説明

発酵蒸留乾燥システム

【課題】有機性廃棄物またはアルコール原料作物等の有機物を再利用可能な物質に変換する一連の処理過程を、密閉型発酵乾燥槽を用いて効率的に実施するための発酵蒸留乾燥システムを提供する。
【解決手段】発酵蒸留乾燥システム1は、1つの密閉型発酵乾燥槽3と、上記密閉型発酵乾燥槽3の気体を吸引して減圧する吸引ポンプ7と、上記密閉型発酵乾燥槽3に連通しかつ密閉型発酵乾燥槽3内に収容された有機物に対する水分調整、糖化、固体発酵、蒸留および乾燥の各処理過程で発生する気体を凝縮して液体に変換する蒸留器5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機性廃棄物またはアルコール原料作物を固体発酵により再利用可能なアルコールを含む発酵物を得るための発酵蒸留乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業系廃棄物や生活系廃棄物などの有機性廃棄物を処理する場合には、処理されて得られる結果物を元の廃棄物の量に比して減量化すること、さらには再利用可能な形態に変換することが大きな社会的使命として認識されている。このため、従来から、廃棄物を処理するための装置および方法として、多くの提案がなされている。例えば、特許文献1は、焼酎粕を真空乾燥機で乾燥させ、この乾燥物を微粉化し、これを燃焼促進剤と共に燃焼させ、その発生熱を上記真空乾燥機による乾燥に利用する焼酎粕処理法を開示している。この処理法は、焼酎粕等の有機性廃棄物の乾燥物を燃焼時のエネルギー源として使用する点で評価されるべきであるが、この処理法を実行する場合には、多くの機械装置を使用しなければならず、高い設置コストや運転コストを考慮する必要もあり、さらに運転が煩雑となる可能性もある。
【0003】
また、上記廃棄物を処理する場合には、当然ながら、有害物質を排出することは許されるものではない。例えば、特許文献2は、有機質の廃棄物を乾燥させる際に、この廃棄物中に共存し、気散し易いアルカリ性物質を中和して気散し難い物性に変質させる中和手段を備えた真空乾燥装置を開示している。この真空乾燥装置は、アルカリ性物質を装置外に排出しない点で評価されるべきであるが、京都議定書が発効した今日において注目を浴びている温室効果ガスとしての炭酸ガス(CO2)が装置外に排出される可能性があり、その対策が採られていない。
【0004】
一方、近年の石油資源が減少し、価格が高騰する現状を踏まえて、上記有機性廃棄物からエネルギー源を効率よく抽出する技術が開発されつつある。例えば、特許文献3は、デンプン質を含む原料を蒸気乾燥機内で乾燥して水分調整し、得られた乾燥物をペレット形成装置内でペレット化し、そのペレットに製麹装置内で麹菌を接種して得た糖化ペレットを同装置内で固体発酵させることにより、発酵物の他に、エタノールを生成するエタノールの製造方法およびエタノール製造システムを開示している。このエタノールの製造方法およびシステムは、有機性廃棄物を想定した原料から、エネルギー源であるエタノールを生成する点で評価されるべきであるが、上記原料に対する一連の過程を異なる装置で行う構成となっているため、上記システムをプラント化する際には設備システムが重厚長大になり、原料を装置間で移動しなければならず、高い設置コストや運転コストを考慮する必要もあり、さらに運転が煩雑となる可能性もある。
【特許文献1】特開平11−63455号公報
【特許文献2】特開2003−302157号公報
【特許文献3】特開2005−65695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、有機性廃棄物またはアルコール原料作物等の有機物を再利用可能な物質に変換する一連の処理過程を1つの密閉型発酵乾燥槽内で実施するための発酵蒸留乾燥システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る発酵蒸留乾燥システムは、原料投入口および撹拌機を有する発酵槽と、該発酵槽の気体を吸引する吸引器と、該吸引器で吸引された気体を蒸留する蒸留器と、該蒸留器で得られた液体を貯留する貯留タンクとからなる発酵蒸留乾燥システムにおいて、前記発酵槽は、発酵物取出口および温度調整ジャケットを備え、原料の発酵および発酵物の減圧乾燥を行う密閉型発酵乾燥槽である。
【0007】
この発明に係る発酵蒸留乾燥システムは、原料を破砕する破砕機を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明に係る発酵蒸留乾燥システムは、前記密閉型発酵乾燥槽に発酵材を添加することを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る発酵蒸留乾燥システムは、発酵材を製造する培養槽を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽内で、有機性廃棄物またはアルコール原料作物等の有機物に対して、発酵を行うと共に、減圧下で蒸留および乾燥を実施するように構成したので、上記有機物のような密閉型発酵乾燥槽の内容物を処理過程中に移動する必要がないことから運転管理を容易にすることでき、運転コストを低減することができ、さらに単純な設備である密閉型発酵乾燥槽により省スペースを図ることができることから設置コストを低減することができるという効果がある。
【0011】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽内で、上記有機物に対して、発酵を行うと共に、減圧下で蒸留および乾燥を行うように構成したので、上記有機物を固体発酵により再利用可能な物質としてアルコールを含む発酵物を得ることができ、上記有機物を完全にリサイクルすることができるという効果がある。特に、密閉型発酵乾燥槽を採用することにより、槽内の圧力を容易に調整することができ、温度調整と併せ各処理工程に最適な環境を作り出すと共に、アルコール蒸気と水蒸気の発生を制御することができ、効率よく安定してアルコールを回収することができる。
【0012】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽内で、上記有機物を水分調整した上で、固体発酵するように構成したので、一般的な液体(含水率が極めて高い、例えば90%の状態)で発酵を行う場合と比して、密閉型発酵乾燥槽を小型化することができ、大きな発酵槽を不要とすることができるという効果がある。また、一般に液体発酵でアルコールを製造する場合には、別途処理が必要となる高濃度(蒸留)廃液が発生するが、この発明では、固体発酵でアルコールを製造することにより、高濃度(蒸留)廃液の発生を抑制することができることから、高濃度(蒸留)廃液の処理に係るコストを削減することができるという効果もある。
【0013】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽内で、上記有機物を水分調整した上で、固体発酵し、その発酵物を回収する回収手段を設けるように構成したので、この回収手段の発酵物返送手段により発酵過程終了段階で密閉型発酵乾燥槽3内から(アルコール)発酵微生物を多く含み発酵活性に富む発酵物を分取することができる。そして分取した発酵物を発酵材として次の有機物処理サイクルにおける密閉型発酵乾燥槽内に戻すことで、前サイクルの活性発酵物をその活性を維持したまま種菌として有効に活用することができ、次のサイクルにおいて有機物に対する糖化および発酵の各処理を速やかにかつ効率よく行うことができるという効果がある。また、発酵材として乾燥前発酵物以外に、例えばアルコール発酵に適した微生物材や酵素材(湿潤物、乾燥物)を適宜用いることができ、安定して効率よい固体発酵および発酵蒸留物の製造を行うことができる。
【0014】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽に投入する原料を破砕する破砕機を設けるように構成したので、塊状の有機性廃棄物等も速やかに破砕・細分化され、効率よく固体発酵を行うことができ、また密閉型発酵乾燥槽内に未発酵の塊状有機性廃棄物が残存滞留することを防止することができる。
【0015】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽に発酵材を製造する培養装置を設けるように構成したので、(アルコール)発酵活性に富む上記発酵材を安定して確保でき、処理サイクル毎に乾燥前発酵物を分取したり、発酵用微生物や発酵用酵素を準備したりする必要がなく、安定した効率よい固体発酵および発酵蒸留物の製造を行うことができる。
【0016】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽内で、上記有機物を水分調整した上で、固体発酵し、その発酵物を回収する回収手段を設けるように構成したので、この回収手段により蒸留過程終了段階で密閉型発酵乾燥槽内に残る十分に減量化された乾燥発酵物を回収することができ、この微生物菌体を含む乾燥発酵物を肥料として有効に再利用することができるという効果がある。
【0017】
この発明によれば、発酵原料として有機性廃棄物の他に、アルコール発酵原料に適するデンプン等の糖類を多く含有する栽培作物を用いることもできるため、上記固体発酵の前段階である糖化過程を短縮あるいは省略することができ、処理過程の簡略化、短縮化が図れ、結果としてより効率よく発酵蒸留物(エタノール等)を製造することができるという効果がある。
【0018】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽に凝縮手段を備えるように構成したので、凝縮手段における蒸留温度を適切に管理することで、密閉型発酵乾燥槽内で固体発酵により生成される水およびアルコールを効率よく分留することができるという効果がある。さらに、この発明では、アルコール貯留部および蒸留液貯留部を設けるように構成したので、水とアルコールを個別に取り扱うことが容易となり、アルコール(特にエタノール)を効率的に回収し搬出することができるという効果がある。さらに、この発明では、上記凝縮手段により、固体発酵により水と共に生成される炭酸ガスを固定することができることから、炭酸ガスの大気への放出を防止することも期待でき、地球の温暖化に影響を与える温室効果ガスとして認知されている炭酸ガスの排出量を確実に抑制することができるという効果がある。
【0019】
この発明によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽に温度調節手段を設けるように構成したので、密閉型発酵乾燥槽内で、有機物に対して行われる水分調整、糖化、固体発酵、蒸留および乾燥の各処理過程を通じて適切な温度管理を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、この発明の1つの実施の形態による発酵蒸留乾燥システムの構成を示す模式図である。発酵蒸留乾燥システム1は、1つの密閉型発酵乾燥槽3と、この密閉型発酵乾燥槽3に連結されかつ上記密閉型発酵乾燥槽3内に収容された有機物に対する水分調整、糖化、固体発酵、蒸留および乾燥の各処理過程で発生する気体を凝縮して液体に変換する蒸留器(凝縮手段)5と、この蒸留器5を経由して上記密閉型発酵乾燥槽3内を減圧する吸引ポンプ(減圧手段)7とから概略構成されている。
【0021】
密閉型発酵乾燥槽3は、略円筒状であってその軸線方向が水平となるように配置された缶体31と、この缶体31の外側を覆って缶体31内の温度を調節するためのジャケット(外套手段)33と、このジャケット33を貫通して上記缶体31の上部に設けられかつ発酵処理に供される原料(有機物)を缶体31内に投入するための投入口35と、上記ジャケット33を貫通して上記缶体31の底部に設けられかつ後述の発酵物を缶体31外に排出するための排出口(発酵物取出口)37と、上記ジャケット33を貫通して上記缶体31の上部に設けられかつ上記発酵物を缶体31内に再投入するための再投入口39とから概略構成されている。
【0022】
缶体31内には、上記有機物を撹拌する撹拌手段40が設けられている。撹拌手段40は、上記缶体31内にその軸線方向に延在するように回転可能に配された回転軸41と、この回転軸41の外周部に半径方向外方に延在するように設けられた複数の撹拌羽根42と、上記回転軸41を回転駆動する駆動モータ43とから概略構成されている。また、缶体31には、この缶体31内の空間温度を常時モニターするための温度センサ44が配設されている。
【0023】
ジャケット33には、熱媒供給手段45が接続されている。熱媒供給手段45は、上記ジャケット33に冷却水を供給するための冷却装置46と、上記ジャケット33に蒸気を供給するための蒸気発生装置47と、この蒸気発生装置47および上記冷却装置46と上記ジャケット33とを連絡する供給路48とから概略構成されている。供給路48は、上記冷却装置46からの冷却媒体供給路48aと、上記蒸気発生装置47からの蒸気供給路48bと、これら両供給路が合流する箇所からジャケット33に至る合流供給路48cとから概略構成されている。ここで、ジャケット33と熱媒供給手段45とは、上記密閉型発酵乾燥槽3内の温度を、密閉型発酵乾燥槽3内に供給される有機物に対する後述の水分調整、糖化、固体発酵、蒸留および乾燥の各処理過程に適した温度に調節するための温度調節手段を構成している。
【0024】
投入口35には、上記密閉型発酵乾燥槽3内に投入される上記有機物を吸引搬送するための搬送路49の一端が接続されている。搬送路49の途中には、この搬送路49を開閉するための吸引弁50が設けられており、搬送路49の他端には、可撓性材料等で構成された吸引ホース51の一端が接続されている。吸引ホース51の他端は、上記有機物を破砕する破砕機52から破砕物を受ける破砕物容器53内に投入されている。破砕機52は、上記有機物を投入するための投入口52aと、この投入口52aから投入されて破砕された破砕物としての発酵原料を排出するための排出口52bとを備えている。
【0025】
排出口37と再投入口39との間には、上記発酵材となる発酵物を返送するための発酵物返送路(発酵物返送手段)54が配設されている。この発酵物返送路54のうち、排出口37の近傍には、密閉型発酵乾燥槽3と発酵物返送路54との連通または密閉型発酵乾燥槽3と外部との連通を選択できる三方弁である排出口弁55が設けられている。また、発酵物返送路54のうち、再投入口39の近傍には、発酵物返送路54を開閉するための再投入口弁56が設けられている。再投入口弁56の上部には、発酵物を効率よく受け入れるための逆円錐状の再投入ホッパ56aが設けられている。
【0026】
密閉型発酵乾燥槽3と蒸留器5との間には、密閉型発酵乾燥槽3内に投入された有機物に対する水分調整、糖化、固体発酵、蒸留および乾燥の各処理過程で発生する気体を蒸留器5に誘導する気体誘導路57が設けられている。この気体誘導路57には、密閉型発酵乾燥槽3内の圧力を常時モニターするための圧力センサ58が設置されている。また、蒸留器5には、蒸留器5内の温度をモニターするための温度センサ59が設置されている。
【0027】
蒸留器5には、密閉型発酵乾燥槽3内に投入された有機物に対する固体発酵過程で発生するアルコール蒸気を凝縮したアルコール60aを貯留するアルコール貯留タンク60と、上記有機物に対する水分調整、蒸留および乾燥の各処理過程で発生する水蒸気を凝縮した水(蒸留液)61aを貯留する貯留タンク61が液体誘導路62を経由して接続されている。この液体誘導路62には、その誘導路62を、アルコール分岐路62aまたは蒸留液分岐路62bに切り換えるための三方弁である流路切換え弁63が設けられている。また、蒸留器5と冷却装置46との間には、冷却装置46からの冷却媒体を蒸留器5に供給するための冷却媒体供給路64が設けられている。
【0028】
アルコール貯留タンク60の底部には、アルコール60aを排出するための排出弁65が設けられている。一方、貯留タンク61の底部には、蒸留液61aを排出するための排出弁66が設けられており、また上部には、貯留タンク61内に貯留される蒸留液の水位を計測するための水位計67が設置されている。
【0029】
また、アルコール貯留タンク60および貯留タンク61と吸引ポンプ7との間には、アルコール側吸引部68aと蒸留液側吸引部68bとこれら両吸引部を合流した合流部68cとからなる吸引路68が配設されている。この吸引路68には、吸引ポンプ7との連通を、アルコール貯留タンク60側または貯留タンク61側に切り換えるための三方弁である流路切換え弁69が設けられている。この流路切換え弁69は、排気流路70を介して脱臭塔71に接続されている。なお、吸引ポンプ7と脱臭塔71との間には、吸引ポンプ7を通過した炭酸ガスを外部に排出しないように、炭酸ガスを捕集する炭酸ガストラップ(図示せず)が配設されてもよい。この炭酸ガストラップ(図示せず)は、例えば、石灰水に炭酸ガスを通して、石灰水中に不溶性の炭酸カルシウムおよび可溶性の炭酸水素カルシウムを生成することで炭酸ガスを固定するものである。
【0030】
次に、図2から図11までを参照して、図1に示した発酵蒸留乾燥システム1を用いた有機物の処理システムを説明する。
【0031】
1.破砕過程(前処理)
まず、所定量の原料(生ごみ等の生活系廃棄物、食品残渣や醸造残渣等の産業系廃棄物、ジャガイモや米などの栽培作物など)を破砕機52にその投入口52aから投入し、これを破砕する(図2におけるステップST1)。破砕された発酵原料(以下、破砕物という)を破砕機52の排出口52bから排出し、これを破砕物容器53で受ける。なお、上記原料が既に細かくなっているなど、前処理を必要としない場合には、上記破砕機52で破砕することなく、直接、上記原料を破砕物容器53に収容してもよい。なお、破砕機52は、有機性廃棄物に混入する木片類や骨類(動物や魚類の骨、鶏卵や甲殻類の殻など)、硬い農作物(含水率が極めて低い穀物など)を速やかに破砕・細分化できるものであって、裁断型(カッタータイプ)、破壊型(ハンマータイプ)、圧搾型(押しつぶしタイプ)などの破砕機が好ましい。特に、回転するハンマー部材を備えたハンマータイプ破砕機を用いた場合には、破砕・細分化された原料が適度に湿潤していて流動性があり、密閉型乾燥槽3に投入しやすい。
【0032】
2.原料投入および水分調整過程
次に、図3に示すように、破砕物容器53から破砕物を密閉型発酵乾燥槽3内に投入する(図3の矢印A1)。すなわち、吸引弁50を開放し、蒸留器5と貯留タンク61を連通するように流路切換え弁63を切り換え、貯留タンク61と吸引ポンプ7を連通するように流路切換え弁69を切り換え、排出口弁55および再投入口弁56を閉鎖する。この状態で、吸引ポンプ7を起動することで、破砕物容器53内の破砕物を、吸引ホース51および搬送路49を経由して吸引し(図3の矢印A2)、密閉型発酵乾燥槽3内に投入する。なお、破砕物は再投入口弁56を開放して、この再投入口39から密閉型発酵乾燥槽3内に投入されてもよいし、圧送装置などを用いて投入されてもよい。
【0033】
次に、密閉型発酵乾燥槽3内に投入された破砕物の含水率に応じて、この破砕物に対して水分調整を行う。固体発酵を行うためには、概ね破砕物の含水率は45重量%以上80重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0034】
仮に、破砕物の含水率が低い場合には、図4に示すように、必要量の水を添加して水分調整を行う(図2におけるステップST21、図4の矢印A3)。なお、含水率の低い発酵原料(米等)の場合には、上記破砕過程において予め必要量の水を加えて水分調整してもよい。なお、水分調整には後述の蒸留液を用いてもよい。
【0035】
逆に、破砕物の含水率が高い場合には、図4に示すように、次の手順で原料を乾燥する(図2におけるステップST22)。
まず、吸引弁50を閉鎖し、蒸留器5と貯留タンク61を連通するように流路切換え弁63を切り換え、貯留タンク61と吸引ポンプ7を連通するように流路切換え弁69を切り換え、再投入口弁56および排出口弁55を閉鎖する(減圧過程)。次に、蒸気発生装置47で発生した蒸気をジャケット33に通し、缶体31内部を加温する(蒸気加熱過程)。冷却装置46で製造した冷却水を蒸留器5に通し、この蒸留器5を冷却する(冷却過程)。次に、吸引ポンプ7を起動し、缶体31内を減圧する(吸引過程:図4の矢印A2)。この減圧状態は圧力センサ58でモニターされるが、その指示値は−70KPa(=240mmHg)以下であることが好ましい。また、缶体31の内部温度は温度センサ44でモニターされるが、その指示値は例えば−70KPaであれば65℃以上、−80KPaであれば55℃以上であることが好ましい。次に、駆動モータ43を起動し、撹拌手段40を回転させて破砕物を撹拌する(撹拌過程)。なお、上記減圧、蒸気加熱、冷却、吸引および撹拌の各過程は、全体で乾燥過程を構成するが、各過程の作業順は任意である。
【0036】
破砕物の水分調整を目的とした上記乾燥過程では、缶体31内が減圧され、破砕物が加温されることによって生じた水蒸気が蒸留器5により凝縮されて蒸留液に変換されて、貯留タンク61内に回収される。この乾燥過程は、貯留タンク61内に回収された蒸留液の水位を水位計67により計測し、その水位が所定値に達した時点で完了する。なお、回収される水分量の所定値は、密閉型発酵乾燥槽3内に投入された破砕物の含水率を基準にして減量されるべき水分量を算出して、予め把握することができる。
【0037】
次に、上述のように所望の水分調整が行えたら、吸引ポンプ7を停止し、吸引弁50あるいは再投入口弁56のいずれか、あるいは両方を開放することで、缶体31の内圧を常圧に戻す。蒸気発生装置47からの蒸気供給を停止し、必要に応じてジャケット33に冷却水を通すことで、缶体31の内部を後述の植種過程で破砕物に植種される微生物等の生育の適した温度範囲、例えば15℃以上45℃以下とする。
【0038】
なお、上記水分調整については、水位計67を使用するほか、缶体31の重量(動荷重)を計量して、乾燥により蒸発された水分量を計測することで、判定してもよい。なお、撹拌手段40は、缶体31の内部温度が発酵材添加(植種)可能温度になるまで、また破砕物が缶体31内で(質的、高さ的に)なじむまで、稼動させてもよく、その必要がなければ停止させておいてもよい。
【0039】
3.植種過程
次に、図5に示すように、駆動モータ43を起動して撹拌手段40により缶体31内の破砕物を撹拌しながら、再投入口弁56を開放し、再投入ホッパ56aから缶体31内に種菌などの発酵材(糖化や発酵を行う微生物、酵素、その混合物、または乾燥前発酵物)を投入する(図2におけるステップST3、図5の矢印A4)。なお、缶体31内を減圧状態にして、再投入ホッパ56a内に配した発酵材を再投入口弁56から投入してもよい。また、再投入口39を設けない場合には、投入口35などから発酵材を投入してもかまわない。なお、微生物菌体にこだわらず、アルコール発酵に関与する複数の酵素(液体状、粉末状)を用いてもよい。
【0040】
ここで発酵材は、前サイクルの糖化発酵が終了した段階で、蒸留乾燥前に缶体31内から分取した発酵物(乾燥前発酵物)を用いることが効率的でとても望ましい。これは、発酵を担う重要な微生物菌体を多く含む発酵物を蒸留段階での高温下にさらすと微生物が死滅してしまうため、蒸留乾燥前に発酵物を分取して、この乾燥前発酵物に含まれる微生物を糖化発酵に積極的に利用するのである。これにより、簡便且つ効率的に糖化や発酵を担う重要な微生物を安定して確保でき、また発酵物の再利用、有効利用がはかれるのである。
【0041】
また、植種に使用可能な微生物としては、例えば麹菌を挙げることができる。麹菌としては、特許文献3に記載されたAspergillus oryzae KBN606(醤油用)、Aspergillus oryzae KBN615(醤油用)、Aspergillus sojae KBN650(醤油用)、Aspergillus oryzae KBN930(味噌用)、Aspergillus oryzae KBN943(麦味噌用)、Aspergillus oryzae KBN1015(清酒用)、Aspergillus kawachii KBN2001(焼酎用)、Aspergillus kawachii P10−1(焼酎用)、Aspergillus awamori KBN2012(焼酎用)、Aspergillus saitoi KBN2024(泡盛用)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
4.糖化発酵過程
次に、図6に示すように、吸引弁50を開放し、蒸留器5とアルコール貯留タンク60を連通するように流路切換え弁63を切り換え、アルコール貯留タンク60と吸引ポンプ7を連通するように流路切換え弁69を切り換え、再投入口弁56および排出口弁55を閉鎖する。予め設定した糖化発酵時間中に、駆動モータ43および吸引ポンプ7を所定間隔で起動し、缶体31内の破砕物に対して周期的に撹拌および吸気を行うことで、糖化過程および発酵過程を行う(図2におけるステップST4)。なお、発酵過程で発生する熱により、内部温度が上昇するから、ジャケットに適温の熱媒を通して発酵に最適な温度に調節する必要がある。また、発酵過程で発生する気体としては、水蒸気の他に、発酵生成物である炭酸ガスあるいはアルコール蒸気が含まれる。
【0043】
なお、糖化発酵過程の間、缶体31内の内容物の温度が微生物の活性が低下する低温になる場合には、蒸気発生装置47からの蒸気や温水などの熱媒をジャケット33内に通して缶体31内を加温してもよい。逆に、糖化発酵過程の間、缶体31内の内容物の温度が微生物の活性が低下する高温になる場合には、冷却装置46から冷却水などの熱媒をジャケット33内に通して冷却してもよい。また、蒸気発生装置47からの蒸気により缶体31内が過熱される場合には、発酵に適した温度を逸脱して発酵過程が停止する可能性があるため、蒸気の供給を停止する必要がある。
【0044】
また、糖化発酵過程の間、缶体31内の内容物のアルコール濃度が糖化発酵過程を阻害する濃度以上になることを防止するために、吸引弁50を閉鎖し、蒸気発生装置47からの蒸気をジャケット33に通して缶体31内を加温し、冷却装置46からの冷却水を蒸留器5に通して蒸留器5を冷却し、吸引ポンプ7を起動して缶体31内を減圧し、駆動モータ43を起動し、撹拌手段40を回転させて破砕物を撹拌して、発生したアルコールの一部を蒸留して、缶体31内のアルコール濃度を低下させる。
【0045】
なお、破砕物中にアルコール発酵原料としてのデンプン等の糖類を含む場合には、糖化過程を短縮化あるいは簡略化することができることから、迅速に発酵過程に移行することができる。
【0046】
5.乾燥前発酵物分取過程
次に、図7に示すように、発酵過程終了後に、吸引ポンプ7により減圧状態を維持している場合には、吸引ポンプ7を停止し、吸引弁50あるいは再投入口弁56のいずれか、あるいは両方を開放し、缶体31内を常圧に戻す。撹拌手段40により缶体31内の破砕物を撹拌している場合には、撹拌手段40を停止する。次に、排出口弁55を開放して、缶体31内の発酵物(乾燥前発酵物)を、排出口(発酵物取出口)37を介して分取する。分取した(アルコール)発酵微生物等を多く含み発酵活性に富む発酵物は、発酵物返送路54を経由して、再投入口39から再度、缶体31内に添加して、次の処理サイクルにおける植種過程に使用することができる(図2におけるステップST5からステップST3へ)。所定量の発酵物を分取するために、撹拌手段40を所定時間、起動してもよい。次に、所定量の発酵物を分取したら、排出口弁55を閉鎖する。
【0047】
なお、缶体31の発酵物を種菌として所定量だけ、種菌コンテナ(図示せず)に分取してもよい(図2におけるステップST5)。また、図11に示すように、排出口を介さず、缶体31の底部やその近傍に別途、発酵物分取専用の発酵物取出口38を設けて発酵物を分取してもよい。
【0048】
6.蒸留過程
次に、図8に示すように、吸引弁50を閉鎖し、蒸留器5とアルコール貯留タンク60を連通するように流路切換え弁63を切り換え、アルコール貯留タンク60と吸引ポンプ7を連通するように流路切換え弁69を切り換え、再投入口弁56および排出口弁55を閉鎖する。次に、蒸気発生装置47からの蒸気をジャケット33に通して缶体31を加温し、冷却装置46からの冷却水を蒸留器5に通して蒸留器5を冷却し、吸引ポンプ7を起動し、缶体31内を減圧にし、駆動モータ43を起動し、撹拌手段40を回転させて発酵物を撹拌し、発酵物から発生したアルコール60aを蒸留する(図2におけるステップST6)。
【0049】
圧力センサ58でモニターされる密閉型発酵乾燥槽3内の圧力は−70KPa以下であることが好ましく、温度センサ44でモニターされる缶体31の内部温度は、圧力にもよるが、例えば−70KPaの場合、概ね40℃以上60℃以下の範囲であることが好ましい。このような状態にすることにより、アルコール蒸気を効率的に発生させることができ(例えば、−70KPaの減圧下において、エタノールの沸点は50℃で水の沸点は70℃)、生じたアルコール蒸気は蒸留器5により蒸留されて(図6の矢印A5)、液体状アルコール(例えばエタノール)60aになり(図6の矢印A6)、アルコール貯留タンク60に回収される。なお、蒸留器5の入口に設けた温度センサ59でモニターされる蒸気温度が60℃を超えると、アルコール回収が完了した目安とすることができる。
【0050】
なお、アルコール回収は、所定の蒸留時間を設定し、その時間が経過した時点で完了としてもよい。あるいはアルコール回収は、蒸留温度と所定の蒸留時間を併用して完了判定してもよい。さらに、アルコール回収については水位計67を使用するほか、缶体31の重量(動荷重)を計量して水分量を計測することで、完了判定してもよい。
【0051】
7.乾燥凝縮過程
次に、図9に示すように、蒸留器5と貯留タンク61を連通するように流路切換え弁63を切り換え、貯留タンク61と吸引ポンプ7を連通するように流路切換え弁69を切り換える。次に、温度センサ44でモニターされる缶体31内の温度が例えば65℃以上となるようにジャケット33に蒸気を通し、缶体31内を加温すると共に、圧力センサ58でモニターされる密閉型発酵乾燥槽3内の圧力が−70KPa以下となるように吸引ポンプ7を運転する(図2におけるステップST7、図9の矢印A2)。
【0052】
この乾燥過程では、缶体31内が減圧され、内容物が加温されることによって生じた水蒸気が蒸留器5により凝縮されて(図9の矢印A5)、蒸留液61aに変換されて貯留タンク61に回収される(図9の矢印A7)。この乾燥は、水位計67により所定量の蒸留液61aが回収された段階で完了する。乾燥が完了したら、吸引ポンプ7を停止し、吸引弁50あるいは再投入口弁56のいずれか、あるいは両方を開放して缶体31内を常圧に戻す。蒸気発生装置47からの蒸気供給を停止する。
【0053】
これに代えて、乾燥については水位計67の他に、缶体31の重量(動荷重)を計量して水分量を計測することで、完了判定してもよい。
【0054】
8.回収排出過程
次に、図10に示すように、駆動モータ43を起動し、撹拌手段40により内容物を排出口弁55に集めるように運転する。排出口弁55を開放することで、乾燥した発酵物(発酵乾燥残渣)を排出する(図2におけるステップST8、図10の矢印A8)。また、アルコール貯留タンク60内に貯留されたアルコール60aは回収され(図10の矢印A9)、貯留タンク61内に貯留された蒸留液61aは排出される(図10の矢印A10)。なお、蒸留液は、単に排出されるばかりでなく、熱媒や破砕物の水分調整等に再利用してもよい。なお、アルコール60aや蒸留液61aは排出工程時に限らず、必要に応じて適宜回収(排出)してもよい。
【0055】
なお、上記植種過程において、発酵材として糖化や発酵を行う微生物、酵素、その混合物(いずれも湿潤物または乾燥物)、または(アルコール)発酵微生物等を多く含み発酵活性に富む乾燥前発酵物を用いることを例示したが、図11に示すように、これらを原料に、培養槽81や撹拌機82を備えた培養装置80(ジャーファーメンテータ等)を設け、上記発酵材を原料に培養装置80で培養し、この培養液を例えば発酵材添加経路手段83を経由させるなどして、再投入ホッパ56a内に配した再投入口弁56や投入口35などから投入してもよい。なお、培養液自体を破砕物に添加することで、上記水分調整過程と植種過程を同時に行うこともできる。
【0056】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3内で、有機性廃棄物またはアルコール原料作物等の有機物に対して、発酵を行うと共に、減圧下で蒸留および乾燥を実施するように構成したので、上記有機物のような密閉型発酵乾燥槽3の内容物(破砕物あるいは発酵物)を処理過程中に移動する必要がないことから運転管理(とくに圧力調整や温度調整)を容易にすることでき、運転コストを低減することができ、さらに単純な設備である密閉型発酵乾燥槽により省スペースを図ることができることから、設置コストを低減することができるという効果がある。
【0057】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3内で、上記有機物に対して、発酵を行うと共に、減圧下で蒸留および乾燥を行うように構成したので、上記有機物を固体発酵により再利用可能な物質としてアルコールを含む発酵物を得ることができ、上記有機物を完全にリサイクルすることができるという効果がある。
【0058】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3内で、上記有機物を水分調整した上で、固体発酵するように構成したので、一般的な液体(含水率が極めて高い、例えば90%以上の状態)で発酵を行う場合と比して、密閉型発酵乾燥槽を小型化することができ、大きな発酵槽を不要とすることができるという効果がある。また、一般に液体発酵でアルコールを製造する場合には、別途処理が必要となる高濃度(蒸留)廃液が発生するが、この実施の形態1では、固体発酵でアルコール60aを製造することにより、高濃度(蒸留)廃液の発生を抑制することができることから、高濃度(蒸留)廃液の処理に係るコストを削減することができるという効果もある。
【0059】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3内で、上記有機物を水分調整した上で、固体発酵し、その発酵物を回収する排出口37等を設けるように構成したので、発酵過程終了段階で密閉型発酵乾燥槽3内から発酵材となる(アルコール)発酵微生物を多く含み発酵活性に富む発酵物を分取し、これを次の有機物処理サイクルにおける密閉型発酵乾燥槽3内に戻すことで、前サイクルの活性発酵物をその活性を維持したまま発酵材として有効に活用することができ、次のサイクルにおいて有機物に対する糖化および発酵の各処理を速やかにかつ効率よく行うことができるという効果がある。また、発酵材として乾燥前発酵物以外に、例えばアルコール発酵に適した微生物や酵素(湿潤物、乾燥物)を適宜用いることができ、安定して効率よい固体発酵および発酵蒸留物の製造を行うことができる。
【0060】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3内で、上記有機物を水分調整した上で、固体発酵した後、蒸留乾燥し、その発酵物を回収する回収手段を設けるように構成したので、この回収手段により乾燥過程終了段階で密閉型発酵乾燥槽内に残る十分に減量化された乾燥後発酵物を回収でき、この乾燥後発酵物を肥料として有効に再利用することができ、仮に処理処分する場合であっても十分に減量化されているため作業負担や費用負担を削減することができるという効果がある。
【0061】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3内に、有機物として有機性廃棄物の他に、アルコール発酵原料としてのデンプン等の糖類を多く含有する栽培作物を用いることもできるため、上記有機物に対する固体発酵の前段階である糖化過程を短縮あるいは省略することができ、処理過程の簡略化、短縮化を図ることができ、結果として固体発酵を効率よく行うことができるという効果がある。
【0062】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3に蒸留器5を備えるように構成したので、圧力および温度が調整された密閉型発酵乾燥槽3で水蒸気およびアルコール蒸気の発生を制御でき、蒸留温度を適切に管理された蒸留器5で発生したそれぞれの蒸気を効率よく分留することができるという効果がある。さらに、この実施の形態1では、アルコール貯留タンク60および貯留タンク61を設けるように構成したので、蒸留液61aとアルコール60aを個別に取り扱うことが容易となり、アルコール(例えばエタノール)を効率的に回収し搬出することができるという効果がある。さらに、この実施の形態1では、炭酸ガストラップを設けるにより、固体発酵で生成される炭酸ガスを固定することができることから、炭酸ガスの大気への放出を防止することができ、地球の温暖化に影響を与える温室効果ガスとして認知されている炭酸ガスの排出量を確実に抑制することができるという効果がある。
【0063】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3に温度調節用のジャケット33等を設けるように構成したので、密閉型発酵乾燥槽3内で、有機物に対して行われる水分調整、糖化、固体発酵、蒸留および乾燥の各処理過程を通じて適切な温度管理を行うことができるという効果がある。
【0064】
この実施の形態1によれば、1つの密閉型発酵乾燥槽3に発酵材を製造する培養装置80を設けるように構成したので、(アルコール)発酵活性に富む発酵材を安定して確保でき、処理サイクル毎に乾燥前発酵物を分取したり、発酵用微生物や発酵用酵素を準備したりする必要がなく、効率よい固体発酵および発酵蒸留物の製造を行うことができる。
【0065】
上記実施の形態1では、図1から図11までに示したように、必須の構成要素としての密閉型発酵乾燥槽、凝縮手段および減圧手段に加えて、他の多くの構成要素を含めるように構成したが、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、この技術分野における、いわゆる当業者であれば、容易に選択できる構成要素を含めることも可能であり、新たに選択されて含められた他の構成要素を含む実施の形態もこの発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0066】
この発明に係る発酵蒸留乾燥システムは、アルコール原料作物や廃棄されるかせいぜい餌料程度にしか用いられなかった有機性廃棄物等の有機物を、固体発酵および蒸留乾燥して処理することにより、アルコールや乾燥発酵物など再利用(有効活用)可能な物質を製造することができ、たいへん有用である。因みに、製造回収されるアルコールは、例えばガソリン等に混合して内燃機関用のアルコール燃料としての使用が可能である。排出される蒸留液は、次の有機物処理サイクルにおいて熱媒や破砕物の水分調整に有効利用が可能である。また、回収された乾燥発酵物は、十分に減量化されていて取り扱いも容易で肥料として大いに活用することができる。さらに、固体発酵時に発生する炭酸ガスは、減圧手段により捕集され、例えば石灰水に通されることで不溶性の炭酸カルシウム等に変換して固定され、種々の用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の1つの実施の形態による発酵蒸留乾燥システムの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示した発酵蒸留乾燥システムにおいて実行される処理過程を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、原料投入過程にかかる構成を示す断面図である。
【図4】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、水分調整過程にかかる構成を示す断面図である
【図5】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、発酵材投入(植種)過程にかかる構成を示す断面図である。
【図6】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、糖化発酵過程にかかる構成を示す断面図である。
【図7】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、蒸留乾燥前の発酵物分取過程にかかる構成を示す断面図である。
【図8】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、蒸留過程にかかる構成を示す断面図である。
【図9】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、乾燥凝縮過程にかかる構成を示す断面図である。
【図10】図2に示した発酵蒸留乾燥システムにおける処理過程のうち、回収排出過程にかかる構成を示す断面図である。
【図11】この発明の発酵蒸留乾燥システムのうち、培養装置が設けられた密閉型発酵乾燥槽にかかる構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 発酵蒸留乾燥システム
3 密閉型発酵乾燥槽
5 蒸留器(凝縮手段)
7 吸引ポンプ(減圧手段)
31 缶体(密閉型発酵乾燥槽)
33 ジャケット(外套手段:温度調節手段)
35 投入口
37 排出口(発酵物取出口)
38 発酵物取出口
39 再投入口
40 撹拌手段
41 回転軸(撹拌手段)
42 撹拌羽根(撹拌手段)
43 駆動モータ(撹拌手段)
44 温度センサ
45 熱媒供給手段(温度調節手段)
46 冷却装置(温度調節手段)
47 蒸気発生装置(温度調節手段)
48 供給路(温度調節手段)
48a 冷却媒体供給路
48b 蒸気供給路
48c 合流供給路
49 搬送路
50 吸引弁
51 吸引ホース
52 破砕機
52a 投入口
52b 排出口
53 破砕物容器
54 発酵物返送路(発酵物返送手段)
55 排出口弁
56 再投入口弁
56a 再投入ホッパ
57 気体誘導路
58 圧力センサ
59 温度センサ
60 アルコール貯留タンク
60a アルコール
61 貯留タンク(蒸留液貯留部)
61a 蒸留液
62 液体誘導路
62a アルコール分岐部
62b 蒸留液分岐部
63 流路切換え弁
64 冷却媒体供給路
65 排出弁
66 排出弁
67 水位計
68 吸引路
68a アルコール側吸引路
68b 蒸留液側吸引路
68c 合流部
69 流路切換え弁
70 排気流路
71 脱臭塔
80 培養装置
81 培養槽
82 撹拌機
83 発酵材添加経路手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料投入口および撹拌機を有する発酵槽と、該発酵槽の気体を吸引する吸引器と、該吸引器で吸引された気体を蒸留する蒸留器と、該蒸留器で得られた液体を貯留する貯留タンクとからなる発酵蒸留乾燥システムにおいて、前記発酵槽は、発酵物取出口および温度調整ジャケットを備え、原料の発酵および発酵物の減圧乾燥を行う密閉型発酵乾燥槽であることを特徴とする発酵蒸留乾燥システム。
【請求項2】
原料を破砕する破砕機を備えたことを特徴とする請求項1に記載の発酵蒸留乾燥システム。
【請求項3】
前記密閉型発酵乾燥槽に発酵材を添加することを特徴とする請求項1または2に記載の発酵蒸留乾燥システム。
【請求項4】
発酵材を製造する培養装置を備えたことを特徴とする請求項3記載の発酵蒸留乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−97422(P2007−97422A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288034(P2005−288034)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(598096991)学校法人東京農業大学 (85)
【出願人】(000147408)株式会社西原環境テクノロジー (44)
【Fターム(参考)】