説明

発蛍光性酵素基質および調製方法

本発明は、改良された細胞透過性を有するヒドロラーゼ蛍光生成基質、その調製方法および特に細胞に基づくアッセイにおいてヒドロラーゼの活性を測定する方法に関する。基質は容易に細胞中に拡散し、この細胞において、基質は酵素的に処理されて光に安定な蛍光生成物を生成し、そして細胞に基づくアッセイにおいて酵素に誘導される活性を可視化するために特に適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された細胞透過性を有するヒドロラーゼ蛍光生成基質、その調製方法および特に細胞に基づくアッセイにおいてヒドロラーゼの活性を測定する方法に関する。基質は容易に細胞中に拡散し、この細胞において、基質は酵素的に処理されて光に安定な蛍光生成物を生成し、そして細胞に基づくアッセイにおいて酵素に誘導される活性を可視化するために特に適合されている。
【背景技術】
【0002】
細胞生物学の研究では、細胞中のほとんどすべての選ばれた分子を検出し、測定し、そして追跡するために多数の技術が利用できる。光学顕微鏡技術は細胞を観察するために広く使用される。固定され、染色された細胞は慣用の光学顕微鏡において研究することができ、一方、抗体に結合した蛍光染料は、蛍光顕微鏡を用いて細胞中の特定分子の位置を見いだすために使用することができる。共焦点走査顕微鏡は薄い光学的切片を提供し、そして三次元画像を再構成するために使用できる。細胞および組織の表面の三次元観察像は電子顕微鏡法を走査することによって得ることができるが、膜および細胞の内部は、それぞれフリーズフラクチャーおよびフリーズエッチング電子顕微鏡法によって可視化することができる。
【0003】
顕微鏡法の古典的方法は細胞構造の良好な観察像を与えるが、それらは細胞化学に関する情報をほとんど提供しない。細胞生物学において、特定分子の量を決定したり、またそれらが細胞中のどこに存在し、かつ細胞外または細胞内シグナルに応答してそれらのレベルもしくは場所をいかに変化させるかを知ることは、しばしば重要である。関心のある分子は、小さい無機イオン、例えばCa2+もしくはHから大きい分子、例えば特定のタンパク質、RNAもしくはDNAにわたる。感度の高い方法が、分子のこれらの種類の各々についてアッセイするため、ならびに生細胞におけるそれらの多くの動的挙動を追跡するために開発された。1つの特殊な方法は細胞内の化学的状態をモニターするための生細胞中へのプローブの導入である。
【0004】
興味深いことに、ある種のプローブはブロッキング基に結合されて酵素基質を形成する蛍光生成性または蛍光性の染料からなる。これらのプローブは酵素によって開裂可能であり、そして蛍光染料沈殿物を生成し、これが高感度方式の蛍光顕微鏡によって検出することができる。
【0005】
種々の酵素基質の中では、ヒドロラーゼ基質、すなわちヒドロラーゼによって認識される基質が、細胞生物学をアッセイすることに便利に使用されてきた。ヒドロラーゼは、細菌、酵母およびより高等な動物や植物を含む広範な種類の生物において見いだされる酵素である。それらは加水分解反応を触媒することによって作用する。かくして、それらは化合物中の共有結合を開裂し、結合を横断して水分子を挿入することによって化合物(すなわち基質)を分解する。ヒドロラーゼ酵素は、なかんずく、エステル結合、ペプチド結合、ペプチド結合以外の炭素−窒素結合、グリコシド結合、エーテル結合、および酸無水物に作用する酵素を含む。エステラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、グリコシラーゼ、例えばグリコシダーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼが、この種の酵素の代表的なものである。
【0006】
ヒドロラーゼは酵素で標識される蛍光アッセイにおいて使用されてもよく、ここでは蛍光メカニズムが酵素活性を検出するのに使用される。酵素標識される蛍光アッセイは、特定基質の対応する蛍光沈殿物への酵素的変換に基づく。これらの基質はまた、それらが酵素作用において開裂され、そして蛍光沈殿物を生成することができるので、「蛍光生成基質(fluorogenic substrates)」と呼ばれてもよい。
【0007】
そのようなものとして、ある種の蛍光生成β−D−グルクロニダーゼもしくはβ−D−ガラクトシダーゼ基質が知られている。例えば、β−D−ガラクトシダーゼ(GAL)酵素およびその蛍光生成基質4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトシドの使用が例として文献中に引用されている(非特許文献1)。また、β−D−グルクロニダーゼ(GUS)酵素およびその蛍光生成基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニドの使用が記述されている(非特許文献2;非特許文献3)。
【0008】
一般に、キナゾリノン(キナゾロン)、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、キノリン、インドリンおよびフェナントリジンを含む、蛍光団の類から作成される蛍光生成基質がまた記述されている。これらの基質は、検出可能なフェノール系生成物、例えば 可溶性の着色もしくは蛍光生成物の形成または沈殿物の形成へと酵素的に変換することができる。例えば、特許文献1および特許文献2は、リン酸、硫酸もしくは糖基と結合した物質からなり、そして適当な酵素による反応において高度に蛍光性の沈殿物を形成するこの種の基質を記述している。両米国特許はまた酵素活性を検出し、研究するためにこれらの蛍光生成基質の使用を述べている。この種の基質の具体的な例は、既に開発され、市販されているELF97(R)β−D−ガラクトシダーゼ基質(ELF97(R)β−D−ガラクトピラノシド)(1)およびELF97(R)β−D−グルクロニダーゼ基質(ELF97(R)β−D−グルクロニド)(2)を含む。
【0009】
【化1】

【0010】
これらのELF97(R)β−D−ガラクトシダーゼおよびELF97(R)β−D−グルクロニダーゼ基質は非蛍光性であるが、それぞれGALもしくはGUS酵素により反応できて、蛍光沈殿物と非蛍光開裂生成物をもたらす。
【0011】
しかしながら、既知の蛍光生成基質の1つの短所は細胞膜に対するそれらの不透過性である。結果的に、GUSおよびGALアッセイは一般に細胞にとって破壊的になる、すなわち、細胞膜は細胞内分析物の検出前に透過性にすることが必要であり、したがって、イン・ビボ条件下、または細胞の完全な状態が望まれるイン・ビトロ条件下での使用のためには適当ではない。多くの他の基質は、これに対して十分には光安定性ではなく、例えば、フルオレセインは数分後には退色して検出のために必要な蛍光を失う。
【0012】
当該技術の状態では細胞中に膜不透過性物質を導入する種々の方法が存在する。1つのアプローチはマイクロピペットを通して細胞中に分子をマイクロインジェクトすることである。他のアプローチは、強力な電気ショックまたは低濃度の洗剤のような化学物質を使用することによって細胞原形質膜の構造を部分的に破壊することからなる。細胞中に高分子を導入する第3の方法は、これらの分子を含有する膜性小胞を細胞原形質膜と融合させることである。
【特許文献1】米国特許第5,316,906号
【特許文献2】米国特許第5,433,986号
【非特許文献1】Ishikawa E.,Imagawa M.,& Hashids S.,”Ultrasensitive Enzyme Immunoassay Using Fluorogenic,Lumenogenic,Radioactive and Related Substrates and Factors to Limit Sensitivity”,J.Biochm 73,1319−1321,1973)
【非特許文献2】Jefferson R.A.”Assaying Chimeric Genes in Plants:The GUS Gene Fusion System”,Plant Mol.Biol.Rep.5,387−405,1987
【非特許文献3】Jefferson R.A.”The GUS Reporter Gene System”,Nature,342,837−838,1989
【発明の開示】
【0013】
結果として、本発明は、細胞中に膜−不透過性の蛍光生成基質を導入するための新規なアプローチを提供することを目的とする。特に、本発明の目的は、基質の光安定性を危うくすることなく細胞膜に対する増大した透過性を有し、かつ特定の酵素によって特異的に認識される、新規な蛍光生成ヒドロラーゼ基質を提供することである。
【0014】
さらにまた、本発明の目的は、実質的に不純物を含有しない主題の蛍光生成ヒドロラーゼ基質を調製する方法を提供することである。
【0015】
また本発明は、種々の細胞アッセイにおいて使用することができる蛍光生成ヒドロラーゼ基質を提供することを目的とする。特に、主題の蛍光生成酵素基質は、種々の応用において、例えば、酵素活性、遺伝子発現またはプロモーターの活性および特異性に関する種々の特性を研究または検出するために使用することができる。
【発明の詳細な記述】
【0016】
本発明は、酵素で標識される蛍光アッセイにおいて有用な新規なヒドロラーゼ基質およびその蛍光沈殿物に関する。より具体的には、本発明は蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質に関する。
【0017】
これらの蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、他の既知の蛍光生成基質に較べて細胞膜に対する改良された透過性を示す。この特性は、本発明の酵素基質が広範な種類の細胞の細胞質中に入ることを可能にするので、あらゆる種類の細胞によるそれらの取り込みを容易にする。本発明のこれらの置換酵素基質の改良された透過性は、驚くべきことに、そのような置換がより大きい分子の合成をもたらすという事実にも拘らず、非極性側鎖による蛍光団部分における親油性置換、ならびに当該技術の状況に包含されるものに較べて異なる合成経路を用いることに関係している。
【0018】
例えば、その蛍光団部分、すなわち、ブロッキング基(BLOCKING GROUP)なしに考えられる化合物における1個のペンチルまたは2個のブチルまたは2個のペンチル基による本発明による基質の置換は、完全な分子、蛍光団+ブロッキング基が単純な拡散によって細胞に入ることを可能にする。その上、このモノペンチル化、ジブチル化またはジペンチル化化合物は、精製酵素の添加後に急速な蛍光発光が観察できるので、なお、GUS酵素のような酵素に対する良好な基質である。GUSレポーター遺伝子の一過性トランスフェクション実験を用いて、例えば、この種の基質が実際に膜透過性であり、そしてGUSを過発現する細胞の検出に適していることが示された。
【0019】
さらにまた、本発明の基質は、発色または沈殿剤の添加を必要とせずに光に安定な蛍光生成物を生じる。これらの可溶性酵素基質は、酵素活性を損なうことなしに酵素的加水分解において蛍光沈殿物を生じる。さらにまた、本発明の新規酵素基質は、開裂と沈殿に際して小結晶を形成し、そのために、詳細な画像解析と可視化のために適している。
【0020】
本発明は、その上、主題の蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質を調製する方法に関する。より具体的には、本発明は、高純度の蛍光生成置換酵素基質の調製のための特殊な方法に関する。
【0021】
また、細胞に基づくアッセイにおいて酵素の活性を測定する方法が本発明に包含される。酵素基質の具体的応用は、細胞に基づくアッセイにおける遺伝子発現またはプロモーター活性と特異性の可視化である。本発明の応用性のさらなる範囲は、以下に提供される詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、次の詳細な記述および実施例は、本発明の好適な実施態様を指示しつつ、例示の方法によってのみ与えられ、そのために、本発明の精神および範囲内の種々の変化および修飾は、次の記述から当業者には明らかにすることができることを理解すべきである。
【0022】
1つの実施態様では、本発明は一般式(I):
【0023】
【化2】

【0024】
によって表される新規な蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質ならびにその生物学的に許容しうる塩またはプロ−レポーター分子(例えば、エステル、低級アルキルエステル前駆物質、例えば酢酸エステル、メチルエステル型)に関し;
式中、Yは
【0025】
【化3】

【0026】
であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは
【0027】
【化4】

【0028】
=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは酸素、窒素もしくは硫黄であり;
およびRは同じか異なり、そして各々独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、R(C=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][RC(=X)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)]RN−、[RN−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[RS(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
この場合、X,ZおよびQは同じか異なり、そして各々独立して酸素もしくは硫黄であり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは同じか異なり、そして各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
各々qは同じか異なり、そして各々独立して0,1,2,3もしくは4に等しく;
いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基により、さらにモノ−、ジ−もしくはトリ−置換(原子価がそれを可能にする場合は)されていてもよく;
ただし、この場合少なくとも1個のR、RもしくはRは、少なくとも4個の炭素をもつ部分である。
【0029】
その他の実施態様では、本発明は一般式(I):
【0030】
【化5】

【0031】
によって表される新規な蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質ならびにその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子に関し;
式中、Yは
【0032】
【化6】

【0033】
であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは酸素、窒素もしくは硫黄であり;
およびRは、各々独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、RC(=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][R−C(=X)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)][R]N−、[RN−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[R−S(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
この場合、X,ZおよびQは、各々独立して酸素もしくは硫黄であり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
各々qは独立して0,1,2,3もしくは4であり;
いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基により、さらにモノ−、ジ−もしくはトリ−置換(原子価がそれを可能にする場合は)されていてもよく;
ブロッキング基(BLOCKING GROUP)は、単糖もしくは多糖誘導体(derivate)、ホスフェート誘導体もしくはサルフェート誘導体であり;
ただし、この場合少なくとも1個のR、RもしくはRは、少なくとも4個の炭素をもつ部分である。
【0034】
1つの実施態様では、本発明は蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質である一般式(I):
【0035】
【化7】

【0036】
によって表される新規な化合物およびその生物学的に許容しうる塩に関し;
式中、Yは
【0037】
【化8】

【0038】
であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは−O−,−N(R)−もしくは−S−であり;
式(I)に存在する各Rおよび各Rは、独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−,R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[RX−C(=Z)][R]N−、[RX−C(=Z)][R−C(=Q)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)][R]N−、[RN−C(=Z)][RC(=X)]N−、[R−S(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
この場合、X,ZおよびQは、各々独立してOもしくはSであり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
式(I)に存在する各qは独立して0,1,2,3もしくは4であり;
いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基により、さらにモノ−、ジ−もしくはトリ−置換(原子価がそれを可能にする場合は)されていてもよく;
ブロッキング基は、単糖もしくは多糖誘導体、ホスフェート誘導体もしくはサルフェート誘導体、カルボン酸誘導体もしくはオリゴペプチド誘導体であり;
ただし、この場合R、RおよびRの少なくとも1個は、C4−8アルキル、C4−8アルケニルもしくはC4−8アルキニルである。
【0039】
興味あることには、本発明は、Wが−N−(R)−であり、Yが−C(=O)であり、nが1であり、そして式(II)を有する蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質ならびにその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子に関する。
【0040】
【化9】

【0041】
[式中、M,R,R,R,qおよびブロッキング基は式(I)において定義されたとおりである]
同様に興味あることには、本発明の酵素基質は、式(III)を有し、そしてその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子である。
【0042】
【化10】

【0043】
[式中、R,R,Rおよびブロッキング基は式(I)において定義されたとおりである]
好ましくは、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、R、RおよびRの少なくとも1個が、直鎖および分枝鎖ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルからなる群から独立して選ばれる式(III)を有する。
【0044】
より好ましくは、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、RおよびRがともにブチル置換基である式(III)を有する。また好ましくは、本発明による酵素基質は、RおよびRがともにペンチル置換基である式(III)を有する。同様に好ましくは、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、RおよびRの1個のみがブチル置換基またはペンチル置換基である式(III)を有する。
【0045】
特に、本発明は、特異的酵素の作用により式(I)からのブロッキング基の開裂によって得ることができ、かつ式(IV):
【0046】
【化11】

【0047】
[式中、Y,n,W,M,R,Rおよびqは式(I)において定義されたとおりである]を有する蛍光沈殿物を生じる蛍光沈殿物に関する。
【0048】
その他の実施態様では、本発明は蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質である一般式(V):
【0049】
【化12】

【0050】
によって表される新規化合物ならびにその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子に関し;
式中、Yは
【0051】
【化13】

【0052】
であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは−O−,−N(R)−もしくは−S−であり;
式(V)に存在する各Rおよび各Rは、独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−,R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[RX−C(=Z)][R]N−、[RX−C(=Z)][R−C(=Q)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)][R]N−、[RN−C(=Z)][RC(=X)]N−、[R−S(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
この場合、R置換基は、ナフチル基のいずれの炭素原子、例えば炭素原子C1,C4,C5,C6,C7およびC8においても1個以上の水素を置換することができ、
ただし、この場合炭素の原子価は超過されない;
X,ZおよびQは、各々独立してOもしくはSであり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
式(V)に存在する各qは独立して0,1,2,3もしくは4であり;
いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基により、さらにモノ−、ジ−もしくはトリ−置換(原子価がそれを可能にする場合は)されていてもよく;
ブロッキング基は、単糖もしくは多糖誘導体、ホスフェート誘導体もしくはサルフェート誘導体、カルボン酸誘導体もしくはオリゴペプチド誘導体であり;
ただし、この場合R、RもしくはRの少なくとも1個は、C4−8アルキル、C4−8アルケニルもしくはC4−8アルキニルである。
【0053】
本発明は、同様に、特異的酵素の作用による式(V)からのブロッキング基の開裂によって得ることができ、かつ式(VI):
【0054】
【化14】

【0055】
[式中、Y,n,W,M,R,Rおよびqは式(V)において定義されたとおりである]を有する蛍光沈殿物を生じる蛍光沈殿物に関する。
【0056】
一般に、Wが−N−(R)−であり、そしてYが−C(=O)−である場合、化合物はキナゾリノン(またキナゾロンとも呼ばれる)である。Wが−N−(R)−であり、そしてnが0である場合、生成物はベンズイミダゾールであり、Wが−O−であり、そしてnが0である場合、生成物はベンズオキサゾールであり、Wが−S−であり、そしてnが0である場合、生成物はベンゾチアゾールである。Wが=CH−であり、そしてYが−C(R)=である場合、化合物はキノリンである。Wが=CH−であり、そしてnが0である場合、化合物はインドールである。キナゾリノン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリンおよびインドールはすべて本発明の好適な態様である。
【0057】
用語「置換された(substituted)」が式(I),(II),(III),(IV),(V)および(VI)の化合物の定義において使用される場合は常に、「置換された」を用いる表現において指示された原子における1種以上の水素が、指示された基からの選択により置換されることを示すと意味されるが、ただし、この場合、指示された原子の標準の原子価は超過されず、置換は化学的に安定な化合物、すたわち、反応混合物から有用な純度までの単離に耐えるのに十分に強固である化合物をもたらす。
【0058】
本明細書で使用されるように、基もしくは基の部分としての用語「ハロ」もしくは「ハロゲン」は、一般に、フルオロ、クロロ、ブロモもしくはヨードである。
【0059】
基もしくは基の部分としての用語「C1−4アルキル」は、1〜4個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、ブチルおよび2−メチル−プロピルおよびそれに類するものを定義する。
【0060】
基もしくは基の部分としての用語「C1−8アルキル」は、1〜4個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、ブチル、2−メチル−プロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびそれに類するものを定義する。
【0061】
基もしくは基の部分としての用語「C4−8アルキル」は、4〜8個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばブチル、2−メチル−プロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびそれに類するものを定義する。
【0062】
基もしくは基の部分としての用語「C2−8アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を含有する2〜8個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の炭化水素基、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびそれに類するものを定義する。
【0063】
基もしくは基の部分としての用語「C4−8アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を含有する4〜8個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の炭化水素基、例えばブテニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルおよびそれに類するものを定義する。
【0064】
基もしくは基の部分としての用語「C2−8アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合を含有する2〜8個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の炭化水素基、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニルおよびそれに類するものを定義する。
【0065】
基もしくは基の部分としての用語「C4−8アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合を含有する4〜8個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の炭化水素基、例えばブチニル、ブタジイニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニルおよびそれに類するものを定義する。また用語「C4−8アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合と少なくとも1個の二重結合を含有する4〜8個の炭素原子をもつ直鎖および分枝鎖の炭化水素基、例えば3−ヘキセン−1−イニル、2−ヘプテン−4−イニルおよびそれに類するものを定義する。
【0066】
基もしくは基の部分としての用語「C3−7シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルもしくはシクロヘプチルに対して総括される。 基もしくは基の部分としての用語「アリール」は、単−、二−および三環式芳香族炭素環化合物、例えばフェニルおよびナフチルを含むことを意味する。
【0067】
基もしくは基の部分としての用語「Het」は、窒素、酸素もしくは硫黄から選ばれる1個以上のヘテロ原子環員を含有する、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員およびより好ましくは5〜8個の環員をもつ飽和もしくは部分不飽和の単環式、二環式もしくは三環式複素環化合物として定義される。
【0068】
基もしくは基の部分としての用語「Het」は、窒素、酸素もしくは硫黄から選ばれる1個以上のヘテロ原子環員を含有する、好ましくは5〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員およびより好ましくは5〜6個の環員をもつ芳香族の単環、二環もしくは三環式複素環化合物として定義される。
【0069】
置換基RおよびRは、それらの原子価が許す限り、式(I),(II),(III),(IV),(V)もしくは(VI)の環におけるいずれの炭素の位置において結合されてもよい。
【0070】
何らかの変更(例えばハロゲン、C1−8アルキル、C4−8アルキル)がいずれかの要素において1回以上起きる場合、各定義は独立している。
【0071】
本文を通じて使用されるような用語「プロ−レポーター分子」は、得られる誘導体のイン・ビトロもしくはイン・ビボの生物変換生成物が式(I),(II),(III)もしくは(V)の化合物において定義された蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質であるような誘導体、例えばエステル、アミドおよびホスフェートを意味する。本発明のプロ−レポーター分子は、改変がいずれかイン・ビトロもしくはイン・ビボの日常的操作によって式(I),(II),(III)もしくは(V)の化合物に開裂されるように、化合物に存在する官能基を改変することによって調製される。用語「プロ−レポーター」分子はブロッキング基と混同されてはならない。プロ−レポーター分子は開裂されて基質分子のブロッキング基と残りの部分を包含する式(I),(II),(III)もしくは(V)の化合物を生じ、この式(I),(II),(III)もしくは(V)の分子が、続いてまた問題の酵素によって開裂されて基質分子の残りの部分に対応する可視沈殿物、すなわち式(IV)と(VI)を生じる。
【0072】
1つの実施態様では、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、R、RおよびRの少なくとも1つが直鎖および分枝鎖のブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルからなる基から独立して選ばれる式(I)を有する。
【0073】
その他の実施態様では、本発明による蛍光生成ヒドロラーゼ基質は、RおよびRがともにブチル置換基である式(I)を有する。なおその他の実施態様では、本発明による酵素基質は、RおよびRがともにペンチル置換基である式(I)を有する。同様に、その他の実施態様では、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、RおよびRの1つのみがブチル置換基もしくはペンチル置換基である式(I)を有する。
【0074】
1つの実施態様では、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、R、RおよびRの少なくとも1つが直鎖および分枝鎖のブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルからなる基から独立して選ばれる。式(V)を有する。
【0075】
その他の実施態様では、本発明による蛍光生成ヒドロラーゼ基質は、RおよびRがともにブチル置換基である式(V)を有する。なおその他の実施態様では、本発明による酵素基質は、RおよびRがともにペンチル置換基である式(V)を有する。同様に、その他の実施態様では、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、RおよびRの1つのみがブチル置換基もしくはペンチル置換基である式(V)を有する。
【0076】
特に、本発明は酵素によって開裂することができ、かつ式(I),(II),(III)および(V)を有する酵素基質に関する。
【0077】
好ましくは、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、R、RおよびRの少なくとも1つが直鎖および分枝鎖のブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルからなる基から独立して選ばれる式(III)を有する。
【0078】
より好ましくは、本発明による蛍光生成ヒドロラーゼ基質は、RおよびRがともにブチル置換基である式(III)を有する。また好ましくは、本発明による酵素基質は、RおよびRがともにペンチル置換基である式(III)を有する。同様に好ましくは、本発明による蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質は、RおよびRの1つのみがブチル置換基もしくはペンチル置換基である式(III)を有する。
【0079】
「蛍光」は、一定の波長の光によって励起される分子が、より長い波長において光を放出する性質である。蛍光は入射光子と蛍光団の相互作用より起きる現象である。この過程は励起と呼ばれる。光子の吸収は蛍光団における電子をその基底状態から、より高いエネルギーレベルまで高めさせる。次いで、電子がその最初のレベルまで戻って光子を放出する。この過程が蛍光放出と呼ばれる。その時、蛍光団は吸収した光子の波長より長い波長における光を放出する。このことは単純であり、何故なら放出した光子のエネルギーは、励起状態の寿命中のエネルギー消散によって吸収した光子のエネルギーより低いからである。
【0080】
「蛍光団」は、それが入射光を吸収し、かつそれに応じて異なる波長において光を放出することができる分子である。
【0081】
「基質」は、酵素または触媒によって触媒される化学反応中に、他の物質に変換される化合物または物質として定義される。
【0082】
本発明の文脈中、「蛍光生成基質」は、特異的酵素の作用において蛍光沈殿物と非蛍光生成物に開裂することができる基質を指す。
【0083】
「ブロッキング基」は、蛍光団の励起または発光特性、すなわち吸収または蛍光を変える基として定義される。該光活性の変化は、ブロッキング基が特異的なヒドロラーゼ酵素の作用によってM部分とブロッキング基の間の結合において基質分子の残りの部分から開裂される場合に起きる。ブロッキング基が分離される場合、得られる基または基質分子の残りの部分は可視沈殿物を生じる。ブロッキング基の例は、好ましくは、単糖もしくは多糖誘導体、ホスフェートもしくはサルフェート誘導体、カルボン酸誘導体もしくはオリゴペプチド誘導体;より好ましくは、α−D−グルコース、β−D−グルコース、α−D−ガラクトース、β−D−ガラクトース、α−D−マンノース、β−D−マンノース、β−D−N−アセチル−グルコサミン、β−D−グルクロン酸、β−D−フコース、α−L−フコース、α−L−イヅロン酸(iduronic acid)、β−D−セロビオース、α−L−アラビノース、β−D−キシロース、α−D−N−アセチル−ノイラミン酸(シアル酸)、p−グアニジノ安息香酸のアリールエステル、アリールまたはアルキルリン酸モノエステル、アリール硫酸モノエステル、リン酸アリール;さらになお好ましくは、β−D−ガラクトースおよびβ−D−グルクロン酸誘導体を含む。式(I),(II),(III)および(V)のブロッキング基部分は、問題の酵素に対して特異的であるように選ばれる。具体的には、ブロッキング基は単糖もしくは多糖からのアノマーヒドロキシ基の除去によって誘導される一価部分である。ブロッキング基の他の例は、カルボン酸誘導体、例えば脂肪酸およびカルボキシル部分を有するすべての他の基、およびオリゴペプチド誘導体を含む。
【0084】
ブロッキング基の文脈中、用語「誘導体(derivate)」は、ブロッキング基からヒドロキシ基の除去によって生成した一価部分を指す。
【0085】
「可視沈殿物」は、沈殿物が視覚的調査または光感受性メカニズム、例えばスペクトル(励起/発光)特性における変化によって検出可能であることを意味する。
【0086】
本発明の基質は、他の既知の蛍光生成酵素基質に比較して細胞膜透過性をかなり改善した。このことは本発明の蛍光生成基質が細胞に容易に入ることを可能にし、したがって、これらの基質は広範な種類の細胞において種々の応用のために使用できる。例えば、米国特許第5,316,906号に記述された基質は非常に乏しい膜透過性を示す。その特許の実施例15では、インタクトの繊維芽細胞が100μMガラクトシダーゼ基質で処理された。蛍光生成沈殿物の形成を可能にするための条件が一度適用されると、最大の蛍光強度は6時間後にのみ観察できた。これらのデータは、約30分後に定常状態のレベルに達するカルセイン、ローダミン、チアゾールオレンジのような古典的な透過性蛍光化合物に比較して非常に遅い膜透過を示す。これに較べて、本発明の置換基質は、数分ほどの後に既に生細胞において蛍光シグナルを生成し始めることができる。
【0087】
透過性特性に関する改良に加えて、本蛍光生成基質の沈殿物は、他の蛍光薬剤、例えばフルオレセイン標識の2次試薬に較べた場合に改良された特徴を有する。本発明による蛍光生成基質は一般に水に可溶であるが非蛍光性であり、しかしながら、それらは基質と対応する酵素を含有する水溶液中では高度に蛍光性の沈殿物を遊離する。基質は適当な酵素の作用により沈殿して明瞭かつ明るい蛍光化合物を生成する。
【0088】
本発明の基質は酵素試験において適当な酵素によって効率的に認識されるので、この基質は酵素の作用によって遊離した固形生成物について急速な沈殿速度を示す。重要なことには、沈殿物は酵素活性を損なうことなく酵素的加水分解において形成される。後者は、例えば、生物標本における局在性の研究または非変性のPAGEおよびウエスタンブロッティングにおける分離したバンドの検出のためにそれらの使用を可能にする。
【0089】
さらに、本発明の基質は、種々のブロッキング基、例えばβ−D−ガラクトースおよびβ−D−グルクロン酸誘導体とともに調製でき、そしてこれらの誘導体を認識する対応するβ−D−ガラクトシダーゼおよびβ−D−グルクロニダーゼ酵素に対して十分に特異的である。また、ホスフェートまたはサルフェートブロッキング基は、これらの誘導体を認識する対応するホスファターゼおよびスルファターゼ酵素に対して十分に特異的である。興味あることに、本基質により生成した染色は、高倍率下で蛍光物体を検査し、焦点を合わせ、そして写真を撮るための時間を可能にするのに十分に光に安定である。
【0090】
その他の特徴は、本発明の蛍光生成置換ヒドロラーゼ基質が、度々50nm以上の、しばしば60,80,100,120nm以上のストークス・シフトを示すことであり、バックグラウンド以上のシグナル蛍光の解像を高める特徴が、ほとんど、または全く自己蛍光のない細胞または組織における比較的低濃度の沈殿分子の高感度の検出を可能にし、同様に、自己蛍光性バックグラウンドにおいてバックグラウンドに対するシグナルを識別するという問題を克服する。また、生成物の大きいストークス・シフトは基質を多色適用のために理想的にさせる。
【0091】
その他の実施態様では、本発明は、
− ブロッキング基が場合によっては保護されてもよい該ブロッキング基を合成し;
− 置換蛍光団を合成し;
− 場合によって保護されたブロッキング基を該置換蛍光団に結合させ;
− 該ブロッキング基を場合によっては脱保護し;そして
− 得られる置換基質を精製すること
の段階を含んでなる、本発明による蛍光生成基質の調製方法に関する。
【0092】
単糖もしくは多糖の誘導体は、当該技術分野において既知の操作によって調製される(K.D.Larison et al.,J.Histochem.Cytochem.,1995,43,77;J.C.Jaquinet,Carbohydr.Res.,1990,199,153;A.Nudelman et al.,Carbohydr.Res.,1987,162,145)。
【0093】
キナゾリノン(キナゾロン)、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、キノリンおよびインドリンは、文献において広く利用できる当該技術分野では普通の操作によって調製されてもよい(R.Pater,J.Heterocycl.Chem.,1971,8,699;J.J.Naleway et al.,Tetrahedron Lett.,1994,35,8569;T.G.Deligeorgiev,Dyes and Pigments,1990,12,243)。 置換蛍光団では、Stilleカップリングの手段によって分子の芳香環上に側鎖を直接導入し、続いて精製によって不純物を除去することができる(J.K.Stille、Angew.Chem.Int.Ed.Eng.,1986,25,508)。鎖は両芳香環に同時に導入できる。二置換化合物調製の代わりの好適な方法は、最初に2つの一置換部分の合成、続く、所望の二置換化合物を形成するための2つの部分の結合を含む(R.A.Coburn et al.,J.Med.Chem.,1981,1245;E.Vedejs,Org.Reactions,1974,401;G.Hahn,Deutsches Patentschrift,869639,1953;T.Tamura et al.,European Patent Appl.,1.081.138A1,2000)。この方法は最終生成物の一置換不純物の存在を回避しつつ、より高い収量を得ることを可能にする。
【0094】
ブロッキング基は、ブロッキング基の反応形を置換蛍光団基の未結合形に存在するヒドロキシル、アミノもしくはメルカプト基と反応させることによって置換蛍光団に結合されてもよい。これは非蛍光中間体の生成をもたらす。結合したブロッキング基部分は数個の保護基を現すこともあり、これは、存在する保護基に適当なプロセスを用いて除去することができる。特に、ブロッキング基部分がグルクロン酸もしくはガラクトース誘導体を含有する場合、カップリングはSchmidtカップリングの手段を用いて達成することができる(R.R.Schmidt et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Eng.,1980,19,731)。またブロッキング基はサルフェートもしくはホスフェート基であってもよい。ホスフェート基はリン酸エステル化剤としてジエチルクロロホスフェートを用いて置換蛍光団基の未結合形に結合でき(Qing Zhu et al.,Tetrahedron Lett.,2003,44,2671)、続いて加水分解される(A.K.Szardenings,Tetrahedron Lett.,1996,37,3638)。
【0095】
最後に、特にエーテル中ビス(トリブチル錫)メトキシドが使用されてブロッキング基脱保護段階を実施する場合に、形成した基質は精製される。この場合、精製段階は、最終生成物を細胞毒にさせるであろう錫含有の不純物を除去するために必要である。
【0096】
この調製方法を使用すれば、他の化合物または不純物のいかなる混入もほとんど示さない高度に純粋な酵素基質を得ることが可能である。その他の重要な態様は、この調製方法は特異的であり、したがって急速、効率的かつコスト効果のある方法において基質の調製を可能にする。
【0097】
その他の実施態様では、本発明は、
− 酵素を含有するサンプルを本発明による酵素基質と接触させ;
− 本発明による蛍光沈殿物の形成を可能にするために適当な条件を適用し;そして
− 該蛍光沈殿物を定量的または定性的に分析すること
の段階を含んでなる該酵素の活性を研究する方法に関する。
【0098】
「サンプル」は、膜コンパートメントを含有するすべての流体、固形物、ゼリー状物、懸濁液、スラリーまたはそれらの混合物を指す。サンプルは、好ましくは、細胞、例えば真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞またはヒト細胞を含有する水溶液である。
【0099】
基質は沈殿物の形成のために適当な条件下でサンプルと合わされる。基質濃度は検出可能な反応生成物を与えるのに十分でなければならない。典型的には、沈殿物は酵素と基質の相互作用の数分後に生成する。通常、最適沈殿は約5分〜約2時間内、もっとも好ましくは約15分〜約1時間内に得られる。
【0100】
本発明は、ブロッキング基を分子の残りの部分から切り離して蛍光性検出生成物を生じることができるすべての酵素の活性を定量的または定性的に検出するために使用できる。
【0101】
蛍光沈殿物の分析は、(a)蛍光沈殿物の吸収波長における光を発生できる光源に蛍光沈殿物を曝露し;そして(b)得られる沈殿物の蛍光を検出することの段階を含んでもよい。可視沈殿物の検出を容易にするために、沈殿物の励起または発光特性が利用される。例えば、蛍光沈殿物は、蛍光生成物の最大吸収波長近傍における光を発生できる光源、例えば紫外線または可視光線ランプ、アークランプ、レーザー、または太陽光線さえによっても励起される。好ましくは、蛍光沈殿物は約250nmに等しいかそれを超える波長、より好ましくは、蛍光沈殿物は約350,370,390,400,430,450nmに等しいかそれを超える波長において励起される。沈殿物の蛍光は約300nmを超える波長、約480,500,520,540,560,580,600nmまでの波長において得られた光の放出の検出によって検出される。発光は蛍光光度計、量子カウンター、プレートリーダー、顕微鏡および流動細胞計測計のような機器の使用を含む手段、または光電子倍増管のようなシグナルを増幅するための手段によって検出することができる。好ましくは、FACSシステムまたは高処理スクリーニングにゆだねられたシステム、例えば、96穴もしくはそれ以上のミクロタイタープレートまたはマルチウエルプラットホームが使用される。さもなくば、沈殿物の分析は肉眼的観察または光散乱技術による沈殿物の検出を含む。
【0102】
酵素活性を研究するためのサンプルは生物細胞であってもよい。生物細胞は動物、植物、細菌もしくは酵母起源のものでもよい。細胞は生細胞でも、また死細胞であってもよい。細胞は分離されても、組織中、イン・ビボもしくはイン・ビトロでもよい。好ましくは、本発明の酵素活性を検出する方法は、植物細胞もしくは哺乳動物細胞における本発明の酵素基質の導入に関する。多数の細胞が酵素活性をモニターするために使用できる。そのような細胞は、限定されるものではないが私生児ハムスター腎(BHK)細胞、マウスL細胞、Jurkatsおよび153DG44細胞(参照、Chasin(1986)Cell.Molec.Genet.12:555)、ヒト胎児性腎(HEK)細胞、Chineseハムスター卵巣8CHO)細胞、PC12細胞、COS−7細胞および酵母、血液単核細胞(PBMC)、CD4+T細胞系、好ましくはMT4細胞系もしくはHeLaCD4+細胞系、およびがん細胞を含む。がん細胞は身体におけるすべての内部もしくは外部器官系のいかなるがんに由来してもよい。
【0103】
アッセイ系の適用は多様である。アッセイはすべての問題の酵素の基準活性について細胞もしくは組織をスクリーニングするために使用できる。アッセイは酵素を活性化または阻害いずれかをできる化合物についてスクリーニングするのに同じく容易に使用することができる。それは、アッセイが変性疾患に対する薬物、がんに対する薬物、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤をスクリーニングするのに使用できることを意味する。
【0104】
アッセイは、限定されるものではないが毛髪、脳、末梢神経系、眼、耳、鼻、口、扁桃、歯、食道、心臓、血液、血管、骨髄、リンパ節、胸腺、脾臓、免疫系、肝臓、胃、腸管、肝臓、内分泌腺および組織、腎臓、膀胱、生殖器官および腺、関節、骨および皮膚を含む身体におけるすべての器官系由来のいかなる生細胞もしくは死細胞または細胞系においても酵素の活性化または阻害のスクリーニングのために使用することができる。アッセイは、適当な酵素の機能不全を伴う身体におけるすべての器官系のいかなる疾患においても潜在的用途を有する薬物のスクリーニングのために使用できる。
【0105】
アッセイは、酵素を直接もしくは間接的に、すなわち酵素自体を調節することによってまたは酵素もしくはそれらのカスケードに影響する細胞レセプターおよびコファクターを調節することによって、調節するであろう薬物についてスクリーニングするために使用できる。
【0106】
アッセイは、酵素もしくはそのカスケードモジュレーターが干渉する作用部位を決定するために使用できる。すなわち、アッセイは、新規酵素もしくはそのカスケードモジュレーター薬物の作用の分子機構を確定するのに役立つ。
【0107】
また本発明は、(プログラムされた)細胞死、細胞増殖またはあらゆる異常な細胞行動がいずれか原因因子または結果となる疾患の緩和、予防または処置において新規化合物または既知化合物の新規用途を発見するための主題の蛍光基質の使用に関する。本発明のための使用の例は、病巣虚血または総体的虚血後の神経系を保護できる化合物のスクリーニング;神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、ハンチントン病、プリオン疾患、パーキンソン病、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、運動失調、毛細管拡張症および脊髄延髄萎縮を処置できる化合物のスクリーニング;心筋梗塞症、鬱血性心不全および心筋病を含む心臓疾患を処置できる化合物のスクリーニング;網膜障害を処置できる化合物のスクリーニング;紅斑性狼瘡、類リューマチ性関節炎、I型糖尿病、Sjogren症候群および糸球体腎炎を含む自己免疫障害を処置する化合物のスクリーニング;多嚢胞腎疾患および貧血/赤血球造血を処置する化合物のスクリーニング;免疫系障害を処置する化合物のスクリーニング;AIDS、SCIDS、肝炎および他の胃腸感染症、結核および他の呼吸感染症、HIV/AIDS以外の性的伝染性感染症を含む感染性疾患を処置する化合物のスクリーニング;移植(骨髄移植操作における移植片対宿主疾患)中の細胞、組織および臓器損傷を緩和または予防する化合物のスクリーニング;工業的生物工学における細胞系の死を減少または予防する化合物のスクリーニング;脱毛症(毛髪損失)を緩和または予防する化合物のスクリーニング;皮膚細胞の早発死を減少する化合物のスクリーニングを含む。
【0108】
同様に、本発明はまた、既知化合物のライブラリーまたは組み合わせ(combinatorial)もしくは他の化合物ライブラリーが、例えば抗ウイルス、抗腫瘍もしくは抗がん活性をもつ化合物についてスクリーニングされるスクリーニング操作における主題の蛍光基質の使用に関する。
【0109】
本発明はまた、化学療法薬により処置される動物もしくはヒトから採取されたがん細胞の化学感受性または耐性を決定するための診断操作における酵素基質の使用に関する。がん細胞は身体中のいずれの内部または外部器官系のあらゆるがんに由来するものであってもよい。さらに、本発明は、1種以上の細胞におけるアポトーシス・カスケードに関与する酵素の検出;1種以上の細胞におけるアポトーシス・カスケードに関与する酵素の活性の測定;試験物質が1種以上の細胞におけるアポトーシス・カスケードに関与する酵素に影響を及ぼすか否かの決定;1種以上の化学療法剤による処置に対するがんを有する動物の感受性の決定;1種以上の化学療法薬による動物の処置のモニタリング;試験物質が1種以上の試験細胞において細胞死を抑制または防止するか否か、試験物質が1種以上の細胞において細胞死を惹起または増進するか否かの決定のための方法に関する。該方法は、基質が該1種以上の細胞中に取り込まれる条件下で本発明による酵素基質と1種以上の細胞を接触させ、そしてそのように接触されない対照細胞または基質と酵素の既知競合阻害剤とに接触された細胞に比較して、1種以上の細胞内におけるいずれか大きさ(すなわち増大)または波長の、蛍光における変化が酵素の存在の指標または試験物質の活性の指標または1種以上の薬剤に対するがん細胞の化学感受性の指標である、該1種以上の細胞の蛍光を記録することによって達成されてもよい。
【0110】
本発明のその他の応用は、(a)基質が1種以上のウイルス感染細胞中に取り込まれる条件下で1種以上のウイルス感染細胞を酵素基質と接触させ、そして(b)感染してない対照細胞に比較して、1種以上のウイルス感染細胞内の蛍光の変化がウイルス酵素の活性およびそれらの細胞殺傷効果の測定値である、該1種以上の細胞の蛍光を記録することを含んでなる、細胞内でのウイルス複製の細胞変性効果の決定における酵素基質の使用である。この間接的測定方法では、本発明の基質を変換する酵素は必ずしもウイルス酵素ではなく細胞酵素である。同様に、本発明は、ウイルスに影響を及ぼす試験物質の存在下で何らかの細胞内のウイルス複製効果を検出し;1種以上の抗ウイルス剤による処置に対するHIVを有する動物の感受性を決定し;1種以上の抗ウイルス薬による動物の処置をモニターし;試験物質が1種以上の細胞においてウイルス複製を抑制または防止するか否かを決定する方法に関する。
【0111】
酵素活性の研究では、評価される酵素は、いずれか内因性遺伝子の発現またはウイルスのトランスフェクションもしくは遺伝子操作によって導入された外来遺伝子の発現の結果として細胞において存在していてもよい。より具体的には、酵素活性分析は遺伝子発現分析またはプロモーター研究に置き換えてもよい。評価される酵素はレポーター遺伝子によってコードされていてもよい。レポーター遺伝子は特異的基質のそれらの対応する蛍光沈殿物への変換を触媒できる酵素をコードしている。一般に、レポーター遺伝子は容易にアッセイされるタンパク質をコードしている核酸配列である。あるいはまた、それらはタンパク質産物が試験困難である他のコーディング領域を置換するために使用できる。レポーター遺伝子の例は、動物および酵母においてβ−D−ガラクトシダーゼ(GAL)をコードしているエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)LacZ遺伝子、植物においてβ−D−グルクロニダーゼ(GUS)をコードしているエシェリヒア・コリgusA(uidA)レポーター遺伝子を含む。
【0112】
レポーター遺伝子は、酵素の発現レベル;遺伝子発現;本来のものでも復帰遺伝子研究のために改変されても、プロモーターの特異性および強度;遺伝子送達系の効率;タンパク質輸送の結果でもよい遺伝子産物の細胞内運命;2−混成系における2つのタンパク質または1−混成系におけるタンパク質と核酸の相互作用;翻訳開始シグナルの効率;代謝状態;微生物の同定または存在;毒素の量;および遺伝子操作および分子クローニング作業の成功を含む、多くの種々の特性および事象(event)を「報告」できる。
【0113】
レポーター遺伝子は、しばしばゲノムの調節要素、例えばプロモーターと融合される。得られるDNA構築物は、次に問題の細胞中に導入され、そして酵素発現が適当な遺伝子発現を確立するためにアッセイされる。この技術を用いて、プロモーターおよび/またはレプレッサー操作によって影響されるエンコーディング遺伝子の発現効率が検討できる。この種の技術がまた使用されて問題のプロモーターの発現パターンが評価されてもよい。
【0114】
基質はまた、問題の酵素を発現する細胞について細胞集団または不活性サンプルをプローブするために使用することができる。例えば、GUSおよびGAL酵素はともにE.コリ(E.coli)に由来するので、あるサンプル中のそれらの存在は生物学的サンプルの細菌混入を指示できる。
【0115】
また蛍光基質は、例えば同じ代謝経路に関与する酵素の1種以上によって認識され、開裂される基質を設計することによって、例えば「複合」型アッセイにおいて一時に1種以上の酵素を測定するように設計できる。1種以上の酵素について「無差別」である蛍光生成基質は、本明細書に記述されるアッセイ方法を用いて、いまだ未知の酵素の活性を測定するために利用されてもよい。同様に、同じ波長において吸収し、異なる波長において発光する種々の蛍光基質は、種々の酵素の活性を同時に測定するためにアッセイにおいて用いられてもよい。
【0116】
実際には、試験細胞は本発明による蛍光生成基質より前に、後に、または実質的に同時に試験基質と接触されてもよい。この方法を使用して試験物質が酵素活性を促進または阻害するか否かを検出できる。また本発明は、試験細胞を第1の試験物質の存在下で第2の試験物質または試験物質の混合物とさらに接触させることに関する。
【0117】
適当な可溶化剤が本発明の蛍光生成基質を組織、細胞または細胞系に提供するために使用されてもよい。適当な可溶化剤は水溶性形態、例えば水溶性塩とバッファー溶液における基質の水溶液を含む。それに加えて、適当な油性懸濁液としての化合物の乳濁液および懸濁液が細胞または組織に提供されてもよい。適当な親油性溶媒または媒質は、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドもしくはポリエチレングリコール−400(この化合物はPEG−400に可溶である)もしくはジメチルスルホキシド(DMSO)またはその他の適当な可溶化剤を含む。場合によっては、乳濁液、懸濁液または溶液がまた可溶化剤を含有してもよい。場合によっては、レポーター分子のエレクトロポレーションまたはリポソームまたは界面活性剤における提供が使用されて蛍光生成レポーター分子の細胞透過性を増進してもよい。
【0118】
本発明において有用なマルチ−ウエルプラットホームは、約6〜約5000ウエル、好ましくは約96〜約4000ウエルを、もっとも好ましくは96の複数において有する。
【0119】
好適な基質の調製が反応を具体的に説明する手段としてここに記述される。記述は具体的に説明することを意味し、必要な蛍光生成基質を調製するために使用できる反応物および反応条件の選択を限定するものではない。置換基の適当な選択によって、特に、膜透過性、溶解度、蛍光の強度と波長および生成物の光安定性が改変できる。
【実施例】
【0120】
例1:GUS基質の酵素認識に関する迅速試験
【0121】
【化15】

【0122】
ジブチルGUS基質(化合物27)が試験された。まず、2mlのpH8バッファー溶液(Merck Titrisol 9888)中、生成物(化合物27)2mlの溶液を作成した。この溶液1mlを別に採取し、他の1mlの溶液にヘリックス・ポンマチア(Helix Pommatia)type HP−2由来のβ−D−グルクロニダーゼ(Sigma G7017)5μl(500UNIT)を添加した。室温で15分振盪後、両溶液をTLCプレート(Macherey−Nagel SIL G−25 UV254)にスポットした。プレートをイソオクタン/アセトン60:40を用いて展開した。GUS酵素を含有する溶液はTLCプレート上に明瞭な蛍光スポット(Rf=0.53)を示し、ブランク溶液は蛍光スポットを示さなかった。このことは、使用されたGUS酵素が非蛍光基質(化合物27)を蛍光生成物(化合物28)に変換できたことを示した。
【0123】
例2:活性化し、保護した糖部分(保護したブロッキング基)の調製
【0124】
【化16】

【0125】
メチル(1,2,3,4−テトラ−O−アセチル−β−D−グルクロネート)(化合物7)
D−グルクロノ−6,3−ラクトン(19.0g,108mmole)をMeOH250ml中に懸濁し、アルゴン下の室温で撹拌した。MeOH100ml中NaOH100mgの溶液を徐々に添加した(1時間)。さらに1時間撹拌後、混合液を減圧下で濃縮し、そして氷浴に置いた。ピリジン(45ml,562mmole)および無水酢酸(54ml,652mmole)を10℃以下の温度を維持しつつ添加した。残渣を溶解した後、混合液を室温で3時間撹拌し、次いで、ほぼ固形物になるまで減圧濃縮した。ジクロロメタン(300ml)を添加し、残渣を溶解し、水100mlで3回洗浄してMgSOで乾燥した。MgSOを除去した後、MeOH200mlを添加し、沈殿物を濾別し、乾燥した。白色結晶(25.0g,収率65%)を得た。生成物は100%β型からなった。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):5.75(d,8.0Hz,1H),5.31(dd ap.t,9.3Hz,1H),5.24(dd ap.t,9.3Hz,1H),5.14(dd,9.3/8.0Hz,1H),4.18(d,9.3Hz,1H),3.34(s,3H),2.12(s,3H),2.03(m,9H).
13C−NMR:(50MHz,CDCl):ν(ppm):169.9,169.4,169.2,168.8,166.9,91.4,73.0,71.8,70.2,69.0,53.0,20.8,20.6,20.5.
IR(film);ν(cm−1):2959(w),1757(s),1447(w),1370(m),1217(s),1091(m),1041(m),978(w),911(w),895(w),772(w),692(w),600(w),558(w)。
【0126】
メチル(2,3,4−トリ−O−アセチル−α/β−D−グルクロネート)(化合物8) 乾燥THF600ml中化合物7(36.1g,96mmole)の溶液に、トリブチル錫メトキシド28.8ml(100mmole)を添加した。溶媒を減圧下で除去した。0.5MHCl200mlを添加し、そして混合液をジクロロメタン300mlで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、そして溶媒を減圧蒸発させた。残渣を一夜−20℃に維持した。2層が形成された。上層を除去した。下層をイソオクタン/酢酸エチル50:50を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製した。白色固体(26.0g,収率80%)を得たが、これは78%αと22%β生成物からなった。
H−NMR:(500MHz,CDCl+dr DO):δ(ppm):5.58(dd ap.t,9.8Hz,1Hα),5.55(d,3.6Hz,1Hα),5.31(dd ap.t,9.6Hz,1Hβ),5.23(dd ap.t,9.6Hz,1Hβ),5.18(dd ap.t,9.8Hz,1Hα),4.91(m,1Hα+1Hβ)4.79(d,7.7Hz,1Hβ),4.59(d,9.8Hz,1Hα),4.10(d,9.6Hz,1Hβ),3.76(s,3Hβ),3.75(s,3Hα),2.09(s,3Hβ),2.08(s,3Hα),2.03(m,6Hα6Hβ).
13C−NMR:(50MHz,CDCl):δ(ppm):170.4,170.2,169.9,169.8,168.7,167.8,95.3,90.2,72.7,72.4,71.8,70.9,69.6,69.5,69.2,67.9,53.0,52.9,20.7,20.5.
IR(film);ν(cm−1):3441(s,broad),2958(w),1754(s),1437(m),1374(m),1228(s),1157(m),1071(s),936(w),898(w),841(w),798(w)。
【0127】
メチル(1−デオキシ−2,3,4−トリ−O−アセチル−1−トリクロロアセチミドイル−α−D−グルクロネート)(化合物9)
13.1gの化合物8(39.2mmole)を乾燥ジクロロメタン80ml中に溶解した。トリクロロアセトニトリル20.0ml(195.9mmole)およびDBU0.6ml(3.9mmole)を添加した。混合液をアルゴン下の室温で24時間撹拌した。この溶液に微粉シリカ3gを添加し、混合液を5分間撹拌し、濾過した。濾液を減圧濃縮し、そして ペンタン/酢酸エチル75:25を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製した。白色固体(15.0g,収率79%)を得たが、これは100%α型からなった。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):8.73(s,1H),6.64(d,3.6Hz,1H),5.63(dd ap.t,10.1Hz,1H),5.27(dd ap.t,10.1Hz,1H),5.15(dd,10.1/3.6Hz,1H),4.50(d,10.1Hz,1H),3.75(s,3H),2.05(m,6H),2.01(s,3H).
13C−NMR:(50MHz,CDCl):δ(ppm):169.8,169.7,169.5,167.2,160.5,92.6,90.5,70.5,69.4,69.1,68.9,53.1,20.7,20.5,20.4.
IR(film);ν(cm−1):3320(w),2957(w),1756(s),1679(m),1439(w),1370(m),1287(w),1218(s),1150(w),1043(s),971(m),914(w),835(w),797(m),734(w),697(w),645(w),600(w),552(w)。
【0128】
2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−α/β−D−ガラクトース(化合物10)
乾燥THF500ml中市販のβ−D−ガラクトース ペンタ−アセテート(12.0g,31mmole)溶液に、トリブチル錫メトキシド(32mmole)を添加した。フラスコにアルゴンを通気し、そして混合液を加熱して5時間還流した。溶媒を減圧下で除去した。0.5MHCl200mlを添加し、そして混合液をジクロロメタン300mlで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、そして溶媒を減圧蒸発させた。アセトニトリル150mlを添加し、そしてこの層をn−ヘキサン150mlで6回洗浄して錫残渣を除去した。溶媒を蒸発させ、残渣をイソオクタン/酢酸エチル70:30を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製した。白色固体(7.0g,収率65%)を得たが、これは70%αと30%β生成物からなった。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):5.52(d,3.5Hz,1Hα),5.48(m ap.d,1Hα),5.41(m,1Hα+1Hβ),5.17(dd,3.5/10.8Hz,1Hα),5.07(m,2Hβ),4.69(m,1Hβ),4.47(t,6.5Hz,1Hα),4.10(m,2Hα+2Hβ),3.96(t,6.5Hz,1Hβ),2.16(s,3Hβ),2.15(s,6Hα),2.11(s,3Hβ),2.10(s,3Hα),2.05(m,3Hα+3Hβ),2.00(s,3Hβ),1.99(s,3Hα).
IR(film);ν(cm−1):3464(m,broad),2971(w),1747(s),1434(w),1372(m),1231(s),1154(w),1126(w),1052(s),956(w),913(w),774(w),736(w),703(w),601(w)。
【0129】
1−デオキシ−2,3,4,5−テトラ−O−アセチル−1−トリクロロアセチミドイル−α−D−ガラクトース(化合物11)
6.4gの化合物10(20.0mmole)を乾燥ジクロロメタン60ml中に溶解した。トリクロロアセトニトリル10.0ml(100.0mmole)およびDBU0.3ml(2.0mmole)を添加した。混合液をアルゴン下の室温で24時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、そして得られる残渣をイソオクタン/酢酸エチル85:15を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製した。白色固体(5.4g,収率55%)を得たが、これは100%α型の化合物11からなった。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):8.67(s,1H),6.60(d,3.5Hz,1H),5.56(m,1H),5.42(dd,3.3/10.8Hz,1H),5.36(dd,3.4/10.8Hz,1H),4.44(t,7.0Hz,1H),4.13(m,2H),2.17(s,3H),2.02(m,9H).
IR(film);ν(cm−1):1751(s),1677(w),1431(w),1371(m),1225(s),1149(w),1073(m),971(w),951(w),933(w),903(w),836(w),797(w),642(w),526(w),471(w)。
【0130】
例3:ジブチル化キナゾリノン蛍光団(化合物13)の調製におけるStilleカップリングの使用
【0131】
【化17】

【0132】
1.00gのジブロミド化合物12(2.5mmole)をHMPA10mlに溶解し、続いて、テトラブチル錫4.20ml(12.8mmole)およびPd(PPh(0.07mmole)を添加した。反応混合液を80℃で5日間加熱し、続いて濾過した。濾液を溶出液としてシクロヘキサン−アセトン95:5を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって直接精製した。所望の生成物を含有する画分を収集し、蒸発させ、そして再びシクロヘキサン−酢酸エチル90:10を用いて精製した。得られる残渣をMeOH3mlにより1回洗浄し、乾燥して淡緑色結晶として化合物13の155mg(収率14%)を得た。
ES−MS(+)mode:351.2(M+H),373.2(M+Na
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):8.14(s,1H),8.02(d ap.m,1H),7.64(m,2H),7.29(dd,2.0/8.4Hz,1H),7.02(d,8.4Hz,1H),2.76(m,4H),1.70(m,4H),1.40(m,4H),0.95(m,6H).
IR(film);ν(cm−1):2926(w),2834(w),1666(s),1616(w),1576(w),1505(w),1392(w),1339(w),973(w),810(w)。
【0133】
例4:ジ−ペンチル化キナゾリノン蛍光団(化合物21)の調製
【0134】
【化18】

【0135】
Stilleカップリングによるジアルキル化の代替法は、両モノアルキル化構築ブロックを別々に合成し、次いでそれらを親油性ジアルキル化蛍光色素に合体させりことであった。例として、ジペンチル化蛍光色素(化合物21)の合成が示される。
【0136】
n−ペンチルイサチン(化合物15)の合成
抱水クロラール28.5g(172mmole)および硫酸ナトリウム170gを水600ml中に溶解した(溶液1)。4−n−ペンチルアニリン27.8ml(157mmole)を水475ml中に15mlの濃HClとともに溶解した(溶液2)。50%ヒドロキシルアミン水溶液29.6mlを水80ml中に42mlの濃HClとともに溶解した(溶液3)。撹拌しながら、溶液1を60℃に加熱し、次いで溶液2、続いて溶液3を滴下した。温度を上昇させて15分間還流した。反応混合液を室温まで放冷した。固形残渣を濾別し、酢酸エチル500mlに溶解し、水200mlで3回洗浄した。蒸発後、化合物14を主として含有する残渣を、撹拌しながら、濃硫酸100mlを含有する氷冷ビーカーに徐々に添加した。全化合物14を添加した後、反応混合液を室温に達するまで放置し、続いて80℃で15分間加熱した。氷1000gを添加し、そして生成した固形物を濾過し、酢酸エチル300mlに再溶解した。この溶液を水200mlで3回洗浄し、蒸発させた。得られる残渣をイソオクタン/アセトン65:35を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製して、橙色固体(11.4g,収率40%)として化合物15を得た。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):9.35(s,1H),7.38(d ap.s,1H),7.35(dd,1.7/8.0Hz,1H),6.92(d,8.0Hz,1H),2.54(t,7.6Hz,2H),1.57(m,2H),1.30(m,4H),0.88(t,6.9Hz,3H).
IR(film);ν(cm−1):3279(w),2955(w),2856(w),1745(s),1624(s),1490(s),1197(w),657(w)。
【0137】
無水5−n−ペンチルイサト酸(化合物16)の合成
8.13gの化合物15(37.5mmole)をTHF145mlに溶解した。この溶液をTHF55ml中m−クロロ−過安息香酸12.9g(74.8mmole)に滴下し、一夜撹拌した。反応混合液に、飽和重炭酸ナトリウム150mlおよび水500mlを添加した。得られる懸濁液を酢酸エチル250mlで3回抽出した。蒸発後、化合物16を白色固体として得た(7.4g,収率84%)。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):9.95(s,1H),7.87(d ap.s,1H),7.51(dd,1.6/8.2Hz,1H),7.08(d,8.2Hz,1H),2.63(t,7.6Hz,2H),1.61(m,2H),1.30(m,4H),0.88(t,6.9Hz,3H).
IR(film);ν(cm−1):3246(w),2955(w),2927(w),2856(w),1789(m),1758(s),1697(m),1518(w),1350(w),1278(w),1140(w),1043(w),1004(w),847(w),765(w),750(w),679(w),580(w),556(w)。
【0138】
メチル−5−n−ペンタノイルサリチレート(化合物17)の合成
三塩化アルミニウム167g(1250mmole)を二硫化炭素430ml中に添加し、5℃に冷却した。二硫化炭素145ml中サリチル酸メチル54ml(418mmole)および塩化バレロイル101ml(835mmole)を機械的に撹拌しながら滴下し、撹拌を室温で20時間継続した。その後、混合液を100mlの濃HClを含有する氷2kg上に注入した。氷の融解後、塩化ナトリウム50gを添加し、そして混合液をジクロロメタン500mlで2回抽出した。回収した有機層をブライン300mlで3回洗浄して、蒸発後、透明な液体(98g,収率99%)を得た。さらなる精製は実施しなかった。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):8.49(d,2.3Hz,1H),8.09(dd,2.3/8.8Hz,1H),7.03(d,8.8Hz,1H),4.0(s,3H),2.92(t,7.4Hz,2H),1.72(m,2H),1.41(m,2H),0.96(t,7.3Hz,3H).
IR(film);ν(cm−1):2958(m),2872(w),1674(s),1590(m),1444(m),1298(w),1266(w),1214(s),1088(m),961(w),843(w),796(w),731(w),688(w),584(w)。
【0139】
5−n−ペンタノイルサリチル酸(化合物18)の合成
化合物17の97.5g(412mmole)をEtOH530mlおよび水1050ml中に溶解した。87gのNaOH(2.19mole)を添加し、そして混合液を5時間還流した。その後、混合液を濃HClによりpH1まで酸性にした。形成した沈殿を濾別し、減圧乾燥した。82gを得た(収率90%)。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ(ppm):8.38(d,2.3Hz,1H),8.10(dd,2.3/8.7Hz,1H),7.06(d,8.7Hz,1H),2.95(t,7.3Hz,2H),1.58(m,2H),1.34(m,2H),0.90(t,7.3Hz,3H).
ES−MS(+)mode:223.0(M+H),245.0(M+Na
IR(film);ν(cm−1):3500(w),3072(m,broad),2955(w),2933(w),2869(w),1668(s),1588(w),1490(w),1428(w),1348(w),1301(w),1272(w),1198(s),1087(w),843(w),796(w),765(w),619(w)。
【0140】
5−n−ペンチルサリチル酸(化合物19)の合成
モッシー(mossy)亜鉛113gおよびHgCl12.2gを濃HCl 4.6mlおよび水190ml中で一夜振盪した。透明液体をデカントし、水105ml、濃HCl 56mlおよび化合物18 50gを添加した。混合液を5日間還流した。冷却後、混合液をEtOAc1000mlで抽出した。得られた有機層をブラインで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発した。得られる残渣をジクロロメタン/酢酸99:1を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製して白色粉末(19.6g,収率40%)としての化合物19を得た。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):9.90(s,1H),7.88(d,1.6Hz,1H),7.51(dd,1.6/8.3Hz,1H),7.07(d,8.3Hz,1H),2.64(t,7.6Hz,2H),1.61(m,2H),1.32(m,4H),0.88(t,6.9Hz,3H).
ES−MS(−)mode:207.1(M−H).
IR(film);ν(cm−1):3248(w,broad),2924(w),1667(s),1614(w),1584(w),1487(w),1446(s),1334(w),1294(w),1216(m),902(w),794(w),675(m),581(w),471(w)。
【0141】
5−n−ペンチルサリチルアミド(化合物20)の合成
化合物19 18g(86mmole)、ウレウム(ureum)20.8g(346mmole)およびポリリン酸5滴を150℃で18時間加熱した。冷却後、EtOAc500mlを添加し、そして得られる溶液をブラインで2回洗浄した。有機層の蒸発後、得られる残渣をシクロヘキサン/イソプロパノール95:5を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製して白色粉末(9.17g,収率51%)としての化合物20を得た。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):7.25(dd,2.0/8.5Hz,1H),7.15(d,2.0Hz,1H),6.92(d,8.5Hz,1H),2.53(t,7.6Hz,2H),1.56(m,2H),1.30(m,4H),0.88(t,6.9Hz,3H).
IR(film);ν(cm−1):3408(s,broad),3196(w),2953(w),2854(w),1660(s),1634(s),1497(m),1436(w),1356(w),1249(m),1138(w),1081(w),822(w),795(w),744(w),695(w),580(w)。
【0142】
2−(2−ヒドロキシ−5−n−ペンチルフェニル)−6−n−ペンチル−3H−キナゾリン−4−オン(化合物21)の合成
化合物16 2.81g(12.1mmole)および化合物20 2.50g(12.1mmole)をDMF10ml中150℃で3.5時間加熱した。混合液を徐々に室温まで冷却し、生成した結晶を濾過によって分離し、MeOH3mlで洗浄した。乾燥後、化合物21の2gを淡緑色結晶として得た(収率43%)。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ(ppm):8.08(s,1H),7.95(s,1H),7.69(dd,1.6/8.3Hz,1H),7.66(d,8.3Hz,1H),7.26(dd,1.6/8.3Hz,1H),6.90(d,8.3Hz,1H),2.74(t,7.5Hz,2H),2.55(t,7.5Hz,2H),1.63(m,4H),1.32(m,8H),0.89(m,6H).
IR(film);ν(cm−1):2924(w),1666(s),1615(w),1592(w),1578(w),1505(m),1396(w),1336(w),1254(w),1226(w),1204(w),1150(w),1131(w),886(w),825(w).
融点:244℃。
【0143】
例5:活性化し、保護したグルクロン酸(化合物9)のジペンチル化キナゾリノン蛍光色素(化合物21)へのカップリングと、それに続く糖部分の脱保護
【0144】
【化19】

【0145】
メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−1−O−(2−(4−オキソ−6−n−ペンチル−3H−キナゾリニル)−4−n−ペンチルフェニル)β−D−グルクロネート(化合物22)
化合物21 0.378g(0.99mmole)および化合物9 0.574g(1.20mmole)を減圧下で徹底的に乾燥し、次いで乾燥クロロホルム11ml中に溶解した。ホウ素トリフルオロエーテレート(Boron trifluoroetherate)13μl(0.099mmole)を添加し、反応液を30℃で2日間撹拌した。反応混合液を蒸発させ、そして得られる残渣をシクロヘキサン/アセトン90:10を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製して淡緑色粉末(457mg,収率66%)としての化合物21を得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ(ppm):8.32(d,2.2Hz,1H),8.00(d,8.6Hz,1H),7.91(dd,1.9/8.6Hz,1H),7.80(d,1.4Hz,1H),7.26(dd,2.2/8.3Hz,1H),6.91(d,8.3Hz,1H),6.88(d,7.9Hz,1H),5.84(dd ap.t,9.34Hz,1H),5.41(dd,7.9/9.4Hz,1H),5.19(dd ap.t,9.4Hz,1H),4.98(d,9.4Hz,1H),3.57(s,3H),2.80(m,2H),2.63(m,2H)2.06(s,3H),2.05(s,3H),1.96(s,3H),1.67(m,4H),1.32(m,8H),0.88(m,6H).
IR(film);ν(cm−1):3371(w),2925(w),2855(w),1749(s),1694(s),1614(w),1580(w),1504(w),1454(w),1428(w),1355(w),1232(s),1098(m),1061(w),834(m),753(w),650(w),605(w).
ES−MS(+)mode:695.3(M+H)。
【0146】
メチル1−O−(2−(4−オキソ−6−n−ペンチル−3H−キナゾリニル)−4−n−ペンチルフェニル)β−D−グルクロネート(化合物23)
化合物22 457mg(0.66mmole)をジクロロメタン66ml中に溶解した。メタノール中シアン化カリウム(0.25g/ml)86mlを添加した。混合液を室温で40時間撹拌した。反応混合液を蒸発させ、そして得られる残渣をシクロヘキサン/アセトン77:23を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製して淡緑色の粘稠固形物(61mg,収率16%)としての化合物23を得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ(ppm):8.25(d,2.2Hz,1H),8.05(d,1.2Hz,1H),7.97(d,8.6Hz,1H),7.91(dd,1.9/8.6Hz,1H),7.27(dd,2.2/8.3Hz,1H),6.91(d,8.3Hz,1H),6.24(d,8.0Hz,1H),5.70(d,5.3Hz,1H),5.59(d,5.4Hz,1H),5.45(d,4.9Hz,1H),4.19(d,9.3Hz,1H),3.64(s,3H),3.55(m,2H),2.82(m,2H),2.63(m,2H),1.65(m,4H),1.33(m,8H),0.88(m,6H)。
【0147】
1−O−(2−(4−オキソ−6−n−ペンチル−3H−キナゾリニル)−4−n−ペンチルフェニル)β−D−グルクロン酸(化合物24)
化合物23 15mg(0.027mmole)を乾燥THF6ml中に溶解した。酸化ビス−(トリブチル錫)35μl(0.069mmole)を添加し、そして反応液を室温で20日間撹拌した。アセトニトリル5mlを添加し、そして混合液をn−ヘキサン5mlで10回洗浄した。溶媒を蒸発させ、得られる残渣をPhenomenex LunaC18(2)22x250mm 5μHPLCカラムを用いて精製した。100%水(5mM酢酸アンモニウム)から100%アセトニトリルまでの10分勾配を使用した。UV検出波長を270nmに設定した。最初の溶出ピークを分離し、凍結乾燥した。白色固形物8mgを得た(収率54%)。エレクトロスプレー質量スペクトルは正確な質量を示した。
ES−MS(−)mode:553.2(M−H),1107.6(2M−H)。
【0148】
GUS基質(化合物24)を試験し、そしてそれは30分後に明瞭な陽性反応を示した。
【0149】
例6:リン酸基のジ−ブチル化キナゾリノン蛍光団(化合物21)へのカップリング
【0150】
【化20】

【0151】
2−(2−ジエチルホスホリルオキシ−5−n−ペンチルフェニル)−6−n−ペンチル−3H−キナゾリン−4−オン(化合物25)の合成
化合物21 1.00g(2.64mmole)を乾燥THF30ml中に溶解し、そして水素化ナトリウム95mg(3.97mmole,鉱油中60%)を直ちに添加した。反応液をアルゴン雰囲気下室温で0.5時間撹拌した。この後、ジエチルクロロホスフェート570μlを添加し、そして反応液をさらに15時間撹拌した。反応混合液を蒸発させ、得られる残渣をジクロロメタン/酢酸エチル93:7を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製して淡黄色オイル(914mg,収率67%)としての化合物25を得た。
H−NMR:(500MHz,CDCl):δ(ppm):10.69(s,1H),8.11(d,2.0Hz,1H),7.83(s,1H),7.72(d,8.3Hz,1H),7.61(dd,2.1/8.3Hz,1H),7.36(d,8.3Hz,1H),7.31(dd,2.1/8.3Hz,1H),4.26(m,4H),2.75(t,7.6Hz,2H),2.66(t,7.6Hz,2H),1.65(m,4H),1.34(m,14H),0.89(m,6H).
IR(film);ν(cm−1):3389(w,broad),3188(w),2956(w),2929(m),2857(w),1688(s),1601(m),1493(m),1295(m),1217(w),1031(s),966(w),934(w),833(w).
ES−MS(+)mode:515.2(M+H)。
【0152】
2−(3H−4−オキソ−6−n−ペンチル−2−キナゾリニル)−4−n−ペンチルフェニルホスフェート(化合物26)の合成
化合物25 358mg(694μmole)をジクロロメタン18ml中に溶解した。ビス(トリメチルシリル)トリフルオロ酢酸(6.94mmole)を添加し、次いで反応混合液をアルゴン下室温で0.5時間撹拌した。次いで、反応液を0℃まで冷却し、そしてヨウ化トリメチルシリル795μl(5.56mmole)を滴下した。反応液をアルゴン雰囲気下0℃で1時間撹拌した。この後、混合液アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸(10:5:3)63mlを添加し、そして反応液を室温で1時間撹拌した。反応混合液を蒸発させ、得られる残渣をジクロロメタン/メタノール/ギ酸90:10:2を用いるフラッシュクロマトグラフィー(Acros Silicagel 0.060〜0.200mm)によって精製した。トルエン100mlの添加後、生成物を含有する画分を濃縮して橙色結晶(238mg,収率58%)としての化合物26を得た。
H−NMR:(500MHz,DMSO−d):δ(ppm):7.94(d,1.9Hz,1H),7.72(dd,1.9/8.4Hz,1H),7.63(d,8.3Hz,1H),7.55(d,1.9Hz,1H),7.36(dd,2.1/8.3Hz,1H),7.31(d,8.4Hz,1H),2.74(t,7.5Hz,2H),2.61(t,7.6Hz,2H),1.62(m,4H),1.32(m,8H),0.87(m,6H).
IR(film);ν(cm−1):2930(s,broad),2857(w),1658(s),1495(m),1466(w),1329(w),1299(w),1201(m),947(m),841(w),719(w),624(w),526(m).
ES−MS(+)mode:457.4(M+H)。
【0153】
例7:哺乳動物および植物細胞における酵素試験
細胞を10μgpLNCGUSの存在下でエレクトロポレーションにかけ、24時間後、化合物27(DMSO中10mM保存液)を10μg/mlの最終濃度まで添加した。5%未満の細胞がpLNCGUSプラスミドを取り込んだ。pLNCGUSの不在下でエレクトロポレーションを受けた細胞は、図3に示されるように、写真において非蛍光細胞に匹敵する弱いバックグラウンド蛍光を示しただけであった。
【0154】
【化21】

【0155】
例8:ナフトール−キナゾリノン蛍光団30の調製
ナフトール系ポリ芳香族アルキル化蛍光団は次のように調製することができる:化合物18(参照、例4)の代わりに2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸が使用される場合、化合物30は化合物21に関して例4に記述した同じ経路で合成できる。
【0156】
【化22】

【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】イン・ビボの基質(化合物27)の試験。写真は形質転換したタバコ植物の毛根細胞における共焦点顕微鏡観察像を示す。細胞核におけるGUSレポーター酵素の存在が、細胞を透過性にすることなく親油性GUS基質(化合物27)を用いて示すことができる。
【図2】(a)蛍光最大値における化合物21の発光スペクトル。(b)蛍光最大値における化合物21の励起スペクトル。
【図3】化合物27の存在下の蛍光性(=GUS移入した)および非蛍光性293T細胞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

{式中、
Yは
【化2】

であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは酸素、窒素もしくは硫黄であり;
およびRは、各々独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、RC(=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][R−C(=X)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)][R]N−、[RN−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[R−S(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
ここで、X,ZおよびQは各々独立して酸素もしくは硫黄であり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
各々qは独立して0,1,2,3もしくは4であり;
ここで、いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、さらにC1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基によって、一置換、二置換もしくは三置換(原子価がそれを可能にする場合)されていてもよく;
ブロッキング基は、単糖もしくは多糖誘導体、ホスフェート誘導体もしくはサルフェート誘導体であり;
ただし、ここで、少なくとも1個のR、RもしくはRは、少なくとも4個の炭素をもつ部分である}
の酵素基質ならびにその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子。
【請求項2】
式(I):
【化3】

{式中、
Yは
【化4】

であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは−O−,−N(R)−もしくは−S−であり;
式(I)中の各Rおよび各Rは、独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−,R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[RX−C(=Z)][R]N−、[RX−C(=Z)][R−C(=Q)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)][R]N−、[RN−C(=Z)][RC(=X)]N−、[R−S(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
ここで、X,ZおよびQは、各々独立してOもしくはSであり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
式(I)中の各qは独立して0,1,2,3もしくは4であり;
ここで、いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、さらにC1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基によって一置換、二置換もしくは三置換(原子価がそれを可能にする場合)されていてもよく;
ブロッキング基は、単糖もしくは多糖誘導体、ホスフェート誘導体もしくはサルフェート誘導体、カルボン酸誘導体もしくはオリゴペプチド誘導体であり;
ただし、ここでR、RおよびRの少なくとも1個は、C4−8アルキル、C4−8アルケニルもしくはC4−8アルキニルである}
の酵素基質ならびにその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子。
【請求項3】
、RおよびRの少なくとも1個が、直鎖および分枝鎖ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルからなる群から独立して選ばれる、請求項1〜2のいずれか1つに記載の基質。
【請求項4】
Wが−N−(R)−であり、Yが−C(=O)−であり、nが1であり、そして式(II)
【化5】

[式中、M,R,R,R,qおよびブロッキング基は請求項1〜3のいずれか1つにおいて定義されたとおりである]
を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の基質。
【請求項5】
式(III)
【化6】

[式中、R,R,Rおよびブロッキング基は請求項1〜3のいずれか1つにおいて定義されたとおりである]
を有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の基質。
【請求項6】
式(V):
【化7】

{式中、
Yは
【化8】

であり、そして
nは1もしくは0であり;
Wは=CH−,−S−,−O−もしくは−N(R)−であり;
Mは−O−,−N(R)−もしくは−S−であり;
式(V)中の各Rおよび各Rは、独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、R−、RO−、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、R−C(=Z)−X−、RX−C(=Z)−Q−、RS−、R−S(=O)−、R−S(=O)−,R−S(=O)−O−、R−S(=O)−O−、RO−S−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−、[R−C(=Z)][R]N−、[R−C(=Z)][R−C(=X)]N−、[RX−C(=Z)][R]N−、[RX−C(=Z)][R−C(=Q)]N−、RN−C(=Z)−、RN−C(=Z)−X−、[RN−C(=Z)][R]N−、[RN−C(=Z)][RC(=X)]N−、[R−S(=O)][R]N−、[R−S(=O)][R]N−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−、(RX)(RQ)P(=Z)−O−、(RN)(RX)P(=Z)−O−、(RN)(RN)P(=Z)−O−、(RX)(RQ)P(=Z)−S−、(RN)(RX)P(=Z)−S−、(RN)(RN)P(=Z)−S−、[(RX)(RQ)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RX)P(=Z)][R]N−、[(RN)(RN)P(=Z)][R]N−、(R)(RX)P(=Z)−O−、(R)(RN)P(=Z)−O−、(R)(RX)P(=Z)−S−、(R)(RN)P(=Z)−S−、[(R)(RX)P(=Z)][R]N−、[(R)(RN)P(=Z)][R]N−であり;
ここで、R置換基は、ナフチル基の任意の炭素原子、例えば炭素原子C1,C4,C5,C6,C7およびC8において1個以上の水素を置換することができ、
ただし、この場合炭素の原子価は超過されず;
X,ZおよびQは、各々独立してOもしくはSであり;
はR、R−C(=Z)−、RX−C(=Z)−、RN−C(=Z)−、RO−S(=O)−、RO−S(=O)−、RN−S(=O)−、RN−S(=O)−、(RX)(RQ)P(=Z)−、(RN)(RX)P(=Z)−、(RN)(RN)P(=Z)−であり;
、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−7シクロアルキル、アリール、Het、Hetであり;
式(V)中の各qは独立して0,1,2,3もしくは4であり;
いずれのC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニルもしくはアミノ基も、さらにC1−4アルコキシ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフェニル、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、C1−4アルキルアミノ、ハロゲン、ニトロ、アジド、メルカプト、スルフェノ、スルフィノ、スルホ、シアノ、アミノ、アリール、HetもしくはHet置換基によって一置換、二置換もしくは三置換(原子価がそれを可能にする場合)されていてもよく;
ブロッキング基は、単糖もしくは多糖誘導体、ホスフェート誘導体もしくはサルフェート誘導体、カルボン酸誘導体もしくはオリゴペプチド誘導体であり;
ただし、ここでR、RもしくはRの少なくとも1個は、C4−8アルキル、C4−8アルケニルもしくはC4−8アルキニルである}
の酵素基質ならびにその生物学的に許容しうる塩およびプロ−レポーター分子。
【請求項7】
生物細胞の膜を通して透過させるための、請求項1〜6のいずれか1つに記載の基質の使用。
【請求項8】
− 場合によっては保護されてもよいブロッキング基を合成し;
− 置換蛍光団を合成し;
− 場合により保護されていてもよいブロッキング基を該置換蛍光団に結合させ;
− 該ブロッキング基を場合によっては脱保護し;そして
− 得られる置換基質を精製する
段階を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の基質の調製方法。
【請求項9】
式(IV):
【化9】

[式中、Y,n,W,M,R,Rおよびqは、請求項1〜5のいずれか1つにおいて定義されたとおりである]
を有する、請求項1〜5のいずれか1つの式(I)、(II)および(III)の基質からブロッキング基部分の開裂によって得ることができる蛍光沈殿物。
【請求項10】
式(VI):
【化10】

[式中、Y,n,W,M,R,Rおよびqは、請求項6において定義されたとおりである]
を有する、請求項6の式(V)の基質からブロッキング基部分の開裂によって得ることができる蛍光沈殿物。
【請求項11】
− 酵素を含有するサンプルを請求項1〜6のいずれか1つに記載の基質と接触させ;− 請求項9〜10のいずれか1つに記載の蛍光沈殿物の形成を可能にするために適当な条件を適用し;そして
− 該蛍光沈殿物を定量的または定性的に分析する
段階を含んでなる該酵素の活性を検出する方法。
【請求項12】
該蛍光沈殿物の分析が
− 蛍光沈殿物の吸収波長において光を発することができる光源に蛍光沈殿物を曝露し;そして
− 得られる沈殿物の蛍光を検出する
段階を含んでなる、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−514650(P2006−514650A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563251(P2004−563251)
【出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/051105
【国際公開番号】WO2004/058787
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(502306925)テイボテク・ビーブイビーエイ (1)
【Fターム(参考)】