説明

発泡原紙及びそれを用いた断熱紙容器

【課題】熱可塑性樹脂層/紙基材/熱可塑性樹脂層からなる原紙を加熱し、紙の含有水分の蒸気圧により表面の熱可塑性樹脂層を発泡させ断熱層を形成した紙カップにおいて、紙基材への印刷層の絵柄が見えやすい発泡抑制部を簡単に形成できる断熱性容器を提供する。
【解決手段】少なくとも外面側から加熱により発泡する外側熱可塑性樹脂層5、紙を主体とする基材層2、内側熱可塑性樹脂層6を備えた発泡原紙1であって、前記外側熱可塑性樹脂層5の表面の一部に切り込み7を設け、前記発泡原紙1を加熱した際に前記切り込み7を設けた部分に発泡抑制部8を形成することを特徴とする発泡原紙1とそれを用いた断熱紙容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡原紙およびそれを用いた断熱紙容器に関するものであり、さらに詳しくは、熱可塑性合成樹脂の発泡層を有する発泡加工紙において部分的に非発泡部を設けた断熱カップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱性容器としては、発泡性を持つ合成樹脂、とくに発泡ポリスチレン樹脂を原料とするものが、多く使用されている。そして、最近、紙の両面がポリエチレン樹脂層で積層された材料を使用した紙カップで、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させた発泡紙カップも使用され始めている。
前述の断熱性容器において、発泡ポリスチレン樹脂による容器は、発泡剤を加えた樹脂を成形加工することによって製造され、断熱性では優れているが、使用後、廃棄物として処理しにくく、環境対応の点で問題があった。また、表面の平滑性が低く、印刷適性に劣るなどの欠点もあった。
【0003】
その他に断熱性容器としては、非発泡性硬質プラスチック容器の外周に発泡樹脂シートを巻きつけたものや容器にコルゲート材を巻きつけたものに熱収縮性プラスチックフィルムでシュリンク包装を施したものなどが知られている。
例えば、熱発泡性物質が塗布されている熱収縮性プラスチックフィルムを既製の容器の表面に被覆した後、これを加熱処理に付すことにより、熱収縮性プラスチックフィルムを容器の外側表面に密着させると同時に、熱収縮性プラスチックフィルムに塗布されている熱発泡性物質を発泡させることからなる方法(特許文献1)が開示されている。
【0004】
しかしながら、この方法においては、熱発泡性物質が塗布されている熱収縮性プラスチックフィルムを既製の容器の表面に被覆する工程が容易でなく、このための手間が煩雑であり、使い捨てを目的とした安価な容器を得る際の製造方法としては十分に適応し得ないのが実情である。そのような断熱容器はその製造において、発泡樹脂シートやコルゲート材を巻く工程と熱収縮性プラスチックフィルムで包装する工程とがあって手間のかかるものであった。
【0005】
これらの断熱性容器に対して、断熱性があり、印刷適性があり、使用後は廃棄物として捨てやすく、そして製造工程が簡単でコストが安いという特徴を持っているのが、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させた紙カップである。
この発泡紙カップは、熱可塑性樹脂/紙基材/熱可塑性樹脂のような構成の発泡原紙を用いて、紙に含まれる水分を加熱により蒸発気化させてその蒸気圧により、加熱で軟化した熱可塑性樹脂層が膨張発泡することにより生じた空間を断熱層とする発泡断熱積層体が知られており、カップ入り即席麺容器やコーヒー等のホット飲料容器に広く使用されている(特許文献2、特許文献3)。
【0006】
上記の、ポリエチレン樹脂加工紙を加熱し、紙の含有水分の蒸気圧により、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させ断熱層を形成した紙カップは、紙基材への印刷層が発泡部分の下部(内側)になるので絵柄が見えにくく、また、発泡層表面が平滑性に欠けるために印刷が綺麗に出来ないという問題があった。
【0007】
印刷領域を除いた部分のみに発泡する熱可塑性樹脂層を形成するという手法も提案されているが、この手法は大量生産する上では困難な工程を追加せざるを得ないという欠点を有していた。
さらに、加熱により軟化した熱可塑性樹脂層(外面)の流動性を抑えることが可能なコーティング剤からなる皮膜樹脂層を発泡層となる熱可塑性樹脂層上にもうけて熱可塑性樹脂層の軟化流動を抑えることにより発泡を抑制するという方法も提案されているが、この方法では発泡抑制の程度の調整が困難であった(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭58−52904号公報
【特許文献2】特開平5−50536号公報
【特許文献3】特開平11−314629号公報
【特許文献4】特開平10−226003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、熱可塑性樹脂層/紙基材/熱可塑性樹脂層からなる原紙を加熱し、紙の含有水分の蒸気圧により表面の熱可塑性樹脂層を発泡させ断熱層を形成した紙カップにおいて、紙基材への印刷層の絵柄が見えやすい発泡抑制部を簡単に形成できる断熱性容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、少なくとも外面側から加熱により発泡する外側熱可塑性樹脂層、紙を主体とする基材層、内側熱可塑性樹脂層を備えた発泡原紙であって、前記外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に切り込みを設け、前記発泡原紙を加熱した際に前記切り込みを設けた部分に発泡抑制部を形成することを特徴とする発泡原紙である。
【0011】
また、請求項2の発明は、基材層の表面に印刷層を設けて印刷領域上の外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に複数の切り込みを設けたことを特徴とする請求項1に記載の発泡原紙である。
【0012】
また、請求項3の発明は、印刷領域上の外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に設けた複数の切り込みの間隔が6mmから8mmの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の発泡原紙である。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡原紙を用いて作成したことを特徴とする断熱紙容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の発明によれば、少なくとも外面側から加熱により発泡する外側熱可塑性樹脂層、紙を主体とする基材層、内側熱可塑性樹脂層を備えた発泡原紙であって、前記外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に切り込みを設け、前記発泡原紙を加熱した際に前記切り込みを設けた部分に発泡抑制部を形成することを特徴とする発泡原紙であることによって、発泡原紙を容器に組み立ててから加熱した際に、前記の切り込みを設けた部分の近傍のみが発泡を抑止されて低発泡領域となる。
【0015】
これによって切り込みの設けられていない領域の容器外面には断熱性を有する発泡層が形成され、同時にそれ以外の領域の容器外面には、切り込みを通して紙基材から発生した水蒸気や熱せられた空気が逃散することによって発泡が抑制され、低発泡の発泡層もしくは非発泡層が形成される。
【0016】
このように容器外面に高発泡領域と隣り合った低発泡領域を形成することにより生じる
段差により、容器を手で持った時にある程度の断熱性を保持しながら滑りにくくなるという効果のある断熱容器を簡単に作ることが出来る。
【0017】
本発明の請求項2の発明によれば、基材層の表面に印刷層を設けて印刷領域上の外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に複数の切り込みを設けた発泡原紙を用いることによって、容器外面の印刷層の絵柄が透視可能な低発泡の発泡層領域を印刷領域上に形成することが出来る。
これによって、容器の印刷絵柄が外側から見えて、かつ、ある程度の断熱性を保持しながら滑りにくい断熱容器とすることが出来る。
【0018】
また、請求項3の発明によれば、印刷領域上の外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に設けた複数の切り込みの間隔が6mmから8mmの範囲である発泡原紙を用いることによって、断熱性と滑り防止性を保持しながら、下地絵柄の透視が可能な範囲の低発泡の発泡層領域を印刷領域上に形成することが出来る。
【0019】
上記複数の切り込みの間隔が5mm以下の場合には、切り込みからの水蒸気の逃散が多いために、切り込みの設けられた領域の熱可塑性樹脂層は発泡しないで非発泡の状態に留まる。この結果、下地絵柄の透視は鮮明に出来るようになるが、断熱性と滑り防止性は劣化してしまう。
また、上記複数の切り込みの間隔が8mmを超えてしまうと、切り込みからの水蒸気の逃散が少ないために、切り込みの設けられた近辺の領域の熱可塑性樹脂層は発泡領域と非発泡領域が混在する状態となり、下地絵柄の透視が不鮮明になるだけでなく、断熱性も不安定になってしまう。
【0020】
また、請求項4の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡原紙を用いて作成した断熱性容器は、熱可塑性樹脂層/紙基材/熱可塑性樹脂層からなる原紙を加熱し、紙の含有水分の蒸気圧により表面の熱可塑性樹脂層を発泡させ断熱層を形成した紙カップにおいて、紙基材への印刷層の絵柄が見えやすい発泡抑制部を簡単に形成できる断熱性容器を提供することが出来る。
【0021】
本発明の断熱性容器では表面の領域によって発泡厚さを変えることが出来るので、これを利用して発泡表面の凹凸によって絵柄を表現することも出来、印刷絵柄の透視以外の表現効果をあげることも出来る。この場合は必ずしも印刷絵柄と発泡抑制領域が同調する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)の一例の断面模式図。(a)はカップ成形後加熱前、(b)は加熱発泡後。
【図2】従来の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)の一例の断面模式図。(a)はカップ成形後加熱前、(b)は加熱発泡後。
【図3】本発明の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)の一例の拡大断面模式図。(a)はカップ成形後加熱前、(b)は加熱発泡後。
【図4】本発明の発泡原紙の切り込みの形状(配置)例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の発泡原紙及びそれを用いた断熱紙容器の実施形態の例を、必要であれば図面を援用して説明する。
【0024】
本発明の発泡原紙は紙基材から蒸発気化する水分により発泡する熱可塑性樹脂層に切り込みを入れ、発生した水蒸気を外部に逃がすようにすることで、熱可塑性樹脂の発泡を抑
制する紙カップ等の断熱容器の発泡原紙である。
この原紙の発泡を抑制したい領域に切り込みを複数入れることにより、切り込みを入れていない領域に比べて熱可塑性樹脂層の発泡を抑えることが出来る。
【0025】
この発泡原紙は板紙等の紙基材の両側をポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂でラミネートした積層体から構成される。
断熱層は通常、容器の外側に形成するのでこの熱可塑性樹脂も外側は低融点の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を用い、内側には高融点の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)を用いる場合が多い。
【0026】
このように紙基材の両側の熱可塑性樹脂層に融点差を設けることによって、加熱によって発生した紙基材中の水蒸気は内側の熱可塑性樹脂層によってブロックされるので先に溶融状態となった外側の熱可塑性樹脂層中に多数の気泡を形成して断熱性のある発泡層となる。
【0027】
たとえば、外側熱可塑性樹脂層が融点105℃のポリエチレン樹脂であり、内側熱可塑性樹脂層が融点130℃のポリエチレン樹脂層である場合、発泡原紙を両方の熱可塑性樹脂の融点の中間の温度まで加熱することによって、外側のポリエチレン樹脂層が発泡して断熱層を形成する。
【0028】
本発明の発泡原紙では、上記の外側熱可塑性樹脂層の一部に紙基材まで達する深さの切り込みを入れることによって、容器加熱時に紙基材中の水蒸気の逃散する部分を設け、発泡層の厚みの小さい箇所を部分的に作ることが出来る。
まず、本発明の発泡原紙について紙カップの場合を例にとって図1及び図3を参照しながら説明する。従来技術との比較のために必要に応じて図2を援用する。
【0029】
図1には、本発明の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)の一例の断面模式図を示した。カップのトップ部分とボトム部分は簡略化してあり、本発明の切り込みを入れた胴部の断面を上部をトップ部分とする方向で示してある。
図1(a)は胴部に発泡原紙のブランクスを用いてカップ状に成形後加熱前の状態を、(b)は加熱発泡後の状態を示している。
【0030】
図3には、本発明の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)の一例を胴部の切り込みを入れた近辺の拡大断面模式図で示した。図3(a)はカップ成形後加熱前、(b)は加熱発泡後を示す。
図2には、従来の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)の一例の断面模式図を示した。図2(a)はカップ成形後加熱前、(b)は加熱発泡後を示す。
【0031】
図1に示したように、本発明の発泡原紙(1)は、紙基材(2)の外面側に印刷層(3)が部分的に設けられていて、これらの層が外側熱可塑性樹脂層(5)によって被覆されており、紙基材(2)の内面側には内側熱可塑性樹脂層(6)がある、積層構造を有するブランクスからなっている。
また、紙基材(2)と内側熱可塑性樹脂層(6)との間には、バリア性などを上げるためにアルミニウムなどの金属蒸着層、シリカなどの無機蒸着層などのバリア層を設けることもできる。
【0032】
本発明の発泡原紙(1)においてはさらに外側熱可塑性樹脂層(5)の表面の一部に通常は複数の切り込み(7)を設け、カップ成形後に発泡原紙(1)を加熱した際に切り込み(7)を設けた領域の近傍部分のみが発泡を抑制されて低発泡領域を形成する発泡原紙としている。
切り込み(7)を設けていない従来の発泡原紙を用いた場合(図2(a))にはカップ成形後に発泡原紙(1)を加熱発泡させると図2(b)に示すようにカップ胴部(13)の外側熱可塑性樹脂層(5)が発泡して断熱性のあるほぼ均一な厚みの発泡層(4)を形成する。
【0033】
本発明の発泡原紙(1)においては外側熱可塑性樹脂層(5)に設けられた複数の切り込み(7)を設け、カップ成形後に発泡原紙(1)を加熱した際に切り込み(7)を設けた領域の近傍部分のみが発泡を抑制されて低発泡領域(8)を形成する(図1(b))。
これによって、カップ外面に低発泡領域(8)が低くなった段差のある発泡層(4)が形成されて、断熱性を保持しながら滑りにくいカップが得られるのみならず紙基材(2)の表面に印刷された印刷層(3)の絵柄が透視可能になり必要情報の獲得や意匠性の向上という効果を得ることが出来る。
【0034】
図3に示したように、本発明の発泡原紙(1)の外側熱可塑性樹脂層(5)に設けられる、紙基材(2)に達する切り込み(7)の近傍の発泡層(4)の断面は、紙基材(2)内部の水蒸気が外部へ逃散する切り込みの位置において最も薄く、そこから離れるにつれて厚くなる形状を有している。
従って、孤立した切り込み(7)が点在する配置の発泡原紙を用いると、切り込み位置の極近傍のみが線状あるいは点状に膜厚の薄い発泡層が得られてその部分だけ紙基材(2)あるいは印刷層(3)の色が透視できるカップとなる。図4の(a)に孤立した切り込み(7)が点在する配置の一例を胴部材ブランクスの模式図で示した。
【0035】
互いに近接した複数の切り込み(7)を設けた場合には複数の切り込みで形成される領域の得られた発泡層が全体に発泡抑止領域(8)となり発泡層(4)のなかでも低発泡の薄い膜厚の層となる。
これによって発泡抑止領域(8)は幅を持った領域として紙基材(2)あるいは印刷層(3)の色が透視できるカップとなる。
図4の(b)には互いに近接した複数の切り込み(7)を設けた場合の配置の一例を胴部材ブランクスの模式図で示した。
【0036】
ある程度の断熱性と滑り防止性を保持しながら、紙基材(2)表面の印刷層(3)を透視できるためには印刷領域上の熱可塑性樹脂層(5)の表面の一部に設けた複数の切り込み(7)の間隔が6mmから8mmの範囲であることが望ましい。
上記複数の切り込み(7)の間隔が小さい場合には、切り込みからの水蒸気の逃散が多いために、切り込みの設けられた領域の外側熱可塑性樹脂層(5)は発泡しないので絵柄の透視は鮮明に出来るようになるが、必要な機能である断熱性と滑り防止性は劣化してしまう。
上記複数の切り込み(7)の間隔が8mmを超えてしまうと、切り込みの設けられた近辺の領域の発泡層(4)は下地絵柄の透視が不鮮明になるだけでなく、断熱性も不安定になってしまう。
切り込み(7)の深さ(h)は紙基材(2)に達する程度が適当である。
【0037】
紙基材(2)の坪量は、200〜450g/mの範囲であることが、紙容器の製造上好ましい。また、紙の含水率は、3〜10%、好ましくは、5〜8%の範囲であることが望ましい。
【0038】
印刷層(3)は、前述のように、紙基材(2)の表面に施される。この印刷層(3)は、通常は部分的に着色インキで印刷される。
印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0039】
印刷層(3)は、必ずしも着色インキでなくともよい。たとえば、発泡厚さの差による凹凸で模様表現をしたい場合などは透明ニスで紙基材(2)の表面に設けられる。透明ニスを塗布する方法としては、公知の印刷やコーティングによる方法がある。
透明ニスの組成は、体質顔料を含んだ合成樹脂が主成分となっている。合成樹脂としては、硝化綿、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、アクリル樹脂、これらの2種類以上を混合した樹脂などを用いることができる。
【0040】
外側熱可塑性樹脂層(5)および内側熱可塑性樹脂層(6)を形成する熱可塑性樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニール共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリスチレン樹脂などを用いることができる。
【0041】
この外側熱可塑性樹脂層(5)および内側熱可塑性樹脂層(6)は、印刷が施された紙基材層(2)の外面と内面に積層される。
積層する方法には、樹脂を熱溶融して塗布する押し出しコーティング法、あるいはフィルムになったものを貼り合わせるラミネート法などがある。発泡層となる外側熱可塑性樹脂層(5)の厚さは、40〜100μmの範囲が好ましい。
40μm未満または100μmを越えると発泡しにくくなる。一方、内側熱可塑性樹脂層(6)の厚さは、10〜50μmの範囲が好ましい。
【0042】
また、内側熱可塑性樹脂層(6)を発泡させずに、外側熱可塑性樹脂層(5)だけを発泡させるために、内面からの水蒸気の蒸発を防ぐ方法として、紙基材(2)と内側熱可塑性樹脂層(6)の間に、アルミニウム箔などのバリア層を設ける方法や、あるいは内側に、外側熱可塑性樹脂より軟化点の高い熱可塑性樹脂を用いる方法がある。後者の場合、例えば、ポリエチレン樹脂を例にとれば、軟化点の高い高密度ポリエチレン樹脂を内側熱可塑性樹脂として用いることができる。
【0043】
本発明の発泡原紙を用いた断熱性容器の製造は、たとえば、表面に着色インキによる印刷層を有する紙基材の表,裏両面に対して熱可塑性樹脂層を積層することにより、熱可塑性樹脂層/着色印刷層を有する紙基材/熱可塑性樹脂層からなるサンドウィッチ構造の紙容器成形用のブランク板(発泡原紙)を得る工程と、紙容器成形用のブランク板による紙容器の成形を行なう工程と、得られた紙容器を加熱し、前記紙基材に含有されていた水分を蒸発させると共に紙基材内の空気を膨張させることにより、前記紙容器成形用のブランク板に形成されている熱可塑性樹脂層と紙基材との間に多数気泡を含む発泡構造を形成して断熱層を形成する工程とからなっている。
【0044】
この時に着色インキによる印刷層の表面に施された熱可塑性樹脂層の領域に、紙基材に届く深さの切り込みを最初の工程もしくは第二の工程で設けてあることによって、第三の工程での加熱発泡工程に於いて、着色印刷層部分においては他の領域よりも発泡が抑制されて断熱層の厚さが薄くなる。
【0045】
この切り込みはトムソン刃によるブランクスの打ち抜きと同時に紙基材層の層間まで入れることが出来るしロータリーダイカッター(円筒上に刃を設置した)を用いても良く公知の方法で入れることが出来る。
以下実施例により本発明の実施形態の例を説明する。
【実施例】
【0046】
<実施例1>
紙基材として、坪量300g/mのカップ原紙を用い、その表面に印刷インキカルトンX(東洋インキ製造)を用いてオフセット印刷法にて絵柄印刷を行い、絵柄印刷面に75μm厚みの低密度ポリエチレン樹脂層を、反対面に30μm厚みの高密度ポリエチレン樹脂層をラミネートして積層体を作成した。
この積層体にロータリーダイカッターで絵柄印刷領域の低密度ポリエチレン樹脂層表面から紙基材層に達する切り込みを刻設すると同時に所定の形状に打ち抜きブランクスを作成した。
【0047】
このブランクスをカップ成形機で成形したのち、120℃で5分間加熱して発泡させ、断熱紙カップとした。この断熱紙カップは絵柄印刷領域の絵柄が透視できて品名や消費期限などの情報を容易に読み取ることが出来た。
さらに、この断熱紙カップに熱湯を注ぎ素手で持って断熱性と滑り防止性を評価した。断熱性は5段階評価で4と優れており、滑り防止性は同じく5と高く不安なく持つことが出来た。
【0048】
<実施例2>
紙基材として、坪量300g/mのカップ原紙を用い、その表面に印刷インキカルトンX(東洋インキ製造)を用いてオフセット印刷法にて全面ベタ印刷を行い、印刷面に75μm厚みの低密度ポリエチレン樹脂層を、反対面に30μm厚みの高密度ポリエチレン樹脂層をラミネートして積層体を作成した。
この積層体にロータリーダイカッターで低密度ポリエチレン樹脂層表面から紙基材層に達する孤立した切り込みからなる三角形を刻設すると同時に所定の形状に打ち抜きブランクスを作成した。
【0049】
このブランクスをカップ成形機で成形したのち、120℃で5分間加熱して発泡させ、断熱紙カップとした。この断熱紙カップは印刷層の色が切り込みの三角形の部分のみ透視できて発泡と同調したように見えるソフトな意匠効果を感じさせるものであった。
さらに、この断熱紙カップに熱湯を注ぎ素手で持って断熱性と滑り防止性を評価した。断熱性は5段階評価で4と優れており、滑り防止性は同じく5と高く不安なく持つことが出来た。
【0050】
<比較例1>
紙基材として、坪量300g/mのカップ原紙を用い、その表面に印刷インキカルトンX(東洋インキ製造)を用いてオフセット印刷法にて絵柄印刷を行い、絵柄印刷面に75μm厚みの低密度ポリエチレン樹脂層を、反対面に30μm厚みの高密度ポリエチレン樹脂層をラミネートして積層体を作成した。
この積層体をロータリーダイカッターで所定の形状に打ち抜きブランクスを作成した。
【0051】
このブランクスをカップ成形機で成形したのち、120℃で5分間加熱して発泡させ、断熱紙カップとした。この断熱紙カップは絵柄印刷領域の絵柄が発泡層によって透視できなくなっており、印刷情報を読み取るのが困難であった。
さらに、この断熱紙カップに熱湯を注ぎ素手で持って断熱性と滑り防止性を評価した。断熱性は5段階評価で1と劣っており、滑り防止性は同じく殆ど感じられなかった。
【0052】
実施例1、2と比較例1の結果から、本発明の発泡原紙を用いた断熱紙容器(紙カップ)では、カップ外側から紙基材印刷層の絵柄が見えやすい発泡抑制部を簡単に形成できる。
さらに表面の領域によって発泡厚さを変えることが出来るので、これを利用して発泡表
面の凹凸によって絵柄を表現することも出来、印刷絵柄の透視以外の表現効果をあげることも出来る。
【符号の説明】
【0053】
1…発泡原紙
2…紙基材
3…印刷層
4…発泡層(断熱層)
5…外側熱可塑性樹脂層
6…内側熱可塑性樹脂層
7…切り込み
8…発泡抑止領域
10…紙カップ
11…カップ天面
12…カップ底面
13…カップ胴部
15…カップ内側
h…切り込みの深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外面側から加熱により発泡する外側熱可塑性樹脂層、紙を主体とする基材層、内側熱可塑性樹脂層を備えた発泡原紙であって、前記外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に切り込みを設け、前記発泡原紙を加熱した際に前記切り込みを設けた部分に発泡抑制部を形成することを特徴とする発泡原紙。
【請求項2】
基材層の表面に印刷層を設けて印刷領域上の外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に複数の切り込みを設けたことを特徴とする請求項1に記載の発泡原紙。
【請求項3】
印刷領域上の外側熱可塑性樹脂層の表面の一部に設けた複数の切り込みの間隔が6mmから8mmの範囲であることを特徴とする請求項2に記載の発泡原紙。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発泡原紙を用いて作成したことを特徴とする断熱紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51329(P2012−51329A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197521(P2010−197521)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】