説明

発泡壁紙用原反及び発泡壁紙

【課題】施工性及び経済性が良好な発泡壁紙、並びに当該発泡壁紙の製造に適した発泡壁紙用原反を提供する。
【解決手段】紙質基材上に、少なくとも樹脂層1及び樹脂層2を順に積層してなる発泡壁紙用原反であって、
(1)樹脂層1及び樹脂層2は、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層1は、樹脂層2に比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層1は、樹脂層2に比して熱分解型発泡剤の含有量が少ない、
ことを特徴とする発泡壁紙用原反、並びに、
紙質基材上に、少なくとも樹脂層A及び発泡樹脂層Bを順に積層してなる発泡壁紙であって、
(1)樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して発泡倍率が低い、
ことを特徴とする発泡壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡壁紙用原反及び発泡壁紙に関する。
【0002】
発泡壁紙用原反(材料)と発泡壁紙(製品)との関係は次の通りである。即ち、発泡壁紙用原反は、発泡壁紙の製造材料であって発泡剤含有樹脂層を有するが、絵柄模様層等の装飾層は有していない。発泡剤含有樹脂層は、一般に熱分解型発泡剤を含み、加熱により発泡樹脂層となる。原反購入者は、原反の表面に所望の装飾層を形成後、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とすることにより、発泡壁紙(製品)を作製する。
【背景技術】
【0003】
従来、発泡壁紙としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂(塩ビ樹脂)からなる発泡樹脂層を形成したものが知られている。ところが、近年では、環境に配慮して発泡樹脂層に塩ビ樹脂を使用せず、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いた、いわゆる非塩ビ樹脂壁紙が提案されている(特許文献1〜3等)。
【0004】
一般に、発泡壁紙の発泡倍率は3〜5倍であるが、発泡樹脂層に含まれるフィラー量を低減することにより、発泡倍率を高めることができる。発泡樹脂層に含まれる樹脂がエチレン共重合体樹脂(特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂:EVA、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂:EMMA等)の場合には、含有フィラー量を低減することにより、発泡倍率を5〜7倍程度にまで高められる。同一厚さの発泡樹脂層の形成に要する樹脂量を低減できることは、製造コスト低減(経済性向上)に寄与する。
【0005】
しかしながら、フィラー量を低減することにより発泡倍率を5〜7倍にまで高めた発泡壁紙は、表面特性が不十分であり、しかも発泡セルの強度が不十分であるため、製品保管時に発泡セルが潰れて変形するという欠点がある。
【0006】
上記表面特性の低下及び発泡壁紙の変形を抑制するために、発泡樹脂層を樹脂架橋する方法がある。ところが、樹脂架橋により上記欠点を改善したとしても、施工性(特に壁紙施工時のカッティング特性)においてさらに改善の余地がある。
【0007】
従って、施工性及び経済性(製造コスト)のいずれにおいても良好な発泡壁紙の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、施工性及び経済性が良好な発泡壁紙、並びに当該発泡壁紙の製造に適した発泡壁紙用原反を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、発泡壁紙用原反に特定の樹脂層を形成する場合に、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙用原反及び発泡壁紙に関する。
【0011】
1.紙質基材上に、少なくとも樹脂層1及び樹脂層2を順に積層してなる発泡壁紙用原反であって、
(1)樹脂層1及び樹脂層2は、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層1は、樹脂層2に比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層1は、樹脂層2に比して熱分解型発泡剤の含有量が少ない、
ことを特徴とする発泡壁紙用原反。
【0012】
2.樹脂層1及び樹脂層2は、樹脂成分としてエチレン共重合体樹脂を含む、上記項1に記載の発泡壁紙用原反。
【0013】
3.樹脂層1及び樹脂層2は、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記項1に記載の発泡壁紙。
【0014】
4.紙質基材上に、少なくとも樹脂層A及び発泡樹脂層Bを順に積層してなる発泡壁紙であって、
(1)樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して発泡倍率が低い、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【0015】
5.樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、樹脂成分としてエチレン共重合体樹脂を含む、上記項4に記載の発泡壁紙。
【0016】
6.樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記項4に記載の発泡壁紙。
【0017】
7.樹脂層Aは、樹脂層Aに含まれる樹脂100重量部に対して炭酸カルシウムを20〜60重量部含有する、上記項4〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。
【0018】
8.発泡樹脂層Bは、発泡倍率が5〜15倍である、上記項4〜7のいずれかに記載の発泡壁紙。

以下、本発明の発泡壁紙用原反及び発泡壁紙について、詳細に説明する。
【0019】
1.発泡壁紙用原反
本発明の発泡壁紙用原反は、紙質基材上に、少なくとも樹脂層1及び樹脂層2を順に積層してなる発泡壁紙用原反であって、
(1)樹脂層1及び樹脂層2は、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層1は、樹脂層2に比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層1は、樹脂層2に比して熱分解型発泡剤の含有量が少ない、
ことを特徴とする。
【0020】
以下、各層について詳細に説明する。
【0021】
(紙質基材)
紙質基材は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0022】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0023】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜80g/m程度が好ましい。
【0024】
紙質基材の厚さは限定的ではないが、80〜150μm程度が好ましい。
【0025】
(樹脂層1及び樹脂層2)
樹脂層1及び樹脂層2は、紙質基材上にこの順に積層されている。紙質基材に近い樹脂層1は発泡壁紙の施工性(カッティング特性)を向上させるための層である。他方、樹脂層2は発泡壁紙に十分な強度と発泡倍率とを与えるための層である。
【0026】
樹脂層1及び樹脂層2は、いずれも樹脂架橋している。この観点からは、樹脂層1及び樹脂層2に含まれる樹脂成分は、架橋可能(例えば、電子線照射により架橋可能)であるものを用いる。かかる架橋可能樹脂としては、例えば、エチレン共重合体樹脂が好ましく、EVA及びEMMAからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。EVA及びEMMAは、メルトフローレート(MFR)の観点からは50〜150g/10分程度のものが好ましく、VA含有量(MMA含有量)の観点からは10〜30重量%程度のものが好ましい。
【0027】
樹脂層1は、樹脂層2に比して炭酸カルシウム含有量が多い。本発明では、炭酸カルシウムはフィラーとして用いられる。樹脂層1の炭酸カルシウム含有量は、樹脂層1に含まれる樹脂成分100重量部に対して20〜60重量部程度が好ましく、40〜50重量部程度がより好ましい。樹脂層1を設けることにより、発泡壁紙の施工性(カッティング特性)が向上する。
【0028】
樹脂層2の炭酸カルシウム含有量は、樹脂層1のそれよりも少なければ限定されないが、通常は樹脂層2に含まれる樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度が好ましく、4〜7重量部程度がより好ましい。
【0029】
樹脂層1は、樹脂層2に比して熱分解型発泡剤の含有量が少ない。樹脂層1の熱分解型発泡剤の含有量は、樹脂層1に含まれる樹脂成分100重量部に対して1〜3重量部程度が好ましい。熱分解型発泡剤の含有量は、樹脂層1を発泡させた場合に、0〜4倍程度の発泡倍率が得られるように設定することが好ましい。
【0030】
樹脂層2の熱分解型発泡剤の含有量は、樹脂層1のそれよりも多ければ限定されないが、通常は樹脂層2に含まれる樹脂成分100重量部に対して5〜8重量部程度が好ましい。熱分解型発泡剤の含有量は、樹脂層2を発泡させた場合に、5〜15倍程度の発泡倍率が得られるように設定することが好ましい。
【0031】
熱分解型発泡剤は、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。
【0032】
樹脂層1及び樹脂層2は、必要に応じて、発泡壁紙の下地隠蔽に要する適宜量の顔料を含んでもよい。
【0033】
顔料としては、次のものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。
【0034】
本発明では、炭酸カルシウム(フィラー)量が多く、熱分解型発泡剤の含有量が少ない樹脂層1を形成することにより、発泡壁紙の施工性を高めることができるとともに、炭酸カルシウム量が少なく、熱分解型発泡剤の含有量が多い樹脂層2を形成することにより、全体として施工性が高く且つ経済性の高い発泡壁紙が提供できる。
【0035】
樹脂層1及び樹脂層2は、前記フィラーには該当しない周知の添加剤を含めてもよい。例えば、発泡セル調整剤、架橋助剤が含まれる。発泡セル調整剤としては、例えば、金属石鹸、亜鉛化合物等が挙げられる。また、架橋助剤としては、アクリルモノマーなどが挙げられる。架橋助剤の添加量としては、各樹脂層に含まれる樹脂成分100重量部に対して、0〜10重量部程度が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。
【0036】
樹脂層1及び樹脂層2の厚みは限定的ではないが、10〜200μm程度が好ましく、準不燃の防火性能を持たせるのであれば、30〜80μm程度が好ましい。
【0037】
(その他の層)
本発明の発泡壁紙用原反は、紙質基材、樹脂層1及び樹脂層2以外の層を有してもよい。
【0038】
例えば、紙質基材と樹脂層1との間に更に樹脂層3を設けることができる。この場合は、樹脂層3は紙質基材と樹脂層1との密着性を高めるアンカー層として作用することが好ましい。
【0039】
樹脂層3は、樹脂層1〜3を押出し成形により直接に紙質基材上に設ける際に同時に設ける場合には、溶融熱により軟らかい状態の樹脂層3の一部が紙質基材中に染み込むため、紙質基材との間の高い密着性が得られる。また、この場合は、樹脂層1及び樹脂層3との間でも高い密着性が得られる。
【0040】
樹脂層3を構成する樹脂は特に限定されないが、前記同様に、EVA及びEMMAの少なくとも1種が好ましい。これらの説明は、前記と同じである。
【0041】
樹脂層3の厚みは限定的ではないが、2〜20μm程度が好ましく、準不燃の防火性能を持たせる観点からは、5〜10μm程度が好ましい。
【0042】
その他、樹脂層2上に更に樹脂層4を設けることができる。
【0043】
樹脂層4は、主として発泡壁紙用原反の保護層としての役割を有するものが好ましい。
【0044】
樹脂層4を構成する樹脂は特に限定されないが、前記同様に、EVA及びEMMAの少なくとも1種が好ましい。これらの説明は、前記と同じである。
【0045】
樹脂層4の厚みは限定的ではないが、5〜30μm程度が好ましく、準不燃の防火性能を持たせる観点からは、10〜15μm程度が好ましい。
【0046】
これらの層を有する本発明の発泡壁紙用原反は、例えば、各樹脂層をカレンダー方式により作製後、紙質基材上に1層ごとラミネートする方法により作製してもよく、樹脂層の積層体(例えば樹脂層1〜4までの積層体)をTダイ押出し機により紙質基材上に直接ラミネートすることにより、熱融着で密着させてもよい。特に、各樹脂層に含まれる樹脂の種類を統一する場合には、好適にTダイ押し出し方式を利用できる。
【0047】
紙質基材上に樹脂層を積層後は、少なくとも未発泡樹脂層を樹脂架橋する。例えば、樹脂層側から電子線照射を行うことにより樹脂架橋できる。加速電圧は、樹脂層の厚み、比重等を考慮して設定できるが、準不燃防火性能を考慮して各層の厚みを設定した場合には、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜20Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0048】
樹脂層にアクリルモノマー等の架橋助剤を含めない場合には、例えば、175kV、5〜10Mrad程度の電子線照射が好適である。他方、樹脂100重量部に対してアクリルモノマーを0.1〜3重量部程度含有する場合には、電子線量は1〜5Mrad程度とするのが好ましい。
【0049】
以上の工程を経て、本発明の発泡壁紙用原反は得られる。
【0050】
2.発泡壁紙
本発明の発泡壁紙は、少なくとも樹脂層A及び発泡樹脂層Bを順に積層してなる発泡壁紙であって、
(1)樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して発泡倍率が低い、
ことを特徴とする。
【0051】
本発明の発泡壁紙は、前記発泡壁紙用原反を用いて好適に製造できる。例えば、発泡壁紙用原反を加熱することにより、樹脂層に含まれる熱分解型発泡剤を熱分解し、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とすることにより得られる。このとき、発泡壁紙用原反の樹脂層側に絵柄模様層を形成後、加熱してもよい。
【0052】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0053】
絵柄模様層は、例えば、前記原反のおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、ビヒクル、溶剤を含む公知の印刷インキが使用できる。
【0054】
着色剤としては、前記顔料が使用できる。
【0055】
ビヒクルは、基材シートの種類に応じて設定できるが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0056】
印刷インキに含まれる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0057】
絵柄模様層の厚みは絵柄模様の種類より異なるが、0.1〜10μm程度が好ましい。
【0058】
なお、絵柄模様層の形成を容易とするために、原反のおもて面に対してコロナ放電処理、プライマー層形成等を行ってもよい。プライマー剤は特に限定されないが、EVA系プライマー剤が好ましい。その他、プラズマ放電処理により原反表面の濡れ性を55dyne程度にすることも好ましい。この場合に、プラズマ発光域を窒素パージ(特にアセチレン混入窒素パージ)とすると効果が向上する。
【0059】
絵柄模様層のおもて面には、発泡壁紙の最表面層として、表面保護層を形成してもよい。表面保護層を構成する樹脂は特に限定されないが、前記同様、エチレン共重合体樹脂が好適であり、特にEVA及びEMMAの少なくとも1種が好ましい。表面保護層には、適宜シリコーン、フッ素原料を含めてもよい。この場合には、発泡壁紙の耐汚染性等を高めることができる。
【0060】
表面保護層の形成方法としては、例えば、絵柄模様層のおもて面に前記樹脂を加熱溶融したものを押出し形成により積層してもよいし、前記樹脂をフィルム化したものを周知のドライラミネーション法により貼り合わせることにより積層してもよい。
【0061】
次いで、加熱により熱分解型発泡剤を熱分解することにより、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とする。
【0062】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は200〜300℃程度が好ましく、加熱時間は10〜40秒程度が好ましい。
【0063】
当該工程を経ることにより、発泡壁紙用原反における樹脂層1は樹脂層Aとなり、樹脂層2は発泡樹脂層Bとなる。本発明の発泡壁紙は、樹脂層Aは発泡樹脂層Bに比して炭酸カルシウム含有率が多く、樹脂層Aは発泡樹脂層Bに比して発泡倍率が低い、という特徴を有する。また、樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、いずれも樹脂架橋している。
【0064】
樹脂層Aの厚さは限定的ではなく、樹脂層1及び発泡倍率に応じて定めるが、通常は30〜120μm程度が好ましく、50〜90μm程度がより好ましい。
【0065】
発泡樹脂層の厚さは限定的ではなく、樹脂層2及び発泡倍率に応じて定めるが、通常は300〜700μm程度が好ましく、400〜500μm程度がより好ましい。
【0066】
本発明の発泡壁紙は、エンボス加工により、エンボス模様を付してもよい。
【0067】
エンボス模様は、例えば、公知のエンボス版により付与できる。例えば、表面保護層のおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0068】
3.被着材
本発明の発泡壁紙を貼り付ける被着材は特に限定されず、例えば、石膏ボード、パーライトボード、襖、扉等の平板、曲面板等の板材、立体形状物品(成形品)等が挙げられる。
【0069】
被着材への積層方法としては、例えば、1)接着剤層を間に介して被着材に加圧ローラーで加圧して積層する方法、2)被着材の表面に発泡壁紙を、接着剤層を介して対向又は載置後、被着材(成形品)側からの真空吸引による圧力差により発泡壁紙を成形品表面に積層する、いわゆる真空プレス積層方法、3)円柱、多角柱等の柱に発泡壁紙を、接着剤層を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状体を構成する複数の側面に順次壁紙を加圧接着して積層してゆく、いわゆるラッピング加工法等がある。特に、凹凸立体物に貼り合わせる方法としては、ラッピング加工法が好ましい。
【0070】
本発明の発泡壁紙は、所定の成形加工等を施して各種用途に用いる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輛内装、航空機内装、窓ガラスの化粧等の用途が挙げられる。
【発明の効果】
【0071】
本発明の発泡壁紙は、その原反において、炭酸カルシウム量が多く、熱分解型発泡剤の含有量が少ない樹脂層1を形成することにより、発泡壁紙の施工性を高めることができるとともに、炭酸カルシウム量が少なく、熱分解型発泡剤の含有量が多い樹脂層2を形成することにより、全体として施工性が高く且つ経済性の高い発泡壁紙が提供できる。
【0072】
本発明の発泡壁紙用原反は、上記特性を有する本発明の発泡壁紙の製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の発泡壁紙用原反の模式図(一例)である。
【図2】本発明の発泡壁紙の模式図(一例)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0075】
実施例1
(発泡壁紙用原反の製造)
図1に示す層構成の発泡壁紙用原反を作製した。各層の形成材料は次の通りである。
・ 第1層:一般紙(65g/m)を用いた。
・ 第2層(アンカー層):EVA(住友化学CV5053)を用いた。
・ 第3層(樹脂層1):EVA(住友化学CV5053)100部、炭酸カルシウム(白石工業ホワイトンH)50部、二酸化チタン(デュポンR108)20部、熱分解型発泡剤(永和化成AC#3)4部、熱分解型発泡剤(永和化成#5000)2部、発泡セル調整剤(旭電化工業OF101)及びステアリン酸亜鉛(大協化成MFX50E)2部の混合物を用いた。
・ 第4層(樹脂層2):EVA(住友化学CV5053)100部、二酸化チタン(デュポンR108)20部、熱分解型発泡剤(永和化成AC#3)8部、熱分解型発泡剤(永和化成#5000)2部、発泡セル調整剤(旭電化工業OF101)及びステアリン酸亜鉛(大協化成MFX50E)2部の混合物を用いた。
・ 第5層(保護層):EVA(住友化学D5020)
先ず、第2層〜第5層の4種類の材料を別々にシリンダーに入れて熔融し、Tダイ押出し機により4層同時押出し積層した。押出し時のダイス温度は130℃とした。
【0076】
押出し時の第2層の厚みは5μm、第3層の厚みは30μm、第4層の厚みは70μm、第5層の厚みは30μmとした。
【0077】
次いで、当該4層積層体を第1層(一般紙)上にラミネートした。
【0078】
次いで、当該5層積層体の樹脂層側に電子線照射(200kv、5Mrad)を行った。
【0079】
以上の工程を経て、発泡壁紙用原反を製造した。
(発泡壁紙の製造)
図2に示す層構成の発泡壁紙を作製した。
【0080】
上記原反のおもて面に、EVA系水性インキを2g/mでベタ印刷後、アクリル系水性インキで絵柄を付与することにより絵柄模様層を形成した。
【0081】
次いで、雰囲気温度230℃のオーブン中で20秒間加熱することにより、熱分解型発泡剤を含む層を発泡させた。樹脂層1は樹脂層Aとなり、厚さは120μmであった。樹脂層2は発泡樹脂層となり、厚さは700μmであった。
【0082】
次いで、絵柄模様層のおもて面からエンボス版を押圧することにより、エンボス模様を賦型した。
【0083】
以上の工程を経て、発泡壁紙を製造した。
【0084】
比較例1
実施例1において、第2層及び第3層を、次の組成物からなる1層(押出し厚み700μm)に置き換える以外は、
実施例1と同様にして発泡壁紙を製造した。
【0085】
EVA(住友化学CV5053)100部、二酸化チタン(デュポンR108)20部、熱分解型発泡剤(永和化成AC#3)8部、熱分解型発泡剤(永和化成#5000)2部、発泡セル調整剤(旭電化工業OF101)及びステアリン酸亜鉛(大協化成MFX50E)2部の混合物を用いた。
【0086】
試験例1(カッティング性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙のカッティング性を評価した。
【0087】
カッティングが容易なものを○、困難なものを×と評価した。
【0088】
各試験結果を下記表1に示す。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に、少なくとも樹脂層1及び樹脂層2を順に積層してなる発泡壁紙用原反であって、
(1)樹脂層1及び樹脂層2は、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層1は、樹脂層2に比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層1は、樹脂層2に比して熱分解型発泡剤の含有量が少ない、
ことを特徴とする発泡壁紙用原反。
【請求項2】
樹脂層1及び樹脂層2は、樹脂成分としてエチレン共重合体樹脂を含む、請求項1に記載の発泡壁紙用原反。
【請求項3】
樹脂層1及び樹脂層2は、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
紙質基材上に、少なくとも樹脂層A及び発泡樹脂層Bを順に積層してなる発泡壁紙であって、
(1)樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、いずれも樹脂架橋しており、
(2)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して炭酸カルシウム含有量が多く、
(3)樹脂層Aは、発泡樹脂層Bに比して発泡倍率が低い、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【請求項5】
樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、樹脂成分としてエチレン共重合体樹脂を含む、請求項4に記載の発泡壁紙。
【請求項6】
樹脂層A及び発泡樹脂層Bは、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の発泡壁紙。
【請求項7】
樹脂層Aは、樹脂層Aに含まれる樹脂100重量部に対して炭酸カルシウムを20〜60重量部含有する、請求項4〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項8】
発泡樹脂層Bは、発泡倍率が5〜15倍である、請求項4〜7のいずれかに記載の発泡壁紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−90842(P2007−90842A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287085(P2005−287085)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】