説明

発熱体

本質的にシロキサンポリマーからなる電気的に絶縁性のマトリックスと、表面エネルギー及び導電性に関して異なる性質を有する第1及び第2の導電性粒子とを含むPTC SIP複合物。多層ZPZホイルは二つの金属ホイル間に存在する本発明のPTC SIP複合物を含み、それによって導電性の複合材本体を形成する。本発明によるPTC SIP複合物から作られた本質的に平坦な複合材本体と、複合材本体の表面に接続される二つの電極層とを含み、電極層は電極に接続するよう調製された金属ホイルである多層デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
正温度係数(PTC)多層インピーダンスポリマー(SIP)複合物、多層ゼロ−正−ゼロ温度係数(ZPZ)ホイル、及びPTC SIP複合物を含む多層ZPZホイルを含む多層デバイス。
【背景技術】
【0002】
幾つかのタイプの自己制御式電気発熱体が、例えば独国特許発明第2,543,314号明細書、及び対応する米国特許第4,177,376号明細書、米国特許第4,330,703号明細書、米国特許第4,543,474号明細書、米国特許第4,654,511号明細書により知られている。
【0003】
さらに、米国特許第5,057,674号明細書は、連続的な正温度係数(「PTC」)層によって互いに分離された、ゼロ温度係数(「ZTC」)を有するとされる二つの外部の半導体層を含み、二つの平行する電極によってエネルギーを与えられ、第1の電極は一つのZTC層の一つの端部と接触され、第2の平行電極は第1の電極から最も離れた端部において他のZTC層と接触されるような発熱体を記載する。
【0004】
米国特許第5,057,674号明細書によると、層状構造体の部材は、室温においてZTC層間のPTC層における抵抗が、一体としたZTC層における抵抗と比較して非常に小さく、同様に電極間のPTC層における抵抗と比較して非常に小さい。さらに、制御温度において、平行なZTC層間のPTC層における抵抗は平行なZTC層における抵抗と等しくあるべきで、制御温度において二つの部材の抵抗が等しいような構造において、時間及び単位面積当たりの生成熱(出力密度)も本質的に等しい。
【0005】
室温におけるPTC層は平行なZTC層間の短絡として働く。電圧が最初に印加されZTC層単独が熱を生成するとき、PTC層中の電極間の抵抗は非常に高く、これは幾何学的構造の結果として生じる。しかしながら、温度が上昇するにつれて、PTC層内の抵抗は一体とされたZTC層の抵抗と等しくなるまで増加する。この温度よりも少し高い温度で、二つのZTC層は電極として働き、システム全体にわたって熱は均一に生成され、ZTC層の領域の任意の場所でのさらなる温度上昇は有効に低減され、又は電流が遮断される。このように、PTC部材は殆ど制御としてのみ働き、ZTC部材はアクティブな発熱体として働く。
【0006】
また、この特許によれば、ポリマーマトリックスは本質的に結晶であり、PE及びEVAの例が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許発明第2,543,314号明細書
【特許文献2】米国特許第4,177,376号明細書
【特許文献3】米国特許第4,330,703号明細書
【特許文献4】米国特許第4,543,474号明細書
【特許文献5】米国特許第4,654,511号明細書
【特許文献6】米国特許第5,057,674号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導電性の本体の中を通過するよう装着された導電性のワイヤに基づくこの発熱体、及び従来のそのような発熱体の双方に関する問題は、発熱体中の小さな物理的損傷(穴など)が電流を遮断し、それによって発熱体の機能を停止させることである。
【0009】
さらなる問題は、最もよく知られるPTC材料がカーボンブラックなどの導電粒子を結晶ポリマーマトリックス中に含むことである。この材料が加熱されるとき、導電性粒子間及び粒子クラスター間の間隔が増大するにつれて、材料は膨張し抵抗は増大する。ポリマー融点近傍で、抵抗の鋭い立ち上がりが得られ、ポリマーが軟化及び溶融するとき材料は「トリップ」する。この効果は、粒子間の距離の増大だけではなく、溶融体中での粒子及び粒子クラスターの移動及び増加したエネルギーにより起こる粒子クラスターの破壊、及びクラスター内部の粒子の移動にも起因する。材料中のこれらの大きな変化が理由で、それは強いヒステリシス効果を示し、それ故材料は冷却後元の性質を回復することはない。さらに、トリッピング(tripping event)がポリマー融点に関連するので、トリップ温度のレベルを調整することは難しい。
【0010】
本発明の目的は、発熱体において使用するのに適切な正温度係数(PTC)材料を実現することである。
【0011】
他の目的は、発熱体に所定の一定温度を与えるために調整された組成を有するPTC材料を実現することである。
【0012】
同様に他の目的は、25〜170℃の間の一定の温度を与え得る組成を有するPTC材料を実現することである。
【0013】
さらなる目的は、物理的な損傷に対する感度が低く、意図する用途に合うよう設定されることができる一定温度を保つ発熱体を実現することである。
【0014】
さらなる目的は異なる用途に対して適合するように切断されてよい非常に薄い発熱体を実現することである。
【0015】
同様に本発明の目的は、約3〜240Vの間、例えば約3〜230Vの間、のAC又はDC電圧に対して、特に約5、6、24、48、110又は220V、特に4.8、7.2、12、24、48、60、120又は240VのAC又はDC電圧に適した発熱体を実現することである。
【0016】
他の目的は、本質的に性質を変えることなく幾つかの熱サイクルを経ることが可能な発熱体を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従来技術に対する問題は本発明によって克服される。第1の特徴によると、本発明は本質的にアモルファスポリマーからなり、異なる性質を有する第1及び第2の導電性粒子を含有する電気的に絶縁性のマトリックスを含むPTC SIP複合物であるPTC材料に関し、それによってPTC SIP複合物は伝導性のネットワークを形成する。SIPとの名称は、二つの種類の導電性粒子が含まれることを示し、一つは重畳されるPTC成分を表し、もう一方は一定の温度係数(「CTC」)を有する成分を表す。
【0018】
第2の特徴によると、本発明は二つの金属ホイル層間に本発明のPTC ZIP複合物の層を含む多層ZPZホイルに関する。ZPZとの名称は、本質的に正の温度係数を有する第3の層を包含する、本質的にゼロ温度係数を有する二つの層が含まれることを示す。
【0019】
第3の特徴によると、本発明は二つの金属ホイルの間にPTC SIP複合物の中間層を有する多層デバイス、例えば発熱体、に関する。従来知られていたそのようなデバイスとは逆に、電流はPTC SIP複合物を、層構造に垂直に、z方向に通過する。したがって、層内の小さな損傷は機能に影響しない。電流は多層ZPZホイル構造の損傷を受けていない部分においてなおも一つの金属ホイルから他方に通過する。
【0020】
さらに、材料を適切に選択することで、本発明の多層デバイスは非常に薄くなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】本発明による発熱体の一つの実施形態の、上部から見た概略図を示す。
【図1b】本発明による発熱体の一つの実施形態の、断面における概略図を示す。
【図2a】図2a及び2bは本発明の発熱体の二つの他の実施形態の概略的な透視図である。
【図2b】図2a及び2bは本発明の発熱体の二つの他の実施形態の概略的な透視図である。
【図3】本発明による異なるPTC SIP複合物に関する体積低効率と温度との間の関係を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、第1の特徴によれば、本質的にエラストマー(エラストマー性のポリマー)からなる電気的に絶縁性のマトリックスと、表面エネルギー及び導電性に関して異なる性質を有する第1及び第2の導電性粒子とを含むPTC SIP複合物に関し、それによって前記材料は伝導性のネットワークを形成する。マトリックス中に分散された第1及び第2の導電性粒子は異なる表面エネルギー及び構造的なモルフォロジーを有するカーボンブラックからなるものであってよい。
【0023】
本発明のPTC SIP複合物内のエラストマーは完全にアモルファスであり、それ故結晶性ポリマーPTC材料において存在する問題を持たない。さらに、トリップ温度領域における抵抗の増加は、エラストマーの体積膨張係数の任意の増加による、又は任意の相変化によるものであるというよりはむしろ、主に導電性粒子の性質に起因する。
【0024】
エラストマーは所定のトリップ温度未満で結晶化する傾向を持たず、かつガラス転移温度が十分低い任意の適切なアモルファスポリマーであってよい。エラストマーは、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ネオプレン、ニトリルゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群から選択されてよい。ポリマーはシロキサンエラストマー(シリコーンエラストマーと呼ばれることが多い)に基づくことが好ましく、ポリマーの主鎖はハロゲン等の置換基を有してよく、例えばポリフルオロシロキサンである。特にポリジメチルシロキサンエラストマーが好ましい。
【0025】
エラストマー性のポリマーマトリックスは少なくとも二つのタイプの導電性粒子を含有する。導電性粒子は二つのタイプのカーボンブラックを含んでよく、一つはCTCタイプ、すなわち本質的に一定の温度係数を生じさせるもの、であり、他方はPTCタイプである。さらに、フュームドシリカ粒子がポリマーマトリックス内でフィラーとして使用されてよい。好ましくは、第1の導電性粒子は表面積が小さく構造性が低いサーマルカーボンブラック、例えば中程度のサーマルカーボンブラック、を含み、第2導電性粒子は構造性が高く比表面積が大きい、ファストエクストルージョンファーネスブラック(fast extrusion furnace blacks)等の、ファーネスカーボンブラックを含む。
【0026】
サーマルカーボンブラックは平均粒子サイズが少なくとも200nm、好ましくは200〜580nm、典型的には約240nmである。それは適切には約10m/gの窒素吸着により決定される比表面積を有する。
【0027】
ファーネスカーボンブラックは粒子サイズ分布が20〜100nmの範囲であり、好ましくは40〜60nmの範囲であり、典型的には40〜48nmの範囲である。それは30〜90m/gの範囲の、好ましくは約40m/g、の窒素吸着により決定される比表面積を有する。
【0028】
PTC SIP複合物は3.6〜11重量%のファーネスカーボンブラック、35〜55重量%、好ましくは35〜50重量%のサーマルカーボンブラック、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、最大13重量%、好ましくは最大10重量%のフュームドシリカフィラー、及び35〜48重量%のシロキサンエラストマー性ポリマーを含んでよい。PTC SIP複合物はファーネスカーボンブラックの重量に基づき、0.36〜5.76重量%の一つ以上のカップリング剤を含んでもよい。
【0029】
PTC SIP複合物は室温において組成に依存して体積抵抗率が10kΩcmから10MΩcm超の範囲であってよい。本発明による多層デバイスである発熱体に使用されるPTC SIP複合物は、好ましくは体積抵抗率が少なくとも0.1MΩcmであるのがよい。
【0030】
本発明のPTC SIP複合物のトリップ温度は、PTC SIP複合物の組成を調整することによって、25から170℃の範囲内の値に設定されてよい。
【0031】
第2の特徴によると、本発明は第1の本質的に平面である金属ホイルと第2の本質的に平面である金属ホイルとの間に存在するPTC SIP複合物を含む多層ZPZホイルに関し、PTC SIP複合物は本質的にエラストマー性のアモルファスポリマーからなる電気的に絶縁性のマトリックス、及びそこに分散された第1及び第2の導電性粒子を含み、それによって複合材本体は第1の金属ホイルから第2の金属ホイルへと延びる伝導性のネットワークを形成し、第1及び第2の導電性粒子は異なる表面エネルギー及び導電性を有する。
【0032】
前記アモルファスポリマーはシロキサンポリマーを含むことが好ましい。
【0033】
好ましくは、複合材本体は本発明の第1の特徴によるPTC SIP複合物を含む。
【0034】
多層ZPZホイルは本質的にエンドレスウェブの形態であってよい。多層ZPZホイルは本発明の第3の特徴によるデバイスに適切なサイズ及び形態を有してもよい。
【0035】
第3の特徴によると、本発明は第1表面と、第1表面とは逆の第2表面とを有し、ポリマーから構成され導電性の粒子を含む電気的に絶縁性のマトリックスを含む本質的に2次元の複合材本体を含む多層デバイスに関し、前記マトリックスはそこに分散された第1及び第2の導電性粒子を含むエラストマー性のアモルファスポリマーから本質的に構成され、それによって複合材本体は複合材本体の第1の表面から反対側の第2の表面へと延びる伝導性のネットワークを形成し、第1及び第2の導電性粒子は異なる表面エネルギー及び導電性を有し、電極層は複合材本体の各表面に接続し、各電極層は金属ホイルからなり、金属ホイルは電極層に対して本質的に垂直な方向に複合材本体を通過する電流を保持する電極への接続に関して調製される。
【0036】
好ましくは、2次元の複合材本体は本発明の多層ZPZホイル内に存在するPTC SIP複合物を含む。
【0037】
多層デバイスは、電源への接続を容易にする電極層に接続された電極をさらに含んでよい。
【0038】
発熱体の複合材本体の体積抵抗率は好ましくは0.1MΩcmを超えるオーダーの大きさである。
【0039】
多層デバイスは、例えば金属ホイルを電気的に絶縁し保護することを意図したポリマー層等、金属ホイルの外側の層をさらに含んでよい。
【0040】
さらに、多層デバイスは複合材本体と各々の二つの金属ホイルとの間に位置する界面に形成された中間層を含んでよく、前記中間層は電気化学的な前処理を含む。中間層は、好ましくは複合材本体と金属ホイルとの間の接触抵抗を最小化するのがよい。前処理は電気化学的手段によって実行されてよい。
【0041】
複合材本体に使用される多層ZPZホイルは、使用前に任意のサイズ及び形状に切断されてよい、非常に長く、本質的にエンドレスウェブの形態であってよい。
【0042】
多層デバイスは、例えばオートバイのベスト、貨物輸送コンテナ、風車ローターブレード、対流型ラジエータ、航空機翼先端のデアイシング、パイプトレーシング、ノンリセッタブルヒューズ温度保持、化粧室鏡、トイレのシート、食品ボックスの熱保持、ペットバスケット、浴室タオルラック、自動車及びトラックの外部ミラーガラス、快適性を有する及び救助用のブランケット、屋外LCDパネル、ラジオ塔、手術テーブル、呼吸器フィルタ、人間の人工的なインプラント、ワークシューズ、チェーンソーハンドル及びイグニッション、屋外の携帯電話インフラ増幅器及び整流器エンクロージャ(rectifier enclosures)、水道管のデアイシング、路上車両リードアシッドバッテリー、又は快適に加熱されたフロアモジュール等のヒータにおける、発熱体として使用されてよい。この場合、PTC SIP複合物のトリップ温度は25から170℃の間、好ましくは40〜140℃の間に調製されてよい。
【0043】
本発明は以下の例及び添付される図面においてより詳細に記載される。
【0044】
図1a及び1bはシートヒータとして使用され得る本発明による絶縁された多層ZPZホイルを示す。発熱体は厚さ0.012mmの二つの銅ホイル1、2を含み、前記銅ホイルは銅ホイル1及び2の間に挟まれた厚さ0.136mmの導電性PTCポリマー層3に接着される。各銅ホイルの外側には、絶縁性の厚さ0.075mmのポリエステル層10、11が存在する。二つの電極ストリップ4、5は銅ホイル1、2上に配置され、各々がリード端子を形成する。
【0045】
図2a及び2bは発熱体に使用される本発明による多層ZPZホイルの異なる実施形態を示す。二つの多層ZPZホイルのサイズ及び形状は本質的に同じである。図2aの点線は図2bにおける多層ZPZホイルの外縁を示し、図2aにおける多層ZPZホイルとは異なる。他方で、図2bにおける点線は図2aにおける多層ZPZホイルの外縁を示し、これは図2bにおける多層ZPZホイルとは異なる。
【0046】
多層ZPZホイルはどちらも上部金属層1、底部金属層2、及び中間PTC SIP複合物層3を含む。図2aにおける多層ZPZホイルは上部金属リード端子4及び底部金属リード端子5を有する。
【0047】
導線4及び5の代わりに、図2bの多層ZPZホイルは各々上部金属層及び底部金属層の拡張部6及び7に接続された上部金属リード端子8及び底部金属リード端子9を備える。
【0048】
そのような異なる形態、幾何学的形状、及びサイズを有する発熱体は、本発明の多層ZPZホイルから容易に切り出されてよい。さらに、図2a及び2bに示されるように、金属導線は上部及び底部金属ホイルの任意の場所を無差別に接続してよい。
【0049】
図3は異なる比率のカーボンブラック粒子及びフィラーを含有するシロキサンポリマーに関する温度と体積抵抗率との間の関係を図示したものである。(A)は以下の例において記述されるCTC粉末のみを含むシロキサンポリマーである。(B)及び(D)は各々以下の例2及び例1において記載されるPTC SIP複合物に対応する。(C)、(E)、及び(F)は本発明のPTC SIP複合物の他の実施形態に対応する。
【0050】
実施例
双方の例において下記材料が使用された。
PDMS − ポリジメチルシロキサン
CB MT − 中サイズカーボンブラック、Thermax Stainless Powder N−908、Cancarb Ltd、カナダ;
CB FEF − ファストエクストルージョンファーネスブラック、Corax(登録商標) N 555、Degussa AG、ドイツ
シリカ − Aerosil(登録商標)、親水性フュームドシリカ及び
分子量500〜2500のビニルメトキシシロキサンホモオリゴマー(Gelest,Inc.)であるカップリング剤
【0051】
Thermax Stainless Powder N−908は表面積が小さく構造性が低い。表面の化学性に関しては不活性であり、比較的有機官能基を含まず、したがって耐薬品性及び耐熱性が非常に高い。均一な、ペレタイズされていない柔らかなペレットからなる。平均粒子直径は240nmである。ポリマーマトリックスに容易に分散される。
【0052】
それに対して、Corax(登録商標) N 555は、構造性が高くセミアクティブなカーボンブラックである。粒子サイズ分布は40〜48nmの間であり、算術的な平均粒子直径は46.5nmである。粒子は裸眼で見ることができる大きな凝集体を形成する。粉末は高い固有比導電率を有する。ポリマーマトリックスに対して高い粘度を与える。
【0053】
例1:
以下のポリマー複合材料が調製され、パーセンテージは仕上がり時の組成物の重量に基づく。
1.PDMS 46.5%
2.CB MT(CTC粉末) 41.2%
3.CB FEF(PTC粉末) 5.2%
4.シリカ 7.2%
さらに、PTC粉末の重量に対してカップリング剤0.36重量%
【0054】
シリカはマトリックスをレオロジー的に安定化し、カーボン粒子の間の距離を増大するために必要なフィラーである。
【0055】
粉末の一部はふるいにかけられ、液体のカップリング剤が添加され、混合物は超音波処理される。全ての成分は混合されて堅い材料となり銅ホイルの間に積層される。積層体は金属ホイルを通じた混合された材料内部への電子ビームの照射により実行される硬化の後、約130℃で24時間熱処理される。得られたシリコーンマトリックスはほぼ完全に架橋され、唯一の分子を形成する。
【0056】
得られた材料のトリップ温度は約45℃である。
【0057】
厚さ0.012mmの二つの銅ホイルによって囲まれた厚さ0.136mmの導電性ポリマーの多層ZPZホイル構造体は、銅ホイル上の二つの電極ストリップを介して48VのAC又はDC電圧を供給する電源に接続された(図1を参照されたい)。層状の構造体は電源を入れる前に−22℃まで冷却された。温度は17秒間で+45℃に上がった。最大平衡温度は+65℃だった。
【0058】
電源のオンとオフとをサイクルで実施した結果は同じトリップ温度及び平衡温度を与える。
【0059】
例2
以下のポリマー複合材料が調製され、パーセンテージは仕上がり時の組成物の重量に基づく。
1. PDMS 43.2%
2. CB MT(CTC粉末) 50.0%
3. CB FEF(PTC粉末) 4.5%
4. シリカ 2.4%
さらに、PTC粉末の重量に対してカップリング剤0.36重量%
【0060】
PTC SIP複合物は例1と同じ方法で調製された。
【0061】
得られた複合材本体はトリップ温度が約40℃である。
【0062】
厚さ0.012mmの二つの銅ホイルの間に存在する厚さ0.074mmのPTC SIP複合物を備える多層ZPZホイル構造体は、銅ホイル上の二つの電極ストリップを介して12VのAC又はDC電圧を供給する電源に接続された。層状の構造体は電源を入れる前に−15℃まで冷却された。温度は30秒間で5℃に上がった。最大平衡温度は35℃だった。
【0063】
トリップ温度及び最大平衡温度は、1)PTC粉末とCTC粉末との比率、2)シリカの比率、3)カップリング剤の比率、4)放射線量、5)照射温度、を変えることによって調製されてよい。
【0064】
本発明のPTC SIP複合物は完全に新規のタイプのPTC SIP複合物である。初期の重合体PTC材料は結晶性ポリマー、又は結晶性ポリマーとPTCタイプの導電性の粒子を含有するエラストマー性のポリマーとの混合物に基づく。抵抗の急激な上昇はポリマーマトリックスの熱膨張と、その後の融点における相変化によって得られる。この点において、ポリマーを通る導電性の経路は溶融体中の粒子の動きによって、及び粒子の凝集体の破壊によって遮断される。ポリマーが融点よりも低い温度に冷却されるとき、全ての導電性の経路が回復するわけではない。
【0065】
対照的に、本発明のPTC SIP複合材は、低比率で1)高い導電性を有し、大きなクラスター及び凝集体を形成する小さな導電性粒子(PTC粉末)を、及び高比率で2)クラスターを形成せず導電性が比較的低い大きな導電性粒子(CTC粉末)を含む。CTC粉末並びにシリカフィラーは、PTC SIP複合物のレオロジー的性質を調整するのに重要である。
【0066】
材料が加熱されるとき、どのような相変化も受けない。わずかな膨張が得られる。しかしながら、導電性における重要な変化は加熱されたときの導電性粒子の可動性の増加によって得られる。CTC粉末の低固有比導電率により、ポリマー中に多量に存在しても、この粉末は導電性が低い抵抗ベースを提供する。この導電性は図3のダイヤグラムにおける直線(A)によって示されるように、ゆっくりと減少する。
【0067】
他方PTC粉末は、大きなクラスターがポリマーを通る導電性経路を形成することにより粒子が高い固有比導電率を有することによって導電性を提供する。クラスターは可動性になる前に有意のエネルギーを必要とする。しかしながら、最終的に可動性になるとき、それらは迅速に導電性経路を壊し、残った導電性は、ゆっくりと減少する、CTC粉末により形成される基本的な導電性である。最終的には、これはさらに高い温度、平衡温度、において消失する。
【0068】
ポリマーマトリックスはどのような相変化も受けないので、迅速に低い温度に戻すと元々の導電性は回復する。
【0069】
PTC SIP複合物のトリップ温度及び最大温度は、PTC粉末とCTC粉末との間の比率を変えることによって調整されてよく、PTC粉末の比率が高いとトリップ温度は高くなる。さらには、PTC凝集体の表面処理はトリップ温度に影響する可能性がある。カップリング剤をより多量に使用することによってエラストマー性マトリックスに対するPTC粉末の結合をより強くすることも、トリップ温度を増加する可能性がある。しかしながら、PTC粉末及びカップリング剤が多すぎることにより、PTC特性の損失をもたらす可能性がある。
【0070】
本発明の多層デバイス、例えばシートヒータ等、が使用時の金属層の短絡により損傷されれば、貫通孔がヒータを横切って焼かれる。しかしながら、貫通孔における金属ホイル端は溶解して、金属端が孔から離れ金属層がもはや互いに接触しなくなるようにする。ヒータは、損傷した部分を除いて、金属層間のz方向における電流通過時その機能を回復する。電流が金属線によって、又は導電性ポリマー上部のプリント層を通じて運ばれる従来技術のシートヒータにおいて、そのような損傷は電流を永久に遮断しヒータを使用不能にする。
【0071】
本発明は特定の例を参照して説明された。これらの例は本発明の範囲を制限することを意図しない。この範囲は以下のクレームによってのみ規定される。
【符号の説明】
【0072】
1、2 銅ホイル
3 導電性PTCポリマー層
4、5 電極ストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的にアモルファスポリマーからなる電気的に絶縁性のマトリックスと、前記マトリックスに分散された異なる表面エネルギー及び導電性を有する第1及び第2の導電性粒子とを含み、それによって正温度係数(PTC)多層インピーダンスポリマー(SIP)複合物が導電性の複合材本体となる、PTC SIP複合物。
【請求項2】
アモルファスポリマーがシロキサンポリマーである、請求項1に記載のPTC SIP複合物。
【請求項3】
トリップ温度が25〜170℃の間、好ましくは40〜140℃の間である、請求項1又は2に記載のPTC SIP複合物。
【請求項4】
導電性粒子は材料の35重量%を超える量で、好ましくは45〜55重量%の範囲で存在する、請求項1から3の何れか一項に記載のPTC SIP複合物。
【請求項5】
第1及び第2の導電性粒子が異なる表面エネルギー及び構造的なモルフォロジーを有するカーボンブラックを含む、請求項1から4の何れか一項に記載のPTC SIP複合物。
【請求項6】
第1の導電性粒子は比表面積が小さく構造性が低いサーマルカーボンブラックを含み、第2の導電性粒子は構造性が高く比表面積が大きいファーネスカーボンブラックを含む、請求項5に記載のPTC SIP複合物。
【請求項7】
サーマルカーボンブラックは平均粒子サイズが少なくとも200nm、好ましくは200〜580nmの範囲、典型的には約240nmである、請求項6に記載のPTC SIP複合物。
【請求項8】
サーマルカーボンブラックは約10m/gの窒素吸着により決定される比表面積を有する、請求項6又は7に記載のPTC SIP複合物。
【請求項9】
ファーネスカーボンブラックは粒子サイズ分布が20〜100nmの範囲であり、好ましくは40〜60nmの範囲であり、典型的には40〜48nmの範囲である、請求項6から8の何れか一項に記載のPTC SIP複合物。
【請求項10】
ファーネスカーボンブラックは30〜90m/gの、好ましくは約40m/g、の窒素吸着により決定される比表面積を有する、請求項6から9の何れか一項に記載のPTC SIP複合物。
【請求項11】
3.6〜11重量%のファーネスカーボンブラック、35〜55重量%のサーマルカーボンブラック、2〜13重量%のフュームドシリカフィラー、及び35〜48重量%のシロキサンエラストマー性ポリマーを含む、請求項6から10の何れか一項に記載のPTC SIP複合物。
【請求項12】
ファーネスカーボンブラックの重量に基づき、0.36〜5.76重量%のカップリング剤を含む、請求項11に記載のPTC SIP複合物。
【請求項13】
カップリング剤が平均分子量500〜2500の線形シロキサンオリゴマーである、請求項12に記載のPTC SIP複合物。
【請求項14】
第1及び第2の本質的に平面である金属ホイルの間に存在する複合材本体を含み、複合材本体がPTC SIP複合物であり、PTC SIP複合物が本質的にアモルファスポリマーからなる電気的に絶縁性のマトリックスと、前記マトリックスに分散された第1及び第2の導電性粒子を含み、それによって複合材本体は第1の金属ホイルから第2の金属ホイルへと延びる伝導性のネットワークを形成し、第1及び第2の導電性粒子は異なる表面エネルギー及び導電性を有する、多層ゼロ−正−ゼロ温度係数(ZPZ)ホイル。
【請求項15】
アモルファスポリマーがシロキサンポリマーである、請求項14に記載の多層ZPZホイル。
【請求項16】
複合材本体が請求項2から13の何れか一項に記載のPTC SIP複合物である、請求項14又は15に記載の多層ZPZホイル。
【請求項17】
層状構造体がエンドレスウェブである、請求項15又は16に記載の多層ZPZホイル。
【請求項18】
複合材本体の体積抵抗率が0.1MΩcmを超えるオーダーの大きさである、請求項15から17の何れか一項に記載の多層ZPZホイル。
【請求項19】
複合材本体の厚みが400μm未満、好ましくは100〜300μmの範囲である、請求項15から18の何れか一項に記載の多層ZPZホイル。
【請求項20】
複合材本体と各々の二つの金属ホイルとの間に位置する界面に形成された中間層を含み、前記中間層は電気化学的な前処理を含む、請求項15から19の何れか一項に記載の多層ZPZホイル。
【請求項21】
中間層は接触抵抗を最小化する、請求項20に記載の多層ZPZホイル。
【請求項22】
前処理は電気化学的手段によって実行される、請求項20又は21に記載の多層ZPZホイル。
【請求項23】
第1表面と、第1表面とは逆の第2表面とを有し、マトリックス内に分散された導電性の粒子を含むポリマーから構成される電気的に絶縁性のマトリックスを含む本質的に2次元の複合材本体を含む多層デバイスであって、
前記マトリックスは第1及び第2の導電性粒子を含むエラストマー性のアモルファスポリマーから本質的に構成され、それによって複合材本体は複合材本体の第1の表面から反対側の第2の表面へと延びる伝導性のネットワークを形成し、
第1及び第2の導電性粒子は異なる表面エネルギー及び導電性を有し、
電極層は複合材本体の各表面に接続し、各電極層は金属ホイルからなり、金属ホイルは電極層に対して本質的に垂直な方向に複合材本体を通過する電流を保持する電極への接続に関して調製された、多層デバイス。
【請求項24】
アモルファスポリマーがシロキサンポリマーである、請求項23に記載の多層デバイス。
【請求項25】
複合材本体が請求項2から13の何れか一項に記載のPTC SIP複合物を含む、請求項23又は24に記載の多層デバイス。
【請求項26】
請求項14から21の何れか一項に記載の多層ZPZホイルを含む、請求項23から25の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項27】
二つの金属ホイルの各々に接続された一つの電極を含む、請求項23から26の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項28】
電極が接続される電源を含む、請求項27に記載の多層デバイス。
【請求項29】
複合材本体の体積抵抗率が0.1MΩcmを超えるオーダーの大きさである、請求項23から28の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項30】
複合材本体の厚みが400μm未満、好ましくは100〜300μmの範囲である、請求項23から29の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項31】
複合材本体と各々の二つの金属ホイルとの間に位置する界面に存在する中間層を含み、前記中間層は電気化学的な前処理を含む、請求項23から30の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項32】
中間層は接触抵抗を最小化する、請求項31に記載の多層デバイス。
【請求項33】
前処理は電気化学的手段によって実行される、請求項31又は32に記載の多層デバイス。
【請求項34】
印加される電圧が約3〜240Vの範囲の、好ましくは約4.8、7.2、12、24、48、60、120又は240VのDC又はAC電圧である、請求項23から32の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項35】
トリップ温度が40〜70℃の間であるスキーリフトシートヒータである、請求項23から34の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項36】
トリップ温度が40〜70℃の間である交通用ミラーヒータである、請求項23から34の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項37】
トリップ温度が40〜70℃の間であるスキーブーツヒータである、請求項23から34の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項38】
トリップ温度が70〜140℃の間である液体入りラジエータ発熱体である、請求項23から34の何れか一項に記載の多層デバイス。
【請求項39】
トリップ温度が40〜70℃の間である燃料コンテナ液体レベルセンサである、請求項23から34の何れか一項に記載の多層デバイス。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507247(P2010−507247A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533279(P2009−533279)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050714
【国際公開番号】WO2008/048176
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509109143)コンフラックス・アーベー (1)
【Fターム(参考)】