説明

白色積層ポリエステルフィルム

【課題】
LED光源を側面に配置させた薄型大画面用のバックライト装置において、光源点灯時に熱撓みせず、輝度が高く、また界面密着性に優れた白色積層ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
内部に空洞を含有するポリエステル層(B)の少なくとも一方にポリエステル層(A)が積層された積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(A層)を構成するポリエステル樹脂は、ポリエステル層(A)中のジカルボン酸成分に対してイソフタル酸成分を1〜13モル%含有、およびテレフタル酸成分を87〜99モル%含有し、ポリエステル層(A)中のジオール成分に対してエチレングリコール成分を80〜100モル%含有し、かつポリエステル層(A層)の結晶化度が30%より高いことを特徴とする白色積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色フィルムの改良に関し、さらに詳しくは面光源用反射部材(反射板、およびリフレクター)として好適な白色積層ポリエステルフィルムであって、高い反射率と剛性を備え、かつ、フィルム層間の密着性に優れる白色積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報表示機器などで多用されている液晶ディスプレイは、高い輝度を確保するために、ディスプレイ後部にバックライトと呼ばれる面光源を設置して光を照射している。また、バックライトは、単に光を照射するだけでなく、画面全体を均一に照射する必要がある。この特性を満たす方式として、サイドライト型及び直下型と呼ばれる面光源の構造がある。
【0003】
一般的に、このサイドライト型では、導光板のエッジから冷陰極線管を照明光源とし、光を均一に伝播・拡散する導光板を利用し液晶ディスプレイ全体を均一に照射する導光板方式が採用されている。この方式は、より光を効率的に活用するため、冷陰極線管の周囲にリフレクターが設けられ、更に導光板から拡散された光を液晶画面側に効率的に反射させるために導光板の下に反射板が設けられている。これにより冷陰極線管からの光のロスを少なくし、液晶画面を明るくする機能を付与している。
【0004】
また近年、液晶ディスプレイを利用した用途の拡大はめざましく、奥行き150mm以下の薄型で、かつ26inch以上の大画面用の液晶テレビ用途においては、消費電力量が小さく高出力化が可能なLED光源を使用する方式が用いられ始め、光源を側面に配置させた薄型化に有利な方式を採用している。
【0005】
また、前述の反射板には液晶ディスプレイの高輝度化のため、内部に多数の気泡を形成しているが、気泡を多くするとフィルム層間での剥離が起こりやすい問題がある。この課題に対してはポリエステル中イソフタル酸成分を含有させることでフィルム層間での界面剥離を抑制する技術が提供されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LEDバックライト筐体には、筐体の強度向上や電気配線と基盤格納のために凹凸状の加工が設けられており、また、LED光源に近い筐体端部に放熱用の溝加工が設けられている。そのため反射板が一部筐体から宙に浮く部分があるため、組み立て後の光源点灯時に光源の熱で反射板が筐体の凹みに沿って熱撓みすることで、輝度ムラが発生するという問題がある。
【0008】
上述した特許文献1に記載の方法では、結晶化度が低く高温での剛性度が劣ることから、光源の熱により反射板が撓むため、LED光源での反射板には不向きであった。
【0009】
そこで、本発明では高剛性であり、輝度が高く、またフィルム層間で剥離しない白色積層ポリエステルフィルムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
内部に空洞を含有するポリエステル層(B)の少なくとも一方にポリエステル層(A)が積層された積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(A)を構成するポリエステル樹脂は、ポリエステル層(A)中のジカルボン酸成分に対してイソフタル酸成分を1〜13モル%含有、およびテレフタル酸成分を87〜99モル%含有し、ポリエステル層(A)中のジオール成分に対してエチレングリコール成分を80〜100モル%含有し、かつポリエステル層(A層)の結晶化度が30%より大きい白色積層ポリエステルフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い反射率および剛性度を備え、また界面密着性に優れた白色積層ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
[フィルム構成]
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、内部に空洞を含有するポリエステル層(B)の少なくとも一方に、ポリエステル層(A)が積層された積層ポリエステルフィルムである。ポリエステル層(B)の内部に空洞を多数含有することで、ポリエステル樹脂と空洞間の屈折率差を利用して、散乱ロスを押さえながら反射率を高める事が出来る。また、少なくともポリエステル層(B)の一方にポリエステル層(A)が積層されていることが必要である。ポリエステル層(A)をポリエステル層(B)の少なくとも一方に積層することにより、高剛性度を得ることができる。また、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、いくつの層から構成されてもよい。例えば、A/Bの2層構成であってもよく、A/B/Aの3層構成、あるいは4層以上の構成であってもよいが、製膜上の容易さと剛性度を考慮すると3層構成が好ましい。また、ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)は共押出し法により製膜ライン中で一挙に積層された後に、2軸方向に延伸されることが好ましい。さらに、必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0014】
また、本発明の白色ポリエステルフィルムに、易接着性や帯電防止性等を付与するために、周知の技術を用いて種々の塗液を塗布したり、耐衝撃性を高めるためにハードコート層などを設けても良く、さらに必要に応じて本発明の効果が損なわれない量での適宜な添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。
【0015】
[ポリエステル層(A)]
本発明の白色積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステル層(A)は、ポリエステル層(A)を構成するジカルボン酸成分中にイソフタル酸成分を1〜13モル%、およびテレフタル酸成分を87〜99モル%含有し、ポリエステル層(A)中のジオール成分中にエチレングリコール成分を80〜100モル%含有することが必要である。また、その他の成分としてナフタレンジカルボン酸、5− ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール、1 , 4 − シクロヘキサンジカルボン酸などを含んでも良い。ポリエステル層(A)に上記組成を含有することにより、ポリエステル層(A)とポリエステル層(B)間での界面剥離の抑制しつつ、高剛性なフィルムを得ることができる。また、イソフタル酸成分が1モル%未満であるとポリエステル層間の界面密着性が悪化し、また成型性も劣る場合がある。13モル%を超えると、剛性度が劣る場合がある。
【0016】
本発明において、ポリエステル層(A)の厚さは5〜40μmであることが好ましい。本発明においてポリエステル層(A)はポリエステル層(B)層の少なくとも一方に設けられるが、両側に設けた場合でも各々の厚みが5〜40μmであることが好ましい。ポリエステル層(A)の厚さが5μm未満であった場合は、フィルムの剛性度が小さくなり、バックライト内で光源点灯時に高温な環境にさらされたときに熱撓みが起きやすく、輝度ムラが発生する場合がある。ポリエステル層(A)の厚さが40μmを越える場合は、ポリエステル層(A)内での光吸収によるロスが増えることで、反射率が低下する場合がある。
【0017】
また、本発明では後述する示差走査熱量計(DSC)にて測定された結晶化度が30%より高いことが必要である。結晶化度の範囲としては、30%より高く50%より低いことが好ましい。30%以下であると剛性度が低く、また50%以上であるとフィルムが脆くなる場合がある。この結晶化度を30%よりも高くする方法としては、ポリエステル層(A)に後述する無機粒子を含有させる事、製膜時の延伸倍率を上げる事や、横延伸後熱処理したフィルムをさらに145〜175℃で10〜30分間の再熱処理を行う事などを挙げる事が出来る。
【0018】
また、本発明ではポリエステル層(A)中に無機粒子を含有させることが好ましい。例えば、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミ、リン酸カルシウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、などが挙げられるが、中でもシリカが好ましい。
【0019】
無機粒子の添加量としては、ポリエステル層(A)中に0.05〜1.5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.2重量%、より好ましくは0.2〜1.1重量%含有する。0.01重量%未満であると結晶化度が下がり、剛性度が低下する場合がある。
【0020】
また、1.5重量%を超えるとフィルムが破れやすくなるなど製膜安定性が劣る場合がある。シリカ粒子の平均粒径は2〜5μmが好ましい。2μm未満であると分散性が悪く粒子の凝集が起こるため製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。また、平均粒径が5.0μmを超えても、製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。ここで、平均粒径とは、数平均粒径のことをいい、走査電子顕微鏡(SEM)で倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子について、100個ずつ任意に粒子径の測定をし、平均粒径を求めた値をいう。(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求める)。
【0021】
[ポリエステル層(B)]
ポリエステル層(B)は内部に空洞を含有することが必要である。空洞を含有することによって高い反射率を発現させることができる。ポリエステル層(B)の内部に空洞を含有させる方法としては、(1)ポリエステルに発泡剤を含有せしめ、押出や製膜時の加熱により発泡、あるいは化学的分解により発泡させて空洞を形成する方法、(2)ポリエステルの押出時にガスまたは気化可能物質を添加する方法、(3)ポリエステルに該ポリエステルと非相溶の成分(非相溶成分)を添加し、それを一軸または二軸延伸することにより微細な空洞を発生させる方法等が挙げられるが、本発明においては、製膜性、内部に含有せしめる空洞の量の調整し易さ、製造コストなどの総合的な点から、上記の(3)の方法を用いることが好ましい。
【0022】
上記の(3)の方法における非相溶樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素系樹脂などが好ましく用いられる。これらは単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上の非相溶樹脂を併用してもよい。これらの中でも、臨界表面張力の小さなポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン共重合体のようなポリオレフィンが好ましく、さらにはポリメチルペンテン、シクロオレフィン共重合体がとくに好ましく用いられる。また、ポリエステル層(B)の構成成分の総量に対して、非相溶成分は5〜35重量%含有することが反射率の点から好ましい。5%未満であると空洞が少なく、反射率が低くなる場合がある。また、35%より高くなると空洞が連結し反射率が低くなる場合があり、またコストの面でも劣る場合がある。
【0023】
また、必要に応じて、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミ、リン酸カルシウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、などの無機粒子を添加しても良い。
【0024】
ポリエステル層(B)の厚さは100〜450μmが好ましい。ポリエステル層(B)中の空洞により主な光反射性能を発現しており、このポリエステル層(B)の厚さが100μm未満である場合は、反射率および剛性度共に劣る場合がある。また、ポリエステル層(B)の厚さが450μmを超える場合は、フィルムの製膜安定性およびコストの面で劣る場合がある。
【0025】
[製造方法]
以下、本発明の白色積層ポリエステルフィルムを製造する方法の例として、A/B/Aの3層構成の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法の一例を説明する。
【0026】
ダイから溶融したポリマーをフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわちポリエステル層(A)を形成するポリマーの溶融物とポリエステル層(B)を形成するポリマーの溶融物を、フィードブロックを用いてA/B/Aとなるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。
【0027】
この未延伸状フィルムをロール加熱、必要に応じて赤外線加熱等でポリエステルのガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、長手方向(以降、縦方向と呼ぶ)に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行う。縦延伸の倍率は用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.2〜4.0倍、より好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とすると反射率が低く、また結晶化度も低い場合がある。4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。縦延伸後のフィルムは、続いて、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)に延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。このとき、横延伸のための予熱および延伸温度はポリエステルのガラス転移温度(Tg)以上(Tg+20℃)で行う。横延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.2倍、より好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であると反射率が低く、また結晶化度も低い場合がある。4.2倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。得られた2軸延伸積層フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて180〜230℃の温度で1〜60秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却し、ロールに巻き取る。熱処理温度は結晶化度を上げるためにも210〜230℃がより好ましい。
【0028】
さらに、得られたフィルムロールを130〜200℃の温度にて20分以上1時間以内の間、再熱処理を行う事が好ましい。再熱処理を行う事でさらに結晶化が進み、フィルムの剛性度を向上させる事が出来る。また、再熱処理温度は140〜180℃が好ましく、150〜170℃がより好ましい。上記範囲以外においては結晶化が進みにくく好ましくない。
【0029】
またここでは逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよく、さらに必要に応じて、二軸延伸後、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0030】
[物性]
二軸延伸後の積層ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは105〜530μm、よ
り好ましくは120〜500μmである。105μmより薄いと反射率および剛性が不足し、500μmより厚い場合は、フィルムの製膜安定性およびコストの面で劣る場合がある。
【0031】
このようにして得られる本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、後述する方法で測定したその少なくとも一方の表面の波長560nmにおける反射率が、好ましくは100%以上、さらに好ましくは101%以上である。100%未満であると、液晶ディスプレイのバックライトや照明器具の反射板として用いた時に十分な反射率を得ることができない場合がある。
【0032】
また、フィルムの剛性度については、熱撓みの点から2.9mN・m以上が好ましい。2.9mN・m未満であると、熱撓みによる輝度ムラが発生する場合がある。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0034】
(1)平均粒径
日立製作所製S−2100A形走査型電子顕微鏡を用いて倍率10000倍にて、樹脂(
フィルム)に添加する前の各粒子を観察し、100個ずつ任意に粒径の測定をし、平均粒
径を求めた(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長
径+短径)/2にて求める)。
【0035】
(2)各層の厚み
フィルムを凍結処理した後、ミクロトーム(ULTRACUT−S)で長手方向および幅方向に沿って断面を切り出し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて4000倍に拡大観察して撮影した断面写真より、各ポリエステル層の厚み方向の長さを計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚みを求めた。なお、各ポリエステル層の厚みを求めるに当たっては、長手方向および幅方向に沿って切り出した切断面において互いに異なる測定視野から任意に選んだ計50箇所の断面写真を使用し、その平均値として算出した。なお、長手方向、幅方向が不明な場合は、任意の互いに直角な2方向に切り出した切断面を測定する。
【0036】
(3)反射率
分光光度計U−3410((株)日立製作所)に、φ60積分球130−0632((株)日立製作所)(内面が硫酸バリウム製)および10°傾斜スペーサーを取りつけた状態で560nmの光反射率を求めた。なお、光反射率は表裏の両方で測定し、高い方の値を当該フィルムの反射率とした。標準白色板には(株)日立計測器サービス製の部品番号210−0740(酸化アルミニウム)を用いた。
【0037】
(4)結晶化度
フィルムの表面に片刃を入れた後、フィルム表面に粘着テープを貼り、フィルムに沿って急速に剥離することにより、ポリエステル層(A)部を剥離し、サンプリングする。示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用い、前述のサンプル10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し測定した。これにより得られたDSC曲線における240℃を含む吸熱ピークによる吸熱ΔH(J/g)に対し、下記式で求められる結晶化度X(%)を求める。
X(%)=(ΔH / ΔH0)× 100 ・・・(1)
ただし、ΔH0=140.1(J/g)である。
【0038】
(5)層間密着性
ポリエステル層(A)側にカッターにてクロスカットを100個入れた後、表面にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製CT24)を貼り付け、ゴムローラーを用いて加重19.6Nで3往復させ圧着させた。次に、該試料を両面テープで固定し、セロテープ(登録商標)を手で90°方向に強制的に剥離し、剥離度合いを目視で観察し、5回平均値を以下の基準で判断した。
なお、△と○と◎が合格である。
◎:極めて良好 (剥離面積5%未満)
○:良好 (剥離面積5%以上20%未満)
△:やや劣る (剥離面積20以上40%未満)
×:劣る (剥離面積40%以上)。
【0039】
(6)曲げモーメント(剛性度)
曲げモーメント(mN・m)はJIS P−8125(2000)による曲げ角度15゜におけるものであり、テーパー式剛性度試験機TELEDYNE TABER MODEL150-D(North Tonawanda, New York USA製)を使用した。
【0040】
以下実施例等によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
[使用原料]
(1)ポリエステル樹脂(a)
酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ4.186J/g以上であり、結晶性のポリエステル樹脂である。この樹脂の融点Tmを測定したところ、250℃であった。
【0042】
(2)共重合ポリエステル樹脂(b)
その他添加物として、イソフタル酸共重合PETを用いた。ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を17.5mol%共重合したPETである。示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ4.186J/g未満であり、非晶性を示した。
【0043】
(3)無機粒子(c)
平均粒径3.5μmのシリカ粒子を使用した。
【0044】
(4)非相溶性樹脂(d)
ガラス転移温度が178℃、メルトボリュームレートMVR(260℃/2.16kg)が4.5ml/10mimである環状オレフィン樹脂「TOPAS」(ポリプラスチック社製)を用いた。なお、示差熱分析計を用いて結晶融解熱を測定したところ4.186J/g未満であり、非晶性樹脂であった。
【0045】
(実施例1)
表1−1に示した原料の混合物を180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機に供給し、280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
【0046】
次いで、該Tダイ複合口金内で、ポリエステル層(A)がポリエステル層(B)の両表層に積層(A/B/A)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。続いて、該未延伸単層フィルムを70℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、赤外線ヒーターで両面から照射しながら、長手方向(縦方向)に表1−1の倍率にて延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。その後、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の予熱ゾーンに導き5% 微延伸しながら乾燥後、引き続き連続的に120 ℃ の加熱ゾーンで長手方向に垂直な方向( 横方向)に表1−1の倍率にて延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで表1−1の温度の熱処理を施し、次いで均一に徐冷後、ロールに巻き取った。さらに、得られたフィルムロールを表1−1の温度および時間にて再熱処理を行い、ポリエステル層(A)と内部に空洞を有するポリエステル層(B)の厚さが、9/282/9(μm)のA/B/A3層の白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0047】
かくして得られた白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表1−2のとおりであって、結晶化度および剛性も高く、層間密着性にも優れたものであった。
【0048】
(実施例2〜5)
表1−1に示された原料および条件にて、実施例1と同様にしてポリエステル層(A)と内部に空洞を有するポリエステル層(B)の厚さが、9/282/9(μm)のA/B/A3層の白色積層ポリエステルフィルムを得た。得られた白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表1−2のとおりであり、剛性がやや劣るものの合格の範囲内であった。
【0049】
(比較例1)
表1−3に示された原料を使用し、実施例1と同様にしてポリエステル層(A)と内部に空洞を有するポリエステル層(B)の厚さが、9/282/9(μm)のA/B/A3層の白色積層ポリエステルフィルムを得た。得られた白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表1−4のとおりであり、層間密着性は優れていたが、剛性が低いものであった。
【0050】
(比較例2)
表1−3に示された原料および条件にて、実施例1と同様にしてポリエステル層(A)と内部に空洞を有するポリエステル層(B)の厚さが、9/282/9(μm)のA/B/A3層の白色積層ポリエステルフィルムを得た。得られた白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表1−4のとおりであり、剛性は優れていたが、層間密着性が悪いものであった。
【0051】
(比較例3)
表1−3に示された原料および条件にて、実施例1と同様にしてポリエステル層(A)と内部に空洞を有するポリエステル層(B)の厚さが、9/282/9(μm)のA/B/A3層の白色積層ポリエステルフィルムを得た。得られた白色積層ポリエステルフィルムの特性は、表1−4のとおりであり、層間密着性は優れていたが、剛性および結晶化度ともに非常に低いものであった。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
面光源用反射部材(反射板、およびリフレクター)として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を含有するポリエステル層(B)の少なくとも一方にポリエステル層(A)が積層された積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(A層)を構成するポリエステル樹脂は、ポリエステル層(A)中のジカルボン酸成分に対してイソフタル酸成分を1〜13モル%含有、およびテレフタル酸成分を87〜99モル%含有し、ポリエステル層(A)中のジオール成分に対してエチレングリコール成分を80〜100モル%含有し、かつポリエステル層(A層)の結晶化度が30%より高いことを特徴とする白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステル層(A層)中に、(A層)中の構成成分に対して無機粒子を0.01〜1.5重量%含有している請求項1に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
無機粒子の数平均粒子径が2〜5μmである請求項1または請求項2に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリエステル層(B)中の構成成分の総量に対して、ポリエステルに非相溶な非晶性樹脂を5〜35重量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の白色積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−210759(P2012−210759A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77706(P2011−77706)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】