皮下用心臓デバイス
心臓デバイスは、ハウジングと、ハウジング内に設けられた検出回路及びエネルギー送出回路を含む。1つ以上の皮下の非胸腔内電極をエネルギー送出回路及び検出回路に結合することができる。リードインターフェースがハウジング上に設けられており、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。リードインターフェースは、1つ以上の胸腔内リード電極を含む少なくとも1つのリードを受け入れるように構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、リードインターフェース、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。このシステムは、リードが存在しない状態で皮下電極を用いる第1の構成や、リード電極のうちの少なくとも1つ以上を用いる第2の構成など、多数の構成で作動可能である。このような構成は、心臓活動モニタ/記録構成及び心臓刺激治療構成を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して植込み型医療用具に関し、より詳細には、複数の作動構成を提供する心臓に関連した方法及びシステムとその再構成やアップグレード(高度化)に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な心臓は、規則的で同期した収縮を生じる。通常、心臓の律動収縮は、右心房の上部に位置する特殊化した細胞の集まりである洞房(SA)結節によって制御される。SA結節は典型的な心臓のペースメーカーであり、一般に60乃至100/分の心拍を生じる。SA結節が心臓のペースを正常に整えているとき、心臓は正常洞調律の状態にあると言われる。
【0003】
心臓の電気的な活動が調整されていなかったり不規則である場合は、心臓が律動的でないことを示している。心不整脈は、心臓の効率を低下させるとともに、生命に危険を及ぼす場合がある。心不整脈には多数の病因があり、これらの病因には、心筋梗塞・感染症による組織損傷や、収縮を調整する電気刺激の生成又は同期を行う心臓の能力の低下が含まれる。
【0004】
心拍があまりにも遅いと徐脈が生じる。この状態は、例えば、SA結節の機能障害、洞機能不全症候群の徴候、又は心房と心室との間の電気刺激の伝達の遅れや遮断によって生じうる。徐脈は、十分な循環を維持できないほど遅い心拍数を生じる。
【0005】
心拍数があまりにも速い場合、この状態は頻脈であることを示している。頻脈は、心房や心室を起源とする可能性がある。例えば、心房で生じる頻脈は心房細動と心房粗動を含む。これら双方の状態は、心房の急激な収縮によって特徴づけられる。心房の急激な収縮は、血行力学的に非効率的であるうえ、心拍数にも悪影響を及ぼしうる。
【0006】
例えば、心室の心筋において電気的な活動が正常洞調律よりも速い速度で生じると、心室頻脈が起こる。心室頻脈は急速に悪化して心室細動になる場合がある。心室細動は、電気的な活動が心室組織内で極めて急速に、調整されずに生じることによって現れる状態である。心室組織の急速で不規則な刺激によって同期収縮が阻まれ、血液を身体に効果的に送り出す心臓の能力が低下する。これは、心臓が2、3分以内に洞律動に戻されない限り生命にかかわる状態である。
【0007】
植込み型の心調律管理システムが、重症の不整脈患者への効果的な治療法として使用されている。これらのシステムは一般に1つ以上のリードと回路を含み、心臓の1つ以上の内側表面や外側表面からの信号を検出する。また、このようなシステムは、心臓の1つ以上の内側表面や外側表面で心臓組織に印加される電気パルスを生成する回路を含む。例えば、患者の心臓内に延びたリードが電極に接続されており、電極は心筋と接触して心臓の電気信号を検出し、種々の不整脈治療法に従ってパルスを心臓に送る。
【0008】
典型的な植込み型除細動器(ICD)は、少なくとも1つの除細動電極に接続された1つ以上の心内膜リードを含む。このようなICDは、高エネルギーのショックを心臓に送り、心室頻脈又は心室細動を止め、心臓の正常洞調律を回復させることができる。ICDはペーシング機能を含むこともできる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0230229号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0004615号
【特許文献3】米国特許第5,313,953号
【特許文献4】米国特許第5,388,578号
【特許文献5】米国特許第5,411,031号
【特許文献6】米国特許第4,562,841号
【特許文献7】米国特許第5,036,849号
【特許文献8】米国特許第5,284,136号
【特許文献9】米国特許第5,376,106号
【特許文献10】米国特許第5,540,727号
【特許文献11】米国特許第5,836,987号
【特許文献12】米国特許第6,044,298号
【特許文献13】米国特許第6,055,454号
【特許文献14】米国特許第5,331,966号
【特許文献15】米国特許第5,133,353号
【特許文献16】米国特許第5,179,945号
【特許文献17】米国特許第5,314,459号
【特許文献18】米国特許第5,318,597号
【特許文献19】米国特許第5,620,466号
【特許文献20】米国特許第5,662,688号
【特許文献21】米国特許出願公開第2002/0107544号
【特許文献22】米国特許出願公開第2002/0107548号
【特許文献23】米国特許出願公開第2003/0130702号
【特許文献24】米国特許第6,411,848号
【特許文献25】米国特許第6,285,907号
【特許文献26】米国特許第4,928,688号
【特許文献27】米国特許第6,459,929号
【特許文献28】米国特許第5,334,222号
【特許文献29】米国特許第6,026,320号
【特許文献30】米国特許第6,371,922号
【特許文献31】米国特許第6,597,951号
【特許文献32】米国特許第6,424,865号
【特許文献33】米国特許第6,542,775号
【特許文献34】米国特許第6,353,759号
【特許文献35】米国特許第6,351,669号
【特許文献36】米国特許出願公開第2005/0119708号
【特許文献37】米国特許出願公開第2004/0230128号
【特許文献38】米国特許第5,301,677号
【特許文献39】米国特許第6,438,410号
【特許文献40】米国特許第6,708,058号
【特許文献41】米国特許第6,487,443号
【特許文献42】米国特許第6,259,947号
【特許文献43】米国特許第6,141,581号
【特許文献44】米国特許第5,855,593号
【特許文献45】米国特許第5,545,186号
【特許文献46】米国特許出願公開第2004/0230129号
【特許文献47】米国特許第5,372,606号
【特許文献48】米国特許第5,411,525号
【特許文献49】米国特許第5,468,254号
【特許文献50】米国特許第5,634,938号
【特許文献51】米国特許出願公開第2004/0172066号
【特許文献52】米国特許第5,203,348号
【特許文献53】米国特許第5,230,337号
【特許文献54】米国特許第5,360,442号
【特許文献55】米国特許第5,366,496号
【特許文献56】米国特許第5,397,342号
【特許文献57】米国特許第5,391,200号
【特許文献58】米国特許第5,545,202号
【特許文献59】米国特許第5,603,732号
【特許文献60】米国特許第5,916,243号
【特許文献61】米国特許第5,300,106号
【特許文献62】米国特許出願公開第2005/0131476号
【特許文献63】米国特許出願公開第2005/0131477号
【特許文献64】米国特許出願公開第2005/0131478号
【特許文献65】米国特許第5,683,431号
【特許文献66】米国特許第6,341,235号
【特許文献67】米国特許第6,411,845号
【特許文献68】米国特許第5,797,967号
【特許文献69】米国特許出願公開第2004/0111040号
【特許文献70】米国特許出願公開第2005/0039745号
【特許文献71】米国特許出願公開第2005/0043644号
【特許文献72】米国特許出願公開第2005/0043772号
【特許文献73】米国特許出願公開第2004/0111041号
【特許文献74】米国特許出願公開第2005/0043652号
【特許文献75】米国特許出願公開第2005/0042589号
【特許文献76】米国特許出願公開第2004/0073093号
【特許文献77】米国特許第5,964,788号
【特許文献78】米国特許第6,221,011号
【特許文献79】米国特許第6,270,457号
【特許文献80】米国特許第6,277,072号
【特許文献81】米国特許第6,280,380号
【特許文献82】米国特許第6,312,378号
【特許文献83】米国特許第6,336,903号
【特許文献84】米国特許第6,358,203号
【特許文献85】米国特許第6,368,284号
【特許文献86】米国特許第6,398,728号
【特許文献87】米国特許第6,440,066号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数の作動構成をサポートし、強化された能力をもたらすように再構成可能な心臓システム及び方法に関する。一部のシステム構成は、心臓システムと接続するために1つ以上の植込み可能なリード、モジュール又はセンサの追加を必要とする場合があるが、本発明による心臓システムの再構成は、心臓システムの外植や交換を行わずになされることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の心臓デバイスは、個々に作動するが統合された2つ以上のシステム構成で作動するように実施されることが好ましい。2つ以上のシステム構成は、他のシステム構成から独立して作動してもよいし、他のシステム構成と組み合わせて作動してもよい。概して、本発明による心臓デバイスは、第1の構成では所定の態様で機能することができ、更に、他の構成が使用可能になった際には他の構成で強化された態様で機能することができる。心臓デバイスは、選択された構成を用いて作動してもよいし、連続的な作動構成、段階的な作動構成、又は同時に作動する構成のうち2つ以上を用いて作動してもよい。
【0011】
本発明の1つの実施の形態において、心臓デバイスは、第1及び第2の電極が結合されたハウジングを含む。心臓デバイスは、心臓感知回路及びエネルギー送出回路を含む。デバイスがモニタ構成で作動される際、第1及び第2の電極を心臓活動感知のために構成することができる。エネルギー送出回路を第1及び第2の電極に結合することができ、第1及び第2の電極は、デバイスがエネルギー送出構成で作動される際、心臓活動及びエネルギー送出のために構成することができる。
【0012】
本発明の他の実施の形態において、心臓デバイスは、第1及び第2の電極が結合されたハウジングを含む。心臓デバイスは、心臓感知回路及びエネルギー送出回路を含む。デバイスが第1の構成で作動される際、第1及び第2の電極を心臓活動感知及びエネルギー送出のために構成することができる。デバイスが第1の構成とは異なる第2の構成で作動される際、第1及び第2の電極を心臓活動感知及びエネルギー送出のために構成することができる。
【0013】
実施の形態によっては、心臓デバイスは、複数の構成での心臓の感知及び/又はエネルギー送出を容易にするリード構成を含むように実施される。典型的なリード構成は、胸腔内の電極構成と、皮下で非胸腔内の電極構成とを含む。これらの電極構成を心臓デバイスによって選択的に使用し、第1、第2、第3又は他の構成での動作を行うことができる。
【0014】
他の実施の形態において、心臓デバイスは、複数の構成での心臓の感知及び/又はエネルギー送出を容易にするリード構成を含むように実施される。心臓デバイスのリードインターフェースが、リード構成の植込み後の変更を容易にするように実施される。リードインターフェースは、リード構成の植込み後の結合や減結合を可能にし、患者の状態が時間と共に変化又は進行した場合に強化した機能や異なる機能(例えば、アップグレード又はダウングレードした機能)を可能にするように実施される。典型的なリード構成は、胸腔内の電極構成と、皮下で非胸腔内の電極構成とを含む。これらの電極構成を心臓デバイスによって選択的に使用し、第1、第2、第3又は他の構成での動作を行うことができる。
【0015】
実施の形態によっては、ハウジング内に設けられたコントローラがエネルギー送出回路及び検出回路に結合される。コントローラは、皮下の電極のみか又は少なくとも皮下の電極を用いた第1の構成で作動し、リード電極のみか又は少なくともリード電極を用いた第2の構成で作動するようにシステムを構成する。コントローラは、第1の構成と第2の構成を選択的に切り換えることができ、第1の構成及び第2の構成に関連する構成要素及び回路を選択的に使用可能・使用不可にすることができる。例えば、第1の構成は経胸構成を定めることができ、第2の構成は胸腔内の構成を定めることができる。コントローラは、これらの構成を選択的に使用可能・使用不可にすることができ、経胸及び胸腔内の構成要素と回路の組み合わせを用いて作動するようにシステムを構成することができる。
【0016】
他の実施の形態によると、システムは、リード電極のみか又は少なくともリード電極を用いた標準治療構成と、皮下の電極のみか又は少なくとも皮下の電極を用いた代わりの構成又はテスト構成とで作動するようにコントローラによって構成可能である。標準治療システム構成及び代わりのシステム構成の各々は、独立して又は協働で心臓活動の検出及び刺激の提供をすることができる。
【0017】
1つの実施の形態において、複数システムデバイスの第1のシステムは標準治療システムとして構成される。複数システムデバイスの第2のシステムはモニタシステムとして構成される。モニタシステムは、標準治療システムの性能をモニタする。例えば、第1又は第2のシステムを胸腔内システムとし、第1及び第2のシステムのうちのもう一方を経胸システムとすることができる。
【0018】
更なる実施の形態に従うと、前述のシステムのコントローラは、第1及び第2の構成の各々で作動する際に特定の機能を行い、第1及び第2の構成の各々で作動する際に特定の機能の性能に関連する性能データを取得するようにシステムを構成する。例えば、評価の対象となる特定の機能を、徐脈及び頻脈の感知に関連する機能、頻脈性不整脈の検出もしくは治療に関連する機能、刺激波形の生成及び送出のうち一方もしくは両方に関連する機能、又はリードシステム及び皮下電極のうちの一方もしくは両方の構成に関連する機能とすることができる。評価の対象となる特定の機能は、例えば、心拍数に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第1のサブ機能と、形態に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第2のサブ機能を含むこともできる。
【0019】
本発明の他の実施の形態によると、心臓を感知し、刺激する方法は、第1の構成で心臓活動を経胸的に感知することと、第1の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、経胸的に又は胸腔内に心臓刺激治療を供給することを含む。この方法は、第2の構成で心臓活動を胸腔内で感知することと、第2の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、経胸的に又は胸腔内に心臓刺激治療を供給することも含む。この方法は、第1及び第2の構成を選択的に使用可能・使用不可にすることを更に含む。
【0020】
他のアプローチでは、心臓活動が第1の構成で経胸的に又は胸腔内で感知され、第1の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が経胸的に供給される。このアプローチに加え、心臓活動が第2の構成で胸腔内で又は経胸的に感知され、第2の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が胸腔内に供給される。
【0021】
更なるアプローチによると、心臓活動が第1の構成で経胸的に感知され、第1の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が経胸的に又は胸腔内に供給される。心臓活動が第2の構成で胸腔内で感知され、第2の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が胸腔内に又は経胸的に供給される。第1及び第2の構成の各々で作動する際に特定の機能が行われる。第1及び第2の構成の各々で作動する際の特定の機能の性能に関連する性能データが、後に続く評価のために取得される。
【0022】
実施の形態によっては、リードインターフェースをハウジングに結合でき、心臓リードを受け入れるように構成することができる。コントローラが、リードインターフェース、メモリ即ち記録回路、及びエネルギー送出回路に結合されており、コントローラは、心臓リード又はモジュールのリードインターフェースへの結合に少なくとも部分的に応答し、デバイスの動作をモニタ構成(例えば、ループ記録構成)からエネルギー送出構成に移行させる。
【0023】
心臓デバイスは、リード又はモジュールをデバイスのハウジングに接続するように構成されたヘッダを含むことができる。ヘッダはスイッチ構成を含み、1つ以上のリード又はモジュールのヘッダへの接続に少なくとも部分的に応答して、モニタ構成と治療構成との間のデバイスの移行を行うことができる。心臓デバイスの作動構成間の切換は、ハードウェアスイッチ、ソフトウェアスイッチ、ソフトウェアアップグレードもしくはスワップ、又は他の切換アプローチを用いて行うことができる。心臓デバイスを、心内膜リード、心外膜リード、皮下リード、センサもしくは電極モジュール及びアレイ、ならびに/又は他のリードやセンサと共に使用することができる。
【0024】
他の実施の形態に従うと、心臓デバイスは、ハウジングと、ハウジング内に設けられた検出回路及びエネルギー送出回路とを含む。患者の皮下で非胸腔内に配置するように構成された1つ以上の皮下電極が、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。リードインターフェースがハウジング上に設けられており、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。リードインターフェースは1つ以上のリード電極を含む少なくとも1つのリードを収容するように構成されており、この1つ以上のリード電極は患者の胸腔内に配置するように構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、リードインターフェース、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。このシステムは、第1の構成ではリードが存在しない状態で皮下電極を用いて作動可能であり、第2の構成では少なくとも1つ以上のリード電極を用いて作動可能である。システムは、第1及び第2のシステム構成の各々において心臓活動の感知及び検出をそれぞれ提供することができる。
【0025】
システムは、特定の作動構成により、皮下電極のみ、リード電極のみ、又は皮下電極及びリード電極のうち選択されたものを用いて作動するように構成可能である。缶形電極(can electrode)をハウジングの上又は中に設けることができ、システムは第1及び第2の構成のうちの一方又は両方において缶形電極を用いるように構成可能である。1つの実施態様では、第2の構成において単極構成を選択し、リード電極及び皮下電極のうち選択されたものを用いて感知、ペーシング及びショックのうち1つ以上を行うことができる。
【0026】
システムは切換マトリックスを更に含むことができ、切換マトリックスは検出回路、エネルギー送出回路及び皮下電極に結合されており、また、リードインターフェースを介してリード電極に結合されている。コントローラは、リード電極及び皮下電極のうち選択されたものを検出回路及びエネルギー送出回路の選択された入力又は出力に結合するように切換マトリックスを構成することができる。例えば、コントローラは、リード電極及び皮下電極のうち選択されたものを検出回路及びエネルギー送出回路の入出力と結合するように切換マトリックスを構成し、捕捉閾値の決定を行うことができる。
【0027】
コントローラは、例えば、患者の体外の信号源から受信した信号、所定の状態、所定の心調律、不整脈、不整脈の検出の失敗や不整脈の治療、所定期間の終了又は定期的な疾患の発現に応答して、第1及び第2の構成のうちの一方で選択的に作動するようにシステムを構成することができる。コントローラは、第1及び第2の構成で同時に作動するようにシステムを構成してもよいし、第1及び第2の構成間で動作を切り換え、第1及び第2の構成の各々を用いて心調律の検出や不整脈の治療を行うようにシステムを構成してもよい。
【0028】
他の実施の形態に従うと、本発明の方法は、第1の構成及び第2の構成で作動可能な植込み型心臓刺激デバイスを提供することを含む。第1の構成での動作は、患者の皮下及び非胸腔内に配置するように構成され、心臓活動を感知して心臓刺激治療を供給する1つ以上の皮下電極の使用を含む。第2の構成での動作は、心臓活動を感知して心臓刺激治療を供給する少なくとも1つのリードの使用を含み、リードは、患者の胸腔内に配置するように構成された1つ以上のリード電極を含む。この方法は、リードが存在しない状態で心臓刺激デバイスを第1の構成で作動させることと、リードを心臓刺激デバイスに結合することによって心臓刺激デバイスの第2の構成での動作を少なくとも部分的に可能にすることを更に含む。
【0029】
第1及び第2の構成は、1つ以上のカルディオバージョン/除細動モード又はペーシングモードをサポートすることができる。例えば、第1又は第2の構成のうちの一方はペーシングモードをサポートすることができ、第1及び第2の構成のうちの他方はカルディオバージョン/除細動モードをサポートすることができる。
【0030】
この方法は、同時の動作のために第1及び第2の構成を使用可能にすることや、不整脈のときのような連続的又は段階的な動作のために第1及び第2の構成を選択的に使用可能・使用不可にすることを含むこともできる。
【0031】
この方法は、第1及び第2の構成の各々で作動する際に性能情報を取得することを更に含んでもよい。この性能情報を用いて比較データを生成することができる。比較データは、第1及び第2の構成のうちの一方で作動する際の性能を第1及び第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含むことができる。
【0032】
1つの実施の形態では、心臓刺激デバイスは、主要作動構成として第1及び第2の構成のうちの一方で作動し、主要作動構成での作動中に検出された性能の異常に応答して第1及び第2の構成のうちの他方で作動することができる。他の実施の形態では、第1及び第2の構成のうちの一方で作動している間に第1の機能を行い、第1及び第2の構成のうちの他方で作動している間に第2の機能を行うことができ、第1の機能の性能は第2の機能の性能を強化する。例えば、第1の機能は、不整脈を組織化する(instill organization in an arrhythmia)第1のエネルギー送出機能を含むことができ、第2の機能は、不整脈を終了させる第2のエネルギー送出機能を含むことができる。
【0033】
本発明の他の実施の形態に従うと、植込み型システムは、ハウジングと、ハウジング内に設けられたエネルギー送出回路及び検出回路と、ハウジング内に設けられた切換マトリックスを含む。切換マトリックスは検出回路及びエネルギー送出回路に結合されており、第1及び第2の電極接続構成を含む。第1の電極接続構成は、1つ以上の皮下で非胸腔内の電極と結合するよう構成されており、第2の電極接続構成は、1つ以上の胸腔内の電極と結合するよう構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、切換マトリックス、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。コントローラは、第1の電極接続構成のみを使用可能にすることによって第1の構成で作動し、少なくとも第2の電極接続構成を使用可能にすることによって第2の構成で作動するようにシステムを構成する。
【0034】
この実施の形態によると、第1又は第2の構成は心臓活動のモニタのみの構成を含む。他の実施態様では、第1又は第2の構成は心臓エネルギー送出構成を含む。更なる実施態様では、第1及び第2の構成の各々は心臓のモニタ及びエネルギー送出構成を含む。
【0035】
更なる実施の形態に従うと、植込み型システムは、ハウジングと、ハウジング内に設けられた検出回路及びエネルギー送出回路と、ハウジング上に設けられ、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されたインターフェースを含む。インターフェースは、少なくとも1つの胸腔内電極構成と、少なくとも1つの皮下で非胸腔内の電極構成を収容するように構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、インターフェース、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。このシステムは、皮下・非胸腔内電極構成のみを用いた第1の構成で作動し、胸腔内電極構成のみを用いた第2の構成で作動し、非胸腔内及び胸腔内の電極構成を用いた第3の構成で作動することができる。このシステムは、第1、第2及び第3のシステム構成の各々で心臓活動の感知及び刺激をそれぞれ提供することができる。
【0036】
この実施の形態によると、システムは、胸腔内電極構成とインターフェースとの間を接続せずに第1の構成のみで作動できる。胸腔内電極構成をインターフェースに結合することにより、システムは第2の構成又は第3の構成で作動可能になる。システムは、皮下・非胸腔内電極構成とインターフェースとの間を接続せずに、第2の構成のみで作動することができる。皮下・非胸腔内電極構成をインターフェースに結合することにより、システムは第1の構成又は第3の構成で作動可能になる。
【0037】
更に他の実施の形態に従って、心臓の感知及び刺激方法は、第1の構成、第2の構成及び第3の構成で作動可能な植込み型心臓刺激システムを提供することを含む。第1の構成は皮下・非胸腔内電極構成のみを使用し、第2の構成は胸腔内の電極構成のみを使用し、第3の構成は非胸腔内及び胸腔内の電極構成を使用する。このシステムは、第1、第2及び第3のシステム構成の各々で心臓活動の感知及び刺激をそれぞれ提供することができる。
【0038】
この実施の形態によると、この方法は、胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続せず、皮下・非胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続した第1の構成のみで作動する心臓刺激システムを使用可能にすることを含む。この方法は、皮下・非胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続せず、胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続した第2の構成のみで作動する心臓刺激システムを使用可能にすることも含む。この方法は、心臓刺激デバイスと皮下・非胸腔内電極構成及び胸腔内電極構成の各々との間を接続した第1、第2又は第3の構成で作動する心臓刺激システムを使用可能にすることを更に含む。
【0039】
更に他のアプローチでは、心臓刺激デバイスは、少なくとも1つの皮下・非胸腔内電極を用いるなど、電極のうち少なくとも2つを用いて経胸インピーダンスの測定を容易にすることができる。心臓刺激デバイスは、経胸インピーダンスを用いて呼吸の障害を検出することができる。心臓刺激デバイスは呼吸の障害を治療することもできる。
【0040】
本発明の前述の概要は、本発明の各実施形態や全ての実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び請求の範囲を参照することにより、本発明の利点及び達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は種々の変更物や代わりの形態を生じうるが、本発明の詳細を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、本発明を記載される特定の実施の形態に限定する意図ではないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に入る変更物、同等物及び代替物を全て含むように意図される。
【0042】
例示する実施の形態の下記の説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの図面には、本発明を実施することのできる種々の実施の形態が例として示されている。他の実施の形態を用いてもよく、構造上及び機能上の変更が本発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能であることが理解されよう。
【0043】
本発明の原理に従って実施される植込み型心臓デバイスは、後述する特徴、構造、方法又はこれらの組み合わせのうち1つ以上を含むことができる。例えば、心臓の刺激装置やモニタを、後述する有利な特徴や処理のうちの1つ以上を含むように実施することができる。このような刺激装置、モニタ又は他の植込み型デバイスや部分植込み型デバイスは、本明細書に記載の特徴の全てを含む必要はなく、有用な構造や機能を提供する選択された特徴を含んで実施できるように意図される。
【0044】
植込み型心臓デバイスと呼ばれるデバイスの一つが、種々の有利な特徴や処理を含んで本明細書に記載されている。本発明による心臓デバイスの文脈中の特徴及び処理の記載は限定されない例示の目的で設けられているにすぎず、植込み型及び非植込み型デバイスを含む他のタイプのデバイスにおいてこのような特徴及び処理を実施できることが理解される。例えば、本明細書に記載の特徴及び処理を、心臓モニタ、ペースメーカー、除細動器、再同期装置など(本明細書に援用される種々の特許に開示されるデバイスを含む)において実施することができる。本明細書に記載の特徴及び処理を、経静脈、心内膜、心外膜、皮下もしくは表層の電極のうち1つ以上を使用するデバイス構成、又はこれらの電極の組み合わせを用いたデバイスにおいて実施できることが更に理解される。
【0045】
一般に、本発明の心臓デバイスは2つ以上のシステム構成で作動するように実施可能であり、各システム構成を選択的に使用可能・使用不可にすることができる。一般に、所与のシステム構成を使用可能・使用不可にすることは、他の要因のなかでも、患者のニーズ、患者の状態の進行具合、医師の選択した治療法やこのような治療法の変更、治療法の変更を必要とする状態、デバイスソフトウェアの改変やアップグレード(例えば、改良された又は新しい治療ソフトウェア)又はリード構成やその変更と相関関係にある。また、所与のシステム構成を使用可能・使用不可にすることにより、1つ以上のテスト構成(例えば、純粋に皮下の構成)の評価及び/又は臨床研究が容易になると同時に、第2の標準治療構成を提供することが可能になる。本発明の心臓システムの再構成は、心臓システムの外植や交換を行わずになされることが好ましい。ある実施の形態では、本発明の心臓システムの再構成は、植え込まれたデバイスのハウジングの外植や交換を行わずに、後から植え込まれるリード、モジュール又はセンサとの植込み後接続を含むことができる。
【0046】
本発明の心臓デバイスとは、第1の構成において所定の態様で機能し、更に、他の構成が使用可能になった場合は他の構成で強化された態様で機能することのできるデバイスである。例えば、初めは心臓モニタデバイスとして機能するが、後に心臓刺激デバイスとして機能するために行う心臓デバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むよう、心臓デバイスを実施することができる。更なる例として、初めは経静脈、心外膜又は心内膜モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するが、後に皮下・経胸モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するために行うデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むよう、心臓デバイスを実施することができる。更に別の例では、初めは皮下・経胸モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するが、後に経静脈、心外膜又は心内膜モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するために行うデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むよう、本発明の心臓デバイスを実施することができる。
【0047】
一部の実施の形態では、本発明の心臓デバイスは種々の構成のうち選択された1つの構成で作動でき、1つ以上の他の構成は使用不可のままか未使用のままである。他の実施の態様では、心臓デバイスは、2つ以上の構成で同時に又は段階的に作動することができる。例えば、皮下・経胸モニタデバイス又は刺激デバイスとして、また、経静脈、心外膜又は心内膜のモニタ又は刺激デバイスとして選択的、連続的又は同時に機能するように本発明の心臓デバイスを実施することができる。
【0048】
心臓刺激治療を提供する前に、診断のために心臓のモニタを提供することが望まれる場合、本発明の実施の形態による心臓デバイスを有益に用いることができる。例えば、本発明の再構成可能なアプローチにより、純粋なモニタ及び診断システム構成から、心臓の治療を要する状態に進行した患者やこのような状態であると診断された患者を対象とする治療供給システム構成にデバイスをアップグレードすることができる。このようなアップグレード能力を提供する例示的なデバイス及び機能は、同一出願人による同時係属の米国特許出願番号10/462,001号(公開番号2004/0230229)(2003年6月13日出願)及び10/785,431号(公開番号2005/0004615)(2004年2月24日出願)に開示されている。これらは本明細書に援用され、これらの態様を本発明の実施の形態に組み込むことができる。
【0049】
本発明の心臓デバイスは、当該技術分野で公知の心臓モニタによって従来から提供されている機能を実施し、再構成の後に心臓治療を提供することができる。例示的な心臓モニタ回路、構造及び機能(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスに組込可能である)は、同一出願人による米国特許第5,313,953号、第5,388,578号及び第5,411,031号に開示されており、これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0050】
他の実施の形態に従うと、独立して作動するが統合されている少なくとも2つの心臓刺激構成をサポートするように、本発明の心臓デバイスを実施することができる。これらのシステム構成の各々は、感知能力、検出能力、診断能力及び治療能力を含んでもよいが、システム構成のうちの1つ以上は、感知能力のみ又はモニタ能力のみなど、さほど高度でない実施の態様で最小の能力を提供してもよい。
【0051】
1つの実施の形態によると、(1つ以上の経静脈、心内膜及び/又は心外膜電極を含むことができる)従来の経静脈ベースの電極構成に従って心臓デバイスを実施することができ、心臓デバイスの第2のシステム構成を皮下のみのシステムとして実施することができる。あるいは、一方のシステム構成を標準治療システム構成として実施し、他方をテストシステム構成として実施することができる。本発明の心臓デバイスは、独立して作動するが統合されている3つ以上の心臓モニタ及び/又は刺激システム構成を含むように実施可能であることが理解される。
【0052】
心臓デバイスのシステム構成は、同時(並行して)、段階的(例えば、同一の不整脈の発現において)又は連続的に作動することができる。心臓デバイスは、例えば、所定の態様で従来の構成又はモードと皮下の構成又はモードを交互に行うことができる。例えば、心臓デバイスは、N回の不整脈の発現に対しては従来の構成で作動し、M回の不整脈の発現に対しては皮下の構成に切り換えることができる(ここでNはMに等しくてもよいし異なっていてもよい)。このような構成及びモードの切換は、システムプログラミングに従って、又はプログラマなどの外部デバイスにより生成された指令信号に応答して決定可能である。
【0053】
従来の、即ち広く承認された心調律管理(CRM)の利点を保持しながら検出及び治療の新しい代替物を捜し求めることが要求される場合、本発明の心臓デバイスを有益に用いることができる。例えば、本発明の心臓デバイスによって、更なる共存症を起こした患者への治療をアップグレードすることができ、新規な心臓管理技術を迅速に開発することができる。本発明の心臓デバイスは、確立されたシステム構成が提供する安全性や有効性を犠牲にせずに、新しいシステム構成の実現可能性を証明することもできる。例えば、従来のCRMをサポートする一方で、心臓デバイスを用いて皮下除細動技術の開発や導入を容易にすることができる。
【0054】
本発明の心臓デバイスは、例えば、新しいシステムのデータ対確立したシステムのデータ(対データ)の直接比較を行うための基盤を提供することができる。心臓デバイスの共同システム構成は、例えば、主要なシステム構成の性能を向上させる補足データを提供することができる(例えば、皮下リードからの遠距離場信号は律動診断を改善することができる)。特に、心臓デバイスは、研究開発のためのさまざまな方法や、製品の設計、実施、そして最終的には患者の体内での使用において、データ収集及びこのようなデータの比較を(心臓デバイス又は外部処理システムによって)容易にすることができる。
【0055】
本発明の心臓デバイスは、慢性的な通院環境下の患者から重要なデータを取得できるようにすることによって、とりわけ皮下の心調律管理システムの開発の促進に好適である。本発明の心臓デバイスは、市場で認可されている既存の技術の安全性を用いて実験データを収集する。このような心臓デバイスにより、対データの収集に有益な技術である交差研究の設計において新しい技術と既存の技術との比較を行うこともできる。心臓デバイスの植込み手順は、植込みに関連するリード、供給システム及び外科的処置の経験に加えて、詳しい感知/検出データ及び/又は治療データを取得する機会をもたらす。心臓デバイスは、電源の状態、治療供給履歴及び/又は患者の状態の診断など、種々の患者・システム診断データを取得することもできる。
【0056】
心臓デバイスのある実施態様に従って経胸感知能力及び/又は刺激能力を追加することにより、従来の心調律管理デバイスの機能を大幅に強化することができる。例として、心臓再同期療法除細動器(CRT−D)は、左右の心室又は左心室のみに電気刺激を提供して心室収縮を同期させることにより、心臓再同期療法を心不全の治療に提供することができる。また、このようなデバイスは心室頻脈の治療を提供し、心室頻脈(VT)、心室細動(VF)及び突然の心臓死(SCD)に関連した律動を治療する。本発明の心臓デバイスは、CRT−D回路を含むように構成可能であり、皮下の感知リードを含むように変更可能である。皮下の感知リードは、例えばCRT−D回路の左心室及び/又は右心房感知チャネル(又は他のチャネル)に接続可能である。皮下の心電図を必要に応じて記憶し、遠隔測定するように、この心臓デバイスを更に変更することもできる。残りの機能は、経静脈リードを用いて通常のICD−VR動作を提供することができる。他のアプローチでは、心臓デバイスは、高度な心房不整脈管理を更に提供する植込み型除細動器(ICD)回路を含むように構成可能である。このような心臓デバイスは、心臓の心房及び心室での異常な心拍数を管理するように設計された特徴を含むことができる。
【0057】
他の実施態様に従って、ICD回路を組み込んだ心臓デバイスは、皮下の感知・検出アルゴリズムと、このようなアルゴリズムを製造後に修正する能力を含むように強化可能である。このような心臓デバイスは、例えば並行構成又はモードで作動させながら皮下の感知・検出の有効性と従来の感知・検出の有効性を比較するようにプログラム可能である。皮下の感知/検出又は従来の感知/検出を用いて、デバイスの挙動をプログラミングに基づいて決定することができる。治療法は、胸腔内のみ、胸腔内と経胸の混合、又は経胸のみとなるようにプログラム可能である。
【0058】
本発明の心臓デバイスを患者の胸部の皮下に植え込むことができる。例えば、患者の前部、後部、側部、又は心臓活動の感知や心臓刺激治療の供給に好適な他の身体の部位に位置決めして心臓デバイスを皮下に植え込むことができる。特に治療的な構成において、胸部、腹部、鎖骨下部など身体のいくつかの異なる部位に心臓デバイスの素子を配置し、電極素子を心臓の近く、周り、中又は上などそれぞれ異なる部分に配置できることが理解される。例えば、心臓デバイスの胸腔内のリード/電極素子を、心臓、大血管又は冠状血管系の上又は中に配置することができる。
【0059】
心臓デバイスの主ハウジング(例えば、動作缶や非動作缶)は、例えば胸郭外の肋間もしくは肋下の位置、腹部内又は上胸部(例えば、第3肋骨よりも上などの鎖骨下部の位置)に配置するように構成可能である。特に治療的な構成において、心臓デバイスの経胸構成は概して1つ以上の電極を使用し、これらの電極は、主ハウジング上に配置されるか主ハウジングから延びて配置され、及び/又は心臓、大血管もしくは冠状血管系の周辺でこれに直接接触しない他の位置に配置されている。本明細書では、このような電極を概して皮下電極と呼び、表面電極を一部の構成に使用できることが理解される。例えば、動作缶又は非動作缶を用いる本発明の治療的な構成に従った心臓デバイスにおいて心臓活動を感知し、心臓刺激エネルギーを送出するように1つ以上の皮下電極アレイを用いることができる。心臓の前方及び/又は後方の位置に電極を配置することができる。
【0060】
心臓デバイスは一般に、デバイスの構成及び作動モードを変えることのできるコントローラ又は制御システムを含む。例えば、コントローラは、心疾患発生時の心臓のモニタ及び記録のために第1の構成で作動し、かつ心臓モニタ回路及び刺激回路を用いた治療構成で作動するように心臓デバイスを構成することができる。本発明の心臓デバイスの作動構成又はモードの変更をさまざまな方法で開始し、制御することができる。例えば、心臓デバイスは、プログラマ又は患者/臨床医制御アクチベータなど、患者の体外の信号源から受信した信号に応答して作動モード又は構成を切り換えることができる。また、心臓デバイスのコントローラは、リードシステムがデバイスのリードインターフェースか又はヘッダに接続されている場合など、所定の条件に応答してモード又は構成を変えることができる。
【0061】
特定の構成において、システム及び方法は、当該技術分野で公知である種々のペーシング治療を提供するなど、ペースメーカーによって伝統的に行われている機能を実行するか又は含むことができる。例示的なペースメーカーの回路、構造及び機能(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスに組込可能である)は、同一出願人による米国特許第4,562,841号、第5,036,849号、第5,284,136号、第5,376,106号、第5,540,727号、第5,836,987号、第6,044,298号、第6,055,454号及び第5,331,966号に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0062】
本明細書に示す一部のシステム構成は、概して植込み型除細動器(ICD)によって伝統的に行われる種々の機能を実施できるものとして説明されており、当該技術分野で公知である多数のカルディオバージョン/除細動モードで作動することができる。例示的なICDの回路、構造及び機能(これらの態様は本発明の心臓デバイスに組み込むことができる)は、同一出願人による米国特許第5,133,353号、第5,179,945号、第5,314,459号、第5,318,597号、第5,620,466号及び第5,662,688号、ならびに米国特許出願公開番号2002/0107544(整理番号011506、2001年11月5日出願)及び公開番号2002/0107548(整理番号011947、2001年11月5日出願)に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0063】
図面に示され、本明細書に説明されている構成要素及び機能を、ハードウェア、ソフトウェア又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにおいて実施できることも理解されよう。また、図面中に別個の又は分離したブロック/要素として示される構成要素及び機能を他の構成要素及び機能と組み合わせて実施することができ、個々の又は統合された形態にあるこのような構成要素及び機能は説明を限定するのではなく説明を明確にするために示されていることが更に理解されよう。
【0064】
1つの実施の形態に従って、本発明の心臓デバイスは、心不全を患う患者に心機能管理(CFM)を提供するように構成可能である。しばしば鬱血性心不全(CHF)と呼ばれる心不全は、左脚ブロックなど長期にわたる心室伝導の遅延に関連していることが多く、左心室収縮機能不全や予後不良の一因となる。心室伝導の遅延により、ポンプ効果を低下させる協調性のない心室収縮が生じる。左心室伝導遅延を有する正常洞調律の心不全患者の研究によると、心房−両心室ペーシングは心収縮期の機能及びポンプ効率を改善することができる。両心室ペーシングは、左右心室の収縮や左心室中隔及び外側壁の収縮を再同期させることができる。
【0065】
両心室ペーシングの他の用途は、収縮機能を低下させ、心拍出量を減少させ、心臓の代謝効率を低下させる右心室のみのペーシングによって生じる左心室収縮の遅延を補正することを含む。拡張型心筋症や心房細動などの心疾患によって心機能が既に低下している場合、右心室ペーシングから生じる心機能の更なる低下は許容されず、症状の悪化や機能不全の進行の一因となりうる。
【0066】
本発明の心臓デバイスは、多心腔(multichamber)又は多部位ペーシングを収縮不全の治療に提供する一方で徐脈及び頻脈を同時に治療するように構成可能である。この構成の心臓デバイスは、心機能管理デバイス、即ちCFMデバイスとして作動し、ポンプ流量及び律動を維持しながら心室の収縮シーケンスを変えることによってポンプ機能を改善することができる。本明細書に記載されている種々の実施の形態を、鬱血性心不全のモニタ、診断及び/又は治療に関連させて使用することができる。2心腔(dual-chamber)又は両心室のペーシング/治療、心臓再同期療法、心機能最適化を含むものなど、CHFに関連して本明細書に記載されている方法、構造及び/もしくは技術、又はCHFに関連する他の方法は、同一出願人による米国特許出願10/270,035号(公開番号2003/0130702)(「同期化した多部位心臓ペーシングのためのタイミング周期(Timing Cycles for Synchronized Multisite Cardiac Pacing)」というタイトルで2002年10月11日に出願)、米国特許第6,411,848号、第6,285,907号、第4,928,688号、第6,459,929号、第5,334,222号、第6,026,320号、第6,371,922号、第6,597,951号、第6,424,865号及び第6,542,775号といった参考文献のうちの1つ以上の特徴を組み込むことができる。これらはそれぞれ本明細書に援用される。
【0067】
多心腔ペースメーカーを組み込んだ心臓デバイスは、左心室及び右心室の双方の中にあるか又はこれらに隣接する心臓組織と接触するように配置された電極を含み、左心室及び右心室の双方をペーシングすることができる。また、左心房及び右心房内にあるか又はこれらに隣接する組織と接触するように配置された電極に心臓デバイスのペースメーカー回路を結合し、両心房ペーシングを可能にすることができる。両心房ペーシング又は両心室ペーシングを用いて両側の心腔間の心収縮の協調を改善することができる。また、心臓デバイスは多部位ペースメーカー回路を組み込むことができる。心腔内にあるか又はこれに隣接して配置され、心腔の2つの部位をペーシングするように適切に配置されたリードにこの回路を結合することができる。
【0068】
心機能管理を提供する心臓デバイスの実施の形態は、多数のペーシングモードで作動することができる。1つの実施の形態では、多心腔除細動器及びペースメーカーとして構成される心臓デバイスは、種々の多心腔又は多部位ペーシングタイミングモードに従ったペースパルスを送出することによって心臓を刺激するように作動する。多くのタイプの多心腔ペースメーカー/除細動器方法を用いて、この実施の形態による多心腔ペーシングモードを実施することができる。心臓デバイスのこの実施の形態は、マイクロプロセッサベースの構造を有するCFMデバイスの実施に関連して説明されるが、CFMデバイスの機能を、必要に応じていかなる論理ベースの構造においても実施できることが理解されよう。
【0069】
本明細書に記載の心臓デバイスの種々の実施の形態を、優先ペーシング/拍動調整治療に関連して用いることができる。同一出願人による同時係属の米国特許出願09/316,515号(「心房不整脈時などの不規則な心室収縮の治療方法及び装置(Method and Apparatus for Treating Irregular Ventricular Contractions Such As During Atrial Arrhythmia)」というタイトルで1999年5月21日に出願)、ならびに米国特許第6,353,759号及び第6,351,669号に開示される単心腔、多心腔もしくは多部位のペーシング/治療、又は関連する他の方法を実施するように本発明の心臓デバイスを構成することができる。これらは本明細書に援用される。
【0070】
ここで図1を参照すると、本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイス182の平面図が示されている。この実施の形態によると、心臓デバイス182は、モニタ構成及び心臓エネルギー送出構成で作動するように実施される。心臓デバイス182はエネルギー送出回路を組み込んでいるが、このような回路は、モニタのみの構成での作動時は使用不可であるか又は使用されない。モニタのみの構成では、心臓デバイス182は、ループレコーダ又は他のタイプの心臓活動感知・記録デバイスとして作動することができる。エネルギー送出回路を含むことによって、心臓デバイス182は、心臓エネルギー送出構成のみの動作か又はモニタ構成と組み合わせた動作のために再構成することができる。この点に関して、心臓デバイス182は、単なるモニタデバイスから、多様な心臓ペーシング、カルディオバージョン/除細動及び閾値未満の刺激治療を供給するように構成可能なデバイスへのアップグレード能力を提供するソフトウェアとハードウェアを組み込む。
【0071】
図1において、心臓デバイス182は、モニタのみの構成で作動する場合は心臓活動を検出して記録する。ヘッダ100を組み込んだハウジング即ち缶103が示されている。ヘッダ100は、電極モジュール196と缶103との間の着脱を容易にする。ヘッダ100は、電極モジュール196からの雄型結合器193を受け入れるように構成された雌型結合器192を含む。雄型結合器193は、1つ以上の電極197を電極モジュール196を介して缶103に結合する2つの電極接点194、195を有するように示される。電極191が缶103のヘッダ100上に示されている。缶103は、ヘッダ電極191の代わりに、又はこの他に、1つ以上の缶形電極を含むことができる。近接スイッチ又は他の電極/リード/モジュール存在センサを含むことのできる電極検出回路181がヘッダ100内に示されており、これを用いて電極モジュール196の缶103への取付を認識することができる。更に後述するように、電極検出回路181を、心臓デバイス182の記録構成から治療構成への切換に役立つようにしてもよい。
【0072】
この構成及び他の構成において、ヘッダ100は、1つ以上のリード及び/又はセンサシステム、リード及び/又はセンサモジュールならびに電極との電気接続を容易にするインターフェース機能(例えば、電気コネクタ、ポート、係合機能など)を組み込んでいる。公知の技術を用いて、ヘッダ100のインターフェース機能を体液から保護することができる。
【0073】
心臓デバイス182は、缶103、ヘッダ100、電極モジュール196、又はヘッダ100もしくは電極モジュール196に結合するリードの中や上に1つ以上のセンサを更に含むことができる。有用なセンサは電気生理センサ及び非電気生理センサを含むことができ、例えば、音響センサ、インピーダンスセンサ、酸素飽和センサ(酸素濃度計又はプレチスモグラフセンサ)などの血液センサ、血圧センサ、又は本明細書に記載されるかもしくは本明細書に組み込まれる他のセンサなどがある。
【0074】
図2は本発明に従った心臓デバイス182の他の実施の形態の平面図であり、モニタ即ち記録構成で示されている。図2に示す実施の形態では、第1の電極198及び第2の電極199が、ヘッダ100を貫通し、電極モジュール196を介して缶103に結合される。第1の電極198及び第2の電極199をリード183(単一もしくは複数のリード、又は電極アレイ)上に配置してもよいし、電極モジュール196の中や上に直接配置してもよい。まず、心臓デバイス182を患者に植え込み、診断や診断の確認に有用な心疾患の記録に用いることができる。診断又は診断の確認後、1つ以上の心臓治療を提供するように心臓デバイス182を再構成することができる。
【0075】
図3及び図4は、本発明の実施の形態に従った複数の作動構成をサポートする心臓デバイスのハードウェア及びソフトウェアの要素を示しており、選択された要素は所望の作動構成によって使用可能・使用不可になる。例えば、図3及び図4に示す要素を組み込んだ心臓デバイスは、電極モジュール196が心臓デバイスのヘッダに取り付けられたことを図1及び図2の電極検出回路181が示すときなどに、心電図を記録して対象の信号を記憶するループのための記録構成で作動することができる。このデバイスは、後述するような感知電極モジュールの除去と心臓治療リード・モジュールの取付に応答して治療供給構成に切り換えることができる。
【0076】
図3は、本発明に従って実施される心臓デバイスの胸腔内の構成及びモードを概してサポートするハードウェア及びソフトウェアの要素を示している。図4は、本発明に従って実施される心臓デバイスの経胸の構成及びモードを概してサポートするハードウェア及びソフトウェアの要素を示している。本発明の心臓デバイスは胸腔内要素及び経胸要素に関連する構成要素及び機能を組み込むことが好ましいが、このような構成要素及び機能は、明確にするために別々の図に示される。図3及び図4に示すシステムの要素は、胸腔内構成及び経胸構成の双方をサポートできることが理解される。しかし、明確にするために、図3の説明は主に胸腔内の構成及び方法を使用可能にすることに向けられ、図4は主に経胸の構成及び方法を使用可能にすることに向けられる。
【0077】
また、図3及び図4に示す実施の形態は類似した構成要素を共有することができ、このような構成要素は共通の構成要素を用いて実施してもよいし、別個の構成要素として実施してもよいことが理解される。更に、図3及び図4に示す実施の形態は類似した機能を共有することができる。例えば、図3に示す回路は制御システム220を含み、これは、図4に制御システム305として示すものと同じシステムでもよいし、異なったシステムでもよい。
【0078】
図3に示すシステム200は患者への植込みに適しており、第1の作動構成での心臓関連信号のモニタ及び記録に使用される。第1の作動構成では、システム200はハウジング103の中又は上にセンサのみを含んでもよいし、システム200は、更に後述するように、1つ以上の他のセンサ及び/又は電極を含んでもよい。システム200が第2のモニタ・治療構成で作動するように構成される際、胸腔内心臓電極及び経胸心臓電極のうちの一方又は両方が、例えばヘッダ100を用いるなどしてハウジングの電子機器に結合される。
【0079】
比較的複雑な実施態様を示すために、図3に示す胸腔内システム200はCFM機能を備えたものとして後述される。図面に示すシステムの複雑さは、比較的単純なものから比較的複雑なものまで変動しうることが理解される。例えば、図面に示すシステムを、CFM機能の他に、又はCFM機能を除いて、従来のペースメーカー及び/又は除細動器の機能を行うように構成してもよい。図3に示すシステム200は機能ブロックに分けられる。これらの機能ブロックを配置することのできる構成はたくさんある。図3に示す構成は、1つの可能な機能構成である。
【0080】
導線170及び171が、心臓デバイスの端子202と右心室(RV)先端電極との間、そして端子204とRVコイル電極との間をそれぞれ接続し、これらの間で感知信号及びペーシング信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。導線178が、心臓デバイスのSVCコイルと端子201との間を接続し、これらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。導線172が、右心房(RA)先端電極と端子206との間を接続してこれらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能であり、導線173が、RAリング電極と端子208との間を接続してこれらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。
【0081】
導線174、175が、心臓デバイスの端子210と左心室(LV)先端電極との間、そして端子212とLVリング電極との間をそれぞれ接続し、これらの間で感知信号及びペーシング信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。遠位リング電極及び近位リング電極(即ち、LV先端電極ではない)を用いるいくつかの左心リード構成では、導線174、175が、端子210、212と遠位及び近位リング電極との間を接続し、これらの間で感知信号及びペーシング信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。導線176が、左心房(LA)先端電極と端子214との間を接続し、これらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能であり、導線177が、LAリング電極と端子216との間を接続し、これらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。心臓デバイスのハウジング103に結合された缶形電極209も設けられる。
【0082】
デバイスの回路203は、人体への植込みに好適な密閉されたハウジング103に入っている。システム200への電力は、電気化学電池や燃料電池などのエネルギー源233、又はシステム200内に収容されているか他の態様でシステム200にエネルギーを供給する外部エネルギー源によって供給される。1つの実施の形態では、再構成可能回路203はプログラム可能マイクロプロセッサベースのシステムであり、制御システム220、検出器システム230、ペースメーカー240、除細動器パルス発生器250及びメモリ回路261を含む。
【0083】
メモリ回路261は、ペーシング、除細動及び感知といった種々のモードのパラメータを記憶し、心臓信号や、デバイス回路203の他の構成要素によって受信される他のセンサからの信号を示すデータを記憶する。それまでのEGM信号262を記憶するメモリが設けられており、このEGM信号をさまざまな目的のためにオンボードで使用し、必要に応じて外部プログラマユニット/トリガ280又は他の患者の外部デバイスに送信することができる。メモリ回路261をループ記録構成で用いることができ、心疾患が起こるまでの電極及び/又はセンサからのデータを連続的に記録し、心疾患の前後及び最中に記録されたセンサ/電極情報の全て又は一部を長期メモリに記憶する。メモリ及び信号記憶装置を患者又はユーザによって起動させてもよいし、外部プログラマユニット/トリガ280によって作動させてもよい。
【0084】
制御システム220は、ペースメーカー制御221、除細動器制御224及び不整脈検出器222を含む種々の制御サブシステムを使用することができる。制御システム220は、デバイス回路203を制御する追加の機能要素(図示せず)を含んでもよい。制御システム220及びメモリ回路261はデバイス回路203の他の構成要素と協働し、感知、ペーシング及び除細動といった他の機能に加え、同期ペーシングに関連する動作を行う。
【0085】
システム200が外部プログラマユニット/トリガ280と通信できるように、遠隔測定回路270がデバイス回路203に付加的に結合されている。1つの実施の形態では、遠隔測定回路270及びプログラマユニット/トリガ280はワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを使用し、プログラマユニット/トリガ280と遠隔測定回路270との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、プログラム指令を植込み時と植込み後にプログラマ装置/トリガ280からデバイス回路203に転送することができる。また、記憶された心臓データを、他のデータと共に、例えばシステム200からプログラマユニット/トリガ280に転送することができる。
【0086】
RV先端電極及びLV先端電極の使用によって感知される心臓信号は近距離場信号であり、これは当該技術分野で公知である。より具体的に言うと、右心室から得られた信号はRV先端電極とRVコイルとの間で発生した電圧として検出される。RV先端電極及びRVコイル電極は、検出器システム230内にあるRV感知増幅器231に結合されて示されている。RV感知増幅器231によって受信された信号は、信号プロセッサ及びA/D変換器239に送信される。RV感知増幅器231は、信号を感知してこれを増幅するように機能する。信号プロセッサ及びA/D変換器239はR波信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0087】
左心室から得られた信号は、LV先端電極とLVリング電極(即ち、遠位LVリング電極と近位LVリング電極)との間で発生した電圧として検出される。LV先端電極及びLVリング電極(即ち、遠位LVリング電極及び近位LVリング電極)は、検出器システム230内にあるLV感知増幅器233に結合されて示されている。LV感知増幅器233によって受信された信号は、信号プロセッサ及びA/D変換器239に送信される。LV感知増幅器231は、信号を感知してこれを増幅させるように機能する。信号プロセッサ及びA/D変換器239はR波信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0088】
RVコイル及びSVCコイルのうちの一方又はこれら両方の使用によって感知される心臓信号は遠距離場信号であり、これは、当該技術分野で公知のように、形態(morphology)又はショックチャネル信号とも呼ばれる。より具体的に言うと、ショックチャネル信号は、RVコイルとSVCコイルとの間で発生した電圧として検出される。また、ショックチャネル信号は、RVコイルと缶形電極209に結合されたSVCコイルとの間で発生した電圧として検出されてもよい。RVコイル、SVCコイル及び缶形電極の適切な組み合わせを用いて生成されたショックチャネル信号は、検出器システム230にあるショックEGM増幅器236により感知され、増幅される。EGM増幅器236の出力は、信号プロセッサ及びA/D変換器239を介して制御システム220に結合されている。
【0089】
捕捉検出及び/又は捕捉閾値の決定(例えば自動捕捉)を行う際、EGM増幅器236又は他の広帯域増幅器を使用できることに注意されたい。更に、図3に示すもの以外のペース及び感知のベクトルを捕捉検出及び/又は捕捉閾値の決定に関連して使用できる(例えば、図9乃至図11に示す切換マトリックスを用いて選択可能なものである、胸腔内又は非胸腔内のペース/感知電極又は除細動電極)ことに注意されたい。
【0090】
RA先端電極及びRAリング電極は、検出器システム230内にあるRA感知増幅器232に結合されている。検出器システム230内のRA感知増幅器232によって受信された心房感知信号はA/D変換器239に送信される。RA感知増幅器は、右心房のA波信号を検出し、これを増幅するように機能する。A/D変換器239は、感知された信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0091】
左心房で生じるA波信号は、LA先端電極及びLAリング電極によって感知される。A波は、検出器システムにあるLA感知増幅器234によって感知され、増幅される。LA感知増幅器は、左心房のA波信号を検出し、これを増幅するように機能する。A/D変換器239は、感知された信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0092】
ペースメーカー240は、適切な条件下で予め確立されたペーシング法に従って、ペーシング電極、即ちRV先端電極、RA先端電極、LV先端電極及びLA先端電極にペーシング信号を送信する。心室又は心房ペーシングパルスの送出の際にはブランキング回路(図示せず)が公知の態様で使用され、心室チャネル、心房チャネル及びショックチャネルが適当な時間に適当な期間で適切に消去される。
【0093】
CFM機能を組み込んだ心臓デバイスを治療供給構成で構成し、従来の徐脈ペーシングとは異なった態様で収縮シーケンスを変えることによってポンプ機能を改善することができる。例えば、徐脈を治療するには、心拍数が十分でない場合や房室の間隔(AV間隔)があまりに長い場合にペーシングを行うことができる。
【0094】
ポンプ機能を改善するために、2つ以上の心腔のペーシングを同時、又は段階的なシーケンスで行い、非効率的であったり存在しないような収縮シーケンスを調整することができる。例えば、ペーシングモードを用いて、心房収縮(AS)の感知後に左心室及び右心室の両方のペーシング(LVP、RVP)を行うことができる。このようなペーシングモードは病気によって生じる心室伝導遅延を緩和し、よって心臓のポンプ機能を改善することができる。種々の有用な再同期ペーシング治療法が本明細書に記載されるか又は本明細書に組み込まれており、これらの治療法を本発明の心臓デバイスによって実施することができる。
【0095】
図3に示すシステム200の検出器システム230は、信号プロセッサ及びA/D変換器239に組込可能なプログラム可能フィルタを更に含むことができる。プログラム可能フィルタは、心臓のモニタ(例えば、ループ記録)に関連する信号を記録する第1のフィルタリング構成と、1つ以上のエネルギー送出構成に関連する心疾患検出用の第2のフィルタリング構成とで作動するようにプログラム可能であることが好ましい。
【0096】
図4は、本発明に従って実施される心臓デバイスの経胸構成及びモードをサポートする構成要素を示している。図4に示す構成によると、心臓デバイスは、適切なメモリ309に結合されたプロセッサ306を含むプロセッサベースの制御システム305を組み込んでいるが、いかなる論理ベースの制御構造を用いてもよいことが理解される。制御システム305は回路及び構成要素に結合されており、心臓によって生成された電気信号の感知、検出及び分析を行い、選択された信号をメモリ309に記録する。メモリ309をループ記録構成で用いることができ、心疾患が起こるまでの電極及び/又はセンサからのデータを連続的に記録し、心疾患の前後及び最中に記録されたセンサ/電極情報の全て又は一部を長期メモリに記憶する。
【0097】
モニタ及び刺激構成で構成される場合、制御システム305は所定の条件下で電気刺激エネルギーを心臓に送出するように促して心不整脈を治療することができる。ある構成では、制御システム305及び関連する構成要素はペーシング治療を心臓に提供することもできる。心臓デバイスによって送出される電気エネルギーは、低エネルギーペーシングパルス、カルディオバージョンもしくは除細動のための高エネルギーパルス、又は閾値未満の刺激の形態をとることができる。
【0098】
心臓信号は、例えば、皮下の電極314と、心臓デバイスのハウジング上に設けられた缶形又は中立電極307を用いて感知される。心臓信号は、非活性の缶形構成などで皮下電極314のみを用いて検出されてもよい。また、心臓信号は、制御システム305が第1の(モニタ・記録)構成で作動している際に、缶の中又は上にあるセンサ及び/又は電極のみを用いて検出されてもよい。よって、単極、二極、又は単極/二極の組み合わせの電極構成を使用することができる。感知された心臓信号は感知回路304によって受信される。感知回路304は感知増幅回路を含み、フィルタリング回路及びアナログ−デジタル(A/D)変換器を含むこともできる。感知され、感知回路304によって処理された心臓信号はノイズ低減回路303によって受信されることができ、ノイズ低減回路304は、信号が検出回路302に送られる前にノイズを更に減らすことができる。高性能又は計算集中型のノイズ低減アルゴリズムが必要である場合は、ノイズ低減回路303を検出回路302の後に組み込んでもよい。
【0099】
図4に示す例示的な構成では、検出回路302はノイズ低減回路303に結合されているか、又は回路に組み込まれている。ノイズ低減回路303は、感知されて種々のソースから取り込まれた心臓信号のノイズ内容を取り除くか又は拒絶することにより、感知された心臓信号のSN比を改善するように作動する。ノイズ低減回路303は、この代わりに、又はこの他に、再構成可能な心臓システムによって感知された他の信号やノイズに対して心臓信号の分離及び/又は識別を行う信号分離アルゴリズムを実施することができる。典型的なタイプの経胸心臓信号のノイズは、電気ノイズや例えば骨格筋から生じるノイズを含む。
【0100】
例示的な心臓信号の分離及び/又は識別の回路、構造及び技術(これらの態様は本発明の心臓デバイスによって実施可能である)は、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/784,478号(公開番号2005/0119708)(2004年2月23日出願、弁護士事件整理番号 GUID.606PA)、10/741,814号(公開番号2004/0230128)(2003年12月19日出願、弁護士事件整理番号GUID.605PA)、及び弁護士事件整理番号GUID.607PAとして本明細書と同時に出願された「信号源インピーダンスを用いた両性能信号源の分離(Bipotential Signal Source Separation using Source Impedances)」というタイトルの米国特許出願に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0101】
検出回路302は一般に信号プロセッサを含み、信号プロセッサは感知された心臓信号及び/又は他のセンサ入力の分析を統合し、特に頻脈性不整脈などの心不整脈を検出する。心拍数ベースの(例えば、心拍数ゾーンベースの)パターンや、心拍数ベース及び/又は形態学的識別アルゴリズムを検出回路302の信号プロセッサによって実施し、不整脈の発現の存在とその重症度を検出することができる。
【0102】
例示的な不整脈の検出及び識別の回路、構造及び技術(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスによって実施可能である)は、同一出願人による米国特許第5,301,677号及び第6,438,410号に開示されており、これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。例示的なパターン及び心拍数ベースの不整脈の検出及び識別の回路、構造及び技術(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスによって実施可能である)は、米国特許第6,708,058号、第6,487,443号、第6,259,947号、第6,141,581号、第5,855,593号及び第5,545,186号に開示されており、これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0103】
本発明の心臓デバイスでの実施に特に好適な不整脈検出方法は、米国特許出願10/804,471号(公開番号2004/0230129)(2004年3月19日出願、弁護士事件整理番号GUID.608PA)、「患者の活動を感知する皮下の心臓刺激システム(Subcutaneous Cardiac Stimulation System with Patient Activity Sensing)」というタイトルの米国特許出願(2004年4月1日出願、弁護士事件整理番号GUID.610PA)、及び「血液センサを用いた皮下の心臓感知・刺激システム(Subcutaneous Cardiac Sensing and Stimulation System Employing Blood Sensor)」というタイトルの米国特許出願(2004年4月2日出願、弁護士事件整理番号GUID.613PA)、といった同一出願人による同時係属の参照文献に記載されている。これらの文献は本明細書に援用される。
【0104】
検出回路302は、心臓信号情報を制御システム305に送信する。制御システム305のメモリ回路309は、感知、モニタ/記録、除細動及びペーシングといった種々のモードで作動するためのパラメータを記憶し、検出回路302によって受信される心臓信号を示すデータを記憶する。それまでのECG・治療データを記憶するようにメモリ回路309を構成することもでき、このデータをさまざまな目的のために使用し、必要に応じて外部受信デバイスに送信することができる。
【0105】
一部の構成では、心臓デバイスは診断回路310を含むことができる。診断回路310は、概して検出回路302及び感知回路304から入力信号を受信する。診断回路310は診断データを制御システム305に提供する。制御システム305は、診断回路310又はその機能の全てもしくは一部を組み込めることが理解される。制御システム305は、さまざまな診断目的で診断回路310に提供された情報を記憶し、使用することができる。この診断情報は、例えば疾患が生じた後や所定の間隔で記憶することができ、電源の状態、治療供給履歴及び/又は患者の診断などのシステム診断を含むことができる。診断情報は、治療供給の直前及び直後に得られる電気信号又は他のセンサデータの形をとることができる。
【0106】
本発明の実施の形態に従った心臓デバイスは治療セクション300を含み、これは、心臓デバイスが第1のモニタ及び/又は記録のみの構成で作動される際は使用不可になるか又は使用されず、第2のモニタ及び治療供給構成で作動する際に使用可能になる。治療セクション300は、治療セクション300を使用可能/使用不可にするように、ハードウェアスイッチを用いて物理的に切換可能にすることができる。治療セクション300を、ソフトウェア及び/又は制御システム305により生成された制御信号によって使用可能/使用不可にできる。ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを用いて治療セクション300を使用可能/使用不可にできることも考慮される。
【0107】
例えば、心臓デバイスのヘッダは、治療セクション300を使用可能にするのに必要な近接スイッチ又は他の構成要素を含むことができる(例えば、リードシステムとの接続を感知するヘッダ内のセンサ)。制御システム305は、治療セクション300を使用可能にする前に1つ以上の治療供給電極の検出を必要とする場合がある。1つのアプローチでは、心臓リードはメモリが含むコード(符号)を組み込むことができ、このコードは、リードが心臓デバイスに接続され、コードがプロセッサ306によって読み取られると治療セクション300を使用可能にする。コードは、リードのアイデンティティ(例えばタイプ、構成など)に応答して、リードの識別及び心臓デバイスの構成を容易にすることができる。
【0108】
経胸除細動治療を提供する構成によると、制御システム305は、検出回路302から受信した心臓信号データを処理し、適切な頻脈性不整脈治療を開始して心不整脈の発現を終了させ、心臓を正常洞調律に戻す。制御システム305は、ショック療法回路316に結合されている。ショック療法回路316は、皮下電極314と、心臓デバイスハウジングの缶又は中立(indifferent)電極307に結合されている。ショック療法回路316は、指令が下されると選択されたカルディオバージョン/除細動治療に従ってカルディオバージョン及び除細動刺激エネルギーを心臓に送出する。さほど高性能でない構成では、ショック療法回路316は、カルディオバージョン及び除細動の双方の治療を供給する構成とは対照的に、除細動治療のみを供給するように制御される。
【0109】
例示的なICD高エネルギー送出の回路、構造及び機能(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスに組込可能である)は、同一出願人による米国特許第5,372,606号、第5,411,525号、第5,468,254号及び第5,634,938号、ならびに米国公開特許出願公開番号2002/0107544(整理番号011506、2001年11月5日出願)及び公開番号2002/0107548(整理番号011947、2001年11月5日出願)に開示されている。これらは本明細書の上文に援用される。
【0110】
他の構成に従って、本発明の心臓デバイスの経胸システムは心臓ペーシング能力を組み込んでいる。図4に示すように、心臓デバイスは、制御システム305と、皮下電極314及び缶形/中立電極307に結合されたペーシング治療回路330とを含む。ペーシング治療回路は、指令が下されると選択されたペーシング治療に従ってペーシングパルスを心臓に送出する。ペーシング療法に従って制御システム305内のペースメーカー回路によって生成された制御信号が開始されてペーシング治療回路330に送信され、ここでペーシングパルスが生成される。ペーシング療法を制御システム305によって変更することができる。
【0111】
「皮下の心調律管理(Subcutaneous Cardiac Rhythm Management)」というタイトルの同一出願人による同時係属の米国特許出願(弁護士事件整理番号GUID.611PAとして本明細書と同時に出願されており、本明細書に援用される)に開示されるような多数の心臓ペーシング治療及び閾値未満の治療を、図4に示すペーシング治療回路330及び/又は図3に示すペースメーカー240を介して供給することができる。あるいは、心臓ペーシング治療をショック療法回路316経由で供給することができ、これによって個々のペースメーカー回路の必要性が効果的に取り除かれる。ショック療法回路316を介して心臓ペーシング治療を供給する種々のアプローチの例が、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/377,274号(公開番号2004/0172066)(2003年2月28日出願)に開示されており、これは本明細書に援用される。
【0112】
図4に示す心臓デバイスは、1つ以上の生理及び/又は非生理センサ312(例えば、本明細書に記載され、組み込まれたもの)から信号を受け取るように構成可能である。使用するセンサのタイプによっては、センサ312によって生じた信号を、検出回路に直接結合されているか又は感知回路を介して間接的に結合されたトランスデューサ回路に送信することができる。一部のセンサは、検出回路302による処理を行わずに感知データを制御システム305に送信できることに注意されたい。
【0113】
通信回路318が制御システム305のプロセッサ306に結合されている。通信回路318によって、心臓デバイスは、心臓デバイスの外部に配置された1つ以上の受信デバイス又はシステムと通信することができる。例えば、心臓デバイスは、通信回路318を介して、患者装着用、携帯用もしくはベッドサイド用通信システム、又は患者によって作動可能なトリガと通信することができる。1つの構成では、1つ以上の生理センサ又は非生理センサ(患者の皮下、皮膚又は体外)に、公知の通信規格(ブルートゥース(登録商標)やIEEE802規格など)に準拠するインターフェースのような短距離無線通信インタフェースを備えることができる。このようなセンサによって取得されたデータを、通信回路318経由で心臓デバイスに送信することができる。無線の送信器やトランシーバを備えた生理又は非生理センサは患者の体外にある受信システムと通信できることに注意されたい。
【0114】
通信回路318によって、心臓デバイスは外部プログラマ/トリガ280と通信することができる。1つの構成では、通信回路318及びプログラマ/トリガ280は、当該技術分野で公知のループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いてプログラマユニットと通信回路318との間で信号及びデータの送受信を行う。図3の胸腔内システムのブロック図に関連して前述した態様に類似する態様では、植込み時とその後に、プログラム指令及びデータを心臓デバイスとプログラマ/トリガ280との間で転送することができる。プログラマを用いて、医師は、心臓デバイスによって用いられる種々のパラメータの設定又は変更を行うことができる。例えば、医師は、心臓デバイスの検出機能、ペーシング機能及び除細動機能(ペーシングモード及びカルディオバージョン/除細動モードを含む)に影響を及ぼすパラメータの設定又は変更を行うことができる。
【0115】
心臓デバイスへの電力は、心臓デバイスの密閉ハウジング内に配置された電源320によって供給される。電源320は、図3に示す電源233と同じ電力源であってもよい(又は異なっていてもよい)。1つの構成では、電源320は充電池を含む。この構成によると、充電回路が電源320に結合されており、電源320の反復的な非侵襲的充電を容易にする。通信回路318、即ち別個の受信器回路は、外部の無線周波エネルギー送信器によって送信された無線周波エネルギーを受信するように構成されている。心臓デバイスは、再充電可能な電源の他に非充電式電池を含むことができる。再充電可能な電源を使用する必要はなく、その場合には寿命の長い非充電式電池を使用することを理解されたい。
【0116】
図5乃至図8は、モニタ/記録構成から心臓治療を提供する構成に心臓デバイスを再構成した後の本発明の実施の形態を示している。ここで図5を参照すると、治療構成における心臓デバイスが示されており、本発明の実施の形態に従って患者の胸部に植え込まれている。本発明の心臓のモニタ及び刺激の実施態様に従った典型的な心臓デバイスは、1つ以上の皮下電極及び/もしくは1つ以上の心外膜電極、経静脈電極ならびに/又は心内膜電極を含むことができる。
【0117】
図5に示す特定の構成に関して、心臓デバイスはハウジング103を含み、その中に心臓感知回路、検出回路、処理回路及びエネルギー送出回路といった種々の回路を収容することができる。通信回路はハウジング103内に配置されており、心臓デバイスと外部通信デバイス(例えば、患者によって作動可能なトリガ、携帯用又はベッドサイド用通信ステーション、患者携帯用/装着用通信ステーション又は外部プログラマなど)との間の通信を容易にする。通信回路は、体外、皮膚又は皮下の生理又は非生理センサを1つ以上有する単方向又は両方向通信を容易にすることもできる。
【0118】
一部の実施態様では、剛性、半剛性又は可撓性の支持アセンブリ107を用いて1つ以上の皮下電極を支持することができる。例えば、電極支持アセンブリ107は概して可撓性とすることができ、従来の植込み型の医療用電気リード(例えば、除細動リード又は除細動/ペーシングを組み合わせたリード)に類似した構造を有することができる。他の実施態様では、ある程度可撓性であるが、臨床医による整形又は操作の後に所望の構成を保持する弾性、ばね又は機械的復元力を有するよう、電極支持アセンブリ107を構成することができる。例えば、電極支持アセンブリ107は、手でねじって所望の形状を得ることのできるグースネック又は編み(braid)システムを組み込むことができる。このように、電極支持アセンブリ107は、所与の患者の独特の身体構造に適応するように形状を合わせることができ、植込みの後でもカスタマイズされた形状を概ね保持する。この構成による電極支持アセンブリ107の整形は、リード又はデバイスの植込みの前又は最中に行うことができる。
【0119】
更なる実施態様に従って、電極支持アセンブリ107は、ハウジング103に対して皮下電極109の位置を安定させる電極支持構造体(例えば、剛性又は半剛性の細長構造体)を含む。この構成では、細長構造体の剛性は、皮下電極109とハウジング103との間の所望の間隔関係と、患者の心臓に対する皮下電極109/ハウジング103の所望の向きを維持するのに十分である。細長構造体は、構造的プラスチック材料、複合材料又は金属材料からなることができ、生体適合性材料を含むか又はこの材料によって覆われている。細長構造体が金属などの導電性材料からなる場合は、ハウジング103と皮下電極109との間に適切な電気絶縁が設けられる。
【0120】
1つの実施態様では、電極支持アセンブリ107及びハウジング103は一体構造(即ち、単一のハウジング/ユニット)を定める。電子部品及び電極導線/コネクタが、一体型デバイスのハウジング103/電極支持アセンブリ107の中又は上に配置されている。少なくとも2つの電極109が、一体構造上のハウジング103/電極支持アセンブリ107の対向端部付近で支持されることが好ましい。例えば、一体構造は弓形か又は角度付けされた形状を有することができる。
【0121】
更に他の実施態様では、電極支持アセンブリ107は、ハウジング103に対して物理的に分離可能なユニットを定める。電極支持アセンブリ107は機械的・電気的結合器を含み、これらの結合器はハウジング103の対応する機械的・電気的結合器との噛合を容易にする。例えば、電極支持アセンブリ107とハウジング103との間に機械接続及び電気接続を提供する電気的結合器及び機械的結合器の両方を含むようにヘッダブロック構成を構成することができる。あるいは、機械的/電気的結合器を用いて電極支持アセンブリ107とハウジング103との間に機械接続及び電気接続を確立することができる。このような構成では、形状、サイズ及び電極構成がさまざまである種々の異なる電極支持アセンブリ107を利用可能にし、本発明の心臓デバイスに物理的及び電気的に接続することができる。
【0122】
電極及びリードアセンブリ107が種々の形状をとるよう構成可能であることに注意されたい。例えば、リードアセンブリ107を楔形、山形、平らにした楕円形又はリボン形にすることができ、皮下電極109は、電極のアレイ又はバンドなど、多数の離間された電極を含むことができる。更に、2つ以上の皮下電極109を複数の電極支持アセンブリ107に取り付け、皮下電極109の間で所望の離間関係を得ることができる。心臓デバイスは、同一出願人による米国特許第5,203,348号、第5,230,337号、第5,360,442号、第5,366,496号、第5,397,342号、第5,391,200号、第5,545,202号、第5,603,732号及び第5,916,243号に開示される皮下植込み型医療用具の回路、構造及び機能を組み込むことができる。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0123】
特定の心臓デバイスの構成によっては、供給システムを有益に用いて心臓デバイスハウジング及び皮下電極の適切な配置及び配向を容易にすることができる。このような供給システムの1つの構成によると、従来のトロカールに類似した長い金属棒を用いて皮下層の小径の鈍的組織切開を行うことができる。この用具は、皮下電極の配置を容易にするように予めまっすぐに又は湾曲して形成されていてもよいし、医師が所与の患者に合わせて用具を適切に整形できるよう十分な可撓性を備えていてもよい。
【0124】
この用具は、組織切開の際に局部麻酔薬の連続的かつ正確な供給を容易にするように1つ以上の流体供給路と遠位端の穿孔又はポートを更に含み、鎮静していないか又は最小限に鎮静した患者の不快感を減らす/取り除くことができる。また、鈍的組織切開用具を用いて、鈍的切開時の鎮痛のために電気刺激を提供することもできる。切開用具は、TENS(経皮神経刺激)ユニットによって提供される刺激に類似した刺激を提供するエネルギー送出能力を含むように構成可能である。鈍的組織切開用具によって供給されるエネルギーは、高周波電気刺激で刺激することによって神経伝導を本質的に妨げる。例示的な供給用具(この態様は心臓デバイス供給用具に組込可能である)は、米国優先権仮出願60/462,272号と、同一出願人による米国特許第5,300,106号に開示される。これらは本明細書に完全に援用される。
【0125】
図5に示す構成では、皮下電極109を胸部の皮膚下に配置し、ハウジング103から遠位に配置することができる。皮下電極と、該当する場合はハウジング電極とを、心臓の周りの種々の位置及び向き(例えば、心臓に対して前部及び/又は後部の種々の位置)に配置することができる。皮下電極109は、電極支持アセンブリ107を介してハウジング103内の回路に電気的に結合されている。1つ以上の導線(例えば、コイル又はケーブル)が電極支持アセンブリ107内に設けられており、皮下電極109をハウジング103内の回路に電気的に結合する。1つ以上の感知電極、感知/ペーシング電極又は除細動電極を、電極支持アセンブリ107の細長構造体、ハウジング103及び/又は遠位電極アセンブリ(例えば、アレイ構造)上に配置することができる。
【0126】
図5に示す心臓デバイスは心内膜リードシステムを更に含み、これは1つ以上の経静脈リードを介してハウジング103内の回路に電気的に結合されている。従来の経静脈リード供給手順を用いて心内膜リードシステムを植え込むことができる。心内膜リードシステムは、単一の心腔(心房又は心室)又は複数の心腔に植え込む単一のリード(例えば、ワンパスリード)を含むことができる。1つ又は複数の心腔への植込み(例えば、多部位又は多心腔構成)のために複数のリードを配置することができる(例えば、右心リード及び/又は左心リード)。このように、1つ、2つ、3つ又は4つの心腔に胸腔内の感知及び/又は刺激治療をもたらすように本発明の心臓デバイスを植え込むことができる。
【0127】
図5では、心房リードシステムは、1つ以上の心房電極110にハウジング回路を電気的に結合するリード(例えば、右心房リード)を含む。心室除細動リードシステムは、1つ以上の心室電極にハウジング回路を電気的に結合する1つか又は2つのリードを含むことができる。心室除細動リードシステムは、例えば、右心室電極113と、上大静脈に配置された電極111を含むことができる。
【0128】
図6に示す心臓デバイスは、図5に示す皮下電極及びハウジング構成要素を含むが、図5に示す心内膜リードアプローチの代わりに1つ以上の心外膜又は経静脈リードシステムを使用する。典型的な経静脈リードシステムは、大血管(例えば、冠状血管や肺血管)又は冠状血管系内に植え込むために構成された1つ以上の電極を含むことができる。典型的な心外膜リードシステムは、1つ以上のパッチタイプ電極及び/もしくはねじ込み電極、又は心臓の心外膜と接触する他の電極構成を含むことができる。
【0129】
図6では、胸腔内のリード114は1つ以上の遠位電極108を含み、心外膜又は経静脈での心臓活動感知及び/又は刺激エネルギー送出のためにこれらの電極を構成することができる。図示するように、単一のリード114が、ハウジング103内に設けられた回路に胸腔内電極108を電気的に結合している。1つ以上の胸腔内リード114を配置して心臓の1つ以上の心腔に感知・刺激エネルギーを供給できることが理解される。
【0130】
図7は、心腔内の同期多部位感知又はペーシングに有用な心臓刺激構成における本発明の心臓デバイスの1つの実施の形態を示している。心臓デバイスは、ヘッダ100を介して心内リードシステムに電気的及び物理的に結合されたハウジング103を含む。心内リードシステム102は、感知、モニタ/記録、ペーシング又は除細動に用いられる1つ以上の電極を含む。図7に示す特定の実施の形態では、心内リードシステム102は、第1の右心室リードシステム104及び第2の右心室リードシステム115、ならびに右心房リードシステム105を含む。1つの実施の形態では、右心室リードシステム104は統合された両極性のペーシング/ショックリードとして構成される。
【0131】
第1の右心室リードシステム104は、SVCコイル116、RVコイル114及びRV先端電極112を含む。代わりにRVリング電極として構成することも可能なRVコイル114は、右心室のペーシング電極であるRV先端電極112から離間されている。第1の右心室リードシステム104は少なくとも1つの心内膜ペーシングリードを含み、このリードは上大静脈(SVC)及び右心房120を通って右心室118に進められ、右心室118内の第1のペーシング部位で心筋組織と接触する。
【0132】
第2の右心室リードシステム115は、RV先端電極132及びRVリング電極134を含む。第2の右心室リードシステム115は少なくとも1つの心内膜ペーシングリードを含み、このリードは上大静脈(SVC)及び右心房120を通って右心室118に進められ、右心室118内の第2のペーシング部位で心筋組織と接触する。
【0133】
右心房リードシステム105は、RA先端電極156及びRAリング電極154を含む。RA先端電極156及びRAリング電極154はそれぞれパルスのペーシングを心臓の右心房に提供し、右心房からの心臓信号を検出することができる。1つの構成では、右心房リードシステム105はJリードとして構成される。
【0134】
この構成では、心内リードシステム102は心臓101内に配置されて示されており、第1及び第2の右心室リードシステム104、115は右心房120を通って右心室118内に延びている。特に、RV先端電極112及びRVコイル電極114は適切な位置に配置され、右心室118内の第1の部位の感知及びペーシングを行う。SVCコイル116は、心臓101の右心房室120、又は心臓101の右心房室120に通じる主静脈内の適切な位置に配置される。図7に示すRVコイル114及びSVCコイル116は除細動電極である。RV先端電極132及びRVリング電極134は適切な位置に配置され、右心室118内の第2の部位の感知及びペーシングを行う。
【0135】
ここで図8を参照すると、CFM能力を組み込んだ心臓デバイスの実施の形態が示されている。心臓治療作動構成の心臓デバイスは、ヘッダ100を用いて心内リードシステム102に電気的及び物理的に結合されたハウジング103を含む。心内リードシステム102は人体に植え込まれ、いくつかの部分が心臓101に挿入される。心内リードシステム102を用いて、心臓101によって生じる電気的な心臓信号を検出・分析し、ある所定の条件下で電気エネルギーを心臓101に提供し、心不全及び/又は心不整脈を治療する。
【0136】
心内リードシステム102は、感知、モニタ/記録、ペーシング又は除細動に用いられる1つ以上の電極を含む。図8に示す特定の実施の形態では、心内リードシステム102は、右心室リードシステム104、右心房リードシステム105及び左心房/左心室リードシステム106を含む。1つの実施の形態では、右心室リードシステム104は統合された両極性のペーシング/ショックリードとして構成される。
【0137】
第1の右心室リードシステム104は、SVCコイル116、RVコイル114及びRV先端電極112を含む。代わりにRVリング電極として構成することも可能なRVコイル114は、右心室のペーシング電極であるRV先端電極112から離間されている。
【0138】
右心房リードシステム105は、RA先端電極156及びRAリング電極154を含む。RA先端電極156及びRAリング電極154はペーシングパルスを心臓の右心房に提供し、右心房からの心臓信号を検出することができる。1つの構成では、右心房リードシステム105はJリードとして構成される。
【0139】
この構成では、心内リードシステム102は心臓101内に配置されて示されており、右心室リードシステム104は右心房120を通って右心室118内に延びている。特に、RV先端電極112及びRVコイル電極114は右心室118内の適切な位置に配置される。SVCコイル116は、心臓101の右心房室120、又は心臓101の右心房室120に通じる主静脈内の適切な位置に配置される。図8に示すRVコイル114及びSVCコイル116は除細動電極である。
【0140】
LV先端電極113及びLVリング電極117が冠状静脈系を介して挿入され、心臓101の左心室124に隣接して配置される。LVリング電極117は、左心室のペーシング電極であるLV先端電極113から離間されている。LV先端電極113及びLVリング電極117の双方も、左心室の感知に使用し、よって左心室内の2つの感知部位を提供することができる。左心房/左心室リードシステム106は、LAリング1(136)及びLAリング2(134)といった2つのLAリング電極を更に含み、これらは左心房122に隣接して配置され、心臓101の左心房122のペーシング及び感知を行う。
【0141】
左心房/左心室リードシステム106は心内ペーシングリードを含み、これらのリードは上大静脈(SVC)、右心房120、冠状静脈洞150の弁及び冠状静脈洞150を通って進められ、LAリング1電極136、LAリング2電極134、LV先端電極113及びLVリング電極117を左心房122及び左心室124に隣接した適切な位置にそれぞれ配置する。
【0142】
1つのリード提供アプローチによると、左心房/左心室のリード配置は、左鎖骨下静脈や左橈側皮静脈などの経皮進入血管に開口を形成することを含む。左心房/左心室リード106は、上大静脈を通って心臓の右心房120内に導かれる。左心房/左心室リードシステム106は、右心房120から冠状静脈洞入口部(冠状静脈洞150の開口)内に配置される。リードシステム106は、冠状静脈洞150を通って左心室124の冠状静脈に導かれる。この静脈は、心臓の右側から直接進入できない左心房122及び左心室124の表面にリードが辿り着くための進入経路として使用される。
【0143】
鎖骨下静脈への進入と、LV電極及びLA電極113、117、136及び134をそれぞれ左心室124及び左心房122に隣接して挿入する予め形成された誘導カテーテルとによって、左心房/左心室リードシステム106のリード配置を行うことができる。1つの構成では、左心房/左心室リードシステム106はワンパスリードとして実施される。LV先端電極113及びLVリング電極117に関する前述の段落の説明は、(LV先端電極をもたない)遠位及び近位のLVリング電極を用いたリード構成にも同様にあてはまることが理解される。
【0144】
ここで図9乃至図11を参照すると、本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間での切換を提供する心臓デバイスの構成要素が示されている。感知電極、ペーシング電極及び除細動電極(胸腔内電極及び非胸腔内電極を含む)の選択性を向上させる心臓デバイスに切換能力を組み込むことが望ましい場合がある(所与の心臓デバイスに対して利用可能な特定の構成による)。特定の電極構成を選択して心臓信号及び非心臓信号の検出を強化し、捕捉又は除細動の実行に必要なエネルギーを減少させることができる。
【0145】
1つの特定の用途では、一般に胸腔内の電極対から送出される捕捉ペーシング刺激を加えることによって生じる誘発応答の感知など、捕捉検出及び/又は捕捉閾値の決定のために1つ以上の非胸腔内電極を用いることができる。図9乃至図11に示すタイプの電極切換能力を使用することで心臓デバイスによって実施できる有用な捕捉検出技術及び閾値決定技術(自動捕捉技術を含む)の詳細は、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/733,869号(公開番号2005/0131476)(2003年12月11日出願、弁護士事件整理番号GUID.045PA)、10/734,599号(公開番号2005/0131477)(2003年12月12日出願、弁護士事件整理番号GUID.142PA)及び10/735,519号(公開番号2005/0131478)(2003年12月12日出願、弁護士事件整理番号GUID.160PA)、ならびに米国特許第5,683,431号に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に援用される。
【0146】
図9に示す実施の形態に従って、心臓デバイスは、最初に皮下の非胸腔内電極325を用いて経胸構成で作動するように構成される。心臓デバイスは、1つ以上の経静脈、心内膜又は心外膜の電極323のシステムへの追加を許容することができ、これによって心臓デバイスは経胸構成の他に胸腔内構成で作動することができる。
【0147】
図9に示すように、心臓デバイスは、1つ以上の胸腔内電極323と、1つ以上の皮下の非胸腔内電極325を含む。図9に示す実施態様によると、胸腔内電極323は心臓デバイスのリードインターフェース321に結合されている。リードインターフェース321を、心臓デバイスのヘッダブロック又は他の接続構成の一部として実施することができる。図9に示す実施の形態では、リードインターフェース321は、皮下の刺激デバイスのみから、1つ以上の胸腔内のリード又は電極323の追加を許容するハイブリッドデバイスへのデバイスのアップグレードを容易にする。
【0148】
リードインターフェース321は、胸腔内電極323を切換マトリックス333に結合する。また、1つ以上の皮下の非胸腔内電極325も切換マトリックス333に結合されている。切換マトリックス333を制御システム305によって制御し、選択された胸腔内電極323及び皮下の非胸腔内電極325を検出回路302及び/又はエネルギー送出回路316/330に結合することができる。切換マトリックス333は多様な目的のために多数の感知・エネルギー送出ベクトルを利用可能にする。多様な目的の例をいくつか本明細書に記載する。
【0149】
図10は、切換マトリックス333を組み込む心臓デバイスの他の実施態様を示している。この実施態様において、心臓デバイスは、最初に1つ以上の経静脈、心内膜又は心外膜の電極323を用いる胸腔内デバイスとして作動するように構成される。リードインターフェース321は、1つ以上の皮下の非胸腔内電極325の追加を許容し、これによって心臓デバイスは胸腔内構成の他に経胸構成で作動することができる。
【0150】
図11は、切換マトリックス333を組み込む心臓デバイスの更なる他の実施態様を示している。この実施態様において、心臓デバイスは、最初に胸腔内デバイスか又は経胸デバイスとして作動するように構成される。この実施態様によると、2つのリードインターフェース321A、321Bが設けられており、これらはそれぞれ切換マトリックス333に結合されている。リードインターフェース321Aは1つ以上の胸腔内電極323の追加を許容し、リードインターフェース321Bは1つ以上の皮下の非胸腔内電極325の追加を許容する。選択された胸腔内電極323及び皮下の非胸腔内電極325を図10及び図11に示す実施態様の検出回路302及び/又はエネルギー送出回路316/330に種々の目的で結合するように、切換マトリックス333を制御することができる。
【0151】
前述のように、本発明の心臓デバイスは、心臓の刺激、ペーシング及び/又はカルディオバージョン/除細動治療を提供する治療供給構成にアップグレード可能な心臓モニタ構成(例えば、ループレコーダ)を含むように実施可能である。本発明の他の実施の形態に従って、心臓デバイスは2つ以上のエネルギー送出構成を含むように実施可能である。例えば、心臓デバイスは、経静脈、心外膜又は心内膜の刺激構成を提供するように実施可能であり、皮下の経胸刺激構成を提供するために後で行われるデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。他の例では、本発明の心臓デバイスは、皮下の経胸刺激構成を提供するように実施可能であり、経静脈、心外膜又は心内膜の刺激構成を提供するために後で行われるデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0152】
図12は、心臓デバイス内に組み込むことのできる経胸システムの実施の形態を示している。この実施の形態による心臓デバイスは、図3に関して前述した胸腔内システムを組み込むことができる。従って、この実施の形態による心臓デバイスは、個々に作動するが統合された2つのエネルギー送出構成又は基盤を組み込んでいる。2つのエネルギー送出構成は、胸腔内エネルギー送出、経胸エネルギー送出又は胸腔内/経胸エネルギー送出の組み合わせをもたらすように実施可能である。
【0153】
本発明の心臓デバイスは、胸腔内及び経胸両方のシステムによって提供される構成要素及び機能を組み込んでいるが、明確にするために、このような構成要素及び機能を別々の図(それぞれ図3及び図12)で表す。また、図3及び図12乃至図24に示す実施の形態は類似した構成要素を共有することができ、このような構成要素を、共通の構成要素を用いて実施してもよいし、異なる構成要素として実施してもよいことが理解される。更に、図3及び図12乃至図24に示す実施の形態は類似した機能を共有することができ、共通のアプローチや異なるアプローチを用いてこのような機能を実施することができる。例えば、図3に示す回路は制御システム220を含み、これは制御システム305として図12に示すものと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0154】
とりわけ図12を参照すると、図12に関連する要素及び機能の多くは図4を参照して前述したものと同じであるか又は類似したものである。よって、これらの類似した要素及び機能に関する論述はここでは不要である。しかし、これらの実施態様の違いをいくつか説明する。
【0155】
図12に示す構成によると、心臓デバイスの経胸システムはショック療法回路316を組み込み、この他にペーシング治療回路330を含むことができる。いくつかの実施態様では、カルディオバージョン治療及び除細動治療のうちの一方又は両方を供給するためにショック療法回路316のみが含まれている。他の実施態様では、心臓デバイスの経胸システムは、カルディオバージョン能力及び/又は除細動能力の他に心臓ペーシング能力を組み込むことができる。
【0156】
図12に点線で示すように、心臓デバイスは、制御システム305、皮下電極314及び缶形/中立電極307に結合されたペーシング治療回路330を含むことができる。ペーシング治療回路330は、指令が下されると、選択されたペーシング治療(例えば、特に、先に援用された2003年2月28日出願の米国特許出願番号10/377,274号(公開番号2004/0172066)、及び弁護士事件整理番号GUID.611PAとして本願と同時に出願された「皮下の心調律管理(Subcutaneous Cardiac Rhythm Management)」というタイトルの米国特許出願に開示されるもの)に従ってペーシングパルスを心臓に送出する。
【0157】
図13は心臓デバイスの経胸システムの検出回路402の構成を示しており、検出回路402は心拍数検出回路410及び形態分析回路412のうちの一方又は両方を含む。心拍数検出回路410によって実施される当該技術分野で公知の心拍数ベースの識別アルゴリズムを用いて、不整脈の検出及び検証を行うことができる。当該技術分野で公知の感知された心臓信号の形態ベースの分析により、不整脈の発現の検出及び検証を行うこともできる。心拍数ベース及び形態ベースの両アプローチを用いて、不整脈識別アルゴリズムを段階的又は同時に実施することもできる。
【0158】
本発明の心臓デバイスは、律動の分析及び区別を向上させるように構成可能である。1つの心臓デバイス構成によると、胸腔内リードシステムは、1つ以上の心房電極を有する心房リードを含むことができる。心臓デバイスのコントローラは、1つ以上の皮下電極及び1つ以上の心房電極を用いて頻脈性不整脈の区別を容易にする態様で作動するように、デバイスを構成することができる。例えば、コントローラは、心室から生じた頻脈性不整脈と心房から生じた頻脈性不整脈を区別することができる。
【0159】
更なる例として、心臓デバイスは、皮下かつ心外膜の感知を提供して心調律を検証し、心房細動とノイズの区別など、律動の区別を改善するように構成可能である。他の構成によると、心房リードをもたない経静脈ベースの心室系を皮下のリードと協動させ、心室不整脈と心房不整脈の区別を改善することができる。
【0160】
マイクロプロセッサ406に結合された検出回路402は、感知された心臓信号を経胸心臓刺激デバイスにおいて特に有用な態様で処理する特殊な回路を組み込むか、又はこの回路と通信するように構成可能である。例えば図13に示すように、検出回路402は複数の生理センサ及び非生理センサから情報を受信することができる。図示したように、適切な音響センサを用いて経胸音響をモニタすることができる。例えば、本明細書に説明されるか又は本明細書に援用される目的など多様な目的のために、心音を心臓音響処理回路418によって検出し、処理することができる。音響データは、有線又は無線リンクを経て検出回路402に送信され、心臓信号の検出及び律動の評価の向上に用いられる。例えば、音響を用いて、電気的ノイズを有する正常な心臓洞律動と潜在性致死不整脈(例えば心室頻脈又は心室細動)を区別することができる。
【0161】
検出回路402は、骨格筋の活動をモニタする1つ以上のセンサから情報を受信することもできる。心臓活動信号の他に、骨格筋信号が経胸電極によって容易に検出される。このような骨格筋信号を用いて患者の活動レベルを決定することができる。心臓信号検出との関連において、このような骨格筋信号は心臓活動信号のアーチファクトとみなされ、ノイズとしてみなされる場合がある。処理回路416は、1つ以上の骨格筋センサから信号を受信し、処理された骨格筋信号データを検出回路402に送信する。このデータを用いて、例えば前述の態様で、骨格筋ノイズを有する正常な心臓洞律動と心不整脈を区別することができる。
【0162】
前述のように、検出回路402はノイズ処理回路414に結合されるか又はノイズ処理回路414を組み込むことが好ましい。ノイズ処理回路414は、感知された心臓信号を処理し、感知された心臓信号のノイズ内容を取り除くか又は拒絶することによって感知された心臓信号のSN比を改善する。ノイズ処理回路414は、この他に又はこの代わりに、心臓システムによって感知された心臓を起源としない他の信号から心臓信号を分離/識別する信号分離/識別アルゴリズムを実施することができる。
【0163】
ここで図14を参照すると、本発明の心臓デバイスの実施の形態に組み込むことのできる種々の構成要素のブロック図が示されている。図14は、種々の生理及び非生理パラメータの検出に関連する多数の構成要素を示している。図示のように、心臓デバイスはマイクロプロセッサ506を含み、これは一般に心臓デバイス用の制御システムに組み込まれ、検出回路502に結合されている。センサ信号処理回路510は、多数の異なるセンサからセンサデータを受信することができる。
【0164】
例えば、心臓デバイスは、さまざまなタイプの非生理センサ521、体外又は皮膚の生理センサ522及び/又は内部生理センサ524と協働するか、これらに組み込むことができる。このようなセンサは、例えば、音響センサ、インピーダンスセンサ、酸素飽和センサ及び血圧センサを含むことができる。これらのセンサ521、522、524の各々を、短距離無線通信リンク520を介してセンサ信号処理回路510に通信可能に結合することができる。あるいは、内部生理センサ524など一部のセンサを、有線接続(例えば、電気接続又は光学的接続)を介してセンサ信号処理回路510に通信可能に結合することができる。
【0165】
心臓薬物送達デバイス530を、本明細書で考慮されるタイプの心臓デバイスと協動するように用いることができる。例えば、心臓薬物送達デバイス530は、頻脈及び細動の化学治療のために認可された1つ以上の抗不整脈薬を送達することができる。このような薬剤のリストは、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、モリシジン、ソタロール、アミオダロン、イブチリド及びドフェチリド(例えば、クラスI及びクラスIIIの抗不整脈薬)を含むが、このリストは完全ではなく、限定的でもない。患者の快適さを高め、除細動閾値を下げ、及び/又は不整脈の状態を化学的に治療するために、これらの薬物や他の薬物をカルディオバージョン/除細動治療の供給前後や最中に送達することができる。
【0166】
他の構成に従って、心臓デバイスは、心臓デバイスと協働して作動する非植込み型の患者作動式アクチベータ532を含むことができる。アクチベータ532は通信ユニットを含み、患者が重度の不整脈状態の知覚を感知するとこれに応答して起動信号を生じる。あるいは、又はこの他に、心臓デバイスによる不整脈状態の検出に応答し、起動信号を非植込み型アクチベータ532によって生じることができる。心臓デバイスは、非植込み型アクチベータ532と通信する通信回路を含む。
【0167】
患者又は患者の付添人によってアクチベータ532を作動させ、カルディオバージョン/除細動治療を開始することができる。一般に、心臓デバイスは、起動信号の受信に応答して、適切な治療を開始する前に患者が実際に心臓の異常な状態を経験していることを確認する。心臓デバイスと通信している非植込み型アクチベータ532は、患者が認識できる開始信号を生成して薬物送達療法の手動又は自動の開始を示し、実際に生じた心臓の異常な状態を治療することもできる。
【0168】
アクチベータ532は停止ボタンを含むように構成可能であり、深刻な不整脈の可能性を検出したことを心臓デバイスが示したものの、その検出表示が誤っていると患者が判断した場合、このボタンによって刺激治療の供給を停止することができる。明らかな不整脈の発現が心臓デバイスによって検出された場合は、患者アクチベータ532からの停止信号の受信に関わらず、検出及び確認の直後に治療を供給することが好ましい。
【0169】
図に示す構成要素、機能及び構造構成は、本発明の心臓デバイスに組み込むことのできる種々の特徴や特徴の組み合わせを理解するように意図されたものである。比較的高度な設計から比較的簡潔な設計まで、多様な心臓デバイス構成が考慮されることを理解されたい。そのため、一部の心臓デバイス構成は本明細書に記載の特定の特徴を含むことができ、このようなデバイスの他の構成は本明細書に記載の特定の特徴を除外することができる。
【0170】
図15乃至図24は、本発明の心臓デバイスを用いて実施することのできる方法をいくつか示している。図15乃至図24を参照して説明する方法は、本発明の心臓デバイスを用いて実施することのできる種々の有用な方法の詳述を示すように意図されており、この詳述は完全ではなく限定的でもない。
【0171】
図15は、心臓デバイスの作動中の基本的な構成切換に関連するいくつかの処理を示している。作動中(600)、心臓デバイスを標準治療構成又はテスト構成で作動するように構成することができる。テスト構成は一般に経胸構成であるが、胸腔内構成又はハイブリッド経胸/胸腔内構成であってもよい。特定の心臓デバイス作動構成の選択を、外部で起きた指令(例えば、プログラマ経由など)に応答して、又はソフトウェアの命令に応答してなど、いくつかの方法で行うことができる。標準治療構成が選択された場合(604)、心臓デバイスは、標準治療構成での動作が開始するように構成の切換を行う(606)。テスト構成が選択された場合(604)、心臓デバイスは、テスト構成での動作が開始するように構成の切換を行う(608)。次の作動構成の選択をブロック602で行うことができる。
【0172】
図15では、2つのシステム構成間での心臓デバイス構成の切換に関連する処理が示されている。このような付加的な作動構成を提供する心臓デバイスでの動作のために2つ以上のシステム構成を選択できることを理解されたい。また、後述するように、選択可能な構成のうち1つのみが常に作動するよう、又は同時進行の動作や組み合わせの動作のために複数の構成を選択できるよう、心臓デバイスの作動構成を選択することができる。
【0173】
図16は、1つの実施の形態に従った心臓デバイスの動作中の構成切換に関連するいくつかの処理を示している。この実施の形態によると、心臓デバイスは、胸腔内構成、経胸構成又は複合の胸腔内/経胸構成で作動するように選択的に構成することができる。作動中(620)、心臓デバイスを胸腔内構成又は経胸構成で作動するように構成することができる(622)。心臓デバイスの作動構成を、例えば図15に関連して前述したいくつかの方法で選択することができる。
【0174】
胸腔内構成が選択された場合(624)、心臓デバイスは胸腔内システム構成での作動(626)のために回路を構成する。あるいは、心臓デバイスは、経胸のみの構成か又は複合の胸腔内/経胸構成に関連しうる経胸システム構成での作動(628)のために回路を構成することができる。
【0175】
図17は、2つ以上の心臓デバイス構成に関連する機能を選択して作動させることのできる種々の方法を示している。説明のため、対象となる心臓デバイスが少なくとも第1の構成644と第2の構成660で作動可能であると仮定する。この例示の実施の形態によると、第1の構成での作動(644)は、心臓活動の経胸感知(646)と、心臓活動の異常(例えば、頻脈や徐脈)の検出(648)に応答した適切な心臓刺激治療の経胸供給(650)に関連する。第2の構成での作動(660)は、心臓活動の胸腔内感知(662)と、心臓活動の異常の検出(664)に応答した適切な心臓刺激治療の胸腔内供給(666)に関連する。
【0176】
更に図17に示すように、第1及び第2の構成を種々の方法で選択し、作動させることができる。また、第1及び第2の構成が互いに関連して作動する態様を種々の方法で選択することができる。更に、第1及び第2の構成に関連する個々の機能や機能の集まりを種々の方法で選択的に実施することができる。作動構成の選択を行う種々の方法が図17に示されており、図17の左矢印と右矢印との間に設けられた中央のテキストによって示されている。中央のテキストに示される作動構成選択オプションの各々を、個々又は複数の心臓デバイス機能のために実施することができる。
【0177】
例えば、第1の構成644及び第2の構成660、ならびにこれらに関連する機能(例えば、それぞれ646乃至650及び662乃至666)を選択し、ユーザの指令(例えば、臨床医がプログラマや他の外部指令デバイスを使用することによって生じた指令)に応答して作動させることができる。第1の構成及び第2の構成、ならびにこれらに関連する機能を選択し、心臓デバイスの指令やプログラムの命令に応答して作動させることもできる。更に、第1の構成及び第2の構成、ならびにこれらに関連する機能を選択し、連続的動作、並行動作、段階的動作又は複合動作を行うことができる。
【0178】
図18は、2つの構成及びこれらの関連機能を選択し、所望のシーケンスに従って種々の動作を行うことができる心臓デバイスの実施の形態を示している。この特定の実施の形態では、心臓デバイスは、第1の構成672の又は第2の構成690で作動することができる(670)。この例では、第1の構成は心臓活動の経胸感知(674)を提供する心臓デバイス構成を実施する。第2の構成は、心臓活動の胸腔内感知(692)を提供する心臓デバイス構成を実施する。各構成において、心臓デバイスは心臓活動の異常を検出する(676、694)ように構成されている。これに応答して、心臓デバイスは、経胸的及び/又は胸腔内に適切な心臓刺激治療を供給する(678、696)ように構成可能である。
【0179】
胸腔内系及び経胸系の動作に関連する構成及び機能の多くの他の組み合わせを選択的に実施でき、本明細書に述べる組み合わせをこのような実施可能な組み合わせの例として提供することを理解されたい。心臓デバイスの使用が特に有用となりうるいくつかのシナリオを示す更なる非限定的な実施例を以下に記す。
【0180】
実施例1−同時構成
患者は、単形性心室頻脈性不整脈(MVT)から多形性心室頻脈性不整脈(PVT)、そして心室細動(VF)に進行する(即ち、MVT→PVT→VF)病歴をもち、植込み時の除細動閾値が高い(例えば、従来の31J経静脈ベースのシステムでは十分な安全域ではない)。このような患者を、以下の方法で実施する心臓デバイスの候補患者とすることができる。心臓デバイスの胸腔内システムは、頻脈とVFを区別し、MVTの際に抗頻脈ペーシング及び/又はカルディオバージョンを行うようにプログラム可能である。経胸システムは、VFを検出して除細動治療を行うように使用可能である。
【0181】
実施例2−段階的構成
心臓デバイスを被験患者の集団に植え込むことができる。心臓デバイスのテストシステム(例えば、皮下電極構成のみを用いる経胸システム)を最初に作動するようにプログラムし、治療の供給に関連して標準治療システム(例えば、従来の胸腔内システム)を休止させることができる。テストシステムをx回試みても不整脈を変えることができなかった場合、心臓デバイスは動作を標準治療システムに切り換える。標準治療システムをy回試みても不整脈を変えることができなかった場合、心臓デバイスは双方のシステムの回路及び/又は機能を組み合わせて新規なシステム構成を定め、双方のシステムを用いて不整脈を変える。
【0182】
実施例3−段階的構成
心臓デバイスを被験患者の集団に植え込むことができる。心臓デバイスの標準治療システム(例えば、従来の胸腔内システム)を最初に作動するようにプログラムし、治療の供給に関連してテストシステム(例えば、皮下電極構成のみを用いる経胸システム)を休止させることができる。標準治療システムをx回試みても不整脈を変えることができなかった場合、心臓デバイスは動作をテストシステムに切り換える。次いで、心臓デバイスはテストシステムを用いて不整脈を変えようとする。代わりのアプローチとして、リードの完全性に不具合がある場合、テストシステムを標準治療システムの支援(backup)として用い、通院の緊急性を低減させることができる。
【0183】
前述のように、心臓デバイスは、新しいシステム/機能の性能と確立したシステム/機能の性能との直接的な比較を提供することで特に有用となりうる。図19はこのようなシステム構成を1つ示しており、この構成では、心臓デバイスが第1の構成及び第2の構成で作動している間に心臓デバイス及び/又は外部モニタデバイスによって性能データを取得する(700)。これらのデータを取得して心臓デバイス内に記憶し、後述する高性能患者管理(APM)システムなどの外部システムに後で送信することができる(702)。あるいは、性能データをリアルタイムで取得し、外部システム(例えば、APMシステム)にリアルタイムで送信することができる。プログラマの場合のように、外部システムを患者の近距離に配置してもよいし、通信リンクを介してプログラマや他の呼出デバイス(例えば、ネットワーク接続によってアクセスされるAPMシステム)に通信可能に結合されたシステムなど、患者から遠く離れて配置してもよいことに注意されたい。
【0184】
外部システムは受信した性能データを処理し(704)、第2の構成と比較して第1の構成で作動する際の(又はその逆)心臓デバイス性能の評価を容易にする種々の比較データの形式を生成する。この比較データを用いて、特定の機能や治療の有効性を、コンピュータ支援手段及び/又は手動手段によって評価することができる(706)。
【0185】
本発明の心臓デバイスは、従来のアプローチを用いてこれまでに利用することができなかった他のシステム/機能評価の機会を提供することができる。図20Aに示すように、心臓デバイスの胸腔内システムを標準治療システムとして選択することができる(701)。心臓デバイスの経胸システムをモニタシステムとして選択することができる(703)。このシステム構成において、心臓デバイスは、経胸システムを用いて胸腔内システムの動作をモニタする(705)。心臓デバイスは、胸腔内システム自体を用いて胸腔内システムの動作をモニタすることもできるが、経胸システムは胸腔内システムのみを用いて取得可能なものとは異なるモニタデータを取得できることに注意されたい。胸腔内システムの性能は、経胸システム又は複合システムによって取得したモニタデータを用いて評価可能である(707)。
【0186】
図20Bは、経胸システムを標準治療システムとして選択し(711)、胸腔内システムをモニタシステムとして選択する(713)ことのできる他の評価/モニタのシナリオを示している。このシステム構成では、心臓デバイスは胸腔内システムを用いて経胸システムの動作をモニタする(715)が、心臓デバイスは経胸システム自体を用いて経胸システムの動作をモニタすることもでき、胸腔内システムは、経胸システムのみを用いて取得可能なモニタデータとは異なるモニタデータを取得できることを理解されたい。経胸システムの性能は、胸腔内システム又は複合システムによって取得したモニタデータを用いて評価可能である(717)。
【0187】
図21は、本発明の心臓デバイスを用いることによって実現できる他の能力を示している。心臓デバイスは特定の機能を1つのモード又は構成で有益に行い、この特定の機能は他のモード又は構成で行われる第2の機能の性能を強化することができる。例えば、心臓デバイスのコントローラは、第1の構成(例えば、胸腔内構成)で作動して第1の機能を行うようにデバイスを構成することができる。次に、コントローラは第2の構成(例えば、経胸構成)で作動して第2の機能を行うように心臓デバイスを構成することができ、これによって第1の機能の性能は第2の機能の性能を強化する。
【0188】
図21に示す具体例に従って、心臓デバイスを実施して治療の組み合わせを供給し、種々のタイプの不整脈を治療することができる。図21は、心臓デバイスの胸腔内システム及び経胸システムによってそれぞれ供給されるペーシング治療及び除細動治療の組み合わせを用いて不整脈を治療する1つのアプローチを示している。
【0189】
不整脈を検出し(720)、不整脈の発現を確認した後、心臓デバイスは胸腔内システムを用いたペーシング治療を供給し(722)、心調律を組織化することができる。ペーシング治療を用いても不整脈を正常洞調律に変えることができないと仮定した場合、心臓デバイスは、経胸システムを用いて除細動治療を供給し、不整脈を終了させる(724)。心臓デバイスは、胸腔内システム及び経胸システムのうちの一方又は両方を用いて不整脈の停止又は持続を確認する(726)。不整脈が持続している場合、不整脈を終了させようと、胸腔内システム及び経胸システムのうち一方又は両方を用いて心臓デバイスによって更なる治療を供給することができる。
【0190】
図21に示す方法や他の心臓治療に関連して、本発明の心臓デバイスは、本明細書に援用される米国特許第6,341,235号に開示される閾値未満の二相電気刺激を容易にするような特徴及び機能を組み込むことができる。本発明の心臓デバイスは、本明細書に援用される米国特許第6,411,845号に開示される閾値未満の電気刺激を容易にするような特徴及び機能を組み込むこともできる。
【0191】
図21に示す方法によると、心臓デバイスは、選択された心臓組織の選択された領域に対して行われる単一の電気治療を供給するように構成可能である。単一の電気治療とは、複数の治療の組み合わせを含むものである。図21に示す方法の1つの具体的な実施態様は、ペーシングレベル治療と除細動治療といった2つの別個の治療の供給に関連する。ペーシングレベル治療は、除細動レベルのショック電界強度に対する感受性が比較的低い選択された心臓組織の限局部分に対して行われる。除細動治療はペーシングレベル治療の後か又はこれと同時に行われると共に、心筋細動領域を有する組織の部分に対して行われ、除細動レベル未満のショックがこの領域を制御する。このような心筋細動領域は、任意の領域の局所の電気記録図(又は心電図)対その領域の刺激アーチファクトが1:1である位相ロックによって特徴づけられることが好ましい。
【0192】
選択される心臓組織は心室組織でもよいし、心房組織でもよい。心房組織の場合、心室興奮周期の受攻期(T波)内で生じるであろう第1の除細動ショックは、心室脱分極の後まで生じてはならない。第1の除細動レベルショックは、最後のペーシングレベルショックと一致させて、又はこの後に生じることが好ましい。例えば、最後のペーシングレベルショックは、第1の除細動レベルショックの前に開始する最適期間の始まりよりも遅く生じることが好ましい。この期間は、ECGの形態やECGのある成分、心臓周期長のある割合(例えば、80乃至100%)など、感知された心臓信号から特徴量を抽出することによって決定可能である。最適期間の決定に用いる正確な条件は、特定の臨床及び治療の状況から経験的に決定されるのが一般的であるが、最適期間に設けられる一般的な実用上の限度は、第1の除細動ショックの250ミリ秒前から、第1の除細動ショックと一致する(即ち同時の)もの、即ち1ミリ秒未満内である。
【0193】
図21に示す複合治療供給のアプローチは、第1の除細動レベルショックによる除細動を成功させるのに必要な電圧及び/又はエネルギーを効果的に減少させる。ペーシングレベルショックによって制御される領域を単に限局領域と同一のサイズにしてもよいが、この手順の目的は、細動する心筋の連続領域を組織の制御量の観点で連続的に大きくすることにある。組織の制御量が連続的に多くなるほど、心臓全体の治療を単一の除細動ショックによって成功させることができる確率が高くなり、他の方法で可能であるよりも強度を低くした単一の除細動ショックによる場合は特にそうである。従来のデバイスによって実施されるが本明細書の心臓デバイスでの使用に適用可能な複合ペーシング/除細動治療の更なる詳細は、同一出願人による米国特許第5,797,967号に開示されており、これは本明細書に援用される。
【0194】
図22は、協働して作動する経胸システム及び胸腔内システムの両方を使用する心臓デバイスを用いて実現可能な他の能力を示している。図22に示す方法によると、心室不整脈を防止するために付加的な安全機能を提供しながら種々の治療を心房に提供するように心臓デバイスを構成することができる。図22に示すように、心臓デバイスを実施して心房不整脈を検出する(740)ことができる。心臓デバイスは、胸腔内システム及び経胸システムのうちの一方又は両方を用いて心室不整脈及び心房不整脈の検出と不整脈の発現の確認を行うことができることに注意されたい。
【0195】
心房での発現を示すと、心臓デバイスは胸腔内システムを用いて対象の心房に適切な治療を供給することができる(742)。胸腔内システムは心房リードを含むものと仮定する。胸腔内システムによって心房治療を供給する際、経胸システムは必要に応じて心室頻脈性不整脈支援治療を提供することができる(744)。心房不整脈の停止は、胸腔内システム及び経胸システムのうちの一方又は両方を用いて確認可能である(746)。あるいは、ブロック742の心房治療を経胸システムによって供給し、代わりにブロック744の心室頻脈性不整脈支援治療を胸腔内システムによって提供できることを理解することができる。
【0196】
図23は、本発明の実施の形態に従った心臓デバイスを用いた心室細動(VF)の治療に関連する種々の方法を示している。図23によると、カウンタN及びMを初期化する。Nは心臓デバイスの経胸システムによって供給されるショックの数を表し、Mは心臓デバイスの胸腔内システム(例えば、経静脈システム)によって供給されるショックの数を表す。パラメータX及びYを初期化する。X及びYは、それぞれ経胸システム及び胸腔内システムによって許容されるショックの最大数を表す。
【0197】
心臓デバイスの経胸システムは心室細動の発現を検出し(760)、確認する。これに応答して、心臓デバイスは経胸システムによって除細動治療を供給する(762)。心室細動が終了すると(764)VF検出/治療ルーチンが完了する(766)。
【0198】
心室細動が終了せず(764)、NがXよりも小さい(768)場合、経胸システムによってもう1つのショックを供給する(762)。しかし、NがX以上であると(768)胸腔内システムが心室細動を検出し(770)、これを確認した場合、胸腔内システムによってショックを供給する(772)。心室細動が終了すると(774)VF検出/治療ルーチンが完了する(776)。
【0199】
心室細動が終了せず(774)、MがYよりも小さい(778)場合、胸腔内システムによってもう1つのショックを供給する(772)。しかし、MがY以上である場合(778)、胸腔内システム又は経胸システムは心室細動を検出し(780)、これを検出した場合は胸腔内システム及び経胸システムの組み合わせによってショックを供給する(782)。
【0200】
図24は、本発明の心臓デバイスを用いて所与の患者集団に対して行われた交差研究に関連する特に有用な能力を示している(本発明の心臓デバイスをこの集団の各患者に植え込んだ)。図24に示すように、特定の研究は第1相及び第2相を含み、これらの期間は一般には同じだが、必ずしも同じとは限らない。第1相800の始めに、第1の患者集団(例えば、患者集団の半分)に植え込んだ心臓デバイスを胸腔内システムのみが作動するようにプログラムする(802)。第2の患者集団(例えば、患者集団の残り半分)に植え込んだ心臓デバイスを、経胸システムが胸腔内システムと共に作動するようにプログラムする(804)。研究の第1相の間、第1及び第2の患者集団の心臓デバイスからデータを収集する(806)。
【0201】
第1相800の完了時及び第2相810の始めに、第1の患者集団に植え込んだ心臓デバイスのプログラミングは、心臓デバイスの動作を胸腔内のみのシステム構成から胸腔内システム及び経胸システムの双方が作動する構成に切り換える(812)。第2の患者集団に植え込んだ心臓デバイスのプログラミングは、心臓デバイスの動作を複合の胸腔内/経胸システム構成から胸腔内のみのシステム構成に切り換える(814)。研究の第2相の間、第1及び第2の患者集団の心臓デバイスからデータを収集する(814)。これらのデータを用いて、所与の患者集団における心臓デバイスの性能を評価することができる(818)。
【0202】
本明細書に記載した種々の実施の形態を、呼吸障害(例えば睡眠時無呼吸、呼吸低下及びチェーン−ストークス呼吸など)の検出及び/又は治療に関連させて使用することができる。心臓デバイスは、呼吸障害の検出及び治療をもたらす呼吸障害用回路及び検出アルゴリズムを含むことができる。例えば、心臓デバイスは、経胸インピーダンスに関連する信号を検出するインピーダンス感知構成を組み込むことができる。例えば、心臓デバイスは、インピーダンス感知電極、インピーダンス駆動電極、及び経胸インピーダンスに関連する電圧信号を検出するインピーダンス駆動装置/検出器回路を組み込むことができる。これらの電極は、心臓デバイスの感知電極、ペーシング電極及び/又は除細動電極と同じでもよいし、異なってもよい。経胸インピーダンスの測定値を用いて呼吸に関連する種々のパラメータを計算してもよい。
【0203】
1つのアプローチによると、インピーダンス駆動装置回路は電流を生じ、この電流は血液を介してインピーダンス駆動電極とデバイスハウジングの缶形電極との間を流れる。経胸インピーダンスが変化すると、インピーダンス感知電極の電圧が缶形電極に対して変化する。インピーダンス感知電極と缶形電極との間で生成された電圧信号は、インピーダンス駆動装置/検出器回路内のインピーダンス感知増幅器によって検出される。
【0204】
インピーダンス感知電極で生成された電圧信号は経胸インピーダンスに比例しており、インピーダンスは息を吸うと増加し、息を吐くと減少する。インピーダンス測定値のピーク間遷移は一息で吸った空気の量と比例しており、一回換気量と示される。インピーダンス測定値を更に処理し、一呼吸で移動した空気量に対応する一回換気量や、1分毎に移動した空気量に対応する毎分換気量を決定することができる。
【0205】
本発明の心臓デバイスは、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/309,770号(公開番号2004/0111040)(2002年12月4日出願)、10/643,203号(公開番号2005/0039745)(2003年8月18日出願)、10/643,016号(公開番号2005/0043644)(2003年8月18日出願)及び10/643,154号(公開番号2005/0043772)(2003年8月18日出願)のうちの1つ以上に記載された方法、構造及び/又は技術を用いて呼吸障害の検出、推定及び/又は治療を行うことができる。これらの出願は本明細書に援用される。本明細書に記載された種々の実施の形態を、睡眠の検出、睡眠の質に関するデータの収集及び評価、睡眠の進度、ならびに説明を行った上での睡眠のテスト、診断及び/又は治療に関連させて用いることができる。本発明の心臓デバイスは、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/309,771号(公開番号2004/0111041)(2002年12月4日出願)、10/643,006号(公開番号2005/0043652)(2003年8月18日出願)及び10/642,998号(公開番号2005/0042589)(2003年8月18日出願)のうちの1つ以上に記載された方法、構造及び/又は技術を組み込むことができ、これらの出願は本明細書に援用される。本明細書に記載された種々の実施の形態を、患者に影響を及ぼす状況の条件の検出に関連させて用いることができる。本発明の心臓デバイスは、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/269,611号(公開番号2004/0073093)(2002年10月11日出願)に記載された方法、構造及び/又は技術を組み込むことができ、この出願は本明細書に援用される。
【0206】
本明細書に記載した心臓デバイスの種々の実施の形態を、呼吸性洞性不整脈(RSA)の再現や回復へのアプローチに関連させて用いることができる。本発明の心臓デバイスは、本明細書に援用される米国特許第5,964,788号に記載のようなRSAに関する方法、構造及び/又は技術を組み込むことができる。
【0207】
本明細書に記載のタイプの心臓デバイスを高性能患者管理(APM)システムの構造内で用いることができる。高性能患者管理システムによって、医師は心機能や患者の他の状態を遠隔で自動的にモニタすることができる。1つの例では、患者のリアルタイムでのデータ収集、診断及び治療を可能にする種々の遠隔通信技術及び情報技術を心臓デバイスに備えることができる。本明細書に記載した種々の実施の形態を高性能な患者管理に関連させて用いることができる。本明細書に記載の方法、構造及び/又は技術を適用して患者/装置の遠隔からのモニタ、診断及び治療、又は他のAPM関連の方法を容易にすることができる。本発明の心臓デバイスは、米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号及び第6,440,066号のうちの1つ以上に開示されるデバイス及び/又はシステムの特徴を組み込むことができる。これらの特許は本明細書に援用される。
【0208】
図1乃至図24に示す構成要素、機能及び構造構成は、本発明の心臓手段に組み込むことのできる種々の特徴や特徴の組み合わせを提供するように意図されたものである。本発明の多様な心臓デバイスは、比較的高度な設計から比較的単純な設計まで及ぶものとして考慮されることを理解されたい。従って、本発明の特定の心臓デバイスは本明細書に記載の特定の特徴を含むことができ、このようなデバイスの他の構成は本明細書に記載の特定の特徴を除外することができる。
【0209】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更や追加を前述の好適な実施の形態に対して行うことができる。従って、本発明の範囲は、前述の特定の実施の形態によって限定されるのではなく、後述する請求項やその同等物によってのみ定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】モニタ/記録構成で示されているが心臓エネルギー送出構成に再構成可能な本発明の心臓デバイスの平面図である。
【図2】モニタ/記録構成で示される本発明の心臓デバイスの他の実施の形態の平面図である。
【図3】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの種々の構成要素を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に従った心臓デバイスの種々の構成要素を示すブロック図である。
【図5】本発明の心臓治療構成に従って患者に植え込まれた心臓デバイスの図である。
【図6】本発明の他の心臓治療構成に従って患者に植え込まれた心臓デバイスの図である。
【図7】本発明の1つの実施の形態に従って患者の心臓に植え込まれた2心腔心臓デバイスの治療構成における図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に従って患者の心臓に植え込まれた多心腔心臓デバイスの治療構成における図である。
【図9】本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間の切換を提供する心臓デバイスの構成要素を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間の切換を提供する心臓デバイスの構成要素を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間の切換を提供する心臓デバイスの構成要素を示す図である。
【図12】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの経胸心臓刺激システムの種々の構成要素を示すブロック図である。
【図13】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの経胸心臓刺激システムの種々の処理構成要素及び検出構成要素を示すブロック図である。
【図14】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの種々のセンサ、デバイス及び回路を示すブロック図である。
【図15】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの複数構成の動作に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図16】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの複数構成の選択に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図17】本発明の1つの実施の形態に従って心臓デバイスの複数構成の処理を行うことのできる種々の態様を示すフロー図である。
【図18】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスを用いて実施される特定の複数構成の動作に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図19】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの性能の評価に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図20A】本発明の1つの実施の形態に従って心臓デバイスの性能をモニタするアプローチを示すフロー図である。
【図20B】本発明の1つの実施の形態に従って心臓デバイスの性能をモニタするアプローチを示すフロー図である。
【図21】本発明の1つの実施の形態に従って、心臓デバイスの第1のシステム構成による第1の機能の性能が心臓デバイスの第2のシステム構成による第2の機能の性能によって強化される処理を示すフロー図である。
【図22】本発明の1つの実施の形態に従って、心房治療が心臓デバイスの第1のシステム構成により提供され、心室頻脈支援治療が心臓デバイスの第2のシステム構成により提供される処理を示すフロー図である。
【図23】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの複数のシステム構成の協働動作による心室細動の検出及び治療に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図24】所与の患者集団に対し、集団の各患者に植え込まれた本発明の再構成可能な経胸/胸腔内心臓デバイスを用いて行われた交差研究に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して植込み型医療用具に関し、より詳細には、複数の作動構成を提供する心臓に関連した方法及びシステムとその再構成やアップグレード(高度化)に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な心臓は、規則的で同期した収縮を生じる。通常、心臓の律動収縮は、右心房の上部に位置する特殊化した細胞の集まりである洞房(SA)結節によって制御される。SA結節は典型的な心臓のペースメーカーであり、一般に60乃至100/分の心拍を生じる。SA結節が心臓のペースを正常に整えているとき、心臓は正常洞調律の状態にあると言われる。
【0003】
心臓の電気的な活動が調整されていなかったり不規則である場合は、心臓が律動的でないことを示している。心不整脈は、心臓の効率を低下させるとともに、生命に危険を及ぼす場合がある。心不整脈には多数の病因があり、これらの病因には、心筋梗塞・感染症による組織損傷や、収縮を調整する電気刺激の生成又は同期を行う心臓の能力の低下が含まれる。
【0004】
心拍があまりにも遅いと徐脈が生じる。この状態は、例えば、SA結節の機能障害、洞機能不全症候群の徴候、又は心房と心室との間の電気刺激の伝達の遅れや遮断によって生じうる。徐脈は、十分な循環を維持できないほど遅い心拍数を生じる。
【0005】
心拍数があまりにも速い場合、この状態は頻脈であることを示している。頻脈は、心房や心室を起源とする可能性がある。例えば、心房で生じる頻脈は心房細動と心房粗動を含む。これら双方の状態は、心房の急激な収縮によって特徴づけられる。心房の急激な収縮は、血行力学的に非効率的であるうえ、心拍数にも悪影響を及ぼしうる。
【0006】
例えば、心室の心筋において電気的な活動が正常洞調律よりも速い速度で生じると、心室頻脈が起こる。心室頻脈は急速に悪化して心室細動になる場合がある。心室細動は、電気的な活動が心室組織内で極めて急速に、調整されずに生じることによって現れる状態である。心室組織の急速で不規則な刺激によって同期収縮が阻まれ、血液を身体に効果的に送り出す心臓の能力が低下する。これは、心臓が2、3分以内に洞律動に戻されない限り生命にかかわる状態である。
【0007】
植込み型の心調律管理システムが、重症の不整脈患者への効果的な治療法として使用されている。これらのシステムは一般に1つ以上のリードと回路を含み、心臓の1つ以上の内側表面や外側表面からの信号を検出する。また、このようなシステムは、心臓の1つ以上の内側表面や外側表面で心臓組織に印加される電気パルスを生成する回路を含む。例えば、患者の心臓内に延びたリードが電極に接続されており、電極は心筋と接触して心臓の電気信号を検出し、種々の不整脈治療法に従ってパルスを心臓に送る。
【0008】
典型的な植込み型除細動器(ICD)は、少なくとも1つの除細動電極に接続された1つ以上の心内膜リードを含む。このようなICDは、高エネルギーのショックを心臓に送り、心室頻脈又は心室細動を止め、心臓の正常洞調律を回復させることができる。ICDはペーシング機能を含むこともできる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0230229号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0004615号
【特許文献3】米国特許第5,313,953号
【特許文献4】米国特許第5,388,578号
【特許文献5】米国特許第5,411,031号
【特許文献6】米国特許第4,562,841号
【特許文献7】米国特許第5,036,849号
【特許文献8】米国特許第5,284,136号
【特許文献9】米国特許第5,376,106号
【特許文献10】米国特許第5,540,727号
【特許文献11】米国特許第5,836,987号
【特許文献12】米国特許第6,044,298号
【特許文献13】米国特許第6,055,454号
【特許文献14】米国特許第5,331,966号
【特許文献15】米国特許第5,133,353号
【特許文献16】米国特許第5,179,945号
【特許文献17】米国特許第5,314,459号
【特許文献18】米国特許第5,318,597号
【特許文献19】米国特許第5,620,466号
【特許文献20】米国特許第5,662,688号
【特許文献21】米国特許出願公開第2002/0107544号
【特許文献22】米国特許出願公開第2002/0107548号
【特許文献23】米国特許出願公開第2003/0130702号
【特許文献24】米国特許第6,411,848号
【特許文献25】米国特許第6,285,907号
【特許文献26】米国特許第4,928,688号
【特許文献27】米国特許第6,459,929号
【特許文献28】米国特許第5,334,222号
【特許文献29】米国特許第6,026,320号
【特許文献30】米国特許第6,371,922号
【特許文献31】米国特許第6,597,951号
【特許文献32】米国特許第6,424,865号
【特許文献33】米国特許第6,542,775号
【特許文献34】米国特許第6,353,759号
【特許文献35】米国特許第6,351,669号
【特許文献36】米国特許出願公開第2005/0119708号
【特許文献37】米国特許出願公開第2004/0230128号
【特許文献38】米国特許第5,301,677号
【特許文献39】米国特許第6,438,410号
【特許文献40】米国特許第6,708,058号
【特許文献41】米国特許第6,487,443号
【特許文献42】米国特許第6,259,947号
【特許文献43】米国特許第6,141,581号
【特許文献44】米国特許第5,855,593号
【特許文献45】米国特許第5,545,186号
【特許文献46】米国特許出願公開第2004/0230129号
【特許文献47】米国特許第5,372,606号
【特許文献48】米国特許第5,411,525号
【特許文献49】米国特許第5,468,254号
【特許文献50】米国特許第5,634,938号
【特許文献51】米国特許出願公開第2004/0172066号
【特許文献52】米国特許第5,203,348号
【特許文献53】米国特許第5,230,337号
【特許文献54】米国特許第5,360,442号
【特許文献55】米国特許第5,366,496号
【特許文献56】米国特許第5,397,342号
【特許文献57】米国特許第5,391,200号
【特許文献58】米国特許第5,545,202号
【特許文献59】米国特許第5,603,732号
【特許文献60】米国特許第5,916,243号
【特許文献61】米国特許第5,300,106号
【特許文献62】米国特許出願公開第2005/0131476号
【特許文献63】米国特許出願公開第2005/0131477号
【特許文献64】米国特許出願公開第2005/0131478号
【特許文献65】米国特許第5,683,431号
【特許文献66】米国特許第6,341,235号
【特許文献67】米国特許第6,411,845号
【特許文献68】米国特許第5,797,967号
【特許文献69】米国特許出願公開第2004/0111040号
【特許文献70】米国特許出願公開第2005/0039745号
【特許文献71】米国特許出願公開第2005/0043644号
【特許文献72】米国特許出願公開第2005/0043772号
【特許文献73】米国特許出願公開第2004/0111041号
【特許文献74】米国特許出願公開第2005/0043652号
【特許文献75】米国特許出願公開第2005/0042589号
【特許文献76】米国特許出願公開第2004/0073093号
【特許文献77】米国特許第5,964,788号
【特許文献78】米国特許第6,221,011号
【特許文献79】米国特許第6,270,457号
【特許文献80】米国特許第6,277,072号
【特許文献81】米国特許第6,280,380号
【特許文献82】米国特許第6,312,378号
【特許文献83】米国特許第6,336,903号
【特許文献84】米国特許第6,358,203号
【特許文献85】米国特許第6,368,284号
【特許文献86】米国特許第6,398,728号
【特許文献87】米国特許第6,440,066号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数の作動構成をサポートし、強化された能力をもたらすように再構成可能な心臓システム及び方法に関する。一部のシステム構成は、心臓システムと接続するために1つ以上の植込み可能なリード、モジュール又はセンサの追加を必要とする場合があるが、本発明による心臓システムの再構成は、心臓システムの外植や交換を行わずになされることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の心臓デバイスは、個々に作動するが統合された2つ以上のシステム構成で作動するように実施されることが好ましい。2つ以上のシステム構成は、他のシステム構成から独立して作動してもよいし、他のシステム構成と組み合わせて作動してもよい。概して、本発明による心臓デバイスは、第1の構成では所定の態様で機能することができ、更に、他の構成が使用可能になった際には他の構成で強化された態様で機能することができる。心臓デバイスは、選択された構成を用いて作動してもよいし、連続的な作動構成、段階的な作動構成、又は同時に作動する構成のうち2つ以上を用いて作動してもよい。
【0011】
本発明の1つの実施の形態において、心臓デバイスは、第1及び第2の電極が結合されたハウジングを含む。心臓デバイスは、心臓感知回路及びエネルギー送出回路を含む。デバイスがモニタ構成で作動される際、第1及び第2の電極を心臓活動感知のために構成することができる。エネルギー送出回路を第1及び第2の電極に結合することができ、第1及び第2の電極は、デバイスがエネルギー送出構成で作動される際、心臓活動及びエネルギー送出のために構成することができる。
【0012】
本発明の他の実施の形態において、心臓デバイスは、第1及び第2の電極が結合されたハウジングを含む。心臓デバイスは、心臓感知回路及びエネルギー送出回路を含む。デバイスが第1の構成で作動される際、第1及び第2の電極を心臓活動感知及びエネルギー送出のために構成することができる。デバイスが第1の構成とは異なる第2の構成で作動される際、第1及び第2の電極を心臓活動感知及びエネルギー送出のために構成することができる。
【0013】
実施の形態によっては、心臓デバイスは、複数の構成での心臓の感知及び/又はエネルギー送出を容易にするリード構成を含むように実施される。典型的なリード構成は、胸腔内の電極構成と、皮下で非胸腔内の電極構成とを含む。これらの電極構成を心臓デバイスによって選択的に使用し、第1、第2、第3又は他の構成での動作を行うことができる。
【0014】
他の実施の形態において、心臓デバイスは、複数の構成での心臓の感知及び/又はエネルギー送出を容易にするリード構成を含むように実施される。心臓デバイスのリードインターフェースが、リード構成の植込み後の変更を容易にするように実施される。リードインターフェースは、リード構成の植込み後の結合や減結合を可能にし、患者の状態が時間と共に変化又は進行した場合に強化した機能や異なる機能(例えば、アップグレード又はダウングレードした機能)を可能にするように実施される。典型的なリード構成は、胸腔内の電極構成と、皮下で非胸腔内の電極構成とを含む。これらの電極構成を心臓デバイスによって選択的に使用し、第1、第2、第3又は他の構成での動作を行うことができる。
【0015】
実施の形態によっては、ハウジング内に設けられたコントローラがエネルギー送出回路及び検出回路に結合される。コントローラは、皮下の電極のみか又は少なくとも皮下の電極を用いた第1の構成で作動し、リード電極のみか又は少なくともリード電極を用いた第2の構成で作動するようにシステムを構成する。コントローラは、第1の構成と第2の構成を選択的に切り換えることができ、第1の構成及び第2の構成に関連する構成要素及び回路を選択的に使用可能・使用不可にすることができる。例えば、第1の構成は経胸構成を定めることができ、第2の構成は胸腔内の構成を定めることができる。コントローラは、これらの構成を選択的に使用可能・使用不可にすることができ、経胸及び胸腔内の構成要素と回路の組み合わせを用いて作動するようにシステムを構成することができる。
【0016】
他の実施の形態によると、システムは、リード電極のみか又は少なくともリード電極を用いた標準治療構成と、皮下の電極のみか又は少なくとも皮下の電極を用いた代わりの構成又はテスト構成とで作動するようにコントローラによって構成可能である。標準治療システム構成及び代わりのシステム構成の各々は、独立して又は協働で心臓活動の検出及び刺激の提供をすることができる。
【0017】
1つの実施の形態において、複数システムデバイスの第1のシステムは標準治療システムとして構成される。複数システムデバイスの第2のシステムはモニタシステムとして構成される。モニタシステムは、標準治療システムの性能をモニタする。例えば、第1又は第2のシステムを胸腔内システムとし、第1及び第2のシステムのうちのもう一方を経胸システムとすることができる。
【0018】
更なる実施の形態に従うと、前述のシステムのコントローラは、第1及び第2の構成の各々で作動する際に特定の機能を行い、第1及び第2の構成の各々で作動する際に特定の機能の性能に関連する性能データを取得するようにシステムを構成する。例えば、評価の対象となる特定の機能を、徐脈及び頻脈の感知に関連する機能、頻脈性不整脈の検出もしくは治療に関連する機能、刺激波形の生成及び送出のうち一方もしくは両方に関連する機能、又はリードシステム及び皮下電極のうちの一方もしくは両方の構成に関連する機能とすることができる。評価の対象となる特定の機能は、例えば、心拍数に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第1のサブ機能と、形態に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第2のサブ機能を含むこともできる。
【0019】
本発明の他の実施の形態によると、心臓を感知し、刺激する方法は、第1の構成で心臓活動を経胸的に感知することと、第1の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、経胸的に又は胸腔内に心臓刺激治療を供給することを含む。この方法は、第2の構成で心臓活動を胸腔内で感知することと、第2の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、経胸的に又は胸腔内に心臓刺激治療を供給することも含む。この方法は、第1及び第2の構成を選択的に使用可能・使用不可にすることを更に含む。
【0020】
他のアプローチでは、心臓活動が第1の構成で経胸的に又は胸腔内で感知され、第1の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が経胸的に供給される。このアプローチに加え、心臓活動が第2の構成で胸腔内で又は経胸的に感知され、第2の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が胸腔内に供給される。
【0021】
更なるアプローチによると、心臓活動が第1の構成で経胸的に感知され、第1の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が経胸的に又は胸腔内に供給される。心臓活動が第2の構成で胸腔内で感知され、第2の構成での作動中に感知された治療を要する心臓の状態に応答し、心臓刺激治療が胸腔内に又は経胸的に供給される。第1及び第2の構成の各々で作動する際に特定の機能が行われる。第1及び第2の構成の各々で作動する際の特定の機能の性能に関連する性能データが、後に続く評価のために取得される。
【0022】
実施の形態によっては、リードインターフェースをハウジングに結合でき、心臓リードを受け入れるように構成することができる。コントローラが、リードインターフェース、メモリ即ち記録回路、及びエネルギー送出回路に結合されており、コントローラは、心臓リード又はモジュールのリードインターフェースへの結合に少なくとも部分的に応答し、デバイスの動作をモニタ構成(例えば、ループ記録構成)からエネルギー送出構成に移行させる。
【0023】
心臓デバイスは、リード又はモジュールをデバイスのハウジングに接続するように構成されたヘッダを含むことができる。ヘッダはスイッチ構成を含み、1つ以上のリード又はモジュールのヘッダへの接続に少なくとも部分的に応答して、モニタ構成と治療構成との間のデバイスの移行を行うことができる。心臓デバイスの作動構成間の切換は、ハードウェアスイッチ、ソフトウェアスイッチ、ソフトウェアアップグレードもしくはスワップ、又は他の切換アプローチを用いて行うことができる。心臓デバイスを、心内膜リード、心外膜リード、皮下リード、センサもしくは電極モジュール及びアレイ、ならびに/又は他のリードやセンサと共に使用することができる。
【0024】
他の実施の形態に従うと、心臓デバイスは、ハウジングと、ハウジング内に設けられた検出回路及びエネルギー送出回路とを含む。患者の皮下で非胸腔内に配置するように構成された1つ以上の皮下電極が、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。リードインターフェースがハウジング上に設けられており、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。リードインターフェースは1つ以上のリード電極を含む少なくとも1つのリードを収容するように構成されており、この1つ以上のリード電極は患者の胸腔内に配置するように構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、リードインターフェース、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。このシステムは、第1の構成ではリードが存在しない状態で皮下電極を用いて作動可能であり、第2の構成では少なくとも1つ以上のリード電極を用いて作動可能である。システムは、第1及び第2のシステム構成の各々において心臓活動の感知及び検出をそれぞれ提供することができる。
【0025】
システムは、特定の作動構成により、皮下電極のみ、リード電極のみ、又は皮下電極及びリード電極のうち選択されたものを用いて作動するように構成可能である。缶形電極(can electrode)をハウジングの上又は中に設けることができ、システムは第1及び第2の構成のうちの一方又は両方において缶形電極を用いるように構成可能である。1つの実施態様では、第2の構成において単極構成を選択し、リード電極及び皮下電極のうち選択されたものを用いて感知、ペーシング及びショックのうち1つ以上を行うことができる。
【0026】
システムは切換マトリックスを更に含むことができ、切換マトリックスは検出回路、エネルギー送出回路及び皮下電極に結合されており、また、リードインターフェースを介してリード電極に結合されている。コントローラは、リード電極及び皮下電極のうち選択されたものを検出回路及びエネルギー送出回路の選択された入力又は出力に結合するように切換マトリックスを構成することができる。例えば、コントローラは、リード電極及び皮下電極のうち選択されたものを検出回路及びエネルギー送出回路の入出力と結合するように切換マトリックスを構成し、捕捉閾値の決定を行うことができる。
【0027】
コントローラは、例えば、患者の体外の信号源から受信した信号、所定の状態、所定の心調律、不整脈、不整脈の検出の失敗や不整脈の治療、所定期間の終了又は定期的な疾患の発現に応答して、第1及び第2の構成のうちの一方で選択的に作動するようにシステムを構成することができる。コントローラは、第1及び第2の構成で同時に作動するようにシステムを構成してもよいし、第1及び第2の構成間で動作を切り換え、第1及び第2の構成の各々を用いて心調律の検出や不整脈の治療を行うようにシステムを構成してもよい。
【0028】
他の実施の形態に従うと、本発明の方法は、第1の構成及び第2の構成で作動可能な植込み型心臓刺激デバイスを提供することを含む。第1の構成での動作は、患者の皮下及び非胸腔内に配置するように構成され、心臓活動を感知して心臓刺激治療を供給する1つ以上の皮下電極の使用を含む。第2の構成での動作は、心臓活動を感知して心臓刺激治療を供給する少なくとも1つのリードの使用を含み、リードは、患者の胸腔内に配置するように構成された1つ以上のリード電極を含む。この方法は、リードが存在しない状態で心臓刺激デバイスを第1の構成で作動させることと、リードを心臓刺激デバイスに結合することによって心臓刺激デバイスの第2の構成での動作を少なくとも部分的に可能にすることを更に含む。
【0029】
第1及び第2の構成は、1つ以上のカルディオバージョン/除細動モード又はペーシングモードをサポートすることができる。例えば、第1又は第2の構成のうちの一方はペーシングモードをサポートすることができ、第1及び第2の構成のうちの他方はカルディオバージョン/除細動モードをサポートすることができる。
【0030】
この方法は、同時の動作のために第1及び第2の構成を使用可能にすることや、不整脈のときのような連続的又は段階的な動作のために第1及び第2の構成を選択的に使用可能・使用不可にすることを含むこともできる。
【0031】
この方法は、第1及び第2の構成の各々で作動する際に性能情報を取得することを更に含んでもよい。この性能情報を用いて比較データを生成することができる。比較データは、第1及び第2の構成のうちの一方で作動する際の性能を第1及び第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含むことができる。
【0032】
1つの実施の形態では、心臓刺激デバイスは、主要作動構成として第1及び第2の構成のうちの一方で作動し、主要作動構成での作動中に検出された性能の異常に応答して第1及び第2の構成のうちの他方で作動することができる。他の実施の形態では、第1及び第2の構成のうちの一方で作動している間に第1の機能を行い、第1及び第2の構成のうちの他方で作動している間に第2の機能を行うことができ、第1の機能の性能は第2の機能の性能を強化する。例えば、第1の機能は、不整脈を組織化する(instill organization in an arrhythmia)第1のエネルギー送出機能を含むことができ、第2の機能は、不整脈を終了させる第2のエネルギー送出機能を含むことができる。
【0033】
本発明の他の実施の形態に従うと、植込み型システムは、ハウジングと、ハウジング内に設けられたエネルギー送出回路及び検出回路と、ハウジング内に設けられた切換マトリックスを含む。切換マトリックスは検出回路及びエネルギー送出回路に結合されており、第1及び第2の電極接続構成を含む。第1の電極接続構成は、1つ以上の皮下で非胸腔内の電極と結合するよう構成されており、第2の電極接続構成は、1つ以上の胸腔内の電極と結合するよう構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、切換マトリックス、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。コントローラは、第1の電極接続構成のみを使用可能にすることによって第1の構成で作動し、少なくとも第2の電極接続構成を使用可能にすることによって第2の構成で作動するようにシステムを構成する。
【0034】
この実施の形態によると、第1又は第2の構成は心臓活動のモニタのみの構成を含む。他の実施態様では、第1又は第2の構成は心臓エネルギー送出構成を含む。更なる実施態様では、第1及び第2の構成の各々は心臓のモニタ及びエネルギー送出構成を含む。
【0035】
更なる実施の形態に従うと、植込み型システムは、ハウジングと、ハウジング内に設けられた検出回路及びエネルギー送出回路と、ハウジング上に設けられ、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されたインターフェースを含む。インターフェースは、少なくとも1つの胸腔内電極構成と、少なくとも1つの皮下で非胸腔内の電極構成を収容するように構成されている。コントローラがハウジング内に設けられており、インターフェース、エネルギー送出回路及び検出回路に結合されている。このシステムは、皮下・非胸腔内電極構成のみを用いた第1の構成で作動し、胸腔内電極構成のみを用いた第2の構成で作動し、非胸腔内及び胸腔内の電極構成を用いた第3の構成で作動することができる。このシステムは、第1、第2及び第3のシステム構成の各々で心臓活動の感知及び刺激をそれぞれ提供することができる。
【0036】
この実施の形態によると、システムは、胸腔内電極構成とインターフェースとの間を接続せずに第1の構成のみで作動できる。胸腔内電極構成をインターフェースに結合することにより、システムは第2の構成又は第3の構成で作動可能になる。システムは、皮下・非胸腔内電極構成とインターフェースとの間を接続せずに、第2の構成のみで作動することができる。皮下・非胸腔内電極構成をインターフェースに結合することにより、システムは第1の構成又は第3の構成で作動可能になる。
【0037】
更に他の実施の形態に従って、心臓の感知及び刺激方法は、第1の構成、第2の構成及び第3の構成で作動可能な植込み型心臓刺激システムを提供することを含む。第1の構成は皮下・非胸腔内電極構成のみを使用し、第2の構成は胸腔内の電極構成のみを使用し、第3の構成は非胸腔内及び胸腔内の電極構成を使用する。このシステムは、第1、第2及び第3のシステム構成の各々で心臓活動の感知及び刺激をそれぞれ提供することができる。
【0038】
この実施の形態によると、この方法は、胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続せず、皮下・非胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続した第1の構成のみで作動する心臓刺激システムを使用可能にすることを含む。この方法は、皮下・非胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続せず、胸腔内電極構成と心臓刺激デバイスとの間を接続した第2の構成のみで作動する心臓刺激システムを使用可能にすることも含む。この方法は、心臓刺激デバイスと皮下・非胸腔内電極構成及び胸腔内電極構成の各々との間を接続した第1、第2又は第3の構成で作動する心臓刺激システムを使用可能にすることを更に含む。
【0039】
更に他のアプローチでは、心臓刺激デバイスは、少なくとも1つの皮下・非胸腔内電極を用いるなど、電極のうち少なくとも2つを用いて経胸インピーダンスの測定を容易にすることができる。心臓刺激デバイスは、経胸インピーダンスを用いて呼吸の障害を検出することができる。心臓刺激デバイスは呼吸の障害を治療することもできる。
【0040】
本発明の前述の概要は、本発明の各実施形態や全ての実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び請求の範囲を参照することにより、本発明の利点及び達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は種々の変更物や代わりの形態を生じうるが、本発明の詳細を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、本発明を記載される特定の実施の形態に限定する意図ではないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に入る変更物、同等物及び代替物を全て含むように意図される。
【0042】
例示する実施の形態の下記の説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの図面には、本発明を実施することのできる種々の実施の形態が例として示されている。他の実施の形態を用いてもよく、構造上及び機能上の変更が本発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能であることが理解されよう。
【0043】
本発明の原理に従って実施される植込み型心臓デバイスは、後述する特徴、構造、方法又はこれらの組み合わせのうち1つ以上を含むことができる。例えば、心臓の刺激装置やモニタを、後述する有利な特徴や処理のうちの1つ以上を含むように実施することができる。このような刺激装置、モニタ又は他の植込み型デバイスや部分植込み型デバイスは、本明細書に記載の特徴の全てを含む必要はなく、有用な構造や機能を提供する選択された特徴を含んで実施できるように意図される。
【0044】
植込み型心臓デバイスと呼ばれるデバイスの一つが、種々の有利な特徴や処理を含んで本明細書に記載されている。本発明による心臓デバイスの文脈中の特徴及び処理の記載は限定されない例示の目的で設けられているにすぎず、植込み型及び非植込み型デバイスを含む他のタイプのデバイスにおいてこのような特徴及び処理を実施できることが理解される。例えば、本明細書に記載の特徴及び処理を、心臓モニタ、ペースメーカー、除細動器、再同期装置など(本明細書に援用される種々の特許に開示されるデバイスを含む)において実施することができる。本明細書に記載の特徴及び処理を、経静脈、心内膜、心外膜、皮下もしくは表層の電極のうち1つ以上を使用するデバイス構成、又はこれらの電極の組み合わせを用いたデバイスにおいて実施できることが更に理解される。
【0045】
一般に、本発明の心臓デバイスは2つ以上のシステム構成で作動するように実施可能であり、各システム構成を選択的に使用可能・使用不可にすることができる。一般に、所与のシステム構成を使用可能・使用不可にすることは、他の要因のなかでも、患者のニーズ、患者の状態の進行具合、医師の選択した治療法やこのような治療法の変更、治療法の変更を必要とする状態、デバイスソフトウェアの改変やアップグレード(例えば、改良された又は新しい治療ソフトウェア)又はリード構成やその変更と相関関係にある。また、所与のシステム構成を使用可能・使用不可にすることにより、1つ以上のテスト構成(例えば、純粋に皮下の構成)の評価及び/又は臨床研究が容易になると同時に、第2の標準治療構成を提供することが可能になる。本発明の心臓システムの再構成は、心臓システムの外植や交換を行わずになされることが好ましい。ある実施の形態では、本発明の心臓システムの再構成は、植え込まれたデバイスのハウジングの外植や交換を行わずに、後から植え込まれるリード、モジュール又はセンサとの植込み後接続を含むことができる。
【0046】
本発明の心臓デバイスとは、第1の構成において所定の態様で機能し、更に、他の構成が使用可能になった場合は他の構成で強化された態様で機能することのできるデバイスである。例えば、初めは心臓モニタデバイスとして機能するが、後に心臓刺激デバイスとして機能するために行う心臓デバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むよう、心臓デバイスを実施することができる。更なる例として、初めは経静脈、心外膜又は心内膜モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するが、後に皮下・経胸モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するために行うデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むよう、心臓デバイスを実施することができる。更に別の例では、初めは皮下・経胸モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するが、後に経静脈、心外膜又は心内膜モニタデバイス又は刺激デバイスとして機能するために行うデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むよう、本発明の心臓デバイスを実施することができる。
【0047】
一部の実施の形態では、本発明の心臓デバイスは種々の構成のうち選択された1つの構成で作動でき、1つ以上の他の構成は使用不可のままか未使用のままである。他の実施の態様では、心臓デバイスは、2つ以上の構成で同時に又は段階的に作動することができる。例えば、皮下・経胸モニタデバイス又は刺激デバイスとして、また、経静脈、心外膜又は心内膜のモニタ又は刺激デバイスとして選択的、連続的又は同時に機能するように本発明の心臓デバイスを実施することができる。
【0048】
心臓刺激治療を提供する前に、診断のために心臓のモニタを提供することが望まれる場合、本発明の実施の形態による心臓デバイスを有益に用いることができる。例えば、本発明の再構成可能なアプローチにより、純粋なモニタ及び診断システム構成から、心臓の治療を要する状態に進行した患者やこのような状態であると診断された患者を対象とする治療供給システム構成にデバイスをアップグレードすることができる。このようなアップグレード能力を提供する例示的なデバイス及び機能は、同一出願人による同時係属の米国特許出願番号10/462,001号(公開番号2004/0230229)(2003年6月13日出願)及び10/785,431号(公開番号2005/0004615)(2004年2月24日出願)に開示されている。これらは本明細書に援用され、これらの態様を本発明の実施の形態に組み込むことができる。
【0049】
本発明の心臓デバイスは、当該技術分野で公知の心臓モニタによって従来から提供されている機能を実施し、再構成の後に心臓治療を提供することができる。例示的な心臓モニタ回路、構造及び機能(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスに組込可能である)は、同一出願人による米国特許第5,313,953号、第5,388,578号及び第5,411,031号に開示されており、これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0050】
他の実施の形態に従うと、独立して作動するが統合されている少なくとも2つの心臓刺激構成をサポートするように、本発明の心臓デバイスを実施することができる。これらのシステム構成の各々は、感知能力、検出能力、診断能力及び治療能力を含んでもよいが、システム構成のうちの1つ以上は、感知能力のみ又はモニタ能力のみなど、さほど高度でない実施の態様で最小の能力を提供してもよい。
【0051】
1つの実施の形態によると、(1つ以上の経静脈、心内膜及び/又は心外膜電極を含むことができる)従来の経静脈ベースの電極構成に従って心臓デバイスを実施することができ、心臓デバイスの第2のシステム構成を皮下のみのシステムとして実施することができる。あるいは、一方のシステム構成を標準治療システム構成として実施し、他方をテストシステム構成として実施することができる。本発明の心臓デバイスは、独立して作動するが統合されている3つ以上の心臓モニタ及び/又は刺激システム構成を含むように実施可能であることが理解される。
【0052】
心臓デバイスのシステム構成は、同時(並行して)、段階的(例えば、同一の不整脈の発現において)又は連続的に作動することができる。心臓デバイスは、例えば、所定の態様で従来の構成又はモードと皮下の構成又はモードを交互に行うことができる。例えば、心臓デバイスは、N回の不整脈の発現に対しては従来の構成で作動し、M回の不整脈の発現に対しては皮下の構成に切り換えることができる(ここでNはMに等しくてもよいし異なっていてもよい)。このような構成及びモードの切換は、システムプログラミングに従って、又はプログラマなどの外部デバイスにより生成された指令信号に応答して決定可能である。
【0053】
従来の、即ち広く承認された心調律管理(CRM)の利点を保持しながら検出及び治療の新しい代替物を捜し求めることが要求される場合、本発明の心臓デバイスを有益に用いることができる。例えば、本発明の心臓デバイスによって、更なる共存症を起こした患者への治療をアップグレードすることができ、新規な心臓管理技術を迅速に開発することができる。本発明の心臓デバイスは、確立されたシステム構成が提供する安全性や有効性を犠牲にせずに、新しいシステム構成の実現可能性を証明することもできる。例えば、従来のCRMをサポートする一方で、心臓デバイスを用いて皮下除細動技術の開発や導入を容易にすることができる。
【0054】
本発明の心臓デバイスは、例えば、新しいシステムのデータ対確立したシステムのデータ(対データ)の直接比較を行うための基盤を提供することができる。心臓デバイスの共同システム構成は、例えば、主要なシステム構成の性能を向上させる補足データを提供することができる(例えば、皮下リードからの遠距離場信号は律動診断を改善することができる)。特に、心臓デバイスは、研究開発のためのさまざまな方法や、製品の設計、実施、そして最終的には患者の体内での使用において、データ収集及びこのようなデータの比較を(心臓デバイス又は外部処理システムによって)容易にすることができる。
【0055】
本発明の心臓デバイスは、慢性的な通院環境下の患者から重要なデータを取得できるようにすることによって、とりわけ皮下の心調律管理システムの開発の促進に好適である。本発明の心臓デバイスは、市場で認可されている既存の技術の安全性を用いて実験データを収集する。このような心臓デバイスにより、対データの収集に有益な技術である交差研究の設計において新しい技術と既存の技術との比較を行うこともできる。心臓デバイスの植込み手順は、植込みに関連するリード、供給システム及び外科的処置の経験に加えて、詳しい感知/検出データ及び/又は治療データを取得する機会をもたらす。心臓デバイスは、電源の状態、治療供給履歴及び/又は患者の状態の診断など、種々の患者・システム診断データを取得することもできる。
【0056】
心臓デバイスのある実施態様に従って経胸感知能力及び/又は刺激能力を追加することにより、従来の心調律管理デバイスの機能を大幅に強化することができる。例として、心臓再同期療法除細動器(CRT−D)は、左右の心室又は左心室のみに電気刺激を提供して心室収縮を同期させることにより、心臓再同期療法を心不全の治療に提供することができる。また、このようなデバイスは心室頻脈の治療を提供し、心室頻脈(VT)、心室細動(VF)及び突然の心臓死(SCD)に関連した律動を治療する。本発明の心臓デバイスは、CRT−D回路を含むように構成可能であり、皮下の感知リードを含むように変更可能である。皮下の感知リードは、例えばCRT−D回路の左心室及び/又は右心房感知チャネル(又は他のチャネル)に接続可能である。皮下の心電図を必要に応じて記憶し、遠隔測定するように、この心臓デバイスを更に変更することもできる。残りの機能は、経静脈リードを用いて通常のICD−VR動作を提供することができる。他のアプローチでは、心臓デバイスは、高度な心房不整脈管理を更に提供する植込み型除細動器(ICD)回路を含むように構成可能である。このような心臓デバイスは、心臓の心房及び心室での異常な心拍数を管理するように設計された特徴を含むことができる。
【0057】
他の実施態様に従って、ICD回路を組み込んだ心臓デバイスは、皮下の感知・検出アルゴリズムと、このようなアルゴリズムを製造後に修正する能力を含むように強化可能である。このような心臓デバイスは、例えば並行構成又はモードで作動させながら皮下の感知・検出の有効性と従来の感知・検出の有効性を比較するようにプログラム可能である。皮下の感知/検出又は従来の感知/検出を用いて、デバイスの挙動をプログラミングに基づいて決定することができる。治療法は、胸腔内のみ、胸腔内と経胸の混合、又は経胸のみとなるようにプログラム可能である。
【0058】
本発明の心臓デバイスを患者の胸部の皮下に植え込むことができる。例えば、患者の前部、後部、側部、又は心臓活動の感知や心臓刺激治療の供給に好適な他の身体の部位に位置決めして心臓デバイスを皮下に植え込むことができる。特に治療的な構成において、胸部、腹部、鎖骨下部など身体のいくつかの異なる部位に心臓デバイスの素子を配置し、電極素子を心臓の近く、周り、中又は上などそれぞれ異なる部分に配置できることが理解される。例えば、心臓デバイスの胸腔内のリード/電極素子を、心臓、大血管又は冠状血管系の上又は中に配置することができる。
【0059】
心臓デバイスの主ハウジング(例えば、動作缶や非動作缶)は、例えば胸郭外の肋間もしくは肋下の位置、腹部内又は上胸部(例えば、第3肋骨よりも上などの鎖骨下部の位置)に配置するように構成可能である。特に治療的な構成において、心臓デバイスの経胸構成は概して1つ以上の電極を使用し、これらの電極は、主ハウジング上に配置されるか主ハウジングから延びて配置され、及び/又は心臓、大血管もしくは冠状血管系の周辺でこれに直接接触しない他の位置に配置されている。本明細書では、このような電極を概して皮下電極と呼び、表面電極を一部の構成に使用できることが理解される。例えば、動作缶又は非動作缶を用いる本発明の治療的な構成に従った心臓デバイスにおいて心臓活動を感知し、心臓刺激エネルギーを送出するように1つ以上の皮下電極アレイを用いることができる。心臓の前方及び/又は後方の位置に電極を配置することができる。
【0060】
心臓デバイスは一般に、デバイスの構成及び作動モードを変えることのできるコントローラ又は制御システムを含む。例えば、コントローラは、心疾患発生時の心臓のモニタ及び記録のために第1の構成で作動し、かつ心臓モニタ回路及び刺激回路を用いた治療構成で作動するように心臓デバイスを構成することができる。本発明の心臓デバイスの作動構成又はモードの変更をさまざまな方法で開始し、制御することができる。例えば、心臓デバイスは、プログラマ又は患者/臨床医制御アクチベータなど、患者の体外の信号源から受信した信号に応答して作動モード又は構成を切り換えることができる。また、心臓デバイスのコントローラは、リードシステムがデバイスのリードインターフェースか又はヘッダに接続されている場合など、所定の条件に応答してモード又は構成を変えることができる。
【0061】
特定の構成において、システム及び方法は、当該技術分野で公知である種々のペーシング治療を提供するなど、ペースメーカーによって伝統的に行われている機能を実行するか又は含むことができる。例示的なペースメーカーの回路、構造及び機能(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスに組込可能である)は、同一出願人による米国特許第4,562,841号、第5,036,849号、第5,284,136号、第5,376,106号、第5,540,727号、第5,836,987号、第6,044,298号、第6,055,454号及び第5,331,966号に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0062】
本明細書に示す一部のシステム構成は、概して植込み型除細動器(ICD)によって伝統的に行われる種々の機能を実施できるものとして説明されており、当該技術分野で公知である多数のカルディオバージョン/除細動モードで作動することができる。例示的なICDの回路、構造及び機能(これらの態様は本発明の心臓デバイスに組み込むことができる)は、同一出願人による米国特許第5,133,353号、第5,179,945号、第5,314,459号、第5,318,597号、第5,620,466号及び第5,662,688号、ならびに米国特許出願公開番号2002/0107544(整理番号011506、2001年11月5日出願)及び公開番号2002/0107548(整理番号011947、2001年11月5日出願)に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0063】
図面に示され、本明細書に説明されている構成要素及び機能を、ハードウェア、ソフトウェア又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにおいて実施できることも理解されよう。また、図面中に別個の又は分離したブロック/要素として示される構成要素及び機能を他の構成要素及び機能と組み合わせて実施することができ、個々の又は統合された形態にあるこのような構成要素及び機能は説明を限定するのではなく説明を明確にするために示されていることが更に理解されよう。
【0064】
1つの実施の形態に従って、本発明の心臓デバイスは、心不全を患う患者に心機能管理(CFM)を提供するように構成可能である。しばしば鬱血性心不全(CHF)と呼ばれる心不全は、左脚ブロックなど長期にわたる心室伝導の遅延に関連していることが多く、左心室収縮機能不全や予後不良の一因となる。心室伝導の遅延により、ポンプ効果を低下させる協調性のない心室収縮が生じる。左心室伝導遅延を有する正常洞調律の心不全患者の研究によると、心房−両心室ペーシングは心収縮期の機能及びポンプ効率を改善することができる。両心室ペーシングは、左右心室の収縮や左心室中隔及び外側壁の収縮を再同期させることができる。
【0065】
両心室ペーシングの他の用途は、収縮機能を低下させ、心拍出量を減少させ、心臓の代謝効率を低下させる右心室のみのペーシングによって生じる左心室収縮の遅延を補正することを含む。拡張型心筋症や心房細動などの心疾患によって心機能が既に低下している場合、右心室ペーシングから生じる心機能の更なる低下は許容されず、症状の悪化や機能不全の進行の一因となりうる。
【0066】
本発明の心臓デバイスは、多心腔(multichamber)又は多部位ペーシングを収縮不全の治療に提供する一方で徐脈及び頻脈を同時に治療するように構成可能である。この構成の心臓デバイスは、心機能管理デバイス、即ちCFMデバイスとして作動し、ポンプ流量及び律動を維持しながら心室の収縮シーケンスを変えることによってポンプ機能を改善することができる。本明細書に記載されている種々の実施の形態を、鬱血性心不全のモニタ、診断及び/又は治療に関連させて使用することができる。2心腔(dual-chamber)又は両心室のペーシング/治療、心臓再同期療法、心機能最適化を含むものなど、CHFに関連して本明細書に記載されている方法、構造及び/もしくは技術、又はCHFに関連する他の方法は、同一出願人による米国特許出願10/270,035号(公開番号2003/0130702)(「同期化した多部位心臓ペーシングのためのタイミング周期(Timing Cycles for Synchronized Multisite Cardiac Pacing)」というタイトルで2002年10月11日に出願)、米国特許第6,411,848号、第6,285,907号、第4,928,688号、第6,459,929号、第5,334,222号、第6,026,320号、第6,371,922号、第6,597,951号、第6,424,865号及び第6,542,775号といった参考文献のうちの1つ以上の特徴を組み込むことができる。これらはそれぞれ本明細書に援用される。
【0067】
多心腔ペースメーカーを組み込んだ心臓デバイスは、左心室及び右心室の双方の中にあるか又はこれらに隣接する心臓組織と接触するように配置された電極を含み、左心室及び右心室の双方をペーシングすることができる。また、左心房及び右心房内にあるか又はこれらに隣接する組織と接触するように配置された電極に心臓デバイスのペースメーカー回路を結合し、両心房ペーシングを可能にすることができる。両心房ペーシング又は両心室ペーシングを用いて両側の心腔間の心収縮の協調を改善することができる。また、心臓デバイスは多部位ペースメーカー回路を組み込むことができる。心腔内にあるか又はこれに隣接して配置され、心腔の2つの部位をペーシングするように適切に配置されたリードにこの回路を結合することができる。
【0068】
心機能管理を提供する心臓デバイスの実施の形態は、多数のペーシングモードで作動することができる。1つの実施の形態では、多心腔除細動器及びペースメーカーとして構成される心臓デバイスは、種々の多心腔又は多部位ペーシングタイミングモードに従ったペースパルスを送出することによって心臓を刺激するように作動する。多くのタイプの多心腔ペースメーカー/除細動器方法を用いて、この実施の形態による多心腔ペーシングモードを実施することができる。心臓デバイスのこの実施の形態は、マイクロプロセッサベースの構造を有するCFMデバイスの実施に関連して説明されるが、CFMデバイスの機能を、必要に応じていかなる論理ベースの構造においても実施できることが理解されよう。
【0069】
本明細書に記載の心臓デバイスの種々の実施の形態を、優先ペーシング/拍動調整治療に関連して用いることができる。同一出願人による同時係属の米国特許出願09/316,515号(「心房不整脈時などの不規則な心室収縮の治療方法及び装置(Method and Apparatus for Treating Irregular Ventricular Contractions Such As During Atrial Arrhythmia)」というタイトルで1999年5月21日に出願)、ならびに米国特許第6,353,759号及び第6,351,669号に開示される単心腔、多心腔もしくは多部位のペーシング/治療、又は関連する他の方法を実施するように本発明の心臓デバイスを構成することができる。これらは本明細書に援用される。
【0070】
ここで図1を参照すると、本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイス182の平面図が示されている。この実施の形態によると、心臓デバイス182は、モニタ構成及び心臓エネルギー送出構成で作動するように実施される。心臓デバイス182はエネルギー送出回路を組み込んでいるが、このような回路は、モニタのみの構成での作動時は使用不可であるか又は使用されない。モニタのみの構成では、心臓デバイス182は、ループレコーダ又は他のタイプの心臓活動感知・記録デバイスとして作動することができる。エネルギー送出回路を含むことによって、心臓デバイス182は、心臓エネルギー送出構成のみの動作か又はモニタ構成と組み合わせた動作のために再構成することができる。この点に関して、心臓デバイス182は、単なるモニタデバイスから、多様な心臓ペーシング、カルディオバージョン/除細動及び閾値未満の刺激治療を供給するように構成可能なデバイスへのアップグレード能力を提供するソフトウェアとハードウェアを組み込む。
【0071】
図1において、心臓デバイス182は、モニタのみの構成で作動する場合は心臓活動を検出して記録する。ヘッダ100を組み込んだハウジング即ち缶103が示されている。ヘッダ100は、電極モジュール196と缶103との間の着脱を容易にする。ヘッダ100は、電極モジュール196からの雄型結合器193を受け入れるように構成された雌型結合器192を含む。雄型結合器193は、1つ以上の電極197を電極モジュール196を介して缶103に結合する2つの電極接点194、195を有するように示される。電極191が缶103のヘッダ100上に示されている。缶103は、ヘッダ電極191の代わりに、又はこの他に、1つ以上の缶形電極を含むことができる。近接スイッチ又は他の電極/リード/モジュール存在センサを含むことのできる電極検出回路181がヘッダ100内に示されており、これを用いて電極モジュール196の缶103への取付を認識することができる。更に後述するように、電極検出回路181を、心臓デバイス182の記録構成から治療構成への切換に役立つようにしてもよい。
【0072】
この構成及び他の構成において、ヘッダ100は、1つ以上のリード及び/又はセンサシステム、リード及び/又はセンサモジュールならびに電極との電気接続を容易にするインターフェース機能(例えば、電気コネクタ、ポート、係合機能など)を組み込んでいる。公知の技術を用いて、ヘッダ100のインターフェース機能を体液から保護することができる。
【0073】
心臓デバイス182は、缶103、ヘッダ100、電極モジュール196、又はヘッダ100もしくは電極モジュール196に結合するリードの中や上に1つ以上のセンサを更に含むことができる。有用なセンサは電気生理センサ及び非電気生理センサを含むことができ、例えば、音響センサ、インピーダンスセンサ、酸素飽和センサ(酸素濃度計又はプレチスモグラフセンサ)などの血液センサ、血圧センサ、又は本明細書に記載されるかもしくは本明細書に組み込まれる他のセンサなどがある。
【0074】
図2は本発明に従った心臓デバイス182の他の実施の形態の平面図であり、モニタ即ち記録構成で示されている。図2に示す実施の形態では、第1の電極198及び第2の電極199が、ヘッダ100を貫通し、電極モジュール196を介して缶103に結合される。第1の電極198及び第2の電極199をリード183(単一もしくは複数のリード、又は電極アレイ)上に配置してもよいし、電極モジュール196の中や上に直接配置してもよい。まず、心臓デバイス182を患者に植え込み、診断や診断の確認に有用な心疾患の記録に用いることができる。診断又は診断の確認後、1つ以上の心臓治療を提供するように心臓デバイス182を再構成することができる。
【0075】
図3及び図4は、本発明の実施の形態に従った複数の作動構成をサポートする心臓デバイスのハードウェア及びソフトウェアの要素を示しており、選択された要素は所望の作動構成によって使用可能・使用不可になる。例えば、図3及び図4に示す要素を組み込んだ心臓デバイスは、電極モジュール196が心臓デバイスのヘッダに取り付けられたことを図1及び図2の電極検出回路181が示すときなどに、心電図を記録して対象の信号を記憶するループのための記録構成で作動することができる。このデバイスは、後述するような感知電極モジュールの除去と心臓治療リード・モジュールの取付に応答して治療供給構成に切り換えることができる。
【0076】
図3は、本発明に従って実施される心臓デバイスの胸腔内の構成及びモードを概してサポートするハードウェア及びソフトウェアの要素を示している。図4は、本発明に従って実施される心臓デバイスの経胸の構成及びモードを概してサポートするハードウェア及びソフトウェアの要素を示している。本発明の心臓デバイスは胸腔内要素及び経胸要素に関連する構成要素及び機能を組み込むことが好ましいが、このような構成要素及び機能は、明確にするために別々の図に示される。図3及び図4に示すシステムの要素は、胸腔内構成及び経胸構成の双方をサポートできることが理解される。しかし、明確にするために、図3の説明は主に胸腔内の構成及び方法を使用可能にすることに向けられ、図4は主に経胸の構成及び方法を使用可能にすることに向けられる。
【0077】
また、図3及び図4に示す実施の形態は類似した構成要素を共有することができ、このような構成要素は共通の構成要素を用いて実施してもよいし、別個の構成要素として実施してもよいことが理解される。更に、図3及び図4に示す実施の形態は類似した機能を共有することができる。例えば、図3に示す回路は制御システム220を含み、これは、図4に制御システム305として示すものと同じシステムでもよいし、異なったシステムでもよい。
【0078】
図3に示すシステム200は患者への植込みに適しており、第1の作動構成での心臓関連信号のモニタ及び記録に使用される。第1の作動構成では、システム200はハウジング103の中又は上にセンサのみを含んでもよいし、システム200は、更に後述するように、1つ以上の他のセンサ及び/又は電極を含んでもよい。システム200が第2のモニタ・治療構成で作動するように構成される際、胸腔内心臓電極及び経胸心臓電極のうちの一方又は両方が、例えばヘッダ100を用いるなどしてハウジングの電子機器に結合される。
【0079】
比較的複雑な実施態様を示すために、図3に示す胸腔内システム200はCFM機能を備えたものとして後述される。図面に示すシステムの複雑さは、比較的単純なものから比較的複雑なものまで変動しうることが理解される。例えば、図面に示すシステムを、CFM機能の他に、又はCFM機能を除いて、従来のペースメーカー及び/又は除細動器の機能を行うように構成してもよい。図3に示すシステム200は機能ブロックに分けられる。これらの機能ブロックを配置することのできる構成はたくさんある。図3に示す構成は、1つの可能な機能構成である。
【0080】
導線170及び171が、心臓デバイスの端子202と右心室(RV)先端電極との間、そして端子204とRVコイル電極との間をそれぞれ接続し、これらの間で感知信号及びペーシング信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。導線178が、心臓デバイスのSVCコイルと端子201との間を接続し、これらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。導線172が、右心房(RA)先端電極と端子206との間を接続してこれらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能であり、導線173が、RAリング電極と端子208との間を接続してこれらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。
【0081】
導線174、175が、心臓デバイスの端子210と左心室(LV)先端電極との間、そして端子212とLVリング電極との間をそれぞれ接続し、これらの間で感知信号及びペーシング信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。遠位リング電極及び近位リング電極(即ち、LV先端電極ではない)を用いるいくつかの左心リード構成では、導線174、175が、端子210、212と遠位及び近位リング電極との間を接続し、これらの間で感知信号及びペーシング信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。導線176が、左心房(LA)先端電極と端子214との間を接続し、これらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能であり、導線177が、LAリング電極と端子216との間を接続し、これらの間で信号を送るようにヘッダ100内で利用可能である。心臓デバイスのハウジング103に結合された缶形電極209も設けられる。
【0082】
デバイスの回路203は、人体への植込みに好適な密閉されたハウジング103に入っている。システム200への電力は、電気化学電池や燃料電池などのエネルギー源233、又はシステム200内に収容されているか他の態様でシステム200にエネルギーを供給する外部エネルギー源によって供給される。1つの実施の形態では、再構成可能回路203はプログラム可能マイクロプロセッサベースのシステムであり、制御システム220、検出器システム230、ペースメーカー240、除細動器パルス発生器250及びメモリ回路261を含む。
【0083】
メモリ回路261は、ペーシング、除細動及び感知といった種々のモードのパラメータを記憶し、心臓信号や、デバイス回路203の他の構成要素によって受信される他のセンサからの信号を示すデータを記憶する。それまでのEGM信号262を記憶するメモリが設けられており、このEGM信号をさまざまな目的のためにオンボードで使用し、必要に応じて外部プログラマユニット/トリガ280又は他の患者の外部デバイスに送信することができる。メモリ回路261をループ記録構成で用いることができ、心疾患が起こるまでの電極及び/又はセンサからのデータを連続的に記録し、心疾患の前後及び最中に記録されたセンサ/電極情報の全て又は一部を長期メモリに記憶する。メモリ及び信号記憶装置を患者又はユーザによって起動させてもよいし、外部プログラマユニット/トリガ280によって作動させてもよい。
【0084】
制御システム220は、ペースメーカー制御221、除細動器制御224及び不整脈検出器222を含む種々の制御サブシステムを使用することができる。制御システム220は、デバイス回路203を制御する追加の機能要素(図示せず)を含んでもよい。制御システム220及びメモリ回路261はデバイス回路203の他の構成要素と協働し、感知、ペーシング及び除細動といった他の機能に加え、同期ペーシングに関連する動作を行う。
【0085】
システム200が外部プログラマユニット/トリガ280と通信できるように、遠隔測定回路270がデバイス回路203に付加的に結合されている。1つの実施の形態では、遠隔測定回路270及びプログラマユニット/トリガ280はワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを使用し、プログラマユニット/トリガ280と遠隔測定回路270との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、プログラム指令を植込み時と植込み後にプログラマ装置/トリガ280からデバイス回路203に転送することができる。また、記憶された心臓データを、他のデータと共に、例えばシステム200からプログラマユニット/トリガ280に転送することができる。
【0086】
RV先端電極及びLV先端電極の使用によって感知される心臓信号は近距離場信号であり、これは当該技術分野で公知である。より具体的に言うと、右心室から得られた信号はRV先端電極とRVコイルとの間で発生した電圧として検出される。RV先端電極及びRVコイル電極は、検出器システム230内にあるRV感知増幅器231に結合されて示されている。RV感知増幅器231によって受信された信号は、信号プロセッサ及びA/D変換器239に送信される。RV感知増幅器231は、信号を感知してこれを増幅するように機能する。信号プロセッサ及びA/D変換器239はR波信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0087】
左心室から得られた信号は、LV先端電極とLVリング電極(即ち、遠位LVリング電極と近位LVリング電極)との間で発生した電圧として検出される。LV先端電極及びLVリング電極(即ち、遠位LVリング電極及び近位LVリング電極)は、検出器システム230内にあるLV感知増幅器233に結合されて示されている。LV感知増幅器233によって受信された信号は、信号プロセッサ及びA/D変換器239に送信される。LV感知増幅器231は、信号を感知してこれを増幅させるように機能する。信号プロセッサ及びA/D変換器239はR波信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0088】
RVコイル及びSVCコイルのうちの一方又はこれら両方の使用によって感知される心臓信号は遠距離場信号であり、これは、当該技術分野で公知のように、形態(morphology)又はショックチャネル信号とも呼ばれる。より具体的に言うと、ショックチャネル信号は、RVコイルとSVCコイルとの間で発生した電圧として検出される。また、ショックチャネル信号は、RVコイルと缶形電極209に結合されたSVCコイルとの間で発生した電圧として検出されてもよい。RVコイル、SVCコイル及び缶形電極の適切な組み合わせを用いて生成されたショックチャネル信号は、検出器システム230にあるショックEGM増幅器236により感知され、増幅される。EGM増幅器236の出力は、信号プロセッサ及びA/D変換器239を介して制御システム220に結合されている。
【0089】
捕捉検出及び/又は捕捉閾値の決定(例えば自動捕捉)を行う際、EGM増幅器236又は他の広帯域増幅器を使用できることに注意されたい。更に、図3に示すもの以外のペース及び感知のベクトルを捕捉検出及び/又は捕捉閾値の決定に関連して使用できる(例えば、図9乃至図11に示す切換マトリックスを用いて選択可能なものである、胸腔内又は非胸腔内のペース/感知電極又は除細動電極)ことに注意されたい。
【0090】
RA先端電極及びRAリング電極は、検出器システム230内にあるRA感知増幅器232に結合されている。検出器システム230内のRA感知増幅器232によって受信された心房感知信号はA/D変換器239に送信される。RA感知増幅器は、右心房のA波信号を検出し、これを増幅するように機能する。A/D変換器239は、感知された信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0091】
左心房で生じるA波信号は、LA先端電極及びLAリング電極によって感知される。A波は、検出器システムにあるLA感知増幅器234によって感知され、増幅される。LA感知増幅器は、左心房のA波信号を検出し、これを増幅するように機能する。A/D変換器239は、感知された信号をアナログ形式からデジタル形式に変換し、これらの信号を制御システム220に送信する。
【0092】
ペースメーカー240は、適切な条件下で予め確立されたペーシング法に従って、ペーシング電極、即ちRV先端電極、RA先端電極、LV先端電極及びLA先端電極にペーシング信号を送信する。心室又は心房ペーシングパルスの送出の際にはブランキング回路(図示せず)が公知の態様で使用され、心室チャネル、心房チャネル及びショックチャネルが適当な時間に適当な期間で適切に消去される。
【0093】
CFM機能を組み込んだ心臓デバイスを治療供給構成で構成し、従来の徐脈ペーシングとは異なった態様で収縮シーケンスを変えることによってポンプ機能を改善することができる。例えば、徐脈を治療するには、心拍数が十分でない場合や房室の間隔(AV間隔)があまりに長い場合にペーシングを行うことができる。
【0094】
ポンプ機能を改善するために、2つ以上の心腔のペーシングを同時、又は段階的なシーケンスで行い、非効率的であったり存在しないような収縮シーケンスを調整することができる。例えば、ペーシングモードを用いて、心房収縮(AS)の感知後に左心室及び右心室の両方のペーシング(LVP、RVP)を行うことができる。このようなペーシングモードは病気によって生じる心室伝導遅延を緩和し、よって心臓のポンプ機能を改善することができる。種々の有用な再同期ペーシング治療法が本明細書に記載されるか又は本明細書に組み込まれており、これらの治療法を本発明の心臓デバイスによって実施することができる。
【0095】
図3に示すシステム200の検出器システム230は、信号プロセッサ及びA/D変換器239に組込可能なプログラム可能フィルタを更に含むことができる。プログラム可能フィルタは、心臓のモニタ(例えば、ループ記録)に関連する信号を記録する第1のフィルタリング構成と、1つ以上のエネルギー送出構成に関連する心疾患検出用の第2のフィルタリング構成とで作動するようにプログラム可能であることが好ましい。
【0096】
図4は、本発明に従って実施される心臓デバイスの経胸構成及びモードをサポートする構成要素を示している。図4に示す構成によると、心臓デバイスは、適切なメモリ309に結合されたプロセッサ306を含むプロセッサベースの制御システム305を組み込んでいるが、いかなる論理ベースの制御構造を用いてもよいことが理解される。制御システム305は回路及び構成要素に結合されており、心臓によって生成された電気信号の感知、検出及び分析を行い、選択された信号をメモリ309に記録する。メモリ309をループ記録構成で用いることができ、心疾患が起こるまでの電極及び/又はセンサからのデータを連続的に記録し、心疾患の前後及び最中に記録されたセンサ/電極情報の全て又は一部を長期メモリに記憶する。
【0097】
モニタ及び刺激構成で構成される場合、制御システム305は所定の条件下で電気刺激エネルギーを心臓に送出するように促して心不整脈を治療することができる。ある構成では、制御システム305及び関連する構成要素はペーシング治療を心臓に提供することもできる。心臓デバイスによって送出される電気エネルギーは、低エネルギーペーシングパルス、カルディオバージョンもしくは除細動のための高エネルギーパルス、又は閾値未満の刺激の形態をとることができる。
【0098】
心臓信号は、例えば、皮下の電極314と、心臓デバイスのハウジング上に設けられた缶形又は中立電極307を用いて感知される。心臓信号は、非活性の缶形構成などで皮下電極314のみを用いて検出されてもよい。また、心臓信号は、制御システム305が第1の(モニタ・記録)構成で作動している際に、缶の中又は上にあるセンサ及び/又は電極のみを用いて検出されてもよい。よって、単極、二極、又は単極/二極の組み合わせの電極構成を使用することができる。感知された心臓信号は感知回路304によって受信される。感知回路304は感知増幅回路を含み、フィルタリング回路及びアナログ−デジタル(A/D)変換器を含むこともできる。感知され、感知回路304によって処理された心臓信号はノイズ低減回路303によって受信されることができ、ノイズ低減回路304は、信号が検出回路302に送られる前にノイズを更に減らすことができる。高性能又は計算集中型のノイズ低減アルゴリズムが必要である場合は、ノイズ低減回路303を検出回路302の後に組み込んでもよい。
【0099】
図4に示す例示的な構成では、検出回路302はノイズ低減回路303に結合されているか、又は回路に組み込まれている。ノイズ低減回路303は、感知されて種々のソースから取り込まれた心臓信号のノイズ内容を取り除くか又は拒絶することにより、感知された心臓信号のSN比を改善するように作動する。ノイズ低減回路303は、この代わりに、又はこの他に、再構成可能な心臓システムによって感知された他の信号やノイズに対して心臓信号の分離及び/又は識別を行う信号分離アルゴリズムを実施することができる。典型的なタイプの経胸心臓信号のノイズは、電気ノイズや例えば骨格筋から生じるノイズを含む。
【0100】
例示的な心臓信号の分離及び/又は識別の回路、構造及び技術(これらの態様は本発明の心臓デバイスによって実施可能である)は、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/784,478号(公開番号2005/0119708)(2004年2月23日出願、弁護士事件整理番号 GUID.606PA)、10/741,814号(公開番号2004/0230128)(2003年12月19日出願、弁護士事件整理番号GUID.605PA)、及び弁護士事件整理番号GUID.607PAとして本明細書と同時に出願された「信号源インピーダンスを用いた両性能信号源の分離(Bipotential Signal Source Separation using Source Impedances)」というタイトルの米国特許出願に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0101】
検出回路302は一般に信号プロセッサを含み、信号プロセッサは感知された心臓信号及び/又は他のセンサ入力の分析を統合し、特に頻脈性不整脈などの心不整脈を検出する。心拍数ベースの(例えば、心拍数ゾーンベースの)パターンや、心拍数ベース及び/又は形態学的識別アルゴリズムを検出回路302の信号プロセッサによって実施し、不整脈の発現の存在とその重症度を検出することができる。
【0102】
例示的な不整脈の検出及び識別の回路、構造及び技術(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスによって実施可能である)は、同一出願人による米国特許第5,301,677号及び第6,438,410号に開示されており、これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。例示的なパターン及び心拍数ベースの不整脈の検出及び識別の回路、構造及び技術(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスによって実施可能である)は、米国特許第6,708,058号、第6,487,443号、第6,259,947号、第6,141,581号、第5,855,593号及び第5,545,186号に開示されており、これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0103】
本発明の心臓デバイスでの実施に特に好適な不整脈検出方法は、米国特許出願10/804,471号(公開番号2004/0230129)(2004年3月19日出願、弁護士事件整理番号GUID.608PA)、「患者の活動を感知する皮下の心臓刺激システム(Subcutaneous Cardiac Stimulation System with Patient Activity Sensing)」というタイトルの米国特許出願(2004年4月1日出願、弁護士事件整理番号GUID.610PA)、及び「血液センサを用いた皮下の心臓感知・刺激システム(Subcutaneous Cardiac Sensing and Stimulation System Employing Blood Sensor)」というタイトルの米国特許出願(2004年4月2日出願、弁護士事件整理番号GUID.613PA)、といった同一出願人による同時係属の参照文献に記載されている。これらの文献は本明細書に援用される。
【0104】
検出回路302は、心臓信号情報を制御システム305に送信する。制御システム305のメモリ回路309は、感知、モニタ/記録、除細動及びペーシングといった種々のモードで作動するためのパラメータを記憶し、検出回路302によって受信される心臓信号を示すデータを記憶する。それまでのECG・治療データを記憶するようにメモリ回路309を構成することもでき、このデータをさまざまな目的のために使用し、必要に応じて外部受信デバイスに送信することができる。
【0105】
一部の構成では、心臓デバイスは診断回路310を含むことができる。診断回路310は、概して検出回路302及び感知回路304から入力信号を受信する。診断回路310は診断データを制御システム305に提供する。制御システム305は、診断回路310又はその機能の全てもしくは一部を組み込めることが理解される。制御システム305は、さまざまな診断目的で診断回路310に提供された情報を記憶し、使用することができる。この診断情報は、例えば疾患が生じた後や所定の間隔で記憶することができ、電源の状態、治療供給履歴及び/又は患者の診断などのシステム診断を含むことができる。診断情報は、治療供給の直前及び直後に得られる電気信号又は他のセンサデータの形をとることができる。
【0106】
本発明の実施の形態に従った心臓デバイスは治療セクション300を含み、これは、心臓デバイスが第1のモニタ及び/又は記録のみの構成で作動される際は使用不可になるか又は使用されず、第2のモニタ及び治療供給構成で作動する際に使用可能になる。治療セクション300は、治療セクション300を使用可能/使用不可にするように、ハードウェアスイッチを用いて物理的に切換可能にすることができる。治療セクション300を、ソフトウェア及び/又は制御システム305により生成された制御信号によって使用可能/使用不可にできる。ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを用いて治療セクション300を使用可能/使用不可にできることも考慮される。
【0107】
例えば、心臓デバイスのヘッダは、治療セクション300を使用可能にするのに必要な近接スイッチ又は他の構成要素を含むことができる(例えば、リードシステムとの接続を感知するヘッダ内のセンサ)。制御システム305は、治療セクション300を使用可能にする前に1つ以上の治療供給電極の検出を必要とする場合がある。1つのアプローチでは、心臓リードはメモリが含むコード(符号)を組み込むことができ、このコードは、リードが心臓デバイスに接続され、コードがプロセッサ306によって読み取られると治療セクション300を使用可能にする。コードは、リードのアイデンティティ(例えばタイプ、構成など)に応答して、リードの識別及び心臓デバイスの構成を容易にすることができる。
【0108】
経胸除細動治療を提供する構成によると、制御システム305は、検出回路302から受信した心臓信号データを処理し、適切な頻脈性不整脈治療を開始して心不整脈の発現を終了させ、心臓を正常洞調律に戻す。制御システム305は、ショック療法回路316に結合されている。ショック療法回路316は、皮下電極314と、心臓デバイスハウジングの缶又は中立(indifferent)電極307に結合されている。ショック療法回路316は、指令が下されると選択されたカルディオバージョン/除細動治療に従ってカルディオバージョン及び除細動刺激エネルギーを心臓に送出する。さほど高性能でない構成では、ショック療法回路316は、カルディオバージョン及び除細動の双方の治療を供給する構成とは対照的に、除細動治療のみを供給するように制御される。
【0109】
例示的なICD高エネルギー送出の回路、構造及び機能(これらの態様は、本明細書において考慮されるタイプの本発明の心臓デバイスに組込可能である)は、同一出願人による米国特許第5,372,606号、第5,411,525号、第5,468,254号及び第5,634,938号、ならびに米国公開特許出願公開番号2002/0107544(整理番号011506、2001年11月5日出願)及び公開番号2002/0107548(整理番号011947、2001年11月5日出願)に開示されている。これらは本明細書の上文に援用される。
【0110】
他の構成に従って、本発明の心臓デバイスの経胸システムは心臓ペーシング能力を組み込んでいる。図4に示すように、心臓デバイスは、制御システム305と、皮下電極314及び缶形/中立電極307に結合されたペーシング治療回路330とを含む。ペーシング治療回路は、指令が下されると選択されたペーシング治療に従ってペーシングパルスを心臓に送出する。ペーシング療法に従って制御システム305内のペースメーカー回路によって生成された制御信号が開始されてペーシング治療回路330に送信され、ここでペーシングパルスが生成される。ペーシング療法を制御システム305によって変更することができる。
【0111】
「皮下の心調律管理(Subcutaneous Cardiac Rhythm Management)」というタイトルの同一出願人による同時係属の米国特許出願(弁護士事件整理番号GUID.611PAとして本明細書と同時に出願されており、本明細書に援用される)に開示されるような多数の心臓ペーシング治療及び閾値未満の治療を、図4に示すペーシング治療回路330及び/又は図3に示すペースメーカー240を介して供給することができる。あるいは、心臓ペーシング治療をショック療法回路316経由で供給することができ、これによって個々のペースメーカー回路の必要性が効果的に取り除かれる。ショック療法回路316を介して心臓ペーシング治療を供給する種々のアプローチの例が、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/377,274号(公開番号2004/0172066)(2003年2月28日出願)に開示されており、これは本明細書に援用される。
【0112】
図4に示す心臓デバイスは、1つ以上の生理及び/又は非生理センサ312(例えば、本明細書に記載され、組み込まれたもの)から信号を受け取るように構成可能である。使用するセンサのタイプによっては、センサ312によって生じた信号を、検出回路に直接結合されているか又は感知回路を介して間接的に結合されたトランスデューサ回路に送信することができる。一部のセンサは、検出回路302による処理を行わずに感知データを制御システム305に送信できることに注意されたい。
【0113】
通信回路318が制御システム305のプロセッサ306に結合されている。通信回路318によって、心臓デバイスは、心臓デバイスの外部に配置された1つ以上の受信デバイス又はシステムと通信することができる。例えば、心臓デバイスは、通信回路318を介して、患者装着用、携帯用もしくはベッドサイド用通信システム、又は患者によって作動可能なトリガと通信することができる。1つの構成では、1つ以上の生理センサ又は非生理センサ(患者の皮下、皮膚又は体外)に、公知の通信規格(ブルートゥース(登録商標)やIEEE802規格など)に準拠するインターフェースのような短距離無線通信インタフェースを備えることができる。このようなセンサによって取得されたデータを、通信回路318経由で心臓デバイスに送信することができる。無線の送信器やトランシーバを備えた生理又は非生理センサは患者の体外にある受信システムと通信できることに注意されたい。
【0114】
通信回路318によって、心臓デバイスは外部プログラマ/トリガ280と通信することができる。1つの構成では、通信回路318及びプログラマ/トリガ280は、当該技術分野で公知のループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いてプログラマユニットと通信回路318との間で信号及びデータの送受信を行う。図3の胸腔内システムのブロック図に関連して前述した態様に類似する態様では、植込み時とその後に、プログラム指令及びデータを心臓デバイスとプログラマ/トリガ280との間で転送することができる。プログラマを用いて、医師は、心臓デバイスによって用いられる種々のパラメータの設定又は変更を行うことができる。例えば、医師は、心臓デバイスの検出機能、ペーシング機能及び除細動機能(ペーシングモード及びカルディオバージョン/除細動モードを含む)に影響を及ぼすパラメータの設定又は変更を行うことができる。
【0115】
心臓デバイスへの電力は、心臓デバイスの密閉ハウジング内に配置された電源320によって供給される。電源320は、図3に示す電源233と同じ電力源であってもよい(又は異なっていてもよい)。1つの構成では、電源320は充電池を含む。この構成によると、充電回路が電源320に結合されており、電源320の反復的な非侵襲的充電を容易にする。通信回路318、即ち別個の受信器回路は、外部の無線周波エネルギー送信器によって送信された無線周波エネルギーを受信するように構成されている。心臓デバイスは、再充電可能な電源の他に非充電式電池を含むことができる。再充電可能な電源を使用する必要はなく、その場合には寿命の長い非充電式電池を使用することを理解されたい。
【0116】
図5乃至図8は、モニタ/記録構成から心臓治療を提供する構成に心臓デバイスを再構成した後の本発明の実施の形態を示している。ここで図5を参照すると、治療構成における心臓デバイスが示されており、本発明の実施の形態に従って患者の胸部に植え込まれている。本発明の心臓のモニタ及び刺激の実施態様に従った典型的な心臓デバイスは、1つ以上の皮下電極及び/もしくは1つ以上の心外膜電極、経静脈電極ならびに/又は心内膜電極を含むことができる。
【0117】
図5に示す特定の構成に関して、心臓デバイスはハウジング103を含み、その中に心臓感知回路、検出回路、処理回路及びエネルギー送出回路といった種々の回路を収容することができる。通信回路はハウジング103内に配置されており、心臓デバイスと外部通信デバイス(例えば、患者によって作動可能なトリガ、携帯用又はベッドサイド用通信ステーション、患者携帯用/装着用通信ステーション又は外部プログラマなど)との間の通信を容易にする。通信回路は、体外、皮膚又は皮下の生理又は非生理センサを1つ以上有する単方向又は両方向通信を容易にすることもできる。
【0118】
一部の実施態様では、剛性、半剛性又は可撓性の支持アセンブリ107を用いて1つ以上の皮下電極を支持することができる。例えば、電極支持アセンブリ107は概して可撓性とすることができ、従来の植込み型の医療用電気リード(例えば、除細動リード又は除細動/ペーシングを組み合わせたリード)に類似した構造を有することができる。他の実施態様では、ある程度可撓性であるが、臨床医による整形又は操作の後に所望の構成を保持する弾性、ばね又は機械的復元力を有するよう、電極支持アセンブリ107を構成することができる。例えば、電極支持アセンブリ107は、手でねじって所望の形状を得ることのできるグースネック又は編み(braid)システムを組み込むことができる。このように、電極支持アセンブリ107は、所与の患者の独特の身体構造に適応するように形状を合わせることができ、植込みの後でもカスタマイズされた形状を概ね保持する。この構成による電極支持アセンブリ107の整形は、リード又はデバイスの植込みの前又は最中に行うことができる。
【0119】
更なる実施態様に従って、電極支持アセンブリ107は、ハウジング103に対して皮下電極109の位置を安定させる電極支持構造体(例えば、剛性又は半剛性の細長構造体)を含む。この構成では、細長構造体の剛性は、皮下電極109とハウジング103との間の所望の間隔関係と、患者の心臓に対する皮下電極109/ハウジング103の所望の向きを維持するのに十分である。細長構造体は、構造的プラスチック材料、複合材料又は金属材料からなることができ、生体適合性材料を含むか又はこの材料によって覆われている。細長構造体が金属などの導電性材料からなる場合は、ハウジング103と皮下電極109との間に適切な電気絶縁が設けられる。
【0120】
1つの実施態様では、電極支持アセンブリ107及びハウジング103は一体構造(即ち、単一のハウジング/ユニット)を定める。電子部品及び電極導線/コネクタが、一体型デバイスのハウジング103/電極支持アセンブリ107の中又は上に配置されている。少なくとも2つの電極109が、一体構造上のハウジング103/電極支持アセンブリ107の対向端部付近で支持されることが好ましい。例えば、一体構造は弓形か又は角度付けされた形状を有することができる。
【0121】
更に他の実施態様では、電極支持アセンブリ107は、ハウジング103に対して物理的に分離可能なユニットを定める。電極支持アセンブリ107は機械的・電気的結合器を含み、これらの結合器はハウジング103の対応する機械的・電気的結合器との噛合を容易にする。例えば、電極支持アセンブリ107とハウジング103との間に機械接続及び電気接続を提供する電気的結合器及び機械的結合器の両方を含むようにヘッダブロック構成を構成することができる。あるいは、機械的/電気的結合器を用いて電極支持アセンブリ107とハウジング103との間に機械接続及び電気接続を確立することができる。このような構成では、形状、サイズ及び電極構成がさまざまである種々の異なる電極支持アセンブリ107を利用可能にし、本発明の心臓デバイスに物理的及び電気的に接続することができる。
【0122】
電極及びリードアセンブリ107が種々の形状をとるよう構成可能であることに注意されたい。例えば、リードアセンブリ107を楔形、山形、平らにした楕円形又はリボン形にすることができ、皮下電極109は、電極のアレイ又はバンドなど、多数の離間された電極を含むことができる。更に、2つ以上の皮下電極109を複数の電極支持アセンブリ107に取り付け、皮下電極109の間で所望の離間関係を得ることができる。心臓デバイスは、同一出願人による米国特許第5,203,348号、第5,230,337号、第5,360,442号、第5,366,496号、第5,397,342号、第5,391,200号、第5,545,202号、第5,603,732号及び第5,916,243号に開示される皮下植込み型医療用具の回路、構造及び機能を組み込むことができる。これらはそれぞれ本明細書に完全に援用される。
【0123】
特定の心臓デバイスの構成によっては、供給システムを有益に用いて心臓デバイスハウジング及び皮下電極の適切な配置及び配向を容易にすることができる。このような供給システムの1つの構成によると、従来のトロカールに類似した長い金属棒を用いて皮下層の小径の鈍的組織切開を行うことができる。この用具は、皮下電極の配置を容易にするように予めまっすぐに又は湾曲して形成されていてもよいし、医師が所与の患者に合わせて用具を適切に整形できるよう十分な可撓性を備えていてもよい。
【0124】
この用具は、組織切開の際に局部麻酔薬の連続的かつ正確な供給を容易にするように1つ以上の流体供給路と遠位端の穿孔又はポートを更に含み、鎮静していないか又は最小限に鎮静した患者の不快感を減らす/取り除くことができる。また、鈍的組織切開用具を用いて、鈍的切開時の鎮痛のために電気刺激を提供することもできる。切開用具は、TENS(経皮神経刺激)ユニットによって提供される刺激に類似した刺激を提供するエネルギー送出能力を含むように構成可能である。鈍的組織切開用具によって供給されるエネルギーは、高周波電気刺激で刺激することによって神経伝導を本質的に妨げる。例示的な供給用具(この態様は心臓デバイス供給用具に組込可能である)は、米国優先権仮出願60/462,272号と、同一出願人による米国特許第5,300,106号に開示される。これらは本明細書に完全に援用される。
【0125】
図5に示す構成では、皮下電極109を胸部の皮膚下に配置し、ハウジング103から遠位に配置することができる。皮下電極と、該当する場合はハウジング電極とを、心臓の周りの種々の位置及び向き(例えば、心臓に対して前部及び/又は後部の種々の位置)に配置することができる。皮下電極109は、電極支持アセンブリ107を介してハウジング103内の回路に電気的に結合されている。1つ以上の導線(例えば、コイル又はケーブル)が電極支持アセンブリ107内に設けられており、皮下電極109をハウジング103内の回路に電気的に結合する。1つ以上の感知電極、感知/ペーシング電極又は除細動電極を、電極支持アセンブリ107の細長構造体、ハウジング103及び/又は遠位電極アセンブリ(例えば、アレイ構造)上に配置することができる。
【0126】
図5に示す心臓デバイスは心内膜リードシステムを更に含み、これは1つ以上の経静脈リードを介してハウジング103内の回路に電気的に結合されている。従来の経静脈リード供給手順を用いて心内膜リードシステムを植え込むことができる。心内膜リードシステムは、単一の心腔(心房又は心室)又は複数の心腔に植え込む単一のリード(例えば、ワンパスリード)を含むことができる。1つ又は複数の心腔への植込み(例えば、多部位又は多心腔構成)のために複数のリードを配置することができる(例えば、右心リード及び/又は左心リード)。このように、1つ、2つ、3つ又は4つの心腔に胸腔内の感知及び/又は刺激治療をもたらすように本発明の心臓デバイスを植え込むことができる。
【0127】
図5では、心房リードシステムは、1つ以上の心房電極110にハウジング回路を電気的に結合するリード(例えば、右心房リード)を含む。心室除細動リードシステムは、1つ以上の心室電極にハウジング回路を電気的に結合する1つか又は2つのリードを含むことができる。心室除細動リードシステムは、例えば、右心室電極113と、上大静脈に配置された電極111を含むことができる。
【0128】
図6に示す心臓デバイスは、図5に示す皮下電極及びハウジング構成要素を含むが、図5に示す心内膜リードアプローチの代わりに1つ以上の心外膜又は経静脈リードシステムを使用する。典型的な経静脈リードシステムは、大血管(例えば、冠状血管や肺血管)又は冠状血管系内に植え込むために構成された1つ以上の電極を含むことができる。典型的な心外膜リードシステムは、1つ以上のパッチタイプ電極及び/もしくはねじ込み電極、又は心臓の心外膜と接触する他の電極構成を含むことができる。
【0129】
図6では、胸腔内のリード114は1つ以上の遠位電極108を含み、心外膜又は経静脈での心臓活動感知及び/又は刺激エネルギー送出のためにこれらの電極を構成することができる。図示するように、単一のリード114が、ハウジング103内に設けられた回路に胸腔内電極108を電気的に結合している。1つ以上の胸腔内リード114を配置して心臓の1つ以上の心腔に感知・刺激エネルギーを供給できることが理解される。
【0130】
図7は、心腔内の同期多部位感知又はペーシングに有用な心臓刺激構成における本発明の心臓デバイスの1つの実施の形態を示している。心臓デバイスは、ヘッダ100を介して心内リードシステムに電気的及び物理的に結合されたハウジング103を含む。心内リードシステム102は、感知、モニタ/記録、ペーシング又は除細動に用いられる1つ以上の電極を含む。図7に示す特定の実施の形態では、心内リードシステム102は、第1の右心室リードシステム104及び第2の右心室リードシステム115、ならびに右心房リードシステム105を含む。1つの実施の形態では、右心室リードシステム104は統合された両極性のペーシング/ショックリードとして構成される。
【0131】
第1の右心室リードシステム104は、SVCコイル116、RVコイル114及びRV先端電極112を含む。代わりにRVリング電極として構成することも可能なRVコイル114は、右心室のペーシング電極であるRV先端電極112から離間されている。第1の右心室リードシステム104は少なくとも1つの心内膜ペーシングリードを含み、このリードは上大静脈(SVC)及び右心房120を通って右心室118に進められ、右心室118内の第1のペーシング部位で心筋組織と接触する。
【0132】
第2の右心室リードシステム115は、RV先端電極132及びRVリング電極134を含む。第2の右心室リードシステム115は少なくとも1つの心内膜ペーシングリードを含み、このリードは上大静脈(SVC)及び右心房120を通って右心室118に進められ、右心室118内の第2のペーシング部位で心筋組織と接触する。
【0133】
右心房リードシステム105は、RA先端電極156及びRAリング電極154を含む。RA先端電極156及びRAリング電極154はそれぞれパルスのペーシングを心臓の右心房に提供し、右心房からの心臓信号を検出することができる。1つの構成では、右心房リードシステム105はJリードとして構成される。
【0134】
この構成では、心内リードシステム102は心臓101内に配置されて示されており、第1及び第2の右心室リードシステム104、115は右心房120を通って右心室118内に延びている。特に、RV先端電極112及びRVコイル電極114は適切な位置に配置され、右心室118内の第1の部位の感知及びペーシングを行う。SVCコイル116は、心臓101の右心房室120、又は心臓101の右心房室120に通じる主静脈内の適切な位置に配置される。図7に示すRVコイル114及びSVCコイル116は除細動電極である。RV先端電極132及びRVリング電極134は適切な位置に配置され、右心室118内の第2の部位の感知及びペーシングを行う。
【0135】
ここで図8を参照すると、CFM能力を組み込んだ心臓デバイスの実施の形態が示されている。心臓治療作動構成の心臓デバイスは、ヘッダ100を用いて心内リードシステム102に電気的及び物理的に結合されたハウジング103を含む。心内リードシステム102は人体に植え込まれ、いくつかの部分が心臓101に挿入される。心内リードシステム102を用いて、心臓101によって生じる電気的な心臓信号を検出・分析し、ある所定の条件下で電気エネルギーを心臓101に提供し、心不全及び/又は心不整脈を治療する。
【0136】
心内リードシステム102は、感知、モニタ/記録、ペーシング又は除細動に用いられる1つ以上の電極を含む。図8に示す特定の実施の形態では、心内リードシステム102は、右心室リードシステム104、右心房リードシステム105及び左心房/左心室リードシステム106を含む。1つの実施の形態では、右心室リードシステム104は統合された両極性のペーシング/ショックリードとして構成される。
【0137】
第1の右心室リードシステム104は、SVCコイル116、RVコイル114及びRV先端電極112を含む。代わりにRVリング電極として構成することも可能なRVコイル114は、右心室のペーシング電極であるRV先端電極112から離間されている。
【0138】
右心房リードシステム105は、RA先端電極156及びRAリング電極154を含む。RA先端電極156及びRAリング電極154はペーシングパルスを心臓の右心房に提供し、右心房からの心臓信号を検出することができる。1つの構成では、右心房リードシステム105はJリードとして構成される。
【0139】
この構成では、心内リードシステム102は心臓101内に配置されて示されており、右心室リードシステム104は右心房120を通って右心室118内に延びている。特に、RV先端電極112及びRVコイル電極114は右心室118内の適切な位置に配置される。SVCコイル116は、心臓101の右心房室120、又は心臓101の右心房室120に通じる主静脈内の適切な位置に配置される。図8に示すRVコイル114及びSVCコイル116は除細動電極である。
【0140】
LV先端電極113及びLVリング電極117が冠状静脈系を介して挿入され、心臓101の左心室124に隣接して配置される。LVリング電極117は、左心室のペーシング電極であるLV先端電極113から離間されている。LV先端電極113及びLVリング電極117の双方も、左心室の感知に使用し、よって左心室内の2つの感知部位を提供することができる。左心房/左心室リードシステム106は、LAリング1(136)及びLAリング2(134)といった2つのLAリング電極を更に含み、これらは左心房122に隣接して配置され、心臓101の左心房122のペーシング及び感知を行う。
【0141】
左心房/左心室リードシステム106は心内ペーシングリードを含み、これらのリードは上大静脈(SVC)、右心房120、冠状静脈洞150の弁及び冠状静脈洞150を通って進められ、LAリング1電極136、LAリング2電極134、LV先端電極113及びLVリング電極117を左心房122及び左心室124に隣接した適切な位置にそれぞれ配置する。
【0142】
1つのリード提供アプローチによると、左心房/左心室のリード配置は、左鎖骨下静脈や左橈側皮静脈などの経皮進入血管に開口を形成することを含む。左心房/左心室リード106は、上大静脈を通って心臓の右心房120内に導かれる。左心房/左心室リードシステム106は、右心房120から冠状静脈洞入口部(冠状静脈洞150の開口)内に配置される。リードシステム106は、冠状静脈洞150を通って左心室124の冠状静脈に導かれる。この静脈は、心臓の右側から直接進入できない左心房122及び左心室124の表面にリードが辿り着くための進入経路として使用される。
【0143】
鎖骨下静脈への進入と、LV電極及びLA電極113、117、136及び134をそれぞれ左心室124及び左心房122に隣接して挿入する予め形成された誘導カテーテルとによって、左心房/左心室リードシステム106のリード配置を行うことができる。1つの構成では、左心房/左心室リードシステム106はワンパスリードとして実施される。LV先端電極113及びLVリング電極117に関する前述の段落の説明は、(LV先端電極をもたない)遠位及び近位のLVリング電極を用いたリード構成にも同様にあてはまることが理解される。
【0144】
ここで図9乃至図11を参照すると、本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間での切換を提供する心臓デバイスの構成要素が示されている。感知電極、ペーシング電極及び除細動電極(胸腔内電極及び非胸腔内電極を含む)の選択性を向上させる心臓デバイスに切換能力を組み込むことが望ましい場合がある(所与の心臓デバイスに対して利用可能な特定の構成による)。特定の電極構成を選択して心臓信号及び非心臓信号の検出を強化し、捕捉又は除細動の実行に必要なエネルギーを減少させることができる。
【0145】
1つの特定の用途では、一般に胸腔内の電極対から送出される捕捉ペーシング刺激を加えることによって生じる誘発応答の感知など、捕捉検出及び/又は捕捉閾値の決定のために1つ以上の非胸腔内電極を用いることができる。図9乃至図11に示すタイプの電極切換能力を使用することで心臓デバイスによって実施できる有用な捕捉検出技術及び閾値決定技術(自動捕捉技術を含む)の詳細は、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/733,869号(公開番号2005/0131476)(2003年12月11日出願、弁護士事件整理番号GUID.045PA)、10/734,599号(公開番号2005/0131477)(2003年12月12日出願、弁護士事件整理番号GUID.142PA)及び10/735,519号(公開番号2005/0131478)(2003年12月12日出願、弁護士事件整理番号GUID.160PA)、ならびに米国特許第5,683,431号に開示されている。これらはそれぞれ本明細書に援用される。
【0146】
図9に示す実施の形態に従って、心臓デバイスは、最初に皮下の非胸腔内電極325を用いて経胸構成で作動するように構成される。心臓デバイスは、1つ以上の経静脈、心内膜又は心外膜の電極323のシステムへの追加を許容することができ、これによって心臓デバイスは経胸構成の他に胸腔内構成で作動することができる。
【0147】
図9に示すように、心臓デバイスは、1つ以上の胸腔内電極323と、1つ以上の皮下の非胸腔内電極325を含む。図9に示す実施態様によると、胸腔内電極323は心臓デバイスのリードインターフェース321に結合されている。リードインターフェース321を、心臓デバイスのヘッダブロック又は他の接続構成の一部として実施することができる。図9に示す実施の形態では、リードインターフェース321は、皮下の刺激デバイスのみから、1つ以上の胸腔内のリード又は電極323の追加を許容するハイブリッドデバイスへのデバイスのアップグレードを容易にする。
【0148】
リードインターフェース321は、胸腔内電極323を切換マトリックス333に結合する。また、1つ以上の皮下の非胸腔内電極325も切換マトリックス333に結合されている。切換マトリックス333を制御システム305によって制御し、選択された胸腔内電極323及び皮下の非胸腔内電極325を検出回路302及び/又はエネルギー送出回路316/330に結合することができる。切換マトリックス333は多様な目的のために多数の感知・エネルギー送出ベクトルを利用可能にする。多様な目的の例をいくつか本明細書に記載する。
【0149】
図10は、切換マトリックス333を組み込む心臓デバイスの他の実施態様を示している。この実施態様において、心臓デバイスは、最初に1つ以上の経静脈、心内膜又は心外膜の電極323を用いる胸腔内デバイスとして作動するように構成される。リードインターフェース321は、1つ以上の皮下の非胸腔内電極325の追加を許容し、これによって心臓デバイスは胸腔内構成の他に経胸構成で作動することができる。
【0150】
図11は、切換マトリックス333を組み込む心臓デバイスの更なる他の実施態様を示している。この実施態様において、心臓デバイスは、最初に胸腔内デバイスか又は経胸デバイスとして作動するように構成される。この実施態様によると、2つのリードインターフェース321A、321Bが設けられており、これらはそれぞれ切換マトリックス333に結合されている。リードインターフェース321Aは1つ以上の胸腔内電極323の追加を許容し、リードインターフェース321Bは1つ以上の皮下の非胸腔内電極325の追加を許容する。選択された胸腔内電極323及び皮下の非胸腔内電極325を図10及び図11に示す実施態様の検出回路302及び/又はエネルギー送出回路316/330に種々の目的で結合するように、切換マトリックス333を制御することができる。
【0151】
前述のように、本発明の心臓デバイスは、心臓の刺激、ペーシング及び/又はカルディオバージョン/除細動治療を提供する治療供給構成にアップグレード可能な心臓モニタ構成(例えば、ループレコーダ)を含むように実施可能である。本発明の他の実施の形態に従って、心臓デバイスは2つ以上のエネルギー送出構成を含むように実施可能である。例えば、心臓デバイスは、経静脈、心外膜又は心内膜の刺激構成を提供するように実施可能であり、皮下の経胸刺激構成を提供するために後で行われるデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。他の例では、本発明の心臓デバイスは、皮下の経胸刺激構成を提供するように実施可能であり、経静脈、心外膜又は心内膜の刺激構成を提供するために後で行われるデバイスの再構成を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0152】
図12は、心臓デバイス内に組み込むことのできる経胸システムの実施の形態を示している。この実施の形態による心臓デバイスは、図3に関して前述した胸腔内システムを組み込むことができる。従って、この実施の形態による心臓デバイスは、個々に作動するが統合された2つのエネルギー送出構成又は基盤を組み込んでいる。2つのエネルギー送出構成は、胸腔内エネルギー送出、経胸エネルギー送出又は胸腔内/経胸エネルギー送出の組み合わせをもたらすように実施可能である。
【0153】
本発明の心臓デバイスは、胸腔内及び経胸両方のシステムによって提供される構成要素及び機能を組み込んでいるが、明確にするために、このような構成要素及び機能を別々の図(それぞれ図3及び図12)で表す。また、図3及び図12乃至図24に示す実施の形態は類似した構成要素を共有することができ、このような構成要素を、共通の構成要素を用いて実施してもよいし、異なる構成要素として実施してもよいことが理解される。更に、図3及び図12乃至図24に示す実施の形態は類似した機能を共有することができ、共通のアプローチや異なるアプローチを用いてこのような機能を実施することができる。例えば、図3に示す回路は制御システム220を含み、これは制御システム305として図12に示すものと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0154】
とりわけ図12を参照すると、図12に関連する要素及び機能の多くは図4を参照して前述したものと同じであるか又は類似したものである。よって、これらの類似した要素及び機能に関する論述はここでは不要である。しかし、これらの実施態様の違いをいくつか説明する。
【0155】
図12に示す構成によると、心臓デバイスの経胸システムはショック療法回路316を組み込み、この他にペーシング治療回路330を含むことができる。いくつかの実施態様では、カルディオバージョン治療及び除細動治療のうちの一方又は両方を供給するためにショック療法回路316のみが含まれている。他の実施態様では、心臓デバイスの経胸システムは、カルディオバージョン能力及び/又は除細動能力の他に心臓ペーシング能力を組み込むことができる。
【0156】
図12に点線で示すように、心臓デバイスは、制御システム305、皮下電極314及び缶形/中立電極307に結合されたペーシング治療回路330を含むことができる。ペーシング治療回路330は、指令が下されると、選択されたペーシング治療(例えば、特に、先に援用された2003年2月28日出願の米国特許出願番号10/377,274号(公開番号2004/0172066)、及び弁護士事件整理番号GUID.611PAとして本願と同時に出願された「皮下の心調律管理(Subcutaneous Cardiac Rhythm Management)」というタイトルの米国特許出願に開示されるもの)に従ってペーシングパルスを心臓に送出する。
【0157】
図13は心臓デバイスの経胸システムの検出回路402の構成を示しており、検出回路402は心拍数検出回路410及び形態分析回路412のうちの一方又は両方を含む。心拍数検出回路410によって実施される当該技術分野で公知の心拍数ベースの識別アルゴリズムを用いて、不整脈の検出及び検証を行うことができる。当該技術分野で公知の感知された心臓信号の形態ベースの分析により、不整脈の発現の検出及び検証を行うこともできる。心拍数ベース及び形態ベースの両アプローチを用いて、不整脈識別アルゴリズムを段階的又は同時に実施することもできる。
【0158】
本発明の心臓デバイスは、律動の分析及び区別を向上させるように構成可能である。1つの心臓デバイス構成によると、胸腔内リードシステムは、1つ以上の心房電極を有する心房リードを含むことができる。心臓デバイスのコントローラは、1つ以上の皮下電極及び1つ以上の心房電極を用いて頻脈性不整脈の区別を容易にする態様で作動するように、デバイスを構成することができる。例えば、コントローラは、心室から生じた頻脈性不整脈と心房から生じた頻脈性不整脈を区別することができる。
【0159】
更なる例として、心臓デバイスは、皮下かつ心外膜の感知を提供して心調律を検証し、心房細動とノイズの区別など、律動の区別を改善するように構成可能である。他の構成によると、心房リードをもたない経静脈ベースの心室系を皮下のリードと協動させ、心室不整脈と心房不整脈の区別を改善することができる。
【0160】
マイクロプロセッサ406に結合された検出回路402は、感知された心臓信号を経胸心臓刺激デバイスにおいて特に有用な態様で処理する特殊な回路を組み込むか、又はこの回路と通信するように構成可能である。例えば図13に示すように、検出回路402は複数の生理センサ及び非生理センサから情報を受信することができる。図示したように、適切な音響センサを用いて経胸音響をモニタすることができる。例えば、本明細書に説明されるか又は本明細書に援用される目的など多様な目的のために、心音を心臓音響処理回路418によって検出し、処理することができる。音響データは、有線又は無線リンクを経て検出回路402に送信され、心臓信号の検出及び律動の評価の向上に用いられる。例えば、音響を用いて、電気的ノイズを有する正常な心臓洞律動と潜在性致死不整脈(例えば心室頻脈又は心室細動)を区別することができる。
【0161】
検出回路402は、骨格筋の活動をモニタする1つ以上のセンサから情報を受信することもできる。心臓活動信号の他に、骨格筋信号が経胸電極によって容易に検出される。このような骨格筋信号を用いて患者の活動レベルを決定することができる。心臓信号検出との関連において、このような骨格筋信号は心臓活動信号のアーチファクトとみなされ、ノイズとしてみなされる場合がある。処理回路416は、1つ以上の骨格筋センサから信号を受信し、処理された骨格筋信号データを検出回路402に送信する。このデータを用いて、例えば前述の態様で、骨格筋ノイズを有する正常な心臓洞律動と心不整脈を区別することができる。
【0162】
前述のように、検出回路402はノイズ処理回路414に結合されるか又はノイズ処理回路414を組み込むことが好ましい。ノイズ処理回路414は、感知された心臓信号を処理し、感知された心臓信号のノイズ内容を取り除くか又は拒絶することによって感知された心臓信号のSN比を改善する。ノイズ処理回路414は、この他に又はこの代わりに、心臓システムによって感知された心臓を起源としない他の信号から心臓信号を分離/識別する信号分離/識別アルゴリズムを実施することができる。
【0163】
ここで図14を参照すると、本発明の心臓デバイスの実施の形態に組み込むことのできる種々の構成要素のブロック図が示されている。図14は、種々の生理及び非生理パラメータの検出に関連する多数の構成要素を示している。図示のように、心臓デバイスはマイクロプロセッサ506を含み、これは一般に心臓デバイス用の制御システムに組み込まれ、検出回路502に結合されている。センサ信号処理回路510は、多数の異なるセンサからセンサデータを受信することができる。
【0164】
例えば、心臓デバイスは、さまざまなタイプの非生理センサ521、体外又は皮膚の生理センサ522及び/又は内部生理センサ524と協働するか、これらに組み込むことができる。このようなセンサは、例えば、音響センサ、インピーダンスセンサ、酸素飽和センサ及び血圧センサを含むことができる。これらのセンサ521、522、524の各々を、短距離無線通信リンク520を介してセンサ信号処理回路510に通信可能に結合することができる。あるいは、内部生理センサ524など一部のセンサを、有線接続(例えば、電気接続又は光学的接続)を介してセンサ信号処理回路510に通信可能に結合することができる。
【0165】
心臓薬物送達デバイス530を、本明細書で考慮されるタイプの心臓デバイスと協動するように用いることができる。例えば、心臓薬物送達デバイス530は、頻脈及び細動の化学治療のために認可された1つ以上の抗不整脈薬を送達することができる。このような薬剤のリストは、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、モリシジン、ソタロール、アミオダロン、イブチリド及びドフェチリド(例えば、クラスI及びクラスIIIの抗不整脈薬)を含むが、このリストは完全ではなく、限定的でもない。患者の快適さを高め、除細動閾値を下げ、及び/又は不整脈の状態を化学的に治療するために、これらの薬物や他の薬物をカルディオバージョン/除細動治療の供給前後や最中に送達することができる。
【0166】
他の構成に従って、心臓デバイスは、心臓デバイスと協働して作動する非植込み型の患者作動式アクチベータ532を含むことができる。アクチベータ532は通信ユニットを含み、患者が重度の不整脈状態の知覚を感知するとこれに応答して起動信号を生じる。あるいは、又はこの他に、心臓デバイスによる不整脈状態の検出に応答し、起動信号を非植込み型アクチベータ532によって生じることができる。心臓デバイスは、非植込み型アクチベータ532と通信する通信回路を含む。
【0167】
患者又は患者の付添人によってアクチベータ532を作動させ、カルディオバージョン/除細動治療を開始することができる。一般に、心臓デバイスは、起動信号の受信に応答して、適切な治療を開始する前に患者が実際に心臓の異常な状態を経験していることを確認する。心臓デバイスと通信している非植込み型アクチベータ532は、患者が認識できる開始信号を生成して薬物送達療法の手動又は自動の開始を示し、実際に生じた心臓の異常な状態を治療することもできる。
【0168】
アクチベータ532は停止ボタンを含むように構成可能であり、深刻な不整脈の可能性を検出したことを心臓デバイスが示したものの、その検出表示が誤っていると患者が判断した場合、このボタンによって刺激治療の供給を停止することができる。明らかな不整脈の発現が心臓デバイスによって検出された場合は、患者アクチベータ532からの停止信号の受信に関わらず、検出及び確認の直後に治療を供給することが好ましい。
【0169】
図に示す構成要素、機能及び構造構成は、本発明の心臓デバイスに組み込むことのできる種々の特徴や特徴の組み合わせを理解するように意図されたものである。比較的高度な設計から比較的簡潔な設計まで、多様な心臓デバイス構成が考慮されることを理解されたい。そのため、一部の心臓デバイス構成は本明細書に記載の特定の特徴を含むことができ、このようなデバイスの他の構成は本明細書に記載の特定の特徴を除外することができる。
【0170】
図15乃至図24は、本発明の心臓デバイスを用いて実施することのできる方法をいくつか示している。図15乃至図24を参照して説明する方法は、本発明の心臓デバイスを用いて実施することのできる種々の有用な方法の詳述を示すように意図されており、この詳述は完全ではなく限定的でもない。
【0171】
図15は、心臓デバイスの作動中の基本的な構成切換に関連するいくつかの処理を示している。作動中(600)、心臓デバイスを標準治療構成又はテスト構成で作動するように構成することができる。テスト構成は一般に経胸構成であるが、胸腔内構成又はハイブリッド経胸/胸腔内構成であってもよい。特定の心臓デバイス作動構成の選択を、外部で起きた指令(例えば、プログラマ経由など)に応答して、又はソフトウェアの命令に応答してなど、いくつかの方法で行うことができる。標準治療構成が選択された場合(604)、心臓デバイスは、標準治療構成での動作が開始するように構成の切換を行う(606)。テスト構成が選択された場合(604)、心臓デバイスは、テスト構成での動作が開始するように構成の切換を行う(608)。次の作動構成の選択をブロック602で行うことができる。
【0172】
図15では、2つのシステム構成間での心臓デバイス構成の切換に関連する処理が示されている。このような付加的な作動構成を提供する心臓デバイスでの動作のために2つ以上のシステム構成を選択できることを理解されたい。また、後述するように、選択可能な構成のうち1つのみが常に作動するよう、又は同時進行の動作や組み合わせの動作のために複数の構成を選択できるよう、心臓デバイスの作動構成を選択することができる。
【0173】
図16は、1つの実施の形態に従った心臓デバイスの動作中の構成切換に関連するいくつかの処理を示している。この実施の形態によると、心臓デバイスは、胸腔内構成、経胸構成又は複合の胸腔内/経胸構成で作動するように選択的に構成することができる。作動中(620)、心臓デバイスを胸腔内構成又は経胸構成で作動するように構成することができる(622)。心臓デバイスの作動構成を、例えば図15に関連して前述したいくつかの方法で選択することができる。
【0174】
胸腔内構成が選択された場合(624)、心臓デバイスは胸腔内システム構成での作動(626)のために回路を構成する。あるいは、心臓デバイスは、経胸のみの構成か又は複合の胸腔内/経胸構成に関連しうる経胸システム構成での作動(628)のために回路を構成することができる。
【0175】
図17は、2つ以上の心臓デバイス構成に関連する機能を選択して作動させることのできる種々の方法を示している。説明のため、対象となる心臓デバイスが少なくとも第1の構成644と第2の構成660で作動可能であると仮定する。この例示の実施の形態によると、第1の構成での作動(644)は、心臓活動の経胸感知(646)と、心臓活動の異常(例えば、頻脈や徐脈)の検出(648)に応答した適切な心臓刺激治療の経胸供給(650)に関連する。第2の構成での作動(660)は、心臓活動の胸腔内感知(662)と、心臓活動の異常の検出(664)に応答した適切な心臓刺激治療の胸腔内供給(666)に関連する。
【0176】
更に図17に示すように、第1及び第2の構成を種々の方法で選択し、作動させることができる。また、第1及び第2の構成が互いに関連して作動する態様を種々の方法で選択することができる。更に、第1及び第2の構成に関連する個々の機能や機能の集まりを種々の方法で選択的に実施することができる。作動構成の選択を行う種々の方法が図17に示されており、図17の左矢印と右矢印との間に設けられた中央のテキストによって示されている。中央のテキストに示される作動構成選択オプションの各々を、個々又は複数の心臓デバイス機能のために実施することができる。
【0177】
例えば、第1の構成644及び第2の構成660、ならびにこれらに関連する機能(例えば、それぞれ646乃至650及び662乃至666)を選択し、ユーザの指令(例えば、臨床医がプログラマや他の外部指令デバイスを使用することによって生じた指令)に応答して作動させることができる。第1の構成及び第2の構成、ならびにこれらに関連する機能を選択し、心臓デバイスの指令やプログラムの命令に応答して作動させることもできる。更に、第1の構成及び第2の構成、ならびにこれらに関連する機能を選択し、連続的動作、並行動作、段階的動作又は複合動作を行うことができる。
【0178】
図18は、2つの構成及びこれらの関連機能を選択し、所望のシーケンスに従って種々の動作を行うことができる心臓デバイスの実施の形態を示している。この特定の実施の形態では、心臓デバイスは、第1の構成672の又は第2の構成690で作動することができる(670)。この例では、第1の構成は心臓活動の経胸感知(674)を提供する心臓デバイス構成を実施する。第2の構成は、心臓活動の胸腔内感知(692)を提供する心臓デバイス構成を実施する。各構成において、心臓デバイスは心臓活動の異常を検出する(676、694)ように構成されている。これに応答して、心臓デバイスは、経胸的及び/又は胸腔内に適切な心臓刺激治療を供給する(678、696)ように構成可能である。
【0179】
胸腔内系及び経胸系の動作に関連する構成及び機能の多くの他の組み合わせを選択的に実施でき、本明細書に述べる組み合わせをこのような実施可能な組み合わせの例として提供することを理解されたい。心臓デバイスの使用が特に有用となりうるいくつかのシナリオを示す更なる非限定的な実施例を以下に記す。
【0180】
実施例1−同時構成
患者は、単形性心室頻脈性不整脈(MVT)から多形性心室頻脈性不整脈(PVT)、そして心室細動(VF)に進行する(即ち、MVT→PVT→VF)病歴をもち、植込み時の除細動閾値が高い(例えば、従来の31J経静脈ベースのシステムでは十分な安全域ではない)。このような患者を、以下の方法で実施する心臓デバイスの候補患者とすることができる。心臓デバイスの胸腔内システムは、頻脈とVFを区別し、MVTの際に抗頻脈ペーシング及び/又はカルディオバージョンを行うようにプログラム可能である。経胸システムは、VFを検出して除細動治療を行うように使用可能である。
【0181】
実施例2−段階的構成
心臓デバイスを被験患者の集団に植え込むことができる。心臓デバイスのテストシステム(例えば、皮下電極構成のみを用いる経胸システム)を最初に作動するようにプログラムし、治療の供給に関連して標準治療システム(例えば、従来の胸腔内システム)を休止させることができる。テストシステムをx回試みても不整脈を変えることができなかった場合、心臓デバイスは動作を標準治療システムに切り換える。標準治療システムをy回試みても不整脈を変えることができなかった場合、心臓デバイスは双方のシステムの回路及び/又は機能を組み合わせて新規なシステム構成を定め、双方のシステムを用いて不整脈を変える。
【0182】
実施例3−段階的構成
心臓デバイスを被験患者の集団に植え込むことができる。心臓デバイスの標準治療システム(例えば、従来の胸腔内システム)を最初に作動するようにプログラムし、治療の供給に関連してテストシステム(例えば、皮下電極構成のみを用いる経胸システム)を休止させることができる。標準治療システムをx回試みても不整脈を変えることができなかった場合、心臓デバイスは動作をテストシステムに切り換える。次いで、心臓デバイスはテストシステムを用いて不整脈を変えようとする。代わりのアプローチとして、リードの完全性に不具合がある場合、テストシステムを標準治療システムの支援(backup)として用い、通院の緊急性を低減させることができる。
【0183】
前述のように、心臓デバイスは、新しいシステム/機能の性能と確立したシステム/機能の性能との直接的な比較を提供することで特に有用となりうる。図19はこのようなシステム構成を1つ示しており、この構成では、心臓デバイスが第1の構成及び第2の構成で作動している間に心臓デバイス及び/又は外部モニタデバイスによって性能データを取得する(700)。これらのデータを取得して心臓デバイス内に記憶し、後述する高性能患者管理(APM)システムなどの外部システムに後で送信することができる(702)。あるいは、性能データをリアルタイムで取得し、外部システム(例えば、APMシステム)にリアルタイムで送信することができる。プログラマの場合のように、外部システムを患者の近距離に配置してもよいし、通信リンクを介してプログラマや他の呼出デバイス(例えば、ネットワーク接続によってアクセスされるAPMシステム)に通信可能に結合されたシステムなど、患者から遠く離れて配置してもよいことに注意されたい。
【0184】
外部システムは受信した性能データを処理し(704)、第2の構成と比較して第1の構成で作動する際の(又はその逆)心臓デバイス性能の評価を容易にする種々の比較データの形式を生成する。この比較データを用いて、特定の機能や治療の有効性を、コンピュータ支援手段及び/又は手動手段によって評価することができる(706)。
【0185】
本発明の心臓デバイスは、従来のアプローチを用いてこれまでに利用することができなかった他のシステム/機能評価の機会を提供することができる。図20Aに示すように、心臓デバイスの胸腔内システムを標準治療システムとして選択することができる(701)。心臓デバイスの経胸システムをモニタシステムとして選択することができる(703)。このシステム構成において、心臓デバイスは、経胸システムを用いて胸腔内システムの動作をモニタする(705)。心臓デバイスは、胸腔内システム自体を用いて胸腔内システムの動作をモニタすることもできるが、経胸システムは胸腔内システムのみを用いて取得可能なものとは異なるモニタデータを取得できることに注意されたい。胸腔内システムの性能は、経胸システム又は複合システムによって取得したモニタデータを用いて評価可能である(707)。
【0186】
図20Bは、経胸システムを標準治療システムとして選択し(711)、胸腔内システムをモニタシステムとして選択する(713)ことのできる他の評価/モニタのシナリオを示している。このシステム構成では、心臓デバイスは胸腔内システムを用いて経胸システムの動作をモニタする(715)が、心臓デバイスは経胸システム自体を用いて経胸システムの動作をモニタすることもでき、胸腔内システムは、経胸システムのみを用いて取得可能なモニタデータとは異なるモニタデータを取得できることを理解されたい。経胸システムの性能は、胸腔内システム又は複合システムによって取得したモニタデータを用いて評価可能である(717)。
【0187】
図21は、本発明の心臓デバイスを用いることによって実現できる他の能力を示している。心臓デバイスは特定の機能を1つのモード又は構成で有益に行い、この特定の機能は他のモード又は構成で行われる第2の機能の性能を強化することができる。例えば、心臓デバイスのコントローラは、第1の構成(例えば、胸腔内構成)で作動して第1の機能を行うようにデバイスを構成することができる。次に、コントローラは第2の構成(例えば、経胸構成)で作動して第2の機能を行うように心臓デバイスを構成することができ、これによって第1の機能の性能は第2の機能の性能を強化する。
【0188】
図21に示す具体例に従って、心臓デバイスを実施して治療の組み合わせを供給し、種々のタイプの不整脈を治療することができる。図21は、心臓デバイスの胸腔内システム及び経胸システムによってそれぞれ供給されるペーシング治療及び除細動治療の組み合わせを用いて不整脈を治療する1つのアプローチを示している。
【0189】
不整脈を検出し(720)、不整脈の発現を確認した後、心臓デバイスは胸腔内システムを用いたペーシング治療を供給し(722)、心調律を組織化することができる。ペーシング治療を用いても不整脈を正常洞調律に変えることができないと仮定した場合、心臓デバイスは、経胸システムを用いて除細動治療を供給し、不整脈を終了させる(724)。心臓デバイスは、胸腔内システム及び経胸システムのうちの一方又は両方を用いて不整脈の停止又は持続を確認する(726)。不整脈が持続している場合、不整脈を終了させようと、胸腔内システム及び経胸システムのうち一方又は両方を用いて心臓デバイスによって更なる治療を供給することができる。
【0190】
図21に示す方法や他の心臓治療に関連して、本発明の心臓デバイスは、本明細書に援用される米国特許第6,341,235号に開示される閾値未満の二相電気刺激を容易にするような特徴及び機能を組み込むことができる。本発明の心臓デバイスは、本明細書に援用される米国特許第6,411,845号に開示される閾値未満の電気刺激を容易にするような特徴及び機能を組み込むこともできる。
【0191】
図21に示す方法によると、心臓デバイスは、選択された心臓組織の選択された領域に対して行われる単一の電気治療を供給するように構成可能である。単一の電気治療とは、複数の治療の組み合わせを含むものである。図21に示す方法の1つの具体的な実施態様は、ペーシングレベル治療と除細動治療といった2つの別個の治療の供給に関連する。ペーシングレベル治療は、除細動レベルのショック電界強度に対する感受性が比較的低い選択された心臓組織の限局部分に対して行われる。除細動治療はペーシングレベル治療の後か又はこれと同時に行われると共に、心筋細動領域を有する組織の部分に対して行われ、除細動レベル未満のショックがこの領域を制御する。このような心筋細動領域は、任意の領域の局所の電気記録図(又は心電図)対その領域の刺激アーチファクトが1:1である位相ロックによって特徴づけられることが好ましい。
【0192】
選択される心臓組織は心室組織でもよいし、心房組織でもよい。心房組織の場合、心室興奮周期の受攻期(T波)内で生じるであろう第1の除細動ショックは、心室脱分極の後まで生じてはならない。第1の除細動レベルショックは、最後のペーシングレベルショックと一致させて、又はこの後に生じることが好ましい。例えば、最後のペーシングレベルショックは、第1の除細動レベルショックの前に開始する最適期間の始まりよりも遅く生じることが好ましい。この期間は、ECGの形態やECGのある成分、心臓周期長のある割合(例えば、80乃至100%)など、感知された心臓信号から特徴量を抽出することによって決定可能である。最適期間の決定に用いる正確な条件は、特定の臨床及び治療の状況から経験的に決定されるのが一般的であるが、最適期間に設けられる一般的な実用上の限度は、第1の除細動ショックの250ミリ秒前から、第1の除細動ショックと一致する(即ち同時の)もの、即ち1ミリ秒未満内である。
【0193】
図21に示す複合治療供給のアプローチは、第1の除細動レベルショックによる除細動を成功させるのに必要な電圧及び/又はエネルギーを効果的に減少させる。ペーシングレベルショックによって制御される領域を単に限局領域と同一のサイズにしてもよいが、この手順の目的は、細動する心筋の連続領域を組織の制御量の観点で連続的に大きくすることにある。組織の制御量が連続的に多くなるほど、心臓全体の治療を単一の除細動ショックによって成功させることができる確率が高くなり、他の方法で可能であるよりも強度を低くした単一の除細動ショックによる場合は特にそうである。従来のデバイスによって実施されるが本明細書の心臓デバイスでの使用に適用可能な複合ペーシング/除細動治療の更なる詳細は、同一出願人による米国特許第5,797,967号に開示されており、これは本明細書に援用される。
【0194】
図22は、協働して作動する経胸システム及び胸腔内システムの両方を使用する心臓デバイスを用いて実現可能な他の能力を示している。図22に示す方法によると、心室不整脈を防止するために付加的な安全機能を提供しながら種々の治療を心房に提供するように心臓デバイスを構成することができる。図22に示すように、心臓デバイスを実施して心房不整脈を検出する(740)ことができる。心臓デバイスは、胸腔内システム及び経胸システムのうちの一方又は両方を用いて心室不整脈及び心房不整脈の検出と不整脈の発現の確認を行うことができることに注意されたい。
【0195】
心房での発現を示すと、心臓デバイスは胸腔内システムを用いて対象の心房に適切な治療を供給することができる(742)。胸腔内システムは心房リードを含むものと仮定する。胸腔内システムによって心房治療を供給する際、経胸システムは必要に応じて心室頻脈性不整脈支援治療を提供することができる(744)。心房不整脈の停止は、胸腔内システム及び経胸システムのうちの一方又は両方を用いて確認可能である(746)。あるいは、ブロック742の心房治療を経胸システムによって供給し、代わりにブロック744の心室頻脈性不整脈支援治療を胸腔内システムによって提供できることを理解することができる。
【0196】
図23は、本発明の実施の形態に従った心臓デバイスを用いた心室細動(VF)の治療に関連する種々の方法を示している。図23によると、カウンタN及びMを初期化する。Nは心臓デバイスの経胸システムによって供給されるショックの数を表し、Mは心臓デバイスの胸腔内システム(例えば、経静脈システム)によって供給されるショックの数を表す。パラメータX及びYを初期化する。X及びYは、それぞれ経胸システム及び胸腔内システムによって許容されるショックの最大数を表す。
【0197】
心臓デバイスの経胸システムは心室細動の発現を検出し(760)、確認する。これに応答して、心臓デバイスは経胸システムによって除細動治療を供給する(762)。心室細動が終了すると(764)VF検出/治療ルーチンが完了する(766)。
【0198】
心室細動が終了せず(764)、NがXよりも小さい(768)場合、経胸システムによってもう1つのショックを供給する(762)。しかし、NがX以上であると(768)胸腔内システムが心室細動を検出し(770)、これを確認した場合、胸腔内システムによってショックを供給する(772)。心室細動が終了すると(774)VF検出/治療ルーチンが完了する(776)。
【0199】
心室細動が終了せず(774)、MがYよりも小さい(778)場合、胸腔内システムによってもう1つのショックを供給する(772)。しかし、MがY以上である場合(778)、胸腔内システム又は経胸システムは心室細動を検出し(780)、これを検出した場合は胸腔内システム及び経胸システムの組み合わせによってショックを供給する(782)。
【0200】
図24は、本発明の心臓デバイスを用いて所与の患者集団に対して行われた交差研究に関連する特に有用な能力を示している(本発明の心臓デバイスをこの集団の各患者に植え込んだ)。図24に示すように、特定の研究は第1相及び第2相を含み、これらの期間は一般には同じだが、必ずしも同じとは限らない。第1相800の始めに、第1の患者集団(例えば、患者集団の半分)に植え込んだ心臓デバイスを胸腔内システムのみが作動するようにプログラムする(802)。第2の患者集団(例えば、患者集団の残り半分)に植え込んだ心臓デバイスを、経胸システムが胸腔内システムと共に作動するようにプログラムする(804)。研究の第1相の間、第1及び第2の患者集団の心臓デバイスからデータを収集する(806)。
【0201】
第1相800の完了時及び第2相810の始めに、第1の患者集団に植え込んだ心臓デバイスのプログラミングは、心臓デバイスの動作を胸腔内のみのシステム構成から胸腔内システム及び経胸システムの双方が作動する構成に切り換える(812)。第2の患者集団に植え込んだ心臓デバイスのプログラミングは、心臓デバイスの動作を複合の胸腔内/経胸システム構成から胸腔内のみのシステム構成に切り換える(814)。研究の第2相の間、第1及び第2の患者集団の心臓デバイスからデータを収集する(814)。これらのデータを用いて、所与の患者集団における心臓デバイスの性能を評価することができる(818)。
【0202】
本明細書に記載した種々の実施の形態を、呼吸障害(例えば睡眠時無呼吸、呼吸低下及びチェーン−ストークス呼吸など)の検出及び/又は治療に関連させて使用することができる。心臓デバイスは、呼吸障害の検出及び治療をもたらす呼吸障害用回路及び検出アルゴリズムを含むことができる。例えば、心臓デバイスは、経胸インピーダンスに関連する信号を検出するインピーダンス感知構成を組み込むことができる。例えば、心臓デバイスは、インピーダンス感知電極、インピーダンス駆動電極、及び経胸インピーダンスに関連する電圧信号を検出するインピーダンス駆動装置/検出器回路を組み込むことができる。これらの電極は、心臓デバイスの感知電極、ペーシング電極及び/又は除細動電極と同じでもよいし、異なってもよい。経胸インピーダンスの測定値を用いて呼吸に関連する種々のパラメータを計算してもよい。
【0203】
1つのアプローチによると、インピーダンス駆動装置回路は電流を生じ、この電流は血液を介してインピーダンス駆動電極とデバイスハウジングの缶形電極との間を流れる。経胸インピーダンスが変化すると、インピーダンス感知電極の電圧が缶形電極に対して変化する。インピーダンス感知電極と缶形電極との間で生成された電圧信号は、インピーダンス駆動装置/検出器回路内のインピーダンス感知増幅器によって検出される。
【0204】
インピーダンス感知電極で生成された電圧信号は経胸インピーダンスに比例しており、インピーダンスは息を吸うと増加し、息を吐くと減少する。インピーダンス測定値のピーク間遷移は一息で吸った空気の量と比例しており、一回換気量と示される。インピーダンス測定値を更に処理し、一呼吸で移動した空気量に対応する一回換気量や、1分毎に移動した空気量に対応する毎分換気量を決定することができる。
【0205】
本発明の心臓デバイスは、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/309,770号(公開番号2004/0111040)(2002年12月4日出願)、10/643,203号(公開番号2005/0039745)(2003年8月18日出願)、10/643,016号(公開番号2005/0043644)(2003年8月18日出願)及び10/643,154号(公開番号2005/0043772)(2003年8月18日出願)のうちの1つ以上に記載された方法、構造及び/又は技術を用いて呼吸障害の検出、推定及び/又は治療を行うことができる。これらの出願は本明細書に援用される。本明細書に記載された種々の実施の形態を、睡眠の検出、睡眠の質に関するデータの収集及び評価、睡眠の進度、ならびに説明を行った上での睡眠のテスト、診断及び/又は治療に関連させて用いることができる。本発明の心臓デバイスは、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/309,771号(公開番号2004/0111041)(2002年12月4日出願)、10/643,006号(公開番号2005/0043652)(2003年8月18日出願)及び10/642,998号(公開番号2005/0042589)(2003年8月18日出願)のうちの1つ以上に記載された方法、構造及び/又は技術を組み込むことができ、これらの出願は本明細書に援用される。本明細書に記載された種々の実施の形態を、患者に影響を及ぼす状況の条件の検出に関連させて用いることができる。本発明の心臓デバイスは、同一出願人による同時係属の米国特許出願10/269,611号(公開番号2004/0073093)(2002年10月11日出願)に記載された方法、構造及び/又は技術を組み込むことができ、この出願は本明細書に援用される。
【0206】
本明細書に記載した心臓デバイスの種々の実施の形態を、呼吸性洞性不整脈(RSA)の再現や回復へのアプローチに関連させて用いることができる。本発明の心臓デバイスは、本明細書に援用される米国特許第5,964,788号に記載のようなRSAに関する方法、構造及び/又は技術を組み込むことができる。
【0207】
本明細書に記載のタイプの心臓デバイスを高性能患者管理(APM)システムの構造内で用いることができる。高性能患者管理システムによって、医師は心機能や患者の他の状態を遠隔で自動的にモニタすることができる。1つの例では、患者のリアルタイムでのデータ収集、診断及び治療を可能にする種々の遠隔通信技術及び情報技術を心臓デバイスに備えることができる。本明細書に記載した種々の実施の形態を高性能な患者管理に関連させて用いることができる。本明細書に記載の方法、構造及び/又は技術を適用して患者/装置の遠隔からのモニタ、診断及び治療、又は他のAPM関連の方法を容易にすることができる。本発明の心臓デバイスは、米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号及び第6,440,066号のうちの1つ以上に開示されるデバイス及び/又はシステムの特徴を組み込むことができる。これらの特許は本明細書に援用される。
【0208】
図1乃至図24に示す構成要素、機能及び構造構成は、本発明の心臓手段に組み込むことのできる種々の特徴や特徴の組み合わせを提供するように意図されたものである。本発明の多様な心臓デバイスは、比較的高度な設計から比較的単純な設計まで及ぶものとして考慮されることを理解されたい。従って、本発明の特定の心臓デバイスは本明細書に記載の特定の特徴を含むことができ、このようなデバイスの他の構成は本明細書に記載の特定の特徴を除外することができる。
【0209】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更や追加を前述の好適な実施の形態に対して行うことができる。従って、本発明の範囲は、前述の特定の実施の形態によって限定されるのではなく、後述する請求項やその同等物によってのみ定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】モニタ/記録構成で示されているが心臓エネルギー送出構成に再構成可能な本発明の心臓デバイスの平面図である。
【図2】モニタ/記録構成で示される本発明の心臓デバイスの他の実施の形態の平面図である。
【図3】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの種々の構成要素を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に従った心臓デバイスの種々の構成要素を示すブロック図である。
【図5】本発明の心臓治療構成に従って患者に植え込まれた心臓デバイスの図である。
【図6】本発明の他の心臓治療構成に従って患者に植え込まれた心臓デバイスの図である。
【図7】本発明の1つの実施の形態に従って患者の心臓に植え込まれた2心腔心臓デバイスの治療構成における図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に従って患者の心臓に植え込まれた多心腔心臓デバイスの治療構成における図である。
【図9】本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間の切換を提供する心臓デバイスの構成要素を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間の切換を提供する心臓デバイスの構成要素を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に従って種々の感知・エネルギー送出ベクトル間の切換を提供する心臓デバイスの構成要素を示す図である。
【図12】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの経胸心臓刺激システムの種々の構成要素を示すブロック図である。
【図13】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの経胸心臓刺激システムの種々の処理構成要素及び検出構成要素を示すブロック図である。
【図14】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの種々のセンサ、デバイス及び回路を示すブロック図である。
【図15】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの複数構成の動作に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図16】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの複数構成の選択に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図17】本発明の1つの実施の形態に従って心臓デバイスの複数構成の処理を行うことのできる種々の態様を示すフロー図である。
【図18】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスを用いて実施される特定の複数構成の動作に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図19】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの性能の評価に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図20A】本発明の1つの実施の形態に従って心臓デバイスの性能をモニタするアプローチを示すフロー図である。
【図20B】本発明の1つの実施の形態に従って心臓デバイスの性能をモニタするアプローチを示すフロー図である。
【図21】本発明の1つの実施の形態に従って、心臓デバイスの第1のシステム構成による第1の機能の性能が心臓デバイスの第2のシステム構成による第2の機能の性能によって強化される処理を示すフロー図である。
【図22】本発明の1つの実施の形態に従って、心房治療が心臓デバイスの第1のシステム構成により提供され、心室頻脈支援治療が心臓デバイスの第2のシステム構成により提供される処理を示すフロー図である。
【図23】本発明の1つの実施の形態に従った心臓デバイスの複数のシステム構成の協働動作による心室細動の検出及び治療に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【図24】所与の患者集団に対し、集団の各患者に植え込まれた本発明の再構成可能な経胸/胸腔内心臓デバイスを用いて行われた交差研究に関連する種々の処理を示すフロー図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ハウジング内に設けられたエネルギー送出回路と、
ハウジング内に設けられた検出回路と、
ハウジング上に設けられ、前記エネルギー送出回路及び前記検出回路に結合されたインターフェースであって、少なくとも1つの胸腔内電極構成及び少なくとも1つの皮下の非胸腔内電極構成を受け入れるように構成された、前記インターフェースと、
ハウジング内に設けられ、前記インターフェース、前記エネルギー送出回路及び前記検出回路に結合されたコントローラと、
を含み、
前記皮下の非胸腔内電極構成のみを用いる第1の構成と、前記胸腔内電極構成のみを用いる第2の構成と、前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの一方又は両方を用いる第3の構成とで作動可能であり、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成の各々において心臓活動の感知及び刺激を提供することのできる、
植込み型システム。
【請求項2】
前記胸腔内電極構成と前記インターフェースとの間を接続せずに前記第1の構成のみで作動可能である、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記胸腔内電極構成を前記インターフェースに結合することで前記第2の構成又は前記第3の構成での動作を可能にする、請求項2のシステム。
【請求項4】
前記皮下の非胸腔内電極構成と前記インターフェースとの間を接続せずに前記第2の構成のみで作動可能である、請求項1のシステム。
【請求項5】
前記皮下の非胸腔内電極構成を前記インターフェースに結合することで前記第1の構成又は前記第3の構成での動作を可能にする、請求項4のシステム。
【請求項6】
前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの選択された電極を用いて前記第3の構成で作動するように構成可能である、請求項1のシステム。
【請求項7】
前記ハウジングに設けられた缶形電極を更に含み、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つ以上において前記缶形電極を使用するように構成可能である、請求項1のシステム。
【請求項8】
前記第2の構成又は前記第3の構成において単極構成を選択し、前記胸腔内電極構成の選択された電極と前記皮下電極のうち選択された1つの電極とを用いて感知、ペーシング及びショック供給のうちの1つ以上を行うことができる、請求項1のシステム。
【請求項9】
前記検出回路、前記エネルギー送出回路及び前記インターフェースに結合された切換マトリックスを更に含み、前記コントローラは、前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの選択された電極を前記インターフェース経由で前記検出回路及び前記エネルギー送出回路の選択された入力及び出力に結合するように前記切換マトリックスを構成する、請求項1のシステム。
【請求項10】
前記インターフェースが心室インターフェース及び心房インターフェースのうちの一方又は両方を含む、請求項1のシステム。
【請求項11】
前記インターフェースがペーシングインターフェース及び除細動インターフェースのうちの一方又は両方を含む、請求項1のシステム。
【請求項12】
前記インターフェースが両心室リードシステムインターフェース又は多部位リードシステムインターフェースを含む、請求項1のシステム。
【請求項13】
前記インターフェースが、経静脈リードインターフェース、心内膜リードインターフェース及び心外膜リードインターフェースのうちの1つ以上を含む、請求項1のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、患者の体外の信号源から受信した信号に応答して前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つ以上で選択的に作動するように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項15】
前記第2の構成は標準治療構成であり、前記第1の構成又は前記第3の構成はテスト構成である、請求項1のシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つで作動し、所定の条件に応答して前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの別の1つで作動するように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項17】
前記所定の条件が所定の心調律を含む、請求項16のシステム。
【請求項18】
前記所定の条件が、不整脈、不整脈の検出の失敗又は不整脈の治療を含む、請求項16のシステム。
【請求項19】
前記所定の条件が、所定期間の終了又は定期的な疾患の発現を含む、請求項16のシステム。
【請求項20】
前記コントローラが、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうち少なくとも2つで同時に作動するように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項21】
前記コントローラが、前記第1の構成及び前記第2の構成との間で動作を切り換え、前記第1及び前記第2の構成の各々を用いて心調律の検出又は不整脈の治療を行うように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項22】
前記胸腔内電極構成のうち少なくとも2つの電極は単一の心腔に配置されており、
前記第2の構成は多部位感知及び多部位エネルギー送出のうちの一方又は両方を提供する、
請求項1のシステム。
【請求項23】
前記コントローラが、
前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つで作動して第1の機能を行うように前記システムを構成し、
前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの別の1つで作動して第2の機能を行うように前記システムを構成し、
前記第1の機能の性能は前記第2の機能の性能を強化する、
請求項1のシステム。
【請求項24】
前記第1の機能は不整脈を組織化する第1のエネルギー送出機能を含み、前記第2の機能は前記不整脈を終了させる第2のエネルギー送出機能を含む、請求項23のシステム。
【請求項25】
前記胸腔内電極構成は心房リードを含み、
前記コントローラは、徐脈ペーシング及び抗頻脈ペーシングのうちの一方又は両方を提供するように前記システムを構成する、
請求項1のシステム。
【請求項26】
前記胸腔内電極構成は心房リードを含み、
前記第2の構成又は前記第3の構成は心房活動の感知及び心房不整脈治療の供給をもたらし、
前記第1の構成は、前記第2の構成又は前記第3の構成に対して心室頻脈性不整脈支援治療をサポートする、
請求項1のシステム。
【請求項27】
前記胸腔内電極構成は、心房電極を1つ以上有する心房リードを含み、
前記コントローラは、前記第2の構成で作動し、少なくとも前記1つ以上の心房電極を用いて頻脈性不整脈を区別するように前記システムを構成する、
請求項1のシステム。
【請求項28】
前記ハウジングが一体構造を定め、前記非胸腔内電極構成が前記ハウジングの中又は上に設けられる、請求項1のシステム、
【請求項29】
前記非胸腔内電極構成の少なくとも1つの電極が、前記ハウジングから外側に延びる剛性の、又は形状変更可能な支持構造体上に設けられる、請求項1のシステム。
【請求項30】
前記コントローラが、前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの一方又は両方を用いて経胸インピーダンスを決定する、請求項1のシステム。
【請求項31】
前記コントローラが前記経胸インピーダンスを用いて呼吸障害を検出する、請求項30のシステム。
【請求項32】
前記コントローラが心電図を取得し、前記コントローラに結合されたメモリに記憶する、請求項1のシステム。
【請求項33】
前記コントローラが診断を取得し、前記コントローラに結合されたメモリに記憶する、請求項1のシステム。
【請求項34】
前記コントローラに結合された通信デバイスを更に含み、該通信デバイスは患者の体外のデバイス又はネットワークシステムと通信するように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項35】
心臓の感知及び刺激方法であって、
第1の構成及び第2の構成で作動可能な植込み型心臓刺激デバイスを提供することであって、前記第1の構成は、患者の皮下及び非胸腔内に配置されるよう構成された1つ以上の皮下電極を用いて心臓活動の検出及び心臓刺激治療の供給を行い、前記第2の構成は、少なくとも1つのリードを用いて心臓活動の感知及び心臓刺激治療の供給を行い、前記少なくとも1つのリードは患者の胸腔内に配置されるよう構成された1つ以上のリード電極を含む、前記植込み型心臓刺激デバイスの提供と、
前記少なくとも1つのリードが存在しない状態で前記心臓刺激デバイスを前記第1の構成で作動させることと、
前記少なくとも1つのリードを前記心臓刺激デバイスに結合することによって、前記心臓刺激デバイスの前記第2の構成での動作を少なくとも部分的に可能にすることと、
を含む、前記方法。
【請求項36】
前記第1の構成及び前記第2の構成がカルディオバージョン及び除細動モードをサポートする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の構成及び前記第2の構成がペーシングモードをサポートする、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方がペーシングモードをサポートし、前記第1の構成及び前記第2の構成の他方がカルディオバージョン及び除細動モードをサポートする、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
同時の動作のために前記第1の構成及び前記第2の構成を使用可能にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
連続的動作のために前記第1の構成及び前記第2の構成を選択的に使用可能と使用不可にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
不整脈が発現している間、段階的な動作のために前記第1の構成及び前記第2の構成を選択的に使用可能と使用不可にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
患者の体外の位置から前記第1の構成及び前記第2の構成を選択的に使用可能と使用不可にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に取得した性能情報を記憶することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記性能情報を患者の体外の位置に送信することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記性能情報を用いて比較データを生成することを更に含み、前記比較データは、前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動する際の性能を前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
主要作動構成として前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動し、前記主要作動構成での作動中に検出された性能の異常に応答して前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方で作動することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動している間に第1の機能を行うことと、
前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方で作動している間に第2の機能を行うことと、
を更に含み、
前記第1の機能の性能は前記第2の機能の性能を強化する、
請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の機能は不整脈を組織化する第1のエネルギー送出機能を含み、前記第2の機能は前記不整脈を終了させる第2のエネルギー送出機能を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に特定の機能を行うことと、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際の前記特定の機能の性能に関連する性能データを取得することと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記特定の機能が感知に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記特定の機能が頻脈性不整脈の検出に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記特定の機能が徐脈の検出に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記特定の機能が、心拍数に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第1のサブ機能と、形態に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第2のサブ機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記特定の機能が刺激波形の生成又は刺激波形の送出に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記特定の機能が、前記リード及び前記1つ以上の皮下電極のうちの一方又は両方の構成に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に前記特定の機能の性能に関連する性能情報を記憶することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記性能情報を患者の体外の位置に送信することを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記性能情報を用いて比較データを生成することを更に含み、前記比較データは、前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動する際の性能を前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
心房の活動を胸腔内で感知し、心房の治療を要する状態に応答して心房刺激治療を胸腔内に供給することと、
前記心房刺激治療の供給中に感知された心室の治療を要する状態に応答して心室頻脈性不整脈支援治療を経胸的に提供することと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項60】
心房の活動を感知することと、
前記感知された心房の活動に少なくとも部分的に基づいて徐脈ペーシング及び抗頻脈ペーシングのうちの一方又は両方を提供することと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の構成は、単一の心腔又は複数の心腔に関して多部位感知及び多部位エネルギー送出のうちの一方又は両方を支持する、請求項35に記載の方法。
【請求項62】
前記心臓刺激デバイスの提供が、該心臓刺激デバイスを前記第1の構成及び前記第2の構成で作動させるソフトウェアを提供することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項63】
前記心臓刺激デバイスの提供の後に、前記第2の構成で作動させるように前記心臓刺激デバイス内のソフトウェアを変更することを更に含み、変更された前記心臓刺激デバイスにより、前記心臓刺激デバイスは、前記少なくとも1つのリードを前記心臓刺激デバイスに結合した後に前記第2の構成で作動することができる、請求項35に記載の方法。
【請求項64】
前記1つ以上の皮下電極が存在しない状態で前記心臓刺激デバイスを前記第2の構成で作動させることと、
前記1つ以上の皮下電極を前記心臓刺激デバイスに少なくとも部分的に結合することにより、前記心臓刺激デバイスの前記第1の構成での動作を可能にすることと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項65】
前記心臓刺激デバイスの提供の後に、前記第1の構成で作動させるように前記心臓刺激デバイス内のソフトウェアを変更することを更に含み、変更された前記心臓刺激デバイスにより、前記心臓刺激デバイスは、前記1つ以上の皮下電極を前記心臓刺激デバイスに結合した後に前記第1の構成で作動することができる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
患者の心臓状態の変化に応答して前記心臓刺激デバイスの動作を変更することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項67】
患者の心臓状態の変化に応答して、感知、診断又は治療といった機能を1つ以上使用可能にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の構成又は前記第2の構成で作動する際に1つ以上の心腔の捕捉閾値を決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項69】
前記電極のうちの少なくとも2つを用いて経胸インピーダンスを測定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項70】
前記経胸インピーダンスを用いて呼吸障害を検出することを更に含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の構成で作動する際に心電図を記憶することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項72】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で特定の機能を行い、前記第1の構成及び前記第2の構成での前記特定の機能の性能に関連する性能データを取得することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項73】
前記特定の機能が感知に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記特定の機能が頻脈性不整脈の検出に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記特定の機能が徐脈の検出に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記特定の機能が、心拍数に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第1のサブ機能と、形態に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第2のサブ機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記特定の機能が、刺激波形の生成及び刺激波形の送出のうち一方又は両方に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記特定の機能が、前記リード及び前記1つ以上の皮下電極のうちの一方又は両方の構成に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
心臓の感知及び刺激システムであって、
心臓活動を感知する手段と、
心臓刺激治療を生成する手段と、
前記システムを第2の構成で作動させる際に少なくとも1つのリードを前記感知手段及び前記生成手段に結合する手段であって、前記少なくとも1つのリードが、胸腔内に配置されるよう構成された1つ以上のリード電極を含む、前記手段と、
前記結合手段が前記少なくとも1つのリードを受け入れたことに応答して前記システムの前記第2の構成での動作を可能にする手段と、
前記少なくとも1つのリードが存在しない状態で、前記感知手段及び前記生成手段に結合された皮下の非胸腔内電極を用いて前記システムを第1の構成で作動させる手段と、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で心臓活動を感知し、前記心臓刺激治療を供給する手段と、
を含む、前記システム。
【請求項80】
心臓の感知及び刺激システムであって、
皮下の非胸腔内電極のみを用いて、第1の構成で心臓活動を感知し、心臓刺激治療を供給する手段と、
胸腔内電極及び非胸腔内電極のうち選択されたものを用いて、第2の構成で心臓活動を感知し、心臓刺激治療を供給する手段と、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に特定の機能を行う手段と、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際の前記特定の機能の性能に関連する性能データを取得する手段と、
を含む、前記システム。
【請求項81】
前記性能情報を用いて比較データを生成する手段を更に含み、前記比較データは、前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で前記システムを作動させる際の性能を前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含む、請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
植込み型心臓デバイスであって、
植込み型ハウジングと、
前記ハウジングに結合された第1の電極、及び第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に結合されたモニタ回路であって、前記デバイスがモニタモードで作動される際、前記第1の電極及び前記第2の電極は心臓活動を感知するように構成される、前記モニタ回路と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に結合されたエネルギー送出回路であって、前記デバイスがエネルギー送出モードで作動される際、前記第1の電極及び前記第2の電極は心臓活動を感知してエネルギーを送出するように構成される、前記エネルギー送出回路と、
前記ハウジングに結合され、心臓リードを受け入れるように構成されたリードインターフェースと、
前記リードインターフェース、前記モニタ回路及び前記エネルギー送出回路に結合されたコントローラであって、前記心臓リードの前記リードインターフェースへの結合に少なくとも部分的に応答し、前記デバイスの動作を前記モニタモードから前記エネルギー送出モードに移行させる、前記コントローラと、
を含む、前記デバイス。
【請求項83】
前記ハウジング内に設けられ、前記第1の電極及び前記第2の電極に結合された検出回路を更に含み、該検出回路は心臓信号を受信するように構成されている、請求項82のデバイス。
【請求項84】
前記ハウジング内に設けられ、前記検出回路に結合されたメモリを更に含み、該メモリは選択された心臓信号を記憶するように構成されている、請求項83のデバイス。
【請求項85】
前記検出回路に結合されたプログラム可能フィルタを更に含み、該プログラム可能フィルタは、前記モニタモードに関連してモニタする第1のフィルタリングモードと、前記エネルギー送出モードに関連して心疾患を検出する第2のフィルタリングモードで構成可能である、請求項83のデバイス。
【請求項86】
前記コントローラに結合されたモードスイッチを更に含み、該モードスイッチは、前記心臓デバイスを前記モニタモードと前記エネルギー送出モードとの間で移行させるように構成されている、請求項82のデバイス。
【請求項87】
送信要求信号を受信し、該送信要求信号の受信に応答して前記メモリの内容を患者の体外のデバイスに送信するトランシーバを更に含む、請求項82のデバイス。
【請求項88】
前記コントローラに結合された受信器を更に含み、前記コントローラは、前記受信器による切換要求信号の受信に応答して前記心臓デバイスを前記モニタモードと前記エネルギー送出モードとの間で切り換える、請求項82のデバイス。
【請求項89】
植込み型心臓デバイスを提供することと、
前記心臓デバイスを用いて患者の心臓活動をモニタすることと、
心疾患のデータを前記心臓デバイスのメモリに記憶することと、
記憶された前記心疾患データを用いて、患者が心臓刺激デバイスの使用を必要とする状態にあると診断することと、
前記心臓刺激デバイスとして作動するように前記心臓デバイスを構成することと、
を含む、方法。
【請求項90】
前記心臓デバイスを構成することが、心臓活動のモニタに関連する第1の作動モードと心臓治療の供給に関連する第2の作動モードとの間で前記デバイスを切り換えることを含む、請求項89の方法。
【請求項91】
前記切換が、ハードウェアスイッチを第1の位置から第2の位置に変えることを含む、請求項90の方法。
【請求項92】
前記診断が、前記植込み型心臓デバイスを少なくとも部分的に用いることによって行われる、請求項90の方法。
【請求項93】
記憶された前記心疾患データを患者の体外のデバイスに送信することを更に含む、請求項90の方法。
【請求項94】
前記切換がソフトウエアプログラムのアップデートを含む、請求項90の方法。
【請求項95】
心内膜リードを患者に植え込み、前記心内膜リードを前記心臓デバイスに接続することを更に含む、請求項89の方法。
【請求項96】
心外膜リードを患者に植え込み、前記心外膜リードを前記心臓デバイスに接続することを更に含む、請求項89の方法。
【請求項97】
皮下リードを患者に植え込み、前記皮下リードを前記心臓デバイスに接続することを更に含む、請求項89の方法。
【請求項1】
ハウジングと、
ハウジング内に設けられたエネルギー送出回路と、
ハウジング内に設けられた検出回路と、
ハウジング上に設けられ、前記エネルギー送出回路及び前記検出回路に結合されたインターフェースであって、少なくとも1つの胸腔内電極構成及び少なくとも1つの皮下の非胸腔内電極構成を受け入れるように構成された、前記インターフェースと、
ハウジング内に設けられ、前記インターフェース、前記エネルギー送出回路及び前記検出回路に結合されたコントローラと、
を含み、
前記皮下の非胸腔内電極構成のみを用いる第1の構成と、前記胸腔内電極構成のみを用いる第2の構成と、前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの一方又は両方を用いる第3の構成とで作動可能であり、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成の各々において心臓活動の感知及び刺激を提供することのできる、
植込み型システム。
【請求項2】
前記胸腔内電極構成と前記インターフェースとの間を接続せずに前記第1の構成のみで作動可能である、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記胸腔内電極構成を前記インターフェースに結合することで前記第2の構成又は前記第3の構成での動作を可能にする、請求項2のシステム。
【請求項4】
前記皮下の非胸腔内電極構成と前記インターフェースとの間を接続せずに前記第2の構成のみで作動可能である、請求項1のシステム。
【請求項5】
前記皮下の非胸腔内電極構成を前記インターフェースに結合することで前記第1の構成又は前記第3の構成での動作を可能にする、請求項4のシステム。
【請求項6】
前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの選択された電極を用いて前記第3の構成で作動するように構成可能である、請求項1のシステム。
【請求項7】
前記ハウジングに設けられた缶形電極を更に含み、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つ以上において前記缶形電極を使用するように構成可能である、請求項1のシステム。
【請求項8】
前記第2の構成又は前記第3の構成において単極構成を選択し、前記胸腔内電極構成の選択された電極と前記皮下電極のうち選択された1つの電極とを用いて感知、ペーシング及びショック供給のうちの1つ以上を行うことができる、請求項1のシステム。
【請求項9】
前記検出回路、前記エネルギー送出回路及び前記インターフェースに結合された切換マトリックスを更に含み、前記コントローラは、前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの選択された電極を前記インターフェース経由で前記検出回路及び前記エネルギー送出回路の選択された入力及び出力に結合するように前記切換マトリックスを構成する、請求項1のシステム。
【請求項10】
前記インターフェースが心室インターフェース及び心房インターフェースのうちの一方又は両方を含む、請求項1のシステム。
【請求項11】
前記インターフェースがペーシングインターフェース及び除細動インターフェースのうちの一方又は両方を含む、請求項1のシステム。
【請求項12】
前記インターフェースが両心室リードシステムインターフェース又は多部位リードシステムインターフェースを含む、請求項1のシステム。
【請求項13】
前記インターフェースが、経静脈リードインターフェース、心内膜リードインターフェース及び心外膜リードインターフェースのうちの1つ以上を含む、請求項1のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、患者の体外の信号源から受信した信号に応答して前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つ以上で選択的に作動するように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項15】
前記第2の構成は標準治療構成であり、前記第1の構成又は前記第3の構成はテスト構成である、請求項1のシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つで作動し、所定の条件に応答して前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの別の1つで作動するように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項17】
前記所定の条件が所定の心調律を含む、請求項16のシステム。
【請求項18】
前記所定の条件が、不整脈、不整脈の検出の失敗又は不整脈の治療を含む、請求項16のシステム。
【請求項19】
前記所定の条件が、所定期間の終了又は定期的な疾患の発現を含む、請求項16のシステム。
【請求項20】
前記コントローラが、前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうち少なくとも2つで同時に作動するように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項21】
前記コントローラが、前記第1の構成及び前記第2の構成との間で動作を切り換え、前記第1及び前記第2の構成の各々を用いて心調律の検出又は不整脈の治療を行うように前記システムを構成する、請求項1のシステム。
【請求項22】
前記胸腔内電極構成のうち少なくとも2つの電極は単一の心腔に配置されており、
前記第2の構成は多部位感知及び多部位エネルギー送出のうちの一方又は両方を提供する、
請求項1のシステム。
【請求項23】
前記コントローラが、
前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの1つで作動して第1の機能を行うように前記システムを構成し、
前記第1の構成、前記第2の構成及び前記第3の構成のうちの別の1つで作動して第2の機能を行うように前記システムを構成し、
前記第1の機能の性能は前記第2の機能の性能を強化する、
請求項1のシステム。
【請求項24】
前記第1の機能は不整脈を組織化する第1のエネルギー送出機能を含み、前記第2の機能は前記不整脈を終了させる第2のエネルギー送出機能を含む、請求項23のシステム。
【請求項25】
前記胸腔内電極構成は心房リードを含み、
前記コントローラは、徐脈ペーシング及び抗頻脈ペーシングのうちの一方又は両方を提供するように前記システムを構成する、
請求項1のシステム。
【請求項26】
前記胸腔内電極構成は心房リードを含み、
前記第2の構成又は前記第3の構成は心房活動の感知及び心房不整脈治療の供給をもたらし、
前記第1の構成は、前記第2の構成又は前記第3の構成に対して心室頻脈性不整脈支援治療をサポートする、
請求項1のシステム。
【請求項27】
前記胸腔内電極構成は、心房電極を1つ以上有する心房リードを含み、
前記コントローラは、前記第2の構成で作動し、少なくとも前記1つ以上の心房電極を用いて頻脈性不整脈を区別するように前記システムを構成する、
請求項1のシステム。
【請求項28】
前記ハウジングが一体構造を定め、前記非胸腔内電極構成が前記ハウジングの中又は上に設けられる、請求項1のシステム、
【請求項29】
前記非胸腔内電極構成の少なくとも1つの電極が、前記ハウジングから外側に延びる剛性の、又は形状変更可能な支持構造体上に設けられる、請求項1のシステム。
【請求項30】
前記コントローラが、前記非胸腔内電極構成及び前記胸腔内電極構成のうちの一方又は両方を用いて経胸インピーダンスを決定する、請求項1のシステム。
【請求項31】
前記コントローラが前記経胸インピーダンスを用いて呼吸障害を検出する、請求項30のシステム。
【請求項32】
前記コントローラが心電図を取得し、前記コントローラに結合されたメモリに記憶する、請求項1のシステム。
【請求項33】
前記コントローラが診断を取得し、前記コントローラに結合されたメモリに記憶する、請求項1のシステム。
【請求項34】
前記コントローラに結合された通信デバイスを更に含み、該通信デバイスは患者の体外のデバイス又はネットワークシステムと通信するように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項35】
心臓の感知及び刺激方法であって、
第1の構成及び第2の構成で作動可能な植込み型心臓刺激デバイスを提供することであって、前記第1の構成は、患者の皮下及び非胸腔内に配置されるよう構成された1つ以上の皮下電極を用いて心臓活動の検出及び心臓刺激治療の供給を行い、前記第2の構成は、少なくとも1つのリードを用いて心臓活動の感知及び心臓刺激治療の供給を行い、前記少なくとも1つのリードは患者の胸腔内に配置されるよう構成された1つ以上のリード電極を含む、前記植込み型心臓刺激デバイスの提供と、
前記少なくとも1つのリードが存在しない状態で前記心臓刺激デバイスを前記第1の構成で作動させることと、
前記少なくとも1つのリードを前記心臓刺激デバイスに結合することによって、前記心臓刺激デバイスの前記第2の構成での動作を少なくとも部分的に可能にすることと、
を含む、前記方法。
【請求項36】
前記第1の構成及び前記第2の構成がカルディオバージョン及び除細動モードをサポートする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の構成及び前記第2の構成がペーシングモードをサポートする、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方がペーシングモードをサポートし、前記第1の構成及び前記第2の構成の他方がカルディオバージョン及び除細動モードをサポートする、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
同時の動作のために前記第1の構成及び前記第2の構成を使用可能にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
連続的動作のために前記第1の構成及び前記第2の構成を選択的に使用可能と使用不可にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
不整脈が発現している間、段階的な動作のために前記第1の構成及び前記第2の構成を選択的に使用可能と使用不可にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
患者の体外の位置から前記第1の構成及び前記第2の構成を選択的に使用可能と使用不可にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に取得した性能情報を記憶することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記性能情報を患者の体外の位置に送信することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記性能情報を用いて比較データを生成することを更に含み、前記比較データは、前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動する際の性能を前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
主要作動構成として前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動し、前記主要作動構成での作動中に検出された性能の異常に応答して前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方で作動することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動している間に第1の機能を行うことと、
前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方で作動している間に第2の機能を行うことと、
を更に含み、
前記第1の機能の性能は前記第2の機能の性能を強化する、
請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の機能は不整脈を組織化する第1のエネルギー送出機能を含み、前記第2の機能は前記不整脈を終了させる第2のエネルギー送出機能を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に特定の機能を行うことと、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際の前記特定の機能の性能に関連する性能データを取得することと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記特定の機能が感知に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記特定の機能が頻脈性不整脈の検出に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記特定の機能が徐脈の検出に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記特定の機能が、心拍数に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第1のサブ機能と、形態に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第2のサブ機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記特定の機能が刺激波形の生成又は刺激波形の送出に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記特定の機能が、前記リード及び前記1つ以上の皮下電極のうちの一方又は両方の構成に関連する機能を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に前記特定の機能の性能に関連する性能情報を記憶することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記性能情報を患者の体外の位置に送信することを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記性能情報を用いて比較データを生成することを更に含み、前記比較データは、前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で作動する際の性能を前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
心房の活動を胸腔内で感知し、心房の治療を要する状態に応答して心房刺激治療を胸腔内に供給することと、
前記心房刺激治療の供給中に感知された心室の治療を要する状態に応答して心室頻脈性不整脈支援治療を経胸的に提供することと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項60】
心房の活動を感知することと、
前記感知された心房の活動に少なくとも部分的に基づいて徐脈ペーシング及び抗頻脈ペーシングのうちの一方又は両方を提供することと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の構成は、単一の心腔又は複数の心腔に関して多部位感知及び多部位エネルギー送出のうちの一方又は両方を支持する、請求項35に記載の方法。
【請求項62】
前記心臓刺激デバイスの提供が、該心臓刺激デバイスを前記第1の構成及び前記第2の構成で作動させるソフトウェアを提供することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項63】
前記心臓刺激デバイスの提供の後に、前記第2の構成で作動させるように前記心臓刺激デバイス内のソフトウェアを変更することを更に含み、変更された前記心臓刺激デバイスにより、前記心臓刺激デバイスは、前記少なくとも1つのリードを前記心臓刺激デバイスに結合した後に前記第2の構成で作動することができる、請求項35に記載の方法。
【請求項64】
前記1つ以上の皮下電極が存在しない状態で前記心臓刺激デバイスを前記第2の構成で作動させることと、
前記1つ以上の皮下電極を前記心臓刺激デバイスに少なくとも部分的に結合することにより、前記心臓刺激デバイスの前記第1の構成での動作を可能にすることと、
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項65】
前記心臓刺激デバイスの提供の後に、前記第1の構成で作動させるように前記心臓刺激デバイス内のソフトウェアを変更することを更に含み、変更された前記心臓刺激デバイスにより、前記心臓刺激デバイスは、前記1つ以上の皮下電極を前記心臓刺激デバイスに結合した後に前記第1の構成で作動することができる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
患者の心臓状態の変化に応答して前記心臓刺激デバイスの動作を変更することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項67】
患者の心臓状態の変化に応答して、感知、診断又は治療といった機能を1つ以上使用可能にすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の構成又は前記第2の構成で作動する際に1つ以上の心腔の捕捉閾値を決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項69】
前記電極のうちの少なくとも2つを用いて経胸インピーダンスを測定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項70】
前記経胸インピーダンスを用いて呼吸障害を検出することを更に含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の構成で作動する際に心電図を記憶することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項72】
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で特定の機能を行い、前記第1の構成及び前記第2の構成での前記特定の機能の性能に関連する性能データを取得することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項73】
前記特定の機能が感知に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記特定の機能が頻脈性不整脈の検出に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記特定の機能が徐脈の検出に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記特定の機能が、心拍数に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第1のサブ機能と、形態に基づいた頻脈性不整脈の検出に関連する第2のサブ機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記特定の機能が、刺激波形の生成及び刺激波形の送出のうち一方又は両方に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記特定の機能が、前記リード及び前記1つ以上の皮下電極のうちの一方又は両方の構成に関連する機能を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
心臓の感知及び刺激システムであって、
心臓活動を感知する手段と、
心臓刺激治療を生成する手段と、
前記システムを第2の構成で作動させる際に少なくとも1つのリードを前記感知手段及び前記生成手段に結合する手段であって、前記少なくとも1つのリードが、胸腔内に配置されるよう構成された1つ以上のリード電極を含む、前記手段と、
前記結合手段が前記少なくとも1つのリードを受け入れたことに応答して前記システムの前記第2の構成での動作を可能にする手段と、
前記少なくとも1つのリードが存在しない状態で、前記感知手段及び前記生成手段に結合された皮下の非胸腔内電極を用いて前記システムを第1の構成で作動させる手段と、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で心臓活動を感知し、前記心臓刺激治療を供給する手段と、
を含む、前記システム。
【請求項80】
心臓の感知及び刺激システムであって、
皮下の非胸腔内電極のみを用いて、第1の構成で心臓活動を感知し、心臓刺激治療を供給する手段と、
胸腔内電極及び非胸腔内電極のうち選択されたものを用いて、第2の構成で心臓活動を感知し、心臓刺激治療を供給する手段と、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際に特定の機能を行う手段と、
前記第1の構成及び前記第2の構成の各々で作動する際の前記特定の機能の性能に関連する性能データを取得する手段と、
を含む、前記システム。
【請求項81】
前記性能情報を用いて比較データを生成する手段を更に含み、前記比較データは、前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの一方で前記システムを作動させる際の性能を前記第1の構成及び前記第2の構成のうちの他方と比較して示すデータを含む、請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
植込み型心臓デバイスであって、
植込み型ハウジングと、
前記ハウジングに結合された第1の電極、及び第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に結合されたモニタ回路であって、前記デバイスがモニタモードで作動される際、前記第1の電極及び前記第2の電極は心臓活動を感知するように構成される、前記モニタ回路と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に結合されたエネルギー送出回路であって、前記デバイスがエネルギー送出モードで作動される際、前記第1の電極及び前記第2の電極は心臓活動を感知してエネルギーを送出するように構成される、前記エネルギー送出回路と、
前記ハウジングに結合され、心臓リードを受け入れるように構成されたリードインターフェースと、
前記リードインターフェース、前記モニタ回路及び前記エネルギー送出回路に結合されたコントローラであって、前記心臓リードの前記リードインターフェースへの結合に少なくとも部分的に応答し、前記デバイスの動作を前記モニタモードから前記エネルギー送出モードに移行させる、前記コントローラと、
を含む、前記デバイス。
【請求項83】
前記ハウジング内に設けられ、前記第1の電極及び前記第2の電極に結合された検出回路を更に含み、該検出回路は心臓信号を受信するように構成されている、請求項82のデバイス。
【請求項84】
前記ハウジング内に設けられ、前記検出回路に結合されたメモリを更に含み、該メモリは選択された心臓信号を記憶するように構成されている、請求項83のデバイス。
【請求項85】
前記検出回路に結合されたプログラム可能フィルタを更に含み、該プログラム可能フィルタは、前記モニタモードに関連してモニタする第1のフィルタリングモードと、前記エネルギー送出モードに関連して心疾患を検出する第2のフィルタリングモードで構成可能である、請求項83のデバイス。
【請求項86】
前記コントローラに結合されたモードスイッチを更に含み、該モードスイッチは、前記心臓デバイスを前記モニタモードと前記エネルギー送出モードとの間で移行させるように構成されている、請求項82のデバイス。
【請求項87】
送信要求信号を受信し、該送信要求信号の受信に応答して前記メモリの内容を患者の体外のデバイスに送信するトランシーバを更に含む、請求項82のデバイス。
【請求項88】
前記コントローラに結合された受信器を更に含み、前記コントローラは、前記受信器による切換要求信号の受信に応答して前記心臓デバイスを前記モニタモードと前記エネルギー送出モードとの間で切り換える、請求項82のデバイス。
【請求項89】
植込み型心臓デバイスを提供することと、
前記心臓デバイスを用いて患者の心臓活動をモニタすることと、
心疾患のデータを前記心臓デバイスのメモリに記憶することと、
記憶された前記心疾患データを用いて、患者が心臓刺激デバイスの使用を必要とする状態にあると診断することと、
前記心臓刺激デバイスとして作動するように前記心臓デバイスを構成することと、
を含む、方法。
【請求項90】
前記心臓デバイスを構成することが、心臓活動のモニタに関連する第1の作動モードと心臓治療の供給に関連する第2の作動モードとの間で前記デバイスを切り換えることを含む、請求項89の方法。
【請求項91】
前記切換が、ハードウェアスイッチを第1の位置から第2の位置に変えることを含む、請求項90の方法。
【請求項92】
前記診断が、前記植込み型心臓デバイスを少なくとも部分的に用いることによって行われる、請求項90の方法。
【請求項93】
記憶された前記心疾患データを患者の体外のデバイスに送信することを更に含む、請求項90の方法。
【請求項94】
前記切換がソフトウエアプログラムのアップデートを含む、請求項90の方法。
【請求項95】
心内膜リードを患者に植え込み、前記心内膜リードを前記心臓デバイスに接続することを更に含む、請求項89の方法。
【請求項96】
心外膜リードを患者に植え込み、前記心外膜リードを前記心臓デバイスに接続することを更に含む、請求項89の方法。
【請求項97】
皮下リードを患者に植え込み、前記皮下リードを前記心臓デバイスに接続することを更に含む、請求項89の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2006−522659(P2006−522659A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509832(P2006−509832)
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/010908
【国際公開番号】WO2004/091720
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/010908
【国際公開番号】WO2004/091720
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
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