説明

発電体

【課題】固体酸化物燃料電池などの発電体において、ガスシール性、通電性、絶縁性の要件を満足し、構造が簡単で、製造も容易である発電体を提供する。
【解決手段】燃料極16と電解質層15と空気極14とが積層されてなるセル11Bを、リード部13Aとインターコネクタ12A、12Bを用いて複数個直列に接続して接合し、リード部を導電層19とガス非透過性絶縁層20との積層構造とし、リード部13Aのガス非透過性絶縁層20とセルの電解質層15とを焼成して接合し、セルの燃料極16と一方のインターコネクタ12Bとをロウ付して接合し、セルの空気極14をリード部13Aを介して他方のインターコネクタ12Aにロウ付けして接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体酸化物燃料電池(SOFC)などの燃料電池を構成する発電体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池などの燃料電池では、電池本体となるセルを複数個直列に接続集合してスタックとし、このスタックをさらに複数個並列に接続集合してモジュールとして使用に供されることがある。
固体酸化物燃料電池のセルは、基本的には、多孔質の燃料極と電解質層と多孔質の空気極とが積層された構造となっており、燃料極側にメタンなどの炭化水素からなる燃料ガスを流し、空気極側に酸化剤となる空気を流し、800〜1000℃程度の高温において発電するようになっている。
【0003】
複数個のセルを直列に接続集合する場合には、個々のセルをインターコネクタと呼ばれる部材を用いて接合することが行われている。
このインターコネクタを用いて接合する場合には、その接合構造にはガスシール性、導電性、絶縁性が求められる。
【0004】
ガスシール性とは、接続されたセルにおいて燃料ガスと空気とが分離され両者が混合しないことであり、通電性とは、一方のセルの空気極と他方のセルの燃料極とが電気的に接続されて直列接続が行われることである。絶縁性とは、一方のセルの空気極と他方のセルの燃料極とが電気的に接続される以外の電気的接続が生じないことである。
【0005】
特表2008−522370号公報には、このような酸化物燃料電池などの燃料電池の複数のセルを接続した発電体が開示されている。
図5は、この先行発明において開示された発電体を示す概略断面図である。
図5において、符号1は第1多孔質電極、2は電解質、3は第2多孔質電極を示し、これらで1個のセル10を構成している。
なお、このセル10は、全体構造が円筒状となっており、その内部空間に燃料ガスまたは空気が、その外側空間には空気または燃料ガスが流れるようになっている。
【0006】
このセル10A(10B)はその端面において他のセル10B(A)と金属ジョイントハウジング4を介して接続されている。金属ジョイントハウジング4は断面形状が略I字状の複雑な形状の円環体である。
一方のセル10Aの第1多孔質電極1はロウ付け部5によりジョイント部材4の外周部に電気的かつ機械的に接続固定されている。一方のセル10Aの第2多孔質電極3の端部はワッシャー状の絶縁部材6を介してロウ付け部7、8により金属ジョイントハウジング4に電気的に絶縁された状態で接合されている。
他方のセル10Bの電解質2および第2多孔質電極3の端部はロウ付け部9により金属ジョイントハウジング4に電気的かつ機械的に接続固定されている。他方のセル10Bの第1多孔質電極1は金属ジョイントハウジング4と離間して絶縁されている。
【0007】
この接合構造にあっては、上述の要件であるガスシール性、導電性、絶縁性を満たすものである。
しかしながら、この先行発明における接合構造にあっては、以下のような不都合がある。
実際のセル10は、その外径が1〜3cm程度であり、その厚みも1mm程度と薄いものである。このため、金属ジョイントハウジング4の寸法も小さくなり、断面形状も複雑である。
【0008】
したがって、ロウ付け作業、特にロウ付け部5、7を形成することが極めて困難になる。例えば、ロウ付け部5、7のロウ付け量が多くなると、ロウ付け部5とロウ付け部7が接続してしまい、セル10Aの第1多孔質電極1と第2多孔質電極3とが短絡してしまう。ロウ付け部7、8の間においても同様にセル10Aの第2多孔質電極3と金属ジョイントハウジング4とが短絡してしまう。さらに、ロウ付け部9においても同様に他方のセル10Bの第1多孔質電極1と金属ジョイントハウジング4とが短絡してしまう。
【0009】
これらを加味したうえで、ロウ付け後のロウ付け部7、8の視認は不可能であることから、絶縁及びガスシールを一度に正確かつ確実に行わなければならない。
さらに、全体の寸法が小さく構造が複雑であるので、セル10自体は勿論、金属ジョイントハウジング4を高精度で作製する必要があり、製造コストが嵩むことになる。
【0010】
また、特開2002−289249号公報には、別のタイプの発電体が開示されている。ここには、1個のセルを並列に接続する際に好適な形態が示されている。
このものは、図6に示すように、円筒状の支持体402の外周表面に順次第1の電極404、電解質406、第2の電極408が積層されて管状セルとされ、これの支持体402が接続部材410を介して第1の集電板414に接続され、第2の電極408が接続部材412を介して第2の集電板416に接続されている。
【0011】
この先行発明の発電体では、接続部材410が支持体402に接合されているので、接続部材410と第1の電極404との間のわずかな隙間からガスが漏れてしまう恐れがあり、ガスシール性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2008−522370号公報
【特許文献2】特開2002−289249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって、本発明における課題は、固体酸化物燃料電池などの発電体において、ガスシール性、通電性、絶縁性の要件を満足し、構造が簡単で、製造も容易である発電体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、第1電極と電解質層と第2電極とが積層されてなるセルを、リード部とインターコネクタを用いて複数個直列に接続して接合した発電体であって、
リード部が導電層とガス非透過性絶縁層との積層構造とされ、
リード部のガス非透過性絶縁層とセルの電解質層とが接合されており、
セルの第1電極と一方のインターコネクタとがロウ付けされて接合され、セルの第2電極がリード部を介して他方のインターコネクタにロウ付けされて接合されていることを特徴とする発電体である。
【0015】
請求項2にかかる発明は、第1電極と電解質層と第2電極とが積層されてなるセルを、リード部とインターコネクタに接合した発電体であって、
リード部が導電層とガス非透過性絶縁層との積層構造とされ、
リード部のガス非透過性絶縁層とセルの電解質層とが接合されており、
セルの第1電極と一方のインターコネクタとがロウ付けされて接合され、セルの第2電極がリード部を介して他方のインターコネクタにロウ付けされて接合されていることを特徴とする発電体である。
【0016】
請求項3にかかる発明は、セルが円筒状であって、インターコネクタがワッシャー状であることを特徴とする請求項1または2記載の発電体である。
請求項4にかかる発明は、前記第1電極の前記電解質に接しない部分に、金属多孔質材料からなる支持体が設けられ、第2電極の前記電解質層に接しない部分に金属多孔質材料からなる集電部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発電体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発電体によれば、平板状の単純な構造のインターコネクタと、導電層とガス非透過性絶縁層との積層構造のリード部を用い、絶縁部材を用いずとも発電体に要求される3つの要件であるガスシール性、導電性、絶縁性が確保できる。
また、発電体の組立を行う際にロウ付け部位が外部から視認できる位置となり、ロウ付け作業が簡単かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の発電体の例を示す側面図である。
【図2】本発明の発電体の例を示す断面図である。
【図3】本発明の発電体の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の発電体の他の例を示す断面図である。
【図5】従来の発電体を示す断面図である。
【図6】従来の発電体の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2は、本発明の発電体の第1の例を示すもので、この発電体は、全体形状が円筒状となっており、図1はその側面図、図2はその周壁を断面視した断面図である。
この例では、第1のセル11Aと第2のセル11Bと第3のセル11Cとの3個のセルが直列に接続されて発電体とされたものを示しており、第1および第3のセル11A、11Cは第2のセル11Bと同一構造であるので、その一部を省略して描いている。
【0020】
第1のセル11Aは第1のインターコネクタ12Aと第1のリード部13Aを介して第2のセル11Bに接続、接合され、第2のセル11Bは第2のインターコネクタ12Bと第2のリード部13Bを介して第3のセル11Cに接続、接合されている。
【0021】
セル11は、全体形状が円筒状であり、その外周側に配された円筒状の厚さ100〜2000μm程度の空気極(第2電極)14とこの空気極14の内側にこれに接して配された円筒状の厚さ10〜30μm程度のイットリア安定化ジルコニアなどのセラミックスからなる緻密でガス非透過性の電解質層15とこの電解質層15の内側にこれに接して配された円筒状の厚さ100〜3000μm程度の燃料極(第1電極)16とからなる積層構造により基本的に構成されている。
【0022】
また、この例のセル11では、空気極14の外側には円筒状の集電部材17が一体に設けられ、燃料極16の内側には円筒状の支持部材18が一体に設けられている。
空気極14、燃料極16、集電部材および支持部材18は、いずれも導電性を有し、かつガスの透過が可能な多孔質の材料で構成されている。
【0023】
インターコネクタ12は、金属などの導電性材料からなる厚さ0.5〜2mm程度の平板なワッシャー(座金)状のものである。
リード部13は、やはり円筒状の形状のもので、その外側に配された導電層19とこの導電層19の内側に配された中間層19aとこの中間層19aの内側に配された緻密で気泡がほとんどないガス非透過性絶縁層20との3層の積層構造で構成されている。
【0024】
導電層19は、金属などの導電性材料からなる多孔質あるいは緻密な材料により構成されている。
中間層19aは、イットリア安定化ジルコニアなどセラミックスからなる多孔質の材料により構成され、これの外側のガス非透過性絶縁層20と導電層19との接着性を高めるとともに、ガス非透過性絶縁層20にピンホールが生成することを防ぐためもので、ガス非透過性絶縁層20を構成するセラミック粒子が導電層19を構成する粒径の大きな金属粒子間の空隙に落ち込むことを防止する。導電層19を構成する金属粒子の粒径が小さい場合には必ずしも必要とされるものではない。
ガス非透過性絶縁層20は、イットリア安定化ジルコニアなどのセラミックスからなり、緻密な層であって内部に気泡がほとんどなく、ガス非透過性で電気絶縁性のものである。このガス非透過性絶縁層20は、セル11の電解質層15とその熱膨張係数がほぼ同じであることが好ましく、したがって同種のセラミックスを用いることが望ましい。
【0025】
リード部13の内面側のガス非透過性絶縁層20は、図2に示すように、その一部がセル部11の電解質層15と接合されている。この接合は、両者がセラミックスからなることから、後述するように一体焼成により行われる。この接合によりガスシール性が保たれるとともにセル11の電解質層15とリード部13の導電層19とが絶縁されることになって、別部材の絶縁材を用いなくとも絶縁性が確保できる。ガス非透過性絶縁層20と電解質層15の間で、もしガスシール性が保たれなくても、ロウ材23、ロウ材26によりガス非透過性絶縁層20と電解質層15が接合されることから、ガスシール性が保たれる。
【0026】
次に、この例の接合構造について説明する。
図2に示すように、第1のセル11Aの電解質層15、燃料極16および支持部材18の端部は、第1のロウ材21によって第1のインターコネクタ12Aの一方の端面にロウ付けされて機械的に接合され、電気的に接続されている。
第1のインターコネクタ12Aの他方の端面は、第2のロウ材22によって第1のリード部13Aの一方の端部にロウ付けされて機械的に接合され、電気的に接続されている。
【0027】
第1のリード部13Aの他方の端部は、第3のロウ材23によって第2のセル11Bの空気極14と集電部材17との端部にロウ付けされて機械的に接合され、電気的に接続されている。第1リード部13Aのガス非透過性絶縁層20の一部は前述のように第2のセル11Bの電解質層15と予め接合されている。また、第3のロウ材23は、ガス非透過性絶縁層20と電解質層15とを接合し、ガスシール性を保つ役割を併せ持つ。
第2のセル11Bの電解質層15、燃料極16および支持部材18の端部は、第4のロウ材24によって第2のインターコネクタ12Bの一方の端面にロウ付けされて機械的に接合され、電気的に接続されている。
第2のインターコネクタ12Bの他方の端面は、第5のロウ材25によって第2のリード部13Bの一方の端部にロウ付けされて機械的に接合され、電気的に接続されている。
【0028】
第2のリード部13Bの他方の端部は、第6のロウ材26によって第3のセル11Cの空気極14と集電部材17との端部にロウ付けされて機械的に接合され、電気的に接続されている。第2リード部13Bのガス非透過性絶縁層20の一部は前述のように第3のセル11Cの電解質層15と予め接合されている。また、第6のロウ材26は、ガス非透過性絶縁層20と電解質層15とを接合し、ガスシール性を保つ役割を併せ持つ。
以下、同様にして各セル11がインターコネクタ12とリード部13により接合、接続されている。
【0029】
この接合に際して、第1(第2)のインターコネクタ12A(12B)と第2(第3)のセル11B(11C)の電解質層15、燃料極16および支持部材18の端部との間には空間が形成され、同時に電解質層15の端部が第1のリード部13Aのガス非透過性絶縁層20に接合されており、これにより第2(第3)のセル11B(11C)の電解質層15が第1(第2)のインターコネクタ12A(12B)に短絡しないように構成されている。
【0030】
このような発電体では、リード部13の内側部分がガス非透過性絶縁層20により構成されているので、空気極14側の空気が燃料極16側に透過することがなく、燃料極16側の燃料ガスが空気極14側に透過することがなくなって、ガスシール性が保たれる。
また、電解質層15がインターコネクタ12と絶縁されているので、電流がセル11の燃料極16から電解質層15を経て空気極14を通り、リード部13を介してインターコネクタ12に流れ、さらに他のセル11の燃料極16に流れるようになって、通電性と絶縁性が保たれる。
また、この発電体では、接合された複数のインターコネクタ12、12・・の両端に位置する2つのインターコネクタ12、12が発電体の出力端となって機能する。
【0031】
次に、この例の発電体の製造方法の一例を説明する。
1)セル11の中間製品の作製
支持部材18となる材料粉末と気泡形成剤とバインダーとの混合物を冷間静水圧プレス成形法によって、円筒体に成形し、還元炉内で仮焼する。この仮焼物の表面に燃料極16となる材料粉末と気泡形成剤とバインダーとの混合物の分散液を塗布し(スラリーコート法)、仮焼して第1中間層としたのち、その表面に電解質層15となる粉末材料の分散液を塗布し、支持部材18、燃料極16となる第1中間層および電解質層15からなる三層構造の中間製品とする。
【0032】
2)リード部13の作製
導電層19となる材料粉末と気泡形成剤とバインダーとの混合物を冷間静水圧プレス成形法によって円筒状に成形し、還元炉内で仮焼する。この仮焼物の内面に中間層19aとなる材料粉末と気泡形成剤とバインダーとの混合物の分散液を塗布し、還元炉内で仮焼する。さらにこの中間層19aの内面にガス非透過性絶縁層20となる材料粉末を分散した分散液を塗布する。ガス非透過性絶縁層20となる材料粉末には、その粒径が小さいもの、例えば平均粒径0.1μm以下の粒径を有する粉末が用いられ、焼成後の状態が緻密でガス非透過性となるようになされる。
このリード部13の作製に当たっては、その内径とセル11の中間製品の外径とがほぼ一致するようにする。
【0033】
3)セル11の中間製品とリード部13との接合
リード部13をセル11の中間製品の外側に嵌め込み、リード部13の一部が中間製品の外側に位置するように位置を定める。この状態の接合物を還元炉内で一体焼成する。この一体焼成によりリード部13のガス非透過性絶縁層20の一部が電解質層15と接合し一体化される。
4)空気極の形成
一体焼成した接合物の電解質層15の上に空気極14となる材料粉末と気泡生成剤とバインダーとの混合物の分散液を塗布し、第2中間層とする。
【0034】
5)集電部材の作製と取付
集電部材17となる材料粉末と気泡形成剤とバインダーとの混合物を冷間静水圧プレス成形法によって円筒状に成形し、還元炉内で仮焼する。
この仮焼物を前記接合物の外側に嵌め込み、前記第2中間層の外面に来るようにかつ前記リード部13の導電層20との間に空間を配して配置し、還元炉内で再度焼成する。この焼成時に、前記集電部材17となる仮焼物が収縮して、空気極となる同時に焼成された第2中間層に圧着接合される。
【0035】
6)触媒の含浸(1回目)
ついで、前記焼成物の内面の第1中間層にニッケル、セリア系酸化物(サマリアドープセリア、ガドリウムドープセリア)、コバルトなどを含浸して、これを燃料極16とする。
7)発電体の組立
別途用意したワッシャー状のインターコネクタ12と前記焼成物とをロウ付けして、図2に示すような形態に接合する。
8)触媒の含浸(2回目)
最後に、前記発電体の集電部材の内側の第2中間層にLaSrMnO、LaCoO、LaSrCoO、LaSrCoFeO、LaNiFe、NiCrO、セリア系酸化物などの触媒を含浸して、これを空気極14とする。
【0036】
発電体の作製に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、従来から固体酸化物燃料電池に用いられている公知の各種材料を広く用いることができ、以下にその一例を挙げる。
支持部材18となる材料としては、フェライト系ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル−鉄合金などが挙げられる。
燃料極16は、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、セリア系酸化物、ニッケル/イットリア安定化ジルコニアのサーメット、ニッケル/スカンジア安定化ジルコニアのサーメット、ニッケル/セリア系酸化物のサーメット、銅/イットリア安定化ジルコニアのサーメット、銅/スカンジア安定化ジルコニアのサーメット、銅/セリア系酸化物のサーメット、イットリア安定化ジルコニア/セリア系酸化物のサーメット、スカンジア安定化ジルコニア/セリア系酸化物のサーメットなどから構成される多孔質材にニッケル、セリア系酸化物、コバルトなどの触媒を含浸処理して形成される。
電解質層15となる材料としては、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、セリア系酸化物などが挙げられる。
【0037】
空気極14は、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、セリア系酸化物、イットリア安定化ジルコニア/セリア系酸化物のサーメット、スカンジア安定化ジルコニア/セリア系酸化物のサーメットなどから構成される多孔質材にLaSrMnO、LaCoO、LaSrCoO、LaSrCoFeO、LaNiFe、NiCrO、セリア系酸化物などの触媒を含浸処理して形成される。
集電部材17となる材料としては、支持部材18となる材料と同様のものが用いられる。
インターコネクタ12には、フェライト系ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金、鉄合金などが用いられる。
【0038】
導電層19となる材料には、前記セル11の支持部材18を構成する材料と同じものが用いられ、ガス非透過性の絶縁層20となる材料には、前記セル11の電解質層15を構成する材料と同じものでその粒径が小さいものが用いられる。
ロウ材には、銀−銅−チタン合金、TiH、チタン酸アルミニウム、ニッケル−クロム合金などが用いられる。
触媒には、ニッケル、銅、コバルト、LaSrMnO、LaCoO、LaSrCoO、LaSrCoFeO、LaNiFe、NiCrO、セリア系酸化物などが用いられ、これらの水溶性硝酸塩を溶解して触媒溶液とし、これを含浸することで触媒含浸処理が行われる。
【0039】
このような発電体の作製方法では、ロウ付け作業を行う際に、すべての作業が発電体の外側からロウ材を流し込むことで可能になるので、作業が容易であり、所定部位以外の部位にロウ材が流れ込むことがなく、正確なロウ付けが行える。
また、複数あるロウ付け箇所については、そのロウ付け順序は限定されず、適宜変更することができる。さらに、インターコネクタ12とリード部13とをロウ付けしておき、このもののリード部13とセル11とをロウ付けして発電体としてもよい。
【0040】
図3は、上述の発電体の変形例を示すものである。
この例では、リード部13の構造が先の例のものと異なっており、導電層19が金属の緻密な層で構成されている。このものでは、導電層19を例えば金属製パイプや緻密な焼結物のパイプで構成し、このパイプの内面に先と同様にしてガス非透過性絶縁層20を作製すればよい。この例では、インターコネクタ12とリード部13とをロウ付けする際に、導電層19が緻密であるので、溶融したロウ材が導電層19内に流れ込むことがなく、ロウ付け作業が容易となって、不要な短絡が生じることもない。
【0041】
ロウ付け作業の際のロウ材の多孔質材料への流れ込みを防止する観点から、セル11の支持部材18の端部に支持部材18の焼成時に同時に焼成されるようにした緻密な部材を配しておき、この部材とインターコネクタ12との間をロウ付けするようにしてもよい。同様に、リード部13の端部に金属の緻密な部材を配してインターコネクタ12あるいはセル11の空気極14および集電部材17との間をロウ付けするようにしてもよい。
【0042】
図4は、この発明の発電体の他の例を示すもので、この例では1個のセルで1個の発電体が構成されているもので、図2に示した例のものと同一構成部材には同一符号を付してある。
セル11、リード部13、インターコネクタ12は、いずれも先の例のものと同様の構造のものである。セル11の空気極(第2電極)14および集電部材17の一端が第3のロウ材23によりリード部13の一端に接続、接合されている。
【0043】
リード部13の他端は第2のロウ材22により第1のインターコネクタ12Aの一側面に接続、接合されている。
セル11の電解質層15、燃料極16および支持体18の一端が第4のロウ材によって第2のインターコネクタ12Bの一側面に接続、接合されている。
セル11の空気極14および集電部材17の他端と第2のインターコネクタ12Bとの間には空隙が形成されて絶縁されており、電解質層15、燃料極16および支持体18の他端と第1のインターコネクタ12Aとの間には空隙が形成されて絶縁されている。
【0044】
この例の発電体では、第1のインターコネクタ12Aがこの発電体の一方の出力端となり、第2のインターコネクタ12Bが他方の出力端となって、この発電体を複数個並べて2枚の集電板の間に配置することで、並列接続が行えるものとなる。
【0045】
また、この発明では、燃料極と空気極との位置関係を逆転したものでもよい。すなわち、円筒状のセル11の外側に燃料極16を配し、内側に空気極14を配した構成であってもよい。このセルでは、その外側に燃料を流し、内部に空気を流すことになる。
さらに、セルとして円筒状ではなく、平板状のものであってもよく、これに伴いリード部、インターコネクタも平板状とすることになるが、その断面視した断面構造は、図2に描かれたものとほぼ同様になる。
【0046】
この発明の発電体の発電性能を検討した。
初めに、セル11の集電部材17と支持部材18とにそれぞれリード線を接合して、700℃で、水蒸気を含んだ水素と空気を用いて発電させ、両リード線間に生ずる電圧、電流を測定した。
ついで、図2に示した発電体を同条件で発電させ、その第1のインターコネクタ12Aと第2のインターコネクタ12Bとの間に生じる電圧、電流を測定した。
その結果、これらの電圧、電流は完全に一致し、この発電体の接合構造がセルの性能にまったく影響を与えないことが確認できた。
【符号の説明】
【0047】
11(11A、11B、11C)・・セル、12(12A、12B)・・インターコネクタ、13(13A、13B)・・リード部、14・・空気極、15・・電解質層、16・・燃料極、19・・導電層、20・・ガス非透過性絶縁層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と電解質層と第2電極とが積層されてなるセルを、リード部とインターコネクタを用いて複数個直列に接続して接合した発電体であって、
リード部が導電層とガス非透過性絶縁層との積層構造とされ、
リード部のガス非透過性絶縁層とセルの電解質層とが接合されており、
セルの第1電極と一方のインターコネクタとがロウ付けされて接合され、セルの第2電極がリード部を介して他方のインターコネクタにロウ付けされて接合されていることを特徴とする発電体。
【請求項2】
第1電極と電解質層と第2電極とが積層されてなるセルを、リード部とインターコネクタに接合した発電体であって、
リード部が導電層とガス非透過性絶縁層との積層構造とされ、
リード部のガス非透過性絶縁層とセルの電解質層とが接合されており、
セルの第1電極と一方のインターコネクタとがロウ付けされて接合され、セルの第2電極がリード部を介して他方のインターコネクタにロウ付けされて接合されていることを特徴とする発電体。
【請求項3】
セルが円筒状であって、インターコネクタがワッシャー状であることを特徴とする請求項1または2記載の発電体。
【請求項4】
前記第1電極の前記電解質に接しない部分に、金属多孔質材料からなる支持体が設けられ、第2電極の前記電解質層に接しない部分に金属多孔質材料からなる集電部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発電体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−282870(P2010−282870A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136025(P2009−136025)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】