説明

発泡剤及び発泡材の製造方法

【課題】 従来のガラスは、固体を溶融して製造しており、水溶液からのガラス製造はされていなかった。水ガラスを加熱すると発泡する事は知られていたが水に安定な発泡体を形成する方法は示されていなかった。リサイクルが容易な発泡材の供給がされていなかった。
【解決手段】珪酸塩とホウ酸塩とは水溶液で容易に混合でき、加熱すると発泡して発泡体を与える。この時の加熱温度を調整する事により、熱とショックに強いホウ珪酸ガラスの発泡体を得る事が出来る。ガラスと組成が同じなので、ガラスとしてのリサイクルが可能であり、断熱、防音、容器など広範囲に使用可能な材料を提供できる。珪酸塩とホウ酸塩との水溶液には金属酸化物を添加する事も容易で、これによる発泡体はセラミック発泡体として耐熱効果の増強を図ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル可能な発泡材の原料及び其れを用いた発泡材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの基本的組成はNaO−CaO−SiO系でこの組成を基本として、使用目的に応じた組成が開発されている。熱やショックに強いホウ珪酸ガラスにはBが含まれている。ガラスの一般的製法は原料配合→溶融→成形→徐冷→加工であり、その主たる原料はケイ砂SiO,ソーダ灰NaCO、石灰石CaCO、鉛丹Pb、ホウ酸B、ホウ砂Naなどである。これらの原料を700℃以上に加熱し、溶融してガラスとする。
【0003】
ガラスの強度は基本物質である珪素と酸素との架橋性に依存していると考えられており、珪酸以外の他の酸化物が混在するとその酸化物を取り込んだ珪酸の網目構造が取られ安定化すると考えられている。ホウ酸も珪酸と同様に網目構造をとる物質であり、珪酸とホウ酸が適度な割合で混合溶融されると強度の強いホウ珪酸ガラスが得られる。このためには原料となる珪酸ソーダやホウ砂は700℃以上に高温加熱して溶融され均一混合される。ガラスはその性質上非常に粘度が高く、温度の上昇とともにその粘度は低下して流動化する。そのため、異なる固体物質を溶融してほぼ均一に混合する為には非常に高温に加熱する必要がある。NaSiOの融点は1088℃であり、Naの融点は966℃(常用化学常数表、廣川書店、1963)である。これらの化合物を均一に溶融するには融点付近までの加熱が必要である事が容易に推測される。
【0004】
水ガラスは珪酸ナトリウムの濃厚水溶液であり、一般に無機接着剤や土壌改良剤、洗剤、撥水剤などと広範囲に利用されている。水ガラスは水と任意に混合する事が出来る。珪酸ナトリウムは日本工業規格に収載されており(日本工業規格、K1408)、水あめ状の1号、2号、3号及び固形のメタ珪酸ナトリウムに分類規定されている。ホウ砂は水に可溶な結晶で、加温する事により水への溶解度を増す事が出来る。ホウ砂は日本薬局方に収載されており、工業的にも多方面で使用されている。
【0005】
水ガラスを加熱すると水が沸騰するとともに水ガラスは泡立ち発泡体となる。この時点では水ガラスは単に水分を失って珪酸ナトリウムに成ったのであり、水が沸騰する程度の温度で作られた発泡体は水に徐々に溶解する。
【0006】
発泡材は多くの分野例えば建築・構造物・食品トレーなど広範囲に使用されている。発泡材は多くはその特性から断熱材として使用されており、その素材も多種多様である。素材原料から大まかに無機発泡性物質による物と有機発泡性物質からなるものと、更には両者を組み合わせた物など多くのものが存在する。無機系発泡材にはガラスを主体とした物が主で、それに酸化チタンやアルミナあるいはシリカなどを混入し成型して発泡体としている。有機珪素化合物もその発泡性質を利用して、それに酸化チタンやアルミナあるいはシリカなどを混合し、成型して発泡体として使用されている。有機系発泡材には有機ポリマー即ちポリウレタンやポリスチレンなどを発泡させて成型している。無機系発泡体は断熱効果の点では有機系発泡体に劣る為両者を混合し、さらにはそれにロックウールやガラス繊維などを加えた断熱材などが作られている。
【0007】
しかしながら、環境問題を考慮したときに製品の容易なリサイクルには何れの場合にも程遠く、特に複数の化合物を混合した発泡体であるとその再利用は困難を極める。これらの観点から安価で、成型が容易で、安定性があり優れた断熱効果があり、リサイクルの容易な発泡材の開発が待たれていた。
【0008】
【特許文献1】特開2005−193621
【特許文献2】特開2002−179476
【特許文献3】特開2001−48585
【特許文献4】特開2000−185961
【特許文献5】特開平10−025174
【0009】
特許文献1には水ガラスを非樹脂系コーティング材として他の断熱材を固定化する接着剤としての使用を開示しているが、それ自体が完全な発泡体を構成するものではない。
【0010】
特許文献2には核結晶化防止剤として水ガラスが用いられており、この他にガラス粉、発泡剤を混合して発泡させ断熱材をつくっており、従来の泡ガラス製造法と類似性が高い方法が開示されている。
【0011】
特許文献3にはガラスのリサイクル率を向上させる目的でガラス粒にでん粉及び水ガラスを加えた発泡体と、ガラス粒に水ガラスを混和して得られる連通多孔体とを積層し、加熱して複合リサイクルボードを作成する方法を開示している水ガラスは無機結合材としての役割を果たしている。
【0012】
特許文献4には水ガラスに無機質の骨材を混和して軽量板を800℃で加熱して作る方法を開示しているが、水ガラスの使用量は骨材に対し15%未満で水ガラスそのものを加工使用するものではない。
【0013】
特許文献5にはセラミック発泡体(二酸化珪素、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミニウム)およびフライアッシュに水ガラスを10〜30%混合した発泡体を作り、コンクリート、鉄骨などの耐熱被覆材とする方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、リサイクルが容易に可能で且つ熱に比較的安定な無機発泡体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、従来のガラス製法である固体珪酸ソーダ及びホウ酸ナトリウム等を溶融してガラスを作るのではなく、液状で珪酸ソーダ及びホウ酸ナトリウム等を混和均一化し、水ガラスを加熱すると発泡する事を利用して、発泡させながら安定な発泡ガラスを作る事にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、熱やショックに強いホウ珪酸ガラス原料を溶液状態で作成しえ、容易に成型が可能で、広範囲な分野に利用できる発泡体を作成できる技術を提供できる。成型に必要な熱エネルギーは従来の加工法の二分の一から三分の一で充分であり、ガラスと同じ組成なのでガラスとしてのリサイクル可能な製品を提供できる。本発明のホウ珪酸ガラス溶液に無機酸化物を混和して発泡体を作る事により、セラミック系の発泡体を容易に作成する技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
珪酸ナトリウムとホウ砂は水溶液として調整する事が出来、溶液状態で容易に混合均一化することが出来る。この混合物は加熱すると水ガラスと同様に水の沸騰と共に発泡体を与える。この発泡体はホウ酸と珪酸とが含まれているために更なる高温での加熱過程でホウ珪酸ガラスへと変化し水に不溶性となることを見出した。
【0018】
ガラス製造と同様に、ガラスの基本物質である珪酸ナトリウムの中にホウ砂のみならず無機酸化物(例えば酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄など)を混在させる事が出来る。この事により、出来る発泡体がセラミック化して熱絶縁体や磁気絶縁体としての性能を持たせる事が出来る。
【0019】
発泡体を作成する時に、より細かな泡を作る事は熱絶縁体としてより効果的な発泡体を得る事と成る。そのために、水ガラスの中にガス発生剤となる過酸化ナトリウム、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸塩、燐酸アンモニウム塩などを加える事も出来る。
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定される物ではない。
【実施例1】
【0021】
水ガラス(珪酸ナトリウム、JIS規格3号)3.76kgとホウ砂200gを水1リットルに溶解した液を混和して比重1.31の溶液を得た。この液400ccを280〜300℃、10kg/cmで2時間半処理して20cmX20cmX4cmの発泡材を得た。この発泡材は密度1.22(kg/m)で熱伝導率0.050(W/m・K)(熱伝導率計TC−31,京都電子工業株式会社)であり、曲げ強さと圧縮強さは夫々19.89(N/cm)及び25.46(N/cm)(オートグラフAG−I100kN、島津製作所)であった。この板材を750℃30分加熱しても変化は見られなかった。発泡体を水中に24時間以上埋没させても崩壊する事はなかった。
【実施例2】
【0022】
水ガラス(珪酸ナトリウム、JIS規格3号)3.76kgとホウ砂200gを水1リットルに溶解した液を混和して比重1.31の溶液を得た。この液3gを280〜300℃、30kg/cmで処理して直径15cmの光沢のある白色トレーを得た。このトレーに体液の付いている肉片を乗せて放置しても体液がトレーに付着しみこむことはなかった。尚、トレーに肉片を乗せて加熱用ラップで覆い、電子レンジ内で加熱調理してもトレーが変形する事は認められなかった。
【実施例3】
【0023】
水ガラス(珪酸ナトリウム、JIS規格1号)94gとホウ砂5gを水25mlに溶解した液を混和して比重1.44の溶液を得た。この液を100℃以上に加熱すると発泡を開始し発泡体が得られた。
【実施例4】
【0024】
水ガラス(珪酸ナトリウム、JIS規格3号)500gに10%過炭酸ナトリウム水溶液50gを加え混和する。この溶液は比重1.37であり、加熱すると微細な泡を発生して発泡体を与えた。この液体と実施例1の液体を等量混合すると比重1.35となり、加熱すると微細な発泡をして発泡体が得られた。
【実施例5】
【0025】
水ガラス(珪酸ナトリウム、JIS規格3号)3.76kgとホウ砂200gを水1リットルに溶解した液を混和して比重1.31の溶液を得た。この液100ccに水酸化マグネシウムを10g添加して混和する。この混合物を加熱するときめ細かな発泡体が得られる。この発泡体は1000℃の加熱でも安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸塩及びホウ酸塩の水溶液を主体とする無機材料による発泡剤
【請求項2】
請求項1の無機材料に過酸化水素、過炭酸塩、過ホウ酸塩などの過酸化物含む発泡剤
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれかの発泡材料を加熱して発泡させて発泡体を得る製造方法。
【請求項4】
請求項1の発泡剤に酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属酸化物を混合、加熱発泡させた発泡体の製造方法。
【請求項5】
発泡剤を加熱発泡させる時の温度が100℃から1000℃の間で好ましくは250℃から350℃で発泡させ、表面を軟化点付近もしくは700〜1000℃で処理する発泡材の製造方法。

【公開番号】特開2007−284325(P2007−284325A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133081(P2006−133081)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(501332688)株式会社 エー・イー・エル (6)
【Fターム(参考)】