説明

発熱体製造用積層体、及びこれを有する発熱体

【課題】発熱組成物が重力の作用により包材内で片寄りなどがなく、温度上昇の立ち上がりも早く、最適温度に保つことができる発熱体を提供する。
【解決手段】包材30と、該包材30内に収容される発熱体製造用積層体1とを有する発熱体であって、発熱体製造用積層体1は、発熱組成物2と、発熱組成物2の上下に薄く積層される第1繊維層3a、3bと、第1繊維層3a、3bの上下に薄く積層される第2繊維層4a、4bとを備え、発熱組成物2は、発熱剤21a及び発熱助剤21bに増粘剤21cを配合した発熱体製造用積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体製造用積層体、及びこれを有する発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の酸素との化学反応により発熱する発熱組成物を包材内に収めた発熱体が、採暖その他の目的で使用されている。この発熱組成物としては、例えば鉄、アルミニウム等の金属粉等の発熱主剤を、反応助剤である活性炭、無機電解質及び水等と混合したもの等がある。
【0003】
これら発熱組成物は、発熱組成物が化学反応によって発熱するのに必要な量の空気を供給し得る通気性のフィルムや非通気性のフィルムに孔を設けて通気性を付与したフィルム等で構成される包材内に収納することによって、発熱体として使用される。かかる発熱体は使い捨てカイロとして使用すると、使用方法が簡単で、取扱が容易であることから広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−71404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記発熱体は、使い捨てカイロのような採暖具として使用された場合、時間が経過するにつれて発熱組成物が重力の作用により袋体の下方に片寄り、形状が変化して上記発熱体は、人体への密着性が悪くなったり、発熱量が低下するというおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、発熱組成物が重力の作用により包材内で片寄りなどがなく、均一なシート状に形成することができ、温度上昇の立ち上がりも早く、最適温度に保つことができる発熱体製造用積層体、及びこれを有する発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の発熱体製造用積層体は、発熱組成物と、該発熱組成物に薄く積層される第1繊維層と、該第1繊維層に薄く積層される第2繊維層とを備え、前記発熱組成物は、発熱剤に増粘剤を配合したことを特徴とする。
【0008】
本発明の、前記発熱体製造用積層体において、前記発熱組成物の増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)でなることを特徴とする。
【0009】
本発明の、前記発熱体製造用積層体において、前記第1繊維層は、ポリプロピレン(polypropylene)綿(PP綿)でなり、メッシュの大きさは、17〜18g/平方メートルでなることを特徴とする。
【0010】
本発明の、前記発熱体製造用積層体において、前記第2繊維層は、不織布でなり、メッシュの大きさは、17〜18g/平方メートルでなることを特徴とする。
【0011】
本発明の、前記発熱体製造用積層体において、前記第2繊維層の面に凹凸状のエンボスが形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の、前記発熱体製造用積層体において、前記エンボスは、六角形状でなることを特徴とする。
【0013】
本発明の、発熱体は、包材と、該包材内に収容される発熱体製造用積層体とを有する発熱体であって、前記発熱体製造用積層体は、発熱組成物と、該発熱組成物に薄く積層される第1繊維層と、該第1繊維層に薄く積層される第2繊維層とを備え、前記発熱組成物は、発熱剤に増粘剤を配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、第1繊維層のメッシュ内に発熱組成物が入り込んで一体化することによって薄いシート状に形成することができるため、発熱組成物が重力の作用により包材内で片寄りなどがなく、均一なシート状に形成することができる。また、多孔質フィルムなどの通気性に難のある素材を使わなくても型くずれがしないため、通気性の良い素材を使用することが可能になり、発熱組成物の温度上昇の立ち上がりも早く、最適温度に保つことができる。
【0015】
また、発熱体製造用積層体及び第1繊維層を内包する第2繊維層に不織布を採択したので、エンボスをプレス加工機によりプレスしたときにプレス加工機の型から外れやすく、加工しやすいという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る、発熱体及び包材の構成を示す平面図。
【図2】本実施形態に係る、発熱体製造用積層体の断面図。
【図3】図3(a)は、発熱主剤及び増粘剤が配合される状態を示す説明図、(b)は、発熱主剤に増粘剤が配合された状態を示す説明図。
【図4】実施形態に係る、第1繊維層のメッシュ内に発熱組成物が入り込んだ状態を示す説明図。
【図5】実施形態に係る、第2繊維層と第1繊維層とが積層された状態を示す説明図。
【図6】図6(a)及び(b)は、第2繊維層としての不織布の上下面に凹凸状のエンボスが形成されたことを示す説明図。
【図7】実施形態に係る、発熱体製造用積層体を包材に収容した発熱体の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る発熱体製造用積層体、及びこれを有する発熱体について図1乃至図7を参照して説明する。図1は、実施形態に係る発熱体10及び包材30の構成を示す平面図、図2は、発熱体10の包材30内に収容される発熱体製造用積層体1の断面図、図3(a)は、発熱主剤21a及び発熱助剤21bに増粘剤21cが配合される状態を示す説明図、図3(b)は、発熱主剤21a及び発熱助剤21bに増粘剤21cが配合された状態を示す説明図、図4は、第1繊維層3a(又は3b)のメッシュ内に発熱組成物2が入り込んだ状態を示す説明図、図5は、第2繊維層4aと第1繊維層3aとが薄くシート状に積層された状態を示す説明図、図6(a)及び図6(b)は、第2繊維層4a、4bとしての不織布の上下面に凹凸状のエンボス4c(n)、4d(n)が形成されたことを示す説明図、図7は、発熱体製造用積層体1を包材30に収容した発熱体10の説明図である。
【0018】
図1又は図2に示すように、発熱体10は、包材30と、この包材30内に収容される発熱体製造用積層体1からなる。
【0019】
発熱体製造用積層体1は、図2に示すように、薄いシート状の発熱組成物2と、この発熱組成物2の上下に薄く積層される第1繊維層3a、3bと、この第1繊維層3a、3bの上下に薄く積層される第2繊維層4a、4bからなり、積層構造となっている。
【0020】
発熱組成物2は、図2に示すように、第1繊維層3a、3bとの間に設けられる。そして、図3に示すように、発熱組成物2は、発熱主剤21a、発熱助剤21b(発熱剤ともいう)及びこれらの発熱主剤21a及び発熱助剤21bに増粘剤21cが配合されたものでなる。発熱主剤21aとして、例えば、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等が利用されるが、空気中の酸素と容易に反応し、反応の際に発熱するものであればよい。また、発熱助剤21bとして、活性炭を用いることが好ましく、シリカ、バーミキュライト、吸水性ポリマー、木粉等の保水剤を加えることもできる。上記活性炭としては、ヤシガラ活性炭、木粉炭、石炭、コークス炭、泥炭等が挙げられ、上記吸水性ポリマーとして、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸塩架橋物等が挙げられる。
【0021】
増粘剤21cは、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、CMC)が用いられる。カルボキシメチルセルロースは、セルロースの誘導体で、セルロースの骨格を有するグルコピラノースモノマーのヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基(−CH2−COOH)を結合させたものである。本発明の実施形態では、発熱主剤21a及び発熱助剤21bに増粘剤21cを配合している点に特徴を有するものである。本発明の実施形態では、増粘剤21cとして、CMCを使用したが、同様の機能を発揮するものであれば他の増粘剤も適宜使用してもよい。
【0022】
図3(a)及び(b)に示す発熱組成物2は、第1繊維層3a及び3b間に積層して設けられている。第1繊維層3a及び3bは、それぞれポリプロピレン(polypropylene)綿(PP綿)が用いられている。ポリプロピレン(polypropylene)は、プロピレンを重合させた熱可塑性樹脂であり、これを用いたPP綿は、ポリプロピレン繊維と呼ばれ、軽くて柔軟性に優れた化学繊維である。本実施形態で使用されるPP綿は、メッシュ(目付け)の大きさが、17〜18g/平方メートルのものを使用しているが、後述する増粘剤21cが含有された発熱組成物2がPP綿のメッシュ内に入り込むことができるものであれば17〜18g/平方メートル以外のものを適宜採択してもよい。
【0023】
図4に示すように、第1繊維層3a(又は3b)のメッシュ内に発熱組成物2が入り込んで一体化することによって薄いシート状に形成することができる。本実施の形態によれば、発熱組成物2は、発熱主剤21a及び発熱助剤21bに増粘剤21cが配合され、この発熱組成物2を第1繊維層3a及び3bで上下に挟んでこれを上下方向からプレスすることによって、発熱組成物2と第1繊維層3a及び3bとが容易に絡み合ってシート状に形成される。
【0024】
しかして、本発明者による実験結果によれば、発熱組成物2に増粘剤21cが配合されていない場合には、第1繊維層3a及び3bで上下に挟んでこれを上下方向からプレスした場合であってもすぐ崩れてしまい、シート状に形成されず、所望の効果を得ることができなかった。
【0025】
更に、本発明の実施形態によれば、第1繊維層3a及び3bの上下に、図2及び図5に示すように、第2繊維層4a、4bが積層されている。第2繊維層4a、4bは、不織布が用いられ、本実施形態で使用される不織布は、メッシュ(目付け)の大きさが、17〜18g/平方メートルのものを使用しているが、17〜18g/平方メートル以外のものを適宜採択してもよく、また、後述する本実施形態による不織布と同様の効果が得られるものであれば、適宜他の部材を用いてもよい。
【0026】
この第2繊維層4a、4bとしての不織布は、図6に示すように、発熱組成物2、第1繊維層3a、3bの上下に積層された状態でプレス加工機27によりA−A’方向からプレスされて形成される。そして、図6(a)及び(b)に示すように、第2繊維層4a、4bとしての不織布の上下面には凹凸状のエンボス4c(n)、4d(n)が形成される。これらのエンボス4c(n)、4d(n)は、本実施形態では、蜂の巣のような六角形状で形成するのが最もよいが、矩形形状のものを格子状に配列したり、ドット形状で形成して配列することもできるが、他の形状でも適宜採択することができる。しかして、本実施形態による六角形状のものが、上面の表面積が多くなり、発熱組成物2に対して効率的に酸素供給がなされ、発熱効果が最も発揮された。その結果、温度上昇の立ち上がりの早いカイロとすることができた。
【0027】
また、本実施形態によれば、第2繊維層4a、4bとしての不織布を採択したので、エンボス4c(n)、4d(n)をプレス加工機27によりプレスしたときにプレス加工機27の型から外れやすく、加工しやすいという効果がある。また、第1繊維層3a及び3b、第2繊維層4a、4bは、メッシュ(目付け)(本実施形態では、17〜18g/平方メートルを使用した)を形成しているので、増粘剤21cを含む発熱組成物2がプレス加工機27によるプレス時に第1繊維層3a及び3bのみならず、第2繊維層4a、4bのメッシュ(目付け)内に入り込み、しかも、発熱体製造用積層体1がシート状に形成されるので、超音波切断機によって適宜所望の大きさに切断したときに、その切断断面は固まって崩れにくく、取り扱いが用意であるという効果がある。
【0028】
図7は、発熱体製造用積層体1を包材30に収容した発熱体10の説明図である。図7に示すように、包材30は、通気性シート31と、非通気性シート32からなる。本実施形態による通気性シートは、高価な多孔質フィルムを用いることもできるが、本発明者は、安価なフィルムを使用して、包材30内に発熱体製造用積層体1を収納してから、後工程によって複数の孔31a(n)を形成して通気性シート31とすることができる。また、発熱体製造用積層体1は、全体が積層構造で且つシート状に一体に形成されているので、複数の孔31a(n)を後工程によって形成しても中身がずれ落ちないという効果がある。また、孔31a(n)は、通気性シート31側に形成されるが、通気性シート31の中央及びその近傍に形成しても良いが、図7に示す両端面側X、X’側に形成しても良い。その他、適宜孔を空ける場所を中央、端面側のそれぞれを組み合わせて決めて形成しても良い。
【0029】
しかして、本発明者によれば、図7に示す両端面側X、X’側に形成した場合、発熱温度の立ち上がり速度が速かったので、両端面側X、X’側に孔31a(n)を形成した。その結果、本実施形態では、高価な多孔質フィルムを用いないで、安価なフィルムを用いても同様の効果を得ることができた。
【0030】
本発明による実施形態としては、図2に示すように、発熱体製造用積層体1は、薄いシート状の発熱組成物2と、この発熱組成物2の上下に薄く積層される第1繊維層3a、3bと、この第1繊維層3a、3bの上下に薄く積層される第2繊維層4a、4bからなる積層構造として、所謂サンドイッチのような構成としているが、第2の実施形態としては、図示してはいないが、薄いシート状の発熱組成物2と、この発熱組成物2に薄く積層される第1繊維層3aと、この第1繊維層3aに薄く積層される第2繊維層4aの構成、若しくは、薄いシート状の発熱組成物2と、この発熱組成物2に薄く積層される第1繊維層3bと、この第1繊維層3bに薄く積層される第2繊維層4bの何れかの積層構造としてもよい。こうすることによって、全体をより薄く構成することができ、安価な発熱体製造用積層体1とすることができ、所望の効果を得ることができる。
【0031】
本実施形態における発熱体製造用積層体、及び発熱体については、従来の公知技術と同一の部分については詳細な説明を省略し、本発明による実施形態としての特徴部分について詳細な説明をしているものである。
【0032】
また、本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 発熱体製造用積層体
2 発熱組成物
3a、3b 第1繊維層
4a、4b 第2繊維層
4c、4d エンボス
10 発熱体
21a 発熱主剤
21b 発熱助剤
21c 増粘剤
27 プレス加工機
30 包材
31 通気性シート
31a 孔
32 非通気性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱組成物と、該発熱組成物に薄く積層される第1繊維層と、該第1繊維層に薄く積層される第2繊維層とを備え、
前記発熱組成物は、発熱剤に増粘剤を配合したこと
を特徴とする発熱体製造用積層体。
【請求項2】
前記発熱組成物の増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)でなることを特徴とする請求項1に記載の発熱体製造用積層体。
【請求項3】
前記第1繊維層は、ポリプロピレン(polypropylene)綿(PP綿)でなり、メッシュの大きさは、17〜18g/平方メートルでなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発熱体製造用積層体。
【請求項4】
前記第2繊維層は、不織布でなり、メッシュの大きさは、17〜18g/平方メートルでなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の発熱体製造用積層体。
【請求項5】
前記第2繊維層には凹凸状のエンボスが形成されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の発熱体製造用積層体。
【請求項6】
前記エンボスは、六角形状でなることを特徴とする請求項5に記載の発熱体製造用積層体。
【請求項7】
包材と、該包材内に収容される発熱体製造用積層体とを有する発熱体であって、
前記発熱体製造用積層体は、発熱組成物と、該発熱組成物に薄く積層される第1繊維層と、該第1繊維層に薄く積層される第2繊維層とを備え、
前記発熱組成物は、発熱剤に増粘剤を配合したこと
を特徴とする発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−56293(P2012−56293A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204744(P2010−204744)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(391001457)アイリスオーヤマ株式会社 (146)
【Fターム(参考)】