説明

皮下グルコースセンサ

皮下組織中のグルコースを測定するためのグルコースセンサであって、皮下挿入用のプローブであり、グルコースに選択的に結合するための受容体及び前記受容体に会合している発蛍光団を含む指示システムを備え、発蛍光団が100ns未満の蛍光寿命を有する、プローブと、プローブに光学的に接続され、体外に位置するための検出器ヘッドと、光源と、指示システムから放射された蛍光を受光するように構成されている検出器であり、光源及び検出器が任意選択で検出器ヘッド内に配置される、検出器とを具備し、発蛍光団の蛍光寿命をモニタリングすることによって皮下組織中のグルコース濃度を測定するように構成されているグルコースセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
本発明は、皮下組織中のグルコースを測定するためのセンサ及び皮下グルコース測定の方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
1型及び2型糖尿病患者を対象とした転帰試験(糖尿病のコントロールと合併症に関する試験(The Diabetes Control and Complications Trial)、糖尿病への介入と合併症に関する疫学研究(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)、及び英国前向き糖尿病試験(United Kingdom Prospective Diabetes Study))では、頻繁なモニタリングによるグルコース制御の向上及び治療又は食事療法の適用によって患者の転帰が改善(眼疾患、腎疾患及び神経疾患が減少、並びに心血管疾患及び脳卒中のリスクが減少)することが示されている。しかし、利用可能な多くの携帯型グルコメータにおいて、指の穿刺によって頻繁に血液を採取し、次いでグルコース濃度を測定することに対して、ユーザの抵抗がある。
【0003】
現在使用されているグルコースモニタリング技術のさらなる難点は、グルコースレベルの間欠的な測定しかできない点である。「不安定型」糖尿病の患者については、グルコースの変動がしばしば大きく、頻繁であり、制御された状態にするのが困難である。ゆえにグルコースの持続的モニタリングは、特に睡眠時の低血糖に対する防止策として、明らかに有利である。
【0004】
携帯型インスリン注入ポンプを糖尿病患者に埋め込むケースもある。このような患者では、グルコースの持続的モニタリングは予期せぬ低血糖を避けるために欠かせない。
【0005】
在宅ベースの糖尿病患者による持続的なグルコースの測定は、実用的なアクセス部位を通して行われなければならない。在宅の糖尿病患者が静脈又は動脈にアクセスしてセンサを取り付けることは現実的ではないだろう。しかし、皮下組織は実用可能なアクセスポイントとして認められている。皮下組織を通してグルコースにアクセスする持続グルコースセンサが開発されているが、これらは通常、電気化学テクノロジー及びグルコースオキシダーゼなどのグルコース選択的酵素に基礎を置くものである。これらのセンサは、特に生物学的環境において酵素の変性の影響を受けやすい。さらには、これらはグルコース消費性であり、グルコースのセンサ電極への定常的な拡散に頼っているため、エラー及びドリフトの影響を受けやすい。1〜5日間、又はそれ以上の間「埋め込まれる」センサについては、センサドリフトは大きな問題である。
【0006】
したがって、現在利用可能なテクノロジーは、在宅環境でのグルコース持続的モニタリング用の実用可能なグルコースセンサの開発に対して、大きな障壁を呈している。
【0007】
電気化学デバイスに代わるテクノロジーは、蛍光強度測定に基づくものなどの光学的センサの利用である。例えば、グルコース用の指示薬として蛍光ボロン酸化学物質を利用した、可逆性、非消費性の蛍光光学センサが開発されている。このようなセンサは、グルコース濃度を決定する手段として、放射された蛍光強度の変化を測定する。このようなボロン酸のグルコース指示化学物質は、グルコースに関して可逆性であり、非消費性であるという利点を有し、電気化学グルコースセンサにおいて通常使用されるグルコースオキシダーゼなどの酵素よりも安定である。またこれらは、ヒドロゲル中で、光ファイバー上に容易に固定化することが可能である。
【0008】
しかし、このような蛍光強度測定デバイスに特有の難点は、デバイスの校正の必要性である。蛍光強度測定においては、放射信号は、指示薬の濃度、経路の長さ及び励起強度に左右される。正確な読取りを行うために、デバイスの校正はしたがって必須である。蛍光強度測定についてのさらなる難点は、指示薬が光退色を受けることがあり、これがセンサドリフトとして現れ、定期的な再校正を必要にさせている。在宅使用センサの校正を考慮した場合、ユーザのコンプライアンスが特に問題となり、そのため再校正の必要性は、或いは校正は実に全く、望ましくない。
【0009】
したがって、在宅使用に適したグルコースセンサの開発に費やされた多大な取り組みにも関わらず、在宅環境でのグルコースの持続的モニタリングに適したグルコースセンサの必要性が依然として存在する。センサは非侵襲的であるか、皮下組織などの実用可能なアクセスポイントを利用するべきである。さらには、センサはセンサドリフトという難点を最小限にする又は回避し、理想としてはユーザによる校正の必要性を回避するべきである。
【0010】
[発明の概要]
本発明はこのような難点に対処することを目的とした、例えば糖尿病患者による在宅使用向けに構成される皮下光学的センサを提供する。本発明のセンサは発蛍光団の蛍光寿命の変化を利用し、特定の種類の発蛍光団の寿命をモニタリングすることによって皮下組織中のグルコース濃度を正確に測定する。
【0011】
指示薬の蛍光寿命は固有の特性であり、光源強度、検出器の感度、(光ファイバーなどの)光学系の光スループット、固定化検出厚さ及び指示薬の濃度における変化の影響を受けない。加えて、蛍光強度を測定する際の信号ドリフトとなる発蛍光団の光退色は、蛍光寿命を測定する場合は、重大性がずっと低いものになる。このことは、強度ベースの測定とは対照的に、蛍光寿命を測定する場合にはこのような変数に対する補正が要求されないことを意味する。したがって、このことは、このようなデバイスのエンドユーザにとって、校正又は再校正の必要性がないことを意味する。ゆえに皮下グルコースの寿命測定は、センサ性能、校正及びエンドユーザにとっての使いやすさの点で、強度ベースの測定を上回る著しい利点を有する。
【0012】
しかし、実用的に有用な寿命測定デバイスの開発に対して、当該技術分野にはかなりの障壁が存在する。蛍光寿命の正確な測定に必要とされる計測器は、現在のところ高価で嵩張るものである。このことにより、小型で安価で扱いやすい計測器が至上の要求である在宅使用向けセンサへの開発に不適切なものになっている。
【0013】
グルコースの光学測定のための指示薬として、長寿命(100ns超)蛍光金属リガンド/ボロン酸複合体を使用することにより、励起用発光ダイオード、フォトダイオード検出器、位相蛍光測定法及びルックアップテーブルなどの小型で安価な計測器が使用しやすくなり得る。しかし、グルコースの測定にこのような長寿命発蛍光団を使用するのには、問題が存在する。長寿命発蛍光団は、酸素との衝突による蛍光消光を常に受けており、消光の程度は消失していない寿命に比例する。長い蛍光寿命を有する金属リガンド複合体は、一般的に酸素の検出及び測定に利用される。したがって、これらの長寿命指示薬を組織、間質液、又は血液、又は他の何らかの体液中のグルコースをモニタリングするのに使用する場合は、酸素は干渉物と考えられ得る。酸素の干渉とは、末梢組織への酸素輸送が損なわれる及び変化しやすい可能性があって、センサが典型的には組織表面の非常に近くに位置される糖尿病患者における皮下グルコース測定に特有の問題である。
【0014】
しかし、本発明のセンサは、小型で安価な計測器を使用した100ns未満の寿命を測定することが可能な特定のデバイスを提供することによって、これらの問題に対処する。本発明はしたがって、在宅使用に適したセンサにおいて寿命測定の利益を達成することを可能とし、酸素感受性の難点を排除又は軽減する。
【0015】
したがって、本発明は、皮下組織中のグルコースを測定するためのグルコースセンサであって、
皮下挿入用のプローブであり、グルコースに選択的に結合するための受容体及び前記受容体に会合している発蛍光団を含む指示システムを備え、発蛍光団が100ns未満の蛍光寿命を有する、プローブと、
プローブに光学的に接続され、体外に位置するための検出器ヘッドと、
光源と、
指示システムから放射された蛍光を受光するように構成されている検出器であり、光源及び検出器が任意選択で検出器ヘッド内に配置される、検出器と
を具備し、発蛍光団の蛍光寿命をモニタリングすることによって皮下組織中のグルコース濃度を測定するように構成されているグルコースセンサを提供する。
【0016】
好ましい実施形態によれば、検出器は単一光子アバランシェダイオードである。光源によって放射された光の強度は第1の周波数で変調され、単一光子アバランシェダイオードに印加されたバイアス電圧は、第1の周波数とは異なる第2の周波数で変調される。バイアス電圧は単一光子アバランシェダイオードの破壊電圧より高い。バイアス電圧についてのこの選択は、検出器の単一光子感度が維持されることを意味するが、同時にヘテロダイン測定法を用いることが可能であるという利点も有する。換言すれば、単一光子アバランシェダイオードから得られた目的の測定信号は、第1及び第2の周波数の差に相当する周波数である。第1及び第2の周波数は1MHz程度又はそれよりずっと高くてもよいが、それらの差が、例えば数十kHz程度となるように選択してもよい。したがって、電子測定機器の作動帯域幅は、第1及び第2の変調周波数よりもずっと低くてもよく、よりシンプルな設計及びノイズに対する感度の低減が可能になる。
【0017】
さらに有利な好ましい態様は、光源の変調信号に一連のさらなる位相角(又は位相変移に等しい時間的遅延)を導入することである。次いで、測定信号の変調度を導入した位相角に関連付けて一連の測定を得ることが可能になる。これらの結果を解析することによって、蛍光寿命測定の全体的な精度が改善され得る。
【0018】
また、本発明のグルコースセンサにおいて使用するための使い捨てのプローブユニットであって、(a)本発明の指示システムを備える皮下挿入用のプローブと、(b)プローブを検出器ヘッドに光学的に接続するように構成されているコネクタであり、検出器ヘッドが光源及び検出器を備えているか、それ自体、光源及び検出器にさらに光学的に接続されている、コネクタとを備えるプローブユニットも提供される。
【0019】
また、別個のプローブユニットに接続するように構成されている検出器ヘッドであって、単一光子アバランシェダイオードである検出器であり、プローブユニットからの光を受光するように構成されている検出器を備え、100ns未満の蛍光寿命をモニタリングするように構成されている検出器ヘッドも提供される。
【0020】
皮下組織中のグルコース濃度を測定する方法であって、
(a)本発明のセンサのプローブを皮下組織に挿入するステップと、
(b)光源から、指示システムに入射光を提供するステップと、
(c)光源から指示システムに入射する光に応答して指示システムから放射された蛍光を、検出器を用いて受光し、出力信号を発生させるステップと、
(d)少なくとも検出器の出力信号に基づいて、発蛍光団の蛍光寿命に関する情報を判定するステップと
を含む方法も、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の皮下グルコースセンサを描写した図である。
【図2】本発明のセンサを構成するプローブ及び検出器ヘッド、並びに読み取りユニットを別々に描写した図である。
【図3】本発明の一実施形態において、検出器ヘッド内及び読み取りユニット内に備えられる電子装置を模式的に示した図である。
【図4】好ましい実施形態によるセンサの装置を描写した図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態によるグルコース濃度測定方法のフローチャートである。
【0022】
[発明の詳細な説明]
本明細書では、用語アルキレンは、C1〜12アルキレン部分、C1〜6アルキレン部分又はC1〜4アルキレン部分、例えばメチレン、エチレン、n−プロピレン、i−プロピレン、n−ブチレン、i−ブチレン及びt−ブチレンなどの、例えば1〜15個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状のアルキル部分である。誤解を避けるために言及すると、基において2個のアルキレン部分が存在する場合、アルキレン部分は、同じであってもよく又は異なってもよい。
【0023】
アルキレン部分は、非置換であってもよく又は置換されていてもよく、例えばアルキル基又はアルキレン部分は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン、(C1〜4アルキル)アミン、ジ(C1〜4アルキル)アミン及びC1〜4アルコキシから選択される1、2又は3個の置換基を持つことができる。好ましくは、アルキレン部分は非置換である。
【0024】
本明細書では、用語アリール又はアリーレンは、C6〜14アリール基又は部分を意味し、これはフェニル、ナフチル及びフルオレニル、好ましくはフェニルなどの単環又は多環式であることができる。アリール基は、非置換であってもよく又は任意の位置で置換されていてもよい。通常、アリール基は0、1、2又は3個の置換基を持つ。アリール基の好ましい置換基には、ハロゲン、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、−C(O)R(Rは水素又はC1〜15アルキルである)−C(O)R、−COR(Rは水素又はC1〜15アルキルである)、ヒドロキシ、C1〜15アルコキシが含まれ、置換基それ自体は非置換である。
【0025】
本明細書では、ヘテロアリール基は通常、例えばO、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、例えば1、2又は3個のヘテロ原子を含有する5〜14員芳香環、例えば5〜10員環、より好ましくは5又は6員環である。例には、チオフェニル、フラニル、ピロリル及びピリジルが含まれる。ヘテロアリール基は、非置換であってもよく又は任意の位置で置換されていてもよい。特に明記しない限り、ヘテロアリール基は、0、1、2又は3個の置換基を持つ。ヘテロアリール基の好ましい置換基には、アリール基に関して上に掲載した置換基が含まれる。
【0026】
本発明は、センサ及び皮下組織中のグルコース濃度測定のための測定技術を提供する。指示システムを備えるプローブを、皮膚の下の皮下組織に挿入する。周囲組織中のグルコースがプローブに入ること、及び指示システムに含まれる受容体と結合することを可能にするために、1つ又は複数の開口部が設けられる。典型的には、プローブは皮膚の下の皮下組織及び間質液と接触する。ゆえに間質液からのグルコースがプローブに入り、センサはしたがって、この間質液中のグルコースの濃度を反映する。
【0027】
指示システムはプローブ内に備えられており、そのためセンサの使用中は皮下に位置する。ゆえに、プローブに入るグルコースは、速やかに指示システムと接触する。本発明はしたがって、グルコースがセンサデバイスの生体外部分に輸送されてから指示薬と接触するデバイスに伴われる時間的な遅延を回避する。
【0028】
グルコースが指示システムと接触すると、受容体とグルコース分子の間で結合が生じる。受容体に結合しているグルコース分子の存在によって、指示システムの蛍光寿命に変化が生じる。したがって、指示システム中の発蛍光団の寿命のモニタリングによって、受容体に結合しているグルコースの量の指標が得られる。寿命減衰のモニタリングによるグルコース濃度の測定は、先にLakowiczによってAnalytical Biochemistry、294巻、154〜160頁(2001年)に記載されている。そこでは位相変調による測定が記載されるが、位相変調及び単一光子計数技術ともに、本発明で利用するのに適している。位相変調が好ましい。
【0029】
指示システムは、少なくとも、グルコースに選択的に結合する受容体、及び該受容体に会合している発蛍光団を含む。グルコースが受容体に結合した場合、発蛍光団の蛍光減衰寿命が変化し、これによって発蛍光団の寿命のモニタリングによるグルコースの検出が可能になる。一実施形態では、受容体及び発蛍光団は互いに共有結合している。
【0030】
グルコースに適した受容体は、1つ又は複数の、好ましくは2つのボロン酸基を含む酵素又は化合物である。特定の実施形態では、受容体は式(I)の基である。
【0031】
【化1】

【0032】
式中、m及びnは、同じである又は異なり、通常1又は2、好ましくは1であり、Spは、脂肪族スペーサであり、通常はアルキレン部分、例えばC1〜C12アルキレン部分、例えばC6アルキレン部分であり、L1及びL2は、他の部分、例えば発蛍光団への可能な付着点を表す。例えば、L1及びL2は、官能基に連結したアルキレン、アルキレン−アリーレン、又はアルキレン−アリーレン−アルキレン部分を表すことができる。他の部分への付着が想定されない場合、官能基は水素原子で保護されている又は置き換えられている。L1及びL2における典型的なアルキレン基は、C1〜C4アルキレン基、例えばメチレン及びエチレン、特にメチレンである。典型的なアリーレン基はフェニレン基である。官能基は典型的には、例えば発蛍光団又はヒドロゲルと反応して結合を形成し得る任意の基、例えばエステル、アミド、アルデヒド又はアジドである。指示システムでは、受容体は、典型的にはこれらの官能基の1つ又は複数を通して発蛍光団に、及び任意選択でヒドロゲルのような支持体組織に連結する。
【0033】
スペーサSpの長さを変化させることにより、受容体の選択性が変わる。通常、C6−アルキレン鎖は、グルコースに対して良好な選択性を有する受容体を提供する。
【0034】
このような受容体のさらなる詳細は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,387,672号に見出される。
【0035】
式(I)の受容体は、公知の技術によって調製できる。さらなる詳細は米国特許第6,387,672号に見出すことができる。
【0036】
本発明は上述した特定の受容体に限定されることなく、他の受容体、特に2つのボロン酸基を有するものも、本発明において使用され得ることを理解されたい。
【0037】
適切な発蛍光団の例としては、アントラセン、ピレン及びそれらの誘導体、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれるGB0906318.1に記載されている誘導体が挙げられる。発蛍光団は典型的には非金属性である。発蛍光団の寿命は典型的には100ns以下、例えば30ns以下である。寿命は1ns以上、例えば10ns以上でもよい。適切な発蛍光団の特定的な例は、典型的な寿命が1〜10nsであるアントラセン誘導体及びピレン誘導体、並びに典型的な寿命が10〜30nsであるアクリドン誘導体及びキナクリドン誘導体である。
【0038】
受容体及び発蛍光団は、例えば米国特許第6,387,672号に記載されているように、典型的には互いに結合して受容体−発蛍光団構造体を形成している。この構造体は、ポリマーマトリックスのような支持体組織にさらに結合していてもよく、或いは、例えばポリマーマトリックス中に、又はグルコース透過性膜によって捕捉されるなどして、プローブ内に物理的に捕捉されていてもよい。ヒドロゲル(架橋ポリアクリルアミドなどの高度に親水性の架橋ポリマーマトリックス)は、適切なポリマーマトリックスの例である。好ましい実施形態では、受容体−発蛍光団構造体は、例えば受容体の官能基を通してヒドロゲルに共有結合している。したがって、指示薬は、発蛍光団−受容体−ヒドロゲル複合体の形態である。
【0039】
別の好ましい実施形態では、指示薬(受容体及び発蛍光団を含み、典型的には受容体−発蛍光団構造体の形態である)は可溶な形態で提供され、典型的には、指示システムは水溶液として提供される。これは、各々の指示薬部分を取り囲む微小環境が実質的に一定に留まるという特定の利点を有する。蛍光センサは、指示薬の微小環境によって劇的な影響を受け得る。指示薬を取り囲む局所的な微小環境の変化は、蛍光反応の変化につながり得る。ポリマーマトリックスに固定化された指示薬の場合、微小環境に著しい変化があり、それが減衰時間の連続分布及び複雑な多指数関数の形態の寿命減衰信号につながり得る。対照的に、指示薬が水などの溶媒に、特に、指示薬分子が凝集せずに単分散しているような低い濃度で溶解している場合は、均質性は最大であり、理想的な蛍光特性がこの所与の溶媒において達成される。このことは単純、単一指数関数的な信号につながる。
【0040】
均質性を達成する別の手段は、高分子量の単一分子支持体に指示薬を固定化することである。支持体が対称形であり、蛍光指示薬の空間的な付着が、その結果がまた対称形となるように達成されるのが好ましい。下記で論じるように、これは例えば支持体としてデンドリマーを使用することによって達成し得る。したがって、このような支持体に付着した各蛍光指示薬分子の環境は等しくなる。さらに、このような担持分子が水などの溶媒に適切な濃度で溶解し得る場合は、担持指示薬の環境は均質となり、またも信号特性の向上につながる。
【0041】
したがって、この実施形態では、指示薬(例えば、受容体−発蛍光団構造体)は、プローブ内に水溶液の形で備えられてもよく、グルコースに対して透過性の膜を、プローブの任意の開口部全体にわたって設けてもよい。膜は、指示薬をセル内に確実に留まらせるように指示薬の通過を制限する。これは典型的には、指示薬が膜を通過するのを実質的に妨げられるほどの高分子量のものであるのを確実にすること、及び適切な分画分子量を有する膜を使用することによって達成される。透析膜は、本発明で用いるのに適切である。
【0042】
場合によって、指示薬が本来的に、膜を通過する妨げになるほどの高分子量のものであってもよい。上記で論じたように、これによって指示薬を取り囲む微小環境に最大の均質性が得られる。この場合、指示システムは指示薬の溶液の形態でもよい。或いは、受容体及び発蛍光団が支持体に結合して、支持体、受容体及び発蛍光団の複合体を形成し、この複合体が溶液に溶解していてもよい。複合体の性質は、受容体及び発蛍光団が支持体に結合したままである限りは重要ではない。例えば、支持体は受容体−発蛍光団構造体に結合していてもよい。別法として、支持体は、発蛍光団及び受容体に別々に結合していてもよい。後者の場合、受容体及び発蛍光団は互いに直接結合されておらず、支持体を介してのみ連結されている。本発明の一実施形態において、複合体は発蛍光団−受容体−支持体の形態をとる。
【0043】
通常、高分子量支持体が使用される。これによって当業者は、指示薬を高分子量の複合体内に提供することにより、指示薬の膜を通じての通過を制限できる。好ましい支持体は、少なくとも500、例えば少なくとも1000、1500又は2000又は10,000の分子量を有する。支持体はまた、水に可溶性であるべきであり、センサ自体に干渉しないという意味において不活性であるべきである。
【0044】
支持体として使用するのに適切な材料にはポリマーが含まれる。使用する溶媒に可溶性である任意の架橋していない直鎖状ポリマーが利用できる。別法として、支持体は、ヒドロゲルを水中で形成できる架橋ポリマー(例えば、若干架橋したポリマー)であることができる。例えば支持体は、ポリマー領域と水性領域との間に明瞭な界面が存在しないように少なくとも30%の水分含量を有する架橋したポリマーから形成されるヒドロゲルであることができる。
【0045】
ポリアクリルアミド及びポリビニルアルコールが、適切な水溶性直鎖状ポリマーの例である。好ましくは、使用するポリマーは低い多分散性を有する。より好ましくは、ポリマーは、均一な(又は単分散)ポリマーである。このようなポリマーは、均一な分子量及び構造を有する分子から構成されている。より低い多分散性は、改善されたセンサ調整値をもたらす。ヒドロゲルを形成するための架橋ポリマーは、エチレングリコールジメタクリレート及び/又はヒドロキシルエチルジメタクリレートと架橋した上述の水溶性直鎖状ポリマーから形成できる。
【0046】
一実施形態において、指示薬は高い水分含量を有するヒドロゲルに結合している。この場合、指示システムは通常、ヒドロゲルを含有する水溶液を含む。ヒドロゲルの水分含量は非常に高く、好ましくは少なくとも30%w/wであり、したがって溶液/ヒドロゲル混合物は、ポリマー領域と水性領域との間に明瞭な固体界面が存在しない液体の混合物とみなすことができる。本明細書では、液状ヒドロゲルは、非常に高い(通常は少なくとも30%w/w)水分含量を有するヒドロゲルであり、したがってヒドロゲルを水中に置いた場合、ポリマー領域と水性領域との間に明瞭な固体界面は存在しない。このようなヒドロゲルは、溶媒に溶解できる若干架橋したポリマー、又は液状ヒドロゲルを比較的低い水分含量で形成できる若干架橋したポリマーを含むことができ、別法としてヒドロゲルは、ヒドロゲルが液状になるようにより高い水分含量を有するより多く架橋したポリマーを含むことができる。
【0047】
特に好ましい態様において、支持体はデンドリマーである。本発明で使用するデンドリマーの性質は特に限定されず、いくつかの市販のデンドリマーを使用でき、例えばポリアミドアミン(PAMAM)例えばスターバースト(STARBURST)(登録商標)デンドリマー、及びポリプロピレンイミン(PPI)例えばアストラモル(ASTRAMOL)(登録商標)デンドリマーである。想定されるデンドリマーの他の型には、フェニルアセチレンデンドリマー、フレシェ(すなわちポリ(ベンジルエーテル))デンドリマー、超分枝デンドリマー及びポリリシンデンドリマーが含まれる。本発明の一態様において、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが使用される。
【0048】
デンドリマーは、金属コア型及び有機コア型の両方を含み、その両方を本発明で利用できる。有機コアデンドリマーが一般に好ましい。
【0049】
デンドリマーの特性は、その表面基に影響される。本発明において、表面基は受容体及び発蛍光団に付着するための結合点として作用する。したがって、好ましい表面基にはこのような結合反応で使用できる官能基、例えばアミン基、エステル基又はヒドロキシル基が含まれ、アミン基が好ましい。しかし、表面基の性質は、特に限定されない。本発明で使用するのに想定され得るいくつかの従来の表面基には、アミドエタノール、アミドエチルエタノールアミン、ヘキシルアミド、カルボン酸ナトリウム、スクシンアミド酸、トリメトキシシリル、トリス(ヒドロキシメチル)アミドメタン及びカルボキシメトキシピロリジノン、特にアミドエタノール、アミドエチルエタノールアミン及びカルボン酸ナトリウムが含まれる。
【0050】
デンドリマーの表面基の数は、デンドリマーの世代に影響される。好ましくは、デンドリマーは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも8個又は少なくとも16個の表面基を有する。通常、デンドリマーの表面基全てが受容体又は発蛍光団部分に結合していることになる。しかし、デンドリマーのいくつかの表面基は、受容体又は発蛍光団部分(又は受容体及び発蛍光団の構造体)に未結合のままであり、表面基を使用して、特定の所望の特性を与えることができる。例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基、硫酸基、ホスホン酸基又はポリヒドロキシル基などの水溶性を増強する表面基が存在し得る。硫酸基、ホスホン酸基及びポリヒドロキシル基は、水溶性表面基の好ましい例である。
【0051】
一態様において、デンドリマーは、重合性基を含有する少なくとも1個の表面基を組み込んでいる。重合性基は、重合反応を受けることができる任意の基であってもよいが、通常は炭素炭素二重結合である。重合性基を組み込んでいる適切な表面基の例は、窒素原子が式−リンカー−C=CHの基で置換されているアミドエタノール基である。リンカー基は通常、アルキレン、アルキレン−アリーレン又はアルキレン−アリーレン−アルキレン基であり、ここでアルキレンは通常、C1又はC2アルキレン基であり、アリーレンは通常、フェニレンである。例えば、表面基は、窒素原子が−CH−Ph−CH=CH基で置換されているアミドエタノールを含むことができる。
【0052】
デンドリマー表面に重合性基が存在することにより、デンドリマーはポリマーに、デンドリマーを1つ又は複数のモノマー又はポリマーと重合させることによって付着することができる。したがって、デンドリマーは、デンドリマーの水溶性を増強するために例えば水溶性ポリマーにつなぐことができ、又はデンドリマーをセル内に備える助けをするためにヒドロゲル(すなわち、高度に親水的な架橋ポリマーマトリックス、例えばポリアクリルアミド)につなぐことができる。
【0053】
好ましくは、デンドリマーは対称形である、すなわち、デンドロンの全てが同一である。
【0054】
デンドリマーは、一般式
CORE−[A]
[式中、COREは、デンドリマーの金属又は有機(好ましくは有機)コアを表し、nは、通常4以上、例えば8以上、好ましくは16以上である]を有することができる。適切なCORE基の例には、ベンゼン環並びに式−RN−(CH−NR−及びN−(CH−Nの基[式中、pは2〜4、例えば2であり、Rは水素又はC1〜C4アルキル基、好ましくは水素である]が含まれる。−HN−(CH−NH−及びN−(CH−Nが好ましい。
【0055】
各基AはCORE又はさらなる基Aのいずれかに付着していてもよく、したがって、デンドリマーの典型的カスケード構造を形成できる。好ましい態様において、2個以上、例えば4個以上の基Aが、CORE(第1世代基A)に付着している。デンドリマーは、通常は対称形であり、すなわちCOREは2つ以上、好ましくは4つ以上の同一のデンドロンを持つ。
【0056】
各基Aは、1個又は複数の分枝基を有する基本構造から構成されている。基本構造は通常、アルキレン若しくはアリーレン部分又はそれらの組合せを含む。好ましくは、基本構造はアルキレン部分である。適切なアルキレン部分は、C1〜C6アルキレン部分である。適切なアリーレン部分は、フェニレン部分である。アルキレン及びアリーレン部分は非置換であってもよく又は置換されていてもよく、好ましくは非置換であることができ、アルキレン部分は−NR’−、−O−、−CO−、−COO−、CONR’−、−OCO−及び−OCONR’[式中、R’は水素又はC1〜C4アルキル基である]から選択される官能基によって中断又は終了されていてもよい。
【0057】
分枝基は、基本構造に結合しており2つ以上のさらなる付着点を有する少なくとも三価基である。好ましい分枝基には、分枝状アルキル基、窒素原子、及びアリール又はヘテロアリール基が含まれる。窒素原子が好ましい。
【0058】
分枝基は通常、(i)基Aの基本構造、及び(ii)2個以上のさらなる基Aに結合している。しかしデンドリマー表面にある場合、分枝基はそれ自体がデンドリマーを終了させることができ(すなわち、分枝基は表面基である)、又は分枝基は2個以上の表面基に結合していてもよい。
【0059】
好ましい基Aの例は、式
−(CH−(FG)−(CH−NH
[式中、q及びrは、同じである又は異なり、1〜4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは2を表す]の基である。sは、0又は1である。FGは−NR’−、−O−、−CO−、−COO−、CONR’−、−OCO−及び−OCONR’[式中、R’は水素又はC1〜C4アルキル基である]から選択される官能基を表す。好ましい官能基は−CONH−、−OCO−及び−COO−、好ましくは−CONH−である。
【0060】
上述の通り、表面基は、デンドリマーの指示薬への(又は別々に受容体及び発蛍光団部分への)付着点を形成する。したがって、表面基は通常、非置換若しくは置換されたアルキレン若しくはアリーレン部分又はそれらの組合せ、好ましくは非置換若しくは置換されたアルキレン部分、及び指示薬に結合するのに適切な少なくとも1個の官能基を含む。官能基は通常、アミン基又はヒドロキシル基であり、アミン基が好ましい。表面基の特定の例は、上述されている。
【0061】
本発明に使用し得るデンドリマーの例は、Chengら(European Journal of Medicinal Chemistry、2005年、40巻、1384〜1389頁)に従って合成された第1又は第2世代のPAMAMデンドリマーである。得られた表面アミン基は、適切な受容体若しくは発蛍光団部分、又は受容体−発蛍光団構造体に結合するのに用いることができる。
【0062】
利用されるデンドリマーが金属コアデンドリマーである場合、デンドリマー自体が蛍光特性を有することができる。この場合、デンドリマー自体が発蛍光団部分を形成できると想定される。この場合、支持体に結合した指示薬は、デンドリマーに結合した受容体部分を単に含む。
【0063】
さらなる態様において、支持体は、高分子量(すなわち、少なくとも500、好ましくは少なくとも1000、1500又は2000又は10,000)を有する非デンドリマー非ポリマー高分子である。シクロデキストリン、クリプタン及びクラウンエーテルは、このような高分子の例である。このような高分子はまた、指示薬にとって均一な環境も提供し、分析物の結合に対する発蛍光団の応答のさらなる一貫性をもたらす。
【0064】
受容体及び発蛍光団は支持体に、任意の適切な手段で結合していてもよい。共有結合が好ましい。通常、発蛍光団及び受容体は連結して発蛍光団−受容体構造体を形成し、次いでこの構造体が支持体に結合している。別法として、受容体及び発蛍光団は支持体に別々に結合していてもよい。支持体部分1つ当たりの受容体−発蛍光団構造体部分の数は、通常1より大きく、例えば4以上又は8以上である。デンドリマー支持体を用いる場合は、デンドリマーの表面を指示薬部分で覆ってもよい。これは、指示薬部分を全て(又は実質的に全て)の表面デンドロンに結合させることによって達成してもよい。
【0065】
ポリマー支持体が使用される場合、受容体−発蛍光団構造体は修飾されて二重結合を含み、(メタ)アクリレート又は他の適切なモノマーと共重合されて指示薬に結合したポリマーをもたらすことができる。代替の重合反応又は単純な付加反応を利用することもできる。Wangら(Wang B.、Wang W.、Gao S.、(2001年)、Bioorganic Chemistry、29巻、308〜320頁)は、アントラセン発蛍光団に連結したモノボロン酸グルコース受容体を含む重合反応の例を提供している。
【0066】
デンドリマー支持体の場合、デンドリマーは、発蛍光団及び受容体部分と別々に反応されるか、又はより好ましくは、予め形成された受容体−発蛍光団構造体と反応されるかのいずれかである。任意の適切な結合反応を使用できる。適切な技術の一例は、表面アミン基を有するデンドリマーを、反応性アルデヒド基を有する発蛍光団−受容体構造体と還元的アミノ化によってホウ化水素型試薬の存在下で反応させる技術である。得られた構造体は限外濾過によって精製できる。ボロン酸受容体及びアントラセン発蛍光団に結合したデンドリマーの一例は、Jamesら(Chem.Commum.、1996年、706頁)によって提供されている。
【0067】
重合性基を表面基として有するデンドリマー支持体の場合、デンドリマーは、ポリマーがデンドリマーの表面に結合しているデンドリマー−ポリマー構造体を形成するために、1つ又は複数のモノマーと重合反応を受けることができる。通常、デンドリマーは重合反応の後期に添加されて、その結果デンドリマーはポリマー鎖を終了させる。
【0068】
別法として、デンドリマーは予め形成されたポリマーと反応されてもよい。これは、例えばポリマーのカルボン酸基とデンドリマーのヒドロキシル基との間の凝縮反応によって達成されて、形成されたエステルを介する連結を提供できる。
【0069】
これらの反応で使用できるモノマー及びポリマーの例は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドン並びにそれらの組合せ及びそれらに相当するポリマーである。好ましいポリマーは、水溶性ポリマーである。好ましくはポリマーの水溶性は、適切な蛍光信号が、ポリマー/指示薬が水に溶解している場合生成されるような水溶性である(理想的には無限の溶解性)。ポリアクリルアミドは、デンドリマーに付着した高水溶性ポリアクリルアミド鎖の形成をもたらすので特に好ましい。この実施形態の一態様において、デンドリマー支持体に結合したポリマー(例えばポリアクリルアミド)鎖は、架橋されてヒドロゲルを形成する。任意選択で、ヒドロゲルは水中に置かれたとき、水相とポリマー相との間に明瞭な界面が存在しないような、高い水分含量を有する(本明細書では、ヒドロゲルは液状である)。この場合、ヒドロゲルは通常、水又は水溶液との混合物の形態で提供される。
【0070】
デンドリマーの表面からの重合は、発蛍光団と受容体部分との付着の前又は後に実施できる。
【0071】
受容体及び発蛍光団が水溶液の形でセンサに備えられる場合は、受容体−発蛍光団構造体又は支持体結合構造体の適切な濃度は10−6〜10−3Mである。濃度は要求されるセンサ特性に応じて変えてもよい。溶液中の受容体及び発蛍光団の濃度が高く、或いは量が多くなるほど、信号レベルは大きくなる。
【0072】
本発明のセンサの一実施形態を、図1及び2に描写する。図1は、以下の2つの部品を備えるセンサユニットSを示す:生体外の基部となる、プローブが配置される検出器ヘッドDHであり、メモリデバイス、任意の必要な光学部品及び電子部品、電池又は他の電源、並びに任意選択で光源及び検出器を備えてもよい検出器ヘッドDH;並びに、指示化学物質及び導波管を備えるプローブP。検出器ヘッドは、典型的には少なくとも厚さ2mm(例えば2〜5mm)で、約1cm(例えば0.5〜3cm)の直径を有する。図1及び2はディスク型の検出器ヘッドを描写しているが、検出器ヘッドの形は変えることができる。
【0073】
使用中は体内に挿入されるプローブPも備えられる。プローブは典型的には、皮膚への挿入を容易にし、挿入時の組織損傷を最小限にするための先の尖った先端部Tを有する。プローブの形は典型的には円柱状であり、好ましくは少なくとも3mm、例えば最大12mmの長さを有する。プローブの直径は典型的には0.5mm以下、例えば0.1mm〜0.5mmである。適切なプローブの例は円柱状の中空針(任意選択で、体液又は組織の侵入を防ぐために端部がキャッピングされている)である。したがってプローブは、間質組織に刺入するのに適切な長さを有し、血管内測定に使用される相応のプローブよりも一般的には短い。血管内で使用するプローブは、典型的には少なくとも数cmの長さを有し、通常はかなり長めになり、カニューレを通した血管内への挿入に適するであろう。
【0074】
指示システムはプローブ内に備えられる。グルコースが開口部Aを通して、間質液からプローブに入ることが可能なため、受容体との結合が生じ得る。本明細書で描写の場合は、単一の開口部Aがプローブの縦方向の壁に設けられる。所望の場合は2つ以上の開口部が存在してもよい。プローブの縦方向の壁にあるこのような開口部は、好ましくはプローブの先端部の近くに位置する。或いは、又は追加的に、開口部がプローブの先端部に設けられてもよい。
【0075】
プローブは、典型的には、プローブの最上部(プローブが検出器ヘッド又はコネクタと接するところ)から(各)開口部Aまでの距離が10mm以下、好ましくは8mm又は5mm以下となるように設計される。このようなプローブを有するセンサが、検出器ヘッド又はコネクタが皮膚に当たって留まる形で皮膚へと挿入される際、(各)開口部Aは、間質液が(各)開口部Aを通してプローブに入ることが可能となるように、皮下に位置している。
【0076】
指示薬へのグルコースの速やかな拡散を確実なものにするため、指示システムは、典型的にはプローブ内、又は開口部Aの近くに固定化される。一実施形態では、受容体/発蛍光団はヒドロゲル又は他のポリマーマトリックス中に含まれ、ヒドロゲルはプローブの中空孔部内に、又はそのような用途で設けられたプローブ内の穴の中に配置される。或いは、指示薬はプローブP内のセル内に水溶液の形で備えられてもよい。指示システムをプローブ内に維持し、グルコースの進入を可能にするために、開口部A全体にわたってグルコース透過性膜を設けることが好ましい。
【0077】
本発明の一実施形態では、蛍光信号を温度補正してもよい。この実施形態では、熱電対(サーミスタ又は他の温度プローブ)が、プローブ内の指示化学物質の傍らに配置されることになる。
【0078】
図2に描写されるように、センサユニットは2つの分離可能な部品の形で提供してもよい。第1の部品は、プローブP及び任意選択でプローブを検出器ヘッドに接続するためのコネクタ2を備える、プローブユニット1である。第2の部品は検出器ヘッドDHである。コネクタは、指示システムと光源と検出器との間の光学的接続が維持されるよう、使用中、プローブ内の導波管を、検出器ヘッドDHに光学的に接続するように構成されている。典型的には、検出器ヘッド内に分岐導波管が備えられ、片側は光源に接合し、もう片側は検出器に接合することになる。熱電対がプローブ内に備えられる場合は、熱電対にさらに接続される。検出器ヘッド及びプローブはまた、典型的には、あらゆる接続を正しく配置するためにロッキング機構を有することになる。プローブ、コネクタ及び検出器ヘッドは、接続をすると、図1のセンサユニットを構成する。
【0079】
この実施形態では、プローブユニット1は、合成ポリマーのような安価な材料からなるコネクタを有する使い捨てのユニットであることが想定されている。プローブは、ステンレススチール製又はチタン製針のような針でもよい。検出器ヘッドDHは、この実施形態では使用の都度、新しいプローブユニットに接続するように構成されている非使い捨てのユニットである。電源、例えば充電式電池又は使い捨ての電池を備えるように構成されているユニットをまた、検出器ヘッド内に配置してもよい。
【0080】
センサユニットは読み取りユニットRと併せて使用されるが、その好ましい実施形態を図3に描写する。読み取りユニットは、典型的には、ディスプレイ27上に表示又はメモリ28に保存することのできる、グルコース濃度の出力を行う。読み取りユニットは、任意の必要な電源5a(例えば充電式電池、又は使い捨ての電池を備えるように構成されているユニット)、処理ユニット24、及び他の必要な電子部品をさらに備える。読み取りユニットは、検出器ヘッドに物理的に接続して電子的か、電子的且つ光学的な接続を得るためのコネクタを有してもよい。例えば、検出器ヘッドの最上部のタッチコンタクトC1及びC2と読み取りユニット(図示せず)の同様のタッチコンタクトとの接触を介して、又はケーブル接続を介して、接続を行ってもよい。読み取りユニットは、使用中、検出器ヘッドに物理的にクリップ留めしてもよい。或いは、読み取りユニットは、物理的な接続以外、例えば誘導によって、又はデータの無線送信を介して、検出器ヘッドからのデータを受信するように構成されていてもよい。この場合、読み取りユニットは、検出器ヘッドから送信されたデータを受信するように構成されている受信器を備える。無線送信、又はタッチコンタクトを介した接続が好ましい。
【0081】
適切な波長の入射光を指示薬に伝達するための光源3、及び帰還信号を検出するための検出器4も、本発明のセンサに備えられる。図3に描写するように、典型的にはこれらは検出器ヘッド内に備えられる。光源は好ましくはLEDであるが、レーザダイオードなど別の光源でもよい。光源は温度安定化してもよい。光源の波長は、使用される発蛍光団によるであろう。用語「光」は、光源の発光波長について、いかなる特定の制約を課すことを意図するものではなく、特に、可視光に制限されるものではない。光源3は、励起の波長を選択するための光学フィルタを備えてもよいが、光源が十分に狭い帯域を有するか単色である場合は、このフィルタリングは不必要となり得る。
【0082】
蛍光寿命を検出することが可能な、任意の適切な検出器4を使用してもよい。一態様では、検出器4は単一光子アバランシェダイオード(SPAD)(フォトダイオードの一種)であり、適切なSPADとしては、SensL社のSPMMicro、浜松ホトニクス社のMPPC、Idquantique社のID101、及び他の類似のデバイスが挙げられる。(単一光子アバランシェダイオードはまた、ガイガーモードAPD又はG−APDとしても知られているであろう;ここでAPDはアバランシェフォトダイオードを表す)。光学フィルタ(図示せず)を設けて、検出器4に到達することのできる光の波長を制限、例えば目的の蛍光波長以外の実質的に全ての光を遮断してもよい。
【0083】
典型的には、導波管を設けて光源/検出器と指示システムとの間に光を伝達する。検出器及び光源がプローブの端部の近くに配置されている場合は、導波管を省いてもよい(又は、プローブ自体が導波管として作動してもよい)。或いは、光ファイバーのような導波管を使用してもよい。所望の場合は、指示システムが開口部A又はその近くに配置されるように、指示システムを光ファイバーの先端又はファイバーの遠端部内に付着させ、ファイバーをプローブ内に挿入してもよい。
【0084】
描写した実施形態では、光源及び検出器は検出器ヘッド内にある。これは、センサヘッドと読み取りユニットとの間に光学的接続を必要としないという利点を有する。別の実施形態では、光源及び検出器は読み取りユニット内に配置される。これは、この部品が例えば、メモリデバイス及び任意の必要な光学部品のみを備えてもよいことから、シンプルで小型、軽量の検出器ヘッドを用いることができるという利点を有する。しかし、読み取りユニットと検出器ヘッドの間には、確実な光学的接続を成立させなければならない。これは、読み取りユニットと検出器ヘッドとを接続する光ケーブルの使用によって達成することができる。
【0085】
図3に描写される本発明の一実施形態では、検出器ヘッドはさらに電源5を備える。電源は、充電式電池ユニット又は使い捨ての電池を備えるように構成されているユニットでもよい。この実施形態は、センサユニットと読み取りユニットとを物理的に接続せずに、皮下組織中のグルコース濃度測定を実施することができるという利点を有する。この実施形態はゆえに、持続的なグルコースのモニタリング、例えば一晩グルコースレベルをモニタリングするのに特に有用である。検出器ヘッドは、得られたデータを保存するための小さなメモリ容量を備えてもよい。
【0086】
この実施形態の好ましい態様では、検出器ヘッドは送信器6をさらに備える。この実施形態では、センサユニットによって収集された寿命データは、読み取りユニット内に配置された受信器7に無線で送信することができる。典型的には、検出器からの出力信号を、任意選択で、デジタル信号に変換(例えば適切なアナログ−デジタル変換器(ADC)による、図示せず)した後で送信する。このような送信は、例えば誘導により、赤外線により、或いは無線電話又はインターネット接続を介するなどの、データの無線送信に適した他の手段により実行される。このようにして、読み取りユニットとセンサユニットとは、互いに離れていてもよい。例えば、読み取りユニットは患者の自宅内の固定の位置にあってもよく、患者は自宅や周辺地域をあちこち自由に動き回ることができ、その間データは継続的に収集されて読み取り器に送信される。同様に、読み取りユニットは病院内に備えられてもよく、一方センサユニットは在宅の患者に固定してもよい。このような方式の医療データの送信の例は、国際公開第99/59460号パンフレットに見出すことができる。その出願中に記載されているデータの送受信用のシステムを、本発明に用いることが可能である。
【0087】
図4は、SPAD検出器を使用した、本発明による蛍光センサの好ましい実施形態を模式的に示す。この実施形態は、周波数領域測定を利用した発蛍光団の寿命の測定を記載しているが、同装置は、時間領域測定にも等しく使用することができる。信号発生器10は、ドライバ12へと受け渡される高周波周期信号を、第1の周波数で生成する。ドライバ12は最初の信号を調整してもよく、次いでそれを光源3を変調駆動するのに使用する。典型的には、信号発生器及びドライバは、光源及び検出器とともに検出器ヘッド内に備えられるが、別の実施形態では、信号発生器及びドライバは、読み取りユニット内に存在することがある。
【0088】
ドライバ12は、光源3を駆動して励起光の強度(振幅)を変調する。これは、ドライバ12が光源を電気的に変調して発光強度を変えることによって行われるのが好ましい。或いは、光源3は、最終出力強度を変更するための可変光変調器を備えてもよい。光源3からの光の強度の変調の形(波形)は、信号発生器10及びドライバ12により制御され、正弦波、三角波又はパルス波など状況に応じて様々な形を取り得るが、変調は第1の周波数で周期的である。
【0089】
光源3から出力された光は、プローブ内の指示化学物質16に伝達される。図4では光ファイバー18を通してであるが、別の導波管、例えばプローブ自体を単独で、用いることも可能である。この実施形態では、光源3の出力が周期的に変調されるので、蛍光も自然と、同じ基本となる第1の周波数で変調される。しかし、発蛍光団の蛍光挙動が原因で、蛍光が発した光にもたらされる時間的遅延が存在し、これは励起光の変調と蛍光の変調との間の位相遅延として現れる。
【0090】
放射された蛍光は、光ファイバー18を通して検出器4に伝達される。この実施形態では、検出器4は単一光子アバランシェダイオード(SPAD)である。単一光子アバランシェダイオード検出器4は、低い破壊電圧(閾値)を有する種類又は高い破壊電圧を有する種類のどちらも可能である。バイアス電圧が単一光子アバランシェダイオードの破壊電圧より高くなるように、バイアス電源22によって単一光子アバランシェダイオード検出器にバイアス電圧を印加してもよい。この状態では、検出器4は、単一光子の受け取りによって出力電流パルスが生じるような非常に高い感度を有し、したがって、総出力電流は、受光の強度が非常に低い場合であってもその強度に関連する。
【0091】
バイアス電源22は、単一光子アバランシェダイオード検出器4に印加されたバイアス電圧がその第2の周波数で変調されるように、信号発生器10から第2の周波数の周期信号を受信する。好ましい実施形態では、単一光子アバランシェダイオード検出器は低電圧タイプであり、平均バイアス電圧は25〜35Vdcの領域であるが、実際のデバイスの破壊電圧によって、より高くても低くてもよく、変調度は典型的には第2の周波数で3〜4Vである。変調の波形は光源のそれと同様に、いかなる特定の形にも制限されないが、典型的には正弦波である。検出器4の出力は信号処理部24に受け渡される。アナログ−デジタル変換器(ADC)(図示せず)を備えて、単一光子アバランシェダイオードのアナログ出力信号をデジタル領域に変換し、信号処理部24がデジタル信号処理(DSP)を利用することができるようにすることも可能である。信号処理部が読み取りユニット内に存在することで、単一光子アバランシェダイオードからの出力を、典型的には検出器ヘッドから読み取りユニットへ送信した後にさらなる信号処理が行われるようにしてもよい。或いは、信号処理部を検出器ヘッド内に配置してもよい。
【0092】
信号処理部24は、専用の電子ハードウェアに、又は汎用のプロセッサ上で作動するソフトウェア、又はその2つの組合せに実装することができる。好ましい実施形態では、マイクロプロセッサ30は、解析を行う信号処理部24、及び信号発生器10の双方を制御する。したがって、信号処理部24は光源の変調信号周波数及び位相、並びに検出器バイアス電圧の変調周波数及び位相についての情報を有する。
【0093】
バイアス電圧の変調によって、単一光子アバランシェダイオード検出器4の利得が変調される。光源3、ゆえに受光する蛍光は、第1の周波数で変調されるが、単一光子アバランシェダイオード検出器4のバイアス電圧は、第1の周波数とは異なる第2の周波数で変調される。これによって、第1の周波数と第2の周波数の差に等しい周波数の解析信号で動作する信号処理部24が、ヘテロダイン測定法を用いることが可能となる。好ましくは、第1及び第2の周波数は10%未満、より好ましくは1%未満の差である。第1と第2の周波数の間の周波数の差は、使用する指示システムにより異なるが、例えば50kHzでもよい。
【0094】
他の実施形態によれば、第1及び第2の周波数は名目上同じのこともあり得るが、変化し続ける位相変移を信号間に導入する(例えば、連続的に変化する遅延により、一方の信号を他方に対して遅延させることによる)。位相変移が周期毎に変化する場合、これは実際には2つの異なる周波数を有するのと同じことである。導入された位相変移は迅速に掃引されるのが好ましい。
【0095】
解析される信号から、並びに光源3の変調と検出器バイアス電圧の変調の双方の周波数及び位相を判別することにより、信号処理部24は、系に導入される位相遅延を決定することができる。センサに固有の位相遅延(これは、発蛍光団の存在が全くなくても、また蛍光寿命が知られている(位相遅延が知られている)試料を用いても、計算が可能)を差し引き、純粋に指示システムの発蛍光団による位相変移を得る。次いでこの情報を、適切な校正データを用いてグルコース濃度に変換することができる。求めた測定結果を、次いで出力26において提示する。出力測定結果はディスプレイ(図3の27)上に表示できる、及び/又は後の読み出しに向けてメモリ(図3の28)にログを記録することができる。
【0096】
上述の方法は、本質的に、単一のデータポイントを用いて所望の蛍光関連情報を導出する。しかし、本発明のさらに好ましい実施形態によれば、一連の測定が行われるが、位相角を制御可能に前進又は遅延させることができるように、測定毎に異なる位相変移及び/又は周波数差が電子的に導入される。信号発生器10によって生成される2つの信号波形は、これらの周波数における信号の相対位相が時間とともに変化するような、互いに異なる第1及び第2の周波数である。しかし装置は、例えば2つの周波数の波形を特定の時点において同期化し、次いで、任意の他の時点における実際の位相変移を計算することができるように、制御される。一例では、測定は、10kHz、20kHz及び30kHzの周波数差の変移で繰り返される。さらに、波形が既知の初期位相差を有するように、同期化の時点において特定の位相変移を導入することができる。導入した各々の位相角変移について、位相変調空間を効果的にマップアウトするために、解析する信号の変調度を得る。導入した位相角を、例えばゼロから180度まで段階的に5度ずつ増分してもよい。結果は、変調度を、導入した位相角に関連付ける一連のデータポイントである。これらのデータポイントは、例えば、試料無し或いは1つ又は複数の標準的な校正試料を用いた、位相角に対する変調度の校正データのカーブフィッティング及び/又は比較によって解析し得るグラフを構成する。概括的に言えば、異なる初期位相差及び/又は異なる周波数差を用いた測定結果を集計することができる。したがって、全体的な測定精度を向上させることが可能である。
【0097】
上述した方法の概要を、図5のフローチャートに模式的に描写する。
【0098】
センサ装置全体は、マイクロプロセッサ30によって制御が可能である。図4は、いくつかの個別な電子回路用部品を示すが、これらのうち少なくともいくつかは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(ASIC)などの単一の集積回路に組み込まれていてもよい。
【0099】
発明のセンサの使用は、典型的には、使い捨てのプローブユニットを検出器ヘッドに装着し、皮下にプローブを挿入することを伴う。プローブは、典型的には、検出器ヘッドの下面が皮膚と接触するように十分に挿入される。したがって、プローブの先端部は皮膚の約3〜7mm下に位置する。センサは例えば接着テープを用いて、又はセンサ上の適切な固定点への縫合によって、皮膚に装着してもよい。読み取りユニットは短時間の間、例えば最大30秒間、好ましくは最大20秒又は最大15秒間、検出器ヘッドに接続される。この時間によって、測定の実行と読み取りユニットへの必要なデータの転送が可能となる。
【0100】
本発明の一実施形態では、検出器ヘッドは光源、電源及び検出器を備え、センサはグルコースレベルを持続的にモニタリングするのに使用される。この実施形態では、検出器ヘッドは独自の電源を備えているので、測定を実施する前に読み取り器と検出器ヘッドとの間で接続を行う必要はない。
【0101】
本明細書で使用の場合は、グルコース濃度の持続測定は、所望の期間、例えば一晩にわたって自動的に行われる2回以上、典型的には10回以上のグルコース濃度の読取りを伴う。したがって、マイクロプロセッサ30は、グルコース濃度の測定を所定の間隔で自動的に行うようセンサ装置を制御するように構成される。このことは、少なくとも(b)指示システムに入射光を提供するステップ、(c)指示システムから放射された蛍光を受光して、出力信号を発生させるステップ、及び(d)発蛍光団の蛍光寿命に関する情報を決定するステップを、所定の間隔で2回以上実施することを伴う。典型的には、測定は10秒毎に1回〜10分毎に1回で行ってもよい。
【0102】
典型的には、検出器からの出力は、任意選択で適切な信号変換が行われた後、読み取りユニットに無線で送信される。読み取りユニット内においてさらなる信号処理を行ってもよく、得られたデータをメモリ容量28に保存、及び/又はディスプレイ27を用いて表示させてもよい。この実施形態では、データが要求に応じてではなく、継続的に読み取りユニットに送信されることが可能となり、グルコースレベルの一晩の持続的モニタリングにおいて特に有用である。
【0103】
本発明を様々の具体的な実施形態及び実施例に関して説明したが、本発明が、これらの実施形態及び実施例に限定されないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下組織中のグルコースを測定するためのグルコースセンサであって、
皮下挿入用のプローブであり、グルコースに選択的に結合するための受容体及び前記受容体に会合している発蛍光団を含む指示システムを備え、前記発蛍光団が100ns未満の蛍光寿命を有する、プローブと、
前記プローブに光学的に接続され、体外に位置するための検出器ヘッドと、
光源と、
前記指示システムから放射された蛍光を受光するように構成されている検出器であり、前記光源及び検出器が任意選択で前記検出器ヘッド内に配置される、検出器と
を具備し、前記発蛍光団の蛍光寿命をモニタリングすることによって皮下組織中のグルコース濃度を測定するように構成されているグルコースセンサ。
【請求項2】
前記検出器が単一光子アバランシェダイオードである、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記光源強度を第1の周波数で変調するように構成されているドライバと、
前記単一光子アバランシェダイオードにバイアス電圧を印加するように構成されているバイアス電源であり、前記バイアス電圧が前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で変調され、前記バイアス電圧が前記単一光子アバランシェダイオードの破壊電圧より高い、バイアス電源と、
少なくとも前記単一光子アバランシェダイオードの出力信号に基づいて、前記発蛍光団の蛍光寿命に関する情報を判定するように構成されている信号処理部と
をさらに具備する、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記受容体が、1つ又は複数のボロン酸基を含む酵素又は化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記発蛍光団が30ns以下の蛍光寿命を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記発蛍光団が20ns以上の蛍光寿命を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記発蛍光団が非金属性発蛍光団である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記指示システムが、ヒドロゲルに結合している発蛍光団−受容体構造体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記ヒドロゲルが、少なくとも30%w/wの水分含量を有する液状ヒドロゲルである、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記指示システムが水溶液として備えられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
(a)非使い捨ての検出器ヘッドと、(b)前記プローブ及び前記プローブを前記検出器ヘッドに接続するように構成されているコネクタを備える使い捨てのプローブユニットとを具備する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記検出器ヘッドに接続するか、前記検出器ヘッドからのデータを受信するように構成されている読み取りユニットをさらに具備し、前記光源及び検出器が任意選択で読み取りユニット内に配置される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項13】
前記検出器ヘッドが前記光源及び検出器を備え、電源、及び前記検出器の出力に関するデータを受信器に無線で送信するように構成されている送信器をさらに備え、前記読み取りユニットが、前記送信器によって送信されるデータを受信するように構成されている受信器を備える、請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
前記センサを制御して2回以上のグルコース濃度の測定を所定の間隔で行うように構成されているマイクロプロセッサと、蛍光寿命データ又はグルコース濃度についての情報を保存するように構成されているメモリとをさらに具備する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のグルコースセンサにおいて使用するための使い捨てのプローブユニットであって、(a)請求項1又は4〜10のいずれか一項に記載の指示システムを備える皮下挿入用のプローブと、(b)前記プローブを検出器ヘッドに光学的に接続するように構成されているコネクタであり、前記検出器ヘッドが光源及び検出器を備えているか、それ自体、光源及び検出器にさらに光学的に接続されている、コネクタとを備えるプローブユニット。
【請求項16】
別個のプローブユニットに接続するように構成されている検出器ヘッドであって、単一光子アバランシェダイオードである検出器であり、前記プローブユニットからの光を受光するように構成されている検出器を備え、100ns未満の蛍光寿命をモニタリングするように構成されている検出器ヘッド。
【請求項17】
前記検出器が、20ns以上の蛍光寿命をモニタリングするように構成されている、請求項16に記載の検出器ヘッド。
【請求項18】
皮下組織中のグルコース濃度を測定する方法であって、
(a)請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサの前記プローブを皮下組織に挿入するステップと、
(b)前記光源から、前記指示システムに入射光を提供するステップと、
(c)前記光源から前記指示システムに入射する光に応答して前記指示システムから放射された蛍光を、前記検出器を用いて受光し、出力信号を発生させるステップと、
(d)少なくとも前記検出器の出力信号に基づいて、前記発蛍光団の蛍光寿命に関する情報を判定するステップと
を含む方法。
【請求項19】
(e)前記検出器の出力信号又は前記発蛍光団の蛍光寿命に関するデータを、読み取りユニット内に配置される受信器に無線で送信するステップをさらに含み、ステップ(e)をステップ(d)の前か後のいずれかで実施し得る、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記検出器が単一光子アバランシェダイオードであり、
(f)前記光源の強度を第1の周波数で変調するステップと、
(g)前記単一光子アバランシェダイオードにバイアス電圧を印加するステップであって、前記バイアス電圧が前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で変調され、前記バイアス電圧が前記単一光子アバランシェダイオードの破壊電圧をより高い、ステップと
をさらに含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
少なくともステップ(b)、(c)及び(d)を所定の間隔で2回以上実施し、得られた情報をメモリに保存することによって、グルコース濃度を持続的にモニタリングする、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−519483(P2013−519483A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553392(P2012−553392)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000208
【国際公開番号】WO2011/101625
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512212863)ライトシップ メディカル リミテッド (4)
【Fターム(参考)】