説明

発泡体用樹脂組成物、発泡体、および発泡体の製造方法

【課題】自動車用シール材などに使用可能な、発泡倍率が高く、柔軟で、クッション性に優れた発泡品を提供することが可能とする。
【解決手段】有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混練り反応によって得られ、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが双方とも連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態で存在しているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)から、発泡体用樹脂組成物を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体用樹脂組成物、発泡体、および発泡体の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、高発泡で柔軟なクッション性を有する射出発泡成形体を得ることのできるオレフィン系樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて得られる発泡体、および発泡体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から型内発泡成形で、発泡倍率が高く、型内での成形加工性に優れ、柔軟な感触やクッション性のある発泡材料として、ウレタフォームがあるが、熱硬化性樹脂であるため、マテリアルリサイクル面でチップフォームとしての利用はあるが、再度、発泡原料としてリサイクルすることは不可能であり、リサイクルポテンシャルの低い材料である。
【0003】
熱可塑性オレフィン系エラストマーはリサイクル性の良い材料として広く使われており、その発泡体についても取り組みがなされている(特許文献1)。この先行技術には、「(a)ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム90ないし50重量部と、(b)ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチック10ないし50重量部(ここで、(a)+(b)は100重量部)と、(c)ペルオキシド非架橋型ゴム状物質および/または(d)鉱物油系軟化剤5ないし50重量部とから混合物を得て、この混合物を有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理して、軽度に架橋されたゴム組成物(A)と分解型発泡剤(B)とからなる発泡組成物を得て、この発泡組成物を加熱融解した後に発泡せしめて成形品を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー発泡体の製造方法」が開示されている。
しかし、この特許文献1に開示の技術では、その実施例中にも開示されているように、得られる発泡体の発泡倍率はきわめて低く実用に供することはできない。このことは、本発明者らによる追試実験によっても、確認された。
【0004】
前記特許文献1に開示の技術における問題点を改良する取り組みとして、部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーに、特定のオレフィン樹脂を少量配合することで、リサイクル性に優れた内装表皮材のクッション層(発泡成形体)を形成させる方法が、提案されている(特許文献2)。その他に、同じく部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーに、特定のスチレン系熱可塑性エラストマーを少量配合することで、リサイクル性に優れた内装表皮材のクッション層(発泡成形体)を形成させる方法も提案されている(特許文献3)。
しかしながら、前者に記載の技術では押出し発泡で発泡倍率が最高2.9倍、後者に記載の技術では射出発泡で発泡倍率が最高2.5倍と、どちらも発泡倍率は低く、感触、クッション面では充分なものが得られていない。
【0005】
従来から柔軟なクッション性を高める手段として、オレフィン系熱可塑性エラストマーベースの材料に架橋剤等を用いて架橋を施し(ゲル分率を高め)、流動粘度を上げることで高発泡する方法(特許文献1,2)が知られている。
【0006】
これら特許文献1,2に開示の技術は、樹脂自体のゴム弾性の向上には寄与するが、発泡に対しては種々の問題があることが、本発明者らの研究で明らかになってきた。すなわち、特許文献1,2に開示の技術では、(i)発泡成形させる前にベース材料に発泡剤の分散、溶解、溶存が必要なことから、ベース材料の架橋密度(ゲル分率)が高くなると、ベース材料への発泡剤の均一な分散、溶解、溶存ができなくなり、(ii)それによって、配合した発泡剤が有効に発泡に寄与することができなくなり、(iii)結果的に発泡倍率が上らない、このような問題が生じることを、本発明者らは見出した。さらに、これら文献に開示の技術では、(iv)粘度が高くなるため、ベース樹脂への剪断が著しくなり、発泡剤の分散時に、ベース材料のミクロ凝集構造の変化や、同時に剪断によるベース樹脂の分解も起こり、(v)それによって、極端な流動粘度の低下を招き、成形型内やダイスでの高発泡や成形形状の制御が不安定であることも、本発明者らは、自身の研究から、知るに至った。
【0007】
その他、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いた発泡体成形用樹脂組成物としては、市販のオレフィン系熱可塑性エラストマー、あるいはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムと、ポリプロピレンの架橋剤を伴った部分架橋あるいは完全架橋させた機械的ブレンド物を用いたもの(特許文献4,5)が知られている。
【0008】
これら特許文献4,5に開示の発泡体成形用樹脂組成物では、本発明者らの検証によれば、高発泡で且つ柔軟性を確保することが困難であることが、確認された。
【0009】
このように、従来のいずれの提案によっても、リサイクル性や射出発泡成形加工性に優れ、かつクッション層の発泡倍率が高く、柔軟なクッション性を有する射出成形発泡体製品は、未だに提供されていないのが現状である。
【0010】
【特許文献1】特開昭54―112967号公報
【特許文献2】特開平9−143297号公報
【特許文献3】特開2002−206034号公報
【特許文献4】特開2003−49949号公報
【特許文献5】特開2003−173671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、高発泡で、柔軟で、クッション性や断熱性に優れた射出発泡成形体を得ることのできる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて得られた発泡体、および該発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために、本願発明に先立って、ポリプロピレンを不連続相として有するとともに、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムの非架橋ないしは部分架橋からなるゴム相を連続相として有するミクロ凝集構造(モルフォロジー)に制御した発泡組成基材(樹脂組成物)を提案した。この樹脂組成物は、特に射出発泡成形で、コアバック工法等を応用して最高発泡倍率3〜4倍の発泡成形を可能とするモルフォロジーに調整されたものである。しかし、これ以上の発泡倍率を実現するために、さらに、軽量化や柔軟性の付与を図ることのできる樹脂組成物を提供する必要に、本発明者らは、思い至った。
【0013】
本発明者らは、前記必要を満たすべく、鋭意、研究を重ねた結果、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であって、そのミクロ凝集構造を「結晶層とゴム相とが互いに連続相にも不連続相にもならないで、互いに入り組んだ混在状態」に制御することで、5倍強の射出高発泡成形が可能となることを知見するに至った。
【0014】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明にかかる発泡体用樹脂組成物は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混練り反応によって得られ、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが連続相にも不連続相にもならずに互いに入り組んだ混在状態をなしているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)から構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる発泡体は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混練り反応によって得られ、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが互いに入り組んだ混在状態をなしているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)を発泡して得られたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる発泡体の製造方法は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とを混練り反応させて、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが互いに入り組んだ混在状態をなしているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)を調製する工程と、前記ゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)を発泡させる工程と、を有することを特徴とする。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0017】
(発泡成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物)
本発明者らが特定するに至った樹脂組成物は、1〜5倍までの高発泡倍率も可能であり、柔軟なクッション性や断熱性に優れた発泡体を得ることのできるオレフィン系熱可塑性エラストマーである。このオレフィン系熱可塑性エラストマーは、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とからなり、これらゴム(A)と樹脂(B)の混練り反応によって得られるゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)であって、そのミクロ凝集構造において、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが連続相でも不連続相でもなく互いに入り組んだ混在状態で存在していることを特徴とする。
【0018】
本発明でいうミクロ凝集構造とは、ゴム成分と樹脂成分とからなる発泡成型用樹脂組成物を、三酸化オスミニウムや四酸化ルテニウム等の染色剤で、処理して、透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV:以下、TEMと記す)を用いて観察した場合に得られる「ミクロなゴム相と結晶相の組織構造」を意味する。本発明にかかるオレフィン系熱可塑性エラストマーでは、以下に説明するように、ゴム成分と樹脂成分との双方が連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ状態で分散している組織構造に特徴がある。
【0019】
かかるミクロ凝集構造でのゴム相と結晶相の判断は、次のようにして可能になる。すなわち、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)単体のみに染色剤処理してTEM観察したものは、全面暗黒色であり、一方、有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)単体のみで同様の処理して観察したものは、全面明白色であったことから、ゴム成分相が暗黒色、結晶成分相が明白色と判断できる。
【0020】
したがって、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)が双方とも連続相でも不連続相でもなく互いに入り組んだ混在状態の時、TEM観察によるミクロ凝集構造は、ゴム成分相の暗黒色と結晶成分相の明白色が入り乱れて、どちらが連続相とも、またどちらが不連続相とも判断できない状態で観察される。
【0021】
このようなミクロ凝集構造の状態にあれば、柔軟で、かつ5倍強の発泡倍率が制御された射出発泡体の作成が容易である。これに対して、特に、ミクロ凝集構造が、有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)の連続相(白色相)になった場合、発泡倍率は上がらないか、全く発泡せず、柔軟性に劣る問題が生じる。
【0022】
前述のように、本発明の樹脂組成物の特徴は、「その構成成分である有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と他の構成成分である有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが双方とも連続相でもなく不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態で存在している」というミクロ凝集構造を持っていることにある。このミクロ凝集構造における2成分の混在状態は、形状的に固定的ではなく、千変万化の混在形状がある。その混在形状により低発泡倍率から高発泡倍率までの広い倍率範囲を任意に設定可能となっている。したがって、本発明では、かかるミクロ凝集構造を制御することによって、1倍から5倍という高い発泡倍率の発泡体を得ることができる。その制御ファクターとしては、次のように種々のものがある。すなわち、本発明の「樹脂成分とゴム成分とが連続相でもなく不連続相でもなく互いに入り組んだ混在状態にあるミクロ凝集構造」は、ゴム成分と結晶性樹脂成分の組成、分子量、配合比率により制御でき、また、混合時の剪断の度合いや温度等の条件、後述するようなゴム状オレフィン系軟質樹脂の分岐の度合い(ゲル分率)、各成分の溶融粘度差、相溶化剤の配合など界面張力の関係から制御できる。
【0023】
本発明者等の研究によれば、ゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)のミクロ凝集構造が、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが双方とも連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態で存在する組織的構造であると、発泡性に優れ、発泡倍率5倍以上が可能となる。これに対して、ゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)のミクロ凝集構造が、有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)が連続相として存在し、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が不連続相として存在する組織的構造になっていると、発泡性が劣り発泡倍率3倍以上が安定して得られ難く、かつ連続相が結晶性オレフィン樹脂(B)となるため、柔軟性、クッション性がさらに悪化することを見出した。
【0024】
(有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A))
本発明で用いられる有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)は、炭素原子数2〜20のα−オレフィン含有量が50モル%以上の無定形ランダムな弾性共重合体または結晶化度が50%以下の弾性共重合体であって、2種類以上のα−オレフィンからなる非結晶性α−オレフィン、あるいは2種類以上のα−オレフィンと非共役ジエン共重合体である。
【0025】
このようなオレフィン系共重合体ゴムの具体的な例としては、以下のようなゴムが挙げられる。
(a)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(b)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(c)プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[プロピレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(d)ブテン・α−オレフィン共重合体ゴム
[ブテン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
【0026】
上記、α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
また、上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0028】
これらの共重合体ゴムのムーニー粘度[ML1・4(100℃)]は10〜250、特に40〜150が好ましい。
【0029】
また、上記(b)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、ヨウ素価が25以下であることが好ましい。
【0030】
本発明で用いられる有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混合物においては、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)の配合量は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以上90重量部未満、さらに好ましくは50重量部以上85重量部未満、特に好ましくは65〜80重量部である。
【0031】
(有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B))
本発明で用いられる有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0032】
上記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)の具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。
(イ)プロピレン単独重合体
(ロ)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(ハ)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体
(ニ)1−ブテン単独重合体
(ホ)1−ブテン単独重合体10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(ヘ)4−チル−1−ペンテン単独重合体
(ト)4−メチル−1−ペンテンと20モル%以下のα−オレフィンとのランダム共重合体
【0033】
上記α−オレフィンとしては、具体的には、上述したオレフィン共重合体ゴムを構成するα−オレフィンの具体例と同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる「有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混合物」においては、有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)の配合量は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との合計量100重量部に対して、好ましくは70重量部未満、さらに好ましくは50重量部未満、特に好ましくは10〜35重量部である。
【0035】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)の配合割合で、好ましい割合から好ましくない割合に逸脱すると、混合混練りして得られるゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)のミクロ凝集構造において、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)成分との混在状態の均衡が破れて相分離していき、連続相と不連続相とが形成され、3倍を超える高い発泡倍率を期待できなくなる。特に、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が不連続相、有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)が連続相となるミクロ凝集構造に移行していくと、発泡倍率が低下する傾向となる。
【0036】
本発明における特有なミクロ凝集構造における結晶成分と非晶成分の混在分散状態は、ゴム成分と結晶性樹脂成分からなる2成分混合系の場合、架橋剤の添加の有無や添加量、混合系中のそれぞれの成分比率、また混合時の剪断の度合い、混練り時の原料圧力や温度等の条件により決定され、これが発泡成形時の溶融粘度や、界面張力の関係等に大きな影響を与えると考えられている。
【0037】
一般的に発泡成形性に与える基本的で重要な材料特性要素は、発泡成形時の溶融粘度の安定性である。つまり、発泡成形時における幅広い発泡温度領域に対し、発泡ガスを保持して、発泡膨張を持続し得る粘度特性が必要とされている。
【0038】
従って、発泡温度領域に対する粘度依存性から材料組成を考えると、発泡特性に有効な材料組成は、雰囲気の圧力が一定の場合、発泡時に変化する材料温度や、その温度に依存される材料粘度挙動が重要になる。高倍率発泡には、発泡温度域に融点を持ち発泡ガスの内包保持力のなく、急激な粘度低下を招く結晶性樹脂成分よりも、粘度変化の緩慢な非晶性成分の方が有効な傾向がある。
【0039】
しかし、本発明で鋭意研究を重ねてきた結果、射出発泡成形で発泡倍率の最も高く、成形性の良好なミクロ凝集構造は、従来把握してきた非晶性ゴムの有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)の連続相と結晶性樹脂の有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)の不連続相とからなるものではなく、先にも述べたように、これら(A)成分と(B)成分とが双方とも連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態の組成が最適である。これは、新たな知見であった。
【0040】
かかる特定のミクロ凝集構造において高い発泡倍率が実現できるのは、射出発泡初期段階では、発泡セル核初期成長形成が、ゴム相と入り組み分散した状態の結晶成分の流動性で効き、次の発泡成長の段階では、結晶成分と入り組み分散した状態の非晶ゴム成分に由来したガスの保持性が効いて、総合的に高発泡特性に結びついているものと思われる。
【0041】
このような有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混在状態からなる固有なミクロ凝集構造を有するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、架橋反応温度の高い特定の架橋剤、潤滑剤や相溶化剤の選択、それらを組み合わせた配合組成物や、混練り時の回転数やこの時の材料温度の制御条件から安定に得られる。
【0042】
前記特定の架橋剤とは、後の説明で用いられる架橋剤例を示すが、その中でも、反応(1分間分解半減期)温度が、170℃以上のものを用いられるのが好ましい。
【0043】
また、前記潤滑剤としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系のオイル、あるいはポリプロピレン系やポリエチレン系のオレフィン系低分子量ワックスが用いられる。
【0044】
前記相溶化剤としては、非晶性の反応性重合体が用いられる。その中でも好ましくは、エチレン・αーオレフィン・非共役ジエン共重合体、イソプレン系、ブタジエン系、スチレン系、またはこれらから構成される2元系や3元系の共重合体やそれらの水添系共重合体、さらにこれらに化学修飾した重合体が用いられる。
【0045】
特に結晶相と非晶相の混在状態のミクロ凝集構造が安定に形成される組成配合として、非晶性の反応性ポリマーの役割は大きい。また、相溶化剤として用いられる共重合体は、非晶性でかつ反応性成分の為、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)に含まれ、混在状態のミクロ凝集構造の安定化に寄与する。
【0046】
(架橋手段)
本発明で有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)の混在状態のミクロ凝集構造を形成され、射出高発泡が可能とされるために用いられる架橋手段としては、過酸化物を用いる方法、電子線照射、硫黄加硫、フェノール系樹脂架橋、シラン架橋等公知の方法を用いることができる。これら架橋手段により、組成を構成する重合体分子の分岐、部分架橋が施される。これらの架橋手段の中でも過酸化物を用いる方法が簡易に制御し易いので望ましい方法である。
【0047】
過酸化物で好ましく用いられる具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジーtert-ブチルペルオキシド、2,5ージメチルー2,5ージ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5ージメチルー2,5ージ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert-ブチルペルオキシ)−3,3,−トリメチルシ5クロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレ−ト、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエ−ト、tert−ブチルペルベンゾエ−ト、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカ−ボネ−ト、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0048】
これらの内では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5ージメチルー2,5ージ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5ージメチルー2,5ージ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシンー3、1,3ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1ービス(tert-ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブリル−4,4−ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレ−トが 好ましく、なかでも1,3ビス(tert-ブ チルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0049】
過酸化物は、未発泡の発泡樹脂基材の全体100重量部に対して、通常0.1〜2.5重量部程度の配合が好ましく、実際的な配合量は、発泡体の気泡径、ゲル分率(138℃沸騰キシレンで3時間抽出の不溶分の重量百分率)、密度等のバランスを考慮して調整される。
【0050】
本発明においては、上記過酸化物による分岐および部分架橋処理に際し、その助剤として、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンジオキシム、N−メチルーNー4ージニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパンN,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレ−ト、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、アクリルメタクリレ−トのような多官能性メタクリレ−トモノマ−、ビニルブチラ−ト、ビニルステアレ−トような多官能性ビニルモノマ−を配合することができる。
【0051】
この助剤の配合量によっても、射出時の発泡基材樹脂の流動性や発泡性の調整を適宜になすことができる。
【0052】
ただし、オレフィン系エラストマーの分岐および部分架橋を、電子線、中性子線、α線、β線、γ線、X線、紫外線等の電離性放射線の照射により行う場合は、架橋剤を配合しなくともよいが、電離性放射線の照射による分岐および部分架橋処理に際しては、その助剤として、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレ−ト、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリメチプロパントリメタクリレ−ト、アクリルメタクリレ−トのような多官能性メタクリレ−トモノマ−、ビニルブチラ−ト、ビニルステアレ−トのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0053】
(その他の添加剤)
また、本発明で用いられる、発泡基材樹脂中に、その他必要に応じて各種耐候安定剤、耐熱安定剤、可塑剤、難燃剤、増粘剤、滑剤、着色剤、など、オレフィン系の熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物に通常用いられる添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲において、添加することができる。
【0054】
また、この他に、発泡成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー中に配合することもできる充填剤としては、具体的には、カーボンブラック、パルプ、繊維状チップ、カンテン等の有機充填材料、クレー、カオリン、シリカ、ケイソウ土、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ヴェントナイト、シラスバルーン、ゼオライト、珪酸白土、セメント、シリカフュ−ム等の無機充填剤が挙げられる。
【0055】
上記組成物の混練方法としては、V型ブラベンダー、タンブラーミキサー、リボンブラベンダー、ヘンシェルミキサーなどの公知の混練機を用いて、混練し、この混練物を、開放型のミクシングロールあるいは非開放型のバンバリーミキサー、押出し機、ニーダー、連続ミキサーなどの公知の混練機を用いて、混練分散させる方法が、好ましく用いることができる。
【0056】
これらによって調整される未発泡の発泡成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、公知のペレタイザーでペレット形状にして用いるのが望ましい。
【0057】
(発泡性樹脂と発泡体)
本発明においては、発泡成形用オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に熱分解型発泡剤を発泡剤の分解温度以下で練り込むことで、未発泡の発泡性マスターバッチとして調整することもできる。
【0058】
たとえば、発泡成形用オレフィン系熱可塑性エラストマーと発泡剤をV型ブラベンダー、タンブラーミキサー、リボンブラベンダー、ヘンシェルミキサーなどの公知の混練機を用いて、混練必要であれば、この混練に続いてさらに、押出機、ミキシングロ−ル、ニーダー、バンバリーミキサーなどで、熱分解型発泡剤の分解しない温度で混練り調整する。
【0059】
発泡剤は、未発泡の発泡基材樹脂100重量部に対して、通常0.05〜25重量部の割合で用いられる。
【0060】
これらによって調整される未発泡の発泡成形用オレフィン系熱可塑性エラストマーのマスターバッチは、公知のペレタイザーでペレット形状にして用いるのが望ましい。
【0061】
前述したオレフィン系発泡樹脂基材に配合される発泡剤は、熱分解してガスを発生する熱分解型発泡剤があり、このような発泡剤としては、具体的には、アゾジカーボンアミド(ADCA)、ジエチルアゾカルボキレート、アゾジカルボン酸バリウム、4,4ーオキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、3,3ージスルホンヒドラシドフェニルスルホン酸、N,N’−ジニトロソペンタメテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジンなどの有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの無機発泡剤等が挙げられる。特に有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメテトラミン、トリヒドラジノトリアジンが好ましく、無機発泡剤としては、炭酸水素ナトリウムが好ましい。また、炭酸水素ナトリウムとクエン酸モノナトリウムおよびグリセリン脂肪酸エステルを混合させて用いてもよい。
【0062】
これらの発泡剤は、単独または複数の組合せ、またいわゆる分解助剤を併用して用いることができる。
【0063】
また、発泡助剤、湿潤剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤および充填剤は、上記混練のいずれかの段階において配合する。
【0064】
本発明においては、熱分解型発泡剤による発泡に代えて、揮発性溶剤や水等によって樹脂を発泡させることもできる。また、ガスそのものを発泡樹脂基材に分散あるいは含浸させることもでき、この場合、二酸化炭素ガスや窒素ガスが発泡剤として挙げられる。
【0065】
具体的には、射出やスタンピング成形または押出し成形時に、成形機から発泡基材樹脂を出す前に、二酸化炭素や窒素、揮発性溶剤や水等の蒸気を注入して混練りし、分散させる方法を用いる。
【0066】
射出または押出し前の、これら発泡剤の注入混練り条件としては、超臨界状態または非超臨界状態のいずれの状態であってもよい。
【発明の効果】
【0067】
本発明の発泡体用樹脂組成物は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混練り反応によって得られ、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが双方とも連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態で存在しているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)から構成されており、前記ミクロ凝集構造を持つことによって、4〜5倍もの高い発泡倍率を発揮することができ、柔軟で、クッション性や断熱性に優れた発泡体を得ることができる。したがって、本発明によれば、自動車用の各種シール材などに使用可能な、高い発泡倍率で、柔軟なクッション性を有し、圧縮永久歪みの小さなシール材用の発泡製品を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、以下の実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0069】
本発明の発泡体の成形に用いた射出成形機は、型締め力35トン、可塑化能力17kg/h、スクリュー径20mm、最大射出圧216MPa、最大射出率76cm3/sのタイプの装置を用いた。
【0070】
同じく本発明の発泡体の成形に用いた金型としては、コアバック可能な印籠型で深さ2mmで、内寸30mm×30mmサイズのシート形状のものを、成形性(外観)評価用、各種物性測定用の成形に用いた。
【0071】
(実施例1)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[EPT;エチレン含量38モル%、ヨウ素価12、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]65重量部と、ポリプロピレン[PP;プロピレン含有量100%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]35重量部とを、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ジブチルパーオキシ)ヘキシン−3[過酸化物]0.5重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.3重量部の存在下で、165℃で低回転数から徐々に高回転で混練りして、発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー(ミクロ凝集構造におけるゴム相および結晶相が双方ともに連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態にある)を得た。得られた発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物を10.0重量部を混練りしてマスターバッチ(発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー)を調製した。このマスターバッチを、230℃のシリンダー中で再度溶融分散させた後、上下金型から形成される型閉じされている金型に発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマーを射出した(射出条件は、射出スピード:200mm/s、コアバック:射出初期金型クリアランス(2mm)→成形後クリアランス(12mm)、金型温度:30℃)。
【0072】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡成形品を取り出した所、成形品の発泡倍率が5.5倍(発泡倍率:発泡後比重/発泡前比重)で、成形形状も良好で、感触はゴム状で良好(C硬度:21)であった。
【0073】
かかる発泡体特性は、図1に示す「TEM写真によるミクロ凝集構造」から明らかなように、ゴム相および結晶相ともに連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態にあるミクロ凝集構造となっているため、高い発泡倍率が得られ、C硬度も低くなったものである。
【0074】
(実施例2)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[EPT;エチレン含量38モル%、ヨウ素価12、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]65重量部と、ポリプロピレン[PP;プロピレン含有量100%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]25重量部とを、2.5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ジブチルパーオキシ)ヘキシン−3[過酸化物]0.5重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.3重量部の存在下で、水添スチレン・イソプレン共重合体[相溶化剤]10重量部、低分子量ポリプロピレン[ワックス]5重量部とを混合して、165℃で低回転から徐々に高回転で混練りして、発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー(ミクロ凝集構造におけるゴム相および結晶相が双方ともに連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態にある)を得た。得られた発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、230℃のシリンダー中で窒素ガスを0.08wt%溶融分散させた後、上下金型から形成される型閉じされている金型に発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマーを射出した(射出条件は、射出スピード:200mm/s、コアバック:射出初期金型クリアランス(2mm)→成形後クリアランス(12mm)、金型温度:30℃)。
【0075】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡成形品を取り出した所、成形品の発泡倍率が5.3倍(発泡倍率:発泡後比重/発泡前比重)で、成形形状も良好で、感触はゴム状で良好(C硬度:23)であった。
【0076】
かかる発泡体特性は、図2に示す「TEM写真によるミクロ凝集構造」から明らかなように、ゴム相および結晶相ともに連続相でも不連続相でもなく、互いに入り組んだ混在状態にあるミクロ凝集構造となっているため、高い発泡倍率が得られ、C硬度も低くなったものである。
【0077】
(比較例1)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[EPT;エチレン含量38モル%、ヨウ素価12、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]50重量部と、ポリプロピレン[PP;プロピレン含有量100%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]50重量部とを、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ジブチルパーオキシ)ヘキシン−3[過酸化物]2.5重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]1.5重量部の存在下で、165℃で混練りして、発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー(ミクロ凝集構造が連続相が結晶相で不連続相がゴム相)を得た。得られた発泡用オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物を3.0重量部を混練りしてマスターバッチ(発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー)を調製した。このマスターバッチを、230℃のシリンダー中で再度溶融分散させた後、上下金型から形成される型閉じされている金型に発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマーを射出した(射出条件は、射出スピード:200mm/s、コアバック:射出初期金型クリアランス(2mm)→成形後クリアランス(12mm)、金型温度:30℃)。
【0078】
このオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡成形品を取り出した所、成形形状は悪く、発泡倍率も1.0倍(発泡倍率:発泡後比重/発泡前比重)で、感触はポリプロピレンの様に硬く不良(A硬度:80)であった。
【0079】
かかる発泡体特性は、図3に示す「TEM写真によるミクロ凝集構造」から明らかなように、ゴム相が不連続相で結晶相が連続相という相移行により混在状態でないミクロ凝集構造となっているため、発泡倍率が低く、C硬度も高くなったものである。
【0080】
(比較例2)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[EPT;エチレン含量38モル%、ヨウ素価12、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]90重量部と、ポリプロピレン[PP;プロピレン含有量100%、MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]10重量部とを、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ジブチルパーオキシ)ヘキシン−3[過酸化物]0.3重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.15重量部の存在下で、165℃で混練りして、発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー(ミクロ凝集構造が連続相がゴム相で不連続相が結晶相)を得た。得られた発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、230℃のシリンダー中で窒素ガスを0.1wt%溶融分散させた後、上下金型から形成される型閉じされている金型に発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマーを射出した(射出条件は、射出スピード:200mm/s、コアバック:射出初期金型クリアランス(2mm)→成形後クリアランス(12mm)、金型温度:30℃)。
【0081】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡成形品を取り出した所、成形形状は良く感触も悪くはないか(C硬度:32)、発泡倍率は混在相の実施例のものより少々劣り、発泡倍率が2.8倍(発泡倍率:発泡後比重/発泡前比重)であった。
【0082】
かかる発泡体特性は、図4に示す「TEM写真によるミクロ凝集構造」から明らかなように、ゴム相が連続相で結晶相が不連続相という相移行により混在状態でないミクロ凝集構造となっているため、前記実施例品に比べて発泡倍率が幾分低く、C硬度も幾分高くなっている。
【0083】
以上の実施例および比較例の組成と評価を、それぞれ、以下の表1に示した。表中の単位は重量部、発泡剤としてガスを用いた場合はwt%で示した。また、各実施例1,2および比較例1,2について、透過型電子顕微鏡によるミクロ凝集構造を示す組織写真を図1から4に示した。
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる「発泡成形用樹脂組成物、発泡体、および発泡体の製造方法」によれば、自動車用シール材などに使用可能な、発泡倍率が高く、柔軟で、クッション性に優れた発泡形品を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1において調製した成型用樹脂組成物のミクロ凝集構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例2において調製した成型用樹脂組成物のミクロ凝集構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】比較例1において調製した成型用樹脂組成物のミクロ凝集構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】比較例2において調製した成型用樹脂組成物のミクロ凝集構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混練り反応によって得られ、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが連続相にも不連続相にもならずに互いに入り組んだ混在状態をなしているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)から構成されていることを特徴とする発泡体用樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)の配合量が、該有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との合計100重量部に対して、30重量部以上90重量部未満であることを特徴とする請求項1に記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項3】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混練り反応によって得られ、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが連続相にも不連続相にもならずに互いに入り組んだ混在状態をなしているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)を発泡して得られたことを特徴とする発泡体。
【請求項4】
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)の配合量が、該有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との合計100重量部に対して、30重量部以上90重量部未満であることを特徴とする請求項3に記載の発泡体。
【請求項5】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とを混練り反応させて、そのミクロ凝集構造において、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)とが連続相にも不連続相にもならずに互いに入り組んだ混在状態をなしているゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)を調製する工程と、
前記ゴム状オレフィン系軟質樹脂(C)を発泡させる工程と、
を有することを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)の配合量を、該有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と前記有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との合計100重量部に対して、30重量部以上90重量部未満とすることを特徴とする請求項5に記載の発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−307070(P2006−307070A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133167(P2005−133167)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】