説明

発熱用シートおよび発熱性貼付用具

【課題】 肌に薬剤を浸透させることを促進するとともに、発熱による使用感が良好な発熱用シートを提供する。
【解決手段】 水を含有する薬剤を含浸させて使用する発熱用シートであって、通気性を有する袋体に、空気の存在下で酸化発熱する発熱組成物が封入してなるシート本体と、身体に貼付させるための接着層とを備え、前記薬剤に含有される水、前記空気中の酸素、および前記発熱組成物が反応することによって、発熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の肌への浸透を促進させる発熱用シートおよび発熱性貼付用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚から排出される水分を吸収する目的で、種々の吸水性の貼付シートについて、提案がされてきた。例えば、支持体の上に接着剤を塗布しその上を離型紙により覆い、接着時に離型紙を除き、皮膚に接着するというシートが提案されている(例えば、特許文献1など)。また、血行促進効果および老廃物の体外への排出効果を付与することを目的として、通気性面を有する袋状シート内に、木酢液から得られた粉体が充填された吸水性の貼付シートが提案されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−299818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、あらかじめ水分が入っている発熱シートタイプものは、肌に負担のない適度な温感を長時間保つのは容易ではない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、肌に薬剤を浸透させることを促進するとともに、発熱による使用感が良好な発熱用シートおよび発熱性貼付用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る発熱用シートは、水を含有する薬剤を含浸させて使用する発熱用シートであって、通気性を有する袋体に、空気の存在下で酸化発熱する発熱組成物を封入してなるシート本体と、身体に貼付させるための接着層とを備え、前記薬剤に含有される水、前記空気中の酸素、および前記発熱組成物が反応することによって、発熱することを特徴とする。
【0007】
第2の態様に係る発熱用シートは、第1の態様に係る発熱用シートであって、前記発熱組成物が、鉄粉64〜80重量%、活性炭10〜18重量%、吸水材8〜16重量%、金属硫酸塩または金属塩化物0.1〜2.8重量%含む。
【0008】
第3の態様に係る発熱用シートは、第2の態様に係る発熱用シートであって、前記鉄粉は鉄であり、前記金属硫酸塩が、硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウムであり、前記金属塩化物が、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムであり、前記吸水材がバーミキュライトである。
【0009】
第4の態様に係る発熱用シートは、第1から第3のいずれかの態様に係る発熱用シートであって、前記袋体が、通気性を有する外側シートと、水分透過性を有し、身体に貼付する側に位置する内側シートとから構成され、前記内側シートの身体に貼付される外面側に接着層を介して離型紙を設けてなる。
【0010】
第5の態様に係る発熱用シートは、第1から第3のいずれかの態様に係る発熱用シートであって、前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して、水分透過性を有する内側シートとから構成され、内面側に接着層を有し、かつ前記外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シートを、前記外側シートの外面側に被着し、前記接着層の少なくとも前記外側シート周縁より外方に延びた部分に離型紙を設けてなる。
【0011】
第6の態様に係る発熱性貼付用具は、請求項1から5のいずれかに記載の態様に係る発熱用シートと、水を含有する薬剤とからなる。
【0012】
第7の態様に係る発熱性貼付用具は、請求項6に記載の態様に係る発熱用シートと、水を含有する薬剤とからなる。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係る発熱用シートによれば、身体にとって適切な温度に設定が容易となり、優れた発熱効果が有する発熱性貼付用具を得ることができる。
【0014】
第2の態様に係る発熱用シートによれば、身体にとって適切な温度を発熱させることが可能となる。
【0015】
第3の態様に係る発熱用シートによれば、発熱効果を向上させることが可能となる。
【0016】
第4の態様に係る発熱用シートによれば、貼付対象部位に適切に貼付することが可能となるとともに、発熱性化粧用シートをコンパクトに構成することが可能となる。また、発熱用シートの接着層が肌に直接接触しているので、肌に効率よく熱を伝えながら、薬剤を肌に浸透させることができる。
【0017】
第5の態様に係る発熱用シートによれば、貼付対象部位に適切に貼付することが可能となる。また、発熱用シートの接着層が肌に直接接触しているので、肌に効率よく熱を伝えながら、薬剤を肌に浸透させることができる。
【0018】
第6の態様に係る発熱性貼付用具によれば、水を含有する薬剤を発熱用シートに含浸させて使用することにより、請求項1から7に記載の発熱用シートと同様の効果を得ることができる。
【0019】
第7の態様に係る発熱性貼付用具によれば、発熱用シートを発熱させるのに必要な水を供給させつつ、薬剤の肌へ浸透性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態である発熱用シートの構成を示す概略断面図である。
【図2】離型紙側から内側シート側方向に向けて見た粘着剤層の形状の例を示す図である。
【図3】離型紙側から内側シート側方向に向けて見た粘着剤層の形状の例を示す図である。
【図4】離型紙側から内側シート9側方向に向けて見た粘着剤層の形状の例を示す図である。
【図5】離型紙側から内側シート9側方向に向けて見た粘着剤層の形状の例を示す図である。
【図6】発熱性貼付用具の発熱用シートに薬剤を含浸させる様子の例を示す図である。
【図7】皮膚に貼付した状態の発熱用シートの構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態である発熱用シートの構成を示す概略断面図である。
【図9】皮膚に貼付した状態の第2実施形態である発熱用シートの構成を示す概略断面図である。
【図10】貼付時間と発熱温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
発熱性貼付用具は、水を含有する薬剤と、水を含有する薬剤を含浸させて使用する発熱用シートとからなる。後述するように、発熱用シートは、薬剤に含有される水、空気中の酸素、および発熱組成物が発熱反応することによって、発熱することを特徴とするものである。図1は、本発明の第1実施形態である発熱用シート1Aの構成を示す概略断面図である。
【0022】
発熱用シート1Aは、袋体10が、通気性を有する外側シート7と、水分透過性を有し、身体に貼付する側に位置する内側シート9とから構成される。袋体10は、外側シート7および身体に貼付する側に位置する内側シート9の外周縁がヒートシールされて袋状に構成されたものである。袋体10には、空気の存在下で酸化発熱する発熱組成物4が封入されている。
【0023】
内側シート9の身体に貼付される外面側に接着層6を介して離型紙11を設けている。離型紙11をはがして、内側シート9に設けられた接着層6によって皮膚20に貼付するものである。また、使用前の接着層を保護するために、内側シート9および接着層6の身体に貼付される外面側に、接着層6を介して離型紙11を設けている。貼付対象部位に適切に貼付することが可能となるとともに、発熱用シートをコンパクトに構成することが可能となる。
【0024】
袋体10には空気の存在下で酸化発熱する発熱組成物4が、実質的に水を含ませずに封入されており、発熱用シート1Aは、水を含有する薬剤を含浸させて、該薬剤に含まれる水、空気中の酸素、および発熱組成物4が発熱反応することによって、発熱することを特徴とするものである。
【0025】
発熱組成物4は、鉄粉64〜80重量%、活性炭10〜18重量%、吸水材8〜16重量%、金属硫酸塩または金属塩化物0.1〜2.8重量%含む。発熱組成物4が、このような構成をとることによって、身体にとって適切な温度を発熱させることが可能となる。外側シート7を透過してきた空気(酸素)は、袋体10内に収容されている発熱組成物4を構成する鉄粉と発熱反応し、それによって発熱が起こる。発生した熱は、内側シート9を介して使用者の皮膚20に付与される。
【0026】
発熱組成物4を構成する鉄粉、吸水材、金属硫酸塩、金属塩化物、活性炭等は公知のものを使用することができる。
【0027】
鉄粉は、64〜80重量%が好ましく、より好ましくは64〜70重量%である。鉄粉が64重量%未満の場合は発熱反応の開始が遅いか、発熱反応が速く終わってしまう。また、鉄粉が80重量%を超える場合は、発熱反応が小さく、温度上昇が遅くなる。
【0028】
活性炭は、表面の微孔に空気を取り込んで、酸素の供給を促すものである。活性炭は、10〜18重量%が好ましく、より好ましくは15.6〜18重量%である。活性炭が10重量%未満の場合は、酸素を取り込む量が十分でなく、発熱反応の速度が遅くなるか、または発熱反応がほとんど起こらなくなる。また、活性炭が18重量%を超える場合は、酸素を取り込む量が増えるので発熱反応が速く起こるが、その分発熱反応が速く終わる。
【0029】
吸水材は、内側シート9を介して吸水された水分を保持し、鉄粉の酸化発熱反応に供するものである。吸水剤は、吸水性のある物質であれば特に限定されないが、例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、ヒル石、パーライト、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、デンプン、デキストリン、吸水性ポリマー等およびこれらの混合物があげられる。吸水材は、8〜16重量%が好ましく、より好ましくは12.8〜16重量%である。吸水材が8重量%未満の場合は、水分を十分に保持することができず、水分が内側シート9から浸み出してしまう。また、吸水材が16重量%を超える場合は、水分を取り込みすぎて、温度上昇が非常に遅くなる。
【0030】
発熱反応助剤として、金属硫酸塩、金属塩化物、またはこれらの組み合わせを加えることによって、鉄粉の酸化発熱反応を促進し、発熱効果を向上させることができる。金属硫酸塩としては、例えば、硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウムがあげられる。また、金属塩化物としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄等をあげることができる。金属硫酸塩または金属塩化物は、0.6〜2.8重量%が好ましく、より好ましくは1.6〜2重量%である。金属硫酸塩または金属塩化物が0.6重量%未満の場合は、発熱反応が起こりにくくなる。また、金属硫酸塩または金属塩化物が2.8重量%を超える場合は、発熱用シートに含浸された水分中の電解質が多くなって、酸素が溶けにくくなり、発熱反応の速度が遅くなる。なお、必要に応じてその他の酸化促進剤等を加えることも可能である。
【0031】
袋体10を構成する外側シート7は、合成樹脂フィルムによって構成される。具体的には例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタート、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等、その他の公知の樹脂のフィルムを任意に選択して使用することができる。また、これらのシートは、単層または2種以上の多層構造にしてもよい。さらに、外側シート7が、合成樹脂フィルムに酸化珪素、アルミニウム、酸化アルミニウムなどを蒸着させてもよい。透明蒸着フィルムとしては、アルミニウムを蒸着した透明蒸着フィルムが内部が僅かに見えるので特に好ましい。そして、外側シート7は、合成樹脂フィルムに複数の通気孔を備えさせて、通気性を有するようにしている。外側シート7が、このような構成をとることによって、通気性を備えるとともに、吸収された水分の蒸発が抑制されるので、発熱温度を身体にとって適切な温度に調節することが容易となる。
【0032】
袋体10を構成する内側シート9は、合成樹脂からなる不織布によって構成される。不織布の原料となる合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維などを用いることができる。不織布の製造方法としては、スパンボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、などの公知の方法により製造することができる。内側シート9が不織布よりなるため、水分透過性が良好となり、水分の吸収および発熱の効果を向上させることが可能となる。
【0033】
粘着剤層6は、離型紙11と内側シート9との間に設けられており、間隙をあけて設けられた複数の粘着部からなる。粘着剤層6の材質としては、皮膚に貼ることができるものであればとくに限定されないが、例えば、公知のアクリル系粘着剤や、ゴム系ホットメルト等の粘着剤等があげられる。
【0034】
粘着剤層6の粘着部は、間隙をあけることで、通気性を備えるとともに、吸収された水分の蒸発が抑制されるので、発熱温度を身体にとって適切な温度に調節することが容易となる。
【0035】
図2〜図5は、離型紙11側から内側シート9側方向に向けて見た粘着剤層6の形状の例を示す図である。粘着剤層6は、例えば、粘着剤の内側シート9への塗布は、図2に示したような5mm〜10mm間隔の櫛引状の粘着剤層6A、図3に示したような斜向状の粘着剤層6B、図4に示したような格子状の粘着剤層6Cのようにすることができる。また、アクリル系粘着剤に水を混ぜ、粘着剤を沸騰させることにより、気泡を含んだ粘着剤とし、これを吹き付けることにより、図5に示すように、粘着剤がほぼ円形に存在しない箇所を有するか、ほぼ円形状に透水性および通気性を有する程度に塗布されている箇所を有する粘着剤層6Dのような形状にしてもよい。さらに、水玉形状等、種々の形状に配置された粘着部から構成することができ、粘着部の大きさや形状については特に限定されない。
【0036】
離型紙11としては、基材となる紙と、粘着層6に接する剥離層から構成されている。基材及び剥離層は公知のものを選択できる。
【0037】
薬剤は、水を含有するものであれば、公知の化粧水、保湿用ジェル状化粧料、液体またはジェル状外用消炎鎮痛剤組成物等の液体またはジェル状の医薬品、どのようなものでもよい。本発明に用いられる薬剤の水の配合量は、特に限定されるものではないが、発熱反応に供する点から80%以上の高い比率であることが望ましい。
【0038】
薬剤の形態としては、液体、ジェル状が好ましいが、ジェル状である場合、水の垂れや飛散を抑制して発熱用シートを発熱させるのに必要な水を供給することが可能であること、水の蒸発を抑え、保持時間が長くなること等の点から特に好ましい。ゲル構成成分としては、のカルボキシビニルポリマー、プロピルメチルセルロース、プロピルエチルセルロース等、公知の水溶性又は水膨潤性高分子化合物が用いられる。
【0039】
薬剤の形態がジェル状である場合、必要な水を発熱用シート1Aに浸透させつつ、薬剤を肌に浸透させるのに十分な量が内側シート9および接着層6の身体に貼付される外面上に保持されるのに適した粘度として、ブルックフィールド粘度(30℃)4000センチポアズ(CP)〜8000センチポアズ(CP)が好ましい。なお。粘度の測定は、B型粘度計(No.3ローター/30rpm)を使用して測定することができる。
【0040】
次に、使用方法について説明する。図6は、発熱性貼付用具100の発熱用シート1Aに薬剤50を含浸させる様子の例を示す図である。また、図7は、皮膚に貼付した状態の発熱用シート1Aの構成を示す概略断面図である。
【0041】
図6の例では、発熱用シート1Aの離型紙11が剥がされた後、容器20に充填された薬剤50が、内側シート9および接着層6の身体に貼付される外面側に噴射口25から吹付けられて、発熱用シート1Aに含浸している。そして、図3に示すように、使用者の足裏等の皮膚30に貼りつけて使用する。水を含浸させる量としては、発熱組成物6gに対して、0.25g以上(発熱組成物に対する重量比0.042以上)が好ましい。
【0042】
本実施形態によれば、水を含有する薬剤を発熱用シートに含浸させて使用することにより、身体にとって適切な温度に設定が容易となり、優れた発熱効果が有する発熱性貼付用具を得ることができる。また、温熱効果により、薬剤の浸透促進も期待でき、発熱用シートの接着層が肌に直接接触しているので、肌に効率よく熱を伝えながら、薬剤を肌に浸透させることができる。さらに、あらかじめ水分が入っている発熱用シートタイプものは、使用前に発熱させないように、形態上、空気を遮断するための密閉性が要求されるが、本実施形態の発熱用シートによれば、発熱組成物は実質上水を含んでいないため、空気を一切遮断するところまで密閉する形態にする必要がない。
[第2実施形態]
本発明の発熱用シートの第2実施形態では、外側シートの外面側に、接着層を介し、発熱用シートを安定に保持するための固定シートが積層される。図8は、本発明の第2実施形態である発熱用シート1Bの構成を示す概略断面図である。図9は、皮膚に貼付した状態の第2実施形態である発熱用シートの構成を示す概略断面図である。第2実施形態の機能構成は、前述の第1実施形態と類似しているため、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0043】
発熱用シート1Bは、第1実施形態と同様、外側シート7と、身体に貼付する側に位置して、内側シート9とから構成され、通気性を有する袋体10を備える。袋体10には、空気の存在下で酸化発熱する発熱組成物4が封入されている。外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シート5は、外側シート7を覆うように身体に貼付させるための接着層6を内面側、すなわち、外側シート7の外面側に被着している。また、接着層6は、内側シート9の皮膚接触面側が露出するように設けられている。さらに、使用前の接着層を保護するために、内側シート9および接着層6の身体に貼付される外面側に、接着層6を介して離型紙11を設けている。
【0044】
第2実施形態によれば、貼付対象部位に適切に貼付することが可能となる。また、発熱用シートの接着層が肌に直接接触しているので、肌に効率よく熱を伝えながら、薬剤を肌に浸透させることができる。したがって、第2実施形態の発熱用シート1Bにおいても、前述の第1実施形態と同様の効果を達成することができる。
[実施例]
以下、本発明の発熱用シートを実施例および比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1〜5および比較例1〜2ともに、第1実施形態と同様の形状の発熱用シートを作成した。また、実施例1〜5および比較例ともに、外側シートはポリエステル層の外側にポリプロピレン層を積層した2層の樹脂フィルムにおいて、ポリエステル層の内側(内側シート側)にアルミ蒸着加工を行った。また、粘着剤はアクリル系粘着剤を用い、内側シートはポリプロピレン繊維の不織布を用いた。実施例および比較例の発熱用シートの貼付部分(内側シート)の大きさは、65mm×55mm、発熱組成物の重量は、6.0gとした。
【0045】
実施例1〜5および比較例1〜2の発熱組成物の構成を表1に示す。実施例1〜5および比較例1〜2では、金属塩として塩化カルシウム二水和物を用いた。
【0046】
【表1】

【0047】
次に、離型紙を剥がして、薬剤を塗布し、発熱用シートに含浸させた。薬剤は、ジェルの形態とし、組成はカルボキシビニルポリマーを0.03%(重量%)、水を99,7%(重量%)配合した。実施例1〜5および比較例1〜2の薬剤の含浸量を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示すように、実施例1〜5、比較例1〜2ともに、水換算で0.45g(発熱組成物の重量(6g)比0.075)含浸させた。また、実施例1と同じ発熱用シートに水換算で0.25g(発熱組成物の重量(6g)比0.042)含浸させたものを参考例として示した。そして、成人男子の足裏に発熱用シートを貼り付けて測定を行った。
(1)貼付部位の温度
実施例1〜5、比較例1〜2および参考例について、発熱用シートを貼付した足裏の温度を測定した。
【0050】
測定時の気温は23℃、湿度45%であった。貼付時間は240分まで測定した。発熱用シートと足裏の貼付部位との間に熱電対を貼り付け、足裏の表面温度の変化が記録できるようにセットした。
【0051】
測定結果を図10に示す。図10は、貼付時間と足裏温度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は貼付時間(分)を表し、グラフの縦軸は足裏表面の温度(℃)を表す。図10に示すように、実施例1〜5および参考例は、良好に温度が上昇し、長時間高い温度を維持した。一方、比較例1においては高い温度まで上昇したが、実施例および参考例と比較すると速く温度が低下した。また、比較例2においては、35℃付近までしか温度が上昇しなかった。
(2)最高温度
足裏温度の測定値における最高温度について、実施例1〜5、比較例1〜2および参考例の評価結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
測定値の最高温度について次の基準で評価した。
【0054】
◎:38.0℃以上
○:37.5℃〜38.0℃未満
△:37.0℃〜37.5℃未満
×:37℃未満
表3に示すように、実施例1〜5および参考例は、最高温度について良好であった。一方、比較例1は、38.4℃まで温度が上昇したが、比較例2は、34.8℃までしか上昇しなかった。
(3)温度持続性
足裏温度の測定値における温度持続性について、実施例1〜5、比較例1〜2および参考例の評価結果を表3に示す。
【0055】
測定値の温度持続性について次の基準で評価した。
【0056】
◎:36℃以上の持続時間が190分以上
○:30℃以上の持続時間が160分以上〜190分未満
△:30℃以上の持続時間が130分以上〜160分未満
×:30℃以上の持続時間が130分未満
表3に示すように、実施例1〜5および参考例は、比較例1〜2と比較して、温度持続性について良好であった。
(5)所定温度までの立ち上がり
足裏温度の測定値における所定温度までの立ち上がりについて、実施例1〜5、比較例1〜2および参考例の評価結果を表3に示す。所定温度は、貼付部位に十分な温感がえられる37℃とした。足裏温度が37℃に到達するまでの時間に基づいて、37℃までの立ち上がり時間を次の基準で評価した。
【0057】
◎:40分未満
○:40分以上60分未満
△:60分以上〜80分未満
×:80分以上
表3に示すように、実施例1〜5および参考例は、37℃までの立ち上がりについて良好であった。一方、比較例1は、37℃までの立ち上がり時間が20分であり非常に良好であったが、比較例2は、足裏温度が37℃以上に達することがなかったので、評価結果を×とした。
(6)発熱効果における総合評価
上述の最高温度、温度持続性、37℃までの立ち上がりからなる発熱効果を総合的に判断した実施例1〜5、比較例1〜2および参考例の総合評価結果を表3に示す。
【0058】
総合評価について次の基準で評価した。
【0059】
◎:最高温度、温度持続性、37℃までの立ち上がりについての評価結果が◎のみである。
【0060】
○:最高温度、温度持続性、37℃までの立ち上がりについての評価結果が◎、○、△からなる。
【0061】
×:最高温度、温度持続性、37℃までの立ち上がりについての評価結果が×を含む。
【0062】
実施例1,2は、最高温度、温度持続性、37℃までの立ち上がりについて全て良好であった。また、参考例も、発熱シートに含浸させた水の量が少ないため、実施例1よりもやや発熱効果が落ちるが、良好であった。実施例3は、活性炭の量が少ないので酸素の量が十分でなく、また、バーミキュライトの量が少ないため、水分を取り込む量が減り、温度持続性が他の実施例と比較してやや劣るが、総合評価としては良好であった。実施例4は、塩化カルシウムが少ないため、発熱反応がやや進まず、最高温度は他の実施例と比較して最高温度はやや劣るが、総合評価としては良好であった。実施例5は、塩化カルシウムの量が多く、発熱用シートに含浸された薬剤中に溶解する電解質の量が増えて、含浸された薬剤中に溶解する酸素の量が減少するため、37℃までの立ち上がりがやや劣るが、総合評価としては良好であった。このように、試験の結果において、本発明の発熱用シートは、37℃までの立ち上がり時間が速く、最高温度や温度持続性の点でも満足し得る性能が得られ、良好な発熱効果を示した。これに対し、比較例1は、最高温度、37℃までの立ち上がりで優れた結果が得られたものの、温度持続性が悪く、総合評価では、実施例には及ばなかった。比較例2は、最高温度、温度持続性、37℃までの立ち上がり全てにおいて、良好な結果が得られなかった。以上により、本発明の発熱用シートは、総合的に良好な結果が得られることが示された。
【0063】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。上記実施形態で説明した構成は、矛盾が生じない限り適宜一部の構成を入れ換えてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 発熱用シート
4 発熱組成物
6 接着層
7 外側シート
9 内側シート
10 袋体
11 離型紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含有する薬剤を含浸させて使用する発熱用シートであって、
通気性を有する袋体に、空気の存在下で酸化発熱する発熱組成物を封入してなるシート本体と、
身体に貼付させるための接着層と、
を備え、
前記薬剤に含有される水、前記空気中の酸素、および前記発熱組成物が反応することによって、発熱することを特徴とする発熱用シート。
【請求項2】
前記発熱組成物が、鉄粉64〜80重量%、活性炭10〜18重量%、吸水材8〜16重量%、金属硫酸塩または金属塩化物0.1〜2.8重量%含む請求項1に記載の発熱用シート。
【請求項3】
前記鉄粉は鉄であり、前記金属硫酸塩が、硫酸カルシウムまたは硫酸マグネシウムであり、前記金属塩化物が、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムであり、前記吸水材がバーミキュライトである請求項2に記載の発熱用シート。
【請求項4】
前記袋体が、通気性を有する外側シートと、体液透過性を有し、身体に貼付する側に位置する内側シートとから構成され、
前記内側シートの身体に貼付される外面側に接着層を介して離型紙を設けてなる請求項1から3のいずれかに記載の発熱用シート。
【請求項5】
前記袋体が、外側シートと、身体に貼付する側に位置して、体液透過性を有する内側シートとから構成され、
内面側に接着層を有し、かつ前記外側シート周縁よりも外方に延びる巾広な固定シートを、前記外側シートの外面側に被着し、
前記接着層の少なくとも前記外側シート周縁より外方に延びた部分に離型紙を設けてなる請求項1から3のいずれかに記載の発熱用シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の発熱用シートと、
水を含有する薬剤と、
からなる発熱性貼付用具。
【請求項7】
前記薬剤が、ジェル状である請求項6に記載の発熱性貼付用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245044(P2012−245044A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116897(P2011−116897)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(391034891)鈴木油脂工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】