説明

白血球遊走をモニタリングするための装置及び方法

白血球の遊走をモニタリングするための装置が提供される。本発明はまた、生理学的剪断流の存在下において白血球遊走をモニタリングし、したがって、in vivoでの血管の生理学的状態をシミュレートするための装置を使用する方法も提供する。本発明はさらに、複数の試験薬をハイスループットスクリーニングするための装置を使用する方法を提供する。本発明はさらに、生物学的相互作用及びシステムを試験するために使用可能な柔軟なアッセイシステム及び多数のアッセイを提供する。In vivoに存在する勾配の状態を擬態する層流勾配が採用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2002年10月22日付けで出願された米国特許仮出願第60/419,980号及び同第60/419,976号の優先権を主張する。これらの出願明細書の内容を参考のため本明細書中に引用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、細胞又は細胞群と基層との相互作用をモニタリングする装置及び方法に関する。具体的には、本発明は白血球遊走をモニタリングする装置及び方法に関する。本発明はまた総体的に見て、ミクロ流体システム内に形成された勾配において実施される生物学的アッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
炎症応答は、感染又は負傷後にホメオスタシスを取り戻して維持しようとする身体による試みであり、身体防御の不可欠な部分である。身体防御要素のほとんどは血液内に位置しており、炎症は、これらの要素が血液から出て、負傷部位又は感染部位の周りの組織に入る際の手段である。炎症の主要目的は、負傷源又は感染源を局在化して根絶し、そして負傷部位又は感染部位の周りの組織を修復することである。
【0004】
感染に対する最初の先天性免疫応答の結果として、食細胞、例えば損傷組織中のマスト細胞が、種々のサイトカイン及び炎症メディエーター、例えばヒスタミン、ロイコトリエン、ブラジキニン、及びプロスタグランジンを放出する。これらの炎症性メディエーターは、損傷組織を取り囲む内皮として知られる血管内面の薄い繊細な細胞間の接合ゾーンを可逆的に開く。炎症メディエーターはまた、血管透過性を高め、血流速度を低くする。血管のこれらの変化の別の結果は、正常な場合には血管中心を移動する白血球が、外側に向かって血管内面の周辺部に移ることにより、内皮と相互作用することである。食細胞によって放出されたサイトカイン及び炎症メディエーターはまた、内皮表面上に付着分子の発現を誘発し、その結果、「活性化」内皮をもたらす。
【0005】
白血球と活性化内皮との最初の接触は、「捕捉」として知られ、付着分子P-セレクチン及びL-セレクチンを伴うと考えられている。付着分子P-セレクチン及びL-セレクチンは、炎症メディエーターに対する露出後に内皮上でアップ・レギュレートされる。P-セレクチン及びL-セレクチンは、セレクチンと呼ばれる付着分子群に属する。セレクチンは、活性化内皮の表面上及び白血球上で発現される単量体内在性膜糖タンパク質群である。セレクチンは、カルシウム依存性レクチンに対して構造相同性を有するN-末端細胞外ドメイン、続いて上皮成長因子に対して相同のドメイン、及び相補的調節タンパク質中に見いだされる配列と類似する9つのコンセンサス反復(CR)を含有する。炎症応答に関与すると考えられる3つの主要なセレクチン:P-セレクチン;E-セレクチン;及びL-セレクチンがある。CD62P、GMP-140及びPADGEMとしても知られるP-セレクチン、つまり最も大きなセレクチンは、活性化内皮上に発現され;ELAM-1としても知られているE-セレクチンは、化学的に誘発された、又はサイトカインで誘発された炎症を有する内皮上に発現され;LECAM-1、LAM-1、Mel-14抗原、gp90mel、及びLeu8/TQ-1抗原としても知られるL-セレクチンは、最も小さなセレクチンであり、やはりほとんどの白血球上に見いだされる。3つの全てのセレクチンは、少なくとも一部は炭水化物成分を介してセレクチン結合リガンドに結合すると考えられる。
【0006】
捕捉中、P-セレクチンはその主な白血球リガンドであるP-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)に結合すると考えられる。P-セレクチンの他のリガンドは、CD24及びまだ特徴付けされていないリガンドを含む。機能性PSGL-1の構造は、シアリル-ルイスx成分を含む。加えて、捕捉中、L-セレクチンは内皮細胞上のそのリガンドに結合する。L-セレクチンは3つの既知の対向受容体又はリガンド、MAdCAM-1、GlyCAM-1、及びCD34と相互作用するが、捕捉に関与する正確なリガンド又は対向受容体は未知である。
【0007】
白血球が捕捉されると、白血球は内皮に一時的に付着し、そして内皮に沿って「ローリング」を開始する。「ローリング」という用語は、内皮と白血球との間の相対運動から生じる流体抵抗の存在において、活性化内皮に沿って白血球が文字通り転がることを意味する。ローリングにはP-セレクチン、L-セレクチン及びE-セレクチンが関与すると考えられる。P-セレクチンとPSGL-1との結合は、内皮を横切る白血球の「ローリング」を主に仲介すると考えられる。
【0008】
負傷部位又は感染部位における細胞によって生成された炎症促進サイトカイン、例えばインターロイキン-1(IL-1)、及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、内皮を刺激することにより、ケモカイン、例えばインターロイキン-8(IL-8)、及びインテグリン結合リガンド、例えば細胞内付着分子(ICAM)及び血管細胞付着分子(VCAM)を、基底層の反対側の内皮細胞表面上に生成する。基底層の反対側の内皮細胞表面上にケモカインを保持し、この場所でケモカインはローリングする白血球表面上でケモカイン受容体と相互作用する。この相互作用は、白血球表面上で、インテグリンと呼ばれる分子の活性化を誘発する。インテグリンは、ヘテロ二量体性膜貫通型糖タンパク質から成る群であり、これらの糖タンパク質は、基底膜の細胞外マトリックス・タンパク質に、又はその他の細胞上のリガンドに細胞を付着させる。インテグリンは大きなαサブユニットと小さなβサブユニットとから成る。哺乳動物のインテグリンは、種々異なるαサブユニットと連携する共通のβサブユニットを共有するいくつかの亜群を形成する。β2インテグリン(「CD-18群」)は、4つの異なるヘテロ二量体:CD11a/CD18(白血球機能と連携する抗原-1(LFA-1));CD11b/CD18(Mac-1);CD11c/CD18(p150,95)、及びCD11d/CD18を含む。白血球上のβ1インテグリン亜群の最も重要なメンバは、Very Late 抗原4(VLA-4、CD49d/CD29、α4β1)である。ケモカインによるこれらのインテグリンの活性化は、低速でローリングする白血球が「拘束」され、これらが内皮のICAM、VCAM及び内皮細胞のその他のインテグリン結合リガンド、例えばコラーゲン、フィブロネクチン及びフィブリノゲンに強く結合するのを可能にする。白血球は一旦内皮に結合されると扁平になり、そして内皮細胞間を押し分けることにより、「遊出」と呼ばれるプロセスを介して血管を出て損傷組織に入る。遊出は、血小板・内皮細胞接着分子-1(PECAM-1)、シャンクション接着分子(JAM)、及び場合によっては膜貫通型タンパク質CD99によって仲介されると考えられる。
【0009】
白血球は感染や負傷と戦う上で重要ではあるが、白血球自身は組織損傷を促進することができる。異常な炎症応答中、白血球は血管壁又は負傷していない組織において毒性物質を放出することにより、著しい組織損傷を引き起こす。或いは、白血球は毛細血管壁に粘着するか、又は内皮がこれらの細胞で覆われるようになる程度まで小静脈内で凝集するおそれがある。「舗装(pavementing)」と呼ばれるこのような現象は、動脈硬化及び関連疾患の発生に関連することがある。このような異常な炎症応答は、種々の他の臨床的障害の病原に関与している。これらの臨床的障害は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS);心筋梗塞、ショック、発作、又は臓器移植に続く虚血-再灌流傷害;急性及び慢性の同種移植拒絶反応;脈管炎;敗血症;関節リウマチ;並びに炎症性皮膚疾患を含む。
【0010】
これらの種々の炎症性疾患に関与する白血球遊走プロセスを研究するための方法及び装置が、従来技術においていくつか存在する。例えば1つの方法は、マイクロタイター・プレートの表面上に、分離された内皮細胞の単層を平板培養し、これらの細胞を化学誘引物質で活性化し、次いでプレート内に標識白血球を置くことを伴う。試験薬、例えば付着阻害剤をプレートに任意に加えることができる。内皮細胞単層に付着したままの白血球の数を測定する。この方法の顕著な欠点は、白血球が剪断流の存在下において内皮細胞に露出されず、ひいてはこの方法がin vivoの生理学的条件をシミュレートしないことである。
【0011】
別の方法は、好適な培地中の分離白血球の懸濁液を、顕微鏡スライドガラス上に載せられたヒト血管組織試料と接触させ、次いで組織を細胞懸濁液と一緒に回転テーブル上でインキュベートすることを伴う。付着した細胞を固定してカウントする。細胞が固定されるので、このような方法は、リアルタイムでの白血球遊走の観察を妨げる。加えて、このような方法はヒトの血管組織を必要とする。ヒトの血管組織は、得るのが難しく高価なことがある。
【0012】
白血球遊走を研究するための、当業者に知られた別の方法は、マイクロスライドと呼ばれる2つのガラス管から成る装置を含む。一方のマイクロスライドは他方のマイクロスライド内に挿入することができる。小さい方のマイクロスライドを大きい方のマイクロスライド内に挿入することにより、選択された付着分子が存在する平らな表面を有する流動チャネルを形成する。付着分子が固定化された表面上に、シリンジ・ポンプを使用して、流動チャネルを通して白血球の懸濁液を灌流させる。次いで白血球のローリング及び付着を観察する。この装置のサイズ及び構成により、この装置はかなりの取扱い及び操作を必要とする。
【0013】
炎症応答中の白血球遊走を研究する別の装置が、「Device and Method for Analysis of Blood Components and Identifying Inhibitors and Promoters of the Inflammatory Response」と題される米国特許第5,460,945号明細書(Springer他)に記載されている。この装置は、サイズの嵩張るいくつかの種々異なる構成部分から成っている。このようなものとして、この装置は余分な取扱いと位置決めとを必要とし、内皮単層を汚染又は損傷するリスクをもたらす。この装置はまた、多数の細胞、及びその結果多量の試薬の使用を必要とする。
【0014】
したがって、血管の生理学的条件をシミュレートする、内皮に沿った白血球遊走を研究するための改善された装置が必要である。また、白血球と内皮との相互作用に潜在的に影響を与える試験薬のハイスループットスクリーニングを可能にし、しかも当業者に現在知られている装置によって必要とされるほどにはアッセイ1回当たりの白血球数を必要としない装置が必要である。本発明はこれらの必要性を満たす。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明は、その中の複数のチャンバを画定するハウジングを含む装置を含む、白血球遊走をモニタリングするためのシステムを提供する。これらの複数のチャンバのそれぞれは、1つ以上の第1ウェルを含む第1ウェル領域と、1つ以上の第2ウェルを含む第2ウェル領域と、該第1ウェル領域と該第2ウェル領域とを互いに接続する1つ以上のチャネルを含むチャネル領域とを含む。システムはさらに、第1濃度の第1物質を有する第1流体流、及び第2濃度の第2物質を有する第2流体流を含み、該第1濃度と該第2濃度とは互いに異なっており、そして該第1流体流及び該第2流体流は、該複数のチャンバのうちの1つ以上と流体連通している。
【0016】
本発明はまた、白血球遊走をモニタリングする方法であって、内皮細胞を表面上に配置し、1つ以上の物質の濃度勾配を含む流体を、実質的に層流の条件下で該表面に沿って進めることを含む、方法を提供する。濃度勾配は流動方向に対して実質的に垂直である。この方法はさらに、該表面に、白血球を含む試料を露出し、そして該白血球と該内皮細胞との相互作用を観察することを含む。
【0017】
本発明はさらに、その中の複数のチャンバを画定するハウジングを含む装置を提供することを含む、白血球遊走をモニタリングする方法を提供する。これらの複数のチャンバのそれぞれは、1つ以上の第1ウェルを含む第1ウェル領域と、1つ以上の第2ウェルを含む第2ウェル領域と、該第1ウェル領域と該第2ウェル領域とを互いに接続する1つ以上のチャネルを含むチャネル領域とを含む。この方法はさらに、1つ以上の白血球遊走メディエーター又は内皮細胞を該1つ以上のチャネル内に配置し、層流によって該1つ以上のチャネルに、白血球を含む試料を送達し、そして該白血球と該1つ以上の白血球遊走メディエーターとの相互作用、又は白血球と該内皮細胞との相互作用を観察することを含む。
【0018】
詳細な説明
定義
言うまでもなく、本明細書における用語法及び定義は、特定の実施態様を説明する目的でのみ使用されるものであって、本発明を限定しようとするものではない。
【0019】
本明細書中に使用された用語「白血球」は、好中球、好酸球、好塩基球、単球、及びB細胞及びT細胞を含むリンパ球を含む顆粒球、並びに、特に断りのない場合には血小板を意味する。用語「白血球」は、正常血液試料及び病理学的血液試料の両方から得られた白血球を含む。
【0020】
「白血球遊走カスケード」という用語は、血管を内張りする内皮に沿った白血球遊走に関与する逐次事象のカスケードを意味する。白血球遊走カスケードは、内皮上の、又は内皮に沿った、又は内皮を通る白血球の捕捉、ローリング、拘束、及び遊出を含む。
【0021】
本発明中に使用される「白血球遊走メディエーター」は、血管を内張りする内皮に沿った白血球の遊走を仲介する任意の分子を意味する。「白血球遊走メディエーター」との関連において使用される「仲介する」という用語は、例えば白血球遊走メディエーターのリガンド又は対向受容体に結合することにより、白血球の遊走に影響を与えることを意味する。具体的には、「白血球遊走メディエーター」は、白血球遊走カスケードに関与する任意の分子を意味する。このようなものとして、白血球遊走メディエーターは、白血球捕捉メディエーター、白血球ローリングメディエーター、白血球拘束メディエーター、白血球遊出メディエーター、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0022】
本明細書中に使用される用語「捕捉」は、白血球遊走カスケードにおける所定のステップであって、白血球の血管内皮による束縛又は白血球と血管内皮との最初の接触を特徴とし、これにより、内皮に沿った白血球の動作が、遊離流動白血球を含む流体の流れに対して一時的に遅れるようなステップを意味する。
【0023】
本明細書中に使用される用語「白血球捕捉メディエーター」は、血管の内皮上における白血球の捕捉を仲介する白血球遊走メディエーターを意味する。白血球遊走メディエーターの一例としては、P-セレクチン及びL-セレクチン結合リガンドが挙げられる。
【0024】
「捕捉メディエーター結合パートナー」という用語は、白血球捕捉メディエーターを結合する任意のリガンド又は対向受容体を意味する。捕捉メディエーター結合パートナーの一例としては、PSGL-1及びL-セレクチンが挙げられる。
【0025】
本明細書中に使用される用語「ローリング」は、白血球遊走カスケードにおける所定のステップを意味し、内皮上の受容体間で血管の内皮に沿って白血球がローリングすることを特徴とし、さらに、白血球が内皮リガンド又は対向受容体との付着結合を形成し、そして破断することを特徴とする。
【0026】
本明細書中に使用される用語「白血球ローリングメディエーター」は、血管の内皮に沿った白血球のローリングを仲介する任意の白血球遊走メディエーターを意味する。白血球ローリングメディエーターの一例としては、P-セレクチン、E-セレクチン、及びL-セレクチン結合リガンドが挙げられる。
【0027】
本明細書中に使用される用語「ローリングメディエーター結合パートナー」は、白血球ローリングメディエーターに結合する任意のリガンド又は対向受容体を意味する。「ローリングメディエーター結合パートナー」の一例としては、PSGL-1、E-セレクチン結合リガンド、及びL-セレクチンが挙げられる。
【0028】
本明細書中に使用される用語「拘束」は、血管の内皮に白血球が付着することを特徴とする白血球遊走カスケードにおける1ステップを意味する。
【0029】
本明細書中に使用される用語「白血球拘束メディエーター」は、血管の内皮上における白血球の拘束を仲介する任意の白血球遊走メディエーターを意味する。拘束メディエーターの一例としては、インテグリン結合リガンド、例えば、白血球表面上で発現されるインテグリンと結合するICAM-1、ICAM-2及びVCAM-1が挙げられる。
【0030】
本明細書中に使用される用語「拘束メディエーター結合パートナー」は、白血球拘束メディエーターに結合する任意のリガンド又は対向受容体を意味する。「拘束メディエーター結合パートナー」の一例としては、LFA-1、Mac-1、P150,95、VLA-4及びVLA-5が挙げられる。
【0031】
本明細書中に使用される用語「遊出」は、血管から周辺組織へ、血管内皮の細胞間の通路を通って白血球が出ることを特徴とする、白血球遊走カスケードにおける1ステップを意味する。
【0032】
本明細書中に使用される用語「白血球遊出メディエーター」は、血管内皮を通る白血球の遊出を仲介する任意の白血球遊走メディエーターを意味する。白血球遊出メディエーターの一例としては、PECAM-1及びJAMが挙げられる。
【0033】
本明細書中に使用される用語「遊出結合パートナー」は、白血球遊出メディエーターに結合する任意のリガンド又は対向受容体を意味する。
【0034】
本明細書中に使用される用語「生理学的剪断流」は、正常条件及び病理学的条件下の剪断流を含む。正常条件下における生理学的剪断流は、約0.1〜約20ダイン/cm2である。
【0035】
本明細書中に使用される用語「試験薬」は、別の化学分子又は化合物と相互作用する能力を見極めるために本発明において試験されるべき任意の化学分子又は化合物を意味する。例えば試験薬は、捕捉、ローリング、拘束又は遊出を阻害又は促進することによって白血球遊走を阻害又は促進するかどうかを見極めるために試験することができる。
【0036】
本明細書中に使用される用語「ピッチ」は、装置の試験配向における隣接ウェル間のそれぞれの鉛直方向中心線間の距離である。
【0037】
本明細書中に使用される用語「ウェル領域」は、1つ又は複数のウェルを含む領域を意味する。
【0038】
本明細書中に使用される用語「ウェル」は、流体を受容することができる任意の空洞を示すものである。
【0039】
本明細書中に使用される用語「チャネル領域」は、1つ又は複数のチャネルを含む領域を意味する一方、「チャネル」は任意の通路を意味する。
【0040】
本発明の関連において、「共形接触」とは、平面的又は非平面的な表面との実質的に流体密な、形状適合接触を意味するものとし、「可逆共形接触」とは、共形接触を形成する構成部材の構造完全性を犠牲にすることなしに中断することができる共形接触を意味するものとする。
【0041】
本発明の関連において、装置の「試験配向」は、白血球遊走のモニタリング中の装置の空間的配向を意味するものとし、用語「上部(頂)」「底」「上」及び「側方」は、装置の試験配向に対して定義される。1の実施態様の場合、白血球遊走をモニタリングする方法において使用するための装置の試験配向は、任意の細胞のチャネル領域に沿った遊走通路が、実質的に水平方向の平面内に発生するような装置の配向であることを検討する。別の実施態様の場合、白血球遊走をモニタリングするのに使用するための装置の配向は、任意の細胞のチャネル領域に沿った遊走通路が、実質的に鉛直方向の平面内に発生するような装置の配向であることを検討する。
【0042】
本発明は一般に、細胞と基層との相互作用をin vitroでモニタリングするための装置及び方法を提供する。本発明の装置及び方法によってモニタリングすることができる細胞型の一例としては、白血球、赤血球、血小板、非血液細胞、及び腫瘍細胞を含む。これらの細胞と相互作用することができる基層の型の一例としては、内皮、固定化リガンド、物理吸着付着分子及びローリング分子、並びに基底層又は基底層擬似体が挙げられる。具体的には、本発明は、剪断流の存在において白血球遊走をin vitroでモニタリングすることにより、in vivoでの炎症応答に関与する事象のカスケードを研究するための装置及び方法を提供する。本発明はまた、これらの事象を潜在的に標的とする試験薬をハイスループットスクリーニングするための装置及び方法を提供する。具体的に、本発明は、内皮上の、又は内皮に沿った、又は内皮を通る白血球の捕捉、ローリング、拘束及び遊出を研究し、標的とすることに関する(このような事象をまとめて白血球遊走カスケードと呼ぶ)。
【0043】
図1〜6に概略的に示すように、装置10は一般に、図1〜6に示すチャンバ14の実施態様のような複数のチャンバ14を画定するハウジング12を含む。各チャンバ14は、1つ以上の第1ウェル18を含む第1ウェル領域16と、1つ以上の第2ウェル22を含む第2ウェル領域20とを含む。チャンバ14はさらに、第1ウェル領域16と第2ウェル領域20とを互いに接続する1つ以上のチャネル26を含むチャネル領域24を含む。図5及び6に示すように、好ましい実施態様の場合、複数のチャンバのうちのそれぞれのチャンバの第1ウェル領域16及び第2ウェル領域20は、標準マイクロタイター・プレートのピッチと調和するように互いに相対配置されている。標準マイクロタイター・プレートのピッチと調和するように、複数のチャンバを互いに相対配置することもできる。一般に、第1ウェル18及び第2ウェル22は、白血球を含む試料を受容するように適合され、また、チャネル26は、内皮細胞又は白血球遊走メディエーターをその上に受容するように適合され、しかもそれに沿った生理的剪断流を支持するように構成されている。
【0044】
本発明の1の実施態様の場合、チャネル26内に内皮細胞が配置される。内皮細胞は、チャネル26への露出前に活性化することができ、或いは、チャネル26への露出時に内皮細胞の基底層とは反対側の表面上に固定化されたケモカインを有することができる。チャネル26内には種々の細胞親和性物質を配置することにより、内皮細胞の付着を支援することができる。細胞親和性物質は一般に、細胞に対する親和性を有する物質、又は表面に対する細胞付着を促進する物質であり、そして例えば、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリン、基底層、MATRIGEL(登録商標)、又は他のヒドロゲルを含む。
【0045】
本発明の別の実施態様の場合、チャネル26内には、複数の白血球遊走メディエーターが配置されている。好ましくは、複数の白血球遊走メディエーターは、1つ以上の第1白血球遊走メディエーターと、1つ以上の第2白血球遊走メディエーターとを含み、1つ以上の第1白血球遊走メディエーターと1つ以上の第2白血球遊走メディエーターとは互いに異なる。これらの白血球遊走メディエーターをチャネル26内に配置することにより、第1ウェル20から第2ウェル22へ向かって濃度が増大する、チャンバ14の長手方向軸に沿った表面濃度勾配を形成する。
【0046】
本発明のさらに別の実施態様の場合、チャネル26内にケモカインを配置することにより、ケモカインはローリングする白血球の表面上のケモカイン受容体と相互作用する。
【0047】
本発明はまた、白血球遊走をモニタリングする方法を検討する。チャネル26内に内皮細胞が配置されている1の実施態様の場合、白血球を含む試料を第1ウェル18(又は第2ウェル22)内に配置し、試料がチャネル26に沿って流れることを可能にし、白血球と内皮細胞との相互作用(相互作用がないことを含む)を観察し、そして白血球を含む試料を、白血球がチャネル26を出るのに伴って第2ウェル22(又は第1ウェル18)内に捕集する。白血球含有試料を第1ウェル18(又は第2ウェル22)に加える前にチャネル26に化学誘引物質を加えることにより、内皮細胞を活性化することができる。1の実施態様の場合、チャネル26内に試験薬を置き、そして試験薬の存在下における白血球と内皮細胞との相互作用を観察する。
【0048】
チャネル26内に白血球遊走メディエーターが配置されている1の実施態様の場合、白血球を含む試料を第1ウェル18(又は第2ウェル22)内に配置し、試料がチャネル26に沿って流れることを可能にし、白血球と白血球遊走メディエーターとの相互作用(相互作用がないことを含む)を観察し、そして白血球を含む試料を、白血球がチャネル26を出るのに伴って第2ウェル22(又は第1ウェル18)内に捕集する。1の実施態様の場合、チャネル26内に試験薬を置き、そして試験薬の存在下における白血球と白血球遊走メディエーターとの相互作用を観察する。
【0049】
装置10、又は装置10の要素は、工業用標準マイクロタイター・プレートのフットプリントと調和することができるので、装置10の利点は、装置10を使用することにより、同じ装置において多数のアッセイを同時に実施し、そして種々の試験薬をハイスループットスクリーニングできることである。図5に示す好ましい1の実施態様の場合、複数のチャンバ14のうちのそれぞれ1つのチャンバの第1ウェル領域16及び第2ウェル領域20は、標準マイクロタイター・プレートのピッチと調和するように相対配置されている。Pをそれぞれのウェル18/22の間のピッチとすると、ウェルは、24-ウェルマイクロタイター・プレート、96-ウェルマイクロタイター・プレート、384-ウェルマイクロタイター・プレート、768-ウェルマイクロタイター・プレート及び1536-ウェルマイクロタイター・プレートのうちの1つのプレートのピッチと調和するように、ウェルを互いに相対配置することができる。例えば、図5に示すチャンバ14の構成において、ピッチPは約9mmに設定されることになる。好ましくは装置10自体が工業用標準マイクロタイター・プレートのフットプリントに適合する。このようなものとして、装置10は好ましくは、工業用標準マイクロタイター・プレートと同じ外側寸法及びサイズ全体を有している。例えば、図6に示された装置10の構成において、装置10は、標準的な96ウェルプレートのフォーマットで構成された48個のチャンバを含み、これにより、それぞれのウェル18/22は標準的な96ウェルマイクロタイター・プレートのピッチと調和するように相対配置され、各ウェルはプレートの各ウェルのスペースに調和する。この実施態様の場合、48の試験を行うことができる。或いは、図6Aに示すように、標準マイクロタイター・プレートのピッチと調和するように、チャンバ14を互いに相対配置することができる。この別の実施態様の場合、チャンバ14のサイズは、チャンバ14が、標準マイクロタイター・プレートの単一のウェルに通常必要とされる面積に適合するように形成される。例えば、この実施態様の場合、96ウェルマイクロタイター・プレート構成のフットプリントにおいて設計された装置10は、96個のチャンバを有し、ひいては96の試験が実施されるのを可能にする。標準マイクロタイター・プレートの正確な寸法及び仕様に合致することにより、装置10の実施態様は、流体取扱い、保管、登録及び検出の既存の基盤に有利に適合することになる。装置10の実施態様はまた、ロボットによる流体取扱い及び自動的な検出及びデータ分析を可能にするので、ハイスループットスクリーニングを導く。ロボット・システム及び自動システムを使用することにより、アッセイの準備及び実施、並びにアッセイ結果の分析にかかる時間も低減される。加えて、自動システムを使用することにより、装置10の使用はまた、アッセイの準備及び実施、並びにデータの分析に際して人的エラーの発生を低減する。さらに、装置10のウェル18/22のサイズ、又はチャンバ12全体のサイズがマイクロタイター・プレートのウェルのサイズと調和するので、個々のアッセイを実施するのに必要な白血球の数の範囲は、わずか約103〜約106である。このことは、希少な白血球個体群、例えば好塩基球又は或る特定のリンパ球部分集合の研究を可能にする。加えて、白血球遊走に対する試験薬の効果をモニタリングするアッセイを行うために、試験薬、例えば白血球遊走の阻害剤及び促進剤を大量に使用することは必要とされない。
【0050】
装置10の好ましい構成に基づいて、本発明はまた、複数の試験薬のスクリーニング法を検討する。この実施態様の場合、試験薬のスクリーニング法は、複数のチャンバを画定するハウジングを含む装置を提供することを含む。各チャンバは:1つ以上の第1ウェルを含む第1ウェル領域と;1つ以上の第2ウェルを含む第2ウェル領域と;該第1ウェル領域と該第2ウェル領域とを互いに接続する1つ以上のチャネルを含むチャネル領域とを含む。1の実施態様の場合、該1つ以上のチャネルには、1つ以上の白血球遊走メディエーターが配置されている。別の実施態様の場合、該1つ以上のチャネルには、内皮細胞が配置されている。好ましい両実施態様において、一方では複数のチャンバのうちの1つ以上のチャンバが、また他方では複数のチャンバのうちの各チャンバの第1ウェル領域及び第2ウェル領域が、標準マイクロタイター・プレートのピッチと調和するように互いに相対配置されている。試験薬のスクリーニング法はさらに、複数のチャンバのうちの各チャンバのチャネルのそれぞれに白血球を提供し;複数のチャンバのうちの各チャンバのチャネルのそれぞれに複数の試験薬のうちの1つ以上を置き;そして白血球と内皮細胞との相互作用、又は試験薬の存在下における白血球と1つ以上の白血球遊走メディエーターとの相互作用を観察することを含む。例えば、試験薬が、捕捉されるか、拘束されるか、又は遊出する白血球の数に対する効果を有するかどうか、並びに、試験薬がチャネル26に沿ってローリングする白血球の速度及び数に対する効果を有するかどうかを見極めることができる。試験薬は、任意の所望の生物学的、化学的、又は電気的物質を含んでよい。このような物質の一例としては、白血球遊走阻害剤、白血球遊走促進剤又は任意のその他の治療薬が挙げられる。試験薬の更なる例は、タンパク質、核酸、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ホルモン、酵素、小分子又は医薬品を含む。この方法は、複数の試験薬が単一の装置10内でスクリーニングされ得る創薬分野において特に有用である。したがって、試験薬のそれぞれが互いに異なっており、各チャネルに単一の試験薬を置くことが好ましい。もちろん、試験薬の組み合わせの効果を試験することが望ましい場合、例えば2つ以上の試験薬の相乗効果があるかを見極める場合には、複数の試験薬のうち2つ以上の試験薬を複数のチャンバのうちのそれぞれのチャンバの各チャネル内に置くことができる。
【0051】
本発明の装置を使用することにより、正常な生理学的剪断流条件又は病態生理学的剪断流条件下で、白血球遊走カスケードのステップをモニタリングすることもできる。正常な生理学的剪断流条件は、非病理学的状態中の剪断流速度を意味し、そしてその範囲は約0.1ダイン/cm2〜約20ダイン/cm2である。病態生理学的剪断流条件は、炎症応答中の剪断流速度を意味し、そして一般にその疾患状態に応じて変化する。生理学的剪断流は静水学的圧力、又はミクロ毛管作用によって生成されるのが好ましいが、しかし流れは、当業者に知られた任意の手段によって生成することができる。例えば、白血球含有試料が第1ウェル18を介してチャネル26内に導入されるようになっている場合、第2ウェル22に隣接する真空を介して圧力を加えることによって、又は第1ウェル18に隣接するシリンジ・ポンプを介して圧力を加えることによって、生理学的剪断流を生成することができる。剪断流は、チャネルの寸法を変えることにより、或いは、真空又はシリンジ・ポンプを介して加えられる圧力の程度を変えることにより操作することができる。或いは、白血球は、チャネル16内にパルス状に導入することができる。
【0052】
上述のような、装置10の特定の実施態様及びこれらの実施態様を用いる方法に関して、チャネル26には内皮細胞又は白血球遊走メディエーターが配置されている。内皮細胞はチャネル26の任意の表面上に配置することができる。好ましい実施態様の場合、内皮細胞はチャネル26の底面及び側面上に位置している。内皮細胞はチャネル26内に均一に配置することができ、不連続的なパッチの形態で配置することができ、又は濃度勾配に沿って配置して、内皮細胞の濃度を第1ウェル18から第2ウェル22へ低減することができる。内皮細胞は、剪断流の存在下又は不存在下においてチャネル26上で成長することができる。チャネル26内に内皮細胞が配置されている1の実施態様の場合、いくつかの異なるアッセイを実施することにより、白血球遊走カスケード中の白血球と内皮細胞との相互作用を観察することができる。例えば、ローリングプロセスを研究するために、第1ウェル18又は第2ウェル22を介して、白血球含有試料をチャネル26内に導入する。次いで、ローリングする白血球の数並びに白血球のローリング速度を測定することができる。例えば、白血球と内皮細胞との相互作用をブロックする阻害剤をチャネル26に添加することにより、ローリングの阻害を測定するアッセイを実施することもできる。同様に、例えば、白血球と内皮細胞との相互作用を促進する促進剤をチャネル26に添加することにより、ローリングの増強を測定するアッセイを実施することもできる。試験薬をチャネル26に添加することにより、白血球と内皮細胞との相互作用に対する試験薬の効果を見極めることもできる。
【0053】
拘束プロセスを研究する際には、好ましくは化学誘引物質をチャネル26内に導入することにより、内皮を「活性化」する。化学誘引物質は、内皮を刺激してインテグリン結合リガンド、例えばICAM及びVCAMを発現させるのに好適な任意の分子であってよい。化学誘引物質の一例としては、サイトカイン、例えばIL-1及びTNF-αが挙げられる。次いで、白血球を含む試料を、第1ウェル18又は第2ウェル22を介してチャネル26内に導入する。好ましくは、白血球を含む試料を、白血球表面上で拘束メディエーター結合パートナー、例えばインテグリンの活性化を誘発することができる化学誘引物質と一緒にプレインキュベートする。化学誘引物質は、白血球によるインテグリン発現を誘発することができる任意の好適な物質であり、例えばホルミル・ペプチド、インタークリン、IL-8、GRO/MGSA、NAP2、ENA-78、MCP-1/MCAF、RANTES、I-309、その他のペプチド、血小板活性化因子(PAF)、リンフォカイン、コラーゲン、フィブリン、及びヒスタミンを含む。次いで拘束細胞の数を測定することができる。例えば、白血球表面又は内皮上での化学誘引物質と化学誘引物質受容体との相互作用をブロックする阻害剤、又は白血球拘束メディエーターと拘束メディエーター結合パートナーとの相互作用をブロックする阻害剤を添加することにより、拘束の阻害を測定するアッセイを実施することもできる。試験薬をチャネル26に添加することにより、試験薬の存在下における白血球と内皮細胞との相互作用を見極めることもできる。
【0054】
遊出プロセスの試験に関する別の実施態様の場合、内皮細胞の層をチャネル26内に置く。in vivo条件をより厳密にシミュレートするための好ましい実施態様の場合、内皮細胞をチャネル26に添加する前に、チャネル26に先ずフィブロネクチンの層、又は任意のその他の基底膜擬似体をコーティングすることができる。好ましくは内皮細胞を、白血球含有試料の導入前に、RANTES又は単球化学誘引性タンパク質(MCP-3又はMCP-4)を含む、エオタキシン又はケモカインに露出する。次いで、白血球を含む試料を、第1ウェル18又は第2ウェル22を介してチャネル26内に導入する。好ましくは白血球を、白血球表面上で拘束メディエーター結合パートナー、例えばインテグリンの活性化を誘発することができる化学誘引物質と一緒にプレインキュベートする。白血球がチャネル26に沿って流れるのが可能になったあと、内皮を通って遊出した細胞の数をカウントする。遊出した細胞は、顕微鏡下で扁平に、そして相が暗く見えることにより特徴付けされる。扁平で相が暗い細胞は、顕微鏡を使用して白血球及び内皮細胞の焦点面を観察することにより、内皮細胞単層下に位置するものとして確認することができる。例えば定量化時点で細胞の50%超が内皮細胞単層下に位置する場合、細胞は遊出したと考えることができる。遊出率は、遊出した細胞の数を、カウントされた細胞総数で割算したものとして表現することができる。例えば内皮の活性化に関与する化学誘引物質と結合する内皮細胞上の受容体をブロックし、次いで内皮を横切って遊出する細胞の数を測定することにより、遊出の阻害を試験することもできる。チャネル26内に試験薬を導入することにより、試験薬の存在下における白血球と内皮細胞との相互作用を見極めることもできる。
【0055】
別の実施態様の場合、チャネル26内に配置された内皮細胞は、既知の分子生物学技術によって変更又は改変されている。例えば、細胞を改変することにより、特定の遺伝子を過剰発現させるか、又は白血球遊走カスケードに関与する種々の白血球遊走メディエーターをコードする特定の遺伝子を発現させないようにすることができる。このような実施態様は、正確な白血球遊走メディエーターの発現のコントロールを可能にし、白血球遊走カスケードに関与するメディエーターのより大きな操作を可能にする。
【0056】
例えば、内皮細胞を遺伝学的に改変することにより、白血球遊走カスケードに関与するタンパク質をコードすると考えられる遺伝子の発現を低減又は阻害し、これにより白血球遊走カスケードに関与するタンパク質の解明を支援することができる。細胞の遺伝学的改変法は当業者に知られている。米国特許第6,025,192号明細書(Beach他)には、このような1つの方法が開示されており、この方法は複製欠損のレトロウィルス・ベクター、このようなベクターを含むライブラリ、レトロウィルス・パッケージング細胞株との関連においてこのようなベクターによって生成されたレトロウィルス粒子、この発明のレトロウィルス由来の組み込まれたプロウィルス配列、この発明の組み込まれたプロウィルス配列から切り取られた環状プロウィルス配列を伴う。
【0057】
別の例の場合、内皮細胞をベクターでトランスフェクトすることにより、その内皮細胞によって発現されるタンパク質を遺伝子改変することができる。哺乳動物細胞の種々のトランスフェクト技術に関しては、Keown他(1990)のMethods in Enzymology 185:527-537を参照されたい。例えば、内皮細胞を改変することにより、試験されるべきタンパク質の変異形を発現させることができる。例えば、或る特定のタンパク質がカスケードに関与する場合、この特定タンパク質を発現させる遺伝子を改変して変異形を発現させることができる。次いで本発明の装置及びアッセイを用いて、カスケードの種々の部分に対するこの変異形の効果をモニタリングすることができる。
【0058】
タンパク質をコードする配列において欠失、付加又は置換を行うことにより、当業者に知られた技術を用いて、変異形を作り出すことができる。ポリペプチドの「変異形」とは、1つ以上のアミノ酸によって変更を加えられるアミノ酸配列として定義される。同様の小規模変異形も、アミノ酸の欠失又は挿入、又はその両方を含むことができる。当業者によく知られたコンピュータ・プログラム、例えばDNAStarソフトウェアを使用して、どのそしていくつのアミノ酸残基を生物学的又は免疫学的活性を無くすことなしに置換、挿入又は欠失することができるかを見極める上での指針を見いだすことができる。「欠失」とは、天然のポリペプチドのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と比較して、1つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチド残基がそれぞれ存在しない、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の変化として定義される。「挿入」又は「付加」は、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列が変化して、天然のポリペプチドのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と比較して、それぞれ1つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチド残基が付加されることである。「置換」は、天然のポリペプチドのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と比較して、1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドがそれぞれ、異なるアミノ酸又はヌクレオチドによって置き換えられる結果生じる。変異形は「保存的」変化を有することができ、この場合置換されたアミノ酸は、例えばロイシンをイソロイシンで置き換えた場合のように、類似の構造特性又は化学特性を有する。より稀なことではあるが、変異形は「非保存的」変化を有することができ、この場合置換されたアミノ酸は、例えばグリシンをトリプトファンで置き換えた場合のように、類似の構造特性又は化学特性を有さない。
【0059】
着目のタンパク質の変異形を形成するのに加えて、既知の遺伝子改変法を用いて、内皮細胞によって発現されるタンパク質の発現を低減又は阻害することができる。例えば、白血球ローリングメディエーター、例えばP-セレクチンを発現させる内皮細胞を遺伝子改変することにより、相同的組換え遺伝子「ノック・アウト」法によって、P-セレクチンの発現を低減又は阻害することができる((例えばCapecchi, Nature, 344:105(1990)及び引用された参考文献;Koller他, Science, 248:1227-1230(1990);Zijlstra他、Nature, 342:435-438(1989)参照(これらのそれぞれを参考のため本明細書に引用する);Sena及びZarling, Nat. Genet., 3:365-372(1993)参照(これを参考のため本明細書に引用する))。標的遺伝子の「ノック・アウト」は、好ましくは標的遺伝子発現が検出不能であるか又は少ないように、標的遺伝子の機能を減少させる、遺伝子配列の変化を意味する。遺伝子のノック・アウトは、遺伝子の機能が実質的に減少してタンパク質発現が検出不能となるか或いはただ取るに足りないレベルで存在するにすぎなくなることを意味する。標的遺伝子の「ノック・イン」は、例えば、標的遺伝子の付加的なコピーを導入することによって、或いは標的遺伝子の内在的コピーの発現を増強可能にする調節配列を作動可能に挿入することによって、標的遺伝子の発現の変化又は発現の増大をもたらす、宿主細胞ゲノムの変化を意味する。
【0060】
内皮細胞による白血球遊走メディエーターの発現も、白血球遊走メディエーターをコードする核酸配列又は核酸配列の一部に対して相補的であるアンチセンス核酸配列を内皮細胞中に提供することにより、低減又は阻害することができる。核酸配列の発現を阻害するためにアンチセンス核酸配列を使用する方法が当業者に知られており、例えばGodson他、J. Biol. Chem., 268:11946-11950(1993)によって記載されている。この文献を参考のため本明細書中に引用する。
【0061】
発現される白血球遊走メディエーターのタイプ及び量のコントロールを含む、研究されるべき白血球遊走メディエーターの正確なコントロールを形成する別の実施態様は、1つ以上の白血球遊走メディエーターがチャネル26内に配置されている装置10の1の実施態様を含む。明瞭さのために、本明細書中に使用される用語「白血球遊走メディエーター」は、特に断りのない限り、1種以上の白血球遊走メディエーターを必ず意味する。チャネル26内に白血球遊走メディエーターを配置することにより、このプロセスをさらに理解するための個々のカスケード事象を含む、白血球遊走カスケードの根底を成すリガンド/受容体相互作用を試験することが可能である。チャネル26内に白血球遊走メディエーターを配置することにより、白血球遊走カスケードの個々の事象の根底を成すリガンド/受容体相互作用を正確に標的とすることも可能になる。
【0062】
例えば1の実施態様の場合、装置10を使用することにより、白血球の捕捉を試験することができ、この場合、チャネル26内に配置された白血球遊走メディエーターが白血球捕捉メディエーターを含むことができる。感染に対する初期免疫応答の結果として、炎症メディエーターは、内皮表面上における付着分子の発現を誘発し、その結果、「活性化内皮」が生じる。白血球と活性化内皮との最初の接触は「捕捉」として知られており、捕捉メディエーターP-セレクチン及び捕捉メディエーター結合パートナーL-セレクチンを含むと考えられる。P-セレクチンは、捕捉プロセスに関与する主要な付着分子であると考えられ、そしてP-セレクチンの主要捕捉メディエーター結合パートナーPSGL-1に対するP-セレクチンの結合は、このプロセスに強く関与している。内皮細胞上のL-セレクチンの正確なリガンドは知られていないものの、L-セレクチンもやはり捕捉に関与している。従って、本発明のこの実施態様の場合、チャネル26内に配置された白血球捕捉メディエーターは、例えばP-セレクチン及び/又はL-セレクチン結合リガンドを含んでよい。
【0063】
本発明の別の実施態様の場合、装置10を使用することにより、白血球のローリングを試験することができる。白血球遊走メディエーターは白血球ローリングメディエーターを含むことができる。白血球はこれらが捕捉されると、内皮に一時的に付着し、内皮に沿ってローリングし始める。白血球のローリングは:ローリングメディエーター、P-セレクチン;ローリングメディエーター結合パートナー、L-セレクチン;及びローリングメディエーター、E-セレクチンを含むと考えられるが、ただし、P-セレクチンはこのプロセスに関与する主要な付着分子と考えられる。したがって、本発明のこの実施態様の場合、チャネル26内に配置された白血球ローリングメディエーターは、例えばP-セレクチン、E-セレクチン及び/又はL-セレクチン・リガンドを含むことができる。
【0064】
本発明の別の実施態様の場合、装置10を使用することにより、白血球の拘束を試験することができる。白血球遊走メディエーターは白血球拘束メディエーターを含むことができる。内皮に沿ってローリングした後、少なくともほとんどの白血球が内皮に付着すると考えられる。内皮上面上の白血球のこの付着又は「拘束」は、化学誘引物質、例えば負傷部位で細胞によって生成されたIL-1及びTNF-αによって開始される。これらの化学誘引物質は内皮を刺激することにより、基底層とは反対側の内皮表面上にケモカイン及び拘束メディエーターを生成する。拘束メディエーターは、例えばインテグリン結合リガンド、例えばICAM-1、ICAM-2及び/又はICAM-3を含むICAM、並びに、VCAM-1及び/又はVCAM-2を含むVCAMを含む。ケモカインはローリング中の白血球の表面上のケモカイン受容体と相互作用する。このことは白血球表面上の拘束メディエーター結合パートナーの活性化を誘発する。拘束メディエーター結合パートナーはインテグリン、例えばLFA-1、Mac-1、及びp150,95、及びVLA-4を含む。これらの拘束メディエーター結合パートナーの活性化によって、低速でローリングする白血球が「拘束」され、これらが内皮上で、拘束メディエーター、例えばICAM-1、VCAM-1及びその他のインテグリン結合リガンド、例えばコラーゲン、フィブロネクチン及びフィブリノゲンに強く結合するようになる。したがって、本発明のこの実施態様の場合、チャネル26内に配置された白血球拘束メディエーターが1つ以上のインテグリン結合リガンドを含むことができる。
【0065】
本発明のさらに別の実施態様の場合、装置10を使用することにより、白血球の遊出を試験することができる。チャネル26内に配置された白血球遊走メディエーターは白血球遊出メディエーターを含む。白血球は一旦内皮に結合されると扁平になり、そして内皮細胞間を押し分けることにより、血管を出て損傷組織に入る。白血球は損傷組織領域内の細胞によって放出された化学誘引物質の化学走性勾配に追従する。遊出に関してはまだほとんどが未知のままであるが、遊出は、血小板・内皮細胞付着分子-1(PECAM-1)によって仲介されると考えられる。その他の潜在的な遊出メディエーターは、ジャンクション接着分子(JAM)、ICAM-1、VE-カドヘリン、LFA-1、IAP、VLA-4、及び場合によっては膜貫通型タンパク質CD99であってよい。したがって、本発明のこの実施態様の場合、チャネル26内に配置された白血球遊出メディエーターは、前述の付着分子のうちの1つ以上、又は遊出に関与すると見極められた任意のその他の分子を含んでよい。
【0066】
本発明の装置10を使用することにより、白血球遊走カスケードのそれぞれの前述のステップを分離した状態で研究するか、白血球遊走カスケードにおける2つ以上のステップの組み合わせを研究するか、又は白血球遊走カスケードを全体として研究することができる。例えば、ローリングを理解し目的とすることが望まれる場合には、好ましくは白血球ローリングメディエーターだけをチャネル26内に配置することができる。白血球のローリング及び拘束の双方を研究したい場合、ローリングメディエーター及び拘束メディエーターの双方をチャネル26内に配置することができる。白血球遊走メディエーター全体を試験することになっている場合には、捕捉メディエーター、ローリングメディエーター、拘束メディエーター及び遊出メディエーターをチャネル26内に配置することができる。或る特定の複数の分子が遊走メディエーターの2つ以上のカテゴリーに属する(例えばPセレクチン及びL-セレクチン結合内皮リガンドは捕捉メディエーター及びローリングメディエーターの両方として機能する)という理由から、また、或る特定の複数のメディエーターが共存してよい(例えば拘束を研究する際には、自由に流れる白血球からの直接的な付着は極めて稀であると考えられるため、ローリングメディエーター及び拘束メディエーターの双方がチャネル26内に存在してよい)という理由から、現在利用可能な知識を用いることによって、或る特定の複数のステップを別々にモニタリングすることができないことは明らかである。炎症応答中に発生する事象のカスケードの特異的詳細に関しては、ほとんどがまだ未知のままであるので、本発明は、これらの事象をコントロールする基本メカニズムをさらに理解するために、白血球遊走をモニタリングするいくつかの方法を検討する。
【0067】
例えば、捕捉プロセスを研究するために、捕捉メディエーターを含む白血球遊走メディエーターをチャネル26内に配置する。白血球を含む試料を、第1ウェル18又は第2ウェル22を介してチャネル26内に導入する。捕捉事象は、捕捉メディエーターを含有するチャネル26の表面に極めて接近して運動する自由に流れる白血球であって、チャネル26上の捕捉メディエーターと潜在的に相互作用可能な唯一の白血球の付着相互作用として定義される。初期の白血球捕捉の種々異なるタイプを特徴付けし、観察し、そしてモニタリングすることができる。例えば、ローリングを開始することなしにチャネル26に短時間付着するだけの白血球を含む一時的捕捉、及びチャネル26上でローリングしたままの白血球を含むローリング捕捉を見極めることができる。捕捉された各タイプの白血球の数を、自由に流れる白血球の総数で割算することにより、最初の白血球捕捉の頻度を見極めることができる。
【0068】
白血球は、当業者に知られた任意の方法を介して、及び「Test Device and Method of Making Same」と題される同時係属中の出願明細書に開示された方法を介して観察することもできる。前記明細書全体を参考のため本明細書中に引用する。すなわち、位相差、蛍光、発光、微分干渉、暗視野、共焦点レーザースキャニング、デジタル・デコンボルーション及びビデオ顕微鏡を含む顕微鏡;高速ビデオ・カメラ;並びに個別センサのアレイを使用することによって、白血球を観察することができる。例えば、デジタル・ムービー・カメラを使用することにより、連続流条件下で白血球活性をモニタリングすることができ、或いは、カメラを使用することにより、所定の時間の特定の時点で静止写真画像を得ることができる。このような観察は、白血球によって発現された捕捉メディエーター結合パートナーと、内皮によって発現された捕捉メディエーターとの相互作用を明らかにする。このような相互作用を検出する際には、細胞を染色剤と一緒にインキュベートし、そして任意の好適な顕微鏡技術を用いて、色又は強度コントラストに基づいて細胞を検出することができる。或いは、蛍光標識を用いて、捕捉メディエーター結合パートナーが捕捉メディエーターと結合するかどうかを検出することもできる。
【0069】
別の実施態様の場合、非標識細胞を使用することにより、遊走をモニタリングすることができる。例えば、複数の細胞型の異種混合物をチャネル26内に導入する。この場合、ただ1つの細胞型がチャネル26内の捕捉メディエーターと相互作用することができる。細胞をチャネル26内に導入したあと、この細胞型の表面上の任意の抗原に対して特異的な抗体を使用することにより、この細胞型を標識することができる。複数の細胞型が捕捉メディエーターと相互作用することができる場合、特異的なフルオロフォアで標識された抗体を使用することにより、種々異なる細胞型を区別することができる。
【0070】
ローリングプロセスの試験に関する別の実施態様の場合、ローリングメディエーターを含む白血球遊走メディエーターをチャネル26内に置く。第1ウェル18又は第2ウェル22を介して、白血球を含む試料をチャネル26内に導入する。ローリングする白血球の数と、白血球のローリング速度とを測定することができる。1の実施態様の場合、装置10にカメラを操作可能に連関させることにより、所定の時間にわたって所定の間隔で、チャネル26に沿ってローリングする白血球の画像を得る。この実施態様の場合、細胞のローリング速度は、カメラによって得られた画像内で細胞が移動する長さ(lフレーム)を測定し、そして画像の露光時間(t露光)を測定することにより検出される。ローリング速度(V)を測定する際に、下記式を使用する:
V=c(lフレーム/t露光)
上記式中、cは細胞が移動した実際の距離を測定するための換算係数である。この換算係数は画像間で変動する場合がある。
【0071】
別の実施態様の場合、種々異なる型の白血球を利用したいくつかの種々異なるアッセイを実施することにより、種々異なる細胞型と関連してローリング速度を特徴付けし、そして比較する。別の実施態様の場合、種々異なるローリングメディエーターを利用したいくつかの種々異なるアッセイを実施することにより、種々異なるローリングメディエーターと関連して、細胞のローリング速度を特徴付けし、そして比較する。
【0072】
拘束プロセスの試験に関する別の実施態様の場合、第1白血球遊走メディエーターと、この第1白血球遊走メディエーターとは異なる第2白血球遊走メディエーターとを含む白血球遊走メディエーターを利用する。明瞭さのために、本明細書中に使用される用語「第1白血球遊走メディエーター」は、1種以上の第1白血球遊走メディエーターを必然的に意味し、また本明細書中に使用される用語「第2白血球遊走メディエーター」は、1種以上の第2白血球遊走メディエーターを必然的に意味する。この実施態様の場合、ローリングメディエーターを含む第1白血球遊走メディエーターと、拘束メディエーターを含む第2白血球遊走メディエーターとをチャネル26内に置く。白血球を含む流体試料を、白血球表面上で拘束メディエーター結合パートナー、例えばインテグリンの活性化を誘発することができる化学誘引物質と一緒にプレインキュベートする。化学誘引物質は、白血球によるインテグリン発現を誘発することができる任意の好適な物質であり、例えばホルミル・ペプチド、インタークリン、IL-8、GRO/MGSA、NAP-2、ENA-78、MCP-1/MCAF、RANTES、I-309、その他のペプチド、血小板活性化因子(PAF)、リンフォカイン、コラーゲン、フィブリン、及びヒスタミンを含む。次いで拘束細胞の数を測定することができ、ローリングメディエーターだけで実施されるものと類似したアッセイを実施することができる。
【0073】
白血球遊走カスケードの根底をなす生物学的影響、具体的には白血球と内皮上のこれらの対向受容体との相互作用をさらに理解するために、装置10を使用することにより、白血球遊走カスケードに対する種々の試験薬の効果を分析することもできる。これらの試験薬は任意の生物学的、化学的、又は電気的物質を含んでよい。このような物質の一例としては、白血球遊走メディエーターの潜在的阻害剤、又は白血球遊走メディエーターによって仲介される遊走の潜在的な促進剤が挙げられる。このような試験薬の更なる例は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素、ホルモン、脂質、炭水化物、小分子又は医薬品を含む。例えば、この装置を使用することにより、捕捉メディエーターと捕捉メディエーター結合パートナーとの相互作用;ローリングメディエーターとローリングメディエーター結合パートナーとの相互作用;拘束メディエーターと拘束メディエーター結合パートナーとの相互作用;及び/又は遊出メディエーターと遊出メディエーター結合パートナーとの相互作用を、競合的又は非競合的に阻害又は促進する阻害剤又は促進剤を識別することができる。前述のように、好ましくは白血球遊走メディエーターは、第1白血球遊走メディエーターと第2白血球遊走メディエーターとを含み、第1白血球遊走メディエーターと第2白血球遊走メディエーターとは互いに異なる。このようなものとして、1の実施態様の場合、試験薬は、第1白血球遊走メディエーターの潜在的阻害剤、第2白血球遊走メディエーターの潜在的阻害剤、又はその両方を含む。別の実施態様の場合、試験薬は、第1白血球遊走メディエーター、第2白血球遊走メディエーター、又はその両方によって仲介される遊走の潜在的促進剤を含む。白血球遊走カスケードの阻害剤及び促進剤を識別した後、これらの阻害剤及び促進剤をin vivoでの有効性に関して試験し、そして最終的に治療薬として利用することができる。
【0074】
捕捉の潜在的阻害剤である試験薬をスクリーニングする際には、捕捉メディエーターを含む白血球遊走メディエーターをチャネル26内に配置する。潜在的に阻害性の試験薬を、白血球を含む流体試料と一緒にインキュベートした後、第1ウェル18又は第2ウェル22を介して試料をチャネル26内に導入する。捕捉事象は、捕捉メディエーターを含有するチャネル26の表面に極めて接近して運動する自由に流れる白血球であって、チャネル26上の捕捉メディエーターと潜在的に相互作用可能な唯一の白血球の付着相互作用として定義される。最初の白血球捕捉の種々異なるタイプを特徴付けし、観察し、そしてモニタリングする。例えば、ローリングを開始することなしにチャネル26に短時間付着するだけの白血球を含む一時的捕捉、及びチャネル26上でローリングしたままの白血球を含むローリング捕捉を見極めることができる。捕捉された各タイプの白血球の数を、自由に流れる白血球の総数で割算することにより、潜在的な阻害性試験薬と一緒にインキュベートされた最初の白血球捕捉の頻度を決定することができ、そして潜在的阻害性試験薬の不存在下における最初の白血球捕捉の頻度と比較することができる。試験薬の存在下における最初の白血球捕捉の頻度が、試験薬の不存在下における最初の白血球捕捉の頻度と比較して低い場合、試験薬は白血球捕捉の阻害剤である可能性が高い。
【0075】
ローリングの潜在的阻害剤である試験薬をスクリーニングする際には、ローリングメディエーターを含む白血球遊走メディエーターをチャネル26内に配置する。潜在的に阻害性の試験薬を、白血球を含む流体試料と一緒にインキュベートした後、第1ウェル18又は第2ウェル22を介して試料をチャネル26内に導入する。或いは、流体試料がチャネル26内を通過中、白血球がローリングを開始した時に、潜在的阻害性試験薬を流体試料中に導入する。(例えば白血球の速度の減少、又は容積当たりのローリングする白血球の数の減少によって測定して)試験薬の不存在下において観察されたローリングと比較して、試験薬の存在下においてローリングが減少する場合には、このことは、該分子が捕捉及び/又はローリングの阻害剤であることを示すことができる。
【0076】
拘束の潜在的阻害性試験薬を試験する際には、第1白血球遊走メディエーターと、この第1白血球遊走メディエーターとは異なる第2白血球遊走メディエーターとを含む白血球遊走メディエーターを利用することができる。この実施態様の場合、ローリングメディエーターを含む第1白血球遊走メディエーターと、拘束メディエーターを含む第2白血球遊走メディエーターとをチャネル26内に置く。白血球を含む流体試料を、白血球表面上で拘束メディエーター結合パートナー、例えばインテグリンの活性化を誘発することができる化学誘引物質と一緒にプレインキュベートする。流体試料を潜在的阻害性試験薬と一緒にプレインキュベートした後、第1ウェル18又は第2ウェル22を介して試料をチャネル26内に導入する。或いは、流体試料がチャネル26内を通過中、白血球がローリングを開始した時に、潜在的阻害性試験薬を流体試料中に導入する。(例えば拘束された白血球のパーセンテージの減少、又は容積当たりの拘束白血球の数の減少によって測定して)試験薬の不存在下において観察された白血球の拘束と比較して、試験薬の存在下において白血球の拘束が減少する場合には、このことは、試験薬が白血球拘束の阻害剤であることができることを示す。
【0077】
装置10を使用して、試験薬が白血球遊走カスケードの効率を増大させることにより、又はその機能性成分(例えば捕捉メディエーター、ローリングメディエーター、拘束メディエーター又は遊出メディエーター)として作用することにより、炎症応答の促進剤として作用するかどうかを識別することができる。このような機能性成分は、(チャンバ14のチャネル26内に以前は存在していたローリングメディエーター又は拘束メディエーターの好適な細胞特異性が欠如していることにより、或いはあらゆるローリングメディエーター又は拘束メディエーターが欠如していることにより)白血球の捕捉、ローリング、拘束又は遊出作用が以前には欠如していた場所で、該成分がこのような作用を促進する能力を有することにより検出することができる。例えば、ローリングメディエーターを含む第1白血球遊走メディエーターと、拘束メディエーターを含む第2白血球遊走メディエーターとがチャネル26内に配置された装置10を使用することにより、白血球遊走において機能性を有する拘束メディエーターを識別することができる。加えて、拘束メディエーター及び/又はローリングメディエーターがチャネル26内に配置された装置10を使用することにより、白血球遊走において機能性を有するローリングメディエーターを識別することができる。
【0078】
拘束メディエーターを識別する際には、流体試料中の白血球表面上に存在するローリング結合パートナーを有するローリングメディエーターをチャネル26内に配置する。流体試料は、第1ウェル18又は第2ウェル22を介してチャネル26内に導入されるようになっている。拘束メディエーター結合パートナーを発現させるように白血球を活性化することができる1つ以上の化学誘引物質を、白血球を含む流体試料と一緒にプレインキュベートする。拘束仲介機能に関して試験されるべき試験薬をチャネル26内に配置する。第1ウェル18又は第2ウェル22を介して、白血球を含む流体試料をチャネル26内に導入し、試料がチャネル26に沿って進むのを可能にした後、白血球がチャネル26上で拘束されたかどうかを見極める。白血球の拘束は、試験薬が、ローリングメディエーター結合パートナーを発現させるのと同一の白血球の表面上で拘束メディエーター結合パートナーを認識する拘束メディエーターであり得ることを示す。
【0079】
ローリングメディエーターを識別する際には、ローリングメディエーター機能に関して試験されるべき試験薬をチャネル26内に配置し、そして白血球を含む流体試料を、第1ウェル18又は第2ウェル22を介してチャネル26内に導入し、そして試料がチャネル26に沿って流れるのを可能にする。チャネル26に沿って白血球がローリングする場合、このことは、試験薬がローリングメディエーター機能を有すること、そして白血球がローリングメディエーターに対する結合パートナーを発現させることを示す。ローリングメディエーター機能に関して試験されるべき試験薬をチャネル26内に配置し、そしてまたチャネル26内に拘束メディエーターを配置することによって、ローリングメディエーターがやはり識別される。拘束メディエーター結合パートナー、例えばインテグリンを発現させるように白血球を活性化することができる1つ以上の化学誘引物質を、白血球を含む流体試料と一緒にプレインキュベートする。次いで、第1ウェル18又は第2ウェル22を介して、白血球を含む流体試料をチャネル26内に導入し、試料がチャネル26に沿って進むのを可能にする。白血球の拘束は、試験薬がローリングメディエーター機能を有すること、及び、拘束メディエーター結合パートナーと化学誘引物質受容体とを発現させる白血球がまた、試験薬に対する結合パートナーを発現させることを示す。
【0080】
上述の方法、つまり、ローリングした又は拘束された白血球の数又はパーセンテージの増大を、試験薬の不存在下におけるこのような白血球の数又はパーセンテージと比較して検出する方法によって、白血球のローリング、又はローリング及び拘束のプロセスにおける機能性成分、或いはその促進剤として、試験薬を識別することもできる。白血球の遊走は、当業者に知られた任意の方法を介して、及び前記同時係属中の出願明細書「Test Device and Method of Making Same」に開示された方法を介して観察、モニタリング、記録及び分析することもできる。
【0081】
本発明はまた、前述のアッセイを行うためのキットを提供する。例えば、キットは、複数のチャンバ14を画定するハウジング12を含む装置を含む。複数のチャンバ14のそれぞれは:1つ以上の第1ウェル18を含む第1ウェル領域16と;1つ以上の第2ウェル22を含む第2ウェル領域20と;第1ウェル領域16と第2ウェル領域20とを互いに接続する1つ以上のチャネル26を含むチャネル領域24とを含む。複数のチャンバ14のうちのそれぞれのチャンバの第1ウェル領域16及び第2ウェル領域20は、好ましくは、標準マイクロタイター・プレートのピッチと調和するように互いに相対配置され、こうして有利には試験薬のハイスループットスクリーニングを可能にする。キットはさらに第1白血球遊走メディエーターを含む。キットは、白血球を含む試料を含有することもできる。第1白血球遊走メディエーター、及び白血球を含む試料は、当業者に知られた任意の態様で、キット内にパッケージングすることができる。例えば、第1白血球遊走メディエーターはバイアル又は容器内に含有することができ、そして白血球を含む試料は別個のバイアル又は容器内に同様に含有することができる。キットはさらに、第1白血球遊走メディエーターとは異なる第2白血球遊走メディエーターを含んでよい。キットは加えて、第1白血球遊走メディエーター、第2白血球遊走メディエーター、又はその両方を阻害するように適合された阻害剤を含んでよい。キットはさらに、第1白血球遊走メディエーター、第2白血球遊走メディエーター、又はその両方によって仲介される遊走を促進するように適合された促進剤を含んでよい。キットはまた、装置及び特定のアッセイとともに使用するのに必要な任意の培地及び緩衝液を含むこともできる。
【0082】
装置10の具体的な詳細に関しては、例えば図1及び図6に示すように、装置10のハウジング12は、支持部材28と、支持部材28に取り付けられた上部部材30とを含み、支持部材28と上部部材30とは、これらが一緒に複数のチャンバ14を画定するように構成されている。好ましくは、ハウジングのサイズも標準マイクロタイター・プレートの寸法、例えば24-ウェルマイクロタイター・プレート、96-ウェルマイクロタイター・プレート、384-ウェルマイクロタイター・プレート、768-ウェルマイクロタイター・プレート及び1536-ウェルマイクロタイター・プレートの寸法に調和するように形成されるべきである。上部部材は、ガラス、プラスチック又はエラストマー材料、例えばポリジメチルシロキサン(「PDMS」)を含む、当業者に知られた任意の好適な材料から形成することができる。支持部材は、ガラス、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PDMS及びその他のプラスチックから形成することができる。好ましくは、上部部材30は支持部材28と共形接触している。
【0083】
本発明の別の実施態様の場合、装置10は支持部材28;及び上部部材30を含み、該上部部材30は、該支持部材と共形接触するように配置されることにより、該支持部材28に取り付けられている。支持部材28及び上部部材30は、これらが一緒に1つ以上のチャンバ14を画定するように構成される。1つ以上のチャンバ14は、1つ以上の第1ウェル18を含む第1ウェル領域16と、1つ以上の第2ウェル22を含む第2ウェル領域20と、第1ウェル領域16と第2ウェル領域20とを互いに接続する1つ以上のチャネル26を含むチャネル領域24とを含む。1の実施態様の場合、1つ以上のチャネル26内に1つ以上の白血球遊走メディエーターが配置されている。別の実施態様の場合、1つ以上のチャネル26内に内皮細胞が配置されている。好ましくは、上部部材30は、支持部材28と可逆共形接触するように構成されている。このようなものとして、上部部材30は好ましくは、支持部材28との共形接触、好ましくは可逆共形接触をもたらすように適合された材料から形成される。この実施態様によれば、特にこのような材料の柔軟性は、上部部材30を支持部材28に形状適合した状態で接着させることにより、支持部材との実質的に流体密なシールを形成するのを可能にする。共形接触は好ましくは、支持部材28上の上部部材30のスリップを防止するのに十分に強力であるべきである。共形接触が可逆的な場合には、上部部材30は、これがシンプルな剥離プロセスによって除去されるのを可能にするための構造完全性を有する材料から形成することができる。こうすると上部部材30が試験後に支持部材28から除去され、適正に浄化され、次いで将来のアッセイに再使用されることが可能になる。剥離プロセスは、支持部材28上のいかなる表面処理、例えば白血球遊走メディエーター又は内皮細胞も妨害しないことが好ましい。加えて、上部部材30と支持部材28との共形接触によって上部部材30と支持部材28との間にもたらされた実質的に流体密なシールは、流体が1つのチャンバから隣接チャンバに漏れるのを防止し、また、汚染物質がウェルに入るのも防止する。シール作用は外部圧を維持する必要なしに、事実上瞬時に発生することが好ましい。共形接触は、上部部材30と支持部材28との間をシールするためにシーリング剤を使用する必要性を排除する。本発明の実施態様はシーリング剤の使用を包含するが、好ましい実施態様に従ってシーリング剤の使用が回避されるという事実は、コストを削減して時間を節約する別の実施態様を提供し、そしてさらに、シーリング剤による各チャンバ14の汚染のリスクを排除する。好ましくは、上部部材30は劣化することがなく、また複数の試験で使用されることによって容易に損傷されることがなく、しかも製造中に上部部材の構造にかなりの可変性をもたらす材料から形成される。より好ましくは、材料は、上部部材30がフォトリソグラフィを用いて形成されるのを可能にするように選択することができる。好ましい実施態様において、材料はエラストマー、例えばシリコーン、天然又は合成ゴム、又はポリウレタンを含む。より好ましい実施態様の場合、材料はPDMSである。支持部材28は、上に上部部材30を載置する支持体を提供し、この機能に適した任意の材料から形成することができる。好適な材料、例えばガラス、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PDMS及びその他のプラスチックが当業者に知られている。
【0084】
チャンバ14の部分に関しては、1の実施態様の場合、ウェル領域16及び20は装置10の試験配向において、互いに鉛直方向にずらされている。好ましい実施態様の場合、ウェル領域16及び20は装置10の試験配向において、互いに水平方向にずらされている。各チャンバ14のそれぞれのウェル領域16及び20のウェル18及び22は、特定の三次元輪郭にその構造が限定されるものではなく、ただ、流体、好ましくは白血球を含む試料を受容するように適合されることが必要となるだけである。好ましくは、例えば図1〜6に示すように、ウェル18及び22は、これらが頂面図で見て実質的に円を画定するように構成されている。しかし、当業者には容易に明らかなように、所与のウェルの頂面図で見て他の輪郭を有するウェルも本発明の範囲に含まれる。ウェルが頂面図で見て円を画定する場合、そして、ウェル領域が標準96-ウェルマイクロタイター・プレートのピッチに調和するように互いに相対配置されている場合、ピッチPは約9mmに等しいように設定され、そしてウェルの頂面輪郭の直径Dwは約6mmに等しいように設定される。このような事例において、各チャネル26の長さLは約3mmに等しい。図2に具体的に示されているように、ウェル18及び22は、上部部材30に設けられたそれぞれの貫通孔18及び22によって部分的に画定され、また、支持部材28の上面Uによって部分的に画定されている。具体的には、各ウェル18及び22の側面は、上部部材30に設けられた貫通孔18及び22のそれぞれの壁によって画定されており、ウェル18及び22の底部は、支持部材28の上面Uの対応部分によって画定されている。
【0085】
チャンバ12のチャネル領域24に関しては、図2〜4でまとめて見られるように、チャネル26の長さLは、チャネルの長手方向軸方向において定義される。加えて、チャネル26の深さDは、ハウジング12の上面に対して法線方向において定義され、そしてチャネル領域26の幅Wは、長さL及び深さDに対して法線方向において定義される。好ましくは、チャネル領域24は、ウェル領域16及び20の間に延びる直線的な平行な複数のチャネル26を含む。好ましくは、チャネル26の長さLは、例えば図4に概略的に示されているように、実質的に同一である。より好ましくは、複数のチャネル26は8つのチャネルを含む。複数のチャネルを使用することにより、白血球を含む1つの試料を用いて、複数のアッセイを同時に実施することができる。このような実施態様の場合、全てのアッセイは均一で一貫した条件下で実施され、従って統計的により正確な結果を提供する。チャネル26は好ましくはそれぞれ、50μm〜5mmの幅W;約1〜10mmの長さL;及び約10〜100μmの高さHを有している。より好ましくはチャネル26はそれぞれ、100μmの幅W;約3mmの長さL;及び約50μm〜約80μmの高さHを有している。チャネル領域24のチャネル26の寸法は、炎症応答中のこのような遊走をシミュレートする条件下で、白血球の遊走を支援するように構成されるべきである。このようなものとして、チャネル領域は、剪断流下で白血球の遊走を支援するように、またチャネル領域内に配置された1つ以上の白血球遊走メディエーターを支持するように適合されるべきである。なお、図1〜6に関連して説明した装置10の実施態様は一例にすぎず、本発明の範囲に種々の他の構成が含まれる。装置10の構成のその他の例は、前述の「Test Device and Method of Making Same」と題される同時係属中の出願明細書に提供されている。
【0086】
本発明の方法の好ましい実施態様によれば、標準的なフォトリソグラフィ手順を用いることにより、本発明の装置10を製作することができる。フォトリソグラフィ手順を用いて、上部部材30の任意の所望の構造のネガ像であるマスターを形成することができる。例えば、チャンバ14の寸法、例えばウェル領域16及び18のサイズ、又はチャネル領域24の長さを変更することにより、任意の有利な仕様に適合することができる。マスターの好適な構成を選択し、この構成に従ってマスターを製作したら、上部部材30のための材料をマスター上にスピンキャスト、射出、又は注入し、そして硬化させる。型を形成したら、このプロセスは必要なだけ頻繁に繰り返すことができる。このプロセスは、上部部材の構成において高い柔軟性を提供するだけではなく、上部部材が大量に複製されることをも可能にする。
【0087】
装置を製作したら、白血球遊走メディエーターをチャネル26内に配置することができる。白血球遊走メディエーターが上面Uを流過する白血球にアクセス可能である限り、支持部材28の上面U上に直接的に白血球遊走メディエーターを固定又は物理吸着することによって、或いは、白血球遊走メディエーターを含む溶液又は懸濁液を支持部材28の上面U上にコーティングすることによって、白血球遊走メディエーターをチャネル26内に配置することができる。1の実施態様の場合、白血球遊走メディエーターは、アミド、エステル又はリジン側鎖リンケージ又は吸着を介した共有結合のような技術によって、上面Uに直接的に共有結合又は非共有結合される。白血球遊走メディエーターを支持部材28の上面上に固定化することを含む、白血球遊走メディエーターの他の配置方法が、上記同時係属中の出願明細書「Test Device and Method of Making Same」に開示されている。
【0088】
本発明はまた、ハウジング12;ハウジング12内の複数のチャンバ14を画定するハウジングと連携する手段を含む装置を提供する。複数のチャンバ14のそれぞれは:白血球を含む試料を受容するための流入手段;流入手段から白血球を含む試料を受容するために流入手段と流体連通する流出手段;及び、流入手段と流出手段とを互いに接続する接続手段とを含み、接続手段内には1つ以上の白血球遊走メディエーターが配置されている。ハウジング内の複数のチャンバを画定するハウジングと連携する手段の例は、図6に示されているように、支持部材に取り付けられた上部部材を含む。上述の手段は図1〜6の実施態様に関連して実質的に示され、説明されている。その他のこのような手段も当業者の知識の範囲に含まれる。
【0089】
別の実施態様の場合、本発明は、勾配形成及び/又は流れ条件に依存する、又はこれらに反応する生物学的現象をアッセイして研究する方法を提供する。このような生物学的現象は、体内のプロセス、例えば細胞-表面相互作用の多く、例えば白血球の付着及びローリング中に発生する作用を含む。加えて、化学走性、走触性及び細胞遊走に関する研究には、勾配及び/又は流れ条件の存在においてこのような細胞運動を研究することができるアッセイがより役に立つ。
【0090】
種々のタイプの勾配が生体系の研究に有用である。このような有用な勾配は静的勾配を含む。静的勾配は、固定又は設定された、或いは実質的に固定又は設定された濃度を有している。静的勾配の一例は、表面上の固定化分子の勾配である。静的勾配の一例としては、固定化生体分子(タンパク質、抗体及び核酸など)又は固定化化学成分(薬物及び小分子)の異なる濃度を使用することが挙げられる。他の有用な勾配は動的勾配を含む。動的勾配は、変化され得る濃度を有する。動的勾配の一例は、変動濃度で分子を有する流体流の勾配である。流体勾配の一例としては、生体分子、例えば成長因子、毒素、酵素、タンパク質、抗体、炭化水素、薬物、又は濃度が変動する他の化学的な小分子を含有する流体流の使用が挙げられる。
【0091】
本発明の1の実施態様の場合、動的/溶液に基づく勾配が、層流技術によって形成される。層流技術は典型的には、2つ以上の異なる源に由来する2つ以上の流体流を伴う。これらの流体流は一緒に単流にされ、そして乱流混合なしに互いに平行に流れるように形成される。異なる特性、例えば変化する低レイノルズ数を有する流体が並行して流れ、これらの流体は、乱流が存在しなければ混合することはない。流体は混合しないので、擬似チャネル(流体間に物理的分離がないという事実により擬似)を形成する。溶液及び表面勾配の生成は、米国特許出願第2002/0113095号明細書、及び論文(Jeon, Noo Li他、Langmuir, 16, 8311-8316(2000))に論じられている。これらの参考文献双方全体を参考のため、本明細書中に引用する。
【0092】
これらの関連において、PDMSミクロ流装置を利用して、ミクロ流体毛管網状構造を通して勾配を発生させた。種々異なる化学物質を含有する溶液を3つの別個の入口内に導入し、そしてこれらの溶液が毛管網状構造を通流することが可能になった。流体流を繰返し合体させ、混合し、そして分割することにより、分岐チャネルのそれぞれに、区別可能な組成物を有する区別可能な混合物をもたらした。分岐のすべてを合体させると、図13に示したように、濃度勾配が流れ方向に対して垂直に、出口チャネルを横切って確立された。
【0093】
本発明の装置を、動的勾配の形成と組み合わせることにより、装置の任意の部分に変更を加えることによって、膨大な数のアッセイ・パラメーターを生成することができる。例えば、本明細書中に開示された装置を、動的勾配の導入と共に、細胞パターン化技術と組み合わせることによって、多数の生物学的相互作用を試験するために種々の条件を形成することができる。さらにこれらの装置及びアッセイは、薬物発見及び薬物試験に有用である。それというのも、多くの細胞又は生体物質はin vivoで存在し、ひいては勾配及び流動条件に露出されているときと比較して、該細胞及び生体物質が勾配に露出されていないときには、ex vivoで異なる状態で挙動するからである。
【0094】
したがって、本発明の1の実施態様の場合、チャネル26を横切って細胞をパターン化することができる。当業者に知られている方法、並びに本発明において開示された方法(例えばマイクロコンタクト印刷又はエラストマー・ステンシルの使用)によって、細胞パターン化を達成することができる。次いで任意の所望の生体分子又は化学物質/薬物を含有する溶液を、パターン化細胞を横切るように流動させることができる。加えて生体分子、例えばアクチベータによって先ず処理することにより、細胞は生体系をより厳密に再現する。続いてこれらの細胞を化学物質又は薬物に露出することができる。例えば層流によって勾配を形成することにより、種々異なる量の生体分子又は化学物質/薬物を、パターン化された細胞に送達することができ、ひいては、それぞれの生体分子又は化学物質/薬物の濃度の効果を同時に互いに比較して試験することができる。したがって、並行して同時に行われるこのような比較は、アッセイ間の条件の変動を低減する。
【0095】
本発明の装置との組み合わせにおいて層流で動的勾配を形成することにより、多数のアッセイ形態が提供される。例えば、表面上の細胞、チャネル26内の生体分子及びチャネル26内の化合物の組み合わせを変化させることにより、膨大な数のアッセイを形成することができる。
【0096】
固定化細胞又はその他の固定化生体分子、例えばタンパク質、抗体、核酸などに関して、種々異なるアッセイ形態が可能である。1の実施態様の場合、チャネル領域24全体にわたって単一の細胞型が固定化される。別の実施態様の場合、1つの領域24当たり1つの細胞型が位置するように、細胞型混合物が固定化される。別の実施態様の場合、チャネル領域24全体にわたって細胞型混合物が固定化される。これは細胞間の相互作用をモニタリングする上で有利な場合がある。さらに別の実施態様の場合、それぞれの異なる領域24において、種々異なる細胞型が固定化される。
【0097】
種々の固定化スキームに加えて、アッセイ・デザインの更なる柔軟性の中心は、チャネル24内に存在する白血球遊走メディエーター又はその他の生体分子にもある。例えば、1の実施態様の場合、1つの型の白血球遊走メディエーターが同じ濃度でそれぞれのチャネル24内に存在する。別の実施態様の場合、1つの型の白血球遊走メディエーターが異なる濃度でそれぞれのチャネル24内に存在する。別の実施態様の場合、それぞれのチャネル24内に、異なる白血球遊走メディエーターが存在する。別の実施態様の場合、それぞれのチャネル24内に、複数の白血球遊走メディエーターの混合物がある。各チャネル24は、同じ混合物又は異なる混合物を有していてよい。同じ混合物の場合、種々異なる白血球遊走メディエーターの比又は濃度は、各チャネル24において異なっていてよい。
【0098】
同様に化合物、例えば薬物又は試験物質に関しても、本発明はアッセイ・デザインの柔軟性を提供する。例えば1の実施態様の場合、単一化合物は一貫して同じ濃度で、チャネル24全てに存在する。別の実施態様の場合、同じ化合物はチャネル24全てに存在するが、しかし各チャネル24はその化合物を異なる濃度で有している。別の実施態様の場合、各チャネルは異なる化合物を有している。別の実施態様の場合、2種以上の化合物がある。2種以上の化合物がある場合、それぞれのチャネル24は同じ化合物混合物を有することができるか、或いは異なる化合物混合物を有することができる。さらに、化合物混合物が同じ場合には、各チャネル24は異なる濃度のその混合物を受容することができる。またさらに、各チャネル24は化合物の混合物を、各チャネル24が異なる化合物比を互いに有する状態で受容することができる。
【0099】
このようなアッセイ・システムを使用することにより、多数の生物学的相互作用の中から、細胞又はその他の生体分子に対する化学物質又は薬物の効果を試験することができる。例えば本発明の装置及びアッセイによって、固定化生体分子を横切るように流された、低濃度から高濃度で存在する化合物の層流勾配を用いることにより、化合物のIC50を測定することができる。
【0100】
本出願全体を通して、種々の刊行物、特許明細書及び特許出願明細書を参照した。本発明が関連する従来技術をより十分に説明するために、これらの刊行物、特許明細書及び特許出願明細書の教示内容及び開示内容全体を、参考のため本明細書中に引用する。
【実施例】
【0101】
I. 白血球遊走をモニタリングする装置の製作手順
フォトリソグラフィを用いて、本発明による装置のマスターを形成する。好適なフォトレジストを使用して上部部材のネガティブ・パターンに基づいて、シリコン基板をパターン化する。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS)をマスターの上側に注いで真空下に置くことにより、ここから気泡を抽出する。こうして注がれたPDMS層を炉内で約17時間にわたって約30℃で硬化させておく。その後、この装置を2% Micro-90(International Products Corp.の製品)で徹底的に洗浄し、「音波浴(Sonic Bath)」内で10分間にわたって70℃ですすぎ、そして脱イオン水ですすぎ、続いて100%エタノールですすぐ。次いでPDMS層を窒素下で乾燥させる。同時に、予め浄化されたガラス・スライド、例えば寸法約4.913+/-0.004インチ(in.) x 約3.247+/-0.004 in.と厚さ約1.75ミリメートル(mm)とを有する矩形のスライドをエタノールで3回、そしてメタノールで2回洗浄する。好ましくは、一緒に結合されるべきPDMS層表面及びガラス・スライド表面を両方とも、約84秒間にわたってプラズマ酸化する。次いでPDMS層及びガラス・スライドをピンセットを用いて押合わせることにより、これらの間のエア・ポケットを絞り出す。こうして、上部部材としてのPDMS層とガラス・スライドとしての支持部材との間に、流体密な共形接触が確立される。加えて、PDMSが上部部材材料として使用されていることにより、PDMS層とガラス・スライドとの間の共形接触は可逆的である。
【0102】
なお、上述の本発明の装置の製造方法は一例にすぎない。装置の製造方法の他の例が、前述の「Test Device and Method of Making Same」と題される同時係属中の出願明細書に提供されている。
【0103】
II. チャネル内にローリングメディエーターが配置された本発明の装置を利用する、白血球遊走アッセイ
A. 白血球の分離
健康な有志から採取した5ミリリットル(ml)の容積のヒトの血液から、好中球を分離する。血液5mlをハンクス平衡塩溶液(HBSS)で、1:2の比で希釈し、これにより血液の総容積を15mlに等しくする。全血希釈物を10mlのFicoll-Paque Plus(Amersham Pharmacia Biotech AB, カタログ#17-1440-02から入手)上に層形成する。次いで、血液を室温で30分間にわたって400gで遠心分離する。ぺレットを乱すことなしに上澄みを吸引して除去する。10mlのHBSS及び150μlの6%デキストラン上にぺレットを再懸濁することにより、1%溶液を形成する。赤血球を室温で1時間以上にわたって沈降させておく。好中球は上澄み内部に残ったままであるのに対して、赤血球はほとんどが沈降してぺレットを形成する。上澄みをピペットで取り出し、そしてHBSSを使用して1:2比で希釈する。この懸濁液を600gの速度で10分間にわたって遠心分離する。上澄みを吸引し、そしてぺレットを脱イオン水19ml中に溶解する。1分後、ぺレットを1mlの10 x PBS中に再懸濁する。この懸濁液を10分間にわたって400gで遠心分離する。赤血球はこのプロセスにおいて溶解され、残りの細胞はほとんどが好中球である。結果として生じたぺレットをBSA含有培地中に溶解させることにより、室温で長時間経過後に細胞の凝集が生じるのを回避することができる。血球計を使用して細胞の数をカウントすることにより、細胞密度を測定する。
【0104】
B. チャンバ内の白血球及び白血球遊走メディエーターの配置
Iの項に開示した方法に従って製作された装置のチャンバの第1ウェル内に、水20μlをピペットで入れ、ミクロ毛管作用がチャネル内に水を引き込む。チャネル内部に気泡がないことを保証したあと、チャンバの第2ウェル内に水をさらに10μlピペットで入れる。15分経過して静水学的圧力が等しくなったあと、濃度50μg/mLのP-セレクチン(R&D Systemsから入手、カタログ#ADP3)10μlを、両ウェル内にピペットで入れる。カバー付きの皿内で室温で2時間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して、チャネルを4回洗浄する。この最後の洗浄後、ウェル内部の液体すべてをピペットで取り出し、チャネル内の液体だけを残す。PBS中の0.1% BSA 20μlを第1ウェルに添加し、そしてPBS中のBSA 10μlを第2ウェルに添加する。15分経過して静水学的圧力が等しくなったあと、培地60μl中に存在する、A部分で説明した方法により得られた好中球を、それぞれのチャンバの第1ウェルに添加する(1ウェル当たり60μlの容積の培地中、24ウェルプレートのウェル1つ当たり約103〜約106個の細胞)。非標識及び蛍光標識単球細胞株-U937(ATCCから入手、カタログ#TIB-202)及びTHP-1(ATCCから入手、カタログ#CRL-1593.2)、並びに、他の主要な白血球を使用することもできる。図7に見られるように、培地40μl〜60μlを使用することにより、正常な生理学的条件下の流速範囲(約0.1ダイン/cm2〜約20ダイン/cm2)を生成することが好ましい。
【0105】
C. データ取得
白血球を含む試料を第1ウェルに添加してから15秒後より、AXIOCAM(登録商標)を使用して、Zeiss倒立顕微鏡でデジタル画像を撮影する。データをAXIOVISION(登録商標)ソフトウエアで分析する。低速度撮影画像を30秒毎に、5分15秒にわたって撮影する。10倍の対物レンズを使用することにより、チャネルに沿ってローリングする細胞の数を見て記録する。
【0106】
D. 白血球のローリング速度の測定
特定の時点での白血球のローリング速度を特徴付けするために、C部分で説明した方法を用いて得られた画像を使用して、画像の露光時間中に移動した白血球の距離を測定する。ローリング速度(V)を測定するために、下記式を用いる:
V=c(l時間/t露光)
上記式中、cは細胞が移動した実際の距離を測定するための換算係数である。この係数は画像間で変動する場合がある。
l時間は、撮られた画像内の白血球遊走の長さである。
t露光は、画像の露光時間である。
好ましくはt露光は、流速が約0.1ダイン/cm2〜約20ダイン/cm2である場合、100ミリ秒(ms)である。
【0107】
III. チャネル内にローリングメディエーター及び拘束メディエーターが配置された本発明の装置を利用する、白血球遊走アッセイ
A. 白血球の分離
IIの項のA部分に開示された方法に従って、好中球を分離する。
【0108】
B. チャンバ内の白血球及び白血球遊走メディエーターの配置
Iの項に開示した方法に従って製作された装置のチャンバの第1ウェル内に、水20μlをピペットで入れる。ミクロ毛管作用がチャネル内に水を引き込む。チャネル内部に気泡がないことを保証したあと、チャンバの第2ウェル内にさらに水10μlをピペットで入れる。15分経過して静水学的圧力が等しくなったあと、濃度50μg/mLのP-セレクチン(R&D Systemsから入手、カタログ#ADP3)10μlを、第1ウェル内にピペットで入れ、濃度50μg/mLのICAM-1(R&D Systemsから入手)10μlを同時に第2ウェルに入れる。カバー付きの皿内で室温で2時間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して、チャネルを4回洗浄する。この最後の洗浄後、ウェル内部の液体すべてをピペットで取り出し、チャネル内の液体だけを残す。PBS中の0.1% BSA 20μlを第1ウェルに添加し、そしてPBS中のBSA 10μlを第2ウェルに添加する。15分経過して静水学的圧力が等しくなったあと、培地60μl中に存在する、A部分で説明した方法により得られた好中球を、それぞれのチャンバの第1ウェルに添加する(1ウェル当たり60μlの容積の培地中、24ウェルプレートのウェル1つ当たり約103〜約106個の細胞)(非標識及び蛍光標識単球細胞株-U937及びTHP-1、並びに、他の主要な白血球を使用することもできる)。図7に見られるように、培地40μl〜60μlを使用することにより、正常な生理学的条件下の流速範囲(約0.1ダイン/cm2〜約20ダイン/cm2)を生成することが好ましい。
【0109】
C. データ取得
白血球を含む試料を第1ウェルに添加してから15秒後より、AXIOCAM(登録商標)を使用して、Zeiss倒立顕微鏡でデジタル画像を撮影する。データをAXIOVISION(登録商標)ソフトウエアで分析する。低速度撮影画像を30秒毎に、5分15秒にわたって撮影する。10倍の対物レンズを使用することにより、チャネルに沿ってローリングしてチャネルに付着する細胞の数を見て記録する。
【0110】
IV. 内皮細胞の密集層を利用した白血球遊走アッセイ
A. 白血球の分離
IIの項のA部分に開示された方法に従って、好中球を分離する。
【0111】
B. チャンバ内の白血球及び内皮細胞の配置
Iの項に開示した方法に従って製作された装置の第1ウェル内に、MATRIGEL(登録商標)(BD Bioscienceから入手、カタログ#356231)の10倍希釈物10μlを添加する。10μlを第1ウェルに添加し、ミクロ毛管作用が溶液をチャネル内に引き込む。次いでMATRIGEL(登録商標)を、室温で約15分間にわたってゲル化させておく。別の選択肢においては、0.1% BSA溶液を使用してフィブロネクチンの原液濃度を希釈することにより得られた1mg/mL濃度のフィブロネクチン(GibcoBRLから入手、カタログ#33016-015)をチャネルにコーティングする。1mg/mL濃度のフィブロネクチン5μlを第1ウェル内にピペットで入れ、ミクロ毛管作用が溶液をチャネル内に引き込む。
【0112】
チャネルにMATRIGEL(登録商標)又はフィブロネクチンをコーティングしたら、内皮細胞をシーディングのために調製する。Bio-WhittakerのCloneticsから、細胞を極低温バイアル中で入手する。これらの細胞を、0.025%トリプシン/EDTAを使用して分割される準備ができるまで、T75フラスコ内で成長させる。ほぼ2日間にわたる1アッセイ当たり、5μlの培地当たり1 x 105個の細胞の密度で、チャネル上に細胞を播くことにより、内皮細胞の密集した単層を形成する。これらの2日の間、各ウェル内に添加された新鮮培地40μlを内皮細胞に補充した。ほぼ2日後、内皮細胞を4時間にわたって37℃で、濃度1ng/mlのTNF-α(代わりに他のケモカインを使用してもよい)に露出する。4時間経過時に、TNF-αを60μlの新鮮培地で2回洗浄する。各ウェル内部の培地の容積を、15μlの新鮮培地と交換する。培地60μl中に存在する、IIの項のA部分で説明した方法で分離された好中球を、チャンバの第1ウェルに添加する(1ウェル当たり60μlの容積の培地中、24ウェルプレートのウェル1つ当たり約103〜約106個の細胞)(非標識及び蛍光標識単球細胞株-U937及びTHP-1、並びに、他の主要な白血球を使用することもできる)。単球細胞株を使用する場合、細胞は、細胞トラッカー・プローブ(Molecular Probesから入手、カタログ# C-2925及びC-2927)を使用して蛍光標識される。細胞を、1μM濃度のプローブと一緒に、30分間にわたって37℃でインキュベートする。次いで培地を交換し、細胞をさらに30分間にわたってインキュベータ内部に置く。
【0113】
図7に見られるように、40μl〜60μlの培地を使用することにより、正常な生理学的条件下の流速範囲(約0.1ダイン/cm2〜約20ダイン/cm2)を生成することが好ましい。
【0114】
C. データ取得
白血球を含む試料を第1ウェルに添加してから15秒後より、AXIOCAM(登録商標)を使用して、Zeiss倒立顕微鏡でデジタル画像を撮影する。データをAXIOVISION(登録商標)ソフトウエアで分析する。低速度撮影画像を30秒毎に、5分15秒にわたって撮影する。10倍の対物レンズを使用することにより、チャネルに沿ってローリングする細胞の数を見て記録する。
【0115】
D. 白血球のローリング速度の測定
特定の時点での白血球のローリング速度を特徴付けするために、C部分で説明した方法を用いて得られた画像を使用して、画像の露光時間中に移動した白血球の距離を測定する。ローリング速度(V)を決定するために、下記式を用いる:
V=c(l時間/t露光)
上記式中、cは細胞が移動した実際の距離を決定するための換算係数である。この係数は画像間で変動する場合がある。
l時間は、撮られた画像内の白血球遊走の長さである。
t露光は、画像の露光時間である。
好ましくはt露光は、流速が約0.1ダイン/cm2〜約20ダイン/cm2である場合、100ミリ秒(ms)である。
【0116】
V. チャネル内にローリングメディエーター及び拘束メディエーターが配置された本発明の装置を利用する、白血球遊走阻害アッセイ
A. 白血球の分離
IIの項のA部分に開示された方法に従って、好中球を分離する。
【0117】
B. チャンバ内の白血球、P-セレクチン、及びP-セレクチン抗体の配置
5つのチャンバに関して、Iの項に記載された方法に従って製作された装置の各チャンバの第1ウェル内に、0.1% BSA 20μlをピペットで入れる。ミクロ毛管作用がチャネル内に水を引き込む。チャネル内部に気泡がないことを保証したあと、各チャンバの第2ウェル内にさらにBSA 10μlをピペットで入れる。15分経過して静水学的圧力が等しくなったあと、マルチピペッターを使用して、P-セレクチン(50μg/mL)10μlを第1ウェル内に入れ、ICAM-1(50μg/mL)10μlを第2ウェルに入れる。カバー付きの皿内で室温で2時間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して、各ウェルのチャネルを4回洗浄する。5つのチャンバに関して、100ng/mLのP-セレクチン抗体をチャンバ#1の第1ウェル内にピペットで入れ;10ng/mLのP-セレクチン抗体をチャンバ#2の第1ウェル内にピペットで入れ;1ng/mLのP-セレクチン抗体をチャンバ#3の第1ウェル内にピペットで入れ;100μg/mLのP-セレクチン抗体をチャンバ#4の第1ウェル内にピペットで入れ;そしてPBS中の0.1%BSAをチャンバ#5の第1ウェル内にピペットで入れる。カバー付きの皿内で室温で30分間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、各ウェルのチャネルをBSA 20μlで先ず洗浄し、次いでBSA 10μlで、続いてPBS中の0.1% BSAで洗浄する。培地20μl中の好中球を、それぞれのチャンバの第1ウェルに添加する(1ウェル当たり20μlの容積の培地中、24ウェルプレートのウェル1つ当たり約103〜約106個の細胞)(非標識及び蛍光標識単球細胞株-U937及びTHP-1、並びに、他の主要な白血球を使用することもできる)。白血球を含む試料を第1ウェルに添加してから15秒後より、AXIOCAM(登録商標)を使用して、Zeiss倒立顕微鏡でデジタル画像を撮影する。データをAXIOVISION(登録商標)ソフトウエアで分析する。低速度撮影画像を30秒毎に、5分15秒にわたって撮影する。10倍の対物レンズを使用することにより、P-セレクチン抗体で処理した後でローリングする細胞の数を見て記録する。図8及び図9から明らかなように、抗体の100ng/mL希釈率が、細胞のローリングを阻害するのに好ましい濃度である。図9の静止写真画像から明らかなように、ローリングして内皮に付着する白血球の数は、抗Pセレクチン抗体の存在下において低減される。
【0118】
C. チャンバ内の白血球、E-セレクチン、及びE-セレクチン抗体の配置
5つのチャンバに関して、Iの項に記載された方法に従って製作された装置の各チャンバの第1ウェル内に、0.1% BSA 20μlをピペットで入れる。ミクロ毛管作用がチャネル内にBSAを引き込む。チャネル内部に気泡がないことを保証したあと、各チャンバの第2ウェル内にさらにBSA 10μlをピペットで入れる。15分経過して静水学的圧力が等しくなったあと、マルチピペッターを使用して、E-セレクチン(50μg/mL)10μlを第1ウェル内に入れ、ICAM-1(50μg/mL)10μlを第2ウェルに入れる。カバー付きの皿内で室温で2時間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して、各ウェルのチャネルを4回洗浄する。5つのチャンバに関して、100ng/mLのE-セレクチン抗体をチャンバ#1の第1ウェル内にピペットで入れ;10ng/mLのE-セレクチン抗体をチャンバ#2の第1ウェル内にピペットで入れ;1ng/mLのE-セレクチン抗体をチャンバ#3の第1ウェル内にピペットで入れ;100μg/mLのE-セレクチン抗体をチャンバ#4の第1ウェル内にピペットで入れ;そしてPBS中の0.1%BSAをチャンバ#5の第1ウェル内にピペットで入れる。カバー付きの皿内で室温で30分間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、PBS中の0.1% BSAで、各ウェルのチャネルを4回洗浄する。培地20μl中の好中球を、それぞれのチャンバの第1ウェルに添加する(1ウェル当たり20μlの容積の培地中、24ウェルプレートのウェル1つ当たり約103〜約106個の細胞)(非標識及び蛍光標識単球細胞株-U937及びTHP-1、並びに、他の主要な白血球を使用することもできる)。白血球を含む試料を第1ウェルに添加してから15秒後より、AXIOCAM(登録商標)を使用して、Zeiss倒立顕微鏡でデジタル画像を撮影する。データをAXIOVISION(登録商標)ソフトウエアで分析する。低速度撮影画像を30秒毎に、5分15秒にわたって撮影する。10倍の対物レンズを使用することにより、E-セレクチン抗体で処理した後でローリングする細胞の数を見て記録する。図10から明らかなように、抗体の100ng/mL希釈率が、細胞のローリングを阻害するのに好ましい濃度である。図10の静止写真画像から明らかなように、ローリングして内皮に付着する白血球の数は、抗Pセレクチンの存在下において低減される。
【0119】
VI. チャネル内に内皮細胞の密集層が配置された本発明の装置を利用する、白血球遊走阻害アッセイ
A. 白血球の分離
IVの項のA部分に開示された方法に従って、好中球を分離する。
【0120】
B. チャンバ内の白血球及び内皮細胞の配置
IVの項のB部分に開示された方法に従って、4つのチャンバ(#1〜#4)の4つの異なるチャネル内に内皮細胞を置いて活性化する。第5(#5)チャンバに関しては、内皮細胞をチャネル内に置くが、しかし活性化はさせない。これら5つの異なるチャンバに関して、100μg/mLのP-セレクチン抗体をチャンバ#1の第1ウェル内にピペットで入れ;100μg/mLのE-セレクチン抗体をチャンバ#2の第1ウェル内にピペットで入れ;100μg/mLのVCAM-1抗体をチャンバ#3の第1ウェル内にピペットで入れ;そしてPBS中の100μg/mLのBSAをチャンバ#4の第1ウェル内にピペットで入れる。カバー付きの皿内で室温で30分間にわたって装置をインキュベートすることにより、ウェルの乾燥を防止する。インキュベーション後、チャネルをPBS中の0.1% BSAで4回洗浄する。培地20μl中の好中球を、それぞれのチャンバの第1ウェルに添加する(1ウェル当たり20μlの容積の培地中、24ウェルプレートのウェル1つ当たり約103〜約106個の細胞)(非標識及び蛍光標識単球細胞株-U937及びTHP-1、並びに、他の主要な白血球を使用することもできる)。白血球を含む試料を第1ウェルに添加してから15秒後より、AXIOCAM(登録商標)を使用して、Zeiss倒立顕微鏡でデジタル画像を撮影する。データをAXIOVISION(登録商標)ソフトウエアで分析する。低速度撮影画像を30秒毎に、5分15秒にわたって撮影する。図10で見られるように、10倍の対物レンズを使用することにより、抗体で処理した後でローリングする細胞の数を見て記録する。
【0121】
前記記述及び例は、本発明の説明のために示したにすぎず、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の思想及び本質を組み入れた、開示された実施態様の変更形が当業者に想到され得るので、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその同等範囲内のすべてのものを含むものと解釈されるべきである。
【0122】
実施例VII:層流により形成された勾配でTNF-αを送達することによる、内皮細胞の選択的活性化
本発明の装置の表面に、内皮細胞をコーティングし、これらの細胞を密集するまで成長させておいた(細胞の「芝生」の形成)。層流を介して内皮細胞の芝生にTNF-αを送達することにより、内皮細胞を「活性化」した。TNF-αを含有する溶液のそれぞれの流れは異なる濃度であり、したがってチャネルに対して垂直に勾配を形成した。この勾配は内皮細胞の芝生にTNF-αを、細胞の芝生上の異なる位置には異なる濃度で効果的に供給した。次いで、活性化された内皮細胞の芝生上に白血球を流した。図12を参照すると、TNF-αによって活性化された内皮細胞だけが、白血球に対する好適な「付着」部位を提供する。白血球は、芝生全体に同等に付着することはなく、高濃度のTNF-αに露出されている内皮細胞芝生領域には付着し、低濃度のTNF-αに露出されている内皮細胞芝生領域、又はTNF-αに全く露出されていない領域には付着しなかった。これらの結果は、層流によるTNF-αの濃度勾配が確かに形成されたことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0123】
本発明は、下記詳細な説明及び添付の図面から、より完全に理解されるようになる。この説明及び図面は一例にすぎず、本発明を限定するものではない。
【図1】図1は、本発明による白血球遊走をモニタリングする方法において使用されるように適合された装置の1の実施例を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の装置を線II-IIに沿って示す横断面図である。
【図3】図3は、図1の装置を示す頂面図である。
【図4】図4は、本発明による白血球遊走をモニタリングするための方法において使用されるように適合された装置のハウジング内に画定されたチャンバの1の実施態様を示す頂面図である。
【図5】図5は、互いに所定の関係を成して配置された図4のチャンバのような複数のチャンバを示す頂面図である。
【図6】図6は、本発明による白血球遊走をモニタリングするための方法において使用されるように適合された装置の別の実施態様であって、装置が標準96ウェル・マイクロタイター・プレートの寸法及びピッチを示す実施態様を示す頂面斜視図である。
【図6A】図6Aは、本発明による装置の別の実施態様の個別のウェルを示す頂面拡大図である。
【図7】図7は、種々異なる細胞懸濁液容積における剪断流の速度を比較する棒グラフである。
【図8】図8は、P-セレクチン抗体の異なる希釈率においてローリングする細胞数を比較するグラフである。
【図9】図9は、P-セレクチン抗体の異なる希釈率においてローリングして付着する細胞を示すグラフ及び低速度静止写真である。
【図10】図10は、E-セレクチン抗体の異なる希釈率においてローリングして付着する細胞を示すグラフ及び低速度静止写真である。
【図11】図11は、E-セレクチン、P-セレクチン及びVCAM-1に対する抗体の存在下において内皮に付着する細胞を示すグラフ及び低速度静止写真である。
【図12】図12は、層流を介してTNF-αの濃度勾配を形成することに関与する試験の結果を示す。TNF-αを内皮細胞の密集「芝生」に送達した。TNF-αによって接触された内皮細胞は活性化され、ひいては白血球と結合可能になる。次いで内皮細胞には白血球が送達された。図面に示すように、白血球は、高濃度のTNF-αを受容する内皮細胞領域には結合されるのに対して、TNF-αには全く又はほとんど露出されない内皮細胞領域は、白血球には結合しなかった。
【図13】図13は、層流勾配を形成するミクロ流体装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球遊走をモニタリングするためのシステムであって、
ハウジングを含む装置であって、該ハウジング中にある複数のチャンバのそれぞれが
1つ以上の第1ウェルを含む第1ウェル領域と;
1つ以上の第2ウェルを含む第2ウェル領域と;
該第1ウェル領域と該第2ウェル領域とを互いに接続する1つ以上のチャネルを含むチャネル領域と
を含み、該ハウジングが該複数のチャンバを画定している、前記装置;
第1濃度の第1物質を有する第1流体流;及び
第2濃度の第2物質を有する第2流体流
を含み、
該第1濃度と該第2濃度とは互いに異なっており、そして該第1流体流及び該第2流体流は、該複数のチャンバのうちの1つ以上と流体連通している
ことを特徴とする、前記システム。
【請求項2】
該第1物質と該第2物質とが同じである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該第1物質と該第2物質とが異なっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
該第1流体流と該第2流体流とが合流して、該複数のチャンバのうちの1つ以上と流体連通する単一の第3流体流となり、該第3流体流が該第1及び第2物質の濃度勾配を含み、該濃度勾配が、該第3流体流の流動方向に対して実質的に垂直である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
該第1流体流と該第2流体流とが合流して単一の第3流体流となり、該第3流体流が次いで分岐して、別個の第4、第5及び第6流体流になり、該第4、第5及び第6流体流が次いで再び合流して単一の第7流体流となり、該第7流体流は、実質的に層流の条件下で、該複数のチャンバのうちの1つ以上と流体連通する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
該1つ以上のチャネルが、該チャネル内に配置された複数の白血球遊走メディエーター又は内皮細胞を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
該第1物質及び該第2物質の少なくとも一方がサイトカインである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
該サイトカインがTNF-αである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
該第1物質及び該第2物質の少なくとも一方が試験薬である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
白血球遊走をモニタリングする方法であって:
内皮細胞を表面上に配置し;
流動方向に対して実質的に垂直である、1つ以上の物質の濃度勾配を含む流体を、実質的に層流の条件下で該表面に沿って進め;
該表面に、白血球を含む試料を露出し;そして
該白血球と該内皮細胞との相互作用を観察する
ことを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
該1つ以上の物質が試験薬である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該1つ以上の物質がサイトカインである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
白血球を含む該試料を露出することが、該白血球を該表面にパルス状に導入することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
さらに、該表面に沿って生理学的剪断流を提供することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
さらに、白血球のローリング速度を測定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
実質的に層流の条件下で該表面に沿って該流体を進めることが、ミクロ流体毛管網状構造を介して該表面に沿って該流体を進めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
白血球遊走をモニタリングする方法であって、
ハウジングを含む装置であって、該ハウジング中にある複数のチャンバのそれぞれが
1つ以上の第1ウェルを含む第1ウェル領域と;
1つ以上の第2ウェルを含む第2ウェル領域と;
該第1ウェル領域と該第2ウェル領域とを互いに接続する1つ以上のチャネルを含むチャネル領域と
を含み、該ハウジングが該複数のチャンバを画定している、前記装置を準備し;
1つ以上の白血球遊走メディエーター又は内皮細胞を該1つ以上のチャネル内に配置し;
層流によって該1つ以上のチャネルに、白血球を含む試料を送達し;そして
該白血球と該1つ以上の白血球遊走メディエーターとの相互作用、又は該白血球と該内皮細胞との相互作用を観察する
ことを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項18】
さらに、該1つ以上のチャネルを見るために、該装置に操作可能に連結されたビデオカメラを準備することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該ビデオカメラが、所定の時間にわたって所定の間隔で、画像を撮るように適合されている、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−503581(P2006−503581A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546913(P2004−546913)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/033177
【国際公開番号】WO2004/038368
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(503061865)サーフェイス ロジックス,インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】