説明

発泡性樹脂粒子及びその製造方法、予備発泡粒子ならびに発泡成形体

【課題】良好な帯電防止性を有しながら、予備発泡時の泡立ちを抑制することにより所定倍への予備発泡調整を容易にして粒度バラツキが少ない予備発泡粒子及び発泡成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂粒子に、実質的に水性媒体不存在下、かつ界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの存在下、揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る方法であり、前記ポリエーテル変性シリコーンが、前記発泡性樹脂粒子を予備発泡して予備発泡粒子を得るときに前記発泡性樹脂粒子の表面に泡立ちが発生することを抑制し得る量のポリエーテル変性シリコーンであり、かつ前記界面活性剤が、前記予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体に帯電防止性を付与し得る量の界面活性剤であることを特徴とする発泡性樹脂粒子の製造方法により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂粒子及びその製造方法、予備発泡粒子ならびに発泡成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、良好な帯電防止性を有しながら、予備発泡時の泡立ちを抑制することにより所定倍への予備発泡調整を容易にして粒度バラツキが少ない予備発泡粒子及び発泡成形体を製造することが可能な発泡性樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂のいずれかを含む発泡性樹脂粒子(本発明では、発泡性樹脂粒子とも称する)から得られる発泡成形体は、成形性、耐熱性等に優れるため、自動車部品等の通い箱、電気製品等の緩衝包装材として幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、前記発泡成形体は、摩擦によって容易に帯電するため、ほこりの付着により発泡成形体の外観を損なうばかりか、集塵による汚染や静電破壊を起こす場合もあり、包装材等として使用する際に帯電防止性能を付与した発泡成形体が望まれている。
【0004】
前記問題を解決する技術として、スチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得た後、該発泡性樹脂粒子100重量部に対して界面活性剤0.1〜2重量部を、10〜30℃の温度及び0.05〜0.3MPaの圧力下で含浸させることにより、発泡性スチレン系樹脂粒子を得る発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4105195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された、発泡性樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子及び前記予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体は、優れた帯電防止性を有していることが確認された。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の発泡性樹脂粒子を予備発泡する際に、発泡機内で水蒸気の水分と粒子中の界面活性剤に起因して粒子表面に泡立ちが発生する。この泡立ちの発生により、発泡機のセンサーが誤作動して、予備発泡粒子が所定倍数に達する前に、予備発泡工程をストップさせ、生産性を低下させてしまうことや、泡立ちによる予備発泡時の加熱むらが生じ、粒度のバラツキが生じ易くなってしまうことがある。この結果、発泡性樹脂粒子から得られる予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体において重量バラツキが生じやすい。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、良好な帯電防止性を有しながら、予備発泡時の泡立ちを抑制することにより所定倍への予備発泡調整を容易にして粒度バラツキが少ない予備発泡粒子及び発泡成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、熱可塑性樹脂粒子に、実質的に水性媒体不存在下、かつ界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの存在下、揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る方法であり、
前記ポリエーテル変性シリコーンが、前記発泡性樹脂粒子を予備発泡して予備発泡粒子を得るときに前記発泡性樹脂粒子の表面に泡立ちが発生することを抑制し得る量のポリエーテル変性シリコーンであり、かつ前記界面活性剤が、前記予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体に帯電防止性を付与し得る量の界面活性剤であることを特徴とする発泡性樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた発泡性樹脂粒子が提供される。
更に、本発明によれば、前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子が提供される。
また、本発明によれば、前記予備発泡粒子を型内成形した発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により得られた発泡性樹脂粒子は、予備発泡時の泡立ち発生を抑制することができる。これにより、所定の発泡倍数調整が容易になり生産性が向上するとともに、粒度にバラツキのない予備発泡粒子を得ることが可能になる。また、得られた発泡成形体は良好な帯電防止性を有する。
【0012】
また、前記発泡性樹脂粒子の表面に泡立ちが発生することを抑制し得る量のポリエーテル変性シリコーンが、前記熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して0.01〜1重量部の量のポリエーテル変性シリコーンであり、前記発泡成形体に帯電防止性を付与し得る量の界面活性剤が、前記熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して0.1〜3重量部の量の界面活性剤であり、かつ前記ポリエーテル変性シリコーンが、6以下のHLB値を有する場合、予備発泡時の泡立ち発生を更に効果的に抑制することができる。これに加えて、この発泡性樹脂粒子から得られる発泡成形体は、良好な帯電防止性も有する。
更に、熱可塑性樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との複合樹脂粒子である場合、得られた発泡性樹脂粒子から(強度、耐衝撃性等の)物理的特性や耐薬品性において更に優れた発泡成形体を得ることができる。
また、界面活性剤が、カチオン系界面活性剤である場合、得られた発泡性樹脂粒子から帯電防止性において更に優れた発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発泡性樹脂粒子の製造方法は、熱可塑性樹脂粒子に、実質的に水性媒体不存在下、かつ界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの存在下、揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る方法である。前記ポリエーテル変性シリコーンは、前記発泡性樹脂粒子を予備発泡して予備発泡粒子を得るときに前記発泡性樹脂粒子の表面に泡立ちが発生することを抑制し得る量のポリエーテル変性シリコーンであり、かつ前記界面活性剤は、前記予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体に帯電防止性を付与し得る量の界面活性剤である。
【0014】
(1)熱可塑性樹脂粒子
本発明において熱可塑性樹脂粒子は、発泡成形体への耐薬品性、耐衝撃性等の付与の観点からポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。また、発泡成形体への成形性、断熱性、剛性、軽量性、耐水性等の付与の観点から、ポリスチレン系樹脂を含むことも好ましい。上述より、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン樹脂の特性を併せ持つ、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを複合させた複合粒子が好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂として、例えば、分枝鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリプロピレン単独重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0016】
本発明においては、予備発泡工程等に影響を与えない限り前記ポリオレフィン系樹脂を単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。なお、前記の例示中、低密度とは0.91〜0.94g/cm3であることが好ましく、0.91〜0.93g/cm3であることがより好ましい。高密度とは0.95〜0.97g/cm3であることが好ましく、0.95〜0.96g/cm3であることがより好ましい。中密度とはこれら低密度と高密度の中間の密度である。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してポリオレフィン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、ポリオレフィン系樹脂粒子を作製できる。通常、使用するポリオレフィン系樹脂の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状またはグラニュラー状である(本発明において、ポリオレフィン系樹脂粒子をマイクロペレットとも称する)。
【0018】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン単独重合体、スチレン系単量体(例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)の重合体、またはスチレンを主成分とし、スチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体である。他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が例示される。例示中、アルキルとは炭素数1〜8のアルキルを意味する。
【0019】
ポリスチレン系樹脂は、熱可塑性樹脂粒子中に、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して25〜500重量部の範囲で含まれることが好ましい。より好ましくは50〜400重量部である。25重量部未満では、ポリスチレン系樹脂成分の剛性が良好であるという特性が発現し難くなる場合がある。また、発泡性樹脂粒子の表面層からの揮発性発泡剤の逸散が速くなり、所望の発泡性を得ることができないことがある。
一方、500重量部を超えると、ポリオレフィン系樹脂成分の弾性が高く、耐油性、耐衝撃性が良好であるという特性が発現し難くなる場合がある。更にこの場合、ポリオレフィン系樹脂成分の内部にスチレンが十分に吸収されず、スチレンが単独で重合するため、多量の重合体粉末を発生する場合がある。
【0020】
熱可塑性樹脂粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、懸濁重合法、シード重合法等が挙げられる。シード重合法は、種粒子にスチレン系単量体を水性媒体中で含浸させて、重合させることにより熱可塑性樹脂粒子を得る方法である。ここで、熱可塑性樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子が分散保持された水性媒体中にスチレン系単量体を加えて重合させることが好ましい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂には、ラジカル捕捉剤が含まれていてもよい。ラジカル捕捉剤は、予めポリオレフィン系樹脂に添加しておくか、もしくは溶融押出時に添加してもよい。ラジカル捕捉剤としては、重合禁止剤(重合抑制剤を含む)、連鎖移動剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカルを捕捉する作用を有する化合物で、水に溶解し難いものが好ましい。
【0022】
重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤、ニトロソ系重合禁止剤、芳香族アミン系重合禁止剤、亜リン酸エステル系重合禁止剤、チオエーテル系重合禁止剤等が例示される。
また、連鎖移動剤としては、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等が例示される。
【0023】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が例示できる。
【0024】
ラジカル捕捉剤の使用量としては、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.005〜0.5重量部であることが好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂粒子は、他に、タルク、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の気泡調整剤、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤等を含んでいてもよい。
【0026】
次に、マイクロペレットを重合容器内の水性媒体中に分散させ、スチレン系単量体をマイクロペレットに含浸させながら重合させる。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。スチレン系単量体には、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤を添加してもよい。
【0027】
ポリオレフィン系樹脂粒子へのスチレン系単量体の含浸は、重合させつつ行ってもよく、重合を開始する前に行ってもよい。この内、重合させつつ行うことが好ましい。なお、含浸させた後に重合を行う場合、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面近傍でのスチレン系単量体の重合が起こり易く、また、ポリオレフィン系樹脂粒子中に含浸されなかったスチレン系単量体が単独で重合して、多量の微粒子状のポリスチレン系樹脂粒子が生成する場合がある。
【0028】
重合させつつ含浸を行う場合、前記含有量を算出する場合のポリオレフィン系樹脂粒子とは、ポリオレフィン系樹脂と含浸されたスチレン系単量体、さらに含浸されて既に重合したポリスチレン系樹脂とから構成された粒子を意味する。含有割合を所望の割合に維持するために、スチレン系単量体を重合容器内の水性媒体に連続的にあるいは断続的に添加することが好ましい。
【0029】
スチレン系単量体の重合には、油溶性のラジカル重合開始剤を使用できる。この重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。なお、これら油溶性のラジカル重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
【0030】
水性媒体中には、水溶性のラジカル重合禁止剤を溶解させておくことが好ましい。水溶性のラジカル重合禁止剤はポリオレフィン系樹脂粒子表面におけるスチレン系単量体の重合を抑制するだけでなく、水性媒体中に浮遊するスチレン系単量体が単独で重合するのを防止して、ポリスチレン系樹脂の微粒子の生成を減らすことができるからである。
【0031】
なお、前記水性媒体中に分散剤を添加しておくことが好ましい。このような分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。無機系分散剤を用いる場合には、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
さらに、架橋したポリオレフィン系樹脂からなる粒子を使用する場合、架橋は、スチレン系単量体を含浸させる時に予め行っておいてもよいし、マイクロペレット中にスチレン系単量体を含浸、重合させている間に行ってもよいし、マイクロペレット中にスチレン系単量体を含浸、重合させた後に行ってもよい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂の架橋に用いられる架橋剤としては、例えば、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。なお、架橋剤は、単独でも二種以上併用してもよい。また、架橋剤の使用量は、通常、ポリオレフィン系樹脂粒子(マイクロペレット)100重量部に対して0.05〜1.5重量部が好ましい。
【0034】
(2)発泡性樹脂粒子
上述の熱可塑性樹脂粒子に、揮発性発泡剤を含浸させることにより、公知の発泡性樹脂粒子を得ることができる。
本発明においては、課題解決、すなわち良好な帯電防止性を有しながら、予備発泡時の泡立ちを抑制することにより、所定倍数への予備発泡調整を容易にして粒度バラツキが少ない予備発泡粒子を提供するために、発泡剤の含浸が実質的に水性媒体不存在下、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの存在下で行われる。ここで、実質的にとは、泡立ちしない程度に水性媒体を含んでいてもよいことを意味し、例えば、市販の界面活性剤に含まれる程度の水性媒体の含有を許容することを意味する。なお、水性媒体の含量は、5重量%以下であることが好ましい。
【0035】
(揮発性発泡剤)
揮発性発泡剤としては、公知の種々の発泡剤が使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、工業用ペンタン、石油エーテル、シクロヘキサン、シクロペンタン等の単独または混合物が挙げられる。揮発性発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0036】
発泡剤の含有率としては、熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。より好ましくは、5〜15重量部である。発泡剤の含有率が5重量部未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなると共に、この予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体は融着率が低下し、耐割れ性が低下することがある。一方、20重量部を超えると、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。
【0037】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、帯電防止性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、アルキルモノエタノールアミン、アルキルポリエーテルアミン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、ポリアルキレングリコール誘導体等の非イオン系界面活性剤;
アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート等のアニオン系界面活性剤;
脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;
アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤等を挙げることができる。なお、界面活性剤の種類により異なるが、全炭素数が5〜20個の範囲の界面活性剤を帯電防止剤として使用することが好ましい。これらの界面活性剤は2種以上を用いてもよい。
【0038】
上記の界面活性剤の中でも、優れた帯電防止性と発泡性樹脂粒子の流動性を損なわず、成形時の充填性に悪影響を与えない点で、カチオン系界面活性剤が好ましい。その中でも、特に、脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩が好ましい。脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩は、一般式(1)
[(R1)4N]25OSO3 (1)
で表すことができる。一般式(1)中、R1は、同一又は異なって、分岐していてもよい炭素数1〜17のアルキル基であることが好ましい。更に4個のR1の内、3つは炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。加えて、4個のR1の内、残りの1つは炭素数5〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数9〜14であることが更に好ましく、炭素数12であることが特に好ましい。特に好ましい脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩としては、以下の一般式(2)の塩が挙げられる。
【0039】
【化1】

(上記式中、R2は、炭素数5〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する)
なお、上記一般式(2)中、R2は、直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0040】
また、添加するカチオン系界面活性剤は複合樹脂粒子に効率よく展着・含浸させるために、液体であることが好ましい。特に、水等で希釈させたものを用いることが好ましい。このようなカチオン系界面活性剤として、第一工業製薬社製のカチオーゲンES−O、カチオーゲンES−OW、カチオーゲンES−L(50%純分の水溶液)が挙げられる。
【0041】
界面活性剤の添加量は、熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して、0.1〜3重量部である。好ましくは、0.2〜2.7重量部であり、さらに好ましくは0.3〜2.5重量部である。0.1重量部未満の場合、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体に所望の帯電防止性を付与できない場合がある。また、3重量部を超えると発泡性樹脂粒子及び予備発泡粒子がべとついて、取り扱いが困難となる場合がある。更に、予備発泡粒子の成形金型への充填が困難となり、また得られる発泡成形体がべとつき、かえって埃が付着し易くなることがある。
【0042】
(ポリエーテル変性シリコーン)
ポリエーテル変性シリコーンとは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)等のポリエーテルがブロックまたはグラフト状に共重合したシリコーンであって、ポリエーテル部分の化学組成とシリコーンに対する共重合比率によって種々異なるHLB値を有する。HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。HLB値の測定方法については、アトラス法、グリフィン法、デイビス法等があるが、本発明におけるポリエーテル変性シリコーンのHLB値は、グリフィン法による測定値による。
【0043】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル重合体を構成する単量体としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のC2−C4アルキレンオキシドが好ましい。これらの中でも特に、C2−C3のアルキレンオキシドが好ましい。これら単量体を用いた好ましいエーテル系重合体としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。ポリエーテルが導入されていないと、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体の帯電防止性能を悪化させてしまうことがある。
【0044】
これら、ポリエーテルが導入されたポリエーテル変性シリコーンは、消泡効果を得るために、HLB値が6以下である必要がある。好ましくは、HLB値が5以下である。HLB値が6を超えると、予備発泡時に泡立ちを抑制できず、この泡立ちにより発泡機のセンサーが誤作動して、予備発泡粒子が所定倍数に達する前に、予備発泡工程をストップさせてしまう場合がある。これにより所定の発泡倍数に調整し難く、生産性が悪くなってしまう。
ポリエーテル変性シリコーンの粘度は、取り扱いやすさの観点から3000mm2/s以下であることが望ましい。
【0045】
ポリエーテル変性シリコーンの添加量は、熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜1重量部である。より好ましくは、0.01〜0.5重量部であり、さらに好ましくは0.03〜0.3重量部である。0.01重量部未満の場合、予備発泡時に泡立ちを抑制できず、この泡立ちにより発泡機のセンサーが誤作動して、予備発泡粒子が所定倍数に達する前に、予備発泡工程をストップさせてしまう場合がある。これにより所定の発泡倍数に発泡し難く、生産性が悪くなってしまう場合がある。一方、1重量部を超えると、添加しても、それ以上の効果はなく、コスト高となってしまうことや、発泡性樹脂粒子のべとつきが大きくなり取り扱い難くなることがある。
【0046】
(揮発性発泡剤、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの含浸)
熱可塑性樹脂粒子に揮発性発泡剤、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンを含浸させる方法としては、水等の懸濁系を利用して水性媒体中で行ういわゆる湿式法と、実質的に無水の条件下で行ういわゆる乾式法がある。
本発明においては、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンを効率よく熱可塑性樹脂に含浸させることができること、また帯電防止性能を付与するために水溶性の界面活性剤を使用するという理由から、乾式法により行う。
【0047】
熱可塑性樹脂粒子に揮発性発泡剤、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンを含浸するために添加していく順序としては、樹脂粒子の物性に影響を与えない限り、揮発性発泡剤、界面活性剤又はポリエーテル変性シリコーンのいずれの順序で添加してもよい。生産性及び樹脂内への吸収効率という観点から、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンを添加してから揮発性発泡剤を添加する方が好ましい。
【0048】
熱可塑性樹脂粒子と界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの混合に使用できる装置は、特に限定されず、例えば、密閉型回転式混合機が挙げられる。
上記のようにして得られた発泡性樹脂粒子は、公知の方法(例えば、ゲージ圧力0.01〜0.1MPaの水蒸気で加熱)で所定の密度に予備発泡させることによって、予備発泡粒子とすることができる。
【0049】
発泡性樹脂粒子の平均粒子径は、800〜2400μmであることが好ましい。800μmを下回る平均粒子径の発泡性樹脂粒子は、発泡剤の保持性が低下してビーズライフが短くなる傾向がある。2400μmを越えると、複雑な形状をした発泡成形体を成形する際、金型への充填性が悪くなる傾向がある。より好ましい平均粒子径は、1000〜2000μmである。
【0050】
(3)予備発泡粒子の製造
予備発泡粒子は、上記発泡性樹脂粒子を予備発泡させることにより得られる。
予備発泡の方法は特に限定されず、公知のいずれの方法を用いてもよい。
【0051】
(4)発泡成形体の製造
得られた予備発泡粒子は、発泡成形機の成形金型内に形成された成形空間に供給され、所望の発泡成形体に型内成形される。発泡成形機としては、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機等を用いることができる。
【0052】
本発明において得られる発泡成形体は、予備発泡時の泡立ちが抑制される結果、予備発泡粒子及び発泡成形体の嵩倍数にばらつきが少なく、かつ優れた帯電防止性能を有する。そのため、得られた発泡成形体は、家電製品等の緩衝材(クッション材)、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器(梱包材)等の用途に好適に使用できる。また、車両用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の衝撃エネルギー吸収材としても好適に使用できる。
なお、発泡成形体等の帯電防止性は、1×1011Ω以下の表面固有抵抗値(帯電防止レベル)を有している場合を帯電防止性があると判断する。表面固有抵抗値の測定方法については、実施例の欄で説明する。
【実施例】
【0053】
以下実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法及び製造条件を以下で説明する。
【0054】
(嵩倍数の測定)
発泡粒子の嵩倍数は、JIS K 6767に準拠して以下の式により求める。
A(倍)=(V/W)×ρ
A:嵩倍数
V:発泡粒子の嵩体積(cm3
W:発泡粒子の重量(g)
ρ:ポリスチレン・ポリオレフィン複合樹脂の密度(g/cm3
【0055】
(予備発泡粒子の嵩倍数)
水を使用し、内容積を実測した5Lポリカップを電子天秤に載せてゼロ点補正する。ポリカップに予備発泡粒子を手で充填し丸棒等で擦切る。予備発泡粒子を充填したポリカップをバイブレーター(神鋼電機(株)製 振動機:バイブレートリパッカTYPE VP、振動数3000VPM)の台の上に置いて、20秒間振動させる。振動により沈んだカップの上部空間に予備発泡粒子を手で再度擦切る。再度、電子天秤にポリカップを載せて予備発泡粒子の重量Bgを測定する。内容積5Lと重量Bgから、次式により嵩倍数を求める。
嵩倍数(倍)=5000ml/Bg
【0056】
(予備発泡時の泡立ち)
予備発泡時の泡立ちの有無は、予備発泡槽に備えた窓から目視により泡立ちの有無を確認する。
【0057】
(発泡成形体の表面固有抵抗の測定方法)
表面固有抵抗値の測定には、東亜電波工業社製超絶縁計SM−10Eを用い、JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準じて測定する。即ち、試験装置(アドバンテスト社製デジタル長高抵抗/微小電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料サンプルに、約30Nの荷重で電極を圧着させ、500V1分間充電後の抵抗値を測定する。測定値から次式より表面固有抵抗値を算出する。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ρs:表面固有抵抗値(MΩ)
D:表面の環状電極の内径(cm)
d:表面電極の内円の外形(cm)
Rs:表面抵抗(MΩ)
試料サンプルは、100mm×100mm×厚さ10mm以下の大きさを有し、同一の発泡成形体から10個切り出す。切り出された10個の試料サンプルを、20℃、湿度65%の環境下に24時間程度保存した後、10個の試料サンプルの抵抗値を測定する。平均表面固有抵抗値は、10個の表面固有抵抗値の平均値である。
表面固有抵抗値の平均値が1×1011Ω以下であれば、その発泡成形体は帯電防止性を有すると判断する。
【0058】
(発泡成形体の評価)
「予備発泡時に泡立ちが発生しないこと」及び「良好な帯電防止性を備えていること(発泡成形体の表面固有抵抗値が1×1011Ω以下であること)」を両方とも満たしているものを「○」と評価し、それ以外を「×」と評価する。
【0059】
(実施例1)
(1−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
内容積100リットルのオートクレーブ内に、純水45kg及び分散剤としてピロリン酸マグネシウム300g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(25%水溶液)50gを加えて水性媒体とした。
次に、融点107℃の酢酸ビニル4%含有ポリエチレン(日本ポリエチレン社製:ノバテックEVA LV115)を、押出機を用いて、平均粒径0.8mmの粒子とした。
この粒子12kgを前記水性媒体に懸濁し、ジクミルパーオキサイド85g、ベンゾイルパーオキサイド40g、t−ブチルパーオキサイド4gを、スチレン23kgに溶解したものを徐々に添加し、90℃で4時間重合を行った。その後140℃に昇温して、同温度で2時間保持した。
その後、常温に冷却した後、内容物を水と分離して取り出し、水洗により分散剤を除去して、上記ポリエチレン100重量部とポリスチレン202重量部とからなる複合樹脂粒子を得た。
【0060】
(1−b)発泡性樹脂粒子の製造
内容積50リットルの耐圧密閉可能なV型ブレンダーに、前記、複合樹脂粒子を100重量部、50%水溶液のカチオン系界面活性剤(第一工業製薬社製:カチオーゲンES−O)を2重量部及びHLB値5以下、粘度130(mm2/s)のポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製:KS−511)0.10重量部を加え、密閉し撹拌しながら発泡剤としてブタンを14重量部圧入した。器内を60℃とし、4時間維持した後、冷却し発泡性樹脂粒子を取り出した。
【0061】
(1−c)予備発泡粒子の製造
発泡性樹脂粒子を取り出したのち、直ちにバッチ式発泡機(積水工機製作所社製:SKK−70)に投入し、ゲージ圧0.05MPaの設定でスチームを導入しつつ加熱して、嵩倍数約30倍の予備発泡粒子を得た。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
【0062】
(1−d)発泡成形体の製造
得られた予備発泡粒子を400×300×30mm(厚み)の大きさの成型用金型に入れ、ゲージ圧0.06MPaのスチームを25秒導入して加熱し、120秒間冷却することで、倍数30倍の発泡成形体を取り出した。
得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0063】
(実施例2)
(2−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(2−b)発泡性樹脂粒子の製造
実施例1のポリエーテル変性シリコーンに代えて、HLB値5以下、粘度80(mm2/s)のポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製:KS−512)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(2−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(2−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
(3−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(3−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製:KS−511)の添加量を0.05重量部としたこと以外は、実施例1と同じである。
(3−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(3−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0065】
(実施例4)
(4−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(4−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製:KS−511)の添加量を0.2重量部としたこと以外は、実施例1と同じである。
(4−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(4−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0066】
(実施例5)
(5−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(5−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーンとして、HLB値5、粘度530(mm2/s)のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製:KF−6017)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(5−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(5−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0067】
(実施例6)
(6−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(6−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーンとして、HLB値4、粘度180(mm2/s)のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製:KF−6020)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(6−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(6−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0068】
(実施例7)
(7−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(7−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーンとして、HLB値5、粘度130(mm2/s)のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製:KF−6015)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(7−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(7−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0069】
(実施例8)
(8−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(8−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーンとして、HLB値4、粘度130(mm2/s)のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製:KF−945)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(8−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(8−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0070】
(実施例9)
(9−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(9−b)発泡性樹脂粒子の製造
50%水溶液のカチオン系界面活性剤(第一工業製薬社製:カチオーゲンES−O)の添加量を1重量部とし、HLB値5以下、粘度130(mm2/s)のポリエーテル変性シリコーン(信越化学社製:KS−511)の添加量を0.2重量部としたこと以外は、実施例1と同じである。
(9−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(9−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
(10−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(10−b)発泡性樹脂粒子の製造
ポリエーテル変性シリコーンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同じである。(10−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(10−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0072】
(比較例2)
(11−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(11−b)発泡性樹脂粒子の製造
実施例1が、界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンを発泡剤の圧入前に添加しているのに対して、比較例2では、発泡剤を含浸させた後、界面活性剤のみを添加した。具体的には以下のとおりである。
内容積50リットルの耐圧密閉可能なV型ブレンダーに、前記、複合樹脂粒子を100重量部投入し、密閉し撹拌しながら発泡剤としてブタンを14重量部圧入した。器内を60℃とし、4時間維持した後、25℃まで冷却した。その後、50%水溶液のカチオン系界面活性剤(第一工業製薬社製:カチオーゲンES−O)2重量部を、窒素ガスを用いてV型ブレンダーに圧入した。V型ブレンダー内の温度を25℃、内圧を0.20MPaの保持し30分間撹拌した。その後、20℃まで冷却した後、発泡性樹脂粒子を取り出した。
(11−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(11−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
(12−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(12−b)発泡性樹脂粒子の製造
実施例1のポリエーテル変性シリコーンに代えて、シリコーンエマルジョン(信越化学社製:KM−73)を0.2重量部添加したこと以外は、実施例1と同じである。
(12−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(12−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0074】
(比較例4)
(13−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(13−b)発泡性樹脂粒子の製造
実施例1のポリエーテル変性シリコーンに代えて、HLB値7、粘度1500(mm2/s)のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製:KF−6012)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(13−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(13−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0075】
(比較例5)
(14−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(14−b)発泡性樹脂粒子の製造
実施例1のポリエーテル変性シリコーンに代えて、HLB値12、粘度150(mm2/s)のポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(信越化学社製:KF−355A)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。
(14−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(14−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0076】
(比較例6)
(15−a)熱可塑性樹脂粒子の製造
実施例1と同じである。
(15−b)発泡性樹脂粒子の製造
実施例1の50%水溶液のカチオン系界面活性剤(第一工業製薬社製:カチオーゲンES−O)の添加量を0.08重量部としたこと以外は実施例1と同じである。
(15−c)予備発泡粒子の製造
実施例1と同じである。予備発泡時に泡立ちの有無を確認した結果を表1に示す。
(15−d)発泡成形体の製造
実施例1と同じである。得られた発泡成形体の表面固有抵抗値を求め、結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1より、実施例1〜9の製造方法により得られた発泡性樹脂粒子から、予備発泡時に泡立ちを起こすことはなかった。泡立ちの発生がないことにより、得られる予備発泡粒子は、ばらつきが少なく、所望の発泡倍数を得ることができる。また、上記の予備発泡粒子を型内発泡して得られる発泡成形体についても、ばらつきが少なく、所望の発泡倍数を得ることができる。さらに、得られた発泡成形体は、表面固有抵抗値が1×1011Ω以下であることから、良好な帯電防止性を有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粒子に、実質的に水性媒体不存在下、かつ界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの存在下、揮発性発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る方法であり、
前記ポリエーテル変性シリコーンが、前記発泡性樹脂粒子を予備発泡して予備発泡粒子を得るときに前記発泡性樹脂粒子の表面に泡立ちが発生することを抑制し得る量のポリエーテル変性シリコーンであり、かつ前記界面活性剤が、前記予備発泡粒子を型内成形して得られる発泡成形体に帯電防止性を付与し得る量の界面活性剤であることを特徴とする発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記発泡性樹脂粒子の表面に泡立ちが発生することを抑制し得る量のポリエーテル変性シリコーンが、前記熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して0.01〜1重量部の量のポリエーテル変性シリコーンであり、前記発泡成形体に帯電防止性を付与し得る量の界面活性剤が、前記熱可塑性樹脂粒子100重量部に対して0.1〜3重量部の量の界面活性剤であり、かつ前記ポリエーテル変性シリコーンが、6以下のHLB値を有する請求項1に記載の発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン樹脂との複合樹脂粒子である請求項1又は2に記載の発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、カチオン系界面活性剤である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法により得られた発泡性樹脂粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡性樹脂粒子を、予備発泡させた予備発泡粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の予備発泡粒子を型内成形した発泡成形体。

【公開番号】特開2012−7040(P2012−7040A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142820(P2010−142820)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】