説明

発電装置用異物分離器、燃料電池スタック、排ガス熱交換装置、発電装置システム

【課題】排ガスから異物を確実に分離させることにより、信頼性を高めることができる発電装置用異物分離器を提供すること。
【解決手段】本発明の発電装置用異物分離器40はケーシング41を備える。ケーシング41には、発電装置での発電反応後に発電装置から排出された排ガスが排ガス導入管51を介して導入され、排ガスに含まれる異物が貯留され、異物分離後の排ガスが排ガス排出管52を介して排出される。排ガス導入管51の内端53及び排ガス排出管52の内端54は、ケーシング41内に突出する。そして、排ガス導入管51の内端53は、排ガス排出管52の内端54よりもケーシング41の高さ方向において下方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置から排出された排ガスから異物を分離する発電装置用異物分離器、発電装置用異物分離器を備えた燃料電池スタック、同じく発電装置用異物分離器を備えた排ガス熱交換装置及び発電装置システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電装置の一種である燃料電池として、例えば固体電解質層(固体酸化物層)を備えた固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell ;SOFC)が知られている。このSOFCは、燃料ガスに接する燃料電極層と酸化剤ガスに接する空気電極層とが固体電解質層の両側に配置された発電セルを備えている。また近年では、性能を高めるために、発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックを備えたSOFCが種々提案されている。
【0003】
SOFCは、高温型の燃料電池であり、燃料ガス及び酸化剤ガスを稼動温度(例えば500℃〜1000℃)まで加熱したときにはじめて、燃料ガスと酸化剤ガスとの発電反応によって電力を発生する。そのため、発電後には高温(例えば300℃〜400℃)の排ガスが排出されることになる。そこで、排ガスを熱交換器に導入することにより、排ガスから熱を回収する技術が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−192415号公報(図1等)
【特許文献2】特開2005−268085号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池及び熱交換器が備える配管内や燃料電池と熱交換器とをつなぐ配管内を高温の排ガスが通過すると、配管の内壁面に、酸化物の被膜(いわゆるスケール)が形成される場合がある。ところが、形成された被膜が剥れると、剥れた被膜が異物となって排ガスとともに流れてしまい、排ガス中の異物が管路を塞いでしまうおそれがある。この問題を解決するためには、異物を除去する必要があるが、現状では、有効な対策が何ら提案されていないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、排ガスから異物を確実に分離させることにより、信頼性を高めることができる発電装置用異物分離器を提供することにある。また、第2の目的は、上記の発電装置用異物分離器を備えた好適な燃料電池スタック、排ガス熱交換装置及び発電装置システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、発電装置での発電反応後に前記発電装置から排出された排ガスが排ガス導入管を介して導入され、前記排ガスに含まれる異物が貯留され、異物分離後の排ガスが排ガス排出管を介して排出されるケーシングを備える異物分離器であって、前記排ガス導入管の内端及び前記排ガス排出管の内端は、前記ケーシング内に突出し、前記排ガス導入管の内端が、前記排ガス排出管の内端よりも前記ケーシングの高さ方向において下方に配置されることを特徴とする発電装置用異物分離器がある。
【0008】
手段1に記載の発明によると、排ガス導入管がケーシング内で開口しており、排ガス導入管の断面積よりもケーシングの断面積の方が大きくなっている。よって、排ガス導入管を流れてきた排ガスの流速は、ケーシング内に到達した時点で急激に低下する。これに伴い、排ガスに含まれている異物の速度も低下するため、異物は、重力によってケーシングの底部に落下する。しかも、排ガス導入管の内端及び排ガス排出管の内端は、ケーシングの内面で開口せずにケーシング内に突出しているため、ケーシング内での排ガスの流れをより多方向(例えば、排ガス導入管及び排ガス排出管の突出方向、突出方向とは直交する方向、突出方向とは逆方向など)に広げることができる。よって、排ガスから分離された異物が落下せずに排ガスとともに流れたとしても、異物が排ガス排出管内に到達しにくくなる。さらに、排ガス導入管の内端が排ガス排出管の内端よりもケーシングの高さ方向において下方に配置されるため、排ガスから分離された異物が落下せずに舞い上がったとしても、異物が排ガス排出管内に到達しにくくなる。その結果、排ガスから異物が確実に分離され、異物による管路の閉塞が防止されるため、発電装置用異物分離器の信頼性が高くなる。
【0009】
ここで、発電装置としては、例えば、ZrO系セラミックなどを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)などの燃料電池が挙げられる。なお、燃料電池の稼動温度(即ち、イオンが電解質中を移動可能となる温度)は、燃料電池の種類ごとに異なっている。具体的に言うと、SOFCの稼動温度は700℃〜1000℃程度、PEFCの稼動温度は常温〜90℃程度、MCFCの稼動温度は650℃〜700℃程度、PAFCの稼動温度は150℃〜200℃程度である。
【0010】
また、ケーシングは、板状部材に貫通孔を配置することにより構成され、ケーシングの内部領域を上側領域及び下側領域に区画する仕切板を内部に備え、排ガス導入管の内端が下側領域に配置されるとともに、排ガス排出管の内端が上側領域に配置されることが好ましい。このようにすれば、排ガス導入管の内端から下側領域に導かれた排ガスから異物が分離され、分離された異物が舞い上がったとしても、異物の舞い上がりが仕切板によって遮られるため、上側領域に配置された排ガス排出管の内端に異物がよりいっそう到達しにくくなる。
【0011】
なお、仕切板(板状部材)において貫通孔が占める割合は、例えば15%以上60%以下であることが好ましい。仮に、貫通孔が占める割合が15%未満になると、異物分離後の排ガスが貫通孔を通過しにくくなるため、貫通孔を通過した排ガスを異物分離器の外部に排出しにくくなる。一方、貫通孔が占める割合が60%よりも大きくなると、舞い上がった異物が貫通孔を通過しやすくなるため、排ガス排出管の内端に異物が到達しやすくなる。
【0012】
また、仕切板は、貫通孔が配置される貫通孔形成領域と、貫通孔が存在しない非形成領域とを有し、非形成領域が、排ガス導入管の内端が存在する位置の上方に位置していることが好ましい。このようにすれば、排ガス導入管の内端からケーシング内に放出された排ガス中の異物がそのまま舞い上がったとしても、異物の上側領域への移動は、貫通孔が存在しない非形成領域に接触することによって確実に遮られる。このため、上側領域に配置された排ガス排出管の内端に異物がよりいっそう到達しにくくなる。
【0013】
なお、仕切板は、ケーシングの半分以上となる高さに位置していることが好ましい。さらに、ケーシングの高さ方向の長さは、ケーシングの横方向の長さよりも長いことが好ましい。このようにすれば、ケーシングの底部に異物が堆積した場合であっても、排ガス導入管の内端の上方に位置する排ガス排出管の内端に異物が到達しにくくなる。その結果、異物による管路の閉塞がより確実に防止されるため、発電装置用異物分離器の信頼性がよりいっそう高くなる。なお、排ガス導入管及び排ガス排出管の少なくとも一方は、ケーシングの高さ方向に延びて仕切板を貫通していてもよい。
【0014】
また、排ガス排出管は、排ガス導入管を流れてきた排ガスの進行方向を変更させる方向に延びていてもよい。このようにした場合、排ガス導入管を介してケーシング内に導入された排ガスは、排ガス排出管の内端に到達しにくくなる。即ち、異物分離前の排ガスが排ガス排出管に侵入することを防止できる。さらに、排ガス導入管がケーシングの横方向に沿って延びるとともに、排ガス排出管がケーシングの高さ方向に沿って延びており、排ガス導入管が、ケーシングの側壁に向けて開口していてもよい。このようにすれば、排ガス導入管を流れてきた排ガスの流速が、ケーシング内に到達した時点で低下するだけでなく、ケーシングの側壁に衝突することによってもさらに低下する。その結果、排ガスに含まれている異物の速度がより確実に低下し、異物が重力によってケーシングの底部に確実に落下するため、排ガスから異物を確実に分離することができる。また、排ガス導入管を流れる排ガスの進行方向と直交する方向にケーシングを切断した切断面の面積が、排ガス導入管の断面積の15倍以上に設定されていることが好ましい。仮に、上記の切断面の面積が排ガス導入管の断面積の15倍未満であると、排ガス導入管を流れてきた排ガスがケーシング内に到達したとしても、排ガスの流速をあまり低下させることができなくなる。
【0015】
上記手段1において、ケーシングは、板状部材に貫通孔を配置することにより構成され、ケーシングの内部領域を上側領域及び下側領域に区画する仕切板を内部に備え、排ガス導入管の内端が下側領域に配置されるとともに、排ガス排出管の内端が上側領域に配置され、排ガス排出管は、ケーシングの高さ方向に沿って延びて仕切板を貫通しており、排ガス排出管においてケーシング内に突出する部分の長さは、ケーシングの高さの半分以上に設定されていてもよい。
【0016】
上記手段1において、排ガス導入管がケーシングの横方向に沿って延びるとともに、排ガス排出管がケーシングの高さ方向に沿って延びており、排ガス導入管及び排ガス排出管が、ケーシングの縦方向からみて互いに交差していてもよい。
【0017】
上記手段1において、排ガス導入管がケーシングの横方向に沿って延びるとともに、排ガス排出管がケーシングの高さ方向に沿って延びており、排ガス導入管及び排ガス排出管が、ケーシングの縦方向に互いに離間した状態に配置されることが好ましい。このようにすれば、排ガス導入管や排ガス排出管に異物が付着しにくくなる。なお、排ガス導入管及び排ガス排出管が接触している場合には、接触部分に異物が詰まってしまい、メンテナンスが大変になるおそれがある。
【0018】
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、上記手段1に記載の発電装置用異物分離器と、前記発電装置用異物分離器の前記排ガス導入管の外端に接続される前記発電装置を構成し、電解質層と、前記電解質層の両側に配置される燃料電極層及び空気電極層とを有し、発電反応により電力を発生する発電セルとを備え、前記発電反応後の排ガスが前記排ガス導入管を介して前記発電装置用異物分離器に供給され、前記発電装置用異物分離器によって前記排ガス中に含まれる前記異物が分離されることを特徴とする燃料電池スタックがある。
【0019】
手段2に記載の発明によると、発電装置用異物分離器では、排ガス導入管がケーシング内で開口しており、排ガス導入管の断面積よりもケーシングの断面積の方が大きくなっている。よって、発電セルでの発電反応後に発電装置用異物分離器に供給される排ガスの流速は、排ガス導入管を流れてケーシング内に到達した時点で急激に低下する。これに伴い、排ガスに含まれている異物の速度も低下するため、異物は、重力によってケーシングの底部に落下する。しかも、排ガス導入管の内端及び排ガス排出管の内端は、ケーシングの内面で開口せずにケーシング内に突出しているため、ケーシング内での排ガスの流れをより多方向(例えば、排ガス導入管及び排ガス排出管の突出方向、突出方向とは直交する方向、突出方向とは逆方向など)に広げることができる。よって、排ガスから分離された異物が落下せずに排ガスとともに流れたとしても、異物が排ガス排出管内に到達しにくくなる。さらに、排ガス導入管の内端が排ガス排出管の内端よりもケーシングの高さ方向において下方に配置されるため、排ガスから分離された異物が落下せずに舞い上がったとしても、異物が排ガス排出管内に到達しにくくなる。その結果、排ガスから異物が確実に分離され、異物による管路の閉塞が防止されるため、信頼性が高い発電装置用異物分離器を備えた好適な燃料電池スタックを提供することができる。
【0020】
燃料電池スタックは、発電装置用異物分離器と発電セルとを備えている。燃料電池がSOFCである場合、発電セルを構成する電解質層(固体酸化物層)の形成材料としては、例えばZrO系セラミック、LaGaO系セラミック、BaCeO系セラミック、SrCeO系セラミック、SrZrO系セラミック、CaZrO系セラミックなどがある。
【0021】
また、発電セルを構成する燃料電極層は、発電セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料電極層の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、金属(Ni、Feなど)との混合物が挙げられる。また、燃料電極層の形成材料としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料やそれらの合金が挙げられる。なお、金属材料(または合金)とセラミック材料との混合物(サーメットなど)を選択してもよい。さらに、金属材料(NiやFeなど)の酸化物とセラミック材料との混合物を選択してもよい。
【0022】
発電セルを構成する空気電極層は、発電セルにおける正電極として機能する。ここで、空気電極層の形成材料としては、例えば、金属材料、金属の酸化物、金属の複合酸化物などを挙げることができる。金属材料の好適例としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等やそれらの合金などがある。金属の酸化物の好適例としては、例えば、La、Sr、Ce、Co、Mn、Feの酸化物(La、SrO、Ce、Co、MnO、FeO)などがある。金属の複合酸化物の好適例としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La1−xSrCoO系複合酸化物、La1−xSrFeO系複合酸化物、La1−xSrCo1−yFe系複合酸化物、La1−xSrMnO系複合酸化物、Pr1−xBaCoO系複合酸化物、Sm1−xSrCoO系複合酸化物)などがある。
【0023】
上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、上記手段1に記載の発電装置用異物分離器を備え、前記発電装置用異物分離器の前記排ガス排出管の外端に接続され、前記発電装置用異物分離器から前記排ガス排出管を介して供給された前記排ガスと熱交換媒体との間で熱交換を行うことを特徴とする排ガス熱交換装置がある。
【0024】
手段3に記載の発明によると、発電装置用異物分離器では、排ガス導入管がケーシング内で開口しており、排ガス導入管の断面積よりもケーシングの断面積の方が大きくなっている。よって、排ガスの流速は、排ガス導入管を流れてケーシング内に到達した時点で急激に低下する。これに伴い、排ガスに含まれている異物の速度も低下するため、異物は、重力によってケーシングの底部に落下する。しかも、排ガス導入管の内端及び排ガス排出管の内端は、ケーシングの内面で開口せずにケーシング内に突出しているため、ケーシング内での排ガスの流れをより多方向(例えば、排ガス導入管及び排ガス排出管の突出方向、突出方向とは直交する方向、突出方向とは逆方向など)に広げることができる。よって、排ガスから分離された異物が落下せずに排ガスとともに流れたとしても、異物が排ガス排出管内に到達しにくくなる。さらに、排ガス導入管の内端が排ガス排出管の内端よりもケーシングの高さ方向において下方に配置されるため、排ガスから分離された異物が落下せずに舞い上がったとしても、異物が排ガス排出管を介して排ガス熱交換装置に到達しにくくなる。その結果、排ガスから異物が確実に分離され、発電装置用異物分離器と排ガス熱交換装置とをつなぐ管路が異物によって塞がれにくくなるため、信頼性が高い発電装置用異物分離器を備えた好適な排ガス熱交換装置を提供することができる。
【0025】
上記課題を解決するための別の手段(手段4)としては、上記手段1に記載の発電装置用異物分離器と、前記発電装置用異物分離器の前記排ガス導入管の外端に接続される前記発電装置を構成し、電解質層と、前記電解質層の両側に配置される燃料電極層及び空気電極層とを有する発電セルを備え、前記発電セルでの発電反応により電力を発生する燃料電池スタックと、前記発電装置用異物分離器の前記排ガス排出管の外端に接続され、前記発電装置用異物分離器から前記排ガス排出管を介して供給された前記排ガスと熱交換媒体との間で熱交換を行う排ガス熱交換装置とを備え、前記発電反応後の排ガスが前記排ガス導入管を介して前記発電装置用異物分離器に供給され、前記発電装置用異物分離器によって前記排ガス中に含まれる前記異物が分離されることを特徴とする発電装置システムがある。
【0026】
手段4に記載の発明によると、発電装置用異物分離器では、排ガス導入管がケーシング内で開口しており、排ガス導入管の断面積よりもケーシングの断面積の方が大きくなっている。よって、発電セルでの発電反応後に発電装置用異物分離器に供給される排ガスの流速は、排ガス導入管を流れてケーシング内に到達した時点で急激に低下する。これに伴い、排ガスに含まれている異物の速度も低下するため、異物は、重力によってケーシングの底部に落下する。しかも、排ガス導入管の内端及び排ガス排出管の内端は、ケーシングの内面で開口せずにケーシング内に突出しているため、ケーシング内での排ガスの流れをより多方向(例えば、排ガス導入管及び排ガス排出管の突出方向、突出方向とは直交する方向、突出方向とは逆方向など)に広げることができる。よって、排ガスから分離された異物が落下せずに排ガスとともに流れたとしても、異物が排ガス排出管内に到達しにくくなる。さらに、排ガス導入管の内端が排ガス排出管の内端よりもケーシングの高さ方向において下方に配置されるため、排ガスから分離された異物が落下せずに舞い上がったとしても、異物が排ガス排出管を介して排ガス熱交換装置に到達しにくくなる。その結果、排ガスから異物が確実に分離され、発電装置用異物分離器と排ガス熱交換装置とをつなぐ管路が異物によって塞がれにくくなるため、信頼性が高い発電装置用異物分離器を備えた好適な発電装置システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態における発電装置システムの構成を示すブロック図。
【図2】発電装置用異物分離器及び排ガス熱交換装置を示す概略断面図。
【図3】仕切板を示す概略平面図。
【図4】他の実施形態における発電装置用異物分離器を示す概略断面図。
【図5】他の実施形態における発電装置用異物分離器を示す概略断面図。
【図6】他の実施形態における発電装置用異物分離器を示す概略断面図。
【図7】他の実施形態における発電装置用異物分離器を示す概略断面図。
【図8】他の実施形態における発電装置用異物分離器を示す概略断面図。
【図9】他の実施形態における発電装置用異物分離器を示す概略断面図。
【図10】他の実施形態における仕切板を示す概略平面図。
【図11】他の実施形態における仕切板を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を発電装置システム1に具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
図1に示されるように、発電装置システム1は、燃料電池10(発電装置)、発電装置用異物分離器(以下「異物分離器」という)40及び排ガス熱交換装置70を備えている。燃料電池10を構成する燃料電池スタック11には、燃料電池スタック11に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路101が接続されている。燃料ガス供給流路101は、燃料電池スタック11の燃料供給経路(図示略)に連通している。また、燃料ガス供給流路101上には、電磁弁102、脱硫器103及び燃料ポンプ104が設置されている。電磁弁102は、燃料ガス供給流路101を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁102は、開状態に切り替えられた際に、燃料ガスとなる原料ガスを下流側に供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の電磁弁102は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。脱硫器103は、上流側から供給されてきた原料ガスを脱硫し、脱硫した原料ガスを下流側に供給するようになっている。燃料ポンプ104は、脱硫器103の下流側に配置されており、脱硫器103によって脱硫された原料ガスを燃料電池スタック11側に供給するようになっている。
【0030】
また図1に示されるように、燃料電池スタック11には、燃料電池スタック11に空気を供給する空気供給流路111が接続されている。空気供給流路111は、燃料電池スタック11の空気供給経路(図示略)に連通している。また、空気供給流路111上には、空気ポンプ112が設置されている。空気ポンプ112は、外部から取り入れた空気を燃料電池スタック11側の予熱器20に供給するようになっている。
【0031】
一方、原料ガスは、改質器(図示略)によって燃料ガス(水素ガス)に改質された後、燃料電池スタック11に供給される。それとともに、予熱器20は、空気ポンプ112から供給された空気を燃料電池スタック11からの熱によって加熱し、加熱した空気を燃料電池スタック11に供給するようになっている。なお、発電後の使用済みガスなどの排ガスは、排出流路113を介して燃料電池スタック11から異物分離器40に排出される。また、排ガスは高温(本実施形態では300〜400℃)であるため、排ガスが流れる異物分離器40及び排ガス熱交換装置70は、断熱容器114(図1参照)内に収容されて保護されている。
【0032】
図1に示されるように、燃料電池10を構成する起動用バーナー30には、起動用バーナー30に空気及び着火用ガスを供給するガス供給流路121が接続されている。ガス供給流路121は、上流側において、空気供給管122及びガス供給管123に分岐している。空気供給管122上には、空気ブロワ124が設置されている。空気ブロワ124は、外部から取り入れた空気を起動用バーナー30に供給するようになっている。一方、ガス供給管123上には、電磁弁125が設置されている。電磁弁125は、ガス供給管123を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁125は、開状態に切り替えられた際に、下流側に着火用ガスを供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の電磁弁125は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0033】
そして、空気供給管122とガス供給管123との接続部分には、比例弁126が設置されている。比例弁126は、空気供給管122から起動用バーナー30に供給される空気の量と、ガス供給管123から起動用バーナー30に供給される着火用ガスの量との割合(空燃比)を調整するようになっている。なお、起動用バーナー30に送り込まれた空気及び着火用ガスは、図示しない着火源によって着火され、断熱容器127(図1参照)内を加熱するようになっている。
【0034】
また図1に示されるように、燃料電池10は、システム全体を制御する制御装置131を備えている。制御装置131は、CPU、ROM、RAM及び入出力回路等により構成されている。CPUは、電磁弁102,125、燃料ポンプ104、空気ポンプ112、空気ブロワ124及び比例弁126に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0035】
なお、本実施形態の燃料電池10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池10は、発電反応により電力を発生する燃料電池スタック11と、燃料電池スタック11の補助器である予熱器20と、燃料電池スタック11を加熱する起動用バーナー30とを備えている。なお、予熱器20は、燃料電池スタック11へ供給するガスを排ガス(例えば、発電後の残余燃料ガスをさらに燃焼させたガス)の熱で加熱する機能、及び、燃料電池スタック11から放出された熱を吸収する機能のうち少なくとも一方の機能を有している。また、燃料電池スタック11、予熱器20及び起動用バーナー30は、断熱容器127内に収容されている。
【0036】
図1に示されるように、予熱器20は、燃料電池スタック11の側面に近接して配置されている。予熱器20は、耐熱性に優れた材料(例えばステンレス)によって形成され、縦10mm×横180mm×高さ225mmの略直方体状をなしている。また、予熱器20は、燃料電池スタック11での発電反応時に燃料電池スタック11から発生する熱によって、燃料電池スタック11への供給前に燃料ガス(本実施形態では炭化水素ガス)及び空気(酸化剤ガス)の温度を上昇させる機能(予熱を行う機能)を有している。そして、予熱器20は、加熱された燃料ガス及び空気を燃料電池スタック11に供給するようになっている。なお、本実施形態の予熱器20は、上下を金属板で挟まれた空間内に多数の金属製フィンからなる熱交換層(図示略)が配置されるとともに、熱交換層の外周が金属板で包囲された装置である。
【0037】
図1に示されるように、起動用バーナー30は、略平板状をなし、燃料電池スタック11及び予熱器20を下方から支持するようになっている。起動用バーナー30は、燃料電池スタック11を稼動温度(例えば700℃)まで加熱するようになっている。
【0038】
また、燃料電池スタック11は、縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体状をなしている。燃料電池スタック11は、発電の最小単位である略矩形板状の発電セル(図示略)を複数積層してなるものである。発電セルは、セパレータ、空気電極層、電解質層及び燃料電極層などを積層することによって構成されている。
【0039】
セパレータは、ステンレスなどの導電性材料によって矩形状に形成されており、中央部に矩形状の開口部を有している。また、電解質層は、例えばZrO2などのセラミック材料(酸化物)によって矩形板状に形成されている。電解質層は、セパレータの下面に固定されるとともに、セパレータの開口部を塞ぐように配置されている。電解質層は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。また、電解質層の上面には、燃料電池スタック11に供給された空気に接する空気電極層が貼付され、電解質層の下面には、同じく燃料電池スタック11に供給された燃料ガスに接する燃料電極層が貼付されている。即ち、空気電極層及び燃料電極層は、電解質層の両側に配置されている。また、空気電極層は、セパレータの開口部内に配置され、セパレータと接触しないようになっている。なお、空気電極層は、金属の複合酸化物によって矩形板状に形成され、燃料電極層は、金属材料とセラミック材料との混合物(本実施形態ではサーメット)によって同じく矩形板状に形成されている。
【0040】
なお、本実施形態の発電セルでは、セパレータの下方に燃料室が形成されるとともに、セパレータの上方に空気室が形成されるようになっている。また、燃料電池スタック11は、各発電セルの燃料室に燃料ガスを供給する燃料供給経路(図示略)と、燃料室から燃料ガスを排出する燃料排出経路(図示略)とを備えている。よって、燃料ガスは、燃料供給経路を通過して燃料室に供給され、燃料排出経路を通過して燃料室から排出される。さらに、燃料電池スタック11は、各発電セルの空気室に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室から空気を排出する空気排出経路(図示略)とを備えている。よって、空気は、空気供給経路を通過して空気室に供給され、空気排出経路を通過して空気室から排出される。
【0041】
例えば、断熱容器127内を稼動温度に加熱した状態で、燃料供給経路から燃料室に燃料ガスを導入するとともに、空気供給経路から空気室に空気を導入する。その結果、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とが電解質層を介して反応(発電反応)し、空気電極層を正極、燃料電極層を負極とする直流の電力が発生する。
【0042】
図1,図2に示されるように、異物分離器40は、燃料電池10での発電反応後に排出流路113を介して燃料電池スタック11から排出された排ガスから、異物を分離する機能を有している。なお、異物は、排出流路113を構成する配管の内壁面などに形成された酸化物の被膜(いわゆるスケール)である。異物分離器40を構成するケーシング41は、耐熱性に優れたステンレスなどの金属材料によって略直方体状に形成され、天井部42、底部43、及び、4つの側壁44を有している。なお、ケーシング41の高さ方向の長さ(即ち、側壁44の縦の長さ)は、ケーシング41の横方向の長さ(即ち、側壁44の横の長さ)よりも長くなっている。
【0043】
図2に示されるように、ケーシング41の底部43には、同底部43に堆積した異物を抜き取るための異物除去用キャップ45が開閉可能に設けられている。詳述すると、異物除去用キャップ45は、耐熱性に優れた金属板(アルミニウム板など)の折曲加工によって形成され、内周部に雌ネジ部を有している。また、底部43には、外周部に雄ネジ部を有する口金部(図示略)が設けられている。そして、異物除去用キャップ45の雌ネジ部を口金部の雄ネジ部に螺合させることにより、口金部が閉鎖されるようになっている。なお、異物除去用キャップ45は、燃料電池10の運転時に口金部を閉鎖することにより、ケーシング41外への異物の流出を防止するようになっている。また、異物除去用キャップ45は、燃料電池10の運転停止時に口金部を開放することにより、底部43に堆積した異物の排出が可能となる。なお、異物除去用キャップ45の代わりに、ネジ部を有しない蓋部や栓などを用いるようにしてもよい。
【0044】
図2,図3に示されるように、ケーシング41は、同ケーシング41の内部領域を上側領域A1及び下側領域A2に区画する仕切板61を内部に備えている。具体的に言うと、仕切板61は、ケーシング41の3分の2となる高さに位置している。また、仕切板61は、耐熱性に優れたステンレスなどの金属材料によって平面視矩形状に形成され、スリット状の貫通孔63が配置される貫通孔形成領域B1と、貫通孔63が存在しない非形成領域B2とを有している。貫通孔形成領域B1は、板状部材62に複数の貫通孔63を互いに等間隔に配置することによって構成された領域である。なお、貫通孔形成領域B1において貫通孔63が占める割合は、本実施形態では18%に設定されている。また、非形成領域B2の下方には、異物除去用キャップ45が位置するようになっている。
【0045】
図2に示されるように、ケーシング41には、ケーシング41の内部領域と外部領域との間を連通する排ガス導入管51及び排ガス排出管52が設けられている。なお、ケーシング41では、燃料電池10での発電反応後に燃料電池10から排出された排ガスが排ガス導入管51を介して導入され、排ガスに含まれる異物が貯留され、異物分離後の排ガスが排ガス排出管52を介して排出されるようになっている。
【0046】
詳述すると、排ガス導入管51の外端は、燃料電池10側の排出流路113に連通している。また、排ガス導入管51は、4つの側壁44のうちの1つを貫通し、ケーシング41の横方向に沿って延びている。そして、排ガス導入管51は、排ガス導入管51が貫通する側壁44と対向する箇所に配置された側壁44に向けて開口している。さらに、排ガス導入管51の内端53は、ケーシング41内に突出しており、ケーシング41の下側領域A2に配置されている。よって、排ガス導入管51を流れてきた排ガスは、内端53からケーシング41内に放出された後、ケーシング41外への連通部分(異物除去用キャップ45など)が存在しない側壁44の内面に対してほぼ垂直に衝突するようになる。また、排ガス導入管51の内端53が存在する位置の上方には、仕切板61の非形成領域B2が位置するようになっている。なお、本実施形態では、排ガス導入管51においてケーシング41内に突出する部分の長さが、図2に示すケーシング41の横方向の長さの70%に設定されている。また、排ガス導入管51を流れる排ガスの進行方向と直交する方向(即ち、図2に示すケーシング41の縦方向)にケーシング41を切断した切断面の面積が、排ガス導入管51を流れる排ガスの進行方向と直交する方向にケーシング41を切断した切断面の面積の15倍に設定されている。
【0047】
図2に示されるように、排ガス排出管52は、ケーシング41の底部43と仕切板61の貫通孔形成領域B1(図3参照)とを貫通し、ケーシング41の高さ方向に沿って延びている。即ち、排ガス排出管52は、排ガス導入管51とは直交する方向、換言すると、排ガス導入管51を流れてきた排ガスの進行方向を変更させる方向に延びている。また、図2,図3に示されるように、排ガス導入管51及び排ガス排出管52は、ケーシング41の縦方向(図3では左右方向)から見て互いに直交するように配置されている。さらに、排ガス導入管51及び排ガス排出管52は、ケーシング41の縦方向に互いに離間した状態に配置されている(図3参照)。なお、排ガス導入管51の内端(開口端)53及び排ガス排出管52の内端(開口端)54は離れていることが好ましく、本実施形態では、ケーシング41の縦方向における内端53と内端54との距離が、ケーシング41の縦方向の長さ(高さ)の3分の1に設定されている(図2参照)。また、排ガス排出管52の内端54は、ケーシング41内に突出しており、ケーシング41の上側領域A1に配置されている。つまり、上述した排ガス導入管51の内端53は、排ガス排出管52の内端54よりもケーシング41の高さ方向において下方に配置されるようになる。なお、本実施形態では、排ガス排出管52においてケーシング41内に突出する部分の長さが、ケーシング41の縦方向の長さ(高さ)の70%に設定されている(図2参照)。つまり、排ガス排出管52の内端54は、ケーシング41の底部43よりも上方に位置している。このため、ケーシング41は、異物が落下した場合に、排ガス排出管52に侵入せずに底部43に堆積する構造となっている。また、本実施形態では、排ガス排出管52を流れる排ガスの進行方向と直交する方向にケーシング41を切断した切断面の面積が、排ガス排出管52の断面積の15倍に設定されている。さらに、本実施形態の排ガス排出管52は、排ガス導入管51と材料及び外径が同じ管であるため、排ガス排出管52の断面積が排ガス導入管51の断面積と等しくなっている。
【0048】
図1,図2に示されるように、排ガス熱交換装置70は、異物分離器40から排ガス排出管52を介して供給された排ガスと熱交換媒体である冷媒(本実施形態では水)との間で熱交換を行う機能を有している。排ガス熱交換装置70を構成するケーシング71は、耐熱性に優れたステンレスなどの金属材料によって形成され、天井部72、底部73及び側壁74を有している。
【0049】
図2に示されるように、ケーシング71には、天井部72及び底部73を貫通し、高さ方向に沿って延びる排ガス導入管75及び冷媒流路76が設けられている。排ガス導入管75は、排ガスが流れる流路であり、上流側端部が排ガス排出管52の外端に連通している。一方、冷媒流路76は、冷媒が流れる流路であって、冷媒流路76内を流れる冷媒には排ガス導入管75内を流れる排ガスの熱が伝達(吸熱)されるようになっている。なお、冷媒流路76を流れる冷媒の進行方向は、排ガス導入管75を流れる排ガスの進行方向とは逆方向になっている。また、冷媒流路76は環状の流路であり、冷媒流路76上には冷媒供給ポンプ(図示略)が設置されている。冷媒供給ポンプは、ケーシング71の上流側に配置されており、冷媒流路76内を流れる冷媒をケーシング71内に供給するようになっている。なお、排ガス導入管75を流れる排ガスは、ケーシング71内において30〜40℃に冷却された後、排ガス導入管75の下流側端部から大気に放出される。
【0050】
次に、異物分離器40を用いた異物分離方法を説明する。
【0051】
燃料電池10での発電反応後に燃料電池10から排ガスが排出されると、排ガスは、排ガス導入管51を介してケーシング41内の下側領域A2に放出される。このとき、排ガス導入管51を流れてきた排ガスの流速が低下するのに伴い、排ガスに含まれている異物の速度も低下するため、排ガス中の異物は、重力によってケーシング41の底部43に落下するようになる。その結果、排ガスから異物が分離される。その後、異物分離後の排ガスは、仕切板61の貫通孔63を通過してケーシング41内の上側領域A1に導かれ、排ガス排出管52を介して排ガス熱交換装置70に導かれる。
【0052】
次に、異物分離器の評価方法及びその結果を説明する。
【0053】
まず、測定用サンプルを次のように準備した。本実施形態と同じ異物分離器を準備し、これを実施例とした。具体的には、排ガス導入管51を流れる排ガスの進行方向と直交する方向(即ち、図2に示すケーシング41の縦方向)にケーシング41を切断した切断面の面積を、排ガス導入管51の断面積の15倍に設定した異物分離器40、換言すると、排ガス導入管51に対する異物分離器40の(縦方向の)断面積比率を「15」に設定した異物分離器40を準備し、これを実施例とした。また、排ガス導入管に対する異物分離器の断面積比率を「15」未満の値(ここでは「5」、「10」)に設定した異物分離器を準備し、それぞれ比較例1,2とした。さらに、排ガス導入管に対する異物分離器の断面積比率を「15」よりも大きい値(ここでは「20」、「25」、「30」)に設定した異物分離器を準備し、それぞれ比較例3,4,5とした。
【0054】
次に、室温にした状態で、各測定用サンプル(実施例、比較例1〜5)の異物分離器のケーシングに対して、1分間に100Lの割合で排ガスの模擬ガス(窒素を使用)と模擬異物(金属酸化物を使用)とを供給した。また、各測定用サンプルに対して、排ガス導入管を流れる排ガス(窒素)に含まれている異物(金属酸化物)の重量(V1)を測定するとともに、ケーシングの底部に堆積した異物の重量(V2)を測定し、測定した異物の重量に基づいて異物回収率(=(V1/V2)×100)を算出した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0055】
その結果、比較例1では異物回収率が39%となり、比較例2では異物回収率が78%となったため、異物を確実に回収することができなかった。一方、実施例では、異物回収率が98%となったため、異物をほぼ完全に回収することができた。また、比較例3,4での異物回収率は98%であり、比較例5での異物回収率は96%であったため、これらの場合においても、異物をほぼ完全に回収することが可能であった。
【0056】
以上のことから、排ガス導入管に対する異物分離器の断面積比率を15以上に設定、即ち、排ガス導入管を流れる排ガスの進行方向と直交する方向にケーシングを切断した切断面の面積を、排ガス導入管の断面積の15倍以上に設定すれば、異物回収率がほぼ100%になることが確認された。
【0057】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0058】
(1)本実施形態の発電装置用異物分離器40では、排ガス導入管51がケーシング41内で開口しており、排ガス導入管51の断面積よりもケーシング41の断面積の方が大きくなっている。よって、排ガス導入管51を流れてきた排ガスの流速は、ケーシング41内に到達した時点で急激に低下する。これに伴い、排ガスに含まれている異物の速度も低下するため、異物は、重力によってケーシング41の底部43に落下する。しかも、排ガス導入管51の内端53及び排ガス排出管52の内端54は、ケーシング41の内面で開口せずにケーシング41内に突出しているため、ケーシング41内での排ガスの流れをより多方向(例えば、排ガス導入管51及び排ガス排出管52の突出方向、突出方向とは直交する方向、突出方向とは逆方向など)に広げることができる。よって、排ガスから分離された異物が落下せずに排ガスとともに流れたとしても、異物が排ガス排出管52内に到達しにくくなる。さらに、排ガス導入管51の内端53が排ガス排出管52の内端54よりもケーシング41の高さ方向において下方に配置されるため、排ガスから分離された異物が落下せずに舞い上がったとしても、異物が内端54から排ガス排出管52内に侵入しにくくなる。その結果、排ガスから異物が確実に分離され、異物分離器40と排ガス熱交換装置70とをつなぐ管路が異物によって塞がれにくくなるため、信頼性が高い異物分離器40を備えた好適な発電装置システム1を得ることができる。
【0059】
(2)ところで、フィルタなどを用いてケーシング41の内部領域を区画することが考えられる。しかしながら、フィルタを用いると、異物が詰まりやすいため、フィルタを頻繁に交換しなければならず、メンテナンスが煩雑になるという問題がある。しかも、フィルタは、例えば、繊維をまとめて積層することでマット状に構成されたものであるため、高温(300〜400℃)の排ガスによって破損してしまう。
【0060】
そこで、本実施形態では、複数の貫通孔63を有する仕切板61を用いてケーシング41の内部領域を区画している。このようにすれば、排ガスから異物を分離したとしても異物が詰まりにくいため、メンテナンスの頻度を抑えることができる。また、仕切板61は、耐熱性に優れたステンレスなどの金属材料によって形成されるため、排ガスの熱に起因した仕切板61の破損を防止することができる。
【0061】
(3)本実施形態では、ケーシング41の底部43に堆積した異物を異物除去用キャップ45を開いて排出できるため、多量の異物の堆積を抑えることができる。これに伴い、底部43と仕切板61との間隔を小さくすることができるため、ケーシング41全体の小型化が可能になる。
【0062】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0063】
上記実施形態の異物分離器40では、ケーシング41の内部に仕切板61が設けられていたが、図4〜図6に示されるように、仕切板61は省略されていてもよい。
【0064】
上記実施形態の異物分離器40では、排ガス導入管51がケーシング41の横方向に沿って延びるとともに、排ガス排出管52がケーシング41の高さ方向に沿って延びていた。しかし、図4,図9に示されるように、排ガス導入管151,651がケーシング41の高さ方向に沿って延びるとともに、排ガス排出管152,652がケーシング141,641の横方向に沿って延びる異物分離器140,640であってもよい。さらに図5,図7に示されるように、排ガス導入管251,451及び排ガス排出管252,452の両方がケーシング241,441の高さ方向に沿って延びており、排ガス排出管252,452を流れる排ガスの進行方向が排ガス導入管251,451を流れる排ガスの進行方向と同一方向に設定された異物分離器240,440であってもよい。また図6,図8に示されるように、排ガス導入管351,551及び排ガス排出管352,552の両方がケーシング341,541の高さ方向に沿って延びており、排ガス排出管352,552を流れる排ガスの進行方向が排ガス導入管351,551を流れる排ガスの進行方向とは逆方向に設定された異物分離器340,540であってもよい。
【0065】
上記実施形態の異物分離器40では、排ガス排出管52のみがケーシング41の高さ方向に沿って延びて仕切板61を貫通していた。しかし、図8,図9に示されるように、排ガス導入管551,651のみがケーシング541,641の高さ方向に沿って延びて仕切板561,661を貫通する異物分離器540,640であってもよい。さらに、図7に示されるように、排ガス導入管451及び排ガス排出管452の両方がケーシング441の高さ方向に沿って延びて仕切板461を貫通する異物分離器440であってもよい。
【0066】
上記実施形態の異物分離器40では、貫通孔形成領域B1及び非形成領域B2を有し、貫通孔形成領域B1のみに貫通孔63が配置された仕切板61を備えていた。しかし、異物分離器40は、貫通孔形成領域B1や非形成領域B2を設定せずに、板状部材762全体に貫通孔763を配置した仕切板761を備えていてもよい(図10参照)。また、仕切板61,761はスリット状の貫通孔63,763を有していたが、板状部材862に例えば円形状の貫通孔863を配置した仕切板861(図11参照)であってもよい。なお、貫通孔は、楕円形状、三角形状、正方形状、菱形状などの他の形状であってもよい。
【0067】
上記実施形態の発電装置システム1では、異物分離器40が燃料電池10とは別体に設けられていた。しかし、異物分離器40は、燃料電池10が備えるもの、例えば、燃料電池10を構成する燃料電池スタック11が備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…発電装置システム
10…発電装置としての燃料電池
11…燃料電池スタック
40,140,240,340,440,540,640…発電装置用異物分離器(異物分離器)
41,141,241,341,441,541,641…ケーシング
44…側壁
51,151,251,351,451,551,651…排ガス導入管
52,152,252,352,452,552,652…排ガス排出管
53…排ガス導入管の内端
54…排ガス排出管の内端
61,461,561,661,761,861…仕切板
62,762,862…板状部材
63,763,863…貫通孔
70…排ガス熱交換装置
A1…上側領域
A2…下側領域
B1…貫通孔形成領域
B2…非形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置での発電反応後に前記発電装置から排出された排ガスが排ガス導入管を介して導入され、前記排ガスに含まれる異物が貯留され、異物分離後の排ガスが排ガス排出管を介して排出されるケーシングを備える異物分離器であって、
前記排ガス導入管の内端及び前記排ガス排出管の内端は、前記ケーシング内に突出し、
前記排ガス導入管の内端が、前記排ガス排出管の内端よりも前記ケーシングの高さ方向において下方に配置される
ことを特徴とする発電装置用異物分離器。
【請求項2】
前記ケーシングは、板状部材に貫通孔を配置することにより構成され、前記ケーシングの内部領域を上側領域及び下側領域に区画する仕切板を内部に備え、
前記排ガス導入管の内端が前記下側領域に配置されるとともに、前記排ガス排出管の内端が前記上側領域に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項3】
前記仕切板は、前記貫通孔が配置される貫通孔形成領域と、前記貫通孔が存在しない非形成領域とを有し、
前記非形成領域が、前記排ガス導入管の内端が存在する位置の上方に位置している
ことを特徴とする請求項2に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項4】
前記仕切板は、前記ケーシングの半分以上となる高さに位置していることを特徴とする請求項2または3に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項5】
前記排ガス導入管及び前記排ガス排出管の少なくとも一方は、前記ケーシングの高さ方向に沿って延びて前記仕切板を貫通していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項6】
前記排ガス排出管は、前記排ガス導入管を流れてきた前記排ガスの進行方向を変更させる方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項7】
前記排ガス導入管が前記ケーシングの横方向に沿って延びるとともに、前記排ガス排出管が前記ケーシングの高さ方向に沿って延びており、
前記排ガス導入管は、前記ケーシングの側壁に向けて開口している
ことを特徴とする請求項6に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項8】
前記排ガス導入管を流れる前記排ガスの進行方向と直交する方向に前記ケーシングを切断した切断面の面積が、前記排ガス導入管の断面積の15倍以上に設定されていることを特徴とする請求項7に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項9】
前記ケーシングの高さ方向の長さが、前記ケーシングの横方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発電装置用異物分離器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発電装置用異物分離器と、
前記発電装置用異物分離器の前記排ガス導入管の外端に接続される前記発電装置を構成し、電解質層と、前記電解質層の両側に配置される燃料電極層及び空気電極層とを有し、発電反応により電力を発生する発電セルと
を備え、
前記発電反応後の排ガスが前記排ガス導入管を介して前記発電装置用異物分離器に供給され、前記発電装置用異物分離器によって前記排ガス中に含まれる前記異物が分離される
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発電装置用異物分離器を備え、
前記発電装置用異物分離器の前記排ガス排出管の外端に接続され、前記発電装置用異物分離器から前記排ガス排出管を介して供給された前記排ガスと熱交換媒体との間で熱交換を行う
ことを特徴とする排ガス熱交換装置。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発電装置用異物分離器と、
前記発電装置用異物分離器の前記排ガス導入管の外端に接続される前記発電装置を構成し、電解質層と、前記電解質層の両側に配置される燃料電極層及び空気電極層とを有する発電セルを備え、前記発電セルでの発電反応により電力を発生する燃料電池スタックと、
前記発電装置用異物分離器の前記排ガス排出管の外端に接続され、前記発電装置用異物分離器から前記排ガス排出管を介して供給された前記排ガスと熱交換媒体との間で熱交換を行う排ガス熱交換装置と
を備え、
前記発電反応後の排ガスが前記排ガス導入管を介して前記発電装置用異物分離器に供給され、前記発電装置用異物分離器によって前記排ガス中に含まれる前記異物が分離される
ことを特徴とする発電装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−30366(P2013−30366A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166030(P2011−166030)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】