説明

発酵系製品製造のための低糊化温度澱粉の使用

【課題】高いグレードのエタノールを効率的に製造するための、より良いコーン系の供給原料及び製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、低糊化温度を有する澱粉を含むコーン、特に劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性またはヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物から、エタノール、クエン酸のような発酵系製品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/692,999号による優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、低い糊化温度を有する澱粉を含有するコーンを原料とした発酵系製品を製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コーンまたはトウモロコシ(maize)は、食品および工業用途における使用を含む多くの理由のために育成されている。エタノール(エチルアルコール、グレンアルコール、EtOH)は、汚染を制限するために自動車燃料における用途に望ましい、特徴的で快適な臭いを有する透明無色の液体である。伝統的には、さとうだいこん及びさとうきびのような他の作物と共に、エタノール製造のためにコーンが使用されてきている。
【0004】
コーンは、伝統的には二つの方法のうちの一つによって加工されてきた。その一方の湿式ミリング処理加工には、コーンを浸漬または浸し、加工前にコーンミール(corn meal)を残して油を回収することが含まれる。乾式ミリング処理加工には、全穀粒(whole kernel)がすり砕かれて、次いで水が添加されてマッシュ(mash)が成形される。いずれの場合においても、エタノールを製造するためにコーンが使用され、ミールまたはマッシュが酵素で処理されて、コーン中に含まれる澱粉が糖に転化される。その酵素処理されたマッシュまたはミールが、次いで酵母を使用して発酵される。その酵母は、糖をエタノールと二酸化炭素に転化する。例えば蒸留によってエタノールと二酸化炭素が分離されると、コーンの残りの非発酵部分が加工されて他の栄養分を回収することが出来て、そして動物飼料中に加工処理されることも可能である。
【0005】
工業擁護者は、高いグレードのエタノールを効率的に製造するための、より良いコーン系の供給原料及び製造方法を継続して研究している。驚くべきことには、低糊化温度を有する澱粉を含むコーンが、より低いエネルギー投入でより効率的に発酵系製品を製造するための供給原料として使用され得ることがこの度見出された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その澱粉が低糊化温度を有するコーンから、エタノール、クエン酸、ブタノールおよび水素のような発酵系製品を製造する方法を提供する。その方法は、炭素源を発酵することが可能な微生物とコーンを混合して発酵系製品を製造することを含む。
【0007】
糊化温度(gelatinization temperature)は、ここでの使用において、示差走査熱量法を使用して、実施例のセクションの実施例1に開示される方法によって測定されるような、初期糊化温度(T0)を意味するように意図されている。
【0008】
他の定義されない限り、ここで使用される全ての技術的用語および科学的用語並びに略語は、当業者によって通常理解される意味と同様な意味を有する。ここに記載される方法および材料に類似または均等なものが本発明の実施において使用され得るが、方法および材料がここに記載される本発明を限定することを意図すること無しに、好適な方法および材料が以下に記載される。本発明の更なる特徴および利点は、本発明の説明的な態様に関する以下なる記載および請求の範囲から明らかであろう。
【0009】
[発明の詳細な説明]
数種の異なるタイプのコーン植物のいずれから収穫されたコーンの種子または穀粒(grain)(以下「穀粒」と言う)も、本発明において有用である。それらのタイプのコーン植物は、例えば、雑種(hybrids)、近交系交配(inbreds)、遺伝子組み換え植物(transgenic plant)、遺伝子改変された植物、または特定の植物群である。一つの態様において、そのコーンは、胚乳組織が劣性な(recessive)シュガリー‐2アレル(sugary-2 allele)に対してヘテロ接合性(1適用量または2適用量のいずれか)である、ワキシートウモロコシ植物(waxy maize plant)由来のものである。もう一つの態様において、そのコーンは、胚乳組織が劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性である、ワキシートウモロコシ植物由来のものである。他の態様には、胚乳組織が劣性なシュガリー‐2アレル、ダル‐シュガリー2(dull-sugary2)、ダル‐シュガリー2‐ワキシー(dull-sugary2-waxy)、アミロースエキステンダー‐ダル‐ワキシー(amylose extender-dull-waxy)、アミロースエキステンダー‐シュガリー2(amylose extender-sugary2)、およびそれらの適用組み合せに対してホモ接合性であるような植物由来のコーンが含まれる。これらの遺伝子型の全てが当分野において既知であり、そしてそれらの遺伝子型を有するコーン植物を生産するためのコーンまたは種子が商業的に入手可能である。
【0010】
ワキシー遺伝子型(waxy genotype)(wxと称される)が当分野において周知であって、そのワキシー遺伝子がコーンの第9染色体の位置59に位置している(M. G. Nueffer、L. JonesおよびM. Zuberの「The Mutants of Maize」(Crop Science Society of American, Madison, WI, 1968)72〜73頁参照)。ワキシー遺伝子型は、主としてまたは全体的にアミロペクチンから成る澱粉を生産する能力をそのコーン植物に授けるものであり、そしてそのワキシー遺伝子型の胚乳の表現型、または物理的な表出が硬いワキシー組織で不透明である。特に、ワキシー遺伝子型は、その中に粒状結合スターチシンターゼ(granular bound starch synthase)(GBSS)の突然変異体が存在していたものである。普通のワキシートウモロコシは多くの目的で育成され、且つ商業的に入手可能なものである。
【0011】
シュガリー‐2遺伝子型(su2と称される)は、トウモロコシ胚乳の炭水化物組成を変更することが知られており、シュガリー‐2遺伝子が第6染色体(lbid)の位置57に位置する。ワキシーシュガリー‐2遺伝子型の2重の劣性突然変異体(double-recessive mutant)も知られている。胚乳がシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性であるワキシートウモロコシは、米国特許第4,428,972号明細書および第4,615,888号明細書を含む文献に記載されるものであって、ナショナル スターチ アンド ケミカル カンパニー(National Starch and Chemical Company)から商業的に入手可能である。
【0012】
その植物の遺伝子型は、転座(translocation)、逆位(inversion)、形質転換(transformation)、或いはそれによって本発明の澱粉の特性が得られる、それらの変形を含む、遺伝子または染色体工学のいかなる他の方法によっても得られる。更に、突然変異育種の公知に標準的な方法によって生産され得る上記の一般的な組成物の人工的な突然変異体から育成された植物および変種から抽出された澱粉も、ここで適用可能である。
【0013】
澱粉が抽出される植物の遺伝子型は、標準的な育種技術によって得ることが可能である。通常の方法でトウモロコシ中のwxsu2遺伝子型の2重の劣性突然変異体を得るために、例えばワキシー突然変異体(wx)をシュガリー‐2突然変異体(su2)と交配させ、その後第1世代単独交配(first generation single cross)(Wx wx Su2 su2)を自己授粉させて、分離する実から15:1の比率で2重変異体を理論的に回収し得る。本発明において使用される澱粉は近交系交配系列から得ても良いが、通常、より高い収率および他の要因のため、wxsu2の2重劣性突然変異体を含有する近交系交配由来の雑種から澱粉を得ることがより望ましい。1適用量の劣性なシュガリー‐2アレルを含む胚乳を有するトウモロコシ植物の農場での生産が、ホモ接合性の条件において、優性なシュガリー‐2アレルを有する雌性ワキシートウモロコシ植物を、劣性なシュガリー‐2アレルを有する雄性ワキシートウモロコシ植物と交配することによって実施され得る。典型的な植え付けの配置は、7本の雌性列に対して1本の雄性列である。雌性列は、細胞質的または遺伝的方法のような当分野で知られた他の種々の方法による、房にならない(detasseled)雄性不稔または精製された(rendered)雄性不稔のいずれかである。2適用量の劣性なシュガリー‐2アレルを含む胚乳を有するトウモロコシ植物の農場での生産は、シュガリー‐2アレルに対して劣性なホモ接合性の雌性ワキシートウモロコシ植物を、
優性なシュガリー‐2アレルを有する雄性ワキシートウモロコシ植物と交配することによって実施され得る。その雌性植物を植え付け調整して雄性不稔にすることは、1適用量の生産に類似している。
【0014】
本発明において使用されるコーン種子は、低い糊化温度を有する澱粉を含んでいなければならない。一つの態様において、その糊化温度が約60℃未満であり、第2の態様では約55℃未満であり、そして第3の態様では約50℃未満である。
【0015】
エタノールおよび他の発酵系製品を製造するためのプロセスは、当分野において周知である。エタノールは通常、糖または糖に転化され得る発酵可能な成分を含有するコーンミールまたはマッシュから製造される。一つの従来プロセスにおいて、グルコアミラーゼの存在下でそのミールまたはマッシュが糖化されて、加水分解された澱粉と糖が得られ、そして酵母によって発酵されてエタノールが得られる。次いでそのエタノールが回収される。コーンミールまたはマッシュは、糖化の前に、α‐アミラーゼの存在下で液化されても良い。より高いレベルの乾燥固形マッシュの存在下においてエタノールを酵母によって発酵させるために、糖化の際に液化されたマッシュに、及び/又はマッシュの発酵の際に加水分解された澱粉と糖に、プロテアーゼが導入されても良い。
【0016】
コーンは、例えば、外皮、胚乳、先端キャップ、果皮、および胚種のような構成部分に分離されていないその穀粒(kernel)全体の状態で、または当分野で知られているような分離の状態で、使用されても良い。但し、発酵を維持するために十分な澱粉が残っている必要がある。全体コーンは、例えばハンマーミルまたはローラーミルを使用して、すり砕かれ、粉砕され、砕かれ、フレークにされ、またはすりむかれても良い。一つの態様において、溶剤抽出されたコーンミールが発酵系製品のために使用される。もう一つの態様においては、コーンマッシュが発酵系製品のために使用される。異なるコーン及び/又は異なる構成部分のブレンドも、発酵系製品のために使用され得る。
【0017】
液化は、コーンに水を添加し、石灰のような塩基を使用してpHを約6に調製することによって慣用的になされる。次いで、α‐アミラーゼが添加されて、その澱粉を液化する。窒素酵母栄養分が添加されても良い。蒸気注入を使用して、コーンを約88〜120℃の温度に加熱して澱粉を糊化し殺菌し得る。次いで、その澱粉を糖錯体(complex sugars)に転化するためにアミロースが用いられるのに十分な温度、通常63〜95℃にそのコーンが約2〜4時間の間維持される。そのコーン成分は通常約30重量%であるが、それより高い固形分でも使用され得る。
【0018】
次いでそのコーンは、通常、糖化の前にグルコアミラーゼの酵素活性にとって十分な温度、例えば約60℃まで冷却される。例えば硫酸により、そのpHが酵素活性にとって有効なpH、例えば約4.4に調製され、そしてグルコアミラーゼが添加される。1,6結合を加水分解するために、プルラナーゼが任意に添加されても良い。糖化は、通常6時間以内に達成される。任意に、液化と糖化が同時に実施されても良い。
【0019】
次いで、十分な酵母発酵を可能にするために、そのコーンがさらに例えば32℃に冷却される。発酵は、維持された温度およびpHで、通常約46〜50時間を要する。
【0020】
本発明を使用して製造される発酵系製品は、エタノール、クエン酸、ブタノール、水素、乳酸、ビタミンおよび可溶性糖を非限定的に含んで、当分野において知られたいかなるものでも良い。一つの態様において、製造される発酵系製品がエタノールであり、もう一つの態様ではクエン酸である。
【0021】
一般に、発酵の後、そのエタノールは蒸留および脱水によって回収されて、99.9%を越える純度のエタノールが得られる。アルコールを変性させるために、少量のガソリンが添加されても良い。
【0022】
それらの栽培および他の微生物の培養に使用される栄養分には、例えば、バックセット(backset)、酵母抽出物、コーンスティープリカー(corn steep liquor)、澱粉、グルコース、アルコール、ケトン、並びに窒素源として、ペプトン、大豆粉末、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、抽出コーンミール、または尿素が含まれる。NaClおよび硫酸アンモニウムのような種々の塩、並びに微量成分もまた、微生物の培養用の媒体中に含まれ得る。糖化の際に液化マッシュに他の幾種類かの酵素を添加すること、及び/又は発酵の際に加水分解された澱粉と糖に酵素を添加することも有利であるかもしれない。そのような酵素の例は、セルラーゼ(cellulases)、ヘミセルラーゼ(hemicellulases)、ホスファターゼ(phosphatase)、exo‐およびendo‐グルカナーゼ(glucanases)およびキシラナーゼ(xylanase)である。
【0023】
本発明をさらに例証して説明するために以下の態様が示されるが、それらはいかなる点においても限定するものと取られるべきではない。
【0024】
1. 発酵系製品を製造するための炭素源を発酵し得る微生物にコーンを混合するタイプの、コーンから発酵系製品を製造する方法において、その改良が、約60℃未満の糊化温度によって特徴付けられる澱粉を含むコーンを使用することを含む。
【0025】
2. 前記コーンが、胚乳がシュガリー2、シュガリー2‐ワキシー、ダル‐シュガリー2、ダル‐シュガリー2‐ワキシー、アミロースエキステンダー‐ダル‐ワキシー、アミロースエキステンダー‐シュガリー2およびそれらの適用組み合せから選択されるアレルに対して劣性なホモ接合性であるトウモロコシ植物からのものである、態様1の方法。
【0026】
3. 前記コーンが、胚乳が劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性である、ワキシートウモロコシ植物からのものである、態様2の方法。
4. 前記コーンが、胚乳が劣性なシュガリー‐2アレル1適用量に対してヘテロ接合性である、ワキシートウモロコシ植物からのものである、態様1の方法。
【0027】
5. 前記コーンが、胚乳が劣性なシュガリー‐2アレル2適用量に対してヘテロ接合性である、ワキシートウモロコシ植物からのものである、態様1の方法。
6. 前記澱粉が、約55℃未満の糊化温度によって特徴付けられるものである、態様1の方法。
【0028】
7. 前記澱粉が、約50℃未満の糊化温度によって特徴付けられるものである、態様1の方法。
8. 前記発酵系製品が、エタノール、クエン酸、ブタノール、水素、乳酸、ビタミンおよび可溶性糖から選択されるものである、態様1の方法。
【0029】
9. 前記発酵系製品がエタノールである、態様8の方法。
10. 前記発酵系製品がクエン酸である、態様8の方法。
【実施例】
【0030】
本発明をさらに例証して説明するために以下の実施例が示されるが、それらはいかなる点においても限定するものと取られるべきではない。使用される全ての%は重量/重量基準によるものである。
【0031】
実施例1種々のコーンスターチの糊化
劣性なシュガリー‐2ジーン(sugary-2 gene)を0〜3適用量有するワキシースターチの糊化の特徴を調べるために、示差走査熱量法を用いた。10mgの澱粉をステンレス鋼のパン中に秤量した。澱粉1部に水2部の比率で水を添加した。次いで、そのサンプルを10℃/分の昇温速度で30℃から102℃まで加熱した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2種々のデンプンのDSC特性
Inouchiら(Starke 43(12) S468-472 (1991))は、彼らの報告「DSC Characteristics of Gelatinization of Starches of Single-, Double, and Triple- Mutants and Their Normal Counterpart in the Inbred Oh43 Maize (Zea Mays. L) Background」において、種々の澱粉の特性を明らかにした。澱粉がアルミニウムのパン中に秤量され、蒸留水が澱粉1部に水2部の比率で添加された。次いで、それらのサンプルが2℃/分の昇温速度で加熱された。それらの結果が以下の表2に示される。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例3ミールを使用するエタノール製造
a. 劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性のワキシートウモロコシ植物を原料としたコーンから製造されたコーンミール(45g)を125mlフラスコに添加する。酵母抽出物を1g/Lで添加して、窒素が制限されないことを確保する。一晩の酵母培養物(通常のAltechエタノール酵母Saccharomyces Cerevisiae)からの10%接種材料を培養物に接種し、そして回転振盪機上で125rpm、30℃で42時間培養を進める。HPLCにより、ブドウ糖消費およびエタノール生成をモニターする。
【0036】
b. 劣性なシュガリー‐2アレル(1適用量)に対してヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造されたコーンミールを用いて、実施例3aを繰返す。
【0037】
c. 劣性なシュガリー‐2アレル(2適用量)に対してヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造されたコーンミールを用いて、実施例3aを繰返す。
【0038】
エタノール生成は、より少ないエネルギー投入でのワキシー・デントコーン穀粒サンプルで育成した酵母による場合に類似する。実施例3aが、最も低いエネルギー投入を要した。
【0039】
実施例4マッシュを使用するエタノール製造
a. 劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のすり砕いた全体コーンを、商業的に入手する。液化のために、1740gのすり砕いたコーンを4500mlの水道水に添加する。このスラリーに、0.99gのCaCl2・2H2Oを添加する。次いで、そのスラリーを68℃中に配置して、pHを6.2〜6.4に調節する。さらに絶えず攪拌しながら、0.6mlの酵素Taka−Therm.RTM.IIをそのスラリーに添加して、次いで68℃で1時間培養する。その酵素Taka−Therm.RTM.IIは、Solvay Enzymes社から商業的に入手可能な液状熱安定性のあるバクテリア(Bacillus licheniformis var.)である。その培養中に顕著な糊化は観察されない。次いで、そのスラリーをホットプレート上に置いて、スラリーを攪拌しながら沸騰するまで加熱する。そのスラリーを5分間沸騰させて、次いで90℃の水中に置いて、2時間培養させる。その沸騰の後、追加の1.2mlの酵素Taka−Therm.RTM.IIをそのスラリーに添加する。そのスラリーを25℃に冷却して、25%のH2SO4でpHを4.6〜4.8に調節する。水道水を使用して、その乾燥固形レベル(DS)を20〜21%に調節する。
【0040】
工程a(液化)で得られた液化コーンマッシュ450gを添加することによって、糖化および発酵を500mlの三角フラスコ中で同時に実施する。適量の酵素、0.25mlのディスティラーゼ(distillase)L‐200、および0.3mlの2%酸菌類プロテアーゼ(acid fungal protease)溶液を、Fleishmannのパン酵母0.8g(7gホイル包装)と共に、そのマッシュにさらに添加する。その乾燥酵母を水和させて、約10分後にフラスコにうず巻きを起こして酵母を混合する。次いで、そのフラスコをパラフィンで覆って、36℃の水中に配置して、24時間発酵させる。かくしてエタノールが回収された。
【0041】
b. 劣性なシュガリー‐2アレル(1適用量)に対してヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造されたコーンミールを用いて、実施例4aを繰返した。
【0042】
c. 劣性なシュガリー‐2アレル(2適用量)に対してヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造されたコーンミールを用いて、実施例4aを繰返した。
【0043】
エタノール生成は、より少ないエネルギー投入でのワキシー・デントコーン穀粒サンプルで育成した酵母による場合に類似する。実施例4aが、最も低いエネルギー投入を要した。
【0044】
実施例5クエン酸製造
a. 劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造された溶媒抽出コーンミールは、発酵用の澱粉の豊富な原料である。発酵に適した可溶性糖を供給する一つの方法は、澱粉分子を加水分解することである。コーンミールの澱粉および蛋白質マトリックスを発酵に適した単糖類(simple sugars)に転化するのに有用であり得る酵素のタイプには、アミラーゼ(amylase(s))、プロテアーゼ(proteases)、セルラーゼ(dellulase(s))(例えばキシロナーゼ(xylonase))、エステラーゼ(esterase(s))(例えばフェルラーゼ(ferulase)、アセチルエステラーゼ(acetylesterase))およびリグニナーゼ(ligninase(s))が含まれる。そのコーンミールを、1mmの篩を通過するように、Retsch Millを使用してすり砕いて、その300gを0.5mlのα‐アミラーゼを含有する100℃の水700mlと混合して、封入容器内に配置した。塩基でそのpHを5.9に調節し、45分間攪拌し、そして追加のα‐アミラーゼ酵素を添加した。更なる45分間の培養の後、酸でpHを4.5に調節した。0.5mlのグルコアミラーゼ(glucoamylase)(Optomax 7525)および0.5gのプロテアーゼ(Fungal Protease 5000)を添加して、両方の酵素を用いて62℃で約24時間培養した。その手順を通して、澱粉の加水分解の度合いは、有機酸カラム(Aminex HPX‐87H Ion Exclusion Column,300mm×7.8mm,Bio Rad)を使用したHPLC(Waters 2690分離モジュール)によってモニターする。
【0045】
その澱粉が酵素処理により一旦好適に準備されると、通常公知のプラクティスに従ってその溶液が濾過され脱イオン化される。その結果得られる糖は、深いタンクの発酵容器中で脱イオン水と共に約120mg/Lの固形物含量にされる。その深いタンクの方法も、液内プロセス(submerged process)として知られている。この方法では、タンクに、無菌の空気、栄養分および炭素源(加水分解された澱粉)が供給され、そしてAspergillus niger胞子(spores)が接種される。1m3当り10〜15gの胞子の量に相当する、培養液1リッター当り約100胞子の濃度で、菌類の胞子が栄養分溶液に添加されて、そしてクエン酸生成がその菌類によって実施される。A.niger株の例は、米国特許第2,492,667号明細書に記載のATCC1015、および米国特許第5,081,025号明細書に記載のDSM5484である。
【0046】
このように接種された液体培地の培養は、継続した通気および温度制御のような、クエン酸生成について通常知られ開示された条件で実施される。その発酵プロセスの際に、温度が約32℃に維持され、pHがクエン酸ナトリウムで約2〜3に維持され、そして無菌の空気が添加されて約50%の溶解酸素含有量に維持される。発酵液体培地が約1g/Lの還元糖含有量になるまで、発酵が実施されるが、それには数日要するかもしれない。クエン酸の回収において、石灰‐硫酸プロセスおよび液体抽出プロセスなる二つの主な分離プロセスが使用され得る。石灰‐硫酸方法が普通に使用され、それはクエン酸製造の分野において熟練されたプロセスに類似している。
【0047】
b. 劣性なシュガリー‐2アレル(1適用量)に対してヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造されたコーンミールを用いて、実施例5aを繰返した。
【0048】
c. 劣性なシュガリー‐2アレル(2適用量)に対してヘテロ接合性のワキシートウモロコシ植物由来のコーンから製造されたコーンミールを用いて、実施例5aを繰返した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原料を発酵し得る微生物とコーンを混合して発酵系製品を製造するタイプの、コーンからの発酵系製品を製造する方法であって、約60℃未満の糊化温度によって特徴付けられる澱粉を含むコーンを使用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コーンが、胚乳がシュガリー2、シュガリー2‐ワキシー、ダル‐シュガリー2、ダル‐シュガリー2‐ワキシー、アミロースエキステンダー‐ダル‐ワキシー、アミロースエキステンダー‐シュガリー2およびそれらの適用組み合せから選択されるアレルに対して劣性なホモ接合性である、トウモロコシ植物からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーンが、胚乳が劣性なシュガリー‐2アレルに対してホモ接合性である、ワキシートウモロコシ植物からのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーンが、胚乳が劣性なシュガリー‐2アレル1適用量に対してヘテロ接合性である、ワキシートウモロコシ植物からのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記コーンが、胚乳が劣性なシュガリー‐2アレル2適用量に対してヘテロ接合性である、ワキシートウモロコシ植物からのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記澱粉が、約55℃未満の糊化温度によって特徴付けられるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記澱粉が、約50℃未満の糊化温度によって特徴付けられるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵系製品が、エタノール、クエン酸、ブタノール、水素、乳酸、ビタミンおよび可溶性糖から選択されるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発酵系製品がエタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記発酵系製品がクエン酸である、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2007−144(P2007−144A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−170363(P2006−170363)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】