説明

発電システム、および火葬炉

【課題】火葬炉等の焼却処理で発生した熱エネルギを有効に利用できるようにする。
【解決手段】火葬炉10は、ボイラとしての機能を備えた火葬炉である。具体的には、火葬炉10は、焼却室内に配設された水管式熱交換器に対して、給水ポンプ70による水の供給を受ける。そして、火葬処理により火葬炉10内に生じた熱により水管式熱交換器内にて気化した水蒸気を汽水分離器20に送る役割を果たす。発電システム100は、水管と、水管の少なくとも1部分が焼却室内に配設された焼却炉(火葬炉10)と、焼却炉に生じた熱により水管内において気化した水蒸気により駆動する発電機40とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムに関するものであり、特に焼却炉における排熱を利用する発電システム、および発電設備を備えた火葬炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火葬の際に環境への影響を考慮し、再燃炉(または、再燃焼炉)を用いて火葬排気の再燃焼処理を行う火葬炉が一般化している。ここで、再燃炉とは、棺を焼却する主焼却炉にて生じる燃焼煙や灰などを高温で燃焼させることにより、火葬の際に生じる煙や有害物質などの発生を抑えるためのものである。
【0003】
こうした火葬炉には、例えば、主燃焼室での点火前に再燃焼室が点火されて再燃焼室が予熱されるようになっており、火葬炉排ガス処理装置を用いる火葬炉排ガス処理方法において、主燃焼室での点火前に再燃焼室を点火して再燃焼室を予熱するようにするとともに、再燃焼室で熱した排ガスを空気冷却したのち排ガス触媒に送るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−343094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、再燃炉から排出される高温(約600℃〜800℃)の排ガスを大気放出する際に、空気冷却(すなわち、強制冷却)により所定の温度(例えば、200℃前後)まで下げて放出することは、エネルギ効率を考えた場合に改善すべき問題となる。
【0006】
こうした問題は、ゴミ焼却炉など、各種の焼却炉における排熱に関しても同様に存在する。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決すべく、焼却処理で発生した熱エネルギを有効に利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発電システムは、水管と、該水管の少なくとも1部が焼却室内に配設された焼却炉と、該焼却炉に生じた熱により前記水管内において気化した水蒸気により駆動する発電機とを含むことを特徴とする。
【0009】
上記の構成としたことで、焼却処理で発生した熱エネルギを有効に利用できるようになる。
【0010】
前記焼却炉は、棺を焼却する主焼却炉と、該主焼却炉に連通して設置された再焼却炉とを有する火葬炉であり、前記主焼却炉と前記再焼却炉のいずれかの焼却室内に前記水管が配設された構成とされていてもよい。
【0011】
前記火葬炉は、火葬炉にて発生した排ガスを火葬炉の外部へ排出する排出部を有し、該排出部に前記水管が配設された構成とされていてもよい。
【0012】
前記排出部は、他の火葬炉の排出部と連結するための連結部を有し、前記発電部は、前記連結部により連結された複数の火葬炉に配設された前記水管内において気化した水蒸気により駆動する構成とされていてもよい。
【0013】
また、本発明の火葬炉は、焼却室内に水管が配設された焼却炉と、該焼却炉に生じた熱により前記水管内において気化した水蒸気を、水蒸気により駆動する発電機を有する発電システムに供給する蒸気供給部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、焼却処理で発生した熱エネルギを有効に利用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】火葬炉発電システムの構成例を示す系統図である。
【図2】火葬炉の構成例を説明するための簡略図である。
【図3】火葬炉の構成例を説明するための簡略図である。
【図4】火葬炉熱交換器の配設位置の例を説明するための簡略図である。
【図5】火葬炉熱交換器の配設位置の例を説明するための簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態を示す発電システム100の構成例を示す系統図である。図1に示すように、発電システム100は、火葬炉10と、汽水分離器20と、蒸気ヘッダ30と、発電機40(蒸気発電機)と、復水器50と、冷却塔60と、給水ポンプ70と、自動軟水器80と、ホットウェルタンク90とを含む。なお、発電システム100には、適宜、各種弁(電磁弁、安全弁、減圧弁など)または弁装置、蒸気圧力調整器、および循環ポンプなどが設けられていることが好ましい。
【0018】
火葬炉10は、ボイラとしての機能を備えた火葬炉である。具体的には、火葬炉10は、焼却室内に配設された水管式熱交換器(例えば、水管)に対して、給水ポンプ70による水の供給を受ける。そして、火葬処理により火葬炉10内に生じた熱により水管式熱交換器内にて気化した水蒸気を汽水分離器20に送る役割を果たす。なお、本例における「ホットウェルタンク」とは、蒸気を利用する各種システムにおいて発生する高温の凝縮水を一時的に貯めておくタンクを意味するものとする。
【0019】
図2および図3は、火葬炉10の構成例を説明するための簡略図であり、図2が正面図、図3が側面図である。なお、図2および図3においては、後述する熱交換器(火葬炉熱交換器15と煙導熱交換器16)の配設位置を明示するために、熱交換器と他の構成要素(給水ポンプ70、汽水分離器20、および蒸気ヘッダ30など)との接続部分については、その描画を省略する。
【0020】
図2に示すように、本例における火葬炉10は、主焼却炉11と、再燃炉12と、煙導部13と、バーナー14と、熱交換器(火葬炉熱交換器15と煙導熱交換器16)とを含む。
【0021】
主焼却炉11は、火葬炉10を用いて火葬を行う際に、バーナー14により棺を焼却させるための主焼却室を備えた炉である。なお、本例における主焼却炉11には、台車17により棺が出し入れされる。
【0022】
再燃炉12は、主焼却炉11に連通して設置され、主焼却炉11にて発生した燃焼煙や灰などを燃焼させるための再燃焼室を備えた炉である。本例においては、バーナー14を備えた再燃炉12を用いる場合を例に説明を行なう。なお、火葬炉10が、複数の再燃炉12を含む構成とされていてもよい。
【0023】
煙導部13は、再燃炉12にて焼却しきれなかった煙などの排ガスを火葬炉10の外部へ導いて排出するためのものである。なお、煙導部13の出口には、排ガスの温度を下げるための冷却装置や集塵装置などが設けられていることが好ましい。なお、煙導部13は、例えば火葬炉10を備えた火葬場が煙突を備える場合、一般的な煙道としての役割を担うこととなる。
【0024】
バーナー14は、主焼却炉11と再燃炉12とにそれぞれ配設される。また、本例においては、バーナー14は、主焼却炉11と再燃炉12とをつなぐ連結部分にも設けられる。すなわち、バーナー14は、焼却処理をより効率的に行える場所に配設されることが好ましい。
【0025】
本例における熱交換器は、内部に水と水蒸気を通す管(水管)、または水管を連結させた水管パネルを用いる。水管は、一端が給水ポンプ70による給水を受け、他端が汽水分離器20に接続される。すなわち、熱交換器は、火葬炉10に取り付けられることにより、火葬炉10全体をボイラ(具体的には、水管式ボイラ)として機能させるための役割を果たす。
【0026】
また、本例においては、火葬炉10内に配設する熱交換器を火葬炉熱交換器15、煙導部13に配設する熱交換器を煙導熱交換器16と呼ぶ。なお、熱交換器が、火葬炉10や煙導部13の壁部や壁部の1部分を構成するように設けられていてもよい。また、火葬炉10が、火葬炉熱交換器15と煙導熱交換器16のどちらか一方のみを備えた構成とされていてもよい。
【0027】
本例においては、図2および図3に示すように、再燃炉12におけるバーナー14の取り付け位置の近傍に、パネル状の火葬炉熱交換器15が配設されているものとする。再燃処理中の再燃炉12におけるバーナー14の近傍は高温となるため、火葬炉熱交換器15にて発電機40による発電を行うのに十分な熱エネルギを得ることができる。また、汽水分離器20に近い位置に火葬熱交換器15を設けることにより、熱交換器の取り付け作業に要する負担を軽減させることができる。
【0028】
次に、発電システム100による発電方法について図を参照して説明する(図1参照)。
【0029】
発電システム100は、火葬炉10に生じた熱エネルギを利用した発電を行う。
【0030】
火葬炉10において主焼却炉11と再燃炉12とによる火葬処理が開始されると、火葬炉10内に配設された熱交換器内の水や空気に熱が伝わる。そして、熱により水(または水の一部)か気化し、水蒸気(または、水と水蒸気)が汽水分離器20に送られる。なお、煙導熱交換器16が配設されている場合には、排ガスの熱エネルギも利用可能となる。この場合、火葬炉熱交換器15と煙導熱交換器16との接続関係は特に限定されず、火葬炉熱交換器15と煙導熱交換器16それぞれから汽水分離器20に水と水蒸気とが送られる構成としてもよい。本例においては、給水ポンプ70から供給された水(または水の一部)が、煙導熱交換器16を通過してから火葬炉熱交換器15を通過する間に水蒸気となり、汽水分離器20に到達する。
【0031】
汽水分離器20では、水蒸気中の水滴が取り除かれ、蒸気ヘッダ30に送られる。なお、ここで取り除かれた水滴は、熱交換器内で水蒸気とならなかった水とともにホットウェルタンク90に送られる。
【0032】
汽水分離器20により水滴が除かれた蒸気は、さらに蒸気ヘッダ30にて水と蒸気に分けられる。ここで、本例における蒸気ヘッダ30には、排水機能を有したトラップ装置(スチームトラップ)を備える。また、蒸気ヘッダ30は、複数の火葬炉(例えば、第二火葬炉)からの蒸気の供給を受けることができるものとする。
【0033】
蒸気ヘッダで水分が取り除かれた蒸気は、発電機40に送られる(図1における符号V)。なお、このとき蒸気ヘッダにより取り除かれた水分は、ホットウェルタンク90に送られる(図1における符号W)。本例における発電機40は、蒸気タービンを備え(図示せず)、蒸気ヘッダ30から送られてきた蒸気により蒸気タービンが駆動されることにより発電を行う。
【0034】
蒸気タービンを駆動するのに利用された後の蒸気(低圧の蒸気)は、冷却塔60から冷却水(または冷気)の供給を受ける復水器50に送られ、凝縮されて水となる。そして、この水はホットウェルタンク90に送られる。
【0035】
ホットウェルタンク90に送られた水は、給水ポンプ70から送られた水とともに火葬炉10内の熱交換器に送られる。なお、給水ポンプ70からホットウェルタンク90に送られる水は、自動軟水器80により軟水化処理される。
【0036】
以上に説明したように、上述した実施の形態では、発電システム100が、水管(例えば、火葬炉熱交換器15)と、水管の少なくとも1部分が焼却室内に配設された焼却炉(例えば、火葬炉10)と、焼却炉に生じた熱により水管内において気化した水蒸気により駆動する発電機40とを含む構成としているので、焼却炉で発生した熱エネルギを有効に利用できるようになる。
【0037】
また、発電システムにおいて、焼却炉そのものをボイラ化しているので、焼却炉を熱源として外部のボイラに熱を伝える場合に比べて熱効率を向上させることができるようになる。
【0038】
また、焼却炉にて熱交換を行うことにより、焼却炉から排出されるガスを冷却することができるので、従来排ガスの強制冷却を行うために必要とされていた設備(例えば、容量の大きな排風機など)を小規模化できるようになる。
【0039】
また、上述した実施の形態では、発電システム100が含む焼却炉が、棺を焼却する主焼却炉11と、主焼却炉11に連通して設置された再焼却炉(例えば、再燃炉12)とを有する火葬炉10であり、主焼却炉11と再焼却炉のいずれかの焼却室内(例えば、再燃炉12の再燃焼室内)に水管(例えば、火葬炉熱交換器15)が配設された構成としているので、水管の耐久力を考慮して再燃炉のみに水管を配設するなど、火葬炉に発電システムを取り入れる際の自由度を高めることができるようになる。なお、例えば再燃炉12が、バーナー14ではなく触媒を用いる燃焼処理を行うものであっても、再燃焼室に流れる排ガスは高温であるため、水管を配設可能な焼却室としての役割を果たすことができる。
【0040】
また、上述した実施の形態では、火葬炉10は、火葬炉10にて発生した排ガスを火葬炉10の外部へ排出する排出部(例えば、煙導部13)を有し、排出部に水管(例えば、煙導熱交換器16)が配設された構成としているので、排出部においても熱交換を行うことができ、火葬炉における排熱の利用割合を高めることができるようになる。
【0041】
また、熱交換後の排ガスは熱交換前に比べて一定温度降下状態となる。よって、排ガスを所定の温度まで冷却するために必要な冷却空気導入量が減少するので、集塵装置や排気装置が小型化できるようになる。これにより、火葬炉の建設コストを従来方法に比し安価とすることができるようになる。
【0042】
なお、上述した実施の形態では特に言及していないが、熱交換器(火葬炉熱交換器15と煙導熱交換器16)は、火葬炉10や煙導部13の内壁に取り付けられた構成としてもよいし、壁部の内部や外壁などに設けられる構成としてもよい。
【0043】
また、熱交換器は、例えば図4および図5に示すように、火葬炉10内の任意の位置に1つ以上設けられた構成としてもよい。また、熱交換器は、発電システム100を備えた火葬設備に必要な発電量や設置コストなどに応じて、配設位置が選択されることが好ましい。
【0044】
すなわち、例えば、主焼却炉11の主焼却室を構成する壁部に取り付けた火葬炉熱交換器15A(図4および図5参照)は、他の位置(すなわち、主焼却炉11の焼却室内よりも低温となる位置)に取り付けられた火葬炉熱交換器15に比べて交換する熱量が大きくなる反面、火葬炉熱交換器15A自体の耐用期間が短くなる。
【0045】
また、火葬炉熱交換器15を複数設けた場合、火葬炉10の熱から得られる蒸気の量は増加するが、火葬炉熱交換器15の取替え作業に要する作業負担などが増大してしまう。
【0046】
また、再燃炉12の再燃焼室と煙導部13との接続部分近傍に火葬炉熱交換器15を設けた場合、他の位置(すなわち、火葬炉熱交換器15Aの配設位置のように高温となる位置)に取り付けられた火葬炉熱交換器15に比べて、火葬炉熱交換器15自体の耐用期間を長くすることができる。
【0047】
また、上述した実施の形態では、蒸気ヘッダ30にて、複数の火葬炉10からの蒸気の供給を受け付けることについて簡単に言及したが、排出部(例えば、煙導部13)が、他の火葬炉10の排出部と連結するための連結部を有し、発電部40が、連結部により連結された複数の火葬炉10に配設された水管(例えば、火葬炉熱交換器15)内において気化した水蒸気により駆動する構成としてもよい。
【0048】
このような構成とすることにより、複数の火葬炉を有する火葬場において、1つ(または少数)の汽水分離器20、蒸気ヘッダ30、および発電機40を有効に利用することができるようになる。また、1つの火葬炉から得られるエネルギが発電機を駆動させるのに不十分である場合に、各火葬炉に配設された熱交換器により発生する蒸気を集合させて、発電機を駆動するために必要なエネルギを与えることができるようになる。
【0049】
また、上述した実施の形態では、火葬炉10が、焼却室内(例えば、主焼却炉11の主焼却室内)に水管(例えば、火葬炉熱交換器15)が配設された焼却炉(例えば、主焼却炉11)と、焼却炉に生じた熱により水管内において気化した水蒸気を、水蒸気により駆動する発電機40を有する発電システム100に供給する蒸気供給部(例えば、水管)とを含む構成としているので、火葬炉を備えた火葬場に蒸気で駆動する発電システムを組み込むことができ、火葬の際に生じる熱(すなわち、熱エネルギ)を有効に利用することできるようになる。
【0050】
なお、上述した発電システムは、火葬炉に限らず、焼却処理を行う各種焼却(燃焼)炉に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、焼却処理で発生した熱エネルギを有効に利用可能な焼却炉を提供するのに有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 火葬炉
11 主焼却炉
12 再燃炉
13 煙導部
14 バーナー
15 火葬炉熱交換器
16 煙導熱交換器
17 台車
20 汽水分離器
30 蒸気ヘッダ
40 発電機
50 復水器
60 冷却塔
70 給水ポンプ
80 自動軟水器
90 ホットウェルタンク
100 発電システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水管と、
該水管の少なくとも1部が焼却室内に配設された焼却炉と、
該焼却炉に生じた熱により前記水管内において気化した水蒸気により駆動する発電機とを含む
ことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記焼却炉は、
棺を焼却する主焼却炉と、
該主焼却炉に連通して設置された再焼却炉とを有する火葬炉であり、
前記主焼却炉と前記再焼却炉のいずれかの焼却室内に前記水管が配設された
請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記火葬炉は、火葬炉にて発生した排ガスを火葬炉の外部へ排出する排出部を有し、
該排出部に前記水管が配設された
請求項2記載の発電システム。
【請求項4】
前記排出部は、他の火葬炉の排出部と連結するための連結部を有し、
前記発電部は、前記連結部により連結された複数の火葬炉に配設された前記水管内において気化した水蒸気により駆動する
請求項3記載の発電システム。
【請求項5】
焼却室内に水管が配設された焼却炉と、
該焼却炉に生じた熱により前記水管内において気化した水蒸気を、水蒸気により駆動する発電機を有する発電システムに供給する蒸気供給部とを含む
ことを特徴とする火葬炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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