白金族金属担持触媒、過酸化水素の分解処理水の製造方法、溶存酸素の除去処理水の製造方法及び電子部品の洗浄方法
【解決課題】SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去を可能にする、高性能触媒を提供すること。
【解決手段】気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量0.4〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、乾燥状態で0.004〜20重量%担持されている白金族金属担持触媒。
【解決手段】気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量0.4〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%である有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、乾燥状態で0.004〜20重量%担持されている白金族金属担持触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所用水や半導体製造などの精密加工洗浄用水に使用される、超純水中の過酸化水素や溶存酸素の様な酸化性物質を除去するための白金族金属担持触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所で用いられる用水中の溶存酸素は、配管や熱交換器等の部材の腐食を引き起こすことが知られており、特に、原子力発電所の一次系及び二次系においては、溶存酸素を極力低減する必要がある。
【0003】
また、半導体製造産業においては、不純物を高度に除去した超純水を用いてシリコンウエハの洗浄等が行われている。超純水は、一般に原水(河川水、地下水、工業用水等)中に含まれる懸濁物質や有機物の一部を前処理工程で除去した後、その処理水を一次純水系システム及び二次純水系システム(サブシステム)で順次処理することによって製造され、ウエハ洗浄を行うユースポイントに供給される。このような超純水は、不純物の定量も困難であるほどの純度を有するが、全く不純物を有していないわけではない。
【0004】
例えば、超純水中に含まれる溶存酸素は、シリコンウエハの表面に自然酸化膜を形成する。自然酸化膜がウエハ表面に形成されると、低温でのエピタキシャルSi薄膜の成長を妨げたり、ゲート酸化膜の膜圧及び膜質の精密制御の妨げとなったり、コンタクトホールのコンタクト抵抗の増加原因となったりする。そのため、ウエハ表面の自然酸化膜の形成は、極力抑制する必要がある。
【0005】
そこで、超純水製造装置においては、特に一次純水系システムにおいて、脱気装置を用いて溶存酸素を低減している。この脱気装置により、二次純水系システム入り口における被処理水(一次純水)中の溶存酸素濃度は、通常、100μg/L以下にまで低減されている。更に、10μg/L以下に管理されている場合もある。
【0006】
前述した超純水の製造では、一般に、二次純水系システムに設置した紫外線酸化装置によって有機物の分解を行っている。紫外線酸化処理の過程では過酸化水素が副生するため、紫外線酸化装置の処理水中には、過酸化水素が残存しているのが一般的である。この過酸化水素は、二次純水系システムのポリッシャ工程で部分的に分解されて酸素を生成し、処理水中の溶存酸素濃度を上昇させてしまう。
【0007】
そこで、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、合成炭素系粒状吸着剤を用いて吸着除去する方法が提案されている(特開平9−29233号公報)。この方法によれば、紫外線酸化装置の処理水中に残存する過酸化水素自体を除去することから、ウエハ表面の自然酸化皮膜の形成を抑制することが可能である。しかし、この方法では、所定の過酸化水素除去率を達成するためには、多量の合成炭素系粒状吸着剤を充填した大型の吸着塔が必要であった。
【0008】
また、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、白金族金属ナノコロイド粒子を担体に担持させた触媒によって分解する方法が提案されている(特開2007−185587号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−29233号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−185587号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開2007−185587号公報に記載の触媒は、通水空間速度(SV)が100〜2000h−1と比較的低い領域でしか使用できず、SVが2000h−1を越えると、過酸化水素の分解除去が不十分になるといった欠点を有していた。
【0011】
従って、本発明の目的は、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去を可能にする、高性能触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた比較的大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、開口径が大きく、中間体の有機多孔質体の骨格よりも太い骨格を有する骨太のモノリス状有機多孔質体が得られること、骨太のモノリス状有機多孔質体にイオン交換基を導入すると、骨太であるが故に膨潤が大きく、従って、開口を更に大きくできることを見出した。この骨太のモノリス状有機多孔質体にアニオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質アニオン交換体(以下、「第1のモノリスアニオン交換体」とも言う。)に平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子を担持した白金族金属担持触媒(以下、「第1の白金族金属担持触媒」とも言う。)は、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
また、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、芳香族ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、三次元的に連続した芳香族ビニルポリマー骨格と、その骨格相間に三次元的に連続した空孔とからなり、両相が絡み合った共連続構造の疎水性モノリスが得られること、この共連続構造のモノリスは、空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがなく、流体透過時の圧力損失が低いこと、更にこの共連続構造の骨格が太いためイオン交換基を導入すれば、体積当りのイオン交換容量の大きなモノリス状有機多孔質イオン交換体が得られることを見出した。この共連続構造のモノリスにアニオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質アニオン交換体(以下、「第2のモノリスアニオン交換体」とも言う。)に平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子を担持した白金族金属担持触媒(以下、「第2の白金族金属担持触媒」とも言う。)は、第1の白金族金属担持触媒と同様に、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量0.4〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であり、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、本発明(1)又は(2)いずれかの白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させて、該過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素を分解除去することを特徴とする過酸化水素の分解処理水の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、本発明(3)の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、本発明(1)又は(2)いずれかの白金族金属担持触媒の存在下で、水素と酸素を含有する被処理水中の溶存酸素とを反応させて水を生成させることにより、該酸素を含有する被処理水から溶存酸素を除去することを特徴とする溶存酸素の除去処理水の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(6)は、本発明(5)の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の白金族金属担持触媒によれば、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1のモノリスのSEM画像である。
【図2】第1のモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図3】第1のモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図4】図1のSEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写したものである。
【図5】第1の白金族金属担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図6】第2のモノリスアニオン交換体の共連続構造を模式的に示した図である。
【図7】第2のモノリスのSEM画像である。
【図8】第2のモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図9】第2のモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図10】第2の白金族金属担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図11】参考例3のモノリス(公知品)のSEM画像である。
【図12】第2のモノリス中間体のSEM画像である。
【図13】本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例の模式的なフロー図である。
【図14】本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の白金族金属担持触媒の担体として用いられる有機多孔質アニオン交換体は、「第1のモノリスアニオン交換体」又は「第2のモノリスアニオン交換体」である。本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質アニオン交換体」を単に「モノリスアニオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。また、第1のモノリスアニオン交換体に白金族金属が担持された白金族金属担持触媒を、「第1の白金族金属担持触媒」と、第2のモノリスアニオン交換体に白金族金属が担持された白金族金属担持触媒を、「第2の白金族金属担持触媒」とも言う。
【0023】
<第1のモノリスアニオン交換体の説明>
第1のモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは40〜100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。モノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。水湿潤状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、水湿潤状態での開口の平均直径が大き過ぎると、被処理水とモノリスアニオン交換体および担持された白金族金属ナノ粒子との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性又は溶存酸素の除去特性が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明では、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の直径がx1(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスアニオン交換体の直径がy1(mm)であり、この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がz1(μm)であったとすると、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)=z1×(x1/y1)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0024】
第1のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
【0025】
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行うのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図1及び図4を参照して説明する。また、図4は、図1のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図1及び図4中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号12)」であり、図1に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図4中の符号13)である。図4の断面に表れる骨格部面積は、矩形状画像領域11中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
【0026】
SEM画像において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
【0027】
また、第1のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/g、好ましくは0.8〜4ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。なお、本発明では、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値である。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0028】
なお、第1のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
【0029】
第1のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.4〜1.0mg当量/mlである。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質アニオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのアニオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、第1のモノリスアニオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第1のモノリスアニオン交換体の重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0030】
第1のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0031】
第1のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0032】
第1のモノリスアニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、対アニオンを塩化物イオン、臭化物イオンなどにイオン交換した後、EPMAを用いることで、比較的簡単に確認される。また、アニオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0033】
(第1のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第1のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(モノリス中間体)を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にアニオン交換基を導入するIV工程、を行うことにより得られる。
【0034】
第1のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0035】
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でアニオン交換基量を定量的に導入できるため好ましい。
【0036】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0037】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0038】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
【0039】
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
【0040】
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
【0041】
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
【0042】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性又は溶存酸素除去特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0043】
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0044】
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
【0045】
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、アニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0046】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜10モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0047】
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0048】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0049】
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体(中間体)の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体(中間体)中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
【0050】
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0051】
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択される。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
【0052】
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、アニオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスアニオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0053】
上記モノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0054】
第1のモノリスアニオン交換体は、骨太のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第1のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
【0055】
<第2のモノリスアニオン交換体の説明>
第2のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
【0056】
第2のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された平均太さが水湿潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に好ましくは20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図6の模式図に示すように、連続する骨格相1と連続する空孔相2とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造10である。この連続した空孔2は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動を達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
【0057】
第2のモノリスアニオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質アニオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質アニオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なアニオンの吸着挙動を達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、被処理水中の過酸化水素の分解又は溶存酸素の除去が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのアニオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0058】
上記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の直径がx2(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスアニオン交換体の直径がy2(mm)であり、この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がz2(μm)であったとすると、モノリスアニオン交換体の空孔の水湿潤状態での平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径(μm)=z2×(x2/y2)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径を算出することもできる。また、上記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の直径がx3(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスアニオン交換体の直径がy3(mm)であり、この乾燥状態のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がz3(μm)であったとすると、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)=z3×(x3/y3)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の骨格の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
【0059】
また、第2のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理水量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのアニオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒効果が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触効率が低下するため、過酸化水素分解効果又は溶存酸素除去効果も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、被処理水との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通水が可能となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0060】
なお、第2のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.1MPa/m・LVである。
【0061】
第2のモノリスアニオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0062】
第2のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明の第2のモノリスアニオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第2のモノリスアニオン交換体の乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0063】
第2のモノリスアニオン交換体におけるアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体におけるアニオン交換基と同様であり、その説明を省略する。第2のモノリスアニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。均一分布の定義は、第1のモノリスアニオン交換体の均一分布の定義と同じである。
【0064】
(第2のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第2のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にアニオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
【0065】
第2のモノリスアニオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0066】
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、共連続構造の形成に有利となるため好ましい。
【0067】
界面活性剤は、第1のモノリスアニオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
【0068】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0069】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスアニオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
【0070】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル%未満とすることが好ましい。
【0071】
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第1のモノリスアニオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
【0072】
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第2のモノリスアニオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
【0073】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性又は溶存酸素除去特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0074】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0075】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
【0076】
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量がモノリス中間体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできずアニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0077】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、アニオン交換基の定量的導入が困難になる場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0078】
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0079】
重合開始剤は、第1のモノリスアニオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
【0080】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、共連続構造のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第2のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
【0081】
反応容器の内容積は、第1のモノリスアニオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0082】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0083】
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で8〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の乾燥状態の平均直径は、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。乾燥状態のモノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の平均太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
【0084】
重合条件は、第1のモノリスアニオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0085】
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにアニオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスアニオン交換体における、モノリスにアニオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
【0086】
第2のモノリスアニオン交換体は、共連続構造のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第2のモノリスアニオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量を大きくでき、更に、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能である。
【0087】
<第1の白金族金属担持触媒及び第2の白金族金属担持触媒>
本発明の第1の白金族金属担持触媒は、第1のモノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒である。また、本発明の第2の白金族金属担持触媒は、第2のモノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒である。
【0088】
本発明に係る白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いても良く、更に、二種類以上の金属を合金として用いても良い。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
【0089】
本発明に係る白金族金属のナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、ナノ粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲内の場合、表面プラズモン共鳴によりナノ粒子は強く着色するため、目視によっても確認可能である。
【0090】
乾燥状態の第1の白金族金属担持触媒中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の第1の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。また、乾燥状態の第2の白金族金属担持触媒中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の第2の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属ナノ粒子の担持量が0.004重量%未満であると、過酸化水素分解効果又は溶存酸素の除去効果が不十分になるため好ましくない。一方、白金族金属ナノ粒子の担時量が20重量%を超えると、水中への金属溶出が認められるようになるため好ましくない。
【0091】
第1の白金族金属担持触媒及び第2の白金族金属担持触媒の製造方法には特に制約はなく、公知の方法により、第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子を担持させることにより、第1の白金族金属担持触媒又は第2の白金族金属担持触媒を得ることができる。例えば、乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換によりモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属ナノ粒子を第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に担持する方法や、第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体をカラムに充填し、塩化パラジウムの塩酸水溶液を通液して塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換により第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤を通液してパラジウム金属ナノ粒子を第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に担持する方法等が挙げられる。用いられる還元剤にも特に制約はなく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸等のカルボン酸、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が挙げられる。
【0092】
第1の白金族金属担持触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体である第1のモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。本発明では、このような塩形のものを、過酸化水素分解用又は溶存酸素除去用の触媒として用いても良い。また、第1の白金族金属担持触媒は、これに限定されるものではなく、第1のモノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであっても良い。そして、これらのうち、第1のモノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。また、同様に、第2の白金族金属担持触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体である第2のモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。本発明では、このような塩形のものを、過酸化水素分解用又は溶存酸素除去用の触媒として用いても良い。また、第2の白金族金属担持触媒は、これに限定されるものではなく、第2のモノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであっても良い。そして、これらのうち、第2のモノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。白金族金属ナノ粒子を担持した後のモノリスアニオン交換体のOH形への再生方法には特に制限はなく、水酸化ナトリウム水溶液を通液する等の公知の方法を用いればよい。
【0093】
<本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法>
本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法は、第1の白金族金属担持触媒又は第2の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させて、過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素を分解除去する過酸化水素の分解処理水の製造方法である。なお、以下では、第1の白金族金属担持触媒及び第2の白金族金属担持触媒を総称して、本発明の白金族金属担持触媒とも記載する。
【0094】
過酸化水素を含有する被処理水は、過酸化水素を含有するものであれば、特に制限されず、例えば、半導体製造等の電子部品の製造及び電子部品の製造器具を洗浄するための超純水の製造において、その中の種々の工程により生じる水が挙げられ、具体的には、水中の有機物を分解するための紫外線酸化処理工程を行った後の水が挙げられる。また、過酸化水素を含有する被処理水としては、他には、用廃水系に過酸化水素を添加し、酸化、還元、殺菌、洗浄を行った処理液又は処理水やこれらの処理液又は処理水を用いて処理を行った後の廃液又は排水が挙げられる。例えば、半導体製造工程から排出される過酸化水素を含む洗浄排水、半導体製造工程から排出される有機物を含む洗浄排水を超純水として回収再利用するために、過酸化水素の存在下に紫外線を照射し有機物を酸化分解して得られる処理水、フェントン試薬を用いて有機物を分解して得られる処理水、逆浸透膜、限外ろ過膜等を過酸化水素で殺菌又は洗浄した後の排水、6価クロムを含有する排水を過酸化水素で還元処理して得られる処理水等が挙げられる。
【0095】
過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素濃度は、特に制限されないが、通常、0.01〜100mg/Lである。超純水製造のサブシステムでは、通常、過酸化水素濃度は、10〜50μg/Lである。過酸化水素濃度が100mg/Lを超えると、母体であるモノリスアニオン交換体の劣化が進み易い。
【0096】
本発明の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、触媒充填塔に、本発明の白金族金属担持触媒を充填し、触媒充填塔に、過酸化水素を含有する被処理液を供給することにより、本発明の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を通液する方法等が挙げられる。
【0097】
上記方法の場合、本発明の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1、好ましくはSV=5000〜10000h−1で通水することができる。本発明の白金族金属担持触媒を用いると、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、過酸化水素の分解除去が可能である。更に、SVが10000h−1であっても、本発明の白金族金属担持触媒を用いると、過酸化水素の分解が可能であり、本発明の白金族金属担持触媒は、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒の処理限界を大きく上回る、卓越した性能を示す。本発明の白金族金属担持触媒への過酸化水素を含有する被処理水の通水速度は、特に制限されないが、好ましくはSV=2000〜20000h−1、特に好ましくはSV=5000〜10000h−1である。なお、本発明の白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、あえて通水速度をSV=2000h−1未満の領域とする必要はないが、通水速度をSV=2000h−1未満の領域としてもよく、通水速度をSV=2000h−1未満の領域とした場合も、本発明の白金族金属担持触媒は、優れた過酸化水素分解能力を発揮する。一方、SVが20000h−1を超えると、通水差圧が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0098】
更に、本発明の白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去が可能である。
【0099】
本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水中の過酸化水素濃度は、1μg/L以下であることが好ましい。
【0100】
本発明の電子部品の洗浄方法(I)は、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄する電子部品の洗浄方法である。
【0101】
本発明の電子部品の洗浄方法(I)の形態例について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例の模式的なフロー図であり、図14は、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【0102】
図13に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例は、オゾンを含有する水(以下、オゾン含有水とも記載する。)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程21と、水素を含有する水(以下、水素含有水とも記載する。)に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第2工程22と、フッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程23と、水素含有水に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第4工程24と、を有する。
【0103】
第1工程21に供給される洗浄水は、超純水32にオゾンを溶解させて調製されたオゾン含有水である。そして、超純水は、その製造工程で、紫外線酸化処理等がされているので、過酸化水素を含有している。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、超純水32にオゾン33を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程25を行い、得られた処理水にオゾン33を溶解させて、第1工程21の洗浄水として供給する。
【0104】
また、第2工程22に供給される洗浄水は、超純水32に水素を溶解させて調製された水素含有水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、超純水32に水素34を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程26を行い、得られた処理水に水素34を溶解させて、第2工程22の洗浄水として供給する。本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、第4工程24も同様に、超純水32に水素36を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程28を行い、得られた処理水に水素36を溶解させて、第4工程24の洗浄水として供給する。なお、水素34又は36を溶解させる時期は、過酸化水素除去工程26又は28の前段であってもよい。
【0105】
また、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程27を行い、得られた処理水にフッ化水素酸及び過酸化水素35を溶解させ、得られたフッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水を、第3工程23の洗浄水として供給することもできる。
【0106】
そして、洗浄前の電子部品20aを被洗浄物として、第1工程21〜第4工程24を順に行い、洗浄後の電子部品30aを得る。
【0107】
図14に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例は、硫酸及び過酸化水素を含有する液に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程41と、超純水でリンスする第2工程42と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程43と、超純水でリンスする第4工程44と、アンモニア及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第5工程45と、超純水でリンスする第6工程46と、加熱した超純水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第7工程47と、超純水でリンスする第8工程48と、塩酸及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第9工程49と、超純水でリンスする第10工程50と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第11工程51と、超純水でリンスする第12工程52と、を有する。
【0108】
図14中の第3、5、9及び11工程に供給される洗浄水63、65、69及び71は、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させた水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例では、図13に示す本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例と同様に、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させる前に、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水に各工程で必要な薬剤を溶解させて、各工程の洗浄水(洗浄液)として供給する。
【0109】
また、図14中の第2、4、6、7、8、10及び12工程に供給される洗浄水62、64、66、67、68、70及び72は、超純水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例では、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水を、各工程の洗浄水として供給する。
【0110】
そして、洗浄前の電子部品20bを被洗浄物として、第1工程41〜第12工程52を順に行い、洗浄後の電子部品30bを得る。
【0111】
なお、上記のように、本発明において、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するとは、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行った直後の処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということだけではなく、電子部品又は電子部品の製造器具の洗浄に用いられる超純水を製造する工程のいずれか1箇所又は2箇所以上で、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い、超純水の製造工程の全工程を行って得られる超純水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということを意味する。
【0112】
<本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法>
本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法は、第1の白金族金属担持触媒又は第2の白金族金属担持触媒の存在下で、酸素を含有する被処理水中の溶存酸素と水素とを反応させて水を生成させることにより、酸素を含有する被処理水から溶存酸素を除去する溶存酸素の除去処理水の製造方法である。
【0113】
酸素を含有する被処理水は、酸素を含有するものであれば、特に制限されず、例えば、半導体製造等の電子部品の製造及び電子部品の製造器具等を洗浄するための超純水の製造に用いられる原水又はその製造工程中の種々の水等が挙げられ、具体的には、超純水製造サブシステムの循環水、例えば、紫外線酸化装置の出口水等が挙げられる。また、溶存酸素を含有する被処理水としては、他には、発電所で用いられる用水、各種工場で用いられるボイラー水や冷却水等が挙げられる。
【0114】
酸素を含有する被処理水中の溶存酸素濃度は、特に制限されないが、通常、0.01〜10mg/Lである。
【0115】
溶存酸素と反応させる水素の量は、特に制限されないが、酸素濃度の1倍当量〜10倍当量、好ましくは1.1倍当量〜5倍当量である。
【0116】
本発明の白金族金属担持触媒の存在下で、酸素を含有する被処理水中の溶存酸素と水素を反応させる方法としては、特に制限されず、例えば、触媒充填塔に、本発明の白金族金属担持触媒を充填し、触媒充填塔に、酸素を含有する被処理液を供給すると共に、被処理液の供給管内に、水素ガスを注入することにより、本発明の白金族金属担持触媒に、溶存水素と溶存酸素を含有する被処理水とを通液する方法等が挙げられる。
【0117】
上記の方法の場合、本発明の白金族金属担持触媒に、酸素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1、好ましくはSV=5000〜10000h−1で通水することができる。本発明の白金族金属担持触媒を用いると、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、溶存酸素の除去が可能である。更に、SVが10000h−1であっても、本発明の白金族金属担持触媒を用いると、溶存酸素の除去が可能であり、本発明の白金族金属担持触媒は、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒の処理限界を大きく上回る、卓越した性能を示す。本発明の白金族金属担持触媒への酸素を含有する被処理水の通水速度は、特に制限されないが、好ましくはSV=2000〜20000h−1、特に好ましくはSV=5000〜10000h−1である。なお、本発明の白金族金属担持触媒は、溶存酸素除去能力が著しく高いため、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒の処理限界を大きく上回る通水速度で、被処理水を通水しても、被処理水中の溶存酸素を分解することができる。
【0118】
更に、本発明の白金族金属担持触媒は、溶存酸素除去能力が著しく高いため、触媒の充填層高を薄くしても溶存酸素の除去が可能である。
【0119】
本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水中の溶存酸素濃度は、10μg/L以下であることが好ましい。
【0120】
本発明の電子部品の洗浄方法(II)は、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄する電子部品の洗浄方法である。
【0121】
空気中の酸素は水中に溶存酸素として溶け込む。溶存酸素は超純水中の不純物として管理され、前述のように、超純水製造装置の二次純水系システム入り口における被処理水(一次純水)中の溶存酸素濃度は、通常、100μg/L以下にまで低減されている。更に、10μg/L以下に管理されている場合もある。そして、超純水中の溶存酸素濃度は、10μg/L以下、更には1μg/L以下に管理されている場合もある。一方、超純水の製造工程では、紫外線酸化処理等により発生した過酸化水素が分解する際に酸素が生じる。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(II)の形態例では、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程を行い、得られた処理水を、電子部品の洗浄方法の各工程に供給される洗浄水(洗浄液)又はその調製用の超純水とする。
【0122】
本発明の電子部品の洗浄方法(II)の第一の形態例は、図13中の過酸化水素除去工程25、26、27及び28を、超純水32を被処理水として本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程に代えたものである。そして、洗浄前の電子部品20aを被洗浄物として、第1工程21〜第4工程24を順に行い、洗浄後の電子部品30aを得る。
【0123】
本発明の電子部品の洗浄方法(II)の第二の形態例は、図14中の第3、5、9及び11工程に供給される洗浄水(洗浄液)63、65、69及び71を、超純水を被処理水として本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程を行い、得られた処理水に各工程で必要な薬剤を溶解させることにより調製し、また、図14中の第2、4、6、7、8、10及び12工程に供給される洗浄水62、64、66、67、68、70及び72を、超純水を被処理水として本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程を行うことにより得るものである。そして、洗浄前の電子部品20bを被洗浄物として、第1工程41〜第12工程52を順に行い、洗浄後の電子部品30bを得る。
【0124】
なお、上記のように、本発明において、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するとは、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行った直後の処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということだけではなく、電子部品又は電子部品の製造器具の洗浄に用いられる超純水を製造する工程のいずれか1箇所又は2箇所以上で、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い、超純水の製造工程の全工程を行って得られる超純水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということを意味する。
【0125】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0126】
<第1のモノリスアニオン交換体の製造(参考例1)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン19.9g、ジビニルベンゼン0.4g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
【0127】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1-デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0128】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図1から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が、参考例3の公知品のSEM画像(図11)と比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
【0129】
次ぎに、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。
【0130】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0131】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのアニオン交換容量は、水湿潤状態で0.60mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は、2.2ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.017MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは25mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、圧倒的に短かった。
【0132】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図2に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図3に示すが、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図3において、骨格下部の塩化物イオン濃度が骨格上部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格下部が骨格上部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0133】
<第2のモノリスアニオン交換体の製造(参考例2)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.29g、ジビニルベンゼン0.28g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.39gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図12)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は17.8ml/gであった。
【0134】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1-デカノール60g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約30mmの円盤状に切断して2.4gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0135】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図7に示す。図7から明らかなように、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は18μm、全細孔容積は2.0ml/gであった。
【0136】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0137】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのアニオン交換容量は水湿潤状態で0.44mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスイオン交換体の連続空孔の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ29μmであり、骨格の平均太さは13μm、全細孔容積は、2.0ml/gであった。
【0138】
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は0.040MPa/m・LVであり、実用上支障のない低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは22mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて圧倒的に短かった。
【0139】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図8に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図9に示すが、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図9において、骨格周辺部の塩化物イオン濃度が骨格中心部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格周辺部が内部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0140】
参考例3
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体(公知品)の製造)
特開2002−306976号記載の製造方法に準拠して連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。すなわち、スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、SMO1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。
【0141】
このようにして得られた、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリスの内部構造を、SEMにより観察した結果を図11に示す。図11から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しているが、連続マクロポア構造体の骨格を構成する壁部の厚みは参考例1(図1)に比べて薄かった。当該モノリスのSEM画像から測定した壁部の平均厚みは5μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は29μm、全細孔容積は、8.6ml/gであった。
【0142】
実施例1
(第1の白金族金属担持触媒の調製)
参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム270mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、塩化パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。塩化パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が茶色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られた第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aを数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0143】
乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、10.9重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図5に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、5nmであった。乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒aを内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aの充填層高は11mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、9.7g−Pd/L−R(パラジウムナノ粒子担持触媒1L当たりに担持されているパラジウム重量)であった。
【0144】
(触媒の評価)
内径10mmのカラムに充填した上記第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに、過酸化水素15〜30μg/Lを含む超純水をSV=5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、触媒の充填層高が11mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0145】
実施例2
(第2の白金族金属担持触媒の調製)
触媒担体として、参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)に代えて参考例2のモノリスアニオン交換体(第2のモノリスアニオン交換体)を用いたこと、及び、切り出したモノリスアニオン交換体の乾燥時重量を1.2gとすることに代えて1.4gとすることを除いて、実施例1と同様の方法で参考例2のモノリスアニオン交換体(第2のモノリスアニオン交換体)にパラジウムナノ粒子を担持し、第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aを得た。
【0146】
得られた乾燥状態の第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、9.8重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図10に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、3nmであった。乾燥状態の第2のパラジウムナノ粒子担持触媒を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。触媒の充填層高は13mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、8.7g−Pd/L−Rであった。
【0147】
(触媒の評価)
触媒として、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒に代えて第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aの過酸化水素分解効果を評価した。その結果、SV=5000h−1および10000h−1で超純水を通水したいずれの場合でも、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0148】
実施例3
切り出した第1のモノリスアニオン交換体の乾燥時重量を1.2gとすること代えて1.7gとすること、及び塩化パラジウム270mgを溶解することに代えて塩化パラジウムを2.5mg溶解することを除いて、実施例1と同様の方法で参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)にパラジウムナノ粒子を担持し、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bを得た。
【0149】
得られた乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、0.05重量%であった。乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bを内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。触媒の充填層高は19mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、0.07g−Pd/L−Rであった。
【0150】
(触媒の評価)
触媒として、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに代えて第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bの過酸化水素分解効果を評価した。SV=5000h−1で通水した場合、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次にSVを10000h−1とし同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1.7μg/Lであり、パラジウムナノ粒子の担持量が0.07g−Pd/L−Rと非常に低いのにもかかわらず、過酸化水素分解効果の高い結果が得られた。
【0151】
比較例1
水分保有能力がOH形基準において60〜70%であり、ゲル形である粒子状の強塩基アニオン交換樹脂(I型)に公知の方法でパラジウムナノ粒子を担持し、パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を得た。Cl形の粒子状アニオン交換樹脂を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、水洗後に、ヒドラジン水溶液で還元処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を通液して粒子状のアニオン交換樹脂をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、乾燥状態で0.4重量%、水湿潤状態で970mg−Pd/L−Rであった。このパラジウムを担持したOH形の粒子状イオン交換樹脂を内径25mmのカラムに40mL(層高80mm)充填して実施例1と同じ方法で過酸化水素低減の実験を行った。
【0152】
(触媒の評価)
触媒として、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに代えて上記パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を用いたこと、及び、超純水をSV=1500h−1および2500h−1で通水したことを除いて、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度はそれぞれ1μg/L未満、1.6μg/Lであった。SV=1500h−1においては過酸化水素は1μg/L未満となったが、SVを2500h−1に上げると、過酸化水素は処理水中にリークした。このように、従来技術である粒子状アニオン交換樹脂にパラジウムナノ粒子を担持した触媒では、実施例よりも遅いSV、厚い触媒充填層高といった過酸化水素を除去しやすい条件を設定しても、SV=2500h−1では過酸化水素がリークした。
【0153】
比較例2
パラジウムナノ粒子を担持させず、参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)のみを用いて、実施例1と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0154】
<第1のモノリスアニオン交換体に係るモノリスの製造(参考例4〜13)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の種類と使用量、有機溶媒の種類と使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、参考例4〜13のSEM画像(不図示)及び表2から、参考例4〜13のモノリスの開口の平均直径は22〜70μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25〜50μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%と骨太のモノリスであった。なお、表1中、仕込み欄は左から順に、II工程で用いたビニルモノマー、架橋剤、I工程で得られたモノリス中間体、II工程で用いた有機溶媒を示す。なお、以下の表に示すメソポアの直径、壁面の厚み、骨格の直径(太さ)、及び空孔の直径は、平均値である。
【0155】
<第1のモノリスアニオン交換体の製造(参考例14)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。参考例14のモノリスはマクロポアとマクロポアの重なり部分の開口の平均直径は38μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25μmと壁部の厚い有機多孔質体が得られた。
【0156】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0157】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのアニオン交換容量は、水湿潤状態で0.56mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ61μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは40μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中26%、全細孔容積は、2.9ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.020MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。
【0158】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0159】
<第2のモノリスアニオン交換体の製造(参考例15)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.4g、ジビニルベンゼン0.17g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.4gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(不図示)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
【0160】
(共連続構造モノリスの製造)
次いで、スチレン76.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール120g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約40mmの円盤状に切断して4.1gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0161】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の平均太さは10μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は17μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。その結果を表3及び4にまとめて示す。表4中、骨格の太さは骨格の平均直径で表した。
【0162】
(共連続気泡構造を有するモノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0163】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.5倍であり、体積当りのアニオン交換容量は水湿潤状態で0.54mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスイオン交換体の連続空孔の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ26μmであり、骨格の平均太さは15μm、全細孔容積は、2.9ml/gであった。
【0164】
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は0.045MPa/m・LVであり、実用上支障のない低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは20mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて圧倒的に短いばかりでなく、従来の連続気泡構造を有するモノリス状多孔質アニオン交換体の値に比べても短かった。その結果を表5まとめて示す。また、得られた共連続構造を有するモノリスアニオン交換体の内部構造はSEM画像(不図示)により観察した。
【0165】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の表面のみならず、内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0166】
<第2のモノリスアニオン交換体の製造(参考例16及び17)>
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表3に示す配合量に変更した以外は、参考例15と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。モノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ(不図示)、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。その結果を表3及び表4に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
なお、上記参考例4〜13及び参考例16〜17で得られたモノリスには、公知の方法を適宜適用することで、例えば、参考例1又は参考例2に示す方法で、アニオン交換基を導入することができる。また、参考例4〜13及び参考例16〜17で得られたモノリスにアニオン交換基が導入されたモノリスアニオン交換体並びに参考例14及び参考例15で得られたモノリスアニオン交換体には、公知の方法を適宜適用することで、例えば、実施例1又は実施例2に示す方法で、白金族金属ナノ粒子を担持することができる。
【0172】
実施例4
塩化パラジウム270mgを溶解することに代えて塩化パラジウムを190mg溶解することを除いて、実施例1と同様の方法で参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)にパラジウムナノ粒子を担持し、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cを得た。
【0173】
乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、7.4重量%であった。乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cを内径10mmのカラムに充填し、溶存酸素除去特性の評価に用いた。触媒の充填層高は20mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、10.5g−Pd/L−Rであった。
【0174】
(触媒の評価)
内径10mmのカラムに充填した上記第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cに、溶存酸素濃度32μg/L且つ溶存水素濃度11μg/Lに調整した超純水をSV=7500h−1にて通水し、カラム出口の処理水中の溶存酸素濃度が安定するまで測定を行なった。その結果、カラム出口の溶存酸素濃度は3.8μg/Lに低減していた。
【0175】
(比較例3)
水分保有能力がOH形基準において60〜70%でありゲル形である粒子状の強塩基性アニオン交換樹脂(Cl形)にパラジウムを水潤状態で910mg−Pd/L−R担持させたCl形触媒樹脂を作製した。このCl形触媒樹脂を上記内径10mmのカラムに充填層高360mmで、SV430の流速で通水した以外は、実施例4と同様の方法で触媒評価を行った。その結果、処理水が安定した時点でのカラム出口溶存酸素濃度は4.1μg/Lであった。
実施例4と比較例3における評価結果を表5にまとめた。
【0176】
【表5】
【0177】
実施例4は、SV7500と非常に高流速であり、且つ、担持したパラジウム金属触媒の質量あたりの通水流速においても実施例4の方が比較例3に比べ多いにも関わらず、比較例3と同程度の溶存酸素濃度の処理水が得られた。このことから、本発明の白金族金属担持触媒を用いれば、高流速で低樹脂層高においても効果的な溶存酸素除去が可能であるため、触媒使用量の低減、装置の小型化と共に溶出物の低減が図れる。
【符号の説明】
【0178】
1 骨格相
2 空孔相
10 モノリス
11 画像領域
12 断面で表れる骨格部
13 マクロポア
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所用水や半導体製造などの精密加工洗浄用水に使用される、超純水中の過酸化水素や溶存酸素の様な酸化性物質を除去するための白金族金属担持触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所で用いられる用水中の溶存酸素は、配管や熱交換器等の部材の腐食を引き起こすことが知られており、特に、原子力発電所の一次系及び二次系においては、溶存酸素を極力低減する必要がある。
【0003】
また、半導体製造産業においては、不純物を高度に除去した超純水を用いてシリコンウエハの洗浄等が行われている。超純水は、一般に原水(河川水、地下水、工業用水等)中に含まれる懸濁物質や有機物の一部を前処理工程で除去した後、その処理水を一次純水系システム及び二次純水系システム(サブシステム)で順次処理することによって製造され、ウエハ洗浄を行うユースポイントに供給される。このような超純水は、不純物の定量も困難であるほどの純度を有するが、全く不純物を有していないわけではない。
【0004】
例えば、超純水中に含まれる溶存酸素は、シリコンウエハの表面に自然酸化膜を形成する。自然酸化膜がウエハ表面に形成されると、低温でのエピタキシャルSi薄膜の成長を妨げたり、ゲート酸化膜の膜圧及び膜質の精密制御の妨げとなったり、コンタクトホールのコンタクト抵抗の増加原因となったりする。そのため、ウエハ表面の自然酸化膜の形成は、極力抑制する必要がある。
【0005】
そこで、超純水製造装置においては、特に一次純水系システムにおいて、脱気装置を用いて溶存酸素を低減している。この脱気装置により、二次純水系システム入り口における被処理水(一次純水)中の溶存酸素濃度は、通常、100μg/L以下にまで低減されている。更に、10μg/L以下に管理されている場合もある。
【0006】
前述した超純水の製造では、一般に、二次純水系システムに設置した紫外線酸化装置によって有機物の分解を行っている。紫外線酸化処理の過程では過酸化水素が副生するため、紫外線酸化装置の処理水中には、過酸化水素が残存しているのが一般的である。この過酸化水素は、二次純水系システムのポリッシャ工程で部分的に分解されて酸素を生成し、処理水中の溶存酸素濃度を上昇させてしまう。
【0007】
そこで、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、合成炭素系粒状吸着剤を用いて吸着除去する方法が提案されている(特開平9−29233号公報)。この方法によれば、紫外線酸化装置の処理水中に残存する過酸化水素自体を除去することから、ウエハ表面の自然酸化皮膜の形成を抑制することが可能である。しかし、この方法では、所定の過酸化水素除去率を達成するためには、多量の合成炭素系粒状吸着剤を充填した大型の吸着塔が必要であった。
【0008】
また、紫外線酸化装置の処理水中に含まれる過酸化水素を、白金族金属ナノコロイド粒子を担体に担持させた触媒によって分解する方法が提案されている(特開2007−185587号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−29233号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−185587号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特開2007−185587号公報に記載の触媒は、通水空間速度(SV)が100〜2000h−1と比較的低い領域でしか使用できず、SVが2000h−1を越えると、過酸化水素の分解除去が不十分になるといった欠点を有していた。
【0011】
従って、本発明の目的は、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去を可能にする、高性能触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた比較的大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、開口径が大きく、中間体の有機多孔質体の骨格よりも太い骨格を有する骨太のモノリス状有機多孔質体が得られること、骨太のモノリス状有機多孔質体にイオン交換基を導入すると、骨太であるが故に膨潤が大きく、従って、開口を更に大きくできることを見出した。この骨太のモノリス状有機多孔質体にアニオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質アニオン交換体(以下、「第1のモノリスアニオン交換体」とも言う。)に平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子を担持した白金族金属担持触媒(以下、「第1の白金族金属担持触媒」とも言う。)は、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
また、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、芳香族ビニルモノマーと架橋剤を、特定有機溶媒中で静置重合すれば、三次元的に連続した芳香族ビニルポリマー骨格と、その骨格相間に三次元的に連続した空孔とからなり、両相が絡み合った共連続構造の疎水性モノリスが得られること、この共連続構造のモノリスは、空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがなく、流体透過時の圧力損失が低いこと、更にこの共連続構造の骨格が太いためイオン交換基を導入すれば、体積当りのイオン交換容量の大きなモノリス状有機多孔質イオン交換体が得られることを見出した。この共連続構造のモノリスにアニオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質アニオン交換体(以下、「第2のモノリスアニオン交換体」とも言う。)に平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子を担持した白金族金属担持触媒(以下、「第2の白金族金属担持触媒」とも言う。)は、第1の白金族金属担持触媒と同様に、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量0.4〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であり、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、本発明(1)又は(2)いずれかの白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させて、該過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素を分解除去することを特徴とする過酸化水素の分解処理水の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、本発明(3)の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、本発明(1)又は(2)いずれかの白金族金属担持触媒の存在下で、水素と酸素を含有する被処理水中の溶存酸素とを反応させて水を生成させることにより、該酸素を含有する被処理水から溶存酸素を除去することを特徴とする溶存酸素の除去処理水の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(6)は、本発明(5)の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の白金族金属担持触媒によれば、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで通水しても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能であり、更に、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去又は溶存酸素の除去が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1のモノリスのSEM画像である。
【図2】第1のモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図3】第1のモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図4】図1のSEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写したものである。
【図5】第1の白金族金属担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図6】第2のモノリスアニオン交換体の共連続構造を模式的に示した図である。
【図7】第2のモノリスのSEM画像である。
【図8】第2のモノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図9】第2のモノリスアニオン交換体の断面(厚み)方向における塩化物イオンの分布状態を示したEPMA画像である。
【図10】第2の白金族金属担持触媒におけるパラジウムナノ粒子の分散状態を示したTEM画像である。
【図11】参考例3のモノリス(公知品)のSEM画像である。
【図12】第2のモノリス中間体のSEM画像である。
【図13】本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例の模式的なフロー図である。
【図14】本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の白金族金属担持触媒の担体として用いられる有機多孔質アニオン交換体は、「第1のモノリスアニオン交換体」又は「第2のモノリスアニオン交換体」である。本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質アニオン交換体」を単に「モノリスアニオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。また、第1のモノリスアニオン交換体に白金族金属が担持された白金族金属担持触媒を、「第1の白金族金属担持触媒」と、第2のモノリスアニオン交換体に白金族金属が担持された白金族金属担持触媒を、「第2の白金族金属担持触媒」とも言う。
【0023】
<第1のモノリスアニオン交換体の説明>
第1のモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは40〜100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。モノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。水湿潤状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、水湿潤状態での開口の平均直径が大き過ぎると、被処理水とモノリスアニオン交換体および担持された白金族金属ナノ粒子との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性又は溶存酸素の除去特性が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明では、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値である。また、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の直径がx1(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスアニオン交換体の直径がy1(mm)であり、この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの開口の平均直径がz1(μm)であったとすると、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径(μm)=z1×(x1/y1)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0024】
第1のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
【0025】
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行うのがよい。切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。SEM画像における切断面の骨格部を図1及び図4を参照して説明する。また、図4は、図1のSEM写真の断面として表れる骨格部を転写したものである。図1及び図4中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部(符号12)」であり、図1に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図4中の符号13)である。図4の断面に表れる骨格部面積は、矩形状画像領域11中、28%である。このように、骨格部は明確に判断できる。
【0026】
SEM画像において、切断面の断面に表れる骨格部の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
【0027】
また、第1のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/g、好ましくは0.8〜4ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下するため、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。なお、本発明では、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値である。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0028】
なお、第1のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
【0029】
第1のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.4〜1.0mg当量/mlである。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質アニオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのアニオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、第1のモノリスアニオン交換体は、開口径を更に大きくすると共に、連続マクロポア構造体の骨格を太くする(骨格の壁部を厚くする)ことができるため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第1のモノリスアニオン交換体の重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0030】
第1のモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0031】
第1のモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0032】
第1のモノリスアニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、対アニオンを塩化物イオン、臭化物イオンなどにイオン交換した後、EPMAを用いることで、比較的簡単に確認される。また、アニオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0033】
(第1のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第1のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(モノリス中間体)を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るIII工程、該III工程で得られた骨太有機多孔質体にアニオン交換基を導入するIV工程、を行うことにより得られる。
【0034】
第1のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0035】
I工程のモノリス中間体の製造において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%とすることが、後の工程でアニオン交換基量を定量的に導入できるため好ましい。
【0036】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は一種単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0037】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0038】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
【0039】
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として骨太の骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好ましくは0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を2モル%以上含有していることが好ましい。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。
【0040】
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、骨格を太らせ均一な骨格構造のモノリスを得ることができる。
【0041】
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:20とすればよい。
【0042】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で20〜200μmである。乾燥状態での開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性又は溶存酸素除去特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0043】
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0044】
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
【0045】
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、アニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0046】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.3〜10モル%、特に0.3〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入量が減少してしまう場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0047】
II工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0048】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0049】
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有する骨太のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体(中間体)の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体(中間体)中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。なお、開口径は重合の進行により狭められるが、モノリス中間体の全細孔容積が大きいため、例え骨格が骨太になっても適度な大きさの開口径が得られる。
【0050】
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨太のモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜50倍、好ましくは4〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨太の骨格を有するモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0051】
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択される。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせる。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出して骨太のモノリスを得る。
【0052】
次に、上記の方法によりモノリスを製造した後、アニオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスアニオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0053】
上記モノリスにアニオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0054】
第1のモノリスアニオン交換体は、骨太のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。すなわち、特開2002−306976記載の従来のモノリスにイオン交換基が導入されたものよりも膨潤度が遥かに大きい。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第1のモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
【0055】
<第2のモノリスアニオン交換体の説明>
第2のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
【0056】
第2のモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された平均太さが水湿潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に好ましくは20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は図6の模式図に示すように、連続する骨格相1と連続する空孔相2とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造10である。この連続した空孔2は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動を達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
【0057】
第2のモノリスアニオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質アニオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質アニオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なアニオンの吸着挙動を達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、被処理水中の過酸化水素の分解又は溶存酸素の除去が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのアニオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0058】
上記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の直径がx2(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスアニオン交換体の直径がy2(mm)であり、この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を水銀圧入法により測定したときの空孔の平均直径がz2(μm)であったとすると、モノリスアニオン交換体の空孔の水湿潤状態での平均直径(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径(μm)=z2×(x2/y2)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径を算出することもできる。また、上記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。具体的には、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の直径がx3(mm)であり、その水湿潤状態のモノリスアニオン交換体を乾燥させ、得られる乾燥状態のモノリスアニオン交換体の直径がy3(mm)であり、この乾燥状態のモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値がz3(μm)であったとすると、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)は、次式「水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の連続構造体の骨格の平均太さ(μm)=z3×(x3/y3)」で算出される。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の骨格の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
【0059】
また、第2のモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理水量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのアニオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒効果が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触効率が低下するため、過酸化水素分解効果又は溶存酸素除去効果も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、被処理水との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通水が可能となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0060】
なお、第2のモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.1MPa/m・LVである。
【0061】
第2のモノリスアニオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0062】
第2のモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlのイオン交換容量を有する。特開2002−306976号に記載されているような本発明とは異なる連続マクロポア構造を有する従来型のモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成するために、開口径を大きくすると、全細孔容積もそれに伴って大きくなってしまうため、体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させるために全細孔容積を小さくしていくと、開口径が小さくなってしまうため圧力損失が増加するといった欠点を有していた。それに対して、本発明の第2のモノリスアニオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、第2のモノリスアニオン交換体の乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。なお、イオン交換基が骨格表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0063】
第2のモノリスアニオン交換体におけるアニオン交換基としては、第1のモノリスアニオン交換体におけるアニオン交換基と同様であり、その説明を省略する。第2のモノリスアニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。均一分布の定義は、第1のモノリスアニオン交換体の均一分布の定義と同じである。
【0064】
(第2のモノリスアニオン交換体の製造方法)
第2のモノリスアニオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つI工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、共連続構造体を得るIII工程、該III工程で得られた共連続構造体にアニオン交換基を導入するIV工程を行うことで得られる。
【0065】
第2のモノリスアニオン交換体におけるモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行なえばよい。
【0066】
すなわち、I工程において、イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%とすることが、共連続構造の形成に有利となるため好ましい。
【0067】
界面活性剤は、第1のモノリスアニオン交換体のI工程で使用する界面活性剤と同様であり、その説明を省略する。
【0068】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0069】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、第1のモノリスアニオン交換体のI工程における混合方法と同様であり、その説明を省略する。
【0070】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、I工程で得られるモノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料、好適には芳香族ビニルポリマーである。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜5モル%、好ましくは0.3〜3モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を超えると、モノリスの構造が共連続構造を逸脱し易くなるため好ましくない。特に、全細孔容積が16〜20ml/gと本発明の中では小さい場合には、共連続構造を形成させるため、架橋構造単位は3モル%未満とすることが好ましい。
【0071】
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、第1のモノリスアニオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
【0072】
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を第2のモノリスアニオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
【0073】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性又は溶存酸素除去特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0074】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程は、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0075】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、II工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性の芳香族ビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらモノマーは、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられる芳香族ビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等である。
【0076】
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍である。芳香族ビニルモノマー添加量がモノリス中間体に対して5倍未満であると、棒状骨格を太くできずアニオン交換基導入後の体積当りのアニオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、連続空孔の径が小さくなり、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0077】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、一種単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量(全油溶性モノマー)に対して0.3〜5モル%、特に0.3〜3モル%である。架橋剤使用量が0.3モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多過ぎると、アニオン交換基の定量的導入が困難になる場合があるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、アニオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0078】
II工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が30〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が30重量%未満となると、重合速度が低下したり、重合後のモノリス構造が本発明の範囲から逸脱してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0079】
重合開始剤は、第1のモノリスアニオン交換体のII工程で用いる重合開始剤と同様であり、その説明を省略する。
【0080】
第2のモノリスアニオン交換体の製造方法において、III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の連続マクロポア構造を共連続構造に変化させ、共連続構造のモノリスを得る工程である。III工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明の第2のモノリスのように上記重合系に特定の連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に全細孔容積が大きな多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造を有するモノリス状有機多孔質体が形成されると考えられる。
【0081】
反応容器の内容積は、第1のモノリスアニオン交換体の反応容器の内容積の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0082】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、芳香族ビニルモノマーの添加量が重量で5〜50倍、好ましくは5〜40倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な大きさの空孔が三次元的に連続し、且つ骨太の骨格が3次元的に連続する共連続構造のモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中の芳香族ビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。
【0083】
共連続構造を有するモノリスの基本構造は、平均太さが乾燥状態で0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で8〜80μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。上記三次元的に連続した空孔の乾燥状態の平均直径は、水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。乾燥状態のモノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の平均太さを測定して算出すればよい。また、共連続構造を有するモノリスは、0.5〜5ml/gの全細孔容積を有する。
【0084】
重合条件は、第1のモノリスアニオン交換体のIII工程の重合条件の説明と同様であり、その説明を省略する。
【0085】
IV工程において、共連続構造を有するモノリスにアニオン交換基を導入する方法は、第1のモノリスアニオン交換体における、モノリスにアニオン交換基を導入する方法と同様であり、その説明を省略する。
【0086】
第2のモノリスアニオン交換体は、共連続構造のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、第2のモノリスアニオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量を大きくでき、更に、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能である。
【0087】
<第1の白金族金属担持触媒及び第2の白金族金属担持触媒>
本発明の第1の白金族金属担持触媒は、第1のモノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒である。また、本発明の第2の白金族金属担持触媒は、第2のモノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている白金族金属担持触媒である。
【0088】
本発明に係る白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いても良く、更に、二種類以上の金属を合金として用いても良い。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
【0089】
本発明に係る白金族金属のナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、ナノ粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲内の場合、表面プラズモン共鳴によりナノ粒子は強く着色するため、目視によっても確認可能である。
【0090】
乾燥状態の第1の白金族金属担持触媒中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の第1の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。また、乾燥状態の第2の白金族金属担持触媒中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の第2の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属ナノ粒子の担持量が0.004重量%未満であると、過酸化水素分解効果又は溶存酸素の除去効果が不十分になるため好ましくない。一方、白金族金属ナノ粒子の担時量が20重量%を超えると、水中への金属溶出が認められるようになるため好ましくない。
【0091】
第1の白金族金属担持触媒及び第2の白金族金属担持触媒の製造方法には特に制約はなく、公知の方法により、第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子を担持させることにより、第1の白金族金属担持触媒又は第2の白金族金属担持触媒を得ることができる。例えば、乾燥状態の第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換によりモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属ナノ粒子を第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に担持する方法や、第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体をカラムに充填し、塩化パラジウムの塩酸水溶液を通液して塩化パラジウム酸アニオンをイオン交換により第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤を通液してパラジウム金属ナノ粒子を第1のモノリスアニオン交換体又は第2のモノリスアニオン交換体に担持する方法等が挙げられる。用いられる還元剤にも特に制約はなく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸等のカルボン酸、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が挙げられる。
【0092】
第1の白金族金属担持触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体である第1のモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。本発明では、このような塩形のものを、過酸化水素分解用又は溶存酸素除去用の触媒として用いても良い。また、第1の白金族金属担持触媒は、これに限定されるものではなく、第1のモノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであっても良い。そして、これらのうち、第1のモノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。また、同様に、第2の白金族金属担持触媒において、白金族金属ナノ粒子の担体である第2のモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。本発明では、このような塩形のものを、過酸化水素分解用又は溶存酸素除去用の触媒として用いても良い。また、第2の白金族金属担持触媒は、これに限定されるものではなく、第2のモノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであっても良い。そして、これらのうち、第2のモノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。白金族金属ナノ粒子を担持した後のモノリスアニオン交換体のOH形への再生方法には特に制限はなく、水酸化ナトリウム水溶液を通液する等の公知の方法を用いればよい。
【0093】
<本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法>
本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法は、第1の白金族金属担持触媒又は第2の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させて、過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素を分解除去する過酸化水素の分解処理水の製造方法である。なお、以下では、第1の白金族金属担持触媒及び第2の白金族金属担持触媒を総称して、本発明の白金族金属担持触媒とも記載する。
【0094】
過酸化水素を含有する被処理水は、過酸化水素を含有するものであれば、特に制限されず、例えば、半導体製造等の電子部品の製造及び電子部品の製造器具を洗浄するための超純水の製造において、その中の種々の工程により生じる水が挙げられ、具体的には、水中の有機物を分解するための紫外線酸化処理工程を行った後の水が挙げられる。また、過酸化水素を含有する被処理水としては、他には、用廃水系に過酸化水素を添加し、酸化、還元、殺菌、洗浄を行った処理液又は処理水やこれらの処理液又は処理水を用いて処理を行った後の廃液又は排水が挙げられる。例えば、半導体製造工程から排出される過酸化水素を含む洗浄排水、半導体製造工程から排出される有機物を含む洗浄排水を超純水として回収再利用するために、過酸化水素の存在下に紫外線を照射し有機物を酸化分解して得られる処理水、フェントン試薬を用いて有機物を分解して得られる処理水、逆浸透膜、限外ろ過膜等を過酸化水素で殺菌又は洗浄した後の排水、6価クロムを含有する排水を過酸化水素で還元処理して得られる処理水等が挙げられる。
【0095】
過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素濃度は、特に制限されないが、通常、0.01〜100mg/Lである。超純水製造のサブシステムでは、通常、過酸化水素濃度は、10〜50μg/Lである。過酸化水素濃度が100mg/Lを超えると、母体であるモノリスアニオン交換体の劣化が進み易い。
【0096】
本発明の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、触媒充填塔に、本発明の白金族金属担持触媒を充填し、触媒充填塔に、過酸化水素を含有する被処理液を供給することにより、本発明の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を通液する方法等が挙げられる。
【0097】
上記方法の場合、本発明の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1、好ましくはSV=5000〜10000h−1で通水することができる。本発明の白金族金属担持触媒を用いると、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、過酸化水素の分解除去が可能である。更に、SVが10000h−1であっても、本発明の白金族金属担持触媒を用いると、過酸化水素の分解が可能であり、本発明の白金族金属担持触媒は、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒の処理限界を大きく上回る、卓越した性能を示す。本発明の白金族金属担持触媒への過酸化水素を含有する被処理水の通水速度は、特に制限されないが、好ましくはSV=2000〜20000h−1、特に好ましくはSV=5000〜10000h−1である。なお、本発明の白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、あえて通水速度をSV=2000h−1未満の領域とする必要はないが、通水速度をSV=2000h−1未満の領域としてもよく、通水速度をSV=2000h−1未満の領域とした場合も、本発明の白金族金属担持触媒は、優れた過酸化水素分解能力を発揮する。一方、SVが20000h−1を超えると、通水差圧が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0098】
更に、本発明の白金族金属担持触媒は、過酸化水素分解能力が著しく高いため、触媒の充填層高を薄くしても過酸化水素の分解除去が可能である。
【0099】
本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水中の過酸化水素濃度は、1μg/L以下であることが好ましい。
【0100】
本発明の電子部品の洗浄方法(I)は、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄する電子部品の洗浄方法である。
【0101】
本発明の電子部品の洗浄方法(I)の形態例について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例の模式的なフロー図であり、図14は、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例の模式的なフロー図である。
【0102】
図13に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例は、オゾンを含有する水(以下、オゾン含有水とも記載する。)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程21と、水素を含有する水(以下、水素含有水とも記載する。)に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第2工程22と、フッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程23と、水素含有水に被洗浄物を接触させて、500kHz以上の振動を与えながら被洗浄物を洗浄する第4工程24と、を有する。
【0103】
第1工程21に供給される洗浄水は、超純水32にオゾンを溶解させて調製されたオゾン含有水である。そして、超純水は、その製造工程で、紫外線酸化処理等がされているので、過酸化水素を含有している。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、超純水32にオゾン33を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程25を行い、得られた処理水にオゾン33を溶解させて、第1工程21の洗浄水として供給する。
【0104】
また、第2工程22に供給される洗浄水は、超純水32に水素を溶解させて調製された水素含有水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、超純水32に水素34を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程26を行い、得られた処理水に水素34を溶解させて、第2工程22の洗浄水として供給する。本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、第4工程24も同様に、超純水32に水素36を溶解させる前に、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程28を行い、得られた処理水に水素36を溶解させて、第4工程24の洗浄水として供給する。なお、水素34又は36を溶解させる時期は、過酸化水素除去工程26又は28の前段であってもよい。
【0105】
また、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例では、超純水32を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程27を行い、得られた処理水にフッ化水素酸及び過酸化水素35を溶解させ、得られたフッ化水素酸及び過酸化水素を含有する水を、第3工程23の洗浄水として供給することもできる。
【0106】
そして、洗浄前の電子部品20aを被洗浄物として、第1工程21〜第4工程24を順に行い、洗浄後の電子部品30aを得る。
【0107】
図14に示すように、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例は、硫酸及び過酸化水素を含有する液に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第1工程41と、超純水でリンスする第2工程42と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第3工程43と、超純水でリンスする第4工程44と、アンモニア及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第5工程45と、超純水でリンスする第6工程46と、加熱した超純水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第7工程47と、超純水でリンスする第8工程48と、塩酸及び過酸化水素を含有する水に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第9工程49と、超純水でリンスする第10工程50と、フッ化水素酸を含有する水(希フッ酸)に被洗浄物を接触させて、被洗浄物を洗浄するための第11工程51と、超純水でリンスする第12工程52と、を有する。
【0108】
図14中の第3、5、9及び11工程に供給される洗浄水63、65、69及び71は、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させた水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例では、図13に示す本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第一の形態例と同様に、超純水に各工程で必要な薬剤を溶解させる前に、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水に各工程で必要な薬剤を溶解させて、各工程の洗浄水(洗浄液)として供給する。
【0109】
また、図14中の第2、4、6、7、8、10及び12工程に供給される洗浄水62、64、66、67、68、70及び72は、超純水である。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(I)の第二の形態例では、超純水を被処理水として本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行う過酸化水素除去工程を行い、得られた処理水を、各工程の洗浄水として供給する。
【0110】
そして、洗浄前の電子部品20bを被洗浄物として、第1工程41〜第12工程52を順に行い、洗浄後の電子部品30bを得る。
【0111】
なお、上記のように、本発明において、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するとは、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行った直後の処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということだけではなく、電子部品又は電子部品の製造器具の洗浄に用いられる超純水を製造する工程のいずれか1箇所又は2箇所以上で、本発明の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い、超純水の製造工程の全工程を行って得られる超純水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということを意味する。
【0112】
<本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法>
本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法は、第1の白金族金属担持触媒又は第2の白金族金属担持触媒の存在下で、酸素を含有する被処理水中の溶存酸素と水素とを反応させて水を生成させることにより、酸素を含有する被処理水から溶存酸素を除去する溶存酸素の除去処理水の製造方法である。
【0113】
酸素を含有する被処理水は、酸素を含有するものであれば、特に制限されず、例えば、半導体製造等の電子部品の製造及び電子部品の製造器具等を洗浄するための超純水の製造に用いられる原水又はその製造工程中の種々の水等が挙げられ、具体的には、超純水製造サブシステムの循環水、例えば、紫外線酸化装置の出口水等が挙げられる。また、溶存酸素を含有する被処理水としては、他には、発電所で用いられる用水、各種工場で用いられるボイラー水や冷却水等が挙げられる。
【0114】
酸素を含有する被処理水中の溶存酸素濃度は、特に制限されないが、通常、0.01〜10mg/Lである。
【0115】
溶存酸素と反応させる水素の量は、特に制限されないが、酸素濃度の1倍当量〜10倍当量、好ましくは1.1倍当量〜5倍当量である。
【0116】
本発明の白金族金属担持触媒の存在下で、酸素を含有する被処理水中の溶存酸素と水素を反応させる方法としては、特に制限されず、例えば、触媒充填塔に、本発明の白金族金属担持触媒を充填し、触媒充填塔に、酸素を含有する被処理液を供給すると共に、被処理液の供給管内に、水素ガスを注入することにより、本発明の白金族金属担持触媒に、溶存水素と溶存酸素を含有する被処理水とを通液する方法等が挙げられる。
【0117】
上記の方法の場合、本発明の白金族金属担持触媒に、酸素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1、好ましくはSV=5000〜10000h−1で通水することができる。本発明の白金族金属担持触媒を用いると、SVが2000h−1を超えるような大きなSVで被処理水を通水しても、溶存酸素の除去が可能である。更に、SVが10000h−1であっても、本発明の白金族金属担持触媒を用いると、溶存酸素の除去が可能であり、本発明の白金族金属担持触媒は、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒の処理限界を大きく上回る、卓越した性能を示す。本発明の白金族金属担持触媒への酸素を含有する被処理水の通水速度は、特に制限されないが、好ましくはSV=2000〜20000h−1、特に好ましくはSV=5000〜10000h−1である。なお、本発明の白金族金属担持触媒は、溶存酸素除去能力が著しく高いため、粒子状アニオン交換樹脂に白金族金属ナノ粒子を担持した従来の担持触媒の処理限界を大きく上回る通水速度で、被処理水を通水しても、被処理水中の溶存酸素を分解することができる。
【0118】
更に、本発明の白金族金属担持触媒は、溶存酸素除去能力が著しく高いため、触媒の充填層高を薄くしても溶存酸素の除去が可能である。
【0119】
本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水中の溶存酸素濃度は、10μg/L以下であることが好ましい。
【0120】
本発明の電子部品の洗浄方法(II)は、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄する電子部品の洗浄方法である。
【0121】
空気中の酸素は水中に溶存酸素として溶け込む。溶存酸素は超純水中の不純物として管理され、前述のように、超純水製造装置の二次純水系システム入り口における被処理水(一次純水)中の溶存酸素濃度は、通常、100μg/L以下にまで低減されている。更に、10μg/L以下に管理されている場合もある。そして、超純水中の溶存酸素濃度は、10μg/L以下、更には1μg/L以下に管理されている場合もある。一方、超純水の製造工程では、紫外線酸化処理等により発生した過酸化水素が分解する際に酸素が生じる。そこで、本発明の電子部品の洗浄方法(II)の形態例では、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程を行い、得られた処理水を、電子部品の洗浄方法の各工程に供給される洗浄水(洗浄液)又はその調製用の超純水とする。
【0122】
本発明の電子部品の洗浄方法(II)の第一の形態例は、図13中の過酸化水素除去工程25、26、27及び28を、超純水32を被処理水として本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程に代えたものである。そして、洗浄前の電子部品20aを被洗浄物として、第1工程21〜第4工程24を順に行い、洗浄後の電子部品30aを得る。
【0123】
本発明の電子部品の洗浄方法(II)の第二の形態例は、図14中の第3、5、9及び11工程に供給される洗浄水(洗浄液)63、65、69及び71を、超純水を被処理水として本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程を行い、得られた処理水に各工程で必要な薬剤を溶解させることにより調製し、また、図14中の第2、4、6、7、8、10及び12工程に供給される洗浄水62、64、66、67、68、70及び72を、超純水を被処理水として本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行う溶存酸素除去工程を行うことにより得るものである。そして、洗浄前の電子部品20bを被洗浄物として、第1工程41〜第12工程52を順に行い、洗浄後の電子部品30bを得る。
【0124】
なお、上記のように、本発明において、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するとは、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行った直後の処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということだけではなく、電子部品又は電子部品の製造器具の洗浄に用いられる超純水を製造する工程のいずれか1箇所又は2箇所以上で、本発明の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い、超純水の製造工程の全工程を行って得られる超純水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄するということを意味する。
【0125】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0126】
<第1のモノリスアニオン交換体の製造(参考例1)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン19.9g、ジビニルベンゼン0.4g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。水銀圧入法により測定した該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
【0127】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン49.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1-デカノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径70mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.6g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0128】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。図1から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格が、参考例3の公知品のSEM画像(図11)と比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
【0129】
次ぎに、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部面積はSEM画像中28%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は31μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。
【0130】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0131】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.7倍であり、体積当りのアニオン交換容量は、水湿潤状態で0.60mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ54μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は、2.2ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.017MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは25mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて、圧倒的に短かった。
【0132】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図2に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図3に示すが、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図3において、骨格下部の塩化物イオン濃度が骨格上部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格下部が骨格上部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0133】
<第2のモノリスアニオン交換体の製造(参考例2)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.29g、ジビニルベンゼン0.28g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.39gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(図12)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は17.8ml/gであった。
【0134】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1-デカノール60g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約30mmの円盤状に切断して2.4gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0135】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図7に示す。図7から明らかなように、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは8μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は18μm、全細孔容積は2.0ml/gであった。
【0136】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0137】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのアニオン交換容量は水湿潤状態で0.44mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスイオン交換体の連続空孔の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ29μmであり、骨格の平均太さは13μm、全細孔容積は、2.0ml/gであった。
【0138】
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は0.040MPa/m・LVであり、実用上支障のない低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは22mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて圧倒的に短かった。
【0139】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。モノリスアニオン交換体の表面における塩化物イオンの分布状態を図8に、骨格断面における塩化物イオンの分布状態を図9に示すが、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。なお、図9において、骨格周辺部の塩化物イオン濃度が骨格中心部のそれに比べて、見かけ上高くなっているが、これは切断時に断面の平面性が十分ではなく、骨格周辺部が内部より盛り上がった状態で切断されたためであり、塩化物イオンの分布は、実質的には均一である。
【0140】
参考例3
(連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体(公知品)の製造)
特開2002−306976号記載の製造方法に準拠して連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。すなわち、スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、SMO1.0gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体を製造した。
【0141】
このようにして得られた、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリスの内部構造を、SEMにより観察した結果を図11に示す。図11から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しているが、連続マクロポア構造体の骨格を構成する壁部の厚みは参考例1(図1)に比べて薄かった。当該モノリスのSEM画像から測定した壁部の平均厚みは5μm、骨格部面積はSEM画像領域中10%であった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの開口の平均直径は29μm、全細孔容積は、8.6ml/gであった。
【0142】
実施例1
(第1の白金族金属担持触媒の調製)
参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)をCl形にイオン交換した後、水湿潤状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム270mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、塩化パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。塩化パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が茶色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウムナノ粒子の生成が示唆された。このようにして得られた第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aを数回純水で洗浄し、乾燥した。
【0143】
乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、10.9重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図5に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、5nmであった。乾燥状態のパラジウムナノ粒子担持触媒aを内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aの充填層高は11mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、9.7g−Pd/L−R(パラジウムナノ粒子担持触媒1L当たりに担持されているパラジウム重量)であった。
【0144】
(触媒の評価)
内径10mmのカラムに充填した上記第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに、過酸化水素15〜30μg/Lを含む超純水をSV=5000h−1にて27時間下向流で通水し、カラム出口で試料水を採水し過酸化水素濃度を測定した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次に、SVを10000h−1とし、同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は、SVが10000h−1と非常に速く、触媒の充填層高が11mmと薄いにもかかわらず、1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0145】
実施例2
(第2の白金族金属担持触媒の調製)
触媒担体として、参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)に代えて参考例2のモノリスアニオン交換体(第2のモノリスアニオン交換体)を用いたこと、及び、切り出したモノリスアニオン交換体の乾燥時重量を1.2gとすることに代えて1.4gとすることを除いて、実施例1と同様の方法で参考例2のモノリスアニオン交換体(第2のモノリスアニオン交換体)にパラジウムナノ粒子を担持し、第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aを得た。
【0146】
得られた乾燥状態の第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、9.8重量%であった。担持されたパラジウムナノ粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。得られたTEM画像を図10に示す。パラジウムナノ粒子の平均粒子径は、3nmであった。乾燥状態の第2のパラジウムナノ粒子担持触媒を内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。触媒の充填層高は13mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、8.7g−Pd/L−Rであった。
【0147】
(触媒の評価)
触媒として、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒に代えて第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で第2のパラジウムナノ粒子担持触媒aの過酸化水素分解効果を評価した。その結果、SV=5000h−1および10000h−1で超純水を通水したいずれの場合でも、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。
【0148】
実施例3
切り出した第1のモノリスアニオン交換体の乾燥時重量を1.2gとすること代えて1.7gとすること、及び塩化パラジウム270mgを溶解することに代えて塩化パラジウムを2.5mg溶解することを除いて、実施例1と同様の方法で参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)にパラジウムナノ粒子を担持し、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bを得た。
【0149】
得られた乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、0.05重量%であった。乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bを内径10mmのカラムに充填し、水酸化ナトリウム水溶液を通液して担体であるモノリスアニオン交換体をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。触媒の充填層高は19mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、0.07g−Pd/L−Rであった。
【0150】
(触媒の評価)
触媒として、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに代えて第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で第1のパラジウムナノ粒子担持触媒bの過酸化水素分解効果を評価した。SV=5000h−1で通水した場合、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1μg/L未満であり、過酸化水素は分解除去されていた。次にSVを10000h−1とし同様の処理を行った。カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度は1.7μg/Lであり、パラジウムナノ粒子の担持量が0.07g−Pd/L−Rと非常に低いのにもかかわらず、過酸化水素分解効果の高い結果が得られた。
【0151】
比較例1
水分保有能力がOH形基準において60〜70%であり、ゲル形である粒子状の強塩基アニオン交換樹脂(I型)に公知の方法でパラジウムナノ粒子を担持し、パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を得た。Cl形の粒子状アニオン交換樹脂を塩化パラジウムの塩酸水溶液に浸漬し、水洗後に、ヒドラジン水溶液で還元処理を行った。水酸化ナトリウム水溶液を通液して粒子状のアニオン交換樹脂をOH形とし、過酸化水素分解特性の評価に用いた。このとき、パラジウムナノ粒子担持量は、乾燥状態で0.4重量%、水湿潤状態で970mg−Pd/L−Rであった。このパラジウムを担持したOH形の粒子状イオン交換樹脂を内径25mmのカラムに40mL(層高80mm)充填して実施例1と同じ方法で過酸化水素低減の実験を行った。
【0152】
(触媒の評価)
触媒として、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒aに代えて上記パラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒を用いたこと、及び、超純水をSV=1500h−1および2500h−1で通水したことを除いて、実施例1と同様の方法でパラジウムナノ粒子担持粒状イオン交換樹脂触媒の過酸化水素分解効果を評価した。その結果、カラム出口で採水した試料水中の過酸化水素濃度はそれぞれ1μg/L未満、1.6μg/Lであった。SV=1500h−1においては過酸化水素は1μg/L未満となったが、SVを2500h−1に上げると、過酸化水素は処理水中にリークした。このように、従来技術である粒子状アニオン交換樹脂にパラジウムナノ粒子を担持した触媒では、実施例よりも遅いSV、厚い触媒充填層高といった過酸化水素を除去しやすい条件を設定しても、SV=2500h−1では過酸化水素がリークした。
【0153】
比較例2
パラジウムナノ粒子を担持させず、参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)のみを用いて、実施例1と同様の方法でSV=10000h−1における過酸化水素分解効果を評価した。その結果、過酸化水素の分解効果は認められなかった。
【0154】
<第1のモノリスアニオン交換体に係るモノリスの製造(参考例4〜13)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の種類と使用量、有機溶媒の種類と使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。なお、参考例4〜13のSEM画像(不図示)及び表2から、参考例4〜13のモノリスの開口の平均直径は22〜70μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25〜50μmと厚く、骨格部面積はSEM画像領域中26〜44%と骨太のモノリスであった。なお、表1中、仕込み欄は左から順に、II工程で用いたビニルモノマー、架橋剤、I工程で得られたモノリス中間体、II工程で用いた有機溶媒を示す。なお、以下の表に示すメソポアの直径、壁面の厚み、骨格の直径(太さ)、及び空孔の直径は、平均値である。
【0155】
<第1のモノリスアニオン交換体の製造(参考例14)>
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、参考例1と同様の方法でモノリスを製造した。その結果を表1及び表2に示す。参考例14のモノリスはマクロポアとマクロポアの重なり部分の開口の平均直径は38μmと大きく、骨格を構成する壁部の平均厚みも25μmと壁部の厚い有機多孔質体が得られた。
【0156】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0157】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.6倍であり、体積当りのアニオン交換容量は、水湿潤状態で0.56mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ61μmであり、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは40μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中26%、全細孔容積は、2.9ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.020MPa/m・LVであり、実用上要求される圧力損失と比較して、それを下回る低い圧力損失であった。
【0158】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0159】
<第2のモノリスアニオン交換体の製造(参考例15)>
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン5.4g、ジビニルベンゼン0.17g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.4gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEM画像(不図示)により観察したところ、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は70μm、全細孔容積は21.0ml/gであった。
【0160】
(共連続構造モノリスの製造)
次いで、スチレン76.0g、ジビニルベンゼン4.0g、1-デカノール120g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を直径70mm、厚さ約40mmの円盤状に切断して4.1gを分取した。分取したモノリス中間体を内径75mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約60mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0161】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の平均太さは10μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は17μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。その結果を表3及び4にまとめて示す。表4中、骨格の太さは骨格の平均直径で表した。
【0162】
(共連続気泡構造を有するモノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、直径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ20mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃で5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0163】
得られたモノリスアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.5倍であり、体積当りのアニオン交換容量は水湿潤状態で0.54mg当量/mlであった。水湿潤状態でのモノリスイオン交換体の連続空孔の平均直径を、モノリスの値と水湿潤状態のモノリスアニオン交換体の膨潤率から見積もったところ26μmであり、骨格の平均太さは15μm、全細孔容積は、2.9ml/gであった。
【0164】
また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は0.045MPa/m・LVであり、実用上支障のない低い圧力損失であった。更に、該モノリスアニオン交換体のフッ化物イオンに関するイオン交換帯長さを測定したところ、LV=20m/hにおけるイオン交換帯長さは20mmであり、市販の強塩基性アニオン交換樹脂であるアンバーライトIRA402BL(ロームアンドハース社製)の値(165mm)に比べて圧倒的に短いばかりでなく、従来の連続気泡構造を有するモノリス状多孔質アニオン交換体の値に比べても短かった。その結果を表5まとめて示す。また、得られた共連続構造を有するモノリスアニオン交換体の内部構造はSEM画像(不図示)により観察した。
【0165】
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の表面のみならず、内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0166】
<第2のモノリスアニオン交換体の製造(参考例16及び17)>
(共連続構造を有するモノリスの製造)
スチレンの使用量、架橋剤の使用量、有機溶媒の使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度及び使用量を表3に示す配合量に変更した以外は、参考例15と同様の方法で共連続構造を有するモノリスを製造した。モノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ(不図示)、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。その結果を表3及び表4に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
なお、上記参考例4〜13及び参考例16〜17で得られたモノリスには、公知の方法を適宜適用することで、例えば、参考例1又は参考例2に示す方法で、アニオン交換基を導入することができる。また、参考例4〜13及び参考例16〜17で得られたモノリスにアニオン交換基が導入されたモノリスアニオン交換体並びに参考例14及び参考例15で得られたモノリスアニオン交換体には、公知の方法を適宜適用することで、例えば、実施例1又は実施例2に示す方法で、白金族金属ナノ粒子を担持することができる。
【0172】
実施例4
塩化パラジウム270mgを溶解することに代えて塩化パラジウムを190mg溶解することを除いて、実施例1と同様の方法で参考例1のモノリスアニオン交換体(第1のモノリスアニオン交換体)にパラジウムナノ粒子を担持し、第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cを得た。
【0173】
乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cに担持されたパラジウムナノ粒子の担持量は、7.4重量%であった。乾燥状態の第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cを内径10mmのカラムに充填し、溶存酸素除去特性の評価に用いた。触媒の充填層高は20mmであった。このとき、水湿潤状態の樹脂体積に対するパラジウムナノ粒子の担持量は、10.5g−Pd/L−Rであった。
【0174】
(触媒の評価)
内径10mmのカラムに充填した上記第1のパラジウムナノ粒子担持触媒cに、溶存酸素濃度32μg/L且つ溶存水素濃度11μg/Lに調整した超純水をSV=7500h−1にて通水し、カラム出口の処理水中の溶存酸素濃度が安定するまで測定を行なった。その結果、カラム出口の溶存酸素濃度は3.8μg/Lに低減していた。
【0175】
(比較例3)
水分保有能力がOH形基準において60〜70%でありゲル形である粒子状の強塩基性アニオン交換樹脂(Cl形)にパラジウムを水潤状態で910mg−Pd/L−R担持させたCl形触媒樹脂を作製した。このCl形触媒樹脂を上記内径10mmのカラムに充填層高360mmで、SV430の流速で通水した以外は、実施例4と同様の方法で触媒評価を行った。その結果、処理水が安定した時点でのカラム出口溶存酸素濃度は4.1μg/Lであった。
実施例4と比較例3における評価結果を表5にまとめた。
【0176】
【表5】
【0177】
実施例4は、SV7500と非常に高流速であり、且つ、担持したパラジウム金属触媒の質量あたりの通水流速においても実施例4の方が比較例3に比べ多いにも関わらず、比較例3と同程度の溶存酸素濃度の処理水が得られた。このことから、本発明の白金族金属担持触媒を用いれば、高流速で低樹脂層高においても効果的な溶存酸素除去が可能であるため、触媒使用量の低減、装置の小型化と共に溶出物の低減が図れる。
【符号の説明】
【0178】
1 骨格相
2 空孔相
10 モノリス
11 画像領域
12 断面で表れる骨格部
13 マクロポア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量0.4〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であり、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒。
【請求項2】
有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒。
【請求項3】
請求項1又は2いずれか1項記載の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させて、該過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素を分解除去することを特徴とする過酸化水素の分解処理水の製造方法。
【請求項4】
前記有機多孔質アニオン交換体が、OH形であることを特徴とする請求項3記載の過酸化水素の分解処理水の製造方法。
【請求項5】
前記白金族金属担持触媒に、前記過酸化水素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1で接触させることを特徴とする請求項3又は4いずれか1項記載の過酸化水素の分解処理水の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5いずれか1項記載の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法。
【請求項7】
請求項1又は2いずれか1項記載の白金族金属担持触媒の存在下で、水素と酸素を含有する被処理水中の溶存酸素とを反応させて水を生成させることにより、該酸素を含有する被処理水から溶存酸素を除去することを特徴とする溶存酸素の除去処理水の製造方法。
【請求項8】
前記有機多孔質アニオン交換体が、OH形であることを特徴とする請求項7記載の溶存酸素の除去処理水の製造方法。
【請求項9】
前記白金族金属担持触媒に、前記酸素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1で接触させることを特徴とする請求項7又は8いずれか1項記載の溶存酸素の除去処理水の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9いずれか1項記載の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法。
【請求項1】
有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量0.4〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であり、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒。
【請求項2】
有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
該有機多孔質アニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該有機多孔質アニオン交換体中に均一に分布しており、
該白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%であること、
を特徴とする白金族金属担持触媒。
【請求項3】
請求項1又は2いずれか1項記載の白金族金属担持触媒に、過酸化水素を含有する被処理水を接触させて、該過酸化水素を含有する被処理水中の過酸化水素を分解除去することを特徴とする過酸化水素の分解処理水の製造方法。
【請求項4】
前記有機多孔質アニオン交換体が、OH形であることを特徴とする請求項3記載の過酸化水素の分解処理水の製造方法。
【請求項5】
前記白金族金属担持触媒に、前記過酸化水素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1で接触させることを特徴とする請求項3又は4いずれか1項記載の過酸化水素の分解処理水の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5いずれか1項記載の過酸化水素の分解処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法。
【請求項7】
請求項1又は2いずれか1項記載の白金族金属担持触媒の存在下で、水素と酸素を含有する被処理水中の溶存酸素とを反応させて水を生成させることにより、該酸素を含有する被処理水から溶存酸素を除去することを特徴とする溶存酸素の除去処理水の製造方法。
【請求項8】
前記有機多孔質アニオン交換体が、OH形であることを特徴とする請求項7記載の溶存酸素の除去処理水の製造方法。
【請求項9】
前記白金族金属担持触媒に、前記酸素を含有する被処理水を、SV=2000〜20000h−1で接触させることを特徴とする請求項7又は8いずれか1項記載の溶存酸素の除去処理水の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9いずれか1項記載の溶存酸素の除去処理水の製造方法を行い得られる処理水で、電子部品又は電子部品の製造器具を洗浄することを特徴とする電子部品の洗浄方法。
【図4】
【図6】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−214322(P2010−214322A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65862(P2009−65862)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】
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