立気泡相が形成される。
【0056】
前記の例では、水の噴霧により冷却しているが、冷却するための流体(冷却媒体)は、水に限られず、他の冷却流体(例えば、冷却エアー、液体窒素など)などであってもよい。また、エアーによる冷却と水噴霧による冷却との組合せなどのように、複数の異なる冷却流体を組み合わせてもよい。通常、急冷可能な水を用いる。なお、冷却流体の温度は、例えば、0〜60℃、好ましくは5〜55℃、さらに好ましくは10〜50℃程度であってもよい。
【0057】
冷却媒体の流量(噴霧量など)により、独立気泡相(主に独立気泡の気泡構造を有する気泡相)の厚み(又は容積割合)も調整できる。すなわち、冷却により吐出発泡体の表面温度を低下させるほど、厚み(又は容積割合)の大きな独立気泡相を形成できる。例えば、エチレン系樹脂組成物(例えば、ポリエチレンとエチレン共重合体とを含む樹脂組成物)では、吐出発泡体の表面温度を30〜75℃(好ましくは40〜70℃、さらに好ましくは45〜65℃、特に50〜60℃)程度に急冷するのが好ましい。
【0058】
口金からの急冷部(例えば、噴霧部)の距離は、例えば、30〜250mm、好ましくは50〜200mm、さらに好ましくは75〜150mm(例えば、75〜125mm)程度であってもよい。
【0059】
[ガス開放工程]
前記冷却工程を経た吐出発泡体では、内部の連通気泡(連続気泡)の形成に寄与した発泡ガスが発泡体の内部に溜まり、外部に放出できないため、内部でのガス圧の上昇とともに、内部の連続気泡セルを破壊し、空洞が形成され、商品価値を損なう。
【0060】
そこで、冷却工程を経た発泡体の内部に針を侵入させて(又は刺して)、内部のガスを逃散又は放出させ、内部に空洞のない発泡体を生成させる。この針による発泡体の侵入又は突き刺しは、発泡体の内部の気泡成長過程(発泡体の内部が流動状態又は溶融状態)で行われる。
【0061】
発泡体に侵入させる針の数により、独立気泡相の厚み(又は容積割合)を調整できる。すなわち、発泡体に侵入させる針の数を多くすると、独立気泡相の厚み(又は容積割合)を大きくできる。そのため、複数の針を発泡体に侵入させるのが有効である。
【0062】
針(又はピン)の長さは、連続気泡相に到達可能であればよく、連続気泡相の厚み割合に応じて、例えば、3〜30mm(好ましくは5〜25mm、さらに好ましくは10〜20mm)程度の範囲から選択してもよい。針(又はピン)の太さは、例えば、平均径0.1〜2.5mm(例えば、0.5〜2mm、好ましくは0.7〜1.5mm)程度であってもよい。針(又はピン)の太さを小さくする程、最終製品の表面に針孔の跡が残るのを防止できる。針(又はピン)の平均密度(本/cm)は、通常、0.1〜10(例えば、0.3〜8)、好ましくは0.5〜7(例えば、0.5〜6)、さらに好ましくは0.7〜5(例えば、1〜1.8)程度であってもよい。また、発泡体には複数回に亘り針を侵入させてもよい。例えば、発泡体の進行方向に間隔をおいて回転可能に配設された複数の針ロール又はピンロールで順次発泡体を侵入又は突き刺し加工してもよい。
【0063】
なお、針ロール(又はピンロール)のロール径は、例えば、50〜200mmφ(例えば、70〜150mmφ、好ましくは80〜120mmφ)、針(又はピン)のピッチは、10〜100mm(例えば、20〜80mm、好ましくは30〜60mm、さらに好ましくは、35〜50mm)程度であってもよく、ロールの回転数は、発泡体の押出速度及び針ロールの外周長に応じて、例えば、10〜170rpm(例えば、25〜150rpm、好ましくは50〜130rpm、さらに好ましくは75〜125rpm)程度であってもよい。
【0064】
なお、針の侵入及び抜き取りは、発泡体の内部が未だ熱い状態で行う場合が多い。例えば、エチレン系樹脂組成物(例えば、ポリエチレンとエチレン共重合体とを含む樹脂組成物)では、内部温度が50〜80℃(好ましくは60〜78℃、さらに好ましくは65〜77℃、特に70〜76℃)程度の発泡体を針で突き刺すのが好ましい。
【0065】
なお、針(又はピン)は加熱して又は加熱することなく発泡体を刺してもよく、針(又はピン)の侵入又は突き刺し部位は、特に制限されず、吐出発泡体の上下面であってもよく、側壁面であってもよい。前記ガス開放工程により発泡体の内部に針を刺して発泡体から抜くと、内部のガスが外部に放出されるとともに、自然冷却に伴ってセルが固化し、発泡構造が形成される。
【0066】
口金からの針ロール中心の距離は、例えば、200〜500mm、好ましくは250〜400mm、さらに好ましくは270〜350mm程度であってもよく、250〜350mm程度であってもよい。
【0067】
[養生工程]
内部ガスの放出により発泡体の内部の圧力が大気圧と平衡になると、針孔が塞がれ、非透過性又は非浸透性の発泡体が得られる。針孔が塞がれる原因は明確ではないが、独立気泡相の弾力性により針孔が塞がれること、未だ発泡体の内部が熱いため、独立気泡相の針孔部が融着して針孔が塞がれることが考えられる。なお、確実に針孔を塞ぐには、発泡体の内部に針を刺した後、発泡体を養生するのが好ましい。
【0068】
発泡体の養生は、例えば、空気中、温度20〜60℃(例えば、30〜50℃)程度で所定時間(例えば、1日〜1週間)放置することにより行うことができる。
【0069】
このようにして得られた発泡体は、内部に空洞がなく均一であるとともに、連続気泡相と独立気泡相とを備えている。そのため、本発明の発泡体は、連続気泡構造による利点と独立気泡構造による利点とを併せ持っている。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0071】
実施例1
タンデム押出機(1段目:φ50mm、2段目:φ65mm)に下記処方の樹脂組成物を投入し、1段目の押出機の途中からブタンガス8重量部をポンプで加圧注入し、2段目の押出機内で発泡領域まで冷却して金型温度102℃>口金温度97℃の温度で口金から押出し、口金から押出した後、吐出発泡体の外周に、水の水量40g/分で水を霧状に噴霧した後、ドラム(外径100mmφ)の外周方向に等間隔に8本の針(φ1.0mm×長さ12mm)を取り付けた回転ドラムを吐出発泡体の側面に当てて針を侵入させ、内部発泡ガスを排出し、長尺の発泡体(断面の幅20mm×厚み28mm)を得た。なお、口金から吐出した直後の吐出発泡体の表面温度(A)と、口金から下流方向に距離10cm離れて位置し、ノズルからの水噴霧による急冷部での吐出発泡体の表面温度(B)と、急冷部から距離20cm離れた下流部に針を備えた回転ドラムを配設して発泡体を突き刺し、この回転ドラムから距離200cm離れた下流部(C)での発泡体の内部温度を遠赤外線温度測定装置(横河電機(株)製、53007−J)で測定した。その結果、表面温度(A)は84℃、表面温度(B)は55℃、内部温度(C)は74℃であった。
【0072】
[樹脂組成物]
LDPE(東ソー(株),ペトロセン202)90重量部
EVA:エチレン酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)、ウルトラセン631)10重量部
収縮防止剤(ステアリン酸モノグリセライド、ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)アクティベックス325)3重量部
核剤(永和化成(株)、EE275)1.2重量部
比較例1
回転ドラムを用いることなく、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0073】
比較例2
以下の処方の樹脂組成物を用いる以外、実施例1と同様にして発泡体を得た。
【0074】
[樹脂組成物]
LDPE(東ソー(株),ペトロセン202)100重量部
収縮防止剤(ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)アクティベックス325)3重量部
核剤(永和化成(株) EE275)1.2重量部
そして、実施例、比較例で得られた発泡体の発泡倍率、寸法、圧縮強度を測定した。なお、発泡倍率は下記式に基づいて測定した。
【0075】
B=(V/W)×Z
(式中、Wは試験片の質量(g)、Vは試験片の体積(cm)、Zは試験片の樹脂密度を示す)
圧縮強度は、硬さ測定器((株)安田精機製作所:LR10K)を用い、長手方向の長さ5cmにカットした試験片を高さが50%になるまで圧縮(幅20mmの面に荷重を作用させて圧縮)して測定した。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1において、実施例1では、圧縮強度が大きく、内部も均一な良好な製品が得られた。比較例1は内部に空洞が発生し、不良品であった。また、比較例2では、独立気泡構造の発泡体が得られ、圧縮硬さも12N/cmと大きく、シール材として求められている5.5N/cmよりも大きく、柔軟性及び可撓性が劣っていた。
【0078】
また、実施例1の発泡体は、針孔が塞がれており、体積当たりの吸水量は微量であり、シール材で必要な内部への水の浸透を抑制でき、止水性を有していた。なお、体積当たりの吸水量は、長手方向に長さ5cmに切断した試験片の両端の切断面を防水処理して、内部連続気泡相への水の浸透を防止し、試験片を温度20℃で24時間水に浸漬した後、吸水量を重量%で表わす。
【0079】
実施例2〜4及び比較例3〜5
水噴霧量(単位g/分)と針(長さ12mm)の太さを変更する以外、実施例1と同様にして発泡体を製造した。なお、口金から吐出した直後の吐出発泡体の表面温度(A)、口金から下流方向に距離10cm離れた箇所に配設されたノズルからの水噴霧による急冷部での吐出発泡体の表面温度(B)を遠赤外線温度測定装置(横河電機(株)製、53007−J)で測定した。また、急冷部から距離20cm離れた下流部に針を備えた回転ドラムを配設して発泡体を突き刺し、この回転ドラムから距離200cm離れた下流部(C)での発泡体の内部温度を赤外線温度測定装置で測定した。
【0080】
得られた発泡体について、独立気泡相の厚みを次のようにして測定した。すなわち、発泡体の切断面を、界面活性剤を含む着色水溶液に浸漬し、吸水せずに着色していない部分の厚みを測定した。成形体表面の針孔跡の有無を目視で観察し、試験サンプルを、温度20℃の水中に24時間水没させ、吸水量を測定することにより、吸水率(重量%)を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2から明らかなように、水噴霧冷却流量が多く、表面温度B、内部温度Cが低いほど、独立発泡層の厚みが大きくなる。また、針の太さが小さいほど、針孔跡が観察されなくなる。なお、実施例2,3,4の発泡体は、表面の針痕が塞がれて埋まっているために、吸水量が容積比約1%であり、高い止水性を示した。これに対して、比較例3〜5の発泡体は針痕が残り、吸水性があるため、止水性を向上できない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の発泡体は、柔軟性、可撓性が向上しているとともに、高い剛性(腰)、圧縮回復性及び反発力を有する。また、スキン層を有するため、表面に針孔の開口部又は針孔跡が殆どなく表面が平滑で外観特性を向上できるとともに、弾力性と非透過性又は非浸透性(又はバリア性)をも備えている。そのため、本発明の発泡体は、発泡シール材(目地止め材)などとして有用である。例えば、住宅関連の部材の隙間(壁面や柱周辺の隙間、水回りの隙間など)、下水工事関連の隙間(排水溝、カルバート周辺の隙間など)、家具(隙間止め)、車内などの内装材関連の隙間などを充填して目地止めするためのシール材として有用である。
【0084】
さらに、連続気泡相と独立気泡相とを備えているため、本発明の発泡体は、クッション材、緩衝材(緩衝保護材)、包装材、吸音材、吸湿剤、防振材、断熱材などとしても利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1…発泡体
2…連続気泡相
3…独立気泡相
4…スキン層
14…ノズル
15…ロール
16…針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を含み、連続気泡と独立気泡とを有する発泡体であって、内部に形成された連続気泡相と、この連続気泡相の周囲に形成された独立気泡相と、この独立気泡相の表面に形成されたスキン層とを備えている発泡体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された複数の熱可塑性樹脂を含む請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
ポリエチレン及びエチレン含有共重合体から選択され、かつ融点差が20〜75℃の複数のエチレン系樹脂を含む請求項1又は2記載の発泡体。
【請求項4】
板状、シート状、柱状、断面半円状又は断面台形状の形態を有する請求項1〜3のいずれかに記載の発泡体。
【請求項5】
融点の異なる複数の軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性樹脂組成物を口金から押出し、気泡の成長過程で、口金から押し出された発泡体の表面を急冷するとともに、発泡体の内部に針を侵入させて、内部のガスを逃散させる請求項1記載の発泡体の製造方法。
【請求項6】
金型温度が口金温度よりも高い条件で発泡性樹脂組成物を押出して内部に連続気泡を形成しつつ、発泡体の表面を急冷して独立気泡を形成し、気泡成長過程で発泡体の内部に複数の針を侵入させて内部のガスを逃散させる請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
発泡体の内部に針を侵入させた後、発泡体を養生する請求項5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の発泡体で形成された発泡シール材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−25915(P2012−25915A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168591(P2010−168591)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000214788)ダイセルノバフォーム株式会社 (25)
【Fターム(参考)】