説明

発泡性耐火塗料

【課題】塗料の乾燥性に優れるとともに、火災時には十分な発泡性、強度等を有する発泡炭化層が形成でき、優れた耐火性能を発揮することができる発泡性耐火塗料を提供する。
【解決手段】本発明の発泡性耐火塗料は、(A)アニオン性官能基を有する合成樹脂エマルション、(B)リン化合物、(C)多価アルコール、(D)3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基を有するウレタン化合物、(E)揮発性塩基を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な発泡性耐火塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材や、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する材料として、火災時の温度上昇によって発泡層を形成する発泡性耐火塗料が知られている。
【0003】
発泡性耐火塗料は、塗料の成分中に、温度上昇により分解して不燃性のガスを発生する成分と、炭素化して多孔質の炭化層を形成する成分を含有しており、不燃性のガスの発生で火災の消火効果を発揮し、炭素化成分による多孔質炭化層の形成により断熱効果を発揮するものである。発泡性耐火塗料の利点としては、従来の耐火被覆材に比較すると薄膜化が可能であり、圧迫感が少なくスッキリとした感じに仕上げられること等が挙げられる。
【0004】
このような発泡性耐火塗料に関し、耐火性等の諸物性向上を目的とした種々の提案がなされている。例えば、特開平10−7947号公報(特許文献1)においては、難燃剤として、融点150℃以上で臭素含有率が50重量%以上の含臭素リン酸エステルを用いることが記載されている。特開平10−17796号公報(特許文献2)には、多価アルコール、含窒素発泡剤、難燃性脱水剤、合成樹脂に加えて、さらに膨張性黒鉛を配合することが記載されている。特開2000−169853号公報(特許文献3)には、アゾ化合物、ヒドラゾ化合物、ニトロソ化合物及びスルホニルヒドラジド化合物より選ばれる少なくとも1種と、膨張黒鉛等を併せて配合することが記載されている。特開2001−115093号公報(特許文献4)には、酸化チタンとしてアナターゼ型の結晶型を有する酸化チタンを配合することが記載されている。特開2001−323216号公報(特許文献5)においては、無機充填剤、リン系難燃剤等の平均粒度を10〜50μmに調整することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−7947号公報
【特許文献2】特開平10−17796号公報
【特許文献3】特開2000−169853号公報
【特許文献4】特開2001−115093号公報
【特許文献5】特開2001−323216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、塗料分野では、環境に対する負荷低減の動き等を背景に水性化が進んでおり、このような発泡性耐火塗料においても、水性タイプの塗料が要望されている。例えば、特許文献3(請求項4記載)では、結合材として合成樹脂エマルション等の樹脂を使用した水性タイプの塗料が記載されている。
しかしながら、合成樹脂エマルションを用いた発泡性耐火塗料では、その配合処方に種々工夫を凝らしても、塗料の乾燥性を高めることが難しく、また火災時における発泡炭化層の発泡性、強度等の点で実用上満足な性能が得られ難いのが現状である。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、塗料の乾燥性に優れるとともに、火災時には十分な発泡性、強度等を有する発泡炭化層が形成でき、優れた耐火性能を発揮することができる水性タイプの発泡性耐火塗料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)アニオン性官能基を有する合成樹脂エマルション、(B)リン化合物、(C)多価アルコール、(D)3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基を有するウレタン化合物、(E)揮発性塩基を含有する発泡性耐火塗料が、塗料の乾燥性に優れるとともに、火災時には十分な発泡性、強度等を有する発泡炭化層が形成でき、優れた耐火性能を発揮することができることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の発泡性耐火塗料に係るものである。
1.(A)アニオン性官能基を有する合成樹脂エマルション
(B)リン化合物
(C)多価アルコール
(D)3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基を有するウレタン化合物
(E)揮発性塩基
を含有することを特徴とする発泡性耐火塗料。
2.(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分50〜2000重量部、(C)成分5〜600重量部、(D)成分0.1重量部〜50重量部、(E)成分0.01重量部〜2重量部を含有することを特徴とする1.1に記載の発泡性耐火塗料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡性耐火塗料は、水性タイプの塗料でありながら、乾燥性に優れるとともに、火災時において発泡性に優れた緻密な発泡炭化層が形成でき、鋼材等の基材の温度上昇を効果的に抑制することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明の発泡性耐火塗料は、(A)アニオン性官能基を有する合成樹脂エマルション、(B)リン化合物、(C)多価アルコール、(D)3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基を有するウレタン化合物、(E)揮発性塩基を必須成分として含むものである。このような発泡性耐火塗料は、乾燥性に優れ、火災時において発泡性に優れた緻密な発泡炭化層が形成でき、鋼材等の基材の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の発泡性耐火塗料は、(A)成分のアニオン性官能基と(D)成分の3級アミノ基との硬化反応により水等の溶媒を含んだまま硬化(ゲル化)する第1段階、徐々に水等の溶媒が蒸発し(A)成分が融着していく第2段階を経て、塗膜の硬化が進行し、優れた乾燥性を発揮するものである。
【0014】
一般に、塗料中のpHが比較的低い場合、アミノ基はプロトン化し、反応しやすい状態となる。よって、塗料中のpHが比較的低い場合、塗膜形成時においては、プロトン化したアミノ基による硬化反応が進行し乾燥性を高めることができるが、貯蔵中においては、異物が生じたり塗料粘度が著しく上昇するといった問題が生じる。
本発明では、(E)成分を含有することにより、貯蔵中においては、塗料組成物中のpHを高くすることで、(D)成分の3級アミノ基を非プロトン化し、(A)成分と(D)成分の硬化反応を抑えて、貯蔵安定性に優れた発泡性耐火塗料を得ることができるとともに、塗膜形成時には、(E)成分が揮発することにより塗料中のpHが低くなり、(A)成分と(D)成分の硬化反応が進行し、乾燥性を高めることができる。したがって、湿気が多い場合や温度が低い場合でも工期を短縮でき、ダストフリータイムを短縮することもできる。
さらに、このような(A)成分〜(E)成分を含む発泡性耐火塗料により得られた塗膜は、耐黄変性に優れ、初期の外観を長期に亘り維持することができるとともに、火災時においては、発泡を阻害することなく、発泡性に優れた緻密な発泡炭化層を形成することができる。
さらに、(D)成分は、ポリアルキレンオキサイド基を有するもので、ポリアルキレンオキサイド基を有することにより、3級アミノ基を保護する効果がある。そのため、3級アミノ基を完全に非プロトン化しなくても、貯蔵安定性に優れる発泡性耐火塗料を得ることができる。したがって、少ない量の(E)成分で、貯蔵安定性、乾燥性に優れる塗料組成物を得ることができる。
(D)成分における3級アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基に比べて、貯蔵安定性に優れ、かつ、耐黄変性にも優れている。(D)成分中に1級アミノ基、2級アミノ基が多量にある場合、1級アミノ基、2級アミノ基は3級アミノ基に比べて反応性が高く、貯蔵安定性に劣る傾向がある。
さらに、(D)成分は、本質的に、ウレタン骨格を有する化合物であるため、エマルションへの吸着性に優れ、耐水性にも優れている。
【0015】
本発明の発泡性耐火塗料は、このような作用により、貯蔵安定性に優れるとともに乾燥性に優れ、かつ、塗膜形成後の耐黄変性に優れ、初期の外観を長期に亘り維持することができる。さらに、火災時においては、発泡性に優れた緻密な発泡炭化層が形成でき、鋼材等の基材の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明(A)成分は、アニオン性官能基を有する合成樹脂エマルションである。アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基等が挙げられ、(A)成分は、これらのうち1種以上のアニオン性官能基を有する合成樹脂エマルションである。
このような合成樹脂エマルションは、アニオン性官能基を有するモノマーを重合させる方法、アニオン性官能基を有するモノマーとその他のモノマーを共重合させる方法、アニオン性官能基を有する開始剤を用いて重合させる方法、アニオン性官能基を有する重合性界面活性剤を用いて重合させる方法、得られた合成樹脂エマルションにアニオン性官能基を有する化合物を付与させる方法等により、得ることができる。
【0017】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等が挙げられる。
スルホン酸基、硫酸基含有モノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸等の(メタ)アクリルスルホン酸、スルホン酸ビニル、スルホン酸アリール、スルホン酸ビニルトルエン、スチレン化スルホン酸等の脂肪族又は芳香族スルホン酸ビニル、メタクリロイルオキシスルホン酸ナトリウム、プロペニル基を導入したポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
リン酸基含有モノマーとしては、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシエチルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
その他のモノマーとしては、例えば、
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸トリプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリt−ブチルメチル、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のt−アルキル基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のアルキレングリコール鎖含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー;
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
ビニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のアセトアセトキシル基含有モノマー;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有モノマー;
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
スチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系モノマー;
2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{(メタ)アクリロキシ−エトキシ}ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{(メタ)アクリロキシ−ジエトキシ}ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−{(メタ)アクリロキシ−トリエトキシ}ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系モノマー;
2−{2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチルフェニル}−2H−ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチル−3−t−ブチルフェニル}−2H−ベンゾトリアゾール、3−(メタ)アクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−{3’−(2’’−ベンゾトリアゾール)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル}フェニルプロピオネート等のベンゾトリアゾール系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のその他のモノマー;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができ、適宜設定することができる。(A)成分としては、特に、ヒドロキシル基、アルキレングリコール鎖等の水酸基を含有することが好ましく、例えば、(A)成分の水酸基価が、1.0〜30mgKOH/g程度であることが好ましい。
(A)成分としては、優れた発泡性を得る目的で、架橋構造を有さないエマルションを用いることが好ましい。架橋構造を有するエマルションとしては、例えば、モノマーとして、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の架橋性モノマーを用いたエマルション、架橋剤を用いたエマルション、互いに反応しあう官能基を含有するモノマーを組み合わせて用いたエマルション等が挙げられ、本発明では、このような架橋構造を有するエマルションの含有量を抑え、架橋構造を有さないエマルションを用いることによって、優れた発泡性を有する発泡性耐火塗料を得ることができる。
互いに反応しあう官能基の組み合わせとしては、例えば、エポキシ基とカルボキシル基、カルボニル基とヒドラジド基、アルコキシル基同士等が挙げられる。
【0019】
本発明では、上記モノマーを、必要に応じ各種添加剤とともに、通常知られる重合法、例えば乳化重合法等により製造すればよい。
添加剤としては、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等が挙げられ、各種重合法、目的に応じ、必要量添加すればよい。
【0020】
乳化剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、反応性乳化剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、各種脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩などのアニオン性乳化剤、
【0021】
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性乳化剤、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性乳化剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤、
エレミノールJS−2(三洋化成工業製)、エレミノールRS−30(三洋化成工業製)、ラテムルS−180A(花王製)、アクアロンHS−10(第一工業製薬製)、アクアロンKH−10(第一工業製薬製)、アデカリアソープSE−10N(アデカ製)、アデカリアソープSR−10(アデカ製)等のアニオン性反応性乳化剤、
アクアロンRN−10(第一工業製薬製)、アデカリアソープNE−10(アデカ製)、アデカリアソープER−10(アデカ製)等のノニオン性反応性乳化剤等が挙げられる。
本発明では、特にアニオン性官能基を有し、エマルション粒子に固定化されるアニオン性反応性乳化剤の使用が、乾燥性、耐水性等の面から好ましい。
【0022】
開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の過酸化系開始剤、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
本発明では、特にアニオン性官能基を有する開始剤を用いることが好ましい。このような開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤等が挙げられる。
【0023】
重合温度としては、特に限定されないが、20℃から90℃程度であればよい。
エマルション粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、50nmから1000nm(好ましくは50nmから500nm、さらに好ましくは50nmから300nm)であることが好ましい。
なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。具体的には、動的光散乱測定装置として、マイクロトラック粒度分析計(例えば、UPA150、日機装株式会社製)を用い、検出された散乱強度をヒストグラム解析法のMarquardt法により解析した値であり、測定温度は25℃である。
【0024】
本発明(B)成分は、リン化合物である。リン化合物は、火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、結合剤炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、樹脂の燃焼を抑制する作用を発揮することができる成分である。このようなリン化合物としては、例えばトリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート、三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物等が挙げられる。このうち、本発明では特にポリリン酸アンモニウムが好ましい。これらリン化合物は、表面処理や表面被覆が施されたものであってもよい。リン化合物の混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常50〜2000重量部(好ましくは100〜1000重量部)である。
【0025】
本発明(C)成分は、多価アルコールである。多価アルコールは、火災による結合剤の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性に優れた厚みのある発泡炭化層を形成する作用を有する。多価アルコールとしては、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ネオペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、グルコースフルクトース、デンプン、セルロース等が挙げられる。多価アルコールの混合比率は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常5〜600重量部(好ましくは10〜400重量部)である。
【0026】
本発明(D)成分は、3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基を有するウレタン化合物である。
このような(D)成分は、イソシアネート化合物(以下、「(d−1)成分」ともいう。)に、イソシアネートと反応可能な官能基と3級アミノ基とを含有する化合物(以下、「(d−2)成分」ともいう。)とイソシアネートと反応可能な官能基とポリアルキレンオキサイド基とを有する化合物(以下、「(d−3)成分」ともいう。)を反応させる方法、または、(d−1)成分に、イソシアネートと反応可能な官能基と3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基とを有する化合物(以下、「(d−4)成分」ともいう。)を反応させる方法等で得ることができる。
【0027】
(d−1)成分としては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
【0028】
1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;
【0029】
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネート、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
【0030】
1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト(XDI)、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート;等、及びこれらのイソシアネート基含有化合物のアロハネート体、ビウレット体、2量体(ウレトジオン)、3量体(イソシアヌレート)、アダクト体、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及びこれらのイソシアネート基を含有する化合物等が挙げられる。本発明では、特に脂肪族ジイソシアネートや、その誘導体を用いることが好まししい。
【0031】
(d−2)成分としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノプロパノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール等のN,N−ジアルキルアミノアルキルアルコール、N,N−ジメチルジエタノールアミン等のN,N−ジアルキルジアルキルアルコールルアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等のN,N−ジアルキル−アルキルジアミン等が挙げられる。
【0032】
(d−3)成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレン−プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレン−プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
(d−4)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
(d)成分を得る方法としては、上述したように、(d−1)成分に、(d−2)成分、(d−3)成分、(d−4)成分を適宜組み合わせて、反応させることにより得ることができる。反応温度としては、40℃から90℃程度、また反応時間としては1時間から24時間程度であればよい。また、(d−2)成分、(d−3)成分、(d−4)成分のうち2種以上を用いる場合、反応順序も適宜設定して反応すればよい。
なお、(b−3)成分、(b−4)成分のポリアルキレンオキサイド基におけるアルキレンオキサイドの平均繰り返し単位数は通常2〜100、好ましくは5〜90である。この平均繰り返し単位数が2より小さい場合は、水へ溶解性が不十分となり、乾燥性が発現され難くなる。また、貯蔵安定性が低下する場合がある。平均繰り返し単位数が100より大きい場合は、耐水性、乾燥性等において十分な物性が発現され難くなる。
ポリアルキレンオキサイド基としては、特に、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、テトラメチレンオキサイド基などをブロックまたはランダムに2種以上繋いだもの等が挙げられる。
【0035】
また、このような反応には、反応触媒等を用いて、反応を促進させることもできる。反応触媒としては、例えば、チタネートエステル、ジブチルスズジラウリレートやジブチルチンジオクトエート、オクタン酸鉛等の有機金属系触媒、トリエチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等のアミン化合物の触媒等が挙げられる。
【0036】
また、イソシアネート化合物には、上記成分以外のその他の化合物を反応させてもよい。
例えば、ドデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ジスチレン化フェニルアルコール等の疎水性アルキルアルコール、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有アルコールが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
(D)成分の重量平均分子量は、2000〜200000(さらには3000〜100000)であることが好ましい。この範囲であれば、乾燥性等の性能を有するウレタン化合物の合成、及び合成後の処理も容易である。
【0038】
(D)成分の混合量は、特に限定されないが、乾燥性や、塗膜形成後の耐水性などのバランスを考慮すると、(A)成分の固形分100重量部に対し、(D)成分0.1重量部〜50重量部(さらには0.5重量部〜20重量部、最も好ましくは0.8重量部〜10重量部)の範囲であることが好ましい。0.1重量部より少ない場合は、乾燥性が低下する傾向にある。50重量部より多い場合は、貯蔵安定性、耐水性が低下する傾向にある。
【0039】
本発明(E)成分は、揮発性塩基である。揮発性塩基は、塗料の貯蔵中は、貯蔵安定性を向上させ、塗膜形成時は、(A)成分と(D)成分の硬化反応を促進させ、乾燥性を高める効果がある。
(E)成分としては、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられ、特に、アンモニアが好ましく用いられる。
(E)成分の混合量は、特に限定されないが、(A)成分の固形分100重量部に対し、(E)成分0.01重量部〜2重量部、さらには0.02重量部〜1.5重量部であることが好ましい。
本発明では、貯蔵安定性の向上を図るために(E)成分を多量に加えることもできるが、その場合、臭気などに問題があり、塗装作業性や周辺環境上好ましくない。本発明では、(E)成分の混合量を少なくしても、乾燥性に優れ、貯蔵安定性に優れる塗料組成物を得ることができる。
(E)成分の混合量が2重量部より多い場合、貯蔵安定性には優れるが、臭気が強くなり、塗装作業性や周辺環境上好ましくない。0.01重量部より少ない場合、乾燥性や貯蔵安定性に劣る場合がある。
【0040】
本発明の発泡性耐火塗料には、上記以外の成分として、通常塗料に使用可能な各種添加剤等を配合することもできる。このような成分としては、例えば発泡剤、充填材、顔料、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。また、膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等の膨張性物質を配合することもできる。
本発明組成物は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。通常は、1液型の形態とすればよい。
【0041】
発泡剤としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ、シリカ等の天然鉱物類等が挙げられる。
【0042】
本発明の発泡性耐火塗料は、耐火性を付与すべき被塗物に塗付積層することによってその効果を発揮することができる。被塗物としては、例えば、壁、柱、床、梁、屋根、階段の各部位が挙げられる。このような被塗物は、コンクリート、鋼材等の基材で形成されており、防錆処理等が施されていてもよい。また、本発明の発泡性耐火塗料は、コンクリート、鋼材だけでなく、木質部材、樹脂系部材等への基材に適用することも可能である。
【0043】
発泡性耐火塗料を被塗物に塗付する際には、スプレー、ローラー、刷毛、こて、へら等の塗装器具を使用して、一回ないし数回塗り重ねて塗装すれば良い。塗装時には、必要に応じ水等で塗料を希釈することもできる。最終的に形成される発泡性耐火塗料の塗膜厚は、所望の耐火性能、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度である。
【0044】
本発明では、発泡性耐火塗料により形成される塗膜を保護するために、必要に応じ上塗層を積層することもできる。このような上塗層は、公知の水性型あるいは溶剤型の塗料を塗付することによって形成することができる。上塗層としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料を用いることができる。これらの塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0046】
(合成樹脂エマルションの合成)
(合成樹脂エマルションA−1)
モノマーとして、スチレンモノマー(12.0重量部)、メチルメタクリレート(14.0重量部)、n−ブチルアクリレート(12.6重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.4重量部)、乳化剤としてアデカリアソープSR−10(アデカ製反応性アニオン乳化剤)(1.0重量部)、開始剤として過硫酸カリウム(0.2重量部)を使用し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行った。pH3、固形分41%、平均粒子径140nm、水酸基価15mgKOH/gの合成樹脂エマルションA−1を得た。
【0047】
(合成樹脂エマルションA−2)
モノマーとして、スチレンモノマー(12.0重量部)、メチルメタクリレート(13.8重量部)、n−ブチルアクリレート(12.6重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.4重量部)、メタクリル酸(0.2重量部)、乳化剤としてアデカリアソープSR−10(1.0重量部)、開始剤として過硫酸カリウム(0.2重量部)を使用し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行った。pH3、固形分41%、平均粒子径145nm、水酸基価15mgKOH/gの合成樹脂エマルションA−2を得た。
【0048】
(合成樹脂エマルションA−3)
モノマーとして、スチレンモノマー(12.0重量部)、メチルメタクリレート(13.6重量部)、n−ブチルアクリレート(13.0重量部)、メタクリル酸(1.4重量部)、乳化剤としてアデカリアソープSR−10(1.0重量部)、開始剤として過硫酸カリウム(0.2重量部)を使用し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行った。pH3、固形分41%、平均粒子径145nm、水酸基価0mgKOH/gの合成樹脂エマルションA−3を得た。
【0049】
(合成樹脂エマルションA−4)
モノマーとして、スチレンモノマー(12.0重量部)、メチルメタクリレート(13.0重量部)、n−ブチルアクリレート(12.0重量部)、メタクリル酸(1.4重量部)、ジアセトンアクリルアミド(1.6重量部)、乳化剤としてアデカリアソープSR−10(1.0重量部)、開始剤として過硫酸カリウム(0.3重量部)を使用し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行った。その後、アジピン酸ジヒドラジド(0.8重量部)を添加し、pH5、固形分41%、平均粒子径145nm、水酸基価0mgKOH/gの合成樹脂エマルションA−4を得た。
【0050】
(ウレタン化合物の合成)
(ウレタン化合物D−1)
NCO含有率50.0%のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(22.2重量部)、平均分子量1000のポリエチレングリコール(66.0重量部)、N,N−ジメチルアミノエタノール (11.8重量部)、エタノール(2.0重量部)、ジブチルスズジラウリレート(0.05重量部)を使用し、酢酸ブチル溶液中で、窒素雰囲気下70℃で3時間反応させた。反応終了後、酢酸ブチルと未反応のエタノールを減圧留去し、ウレタン化合物D−1を得た。
【0051】
(ウレタン化合物D−2)
NCO含有率21.8%のヘキサメチレンジイソシアヌレート(46.7重量部)、平均分子量1000のポリエチレングリコール(43.8 重量部)、N,N−ジメチルアミノエタノール (5.2重量部)、エタノール(5.0重量部)、ジブチルスズジラウリレート(0.05重量部)を使用し、酢酸ブチル溶液中で、窒素雰囲気下70℃で3時間反応させた。反応終了後、酢酸ブチルと未反応のエタノールを減圧留去し、ウレタン化合物D−2を得た。
【0052】
(ウレタン化合物D−3)
NCO含有率21.8%のヘキサメチレンジイソシアヌレート(36.5重量部)、平均分子量1000のポリエチレングリコール(34.3 重量部)、N,N−ジメチルアミノエタノール (4.1重量部)、HLB 15のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(23.8重量部)、エタノール(2.0重量部)、ジブチルスズジラウリレート(0.05重量部)を使用し、酢酸ブチル溶液中で、窒素雰囲気下70℃で3時間反応させた。反応終了後、酢酸ブチルと未反応のエタノールを減圧留去し、ウレタン化合物D−3を得た。
【0053】
(ウレタン化合物D−4)
NCO含有率21.8%のヘキサメチレンジイソシアヌレート(47.9重量部)、平均分子量1000のポリエチレングリコール(45.0 重量部)、エタノール(8.0重量部)、ジブチルスズジラウリレート(0.05重量部)を使用し、酢酸ブチル溶液中で、窒素雰囲気下70℃で3時間反応させた。反応終了後、酢酸ブチルと未反応のエタノールを減圧留去し、ウレタン化合物D−4を得た。
【0054】
(実施例1)
表1に示す配合で、合成樹脂エマルションA−1、ポリリン酸アンモニウム、ジペンタエリスリトール、25%アンモニア水、ウレタン化合物D−1、チタンペースト、造膜助剤、増粘剤、消泡剤を常法により混合・攪拌し、塗料1を作製した。作製した塗料1を用いて次の試験を行った。
【0055】
1.貯蔵安定性試験
作製した塗料1を50℃の恒温槽に7日間貯蔵後、粘度変化を確認した。評価は次の通り。結果は表1に示す。
○:粘度変化20%未満
△:粘度変化20%以上30%未満
×:粘度変化30%以上
【0056】
2.臭気試験
作製した塗料1から発生する臭気を官能試験により評価した。評価は以下の通り。結果は表1に示す。
○:臭気をほとんど感じない
×:臭気を著しく感じる
【0057】
3.乾燥性試験
作製した塗料1を50℃の恒温槽に7日間貯蔵後、23℃、50%RH(以下、「標準状態」ともいう)にて、150×120×3mmの透明なガラス板にWET膜厚が1mmとなるようにアプリケーター引きし、水浸漬したときに、塗膜が流出しなくなるまでの時間を測定した。結果は表1に示す。
○:6時間未満
×:6時間以上
【0058】
5.耐熱黄変性試験
作製した塗料1を150×120×3mmの透明なガラス板に、WET膜厚が1mmとなるようにアプリケーター引きし、標準状態で7日間乾燥養生後、80℃雰囲気下に1週間放置した。このとき1週間放置前後の色相を測定し、1週間放置前後の色差(ΔE)を算出した。評価は次のとおりである。結果は表1に示す。なお、色差は、色差計(CM−3700d、ミノルタ株式会社製)を用いて行った。
○:ΔE:1.0未満
△:ΔE:1.0以上〜2.0未満
×:ΔE:2.0以上
【0059】
6.発泡倍率
黒皮鋼板に塗料をフィルムアプリケーターにてWET膜厚1mmで塗付し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下(以下「標準状態」という)で7日間養生させ、試験体を得た。この試験体を700℃で10分間加熱し、初期膜厚を基準とした発泡倍率を測定した。結果を表1に示す。なお、この試験における発泡倍率の評価基準は、次のとおりである。
◎:発泡倍率15倍以上
○:発泡倍率10倍以上〜15倍未満
△:発泡倍率5倍以上〜10倍未満
×:発泡倍率5倍未満
【0060】
7.緻密性
発泡倍率を測定した試験体を切断し、その断面における発泡炭化層の緻密性を目視にて確認した。結果を表1に示す。評価基準は、緻密性が高いものを「○」、緻密性が低いものを「×」とした。
【0061】
(実施例2〜4、比較例1〜5)
表1に示す配合で、実施例1と同様の方法で、塗料を作製した。作製した塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果は表1に示す。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アニオン性官能基を有する合成樹脂エマルション
(B)リン化合物
(C)多価アルコール
(D)3級アミノ基及びポリアルキレンオキサイド基を有するウレタン化合物
(E)揮発性塩基
を含有することを特徴とする発泡性耐火塗料。
【請求項2】
(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分50〜2000重量部、(C)成分5〜600重量部、(D)成分0.1重量部〜50重量部、(E)成分0.01重量部〜2重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の発泡性耐火塗料。



【公開番号】特開2008−88227(P2008−88227A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268238(P2006−268238)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】