説明

発泡壁紙

【課題】発泡剤含有樹脂層に、樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有する場合でも、発泡後に得られる発泡樹脂層の表面状態及び発泡セルの形状が良好な発泡壁紙を提供する。
【解決手段】紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)前記発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成され、
(2)前記発泡剤含有樹脂層は、エチレン共重合体を含む樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有し、
(3)前記エチレン共重合体は、メルトフローレートが1〜15g/10分であり、且つ、エチレン以外の共重合成分の含有量が1〜14重量%である、
ことを特徴とする発泡壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の装飾に有用な、発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙(発泡化粧シート)としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮して、発泡樹脂層にはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂などの、ハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
【0003】
発泡壁紙は、一般に紙質基材上に発泡剤含有樹脂層を形成後、当該発泡剤含有樹脂層を加熱により発泡させることにより得られる。発泡剤含有樹脂層には、無機充填剤等の無機成分が含有される場合が多い。
【0004】
発泡剤含有樹脂層に含まれる無機成分の含有量を多く設定する場合には、相対的に樹脂成分の含有量を減らせるため、発泡壁紙の低コスト化が図れる。また、無機成分の添加によって表面強度の向上や目透き抑制効果なども得られる。
【0005】
しかしながら、無機成分の含有量を多く(例えば、樹脂成分100重量部に対して無機成分100重量部以上)設定した場合には、発泡後に得られる発泡樹脂層の表面状態及び発泡セルの形状が不均一となり、十分な品質を保持できない。
【0006】
従って、発泡剤含有樹脂層に、樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有する場合でも、発泡樹脂層の表面状態及び発泡セルの形状を良好に保持する技術開発が求められている。なお、発泡剤含有樹脂層における樹脂成分と無機成分との割合は、発泡後に得られる発泡樹脂層においても実質的に同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発泡剤含有樹脂層に、樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有する場合でも、発泡後に得られる発泡樹脂層の表面状態及び発泡セルの形状が良好な発泡壁紙を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂成分を発泡剤含有樹脂層に含有させる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙に関する。
1. 紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)前記発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成され、
(2)前記発泡剤含有樹脂層は、エチレン共重合体を含む樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有し、
(3)前記エチレン共重合体は、メルトフローレートが1〜15g/10分であり、且つ、エチレン以外の共重合成分の含有量が1〜14重量%である、
ことを特徴とする発泡壁紙。
2. 前記エチレン共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体及びエチレン−メチルアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の発泡壁紙。
3. 前記発泡剤含有樹脂層は、210〜240℃で30〜50秒間加熱することにより発泡させる、上記項1又は2に記載の発泡壁紙。
4. 前記発泡剤含有樹脂層は、発泡に先立って、40〜60kGyの電子線が照射されている、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
5. 前記発泡樹脂層のおもて面に更に非発泡樹脂層Aが形成されている、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
6. 前記紙質基材と前記発泡樹脂層との間に更に非発泡樹脂層Bが形成されている、上記項1〜5のいずれかに記載の発泡壁紙。
7. 最表面層の上からエンボス加工が施されている、上記項1〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。
【0011】
以下、本発明の発泡壁紙について詳細に説明する。
【0012】
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)前記発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成され、
(2)前記発泡剤含有樹脂層は、エチレン共重合体を含む樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有し、
(3)前記エチレン共重合体は、メルトフローレートが1〜15g/10分であり、且つ、エチレン以外の共重合成分の含有量が1〜14重量%である、ことを特徴とする。
【0013】
上記特徴を有する本発明の発泡壁紙は、発泡剤含有樹脂層に特定のエチレン共重合体を含む樹脂成分を採用するため、樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有する場合であっても、発泡後に得られる発泡樹脂層の表面状態及び発泡セル形状が良好である。このような本発明の発泡壁紙は、樹脂成分の使用量が相対的に少なく、製造コストの観点で有利である。また、無機成分の配合による物性向上効果が得られ易い。
【0014】
以下、各要件に分けて説明する。
【0015】
紙質基材
紙質基材の材質は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0016】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0017】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0018】
非発泡樹脂層B
本発明では、必要に応じて紙質基材と発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層(非発泡樹脂層B)が形成されていてもよい。特に、非発泡樹脂層Bが接着剤層として形成される場合は、優れた密着性を得ることができる。非発泡樹脂層Bとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を好適に用いることができる。
【0019】
非発泡樹脂層Bは樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
【0020】
非発泡樹脂層Bの厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0021】
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成される。本発明で用いる発泡剤としては熱分解型発泡剤が好ましく、この場合には発泡剤含有樹脂層は加熱により発泡して発泡樹脂層となる。
【0022】
熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類や発泡倍率に応じて設定する。発泡倍率の観点からは、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100重量部に対して、1〜20重量部程度とすることが好ましい。
【0023】
本発明では、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分として、特定のエチレン共重合体を含有する。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)等を用いることができる。上記の中でもコストの観点からはEVAが好ましい。これらのエチレン共重合体は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0024】
上記エチレン共重合体としては、メルトフローレート値(MFR)が1〜15g/10分のものを用いる。この中でも、9〜15g/10分のものが好ましい。なお、本明細書のMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。
【0025】
また、上記エチレン共重合体としては、エチレン以外の共重合成分の含有量(即ち共重合比率)が1〜14重量%のものを用いる。この中でも、10〜14重量%のものが好ましい。
【0026】
上記特定のエチレン共重合体を樹脂成分として用いることにより、発泡剤含有樹脂層に含まれる無機成分の含有量が多い場合でも、発泡後に得られる発泡樹脂層の表面状態及び発泡セル形状が良好に保持される。なお、樹脂成分は実質的に上記エチレン共重合体から構成されることが望ましいが、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、他の樹脂を併用することもできる。
【0027】
本発明では、発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有する。無機成分の上限は限定的ではないが、140重量部程度が好ましく、120重量部程度がより好ましい。
【0028】
無機成分としては、主として無機充填剤(いわゆる無機フィラー)が挙げられる。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。これらの無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果や表面強度の向上効果が得られる。
【0029】
その他、発泡剤含有樹脂層には、顔料や添加剤が含まれていてもよい。なお、発泡後の発泡樹脂層中において無機成分として残存するものは、無機充填剤以外であっても、上記無機成分として含有量を考慮する。
【0030】
顔料については、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリ
レン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料がある。
【0031】
添加剤としては、セル調整剤や安定剤が挙げられる。セル調整剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸がある。
【0032】
上記顔料や添加剤の含有量については、所望の着色程度や添加効果に応じて設定する。
【0033】
発泡剤含有樹脂層を発泡させる方法の詳細については後記する。
【0034】
非発泡樹脂層A
発泡樹脂層のおもて面には、更に非発泡樹脂層Aを形成してもよい。
【0035】
非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)は、主として発泡樹脂層を保護するものである。本発明では、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層を非発泡樹脂層とすることが好ましい。
【0036】
前記樹脂成分としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、EMAA、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、EMAA及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0037】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は限定的ではないが、15重量%以下が好ましく、4〜15重量%程度がより好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。
【0038】
非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0039】
前記樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。
【0040】
また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0041】
絵柄模様層
本発明では、非発泡樹脂層Aのおもて面に必要に応じて絵柄模様層を有してもよい。
【0042】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0043】
絵柄模様層は、例えば、非発泡樹脂層Aのおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0044】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0045】
結着材樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0046】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テト
ラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0047】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0048】
表面保護層(オーバーコート層)
本発明では、絵柄模様層の表面に艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保護層を有してもよい。表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0049】
発泡壁紙の表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬
化)するものが好ましい。
【0050】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
【0051】
エンボス
本発明では、適宜エンボス模様を付してもよい。この場合、発泡壁紙の最表面層(紙質基材と反対側)の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が表面保護層である場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0052】
<発泡壁紙の製造方法>
発泡壁紙の製造方法は特に限定されない。例えば、紙質基材上に発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとを有する発泡壁紙を製造するには、Tダイ押出し機による同時押出しが好適である。2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。この方法では、同時押出し積層体は、紙質基材上に同時積層(成膜)する。紙質基材上に押出しと同時に積
層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため紙質基材と接着される。
【0053】
なお、予め2種2層を同時成膜した積層体を用意して、それを紙質基材上に載せて、熱ラミネートすることにより紙質基材と接着してもよい。
【0054】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、本発明の場合には、上記非発泡樹
脂層A及び非発泡樹脂層Bを、発泡剤含有樹脂層とともに同時押出し成形することが好ましい。同時押出し成形は、例えば、マルチマニホールドタイプのTダイを用いることにより行える。このように発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0055】
紙質基材上に同時積層後は、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は200〜250℃程度が好ましく210〜240℃程度がより好ましい。加熱時間は20〜60秒程度が好ましく、30〜50秒程度がより好ましい。
【0056】
前記加熱処理の前に、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋できるため、発泡壁紙の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、10〜70kGy程度が好ましく、40〜60kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう。)を用いて実施することもできる。
【0057】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度とすることが好ましく、特に1〜4重量部とすることがより好ましい。
【0058】
電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を形成した場合には、電子線照射によって表面保護層を硬化させることができる。このような電子線照射は、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋させるために行う電子線照射と同時(同処理)とできる。つまり、発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層、絵柄模様層及び電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を順に形成後、電子線照射を行って、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋するとともに表面保護層に含まれる樹脂を硬化させることができる。
【0059】
絵柄模様層を有する発泡壁紙を製造する場合には、上記加熱処理前に非発泡樹脂層の表面に絵柄模様層を形成することが好ましい。絵柄模様層の形成方法は、前記の通りとすれば良い。
【発明の効果】
【0060】
本発明の発泡壁紙は、発泡剤含有樹脂層に特定のエチレン共重合体を含む樹脂成分を採用するため、樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有する場合であっても、発泡後に得られる発泡樹脂層の表面状態及び発泡セル形状が良好である。このような本発明の発泡壁紙は、樹脂成分の使用量が相対的に少なく、製造コストの観点で有利である。また、無機成分の配合による物性向上効果が得られ易い。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0062】
実施例1〜2及び比較例1〜4
紙質基材(品番「WK665DO」、興人製、厚さ110μm)上に、下記表1で示される樹脂組成物から発泡樹脂層を形成することにより、6種類の発泡壁紙を作製した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1中、EVAの種類及び物性は次の通りである。
(A):品名「EV550」、MFR=15g/10分、 VA含有量=14重量%
(B):品名「P1007」、MFR= 9g/10分、 VA含有量=10重量%
(C):品名「V406」、 MFR=20g/10分、 VA含有量=20重量%
(D):品名「EV150」、MFR=30g/10分、 VA含有量=33重量%
(E):品名「EV250」、MFR=15g/10分、 VA含有量=28重量%
(F):品名「EV410」、MFR=400g/10分、VA含有量=19重量%
比較例4のEVAは、(E)70重量部と(F)30重量部の混合物であり、MFR=40.2g/10分、VA含有量=25重量%である。
【0065】
発泡壁紙は、次の手順で作製した。
【0066】
先ず前記配合通りに各成分を混練し、ペレットを調製した。装置としては、品名「ポリラボシステム」、HAKKE製を使用した。混練条件は、混練時間:10min、スクリュー回転数:50rpm、混練温度:100℃とした。
【0067】
調製したペレットを熱プレスすることによりシート状とした。プレス条件は、プレス時間:10sec、プレス温度:100℃、プレス荷重:10kgf/cmとした(シート厚みが140〜150μmとなる条件)。
【0068】
上記シートを熱プレスにより紙質基材に圧着させた。圧着条件は、圧着時間:10sec、圧着温度:100℃、圧着荷重:10kgf/cmとした(紙質基材を含むシート厚みが190〜200μmとなる条件)。
【0069】
上記で作製した原反サンプルの樹脂面に電子線照射した。照射条件は、加速電圧:200kV、ビーム電流:4.1mA、照射量:50kGyとした。
【0070】
最後に、ギアオーブン中、220℃×45secで加熱発泡させた。
【0071】
発泡樹脂層のセル評価
発泡樹脂層の表面を肉眼観察することによりセル状態を評価した。
【0072】
具体的には、発泡樹脂層の表面にセルの脹れ(水ぶくれ状の脹れであって、熱分解によって発生したガスが樹脂の溶融張力の臨界点を超えるガス圧である場合に生じ、発泡樹脂層表面の平滑性を損なう)が生じたか否かによって評価した。評価基準は、発泡樹脂層表面の脹れの発生率が0〜10%未満である場合を○、10%以上50%未満である場合を△、50%以上である場合を×とした。
【0073】
評価結果を下記表2に示す。
【0074】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)前記発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成され、
(2)前記発泡剤含有樹脂層は、エチレン共重合体を含む樹脂成分100重量部に対して無機成分を100重量部以上含有し、
(3)前記エチレン共重合体は、メルトフローレートが1〜15g/10分であり、且つ、エチレン以外の共重合成分の含有量が1〜14重量%である、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【請求項2】
前記エチレン共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体及びエチレン−メチルアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項3】
前記発泡剤含有樹脂層は、210〜240℃で30〜50秒間加熱することにより発泡させる、請求項1又は2に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
前記発泡剤含有樹脂層は、発泡に先立って、40〜60kGyの電子線が照射されている、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項5】
前記発泡樹脂層のおもて面に更に非発泡樹脂層Aが形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項6】
前記紙質基材と前記発泡樹脂層との間に更に非発泡樹脂層Bが形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項7】
最表面層の上からエンボス加工が施されている、請求項1〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。

【公開番号】特開2012−36730(P2012−36730A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244190(P2011−244190)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【分割の表示】特願2007−86907(P2007−86907)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】