説明

発電設備用サンプリング装置

【課題】水冷式熱交換器の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる発電設備用サンプリング装置を提供する。
【解決手段】発電設備の水系統又は蒸気系統内の200℃を越える高温高圧の水又は蒸気を分析するためにサンプリングする発電設備用サンプリング装置において、冷却ファン10で生起された冷却風との熱交換により、サンプリング水又はサンプリング蒸気を200℃以下となるまで冷却する空冷式の熱交換器4と、冷却水との熱交換により、空冷式冷却器4で冷却されたサンプリング水又はサンプリング蒸気を30〜50℃程度となるまで冷却する水冷式の熱交換器5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備の水系統又は蒸気系統内の高温高圧の水又は蒸気を分析するためにサンプリングする発電設備用サンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備においては、配管や機器の破損防止を目的として、水系統又は蒸気系統内の高温高圧の水又は蒸気をサンプリングし、このサンプリング水又はサンプリング蒸気のpH、溶存酸素量、導電率、又はシリカ含有量などを測定している。詳細には、例えば、発電設備の水系統又は蒸気系統の母管にサンプリング配管を接続し、このサンプリング配管からのサンプリング水又はサンプリング蒸気を水冷式の熱交換器で冷却し、分析装置で測定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平03−5901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。すなわち、上記従来技術では、水冷式熱交換器に導入するサンプリング水又はサンプリング蒸気の温度が200℃を超えると、冷却水として工業用水(例えば冷却塔冷却水など)を用いた場合に、熱交換器の伝熱面において冷却水中の不純物(カルシウム等)が析出してスケールが発生する。このスケールの発生によって熱交換器の冷却性能が落ちたり水漏れ等が生じたりするので、例えば1ヶ月毎にメンテナンス(清掃)を行う必要があった。かといって、冷却水として工業用水ではなく純水を用いた場合には設備コストが高くなる。
【0005】
本発明の目的は、水冷式熱交換器の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる発電設備用サンプリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、発電設備の水系統又は蒸気系統内の200℃を越える高温高圧の水又は蒸気を分析するためにサンプリングする発電設備用サンプリング装置において、冷却ファンで生起された冷却風との熱交換により、サンプリング水又はサンプリング蒸気を200℃以下となるまで冷却する空冷式の熱交換器と、冷却水との熱交換により、前記空冷式冷却器で冷却されたサンプリング水又はサンプリング蒸気を30〜50℃程度となるまで冷却する水冷式の熱交換器とを備える。
【0007】
本発明においては、サンプリング水又はサンプリング蒸気を200℃以下となるまで空冷式熱交換器で冷却してから水冷式熱交換器に導入するので、水冷式熱交換器の伝熱面が高温となるのを防ぎ、伝熱面に冷却水中の不純物(炭酸カルシウム等)が析出してスケールが発生するのを抑えることができる。したがって、本発明においては、水冷式熱交換器の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記水冷式熱交換器又は前記空冷式熱交換器の上流側に設けられ、サンプリング水又はサンプリング蒸気の温度を検出する検出器と、前記検出器で検出された温度に基づき、前記水冷式熱交換器に導入するサンプリング水又はサンプリング蒸気の温度が200℃以下となるように、前記冷却ファンの回転数を可変制御する制御器とを備える。
【0009】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記水冷式熱交換器又は前記空冷式熱交換器の上流側に設けられ、サンプリング水又はサンプリング蒸気の流れの有無を検出する検出器と、前記検出器でサンプリング水又はサンプリング蒸気の流れが検出された場合に前記冷却ファンを駆動し、前記検出器でサンプリング水又はサンプリング蒸気の流れが検出されない場合に前記冷却ファンを停止する制御器とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水冷式熱交換器の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発電設備用サンプリング装置の第1の実施形態の構成を表す概略図である。
【図2】本願発明者らの実験結果における水冷式熱交換器のサンプリング導入温度とスケール発生量との関係を表す図である。
【図3】本発明の発電設備用サンプリング装置の第2の実施形態の構成を表す概略図である。
【図4】本発明の発電設備用サンプリング装置の第3の実施形態の構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態を図1により説明する。図1は、本実施形態の発電設備用サンプリング装置の構成を表す概略図である。
【0013】
この図1において、発電設備用サンプリング装置1は、発電設備の水系統又は蒸気系統の母管(図示せず)にサンプリング配管2を介し接続されており、200℃を越える高温高圧の水又は蒸気をサンプリングして分析するためのものである。発電設備用サンプリング装置1は、サンプリング配管2に入口弁3を介し接続され、例えば300℃程度のサンプリング水又はサンプリング蒸気を200℃以下(具体的には、例えば200℃)となるまで冷却する空冷式の熱交換器4と、この空冷式熱交換器4の下流側に接続され、サンプリング水又はサンプリング蒸気を30〜50℃程度となるまで冷却する水冷式の熱交換器5と、この水冷式熱交換器5の下流側に開閉弁6を介し接続された分析装置7とを備えている。なお、分析装置7の下流側には排水枡8が設けられている。
【0014】
空冷式熱交換器4は、ファン用モータ9によって回転する冷却ファン10で生起された冷却風との熱交換により、サンプリング水又はサンプリング蒸気を冷却するようになっている。水冷式熱交換5は、冷却水(工業用水)との熱交換により、空冷式熱交換器4で冷却されたサンプリング水又はサンプリング蒸気をさらに冷却するようになっている。分析装置7は、水冷式熱交換器で冷却されたサンプリング水又はサンプリング蒸気のpH、溶存酸素量、導電率、又はシリカ含有量などを測定している。
【0015】
本実施形態の作用効果を、本願発明者らが行った実験結果により説明する。図2は、本願発明者らの実験結果における水冷式熱交換器のサンプリング導入温度とスケール発生量との関係を表す図である。なお、いずれの条件においても、水冷式熱交換器の冷却水として工業用水を用いている。
【0016】
この図2で示すように、水冷式熱交換器のサンプリング導入温度が300℃である場合は、水冷式熱交換器の伝熱面に冷却水中の不純物(カルシウム等)が析出して大量のスケールが発生する。水冷式熱交換器のサンプリング導入温度が220℃である場合は、水冷式熱交換器の伝熱面に少量のスケールが発生する。一方、水冷式熱交換器のサンプリング導入温度が200℃である場合は、水冷式熱交換器の伝熱面にスケールがほとんど発生しない。
【0017】
そして、本実施形態においては、サンプリング水又はサンプリング蒸気を200℃以下となるまで空冷式熱交換器4で冷却してから、水冷式熱交換器5に導入するので、水冷式熱交換器5の伝熱面が高温となるのを防ぎ、伝熱面にスケールが発生するのを抑えることができる。したがって、本実施形態においては、水冷式熱交換器5の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0018】
本発明の第2の実施形態を図3により説明する。本実施形態は、サンプリング水又はサンプリング蒸気の流れの有無を検出し、その検出結果に応じて冷却ファンを駆動制御する実施形態である。
【0019】
図3は、本実施形態の発電設備用サンプリング装置の構成を表す概略図である。なお、この図3において、上記第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
本実施形態の発電設備用サンプリング装置1Aは、空冷式熱交換器4の上流側に設けられ、サンプリング水又はサンプリング蒸気の流れの有無を検出する流量スイッチ11と、この流量スイッチ11からの信号に基づきファン用モータ9を駆動制御する制御器12Aとを備えている。制御器12は、例えば流量スイッチ11でサンプリング水又はサンプリング蒸気の流れが検出されない場合に、ファン用モータ9を停止させて冷却ファン10を停止させる。一方、例えば流量スイッチ11でサンプリング水又はサンプリング蒸気の流れが検出された場合に、ファン用モータ9を駆動させて冷却ファン10を回転させるようになっている。これにより、省エネを図るようになっている。
【0021】
このような本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、水冷式熱交換器5の伝熱面にスケールが発生するのを抑えることができる。したがって、水冷式熱交換器5の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0022】
なお、上記第2の実施形態においては、流量スイッチ11を空冷式熱交換器4の上流側に設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば流量スイッチ11を空冷式熱交換器4の下流側かつ水冷式熱交換器5の上流側に設けてもよい。また、上記第2の実施形態においては、サンプリング水又はサンプリング蒸気の流れの有無を検出する検出器として、流量スイッチ11を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば圧力センサ又は温度センサ等を設けてもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第3の実施形態を図4により説明する。本実施形態は、サンプリング水又はサンプリング蒸気の温度を検出し、その検出結果に応じて冷却ファンの回転数を可変制御する実施形態である。
【0024】
図4は、本実施形態の発電設備用サンプリング装置の構成を表す概略図である。なお、この図4において、上記第1及び第2の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0025】
本実施形態の発電設備用サンプリング装置1Bは、空冷式熱交換器4の上流側に設けられ、サンプリング水又はサンプリング蒸気の温度を検出する温度センサ13と、この温度センサ13からの信号に基づきファン用モータ9を駆動制御する制御器12Bとを備えている。制御器12Bは、例えば予め設定された第1の温度閾値A1(200℃程度)及び第2の閾値A2(300℃程度)を記憶しており、それらの温度閾値A1,A2と温度センサ13で検出された温度Tとを比較するようになっている。そして、例えばT<A1の場合に、ファン用モータ9を停止させて冷却ファン10を停止させる。また、例えばA1≦T<A2の場合に、ファン用モータ9を駆動させて冷却ファン10を低速回転で回転させる。また、例えばA2≦Tの場合に、ファン用モータ9を駆動させて冷却ファン10を高速回転で回転させるようになっている。これにより、水冷式熱交換器5に導入するサンプリング水又はサンプリング蒸気の温度が200℃以下となるように、冷却ファン10の回転数を可変制御している。
【0026】
このような本実施形態においても、上記第1及び第2の実施形態と同様、水冷式熱交換器5の伝熱面にスケールが発生するのを抑えることができる。したがって、水冷式熱交換器5の冷却水として工業用水を用いることができ、メンテナンス頻度を低減することができる。
【0027】
なお、上記第3の実施形態においては、温度センサ13を空冷式熱交換器4の上流側に設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば温度センサ13を空冷式熱交換器4の下流側かつ水冷式熱交換器5の上流側に設け、この温度センサ13で検出された温度が200℃を超えそうな場合に、冷却ファン10の回転数を段階的に増加させるような制御を制御器が行ってもよい。また、上記第3の実施形態においては、制御器13Bは、冷却ファン10の回転数を2段階に可変制御する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば3段階以上の複数段階に可変制御してもよいし、検出温度の上昇に応じて連続的に増加するように可変制御してもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0028】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、水冷式熱交換器5の下流側に分析装置7を設けた構成を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば水冷式熱交換器5の下流側に着脱可能なサンプリング容器を設けた構成とし、サンプリング容器内のサンプリング水又はサンプリング蒸気を分析装置で分析する際に、サンプリング容器を取外してもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 発電設備用サンプリング装置
1A 発電設備用サンプリング装置
1B 発電設備用サンプリング装置
4 空冷式の熱交換器
5 水冷式の熱交換器
10 冷却ファン
11 流量スイッチ(検出器)
12A 制御器
12B 制御器
13 温度センサ(検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備の水系統又は蒸気系統内の200℃を越える高温高圧の水又は蒸気を分析するためにサンプリングする発電設備用サンプリング装置において、
冷却ファンで生起された冷却風との熱交換により、サンプリング水又はサンプリング蒸気を200℃以下となるまで冷却する空冷式の熱交換器と、
冷却水との熱交換により、前記空冷式冷却器で冷却されたサンプリング水又はサンプリング蒸気を30〜50℃程度となるまで冷却する水冷式の熱交換器とを備えたことを特徴とする発電設備用サンプリング装置。
【請求項2】
請求項1記載の発電設備用サンプリング装置において、
前記水冷式熱交換器又は前記空冷式熱交換器の上流側に設けられ、サンプリング水又はサンプリング蒸気の温度を検出する検出器と、
前記検出器で検出された温度に基づき、前記水冷式熱交換器に導入するサンプリング水又はサンプリング蒸気の温度が200℃以下となるように、前記冷却ファンの回転数を可変制御する制御器とを備えたことを特徴とする発電設備用サンプリング装置。
【請求項3】
請求項1記載の発電設備用サンプリング装置において、
前記水冷式熱交換器又は前記空冷式熱交換器の上流側に設けられ、サンプリング水又はサンプリング蒸気の流れの有無を検出する検出器と、
前記検出器でサンプリング水又はサンプリング蒸気の流れが検出された場合に前記冷却ファンを駆動し、前記検出器でサンプリング水又はサンプリング蒸気の流れが検出されない場合に前記冷却ファンを停止する制御器とを備えたことを特徴とする発電設備用サンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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