発泡樹脂の成形装置及び成形方法
【課題】エネルギーの利用効率が高く、短時間で加熱冷却ができるため成形サイクルが短縮でき、さらに品質の均一な成形品を製造する発泡樹脂の成形装置及び成形方法を提供する。
【解決手段】コア金型1Aとキャビティ金型1Bとからなり、両型の間に少なくとも1個の成形室2が形成される発泡樹脂成形装置1において、前記コア金型1A及び/又はキャビティ金型1Bがセパレーター3a、3bにより成形加熱面4a、4bと用役供給部用空間部5a、5bからなる成形ゾーン6a、6bと蒸気室8a、8bとに分離され、前記セパレーター3a、3bには水蒸気を通過させるが冷却水及び空気を実質的に通過させない通孔7a、7bが設けられていることを特徴とする発泡樹脂の成形装置1及び該成形装置1を用いた成形方法である。
【解決手段】コア金型1Aとキャビティ金型1Bとからなり、両型の間に少なくとも1個の成形室2が形成される発泡樹脂成形装置1において、前記コア金型1A及び/又はキャビティ金型1Bがセパレーター3a、3bにより成形加熱面4a、4bと用役供給部用空間部5a、5bからなる成形ゾーン6a、6bと蒸気室8a、8bとに分離され、前記セパレーター3a、3bには水蒸気を通過させるが冷却水及び空気を実質的に通過させない通孔7a、7bが設けられていることを特徴とする発泡樹脂の成形装置1及び該成形装置1を用いた成形方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂の成形装置及び成形方法に係り、エネルギーの利用効率が高く、短時間で加熱冷却ができるので成形サイクルが短縮され、さらに品質の均一性に優れた成形品を提供できる発泡樹脂の成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡合成樹脂からなる成形体を作成する方法としては、金型内の成形室内に、ブタン、ペンタンや空気などの発泡剤を含浸させた発泡性熱可塑性樹脂のビーズ(以下、単に樹脂ビーズと称する)を充填してから、水蒸気により樹脂を加熱軟化させると共に発泡剤を熱膨張させ、樹脂ビーズ同士を融着させ成形品とする、所謂ビーズ法が広く用いられている。
このビーズ法を実施するために従来から用いられている成形装置Pは、図7〜図10に示したように、コア金型1Aとキャビティ金型1Bとからなり、これらが組み合わされて両金型の間に成形室2が形成されるように構成されている。
【0003】
上記のような成形装置Pを用いて成形品を成形するには、まず、コア金型1Aとキャビティ金型1Bとの間に形成される成形室2内に充填機(図示せず)により樹脂ビーズを充填する。この場合、必要に応じて成形室2を減圧し、樹脂ビーズを成形室2内に流入しやすいようにして充填する、又は樹脂ビーズを予め圧縮空気で加圧して加圧充填することも可能である。
次に、図7に示すように、キャビティ側蒸気供給部9b から水蒸気が供給され、蒸気孔2b 、2aを通じてキャビティ金型1Bからコア金型1Aに通過してコア側ドレン水排出部12a より排出される(一方加熱)。
次に、図8に示すように、水蒸気がコア側蒸気供給部9a から供給され、蒸気孔2a、2b を通じてコア金型1Aからキャビティ金型1Bに通過してキャビティ側ドレン水排出部12b より排出される(逆一方加熱)。
更に、図9に示すように、コア側ドレン水排出部12a 及びキャビティ側ドレン水排出部12b を閉じた状態で、コア金型1A及びキャビティ金型1Bの両方から同時に加熱される(両面加熱)。
成形室2内の樹脂ビーズ同士が十分に加熱膨張し融着すると、図10に示すように、冷却水供給部(配管)10a 、10b から、矢示したように成形加熱面4a、4b に冷却水を吹き付け、更に、ドレン水排出弁12a及び12bから真空吸引して気化潜熱で成形室2内の成形品を冷却し、しかる後、コア金型1Aとキャビティ金型1Bを型開し、押し出しピン(図示せず)、及び必要に応じて加圧空気を用いて、成形品を金型から離型して取り外す。
【0004】
上記従来の成形装置Pを用いた成形方法によれば、水蒸気により樹脂ビーズを加熱する際に成形装置Pの全体が加熱されるとともに、成形品の冷却の際には成形装置Pの全体が冷却されるので、加熱−冷却の繰り返しによる熱エネルギーのロスが大きく、且つ、加熱、冷却に長時間を要するという欠点がある。即ち、樹脂の加熱融着に必要な理論上の熱量は、実際に使用する熱量の数%程度であり、残り90%以上の熱量は1成形サイクル毎に繰り返されるコア金型1A及びキャビティ金型1Bの冷却水により冷却され廃棄されているため、エネルギーの利用効率が極めて低い。また、次の成形の際には冷却された金型を再び樹脂ビーズの加熱溶融温度にまで加熱するため、加熱に必要な大量のエネルギーを必要とするばかりでなく、加熱時間が長くなり成形サイクルが長くなる。即ち、成形装置全体の加熱−冷却を繰り返すため、エネルギーの利用効率が低く、且つ成形サイクルが長くなり、生産性が低いという問題を含んでいる。
【0005】
このような問題を解決するために、以前から様々な方法が提案されてきた。例えば、特許文献1には、複数個取り用の成形金型のうち個々の金型ないしは数個の金型毎に独立した蒸気室を設けることにより、蒸気の供給量を減らして蒸気の無駄を省く発泡成形金型が提案されている。
【0006】
また、引用文献2では成形壁裏面(成形加熱面)に向けて冷却水を噴出するためのノズルの背部に成形壁裏面からの冷却水のはねかえりを受ける飛散防止プレートを設けて、当該飛散防止プレートより後の背壁の無用な冷却を防ぎ、再加熱に必要なエネルギーを節減する発泡成形用金型が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭59−7072号公報
【特許文献2】特開平8−142091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
引用文献1に記載の発泡成形装置では、1対のコア金型とキャビティ金型からなる1乃至数個の金型間を間仕切り独立させ、更に、従来は蒸気室として使用されてきた蒸気室空間を用役(蒸気、水、エアー、ドレン排水)供給・排出用の空間として転用し、蒸気、水、エアーの主管及びそれらの多数の分枝管を各金型毎に配管し供給、排出を可能としている。
しかしながら、狭い用役用空間で各主管から分枝された枝管からの金型毎への供給量の不均一や、用役間の相互干渉やキャビテーションやノッキング現象等が発生しやすく、省エネルギー効果を発揮する以前に、均一な品質の成形品が得られ難いという問題をはらんでいる。
また、引用文献2に記載の発泡成形用金型では、型合せにより形成されるキャビティに原料を注入し、加熱発泡させるためのスチームを流入させる中空チャンバが型内に形成された発泡成形用金型において、中空チャンバ内に該金型の成型壁裏面に向けて冷却水を噴出させるノズルを設けると共に該ノズルの背面部を成型壁裏面からの該冷却水のはねかえりを受ける飛散防止プレートを該中空チャンバの背面から断熱状に設けることにより、金型の背壁の冷却を抑制する技術である。
しかしながら、本技術では、背板の冷却を抑制するという限定された効果は発揮されるものの、中空チャンバや成型壁裏面の冷却を抑制する効果は皆無であるため、その省エネルギー効果は極めて限定的である。
【0009】
本発明は、かかる実状に鑑み、エネルギーの利用効率が著しく改善されるとともに、成形サイクルが大幅に短縮され、さらに品質の均一性に優れた成形品が提供される発泡樹脂の成形装置及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために鋭意研究の結果、従来の蒸気室の果たしている温度、圧力、蒸気の均質化等の調整機能に着目し、これを十分にいかし、且つ、従来の過剰な蒸気ドレン水やドレンミストを含んだ蒸気を直接成形室に供給していたために、樹脂ビーズを過度に膨潤させ、加熱や融着時間を遅延させていた欠点を排除することにより、成形品の品質の均一性を確保しながら、更には、従来の成形装置の全体の加熱ー冷却の繰り返しに起因するエネルギーの利用効率の低下を、冷却時には蒸気室が冷却されない特殊な構造とすることにより解決し、省エネルギー効果を飛躍的に高めるとともに、成形サイクルを大幅に短縮することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の特徴の第1は、コア金型とキャビティ金型とからなり、両金型の間に少なくとも1個の成形室が形成される発泡樹脂成形装置において、前記コア金型及び/又はキャビティ金型がセパレーターにより成形加熱面と用役供給部用空間部からなる成形ゾーンと、蒸気室とに分離され、前記セパレーターには水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔が設けられていることを特徴とする発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0012】
本発明の特徴の第2は、通孔が、逆止弁、噴射ノズル、コアベント、スリット、透孔から選ばれる少なくとも1種である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0013】
本発明の特徴の第3は、セパレーターが成形室ごとに設けられている上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0014】
本発明の特徴の第4は、用役供給部が冷却水供給部及び空気供給部である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0015】
本発明の特徴の第5は、セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1〜70%である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0016】
本発明の特徴の第6は、セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1.5〜40%である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0017】
本発明の特徴の第7は、セパレーターが金網又はパンチングメタルからなる上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0018】
本発明の特徴の第8は、更に、空気供給部が蒸気室に設けられている上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0019】
本発明の特徴の第9は、蒸気室の容積が成形ゾーンの総容積の0.5倍以上である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0020】
本発明の特徴の第10は、上記の成形装置を用いて発泡樹脂を成形する方法であって、セパレーターにより蒸気室と分離された成形ゾーンの成形室に樹脂ビーズを充填し、蒸気室に水蒸気を供給し前記セパレーターの通孔を通過させて前記樹脂ビーズを加熱膨張、融着させて成形体とした後、前記成形ゾーンに冷却水を供給して該成形体を冷却し、離型する発泡樹脂の成形方法を内容とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発泡樹脂の成形装置及び成形方法によれば、コア金型及び/又はキャビティ金型が、セパレーターにより成形ゾーンと蒸気室とに分離されており、このセパレーターには水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔が設けられているので、成形ゾーンを冷却するために成形室に向けて冷却水を噴出しても、撥ね返った水滴はセパレーターで遮断され実質的に蒸気室に入らないか、又は抑制される。その結果、蒸気室の温度は低下せず高温の余熱により高温に保たれ次の成形に利用できるので、エネルギーの利用効率が顕著に高められる。
【0022】
また、冷却水により冷却されるのは成形ゾーンだけであるので冷却時間が大巾に短縮できるとともに、上記したように、冷却工程の後も蒸気室は高温の余熱で高温に保たれているので、次の成形のための再加熱の際も蒸気室の高温の余熱を有効に利用することができ、その結果、エネルギーの利用効率が顕著に高められるとともに、加熱時間が短縮されるので成形サイクルが大幅に短縮される。
【0023】
蒸気室を成形ゾーンと分離することにより、蒸気室内における蒸気の温度、圧力、蒸気品質の均質化が促進され、高品質の成形品を得ることができる。
【0024】
蒸気室から成形ゾーンに供給される水蒸気中に含まれる過剰のドレン水やドレンミストをセパレーターの通孔で落下・分離され、調質化された高品質の水蒸気を成形ゾーンに供給することができる。その結果、成形ゾーンへの過剰のドレン水やドレンミストの侵入が抑制されることにより、金型の昇温と成形室内の樹脂ビーズ間の蒸気通過量が向上し、水蒸気量の削減と、加熱・融着時間の短縮化が達成される。
以上のように、本発明によれば、成形毎に繰り返される加熱─冷却によるエネルギーのロスが防止されるとともに、加熱─冷却時間が短縮されるため、省エネルギーと成形のハイサイクル化が同時に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の成形装置の一例を示すもので、コア金型とキャビティ金型とが型開した状態を示す概略説明図である。
【図2】図2は、図1におけるコア金型とキャビティ金型を組み合わせて両型の間に成形室が形成された状態を示す概略説明図である。
【図3】図3は本発明の成形装置の別例を示す概略説明図である。
【図4】図4は本発明の成形装置による加熱工程を示す概略説明図である。
【図5】図5は本発明の成形装置による冷却工程を示す概略説明図である。
【図6】図6は本発明の成形装置による排水・脱水工程を示す概略説明図である。
【図7】図7は従来の金型を用いた一方加熱を示す概略説明図である。
【図8】図8は従来の金型を用いた逆一方加熱を示す概略説明図である。
【図9】図9は従来の金型を用いた両面加熱を示す概略説明図である。
【図10】図10は従来の金型を用いた冷却工程を示す概略説明図である。
【図11】図11は実施例1(図(a))及び比較例1(図(b))で使用された成形装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の発泡樹脂の成形装置及びこれを用いた成形方法について説明する。
本発明の発泡樹脂の成形装置は、図1及び図2に示すように、コア金型1Aとキャビティ金型1Bとからなり、両金型の間に少なくとも1個の成形室2が形成される発泡樹脂成形装置において、前記コア金型1A及び/又はキャビティ金型1Bがセパレーター3a 、3b により、成形加熱面4a、4b と用役供給部用空間部5a 、5b からなる成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8b とに分離され、前記セパレーター3a 、3b には水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔7a 、7b が設けられていることを特徴とする。
尚、ここで、水とは冷却水及び水蒸気のドレン水の両方を含む。従って、水排出口は冷却水及びドレン水の排出口を意味する。
また、図中、図面の煩雑さを避けるために、樹脂ビーズの充填機、押し出しピンや成形室のサポート(支柱)等は省略されている。
【0027】
本発明におけるコア金型1A及びキャビティ金型1Bは、図2に示すように、従来のコア金型及びキャビティ金型と同様、コア金型1Aの凸部とキャビティ金型1Bの凹部が合わさって両金型の間に成形室2が形成され、この成形室2に樹脂ビーズを充填し、次いで、水蒸気により該樹脂ビーズを加熱融着させ、しかる後、コア金型1A及びキャビティ金型1Bや成形品を冷却水により冷却するように構成されている。
【0028】
本発明におけるコア金型1A及びキャビティ金型1Bは、図1及び図2に示すように、セパレーター3a 、3b により成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8b とに分離されている。
セパレーター3a 、3b は、水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔7a 、7b が設けられた板状部材である。このような通孔としては、逆止弁(蒸気室8a、8b の圧力が成形ゾーン6a 、6b の圧力よりも高いときだけ開き水蒸気を通す弁)、水蒸気を成形室2に向けて噴射するための噴射ノズルや、コアベント等が好適である。これらを備えたプレートの他、スリットや透孔が多数穿設されたパンチングメタルや、網目を有する金網等も、通孔の大きさを自在に設計でき、安価である点で好適である。特に、金網は、開孔率や、線径や織り方、更には、複数枚重ねることにより、後記する開口率を任意に設定できる点で好適である。
透孔7a、7bは30mmφ以下が好ましく、20mmφ以下がより好ましく、10mmφ以下が更に好ましい。また、網目は10メッシュ以下が好ましく、20メッシュ以下がより好ましく、50メッシュ以下が更に好ましい。また、通孔7a、7bは、セパレーター3a、3bの全体に均一に配置されているのが好ましい。
【0029】
セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1は1〜10%が好ましく、1.5〜40%がより好ましく、2〜30%が更に好ましい。開口率が余り大きくなると、水蒸気中に含まれる過剰のドレン水やドレンミストを分離して蒸気を高品質化する効果が小さくなる傾向があり、また、冷却水が蒸気室に侵入するのを防止する効果が小さくなる傾向がある。尚、セパレーターの有効面積S1とは、金型に取り付けた部分等、セパレーターとして機能しない部分を除いた、実質的にセパレーターとしての機能を果たす部分の面積を云う。
尚、水蒸気は粘性抵抗が非常に低いため、水が簡単に通過できない程度の大きさの透孔やスリットでも簡単に通過できる。また、この程度の透孔、スリットや網目が穿設されている場合、水の噴射圧や排水を押し流すための空気の圧力により、実際には僅かな量の水が蒸気室側に漏れる場合があるが、その程度の量であれば蒸気室8a、8b の温度は実質的に低下せず、高温の余熱により高温に保たれるので、エネルギー利用効率を高め、成形サイクルを短縮する本発明の目的は十分に達成される。
また、セパレーターにより成形ゾーンと蒸気室が分離されることにより、総金型重量に占める加熱、冷却が必須の成形ゾーン用の金型重量と、冷却が不要な蒸気室用の金型重量の比率は、成形品の形状にも左右されるが、概ね1:3〜1:0.5程度となり、冷却水量の大巾な低減と冷却時間の大巾な短縮効果が図られる。
【0030】
図1、図2において、セパレーター3a 、3b は、成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8b とを分離しており、成形ゾーン6a 、6b に空気供給部(配管)11a2、11b2より空気を送入することにより該成形ゾーン内に溜まった冷却水を強制的に排除できるように構成されているが、本発明において、セパレーター3a、3bによる蒸気室8a、8bと成形ゾーン6a、6bとの分離は、成形加熱面4a 、4b に噴射されて撥ね返った水滴やミストがセパレーター3a、3bにより蒸気室8a、8b に入らない程度に分離されていれば足りる。即ち、成形加熱面4a、4b で撥ね返った水滴やミストが蒸気室8a、8b 側に通過しなければ、セパレーター3a、3bの取付け固定部に僅かな隙間が開いていても差し支えない。
【0031】
本発明におけるセパレーター3a 、3b は、コア金型1Aとキャビティ金型1Bのいずれか一方又は両方に設けられるが、本発明の目的を十分に達成するためには、両方に設けられるのが好ましい。また、セパレーター3a 、3b は、図3に示すように、成形室2ごとに分けて設けることもできる。尚、図3では、セパレーター3aを、コア金型1Aのみ成形室2ごとに分けて設けているが、必要に応じキャビティ金型1Bも成形室2ごとに分けて設けてもよい。このようにすれば、成形ゾーン6a 、6b の容積を減らすと同時に蒸気室8a、8b の容積を大きくすることができるので、成形ゾーンの冷却時間を短縮できると共に、冷却後の再加熱も蒸気室の高温の余熱を有効利用できるので加熱時間を短縮することができる。
また、図3のコア金型1Aに示した例では、図2に示した例と異なり、セパレーター3a と金型の間に水排出口12a3が設けられており、冷却水やドレン水は該水排出口12a3から蒸気室8aを通って水排出部12a から排出される。この場合、冷却水やドレン水は、ミストや水滴状ではないのでスムーズに排出され、蒸気室8aを実質的に冷却することはない。
【0032】
本発明において、成形ゾーン6a、6bは、図1乃至図3に示すように、成形加熱面4a、4b と用役供給部用空間部5a、5b とからなる。
本発明において成形加熱面4a、4b とは、成形室2の外壁であると同時に水蒸気を通過させて成形室2内の樹脂ビーズを所定の温度まで加熱し、所定の形状に融着成形したり、冷却水により成形室2内の成形品を冷却するためのもので、従来の成形装置における成形加熱面と同様の構成であり、蒸気を通すための蒸気孔2a、2b (通常はコアベント)が設けられている点も従来と同様である。
本発明における用役供給部用空間部5a、5b とは、前記成形加熱面4a、4b と前記セパレーター3a 、3b の間に形成される空間部のことであり、この空間内に用役供給部が配置される。ここで用役供給部とは、例えば、成形ゾーン6a 、6b を加熱するための水蒸気、冷却するための冷却水、ドレン水を排出するための空気を供給したり、真空引きするためのもので、配管を通じて、又は、配管ではなく直接供給口を設けて用役供給部とすることができる。用役供給部が冷却水供給部の場合は各成形品を均一且つ短時間で冷却できる点で、図示したように、配管(10a、10b)とするのが好ましく、また、蒸気供給部及び空気供給部の場合は、空間部の占拠や配管の煩雑さが避けられる点で、直接供給口(9a、11a1、11a2、9b、11b1、11b2)を設けるのが好ましい。
図1、図2では、蒸気室8aには蒸気供給部9a兼空気供給部11a1が、成形ゾーン6aには空気供給部11a2が設けられている。また、蒸気室8bには蒸気供給部9b兼空気供給部11b1が、成形ゾーン6bには空気供給部11b2が設けられている。
なお、これらの用役供給部、例えば、冷却水供給部が配管からなる場合、配管の全てが用役供給部用空間部5a、5b に配置されている必要はない。例えば、図3に示したように、冷却水供給部10aの噴射ノズルが設けられている部分が用役供給部用空間部5a、5b に配置されていればよい。
【0033】
本発明において蒸気室8a、8b は、成形装置の外部から供給される高温の水蒸気を一時的に貯留し温度や圧力を調整して均質化するための空間である。また、蒸気室8a、8bがセパレーター3a 、3b によって成形ゾーン6a 、6b と隔てられていることにより水蒸気中に含まれる過剰のドレン水やミストがセパレーター3a、3bの通孔7a、7bで分離され、調質化された高品質の水蒸気をそれぞれの成形ゾーン6a 、6b に供給され、成形室2に導入される。この蒸気室の水蒸気の調質化作用により、金型の昇温と、成形室内の樹脂ビーズ間の蒸気の通過量が向上し、蒸気量の削減と、加熱、融着時間の短縮が可能となり、省エネルギーと成形のハイサイクル化が達成されるとともに、高品質の成形品を得ることができる。また、用役供給部用空間部5a、5b で噴出された冷却水は、セパレーター3a 、3b の通孔7a 、7b によって妨げられて蒸気室8a、8b に実質的に侵入することはなく、従って、成形ゾーンの冷却の際にも蒸気室の温度が大きく低下することなく高温に保たれる。従って、次の成形のための加熱を短時間で行うことができるので、エネルギーの利用効率が顕著に高められるとともに、成形サイクルが大幅に短縮される。蒸気室を構成する材質としては、通常、一般的な金型材料であるアルミが用いられるが、鉄等の熱伝導性の小さい材料を用いることにより、蒸気室の放熱を低下させ蒸気室の温度低下を防ぐことができる。
【0034】
本発明において、蒸気室8a、8b の大きさは、成形ゾーン6a 、6b に対して大きいほうが好ましく、具体的には、蒸気室8a、8b の容積を成形ゾーン6a 、6b の総容積の0.5倍以上とするのが好ましく、より好ましくは1倍以上、更に好ましくは2倍以上とされる。蒸気室8a、8b の容積が成形ゾーン6a 、6b の総容積の0.5倍未満の場合、成形ゾーンに導入される水蒸気の温度や圧力が一定になりにくく、成形品の品質が不均一になりやすい傾向がある。上限に関しては特に規定されないが、余り大きすぎると成形装置1自体が大きくなりすぎ、装置が扱い難くなるので、成形装置1全体として従来の成形装置Pと同程度の大きさになる様に蒸気室8a、8b の大きさを定めればよい。
なお、蒸気室8a、8b には、更に空気供給部を設けてもよい。これにより、蒸気室8a、8b の内圧を高め、セパレーター3a、3bの通孔7a、7bを通じて成形ゾーン6a 、6b への水蒸気導入を容易にしたり、冷却、排水の際に冷却水が蒸気室8a、8b 側に流れ込むのを一層効果的に防止することができる。
【0035】
尚、図1、図2において、コア金型1Aの下部には、蒸気室8a用の水排出口12a1、成形ゾーン6a用の水排出口12a2が、また、キャビティ金型1Bの下部には、蒸気室8b用の水排出口12b1、成形ゾーン6b用の水排出口12b2がそれぞれ設けられている。
また、図3において、コア金型1Aの下部には、蒸気室8a及び成形ゾーン6a用の水排出口12aが、キャビティ金型1Bの下部には、蒸気室8b及び成形ゾーン6b用の水排出口12bがそれぞれ設けられている。
【0036】
本発明の成形装置は、必要に応じ、コア金型1Aのバックプレート13a及びキャビティ金型1Bのバックプレート13bの外側に断熱材を配して、蒸気室8a、8bの温度の低下を防ぐことも可能である。
【0037】
以下、本発明の図1、図2で示した成形装置1を使用して成形品を製造する方法を図4〜図6に基づいて説明する。
本発明の成形装置1を使用する場合においても、加熱工程、冷却工程、排水・脱水工程、脱型工程を経て成形品が製造される点は従来の成形装置Pを使用する場合と同じであり、特に加熱工程は、水蒸気がセパレーター3a、3bの通孔7a、7bを通して供給される(図4参照)点を除けば、従来の方法と同様である。
即ち、本発明の製造装置1を使用する場合においても、図7〜図9に示した例と同様に、一方加熱、逆一方加熱、両面加熱を経て、成形室内に充填された樹脂ビーズを発泡融着させて成形体を作成する。
図4は本発明の成形装置1による加熱工程のうち両面加熱を示しているが、両面加熱に先立つ一方加熱及び逆一方加熱については原理的には従来例と同様なので、作図を省略している。
【0038】
加熱工程が終了すれば、図5に示すように、成形加熱面4a、4bに冷却水供給部(配管)10a、10bより冷却水を噴射することにより成形体を冷却する。冷却水は成形ゾーン6a、6bの熱を奪いやすくするために、冷却水を霧状にして噴霧するのが好ましいが、これに限られず、例えば冷却水を流水状に放出して大量の冷却水が成形加熱面4a、4bに接触するようにしてもよい。成形ゾーン6aの冷却水は、水排出口12a2より、また成形ゾーン6bの冷却水は水排出口12b2より排出される。
本発明においては、図5に示すように、冷却水供給部(配管)が成形ゾーン6a、6bに配置されているので、冷却水供給部10a、10bから噴射された冷却水が成形加熱面4a、4bで撥ね返ったとしても、セパレーター3a、3bの通孔7a、7bに遮断されて蒸気室8a、8bには実質的に侵入しないので、冷却工程の後でも蒸気室8a、8bの温度は高温に保たれる。また、従来の成形装置Pと異なり、蒸気室8a、8bを含めた成形装置1全体を冷却するのではなく成形ゾーン4a、4bだけを冷却するので、少量の冷却水で且つ短時間で成形品を冷却することができる。
【0039】
冷却工程が終了すれば、図6に示すように、成形ゾーン6a 、6b に空気供給部11a2、11b2より空気を供給することにより、成形ゾーン6a 、6b 内の冷却水をそれぞれ水排出口12a 2、12b 2より排出する。この際、水排出口12a 2、12b 2側から吸引することにより成形ゾーン6a 、6b 内を減圧して、成形品に含まれる水分の蒸発が促されるようにしてもよい。
なお、図4〜図6に示した成形装置においては、成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8bはセパレーター3a、3bにより分離されているので、成形ゾーン6a、6bに空気を供給した際にも、この空気はセパレーター3a、3bにより遮られ、また蒸気室8a、8bの水排出口12a1、12b1を閉止することによっても蒸気室8a、8bには実質的に侵入することはない。
【0040】
排水、脱水工程が終了すれば、成形装置1を図1のように型開し、成形品を押し出しピンにより押し出すことにより離型して取り出す。この際に、コア金型1Aの内部を加圧すると共にキャビティ金型1Bの内部を減圧して、成形品がコア金型1Aに残らないようにしてもよい。
【0041】
成形品を取り出した後、次の成形に移る。即ち、再びコア金型1Aとキャビティ金型1Bを図2のように組み合わせ、成形室2に樹脂ビーズを充填する。
樹脂ビーズを充填した後、再び成形ゾーン6a、6bに水蒸気を供給するが、先の冷却工程において蒸気室8a、8bは冷却されずに高温の余熱により高温に保たれた状態にあるので、少ない水蒸気量で且つ短時間で所定の温度にまで昇温することができる。
【0042】
以上、国内において汎用されている、図1〜図11に示すような、金型を成形機に装着した成形装置及び成形方法を例に挙げて説明したが、本発明は、海外で用いられている発泡樹脂成形機(例えば、発泡体粒子型物成形機68HP5、Kurtz社製、ドイツ国:予め、成形機本体にコア金型、キャビティ金型の各蒸気室を一体的に装備させ、金型のみを都度、交換、装着する成形装置及び成形方法)にも好適に適用することができ、本発明のセパレーターを適用することにより、高度の省エネルギー及びハイサイクル化が期待される。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0044】
実施例1〜3、比較例1
以下の製造装置及び成形条件で発泡ポリスチレン成形体を製造した。
【0045】
(1)共通条件
(1−1)使用成型機:パールスター360(アルミ製、東洋機械金属株式会社製)
(1−2)セパレーター有効面積(取り付けのための外周縁部を除く)
:135cm×125cm=16875cm2
(1−3)成形品:箱(外幅350mm×奥行き530mm×高さ120mm×肉厚22mm)、取数6ケ取り/1金型、成形品重量≒145g/個(55倍品換算)
(1−4)使用発泡樹脂:発泡ポリスチレン樹脂(商品名:カネパールNSG、株式会社カネカ製)
(1−5)発泡倍率:55倍発泡品
(1−6)成形品品質規格:融着率90%以上で表面性に優れること。
(1−7)成形蒸気圧力:0.078(MPa)
(1−8)蒸気流量計:渦流量計(商品名:YEWFLO100A、横河電気株式会社製)
【0046】
(2)セパレーター
(2−1)実施例1
(a)開口構造:アルミ製プレートに開口:成形用蒸気スリット外形10mmφ、スリット目幅0.3mm×6本=0.103cm2
(b)開口総面積:
コア金型側セパレーターのスリット数=510ヶ/1成形室×取り数6=3060個(25mm間隔に開口、開口面積315cm2 )
キャビティ金型側セパレーターのスリット数=600ヶ/1成形室×取り数6=3600個(25mm間隔に開口、開口面積371cm2 )
両セパレーターのスリットの総面積=315cm2 +371cm2 =686cm2
(c)開口率:686cm2 ÷(16875cm2 ×2)×100≒2%
(2−2)実施例2
(a)アルミ製プレートに開口:開口構造:2cmφ貫通穴(開口面積3.14cm2 )ピッチ4cm配置
(b)開口総面積:
コア金型側セパレーター貫通孔数1024個(開口面積3215cm2 )
キャビティ金型側セパレーター貫通孔数1024個(開口面積3215cm2 )
両セパレーターのスリット総面積=3215cm2 +3215cm2 =6430cm2
(c)開口率:6430cm2 ÷(16875cm2 ×2)×100≒20%
(2−3)実施例3
(a)開口構造:ステンレス平織り金網(網忠金網株式会社製)
線径1.0mm、10メッシュ、網目1.54mm、4.9Kg/m2
(b)開口面積:1目当り開口面積=1.54×1.54=2.5mm2
コア金型側セパレーター全開口面積=有効平面積×金網開口率36.8%=16875cm2 ×36.8%=6210cm2
キャビティ金型側セパレーター全開口面積はコア金型側セパレーターと同じ
(c)開口率:36.8%(金網開孔率に同じ)
【0047】
(2−4)比較例1
実施例1において、セパレーターを設置しなかった他は同じ(開口率:100%)。
【0048】
上記実施例1〜3及び比較例1における主たる成形条件及び結果を表1に示す。
また、実施例1と比較例1において、図11に示す金型の部位について、加熱工程完了時点と離型工程完了時点における温度を測定した結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記表1から、本発明の実施例1〜3によれば、比較例1に比べ、加熱時間及び冷却時間が短縮され、成形サイクル時間は12〜20%も短縮される。また、使用蒸気量及び成形重油原単位が大巾に改善され、使用エネルギー比率は比較例1に比べ約30%も削減される。
また、上記表2からは、比較例1では離型工程完了時点の温度は加熱工程完了時点の温度の約60%に低下しているのに対し、実施例1では約7〜14%の低下に止まっており、蒸気室の温度は成形品取り出し後においても高温に保たれている。
更に、実施例1の金型の成形ゾーンの金型重量は330Kg(図11(a)中のE+F)、蒸気室の金型重量は346Kg(図11(a)中のA+B+C+D)で金型全重量の51%であった。即ち、実施例1の場合は49%の成形ゾーンのみが冷却され、51%の蒸気室は冷却されないので、上記したような驚異的な省エネルギーと成形サイクルの短縮化とが図られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明の発泡樹脂の成形装置及び成形方法によれば、コア金型及び/又はキャビティ金型が、水蒸気だけを通し冷却水や空気を実質的に通さないセパレーターにより成形ゾーンと蒸気室に分離されているので、成形ゾーンの冷却が短時間でなされ、また、冷却水が蒸気室を実質的に冷却することがないので、次の成形のための加熱を少ないエネルギーで且つ短時間で行うことができる。従って、エネルギー利用効率を飛躍的に高めることができるとともに、成形品の形成サイクルを大巾に短縮することができる。さらに、蒸気室により水蒸気の温度や圧力が均質化されるとともに、水蒸気中の過剰なドレン水やドレンミストが通孔により分離され水蒸気が高品質化されるので、品質の均一な成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 発泡樹脂成形装置
1A コア金型
1B キャビティ金型
2 成形室
2a、2b 蒸気孔
3a、3b セパレーター
4a、4b 成形加熱面
5a、5b 用役供給部用空間部
6a、6b 成形ゾーン
7a、7b 通孔
8a、8b 蒸気室
9a、9b 蒸気供給部(口)
10a、10b 冷却水供給部(配管)
11a1、11a2、11b1、11b2 空気供給部(口)
12a、12b、12a1、12a2、12a3、12b1、12b2 水(冷却水、ドレン水)排出部(口)
13a、13b バックプレート
P 従来の成形装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂の成形装置及び成形方法に係り、エネルギーの利用効率が高く、短時間で加熱冷却ができるので成形サイクルが短縮され、さらに品質の均一性に優れた成形品を提供できる発泡樹脂の成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡合成樹脂からなる成形体を作成する方法としては、金型内の成形室内に、ブタン、ペンタンや空気などの発泡剤を含浸させた発泡性熱可塑性樹脂のビーズ(以下、単に樹脂ビーズと称する)を充填してから、水蒸気により樹脂を加熱軟化させると共に発泡剤を熱膨張させ、樹脂ビーズ同士を融着させ成形品とする、所謂ビーズ法が広く用いられている。
このビーズ法を実施するために従来から用いられている成形装置Pは、図7〜図10に示したように、コア金型1Aとキャビティ金型1Bとからなり、これらが組み合わされて両金型の間に成形室2が形成されるように構成されている。
【0003】
上記のような成形装置Pを用いて成形品を成形するには、まず、コア金型1Aとキャビティ金型1Bとの間に形成される成形室2内に充填機(図示せず)により樹脂ビーズを充填する。この場合、必要に応じて成形室2を減圧し、樹脂ビーズを成形室2内に流入しやすいようにして充填する、又は樹脂ビーズを予め圧縮空気で加圧して加圧充填することも可能である。
次に、図7に示すように、キャビティ側蒸気供給部9b から水蒸気が供給され、蒸気孔2b 、2aを通じてキャビティ金型1Bからコア金型1Aに通過してコア側ドレン水排出部12a より排出される(一方加熱)。
次に、図8に示すように、水蒸気がコア側蒸気供給部9a から供給され、蒸気孔2a、2b を通じてコア金型1Aからキャビティ金型1Bに通過してキャビティ側ドレン水排出部12b より排出される(逆一方加熱)。
更に、図9に示すように、コア側ドレン水排出部12a 及びキャビティ側ドレン水排出部12b を閉じた状態で、コア金型1A及びキャビティ金型1Bの両方から同時に加熱される(両面加熱)。
成形室2内の樹脂ビーズ同士が十分に加熱膨張し融着すると、図10に示すように、冷却水供給部(配管)10a 、10b から、矢示したように成形加熱面4a、4b に冷却水を吹き付け、更に、ドレン水排出弁12a及び12bから真空吸引して気化潜熱で成形室2内の成形品を冷却し、しかる後、コア金型1Aとキャビティ金型1Bを型開し、押し出しピン(図示せず)、及び必要に応じて加圧空気を用いて、成形品を金型から離型して取り外す。
【0004】
上記従来の成形装置Pを用いた成形方法によれば、水蒸気により樹脂ビーズを加熱する際に成形装置Pの全体が加熱されるとともに、成形品の冷却の際には成形装置Pの全体が冷却されるので、加熱−冷却の繰り返しによる熱エネルギーのロスが大きく、且つ、加熱、冷却に長時間を要するという欠点がある。即ち、樹脂の加熱融着に必要な理論上の熱量は、実際に使用する熱量の数%程度であり、残り90%以上の熱量は1成形サイクル毎に繰り返されるコア金型1A及びキャビティ金型1Bの冷却水により冷却され廃棄されているため、エネルギーの利用効率が極めて低い。また、次の成形の際には冷却された金型を再び樹脂ビーズの加熱溶融温度にまで加熱するため、加熱に必要な大量のエネルギーを必要とするばかりでなく、加熱時間が長くなり成形サイクルが長くなる。即ち、成形装置全体の加熱−冷却を繰り返すため、エネルギーの利用効率が低く、且つ成形サイクルが長くなり、生産性が低いという問題を含んでいる。
【0005】
このような問題を解決するために、以前から様々な方法が提案されてきた。例えば、特許文献1には、複数個取り用の成形金型のうち個々の金型ないしは数個の金型毎に独立した蒸気室を設けることにより、蒸気の供給量を減らして蒸気の無駄を省く発泡成形金型が提案されている。
【0006】
また、引用文献2では成形壁裏面(成形加熱面)に向けて冷却水を噴出するためのノズルの背部に成形壁裏面からの冷却水のはねかえりを受ける飛散防止プレートを設けて、当該飛散防止プレートより後の背壁の無用な冷却を防ぎ、再加熱に必要なエネルギーを節減する発泡成形用金型が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭59−7072号公報
【特許文献2】特開平8−142091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
引用文献1に記載の発泡成形装置では、1対のコア金型とキャビティ金型からなる1乃至数個の金型間を間仕切り独立させ、更に、従来は蒸気室として使用されてきた蒸気室空間を用役(蒸気、水、エアー、ドレン排水)供給・排出用の空間として転用し、蒸気、水、エアーの主管及びそれらの多数の分枝管を各金型毎に配管し供給、排出を可能としている。
しかしながら、狭い用役用空間で各主管から分枝された枝管からの金型毎への供給量の不均一や、用役間の相互干渉やキャビテーションやノッキング現象等が発生しやすく、省エネルギー効果を発揮する以前に、均一な品質の成形品が得られ難いという問題をはらんでいる。
また、引用文献2に記載の発泡成形用金型では、型合せにより形成されるキャビティに原料を注入し、加熱発泡させるためのスチームを流入させる中空チャンバが型内に形成された発泡成形用金型において、中空チャンバ内に該金型の成型壁裏面に向けて冷却水を噴出させるノズルを設けると共に該ノズルの背面部を成型壁裏面からの該冷却水のはねかえりを受ける飛散防止プレートを該中空チャンバの背面から断熱状に設けることにより、金型の背壁の冷却を抑制する技術である。
しかしながら、本技術では、背板の冷却を抑制するという限定された効果は発揮されるものの、中空チャンバや成型壁裏面の冷却を抑制する効果は皆無であるため、その省エネルギー効果は極めて限定的である。
【0009】
本発明は、かかる実状に鑑み、エネルギーの利用効率が著しく改善されるとともに、成形サイクルが大幅に短縮され、さらに品質の均一性に優れた成形品が提供される発泡樹脂の成形装置及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために鋭意研究の結果、従来の蒸気室の果たしている温度、圧力、蒸気の均質化等の調整機能に着目し、これを十分にいかし、且つ、従来の過剰な蒸気ドレン水やドレンミストを含んだ蒸気を直接成形室に供給していたために、樹脂ビーズを過度に膨潤させ、加熱や融着時間を遅延させていた欠点を排除することにより、成形品の品質の均一性を確保しながら、更には、従来の成形装置の全体の加熱ー冷却の繰り返しに起因するエネルギーの利用効率の低下を、冷却時には蒸気室が冷却されない特殊な構造とすることにより解決し、省エネルギー効果を飛躍的に高めるとともに、成形サイクルを大幅に短縮することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の特徴の第1は、コア金型とキャビティ金型とからなり、両金型の間に少なくとも1個の成形室が形成される発泡樹脂成形装置において、前記コア金型及び/又はキャビティ金型がセパレーターにより成形加熱面と用役供給部用空間部からなる成形ゾーンと、蒸気室とに分離され、前記セパレーターには水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔が設けられていることを特徴とする発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0012】
本発明の特徴の第2は、通孔が、逆止弁、噴射ノズル、コアベント、スリット、透孔から選ばれる少なくとも1種である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0013】
本発明の特徴の第3は、セパレーターが成形室ごとに設けられている上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0014】
本発明の特徴の第4は、用役供給部が冷却水供給部及び空気供給部である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0015】
本発明の特徴の第5は、セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1〜70%である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0016】
本発明の特徴の第6は、セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1.5〜40%である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0017】
本発明の特徴の第7は、セパレーターが金網又はパンチングメタルからなる上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0018】
本発明の特徴の第8は、更に、空気供給部が蒸気室に設けられている上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0019】
本発明の特徴の第9は、蒸気室の容積が成形ゾーンの総容積の0.5倍以上である上記の発泡樹脂の成形装置を内容とする。
【0020】
本発明の特徴の第10は、上記の成形装置を用いて発泡樹脂を成形する方法であって、セパレーターにより蒸気室と分離された成形ゾーンの成形室に樹脂ビーズを充填し、蒸気室に水蒸気を供給し前記セパレーターの通孔を通過させて前記樹脂ビーズを加熱膨張、融着させて成形体とした後、前記成形ゾーンに冷却水を供給して該成形体を冷却し、離型する発泡樹脂の成形方法を内容とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発泡樹脂の成形装置及び成形方法によれば、コア金型及び/又はキャビティ金型が、セパレーターにより成形ゾーンと蒸気室とに分離されており、このセパレーターには水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔が設けられているので、成形ゾーンを冷却するために成形室に向けて冷却水を噴出しても、撥ね返った水滴はセパレーターで遮断され実質的に蒸気室に入らないか、又は抑制される。その結果、蒸気室の温度は低下せず高温の余熱により高温に保たれ次の成形に利用できるので、エネルギーの利用効率が顕著に高められる。
【0022】
また、冷却水により冷却されるのは成形ゾーンだけであるので冷却時間が大巾に短縮できるとともに、上記したように、冷却工程の後も蒸気室は高温の余熱で高温に保たれているので、次の成形のための再加熱の際も蒸気室の高温の余熱を有効に利用することができ、その結果、エネルギーの利用効率が顕著に高められるとともに、加熱時間が短縮されるので成形サイクルが大幅に短縮される。
【0023】
蒸気室を成形ゾーンと分離することにより、蒸気室内における蒸気の温度、圧力、蒸気品質の均質化が促進され、高品質の成形品を得ることができる。
【0024】
蒸気室から成形ゾーンに供給される水蒸気中に含まれる過剰のドレン水やドレンミストをセパレーターの通孔で落下・分離され、調質化された高品質の水蒸気を成形ゾーンに供給することができる。その結果、成形ゾーンへの過剰のドレン水やドレンミストの侵入が抑制されることにより、金型の昇温と成形室内の樹脂ビーズ間の蒸気通過量が向上し、水蒸気量の削減と、加熱・融着時間の短縮化が達成される。
以上のように、本発明によれば、成形毎に繰り返される加熱─冷却によるエネルギーのロスが防止されるとともに、加熱─冷却時間が短縮されるため、省エネルギーと成形のハイサイクル化が同時に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の成形装置の一例を示すもので、コア金型とキャビティ金型とが型開した状態を示す概略説明図である。
【図2】図2は、図1におけるコア金型とキャビティ金型を組み合わせて両型の間に成形室が形成された状態を示す概略説明図である。
【図3】図3は本発明の成形装置の別例を示す概略説明図である。
【図4】図4は本発明の成形装置による加熱工程を示す概略説明図である。
【図5】図5は本発明の成形装置による冷却工程を示す概略説明図である。
【図6】図6は本発明の成形装置による排水・脱水工程を示す概略説明図である。
【図7】図7は従来の金型を用いた一方加熱を示す概略説明図である。
【図8】図8は従来の金型を用いた逆一方加熱を示す概略説明図である。
【図9】図9は従来の金型を用いた両面加熱を示す概略説明図である。
【図10】図10は従来の金型を用いた冷却工程を示す概略説明図である。
【図11】図11は実施例1(図(a))及び比較例1(図(b))で使用された成形装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の発泡樹脂の成形装置及びこれを用いた成形方法について説明する。
本発明の発泡樹脂の成形装置は、図1及び図2に示すように、コア金型1Aとキャビティ金型1Bとからなり、両金型の間に少なくとも1個の成形室2が形成される発泡樹脂成形装置において、前記コア金型1A及び/又はキャビティ金型1Bがセパレーター3a 、3b により、成形加熱面4a、4b と用役供給部用空間部5a 、5b からなる成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8b とに分離され、前記セパレーター3a 、3b には水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔7a 、7b が設けられていることを特徴とする。
尚、ここで、水とは冷却水及び水蒸気のドレン水の両方を含む。従って、水排出口は冷却水及びドレン水の排出口を意味する。
また、図中、図面の煩雑さを避けるために、樹脂ビーズの充填機、押し出しピンや成形室のサポート(支柱)等は省略されている。
【0027】
本発明におけるコア金型1A及びキャビティ金型1Bは、図2に示すように、従来のコア金型及びキャビティ金型と同様、コア金型1Aの凸部とキャビティ金型1Bの凹部が合わさって両金型の間に成形室2が形成され、この成形室2に樹脂ビーズを充填し、次いで、水蒸気により該樹脂ビーズを加熱融着させ、しかる後、コア金型1A及びキャビティ金型1Bや成形品を冷却水により冷却するように構成されている。
【0028】
本発明におけるコア金型1A及びキャビティ金型1Bは、図1及び図2に示すように、セパレーター3a 、3b により成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8b とに分離されている。
セパレーター3a 、3b は、水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔7a 、7b が設けられた板状部材である。このような通孔としては、逆止弁(蒸気室8a、8b の圧力が成形ゾーン6a 、6b の圧力よりも高いときだけ開き水蒸気を通す弁)、水蒸気を成形室2に向けて噴射するための噴射ノズルや、コアベント等が好適である。これらを備えたプレートの他、スリットや透孔が多数穿設されたパンチングメタルや、網目を有する金網等も、通孔の大きさを自在に設計でき、安価である点で好適である。特に、金網は、開孔率や、線径や織り方、更には、複数枚重ねることにより、後記する開口率を任意に設定できる点で好適である。
透孔7a、7bは30mmφ以下が好ましく、20mmφ以下がより好ましく、10mmφ以下が更に好ましい。また、網目は10メッシュ以下が好ましく、20メッシュ以下がより好ましく、50メッシュ以下が更に好ましい。また、通孔7a、7bは、セパレーター3a、3bの全体に均一に配置されているのが好ましい。
【0029】
セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1は1〜10%が好ましく、1.5〜40%がより好ましく、2〜30%が更に好ましい。開口率が余り大きくなると、水蒸気中に含まれる過剰のドレン水やドレンミストを分離して蒸気を高品質化する効果が小さくなる傾向があり、また、冷却水が蒸気室に侵入するのを防止する効果が小さくなる傾向がある。尚、セパレーターの有効面積S1とは、金型に取り付けた部分等、セパレーターとして機能しない部分を除いた、実質的にセパレーターとしての機能を果たす部分の面積を云う。
尚、水蒸気は粘性抵抗が非常に低いため、水が簡単に通過できない程度の大きさの透孔やスリットでも簡単に通過できる。また、この程度の透孔、スリットや網目が穿設されている場合、水の噴射圧や排水を押し流すための空気の圧力により、実際には僅かな量の水が蒸気室側に漏れる場合があるが、その程度の量であれば蒸気室8a、8b の温度は実質的に低下せず、高温の余熱により高温に保たれるので、エネルギー利用効率を高め、成形サイクルを短縮する本発明の目的は十分に達成される。
また、セパレーターにより成形ゾーンと蒸気室が分離されることにより、総金型重量に占める加熱、冷却が必須の成形ゾーン用の金型重量と、冷却が不要な蒸気室用の金型重量の比率は、成形品の形状にも左右されるが、概ね1:3〜1:0.5程度となり、冷却水量の大巾な低減と冷却時間の大巾な短縮効果が図られる。
【0030】
図1、図2において、セパレーター3a 、3b は、成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8b とを分離しており、成形ゾーン6a 、6b に空気供給部(配管)11a2、11b2より空気を送入することにより該成形ゾーン内に溜まった冷却水を強制的に排除できるように構成されているが、本発明において、セパレーター3a、3bによる蒸気室8a、8bと成形ゾーン6a、6bとの分離は、成形加熱面4a 、4b に噴射されて撥ね返った水滴やミストがセパレーター3a、3bにより蒸気室8a、8b に入らない程度に分離されていれば足りる。即ち、成形加熱面4a、4b で撥ね返った水滴やミストが蒸気室8a、8b 側に通過しなければ、セパレーター3a、3bの取付け固定部に僅かな隙間が開いていても差し支えない。
【0031】
本発明におけるセパレーター3a 、3b は、コア金型1Aとキャビティ金型1Bのいずれか一方又は両方に設けられるが、本発明の目的を十分に達成するためには、両方に設けられるのが好ましい。また、セパレーター3a 、3b は、図3に示すように、成形室2ごとに分けて設けることもできる。尚、図3では、セパレーター3aを、コア金型1Aのみ成形室2ごとに分けて設けているが、必要に応じキャビティ金型1Bも成形室2ごとに分けて設けてもよい。このようにすれば、成形ゾーン6a 、6b の容積を減らすと同時に蒸気室8a、8b の容積を大きくすることができるので、成形ゾーンの冷却時間を短縮できると共に、冷却後の再加熱も蒸気室の高温の余熱を有効利用できるので加熱時間を短縮することができる。
また、図3のコア金型1Aに示した例では、図2に示した例と異なり、セパレーター3a と金型の間に水排出口12a3が設けられており、冷却水やドレン水は該水排出口12a3から蒸気室8aを通って水排出部12a から排出される。この場合、冷却水やドレン水は、ミストや水滴状ではないのでスムーズに排出され、蒸気室8aを実質的に冷却することはない。
【0032】
本発明において、成形ゾーン6a、6bは、図1乃至図3に示すように、成形加熱面4a、4b と用役供給部用空間部5a、5b とからなる。
本発明において成形加熱面4a、4b とは、成形室2の外壁であると同時に水蒸気を通過させて成形室2内の樹脂ビーズを所定の温度まで加熱し、所定の形状に融着成形したり、冷却水により成形室2内の成形品を冷却するためのもので、従来の成形装置における成形加熱面と同様の構成であり、蒸気を通すための蒸気孔2a、2b (通常はコアベント)が設けられている点も従来と同様である。
本発明における用役供給部用空間部5a、5b とは、前記成形加熱面4a、4b と前記セパレーター3a 、3b の間に形成される空間部のことであり、この空間内に用役供給部が配置される。ここで用役供給部とは、例えば、成形ゾーン6a 、6b を加熱するための水蒸気、冷却するための冷却水、ドレン水を排出するための空気を供給したり、真空引きするためのもので、配管を通じて、又は、配管ではなく直接供給口を設けて用役供給部とすることができる。用役供給部が冷却水供給部の場合は各成形品を均一且つ短時間で冷却できる点で、図示したように、配管(10a、10b)とするのが好ましく、また、蒸気供給部及び空気供給部の場合は、空間部の占拠や配管の煩雑さが避けられる点で、直接供給口(9a、11a1、11a2、9b、11b1、11b2)を設けるのが好ましい。
図1、図2では、蒸気室8aには蒸気供給部9a兼空気供給部11a1が、成形ゾーン6aには空気供給部11a2が設けられている。また、蒸気室8bには蒸気供給部9b兼空気供給部11b1が、成形ゾーン6bには空気供給部11b2が設けられている。
なお、これらの用役供給部、例えば、冷却水供給部が配管からなる場合、配管の全てが用役供給部用空間部5a、5b に配置されている必要はない。例えば、図3に示したように、冷却水供給部10aの噴射ノズルが設けられている部分が用役供給部用空間部5a、5b に配置されていればよい。
【0033】
本発明において蒸気室8a、8b は、成形装置の外部から供給される高温の水蒸気を一時的に貯留し温度や圧力を調整して均質化するための空間である。また、蒸気室8a、8bがセパレーター3a 、3b によって成形ゾーン6a 、6b と隔てられていることにより水蒸気中に含まれる過剰のドレン水やミストがセパレーター3a、3bの通孔7a、7bで分離され、調質化された高品質の水蒸気をそれぞれの成形ゾーン6a 、6b に供給され、成形室2に導入される。この蒸気室の水蒸気の調質化作用により、金型の昇温と、成形室内の樹脂ビーズ間の蒸気の通過量が向上し、蒸気量の削減と、加熱、融着時間の短縮が可能となり、省エネルギーと成形のハイサイクル化が達成されるとともに、高品質の成形品を得ることができる。また、用役供給部用空間部5a、5b で噴出された冷却水は、セパレーター3a 、3b の通孔7a 、7b によって妨げられて蒸気室8a、8b に実質的に侵入することはなく、従って、成形ゾーンの冷却の際にも蒸気室の温度が大きく低下することなく高温に保たれる。従って、次の成形のための加熱を短時間で行うことができるので、エネルギーの利用効率が顕著に高められるとともに、成形サイクルが大幅に短縮される。蒸気室を構成する材質としては、通常、一般的な金型材料であるアルミが用いられるが、鉄等の熱伝導性の小さい材料を用いることにより、蒸気室の放熱を低下させ蒸気室の温度低下を防ぐことができる。
【0034】
本発明において、蒸気室8a、8b の大きさは、成形ゾーン6a 、6b に対して大きいほうが好ましく、具体的には、蒸気室8a、8b の容積を成形ゾーン6a 、6b の総容積の0.5倍以上とするのが好ましく、より好ましくは1倍以上、更に好ましくは2倍以上とされる。蒸気室8a、8b の容積が成形ゾーン6a 、6b の総容積の0.5倍未満の場合、成形ゾーンに導入される水蒸気の温度や圧力が一定になりにくく、成形品の品質が不均一になりやすい傾向がある。上限に関しては特に規定されないが、余り大きすぎると成形装置1自体が大きくなりすぎ、装置が扱い難くなるので、成形装置1全体として従来の成形装置Pと同程度の大きさになる様に蒸気室8a、8b の大きさを定めればよい。
なお、蒸気室8a、8b には、更に空気供給部を設けてもよい。これにより、蒸気室8a、8b の内圧を高め、セパレーター3a、3bの通孔7a、7bを通じて成形ゾーン6a 、6b への水蒸気導入を容易にしたり、冷却、排水の際に冷却水が蒸気室8a、8b 側に流れ込むのを一層効果的に防止することができる。
【0035】
尚、図1、図2において、コア金型1Aの下部には、蒸気室8a用の水排出口12a1、成形ゾーン6a用の水排出口12a2が、また、キャビティ金型1Bの下部には、蒸気室8b用の水排出口12b1、成形ゾーン6b用の水排出口12b2がそれぞれ設けられている。
また、図3において、コア金型1Aの下部には、蒸気室8a及び成形ゾーン6a用の水排出口12aが、キャビティ金型1Bの下部には、蒸気室8b及び成形ゾーン6b用の水排出口12bがそれぞれ設けられている。
【0036】
本発明の成形装置は、必要に応じ、コア金型1Aのバックプレート13a及びキャビティ金型1Bのバックプレート13bの外側に断熱材を配して、蒸気室8a、8bの温度の低下を防ぐことも可能である。
【0037】
以下、本発明の図1、図2で示した成形装置1を使用して成形品を製造する方法を図4〜図6に基づいて説明する。
本発明の成形装置1を使用する場合においても、加熱工程、冷却工程、排水・脱水工程、脱型工程を経て成形品が製造される点は従来の成形装置Pを使用する場合と同じであり、特に加熱工程は、水蒸気がセパレーター3a、3bの通孔7a、7bを通して供給される(図4参照)点を除けば、従来の方法と同様である。
即ち、本発明の製造装置1を使用する場合においても、図7〜図9に示した例と同様に、一方加熱、逆一方加熱、両面加熱を経て、成形室内に充填された樹脂ビーズを発泡融着させて成形体を作成する。
図4は本発明の成形装置1による加熱工程のうち両面加熱を示しているが、両面加熱に先立つ一方加熱及び逆一方加熱については原理的には従来例と同様なので、作図を省略している。
【0038】
加熱工程が終了すれば、図5に示すように、成形加熱面4a、4bに冷却水供給部(配管)10a、10bより冷却水を噴射することにより成形体を冷却する。冷却水は成形ゾーン6a、6bの熱を奪いやすくするために、冷却水を霧状にして噴霧するのが好ましいが、これに限られず、例えば冷却水を流水状に放出して大量の冷却水が成形加熱面4a、4bに接触するようにしてもよい。成形ゾーン6aの冷却水は、水排出口12a2より、また成形ゾーン6bの冷却水は水排出口12b2より排出される。
本発明においては、図5に示すように、冷却水供給部(配管)が成形ゾーン6a、6bに配置されているので、冷却水供給部10a、10bから噴射された冷却水が成形加熱面4a、4bで撥ね返ったとしても、セパレーター3a、3bの通孔7a、7bに遮断されて蒸気室8a、8bには実質的に侵入しないので、冷却工程の後でも蒸気室8a、8bの温度は高温に保たれる。また、従来の成形装置Pと異なり、蒸気室8a、8bを含めた成形装置1全体を冷却するのではなく成形ゾーン4a、4bだけを冷却するので、少量の冷却水で且つ短時間で成形品を冷却することができる。
【0039】
冷却工程が終了すれば、図6に示すように、成形ゾーン6a 、6b に空気供給部11a2、11b2より空気を供給することにより、成形ゾーン6a 、6b 内の冷却水をそれぞれ水排出口12a 2、12b 2より排出する。この際、水排出口12a 2、12b 2側から吸引することにより成形ゾーン6a 、6b 内を減圧して、成形品に含まれる水分の蒸発が促されるようにしてもよい。
なお、図4〜図6に示した成形装置においては、成形ゾーン6a 、6b と蒸気室8a、8bはセパレーター3a、3bにより分離されているので、成形ゾーン6a、6bに空気を供給した際にも、この空気はセパレーター3a、3bにより遮られ、また蒸気室8a、8bの水排出口12a1、12b1を閉止することによっても蒸気室8a、8bには実質的に侵入することはない。
【0040】
排水、脱水工程が終了すれば、成形装置1を図1のように型開し、成形品を押し出しピンにより押し出すことにより離型して取り出す。この際に、コア金型1Aの内部を加圧すると共にキャビティ金型1Bの内部を減圧して、成形品がコア金型1Aに残らないようにしてもよい。
【0041】
成形品を取り出した後、次の成形に移る。即ち、再びコア金型1Aとキャビティ金型1Bを図2のように組み合わせ、成形室2に樹脂ビーズを充填する。
樹脂ビーズを充填した後、再び成形ゾーン6a、6bに水蒸気を供給するが、先の冷却工程において蒸気室8a、8bは冷却されずに高温の余熱により高温に保たれた状態にあるので、少ない水蒸気量で且つ短時間で所定の温度にまで昇温することができる。
【0042】
以上、国内において汎用されている、図1〜図11に示すような、金型を成形機に装着した成形装置及び成形方法を例に挙げて説明したが、本発明は、海外で用いられている発泡樹脂成形機(例えば、発泡体粒子型物成形機68HP5、Kurtz社製、ドイツ国:予め、成形機本体にコア金型、キャビティ金型の各蒸気室を一体的に装備させ、金型のみを都度、交換、装着する成形装置及び成形方法)にも好適に適用することができ、本発明のセパレーターを適用することにより、高度の省エネルギー及びハイサイクル化が期待される。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0044】
実施例1〜3、比較例1
以下の製造装置及び成形条件で発泡ポリスチレン成形体を製造した。
【0045】
(1)共通条件
(1−1)使用成型機:パールスター360(アルミ製、東洋機械金属株式会社製)
(1−2)セパレーター有効面積(取り付けのための外周縁部を除く)
:135cm×125cm=16875cm2
(1−3)成形品:箱(外幅350mm×奥行き530mm×高さ120mm×肉厚22mm)、取数6ケ取り/1金型、成形品重量≒145g/個(55倍品換算)
(1−4)使用発泡樹脂:発泡ポリスチレン樹脂(商品名:カネパールNSG、株式会社カネカ製)
(1−5)発泡倍率:55倍発泡品
(1−6)成形品品質規格:融着率90%以上で表面性に優れること。
(1−7)成形蒸気圧力:0.078(MPa)
(1−8)蒸気流量計:渦流量計(商品名:YEWFLO100A、横河電気株式会社製)
【0046】
(2)セパレーター
(2−1)実施例1
(a)開口構造:アルミ製プレートに開口:成形用蒸気スリット外形10mmφ、スリット目幅0.3mm×6本=0.103cm2
(b)開口総面積:
コア金型側セパレーターのスリット数=510ヶ/1成形室×取り数6=3060個(25mm間隔に開口、開口面積315cm2 )
キャビティ金型側セパレーターのスリット数=600ヶ/1成形室×取り数6=3600個(25mm間隔に開口、開口面積371cm2 )
両セパレーターのスリットの総面積=315cm2 +371cm2 =686cm2
(c)開口率:686cm2 ÷(16875cm2 ×2)×100≒2%
(2−2)実施例2
(a)アルミ製プレートに開口:開口構造:2cmφ貫通穴(開口面積3.14cm2 )ピッチ4cm配置
(b)開口総面積:
コア金型側セパレーター貫通孔数1024個(開口面積3215cm2 )
キャビティ金型側セパレーター貫通孔数1024個(開口面積3215cm2 )
両セパレーターのスリット総面積=3215cm2 +3215cm2 =6430cm2
(c)開口率:6430cm2 ÷(16875cm2 ×2)×100≒20%
(2−3)実施例3
(a)開口構造:ステンレス平織り金網(網忠金網株式会社製)
線径1.0mm、10メッシュ、網目1.54mm、4.9Kg/m2
(b)開口面積:1目当り開口面積=1.54×1.54=2.5mm2
コア金型側セパレーター全開口面積=有効平面積×金網開口率36.8%=16875cm2 ×36.8%=6210cm2
キャビティ金型側セパレーター全開口面積はコア金型側セパレーターと同じ
(c)開口率:36.8%(金網開孔率に同じ)
【0047】
(2−4)比較例1
実施例1において、セパレーターを設置しなかった他は同じ(開口率:100%)。
【0048】
上記実施例1〜3及び比較例1における主たる成形条件及び結果を表1に示す。
また、実施例1と比較例1において、図11に示す金型の部位について、加熱工程完了時点と離型工程完了時点における温度を測定した結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記表1から、本発明の実施例1〜3によれば、比較例1に比べ、加熱時間及び冷却時間が短縮され、成形サイクル時間は12〜20%も短縮される。また、使用蒸気量及び成形重油原単位が大巾に改善され、使用エネルギー比率は比較例1に比べ約30%も削減される。
また、上記表2からは、比較例1では離型工程完了時点の温度は加熱工程完了時点の温度の約60%に低下しているのに対し、実施例1では約7〜14%の低下に止まっており、蒸気室の温度は成形品取り出し後においても高温に保たれている。
更に、実施例1の金型の成形ゾーンの金型重量は330Kg(図11(a)中のE+F)、蒸気室の金型重量は346Kg(図11(a)中のA+B+C+D)で金型全重量の51%であった。即ち、実施例1の場合は49%の成形ゾーンのみが冷却され、51%の蒸気室は冷却されないので、上記したような驚異的な省エネルギーと成形サイクルの短縮化とが図られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明の発泡樹脂の成形装置及び成形方法によれば、コア金型及び/又はキャビティ金型が、水蒸気だけを通し冷却水や空気を実質的に通さないセパレーターにより成形ゾーンと蒸気室に分離されているので、成形ゾーンの冷却が短時間でなされ、また、冷却水が蒸気室を実質的に冷却することがないので、次の成形のための加熱を少ないエネルギーで且つ短時間で行うことができる。従って、エネルギー利用効率を飛躍的に高めることができるとともに、成形品の形成サイクルを大巾に短縮することができる。さらに、蒸気室により水蒸気の温度や圧力が均質化されるとともに、水蒸気中の過剰なドレン水やドレンミストが通孔により分離され水蒸気が高品質化されるので、品質の均一な成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 発泡樹脂成形装置
1A コア金型
1B キャビティ金型
2 成形室
2a、2b 蒸気孔
3a、3b セパレーター
4a、4b 成形加熱面
5a、5b 用役供給部用空間部
6a、6b 成形ゾーン
7a、7b 通孔
8a、8b 蒸気室
9a、9b 蒸気供給部(口)
10a、10b 冷却水供給部(配管)
11a1、11a2、11b1、11b2 空気供給部(口)
12a、12b、12a1、12a2、12a3、12b1、12b2 水(冷却水、ドレン水)排出部(口)
13a、13b バックプレート
P 従来の成形装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア金型とキャビティ金型とからなり、両金型の間に少なくとも1個の成形室が形成される発泡樹脂成形装置において、
前記コア金型及び/又はキャビティ金型がセパレーターにより成形加熱面と用役供給部用空間部からなる成形ゾーンと、蒸気室とに分離され、
前記セパレーターには水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔が設けられていることを特徴とする発泡樹脂の成形装置。
【請求項2】
通孔が、逆止弁、噴射ノズル、コアベント、スリット、透孔から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項3】
セパレーターが成形室ごとに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項4】
用役供給部が冷却水供給部及び空気供給部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項5】
セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1〜70%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項6】
セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1.5〜40%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項7】
セパレーターが金網又はパンチングメタルからなる請求項1乃至6のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項8】
更に、空気供給部が蒸気室に設けられていることを特徴とする請求項4乃至6に記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項9】
蒸気室の容積が成形ゾーンの総容積の0.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の成形装置を用いて発泡樹脂を成形する方法であって、セパレーターにより蒸気室と分離された成形ゾーンの成形室に樹脂ビーズを充填し、蒸気室に水蒸気を供給し前記セパレーターの通孔を通過させて前記樹脂ビーズを加熱膨張、融着させて成形体とした後、前記成形ゾーンに冷却水を供給して該成形体を冷却し、離型することを特徴とする発泡樹脂の成形方法。
【請求項1】
コア金型とキャビティ金型とからなり、両金型の間に少なくとも1個の成形室が形成される発泡樹脂成形装置において、
前記コア金型及び/又はキャビティ金型がセパレーターにより成形加熱面と用役供給部用空間部からなる成形ゾーンと、蒸気室とに分離され、
前記セパレーターには水蒸気の通過を許容するが水の通過を抑制する通孔が設けられていることを特徴とする発泡樹脂の成形装置。
【請求項2】
通孔が、逆止弁、噴射ノズル、コアベント、スリット、透孔から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項3】
セパレーターが成形室ごとに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項4】
用役供給部が冷却水供給部及び空気供給部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項5】
セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1〜70%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項6】
セパレーターの有効面積S1に対する通孔の総面積S2の割合である開口率S2/S1が1.5〜40%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項7】
セパレーターが金網又はパンチングメタルからなる請求項1乃至6のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項8】
更に、空気供給部が蒸気室に設けられていることを特徴とする請求項4乃至6に記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項9】
蒸気室の容積が成形ゾーンの総容積の0.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の発泡樹脂の成形装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の成形装置を用いて発泡樹脂を成形する方法であって、セパレーターにより蒸気室と分離された成形ゾーンの成形室に樹脂ビーズを充填し、蒸気室に水蒸気を供給し前記セパレーターの通孔を通過させて前記樹脂ビーズを加熱膨張、融着させて成形体とした後、前記成形ゾーンに冷却水を供給して該成形体を冷却し、離型することを特徴とする発泡樹脂の成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−91246(P2013−91246A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234738(P2011−234738)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(511259326)株式会社グレード・アップ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(511259326)株式会社グレード・アップ (1)
【Fターム(参考)】
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