説明

発電設備の設置方法及び設置構造

【課題】 工期の短縮を図りつつ、耐震性、安定性に優れた基礎構造を構築することが可能な発電設備の設置方法及び設置構造を提供すること。
【解決手段】 小容量発電設備の設置構造1は、発電設備10と、この発電設備10を支持する共通台床20と、この共通台床20内に注入されたコンクリートにより構築される基礎構造30とにより構成されている。発電設備10は、原動機11と、この原動機の出力軸に接続された発電機12とから構成されている。共通台床20は、上面に発電設備10が設置され、下部がコンクリート型枠としての機能を有する枠体21として構成されている。共通台床20の枠体21の内部には、カゴ状にした鉄筋22を予め配置しておく。この共通台床をスラブ2上に設置し、この枠体21内にコンクリートを流し込み固化させて基礎構造30を構築することにより、共通台床20とスラブ2とが固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備、特にディーゼルエンジン等の原動機と発電機とを組み合わせた小容量の発電設備をスラブ上に設置する方法及びその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の小容量発電設備は、一般に建築スラブ上にコンクリート製の基礎構造を構築しておき、この基礎構造上に設置される。基礎構造は、建築スラブとの密着性を良くするためにスラブに差筋を打ち込み、その上に鉄筋をカゴ状に組み、周囲に型枠を組んでコンクリートを打設し、養生期間を経過してコンクリートが固化した後、型枠を外して完成する。
【0003】
発電設備は、原動機と発電機とを共通台床に組み付けて一体のユニットとして構成され、このユニットを基礎構造の上に固定することにより設置される。なお、このような従来の設置方法では、基礎構造のコンクリートが固化するまでの養生期間が長く、この間現場作業を進めることができず、工期が長期間になる。
【0004】
そこで、工期を短縮するため、特許文献1、2に開示されるような方法が提案されている。
特許文献1に開示される発明は、発電設備用の鋼板製の土台部を予め工場で製造し、必要に応じて複数の土台部を接続することにより、現場での施工期間を短縮するようにしている。
また、特許文献2に開示される発明は、タービン及び発電機を工場内で低調位型鋼製の基礎架台の上に組み付けて一体に構成し、その状態で現場まで搬送して据え付けるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−339688号公報 図1
【特許文献2】特開平10−299419号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に記載された方法では、基礎構造(土台、架台)が鋼板製であり、コンクリートにより構築された基礎構造と比較すると、耐震性、安定性に欠けるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、工期の短縮を図りつつ、耐震性、安定性に優れた基礎構造を構築することが可能な発電設備の設置方法及び設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる発電設備の設置方法は、上面に発電設備が設置され、下部がコンクリート型枠としての機能を有する枠体として構成された共通台床をスラブ上に設置し、この枠体内にコンクリートを流し込んで固化させることにより、共通台床とスラブとを固定することを特徴とする。
【0009】
発電設備は、請求項2に記載のように原動機と発電機とを備え、これらを予め工場で共通台床上に設置しておいてもよいし、コンクリートを流し込んだ後に現場で設置してもよい。また、共通台床の枠体の内部には、請求項3に記載のように、カゴ状にした鉄筋を予め配置しておくことが望ましい。
【0010】
一方、請求項4にかかる発電設備の設置構造は、上面に発電設備が設置され、下部がコンクリート型枠としての機能を有する枠体として構成された共通台床をスラブ上に設置し、この枠体内にコンクリートを流し込んで固化させることにより、共通台床とスラブとを固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の方法及び請求項4の構造によれば、発電設備はコンクリートを注入されていない状態でも共通台床により支持されているため、コンクリートの養生期間を待たずに他の作業を続けることができ、現場での工期を短縮することができる。
また、コンクリートが固化した後は、従来のコンクリート製の基礎構造を用いたものと同様の耐震性、安定性を得ることができる。なお、共通台床は工場で製作されるため、品質を均一に保つことができる。
【0012】
また、請求項2の方法によれば、発電設備を工場で共通台床に設置することにより、現場での工期をさらに短縮することができる。
さらに、請求項3の方法によれば、枠体内に鉄筋を配置することにより、コンクリートの基礎構造の強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる発電設備の設置方法及び設置構造の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態の発電設備の設置構造を示す一部断面にした側面図、図2〜図4は、図1の設置構造に至る設置方法の手順を示す同様の側面図である。
【0014】
図1に示すように、実施の形態に係る小容量発電設備の設置構造1は、発電設備10と、この発電設備10を支持する共通台床20と、この共通台床20内に注入されたコンクリートにより構築される基礎構造30とにより構成されている。
【0015】
発電設備10は、ディーゼルエンジンにより構成される原動機11と、この原動機の出力軸に接続された発電機12とから構成されている。原動機11には、ラジエター11a、排気出口11b等が接続され、脚部11cにより共通台床20に固定されている。一方、発電機12は、脚部12aにより共通台床20に固定されている。なお、13は、原動機11の作動状況をモニターするためのエンジン計器板である。原動機11を運転することにより、発電機12が作動して発電することができる。
【0016】
共通台床20は、鋼板製で下面が開放した箱状の構造体であり、上面に発電設備10が設置され、下部がコンクリート型枠としての機能を有する枠体21として構成されている。また、共通台床20の上面には、コンクリートを注入する際に利用する開口23が形成されている。さらに、共通台床20の枠体21の内部には、カゴ状にしたφ13程度の鉄筋22が固定されている。
【0017】
この共通台床20をスラブ2上に設置し、この枠体21内に開口23からコンクリートを流し込み固化させて基礎構造30を構築することにより、共通台床20とスラブ2とが固定される。なお、スラブ2には、予め差筋3が打ち込まれており、この上にコンクリートを流し込むことにより、共通台床20とスラブ2とが強固に固定される。なお、枠体21の容積は、基礎構造30として十分な大きさを確保できるように、例えばメイラーの式に基づいて決定される。
【0018】
次に、上記のような小容量発電設備10の設置方法について図2〜図4に基づいて説明する。図2は、発電設備10を共通台床20に取り付け、鉄筋22を枠体21に取り付けた状態を示す。工場内でこのような状態に組み付け、これを設置現場に搬送する。
【0019】
図2の設備を、図3に示すように現場のスラブ2上に設置する。そして、図4に示すように、共通台床20の枠体21内に開口23からコンクリートを注入する。所定量のコンクリートを注入した後、固化させる。図3の状態で発電設備10の位置は決定されるため、コンクリートを注入する前、あるいは、注入後固化前であっても、配線、配管等の他の現場作業を継続することができる。すなわち、従来のようにコンクリートの注入後の養生期間が不要となり、工期を短縮することが可能となる。
【0020】
なお、上記の例では、原動機11と発電機12とから成る発電設備10を予め工場で共通台床20上に設置することとしているが、これらは現場に共通台床20を配置した後に設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる発電設備の設置構造を示す一部断面側面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる発電設備を共通台床に取り付け、鉄筋を枠体に取り付けた状態を示す一部断面側面図である。
【図3】図2の設備をスラブ上に設置した状態を示す一部断面側面図である。
【図4】図3の設備の共通台床にコンクリートを注入している状態を示す一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 発電設備の設置構造
2 スラブ
3 差筋
10 発電設備
11 原動機
11a ラジエター
11b 排気出口
11c 脚部
12 発電機
12a 脚部
13 エンジン計器板
20 共通台床
21 枠体
22 鉄筋
23 開口
30 基礎構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に発電設備が設置され、下部がコンクリート型枠としての機能を有する枠体として構成された共通台床をスラブ上に設置し、
この枠体内にコンクリートを流し込んで固化させることにより、共通台床とスラブとを固定することを特徴とする発電設備の設置方法。
【請求項2】
前記発電設備は、原動機と発電機とを備え、これらを予め工場で前記共通台床上に設置しておくことを特徴とする請求項1に記載の発電設備の設置方法。
【請求項3】
前記共通台床の枠体の内部に、カゴ状にした鉄筋をコンクリートを流し込む前に配置しておくことを特徴とする請求項1または2に記載の発電設備の設置方法。
【請求項4】
上面に発電設備が設置され、下部がコンクリート型枠としての機能を有する枠体として構成された共通台床をスラブ上に設置し、
この枠体内にコンクリートを流し込んで固化させることにより、共通台床とスラブとを固定したことを特徴とする発電設備の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−262798(P2007−262798A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91354(P2006−91354)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】