説明

皮下注射器

【課題】注射器ケーシング2と、ケーシング2内にあり一回量の液体を保持する液室4を区画する注射器本体3を含む注射器1。
【解決手段】注射器本体3はケーシングに対し制御可能に移動し得る。中空の針13が注射器本体3と移動するよう連結され、注射器1使用のためケーシング2から外に延びる。プランジャー14は、針13を通じて本体の液室4内に液体を引き入れ、及び/または、本体液室4から液体を排出するため本体3内を往復移動し得る。制御手段2は注射器1が針を通じて一回量の液体を引き入れ及び/または排出できるようにし、ケーシング2に対する注射器本体3と針13の移動が注射器1を使用不可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再使用不可能なタイプの皮下注射器に関する。本注射器は液状の医薬、製剤、薬物及びその他の溶液のヒト体内への投与に適用し得るものであり、便宜のため、本発明を以下、その具体的適用に関連して開示する。しかしながら、当然のことながら、本発明はその応用に限定されるものではない。その点に関し、本注射器はまた、分析用にヒトの体から血液試料、または他の液体を採取することにも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
本発明に対する背景についての以下の論議は、本発明の理解の便宜を計ることを意図するものである。しかし、当然のことながら、本論議は、如何なる引用資料も本出願の優先期日にオーストラリアで公表され、既知であり、共通一般の知見であったことを承認或いは容認するものではない。
【0003】
注射器の再使用はヒトにおける感染の重大な原因である。その上、病気は注射器を共用する間にヒトの間で比較的容易に伝播し得る。使用済みの注射器は、また、使用後に中空の針を不適切にむき出しで放棄する場合、怪我と病気伝播の可能性の根源でもある。
【0004】
これらの健康上の諸問題を軽減するために、一度使用した後は、作動不能で且つ比較的危険のないようにし得る注射器が開発されている。このような処置のひとつにおいては、針は、使用後、プランジャーによって注射器の筒状本体内に引き込められ、本体は次いで針を保護収納する。さらに、針が本体から再延出することを阻止する仕組みが備えられていて注射器は使いものにならず危険でないようにされる。
【0005】
このような仕組みのひとつは、プランジャーの更なる移動を阻止するために、プランジャーの柄を固定、及び/または破壊するものである。別の仕組みは、本体の前端に設けられ当初は針が本体から延出する穴から針を軸方向にずらすことが含まれる。このような方法では、針が注射器本体内に引き込められた場合、針と穴とは軸がずれて針が穴を通ってもどることを阻止する。
【0006】
これらの注射器は、それらの再三の使用の使用、及び安全な投棄の達成にも有効であり得る。しかしながら、これらの注射器の多くに伴う一つの不都合な点は、それらが改ざん防止式ではないことである。それらの注射器は、一回使用した後に注射器を作動不能で安全にするために、使用者側の積極的な行為が必要である。そうした行為がない場合、または誤用は、注射器の反復使用を可能にする。その上、不注意な投棄は、中空の針を怪我や病気の潜在的可能性を持ったままむき出しで放置することを許容する。
【0007】
オーストラリア特許第731159号及び特許出願第2001252019号は、他の注射針引込み式で一回限定使用の注射器を開示している。これらの注射器は重複使用を阻止して、安全な投棄を可能にするのに有効であり得る。しかしながら、注射器を使用不可能にする手段が複雑であるために、他の注射器に比べて製造費が高くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、誤用及び乱用されにくい注射器を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、効果的に再使用を阻止する注射器を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、一回使用した後に自動的に危険をなくすことができる注射器を提供することにある。
【0011】
本発明のなおさらなる目的は、構造がより簡単で製造費がより安いにも拘わらず誤用と乱用を防ぐ効果を維持した注射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
広義には、本発明は、
注射器のケーシング、
ケーシング内にあって一回量の液体を保持するための液室を区画し、ケーシングに対して制御可能に移動出来る注射器本体、
注射器本体と共に移動するように注射器本体に連結され、注射器の使用を目的としてケーシングから延びている中空の針、
針を通じて本体液室内に液体を引き入れ、及び/または、本体液室から液体を排出するために本体内を往復移動可能なプランジャー、及び
針を通じて注射器が一回量の液体を引き入れ、及び/または、排出することを可能にする制御手段であって、ケーシングに対する注射器本体と注射針との移動によって注射器を使用不能にする制御手段を含む注射器を提供する。
【0013】
好適には、注射器本体は、ケーシングに対して、注射器が一回量の液体を引き入れ、及び/または排出することができる位置から注射器が使用不能にされて注射器の使用をさせないようにした位置まで制御可能に移動し得る。制御手段は、好ましくは、使用可能位置から使用不可能位置までの本体の制御された移動を遂行する。一つの好適な形態において、注射器本体は使用可能位置から使用不能になるように前記注射器が配置される使用不能化位置まで、次いで、使用不能化位置から使用不可能位置まで制御可能に移動し得る。この形態においては、制御手段は、使用不能化位置を通って本体の制御された移動を遂行する。
【0014】
注射器のケーシングと本体とはそれぞれ細長く、注射器本体は注射器のケーシング内で軸方向に及び回転して滑動することが出来る。注射器本体は、好ましくは使用可能位置から使用不能位置まで滑動する。好適には、注射器本体は軸方向に使用不能位置内に滑動することが出来、注射器本体の使用不能位置への滑動によって、針をケーシング内に引き込んで注射器を使用不能にする。
【0015】
好適には、制御手段は、注射器のケーシングに設けられた少なくとも一つの制御部材と、注射器の本体に設けられた少なくとも一つの制御部材と、を注射器本体上に含む。注射器のケーシング及び本体のそれらの制御部材は、好ましくは、注射器使用中に相互に係合して本体の制御された移動を遂行する。一つの好適な形態において、制御部材は少なくとも一つの制御カムと少なくとも一つのカム従動子とを含み、カムとカム従動子は相互に係合して本体の制御された移動を遂行する。この形式において、カムは本体に設置され、カム従動子はケーシングに設置されてもよい。
【0016】
好適には、カム従動子は従動子ピンである。
【0017】
好適には、制御カムは細長く、カム従動子による係合が有効なように延びる少なくとも一つの輪郭がかたどられたカム作用をする表面を持つ。一つの好適な形態において、制御カムはカム従動子ピンを受け入れるためのカム作用溝または溝穴を含む。この形態においては、カム従動子ピンは、カム作用表面の輪郭に応じてカム作用溝または溝穴に沿って漸進的に移動して注射器本体とケーシングとの間の相関移動を引き起こす。
【0018】
好適には、制御カムはそれに沿って間隔をあけて配置されたカム作用段を含み、各段はそれぞれカム作用表面を持ち、その表面によってカム従動子はそれを順次乗り越えて移動し、各カム作用段を通じてケーシングに対する注射器本体の指示された移動を引き起こす。
【0019】
好適には、カム作用段は、
a) 一回量引き入れのカム作用段であって、その間で一回量の液体が本体の液室内に引き入れられるもの、
b) 空気排出カム作用段であって、その間で空気が針から排出されるもの、
c) 採血カム作用段であって、その間に血液が静脈から針内に採取されるもの、及び、
d) 一回量排出カム作用段であって、その間に一回量の液体が本体の液室から排出されるもの、の一つ以上を含む。
【0020】
各カム作用段の間でのプランジャーの動きは、好ましくはカム従動子を強制的にそれぞれのカム作用表面と係合させて、その上を移動させ、それによって、注射器本体が注射器のケーシングに対して回転しながら滑動出来るようにすることが好ましい。一つの好適な形式において、カム作用段は、制御カムに沿って上記のa、b、c及びdの順序で備えられる。
【0021】
好適には、制御カムは、カム従動子の前のカム作用段を越える移動を終了させカム従動子を次のカム作用段階へ向けるために、各カム作用段のそれぞれの末端に隣接する戻り止め段を含む。各戻り止め段はそれぞれのカム作用表面を有することが好ましい。それらのカム作用表面は、その前のカム作用段におけるカム作用表面に対してある角度で曲がっていて、カム従動子の移動方向を切り替え、各カム作用段を通して注射器本体の指示された移動を引き起こすようにする。
【0022】
好適には、制御カムは使用不能化カム作用段を含み、この段の間で、カム従動子とカムは係合を解いて注射器本体は使用不可能位置に移動する。カム作用溝または溝穴は、開放末端を持つことが好ましく、それを通して、従動子ピンが移動してカム作用溝または溝穴から出て、使用不可能な位置まで注射器のケーシングに対して長手方向に滑動して針をケーシング内に引き入れる注射器本体を解放する。
【0023】
好適には、注射器は、注射器本体に作用して使用不能化位置にある本体を使用不可能位置に滑らせ移動させる付勢手段を含む。好適な一形式において、付勢手段は注射器のケーシングと本体との間に作用する弾力のある付勢バネを含み、本体をケーシングに沿って使用不可能位置へと付勢る。
【0024】
好適には、注射器本体は、針がケーシング内に引き入れられて収納された可用化位置から使用可能位置へ移動し得る。制御カムは、可用化カム作用段を含み、注射器本体が使用可能位置へ移動すると、カム従動子がカムと係合して、可用化カム作用段のカム作用表面での移動を引き起こすことが好ましい。注射器本体の移動によって注射器の使用のために針はケーシングから突出する。好適には、カム作用溝または溝穴は開口末端を持ち、それを通じてカム従動子のピンが移動してカム作用溝または溝穴に入り、可用化カム作用段のカム作用表面と係合する。
【0025】
一配置において、注射器ケーシングは、注射器の使用中に、針が通って延びる連通穴を含む。その連通穴は、針から分かれていて、針がケーシング内に使用不可能位置まで引き入れられる場合、引き入れられた針は連通穴とはずれているので、針がケーシングから再び延出することを阻止する。
【0026】
もう一つの配置においては、固定手段が設けられて、使用不可能位置にある場合、本体に作用してケーシングに対するその爾後の移動を防止する。
【0027】
以下の記述は、本発明の注射器の実施の形態に言及するものである。本発明の理解を容易にするために、記述中で、上記注射器がその実施の形態において図示されている付随図面に言及する。当然のことながら、注射器は以下に記述され、また、図面に示されているような実施の形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
初めに図1を参照すると、細長い注射器のケーシング2と、ケーシング2内に配置された細長い注射器本体3とを有する注射器1が全般的に示されている。本体3は、一回量の液体を保持するための液室4を画している。例示する用途では、一回量の液体はヒト体内に投与されるための医薬、薬剤或いは他の溶液、または人体から採取された血液試料である。
【0029】
ケーシング2は、断面形状がそれぞれ符号5、6で示す内表面と外表面を有する円筒状である。ケーシング2は、また、それぞれ符号7、8で示す対向した前端及び後端を有する。
【0030】
注射器のケーシング2は少なくとも各末端7、8において実質的に閉鎖されている。特に、ケーシング2は連通口9,10以外の各末端において密閉されており、その目的は以下でさらに明瞭になる。
【0031】
注射器本体3もまた細長く、それぞれ符号11、12で示す対向した前端と後端を有する。本体3は、ケーシング2内にあってそれに沿って延びており、それに沿って移動する。図に示されているように、ケーシング2と本体3とは、それらの前端7、11でもって同一方向に、また、後端8、12で反対向きの同一方向に向けられている。
【0032】
注射器本体3は、注射器が使用可能にされた位置から注射器が使用不可能にされた位置まで制御可能に移動することが出来る。使用可能位置において、(図4から6に示されるように)本体3はケーシング2の前端7に向かって配置され、一方、使用不可能位置においては(図8に示されるように)、本体3はケーシング2の前端7からずっと離れて配置されている。使用可能位置において、本体3はその前端11をケーシング2の前端7に近づけて配置される。使用不可能位置においては、注射器本体3はその前端11がケーシング2の前端7との間に隙間があるように配置されて、その後端12はケーシング2の後端8に近接することもある。
【0033】
使用可能位置から使用不可能位置への移動において、本体3は使用不能化位置を通って移動する。つまり、本体3は、使用可能位置から使用不能化位置へ、次いで使用不可能位置へ移動し得る。使用不能化位置において(図7に示されるように)、本体3は注射器1が使用禁止になるための位置にくる。
【0034】
本体3は管状で、ケーシング2内を軸方向に滑動し得る。管状の本体3は、また、長軸Xのまわりをケーシング2に対して回転しながら滑動することが出来る。図示されているように、管状の本体3は断面の形が円管状であって、管状のケーシング2内に滑らかに適合して滑動する。本体3は、概ね、使用可能な位置から使用不可能化位置へ回りながら滑動することが出来、また、概ね、使用不可能化位置から使用不可能にされた位置へ軸方向に滑動することが出来る。
【0035】
注射器1は、共に移動するために注射器本体3の前端11に連結された中空の針13を含む。針13は、注射器を使用するためにケーシングから外に延びるように、ケーシング2の前端7における連通穴9を通り注射器本体3から前方に突出する。
【0036】
針13は液室4と連絡している。このような方法で、一回量の液体が中空の針13を通じて液室4内に引き入れられ、その後、液室から針13を通じて排出され得る。注射器1の意図された用途次第で、上記液体は、例えば、供給容器から引き入れられ、その後排出または皮下注射される注射可能な溶液、または、人体から皮下採血され、その後分析のために排出される血液であってよい。
【0037】
管状の本体3は前端11において密閉され、針13は前端11に固定されて針13を本体3に恒久的に堅持し、また、針13が液室4と連絡するようにする。
【0038】
プランジャー14は、針13を通じて液室4内に液体を引き入れ、液体を液室4から排出するために注射器本体3内を往復移動することが出来る。プランジャー14は、本体の液室4内で滑動し得るピストン15と、ピストン15から本体3およびケーシング2の後端12、8を通って延びている作動柄16を含む。柄16は、ケーシング2の他方の密閉されている後端8における連通穴10を通って延びている。
【0039】
柄16は横断面が円形ではなく、また、柄16が通過する連通穴10も同じ形の横断面を持っている。このような方法で、プランジャー14は注射器本体3内を往復移動することが出来るが、注射器本体に対して回転することは阻止されている。
【0040】
柄16は手動で作動することが出来、ピストン15を液室4内で動かして針を通して液体を引き入れ、かつ、排出する。柄16の手動による作動を容易にするために、当業者によく理解されるような様式で、親指当て17が柄16の末端に備えられてもよく、また、一つ以上の突縁18が後端8またはその近傍で注射器のケーシング2に設けられてもよい。
【0041】
ピストン15は外表面19を持ち、これが管状の本体の内表面20と液を漏らさぬ状態で組み合っている。このようにして、液体はピストン15を通り越して漏れることなく、液室4内に引き入れられ、また液室4から排出され得る。密閉式の組み合わせは、ピストン15、或いはその外表面19を密閉性素材で形成するか、または、ピストン15上に密閉リング21のような密閉部材を一つ以上搭載することによって達成してもよい。密閉性素材または密閉部材はゴムで構成されてもよい。
【0042】
制御手段22は、注射器本体3の使用可能位置から使用不可能位置への移動を制御するために備えられている。制御手段22は、少なくとも一つの制御部材23を注射器のケーシング2に含み、また少なくとも一つの制御部材23を注射器本体3に含んでいて、これらの制御部材23は注射器の使用中に、互いに係合し、それによって本体の使用可能位置から使用不能化位置へ、次いで使用不可能位置への制御された移動を達成する。制御部材23間の係合はまた、注射器1が使用可能である間(即ち、本体3が使用可能位置から使用不能化位置へと回転する間)はケーシング2と本体3とを相対的に長手方向の配置に維持するが、注射器1を使用不可能にするために本体を制御された状態で移動させる場合は解除され得る。その解除によって、本体3は軸方向に使用不能化位置から使用不可能位置へと移動し、中空の針13をケーシング2に引き入れて注射器1を使用不可能にすることが可能になる。
【0043】
制御部材23は、少なくとも一つの制御カム24と少なくとも一つのカム従動子25とを含み、カム24とカム従動子25とは相互に係合して制御された移動を遂行する。
【0044】
当該または各カム24は本体3に設置され、また当該または各カム従動子25はケーシング2に設置されているが、当然のことながらこれらの配置は逆にされてもかまわない。
【0045】
本実施の形態に示されるように、単一の制御カム従動子25が備えられ、その従動子25はケーシング2の内表面5に設置され、そこから概ね内方に延びている。カム従動子25はケーシング2の前端7に近接して設置されている。
【0046】
カム従動子25は従動子突起を含む。当該突起は、ケーシング2の内表面5に固定されていて、突起はそこから内方に突出している。好適な一形態において、当該突起は従動子ピン26である。
【0047】
本実施形態に示されているように、単一の制御カム24が備えられている。そのカム24は図2により詳細に示されていて、単一のカム従動子25による作動的な係合のために少なくとも一つの輪郭を持ったカム作用表面27を有する。制御カム24は、本体3の外表面28に備えられており、カム従動子25と係合する間、それに面した関係にある。そのために、制御カム24は本体3の前端11に近接して設置されている。
【0048】
制御カム24は、カム従動子ピン26を受け入れるためのカム作用溝または溝穴29を含む。このように、カム作用溝または溝穴29は、開口した上面30と、互いに対向する側面とを備えており、その一つ或いは両方がカム作用表面27を提供する。制御カム24は、本体3の壁に入り込んで設定され、開口した上面30は外表面28にい位置する。カム作用溝29(図示されているように)は閉鎖された底部31を有するが、一方、カム作用溝穴(図示されていない)は開放底部を有する。この配置によって、係合の間、従動子ピン26は開口した上面30を通ってカム作用溝または溝穴29内に延び、カム作用表面27に接触して、本体3に力を加えて使用可能位置から使用不可能位置への本体3の制御された移動を引き起こす。
【0049】
カム作用溝または溝穴29は対向する末端32と33とを有し、この間は不連続である。少なくとも、一端33は開いていて従動子25とカム24の係合の解除を可能にして注射器1を使用不可能にする。特に、図示されているように、末端33は、開いており、従動子ピン26がカム作用溝または溝穴29から出て行くことを可能にして互いの係合を解除する。
【0050】
図示されているように、カム作用溝または溝穴29の両端32と33は開いていて、ピン26は、カム作用溝または溝穴29にそれぞれ入ったり出たりしてすることが出来て注射器本体3の移動を制御する。このようにして、ピン26は、入り口末端32においてカム作用溝または溝穴29に入り、それに沿って漸進してカム作用表面27の輪郭に対応して本体3とケーシング2間の相関移動を引き起こして出口末端33から出て行く前に本体3を使用可能位置から使用不能化位置へと移動させ、注射器1を使用不可能にする。カム作用溝または溝穴に沿ったピン26の移動は軌道P上にあって、入り口末端32から出口末端33への一方向である。
【0051】
溝または溝穴29の開放末端32と33は、本体3の前端11まで開通している。
【0052】
カム24は、それに沿って、間隔をあけて設置された数個の段を有し、各段はそれぞれカム作用表面27を持ち、従動子25は、ケーシング2に対する注射器3の指示された移動のために逐次これと係合する。これらの段は、一回量の液体を最初に液室4内に引き入れる間に従動子25が移動する段(一回量引き入れカム作用段34)、及び、その一回量の液体を液室4から排出する間に従動子25が移動するもう一つの段(一回量排出カム作用段階35)を含む。
【0053】
好適な一実施形態において、一回量引き入れカム作用段34は、注射器本体3のケーシング2に対する実質的に長手方向への移動を阻止するが、従動子25が相対的に一回量排出カム作用段25の方向に移動するように本体3の回転は許容する。その移動の間に、プランジャー14は本体3に対して引き込まれて、一回量の液体を液室4内に引き入れることが出来る。その移動は、図の図4に示されるように、プランジャー14の最初の引き上げの間に起こって終了する。
【0054】
本体3とケーシング2の相関移動を達成するために、一回量引き入れカム作用段34におけるカム作用表面27aは、注射器1の長軸Xに対してある角度をなして延びる。このような方法で、従動子25との係合は、本体3を強制的に長軸Xの周りを回転させる。
【0055】
プランジャー14の引き上げ移動が完了するまで、カム24とカム従動子25の上記カム作用段34への相関移動を制限するために、制御カム24はまた、一回量引き入れカム作用段34の末端に隣接する戻り止め段36も含む。戻り止め段36は、一時的に、従動子25のカム24に沿っての継続移動を停止させる。カム従動子25は、戻り止め段36において、カム作用表面27bに接してその更なる移動を停止する。
【0056】
戻り止め段36は、一回量引き入れカム作用段34におけるカム作用表面27aに対してカム作用表面27bの角度を逆にして備えられる。このような方法で、カム作用表面27aと27bは、移動するカム従動子25の受け入れと一時的静置に関与する角度を規定して、制御カム24とカム従動子25との間のさらなる相関移動を阻止する。
【0057】
一回量排出カム作用段35は、ケーシング2に対する注射器本体3の実質的に長手方向の移動を阻止するが、本体3の回転を許容する結果、カム従動子25は、制御カム24の出口末端33の方に移動を続ける。この移動の間に、プランジャー14は液室4から一回の液量を排出することが出来る。その移動は、プランジャーの最初の排出移動の間に起こって終了する。移動の終了によって、本体3は、図7に示されるように、使用不可能化位置に配置される。
【0058】
上記の相関移動を達成するために、一回量排出カム作用段35において、カム作用表面27cは注射器1の長軸Xに対してある角度をなして延びている。このような方法で、カム従動子25と係合すると、強制的に本体3を長軸Xの周りに回転させる。図2に示されているように、この段35のカム作用表面27cは、カム作用溝または溝穴29の表面であって、一回量制御カム作用段階34のカム作用表面27aを提供する側の表面と反対側にある。
【0059】
一回量の排出が完結するまで、カム24とカム従動子25の上記のカム作用段35への相関移動を制限するために、制御カム24は、一回量排出カム作用段35の末端に隣接するさらなる戻り止め段37を含む。このさらなる戻り止め段37は、カム従動子25のカム24に沿っての継続移動を一時的に停止させる。カム従動子25は、戻り止め段37におけるカム作用表面27dに接して更なる移動を停止する。
【0060】
上記のさらなる戻り止め段37は、カム作用表面27dの角度を逆にすることによって備えられる。上記のさらなる戻り止め段37におけるカム作用表面27dは、注射器1の長軸Xに対して少なくとも実質的に平行に延びている。このような方法で、カム作用表面27cと27dは、移動するカム従動子25が受け入れられ一時的に収納されてカム24とカム従動子25との間でのさらなる相関移動を阻止する角度を規定する。
【0061】
ある一つの配置(図示されていない)において、一回量引き入れカム作用段34と一回量排出カム作用段35は、戻り止め段36を間にして互いに隣接して配置されている。この配列において、プランジャー14の連続した移動により、針13を介して一回量の液体を本体の液室4内に引き入れ、次いでその一回量を排出する。
【0062】
しかしながら、別の配置においては(図5と6とを特に参照して示されているように)、制御手段22は、一回量の引き入れと排出の間に、プランジャー14の一回以上の補助的な移動を可能にすることが出来る。例としてあげると、これらの移動は、一回量の引き入れ後に空気を針13から排出するため、及び、一回量を静脈に排出する前に、その静脈から血液を針13中に引き入れるためであってよい。一つの好適な配置において(図示されているような)、両方の移動は共に制御手段22によって提供される。
【0063】
そのために、この別の配置においては、制御カム24は、空気排出カム作用段38と採血カム作用段39をそれぞれ含んでいる。
【0064】
この形式において、空気排出と採血のカム作用段38と39は、一回量引き入れと排出のカム作用段34と35の間に連続して配置されている。特に、空気排出カム作用段38は、一回量引き入れカム作用段34の末端に隣接する戻り止め段36と連続し、また、採血カム作用段39は一回量排出カム作用段35より前にある。
【0065】
空気排出及び採血のカム作用段38と39は、それぞれ、ケーシング2に対する注射器本体3の実質的に長手方向の移動を阻止するが、一回量引き入れと排出のカム作用段34と35と同様に、本体3の回転を許容する。これらの移動の間に、プランジャー14は針13から空気を排出して静脈から針13内に採血することが出来る。これらの移動もまた、それぞれ図5と6に示されているように、プランジャー14の最初の移動の間に起こりそして完結することが出来る。
【0066】
本体3とケーシング2の相関移動を達成するために、空気排出及び採血のカム作用段38、39のカム作用表面27e、27fは、注射器1の長軸Xに対してある角度をなして延びている。このような方法で、カム従動子25との係合は本体3を強制的に長軸Xの周りを回転させる。
【0067】
カム24とカム従動子25の相関移動を、空気排出及び採血がそれぞれ完結するまで、それぞれのカム作用段38、39までにとどめるために、制御カム24は、空気排出および採血のカム作用段38、39の末端に隣接する追加の戻り止め段40、41を含んでいる。それらの戻り止め段40、41は、一回量引き入れ及び排出のカム作用段34、35の末端に隣接した戻り止め段36、37と同様の全般的形態を持ち、それぞれのカム作用表面27gと27hを有する。
【0068】
制御カム24はさらに使用不能化カム作用段42を含む。その段42は一回量排出カム作用段35と続いている。特に、使用不能化カム作用段42は、一回量排出カム作用段35の末端に隣接するさらなる戻り止め段37からカム作用溝または溝穴29の出口末端33まで延びている。カム従動子25が上記使用不能化段42に沿って移動すると、図面の図7及び8に連続して示されているように、使用不能化位置から使用不可能位置への本体3の移動を引き起こす。
【0069】
使用不能化段42は、本体3のケーシング2と相関した長手方向の移動及び針13のケーシング2内への引き込みを可能にする。そのために、使用不能化段42のカム作用表面27iは少なくとも概ね注射器1の長手方向に延びうるが、ただし、別法として注射器1の長軸Xに対して角度をなすことも出来る。いずれにせよ、カム従動子25がカム作用溝または溝穴29から出るようにさせて、ケーシング2に対して長手方向の移動が出来るように本体3を解放する。
【0070】
ある一つの態様において(図示されていない)、注射器1は、最初、使用可能位置に、即ち、本体3をケーシング2の前端7に向けた位置で準備される。その配置において、針13はケーシング2から突出することになる。
【0071】
しかしながら、別の態様においては(図表の図1に示されているように)、注射器1は、本体3がケーシング2の前端7から離れて配置され、針13が引き込まれてケーシング2内に収納された状態で供給される。その配置は針13の損傷または誤用を防止する。その可用化位置においては、本体3はケーシング2の前端7に向かって移動して注射器1が使用可能位置にくるようにされる必要がある(図の図3から6)。
【0072】
この別の態様においては、制御カム24はさらに可用化カム作用段43を含む。そのカム作用段43は、一回量汲み上げカム作用段34より前にあり、カム作用溝または溝穴29の入り口末端32から一回量制御カム作用段34に向かって延びている。
【0073】
制御カム24の入り口末端32は、本体3が可用化位置にあって注射器1が使用可能にされる以前には、カム従動子25とともに長手方向に一列に並んでいる。このような方法で、本体3を係合させるためにケーシング2の前端7に向かって長手方向に移動させると、カム従動子25は、可用化カム作用段43に入り、それに沿って動かされる。ケーシング2に対する本体3の移動は、プランジャーの柄16に前方向に力を加えることによって引き起こされる。プランジャーのピストン15と注射器本体3の内表面20との間の摩擦を伴う係合ならびにプランジャーのピストン15と本体3の前端11間の接触によって本体3の移動を確実にする。
【0074】
カム24の可用化カム作用段43のカム作用表面27iは、注射器1の長軸Xに対してある角度で延びている。この方法によって、カム従動子25との係合により、本体3は強制的に長軸Xのまわりを回転させられる。カム24とカム従動子25間の相関移動の結果、カム従動子25は、カム作用溝または溝穴29の入り口末端32と整列した状態から動いて一回量引き入れカム作用段34の方向へ移動する。この移動は、図の図1および3に連続して示されている。
【0075】
図3に示されている使用可能位置において、プランジャーのピストン15は注射器3の前端11に近接している。可用化カム作用段43にあるカム24とカム従動子25間の相関移動を、プランジャーのピストン15がその位置にあるまで制限するために、制御カム24は、可用化カム作用段43の末端に隣接する他の戻り止め段44を含む。このように、上記の他の戻り止め段44は、可用化段43と一回量制御カム作用段34との間に配置されている。上記の他の戻り止め段44はカム作用表面27kを有し、前述の戻り止め段36、37、40と41と同様の全般的構成と機能を有する。
【0076】
図示されているように、カム作用溝または溝穴29は一般にジグザグ形態をしている。この形態では、制御カム24の複数の段は、戻り止め段36、37、40、41、44、カム作用段34、35,38,39、42,43として、溝または溝穴29の頂点の相反する側に配置されている。
【0077】
本体3の後方へ向かう長手方向の移動は、注射針13のケーシング2内への引き込みを起こし、プランジャー14の手動による逆移動によって達成することが出来る。そのためには、注射器1の使用者がプランジャーの柄16をつかんで後方に引けばよい。
【0078】
しかしながら、図示されているように、本体の使用不能化位置から使用不可能位置への移動は自動的に起こり得る。即ち、注射器1の使用後、使用者が単にプランジャーの柄16から前方への押す力を除けば、手動でプランジャーの柄16を後方に引かなくても本体3は自動的に後方に移動する。
【0079】
その本体の移動は、本体3に作用する付勢手段45によって引き起こされて、使用不能化位置にある場合、本体3を後方に滑らせて動かす。その付勢手段45は本体3とケーシング2の間に延びている。
【0080】
上記付勢手段45は弾力のある付勢部材46を含む。一つの形式において(図示されていない)、上記付勢部材46は本体3とケーシング2との間に延びてこれらに連結された弾力のある細長い断片またはバンドである。上記の細長い断片またはバンドは、本体3がその使用不能化位置にある場合は弾性をもって伸びて、注射器使用後、プランジャー14の解放に伴い、本体3を後方にその使用不可能位置へ引っぱり入れるように作用する。上記の細長い断片またはバンドは、後端8、12に、またはそれらに近接して注射器本体3及びケーシング2に連結することが出来る。
【0081】
もう一つの形式においては(図示されているように)、付勢部材46は本体3とケーシング2との間であって、それらの前端7、11に設置された圧縮バネ47である。上記バネ47は、本体3がその使用可能位置にある場合、及び、本体3がその使用不能化位置へと回転される間は圧縮されている。しかしながら、上記使用不能化位置においては、カム24とカム従動子25とは、もはや本体3を長手方向に逆らうように拘束することはせず、圧縮バネ47は本体3をケーシング2に沿ってその使用不可能位置へと付勢するように作用する。図示されているように、圧縮バネ47は螺旋状に巻かれたバネである。
【0082】
当然のことながら、付勢部材46はまた注射器1の使用中に作用して本体3をケーシング2の後端8の方向に付勢する。その付勢は、例えば一回量の液体を採取する間、本体3をケーシング2の前端7の方向に付勢するという具合に、プランジャー14に一定期間手で力を加えることで克服される。これらの軸方向に付勢する力の結果、カム従動子25とカム作用表面27a〜27k間の係合を引き起こし、それによって従動子25は引き続いて軸方向に整列される。これらの力は、また、カム作用段34、35、38、39、42、43において互いに係合している従動子25とカム24間に相関移動を引き起こし、順次、ケーシング2に対する本体3の指示された移動を達成する。上記の相互係合は、従動子25がカム作用溝または溝穴29の出口末端33と一直線に並ぶまで継続し、そこで、従動子25は、付勢部材46による付勢を受けて、上記溝または溝穴29から自由に解放されて本体3は使用不可能位置に移動する。
【0083】
引き込まれた針13はケーシング2の外への再延出を阻止されてもよい。針13の再延出を阻止することは、注射器1が、不注意な投棄によるような怪我の元になる可能性を最小限に止める。
【0084】
図示されてはいないが、針13の再延出は、ケーシングの前端7において、針13と連通穴9との軸方向にずらして設置することによって阻止してもよい。ずらす程度は、注射器1の使用中は、針13は連通穴9を通じて延出するが、一旦、ケーシング2内に引き込まれると、上記連通穴9とずれてプランジャー14に対して前方への力を加えても針13が連通穴9を抜けて戻ることが出来ないように選ぶ。事実、上記の力は針13の遊離先端をケーシングの前端7に押し付け、恐らくはその中に埋め込ませてしまい、針13の有用性を破壊する。
【0085】
別法として(図示されているように)、使用不可能位置にある場合、針13の再延出は、更なる前方への移動を阻止するように本体3に作用する固定手段49によって防止される。上記固定手段49は注射器本体3とケーシング2の間で作用する。
【0086】
上記固定手段49は、少なくとも一つの固定要素50を注射器本体3とケーシング2にそれぞれ有し、上記固定要素50は、本体が使用不可能位置内に移動した場合、互いに係合して本体3のさらなる移動を阻止する。
【0087】
上記固定要素50は固定用の歯状突起51である。それらの固定用の歯状突起51は、本体3及びケーシング2の後端8、12に、或いはそれらに近接して配置されている。単一の歯状突起51が本体3及びケーシング2に備えられてもよいが、一方、図示されているように、複数の歯状突起51がラチェット形成で本体3及びケーシング2のうち少なくとも一つに備えられてもよい。
【0088】
本発明の注射器はただ一回の適切な使用に限定されている。注射器の再使用は効果的に阻止されている。その上、その使用後、注射器は使用者によって、或いは、ある一形式においては自動的に容易に危険でなくされ得る。その結果、本注射器は再使用または誤用、或いは怪我によって病気の伝播を引き起こす可能性が低い。
【0089】
最後に、当然のことながら、本注射器には、本発明に付加された特許請求に規定されているように、その範囲から逸脱することなく種々の変更、改変、及び或いは付加をしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態に従った皮下注射器の斜視図であって、使用可能化位置にある一部断面の注射器を示す。
【図2】図1の注射器の本体の斜視図である。
【図3】図1の注射器の長手方向の横断側面図であって、使用可能位置に移動された注射器を示す。
【図4】注射器の一部を示す、図3に類似の側面図であるが、使用可能位置にある注射器と一回量の液体を保持する液室を示している。
【図5】図4に類似の側面図であるが、使用可能位置にある注射器と空気が注射針から排出されたことを示している。
【図6】図5に類似の側面図であるが、使用可能位置にある注射器と血液が静脈から注射針内に採取されたことを示している。
【図7】図6に類似の側面図であるが、液室から一回量が排出された後の注射器で、使用不能化位置にある注射器を示している。
【図8】一部断面の図1の注射器の斜視図であるが、使用不可能位置にある注射器を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器のケーシング、
前記ケーシング内にあって一回量の液体を保持するための液室を区画し、前記ケーシングに対して制御可能に移動出来る注射器本体、
前記注射器本体と共に移動するように前記注射器本体に連結され、前記注射器の使用を目的として前記ケーシングから延びている中空の針、
前記針を通じて前記本体液室内に液体を引き入れ、及び/または、前記本体液室から液体を排出するために前記本体内を往復移動可能なプランジャー、及び
前記針を通じて前記注射器が一回量の液体を引き入れ、及び/または、排出することを可能にする制御手段であって、前記ケーシングに対する前記注射器本体と針との移動によって前記注射器を使用不能にする制御手段を含む注射器。
【請求項2】
請求項1に記載の注射器であって、前記注射器本体は、前記注射器が一回量の液体を引き入れ及び/または排出することができる位置から前記注射器が使用不能にされて注射器の使用をさせないようにした位置まで、前記ケーシングに対して制御可能に移動することが出来、また前記制御手段は、前記使用可能位置から使用不可能位置への前記本体の制御された移動を遂行する注射器。
【請求項3】
請求項2に記載の注射器であって、前記注射器本体は、前記使用可能位置から使用不能になるように前記注射器が配置される使用不能化位置へ、次いで、前記使用不能化位置から前記使用不可能位置へ制御可能に移動することが出来、また、前記制御手段は、前記使用不能化位置を通る前記本体の制御可能な移動を遂行する注射器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の注射器であって、前記注射器のケーシング及び本体はそれぞれ細長く、かつ、前記注射器本体は前記注射器のケーシング内で軸方向に及び回転して滑動可能で、前記注射器本体は前記使用可能位置から前記使用不可能位置へ滑動する注射器。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一つに記載の注射器であって、前記注射器本体は、前記使用不可能位置へ向かって軸方向に滑動可能で、前記使用不可能位置への前記注射器本体の滑動により前記針を前記ケーシングに引き込み、それによって前記注射器を使用不能にする注射器。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一つに記載の注射器であって、前記制御手段は、前記注射器のケーシングに設けられた少なくとも一つの制御部材と、前記注射器本体に設けられた少なくとも一つの制御部材と、を含み、前記注射器のケーシングと前記本体の前記制御部材とが、注射器の使用中、互いに係合して前記本体の制御された移動を遂行する注射器。
【請求項7】
請求項6に記載の注射器であって、前記制御部材は、少なくとも一つの制御カム及び少なくとも一つのカム従動子を含み、前記カムとカム従動子が互いに係合して前記本体の制御された移動を遂行する注射器。
【請求項8】
請求項7に記載の注射器であって、前記カムは前記本体に設置され、また、前記カム従動子は前記ケーシングに設置される注射器。
【請求項9】
請求項7または8に記載の注射器であって、前記カム従動子は従動子ピンである注射器。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一つに記載の注射器であって、前記制御カムは細長く、前記カム従動子による係合が有効なようにそれに沿って延びる少なくとも一つの輪郭を持ったカム作用表面を持つ注射器。
【請求項11】
請求項9に従属する請求項10に記載の注射器であって、前記制御カムはカム従動子ピンを受け入れるためのカム作用溝または溝穴を含み、前記カム従動子ピンは前記カム作用溝または溝穴に沿って累進的に移動し、前記カム作用表面の輪郭に応じて前記注射器本体とケーシングと間の相関移動を引き起こす注射器。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一つに記載の注射器であって、単一のカム従動子が備えられ、前記単一のカム従動子は前記注射器のケーシングの内表面に設置されて概ねそこから内方に向かって延びている注射器。
【請求項13】
請求項12に記載の注射器であって、単一の制御カムが備えられ、前記単一の制御カムは前記注射器本体の外表面に設置され、前記単一のカム従動子と係合する間、従動子に対面する注射器。
【請求項14】
請求項7または13のいずれか一つに記載の注射器であって、前記制御カムはそれに沿って間隔をあけて配置されたカム作用段を含み、各段はそれぞれカム作用表面を持ち、その表面によって前記カム従動子は順次移動し、各カム作用段を通じて前記ケーシングに対する前記注射器本体の指示された移動を引き起こす注射器。
【請求項15】
請求項14に記載の注射器であって、前記カム作用段は、
a. 一回量引き入れカム作用段であって、その間で一回量の液体が前記本体の液室に引き入れられるもの、
b. 空気排出カム作用段であって、その間で空気が前記針から排出されるもの、
c. 採血カム作用段であって、その間で血液が静脈から前記針内に採取されるもの、及び、
d. 一回量排出カム作用段であって、その間で一回量の液体が前記本体の液室から排出されるもの、の一つ以上を含み、
各カム作用段の間のプランジャーの移動が、強制的に前記従動子をそれぞれのカム作用表面と係合させては順に次の表面に移動させ、それによって前記注射器本体を、前記注射器のケーシングに対して回転滑動させる注射器。
【請求項16】
請求項15に記載の注射器であって、前記カム作用段は、それらが備えられている場合、前記制御カムに沿って、
a. 一回量引き入れカム作用段、
b. 空気排出カム作用段、
c. 採血カム作用段、及び
d. 一回量排出カム作用段
の順に配置されている注射器。
【請求項17】
請求項14または16のいずれか一つに記載の注射器であって、前記制御カムは、前のカム作用段での前記カム従動子の移動を終了させ前記カム従動子を次のカム作用段へ向けるためにカム作用段のそれぞれの末端に隣接する戻り止め段を含む注射器。
【請求項18】
請求項17に記載の注射器であって、各戻り止め段はそれぞれのカム作用表面を持ち、これら戻り止め段におけるカム作用表面は、先行するカム作用段におけるカム作用表面に対してある角度で曲がっていて、前記カム従動子の移動方向を変え、各カム作用段を通じて前記注射器本体の指示された移動を引き起こす注射器。
【請求項19】
請求項2に従属する請求項14から18のいずれか一つに記載の注射器であって、前記制御カムは使用不能化カム作用段を含み、この段の間で、前記カム従動子とカムは係合を解いて前記注射器本体は使用不可能位置に移動する注射器。
【請求項20】
請求項10またはそれに従属するいずれかの請求項に従属する請求項19に記載の注射器であって、前記カム作用溝または溝穴が開放末端を有し、それを通じて前記従動子ピンが移動して前記カム作用溝または溝穴から出て、前記使用不可能位置に向かって前記注射器のケーシングに対して長手方向に滑動してそれにより前記針を前記ケーシングに引き込む前記注射器本体を解放する注射器。
【請求項21】
請求項19または20に記載の注射器であって、前記注射器本体に作用して、前記使用不能化位置にある前記本体を前記使用不可能位置に向けて滑るように動かす付勢手段を含む注射器。
【請求項22】
請求項21に記載の注射器であって、前記付勢手段が前記注射器のケーシングと本体の間に作用する弾力のある付勢バネを含み、前記本体を前記ケーシングに沿って使用不可能位置へ付勢する注射器。
【請求項23】
請求項14から22のいずれか一つに記載の注射器であって、前記注射器本体は、前記針が前記ケーシング内に引き込められて収納されている可用化位置から前記使用可能位置へ移動可能であり、また、前記制御カムは可用化カム作用段を含み、前記注射器本体の使用可能位置への移動が、前記カム従動子が前記カムと係合して前記可用化カム作用段のカム作用表面での移動を引き起こし、前記注射器本体は前記ケーシングに沿って滑動して前記注射器の使用のために前記針を前記ケーシングから突出させる注射器。
【請求項24】
請求項11またはそれに従属するいずれかの請求項に従属する請求項23に記載の注射器であって、前記カム作用溝または溝穴が開口末端を有し、それを通じて前記カム従動子のピンが移動して前記カム作用溝または溝穴に入って、前記可用化カム作用段のカム作用表面と係合する注射器。
【請求項25】
請求項11またはそれに従属するいずれかの請求項に記載の注射器であって、前記カム作用溝または溝穴は概ねジグザグ形態をしており、前記制御カムの前記カム作用及び戻り止め段が前記カム作用溝または溝穴の頂点の反対側に配置されている注射器。
【請求項26】
請求項2から25のいずれか一つに記載の注射器であって、前記注射器のケーシングは連通穴を含み、それを通じて前記針が前記注射器の使用中に外に延び、前記連通穴は、前記針から分かれていて、前記針が前記ケーシング内に使用不可能位置まで引き入れられる場合、引き入れられた前記針は前記連通穴とずれて前記針が前記ケーシングから再び延出することを阻止する注射器。
【請求項27】
請求項2から26のいずれか一つに記載の注射器であって、使用不可能位置にある場合、前記本体に作用して前記ケーシングに対するその爾後の移動を阻止する固定手段を含む注射器。
【請求項28】
請求項27に記載の注射器であって、前記固定手段は、前記注射器の本体及びケーシングそれぞれに設けられる少なくとも一つの固定要素を含み、前記固定要素は、前記注射器本体が前記使用不可能位置に移動する場合、互いに係合して前記注射器本体のさらなる移動を阻止する注射器。
【請求項29】
付帯図に示されている注射器を参照して実質的に前文に記載された注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−523107(P2006−523107A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503973(P2006−503973)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000364
【国際公開番号】WO2004/084979
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505357915)
【Fターム(参考)】