発泡充填具及び発泡充填具の取り付け構造
【課題】 中空構造体の中空室を隙間無く充填することができる発泡充填具、及び発泡充填具の取り付け構造を提供すること。
【解決手段】 発泡充填具1は、平板状部材である押し当て部3、5を備えており、それらは略くの字型の部材である連結部7、8、9により連結されている。連結部7における屈曲部の内側には、溝7aが形成されており、連結部8における屈曲部の内側には、溝8aが形成されている。連結部7、8は、加熱されたときには、溝7a、8aの作用により直線形状となる。そのことにより押し当て部3には上向きの押しつけ力が加わる。
【解決手段】 発泡充填具1は、平板状部材である押し当て部3、5を備えており、それらは略くの字型の部材である連結部7、8、9により連結されている。連結部7における屈曲部の内側には、溝7aが形成されており、連結部8における屈曲部の内側には、溝8aが形成されている。連結部7、8は、加熱されたときには、溝7a、8aの作用により直線形状となる。そのことにより押し当て部3には上向きの押しつけ力が加わる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数のパネルによって構成された車両ボディのピラー等の中空構造体の制振性、防音性等を高めるために、中空構造体の中空室内に配置され、外部加熱により発泡し、中空室を充填、遮断する発泡充填具、及び発泡充填具の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図12(b)に示すように、車両ボディーのピラーP1はインナーパネルP3及びアウターパネルP5から構成され、内部に中空室P7を有する中空構造体である。従来より、このピラーP1の中空室P7に、発泡充填具P9を配置し、加熱により発泡させ、中空室P7を充填することで、制振、防音効果を高めることが行われてきた。
【0003】
発泡充填具P9の形態としては、図12(a)に示すように、一対の板状部材P11、P13と、それらの間を連結し、弾性変形可能な連結部P15とから成るものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この発泡充填具P9の取り付けは、まず、図12(a)に示すように、インナーパネルP3とアウターパネルP5とを組み付ける前に、発泡充填具P9を中空室P7に配置しておき、次に図12(b)に示すように、インナーパネルP3とアウターパネルP5とをスポット等で溶接する。発泡充填具P9の高さは、予め中空室P7の高さより大きく設定されているため、インナパネルP3とアウタパネルP5とを組み付ける際には、発泡充填具P9の連結部P15は弾性的に押し縮められる。そして、連結部P15の弾性変形により生じる押圧力により、板状部材P11はアウターパネルP5の内壁に押しつけられ、板状部材P13はインナ−パネルP3の内壁に押しつけられる。このことにより、発泡充填具P9は、ピラーP1に対し、一定の位置に固定される。その後、発泡充填具P9を加熱して発泡させ、中空室P7を充填する。
【特許文献1】特許第3340546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした発泡充填具P9は、これに熱が作用すると一般に収縮・軟化するといった性質を有している。発泡充填具P9が収縮すると、例えば図12(c)に示すように、連結部P15のそれぞれが、板状部材P11、13との接続部を引っ張るように収縮し、これにより2つの板状部材P11、13の間隔が短くなる。さらに、連結部P15はくの字型に屈曲しているため、発泡充填具P9が軟化した際には、板状部材P11及び連結部P15の自重等により、屈曲している部分を中心にして変形し易い。そして、これら軟化・収縮による変形のため、図12(c)に示すように、板状部材P11とアウタ−パネルP5とが大きく離間する。その結果、発泡充填具P9が発泡・硬化した際に、板状部材P11とアウタパネルP5との間に隙間が形成される等、好適な充填がなされないといった不具合が生じる虞がある。
【0006】
また、こうした発泡充填具P9の熱による収縮等を考慮して予め発泡充填具P9の材料量を多く設定する等の方法をとれば、ある程度上記の不具合を抑制することはできるものの、この場合は、充填する中空室P7の体積に比して過剰な材料量を設定することになるので、充填効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、中空構造体の中空室を隙間無く充填することができる発泡充填具、及び発泡充填具の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1の発明は、
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、一対の押し当て部と、前記一対の押し当て部を連結し、弾性的に屈曲可能な連結部と、を備えるとともに、前記連結部のうちの少なくとも1つは、屈曲する際に内側となる面に、周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする発泡充填具を要旨とする。
【0009】
本発明の発泡充填具は、例えば、図3(a)に示すように、連結部7、8において屈曲する際に内側となる面に周囲より一段落ち込んだ凹部7a、8aを備えている。この構成において、凹部7a、8aが形成されている面と、凹部7a、8aが形成されていない裏側の面とでは、発泡充填具1に熱が作用し収縮する際に、単位長さあたりの収縮率は同じであっても、凹部7a、8aがない分だけ、内側面の収縮量が小さくなる。そのため、連結部7、8は、発泡充填具1に熱が作用したときには、屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0010】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0011】
以上の作用により、本発明によれば、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、中ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【0012】
尚、図3に示す発泡充填具1において、連結部9には凹部が設けられていないが、連結部7、8が上述したように直線形状となるように変形することにより、連結部9もやはり直線形状となるように変形する。
【0013】
発泡充填具1において、連結部9の屈曲部における内側にも、連結部7、8と同様の凹部を設けても良い。また、連結部7、8、9のうち、いずれか1つ、または任意の2つの組み合わせについて、凹部を設けても良い。
(2)請求項2の発明は、
前記連結部は、その少なくとも一部に略くの字型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具を要旨とする。
【0014】
本発明における連結部は、略くの字型の部分における屈曲部の角度が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(3)請求項3の発明は、
前記連結部は、その少なくとも一部に略円弧型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具を要旨とする。
【0015】
本発明における連結部は、略円弧型の部分の湾曲が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(4)請求項4の発明は、
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、一対の押し当て部と、前記一対の押し当て部を連結する複数の連結部と、を備え、前記連結部は、弾性的に屈曲可能であるとともに、前記連結部のうちの少なくとも一対は屈曲する際に内側となる面が対向するように配置され、その内側となる面が、加熱した際に収縮する材料からなる接続部材で繋がれていることを特徴とする発泡充填具を要旨とする。
【0016】
本発明の発泡充填具では、図7(a)に示すように、少なくとも一対の連結部7、8が、屈曲する際に内側となる面(屈曲する際に角度が小さくなる面)が対向するように配置され、その内側となる面が、加熱した際に収縮する材料からなる接続部材13で繋がれている。この接続部材13は、加熱されたときに収縮する発泡材から成るので、発泡充填具1が加熱されたときは収縮する。すると、連結部7と連結部8は、接続部材13の収縮にともない、互いに引き寄せられ、それらの屈曲の角度は浅くなってゆく。接続部材13の収縮が更に進むと、図7(b)に示すように、連結部7及び連結部8は直線形状となるように変形する。
【0017】
そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0018】
以上の作用により、本発明によれば、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と多し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
(5)請求項5の発明は、
前記連結部のうちの少なくとも1つにおいて、屈曲する際に内側となる面に周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする請求項4記載の発泡充填具を要旨とする。
【0019】
本発明は、連結部において屈曲する際に内側となる面に、周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることにより、請求項1記載の発明と同様の効果を奏することができる。
(6)請求項6の発明は、
前記連結部は、略くの字型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具を要旨とする。
【0020】
本発明における連結部は、略くの字型における屈曲部の角度が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(7)請求項7の発明は、
前記連結部は、略円弧型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具を要旨とする。
【0021】
本発明における連結部は、略円弧型の湾曲が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(8)請求項8の発明は、
発泡充填具を取り付ける対象に貫設された取り付け孔にはめこまれ、発泡充填具を係止する係止部を、前記押し当て部に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発泡充填具を要旨とする。
【0022】
本発明の発泡充填具は、係止部を取り付け孔に係止するとともに、連結部の弾性的な屈曲により生じる押し当て力により押し当て部を中空構造体の内壁に押し当てることで、発泡充填具を中空構造体の内部に固定する。
【0023】
そのため、発泡充填具を弾性力のみで固定する場合のように、押し当て部が中空構造体の内壁を押す力を大きく設定する必要がなく、その結果として、中空構造体ににひずみが生じてしまうようなことがない。
【0024】
また、連結部の弾性力を強くする必要がないので、中空構造体に発泡充填具を取り付ける際、発泡充填具に小さい力を加えるだけで押し縮めることができ、中空構造体の組み立てが容易である。
(9)請求項9の発明は、
中空部を有する中空構造体と、請求項1〜8のいずれかに記載の発泡充填具と、から成る発泡充填具の取り付け構造であって、前記発泡充填具は、前記連結部の弾性的な屈曲により生じる押圧力により前記押し当て部が前記中空部の内壁に押し当てられた状態で、前記中空部に配置されることを特徴とする発泡充填具の取り付け構造を要旨とする。
【0025】
本発明では、請求項1〜8の発泡充填具を用いることにより、上述した作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の発泡充填具及びその取り付け構造の形態の例(実施例)を説明する。
【実施例1】
【0027】
a)まず、本実施例1の発泡充填具1の構成を図1〜2を用いて説明する。尚、図1は、発泡充填具1の全体構成を表す斜視図であり、図2は図1における斜め上方から見た斜視図である。
【0028】
発泡充填具1は、平板状部材である押し当て部3と、押し当て部3と平行に配置され、やはり平板状部材である押し当て部5とを備えている。
押し当て部3と、押し当て部5とは、略くの字型の板状部材である連結部7、8、9により連結されている。このうち、連結部8は押し当て部3、5の中央付近を連結しており、連結部7、9は、押し当て部3、5の端部付近を連結している。また、連結部7と連結部8とは、それぞれのくの字型の屈曲部における鋭角側が対向するように配置されており、連結部9は、連結部7と同じ向きに配置されている。
【0029】
これら連結部7、8、9は、押し当て部3と押し当て部5とを近づけようとする向きの力が加えられたときは、その屈曲部が深く折れ曲がるように弾性的に屈曲する。
また、連結部7における屈曲部の内側(鋭角側)には、溝(周囲より一段落ち込んだ凹部)7aが形成されている。この溝7aは、断面が円弧型の溝であり、連結部7の表側(図1における表側)から背面側まで貫通している。更に、連結部8における屈曲部の内側(鋭角側)にも、上記溝7aと同様の溝(周囲より一段落ち込んだ凹部)8aが形成されている。
【0030】
押し当て部5の下面には、図1に示すように、係止部11が設けられている。この係止部11は、略直方体状の本体部11aと、本体部11aの両側において、斜め上向きに伸びる爪部11bとを備えてた係止クリップである。また、係止部11は、押し当て部5の下面において一段高くなった台座部5aの上に取り付けられている。
【0031】
発泡充填具1は、全体として、加熱発泡する材料から成る。その材料としては、例えば、合成樹脂、発泡剤、架橋剤、充填剤が含有されているものが挙げられる。合成樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等が挙げれる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポレオレフィン、EVA(エチレン/ビンルアセテートポリマー)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)等が挙げられる。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド等が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。
【0032】
発泡充填具1は、公知の方法、例えば、射出成形、プレス成形等の方法により、上記の形状に製造することができる。
b)次に、発泡充填具1の使用方法を図3及び図4を用いて説明する。
【0033】
発泡充填具1は、中空構造体である車両のピラー100の内部に、以下のようにして取り付けられる。
まず、図3(a)に示すように、発泡充填具1は、車両のピラー100を構成するインナーパネル101に取り付けられる。このインナーパネル101は、長方形の板状部材である底部101bと、底部101bの外周に沿って略垂直に立設された壁部101cと、壁部101cに対し略垂直に形成され、壁部101cの上端から外側に張り出したフランジ部101aとから構成される。インナーパネル101の底部101bには、孔105が設けられており、発泡充填具1の係止部11は、この孔105に差し込まれる。
【0034】
次に、図3(a)に示すように、車両のピラー100を構成するもう一つの部材であるアウターパネル103を、上方からインナーパネル101の上に被せる。このアウターパネル103は、長方形の板状部材である底部103bと、底部103bの外周に沿って略垂直に立設された壁部103cと、壁部103cに対し略垂直に形成され、外側に張り出したフランジ部103aとから構成される。
【0035】
図3(b)に示すように、アウターパネル103のフランジ部103aは、インナーパネル101のフランジ部101aと当接し、スポット溶接により固定される。その結果、インナーパネル101とアウターパネル103により、密閉された中空部107を有する中空構造体が形成される。
【0036】
このとき、発泡充填具1の弾性変形していない状態での高さは、中空部107の高さより大きいため、発泡充填具1は押し縮められ、連結部7、8、9は深く屈曲し、弾性変形する。このときの連結部7、8、9の弾性変形の仕方は、くの字型における屈曲部の角度が深くなるような屈曲である。連結部7、8、9の弾性的な屈曲により生じる押圧力により、押し当て部3はアウターパネル103に押し当てられ、押し当て部5はインナーパネル101に押し当てられている。
【0037】
次に、車両製造工程における電着液塗布工程において、ピラー100の中空部107に電着液が流れ込み、その中空部107の内壁に電着液が塗布される。
次に、電着液を乾燥させる乾燥工程において、前工程で車両に塗布された電着液を約150〜180°Cで乾燥させる。この際に、ピラー100内に配置された発泡充填具1が加熱されると、連結部7、8、9は、それらの屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、図3(c)に示すように直線形状となる。連結部7、8、9が直線形状となるように変形すると、それらの上下方向の長さは増大するので、押し当て部3には、押し当て部5から離れようとする力(図3(c)における上側に押しつける力)が加わり、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0038】
連結部7、8、9が直線形状となるように変形する理由は、以下のように推測される。
図4(a)に示すように、一定の範囲の中で、連結部7の内側を連結部7の長手方向に沿って伸びる線分Aと、連結部7の外側を長手方向に沿って伸びる線分Bとを想定した場合、連結部7の内側には溝7aが形成されている分だけ、線分Aは線分Bよりも短くなっている。そのため、連結部7が加熱され、収縮した場合、連結部7の内側である線分Aの収縮量よりも、外側である線分Bの収縮量の方が大きくなる。従って、連結部7を加熱したときには、屈曲部の外側が、内側よりも相対的に大きく収縮するので、連結部7の屈曲角度が浅くなり、連結部7は直線形状となるように変形する。また、連結部8も同様にして、加熱されたときには直線形状となるように変化する。
【0039】
尚、連結部9には凹部が形成されていないが、連結部7、8が直線形状となるように変形することにより、屈曲の角度を浅くする向きの力が加わり、やはり直線形状となるように変形する。
【0040】
電着液を乾燥させる乾燥工程において、加熱が更に進むと、発泡充填具1は発泡・硬化し、その結果、中空部107が充填されるようになる。
c)次に、本実施例1の発泡充填具1が奏する効果を説明する。
【0041】
本実施例1の発泡充填具1は、上述したように、熱が作用したときに、連結部7、8の屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具1を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0042】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0043】
以上の作用により、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【0044】
また、本実施例1では、連結部7、8、9が屈曲したくの字型に形成されているため、ピラー100を組み付ける際に、連結部7、8、9の屈曲部分の角度が小さくなるように弾性変形する。このように、連結部7、8、9において予め弾性変形する部位を設定しておくことで、連結部7、8、9のその他の部分での変形を極力抑え、ピラー100を組み付ける際の押し当て部3、5の位置ずれを抑制することができる。尚、この効果は後述する実施例2〜4においても奏することができる。
【実施例2】
【0045】
a)本実施例2の発泡充填具1の構成は、基本的には前記実施例1と同様であるが、一部において異なる。その相違点を中心に図5、図6を用いて説明する。尚、図5は、発泡充填具1の全体構成を表す斜視図であり、図6は図5における斜め上方から見た斜視図である。
【0046】
本実施例2の発泡充填具1では、連結部7における屈曲部の内側と、連結部8における屈曲部の内側とを、板状部材である接続部材13により接続している。この接続部材13は、発泡充填具1の他の部分と同一の発泡材料から成り、一体に形成されている。
【0047】
b)次に、発泡充填具1の使用方法を図7及び図8を用いて説明する。
発泡充填具1は、図7(a)に示すように、前記実施例1と同様の方法で、インナーパネル101とアウターパネル103とから構成されるピラー100の内部に設置される。
【0048】
次に、車両製造工程における電着液塗布工程において、ピラー100の中空部107に電着液が流れ込み、その中空部107の内壁に電着液が塗布される。
次に、電着液を乾燥させる乾燥工程において、前工程で車両に塗布された電着液を約150〜180°Cで乾燥させる。
【0049】
この工程で加熱されると、連結部7、8、9は、それらの屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、図7(b)に示すように直線形状となる。連結部7、連結部8が直線形状となるように変形すると、それらの上下方向の長さは増大するので、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bの方向へ押しつけられ、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0050】
ここで、加熱されたとき連結部7、8、9が直線形状となるように変形する理由は以下の通りである。図8(a)に示すように、接続部材13は、連結部7における屈曲部の内側と、連結部8における屈曲部の内側とを接続している。この接続部材13は、加熱されたときに収縮する発泡充填材から成るので、発泡充填具1が加熱されたときは、図8(b)に示すように収縮する。すると、連結部7の屈曲部と連結部8の屈曲部とは、接続部材13の収縮にともない、互いに引き寄せられ、それらの屈曲の角度は浅くなってゆく。接続部材13の収縮が更に進むと、図8(c)に示すように、連結部7及び連結部8は直線形状となるように変形する。
【0051】
電着液を乾燥させる乾燥工程において加熱が更に進むと、ピラー100内に配置された発泡充填具1は同工程の乾燥熱により発泡・硬化し、その結果、中空部107が充填されるようになる。
【0052】
c)次に、本実施例2の発泡充填具1が奏する効果を説明する。
本実施例2の発泡充填具1は、上述したように、熱が作用したときに、連結部7、8の屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0053】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0054】
以上の作用により、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【実施例3】
【0055】
本実施例3の発泡充填具1の構成は、基本的には前記実施例2と同様であるが、一部において異なる。その相違点を中心に図9を用いて説明する。
本実施例3の発泡充填具1では、図9に示すように、連結部7における屈曲部の内側に、溝7b、7cを備えている。溝7bは接続部材13の上側に位置した断面円弧型の溝であり、連結部7の手前側(図8における手前側)から裏側まで貫通している。また、溝7cは接続部材13の下側に位置し、上記溝cと同様の形状を有している。更に、連結部8にも、同様の溝8b、8cを備えている。
【0056】
本実施例3の発泡充填具1は、連結部7に溝7b、7cを備え、連結部8に溝8b、8cを備えることにより、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。つまり、発泡充填具1を加熱したとき、溝7b、7c、溝8b、8cを備えることにより、連結部7、8の屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、連結部7、8は直線形状となる。すると、連結部7、8の上下方向の長さは増大するので、押し当て部3には、上側に押しつける力が加り、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0057】
また、本実施例3の発泡充填具1は、接続部材13を備えることにより、前記実施例2と同様の効果を奏することができる。つまり、発泡充填具1を加熱したとき、接続部材13が収縮することにより、連結部7、8、の屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、連結部7、8は直線形状となる。連結部7、連結部8が直線形状となるように変形すると、それらの上下方向の長さは増大するので、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bの方向へ押しつけられ、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0058】
本実施例3の発泡充填具1は、上記のように、7b、7c、溝8b、8cと、接続部材13とを併せ持つことにより、熱が作用したときに、連結部7、8の屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0059】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0060】
以上の作用により、本発明によれば、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【実施例4】
【0061】
本実施例4の発泡充填具1の構成は、基本的には前記実施例1と同様であるが、一部において異なる。その相違点を中心に図10を用いて説明する。図10は発泡充填具1の側面(図1において、右方向、又は左方向から見た面)を表す平面図である。
【0062】
前記実施例1〜3においては、押し当て部3、5はそれぞれの長手方向軸が、押し当て部3、5の弾性変形部7との接続面に対してそれぞれ垂直方向に略一致するように配置されていたが、本実施例4では、図7に示すように、押し当て部3、5の弾性変形部7との接続面に対してそれぞれ垂直方向に偏心量δを設定してこれらを配置させている。こうした構成は、発泡充填具1を配置するピラー100の断面形状に応じて適宜変更されるものである。また、こうした構成以外に、例えばピラー100の内部が凹凸を有するような形状である場合には、この凹凸形状に追随するように押し当て部3や押し当て部5の形状を図1等の記載されている板状の平面形状から変更してもよい。こうした構成により、ピラー100内部の断面形状が複雑な場合であっても、好適に充填することができる。
【0063】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、実施例3における連結部7では、図11に示すように、屈曲している部分の外側に、垂直な平坦部7dを設けても良い。
【0064】
また、実施例1において、溝7aは、図11(a)に示すように、連結部7において屈曲している部分以外に設けても良い。同様に、溝8aも、連結部8において屈曲している部分以外に設けても良い。
【0065】
また、実施例1において、溝7aは、図11(b)に示すように、一定の深さで連結部7の長手方向に沿って連続する溝であってもよい。同様に、溝8aも上記の形状であってもよい。
【0066】
また、実施例1において、図11(c)に示すように、溝7aに加えて、溝7b1、7b2、7b3・・・を備えていてもよい。これら溝7b1、7b2、7b3・・・は、連結部7において屈曲している部分以外に設けられており、一定の深さで連結部7の長手方向に沿って連続する溝である。連結部8も連結部7と同様の形状とすることができる。
【0067】
また、実施例1において、連結部7に形成する溝は、図11(d)及び図11(e)に示すものであってもよい。ここで、図11(e)は、図11(d)における矢印方向から見た平面図である。連結部7の屈曲部における内側には、一定の間隔をおいて、断面が半球形である3個の溝7a1、7a2、7a3が形成されている。連結部8も連結部7と同様の形状とすることができる。
【0068】
また、前記実施例において、連結部7、8、9の形状は、くの字型ではなく、円弧型であってもよい。さらに、連結部7、8、9は、種々の形状のもの(例えばくの字型ではなく、円弧型)を適宜組み合わせて配置することができる。
【0069】
前記実施例では、発泡充填具1をインナパネル101に固定するために係止部11を備えていたが、この係止部11に代えて、ノックピンであってもよい。このノックピンは、例えば円柱状に形成され、孔105にこれを圧入させることで発泡充填具1を固定する。また、ノックピンに凹部や凸部を形成してもよいし、ピンの長手方向に直線状や螺状等の溝を形成してもよい。こうした形状にすることでノックピン部分の材料量を適切に設定することができるとともに、ノックピンを孔105に圧入させる際に要する力の大きさを適宜設定することができる。さらに、ノックピンの形状は円柱形に限らず、四角柱、円錐等、適宜変更することができる。
【0070】
前記実施例1、3、4において連結部7、8だけではなく、連結部9の屈曲部の内側にも凹部を設けても良い。また、連結部7、8、9のうち、いずれか1つ、または任意の2つの組み合わせについて、凹部を設けても良い。尚、凹部を設けない連結部が1又は2あっても、凹部を有する連結部が直線形状となるように変形することで、凹部を設けない連結部もやはり直線形状となるように変形する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】発泡充填具1の全体構成を表す斜視図である。
【図2】発泡充填具1を斜め上方から見た斜視図である。
【図3】発泡充填具1をピラー100に設置する方法を表す説明図である。
【図4】連結部7及び溝7aの作用を表す説明図である。
【図5】発泡充填具1の全体構成を表す斜視図である。
【図6】発泡充填具1を斜め上方から見た斜視図である。
【図7】発泡充填具1をピラー100に設置する方法を表す説明図である。
【図8】連結部7、8及び接続部材13の作用を表す説明図である。
【図9】連結部7、8及び接続部材13の作用を表す説明図である。
【図10】発泡充填具1の側面を表す平面図である。
【図11】連結部7の構成を表す説明図である。
【図12】従来の発泡充填具の構成を呼び使用方法を表す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1・・・発泡充填具;3、5・・・押し当て部;7、8、9・・・連結部;7a、7b、7c、8a、8b、8c・・・溝;11・・・係止部;13・・・接続部材;100・・・ピラー;101・・・インナーパネル;103・・・アウターパネル;105・・・孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数のパネルによって構成された車両ボディのピラー等の中空構造体の制振性、防音性等を高めるために、中空構造体の中空室内に配置され、外部加熱により発泡し、中空室を充填、遮断する発泡充填具、及び発泡充填具の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図12(b)に示すように、車両ボディーのピラーP1はインナーパネルP3及びアウターパネルP5から構成され、内部に中空室P7を有する中空構造体である。従来より、このピラーP1の中空室P7に、発泡充填具P9を配置し、加熱により発泡させ、中空室P7を充填することで、制振、防音効果を高めることが行われてきた。
【0003】
発泡充填具P9の形態としては、図12(a)に示すように、一対の板状部材P11、P13と、それらの間を連結し、弾性変形可能な連結部P15とから成るものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この発泡充填具P9の取り付けは、まず、図12(a)に示すように、インナーパネルP3とアウターパネルP5とを組み付ける前に、発泡充填具P9を中空室P7に配置しておき、次に図12(b)に示すように、インナーパネルP3とアウターパネルP5とをスポット等で溶接する。発泡充填具P9の高さは、予め中空室P7の高さより大きく設定されているため、インナパネルP3とアウタパネルP5とを組み付ける際には、発泡充填具P9の連結部P15は弾性的に押し縮められる。そして、連結部P15の弾性変形により生じる押圧力により、板状部材P11はアウターパネルP5の内壁に押しつけられ、板状部材P13はインナ−パネルP3の内壁に押しつけられる。このことにより、発泡充填具P9は、ピラーP1に対し、一定の位置に固定される。その後、発泡充填具P9を加熱して発泡させ、中空室P7を充填する。
【特許文献1】特許第3340546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした発泡充填具P9は、これに熱が作用すると一般に収縮・軟化するといった性質を有している。発泡充填具P9が収縮すると、例えば図12(c)に示すように、連結部P15のそれぞれが、板状部材P11、13との接続部を引っ張るように収縮し、これにより2つの板状部材P11、13の間隔が短くなる。さらに、連結部P15はくの字型に屈曲しているため、発泡充填具P9が軟化した際には、板状部材P11及び連結部P15の自重等により、屈曲している部分を中心にして変形し易い。そして、これら軟化・収縮による変形のため、図12(c)に示すように、板状部材P11とアウタ−パネルP5とが大きく離間する。その結果、発泡充填具P9が発泡・硬化した際に、板状部材P11とアウタパネルP5との間に隙間が形成される等、好適な充填がなされないといった不具合が生じる虞がある。
【0006】
また、こうした発泡充填具P9の熱による収縮等を考慮して予め発泡充填具P9の材料量を多く設定する等の方法をとれば、ある程度上記の不具合を抑制することはできるものの、この場合は、充填する中空室P7の体積に比して過剰な材料量を設定することになるので、充填効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、中空構造体の中空室を隙間無く充填することができる発泡充填具、及び発泡充填具の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1の発明は、
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、一対の押し当て部と、前記一対の押し当て部を連結し、弾性的に屈曲可能な連結部と、を備えるとともに、前記連結部のうちの少なくとも1つは、屈曲する際に内側となる面に、周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする発泡充填具を要旨とする。
【0009】
本発明の発泡充填具は、例えば、図3(a)に示すように、連結部7、8において屈曲する際に内側となる面に周囲より一段落ち込んだ凹部7a、8aを備えている。この構成において、凹部7a、8aが形成されている面と、凹部7a、8aが形成されていない裏側の面とでは、発泡充填具1に熱が作用し収縮する際に、単位長さあたりの収縮率は同じであっても、凹部7a、8aがない分だけ、内側面の収縮量が小さくなる。そのため、連結部7、8は、発泡充填具1に熱が作用したときには、屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0010】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0011】
以上の作用により、本発明によれば、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、中ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【0012】
尚、図3に示す発泡充填具1において、連結部9には凹部が設けられていないが、連結部7、8が上述したように直線形状となるように変形することにより、連結部9もやはり直線形状となるように変形する。
【0013】
発泡充填具1において、連結部9の屈曲部における内側にも、連結部7、8と同様の凹部を設けても良い。また、連結部7、8、9のうち、いずれか1つ、または任意の2つの組み合わせについて、凹部を設けても良い。
(2)請求項2の発明は、
前記連結部は、その少なくとも一部に略くの字型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具を要旨とする。
【0014】
本発明における連結部は、略くの字型の部分における屈曲部の角度が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(3)請求項3の発明は、
前記連結部は、その少なくとも一部に略円弧型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具を要旨とする。
【0015】
本発明における連結部は、略円弧型の部分の湾曲が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(4)請求項4の発明は、
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、一対の押し当て部と、前記一対の押し当て部を連結する複数の連結部と、を備え、前記連結部は、弾性的に屈曲可能であるとともに、前記連結部のうちの少なくとも一対は屈曲する際に内側となる面が対向するように配置され、その内側となる面が、加熱した際に収縮する材料からなる接続部材で繋がれていることを特徴とする発泡充填具を要旨とする。
【0016】
本発明の発泡充填具では、図7(a)に示すように、少なくとも一対の連結部7、8が、屈曲する際に内側となる面(屈曲する際に角度が小さくなる面)が対向するように配置され、その内側となる面が、加熱した際に収縮する材料からなる接続部材13で繋がれている。この接続部材13は、加熱されたときに収縮する発泡材から成るので、発泡充填具1が加熱されたときは収縮する。すると、連結部7と連結部8は、接続部材13の収縮にともない、互いに引き寄せられ、それらの屈曲の角度は浅くなってゆく。接続部材13の収縮が更に進むと、図7(b)に示すように、連結部7及び連結部8は直線形状となるように変形する。
【0017】
そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0018】
以上の作用により、本発明によれば、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と多し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
(5)請求項5の発明は、
前記連結部のうちの少なくとも1つにおいて、屈曲する際に内側となる面に周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする請求項4記載の発泡充填具を要旨とする。
【0019】
本発明は、連結部において屈曲する際に内側となる面に、周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることにより、請求項1記載の発明と同様の効果を奏することができる。
(6)請求項6の発明は、
前記連結部は、略くの字型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具を要旨とする。
【0020】
本発明における連結部は、略くの字型における屈曲部の角度が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(7)請求項7の発明は、
前記連結部は、略円弧型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具を要旨とする。
【0021】
本発明における連結部は、略円弧型の湾曲が深くなるように、弾性的に屈曲することができる。
(8)請求項8の発明は、
発泡充填具を取り付ける対象に貫設された取り付け孔にはめこまれ、発泡充填具を係止する係止部を、前記押し当て部に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発泡充填具を要旨とする。
【0022】
本発明の発泡充填具は、係止部を取り付け孔に係止するとともに、連結部の弾性的な屈曲により生じる押し当て力により押し当て部を中空構造体の内壁に押し当てることで、発泡充填具を中空構造体の内部に固定する。
【0023】
そのため、発泡充填具を弾性力のみで固定する場合のように、押し当て部が中空構造体の内壁を押す力を大きく設定する必要がなく、その結果として、中空構造体ににひずみが生じてしまうようなことがない。
【0024】
また、連結部の弾性力を強くする必要がないので、中空構造体に発泡充填具を取り付ける際、発泡充填具に小さい力を加えるだけで押し縮めることができ、中空構造体の組み立てが容易である。
(9)請求項9の発明は、
中空部を有する中空構造体と、請求項1〜8のいずれかに記載の発泡充填具と、から成る発泡充填具の取り付け構造であって、前記発泡充填具は、前記連結部の弾性的な屈曲により生じる押圧力により前記押し当て部が前記中空部の内壁に押し当てられた状態で、前記中空部に配置されることを特徴とする発泡充填具の取り付け構造を要旨とする。
【0025】
本発明では、請求項1〜8の発泡充填具を用いることにより、上述した作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の発泡充填具及びその取り付け構造の形態の例(実施例)を説明する。
【実施例1】
【0027】
a)まず、本実施例1の発泡充填具1の構成を図1〜2を用いて説明する。尚、図1は、発泡充填具1の全体構成を表す斜視図であり、図2は図1における斜め上方から見た斜視図である。
【0028】
発泡充填具1は、平板状部材である押し当て部3と、押し当て部3と平行に配置され、やはり平板状部材である押し当て部5とを備えている。
押し当て部3と、押し当て部5とは、略くの字型の板状部材である連結部7、8、9により連結されている。このうち、連結部8は押し当て部3、5の中央付近を連結しており、連結部7、9は、押し当て部3、5の端部付近を連結している。また、連結部7と連結部8とは、それぞれのくの字型の屈曲部における鋭角側が対向するように配置されており、連結部9は、連結部7と同じ向きに配置されている。
【0029】
これら連結部7、8、9は、押し当て部3と押し当て部5とを近づけようとする向きの力が加えられたときは、その屈曲部が深く折れ曲がるように弾性的に屈曲する。
また、連結部7における屈曲部の内側(鋭角側)には、溝(周囲より一段落ち込んだ凹部)7aが形成されている。この溝7aは、断面が円弧型の溝であり、連結部7の表側(図1における表側)から背面側まで貫通している。更に、連結部8における屈曲部の内側(鋭角側)にも、上記溝7aと同様の溝(周囲より一段落ち込んだ凹部)8aが形成されている。
【0030】
押し当て部5の下面には、図1に示すように、係止部11が設けられている。この係止部11は、略直方体状の本体部11aと、本体部11aの両側において、斜め上向きに伸びる爪部11bとを備えてた係止クリップである。また、係止部11は、押し当て部5の下面において一段高くなった台座部5aの上に取り付けられている。
【0031】
発泡充填具1は、全体として、加熱発泡する材料から成る。その材料としては、例えば、合成樹脂、発泡剤、架橋剤、充填剤が含有されているものが挙げられる。合成樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等が挙げれる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポレオレフィン、EVA(エチレン/ビンルアセテートポリマー)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)等が挙げられる。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド等が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。
【0032】
発泡充填具1は、公知の方法、例えば、射出成形、プレス成形等の方法により、上記の形状に製造することができる。
b)次に、発泡充填具1の使用方法を図3及び図4を用いて説明する。
【0033】
発泡充填具1は、中空構造体である車両のピラー100の内部に、以下のようにして取り付けられる。
まず、図3(a)に示すように、発泡充填具1は、車両のピラー100を構成するインナーパネル101に取り付けられる。このインナーパネル101は、長方形の板状部材である底部101bと、底部101bの外周に沿って略垂直に立設された壁部101cと、壁部101cに対し略垂直に形成され、壁部101cの上端から外側に張り出したフランジ部101aとから構成される。インナーパネル101の底部101bには、孔105が設けられており、発泡充填具1の係止部11は、この孔105に差し込まれる。
【0034】
次に、図3(a)に示すように、車両のピラー100を構成するもう一つの部材であるアウターパネル103を、上方からインナーパネル101の上に被せる。このアウターパネル103は、長方形の板状部材である底部103bと、底部103bの外周に沿って略垂直に立設された壁部103cと、壁部103cに対し略垂直に形成され、外側に張り出したフランジ部103aとから構成される。
【0035】
図3(b)に示すように、アウターパネル103のフランジ部103aは、インナーパネル101のフランジ部101aと当接し、スポット溶接により固定される。その結果、インナーパネル101とアウターパネル103により、密閉された中空部107を有する中空構造体が形成される。
【0036】
このとき、発泡充填具1の弾性変形していない状態での高さは、中空部107の高さより大きいため、発泡充填具1は押し縮められ、連結部7、8、9は深く屈曲し、弾性変形する。このときの連結部7、8、9の弾性変形の仕方は、くの字型における屈曲部の角度が深くなるような屈曲である。連結部7、8、9の弾性的な屈曲により生じる押圧力により、押し当て部3はアウターパネル103に押し当てられ、押し当て部5はインナーパネル101に押し当てられている。
【0037】
次に、車両製造工程における電着液塗布工程において、ピラー100の中空部107に電着液が流れ込み、その中空部107の内壁に電着液が塗布される。
次に、電着液を乾燥させる乾燥工程において、前工程で車両に塗布された電着液を約150〜180°Cで乾燥させる。この際に、ピラー100内に配置された発泡充填具1が加熱されると、連結部7、8、9は、それらの屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、図3(c)に示すように直線形状となる。連結部7、8、9が直線形状となるように変形すると、それらの上下方向の長さは増大するので、押し当て部3には、押し当て部5から離れようとする力(図3(c)における上側に押しつける力)が加わり、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0038】
連結部7、8、9が直線形状となるように変形する理由は、以下のように推測される。
図4(a)に示すように、一定の範囲の中で、連結部7の内側を連結部7の長手方向に沿って伸びる線分Aと、連結部7の外側を長手方向に沿って伸びる線分Bとを想定した場合、連結部7の内側には溝7aが形成されている分だけ、線分Aは線分Bよりも短くなっている。そのため、連結部7が加熱され、収縮した場合、連結部7の内側である線分Aの収縮量よりも、外側である線分Bの収縮量の方が大きくなる。従って、連結部7を加熱したときには、屈曲部の外側が、内側よりも相対的に大きく収縮するので、連結部7の屈曲角度が浅くなり、連結部7は直線形状となるように変形する。また、連結部8も同様にして、加熱されたときには直線形状となるように変化する。
【0039】
尚、連結部9には凹部が形成されていないが、連結部7、8が直線形状となるように変形することにより、屈曲の角度を浅くする向きの力が加わり、やはり直線形状となるように変形する。
【0040】
電着液を乾燥させる乾燥工程において、加熱が更に進むと、発泡充填具1は発泡・硬化し、その結果、中空部107が充填されるようになる。
c)次に、本実施例1の発泡充填具1が奏する効果を説明する。
【0041】
本実施例1の発泡充填具1は、上述したように、熱が作用したときに、連結部7、8の屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具1を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0042】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0043】
以上の作用により、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【0044】
また、本実施例1では、連結部7、8、9が屈曲したくの字型に形成されているため、ピラー100を組み付ける際に、連結部7、8、9の屈曲部分の角度が小さくなるように弾性変形する。このように、連結部7、8、9において予め弾性変形する部位を設定しておくことで、連結部7、8、9のその他の部分での変形を極力抑え、ピラー100を組み付ける際の押し当て部3、5の位置ずれを抑制することができる。尚、この効果は後述する実施例2〜4においても奏することができる。
【実施例2】
【0045】
a)本実施例2の発泡充填具1の構成は、基本的には前記実施例1と同様であるが、一部において異なる。その相違点を中心に図5、図6を用いて説明する。尚、図5は、発泡充填具1の全体構成を表す斜視図であり、図6は図5における斜め上方から見た斜視図である。
【0046】
本実施例2の発泡充填具1では、連結部7における屈曲部の内側と、連結部8における屈曲部の内側とを、板状部材である接続部材13により接続している。この接続部材13は、発泡充填具1の他の部分と同一の発泡材料から成り、一体に形成されている。
【0047】
b)次に、発泡充填具1の使用方法を図7及び図8を用いて説明する。
発泡充填具1は、図7(a)に示すように、前記実施例1と同様の方法で、インナーパネル101とアウターパネル103とから構成されるピラー100の内部に設置される。
【0048】
次に、車両製造工程における電着液塗布工程において、ピラー100の中空部107に電着液が流れ込み、その中空部107の内壁に電着液が塗布される。
次に、電着液を乾燥させる乾燥工程において、前工程で車両に塗布された電着液を約150〜180°Cで乾燥させる。
【0049】
この工程で加熱されると、連結部7、8、9は、それらの屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、図7(b)に示すように直線形状となる。連結部7、連結部8が直線形状となるように変形すると、それらの上下方向の長さは増大するので、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bの方向へ押しつけられ、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0050】
ここで、加熱されたとき連結部7、8、9が直線形状となるように変形する理由は以下の通りである。図8(a)に示すように、接続部材13は、連結部7における屈曲部の内側と、連結部8における屈曲部の内側とを接続している。この接続部材13は、加熱されたときに収縮する発泡充填材から成るので、発泡充填具1が加熱されたときは、図8(b)に示すように収縮する。すると、連結部7の屈曲部と連結部8の屈曲部とは、接続部材13の収縮にともない、互いに引き寄せられ、それらの屈曲の角度は浅くなってゆく。接続部材13の収縮が更に進むと、図8(c)に示すように、連結部7及び連結部8は直線形状となるように変形する。
【0051】
電着液を乾燥させる乾燥工程において加熱が更に進むと、ピラー100内に配置された発泡充填具1は同工程の乾燥熱により発泡・硬化し、その結果、中空部107が充填されるようになる。
【0052】
c)次に、本実施例2の発泡充填具1が奏する効果を説明する。
本実施例2の発泡充填具1は、上述したように、熱が作用したときに、連結部7、8の屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0053】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0054】
以上の作用により、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【実施例3】
【0055】
本実施例3の発泡充填具1の構成は、基本的には前記実施例2と同様であるが、一部において異なる。その相違点を中心に図9を用いて説明する。
本実施例3の発泡充填具1では、図9に示すように、連結部7における屈曲部の内側に、溝7b、7cを備えている。溝7bは接続部材13の上側に位置した断面円弧型の溝であり、連結部7の手前側(図8における手前側)から裏側まで貫通している。また、溝7cは接続部材13の下側に位置し、上記溝cと同様の形状を有している。更に、連結部8にも、同様の溝8b、8cを備えている。
【0056】
本実施例3の発泡充填具1は、連結部7に溝7b、7cを備え、連結部8に溝8b、8cを備えることにより、前記実施例1と同様の効果を奏することができる。つまり、発泡充填具1を加熱したとき、溝7b、7c、溝8b、8cを備えることにより、連結部7、8の屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、連結部7、8は直線形状となる。すると、連結部7、8の上下方向の長さは増大するので、押し当て部3には、上側に押しつける力が加り、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0057】
また、本実施例3の発泡充填具1は、接続部材13を備えることにより、前記実施例2と同様の効果を奏することができる。つまり、発泡充填具1を加熱したとき、接続部材13が収縮することにより、連結部7、8、の屈曲角度が浅くなってゆき、やがて、連結部7、8は直線形状となる。連結部7、連結部8が直線形状となるように変形すると、それらの上下方向の長さは増大するので、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bの方向へ押しつけられ、押し当て部3はアウターパネル103の底部103bに当接した状態を維持する。
【0058】
本実施例3の発泡充填具1は、上記のように、7b、7c、溝8b、8cと、接続部材13とを併せ持つことにより、熱が作用したときに、連結部7、8の屈曲部の角度が浅くなり、直線形状となるように変形する。そのことにより、発泡充填具を加熱したときに、連結部7、8が押し当て部3を引き下げてしまうことがなく、押し当て部3と押し当て部5との距離は維持される。
【0059】
また、発泡充填具1が熱により軟化した際にも、連結部7、8は上述したように直線形状となるように変形するので、押し当て部3や連結部7、8、9の自重により連結部7、8、9の屈曲部の屈曲が深くなってしまうことを抑制できる。
【0060】
以上の作用により、本発明によれば、発泡充填具1に熱が作用し、これが収縮・軟化した際にも、一対の押し当て部3、5の間隔を略一定に保持し、中空構造体であるピラー100の内壁と押し当て部3との間に大きな隙間が生じてしまうことを抑制できるので、ピラー100の内部を好適に充填することができる。
【実施例4】
【0061】
本実施例4の発泡充填具1の構成は、基本的には前記実施例1と同様であるが、一部において異なる。その相違点を中心に図10を用いて説明する。図10は発泡充填具1の側面(図1において、右方向、又は左方向から見た面)を表す平面図である。
【0062】
前記実施例1〜3においては、押し当て部3、5はそれぞれの長手方向軸が、押し当て部3、5の弾性変形部7との接続面に対してそれぞれ垂直方向に略一致するように配置されていたが、本実施例4では、図7に示すように、押し当て部3、5の弾性変形部7との接続面に対してそれぞれ垂直方向に偏心量δを設定してこれらを配置させている。こうした構成は、発泡充填具1を配置するピラー100の断面形状に応じて適宜変更されるものである。また、こうした構成以外に、例えばピラー100の内部が凹凸を有するような形状である場合には、この凹凸形状に追随するように押し当て部3や押し当て部5の形状を図1等の記載されている板状の平面形状から変更してもよい。こうした構成により、ピラー100内部の断面形状が複雑な場合であっても、好適に充填することができる。
【0063】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、実施例3における連結部7では、図11に示すように、屈曲している部分の外側に、垂直な平坦部7dを設けても良い。
【0064】
また、実施例1において、溝7aは、図11(a)に示すように、連結部7において屈曲している部分以外に設けても良い。同様に、溝8aも、連結部8において屈曲している部分以外に設けても良い。
【0065】
また、実施例1において、溝7aは、図11(b)に示すように、一定の深さで連結部7の長手方向に沿って連続する溝であってもよい。同様に、溝8aも上記の形状であってもよい。
【0066】
また、実施例1において、図11(c)に示すように、溝7aに加えて、溝7b1、7b2、7b3・・・を備えていてもよい。これら溝7b1、7b2、7b3・・・は、連結部7において屈曲している部分以外に設けられており、一定の深さで連結部7の長手方向に沿って連続する溝である。連結部8も連結部7と同様の形状とすることができる。
【0067】
また、実施例1において、連結部7に形成する溝は、図11(d)及び図11(e)に示すものであってもよい。ここで、図11(e)は、図11(d)における矢印方向から見た平面図である。連結部7の屈曲部における内側には、一定の間隔をおいて、断面が半球形である3個の溝7a1、7a2、7a3が形成されている。連結部8も連結部7と同様の形状とすることができる。
【0068】
また、前記実施例において、連結部7、8、9の形状は、くの字型ではなく、円弧型であってもよい。さらに、連結部7、8、9は、種々の形状のもの(例えばくの字型ではなく、円弧型)を適宜組み合わせて配置することができる。
【0069】
前記実施例では、発泡充填具1をインナパネル101に固定するために係止部11を備えていたが、この係止部11に代えて、ノックピンであってもよい。このノックピンは、例えば円柱状に形成され、孔105にこれを圧入させることで発泡充填具1を固定する。また、ノックピンに凹部や凸部を形成してもよいし、ピンの長手方向に直線状や螺状等の溝を形成してもよい。こうした形状にすることでノックピン部分の材料量を適切に設定することができるとともに、ノックピンを孔105に圧入させる際に要する力の大きさを適宜設定することができる。さらに、ノックピンの形状は円柱形に限らず、四角柱、円錐等、適宜変更することができる。
【0070】
前記実施例1、3、4において連結部7、8だけではなく、連結部9の屈曲部の内側にも凹部を設けても良い。また、連結部7、8、9のうち、いずれか1つ、または任意の2つの組み合わせについて、凹部を設けても良い。尚、凹部を設けない連結部が1又は2あっても、凹部を有する連結部が直線形状となるように変形することで、凹部を設けない連結部もやはり直線形状となるように変形する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】発泡充填具1の全体構成を表す斜視図である。
【図2】発泡充填具1を斜め上方から見た斜視図である。
【図3】発泡充填具1をピラー100に設置する方法を表す説明図である。
【図4】連結部7及び溝7aの作用を表す説明図である。
【図5】発泡充填具1の全体構成を表す斜視図である。
【図6】発泡充填具1を斜め上方から見た斜視図である。
【図7】発泡充填具1をピラー100に設置する方法を表す説明図である。
【図8】連結部7、8及び接続部材13の作用を表す説明図である。
【図9】連結部7、8及び接続部材13の作用を表す説明図である。
【図10】発泡充填具1の側面を表す平面図である。
【図11】連結部7の構成を表す説明図である。
【図12】従来の発泡充填具の構成を呼び使用方法を表す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1・・・発泡充填具;3、5・・・押し当て部;7、8、9・・・連結部;7a、7b、7c、8a、8b、8c・・・溝;11・・・係止部;13・・・接続部材;100・・・ピラー;101・・・インナーパネル;103・・・アウターパネル;105・・・孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、
一対の押し当て部と、
前記一対の押し当て部を連結し、弾性的に屈曲可能な連結部と、を備えるとともに、
前記連結部のうちの少なくとも1つは、屈曲する際に内側となる面に、周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする発泡充填具。
【請求項2】
前記連結部は、その少なくとも一部に略くの字型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具。
【請求項3】
前記連結部は、その少なくとも一部に略円弧型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具。
【請求項4】
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、
一対の押し当て部と、
前記一対の押し当て部を連結する複数の連結部と、を備え、
前記連結部は、弾性的に屈曲可能であるとともに、前記連結部のうちの少なくとも一対は、屈曲する際に内側となる面が対向するように配置され、その内側となる面が、加熱した際に収縮する材料からなる接続部材で繋がれていることを特徴とする発泡充填具。
【請求項5】
前記連結部のうちの少なくとも1つにおいて、屈曲する際に内側となる面に周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする請求項4記載の発泡充填具。
【請求項6】
前記連結部は、略くの字型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具。
【請求項7】
前記連結部は、略円弧型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具。
【請求項8】
発泡充填具を取り付ける対象に貫設された取り付け孔にはめこまれ、発泡充填具を係止する係止部を、前記押し当て部に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発泡充填具。
【請求項9】
中空部を有する中空構造体と、
請求項1〜8のいずれかに記載の発泡充填具と、から成る発泡充填具の取り付け構造であって、
前記発泡充填具は、前記連結部の弾性的な屈曲により生じる押圧力により前記押し当て部が前記中空部の内壁に押し当てられた状態で、前記中空部に配置されることを特徴とする発泡充填具の取り付け構造。
【請求項1】
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、
一対の押し当て部と、
前記一対の押し当て部を連結し、弾性的に屈曲可能な連結部と、を備えるとともに、
前記連結部のうちの少なくとも1つは、屈曲する際に内側となる面に、周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする発泡充填具。
【請求項2】
前記連結部は、その少なくとも一部に略くの字型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具。
【請求項3】
前記連結部は、その少なくとも一部に略円弧型の部分を含む部材であることを特徴とする請求項1記載の発泡充填具。
【請求項4】
外部加熱により発泡する発泡材からなる発泡充填具であって、
一対の押し当て部と、
前記一対の押し当て部を連結する複数の連結部と、を備え、
前記連結部は、弾性的に屈曲可能であるとともに、前記連結部のうちの少なくとも一対は、屈曲する際に内側となる面が対向するように配置され、その内側となる面が、加熱した際に収縮する材料からなる接続部材で繋がれていることを特徴とする発泡充填具。
【請求項5】
前記連結部のうちの少なくとも1つにおいて、屈曲する際に内側となる面に周囲より一段落ち込んだ凹部を備えることを特徴とする請求項4記載の発泡充填具。
【請求項6】
前記連結部は、略くの字型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具。
【請求項7】
前記連結部は、略円弧型の板状部材であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡充填具。
【請求項8】
発泡充填具を取り付ける対象に貫設された取り付け孔にはめこまれ、発泡充填具を係止する係止部を、前記押し当て部に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の発泡充填具。
【請求項9】
中空部を有する中空構造体と、
請求項1〜8のいずれかに記載の発泡充填具と、から成る発泡充填具の取り付け構造であって、
前記発泡充填具は、前記連結部の弾性的な屈曲により生じる押圧力により前記押し当て部が前記中空部の内壁に押し当てられた状態で、前記中空部に配置されることを特徴とする発泡充填具の取り付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−69342(P2006−69342A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254591(P2004−254591)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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