説明

発芽押麦及びその製造方法

【課題】 食物繊維が豊富でかつギャバを多く含有し、砕け易い発芽大麦を原材料とするものであっても加工工程において発芽大麦の砕麦を極力防止し、食物繊維及びギャバを含む部分を歩留り良く加工することができる発芽押麦及びその製造方法を提供しようとするものである。さらに、白米と混ぜて炊いた場合に食感良く美味しく摂取することができる発芽押麦及びその製造方法を提供しようとするものである。
【解決手段】 大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程と、上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、所定の厚さに圧扁する加熱圧扁工程によって製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャバを豊富に含む発芽押麦の製造方法及び発芽押麦に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の押麦は、外皮以外の部分に栄養素として食物繊維を豊富に(例えば8.1g/100g)含み、さらにγ−アミノ酪酸を(例えば4mg/100g)含んでいる。
上記食物繊維には、糖尿病、大腸ガン予防に効果があることが知られており、上記γ−アミノ酪酸(ギャバともいう)には高血圧の抑制、中性脂肪の増加抑制、更年期障害、脳卒中の予防等の効果があることが知られている。
そこで食物繊維及びギャバを摂取する為に、押麦を白米に混ぜて食されている。
食物繊維及びギャバを含有する従来の押麦の製造方法は、広く知られているように、原材料となる大麦を準備し、これに精麦工程、例えば横型精麦機による大麦の外皮を除去する工程と加水研磨工程を加え、精麦された大麦に対して加熱圧扁工程を施し、圧扁された押麦の大きさを揃えるように精選工程を経て製造されていた。
よって、押麦を白米に混ぜて炊きあげて食した場合、外皮が95%乃至99.9%以上除去され、米粒に近い所定の厚みに圧扁されて粒が揃っているので、食感が良い特長がある。
さらに、押麦に含まれる豊富な食物繊維とギャバを摂取することができる特長がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近、ギャバをもっと多く取りたいという要望がある。
しかし、押麦にはギャバは4mg/100gしか含まれておらず、限界がある。
ところで、大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦ともいう)にギャバが豊富に(例えば15mg/100g)含まれていることが知られている。
そこで、出願人会社においては、従来の押麦と同様に食物繊維を豊富に含み、かつ、ギャバが豊富に含まれている発芽大麦を原材料とし、従来の製造方法と同様に押麦を製造し、提供しようとした。
しかし、従来の押麦の製造方法では、発芽大麦の外皮を横型精麦機を用いて口当りが良くなるように95%以上除去しようとすると、発芽大麦の外皮を充分に除去する工程、例えば95%以上除去するような精麦工程では多くの発芽大麦が砕けてしまう。
米粒に近い大きさの所定値より小さく砕けた発芽大麦は、精選工程において選別され取除かれるので、完成品として出来る発芽押麦は歩留り約10%以下と効率が悪い。
よって、食物繊維及びギャバ等の栄養素を含む丸麦部分を歩留り良く加工することができないという問題点がある。
このことは発芽押麦商品の売値が高くなることになる。
さらに、商品として市場に流通する発芽押麦の中に、所定値より大きさは大きいが砕けたものが多く混ざってしまう。
このことは、発芽押麦商品の見栄えを悪くして商品価値を低くするおそれがある。その上、砕けた発芽押麦が流通する過程においてさらに細かく砕けるおそれがあり、さらに品質を低下させる問題点がある。
さらに、白米と混ぜて炊いて食べる場合、砕けたり折れて米粒よりも著しく小さいものが多く混ざっていると、口の中で白米と大きさが違う砕けた押麦がボソボソとして違和感を感じさせて食感が悪く、ご飯をまずくしてしまい、楽しく食事が出来ないという問題点があった。
【0004】
本件出願の目的は、食物繊維が豊富でかつギャバを多く含有する発芽押麦及びその製造方法を提供しようとするものである。
他の目的は、砕け易い発芽大麦を原材料とするものであっても、加工工程において、発芽大麦の砕麦を極力防止し、食物繊維及びギャバを含む部分を歩留り良く加工することができる発芽押麦及びその製造方法を提供しようとするものである。
さらに、砕麦の少なく見栄えがよい発芽押麦及びその製造方法を提供しようとするものである。
他の目的は、白米と混ぜて炊いた場合に、食感良く美味しく摂取することができる発芽押麦及びその製造方法を提供しようとするものである。
他の目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明における発芽押麦の製造方法は、大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程と、上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、所定の厚さに加熱圧扁する工程とから成るものである。
【0006】
また好ましくは、大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程であってその工程は、第1工程として、横型精麦機を用いて外皮を85%以上除去し、第2工程として、立型精麦機を用いて外皮を95%以上除去する精麦工程を含む工程と、上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、所定の厚さに圧扁する加熱圧扁工程とから成るものであればよい。
また好ましくは、上記精麦工程は、第1工程として、横型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を85%以上除去し、第2工程として、立型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を95%以上除去するものであればよい。
【0007】
また好ましくは、大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程であってその工程は、第1工程として、横型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を85%以上除去し、第2工程として、立型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を95%以上除去する精麦工程を含む工程と、上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、所定の厚さに圧扁する加熱圧扁工程によって製造されたこものであればよい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本願発明は、押麦の原材料として大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦ともいう)を用いるものなので、食物繊維が豊富でかつギャバを多く含有する特長がある。
よって、白米に混ぜて炊きあげて摂取する場合、従来と同様の食物繊維が摂取でき、さらにギャバを従来の約4倍量を摂取することができる効果がある。
健康志向の消費者の要望に応えることができるものである。
【0009】
さらに本願発明は、発芽押麦の製造工程における精麦工程の際、発芽大麦の外皮を除去するようにする。砕け易い発芽大麦を原材料とするものであっても、発芽大麦の砕きを極力防止し、食物繊維及びギャバ等の栄養素を含む部分を歩留り高く加工することができる製造上の効果がある。このことは、市場に対して安価な発芽押麦を提供することができることになる。
【0010】
さらに本願発明は、上記のように砕麦を極力防止するようにして外皮を除去したものであるので、商品として流通する発芽大麦に砕麦が混入するのを防止することができ、発芽押麦商品の見栄えを良くし、商品価値を高めることができる品質上の効果がある。
【0011】
さらに本願発明は、上記のように砕麦を極力防止するようにしたものであるので、所定値以上の大きさの発芽押麦を効率よく製造することができる特長がある。
このことは、発芽押麦を白米と混ぜて炊いた場合に、食感良く美味しく摂取することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本願発明の実施の形態を示す図面について説明する。図1及び図2において、1は発芽大麦(麦芽ともいう)の存在を示し、広く知られているように大麦を発芽させたもので、食物繊維、γ−アミノ酪酸(ギャバともいう)を豊富に含有している。上記発芽大麦1としては、大麦を発芽させることによりギャバの含有量が増加したものであればよく、例えばビールの製造に用いられる地醸造用ドイツ麦芽(水分:4.0%)がある。
2は上記発芽大麦1を原材料として製造される発芽押麦の存在を示す。
【0013】
Aは上記発芽大麦1の外皮を除去する精麦工程S2において用いられる精麦設備を示す。
精麦設備Aにおいて、4は周知の昇降機、3は上記昇降機4の張込口を示す。
5は上記昇降機4の排出部に設けられた周知の切替弁を示す。切替弁5は任意の駆動手段(例えば、モーター、ソレノイド)により排出方向を矢印6、10、11方向へ切替えて、発芽大麦1をタンク7、タンク12、タンク13へ任意選択的に排出できるように構成してある。
8は周知の横型精麦機(横型研削式精麦機ともいう)を示す。上記横型精麦機8は上記タンク7から発芽大麦1の供給を受け、供給された発芽大麦1を任意に設定した精麦の度合いに精麦し、精麦した発芽大麦を上記昇降機4へ向けて排出するように構成してある。
14は立型精麦機(立型研削式精麦機ともいう)を示し、上記タンク12またはタンク13から発芽大麦の供給を受け、供給された発芽大麦を任意に設定した精麦の度合いに精麦できるように構成されている。さらに、上記立型精麦機14は、精麦された発芽大麦を上記昇降機4または加水装置17へ向けて任意選択的に排出できるように構成してある。
16は糠処理部を示し、広く知られているように上記横型精麦機8及び上記立型精麦機14から排出される糠を収容するように構成されている。
【0014】
Bは、上記精麦工程S2により外皮を除去された発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程S3に用いられる加水設備を示す。
加水設備Bにおいて、17は周知の加水装置を示し、18は加水タンクを示す。
Cは、加水工程S3により内部に水分を含ませられた発芽大麦を、所定の厚さに加熱圧扁する工程S4に用いられる加熱圧扁設備を示す。
20は、加熱圧扁設備Cにおける周知の圧扁機(蒸気圧扁機ともいう)を示し、21は上記圧扁機20における予熱塔及び加熱蒸気噴射部の存在を示し、22は上記圧扁機20における圧扁ロールを示す。上記圧扁機20は、広く知られているように丸麦を任意の厚さ(例えば1.8mm〜2.0mm)に圧扁出来るように構成されている。
Dは、上記加熱圧扁工程S4により圧扁された発芽押麦を精選する工程S5に用いられる設備を示し、23は周知のシフター(篩機ともいう)、25は周知の色彩選別機を示す。
【0015】
上記構成のものを用いる発芽押麦の製造作業を説明する。
発芽押麦2は、図1に示されるように、原材料の発芽大麦1を準備する工程S1、精麦工程S2、加水工程S3、加熱圧扁工程S4、精選工程S5を経て製造される。以下詳しく説明する。
【0016】
(原材料の発芽大麦を準備する工程S1)
まず、上記大麦を発芽させた発芽大麦1を準備する。準備する発芽大麦の量としては需要に応え適宜任意の量を準備すればよいが、例えば3トン準備する。
【0017】
(精麦工程S2)
上記準備した発芽大麦1を張込口3に投入する。次に、上記昇降機4の切替弁5を切替えて昇降機4の排出方向を矢印6方向に設定する。さらに、横型精麦機8による精麦の度合を発芽大麦1の外皮が85%以上除去されるように設定し、精麦設備Aの運転を開始する。
すると、上記張込口3に投入された発芽大麦1は、昇降機4によって矢印30方向へ運ばれてタンク7に排出される。
上記タンク7内の発芽大麦1は、上記横型精麦機8に投入される。
横型精麦機8によって発芽大麦1は、バラツキはあるが多くのものが外皮が85%以上除去される。
平均的に外皮が85%以上除去された発芽大麦は、経路9を通って上記昇降機4へ供給される。(第1工程)
次に、上記昇降機4における切替弁5を切替えて、昇降機4の排出方向を矢印10方向に設定する。さらに、立型精麦機14による精麦の度合を発芽大麦1の外皮が95%以上除去されるように設定し、精麦設備Aの運転を開始する。
上記第1工程で昇降機4に供給された発芽大麦は、昇降機4によって矢印10方向へ運ばれ、タンク12に排出される。
上記タンク12内の発芽大麦は、上記立型精麦機14に投入される。発芽大麦の外皮は前段で85%以上除去されているので、上記立型精麦機14に入った発芽大麦は、ゆっくりした精麦動作でもって、損傷少なく、バラツキはあるが多くのものが外皮が充分に(例えば、95%以上)除去される。(第2工程)
なお、上記第2工程の設定を第1工程終了後に行う作業を説明したが、予め第1工程及び第2工程の設定をした後に精麦設備Aの運転を開始し、第1工程と第2工程とを自動的に連続運転をさせても良い。
このように、第1工程として横型精麦機を用いて、まず発芽大麦の外皮の85%以上を除去し、次に、第1工程で残った発芽大麦の外皮を、第2工程として立型精麦機を用いて研くように発芽大麦外皮を95%以上除去するようにしたので、砕け易い発芽大麦を原材料とするものであっても、発芽大麦の砕きを極力防止し、食物繊維及びギャバ等の栄養素を含む部分を歩留り良く加工することができる。
【0018】
(加水工程S3)
次に、上記外皮を除去した発芽大麦を加水装置17に投入し、上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませるように加水調整する。加水調整する発芽大麦の水分は、発芽大麦を圧扁するときに発芽大麦が砕けるのを防止するような水分であればよいが、例えば水分4.0%の発芽大麦1を水分14〜20%になるように加水調整すればよい。好ましくは、水分17%になるように加水調整するとよい。
加水調整した後、発芽大麦をタンク18に投入して一日おく。これにより、発芽大麦の内部に水分が満遍なく浸透することになる。
【0019】
(加熱圧扁工程S4)
次に、上記タンク18内の発芽大麦を圧扁機20に入れる。圧扁機20に入れられた発芽大麦は、周知のように予熱塔及び加熱蒸気噴射部を通る過程で加熱され、その後圧扁ロール22により所定の厚さに圧扁される。
上記加熱する設定条件は、発芽大麦が加熱により軟化し、均一に圧扁されるような設定であればよく、例えば、ボイラー圧力:5kg/cm、加熱温度:140℃、加熱時間:15分でもよい。
上記圧扁の厚さは、白米に混ぜて炊きあげて食する場合に食べやすく食感がよい任意の厚さであればよく、例えば、1.8mm〜2.0mmであってもよい。
このように加熱することにより、殺菌効果が上がり衛生上安全で安心できる商品を提供できる。さらに、加熱によって香りが良くなり、うまみが増す特長がある。
【0020】
(精選工程S5)
次に、周知のシフター23を用いて砕麦24と発芽押麦とを分離する。上記シフター23の目の大きさとして、例えば12メッシュ/インチのものを用いるとよい。
シフター23を用いることにより所定値以上の大きさの発芽押麦の粒を揃えることができ、商品としての見栄えがよくなる。さらに、白米に混ぜて炊きあげて食する場合に食感がよいという特長もある。
次に必要に応じて、砕麦24と分離された発芽押麦を色彩選別機25に通す。このことにより原材料の発芽押麦1に異物が混入していた場合には、上記異物26を除去することができる。例えば、燕麦(カラス麦ともいう)が上記異物26として混入している場合があるからである。
【0021】
以上の原材料の発芽大麦1を準備する工程S1、精麦工程S2、加水工程S3、加熱圧扁工程S4、精選工程S5を経て発芽押麦2が得られる。
上記得られた発芽押麦2を分析した結果、食物繊維及びγ−アミノ酪酸(ギャバ)の含有量は夫々次の通りであった。
食物繊維:8.2g/100g(酵素−重量法による)
γ−アミノ酪酸:15mg/100g(アミノ酸自動分析法による)
発芽押麦2における食物繊維の含有量は、従来の押麦における食物繊維の含有量(8.1g/100g)とほぼ同量であった。
発芽押麦2におけるγ−アミノ酪酸の含有量は、従来の押麦におけるγ−アミノ酪酸の含有量(4g/100g)の約4倍の量であった。
よって、上記発芽押麦2は、白米に混ぜて炊きあげて摂取する場合、従来と同様の食物繊維が摂取でき、さらにギャバを従来の約4倍量を摂取することができる。これは健康志向の消費者の要望に応えることができるものである。
【0022】
上記実施例の内、発芽大麦の外皮を除去する精麦工程S2についての実施態様は次のようにしても良い。
態様1:
第1工程として横型精麦機8を用いて複数回循環させ、外皮を85%以上(或は98%位まで)除去するようにしてもよい。即ち、次のようにしてもよい。
準備した発芽大麦1を張込口3に投入する。
次に、上記昇降機4の切替弁5を切替えて昇降機4の排出方向を矢印6方向に設定する。さらに、昇降機4の動作回数及び精麦の度合の設定を、横型精麦機8に任意の複数回数通すことによって、発芽大麦1の外皮が85%以上(或は98%位まで)除去されるように設定し、精麦設備Aの運転を開始する。
すると、上記張込口3に投入された発芽大麦1は、昇降機4によって矢印30方向へ運ばれてタンク7に排出される。次に上記タンク7内の発芽大麦1は、上記横型精麦機8に投入される。
発芽大麦1は、横型精麦機8によって、設定した精麦の度合に応じて精麦される。上記精麦された発芽大麦は、経路9を通って上記昇降機4へ供給され、引き続き昇降機4によって矢印30方向へ運ばれ、タンク7、横型精麦機8、上記昇降機4の順に循環する。この循環を予め設定した昇降機4の動作回数分だけ繰り返す。上記設定回数が終了した段階で発芽大麦は、バラツキはあるが多くのものが外皮が85%以上(或は98%位まで)除去される。
このように発芽大麦1を複数回循環させて外皮を85%以上(或は98%位まで)除去するようにしたので、固い外皮を複数回に渡って徐々に削り取るように除去していくこととなり、1回の精麦動作によって一気に強引に外皮を85%以上除去するのに比べて、精麦動作による砕麦をより防止することができる。
なお、循環加工する過程において、二つ設けたタンク12,13の内、最初に一方、例えばタンク12を経由させて精麦し、次に他方のタンク13を経由させて精麦させると、タンク12の壁面に付着して精麦されない発芽大麦が、精麦されて再び循環してくる発芽大麦と混ざるのが防止される。よって、精麦に斑が生じるのを防止することができる利点がある。
【0023】
次に第2工程として、上記第1工程で外皮が85%以上(或は98%位まで)除去された発芽大麦を、立型精麦機14を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を95%以上(或は99.9%位)除去するようにしてもよい。
即ち、昇降機4の動作回数及び立型精麦機14の精麦の度合を設定を、立型精麦機14に任意の複数回数通すことによって、発芽大麦の外皮が95%以上(或は99.9%位)除去されるように設定する。さらに、上記昇降機4における切替弁5の排出方向の設定を、矢印10、矢印11方向に交互に切り替わるように設定し、精麦設備Aの運転を開始する。
すると、上記第1工程で昇降機4に供給された発芽大麦は、昇降機4によって矢印10方向へ運ばれ、タンク12に排出される。
上記タンク12内の発芽大麦は、上記立型精麦機14に投入される。
すると、発芽大麦は、立型精麦機14によって、設定した精麦の度合に応じて精麦される。上記精麦された発芽大麦は、経路15を通って上記昇降機4へ供給され、引き続き昇降機4によって矢印30方向へ運ばれ、次はタンク13、立型精麦機14、上記昇降機4の順に循環する。そして予め設定した昇降機4の動作回数分だけ繰り返す。上記設定回数が終了した段階で発芽大麦は、バラツキはあるが多くのものが外皮が95%以上(或は99.9%位)除去される。
このように、第2工程において、発芽大麦を複数回循環させて外皮を95%以上(或は99.9%位)除去するようにした。
このことは、第1工程で外皮が85%以上除去された発芽大麦の外皮を、改めて立型精麦機14を用いて複数回に渡って除去していくことにより、第1工程で外皮が85%以上除去され、除去され易い状態にされている残りの発芽大麦の外皮を、複数回に渡り研くように徐々に除去することができる。
よって、1回の精麦動作によって一気に強引に外皮を95%以上(或は99.9%位)除去するのに比べて、精麦動作による砕麦をより防止することができる。
従って、砕け易い発芽大麦を原材料とするものであっても、発芽大麦の砕きを極力防止し、食物繊維及びギャバ等の栄養素を含む部分を、より歩留り良く加工することができる。
発芽大麦の外皮を95%乃至99.9%位除去すると、発芽押麦2を白米に混ぜて炊きあげて食した場合の食感はより良い。
【0024】
好ましくは、上記実施例の内、発芽大麦の外皮を除去する精麦工程S2についての実施態様は、例えば次のようにしてもよい。
態様2:
第1工程として横型精麦機8を用いて外皮を除去する場合において、
横型精麦機8の条件設定を例えば、35#の砥石、回転数600〜730rpm(好ましくは660rpm)、流量400Kg/hr、1.2mm縦目の網を用い、発芽大麦を6回循環させ、外皮を98%以上除去する。
第2工程として立型精麦機14の条件設定を例えば、上記横型精麦機8に比較して、細かい砥石(例えば60#の砥石)、比較的遅い回転数360〜440rpm(好ましくは400rpm)、比較的少ない流量300Kg/hrとしてもよい。
このような精麦工程S2を経た場合、3トンの原材料の発芽大麦1から、外皮を99.9%以上除去された発芽大麦が1.67トン得られた。歩留り約57%と効率よく加工することができる。
以上のようにすると、砕け易い発芽大麦を原材料とするものであっても発芽押麦2が砕けるのを極力防止し、食物繊維及びギャバ等の栄養素を含む部分をより歩留り高く加工することができる。
さらに、発芽大麦の外皮を99.9%以上除去すると、当然のことながら、発芽押麦2を白米に混ぜて炊きあげて食した場合の食感はさらに良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発芽押麦の製造工程を説明する為のフローチャート。
【図2】発芽押麦の製造工程を説明する為の工程図。
【符号の説明】
【0026】
1・・・発芽大麦、2・・・発芽押麦、3・・・張込口、4・・・昇降機、5・・・切替弁、6・・・経路、7・・・タンク、8・・・横型研削式精麦機、9・・・経路、10・・・経路、11・・・経路、12・・・タンク、13・・・タンク、14・・・立型研削式精麦機、15・・・経路、16・・・糠処理部、17・・・加水装置、18・・・タンク、20・・・蒸気圧扁機、21・・・余熱筒、22・・・圧扁ロール、23・・・シフター(篩機)、24・・・砕麦、25・・・色彩選別機、26・・・異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、
上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程と、
上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、
所定の厚さに加熱圧扁する工程と
から成ることを特徴とする発芽押麦の製造方法。
【請求項2】
大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、
上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程であってその工程は、第1工程として、横型精麦機を用いて外皮を85%以上除去し、第2工程として、立型精麦機を用いて外皮を95%以上除去する精麦工程を含む工程と、
上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、
所定の厚さに圧扁する加熱圧扁工程とから成ることを特徴とする発芽押麦の製造方法。
【請求項3】
上記精麦工程は、第1工程として、横型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を85%以上除去し、第2工程として、立型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を95%以上除去することを特徴とする請求項2記載の発芽押麦の製造方法。
【請求項4】
大麦を発芽させた麦芽(発芽大麦)を準備する工程と、
上記発芽大麦の外皮を除去する精麦工程であってその工程は、第1工程として、横型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を85%以上除去し、第2工程として、立型精麦機を用いて発芽大麦を複数回循環させ、外皮を95%以上除去する精麦工程を含む工程と、
上記外皮を除去した発芽大麦の中に水分を含ませる加水工程と、
所定の厚さに圧扁する加熱圧扁工程によって製造されたことを特徴とする発芽押麦。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−296247(P2006−296247A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120392(P2005−120392)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(504147346)豊橋糧食工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】