説明

発酵分解処理装置

【課題】分解処理槽の側壁に被撹拌物が付着、固化するのを防止できるようにする。
【解決手段】ボックス状の分解処理槽2に投入された被撹拌物を、分解処理槽2の対向する一対の前後側壁4の間を往復反転移動する撹拌装置7により撹拌するにあたり、分解処理槽2の前後側壁4近傍の底壁5に、分解処理槽2の底壁よりも低位な溝底片20bを有し、撹拌装置7により前後側壁4に押し付けられた被撹拌物が落ち込み、該落ち込んだ被撹拌物を外部に排出することができる落とし込み凹部20を形成する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機汚泥等の汚泥や生ごみ等を分解処理する発酵分解処理装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、有機汚泥等の汚泥や生ゴミ等の被処理物の処理が社会的に大きな問題になっており、これら被処理物をコロニー(微生物担持体)とともに分解処理槽に投入し、発酵分解する等の処理をして無公害化することが提唱されている。この場合、被処理物の分解処理の効率を高めるため、分解処理槽に撹拌装置を設けて撹拌する必要があり、このような撹拌装置として、分解処理槽の上方に走行台車を設け、該台車から垂下した一対の垂下フレームのあいだに横軸回転する撹拌羽根を上下二段に設けて、分解処理槽に投入された被処理物を撹拌しながら台車が分解処理槽を移動するようにしたものが提唱された(特許文献1)。しかるに、前記特許文献1の撹拌装置は、撹拌羽根が上下二段に設けられているため、分解処理槽内の被処理物を主として上層部と下層部とに分かれた撹拌がなされることになるため、撹拌効率に劣るという問題があった。そこで、垂下フレームに、駆動、従動スプロケットを軸承するとともに、これら両スプロケットに無端体を懸回し、該無端体の循環移動により撹拌することにより、分解処理槽内の被処理物を上下に切り返す状態で撹拌するようにして撹拌効率を高めるようにしたものが提唱されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−225551号公報
【特許文献2】特開2005−279634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1、2のものにおいて、撹拌装置は走行台車により分解処理槽内を往復反転しながら全域に亘って撹拌するように構成されており、分解処理槽の移動端部では、撹拌装置が分解処理槽の前後壁に近付きながら撹拌作動することにより、被処理物を分解処理槽の移動端側の側壁に押し付けるような圧力が作用する。ところで、余剰汚泥等の被処理物は粘度が高く固まりやすい性質を備えているうえ、予め凝集剤により凝集処理されているため、分解処理槽の移動端部で側壁に押し付けられるような圧力を受けると側壁に圧縮堆積される形態を誘引して側壁に付着した状態で固化する惧れがある。そして、撹拌装置の長時間にわたる往復反転作動に伴い固化した被処理物が側壁に堆積(蓄積)し、撹拌装置の移動範囲が狭められてしまう。しかも、固化した被処理物はこれ以上の分解処理がなされることがなく、この結果、処理効率が大きく低下するという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ボックス状の分解処理槽に投入された被撹拌物を、分解処理槽の対向する一対の側壁間を往復反転移動する撹拌装置により撹拌するにあたり、分解処理槽の各側壁近傍部位に、分解処理槽の底壁よりも低位な溝底辺を有し、撹拌装置により側壁に押し付けられる被撹拌物が落ち込んで外部に排出可能な落とし込み凹部を形成したことを特徴とする発酵分解処理装置である。
請求項2の発明において、落とし込み凹部は、分解処理槽の底壁に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発酵分解処理装置である。
請求項3において、撹拌装置は、往復反転移動の移動端において落とし込み凹部の直上に位置するように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の発酵分解処理装置である。
請求項4の発明において、落とし込み凹部は、分解処理槽の側壁側ほど低位となる傾斜状の溝側辺を有して形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発酵分解処理装置である。
請求項5の発明において、落とし込み凹部には、落ち込んだ被撹拌物を落とし込み凹部から分解処理槽の外部に排出する排出手段が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の発酵分解処理装置である。
請求項6の発明において、発酵分解処理装置には、被処理物を散布する散布装置が設けられるものとし、排出手段には、落とし込み凹部から排出された被撹拌物を散布装置に移送する回収手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発酵分解処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、2の発明とすることにより、撹拌装置による長時間にわたる往復反転作動がなされたとしても、被撹拌物が側壁に付着、固化することがなく、分解処理槽内の被撹拌物を全域に亘って流動性の良いさらさら状態に保持させて高い分解処理効率を維持できる。
請求項3の発明とすることにより、被撹拌物の側壁への付着、固化を一層防止できる。
請求項4の発明とすることにより、被撹拌物の側壁への付着、固化のさらなる防止が図れる。
請求項5の発明とすることにより、落とし込み凹部からの排出を自動的に行なうことができる。
請求項6の発明とすることにより、ケーシング内の内容物の含水率が低減されて散布に適した状態となるうえ、分解処理の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】発酵分解装置が設けられる建屋の縦断面図である。
【図2】架台を取外した状態の発酵分解装置が設けられる建屋の概略平面図である。
【図3】分解処理槽の前側壁を切欠いた正面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】要部を説明する側面図である。
【図6】第二の実施の形態における要部を説明する側面図である。
【図7】第三の実施の形態を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図中、1は発酵分解装置が設置される建屋であって、該建屋1の一側(図1の左側)は、天井高に建設されて上方にクレーン装置(図中鎖線図示)を有する前後方向に長く形成され、コロニー(微生物担持体)と被処理物との混合物である被撹拌物が投入される分解処理槽2が配される一方、他側(右側)には濃縮槽Aと電気室Bとが配設され、これらの前方(図2の手前側)に前記分解処理槽2からの臭気を処理する脱臭槽Cが配設されている。
【0009】
前記分解処理槽2は、左右側壁3と前後側壁4と底壁5とを備えたボックス形状をしており、前記左右両側壁3の上下方向中間部には内方に突出する段差部3aが形成されており、該段差部3aの上端面に設けられた支持体3bを介して架台6が支持されるように構成されており、該架台6は、後述するように、前後側壁4(本発明の対向する一対の側壁に相当する)の対向間を左右側壁3に沿って前後方向に移動するように構成されている。前記架台6の前方には、分解処理槽2に投入された被撹拌物を撹拌するための撹拌装置7が設けられており、架台6の後方には、被処理物、および、後述するように分解処理槽2から回収された被撹拌物(回収物)を分解処理槽2内に散布する(投入する)ための散布装置8が設けられている。尚、分解処理槽2は、左右、前後側壁3、4の上端縁に沿う状態で蓋体2aが設けられ、架台6に搭載される撹拌装置7、散布装置8の上方を覆うように構成されており、これによって、各装置7、8は分解処理槽2内に封止状に内装されるように構成されている。
前記架台6は、前後方向を向く前後方向フレーム6a、および、左右方向を向く左右方向フレーム6bを枠組みして構成されており、前方部位には平板状支持プレート6cが固定されている。さらに、架台6の前方部位には、左右方向に隣接する複数の撹拌機取付け用ブラケット6dが下方に向けて垂下する状態で固定されている。
【0010】
前記撹拌装置7は、左右方向一列状に隣接して配設される第一、第二撹拌機9、10により構成されており、各撹拌機9、10は、架台6上の支持プレート6cに固定された左右一対の電動モータ11の駆動に基づいて撹拌作動するよう構成されている。ここで、図3において左側に位置する第一撹拌機9は、左右一対の支持フレーム12の対向間に位置する主撹拌機と、各支持フレーム12の外側に位置する副撹拌機とにより構成されている一方、図3の右側に位置する第二撹拌機10は、左右一対の支持フレーム12の対向間に位置する主攪拌機と、右側の支持フレーム12の外側に位置する副撹拌機とにより構成されているが、各撹拌機9、10の基本構成は同様に構成されているので、以降、第一撹拌機9について説明し、第二撹拌機10についての説明は省略する。
【0011】
前記第一撹拌機9は、撹拌機取付け用ブラケット6dに貫通状に支持される補強軸13を備えて構成されており、該補強軸13の貫通端部に、前記一対の支持フレーム12の上端部が前後方向揺動自在に軸支されている。
そして、支持フレーム12の対向間には、上方に位置する駆動軸14と下方に位置する従動軸15とがそれぞれ回転自在に軸承されており、前記駆動軸14と電動モータ11とがチェーン11aからなる動力伝導機構を介して連動連結されており、これによって、駆動軸14は電動モータ11の正逆駆動に基づいて正逆回転するように構成されている。
【0012】
そして、駆動、従動軸14、15にそれぞれ駆動、従動スプロケット14a、15aが上下方向に対向する状態で一体的に止着されるが、前記左右一対の支持フレーム12の対向間には左右方向に隣接する状態で三組の駆動、従動スプロケット14a、15aが止着され、左右支持フレーム12のそれぞれ外側には一組づつの駆動、従動スプロケット14a、15aが止着されている。そして、これら五組の駆動、従動スプロケット14a、15aには作動チェーン16がそれぞれ懸回されており、各作動チェーン16には複数の撹拌翼16aが適箇所に位置して設けられている。
【0013】
前記第一、第二撹拌機9、10は、電動モータ11の駆動による駆動軸14の回転に基づいて作動チェーン16が駆動、従動スプロケット14a、15aの間を循環移動するが、作動チェーン16は、架台6が図5において矢印X方向に移動した場合に、作動チェーン16の移動上手側に設けられた撹拌翼16aが矢印Y方向(下方)を向く循環移動をするように構成されており、これら第一、第二撹拌機9、10の循環移動により、分解処理槽2内の被撹拌物(本実施の形態では杉のチップ)に好気性菌が担持されたコロニーと、凝集して脱水処理された含水率70〜87パーセント(%)ほどの余剰汚泥に代表される被処理物との混合物)を下から上に移動させて切換えす撹拌がなされるように構成されている。
【0014】
また、前記架台6は、走行用のモータ17の駆動により分解処理槽2の上方において前後方向に移動するように構成されており、前記モータ17は、架台6に回動自在に支持されて従動スプロケット17aを、チェーン伝導等の動力伝導機構を介して正逆回転せしめるように構成されている。前記従動スプロケット17aには該従動スプロケット17aの回転に連動して回転する走行歯車17bが連結されており、該走行歯車17bは、左右側壁3の段差部3a上の支持体3bに一体的に設けられたラック2bに噛合しながら回転することにより、架台6が前後方向に移動するように構成されている。
【0015】
一方、前記散布装置8は、左右方向に長いボックス形状のケーシング18を備えて構成されており、該ケーシング18の上端部は左右方向に長く開口されていて投入口18aに形成されている。前記ケーシング18には、投入口18aから投入された被処理物および回収物とを左右方向に移送する左右移送体18bと、前後方向に移送する前後移送体18cとが設けられているが、これら移送体18b、18cはそれぞれ螺旋移送体(オーガ)により構成されており、それぞれ移送モータ18d、18eにより駆動するように構成されている。そして、投入口18aから投入される被処理物、および、回収物とは、各移送体18b、18cによりケーシング18下部から前方に向けて突出形成された複数の散布口18fから分解処理槽2に散布されるように構成されている。
【0016】
そして、前記分解処理槽2の前後側壁4それぞれの近傍部位であって、分解処理槽2の底壁5の前後端部に位置して本発明が実施された落とし込み凹部20が形成されている。ここで、分解処理槽2の前後端部に形成される落とし込み凹部20はそれぞれ線対称状に形成されているので、ここでの説明は、図2において図面手前側の前端部側の落とし込み凹部20を、図3、4、5に基づいて説明し、後端部側の落とし込み凹部20についての説明は省略する。
前記落とし込み凹部20は、分解処理槽2の前端部下方における左右方向全域に設けられており、前側壁4下端部から下方に向けて延出された部位である前溝側辺20aと、底壁5より低位に位置する溝底辺20bと、該溝底辺20bの後端縁から直上方向で、かつ、底壁5よりは低位な位置にまで立ち上がる第一後溝側辺20cと、該第一後溝側辺20cの上端縁から底壁5とのあいだに位置し、前側ほど(前側壁側ほど)低位となる傾斜面により構成される第二後溝側辺20dとにより形成されている。そして、後述するように、撹拌装置7の第一、第二撹拌機9、10が前側壁4に近付いて被撹拌物を前側壁4に押し付けるような圧力が発生した場合に、被撹拌物は、第二後溝側辺20dに沿って溝底辺20b側に降下するように構成されている。
【0017】
さらに、前記各落とし込み凹部20には本発明の排出手段が設けられており、落とし込み凹部20に落とし込まれた被撹拌物を落とし込み凹部20から排出することができるように構成されている。前記排出手段は、各落とし込み凹部20の溝奥側である前溝側辺20aと溝底辺20bと第一後溝側辺20cとにより囲繞された空間にそれぞれ設けられる左右一対の左右移送体21により構成されている。これら各左右移送体21は、左右連通状に形成され、左右一対の左右移送体21に共用されるケーシング21aと該ケーシング21aに内装される左右一対の螺旋移送体(オーガ)21bとにより構成され、各左右移送体体21の左右端部は、分解処理槽2の左右側壁3を貫通して左右外方に突出状に配設されている。前記左右移送体21に共用されるケーシング21aの上端面21cは、第一後溝側辺20cの上端縁と面一状に形成されており、左右方向三箇所(左右両端部、および、中央部)に位置して開口21dが開設されている。
これに対し、ケーシング上端面21cに対向する第二後溝側辺20dには、ケーシング21aに形成された左右方向三箇所の開口21dのそれぞれの隣接部となる二箇所に位置し、前方に(凹溝内側)膨出し、各開口21dに向けて傾斜するガイド面を有したガイド突部20eが形成されている。これによって、第二後溝側辺20dに沿って降下する被撹拌物は、ガイド突部20eにより溝奥側のケーシング21bに形成された開口21dに向けて誘導され、遅滞なくケーシング21b内に落ち込むように構成されている。因みに、本実施の形態では、ケーシング21aに設けられる開口21dを三箇所に設け、これら開口21dの間に設けられるガイド突部20eを二箇所に設ける構成としているが、開口21dを四箇所、ガイド突部20eを三箇所設ける構成や、開口21dを五箇所、ガイド突部20eを四箇所設ける構成等、分解処理槽2の形状や大きさ等の諸条件に応じて適宜数に設定することが可能である。
そして、各左右移送体21は、それぞれに設けられた移送モータ21eの駆動力を受けて螺旋移送体21bが駆動するように構成されており、各螺旋移送体21bの駆動に伴い、各開口21dを介してケーシング21a内に落とし込まれた被撹拌物を、ケーシング21aの左右端部側、即ち、落とし込み凹部20の左右両端部に移送して落とし込み凹部20内から排出するように構成されている。
【0018】
さらに、分解処理槽2の左右端部に突出する左右移送体21には、本発明の回収手段に相当する上方移送体22の下端部が連結されている。前記上方移送体22は、散布装置8のケーシング18上端面より上方に延出するケーシング22aと、バケットコンベヤー22bとにより構成されており、左右移送体21のケーシング21aの後端部と、上方移送体22のケーシング22aの下端部前方部位とは連通する状態となっている。そして、上方移送体22は、それぞれに設けられたモータ(図示せず)の駆動力を受けてバケットコンベヤー22bが上下方向の循環移送を行うように構成されており、左右移送体21によりケーシング21aの左右端部に移送された排出物をケーシング22aの上端部に移送するように構成されている。
また、前記各上方移送体22のケーシング22a上端部には滑り台式のシューター22cが連結されているが、該シューター22cの先端部は、分解処理槽2の蓋体2aに開設された開口を封止状に貫通して散布装置8のケーシング18の投入口18aに向けて延出されている。そして、シューター22cは、上方移送体22のケーシング22a上端部に移送された排出物を散布装置8のケーシング18内に降下移送するように構成されている。これによって、落とし込み凹部20に落とし込まれた被撹拌物は、排出手段である左右移送体21により落とし込み凹部20から排出され、さらには、該排出された排出物が上方移送体22、シューター22cで構成される回収手段を経由することにより回収物となって散布装置8のケーシング18に移送され、ケーシング18内の被処理物との混合物として、再び分解処理槽2内に投入(再散布)されるように構成されている。
因みに、排出手段である左右移送体21により落とし込み凹部20から回収された回収物(被撹拌物)は、そのままの状態で例えば肥料として用いるようにすることも可能である。
【0019】
このように構成された発酵分解装置において、架台6は分解処理槽2の左右側壁3の段差部3aに沿って前後方向に往復反転移動しながら撹拌装置7による撹拌作動を実施するが、架台6は、撹拌装置7の第一、第二撹拌機9、10が分解処理槽2の前後何れか一方の側壁4に近接する状態を往復反転移動の移動端として一旦停止し、このとき、撹拌装置7による撹拌作動も停止するように構成されている。そして、前記停止状態を予め設定される待機時間継続し、その後、移動方向を反転し、駆動軸14の回転方向を逆転して、撹拌作動をしながらの分解処理槽2内における移動を開始するように構成されている。
【0020】
そして、本実施の形態では、架台6が前記移動端に達したとき、撹拌装置7は分解処理槽2に形成された落とし込み凹部20の第二後溝側辺20dの直上に位置するように設定されている。そして、撹拌装置7が進行方向先側の作動チェーン16(撹拌翼16a)を下動(下方に移動)させながら前後何れかの側壁4側の移動端に近付づき(図5の仮想線は前側壁4側における撹拌装置7(第一、第二撹拌機9、10)の移動端を示す)、第一、第二撹拌機9、10が被撹拌物を側壁4に押し付けるような移動がなされると、被撹拌物が落とし込み凹部20の第二後溝側辺20dの傾斜面に沿って溝底辺20b(左右移送体21)側に降下するように構成されており、これによって、被撹拌物が前後側壁4に押し付けられて付着、固化するようなことが防止されるように構成されている。
さらに、第二後溝側辺20dに沿って降下する被撹拌物は、ガイド突部20eにより左右移送体ケーシング21aに開設された左右方向三箇所の開口21dの何れかに誘導されて、ケーシング21a内に落ち込んで排出、回収されるように構成されている。
【0021】
そして、前記落とし込み凹部20に落とし込まれた被撹拌物は、架台6が移動端に位置して停止する状態において、排出手段、回収手段である左右移送体21、上方移送体22を駆動することにより、シューター22cを経由して散布装置8のケーシング18内に移送されるように構成されている。このように、落とし込み凹部20に落ち込んで外部に排出された被撹拌物は、回収物として散布装置8のケーシング18内に移送され、ケーシング内に予め収容されている被処理物との混合物となって、架台6が反転移動を開始することに伴い、再びケーシング18の散布口18fから分解処理槽2内に散布されて分解処理されるように構成されている。因みに、落とし込み凹部20に排出された被撹拌物は、予め散布装置8のケーシング18内に投入される被処理物よりも脱水されて分解処理が進んだ状態のものとなっている。このため、ケーシング18内の被処理物と回収物との混合物である内容物は、含水率が低下された状態となり、一層散布に適した状態になるばかりでなく、分解処理槽2内における分解性能が早まる(分解処理の促進が図れる)ように構成されている。
【0022】
叙述の如く構成された本形態において、架台6に搭載された撹拌装置7が分解処理槽2内を前後方向に往復反転移動することにより、分解処理槽2内の被処理物とコロニーとの混合物である被撹拌物が上下に切り返すような撹拌作動を受けて分解処理される。この場合に、架台6の往復反転移動の移動端において、被撹拌物は撹拌装置7の第一、第二撹拌機9、10により前後側壁4に押し付けられるような圧力を受けるが、このとき、撹拌装置7の直下となる分解処理槽2の底壁5には落とし込み凹部20が形成されていて、第一、第二撹拌機9、10により前後側壁4に押し寄せられた被撹拌物が落とし込み凹部20に落とし込まれて、前後側壁4に付着して固化するようなことが防止される。この結果、撹拌装置による長時間にわたる往復反転作動がなされたとしても、被処理物が前後側壁4に付着、固化して堆積(蓄積)するようなことがなく、しかも、分解処理槽2内における撹拌装置7の移動範囲を一定にすることができて、分解処理槽内の被撹拌物を全域に亘って流動性の良いさらさら状態に保持させて高い分解処理効率を維持することが可能となる。しかも、落とし込み凹部20に落ち込んだ被撹拌物は外部に排出可能となっているので、落とし込み凹部20に堆積、固化することはない。
【0023】
このように、本発明が実施されたものにあっては、前後方向に往復反転移動する撹拌装置7に対して、分解処理槽2の前後端部に落とし込み凹部20を形成して、前後側壁4に被撹拌物が付着、固化することがないようにしたものであるが、このものでは、落とし込み凹部20を分解処理槽2内に形成し、撹拌装置7の往復反転移動の移動端が落とし込み凹部20の直上に位置するように構成したので、被撹拌物に撹拌装置7による前後側壁4側への押し付け力が、被撹拌物を落とし込み凹部20に誘導することになって、被撹拌物が確実に落とし込み凹部20に回収されて、前後側壁4に付着、固化することを一層防止できる。
【0024】
しかも、このものにおいて、落とし込み凹部20には側壁4側ほど低位となる傾斜状の第二後溝側辺20dが形成されているので、被撹拌物を落とし込み凹部20側への誘導が確実で、被撹拌物を遅滞することなく落とし込み凹部20に落とし込むことができ、被撹拌物の側壁4への付着、固化をさらに防止することができる。
【0025】
さらにこのものでは、落とし込み凹部20に落とし込まれた被撹拌物(回収物)を分解処理槽2の外部に排出する排出手段が設けられるとともに、該排出したものを回収物として散布装置8のケーシング18に戻す回収手段が設けられており、回収物が再びケーシング18を経由して分解処理槽2に散布される構成となっている。このため、落とし込み凹部20に落とし込まれた被撹拌物を自動的に外部に排出することができるうえ、該落とし込み凹部20に落とし込まれた被撹拌物が回収されてケーシング18に戻されるので、ケーシング18内の内容物(被処理物と回収物との混合物)の含水率が低減されて、内容物を散布に適した状態とすることが可能となるうえ、分解処理槽2内における分解処理を促進させることができるという利点もある。
【0026】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、図6に示す第二の実施の形態のように構成することができる。
前記第二の実施の形態において、分解処理槽23は左右側壁23a、前後側壁23b、底壁23cを備えて構成されていること、左右側壁23aに沿って移動自在に設けられた架台に撹拌装置24が設けられていること等の基本構成は、前記第一の実施の形態と同様に構成されている。そして、本実施の形態の落とし込み凹部25は分解処理槽23の底壁23cに段差状となる形状に形成されており、底壁23cよりも低位となる溝底辺25aと、前側壁23bの下方に延出される前溝側辺25bと、溝底辺25aの後端縁から直上方向に延出する後溝側辺25cとにより構成されている。そして、分解処理槽23内の撹拌装置24は、前後側壁23bに近接する往復反転移動における移動端に達したときに、落とし込み凹部25の直上に位置するように構成され、撹拌装置24が被撹拌物を前後側壁23bに押し付けるように作用したとき、被撹拌物が落とし込み凹部25に落ち込むように構成されている。このものにおいて、落とし込み凹部25に落とし込まれた被撹拌物は、溝底辺25aに設けた左右移送体26、上方移送体27、シューターにより構成される第一、第二回収手段を介して散布装置に移送され、再度分解処理槽23内に散布されるように構成されていることは、前記第一の実施の形態と同様の構成となっている。
そして、このものでも、分解処理槽23内を移動する撹拌装置24により被撹拌物が前後側壁23bに押し付けられたとき、該圧力を受けた被撹拌物が落とし込み凹部25に落ち込むことにより、前後側壁23bに付着、固化するのが防止されて、高い分解処理効率を維持することができる。
【0027】
また、図7に示す第三の実施の形態のようにすることもできる。
前記第三の実施の形態において、分解処理槽28は左右側壁28a、前後側壁28b、底壁28cを備えて構成されていること、左右側壁28aに沿って移動自在に設けられた架台29に撹拌装置30と散布装置31とが設けられていること等の基本構成は、前記第一の実施の形態と同様に構成されている。そして、本実施の形態の落とし込み凹部は、分解処理槽28の前後側壁28bと底壁28cとのコーナー部を切欠くように形成される開口28dと、該開口28dを分解処理槽28の外部から覆うケース体32とにより囲繞される空間で構成されており、該落とし込み凹部に相当する部位における底壁28cは、左右方向外側ほど下位となる傾斜面28eに形成されている。
そして、分解処理槽28内の撹拌装置30は、往復反転移動における移動端において前後側壁28bに近接するように構成されており、このとき、分解処理槽28内の被撹拌物は、撹拌装置30により前後側壁28bに押し付けられる圧力を受け、傾斜面28eを介してケース体32に落とし込まれるように構成されている。そして、ケース体32内に落とし込まれた被撹拌物は、ケース体32底部に設けた左右移送体33により構成される排出手段、上方移送体34、シューター34aにより構成される回収手段を介して散布装置31に移送され、再度分解処理槽28内に散布されるように構成されていることは、前記第一の実施の形態と同様の構成となっている。
そして、このものでも、分解処理槽28内を移動する撹拌装置30により被撹拌物が前後側壁28bに押し付けられたとき、該圧力を受けた被撹拌物が開口28dを介してケース体(落とし込み凹部)32側に落ち込むことにより、前後側壁28bに付着、固化するのが防止されて、高い分解処理効率を維持することができる。
尚、第三の実施の形態において、傾斜面28eに前記第一の形態と同様のガイド突部を形成してもよく、このようにすることで、被撹拌を左右移送体33内に円滑に誘導することができる。
【0028】
また、前記各実施の形態では、落とし込み凹部に落ち込んだ被撹拌物を、排出手段、回収手段により機械的に落とし込み凹部から外部に排出し、該排出物を回収して散布装置を介して分解処理槽内に再度散布するようにしているが、落とし込み凹部の左右側部に作業員が出入り可能な開閉装置を設けて、落とし込み凹部に落ち込んだ被撹拌物を、作業員が必要において排出する等、機械的手段を用いない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、有機汚泥等の汚泥や生ゴミ等の被処理物をコロニー(微生物担持体)とともに分解処理して無公害化する発酵分解処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 建屋
2 分解処理槽
3 左右側壁
4 前後側壁
5 底壁
6 架台
7 撹拌装置
8 散布装置
9 第一撹拌機
14 駆動軸
16 作動チェーン
18 ケーシング
20 落とし込み凹部
20b 溝底辺
20d 第二後溝側辺
20e ガイド突部
21 左右移送体
22 上方移送体
22c シューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス状の分解処理槽に投入された被撹拌物を、分解処理槽の対向する一対の側壁間を往復反転移動する撹拌装置により撹拌するにあたり、分解処理槽の各側壁近傍部位に、分解処理槽の底壁よりも低位な溝底辺を有し、撹拌装置により側壁に押し付けられる被撹拌物が落ち込んで外部に排出可能な落とし込み凹部を形成したことを特徴とする発酵分解処理装置。
【請求項2】
落とし込み凹部は、分解処理槽の底壁に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発酵分解処理装置。
【請求項3】
撹拌装置は、往復反転移動の移動端において落とし込み凹部の直上に位置するように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の発酵分解処理装置。
【請求項4】
落とし込み凹部は、分解処理槽の側壁側ほど低位となる傾斜状の溝側辺を有して形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発酵分解処理装置。
【請求項5】
落とし込み凹部には、落ち込んだ被撹拌物を落とし込み凹部から分解処理槽の外部に排出する排出手段が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の発酵分解処理装置。
【請求項6】
発酵分解処理装置には、被処理物を散布する散布装置が設けられるものとし、排出手段には、落とし込み凹部から排出された被撹拌物を散布装置に移送する回収手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発酵分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−92809(P2011−92809A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246249(P2009−246249)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(501315566)株式会社ミシマ (2)
【Fターム(参考)】