皮下組織を治療する方法
低い音圧の超音波の範囲の音波を用いて皮下組織を治療するための装置および方法が開示されている。この方法は促進剤の注入を含み、皮下組織の破壊および皮下におけるキャビテーションの生物学的効果は、促進剤の非存在下において組織キャビテーションを生じさせないパワーを有する超音波によって生じる。この装置および方法の使用は、セルライト、脂肪腫および腫瘍を含む皮下の異常の治療に有益である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年9月7日に出願された米国仮特許出願第60/715,398号「皮下構造を崩壊させるシステム及び方法」に基づく優先権を主張する。なお、この参照によってその内容の全体が本願明細書に組み込まれるものとする。
本発明は、全般的に、生物学的に破壊あるいは崩壊させる組織に対し外部から印加するエネルギーの使用に関する。より詳しくは、本発明は、生物学的な組織および細胞の破壊あるいは崩壊を生じさせる音波の使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、哺乳類の身体の皮下構造の治療、例えば過剰な脂肪組織、脂肪沈澱、腫瘍、セルライトおよび瘢痕化といった疾患の治療のために、溶液が浸透した組織への超音波の印加を含む方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
女性型の脂肪栄養障害は、皮膚の表面(肌)の組織分布の変化、あるいは皮下のある領域において増大した流体保持力あるいは脂肪組織の増殖によって生じる陥凹形成効果につながる、皮下組織の限局性の代謝異常である。このような状態は、一般にセルライトとして公知であるが、思春期後の女性の90%およびいくらかの男性に影響を及ぼす。セルライトは一般に尻、臀部および脚部に出現するが、一般的に認識されているように必ずしも太りすぎによって生じるというわけではない。セルライトは、表皮および真皮層の下にある皮下レベルの組織に形成される。この領域において、脂肪細胞は、セプタムと呼ばれている結合組織のバンドによって取り囲まれた室の内部に配置される。水分が保持されると、これらの線維性セプタムによって定められる周辺部の内側に保持されている脂肪細胞が膨張し、かつセプタムおよび取り囲んでいる結合組織を伸張させる。さらにまた、重量増加による脂肪細胞の拡大もまたセプタムを伸張させ得る。最終的には、この結合組織が収縮しかつ硬化(硬化症)して柔軟性を持たない長さで肌を保持する一方、セプタム間の室が重量の増加および水分の増加によって膨張し続ける。このことは肌の領域が引き下げられることに帰着するが、その一方で他の部分が外側に膨張するので、皮膚表面上につぶつぶのある『ゆず肌』あるいは『カテージチーズ』のような外観に帰着する。
【0003】
肥満はセルライトの根本的な原因であるとは考えられないけれども、その領域における脂肪細胞の数の増大により、それは間違いなくセルライト領域における陥凹状の外観を悪化させる。深部の脂肪および解剖学的組織のより大きな領域を目標とする脂肪吸引のような従来の脂肪摘出技術は、時にはセルライトの外観を悪化させることがある。皮下の脂肪ポケットが残存するとともに、その領域の下方に横たわっている塊(深部の脂肪)の喪失によって目立つことになるからである。脂肪吸引を何度実行しても、患者はなお残存しているセルライトのような肌の凹凸の治療を要求する。
【0004】
セルライトのような肌の凹凸を治療するための様々なアプローチ、および不必要な脂肪組織の除去が提案されてきた。例えば、様々な局所的な薬剤の付加に加えた、吸引とマッサージの組合せあるいは吸引、マッサージおよびエネルギの付加によって患部に機械的なマッサージを提供する方法および装置が現在は利用可能である。1950年代に開発されたメソセラピーは、スポーツ傷害から慢性の痛みにおよぶ疾病のために肌を介して様々な治療溶液を注入するものであり、しわおよびセルライトを治療するための美容整形手技としてヨーロッパにおいて広く用いられてきた。この治療は、アミノフィリン、ヒアルロン酸、ノボカイン、植物エキスおよび他のビタミンといった様々な薬剤の肌を介しての注入あるいは移入を含み、血行および脂肪酸化の可能性の増大をもたらす。Acthyderm(Tumwood International、オンタリオ、カナダ)と名付けられた治療は、ビタミン、坑繊維化薬、脂肪分解薬(lypolitics)、抗炎症剤といった様々なメソセラピー薬剤の塗布に続いて、真皮に小さな経絡を開けるために角質層を電気穿孔するローラシステムを用いる。
【0005】
リンパの排液を改善するマッサージ技術が1930年代の初期に試みられた。"Endermologie"装置(LPG Systems、フランス)、"Synergie"装置(Dynatronics、ソルトレークシティ、ユタ州)および"Silklight"装置(Lumenis、テルアビブ、イスラエル)のような機械的なマッサージ装置あるいはプレソテラピーもまた開発されてきたが、これらの全てが吸引および機械的なローラによる皮下マッサージを用いるものである。他のアプローチは様々なエネルギー源を含んでいるが、Cynosureの"TriActive"装置(Cynosure、ウェストフォード、マサチューセッツ州)は機械的なマッサージに加えて半導体レーザのパルスを用いるし、"Cellulux"装置(Palomar Medical, Burlington, マサチューセッツ州)は冷却されたチラーを介して目標とする皮下脂肪組織に赤外光を放射する。"VelaSmooth"システム(Syneron, Inc., Yokneam Illit、イスラエル)は、脂肪組織の代謝を増大させる吸引と共に双極性の高周波エネルギーを用いる。また、"Thermacool"装置(Thermage, Inc., Hayward, カリフォルニア州)は、皮下の線維性セプタムを縮小させてしわおよび他の肌欠陥を治療するために高周波エネルギーを用いる。いくつかの針の組を用いて低周波割込み電磁場を印加することにより循環の排液を助ける、脂肪電気泳動のような他のエネルギベースの治療法もまた開発されてきた。同様に"Dermosonic"装置(Symedex Medical、ミネアポリス、ミネソタ州)においては、保持された流体および毒素の再吸収および排液を促進するために無侵襲性の超音波が用いられる。
【0006】
瘢痕化および陥凹形成といった肌の凹凸の治療における他のアプローチは、サブシジョンと呼ばれる技術である。この技術は、陥凹形成あるいは瘢痕化の領域において比較的大きい寸法の針を皮膚下に挿入し、次いで肌の下において機械的に針を操作して皮下領域の線維性セプタムをバラバラにする。サブシジョンの少なくとも一つの公知の方法において、目標領域に局所麻酔薬を注入し、18サイズの針を皮膚表面の10〜20ミリメートル下方に挿入する。次いで、針を表皮に平行に案内して肌の下に剥離平面を作り出し、陥凹形成あるいは瘢痕化を生じさせている締め付けられたセプタムを殆ど完全に引き裂き、あるいは「自由に引き上げる」。それから、出血を制御するために圧力を負荷し、次いで手技に続けて圧縮布を使用する。いくらかの患者には臨床的な効果がある反面、痛み、挫傷、出血および瘢痕化に帰着することもあり得る。公知の技術もまた、サブシジョンのための横方向に展開された切断機構および超音波で援助されたサブシジョン技術を用いる技術を記載している。
【0007】
脂肪吸引、腫脹性脂肪の吸引、リポローシス(lypolosis)として公知の技術は、身体皮下および深い脂肪領域の脂肪組織を目標としている。これらの技術はまた、脂肪細胞を崩壊させてから取り除くこと、および身体の免疫/リンパシステムによる再吸収のためにそれらを残すことを含む。従来の脂肪吸引は、取り除かれる脂肪の部位に配置される外科的なカニューレの使用、流体の注入および脂肪組織をバラバラにするカニューレの機械的な動き、崩壊させた脂肪組織を患者から直接吸引するための吸入を含む。
【0008】
"Lysonix"システム(Mentor Corporation、サンタバーバラ、カリフォルニア州)は、(目標部位の組織の空洞化によって)組織崩壊を援助するために、吸引カニューレのハンドピース上にある超音波振動子を用いる。Liposonix (Bothell,ワシントン州)および、Ultrashape(テルアビブ、イスラエル)は、脂肪組織を非侵襲的に破壊するために焦点を合わせた超音波を用いる。加えて、脂肪組織を破壊するために低温冷却することが提案されてきた。腫脹性の脂肪吸引として公知の従来の脂肪吸引技術の変形例は1985年に導入されたが、現在では米国における標準的な治療であると考えられている。それは、吸引カニューレによる機械的な崩壊および除去の前における、目標領域への腫脹性の流体の注入を伴う。この流体は、機械的な崩壊に伴う痛みの緩和を助けるとともに、組織を膨脹させて機械的な除去の作用を受けやすくする。リドカインのような局所麻酔薬、エピネフリン、食塩水、カリウム等の血管収縮剤を含む様々な組合せの流体を腫脹性の溶液として用いることができる。そのようなアプローチの利点は、以下の論文に詳述されている。"Laboratory and Histopathologic Comparative Study of Internal Ultrasound- Assisted Lipoplasty and Tumescent Lipoplasty" Plastic and Reconstructive Surgery, Sept. 15, (2002) 110:4, 1158-1164,および"When One Liter Does Not Equal 1000 Milliliters: Implications for the Tumescent Technique" Dermatol. Surg. (2000) 26:1024-1028、なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に明白に組み込まれるものとする。
【0009】
皮膚科的クリーム、化粧水、ビタミンおよびハーブサプリメントを用いてセルライトを治療する様々な他のアプローチもまた提案されてきた。個人的な温泉場およびサロンは、身体のこすり洗い、圧覚点マッサージを含むセルライトマッサージ治療を提供するが、植物性揮発油、海草、トクサ、クレマチスおよびツタのような植物化学種から抽出されたハーブ製品の使用もまた提案されてきた。多数の治療が存在するけれども、それらの殆どは肌の凹凸に対して永続的な効果を提供しないし、いくつかは(脂肪吸引が瘢痕化あるいはセルライトのより顕著な外観を生じさせるように)一つの治療が他のものを悪化させる。セルライトのための他の治療は、その採用を制限するマイナスの副作用を有している。
【0010】
医学的な超音波装置および方法には、一般的に2つの異なるタイプがある。従来技術において周知の医学的な超音波発生装置の一つのタイプは、組織を治療するために、例えば腫瘍の破壊のために、強く焦点を合わせた超音波あるいは高い音圧の超音波を提供する。高い強度あるいは高い音圧の超音波は、直接的な組織破壊を提供することができる。高い強度あるいは高い音圧の超音波は、最も一般的には、発生させた音波のエネルギーを組織の比較的小さな病巣に集中させるために、一点に焦点合わせされる。しかしながら、超音波治療の他のタイプは、超音波の強度が弱く集中も弱いタイプであり、画像診断および物理療法の用途に用いられる。弱い音圧の超音波は、一般的に、例えば心臓の画像診断および胎児の画像診断のために用いられる。弱い音圧の超音波は、物理療法の用途において、組織を崩壊させることなしに病んでいる組織のために用いることができる。弱い音圧の超音波は、画像診断のための出力範囲を用いるが、一般的に、ある種の促進剤の非存在下で限られた時間に用いるときには、重大な組織の崩壊を全く生じさせない。
【0011】
皮下組織を直接的に崩壊させるために高い強度の焦点合わせされた超音波を使用する方法および装置は、公知の技術において説明されてきた。そのような技術は、身体内部の組織に焦点合わせした高い強度の超音波を用い、それによって細胞に局部的な破壊あるいは損傷を生じさせる。高い強度の超音波の焦点合せは、例えば、凹面トランスデューサあるいは音響レンズを用いて達成することができる。脂肪を崩壊させるための高い強度の焦点合わせされた超音波の使用は、時には脂肪吸引による脂肪の除去と組み合わせられるが、公知の従来技術において説明されてきた。高い強度の焦点合わせされた超音波のそのような使用は、弱い音圧の超音波から区別されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したことを考慮すると、セルライトのような肌の凹凸を治療するための最小限に侵襲性のあるいは無侵襲性の方法および装置を提供すること、および顔面、首、腕、脚部、大腿、臀部、胸部、腹部および他の目標領域のような人体の部位に継続する美的な結果を提供することが望ましい。また、肌の凹凸を治療するための、従来技術を改良して侵襲性がより少なくかつ副作用の少ない方法および装置を提供することが望ましい。
【0013】
これにより、皮下組織を治療するために低い強度の超音波を用いる装置および方法の必要性が当業者によって認められてきた。診断用超音波の出力領域における低い強度の超音波の使用は、安全に使用することができ、副作用がより少なく、より少ない訓練で使用することができる。本発明は、これらのおよび他の必要性を実現させる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡潔に概説すると、本発明は、生物学的な組織を治療するための新しく改善された装置および方法を提供する。本発明は、微小な泡の気体を含む溶液が浸透した組織への弱い音響出力の超音波の照射を提供する。
【0015】
微小な泡は圧縮可能であり、超音波の場において交互に収縮しかつ膨張する。これらの膨張および収縮は、弱い超音波の圧力下では一般的に等しく対称であり得る。この挙動は、この分野の当業者によって適度な振動と呼ばれる。超音波の駆動圧力が増大すると、例えば収縮よりも大きな泡の膨張を伴う、より複雑な現象が発生する。さらに、迅速な崩壊に続いて比較的低速な膨張がある。この挙動は、当業者によって強い崩壊と呼ばれる。それは、調和的な信号の生成を伴う。適度な振動から強い崩壊への移行は突然であり、微小な泡は内側に破裂して微小な泡に近接している組織にエネルギーを放出する。超音波にさらされたときの微小な泡の内破は、本明細書においてはキャビテーションと称され、皮下におけるキャビテーションの生物学効果を生じさせる一つの要因である。本発明は、皮下組織を崩壊させるために微小な泡のキャビテーション効果を用いる。皮下におけるキャビテーションの生物学的な効果は、例えば微小な泡のキャビテーション効果を含むが、例えばセルライトおよび局所性の脂肪の沈澱を治療するべく、表面あるいはまた深部の脂肪あるいはまたセプタムを崩壊させるためにも有利に用いられる。
【0016】
キャビテーションは、外来性の微小な泡を注入することなく、高い強度の合焦された超音波(高密度焦点式超音波)(HIFU)を用いて組織内に誘起させることができる。しかしながら、HIFUは、組織にかなりの量の熱および温熱損傷を生じさせるために不都合である。超音波で強化される温熱切除の場合には、標的組織は摂氏100度を越えて加熱され、細胞間および細胞外の流体は沸騰して蒸気を生じさせる。
【0017】
しかしながら、組織崩壊レベルに組織を加熱することなく組織を崩壊させかつ組織を崩壊させるために超音波を用いることもまた可能である。皮膚および関連する構造(神経、毛嚢、血管)に対する温熱損傷のリスクを取り除くために、本発明の一実施形態は、有利に、外因性の微小な泡を標的組織に浸透させるとともに、浸透させた治療組織に弱い音圧の超音波を印加して泡を内破させ、組織を直接的に温熱損傷させることなしに標的組織を破壊する。弱い音圧の超音波は組織をいくらか加熱するけれども、直接的な組織崩壊を生じさせあるいは崩壊を強化するほどには組織を十分に加熱しない。
【0018】
外因性の微小な泡は、今日の物理療法および診断用超音波機器の範囲の超音波信号の存在下で内破する。そのような商業的に入手可能な超音波機器は、Mettler Electronics Corp.(アナハイム、カリフォルニア州)から入手可能なSonicator 730である。このSonicator 730は、1.0MHzおよび3.3MHzの治療用超音波ユニットであり、最高で4つのアプリケータが付属し、かつ連続あるいはパルスモードで作動する。Sonicator 730は、全てのアプリケータによって2.2W/平方センチメートルの最大強度を有する。商業的に入手可能な弱い音圧の超音波画像診断機器の他の実例は、Siemens, AG(ミュンヘン、ドイツおよびMalvem、ペンシルバニア州、米国)から入手可能なAcuson AspenおよびAcuson Sequoiaである。弱い音圧の超音波機器のさらなる実例は、G. Heinemann Ultraschall(ドイツ)から入手可能なSonoporatorである。標的とする組織やサイズおよび外因性の溶液の構成に応じて、パルスエネルギー、連続する波動エネルギー、あるいは振動数もしくは振幅が変化するエネルギーを治療領域に印加することが有益である。本発明の少なくとも一つの態様は、外因性の気体を含んでいる溶液を音波あるいは超音波に曝すことを含む。
【0019】
直接的な注入および超音波への暴露によって組織内に浸透する微小な泡は、キャビテーションおよび皮下におけるキャビテーションの生物学効果による組織崩壊の核としての役割を果たす。これらの微小な泡は、本願明細書の他の部分でより詳細に説明するように、異なる形で存在することができる。本発明は、皮下組織を破壊するために、微小な泡のキャビテーション効果を活用する。微小な泡のキャビテーションは、例えばセルライトおよび局所性の脂肪沈澱を治療するための、表面あるいはまた深部の脂肪もしくはセプタムの崩壊に有益である。
【0020】
本発明の別の態様においては、目標を定めた組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)の処置は、細胞の腫大を生じさせあるいは細胞内の環境もしくは細胞膜を変化させて印加されるエネルギーの作用を受けやすくし組織を崩壊させるための低張塩水、カリウム、リドカイン、界面活性剤のような促進剤の注入あるいは付加によって、あるいはまた皮下におけるキャビテーションの生物学な効果によって改善される。腫大は、細胞がエネルギーばかりでなくキャビテーションの力をもより受けやすいものとする。本発明のさらに他の態様において、細胞レベルで印加されるエネルギーは、例えば音響穿孔あるいは電気穿孔といった細胞膜の可逆的あるいは不可逆的な変化を生じさせる。
【0021】
本発明の別の態様において、標的とする組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)の崩壊は、微小な泡、攪拌された塩水、商業的に入手可能な超音波造影剤等のような促進剤を注入あるいは付加し、皮下におけるキャビテーションの生物学効果を増大させることによって改良することができる。開示において「標的とする組織」には多くの種類の脂肪あるいは皮下組織を含むことができる。例えば標的とする組織には、脂肪腫、二重あごのような局部的な顔面脂肪の沈澱、および患者の腕、脚部、腰回りおよび臀部に見い出される脂肪の過剰が含まれる。しかしながら、標的とする組織のこれらの実例は限定するためのものではなく、標的とする組織には本発明の方法の適切な標的であるとして臨床医によって決定される他の組織が含まれる。
【0022】
本発明の更なる態様は、リドカイン、エピネフリン、低張塩水、カリウム、撹拌塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体等のような治療促進剤の治療部位への付加と共に、本発明のエネルギーアプローチを用いることにより、セルライトのような肌の凹凸および他の関係する疾患を治療する方法および装置を提供することにある。一つの実施形態において、治療する組織は皮層と深部脂肪層との間に注入を受ける。他の実施例において、治療する組織は、表面的な脂肪層と筋肉層との間に注入を受ける。さらに他の実施形態において、治療する組織は、皮層と筋肉層との間に注入を受ける。
【0023】
本発明によれば、皮下組織を治療するための組立体が提供される。この組立体は、約0.25MHz〜約10MHzの範囲の振動数および10.0MPaより低いピーク負圧を有した音波を生じさせる音波発生装置を含む。本発明の他の態様では、音波発生装置は5.0MPa未満のピーク負圧を有した音波を生じさせる。この組立体は、音波トランスデューサ、ガス供給源、溶液撹拌機、および溶液注入部材を備える。一つの実施形態において、この組立体は、表皮の下方において約1ミリメートル〜約15ミリメートルの組織深さで延びる近いゾーンから、表皮の下方において約15ミリメートル〜約30ミリメートルの組織深さで延びる離れたゾーンへと延びる焦点ゾーンを有した平面トランスデューサを含む。少なくとも一つの実施形態において、この組立体は冷却モジュールを含む。
【0024】
さらに本発明によると、皮下組織を治療する方法が提供される。この方法は、治療する皮下組織に微小な泡を配置することを含む。さらにこの方法は、超音波の供給源を提供すること、 および微小な泡に超音波を印加することを含み、この微小な泡の少なくともいくつかにキャビテーションを生じさせる。皮下におけるキャビテーションの生物学的効果は、少なくともいくつかの組織の崩壊を生じさせるとともに、標的とする領域にある少なくともいくつかの細胞あるいはセプタムを崩壊させる。少なくとも一つの実施形態において、印加される超音波のピーク負圧は10.0MPa(メガパスカル)より低い。少なくとも一つの実施形態において、印加される超音波のピークの負圧は5.0MPa(メガパスカル)より低い。
【0025】
本発明の別の態様においては、皮下組織を崩壊させる方法が提供される。この方法は、微小な泡を含む溶液を皮下組織に浸透させること、診断上の超音波の範囲の音波供給源を提供すること、微小な泡の少なくともにいくつかに診断上の超音波の範囲の音波を印加することを含む。少なくともいくつかの微小な泡の破壊から伝達されるエネルギーは、少なくともいくつかの皮下組織を傷つける。少なくともいくつかの皮下組織の損傷は、皮下組織の少なくともいくつかの細胞の死滅を生じさせる。少なくともいくつかの皮下組織の損傷には、少なくともいくつかの脂肪細胞の損傷が含まれる。皮下組織の少なくともいくつかの損傷には、少なくともいくつかのセプタムの損傷が含まれる。一つの実施形態において、この方法は、微小な泡あるいは気体の作成を含む。この方法は、微小な泡を含んだ溶液を発生させるための装置の提供を含む。一つの実施形態において、注入される溶液は正常組織に対して低張性である。他の一実施形態において、この溶液はパーフルオロカーボンを含み、あるいは溶液はリドカインを含む。少なくとも一つの実施形態において、この溶液は腫脹性の溶液である。
【0026】
本発明の更に別の態様においては、皮下組織を崩壊させる方法が提供される。この方法は、複数の気体を含有した溶液を治療する皮下組織に浸透させることを含む。弱い音圧の超音波の供給源が提供される。この方法は、少なくともいくつかの気体に音波を印加することを含み、音波の供給源から伝達されるエネルギーが少なくともいくつかの気体を破裂させて、少なくともいくつかの皮下組織に崩壊を生じさせる。一つの実施形態においては、少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織は脂肪細胞である。他の一実施形態において、少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織はセプタムである。気体は気泡前駆物質を含むことができる。気体は微小な泡あるいはナノサイズの泡を含むことができる。気体は封入することができる。少なくとも一つの実施形態において、音波は、気体の非存在下で組織の崩壊を生じさせるために必要な音波の振幅より小さい振幅を有する。この方法の一態様においては、少なくともいくつかの気体を内破させあるいは破壊するのに十分な第2のパターンの音波を印加する前に、定められた寸法範囲に気体を調節しあるいは溶液を組織内に分散させるために非キャビテーション性の第1のパターンの音波が印加される。
【0027】
本発明の一態様において、複数の気体を含有している溶液を皮下組織に浸透させる段階、および少なくともいくつかの気体に音波を印加する段階が、皮下組織の少なくとも一つの追加領域において反復される。一つの実施形態において、皮膚の下の様々な深さにおいて組織が治療される。
【0028】
本発明の更なる態様は、生物学的な組織を崩壊させる方法である。この方法は、組織に低張溶液を注入すること、および標的細胞を膨張させるのに充分な時間にわたって組織が溶液に近接してとどまるようにすることを含む。次いで、組織は低出力の超音波に曝され、組織に含まれている複数の細胞が細胞膜の崩壊を被る。一つの実施形態において、組織に超音波を印加する前の約5秒〜5分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。他の実施例においては、組織に超音波を印加する前の約5分〜20分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。他の実施例においては、組織に超音波を印加する前の約20分〜40分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。さらに他の実施形態において、組織に超音波を印加する前の約40分〜60分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。
【0029】
本発明の更に他の態様は、皮下組織を崩壊させるための方法である。この方法は、皮下組織に溶液を浸透させることを含む。弱い音圧の超音波の範囲の音波の供給源が提供される。診断上の超音波の範囲の第1の小さい振幅の超音波が、組織内の溶液を分散させるために注入された組織に印加される。次いで、第1の小さい振幅の超音波は打ち切られる。それから、弱い音圧の超音波の範囲の第2の大きい振幅の超音波が組織に印加されるが、この第2の大きな振幅の超音波は、促進剤の非存在下において組織内の細胞を崩壊させるのに十分なエネルギーを有しないが、促進剤の存在下でキャビテーション効果を生じさせるのには充分なものとなっている。
【0030】
本発明の一態様は、皮下組織を治療する方法であって、弱い音圧の超音波の供給源を提供すること、および促進剤を提供することを含む。この方法は、治療する皮下組織に促進剤を配設すること、および皮下組織内の促進剤に低い音圧の超音波を印加することを含み、促進剤から放出されたエネルギーは皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせ、少なくともいくつかの皮下組織が崩壊する。
【0031】
本発明の別の態様は、皮下組織を崩壊させるための方法であって、微小な泡を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させること、および弱い音圧の超音波の出力領域にある焦点合わせされていない音波の供給源を提供することを含む。この方法は、少なくともいくつかの微小な泡に焦点合わせされていない音波を印加することを含み、少なくともいくつかの泡の破壊から伝達されるエネルギーが少なくともいくつかの皮下組織を損傷させる。
【0032】
本発明の更に別の態様は、皮下組織を崩壊させるための方法であって、複数の気体を含有している溶液を皮下組織に浸透させること、および約0.25MHz〜約10MHzの範囲の振動数を有するとともに10.0MPaより低いピーク負圧を有した音波の供給源を提供することを含む。この方法は、少なくともいくつかの気体に音波を印加することを含み、音波の供給源から伝達されたエネルギーが少なくともいくつかの気体を破裂させて、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果および少なくともいくつかの皮下組織の崩壊を生じさせる。
【0033】
本発明の更に別の態様は、生物学的な組織を崩壊させる方法であって、崩壊させる組織に近接して溶液を注入すること、および破壊する組織に近接させて溶液を残留させることを含む。この方法は、弱い音圧の超音波に溶液を曝すことを含み、組織に含まれている複数の細胞は皮下におけるキャビテーションの生物学的効果による細胞溶解を被る。この方法はまた、患者の身体が死滅した細胞を再吸収するようにすることを含む。
【0034】
本発明の更なる態様は、皮下組織を崩壊させるための方法であって、促進剤を含有している溶液を皮下組織に浸透させるとともに、この溶液を皮下組織内に分散させるために、弱い音響圧力の超音波の圧力範囲にある第1の小さい振幅の超音波を印加することを含む。この方法は、弱い音響圧力の超音波の圧力範囲にある第2の大きい振幅の超音波を組織に印加することを含み、第2の大きな振幅の超音波は、組織内の細胞に対する直接的なキャビテーション効果を生じさせるのに充分なパワーは有していないが、溶液にキャビテーションを生じさせるのに充分なパワーは有している。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、添付の例示的な図面を参照しながらなされる本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかとなる。
【0036】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様および利点は、例示的なものであって本発明を限定する意図のない実施形態の図面を参照することによって説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図解のために例として提供される図面を参照すると、本発明の各実施形態が図1〜60に図示されている。
【0038】
本発明は皮下組織を治療するための方法および装置に関する。一つの実施形態において、本発明は、軟組織を治療するための装置を含む。他の実施形態において、本発明は、組織を治療するための方法を含む。一つの実施形態において、本発明は、脂肪細胞およびセプタムを含んでいる皮下脂肪層を治療するための方法および装置を更に含む。一つの実施形態において、本発明は、セルライトを治療するための方法および装置を更に含む。本発明は、セルライトの外観の一時的な減少、あるいはセルライトの恒久的な減少のために有益である。本発明はまた、脂肪吸引の補助的な手段として用いることができる。本発明は、セルライトの外観を一時的に改善するための、皮下への流体の注入および超音波による分散を提供する。本発明はまた、良性新生物、例えば脂肪腫の除去のために有益である。
【0039】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、標的領域の美的な外観を改善するために、コラーゲン、結合組織、脂肪組織(脂肪細胞)等といった皮下の構造(あわせて「標的組織」あるいは「皮下構造」)に目標を定めて崩壊させる方法および装置に向けられている。この標的領域は、人体において改善が望まれる、顔面、あご、首、胸部、乳房、腕、胴、腹部(骨盤領域を含む)、大腿、臀部、膝および脚部を含む任意の表面あるいは輪郭から成る。標的組織には、その領域の結合組織あるいはセプタム、または皮下およびより深い脂肪の沈澱あるいは層のような、その下に横たわっていて望ましくない身体の輪郭を悪化させ得る組織が含まれる。肌の凹凸は、セルライトや瘢痕化、あるいは首、あご、乳房、尻、腹部、腕等の領域における脂肪の沈澱あるいは過剰な脂肪といった、外側の様相に対する人の満足感を減少させる状態を指す。
【0040】
最初に図1〜図3を参照すると、正常な皮下組織100の領域の一部の断面が示されているが、表皮102、真皮104、皮下脂肪106、線維性のセプタム108および深部脂肪層110が含まれている。この皮下組織には、血管分布、微小循環およびリンパ排液も含まれている。真皮は、実質的に縦のセプタム(膠原線維)を介して皮層に付着した脂肪皮下結合組織に接続されている。皮下脂肪106は、セプタムの繊維によって切り離されて脂肪組織(脂肪)の室112に区画されている。これらの室は、増加した脂肪細胞の存在あるいは保持されている流体による膨張に起因してその大きさが増大し得る。室の寸法の増加はセプタムに張力を生じさせるとともに、最終的に脂肪領域が膨張すると表皮の表面の陥凹が形成され、セプタムは張力下において厚くなる。次いで微小循環およびリンパ排液が弱まり、さらには局部的な代謝性の症状を悪化させる。図1〜図3は、肌の凹凸を呈していない全く通常の肌の断面を示している。図4に示されているように、皮下脂肪層は膨張してセプタムに締め付けられ、不規則な皮膚表面の特徴に結びついている。
【0041】
なおも図1〜図4を参照すると、蓄えられたあるいは深部脂肪層110は、皮下脂肪106の下方に配設されて肌の不規則性の一因となる。深部脂肪層もまた、皮下組織の一つとしてここに含まれているが、本発明の少なくとも一つの実施形態によって治療することができる。本発明の一実施形態において、皮下組織の治療には皮下組織100のエネルギー支援サブシジョンが含まれる。他の一実施形態において、皮下組織の治療には線維性セプタム108の崩壊が含まれる。本発明のさらに他の実施形態において、皮下組織の治療には、陥凹形成の一因となっている皮膚表面102上の外側への圧力を少なくするための皮下脂肪細胞112の崩壊が含まれる。本発明の他のひとつの実施形態において、皮下組織の治療には、全体的な表面輪郭のための深部脂肪層110の崩壊が含まれる。
【0042】
本発明の目的を達成するためには、(可逆的あるいはまた不可逆的な)電気穿孔、パルス電界、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギ等を含む様々なエネルギー形態を用いて皮下構造の崩壊を達成する方法および装置を用いることが望ましい。本発明の一実施形態において、エネルギー形態は音波である。少なくとも一つの実施形態において、エネルギー形態は超音波である。超音波を含む音波は、媒質、例えば溶液あるいは生物学的な組織を介して伝達されるエネルギーである。本発明はまた、気体、例えば微小な泡を含有する溶液を含むことができる。
【0043】
医学的な超音波には、2つの一般的な出力カテゴリーがある。医学的な超音波の一つのカテゴリは高い音圧の超音波である。医療的な超音波の他のカテゴリは低い音圧の超音波である。
【0044】
音響出力は、当業者によってさまざまな方法で表現される。組織上における音波の音響出力を評価する一つの方法はメカニカルインデックスである。このメカニカルインデックス(MI)は、診断上の超音波システムの音響出力の基準であって、均一な媒質の中で伝播する超音波のピーク負圧あるいは希薄部圧力を伝達された超音波パルスの中心周波数の二乗根によって除したものと定義される。均一の媒質は0.3dB/cm/MHz(超音波周波数によって除した減衰係数)の減衰を有すると仮定される。MIは、泡破壊の可能性を含む、超音波と微小な泡との相互作用を定量することができる。この分野の当業者のいくらかは、泡破壊がMIの増加を伴うことを示唆した。メカニカルインデックス(MI)は、キャビテーションによる生物学的効果の発生の可能性の大まかなガイドを提供することが意図されている。高い音圧の超音波システムのMIは、一般的に10より大きい。低い音波の圧力システムのMIは、一般的に5より低い。例えば、診断上の超音波システムは、メカニカルインデックスが1.9を越えないように法律で規制されている。
【0045】
当業者によって用いられる他の測定値は、空間的ピークピーク平均強度(Isppa)である。超音波ビームの強度は、その断面の中央において周囲よりも大きい。同様に、強度は、超音波エネルギーの与得られたパルスにより変化する。Isppaは、強度がパルス持続時間を通じて最大平均値となる位置で測定される。高い音圧あるいはHIFUの印加におけるIsppaは、約1500W/平方センチメートルから9000W/平方センチメートルにわたる。診断用の超音波装置のIsppaは、一般的に、例えば700W/平方センチメートルより低い。
【0046】
超音波を特徴づけることができるさらに他の方法は、ピーク負圧の振幅である。高い音圧あるいはHIFUの印加は、10MPaを上回るピーク振幅を有した波を用いる。低い音圧の超音波は、0.01〜5.0MPaのピーク負圧を一般的に有する。診断用超音波装置は、例えば3.0MPaより低いピーク振幅を一般的に有する。
【0047】
高い音圧および低い音圧の超音波システムは、一般的に、250kHz〜10.0MHzの周波数範囲で作動する。画像診断法は、典型的に約1.0MHz〜約5.0MHzの振動数を使用する。一つの公知の弱い音圧の超音波プローブは7.5MHzと同程度の振動数を有した超音波を生じさせる。いくつかの弱い音圧の超音波プローブは、10.0MHzと同程度の超音波振動数を生じさせる。物理療法の超音波システムは、一般的に1.0MHzあるいは3.3MHzの振動数で作動する。
【0048】
高音圧超音波ないし高密度焦点式超音波(図5および図8〜図9)は、組織破壊、例えば直接的な腫瘍の破壊のために用いられてきた。、高密度焦点式超音波は、診断目的のためにではなく、組織破壊のために一般的に用いられている。高音圧超音波を用いる高密度焦点式超音波は、発生させた音波のエネルギーを組織の比較的小さな病巣に集中させるために一点に合焦される。
【0049】
本明細書において高音圧超音波と称される高密度焦点式超音波(HIFU)は、2つの異なる機構によって組織切除を生じさせることは良く知られている。配列の焦点位置に配置された組織は、組織の温熱による壊死を生じさせるために、生理学的な温度を上回る温度に加熱することができる。さらにまた、除去するゾーンは、キャビテーションとして公知の現象を用いることによって増加させることができる。高密度焦点式超音波(HIFU)は、外因性の促進剤、例えば微小な泡を含んでいる外因性の溶液の非存在下においてもキャビテーションを生じさせることができる。
【0050】
弱音圧超音波は一般的に、組織に対して低い強度の焦点合わせされていない超音波(図6)を提供するために用いられる。弱音圧超音波は一般的に、平面トランスデューサによって患者に伝達される。低い強度の焦点合わせされていない超音波は、この分野の当業者により焦点ゾーン114、近いゾーン116、および遠いゾーン118(図7)を含むものとして説明される。弱音圧超音波は、例えば心臓画像診断および胎児監視といった医療の分野において容易に入手可能である。診断上の超音波システムおよび物理療法システムの両方が、弱音圧システムの範囲に納まる。一般的に、弱音圧超音波システムを用いる焦点合わせされていない超音波は、臨床医によって組織破壊のためには用いられてこなかった。本発明の一実施形態において使用する超音波は、弱音圧超音波である。
【0051】
キャビテーションは、流体の圧力変化から生じる物理的な現象である。キャビテーションは、高密度焦点式超音波(HIFU)すなわち高音圧超音波を組織に印加するときに、外因性の微小な泡溶液の非存在下においても発生し得る。キャビテーションは、高密度焦点式超音波を人体の組織、例えば血液、脳および前立腺組織に直接的に印加している間に注目されてきた。キャビテーションは、流体のあるレベルに到達した圧力に起因する、流体内における微小な泡の形成および崩壊を含む。流体内においては、超音波が高い出力で導入されると、流体が蒸気圧レベルに到達した結果としてキャビテーション泡の形成が誘発されるポイントに波の負圧部分が達する。したがって、HIFUあるいは高い音圧の超音波にさらされる組織内に内因性の微小な泡を形成することができる。しかしながら、組織にかなりの熱量および温熱損傷を生じさせるので、HIFUは不都合である。
【0052】
本願明細書において用いる促進剤という用語は、超音波による組織上での破壊的なキャビテーションの生物学効果を高める、外因性のガス、液体、混合物、溶液、化学薬品のうちの少なくとも一つを指す。促進剤の一つの実例は、促進溶液である。一つの実施形態において、促進溶液は、外因性の気体、例えば微小な泡を含んでいる。他の促進剤は、本願明細書において更に詳細に説明される。
【0053】
ここで図10を詳細に参照すると、「N」はその標準状態にある微小な泡であり、「C」は圧縮状態にある微小な泡であり、かつ「E」は膨張した状態の微小な泡である。破線「D」は、正常な状態「N」にある微小な泡の直径を示している。図11は、増加レベルのピーク負圧にさらされて振動している微小な泡の列を示している。内側の破線「Mc」は最大圧縮を示し、実線「N」は標準状態を示し、外側の破線「Me」は最大膨張を示している。
【0054】
微小な泡(内因性および外因性の両方)は圧縮可能であり、超音波の場において交互に収縮、膨張する。これらの膨張および収縮は、弱い超音波圧力においては一般的に等しくかつ対称である。この挙動は、この分野の当業者によって適度な振動(moderately oscillating)と呼ばれる。超音波の駆動圧力が増加すると、例えば泡の膨張が収縮よりも大きいといった、より複雑な現象が発生する。さらにまた、急速な崩壊に続いて比較的低速な膨張があり得る。この挙動は、当業者によって強い崩壊(strongly collapsing)と呼ばれる。それは、調波信号の生成を伴う。適度な振動から強い崩壊への移行は突然であり、微小な泡は内側に破裂して微小な泡に近接している組織にエネルギーを放出する。泡が超音波に曝されたときに泡の内破によって放出されるエネルギーは、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせる一つの要因である。
【0055】
しかしながら、いくつかの作用機構は、音波によるキャビテーションの生物学的効果が組織上において観測される現象によるものと考えられてきた。いくつかの細胞は、キャビテーションの間における機械的なエネルギーの放出によって直接的に損傷を受け得る。さらに細胞の損傷は、介在性の圧力強度の局部的な差によって生じ得る。泡が内側に破裂するときに低圧の領域が形成され、隣接する細胞膜の間を横切る間質液のマイクロ流動を生じさせる。このマイクロ流動によって細胞膜に与えられる強い剪断応力が細胞の損傷を生じさせることが示された。細胞を損傷させるさらなる機構は、音響穿孔の現象、あるいは前述したマイクロ流動の結果としての細胞膜の一時的な孔の形成に関連している。ある許容限界の下では、これらの孔が再び封止し、細胞は回復することができる(この現象は、生物工学の用途において標的細胞への遺伝子および巨大分子のトランスフェクションのために利用される)。しかしながら、前述したある許容限界を越えると、膜の修復は不可能であり、最終的な細胞の死滅あるいは細胞の自滅が発生し得る。この効果は、音響穿孔が細胞内環境において実施されると増強され、細胞代謝性のアンバランス、例えば高度に低張性な細胞内環境を促進する。何人かの著者は、泡の並進運動に関連する乱れが細胞の溶解を生じさせる証拠があることに注目してきた。さらにまた、それによってキャビテーションが細胞に影響を及ぼす、典型的には細胞死に帰着する、化学的なあるいは他の物理的なメカニズムが存在する。当業者の一部は、キャビテーションの生物学的効果が、生物学的に能動性の音響化学物質の発生および紫外線(UV)および軟X線の放射によるものと考えてきた。
【0056】
しかしながら、本発明によれば、超音波によって組織を直接的に加熱することなく、組織の崩壊および組織の切除のためにキャビテーションの生物学的効果を利用することもまた可能である。皮膚および関連する構造(神経、毛嚢、血管)における温熱損傷のリスクを取り除くために、本発明は、標的組織に外因性の微小な泡を有利に導入するとともに、低出力の超音波エネルギを用いて微小な泡を内破させ、治療する組織を直接的に温熱損傷させるのに十分な熱の発生なしに、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果によって標的組織を崩壊させる。直接的な注入によって組織内に浸透した微小な泡はまた、キャビテーションおよび組織崩壊のための核としての役割を果たす。これらの微小な泡は、本願明細書の他の部分においてより詳細に説明するように、異なる形態で存在することができる。本発明は、重大な熱影響なしに皮下組織を崩壊させるために、微小な泡によるキャビテーショのン生物学的効果を活用する。本発明によって生じる皮下におけるキャビテーションの生物学的効果は、例えばセルライトおよび局所的な脂肪の沈澱の治療において、表面のあるいはまた深部の脂肪もしくはセプタムの破壊のために有益である。
【0057】
外因性の気体、および微小な泡や乾燥したナノサイズの泡を含む気体の利用は、非熱的な除去技術であることに加えていくつかの利点を有する。商業的に入手可能な物理療法の超音波機器および診断用の超音波機器が生じさせる範囲の超音波は、本発明の好ましい実施態様において提供される。これらの低出力の機器の安全性、より具体的には、それらが生じさせる超音波の安全性は確立している。一般に、これらの低出力の超音波機器は、微小な泡がある場合にだけ破壊的なキャビテーション効果を生じさせる。キャビテーションによる生物学的効果は、超音波造影剤があるときに、超音波にさらされた動物に発生するという実験的な証拠がある(Miller and Gies 1998, Skyba et al. 1998)。超音波に曝されたときの微小な泡の内破は、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせるための一つの要因である。
【0058】
ここで図12〜図15を参照すると、本発明のいくつかの様々な実施形態は、音波を用いて皮下組織を治療するための組立体あるいは装置200を含んている。一つの実施形態において、この組立体200は、音波システム、例えば電子機器を駆動するように構成された超音波発生装置202および患者の肌を介して超音波を接続するように構成された経皮的なトランスデューサ204を有した超音波システムを含む。一つの実施形態において、この組立体200は、溶液210を攪拌しあるいはまた混合するように構成された撹拌システム208、および皮下に溶液を注入するように構成された注入部材214をさらに備える。少なくとも一つの実施形態において、この組立体は、従来技術において周知の様々な溶液を提供する。この溶液には、例えば塩水、生理食塩水、低張塩水、低張溶液、高張溶液、リドカイン、エピネフリン、腫脹性の溶液、あるいはまた微小な泡溶液が含まれる。
【0059】
音波発生装置202および音波トランスデューサ204は、超音波発生装置および超音波振動子を含むことができる。少なくとも一つの実施形態におい、この装置は、気体の供給源206を更に備える。さらに一つの追加の実施形態において、この装置は、気体212、例えば微小な泡あるいは他の促進剤を含む溶液210を提供するための溶液撹拌機208を更に備える。少なくとも一つの実施形態において、本発明は、溶液注入部材214を更に備える。
【0060】
少なくとも一つの実施形態において、この組立体はまた、溶液210を格納するための容器220、例えばその内部に溶液を格納するためのリザーバを備える。このリザーバは、従来技術において周知の点滴バッグとすることができる。一つの実施形態において、この組立体はまた気体の供給源206を備える。この気体の供給源は、室内空気あるいは様々な他の生体適合性の気体とすることができる。少なくとも一つの実施形態において、気体の供給源は、容器に封じ込められた気体あるいは気体のタンクである。少なくとも一つの実施形態において、気体の供給源は、大気と流体的に連通する開口を具備した撹拌機によって装置内に取り込まれる大気の室内空気である。一つの実施形態において、溶液および気体212は撹拌機208に流入し、気体212を含む注入可能な溶液を生じさせる。気体を含んでいるこの注入可能な溶液は注入部材214へと流れ、治療する組織100内への注入が可能となる。
【0061】
一つの実施形態において、医師が選択された溶液を調製して吊り下げると、組立体200は、前もってプログラムされたあるいはユーザーが定めたアルゴリズムに基づいて混合し、注入し、音波を当てる。このアルゴリズムは、制御装置228にプログラムすることができる。この制御装置は、他の構成部分を含む単一構造の組立体に含めることもできるし、あるいはこの組立体の他の構成部分と連絡するように構成された別個のユニットとすることもできる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はプロセッサおよびメモリーを含む。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はまた、入力手段236、例えば電気スイッチ、ボタン、あるいはキーパッドを含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はまた、出力手段238、例えば従来技術において周知のLEDライト、液晶画面、計器、あるいは他のスクリーンおよび出力表示器を含むことができる。他の実施形態において、入力手段236および出力手段238は制御装置から分離することができるが、制御装置と電気的に通信する。組立体は、最初に撹拌機208の内部で溶液210を混合し撹拌するように構成されている。組立体は、その後、注入部材214を用いて患者に溶液を注入するように構成されている。組立体はまた、トランスデューサ204を用いて注入された組織100に音波を当てるように構成されている。
【0062】
一つの実施形態においては、少なくとも一つの皮下注射針216が溶液注入部材214に配設されている。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は格納式の皮下注射針216によって構成することができる。他の一実施例において、溶液注入部材はパッド232(図24〜図25)と共に構成される。さらに一つの実施形態において、この装置は組織冷却モジュール218をさらに備えることができる。
【0063】
少なくとも一つの実施形態において、音波発生装置202は、弱い音圧の超音波発生装置である。様々な音波発生装置202および音波トランスデューサ204は、周知の技術であって商業的に入手可能である。少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置および超音波振動子は、診断用超音波のために商業的に入手可能なタイプある。少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置および超音波振動子は、物理療法のために商業的に入手可能なタイプである。商業的に入手可能な弱い音圧の超音波機器の一つの実例は、Mettler Electronics Corp.(アナハイム、カリフォルニア州)から入手可能なSonicator 730である。このSonicator 730は、1.0MHzおよび3.3MHzの治療用超音波ユニットであり、最高で4つのアプリケータが付属し、連続あるいはパルスモードで作動する。Sonicator 730は、全てのアプリケータによって2.2W/平方センチメートルの最大強度を有する。商業的に入手可能な弱い音圧の超音波機器の他の実例は、Siemens, AG(ミュンヘン、ドイツおよびMalvem、ペンシルバニア州、米国)から入手可能なAcuson AspenおよびAcuson Sequoiaである。弱い音圧の超音波機器のさらなる実例は、G. Heinemann Ultraschall(ドイツ)から入手可能なSonoporatorである。
【0064】
本発明の一実施形態においては、超音波発生装置202で発生するピーク負圧は10.0MPa未満である。少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置で発生するピーク負圧は5.0MPa未満である。本発明の他の実施形態において、超音波発生装置で発生するピーク負圧は4.0MPa未満である。本発明のさらに他の実施形態において、超音波発生装置で発生するピーク負圧は、3.0MPa未満である。
【0065】
本発明の少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置202のMIは0.01〜5.0の範囲である。本発明の一実施形態において、MIは0.1〜4.0の範囲である。本発明のさらに一つの実施形態において、MIは0.5〜3.0の範囲である。本発明のさらに他の実施形態において、MIは0.7〜2.5の範囲である。
【0066】
本発明の一実施例において、超音波発生装置202は、約100kHz〜約10.0MHzの周波数範囲で作動する。本発明の他の一実施形態において、超音波発生装置は、約250kHz〜約5.0MHzの周波数範囲で作動する。本発明のさらに他の実施形態において、超音波発生装置は、約500kHz〜約3.0MHzの範囲の振動数で作動する。本発明のさらなる実施形態において、超音波発生装置は、約750kHz〜約2.0MHzの周波数範囲で作動する。
【0067】
ここで図12〜図15を参照しつつ図1〜図4を振り返ると、トランスデューサ204は、患者の表皮102を介して超音波を外側から印加するように構成されている。一つの実施形態において、トランスデューサは、超音波エネルギーを皮下組織100に透過させるように構成されている。一実施例において、トランスデューサは、超音波エネルギーを皮下脂肪106に透過させるように構成されている。他の実施例において、トランスデューサは、超音波エネルギーを線維性セプタム108に透過させるように構成されている。さらに他の実施形態において、トランスデューサは、超音波エネルギーをより深い脂肪層110に透過させるように構成されている。少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサは、不十分に焦点合わせされたあるいは焦点合わせされていない超音波を放射する。他の実施形態においては、不十分に焦点合わせされたあるいは焦点わせされていない波が平面トランスデューサによって放射される。このことは、不連続的に焦点合わせされたあるいはある点に焦点合わせされた超音波を放射するHIFUとは対照的である。HIFU波は、半球状のトランスデューサや、トランスデューサの配列、例えば半球状の基体上に配置されたトランスデューサ、あるいは音響レンズの使用によってその波が半球状のトランスデューサをまねるように焦点合わせされた平面トランスデューサから放射される。
【0068】
ここで図16〜図20を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサ204は、多角形状のベース部266を有したハンドピース264に含まれている。一つの実施形態において、ベース部は3〜6の側面を有している。図20を詳しく参照すると、ベース部の多角形の形状は、患者の大きな組織領域における配置および治療に有益である。多角形状のベース部のサイズおよび形状にそれぞれ対応した、患者の表皮102上において隣接する複数の領域は、患者の治療領域の全体にわたって配置することができる。多角形状の各領域は順番に治療することができ、それによって治療領域の全体あるいは一部を効率的に治療する。しかしながら、多角形状に形付けられたハンドピースのベース部の説明は限定的なものであることを意図しておらず、他の実施形態においてはベース部を他の形状、例えば円形、三角形、正方形、多角形、円柱状、球形、あるいはピラミッド状とすることができる。複数の交換可能なハンドピースや、いくつかの様々な形状のベース部を提供することができる。様々に形付けられたベース部は、超音波が患者に対してより効果的に印加される最も良好な接続を、このベース部と患者の肌との間で手に入れるために有益である。
【0069】
少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサ204は患者の表皮102と良好に接続され、患者の内部に通過するときの音波の損失が最小化される。トランスデューサは、従来技術において周知の多くの方法で患者の表皮に接続することができる。一つの実施形態においては、商業的に入手可能な超音波ゲルが、トランスデューサのヘッド部と表皮との間に従来技術において周知のように用いられる。さらに他の実施形態において、音波は、トランスデューサと表皮の間に脱気水を用いて接続される。脱気水の使用は、超音波ゲルに比較すると、患者の不快感を減少させる点において有益である。さらにまた、局所麻酔薬ゲルあるいは従来技術において周知のクリーム、例えば3倍麻酔クリームは、不快感を最小化するために手技の前に患者の肌に塗布することができる。一つの実施形態において、超音波ゲルは局所麻酔薬を含むことができる。局所麻酔薬を使用する場合には、促進溶液の一部としてリドカインを含む必要はない。
【0070】
再び図12〜図15を参照すると、本発明は、少なくとも一つの実施形態において気体212を含んでいる溶液210への混入のための気体の供給源206を備えている。一つの実施形態においては、気体の供給源は室内空気である。室内空気は、システムの一部として格納され、あるいは格納されていない大気の室内空気からシステムが吸引することによって供給することができる。少なくとも一つの実施形態において、気体の供給源は気体のタンクあるいは気体のリザーバである。一つの実施形態においては、気体の供給源は使い捨ての気体カートリッジである。一つの実施形態においては、使い捨ての気体カートリッジはインペラを含むことができる。さらに他の実施形態において、使い捨ての気体カートリッジは加圧気体を含むことができる。一つの実施形態においては、微小な泡を含んだ溶液を作り出すために、気体カートリッジ内の加圧気体が溶液内に放出される。この気体には、酸素、過飽和酸素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、あるいは他の生体適合性の気体を含めることができる。使用できる他の気体には、本願明細書の他の部分で説明されるもの、例えば空気、パーフルオロカーボン、パーフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、オクタフルオロプロパン、ドデカフルオロペンタン、パーフルオロプロパン、六ふっ化硫黄を含む、現在公知である封入されたエコー源性の造影剤に使用する気体を含めることができる。少なくとも一つの実施形態において、泡を含んでいる加圧された溶液が提供される。溶液に圧力が負荷されていることにより、泡は溶液内に溶解している。この溶液が患者の組織内に注入されると、この溶液の圧力は低下するので、気体が溶液から出てきて治療する組織内に微小な泡を形成する。
【0071】
本願明細書に用いる気体の供給源206および気体212には、患者に注入する前には室温で液体であるが、患者に注入された後には生理学的温度でガス状となる微小な泡の前駆物質が含まれる。室温においては液体であるが生理学的温度においてはガス状であるガス前駆物質の実例はメチルアセテートである。さらに、ガス前駆物質は注入前に加圧されていると液体であるが、大気圧下あるいは生理学的な生物組織圧力下では気体となる液体とすることができる。気体のための他の適切な材料は、1998年6月16日に出願されたTankovichへの米国特許第6,302,863号「パーフルオロカーボン腫脹性溶液を介した脂質の除去方法」に開示されている。なお、その内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。促進剤として用いることができる他の医療ガスには、オクタフルオロプロパンあるいはパーフルオロブタンが含まれる。
【0072】
本発明はまた、患者の皮下組織100への皮下注射において生体適合性を有する様々な溶液210を含んでいる。一つの実施形態において、溶液は腫脹性の溶液である。腫脹性の溶液は、局所麻酔の適用をもたらすために特に適合させたものであり、周知の技術である。腫脹性の溶液は、様々な医薬用溶液を含むことができる。腫脹性溶液の一つの実施例は、2%のリドカインを含有した1000mlの生理食塩水、30ml(600mg)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5mg)の重炭酸ナトリウムを含む溶液である。腫脹性溶液の少なくとも一つの他の実施例は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%のリドカイン、1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は、商業的に入手可能である。腫脹性溶液は、治療部位の出血を減少させるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供する。
【0073】
一つの実施形態において、この溶液は生理食塩水である、さらに一つの実施形態において、この溶液は低張溶液である。この低張溶液は、脂肪細胞を、超音波による崩壊の作用をより受けやすいものとする点において有益である。さらに他の実施形態において、この溶液は微小な泡あるいはナノサイズの泡を含む液である。この溶液は、微小な泡を含む溶液を生じさせるために、2つの注射器の間で1回若しくは複数回攪拌される。本願明細書の他の部分で詳細に説明するように、微小な泡あるいはナノサイズの泡を含むいくつかの溶液は商業的に入手可能である。本発明はまた、溶液210を格納するための容器220、例えばその内部に溶液を格納するためのリザーバを備える。腫脹性の溶液あるいはまた低張溶液は、撹拌機208に加えることができる。腫脹性の溶液あるはまた低張溶液は、気体212を含んでいる溶液を提供するために、撹拌機208の内部において気体と混ぜ合わせることができる。
【0074】
本発明によれば、様々な治療促進剤を撹拌機208に追加し、あるいはまた様々な形態のエネルギーの印加と共に治療する組織100に注入される。促進剤は所望する効果にもよるが、その幾つかは以下に詳述される。例えば促進剤は、経皮的にあるいは治療する組織への注入により伝達することができる。治療促進剤には、リドカインのような麻酔薬、界面活性剤、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊された脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイトが含まれる。治療促進剤は、皮下組織への音波の印加の前に、間に、あるいはその後に供給することができる。
【0075】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、混合溶液210を提供するための溶液撹拌機208を含む。溶液は、気体212を含む溶液を生じさせるために気体と共に攪拌することができる。この気体には、本願明細書においてより詳細に議論するように、微小な泡あるいはナノサイズの泡を含めることができる。最も単純な形の気体は室内の空気から作ることができる。従来技術において周知の様々な他の気体、例えば二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、パーフルオロカーボン、パーフルオロブタン、ペルフルオロヘキサン、オクタフルオロプロパン、ドデカフルオロペンタン、パーフルオロプロパンおよび六フッ化硫黄や、例えば温度あるいは圧力の変化によって注入後に気体となる液体もまた撹拌機の溶液に導入することができる。そのような化学薬品の実例には、メチルアセテート、および米国特許第6,302,863号(Tankovich)に記載されている他の薬剤が含まれる。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。本願明細書の他の場所に記載されているように、様々な他の促進剤もまた溶液を混入するための撹拌機内に配設することができる。
【0076】
一つの実施形態においては、溶液210の容器220および気体の供給源206が溶液撹拌機208に接続される。溶液および気体は、例えば1つ若しくは複数のポンプ222(図12および図21〜図23)によって、あるいは重力流れによって溶液撹拌機に供給されて、溶液撹拌機の内部で互いに混合される。気体および促進剤の溶液への流入は制御モジュール228によって制御することができる。他の一つの実施形態において、溶液撹拌機は、互いに接続される2つの注射器と同じくらいに単純なものとすることができる。一つの注射器内の気体あるいは促進剤は、他の注射器内の溶液と混ぜ合わされて注入用の溶液を生じさせる。一つの実施形態においては、泡を再構成する手技の間、溶液を一つの注射器から他の注射器へと1回若しくは複数回再撹拌する。
【0077】
溶液撹拌機208および微小な泡の発生装置は従来技術において公知である。微小な泡の発生装置の実例は、2004年3月11日に出願された米国出願第10/798,876号「必要に応じて泡を発生させる装置、システムおよび方法」に記載されている。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0078】
図21乃〜図23を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、溶液撹拌機208は溶液注入部材214に含まれており、微小な泡はハンドピース264の内側に生じる。ここで図21を詳細に参照すると、一つの実施形態においては、溶液210および気体212はポンプ222によってフィルタ260を介して駆動され、気体を含んでいる溶液は溶液注入部材の内部に生じる。フィルタは、例えば精密ろ過紙あるいはメッシュを含むことができる。一つの実施形態において、フィルタは、例えば繊維、金属、プラスチック、疎水性の焼結プラスチックあるいはガラスから作られた、窓状の小孔のある部材を含むことができる。他の実施例において、溶液210は、追加の気体を導入することなしにフィルタを横切ってポンプ送りされる。フィルタは、乾燥しておりかつ気体に曝されていると、部分的に捕捉された小さなガス空間を多く含んでいる。流れている溶液の循環路内にフィルタが配置されると、部分的に捕捉されたガス空間は流動する溶液内に放出され、捕捉されていたガスに由来するスペースおよび大きさに相当する複数の泡を溶液内に形成する。さらにまた、一つの実施形態において、フィルタは、針216を介して注入される微小な泡のサイズを限定するように構成することができる。
【0079】
ここで図22〜図23を詳しく参照すると、さらに他の実施形態において、撹拌機は少なくとも一つの計量オリフィス262を含む。溶液210および気体212は、少なくとも一つの計量オリフィス262を介して混合され、気体を含んでいる溶液は溶液注入部材214の内側に生じる。一つの実施形態において、気体オリフィスに対する液体オリフィスの比率は、約100:1〜約1000:1の範囲にある。一つの実施形態において、液体の配管は約0.100インチの内径を有し、気体のオリフィス径は約0.001インチである。溶液および気体は1つ若しくは複数の注射針216に近位側において相交わり、気体を含んでいる溶液は1つ若しくは複数の針に入る。一つの実施形態においては、少なくとも一つの針が一つの計量オリフィスから微小な泡を受け入れ、少なくとも一つの他の針が少なくとも一つの他の計量オリフィスから微小な泡を受け入れる。他の実施形態においては、複数の気体オリフィスを一つの液体オリフィスの周辺に配置する。
【0080】
計量オリフィスを介した注入圧力は、いくつかの要因によって左右される。一つの要因はオリフィスの直径である。他の要因は流体および気体の粘度である。他の要因は所望する溶液における泡の比率である。一つの実施形態においては、溶液が注入器に送られる圧力範囲は25psi〜100psiであり、かつ気体がオリフィスを介して送られる圧力範囲は50psi〜125psiである。一つの実施形態において、溶液が注射器に送られる圧力は50psiであり、かつ気体がオリフィスを介して送られる圧力は75psiである。
【0081】
ここで図60A〜図60Dを簡潔に参照すると、一つの実施形態において、気体212は少なくとも一つの針216の遠位端226に形成される。一つの実施形態において、針は少なくとも2つの管腔225を有している。これらの管腔は、並ぶように(図60C〜図60D)あるいは同軸に構成することができる(図60A〜図60B)。少なくとも一つの針の一つの管腔から溶液が押し出され、かつ他の管腔から気体が押し出されて気体を含む溶液を形成する。少なくとも一つの実施形態において、針が皮膚104を介して挿入された後、気体および溶液が同時に注入されると、気体を含む溶液が患者の皮下組織の中に形成される。気体および溶液は、針の先端から出る前に直ちに、あるいは互いに隣接して皮下組織に入るときに互いに攪拌される。
【0082】
再び図12〜図15を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、注入される溶液210、例えば気体212を含んでいる溶液は注入部材214に供給される。少なくとも一つの実施形態において、注入機構の少なくとも一部は、溶液撹拌機208のためにハウジング内に組み込むことができる。
【0083】
一つの実施形態において、溶液注入部材に対する電源は、溶液注入部材に含まれる。他の実施形態において、溶液注入部材の電源は溶液注入部材の外部に配置される。例えば、溶液注入部材の電源は制御装置228によって供給することができる。少なくとも一つの実施形態において、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の印加との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材に含まれているメモリあるいはまたプロセッサに含めることができる。少なくとも他の実施形態においては、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の印加との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材の外部に配置された、例えば制御装置に含めることができる。
【0084】
ここで図24〜図25を参照すると、一つの実施形態において、溶液注入部材は少なくとも一つの皮下注射針を含む。皮下注射針は、溶液注入部材に接続された近位端224、および治療のために目標を定めた領域に貫通するように構成された遠位端226を有している。針の遠位端は、周知のように、肌に対するより外傷的でない貫入のために、斜めに切断(図示せず)することができる。一つの実施形態において、針は極微針を含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、針は角錐状(図示せず)に形付けることができる。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は複数の皮下注射針を含む。皮下注射針は、溶液が針を通って組織に流入するように構成された中央管腔を具備した管状のチャネルを有している。一つの実施形態において、溶液注入部材は、溶液注入部材の内部の位置から針が表皮102を介して治療する皮下組織に貫通する位置へと、皮下注射針を移動させるための作動要素(図示せず)を有している。一つの実施形態において、針は、少なくとも皮下脂肪106を貫通するように構成される。さらに他の実施形態において、針は、深部脂肪層110を貫通するように構成される。
【0085】
図24〜図26に示すように、本発明の更なる実施形態において、この組立体は、患者の皮膚表面に追従することができるリザーバあるいはパッドを232を有した溶液注入部材214を備えている。このパッドは、そこから延びる少なくとも一つの皮下注射針216を有している。この皮下注射針は、皮下組織100に溶液210を注入するように構成されている。一つの実施形態において、針の中央管腔234は、撹拌機208の溶液と流体的に連通している。一つの実施形態において、針216の遠位端226は、注入部材から出るように手動で展開させることができる。さらに他の実施形態において、少なくとも一つの針216の遠位端226は、注入部材214から出るように、制御装置228によって自動的に展開させることができる。
【0086】
ここで図27〜図28を参照すると、さらに他の実施形態において、ハンドピース264のベース部266は、大気より低い圧力を用いて患者の肌102を注入部材214あるいはまたトランスデューサ204に向かって上方に吸引するための吸引部材268を含むことができる。この吸引部材は、メカニカルポンプ(図示せず)、ハンドポンプ(図示せず)、あるいは大気より低い圧力の他の供給源に接続できる吸引管270を有している。一つの実施形態において、この吸引部材は、患者の肌とトランスデューサとの間にある室内空気を取り除くように構成される。
【0087】
他の実施形態において、ハンドピース264は、肌102とトランスデューサ204との間に、ある容量の超音波接続流体276を供給するように構成された、第2のチューブ271を更に有する。少なくとも一つの実施形態において、この超音波接続流体はガス抜きされた液体である。この接続流体は、吸引管270によってあるいは第3のチューブ(図示せず)によって取り除くことができる。一つの実施形態において、接続流体は、第2のチューブと流体的に連通しているベース部の複数の開口(図示せず)によって、ハンドピースのベース部266の下に供給される。一つの実施形態において、この流体は、吸引管と流体的に連通しているベース部の複数の開口(図示せず)によって、ベース部の下から取り除くことができる。この接続流体は、トランスデューサと患者の肌との間に安定した音響特性を有した境界部分を提供するのに有益である。この接続流体はまた、吸引が負荷されている間に、音響的に効率的な接続流体の流れを治療領域に提供するために有益である。セルライトの頂部が作り出しているエアポケットの谷部にこの流体を充填して、より良好に超音波を伝達できるからである。
【0088】
一つの実施形態において、肌は、吸引力が負荷される前に、ハンドピース264から出た第2の状態246へと展開される針216に向かって上方に吸引される。その後、肌に吸引力が負荷されると、肌はハンドピースのベース266に向かって上方に吸引され、針は治療する患者の少なくとも表皮102を貫通する。他の実施形態においては、ハンドピースは第1の状態244で患者の上に配置されるが、このときには針の遠位端226はハンドピースの内部にある。それから、ハンドピースのベースに対して肌を上方に引っ張るために吸引が負荷される。その後、針を第2の状態に展開すると、針は治療する患者の少なくとも表皮102を貫通する。
【0089】
ここで図29〜図31を参照すると、一つの実施形態において、溶液注入部材214は、ハンドピース264が患者の肌に押圧されるときに、少なくとも一つの針216が注入部材およびトランスデューサ204の貫通開口205から出るように展開させるべく構成されている。注入部材は、トランスデューサハウジングの凹所にフィットするように構成することができる。一つの実施形態において、ハンドピース264は、注入部材とトランスデューサとの間に配設された少なくとも一つのばね272(図29)を有している。第1の状態244において、針は完全にハンドピースの内部に配設されている(図30)。第2の状態246において、針の遠位端226は、トランスデューサの貫通開口からハンドピースの外側に出ている(図31)。第2の状態において、針の遠位端は、表皮を貫通して治療する皮下組織の内側にあるように配設される。一つの実施形態においては、針が間違って第2の状態に展開されることを防止するセーフティーロック278が提供される。一つの実施形態においては、例えば臨床医が患者の肌にハンドピースを押圧すると、ばねが圧縮されて、針は第1の状態から第2の状態に展開される。臨床医がハンドピースを患者の肌に押し付ける圧力を取り除くと、ばねは注入部材をトランスデューサから離間するように駆動し、針は第2の状態から第1の状態へとハンドピースの内側に後退する。さらに他の実施形態においては、針が患者の肌の皮層を通って展開されるように、空気あるいは流体によってブラダ(図示せず)を膨張させることができる。ハンドピースはまた、超音波発生装置、溶液の供給源、あるいはまた気体の供給源との電気的なあるいはまた流体的な接続のために構成された、少なくとも一つのコネクタ274を有している。一つの実施形態において、気体を含む溶液は、本願明細書の他の場所で詳細に説明したように、ハンドピースの内側に生じさせることができる。一つの実施形態においては、ハンドピースの内側のトランスデューサと注入部材との間に、オーリングを含めることができる。
【0090】
一つの実施形態においては、針の遠位端は注入部材から自動的に展開される。第1の状態と第2の状態との間における針の移動は、制御装置228によって制御することができる。少なくとも一つの実施形態においては、第1の状態と第2の状態との間における針の自動的な展開のために、モータを注入部材に含めることができる。
【0091】
ここで図32〜図34を参照すると、装置200の少なくとも一部に取り付けることができるとともに取り外すこともできる、注入部材214の複数の構造を提供することができる。これらの様々な構造は、患者の肌の特定の形態に治療を適合させる際に有益である。図32に図示されている一実施形態において、注入部材は、少なくとも一つの針216をハウジングの内側に第1の状態244で保持するとともに、少なくとも一つの他の針216の遠位端226をハウジングの外側へと第2の状態に展開させるように構成することができる。図33に図示した一実施形態において、注入部材は、周辺部に配設された少なくとも2つの針および中央部に配設された少数の針と共に構成されて、より高い濃度の微小な泡を周囲の組織、例えば皮下脂肪106に供給することができる。図34に図示されている一実施形態において、注入部材は、中央部に配設された少なくとも2つの針および周囲に配設された少数の針と共に構成されて、より高い濃度の微小な泡を中央部の組織、例えばセプタム108に供給することができる。
【0092】
ここで図13および図18を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、溶液注入部材214は音波トランスデューサ204の背後に取り付けられている。この音波トランスデューサは複数の孔と共に構成することができ、溶液注入部材に含まれている針は、このトランスデューサの少なくともいくつかの孔に芯合わせされてそこを通過するように構成されてる。
【0093】
注射針の直径は7ゲージから40ゲージのサイズにわたる。一つの実施形態において、注射針は30ゲージのサイズである。さらに他の実施形態において、注射針は28ゲージのサイズである。さらなる実施形態において、注射針は25ゲージのサイズである。追加の実施形態において、注射針は22ゲージのサイズである。他の実施形態において、注射針は20ゲージのサイズである。さらに一つの実施形態において、注射針は18ゲージのサイズである。針の全てを一つの長さとすることもできるし、あるいは異なる長さすることもでき。一つの実施形態において、針の全長は2.0ミリメートル〜10.0cmである。一つの実施形態においては、針の全長は5ミリメートル未満である。他の実施形態において、針の全長は5.0ミリメートル〜2.0cmの範囲である。他の一つの実施形態において、針の全長は1.0cm〜3cmの範囲である。さらに他の実施形態において、針の全長は2.0cm〜5cmの範囲である。他の実施形態においては、針の全長は3.0cm〜10.0cmの範囲である。
【0094】
さらに他の実施形態において、注射針は、極微針を含む。一つの実施形態において、極微針の直径は20ミクロン〜500ミクロンの範囲である。一つの実施形態において、極微針の全長は100ミクロン〜2000ミクロンの範囲である。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮から深部脂肪層に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮から筋肉層に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの実施形態において、患者の快適性を増大させるために、局所的な麻酔クリームあるいはゲル、局所冷却法あるいは局所ブロックを用いて、更なる麻酔を治療領域に付加することができる。局所麻酔薬は、唯一必要な麻酔薬とすることもできるし、促進剤として用いられる任意のリドカインに代えることもできる。
【0095】
一つの実施形態において、針216は、治療する標的組織に応じて、皮膚表面から0.2ミリメートル〜40ミリメートルの距離にある皮下組織100に延びるのに十分な長さとすることができる。針は、針の遠位端226が少なくとも角質層を通って延びることができるように十分に長い。例えば、セルライトを治療するためには1.0ミリメートル〜5.0ミリメートルの針入の深さが望しく、より深い皮下脂肪のためには3.0ミリメートル〜40ミリメートルの針入深さが望ましい。1つ若しくは複数の皮下注射針が、手動であるいは制御装置228によって自動的に、様々な深さに移動することができる。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮から深部脂肪層に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮から筋肉層に到達するのに十分な長さである。
【0096】
より表面の組織層におけるキャビテーションによる効果は、最初に肌に印加される超音波の全ての出力および強度からより深い組織層を保護することができる。表面におけるキャビテーションの遮蔽効果は、より深い組織層を同時に内破(cavitate)させる不十分な音波パワー、あるいはより深い層のむらのある組織破壊に帰着し得る。したがって、少なくとも一つの実施形態において、本発明の装置は、より深い組織層からより表面の組織層に至る段階的な深さの注入をもたらすとともに、各段階における注入の間に音波を印加するように構成されている。1つ若しくは複数の皮下注射針は、手動であるいは制御装置228によって自動的に様々な深さに移動させることができ、以下に更に説明するように、各段階の深さにおいて超音波で組織を治療することができる。
【0097】
装置200は、注入部材214による溶液210の注入の後に、様々な時点で超音波発生装置202を活性化できるように構成されている。少なくとも一つの実施形態において、治療する組織への溶液の注入に続いて組織に超音波を印加するタイミングを同期させるために、制御装置228を用いることができる。一つの実施形態において、注入部材は、少なくとも治療する組織への溶液の注入を開始させるためのスイッチを有するように構成される。少なくとも一つの実施形態において、注入部材は、注入あるいはまた患者からの針216の引き抜きを停止させるボタンを有するように構成することができる。
【0098】
少なくとも一つの実施形態において、装置200は、2つの異なる振幅の超音波を提供するように構成される。少なくとも一つの実施形態において、治療する皮下組織100に、最初に、注入部材214を用いて気体212を含む溶液210を浸透させる。超音波発生装置202は、トランスデューサ204を介して印加されて治療する組織の内側の溶液を分散させる、第1の小さい振幅の超音波を発生させるように構成されている。超音波発生装置はまた、治療する組織にトランスデューサを介して印加されて、注入された溶液内における泡212のキャビテーション、および例えば細胞損傷あるいは細胞死滅による組織の崩壊をもたらす、第2の大きい振幅の超音波を発生させるように構成されている。
【0099】
ここで図35を参照すると、本発明の更なる実施形態においては、標的とする皮下組織100への肌を介した挿入のために、扇形に拡がった針の配列252を提供することができる。この扇形に拡がる針の配列は、管状部材254、例えばカテーテル、套管針、あるいは中央のチャネル256を有した針を含むことができる。一つの実施形態においては、複数の針216が中央チャネル内に配設される。一つの実施形態において、複数の針は、20ミクロン〜500ミクロンの寸法範囲の極微針を含む。少なくとも一つの実施形態において、複数の針216は、中央チャネル内に配設されるとともに、中央チャネルから外へ延びるように、あるいは中央チャネル内に引き込まれるように構成される。表皮および皮膚は、この管状部材によって貫通される。一つの実施形態において、中央の管状部材は、皮下組織への穿通を容易にするために斜めに切られた先端を有する。複数の針は中央管状部材の中央チャネルから円周方向の外側に傾斜するように構成され、極微針は複数のセプタムを貫通する。極微針は、治療する皮下組織への溶液の分配をもたらすチャネルあるいは管腔を有している。一つの実施形態において、これらの針は、少なくとも2つの管腔225を有した針(図60A〜図60D)を含むことができ、溶液210および気体212が針から出るときに針の遠位端226において泡を含有する溶液が作り出される。これらの針の管腔は、同軸とすることもできるし横に並べることもできる。円周方向の外側に傾斜している極微針は、セプタムの破壊および溶液のより一様な分配の提供において有益である。扇形に拡がる針の配列もまた有益である。肌を通って曲がりくねって進む少なくとも一回の穿刺により、組織のより大きい領域に一様に注入することができるからである。このことは、感染のリスク、および注入の間に患者が感じられる痛みの総計を減少させる。
【0100】
一つの実施形態において、これらの針216は、管状部材254を介して肌102、104に通るように用いることができるとともに、皮膚の表面に対して実質的に水平(平行)な配向で「扇型に拡がる」。少なくとも一つの実施形態において、それらが皮膚の表面と実質的に平行となるように極微針を展開すると、線維性のセプタムのような皮下の構造を崩壊させることができる。複数の針を用いると、今日の装置において予測されるよりも短い時間でより広い領域を治療することができる。極微針は、その長手方向に沿って追加の流出口258を有するように構成することができる。さらに一つの実施形態において、針は鋭利な切断要素を有する。針を皮膚表面に平行に配置するとともに、管状部材の軸線の回りに回転させ、あるいは表皮102に向かって上方に引き戻すと、扇形に拡がっている針の配列252は、一つの回転あるいは引き戻しによって複数のセプタム108を効率的に崩壊させることができる。少なくとも一つの実施形態において、いくつかの針は中央チャネルを持たずに中実であり、少なくとも残りは注入のためのチャネルを有する。少なくとも一つの実施形態において、針の配列の少なくとも一つの針は、組織を加熱しあるいは組織を崩壊させるために、針を介して電気エネルギーを供給するように構成することができる。一つの実施形態において、少なくとも針の一部が電気的に絶縁され、電気エネルギーは針の一部を介して組織に分散される。本発明はまた、2002年7月22日に出願されたBrettへの米国特許第6,916,328号「経皮的なセルライト除去システム」に開示されているサブシジョン手技および装置と組み合わせることができる。なお、その内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。サブシジョンとの組合せは、特に重症のセルライト症状の領域において有益である。
【0101】
ここで図12および図15を詳しく参照すると、本発明のさらに他の実施形態において、この装置200は冷却モジュール218を備える。患者の肌への注入は、一般的に不快感、腫大、出血、瘢痕化あるいは他の望まれない効果といった副作用を伴う。さらにまた、本発明によって治療される皮下組織100の破壊は、多くの美容整形あるいは皮膚科的治療に一般的ないくつかの副作用に結びつく。冷却モジュールの使用は本発明による治療の副作用を減少させる。組織の冷却は、出血、腫大および不快感を減少させる。この冷却モジュールは、従来技術において公知の多くの冷却方式のいずれかを含むことができる。図12に示すように、少なくとも一つの実施形態で、冷却モジュールの一部はトランスデューサ204あるいは注入部材214に含めることができる。冷却モジュールの一つの利点は、本発明の治療に伴う不快感、腫大、瘢痕化および他の望まれない効果の治療あるいは予防を援助することにある。図15に示すように、少なくとも一つの他の実施形態において、この冷却モジュールは別個のモジュールとして組立体に含めることができる。
【0102】
一つの実施形態において、トランスデューサ204および注入部材214は、使用の際に互いに結合される別個の要素である。一つの実施形態において、トランスデューサは再利用可能であり、かつ注入部材の少なくとも一部は使い捨てとすることができる。一つの実施形態において、トランスデューサは再利用可能であり、かつ注入部材の少なくとも一部は再利用可能とすることができる。一つの実施形態において、トランスデューサは使い捨てであり、かつ注入部材の少なくとも一部を使い捨てとすることができる。一つの実施形態において、トランスデューサは使い捨てであり、かつ注入部材の少なくとも一部を再利用可能とすることができる。少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサおよび注入部材の組み合わせは、単一構造のハンドピースとして提供される。単一構造のハンドピースは、本願明細書に記載されている組立体の他の部分につながる共通の部品に取り付けることができる。ハンドピースは、異なる皮下異常あるいは異なる重症度の皮下異常を治療するように構成された、異なるサイズに設けることができる。一つの単一構造のハンドピースは、異なるサイズの単一構造のハンドピースと迅速に交換することができる。一つの単一構造のハンドピースは、他のものよりも針216の密度が高いパターンを有することができる。例えば、セルライトのより重症な領域は、針の密度がより高いパターンのハンドピースによって治療することができる。
【0103】
一つの実施形態において、この装置200は、有利には、微小な泡溶液の発生、治療する組織への微小な泡溶液の注入、治療する組織内への微小な泡溶液の分散、および治療する組織内の微小な泡溶液への音波の照射を統合しかつ協調させるように構成される。治療する組織内への微小な泡溶液の注入の後における音波照射のタイミングは、皮下組織の治療における一様で安定した効果を得るための一つの要因である。治療の深さは、治療における安定した生物学的効果を得るための他の要因である。さもなければ、患者は結果としてでこぼこの肌輪郭を得ることになる。注入のために同時に調製される微小な泡溶液は、安定しかつ一様な分布の結果を得るためのさらに他の要因である。この装置は、これらの要因およびその他の要因を制御するために有利に構成されて、皮下におけるキャビテーションの安定的で一様な生物学的効果を治療する組織に生じさせる。使い捨てのハンドピース264を有する少なくとも一つの実施形態においては、そのハンドピースの他の患者への再利用を防止するために安全対策チップ(図示せず)をハンドピースに設けることができ、それによって例えば肝炎あるいはエイズといった疾患の拡散を防止することができる。安全対策チップは、偽造のハンドピースが流通して患者に用いられることを防止するために含めることができる。
【0104】
安定した結果を生み出すためのさらに他の要因は、治療する部位の肌表面積に対する注入溶液の容量である。一つの実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.1cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約2.0cc/平方cmの範囲である。他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.25cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.5cc/平方cmの範囲である。さらに他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.5cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.0cc/平方cmの範囲である。しかしながら、上述した注入容量は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の深さに応じて変更することができる。
【0105】
安定した結果を生み出すためのさらに別の要因は、治療する組織への溶液の噴射率である。一つの実施形態において、溶液の噴射率は約0.01cc/秒〜約1.0cc/秒の範囲である。他の一実施形態において、溶液の噴射率は約0.02cc/秒〜約0.5cc/秒の範囲である。別の実施形態において、溶液の噴射率は約0.05cc/秒〜約0.2cc/秒の範囲である。しかしながら、前述した噴射率は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の症状に応じて変更することができる。
【0106】
組立体の様々な構成部分は、包括的なユニットに組み合わせることができる。構成部分の単一構造の組立体への組合せは、当業者にとって明らかである。以下、これらの組合せのいくつかの実例について説明する。
【0107】
[組立体の例示的実施形態]
ここで再び図12〜図15を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、組立体200の構成部品には、音波発生装置202、音波トランスデューサ204、溶液撹拌機208、および溶液注入部材214が含まれる。様々な例示的な実施態様においては、全てのシステム構成部品を単一のユニットに配設することもできるし、組立体が別個の構成部分を有することもできる。少なくとも一つの実施形態において、組立体の1つ若しくは複数の構成部分の別個となっている。
【0108】
[例1]
ここで図12を詳細に参照すると、本発明の一実施形態においては、全ての構成部分が単一ユニットあるいは装置200に組み込まれている。気体の供給源206を提供する使い捨ての容器、および溶液210を提供する容器220がこのシステムに含まれている。入力手段、出力手段、メモリを有している電子制御ユニット228およびプロセッサがこの組立体に設けられている。制御ユニットが溶液および気体の流れを撹拌機208に提供すると、この攪拌機が溶液と気体の混合物を攪拌する。次いで、制御ユニットが注入部材214に指令し、気体を含む溶液を組織に注入させる。さらに、制御ユニットは超音波発生装置202およびトランスデューサ204を制御し、予めプログラムされあるいはユーザーが定めたアルゴリズムに基づいて治療する組織に音波を当てる。
【0109】
[例2]
ここで図13を詳細に参照すると、本発明の一実施形態において、制御ユニット228は超音波発生装置202およびトランスデューサ204だけを駆動する。気体供給源206、溶液210、撹拌機208および注入部材214の全てが、1回だけ使用する使い捨ての、予め充填されている単一構造の使い捨てモジュール230に含まれている。一つの実施形態において、トランスデューサは再利用可能である。さらに他の実施形態において、トランスデューサは使い捨てであり、単一構造の使い捨てのモジュールに組み込まれている。少なくとも一つの実施形態において、皮下注射針216はトランスデューサの開口を通過することができる。少なくとも一つの実施形態において、単一構造の使い捨てモジュールは溶液撹拌機および溶液注入部材を有しているが、それらは自己完結型でありかつ自家動力型である。少なくとも一つの実施形態において、制御ユニットは、単一構造の使い捨てのモジュールに対して電力を与えあるいはまた注入および音波照射のアルゴリズムを制御する。
【0110】
[例3]
ここで図14を詳細に参照すると、本発明の他の一つの実施形態においては、専用の超音波発生装置202と、溶液撹拌機208および溶液注入部材214を有した別個のユニットとが設けられている。超音波ユニットは、例えば、物理療法の用途において当業者が現在用いているものとものと実質的に同じである。そのような超音波ユニットは商業的に入手可能である。腫脹性溶液210の注入システムは、従来技術において周知のものと実質的に同じでありかつ商業的に入手可能なものを設けることができる。トランスデューサ204および注入部材214は互いに接続され、溶液の注入および音波照射をほぼ同時に発生させることができる。本願明細書に記載されている他の実施形態と同様に、トランスデューサあるいはまた注入部材は再利用可能あるいは使い捨てとすることができる。さらに、気体の供給源206および溶液の容器220が設けられる。
【0111】
[例4]
図15に示されている他の実施形態において、装置200は、音波発生装置202およびトランスデューサ204を有した第1のユニットを備えている。溶液撹拌機208および注入部材214を有している第2ユニットもまた設けられている。少なくとも一つの実施形態において、注入部材は使い捨てであり、トランスデューサは再利用可能である。他の実施形態においては、注入部材を再利用可能とすることができる。さらに他の実施形態においては、トランスデューサは使い捨てである。第3のユニットは、メモリーおよびプロセッサを有した制御装置228を備える。この制御装置は、音波発生装置、溶液撹拌機、溶液注入部材の少なくとも一部、あるいはトランスデューサの少なくとも一つと電気的に通信する。制御装置は、入力236手段、例えば電気ボタン、スイッチあるいはキーボードを備えることができる。この装置は、例えば液晶画面、LEDライト、あるいは他の出力手段といった、従来技術において周知の出力手段238を更に備えることができる。この装置は、組織冷却モジュール218を有した第4のユニットを更に備えることができる。
【0112】
[例5]
図16〜図20に詳しく図示されている実施形態において、装置200は、音波発生装置202とメモリおよびプロセッサを具備した制御装置228とを有する第1のモジュール240を備えている。制御装置は、有利には、微小な泡溶液の発生、治療する組織内への微小な泡溶液の注入、治療する組織内での微小な泡溶液の分散、および治療する組織内の微小な泡溶液への音波照射を統合して協調させるように構成される。第1のモジュールは、制御装置と電気的に通信する入力手段236および出力手段238を更に備える。アルゴリズムおよび設定は、オンオフスイッチを具備した入力手段を用いて選択することができる。出力手段は、設定に関して少なくとも視覚的なフィードバックを提供するとともに、現在行われている治療アルゴリズムの段階について臨床医に情報を提供する。単一構造の第2モジュール242は、溶液撹拌機208、音波トランスデューサ204、および溶液注入部材214を具備したハンドピース264を有している。溶液注入部材は、注入部材ハウジング215の内側にある第1の状態244(図18)と注入部材ハウジングの外側にある第2の状態246(図19)との間で針216の遠位端が移動できるように構成された複数の針216を有している。トランスデューサは、トランスデューサを通って針が通過できるようにした開口を有するように構成されている。第2モジュールはまた、例えば電線によって制御装置と電気的に通信している。さらに第2モジュールは、その内部に溶液210を保持するように構成されている容器220と、例えばチューブによって流体的に連通している。大気の室内空気は、開口、ポートあるいは弁248を介して溶液撹拌機に取り込まれる。溶液撹拌機は、溶液と室内空気を混ぜ合わせ、それによって微小な泡212を含む溶液を作り出し、針を介して治療する組織に直ちに注入することができる。注入、分散、および治療する組織内の溶液への音波照射のタイミングは、有利には制御装置によって自動的に協調制御され、あるいは臨床医によって手動で設定される。ハウジングあるいはまたトランスデューサは、患者の連続する表面領域における配置のために有利に形作られた表面を具備して多角形状のベース部266を有することができ、治療する組織領域における均一な被覆を計画することができる(図20)。他の実施形態は、代わりの形状に形付けられたハンドピースを有することができる。
【0113】
上述した例示的な実施形態における本発明の組立体は、あらゆる観点において例示的なものであって限定的なものではないと考えられるべきある。ある好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、当業者にとって明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。
【0114】
本発明の少なくとも一つの別の実施形態は、低い強度の超音波の局部的な破壊効果を治療する組織にもたらす方法を提供する。少なくとも一つの実施形態において、この方法は、本願明細書に記載されている本発明の装置200を用いて実行することができる。他の実施形態において、この方法は、商業的に入手可能な音響的発生装置を用いて実行することができる。少なくとも一つの実施形態において、使用する溶液は、商業的に入手可能な溶液、例えば微小な泡溶液、ナノサイズの泡溶液、腫脹性の溶液、食塩水、および低張溶液を含む溶液とすることができる。さらに一つの実施形態において、注入する溶液は、一般的に利用可能でありかつ公知な方法によって臨床医が調製することができる。溶液の注入および浸透は、皮下注射針および注射器、あるいは従来技術において周知の他の方法によって実行することができる。
【0115】
多くの臨床医は、様々な薬物および溶液を皮下領域に浸透させることについて熟練しており、かつそのような浸透はかなりの正確さで実行することができる。弱い音圧の超音波、例えば物理療法の超音波および診断用の超音波は、気体212を含む溶液210が浸透している組織領域に超音波が印加されたときにだけ破壊的な効果を生じさせることができる。気体の存在下においてのみ組織の崩壊を生じさせるという低圧の超音波システムのこの特徴は、超音波の破壊的な効果を局所化するために有利に適用することができ、治療する組織にだけ微小な泡が局所的に注入される。
【0116】
ここで図36〜図40を参照すると、本発明は、皮下組織を崩壊させる方法を含む。この方法は、治療する皮下組織100に微小な泡212を配設することを含む。微小な泡は溶液210に含ませることができる。図36〜図38に示すように、溶液は、少なくとも一つの皮下注射針216によって皮下脂肪106に注入することができる。図39に示したように、それから針を(矢印方向に)引き抜いて、皮下組織内に配設した微小な泡をしばらくの間にわたって残留させる。ここで図40を詳細に参照すると、治療する組織および微小な泡に超音波を印加するために、トランスデューサ204を設けることができる。このことは微小な泡の内破を誘起し、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果が生じ、皮下脂肪あるいはまた微小な泡に近接している線維性のセプタムを崩壊させる。
【0117】
微小な泡は、(ゲルタイプ皮膜の)内部に閉じ込めることもできるし、(塩水のような溶液を攪拌することによって作り出された)そのままとすることもできる。微小な泡はまた、心エコー造影剤として商業的に販売されており、そのいくつかのタイプは以下に詳細に説明する。外殻および気体は、血液あるいは組織の内部における微小な泡の寿命を延長するために選択することができる。組織内における気体の寿命を延長する他の方法は、支持溶液の粘度を増加させることである。例えばヒアルロン酸ナトリウムの溶液は、塩水の溶液よりも非常に長く溶液の内部に気体を維持する。溶液210内における微小な泡212の寿命は、溶液に追加するヒアルロン酸の濃度あるいはまた分子量を変更することによって調整することができる。微小な泡212は、本発明の装置200の内部に、あるいは従来技術において周知の他の方法で溶液210内に発生させることができる。例えば、微小な泡は、2004年3月11日に出願された米国出願第10/798,876号「必要に応じて泡を発生させるための装置、システム、および方法」に開示されているように発生させることができる。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0118】
気体212は、気体の存在下において溶液を攪拌することにより、溶液210内に作り出することができる。最も単純な微小な泡は、例えばチューブあるいはコックによって互いに接続された2つの注射器の間で溶液および室内空気を前後に攪拌することによって形成することができる。少なくとも一つの実施形態において、本発明において注入する溶液は微小な泡を含むことができる。少なくとも他の実施形態において、本発明において注入する溶液は微小な泡を含まない。一つの実施形態において、溶液は腫脹性の溶液である。他の実施形態において、溶液は食塩水である。さらに他の実施形態において、促進溶液は低張溶液である。少なくとも一つの実施形態において、溶液は、低張性で腫脹性の溶液であることができる。さらに他の実施形態において、溶液は低張性の食塩水とすることができる。微小な泡を作り出すために、室内空気以外の様々なタイプの気体を用いることができる。気体あるいは微小な泡には、様々な気体、例えば酸素、二酸化炭素、窒素、あるいはまた本願明細書の他の場所に記載されている他の適切な気体を含めることができる。
【0119】
自由な気泡212は、超音波造影剤の最も単純な形を示す。これらの泡は、溶液の中に予め存在させることもできるし、注入の間にあるいはその後にキャビテーションによって作り出すこともできる。気泡、例えば室内空気による気泡を含んでいる生理食塩液の血管内注射は、1960年代の後期から心エコー検査法の造影剤として用いられてきた。自由空気の気泡の効用は、室内空気あるいは酸素の血液中への急速な吸収のために、血管内画像診断においては極めて限定的である。また、これらの泡は肺血管系を通過するには大き過ぎる。さらにまた、10ピコメートルを上回る大きな気泡は、一時的に毛細管を遮断するとともに気体塞栓として作用する。気体の微小な泡を封入した造影剤を製造するために、様々な安定皮膜あるいはシェルを有した市販の超音波造影剤が開発されてきた。しかしながら、本発明の一実施形態においては、室内空気の泡を溶液210に用いることができる。それらが血液に吸収されるよりも遅く脂肪に吸収されるからである
【0120】
今日、人体用途のほとんどすべての商業的に入手可能な超音波造影剤が、内部に封入された微小な泡を含んでいる。商業的に入手可能な微小な泡は、典型的に10ピコメートルよりも小さい。公知の商業的に入手可能な微小な泡は画像診断、例えば心臓画像診断の用途に使用するものであり、臨床的に使用する間、ほとんどの商業的に入手可能な微小な泡は血管内のスペースに閉じ込められる。微小な泡は、診断上のエコー強度を最高25dB(300倍以上)増加させる。信号増強の主要なメカニズムは、後方散乱、泡反響、および泡破壊である。これらのメカニズムは、伝達された超音波の音響出力に高度に依存しており、とりわけ機械的インデックス値(MI値)の影響を受ける。
【0121】
第一世代の微小な泡は、封入シェルなしに空気を収容している自由な微小な泡を含んでいる。Echovist (SHU 454)は、カプセルなしに空気を収容している商業的に入手可能な微小な泡である。血液中において(5分未満の)短い半減期を有する第二世代の微小な泡には、アルブミンの殻によって空気を封入しているAlbunex、およびパルミチン酸の殻によって空気を封入しているLevovist (SHU 508 A)が含まれる。血液中においてより長い(5分を越える)半減期を有する第三世代の微小な泡には、ホスホリピドの殻によってパーフルオロプロパンを封入しているAerosomes (Defmity, MRXl 15, DMP 115) (ImaRx Pharmaceutical)、界面活性剤の殻によってドデカフルオロペンタンを封入しているEcho gen (QW3600)、アルブミンの殻によってオクタフルオロプロパンを封入しているOptison (FSO 69) (Molecular Biosystems)、アルブミンの殻によってパーフルオロブタンを封入しているPESDA、アルブミンの殻によって空気を封入しているQuantison、界面活性剤の殻によってパーフルオロカーボンを封入しているQW7437、界面活性剤の殻によってペルフルオロヘキサンを封入しているImavist (Imagenl, AFO 150) (Alliance Pharmaceuticals)、およびホスホリピドの殻によって六フッ化硫黄を封入しているSonovue (BRl) (Bracco Imaging)が含まれる。
【0122】
商業的に入手可能な微小な泡の追加の実例には、ホスホリピドの殻によってパーフルオロブタンを封入しているBRl 4、パルミチン酸の殻によって空気を封入しているLevovist (SHU 508 A)、シアノアクリル酸の殻によって空気を封入しているSonavist (SHU 563 A)、および界面活性剤の殻によってパーフルオロカーボンを封入しているSonazoid(NC100100)が含まれる。
【0123】
組織に伝達されるエネルギー量の少なくとも一つの要因は、注入された溶液内における泡の濃度である。したがって、組織内における微小な泡の濃度もまた、生物学的効果の量を決定する。一つの実施形態において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×103〜1ミリリットルあたり1.0×1010である。他の実施形態において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×104〜1ミリリットルあたり1.0×109である。さらに他の実施例において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×105〜1ミリリットルあたり1.0×109である。さらに他の実施形態において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×106〜1ミリリットルあたり1.0×1010である。
【0124】
組織に伝達されるエネルギー量におけるさらに他の要因は、注入された溶液内における泡のサイズである。一つの実施形態において、泡の中位径の範囲は、約100ナノメートル〜約20マイクロメートルである。一つの追加の実施形態において、泡の中位径の範囲は、約500ナノメートル〜約150マイクロメートルである。少なくとも一つの他の実施形態において、泡の中位径の範囲は、約1.0マイクロメートル〜約10.0マイクロメートルである。
【0125】
組織100に伝達されるエネルギー量および組織上における生物学的効果に関する他の要因は、超音波が組織に印加される前に、注入された溶液あるいはまた泡が組織内に存在する時間の長さである。一つの実施形態において、注入された溶液210は、音波が印加される前の約10分〜約30分で組織に浸透する。さらに他の実施形態において、注入された溶液は、音波が印加される前の約1分〜約10分で組織に浸透する。別の実施例では、注入された溶液は、音波が印加される前の約1秒〜約1分で組織に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、注入された溶液は、音波が印加される前の約50ミリ秒〜約1000ミリ秒で組織に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、超音波は、溶液の注入とほぼ同時に治療する組織に印加される。
【0126】
超音波を照射する期間もまた、組織上における超音波の生物学的効果を決定し得る。一つの実施形態において、超音波は約10秒の間、治療する組織100に印加される。他の一実施形態において、超音波は約30秒間印加される。さらに他の実施形態において、超音波は約1分間印加される、さらに他の実施形態において、超音波は約2分間印加される。少なくとも一つの他の実施形態において、超音波は約5分間印加される。さらに他の実施形態において、超音波は約5分〜20分間印加される。なお一つの実施形態において、超音波は約20分〜1時間印加される。
【0127】
少なくとも一つの実施形態において、振動数、機械的インデックスおよび圧力ピークは、本願明細書において説明される本発明の組立体によって生じられる範囲においてある。少なくとも一つの遠い実施形態において、提供される超音波は、微小な泡の非存在下で脂肪細胞あるいは結合組織にかなりの総計の破壊を直接的に生じさせるのに充分な強度を有していない。それよりも、本発明で提供する超音波のタイプは、注入された外因性の気体212のキャビテーションおよび内破を含むメカニズムによって皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせ、気体に近接している組織の破壊をその内部に生じさせる。このことは、外因性の気体、例えば微小な泡の非存在下において組織の直接的な崩壊およびキャビテーションを生じさせ得る高い出力の焦点合わせされた超音波とは対照的である。したがって、本発明は、臨床的な使用において、直接的にに組織を崩壊させて破壊する従来公知の高い音圧の超音波あるいはHIFUシステムよりも安全である。
【0128】
腫脹性の溶液は、例えば脂肪吸引手技の間に局所麻酔の適用を提供する、特に構成された溶液である。腫脹性の溶液は周知の技術である。腫脹性の溶液は様々な医薬用溶液を利用する。一つの実施形態において、腫脹性の溶液は、2%のリドカインを含有した1000mlの通常生理食塩溶液、30ml(600ミリグラム)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5ミリグラム)の重炭酸ナトリウムを含む。少なくとも一つの他の実施形態において、腫脹性の溶液は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%リドカイン、および1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は、商業的に入手可能である。一つの実施形態においては、この腫脹性の溶液は撹拌機208に加えることができる。他の実施形態においては、予備混合されたあるいは商業的に入手可能な腫脹性の溶液を用いることができる。腫脹性の溶液は、治療部位の出血を減少させることができるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供することができる。少なくとも一つの実施形態において、気体を腫脹性の溶液に含ませることができる。本願明細書の他の部分に記載されている様々な他の促進剤を溶液210、例えば治療する組織100に注入する腫脹性の溶液に含ませることができる。
【0129】
少なくとも一つの実施形態において、注入する溶液210は低張溶液である。0.5W/cmの強度においても超音波による細胞の死滅を誘発させる非致死性の低張が公知である。増強作用を説明できる2つの態様がある。低密度の液体がキャビテーションの形成を促進するという事実に基づくと、低張は超音波の組織100に対する相互作用の挙動に影響及ぼし得る。他方、低張は直接的に細胞に影響を及ぼし得る。低張における細胞の腫大から生じる細胞容積の増加は、細胞膜の張力を生じさせる。細胞膜に対するこの効果は、超音波にさらされたときに直ちに細胞が死滅することの増加、および超音波あるいは微小な泡の内破による生物学的効果に曝された後において細胞が回復して生き残る能力の低さの原因の説明となる。
【0130】
超音波と組み合わせた気体はまた、細胞の浸透率の変更にも用いることができる。この種の超音波療法は、音響穿孔として公知である。ここで、細胞に近接している微小な泡の超音波駆動による振動は、その細胞の巨大分子の浸透率の増加につながり、したがってその細胞に近接している薬物あるいは遺伝子の取込みの増加につながる。本発明の一実施形態において、処理剤は、細胞自身が回復する能力を減少させあるいは治療する組織の細胞死を生じさせる巨大分子を含むことができる。そのようなタイプの処理剤の実施例には、リドカイン、および治療する細胞の非切除性の加熱が含まれる。処理剤のさらなる実例には、マーカインのような局所麻酔剤、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、撹拌塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊させた脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイトが含まれる。処理剤は、本発明のエネルギー印加治療の前に、間に、あるいは後に供給することができる。
【0131】
より表面の組織層におけるキャビテーションによる効果は、最初に肌に印加される超音波の全ての出力および強度から、より深い組織層を保護することができる。表面におけるキャビテーションの遮蔽効果は、より深い組織層を同時に内破させる不十分な音波パワー、あるいはより深い層のむらのある組織破壊ら帰着し得る。少なくとも一つの他の実施形態において、様々な深さの皮下組織の治療は段階的に実行される。それぞれの注入に続いて、治療する組織に音波を印加することができる。少なくとも一つの実施形態において、印加する音波は弱い音圧の超音波である。一つの実施形態において、印加する音波は、診断用超音波の出力領域にある。例えば、第1段階においては、深い位置への溶液の注入が実行されると、より深い層へ音波が印加される。第2段階においては、より表面的な位置への注入が実行されると、より表面的な層に音波が印加される。徐々に表面的となる深さにおける複数段階の溶液の注入は、音波の印加、例えば溶液をそれぞれ注入した後における超音波の印加と共に実行することができる。一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5〜2.0cm浅い深さで実行される。一つの実施形態においては、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1ミリメートル浅い深さで実行される。さらに追加的な一実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約5ミリメートル浅い深さで実行される。さらに他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.0センチメートル浅い深さで実行される。の他の実施形態、さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.5センチメートル浅い深さで実行される。さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2.0センチメートル浅い深さで実行される。、さらに他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約30ミリメートル、約25ミリメートル、および約20ミリメートルの深さの段階において実行される。一つの他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約10ミリメートル、約5ミリメートル、および約2ミリメートルの深さの段階において実行される。少なくとも一つの実施形態においては、各段階の注入の間に超音波を印加するのではなく、全ての深さにおける注入の後に一連の超音波が組織に印加される。
【0132】
一つの実施形態においては、治療する組織は、皮層と深部脂肪層との間に注入を受ける。他の実施例において、治療する組織は、表面的な脂肪層と筋肉層の間に注入を受ける。さらに他の実施形態において、治療する組織は、皮層と筋肉層との間に注入を受ける。一つの実施形態において、治療する組織は、約2ミリメートル〜4.0センチメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、治療される組織は、約0.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。少なくとも一つの実施形態において、治療される組織は、約1.0ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。さらに追加的な一実施形態において、治療される組織は、約1.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、組織は約2ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。他の一実施形態において、組織は約5ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに他の実施例においては、組織は約1.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約1.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約4.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。一つの実施形態においては、単一の深さの注入あるいは組織の浸透が実行される。少なくとも一つの他の実施形態においては、複数の深さにおける注入あるいは浸透が実行される。
【0133】
溶液の注入と超音波の印加との間の時間の経過は、約0秒〜1時間の範囲とすることができる。自動制御装置228は、溶液の注入に続く超音波印加のタイミングを同期させるために用いることができる。一つの実施形態において、超音波の印加は、溶液の注入とほぼ同時である。
【0134】
一つの実施形態においては、超音波を印加する約5秒未満前に注入を実行することができる。他の実施例においては、超音波を印加する約5秒〜約20秒前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、超音波を印加する約20秒〜約60秒前に注入が実行される。さらに他の実施形態においては、超音波を印加する約1分〜5分前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、超音波を印加する約5分〜15分前に注入が実行される。もう一つの実施形態においては、超音波を印加する約15分〜30分前に注入が実行される。さらに他の実施例においては、超音波を印加する約30分〜60分前に注入が実行される。
【0135】
ここでまた図41を参照すると、本発明のさらに一つの実施形態は、2つの異なる振幅の超音波を用いて皮下組織100を崩壊させるための方法である。治療される組織には、最初に溶液210、例えば低張溶液、気体212を含む溶液、微小な泡を含む溶液、あるいは腫脹性の溶液を浸透させる。弱い音圧の超音波の範囲の第1の小さい振幅の超音波を、皮下組織内の溶液を分散させるために、治療する領域にわたって患者の肌に印加する。一つの実施形態において、この第1の小さい振幅の超音波は、皮下におけるキャビテーションによる生物学的効果を生じさせるのに充分な強さではない。少なくとも一つの実施形態において、第1の小さい振幅の超音波は、0.01〜0.7の範囲のMI(メカニカルインデックス)を有する。少なくとも他の実施形態において、第1の小さい振幅の超音波は0.05〜0.5の範囲のMIを有する。さらに他の実施形態において、第1の小さい振幅の超音波は0.075〜0.25の範囲のMIを有する。
【0136】
治療する組織への第1の小さい振幅の超音波の印加を中止した後、小さい音圧の超音波の範囲にとどまる第2の大きい振幅の超音波を治療する組織に印加する。第2の大きい振幅の超音波は、溶液が存在している場合には皮下におけるキャビテーションによる生物学的効果を生じさせるのには十分であるが、溶液が存在しない場合には組織内の細胞上にキャビテーションによる効果を直接生じさせるには不十分である振幅を有している。一つの実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は、微小な泡溶液がある場合にはキャビテーション効果を生じさせるのに十分であるが、組織内の細胞上にキャビテーション効果を直接生じさせには十分に大きくない振幅を有する。少なくとも一つの実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は0.7〜5.0の範囲のMIを有する。他の実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は1.0〜4.0の範囲のMIを有する。さらに一つの実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は1.5〜3.0の範囲のMIを有する。
【0137】
さらに一つの実施形態において、針216は、治療する組織の最大深さにおいて皮下組織100に挿入される。溶液210、例えば微小な泡212を含んでいる溶液は、注入されると、低レベルの超音波によって組織内に分散させられる。一つの実施形態において、溶液の注入および超音波による分散はほぼ同時に実行することができる。次いで針を引き抜くと、溶液内にキャビテーションを生じさせるのに十分な第2の大きい振幅の超音波を印加する。第2の大きい振幅の超音波は、針の引き抜きとほぼ同時にあるいは針の引き抜きに続いて印加することができる。注入−分散および引抜き−内破の段階は、他の深さにおいてあるいは治療する他の領域において反復することができる。少なくとも一つの実施形態において、注入−分散および引抜き−内破の段階は、深部の脂肪領域からより表面的な脂肪領域へと反復することができる。深い部分から浅い部分へのこの累進的な注入−分散および引抜き−内破は、全ての泡の完全なキャビテーションを保証し、浅い層の泡を深い層の泡よりも前に破裂させた場合に発生し得る浅い層による「音の遮蔽」を防止する。それは、封入された泡あるいは本願明細書において議論する他の溶液において有益である。
【0138】
安定した結果を生じさせるさらに他の要因は、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間である。一つの実施形態においては、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約1秒〜約5秒である。他の実施形態においては、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約5秒〜約30秒である。さらに一つの実施形態において、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約30秒〜約30秒である。さらに他の実施形態においては、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約1分〜約5分である。
【0139】
一つの実施形態においては、治療する組織の破壊に続いて、破壊された組織を患者の内部に残し、例えば患者の身体によって吸収させることができる。他の実施形態においては、破壊した組織は、例えば脂肪吸引によって患者の身体から取り除くことができる。
【0140】
[例示的な方法]
ここで図42〜図58を参照し、皮下組織を治療する方法の一つの例示的な実施形態について説明する。この方法は、装置を提供することを含む。提供される装置は、入力手段、出力手段、プロセッサおよびメモリを有した制御装置を備える。提供される装置はまた、超音波発生装置、トランスデューサ、溶液のための容器内に格納される溶液、注入部材、および溶液撹拌機を備える。気体の供給源は、大気の室内空気である。図示の例示的な装置においては、トランスデューサ、溶液撹拌機、および注入部材の全てが単一構造のハンドピースに含まれている。溶液は、少なくとも一つのチューブによってハンドピースと流体的に連通している。制御装置は、少なくとも一つのワイヤによってハンドピースと電気的に通信している。少なくとも一つの図示した実施形態において、ハンドピースは、患者の治療する肌に接触するように構成されて多角形状に形付けられたベース部を有するとともに、、複数の針をさらに有している。ハンドピースは、オンオフスイッチを含むことができる。この方法はまた、患者の肌上における治療領域についての計画を含む。この計画は、ハンドピースのベース部のサイズおよび形状にマッチする連続した多角形の領域の計画を含む。この方法は、治療する皮下組織に針を前進させること、気体を含んでいる溶液を作り出すために溶液および気体を一体に攪拌すること、治療する皮下組織、例えば皮下脂肪およびセプタムに気体を含んでいる溶液を注入することを含む。超音波は、治療する組織に浸透している気体を含む溶液に印加される。一つの実施形態において、超音波は、気体を含んでいる溶液の注入と同時に印加される。超音波は、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせるキャビテーションを誘起し、少なくともいくつかの皮下組織が崩壊させる。一つの実施形態においては、破壊される皮下組織には皮下脂肪あるいはセプタムが含まれ、患者上のセルライトの外観が減少しあるいは取り除かれる。
【0141】
ここで図59を参照すると、本発明の治療方法アルゴリズムの例示的な実施形態が図示されている。この方法には、治療する患者の評価の後に治療方針を確定する臨床医が含まれる。促進剤溶液は、治療する所望の組織の位置に投与される。選択的に、促進剤溶液を分散させるために、治療する組織にエネルギーを印加することができる。次いで、促進剤を内破させるべく治療する組織にエネルギーを印加すると、治療する組織の少なくともいくつかの細胞に細胞溶解が生じる。一つの実施形態においては、このセッションが完了すると、溶解した細胞は患者の身体によって再吸収される。この治療は、適時の後の時点において反復することができる。他の実施形態において、治療用ハンドピースは、臨床医が治療を所望する追加の位置を治療するために再び配置されて、治療が再開する。さらに他の実施例においては、治療した同じ組織位置のより表面レベルに投与される溶液が再び投与されて治療が再開する。
【0142】
本発明は、組織を治療する他の方法あるいは装置と組み合わせることができる。本発明はまた、肌を引き締める手技、例えばカリフォルニア州HaywardのThermage Corporationから入手可能なThermage(商標)、カリフォルニア州BrisbaneのCutera, Inc.から入手可能なCutera Titan(商標)、あるいはカリフォルニア州Santa ClaraのLumenis, Inc.から入手可能なAluma(商標)の使用を含むことができる。
【0143】
本発明は、その精神および必須の特徴から逸脱することなしに他の形態で具体化することができる。したがって、説明した実施形態はあらゆる観点において例示的なものであって限定的なものではないことが考慮されるべきである。ある好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、当業者にとって明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照することのみによって定められることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】正常な皮下組織の一部の断面図。
【図2】正常な皮下組織のセプタムおよび脂肪を模式的に示す断面図。
【図3】正常な皮下組織のセプタムおよび脂肪組織(脂肪)の室を模式的に示す断面図。
【図4】一般にセルライトと呼ばれる異常を有した病的な皮下組織のセプタムおよび脂肪組織(脂肪)の室を模式的に示す断面図。
【図5】焦点を合わせた超音波を模式的に示す図。
【図6】焦点が合ってない超音波を模式的に示す図。
【図7】超音波の近いゾーンおよび遠いゾーンを模式的に示す図。
【図8】焦点を合わせた超音波を模式的に示す図。
【図9】焦点を合わせた超音波を模式的に示す図。
【図10】超音波の存在下における気体の泡の振動を模式的に示す図。
【図11】キャビテーション現象を受ける気体を模式的に示す図。
【図12】本発明の組立体の一実施形態を模式的に示す図。
【図13】本発明の組立体の他の実施形態を模式的に示す図。
【図14】本発明の組立体のさらに他の実施形態を模式的に示す図。
【図15】本発明の組立体のさらに他の実施形態を模式的に示す図。
【図16】本発明の組立体の斜視図。
【図17】本発明のハンドピースの斜視図。
【図18】図16の組立体のハンドピースを第1の状態で示す斜視図。
【図19】図16の組立体のハンドピースを第2の状態で示す斜視図。
【図20】図16の組立体のハンドピースを治療する患者の肌に当てた状態で示す斜視図。
【図21】気体を含む溶液を生じさせるように構成されたハンドピースを示す図。
【図22】気体を含む溶液を生じるさせるように構成されたハンドピースを示す図。
【図23】気体を含む溶液を生じるさせるように構成されたハンドピースを示す図。
【図24】本発明の組立体の一実施形態におけるパッドおよび皮下注射針を有した注入部材を示す斜視図。
【図25】図24の注入部材の一部を拡大して示す図。
【図26】パッドと皮下組織に挿入される皮下注射針とを有した注入部材の他の実施形態を示す断面図。
【図27】吸引部材を有したハンドピースを示す図。
【図28】治療する患者の表皮をいくつかの針が貫通している図27のハンドピースを示す図。
【図29】少なくとも一つのばねを有したハンドピースの斜視図。
【図30】図29のハンドピースを第1の状態で示す斜視図。
【図31】図29のハンドピースを第2の状態で示す斜視図。
【図32】いくつかの針が患者の肌を通って展開されている注入部材の実施形態を模式的に示す断面図。
【図33】周辺の針が患者の肌を通って展開されている注入部材の実施形態を模式的に示す断面図。
【図34】中央の針が患者の肌を通って展開されている注入部材の実施形態を模式的に示す断面図。
【図35】扇形に拡がった針の配列を示す斜視図。
【図36】治療する皮下組織の一部に向かって前進する針を微小な泡溶液と共に模式的に示す断面図。
【図37】図36の皮下組織内に前進した針を模式的に示す断面図。
【図38】図36の治療する皮下組織内に注入された微小な泡溶液を模式的に示す断面図。
【図39】表面の皮下脂肪層に配設された微小な泡を残して図36の皮下組織から引き抜かれた針を模式的に示す断面図。
【図40】表面の皮下脂肪層に配設された微小な泡のキャビテーションと脂肪およびセプタムの崩壊を示す、図36の皮下組織への超音波の印加を模式的に示す断面図。
【図41】2つの異なる振幅の超音波を用いて皮下組織を治療する方法のアルゴリズムを示すグラフ。
【図42】皮下組織の治療方法を示す図。
【図43】皮下組織の治療方法を示す図。
【図44】皮下組織の治療方法を示す図。
【図45】皮下組織の治療方法を示す図。
【図46】皮下組織の治療方法を示す図。
【図47】皮下組織の治療方法を示す図。
【図48】皮下組織の治療方法を示す図。
【図49】皮下組織の治療方法を示す図。
【図50】皮下組織の治療方法を示す図。
【図51】皮下組織の治療方法を示す図。
【図52】皮下組織の治療方法を示す図。
【図53】皮下組織の治療方法を示す図。
【図54】皮下組織の治療方法を示す図。
【図55】皮下組織の治療方法を示す図。
【図56】皮下組織の治療方法を示す図。
【図57】皮下組織の治療方法を示す図。
【図58】皮下組織の治療方法を示す図。
【図59】例示的な治療アルゴリズムのフローチャート。
【図60A】同心の管腔を有している針の長手方向の断面図。
【図60B】同心の管腔を有している針の水平断面図。
【図60C】並んでいる管腔を有した針の長手方向の断面図。
【図60D】並んでいる管腔を有した針の水平断面図。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年9月7日に出願された米国仮特許出願第60/715,398号「皮下構造を崩壊させるシステム及び方法」に基づく優先権を主張する。なお、この参照によってその内容の全体が本願明細書に組み込まれるものとする。
本発明は、全般的に、生物学的に破壊あるいは崩壊させる組織に対し外部から印加するエネルギーの使用に関する。より詳しくは、本発明は、生物学的な組織および細胞の破壊あるいは崩壊を生じさせる音波の使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、哺乳類の身体の皮下構造の治療、例えば過剰な脂肪組織、脂肪沈澱、腫瘍、セルライトおよび瘢痕化といった疾患の治療のために、溶液が浸透した組織への超音波の印加を含む方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
女性型の脂肪栄養障害は、皮膚の表面(肌)の組織分布の変化、あるいは皮下のある領域において増大した流体保持力あるいは脂肪組織の増殖によって生じる陥凹形成効果につながる、皮下組織の限局性の代謝異常である。このような状態は、一般にセルライトとして公知であるが、思春期後の女性の90%およびいくらかの男性に影響を及ぼす。セルライトは一般に尻、臀部および脚部に出現するが、一般的に認識されているように必ずしも太りすぎによって生じるというわけではない。セルライトは、表皮および真皮層の下にある皮下レベルの組織に形成される。この領域において、脂肪細胞は、セプタムと呼ばれている結合組織のバンドによって取り囲まれた室の内部に配置される。水分が保持されると、これらの線維性セプタムによって定められる周辺部の内側に保持されている脂肪細胞が膨張し、かつセプタムおよび取り囲んでいる結合組織を伸張させる。さらにまた、重量増加による脂肪細胞の拡大もまたセプタムを伸張させ得る。最終的には、この結合組織が収縮しかつ硬化(硬化症)して柔軟性を持たない長さで肌を保持する一方、セプタム間の室が重量の増加および水分の増加によって膨張し続ける。このことは肌の領域が引き下げられることに帰着するが、その一方で他の部分が外側に膨張するので、皮膚表面上につぶつぶのある『ゆず肌』あるいは『カテージチーズ』のような外観に帰着する。
【0003】
肥満はセルライトの根本的な原因であるとは考えられないけれども、その領域における脂肪細胞の数の増大により、それは間違いなくセルライト領域における陥凹状の外観を悪化させる。深部の脂肪および解剖学的組織のより大きな領域を目標とする脂肪吸引のような従来の脂肪摘出技術は、時にはセルライトの外観を悪化させることがある。皮下の脂肪ポケットが残存するとともに、その領域の下方に横たわっている塊(深部の脂肪)の喪失によって目立つことになるからである。脂肪吸引を何度実行しても、患者はなお残存しているセルライトのような肌の凹凸の治療を要求する。
【0004】
セルライトのような肌の凹凸を治療するための様々なアプローチ、および不必要な脂肪組織の除去が提案されてきた。例えば、様々な局所的な薬剤の付加に加えた、吸引とマッサージの組合せあるいは吸引、マッサージおよびエネルギの付加によって患部に機械的なマッサージを提供する方法および装置が現在は利用可能である。1950年代に開発されたメソセラピーは、スポーツ傷害から慢性の痛みにおよぶ疾病のために肌を介して様々な治療溶液を注入するものであり、しわおよびセルライトを治療するための美容整形手技としてヨーロッパにおいて広く用いられてきた。この治療は、アミノフィリン、ヒアルロン酸、ノボカイン、植物エキスおよび他のビタミンといった様々な薬剤の肌を介しての注入あるいは移入を含み、血行および脂肪酸化の可能性の増大をもたらす。Acthyderm(Tumwood International、オンタリオ、カナダ)と名付けられた治療は、ビタミン、坑繊維化薬、脂肪分解薬(lypolitics)、抗炎症剤といった様々なメソセラピー薬剤の塗布に続いて、真皮に小さな経絡を開けるために角質層を電気穿孔するローラシステムを用いる。
【0005】
リンパの排液を改善するマッサージ技術が1930年代の初期に試みられた。"Endermologie"装置(LPG Systems、フランス)、"Synergie"装置(Dynatronics、ソルトレークシティ、ユタ州)および"Silklight"装置(Lumenis、テルアビブ、イスラエル)のような機械的なマッサージ装置あるいはプレソテラピーもまた開発されてきたが、これらの全てが吸引および機械的なローラによる皮下マッサージを用いるものである。他のアプローチは様々なエネルギー源を含んでいるが、Cynosureの"TriActive"装置(Cynosure、ウェストフォード、マサチューセッツ州)は機械的なマッサージに加えて半導体レーザのパルスを用いるし、"Cellulux"装置(Palomar Medical, Burlington, マサチューセッツ州)は冷却されたチラーを介して目標とする皮下脂肪組織に赤外光を放射する。"VelaSmooth"システム(Syneron, Inc., Yokneam Illit、イスラエル)は、脂肪組織の代謝を増大させる吸引と共に双極性の高周波エネルギーを用いる。また、"Thermacool"装置(Thermage, Inc., Hayward, カリフォルニア州)は、皮下の線維性セプタムを縮小させてしわおよび他の肌欠陥を治療するために高周波エネルギーを用いる。いくつかの針の組を用いて低周波割込み電磁場を印加することにより循環の排液を助ける、脂肪電気泳動のような他のエネルギベースの治療法もまた開発されてきた。同様に"Dermosonic"装置(Symedex Medical、ミネアポリス、ミネソタ州)においては、保持された流体および毒素の再吸収および排液を促進するために無侵襲性の超音波が用いられる。
【0006】
瘢痕化および陥凹形成といった肌の凹凸の治療における他のアプローチは、サブシジョンと呼ばれる技術である。この技術は、陥凹形成あるいは瘢痕化の領域において比較的大きい寸法の針を皮膚下に挿入し、次いで肌の下において機械的に針を操作して皮下領域の線維性セプタムをバラバラにする。サブシジョンの少なくとも一つの公知の方法において、目標領域に局所麻酔薬を注入し、18サイズの針を皮膚表面の10〜20ミリメートル下方に挿入する。次いで、針を表皮に平行に案内して肌の下に剥離平面を作り出し、陥凹形成あるいは瘢痕化を生じさせている締め付けられたセプタムを殆ど完全に引き裂き、あるいは「自由に引き上げる」。それから、出血を制御するために圧力を負荷し、次いで手技に続けて圧縮布を使用する。いくらかの患者には臨床的な効果がある反面、痛み、挫傷、出血および瘢痕化に帰着することもあり得る。公知の技術もまた、サブシジョンのための横方向に展開された切断機構および超音波で援助されたサブシジョン技術を用いる技術を記載している。
【0007】
脂肪吸引、腫脹性脂肪の吸引、リポローシス(lypolosis)として公知の技術は、身体皮下および深い脂肪領域の脂肪組織を目標としている。これらの技術はまた、脂肪細胞を崩壊させてから取り除くこと、および身体の免疫/リンパシステムによる再吸収のためにそれらを残すことを含む。従来の脂肪吸引は、取り除かれる脂肪の部位に配置される外科的なカニューレの使用、流体の注入および脂肪組織をバラバラにするカニューレの機械的な動き、崩壊させた脂肪組織を患者から直接吸引するための吸入を含む。
【0008】
"Lysonix"システム(Mentor Corporation、サンタバーバラ、カリフォルニア州)は、(目標部位の組織の空洞化によって)組織崩壊を援助するために、吸引カニューレのハンドピース上にある超音波振動子を用いる。Liposonix (Bothell,ワシントン州)および、Ultrashape(テルアビブ、イスラエル)は、脂肪組織を非侵襲的に破壊するために焦点を合わせた超音波を用いる。加えて、脂肪組織を破壊するために低温冷却することが提案されてきた。腫脹性の脂肪吸引として公知の従来の脂肪吸引技術の変形例は1985年に導入されたが、現在では米国における標準的な治療であると考えられている。それは、吸引カニューレによる機械的な崩壊および除去の前における、目標領域への腫脹性の流体の注入を伴う。この流体は、機械的な崩壊に伴う痛みの緩和を助けるとともに、組織を膨脹させて機械的な除去の作用を受けやすくする。リドカインのような局所麻酔薬、エピネフリン、食塩水、カリウム等の血管収縮剤を含む様々な組合せの流体を腫脹性の溶液として用いることができる。そのようなアプローチの利点は、以下の論文に詳述されている。"Laboratory and Histopathologic Comparative Study of Internal Ultrasound- Assisted Lipoplasty and Tumescent Lipoplasty" Plastic and Reconstructive Surgery, Sept. 15, (2002) 110:4, 1158-1164,および"When One Liter Does Not Equal 1000 Milliliters: Implications for the Tumescent Technique" Dermatol. Surg. (2000) 26:1024-1028、なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に明白に組み込まれるものとする。
【0009】
皮膚科的クリーム、化粧水、ビタミンおよびハーブサプリメントを用いてセルライトを治療する様々な他のアプローチもまた提案されてきた。個人的な温泉場およびサロンは、身体のこすり洗い、圧覚点マッサージを含むセルライトマッサージ治療を提供するが、植物性揮発油、海草、トクサ、クレマチスおよびツタのような植物化学種から抽出されたハーブ製品の使用もまた提案されてきた。多数の治療が存在するけれども、それらの殆どは肌の凹凸に対して永続的な効果を提供しないし、いくつかは(脂肪吸引が瘢痕化あるいはセルライトのより顕著な外観を生じさせるように)一つの治療が他のものを悪化させる。セルライトのための他の治療は、その採用を制限するマイナスの副作用を有している。
【0010】
医学的な超音波装置および方法には、一般的に2つの異なるタイプがある。従来技術において周知の医学的な超音波発生装置の一つのタイプは、組織を治療するために、例えば腫瘍の破壊のために、強く焦点を合わせた超音波あるいは高い音圧の超音波を提供する。高い強度あるいは高い音圧の超音波は、直接的な組織破壊を提供することができる。高い強度あるいは高い音圧の超音波は、最も一般的には、発生させた音波のエネルギーを組織の比較的小さな病巣に集中させるために、一点に焦点合わせされる。しかしながら、超音波治療の他のタイプは、超音波の強度が弱く集中も弱いタイプであり、画像診断および物理療法の用途に用いられる。弱い音圧の超音波は、一般的に、例えば心臓の画像診断および胎児の画像診断のために用いられる。弱い音圧の超音波は、物理療法の用途において、組織を崩壊させることなしに病んでいる組織のために用いることができる。弱い音圧の超音波は、画像診断のための出力範囲を用いるが、一般的に、ある種の促進剤の非存在下で限られた時間に用いるときには、重大な組織の崩壊を全く生じさせない。
【0011】
皮下組織を直接的に崩壊させるために高い強度の焦点合わせされた超音波を使用する方法および装置は、公知の技術において説明されてきた。そのような技術は、身体内部の組織に焦点合わせした高い強度の超音波を用い、それによって細胞に局部的な破壊あるいは損傷を生じさせる。高い強度の超音波の焦点合せは、例えば、凹面トランスデューサあるいは音響レンズを用いて達成することができる。脂肪を崩壊させるための高い強度の焦点合わせされた超音波の使用は、時には脂肪吸引による脂肪の除去と組み合わせられるが、公知の従来技術において説明されてきた。高い強度の焦点合わせされた超音波のそのような使用は、弱い音圧の超音波から区別されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したことを考慮すると、セルライトのような肌の凹凸を治療するための最小限に侵襲性のあるいは無侵襲性の方法および装置を提供すること、および顔面、首、腕、脚部、大腿、臀部、胸部、腹部および他の目標領域のような人体の部位に継続する美的な結果を提供することが望ましい。また、肌の凹凸を治療するための、従来技術を改良して侵襲性がより少なくかつ副作用の少ない方法および装置を提供することが望ましい。
【0013】
これにより、皮下組織を治療するために低い強度の超音波を用いる装置および方法の必要性が当業者によって認められてきた。診断用超音波の出力領域における低い強度の超音波の使用は、安全に使用することができ、副作用がより少なく、より少ない訓練で使用することができる。本発明は、これらのおよび他の必要性を実現させる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡潔に概説すると、本発明は、生物学的な組織を治療するための新しく改善された装置および方法を提供する。本発明は、微小な泡の気体を含む溶液が浸透した組織への弱い音響出力の超音波の照射を提供する。
【0015】
微小な泡は圧縮可能であり、超音波の場において交互に収縮しかつ膨張する。これらの膨張および収縮は、弱い超音波の圧力下では一般的に等しく対称であり得る。この挙動は、この分野の当業者によって適度な振動と呼ばれる。超音波の駆動圧力が増大すると、例えば収縮よりも大きな泡の膨張を伴う、より複雑な現象が発生する。さらに、迅速な崩壊に続いて比較的低速な膨張がある。この挙動は、当業者によって強い崩壊と呼ばれる。それは、調和的な信号の生成を伴う。適度な振動から強い崩壊への移行は突然であり、微小な泡は内側に破裂して微小な泡に近接している組織にエネルギーを放出する。超音波にさらされたときの微小な泡の内破は、本明細書においてはキャビテーションと称され、皮下におけるキャビテーションの生物学効果を生じさせる一つの要因である。本発明は、皮下組織を崩壊させるために微小な泡のキャビテーション効果を用いる。皮下におけるキャビテーションの生物学的な効果は、例えば微小な泡のキャビテーション効果を含むが、例えばセルライトおよび局所性の脂肪の沈澱を治療するべく、表面あるいはまた深部の脂肪あるいはまたセプタムを崩壊させるためにも有利に用いられる。
【0016】
キャビテーションは、外来性の微小な泡を注入することなく、高い強度の合焦された超音波(高密度焦点式超音波)(HIFU)を用いて組織内に誘起させることができる。しかしながら、HIFUは、組織にかなりの量の熱および温熱損傷を生じさせるために不都合である。超音波で強化される温熱切除の場合には、標的組織は摂氏100度を越えて加熱され、細胞間および細胞外の流体は沸騰して蒸気を生じさせる。
【0017】
しかしながら、組織崩壊レベルに組織を加熱することなく組織を崩壊させかつ組織を崩壊させるために超音波を用いることもまた可能である。皮膚および関連する構造(神経、毛嚢、血管)に対する温熱損傷のリスクを取り除くために、本発明の一実施形態は、有利に、外因性の微小な泡を標的組織に浸透させるとともに、浸透させた治療組織に弱い音圧の超音波を印加して泡を内破させ、組織を直接的に温熱損傷させることなしに標的組織を破壊する。弱い音圧の超音波は組織をいくらか加熱するけれども、直接的な組織崩壊を生じさせあるいは崩壊を強化するほどには組織を十分に加熱しない。
【0018】
外因性の微小な泡は、今日の物理療法および診断用超音波機器の範囲の超音波信号の存在下で内破する。そのような商業的に入手可能な超音波機器は、Mettler Electronics Corp.(アナハイム、カリフォルニア州)から入手可能なSonicator 730である。このSonicator 730は、1.0MHzおよび3.3MHzの治療用超音波ユニットであり、最高で4つのアプリケータが付属し、かつ連続あるいはパルスモードで作動する。Sonicator 730は、全てのアプリケータによって2.2W/平方センチメートルの最大強度を有する。商業的に入手可能な弱い音圧の超音波画像診断機器の他の実例は、Siemens, AG(ミュンヘン、ドイツおよびMalvem、ペンシルバニア州、米国)から入手可能なAcuson AspenおよびAcuson Sequoiaである。弱い音圧の超音波機器のさらなる実例は、G. Heinemann Ultraschall(ドイツ)から入手可能なSonoporatorである。標的とする組織やサイズおよび外因性の溶液の構成に応じて、パルスエネルギー、連続する波動エネルギー、あるいは振動数もしくは振幅が変化するエネルギーを治療領域に印加することが有益である。本発明の少なくとも一つの態様は、外因性の気体を含んでいる溶液を音波あるいは超音波に曝すことを含む。
【0019】
直接的な注入および超音波への暴露によって組織内に浸透する微小な泡は、キャビテーションおよび皮下におけるキャビテーションの生物学効果による組織崩壊の核としての役割を果たす。これらの微小な泡は、本願明細書の他の部分でより詳細に説明するように、異なる形で存在することができる。本発明は、皮下組織を破壊するために、微小な泡のキャビテーション効果を活用する。微小な泡のキャビテーションは、例えばセルライトおよび局所性の脂肪沈澱を治療するための、表面あるいはまた深部の脂肪もしくはセプタムの崩壊に有益である。
【0020】
本発明の別の態様においては、目標を定めた組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)の処置は、細胞の腫大を生じさせあるいは細胞内の環境もしくは細胞膜を変化させて印加されるエネルギーの作用を受けやすくし組織を崩壊させるための低張塩水、カリウム、リドカイン、界面活性剤のような促進剤の注入あるいは付加によって、あるいはまた皮下におけるキャビテーションの生物学な効果によって改善される。腫大は、細胞がエネルギーばかりでなくキャビテーションの力をもより受けやすいものとする。本発明のさらに他の態様において、細胞レベルで印加されるエネルギーは、例えば音響穿孔あるいは電気穿孔といった細胞膜の可逆的あるいは不可逆的な変化を生じさせる。
【0021】
本発明の別の態様において、標的とする組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)の崩壊は、微小な泡、攪拌された塩水、商業的に入手可能な超音波造影剤等のような促進剤を注入あるいは付加し、皮下におけるキャビテーションの生物学効果を増大させることによって改良することができる。開示において「標的とする組織」には多くの種類の脂肪あるいは皮下組織を含むことができる。例えば標的とする組織には、脂肪腫、二重あごのような局部的な顔面脂肪の沈澱、および患者の腕、脚部、腰回りおよび臀部に見い出される脂肪の過剰が含まれる。しかしながら、標的とする組織のこれらの実例は限定するためのものではなく、標的とする組織には本発明の方法の適切な標的であるとして臨床医によって決定される他の組織が含まれる。
【0022】
本発明の更なる態様は、リドカイン、エピネフリン、低張塩水、カリウム、撹拌塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体等のような治療促進剤の治療部位への付加と共に、本発明のエネルギーアプローチを用いることにより、セルライトのような肌の凹凸および他の関係する疾患を治療する方法および装置を提供することにある。一つの実施形態において、治療する組織は皮層と深部脂肪層との間に注入を受ける。他の実施例において、治療する組織は、表面的な脂肪層と筋肉層との間に注入を受ける。さらに他の実施形態において、治療する組織は、皮層と筋肉層との間に注入を受ける。
【0023】
本発明によれば、皮下組織を治療するための組立体が提供される。この組立体は、約0.25MHz〜約10MHzの範囲の振動数および10.0MPaより低いピーク負圧を有した音波を生じさせる音波発生装置を含む。本発明の他の態様では、音波発生装置は5.0MPa未満のピーク負圧を有した音波を生じさせる。この組立体は、音波トランスデューサ、ガス供給源、溶液撹拌機、および溶液注入部材を備える。一つの実施形態において、この組立体は、表皮の下方において約1ミリメートル〜約15ミリメートルの組織深さで延びる近いゾーンから、表皮の下方において約15ミリメートル〜約30ミリメートルの組織深さで延びる離れたゾーンへと延びる焦点ゾーンを有した平面トランスデューサを含む。少なくとも一つの実施形態において、この組立体は冷却モジュールを含む。
【0024】
さらに本発明によると、皮下組織を治療する方法が提供される。この方法は、治療する皮下組織に微小な泡を配置することを含む。さらにこの方法は、超音波の供給源を提供すること、 および微小な泡に超音波を印加することを含み、この微小な泡の少なくともいくつかにキャビテーションを生じさせる。皮下におけるキャビテーションの生物学的効果は、少なくともいくつかの組織の崩壊を生じさせるとともに、標的とする領域にある少なくともいくつかの細胞あるいはセプタムを崩壊させる。少なくとも一つの実施形態において、印加される超音波のピーク負圧は10.0MPa(メガパスカル)より低い。少なくとも一つの実施形態において、印加される超音波のピークの負圧は5.0MPa(メガパスカル)より低い。
【0025】
本発明の別の態様においては、皮下組織を崩壊させる方法が提供される。この方法は、微小な泡を含む溶液を皮下組織に浸透させること、診断上の超音波の範囲の音波供給源を提供すること、微小な泡の少なくともにいくつかに診断上の超音波の範囲の音波を印加することを含む。少なくともいくつかの微小な泡の破壊から伝達されるエネルギーは、少なくともいくつかの皮下組織を傷つける。少なくともいくつかの皮下組織の損傷は、皮下組織の少なくともいくつかの細胞の死滅を生じさせる。少なくともいくつかの皮下組織の損傷には、少なくともいくつかの脂肪細胞の損傷が含まれる。皮下組織の少なくともいくつかの損傷には、少なくともいくつかのセプタムの損傷が含まれる。一つの実施形態において、この方法は、微小な泡あるいは気体の作成を含む。この方法は、微小な泡を含んだ溶液を発生させるための装置の提供を含む。一つの実施形態において、注入される溶液は正常組織に対して低張性である。他の一実施形態において、この溶液はパーフルオロカーボンを含み、あるいは溶液はリドカインを含む。少なくとも一つの実施形態において、この溶液は腫脹性の溶液である。
【0026】
本発明の更に別の態様においては、皮下組織を崩壊させる方法が提供される。この方法は、複数の気体を含有した溶液を治療する皮下組織に浸透させることを含む。弱い音圧の超音波の供給源が提供される。この方法は、少なくともいくつかの気体に音波を印加することを含み、音波の供給源から伝達されるエネルギーが少なくともいくつかの気体を破裂させて、少なくともいくつかの皮下組織に崩壊を生じさせる。一つの実施形態においては、少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織は脂肪細胞である。他の一実施形態において、少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織はセプタムである。気体は気泡前駆物質を含むことができる。気体は微小な泡あるいはナノサイズの泡を含むことができる。気体は封入することができる。少なくとも一つの実施形態において、音波は、気体の非存在下で組織の崩壊を生じさせるために必要な音波の振幅より小さい振幅を有する。この方法の一態様においては、少なくともいくつかの気体を内破させあるいは破壊するのに十分な第2のパターンの音波を印加する前に、定められた寸法範囲に気体を調節しあるいは溶液を組織内に分散させるために非キャビテーション性の第1のパターンの音波が印加される。
【0027】
本発明の一態様において、複数の気体を含有している溶液を皮下組織に浸透させる段階、および少なくともいくつかの気体に音波を印加する段階が、皮下組織の少なくとも一つの追加領域において反復される。一つの実施形態において、皮膚の下の様々な深さにおいて組織が治療される。
【0028】
本発明の更なる態様は、生物学的な組織を崩壊させる方法である。この方法は、組織に低張溶液を注入すること、および標的細胞を膨張させるのに充分な時間にわたって組織が溶液に近接してとどまるようにすることを含む。次いで、組織は低出力の超音波に曝され、組織に含まれている複数の細胞が細胞膜の崩壊を被る。一つの実施形態において、組織に超音波を印加する前の約5秒〜5分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。他の実施例においては、組織に超音波を印加する前の約5分〜20分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。他の実施例においては、組織に超音波を印加する前の約20分〜40分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。さらに他の実施形態において、組織に超音波を印加する前の約40分〜60分の間、治療する標的組織内に低張溶液が残留する。
【0029】
本発明の更に他の態様は、皮下組織を崩壊させるための方法である。この方法は、皮下組織に溶液を浸透させることを含む。弱い音圧の超音波の範囲の音波の供給源が提供される。診断上の超音波の範囲の第1の小さい振幅の超音波が、組織内の溶液を分散させるために注入された組織に印加される。次いで、第1の小さい振幅の超音波は打ち切られる。それから、弱い音圧の超音波の範囲の第2の大きい振幅の超音波が組織に印加されるが、この第2の大きな振幅の超音波は、促進剤の非存在下において組織内の細胞を崩壊させるのに十分なエネルギーを有しないが、促進剤の存在下でキャビテーション効果を生じさせるのには充分なものとなっている。
【0030】
本発明の一態様は、皮下組織を治療する方法であって、弱い音圧の超音波の供給源を提供すること、および促進剤を提供することを含む。この方法は、治療する皮下組織に促進剤を配設すること、および皮下組織内の促進剤に低い音圧の超音波を印加することを含み、促進剤から放出されたエネルギーは皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせ、少なくともいくつかの皮下組織が崩壊する。
【0031】
本発明の別の態様は、皮下組織を崩壊させるための方法であって、微小な泡を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させること、および弱い音圧の超音波の出力領域にある焦点合わせされていない音波の供給源を提供することを含む。この方法は、少なくともいくつかの微小な泡に焦点合わせされていない音波を印加することを含み、少なくともいくつかの泡の破壊から伝達されるエネルギーが少なくともいくつかの皮下組織を損傷させる。
【0032】
本発明の更に別の態様は、皮下組織を崩壊させるための方法であって、複数の気体を含有している溶液を皮下組織に浸透させること、および約0.25MHz〜約10MHzの範囲の振動数を有するとともに10.0MPaより低いピーク負圧を有した音波の供給源を提供することを含む。この方法は、少なくともいくつかの気体に音波を印加することを含み、音波の供給源から伝達されたエネルギーが少なくともいくつかの気体を破裂させて、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果および少なくともいくつかの皮下組織の崩壊を生じさせる。
【0033】
本発明の更に別の態様は、生物学的な組織を崩壊させる方法であって、崩壊させる組織に近接して溶液を注入すること、および破壊する組織に近接させて溶液を残留させることを含む。この方法は、弱い音圧の超音波に溶液を曝すことを含み、組織に含まれている複数の細胞は皮下におけるキャビテーションの生物学的効果による細胞溶解を被る。この方法はまた、患者の身体が死滅した細胞を再吸収するようにすることを含む。
【0034】
本発明の更なる態様は、皮下組織を崩壊させるための方法であって、促進剤を含有している溶液を皮下組織に浸透させるとともに、この溶液を皮下組織内に分散させるために、弱い音響圧力の超音波の圧力範囲にある第1の小さい振幅の超音波を印加することを含む。この方法は、弱い音響圧力の超音波の圧力範囲にある第2の大きい振幅の超音波を組織に印加することを含み、第2の大きな振幅の超音波は、組織内の細胞に対する直接的なキャビテーション効果を生じさせるのに充分なパワーは有していないが、溶液にキャビテーションを生じさせるのに充分なパワーは有している。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、添付の例示的な図面を参照しながらなされる本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかとなる。
【0036】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様および利点は、例示的なものであって本発明を限定する意図のない実施形態の図面を参照することによって説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図解のために例として提供される図面を参照すると、本発明の各実施形態が図1〜60に図示されている。
【0038】
本発明は皮下組織を治療するための方法および装置に関する。一つの実施形態において、本発明は、軟組織を治療するための装置を含む。他の実施形態において、本発明は、組織を治療するための方法を含む。一つの実施形態において、本発明は、脂肪細胞およびセプタムを含んでいる皮下脂肪層を治療するための方法および装置を更に含む。一つの実施形態において、本発明は、セルライトを治療するための方法および装置を更に含む。本発明は、セルライトの外観の一時的な減少、あるいはセルライトの恒久的な減少のために有益である。本発明はまた、脂肪吸引の補助的な手段として用いることができる。本発明は、セルライトの外観を一時的に改善するための、皮下への流体の注入および超音波による分散を提供する。本発明はまた、良性新生物、例えば脂肪腫の除去のために有益である。
【0039】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、標的領域の美的な外観を改善するために、コラーゲン、結合組織、脂肪組織(脂肪細胞)等といった皮下の構造(あわせて「標的組織」あるいは「皮下構造」)に目標を定めて崩壊させる方法および装置に向けられている。この標的領域は、人体において改善が望まれる、顔面、あご、首、胸部、乳房、腕、胴、腹部(骨盤領域を含む)、大腿、臀部、膝および脚部を含む任意の表面あるいは輪郭から成る。標的組織には、その領域の結合組織あるいはセプタム、または皮下およびより深い脂肪の沈澱あるいは層のような、その下に横たわっていて望ましくない身体の輪郭を悪化させ得る組織が含まれる。肌の凹凸は、セルライトや瘢痕化、あるいは首、あご、乳房、尻、腹部、腕等の領域における脂肪の沈澱あるいは過剰な脂肪といった、外側の様相に対する人の満足感を減少させる状態を指す。
【0040】
最初に図1〜図3を参照すると、正常な皮下組織100の領域の一部の断面が示されているが、表皮102、真皮104、皮下脂肪106、線維性のセプタム108および深部脂肪層110が含まれている。この皮下組織には、血管分布、微小循環およびリンパ排液も含まれている。真皮は、実質的に縦のセプタム(膠原線維)を介して皮層に付着した脂肪皮下結合組織に接続されている。皮下脂肪106は、セプタムの繊維によって切り離されて脂肪組織(脂肪)の室112に区画されている。これらの室は、増加した脂肪細胞の存在あるいは保持されている流体による膨張に起因してその大きさが増大し得る。室の寸法の増加はセプタムに張力を生じさせるとともに、最終的に脂肪領域が膨張すると表皮の表面の陥凹が形成され、セプタムは張力下において厚くなる。次いで微小循環およびリンパ排液が弱まり、さらには局部的な代謝性の症状を悪化させる。図1〜図3は、肌の凹凸を呈していない全く通常の肌の断面を示している。図4に示されているように、皮下脂肪層は膨張してセプタムに締め付けられ、不規則な皮膚表面の特徴に結びついている。
【0041】
なおも図1〜図4を参照すると、蓄えられたあるいは深部脂肪層110は、皮下脂肪106の下方に配設されて肌の不規則性の一因となる。深部脂肪層もまた、皮下組織の一つとしてここに含まれているが、本発明の少なくとも一つの実施形態によって治療することができる。本発明の一実施形態において、皮下組織の治療には皮下組織100のエネルギー支援サブシジョンが含まれる。他の一実施形態において、皮下組織の治療には線維性セプタム108の崩壊が含まれる。本発明のさらに他の実施形態において、皮下組織の治療には、陥凹形成の一因となっている皮膚表面102上の外側への圧力を少なくするための皮下脂肪細胞112の崩壊が含まれる。本発明の他のひとつの実施形態において、皮下組織の治療には、全体的な表面輪郭のための深部脂肪層110の崩壊が含まれる。
【0042】
本発明の目的を達成するためには、(可逆的あるいはまた不可逆的な)電気穿孔、パルス電界、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギ等を含む様々なエネルギー形態を用いて皮下構造の崩壊を達成する方法および装置を用いることが望ましい。本発明の一実施形態において、エネルギー形態は音波である。少なくとも一つの実施形態において、エネルギー形態は超音波である。超音波を含む音波は、媒質、例えば溶液あるいは生物学的な組織を介して伝達されるエネルギーである。本発明はまた、気体、例えば微小な泡を含有する溶液を含むことができる。
【0043】
医学的な超音波には、2つの一般的な出力カテゴリーがある。医学的な超音波の一つのカテゴリは高い音圧の超音波である。医療的な超音波の他のカテゴリは低い音圧の超音波である。
【0044】
音響出力は、当業者によってさまざまな方法で表現される。組織上における音波の音響出力を評価する一つの方法はメカニカルインデックスである。このメカニカルインデックス(MI)は、診断上の超音波システムの音響出力の基準であって、均一な媒質の中で伝播する超音波のピーク負圧あるいは希薄部圧力を伝達された超音波パルスの中心周波数の二乗根によって除したものと定義される。均一の媒質は0.3dB/cm/MHz(超音波周波数によって除した減衰係数)の減衰を有すると仮定される。MIは、泡破壊の可能性を含む、超音波と微小な泡との相互作用を定量することができる。この分野の当業者のいくらかは、泡破壊がMIの増加を伴うことを示唆した。メカニカルインデックス(MI)は、キャビテーションによる生物学的効果の発生の可能性の大まかなガイドを提供することが意図されている。高い音圧の超音波システムのMIは、一般的に10より大きい。低い音波の圧力システムのMIは、一般的に5より低い。例えば、診断上の超音波システムは、メカニカルインデックスが1.9を越えないように法律で規制されている。
【0045】
当業者によって用いられる他の測定値は、空間的ピークピーク平均強度(Isppa)である。超音波ビームの強度は、その断面の中央において周囲よりも大きい。同様に、強度は、超音波エネルギーの与得られたパルスにより変化する。Isppaは、強度がパルス持続時間を通じて最大平均値となる位置で測定される。高い音圧あるいはHIFUの印加におけるIsppaは、約1500W/平方センチメートルから9000W/平方センチメートルにわたる。診断用の超音波装置のIsppaは、一般的に、例えば700W/平方センチメートルより低い。
【0046】
超音波を特徴づけることができるさらに他の方法は、ピーク負圧の振幅である。高い音圧あるいはHIFUの印加は、10MPaを上回るピーク振幅を有した波を用いる。低い音圧の超音波は、0.01〜5.0MPaのピーク負圧を一般的に有する。診断用超音波装置は、例えば3.0MPaより低いピーク振幅を一般的に有する。
【0047】
高い音圧および低い音圧の超音波システムは、一般的に、250kHz〜10.0MHzの周波数範囲で作動する。画像診断法は、典型的に約1.0MHz〜約5.0MHzの振動数を使用する。一つの公知の弱い音圧の超音波プローブは7.5MHzと同程度の振動数を有した超音波を生じさせる。いくつかの弱い音圧の超音波プローブは、10.0MHzと同程度の超音波振動数を生じさせる。物理療法の超音波システムは、一般的に1.0MHzあるいは3.3MHzの振動数で作動する。
【0048】
高音圧超音波ないし高密度焦点式超音波(図5および図8〜図9)は、組織破壊、例えば直接的な腫瘍の破壊のために用いられてきた。、高密度焦点式超音波は、診断目的のためにではなく、組織破壊のために一般的に用いられている。高音圧超音波を用いる高密度焦点式超音波は、発生させた音波のエネルギーを組織の比較的小さな病巣に集中させるために一点に合焦される。
【0049】
本明細書において高音圧超音波と称される高密度焦点式超音波(HIFU)は、2つの異なる機構によって組織切除を生じさせることは良く知られている。配列の焦点位置に配置された組織は、組織の温熱による壊死を生じさせるために、生理学的な温度を上回る温度に加熱することができる。さらにまた、除去するゾーンは、キャビテーションとして公知の現象を用いることによって増加させることができる。高密度焦点式超音波(HIFU)は、外因性の促進剤、例えば微小な泡を含んでいる外因性の溶液の非存在下においてもキャビテーションを生じさせることができる。
【0050】
弱音圧超音波は一般的に、組織に対して低い強度の焦点合わせされていない超音波(図6)を提供するために用いられる。弱音圧超音波は一般的に、平面トランスデューサによって患者に伝達される。低い強度の焦点合わせされていない超音波は、この分野の当業者により焦点ゾーン114、近いゾーン116、および遠いゾーン118(図7)を含むものとして説明される。弱音圧超音波は、例えば心臓画像診断および胎児監視といった医療の分野において容易に入手可能である。診断上の超音波システムおよび物理療法システムの両方が、弱音圧システムの範囲に納まる。一般的に、弱音圧超音波システムを用いる焦点合わせされていない超音波は、臨床医によって組織破壊のためには用いられてこなかった。本発明の一実施形態において使用する超音波は、弱音圧超音波である。
【0051】
キャビテーションは、流体の圧力変化から生じる物理的な現象である。キャビテーションは、高密度焦点式超音波(HIFU)すなわち高音圧超音波を組織に印加するときに、外因性の微小な泡溶液の非存在下においても発生し得る。キャビテーションは、高密度焦点式超音波を人体の組織、例えば血液、脳および前立腺組織に直接的に印加している間に注目されてきた。キャビテーションは、流体のあるレベルに到達した圧力に起因する、流体内における微小な泡の形成および崩壊を含む。流体内においては、超音波が高い出力で導入されると、流体が蒸気圧レベルに到達した結果としてキャビテーション泡の形成が誘発されるポイントに波の負圧部分が達する。したがって、HIFUあるいは高い音圧の超音波にさらされる組織内に内因性の微小な泡を形成することができる。しかしながら、組織にかなりの熱量および温熱損傷を生じさせるので、HIFUは不都合である。
【0052】
本願明細書において用いる促進剤という用語は、超音波による組織上での破壊的なキャビテーションの生物学効果を高める、外因性のガス、液体、混合物、溶液、化学薬品のうちの少なくとも一つを指す。促進剤の一つの実例は、促進溶液である。一つの実施形態において、促進溶液は、外因性の気体、例えば微小な泡を含んでいる。他の促進剤は、本願明細書において更に詳細に説明される。
【0053】
ここで図10を詳細に参照すると、「N」はその標準状態にある微小な泡であり、「C」は圧縮状態にある微小な泡であり、かつ「E」は膨張した状態の微小な泡である。破線「D」は、正常な状態「N」にある微小な泡の直径を示している。図11は、増加レベルのピーク負圧にさらされて振動している微小な泡の列を示している。内側の破線「Mc」は最大圧縮を示し、実線「N」は標準状態を示し、外側の破線「Me」は最大膨張を示している。
【0054】
微小な泡(内因性および外因性の両方)は圧縮可能であり、超音波の場において交互に収縮、膨張する。これらの膨張および収縮は、弱い超音波圧力においては一般的に等しくかつ対称である。この挙動は、この分野の当業者によって適度な振動(moderately oscillating)と呼ばれる。超音波の駆動圧力が増加すると、例えば泡の膨張が収縮よりも大きいといった、より複雑な現象が発生する。さらにまた、急速な崩壊に続いて比較的低速な膨張があり得る。この挙動は、当業者によって強い崩壊(strongly collapsing)と呼ばれる。それは、調波信号の生成を伴う。適度な振動から強い崩壊への移行は突然であり、微小な泡は内側に破裂して微小な泡に近接している組織にエネルギーを放出する。泡が超音波に曝されたときに泡の内破によって放出されるエネルギーは、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせる一つの要因である。
【0055】
しかしながら、いくつかの作用機構は、音波によるキャビテーションの生物学的効果が組織上において観測される現象によるものと考えられてきた。いくつかの細胞は、キャビテーションの間における機械的なエネルギーの放出によって直接的に損傷を受け得る。さらに細胞の損傷は、介在性の圧力強度の局部的な差によって生じ得る。泡が内側に破裂するときに低圧の領域が形成され、隣接する細胞膜の間を横切る間質液のマイクロ流動を生じさせる。このマイクロ流動によって細胞膜に与えられる強い剪断応力が細胞の損傷を生じさせることが示された。細胞を損傷させるさらなる機構は、音響穿孔の現象、あるいは前述したマイクロ流動の結果としての細胞膜の一時的な孔の形成に関連している。ある許容限界の下では、これらの孔が再び封止し、細胞は回復することができる(この現象は、生物工学の用途において標的細胞への遺伝子および巨大分子のトランスフェクションのために利用される)。しかしながら、前述したある許容限界を越えると、膜の修復は不可能であり、最終的な細胞の死滅あるいは細胞の自滅が発生し得る。この効果は、音響穿孔が細胞内環境において実施されると増強され、細胞代謝性のアンバランス、例えば高度に低張性な細胞内環境を促進する。何人かの著者は、泡の並進運動に関連する乱れが細胞の溶解を生じさせる証拠があることに注目してきた。さらにまた、それによってキャビテーションが細胞に影響を及ぼす、典型的には細胞死に帰着する、化学的なあるいは他の物理的なメカニズムが存在する。当業者の一部は、キャビテーションの生物学的効果が、生物学的に能動性の音響化学物質の発生および紫外線(UV)および軟X線の放射によるものと考えてきた。
【0056】
しかしながら、本発明によれば、超音波によって組織を直接的に加熱することなく、組織の崩壊および組織の切除のためにキャビテーションの生物学的効果を利用することもまた可能である。皮膚および関連する構造(神経、毛嚢、血管)における温熱損傷のリスクを取り除くために、本発明は、標的組織に外因性の微小な泡を有利に導入するとともに、低出力の超音波エネルギを用いて微小な泡を内破させ、治療する組織を直接的に温熱損傷させるのに十分な熱の発生なしに、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果によって標的組織を崩壊させる。直接的な注入によって組織内に浸透した微小な泡はまた、キャビテーションおよび組織崩壊のための核としての役割を果たす。これらの微小な泡は、本願明細書の他の部分においてより詳細に説明するように、異なる形態で存在することができる。本発明は、重大な熱影響なしに皮下組織を崩壊させるために、微小な泡によるキャビテーショのン生物学的効果を活用する。本発明によって生じる皮下におけるキャビテーションの生物学的効果は、例えばセルライトおよび局所的な脂肪の沈澱の治療において、表面のあるいはまた深部の脂肪もしくはセプタムの破壊のために有益である。
【0057】
外因性の気体、および微小な泡や乾燥したナノサイズの泡を含む気体の利用は、非熱的な除去技術であることに加えていくつかの利点を有する。商業的に入手可能な物理療法の超音波機器および診断用の超音波機器が生じさせる範囲の超音波は、本発明の好ましい実施態様において提供される。これらの低出力の機器の安全性、より具体的には、それらが生じさせる超音波の安全性は確立している。一般に、これらの低出力の超音波機器は、微小な泡がある場合にだけ破壊的なキャビテーション効果を生じさせる。キャビテーションによる生物学的効果は、超音波造影剤があるときに、超音波にさらされた動物に発生するという実験的な証拠がある(Miller and Gies 1998, Skyba et al. 1998)。超音波に曝されたときの微小な泡の内破は、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせるための一つの要因である。
【0058】
ここで図12〜図15を参照すると、本発明のいくつかの様々な実施形態は、音波を用いて皮下組織を治療するための組立体あるいは装置200を含んている。一つの実施形態において、この組立体200は、音波システム、例えば電子機器を駆動するように構成された超音波発生装置202および患者の肌を介して超音波を接続するように構成された経皮的なトランスデューサ204を有した超音波システムを含む。一つの実施形態において、この組立体200は、溶液210を攪拌しあるいはまた混合するように構成された撹拌システム208、および皮下に溶液を注入するように構成された注入部材214をさらに備える。少なくとも一つの実施形態において、この組立体は、従来技術において周知の様々な溶液を提供する。この溶液には、例えば塩水、生理食塩水、低張塩水、低張溶液、高張溶液、リドカイン、エピネフリン、腫脹性の溶液、あるいはまた微小な泡溶液が含まれる。
【0059】
音波発生装置202および音波トランスデューサ204は、超音波発生装置および超音波振動子を含むことができる。少なくとも一つの実施形態におい、この装置は、気体の供給源206を更に備える。さらに一つの追加の実施形態において、この装置は、気体212、例えば微小な泡あるいは他の促進剤を含む溶液210を提供するための溶液撹拌機208を更に備える。少なくとも一つの実施形態において、本発明は、溶液注入部材214を更に備える。
【0060】
少なくとも一つの実施形態において、この組立体はまた、溶液210を格納するための容器220、例えばその内部に溶液を格納するためのリザーバを備える。このリザーバは、従来技術において周知の点滴バッグとすることができる。一つの実施形態において、この組立体はまた気体の供給源206を備える。この気体の供給源は、室内空気あるいは様々な他の生体適合性の気体とすることができる。少なくとも一つの実施形態において、気体の供給源は、容器に封じ込められた気体あるいは気体のタンクである。少なくとも一つの実施形態において、気体の供給源は、大気と流体的に連通する開口を具備した撹拌機によって装置内に取り込まれる大気の室内空気である。一つの実施形態において、溶液および気体212は撹拌機208に流入し、気体212を含む注入可能な溶液を生じさせる。気体を含んでいるこの注入可能な溶液は注入部材214へと流れ、治療する組織100内への注入が可能となる。
【0061】
一つの実施形態において、医師が選択された溶液を調製して吊り下げると、組立体200は、前もってプログラムされたあるいはユーザーが定めたアルゴリズムに基づいて混合し、注入し、音波を当てる。このアルゴリズムは、制御装置228にプログラムすることができる。この制御装置は、他の構成部分を含む単一構造の組立体に含めることもできるし、あるいはこの組立体の他の構成部分と連絡するように構成された別個のユニットとすることもできる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はプロセッサおよびメモリーを含む。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はまた、入力手段236、例えば電気スイッチ、ボタン、あるいはキーパッドを含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はまた、出力手段238、例えば従来技術において周知のLEDライト、液晶画面、計器、あるいは他のスクリーンおよび出力表示器を含むことができる。他の実施形態において、入力手段236および出力手段238は制御装置から分離することができるが、制御装置と電気的に通信する。組立体は、最初に撹拌機208の内部で溶液210を混合し撹拌するように構成されている。組立体は、その後、注入部材214を用いて患者に溶液を注入するように構成されている。組立体はまた、トランスデューサ204を用いて注入された組織100に音波を当てるように構成されている。
【0062】
一つの実施形態においては、少なくとも一つの皮下注射針216が溶液注入部材214に配設されている。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は格納式の皮下注射針216によって構成することができる。他の一実施例において、溶液注入部材はパッド232(図24〜図25)と共に構成される。さらに一つの実施形態において、この装置は組織冷却モジュール218をさらに備えることができる。
【0063】
少なくとも一つの実施形態において、音波発生装置202は、弱い音圧の超音波発生装置である。様々な音波発生装置202および音波トランスデューサ204は、周知の技術であって商業的に入手可能である。少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置および超音波振動子は、診断用超音波のために商業的に入手可能なタイプある。少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置および超音波振動子は、物理療法のために商業的に入手可能なタイプである。商業的に入手可能な弱い音圧の超音波機器の一つの実例は、Mettler Electronics Corp.(アナハイム、カリフォルニア州)から入手可能なSonicator 730である。このSonicator 730は、1.0MHzおよび3.3MHzの治療用超音波ユニットであり、最高で4つのアプリケータが付属し、連続あるいはパルスモードで作動する。Sonicator 730は、全てのアプリケータによって2.2W/平方センチメートルの最大強度を有する。商業的に入手可能な弱い音圧の超音波機器の他の実例は、Siemens, AG(ミュンヘン、ドイツおよびMalvem、ペンシルバニア州、米国)から入手可能なAcuson AspenおよびAcuson Sequoiaである。弱い音圧の超音波機器のさらなる実例は、G. Heinemann Ultraschall(ドイツ)から入手可能なSonoporatorである。
【0064】
本発明の一実施形態においては、超音波発生装置202で発生するピーク負圧は10.0MPa未満である。少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置で発生するピーク負圧は5.0MPa未満である。本発明の他の実施形態において、超音波発生装置で発生するピーク負圧は4.0MPa未満である。本発明のさらに他の実施形態において、超音波発生装置で発生するピーク負圧は、3.0MPa未満である。
【0065】
本発明の少なくとも一つの実施形態において、超音波発生装置202のMIは0.01〜5.0の範囲である。本発明の一実施形態において、MIは0.1〜4.0の範囲である。本発明のさらに一つの実施形態において、MIは0.5〜3.0の範囲である。本発明のさらに他の実施形態において、MIは0.7〜2.5の範囲である。
【0066】
本発明の一実施例において、超音波発生装置202は、約100kHz〜約10.0MHzの周波数範囲で作動する。本発明の他の一実施形態において、超音波発生装置は、約250kHz〜約5.0MHzの周波数範囲で作動する。本発明のさらに他の実施形態において、超音波発生装置は、約500kHz〜約3.0MHzの範囲の振動数で作動する。本発明のさらなる実施形態において、超音波発生装置は、約750kHz〜約2.0MHzの周波数範囲で作動する。
【0067】
ここで図12〜図15を参照しつつ図1〜図4を振り返ると、トランスデューサ204は、患者の表皮102を介して超音波を外側から印加するように構成されている。一つの実施形態において、トランスデューサは、超音波エネルギーを皮下組織100に透過させるように構成されている。一実施例において、トランスデューサは、超音波エネルギーを皮下脂肪106に透過させるように構成されている。他の実施例において、トランスデューサは、超音波エネルギーを線維性セプタム108に透過させるように構成されている。さらに他の実施形態において、トランスデューサは、超音波エネルギーをより深い脂肪層110に透過させるように構成されている。少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサは、不十分に焦点合わせされたあるいは焦点合わせされていない超音波を放射する。他の実施形態においては、不十分に焦点合わせされたあるいは焦点わせされていない波が平面トランスデューサによって放射される。このことは、不連続的に焦点合わせされたあるいはある点に焦点合わせされた超音波を放射するHIFUとは対照的である。HIFU波は、半球状のトランスデューサや、トランスデューサの配列、例えば半球状の基体上に配置されたトランスデューサ、あるいは音響レンズの使用によってその波が半球状のトランスデューサをまねるように焦点合わせされた平面トランスデューサから放射される。
【0068】
ここで図16〜図20を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサ204は、多角形状のベース部266を有したハンドピース264に含まれている。一つの実施形態において、ベース部は3〜6の側面を有している。図20を詳しく参照すると、ベース部の多角形の形状は、患者の大きな組織領域における配置および治療に有益である。多角形状のベース部のサイズおよび形状にそれぞれ対応した、患者の表皮102上において隣接する複数の領域は、患者の治療領域の全体にわたって配置することができる。多角形状の各領域は順番に治療することができ、それによって治療領域の全体あるいは一部を効率的に治療する。しかしながら、多角形状に形付けられたハンドピースのベース部の説明は限定的なものであることを意図しておらず、他の実施形態においてはベース部を他の形状、例えば円形、三角形、正方形、多角形、円柱状、球形、あるいはピラミッド状とすることができる。複数の交換可能なハンドピースや、いくつかの様々な形状のベース部を提供することができる。様々に形付けられたベース部は、超音波が患者に対してより効果的に印加される最も良好な接続を、このベース部と患者の肌との間で手に入れるために有益である。
【0069】
少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサ204は患者の表皮102と良好に接続され、患者の内部に通過するときの音波の損失が最小化される。トランスデューサは、従来技術において周知の多くの方法で患者の表皮に接続することができる。一つの実施形態においては、商業的に入手可能な超音波ゲルが、トランスデューサのヘッド部と表皮との間に従来技術において周知のように用いられる。さらに他の実施形態において、音波は、トランスデューサと表皮の間に脱気水を用いて接続される。脱気水の使用は、超音波ゲルに比較すると、患者の不快感を減少させる点において有益である。さらにまた、局所麻酔薬ゲルあるいは従来技術において周知のクリーム、例えば3倍麻酔クリームは、不快感を最小化するために手技の前に患者の肌に塗布することができる。一つの実施形態において、超音波ゲルは局所麻酔薬を含むことができる。局所麻酔薬を使用する場合には、促進溶液の一部としてリドカインを含む必要はない。
【0070】
再び図12〜図15を参照すると、本発明は、少なくとも一つの実施形態において気体212を含んでいる溶液210への混入のための気体の供給源206を備えている。一つの実施形態においては、気体の供給源は室内空気である。室内空気は、システムの一部として格納され、あるいは格納されていない大気の室内空気からシステムが吸引することによって供給することができる。少なくとも一つの実施形態において、気体の供給源は気体のタンクあるいは気体のリザーバである。一つの実施形態においては、気体の供給源は使い捨ての気体カートリッジである。一つの実施形態においては、使い捨ての気体カートリッジはインペラを含むことができる。さらに他の実施形態において、使い捨ての気体カートリッジは加圧気体を含むことができる。一つの実施形態においては、微小な泡を含んだ溶液を作り出すために、気体カートリッジ内の加圧気体が溶液内に放出される。この気体には、酸素、過飽和酸素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、あるいは他の生体適合性の気体を含めることができる。使用できる他の気体には、本願明細書の他の部分で説明されるもの、例えば空気、パーフルオロカーボン、パーフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、オクタフルオロプロパン、ドデカフルオロペンタン、パーフルオロプロパン、六ふっ化硫黄を含む、現在公知である封入されたエコー源性の造影剤に使用する気体を含めることができる。少なくとも一つの実施形態において、泡を含んでいる加圧された溶液が提供される。溶液に圧力が負荷されていることにより、泡は溶液内に溶解している。この溶液が患者の組織内に注入されると、この溶液の圧力は低下するので、気体が溶液から出てきて治療する組織内に微小な泡を形成する。
【0071】
本願明細書に用いる気体の供給源206および気体212には、患者に注入する前には室温で液体であるが、患者に注入された後には生理学的温度でガス状となる微小な泡の前駆物質が含まれる。室温においては液体であるが生理学的温度においてはガス状であるガス前駆物質の実例はメチルアセテートである。さらに、ガス前駆物質は注入前に加圧されていると液体であるが、大気圧下あるいは生理学的な生物組織圧力下では気体となる液体とすることができる。気体のための他の適切な材料は、1998年6月16日に出願されたTankovichへの米国特許第6,302,863号「パーフルオロカーボン腫脹性溶液を介した脂質の除去方法」に開示されている。なお、その内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。促進剤として用いることができる他の医療ガスには、オクタフルオロプロパンあるいはパーフルオロブタンが含まれる。
【0072】
本発明はまた、患者の皮下組織100への皮下注射において生体適合性を有する様々な溶液210を含んでいる。一つの実施形態において、溶液は腫脹性の溶液である。腫脹性の溶液は、局所麻酔の適用をもたらすために特に適合させたものであり、周知の技術である。腫脹性の溶液は、様々な医薬用溶液を含むことができる。腫脹性溶液の一つの実施例は、2%のリドカインを含有した1000mlの生理食塩水、30ml(600mg)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5mg)の重炭酸ナトリウムを含む溶液である。腫脹性溶液の少なくとも一つの他の実施例は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%のリドカイン、1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は、商業的に入手可能である。腫脹性溶液は、治療部位の出血を減少させるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供する。
【0073】
一つの実施形態において、この溶液は生理食塩水である、さらに一つの実施形態において、この溶液は低張溶液である。この低張溶液は、脂肪細胞を、超音波による崩壊の作用をより受けやすいものとする点において有益である。さらに他の実施形態において、この溶液は微小な泡あるいはナノサイズの泡を含む液である。この溶液は、微小な泡を含む溶液を生じさせるために、2つの注射器の間で1回若しくは複数回攪拌される。本願明細書の他の部分で詳細に説明するように、微小な泡あるいはナノサイズの泡を含むいくつかの溶液は商業的に入手可能である。本発明はまた、溶液210を格納するための容器220、例えばその内部に溶液を格納するためのリザーバを備える。腫脹性の溶液あるいはまた低張溶液は、撹拌機208に加えることができる。腫脹性の溶液あるはまた低張溶液は、気体212を含んでいる溶液を提供するために、撹拌機208の内部において気体と混ぜ合わせることができる。
【0074】
本発明によれば、様々な治療促進剤を撹拌機208に追加し、あるいはまた様々な形態のエネルギーの印加と共に治療する組織100に注入される。促進剤は所望する効果にもよるが、その幾つかは以下に詳述される。例えば促進剤は、経皮的にあるいは治療する組織への注入により伝達することができる。治療促進剤には、リドカインのような麻酔薬、界面活性剤、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊された脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイトが含まれる。治療促進剤は、皮下組織への音波の印加の前に、間に、あるいはその後に供給することができる。
【0075】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、混合溶液210を提供するための溶液撹拌機208を含む。溶液は、気体212を含む溶液を生じさせるために気体と共に攪拌することができる。この気体には、本願明細書においてより詳細に議論するように、微小な泡あるいはナノサイズの泡を含めることができる。最も単純な形の気体は室内の空気から作ることができる。従来技術において周知の様々な他の気体、例えば二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、パーフルオロカーボン、パーフルオロブタン、ペルフルオロヘキサン、オクタフルオロプロパン、ドデカフルオロペンタン、パーフルオロプロパンおよび六フッ化硫黄や、例えば温度あるいは圧力の変化によって注入後に気体となる液体もまた撹拌機の溶液に導入することができる。そのような化学薬品の実例には、メチルアセテート、および米国特許第6,302,863号(Tankovich)に記載されている他の薬剤が含まれる。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。本願明細書の他の場所に記載されているように、様々な他の促進剤もまた溶液を混入するための撹拌機内に配設することができる。
【0076】
一つの実施形態においては、溶液210の容器220および気体の供給源206が溶液撹拌機208に接続される。溶液および気体は、例えば1つ若しくは複数のポンプ222(図12および図21〜図23)によって、あるいは重力流れによって溶液撹拌機に供給されて、溶液撹拌機の内部で互いに混合される。気体および促進剤の溶液への流入は制御モジュール228によって制御することができる。他の一つの実施形態において、溶液撹拌機は、互いに接続される2つの注射器と同じくらいに単純なものとすることができる。一つの注射器内の気体あるいは促進剤は、他の注射器内の溶液と混ぜ合わされて注入用の溶液を生じさせる。一つの実施形態においては、泡を再構成する手技の間、溶液を一つの注射器から他の注射器へと1回若しくは複数回再撹拌する。
【0077】
溶液撹拌機208および微小な泡の発生装置は従来技術において公知である。微小な泡の発生装置の実例は、2004年3月11日に出願された米国出願第10/798,876号「必要に応じて泡を発生させる装置、システムおよび方法」に記載されている。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0078】
図21乃〜図23を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、溶液撹拌機208は溶液注入部材214に含まれており、微小な泡はハンドピース264の内側に生じる。ここで図21を詳細に参照すると、一つの実施形態においては、溶液210および気体212はポンプ222によってフィルタ260を介して駆動され、気体を含んでいる溶液は溶液注入部材の内部に生じる。フィルタは、例えば精密ろ過紙あるいはメッシュを含むことができる。一つの実施形態において、フィルタは、例えば繊維、金属、プラスチック、疎水性の焼結プラスチックあるいはガラスから作られた、窓状の小孔のある部材を含むことができる。他の実施例において、溶液210は、追加の気体を導入することなしにフィルタを横切ってポンプ送りされる。フィルタは、乾燥しておりかつ気体に曝されていると、部分的に捕捉された小さなガス空間を多く含んでいる。流れている溶液の循環路内にフィルタが配置されると、部分的に捕捉されたガス空間は流動する溶液内に放出され、捕捉されていたガスに由来するスペースおよび大きさに相当する複数の泡を溶液内に形成する。さらにまた、一つの実施形態において、フィルタは、針216を介して注入される微小な泡のサイズを限定するように構成することができる。
【0079】
ここで図22〜図23を詳しく参照すると、さらに他の実施形態において、撹拌機は少なくとも一つの計量オリフィス262を含む。溶液210および気体212は、少なくとも一つの計量オリフィス262を介して混合され、気体を含んでいる溶液は溶液注入部材214の内側に生じる。一つの実施形態において、気体オリフィスに対する液体オリフィスの比率は、約100:1〜約1000:1の範囲にある。一つの実施形態において、液体の配管は約0.100インチの内径を有し、気体のオリフィス径は約0.001インチである。溶液および気体は1つ若しくは複数の注射針216に近位側において相交わり、気体を含んでいる溶液は1つ若しくは複数の針に入る。一つの実施形態においては、少なくとも一つの針が一つの計量オリフィスから微小な泡を受け入れ、少なくとも一つの他の針が少なくとも一つの他の計量オリフィスから微小な泡を受け入れる。他の実施形態においては、複数の気体オリフィスを一つの液体オリフィスの周辺に配置する。
【0080】
計量オリフィスを介した注入圧力は、いくつかの要因によって左右される。一つの要因はオリフィスの直径である。他の要因は流体および気体の粘度である。他の要因は所望する溶液における泡の比率である。一つの実施形態においては、溶液が注入器に送られる圧力範囲は25psi〜100psiであり、かつ気体がオリフィスを介して送られる圧力範囲は50psi〜125psiである。一つの実施形態において、溶液が注射器に送られる圧力は50psiであり、かつ気体がオリフィスを介して送られる圧力は75psiである。
【0081】
ここで図60A〜図60Dを簡潔に参照すると、一つの実施形態において、気体212は少なくとも一つの針216の遠位端226に形成される。一つの実施形態において、針は少なくとも2つの管腔225を有している。これらの管腔は、並ぶように(図60C〜図60D)あるいは同軸に構成することができる(図60A〜図60B)。少なくとも一つの針の一つの管腔から溶液が押し出され、かつ他の管腔から気体が押し出されて気体を含む溶液を形成する。少なくとも一つの実施形態において、針が皮膚104を介して挿入された後、気体および溶液が同時に注入されると、気体を含む溶液が患者の皮下組織の中に形成される。気体および溶液は、針の先端から出る前に直ちに、あるいは互いに隣接して皮下組織に入るときに互いに攪拌される。
【0082】
再び図12〜図15を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、注入される溶液210、例えば気体212を含んでいる溶液は注入部材214に供給される。少なくとも一つの実施形態において、注入機構の少なくとも一部は、溶液撹拌機208のためにハウジング内に組み込むことができる。
【0083】
一つの実施形態において、溶液注入部材に対する電源は、溶液注入部材に含まれる。他の実施形態において、溶液注入部材の電源は溶液注入部材の外部に配置される。例えば、溶液注入部材の電源は制御装置228によって供給することができる。少なくとも一つの実施形態において、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の印加との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材に含まれているメモリあるいはまたプロセッサに含めることができる。少なくとも他の実施形態においては、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の印加との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材の外部に配置された、例えば制御装置に含めることができる。
【0084】
ここで図24〜図25を参照すると、一つの実施形態において、溶液注入部材は少なくとも一つの皮下注射針を含む。皮下注射針は、溶液注入部材に接続された近位端224、および治療のために目標を定めた領域に貫通するように構成された遠位端226を有している。針の遠位端は、周知のように、肌に対するより外傷的でない貫入のために、斜めに切断(図示せず)することができる。一つの実施形態において、針は極微針を含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、針は角錐状(図示せず)に形付けることができる。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は複数の皮下注射針を含む。皮下注射針は、溶液が針を通って組織に流入するように構成された中央管腔を具備した管状のチャネルを有している。一つの実施形態において、溶液注入部材は、溶液注入部材の内部の位置から針が表皮102を介して治療する皮下組織に貫通する位置へと、皮下注射針を移動させるための作動要素(図示せず)を有している。一つの実施形態において、針は、少なくとも皮下脂肪106を貫通するように構成される。さらに他の実施形態において、針は、深部脂肪層110を貫通するように構成される。
【0085】
図24〜図26に示すように、本発明の更なる実施形態において、この組立体は、患者の皮膚表面に追従することができるリザーバあるいはパッドを232を有した溶液注入部材214を備えている。このパッドは、そこから延びる少なくとも一つの皮下注射針216を有している。この皮下注射針は、皮下組織100に溶液210を注入するように構成されている。一つの実施形態において、針の中央管腔234は、撹拌機208の溶液と流体的に連通している。一つの実施形態において、針216の遠位端226は、注入部材から出るように手動で展開させることができる。さらに他の実施形態において、少なくとも一つの針216の遠位端226は、注入部材214から出るように、制御装置228によって自動的に展開させることができる。
【0086】
ここで図27〜図28を参照すると、さらに他の実施形態において、ハンドピース264のベース部266は、大気より低い圧力を用いて患者の肌102を注入部材214あるいはまたトランスデューサ204に向かって上方に吸引するための吸引部材268を含むことができる。この吸引部材は、メカニカルポンプ(図示せず)、ハンドポンプ(図示せず)、あるいは大気より低い圧力の他の供給源に接続できる吸引管270を有している。一つの実施形態において、この吸引部材は、患者の肌とトランスデューサとの間にある室内空気を取り除くように構成される。
【0087】
他の実施形態において、ハンドピース264は、肌102とトランスデューサ204との間に、ある容量の超音波接続流体276を供給するように構成された、第2のチューブ271を更に有する。少なくとも一つの実施形態において、この超音波接続流体はガス抜きされた液体である。この接続流体は、吸引管270によってあるいは第3のチューブ(図示せず)によって取り除くことができる。一つの実施形態において、接続流体は、第2のチューブと流体的に連通しているベース部の複数の開口(図示せず)によって、ハンドピースのベース部266の下に供給される。一つの実施形態において、この流体は、吸引管と流体的に連通しているベース部の複数の開口(図示せず)によって、ベース部の下から取り除くことができる。この接続流体は、トランスデューサと患者の肌との間に安定した音響特性を有した境界部分を提供するのに有益である。この接続流体はまた、吸引が負荷されている間に、音響的に効率的な接続流体の流れを治療領域に提供するために有益である。セルライトの頂部が作り出しているエアポケットの谷部にこの流体を充填して、より良好に超音波を伝達できるからである。
【0088】
一つの実施形態において、肌は、吸引力が負荷される前に、ハンドピース264から出た第2の状態246へと展開される針216に向かって上方に吸引される。その後、肌に吸引力が負荷されると、肌はハンドピースのベース266に向かって上方に吸引され、針は治療する患者の少なくとも表皮102を貫通する。他の実施形態においては、ハンドピースは第1の状態244で患者の上に配置されるが、このときには針の遠位端226はハンドピースの内部にある。それから、ハンドピースのベースに対して肌を上方に引っ張るために吸引が負荷される。その後、針を第2の状態に展開すると、針は治療する患者の少なくとも表皮102を貫通する。
【0089】
ここで図29〜図31を参照すると、一つの実施形態において、溶液注入部材214は、ハンドピース264が患者の肌に押圧されるときに、少なくとも一つの針216が注入部材およびトランスデューサ204の貫通開口205から出るように展開させるべく構成されている。注入部材は、トランスデューサハウジングの凹所にフィットするように構成することができる。一つの実施形態において、ハンドピース264は、注入部材とトランスデューサとの間に配設された少なくとも一つのばね272(図29)を有している。第1の状態244において、針は完全にハンドピースの内部に配設されている(図30)。第2の状態246において、針の遠位端226は、トランスデューサの貫通開口からハンドピースの外側に出ている(図31)。第2の状態において、針の遠位端は、表皮を貫通して治療する皮下組織の内側にあるように配設される。一つの実施形態においては、針が間違って第2の状態に展開されることを防止するセーフティーロック278が提供される。一つの実施形態においては、例えば臨床医が患者の肌にハンドピースを押圧すると、ばねが圧縮されて、針は第1の状態から第2の状態に展開される。臨床医がハンドピースを患者の肌に押し付ける圧力を取り除くと、ばねは注入部材をトランスデューサから離間するように駆動し、針は第2の状態から第1の状態へとハンドピースの内側に後退する。さらに他の実施形態においては、針が患者の肌の皮層を通って展開されるように、空気あるいは流体によってブラダ(図示せず)を膨張させることができる。ハンドピースはまた、超音波発生装置、溶液の供給源、あるいはまた気体の供給源との電気的なあるいはまた流体的な接続のために構成された、少なくとも一つのコネクタ274を有している。一つの実施形態において、気体を含む溶液は、本願明細書の他の場所で詳細に説明したように、ハンドピースの内側に生じさせることができる。一つの実施形態においては、ハンドピースの内側のトランスデューサと注入部材との間に、オーリングを含めることができる。
【0090】
一つの実施形態においては、針の遠位端は注入部材から自動的に展開される。第1の状態と第2の状態との間における針の移動は、制御装置228によって制御することができる。少なくとも一つの実施形態においては、第1の状態と第2の状態との間における針の自動的な展開のために、モータを注入部材に含めることができる。
【0091】
ここで図32〜図34を参照すると、装置200の少なくとも一部に取り付けることができるとともに取り外すこともできる、注入部材214の複数の構造を提供することができる。これらの様々な構造は、患者の肌の特定の形態に治療を適合させる際に有益である。図32に図示されている一実施形態において、注入部材は、少なくとも一つの針216をハウジングの内側に第1の状態244で保持するとともに、少なくとも一つの他の針216の遠位端226をハウジングの外側へと第2の状態に展開させるように構成することができる。図33に図示した一実施形態において、注入部材は、周辺部に配設された少なくとも2つの針および中央部に配設された少数の針と共に構成されて、より高い濃度の微小な泡を周囲の組織、例えば皮下脂肪106に供給することができる。図34に図示されている一実施形態において、注入部材は、中央部に配設された少なくとも2つの針および周囲に配設された少数の針と共に構成されて、より高い濃度の微小な泡を中央部の組織、例えばセプタム108に供給することができる。
【0092】
ここで図13および図18を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、溶液注入部材214は音波トランスデューサ204の背後に取り付けられている。この音波トランスデューサは複数の孔と共に構成することができ、溶液注入部材に含まれている針は、このトランスデューサの少なくともいくつかの孔に芯合わせされてそこを通過するように構成されてる。
【0093】
注射針の直径は7ゲージから40ゲージのサイズにわたる。一つの実施形態において、注射針は30ゲージのサイズである。さらに他の実施形態において、注射針は28ゲージのサイズである。さらなる実施形態において、注射針は25ゲージのサイズである。追加の実施形態において、注射針は22ゲージのサイズである。他の実施形態において、注射針は20ゲージのサイズである。さらに一つの実施形態において、注射針は18ゲージのサイズである。針の全てを一つの長さとすることもできるし、あるいは異なる長さすることもでき。一つの実施形態において、針の全長は2.0ミリメートル〜10.0cmである。一つの実施形態においては、針の全長は5ミリメートル未満である。他の実施形態において、針の全長は5.0ミリメートル〜2.0cmの範囲である。他の一つの実施形態において、針の全長は1.0cm〜3cmの範囲である。さらに他の実施形態において、針の全長は2.0cm〜5cmの範囲である。他の実施形態においては、針の全長は3.0cm〜10.0cmの範囲である。
【0094】
さらに他の実施形態において、注射針は、極微針を含む。一つの実施形態において、極微針の直径は20ミクロン〜500ミクロンの範囲である。一つの実施形態において、極微針の全長は100ミクロン〜2000ミクロンの範囲である。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮から深部脂肪層に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮から筋肉層に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの実施形態において、患者の快適性を増大させるために、局所的な麻酔クリームあるいはゲル、局所冷却法あるいは局所ブロックを用いて、更なる麻酔を治療領域に付加することができる。局所麻酔薬は、唯一必要な麻酔薬とすることもできるし、促進剤として用いられる任意のリドカインに代えることもできる。
【0095】
一つの実施形態において、針216は、治療する標的組織に応じて、皮膚表面から0.2ミリメートル〜40ミリメートルの距離にある皮下組織100に延びるのに十分な長さとすることができる。針は、針の遠位端226が少なくとも角質層を通って延びることができるように十分に長い。例えば、セルライトを治療するためには1.0ミリメートル〜5.0ミリメートルの針入の深さが望しく、より深い皮下脂肪のためには3.0ミリメートル〜40ミリメートルの針入深さが望ましい。1つ若しくは複数の皮下注射針が、手動であるいは制御装置228によって自動的に、様々な深さに移動することができる。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮から深部脂肪層に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮から筋肉層に到達するのに十分な長さである。
【0096】
より表面の組織層におけるキャビテーションによる効果は、最初に肌に印加される超音波の全ての出力および強度からより深い組織層を保護することができる。表面におけるキャビテーションの遮蔽効果は、より深い組織層を同時に内破(cavitate)させる不十分な音波パワー、あるいはより深い層のむらのある組織破壊に帰着し得る。したがって、少なくとも一つの実施形態において、本発明の装置は、より深い組織層からより表面の組織層に至る段階的な深さの注入をもたらすとともに、各段階における注入の間に音波を印加するように構成されている。1つ若しくは複数の皮下注射針は、手動であるいは制御装置228によって自動的に様々な深さに移動させることができ、以下に更に説明するように、各段階の深さにおいて超音波で組織を治療することができる。
【0097】
装置200は、注入部材214による溶液210の注入の後に、様々な時点で超音波発生装置202を活性化できるように構成されている。少なくとも一つの実施形態において、治療する組織への溶液の注入に続いて組織に超音波を印加するタイミングを同期させるために、制御装置228を用いることができる。一つの実施形態において、注入部材は、少なくとも治療する組織への溶液の注入を開始させるためのスイッチを有するように構成される。少なくとも一つの実施形態において、注入部材は、注入あるいはまた患者からの針216の引き抜きを停止させるボタンを有するように構成することができる。
【0098】
少なくとも一つの実施形態において、装置200は、2つの異なる振幅の超音波を提供するように構成される。少なくとも一つの実施形態において、治療する皮下組織100に、最初に、注入部材214を用いて気体212を含む溶液210を浸透させる。超音波発生装置202は、トランスデューサ204を介して印加されて治療する組織の内側の溶液を分散させる、第1の小さい振幅の超音波を発生させるように構成されている。超音波発生装置はまた、治療する組織にトランスデューサを介して印加されて、注入された溶液内における泡212のキャビテーション、および例えば細胞損傷あるいは細胞死滅による組織の崩壊をもたらす、第2の大きい振幅の超音波を発生させるように構成されている。
【0099】
ここで図35を参照すると、本発明の更なる実施形態においては、標的とする皮下組織100への肌を介した挿入のために、扇形に拡がった針の配列252を提供することができる。この扇形に拡がる針の配列は、管状部材254、例えばカテーテル、套管針、あるいは中央のチャネル256を有した針を含むことができる。一つの実施形態においては、複数の針216が中央チャネル内に配設される。一つの実施形態において、複数の針は、20ミクロン〜500ミクロンの寸法範囲の極微針を含む。少なくとも一つの実施形態において、複数の針216は、中央チャネル内に配設されるとともに、中央チャネルから外へ延びるように、あるいは中央チャネル内に引き込まれるように構成される。表皮および皮膚は、この管状部材によって貫通される。一つの実施形態において、中央の管状部材は、皮下組織への穿通を容易にするために斜めに切られた先端を有する。複数の針は中央管状部材の中央チャネルから円周方向の外側に傾斜するように構成され、極微針は複数のセプタムを貫通する。極微針は、治療する皮下組織への溶液の分配をもたらすチャネルあるいは管腔を有している。一つの実施形態において、これらの針は、少なくとも2つの管腔225を有した針(図60A〜図60D)を含むことができ、溶液210および気体212が針から出るときに針の遠位端226において泡を含有する溶液が作り出される。これらの針の管腔は、同軸とすることもできるし横に並べることもできる。円周方向の外側に傾斜している極微針は、セプタムの破壊および溶液のより一様な分配の提供において有益である。扇形に拡がる針の配列もまた有益である。肌を通って曲がりくねって進む少なくとも一回の穿刺により、組織のより大きい領域に一様に注入することができるからである。このことは、感染のリスク、および注入の間に患者が感じられる痛みの総計を減少させる。
【0100】
一つの実施形態において、これらの針216は、管状部材254を介して肌102、104に通るように用いることができるとともに、皮膚の表面に対して実質的に水平(平行)な配向で「扇型に拡がる」。少なくとも一つの実施形態において、それらが皮膚の表面と実質的に平行となるように極微針を展開すると、線維性のセプタムのような皮下の構造を崩壊させることができる。複数の針を用いると、今日の装置において予測されるよりも短い時間でより広い領域を治療することができる。極微針は、その長手方向に沿って追加の流出口258を有するように構成することができる。さらに一つの実施形態において、針は鋭利な切断要素を有する。針を皮膚表面に平行に配置するとともに、管状部材の軸線の回りに回転させ、あるいは表皮102に向かって上方に引き戻すと、扇形に拡がっている針の配列252は、一つの回転あるいは引き戻しによって複数のセプタム108を効率的に崩壊させることができる。少なくとも一つの実施形態において、いくつかの針は中央チャネルを持たずに中実であり、少なくとも残りは注入のためのチャネルを有する。少なくとも一つの実施形態において、針の配列の少なくとも一つの針は、組織を加熱しあるいは組織を崩壊させるために、針を介して電気エネルギーを供給するように構成することができる。一つの実施形態において、少なくとも針の一部が電気的に絶縁され、電気エネルギーは針の一部を介して組織に分散される。本発明はまた、2002年7月22日に出願されたBrettへの米国特許第6,916,328号「経皮的なセルライト除去システム」に開示されているサブシジョン手技および装置と組み合わせることができる。なお、その内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。サブシジョンとの組合せは、特に重症のセルライト症状の領域において有益である。
【0101】
ここで図12および図15を詳しく参照すると、本発明のさらに他の実施形態において、この装置200は冷却モジュール218を備える。患者の肌への注入は、一般的に不快感、腫大、出血、瘢痕化あるいは他の望まれない効果といった副作用を伴う。さらにまた、本発明によって治療される皮下組織100の破壊は、多くの美容整形あるいは皮膚科的治療に一般的ないくつかの副作用に結びつく。冷却モジュールの使用は本発明による治療の副作用を減少させる。組織の冷却は、出血、腫大および不快感を減少させる。この冷却モジュールは、従来技術において公知の多くの冷却方式のいずれかを含むことができる。図12に示すように、少なくとも一つの実施形態で、冷却モジュールの一部はトランスデューサ204あるいは注入部材214に含めることができる。冷却モジュールの一つの利点は、本発明の治療に伴う不快感、腫大、瘢痕化および他の望まれない効果の治療あるいは予防を援助することにある。図15に示すように、少なくとも一つの他の実施形態において、この冷却モジュールは別個のモジュールとして組立体に含めることができる。
【0102】
一つの実施形態において、トランスデューサ204および注入部材214は、使用の際に互いに結合される別個の要素である。一つの実施形態において、トランスデューサは再利用可能であり、かつ注入部材の少なくとも一部は使い捨てとすることができる。一つの実施形態において、トランスデューサは再利用可能であり、かつ注入部材の少なくとも一部は再利用可能とすることができる。一つの実施形態において、トランスデューサは使い捨てであり、かつ注入部材の少なくとも一部を使い捨てとすることができる。一つの実施形態において、トランスデューサは使い捨てであり、かつ注入部材の少なくとも一部を再利用可能とすることができる。少なくとも一つの実施形態において、トランスデューサおよび注入部材の組み合わせは、単一構造のハンドピースとして提供される。単一構造のハンドピースは、本願明細書に記載されている組立体の他の部分につながる共通の部品に取り付けることができる。ハンドピースは、異なる皮下異常あるいは異なる重症度の皮下異常を治療するように構成された、異なるサイズに設けることができる。一つの単一構造のハンドピースは、異なるサイズの単一構造のハンドピースと迅速に交換することができる。一つの単一構造のハンドピースは、他のものよりも針216の密度が高いパターンを有することができる。例えば、セルライトのより重症な領域は、針の密度がより高いパターンのハンドピースによって治療することができる。
【0103】
一つの実施形態において、この装置200は、有利には、微小な泡溶液の発生、治療する組織への微小な泡溶液の注入、治療する組織内への微小な泡溶液の分散、および治療する組織内の微小な泡溶液への音波の照射を統合しかつ協調させるように構成される。治療する組織内への微小な泡溶液の注入の後における音波照射のタイミングは、皮下組織の治療における一様で安定した効果を得るための一つの要因である。治療の深さは、治療における安定した生物学的効果を得るための他の要因である。さもなければ、患者は結果としてでこぼこの肌輪郭を得ることになる。注入のために同時に調製される微小な泡溶液は、安定しかつ一様な分布の結果を得るためのさらに他の要因である。この装置は、これらの要因およびその他の要因を制御するために有利に構成されて、皮下におけるキャビテーションの安定的で一様な生物学的効果を治療する組織に生じさせる。使い捨てのハンドピース264を有する少なくとも一つの実施形態においては、そのハンドピースの他の患者への再利用を防止するために安全対策チップ(図示せず)をハンドピースに設けることができ、それによって例えば肝炎あるいはエイズといった疾患の拡散を防止することができる。安全対策チップは、偽造のハンドピースが流通して患者に用いられることを防止するために含めることができる。
【0104】
安定した結果を生み出すためのさらに他の要因は、治療する部位の肌表面積に対する注入溶液の容量である。一つの実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.1cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約2.0cc/平方cmの範囲である。他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.25cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.5cc/平方cmの範囲である。さらに他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.5cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.0cc/平方cmの範囲である。しかしながら、上述した注入容量は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の深さに応じて変更することができる。
【0105】
安定した結果を生み出すためのさらに別の要因は、治療する組織への溶液の噴射率である。一つの実施形態において、溶液の噴射率は約0.01cc/秒〜約1.0cc/秒の範囲である。他の一実施形態において、溶液の噴射率は約0.02cc/秒〜約0.5cc/秒の範囲である。別の実施形態において、溶液の噴射率は約0.05cc/秒〜約0.2cc/秒の範囲である。しかしながら、前述した噴射率は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の症状に応じて変更することができる。
【0106】
組立体の様々な構成部分は、包括的なユニットに組み合わせることができる。構成部分の単一構造の組立体への組合せは、当業者にとって明らかである。以下、これらの組合せのいくつかの実例について説明する。
【0107】
[組立体の例示的実施形態]
ここで再び図12〜図15を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、組立体200の構成部品には、音波発生装置202、音波トランスデューサ204、溶液撹拌機208、および溶液注入部材214が含まれる。様々な例示的な実施態様においては、全てのシステム構成部品を単一のユニットに配設することもできるし、組立体が別個の構成部分を有することもできる。少なくとも一つの実施形態において、組立体の1つ若しくは複数の構成部分の別個となっている。
【0108】
[例1]
ここで図12を詳細に参照すると、本発明の一実施形態においては、全ての構成部分が単一ユニットあるいは装置200に組み込まれている。気体の供給源206を提供する使い捨ての容器、および溶液210を提供する容器220がこのシステムに含まれている。入力手段、出力手段、メモリを有している電子制御ユニット228およびプロセッサがこの組立体に設けられている。制御ユニットが溶液および気体の流れを撹拌機208に提供すると、この攪拌機が溶液と気体の混合物を攪拌する。次いで、制御ユニットが注入部材214に指令し、気体を含む溶液を組織に注入させる。さらに、制御ユニットは超音波発生装置202およびトランスデューサ204を制御し、予めプログラムされあるいはユーザーが定めたアルゴリズムに基づいて治療する組織に音波を当てる。
【0109】
[例2]
ここで図13を詳細に参照すると、本発明の一実施形態において、制御ユニット228は超音波発生装置202およびトランスデューサ204だけを駆動する。気体供給源206、溶液210、撹拌機208および注入部材214の全てが、1回だけ使用する使い捨ての、予め充填されている単一構造の使い捨てモジュール230に含まれている。一つの実施形態において、トランスデューサは再利用可能である。さらに他の実施形態において、トランスデューサは使い捨てであり、単一構造の使い捨てのモジュールに組み込まれている。少なくとも一つの実施形態において、皮下注射針216はトランスデューサの開口を通過することができる。少なくとも一つの実施形態において、単一構造の使い捨てモジュールは溶液撹拌機および溶液注入部材を有しているが、それらは自己完結型でありかつ自家動力型である。少なくとも一つの実施形態において、制御ユニットは、単一構造の使い捨てのモジュールに対して電力を与えあるいはまた注入および音波照射のアルゴリズムを制御する。
【0110】
[例3]
ここで図14を詳細に参照すると、本発明の他の一つの実施形態においては、専用の超音波発生装置202と、溶液撹拌機208および溶液注入部材214を有した別個のユニットとが設けられている。超音波ユニットは、例えば、物理療法の用途において当業者が現在用いているものとものと実質的に同じである。そのような超音波ユニットは商業的に入手可能である。腫脹性溶液210の注入システムは、従来技術において周知のものと実質的に同じでありかつ商業的に入手可能なものを設けることができる。トランスデューサ204および注入部材214は互いに接続され、溶液の注入および音波照射をほぼ同時に発生させることができる。本願明細書に記載されている他の実施形態と同様に、トランスデューサあるいはまた注入部材は再利用可能あるいは使い捨てとすることができる。さらに、気体の供給源206および溶液の容器220が設けられる。
【0111】
[例4]
図15に示されている他の実施形態において、装置200は、音波発生装置202およびトランスデューサ204を有した第1のユニットを備えている。溶液撹拌機208および注入部材214を有している第2ユニットもまた設けられている。少なくとも一つの実施形態において、注入部材は使い捨てであり、トランスデューサは再利用可能である。他の実施形態においては、注入部材を再利用可能とすることができる。さらに他の実施形態においては、トランスデューサは使い捨てである。第3のユニットは、メモリーおよびプロセッサを有した制御装置228を備える。この制御装置は、音波発生装置、溶液撹拌機、溶液注入部材の少なくとも一部、あるいはトランスデューサの少なくとも一つと電気的に通信する。制御装置は、入力236手段、例えば電気ボタン、スイッチあるいはキーボードを備えることができる。この装置は、例えば液晶画面、LEDライト、あるいは他の出力手段といった、従来技術において周知の出力手段238を更に備えることができる。この装置は、組織冷却モジュール218を有した第4のユニットを更に備えることができる。
【0112】
[例5]
図16〜図20に詳しく図示されている実施形態において、装置200は、音波発生装置202とメモリおよびプロセッサを具備した制御装置228とを有する第1のモジュール240を備えている。制御装置は、有利には、微小な泡溶液の発生、治療する組織内への微小な泡溶液の注入、治療する組織内での微小な泡溶液の分散、および治療する組織内の微小な泡溶液への音波照射を統合して協調させるように構成される。第1のモジュールは、制御装置と電気的に通信する入力手段236および出力手段238を更に備える。アルゴリズムおよび設定は、オンオフスイッチを具備した入力手段を用いて選択することができる。出力手段は、設定に関して少なくとも視覚的なフィードバックを提供するとともに、現在行われている治療アルゴリズムの段階について臨床医に情報を提供する。単一構造の第2モジュール242は、溶液撹拌機208、音波トランスデューサ204、および溶液注入部材214を具備したハンドピース264を有している。溶液注入部材は、注入部材ハウジング215の内側にある第1の状態244(図18)と注入部材ハウジングの外側にある第2の状態246(図19)との間で針216の遠位端が移動できるように構成された複数の針216を有している。トランスデューサは、トランスデューサを通って針が通過できるようにした開口を有するように構成されている。第2モジュールはまた、例えば電線によって制御装置と電気的に通信している。さらに第2モジュールは、その内部に溶液210を保持するように構成されている容器220と、例えばチューブによって流体的に連通している。大気の室内空気は、開口、ポートあるいは弁248を介して溶液撹拌機に取り込まれる。溶液撹拌機は、溶液と室内空気を混ぜ合わせ、それによって微小な泡212を含む溶液を作り出し、針を介して治療する組織に直ちに注入することができる。注入、分散、および治療する組織内の溶液への音波照射のタイミングは、有利には制御装置によって自動的に協調制御され、あるいは臨床医によって手動で設定される。ハウジングあるいはまたトランスデューサは、患者の連続する表面領域における配置のために有利に形作られた表面を具備して多角形状のベース部266を有することができ、治療する組織領域における均一な被覆を計画することができる(図20)。他の実施形態は、代わりの形状に形付けられたハンドピースを有することができる。
【0113】
上述した例示的な実施形態における本発明の組立体は、あらゆる観点において例示的なものであって限定的なものではないと考えられるべきある。ある好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、当業者にとって明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。
【0114】
本発明の少なくとも一つの別の実施形態は、低い強度の超音波の局部的な破壊効果を治療する組織にもたらす方法を提供する。少なくとも一つの実施形態において、この方法は、本願明細書に記載されている本発明の装置200を用いて実行することができる。他の実施形態において、この方法は、商業的に入手可能な音響的発生装置を用いて実行することができる。少なくとも一つの実施形態において、使用する溶液は、商業的に入手可能な溶液、例えば微小な泡溶液、ナノサイズの泡溶液、腫脹性の溶液、食塩水、および低張溶液を含む溶液とすることができる。さらに一つの実施形態において、注入する溶液は、一般的に利用可能でありかつ公知な方法によって臨床医が調製することができる。溶液の注入および浸透は、皮下注射針および注射器、あるいは従来技術において周知の他の方法によって実行することができる。
【0115】
多くの臨床医は、様々な薬物および溶液を皮下領域に浸透させることについて熟練しており、かつそのような浸透はかなりの正確さで実行することができる。弱い音圧の超音波、例えば物理療法の超音波および診断用の超音波は、気体212を含む溶液210が浸透している組織領域に超音波が印加されたときにだけ破壊的な効果を生じさせることができる。気体の存在下においてのみ組織の崩壊を生じさせるという低圧の超音波システムのこの特徴は、超音波の破壊的な効果を局所化するために有利に適用することができ、治療する組織にだけ微小な泡が局所的に注入される。
【0116】
ここで図36〜図40を参照すると、本発明は、皮下組織を崩壊させる方法を含む。この方法は、治療する皮下組織100に微小な泡212を配設することを含む。微小な泡は溶液210に含ませることができる。図36〜図38に示すように、溶液は、少なくとも一つの皮下注射針216によって皮下脂肪106に注入することができる。図39に示したように、それから針を(矢印方向に)引き抜いて、皮下組織内に配設した微小な泡をしばらくの間にわたって残留させる。ここで図40を詳細に参照すると、治療する組織および微小な泡に超音波を印加するために、トランスデューサ204を設けることができる。このことは微小な泡の内破を誘起し、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果が生じ、皮下脂肪あるいはまた微小な泡に近接している線維性のセプタムを崩壊させる。
【0117】
微小な泡は、(ゲルタイプ皮膜の)内部に閉じ込めることもできるし、(塩水のような溶液を攪拌することによって作り出された)そのままとすることもできる。微小な泡はまた、心エコー造影剤として商業的に販売されており、そのいくつかのタイプは以下に詳細に説明する。外殻および気体は、血液あるいは組織の内部における微小な泡の寿命を延長するために選択することができる。組織内における気体の寿命を延長する他の方法は、支持溶液の粘度を増加させることである。例えばヒアルロン酸ナトリウムの溶液は、塩水の溶液よりも非常に長く溶液の内部に気体を維持する。溶液210内における微小な泡212の寿命は、溶液に追加するヒアルロン酸の濃度あるいはまた分子量を変更することによって調整することができる。微小な泡212は、本発明の装置200の内部に、あるいは従来技術において周知の他の方法で溶液210内に発生させることができる。例えば、微小な泡は、2004年3月11日に出願された米国出願第10/798,876号「必要に応じて泡を発生させるための装置、システム、および方法」に開示されているように発生させることができる。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0118】
気体212は、気体の存在下において溶液を攪拌することにより、溶液210内に作り出することができる。最も単純な微小な泡は、例えばチューブあるいはコックによって互いに接続された2つの注射器の間で溶液および室内空気を前後に攪拌することによって形成することができる。少なくとも一つの実施形態において、本発明において注入する溶液は微小な泡を含むことができる。少なくとも他の実施形態において、本発明において注入する溶液は微小な泡を含まない。一つの実施形態において、溶液は腫脹性の溶液である。他の実施形態において、溶液は食塩水である。さらに他の実施形態において、促進溶液は低張溶液である。少なくとも一つの実施形態において、溶液は、低張性で腫脹性の溶液であることができる。さらに他の実施形態において、溶液は低張性の食塩水とすることができる。微小な泡を作り出すために、室内空気以外の様々なタイプの気体を用いることができる。気体あるいは微小な泡には、様々な気体、例えば酸素、二酸化炭素、窒素、あるいはまた本願明細書の他の場所に記載されている他の適切な気体を含めることができる。
【0119】
自由な気泡212は、超音波造影剤の最も単純な形を示す。これらの泡は、溶液の中に予め存在させることもできるし、注入の間にあるいはその後にキャビテーションによって作り出すこともできる。気泡、例えば室内空気による気泡を含んでいる生理食塩液の血管内注射は、1960年代の後期から心エコー検査法の造影剤として用いられてきた。自由空気の気泡の効用は、室内空気あるいは酸素の血液中への急速な吸収のために、血管内画像診断においては極めて限定的である。また、これらの泡は肺血管系を通過するには大き過ぎる。さらにまた、10ピコメートルを上回る大きな気泡は、一時的に毛細管を遮断するとともに気体塞栓として作用する。気体の微小な泡を封入した造影剤を製造するために、様々な安定皮膜あるいはシェルを有した市販の超音波造影剤が開発されてきた。しかしながら、本発明の一実施形態においては、室内空気の泡を溶液210に用いることができる。それらが血液に吸収されるよりも遅く脂肪に吸収されるからである
【0120】
今日、人体用途のほとんどすべての商業的に入手可能な超音波造影剤が、内部に封入された微小な泡を含んでいる。商業的に入手可能な微小な泡は、典型的に10ピコメートルよりも小さい。公知の商業的に入手可能な微小な泡は画像診断、例えば心臓画像診断の用途に使用するものであり、臨床的に使用する間、ほとんどの商業的に入手可能な微小な泡は血管内のスペースに閉じ込められる。微小な泡は、診断上のエコー強度を最高25dB(300倍以上)増加させる。信号増強の主要なメカニズムは、後方散乱、泡反響、および泡破壊である。これらのメカニズムは、伝達された超音波の音響出力に高度に依存しており、とりわけ機械的インデックス値(MI値)の影響を受ける。
【0121】
第一世代の微小な泡は、封入シェルなしに空気を収容している自由な微小な泡を含んでいる。Echovist (SHU 454)は、カプセルなしに空気を収容している商業的に入手可能な微小な泡である。血液中において(5分未満の)短い半減期を有する第二世代の微小な泡には、アルブミンの殻によって空気を封入しているAlbunex、およびパルミチン酸の殻によって空気を封入しているLevovist (SHU 508 A)が含まれる。血液中においてより長い(5分を越える)半減期を有する第三世代の微小な泡には、ホスホリピドの殻によってパーフルオロプロパンを封入しているAerosomes (Defmity, MRXl 15, DMP 115) (ImaRx Pharmaceutical)、界面活性剤の殻によってドデカフルオロペンタンを封入しているEcho gen (QW3600)、アルブミンの殻によってオクタフルオロプロパンを封入しているOptison (FSO 69) (Molecular Biosystems)、アルブミンの殻によってパーフルオロブタンを封入しているPESDA、アルブミンの殻によって空気を封入しているQuantison、界面活性剤の殻によってパーフルオロカーボンを封入しているQW7437、界面活性剤の殻によってペルフルオロヘキサンを封入しているImavist (Imagenl, AFO 150) (Alliance Pharmaceuticals)、およびホスホリピドの殻によって六フッ化硫黄を封入しているSonovue (BRl) (Bracco Imaging)が含まれる。
【0122】
商業的に入手可能な微小な泡の追加の実例には、ホスホリピドの殻によってパーフルオロブタンを封入しているBRl 4、パルミチン酸の殻によって空気を封入しているLevovist (SHU 508 A)、シアノアクリル酸の殻によって空気を封入しているSonavist (SHU 563 A)、および界面活性剤の殻によってパーフルオロカーボンを封入しているSonazoid(NC100100)が含まれる。
【0123】
組織に伝達されるエネルギー量の少なくとも一つの要因は、注入された溶液内における泡の濃度である。したがって、組織内における微小な泡の濃度もまた、生物学的効果の量を決定する。一つの実施形態において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×103〜1ミリリットルあたり1.0×1010である。他の実施形態において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×104〜1ミリリットルあたり1.0×109である。さらに他の実施例において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×105〜1ミリリットルあたり1.0×109である。さらに他の実施形態において、注入された溶液内の泡の濃度の範囲は、1ミリリットルあたり1.0×106〜1ミリリットルあたり1.0×1010である。
【0124】
組織に伝達されるエネルギー量におけるさらに他の要因は、注入された溶液内における泡のサイズである。一つの実施形態において、泡の中位径の範囲は、約100ナノメートル〜約20マイクロメートルである。一つの追加の実施形態において、泡の中位径の範囲は、約500ナノメートル〜約150マイクロメートルである。少なくとも一つの他の実施形態において、泡の中位径の範囲は、約1.0マイクロメートル〜約10.0マイクロメートルである。
【0125】
組織100に伝達されるエネルギー量および組織上における生物学的効果に関する他の要因は、超音波が組織に印加される前に、注入された溶液あるいはまた泡が組織内に存在する時間の長さである。一つの実施形態において、注入された溶液210は、音波が印加される前の約10分〜約30分で組織に浸透する。さらに他の実施形態において、注入された溶液は、音波が印加される前の約1分〜約10分で組織に浸透する。別の実施例では、注入された溶液は、音波が印加される前の約1秒〜約1分で組織に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、注入された溶液は、音波が印加される前の約50ミリ秒〜約1000ミリ秒で組織に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、超音波は、溶液の注入とほぼ同時に治療する組織に印加される。
【0126】
超音波を照射する期間もまた、組織上における超音波の生物学的効果を決定し得る。一つの実施形態において、超音波は約10秒の間、治療する組織100に印加される。他の一実施形態において、超音波は約30秒間印加される。さらに他の実施形態において、超音波は約1分間印加される、さらに他の実施形態において、超音波は約2分間印加される。少なくとも一つの他の実施形態において、超音波は約5分間印加される。さらに他の実施形態において、超音波は約5分〜20分間印加される。なお一つの実施形態において、超音波は約20分〜1時間印加される。
【0127】
少なくとも一つの実施形態において、振動数、機械的インデックスおよび圧力ピークは、本願明細書において説明される本発明の組立体によって生じられる範囲においてある。少なくとも一つの遠い実施形態において、提供される超音波は、微小な泡の非存在下で脂肪細胞あるいは結合組織にかなりの総計の破壊を直接的に生じさせるのに充分な強度を有していない。それよりも、本発明で提供する超音波のタイプは、注入された外因性の気体212のキャビテーションおよび内破を含むメカニズムによって皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせ、気体に近接している組織の破壊をその内部に生じさせる。このことは、外因性の気体、例えば微小な泡の非存在下において組織の直接的な崩壊およびキャビテーションを生じさせ得る高い出力の焦点合わせされた超音波とは対照的である。したがって、本発明は、臨床的な使用において、直接的にに組織を崩壊させて破壊する従来公知の高い音圧の超音波あるいはHIFUシステムよりも安全である。
【0128】
腫脹性の溶液は、例えば脂肪吸引手技の間に局所麻酔の適用を提供する、特に構成された溶液である。腫脹性の溶液は周知の技術である。腫脹性の溶液は様々な医薬用溶液を利用する。一つの実施形態において、腫脹性の溶液は、2%のリドカインを含有した1000mlの通常生理食塩溶液、30ml(600ミリグラム)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5ミリグラム)の重炭酸ナトリウムを含む。少なくとも一つの他の実施形態において、腫脹性の溶液は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%リドカイン、および1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は、商業的に入手可能である。一つの実施形態においては、この腫脹性の溶液は撹拌機208に加えることができる。他の実施形態においては、予備混合されたあるいは商業的に入手可能な腫脹性の溶液を用いることができる。腫脹性の溶液は、治療部位の出血を減少させることができるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供することができる。少なくとも一つの実施形態において、気体を腫脹性の溶液に含ませることができる。本願明細書の他の部分に記載されている様々な他の促進剤を溶液210、例えば治療する組織100に注入する腫脹性の溶液に含ませることができる。
【0129】
少なくとも一つの実施形態において、注入する溶液210は低張溶液である。0.5W/cmの強度においても超音波による細胞の死滅を誘発させる非致死性の低張が公知である。増強作用を説明できる2つの態様がある。低密度の液体がキャビテーションの形成を促進するという事実に基づくと、低張は超音波の組織100に対する相互作用の挙動に影響及ぼし得る。他方、低張は直接的に細胞に影響を及ぼし得る。低張における細胞の腫大から生じる細胞容積の増加は、細胞膜の張力を生じさせる。細胞膜に対するこの効果は、超音波にさらされたときに直ちに細胞が死滅することの増加、および超音波あるいは微小な泡の内破による生物学的効果に曝された後において細胞が回復して生き残る能力の低さの原因の説明となる。
【0130】
超音波と組み合わせた気体はまた、細胞の浸透率の変更にも用いることができる。この種の超音波療法は、音響穿孔として公知である。ここで、細胞に近接している微小な泡の超音波駆動による振動は、その細胞の巨大分子の浸透率の増加につながり、したがってその細胞に近接している薬物あるいは遺伝子の取込みの増加につながる。本発明の一実施形態において、処理剤は、細胞自身が回復する能力を減少させあるいは治療する組織の細胞死を生じさせる巨大分子を含むことができる。そのようなタイプの処理剤の実施例には、リドカイン、および治療する細胞の非切除性の加熱が含まれる。処理剤のさらなる実例には、マーカインのような局所麻酔剤、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、撹拌塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊させた脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイトが含まれる。処理剤は、本発明のエネルギー印加治療の前に、間に、あるいは後に供給することができる。
【0131】
より表面の組織層におけるキャビテーションによる効果は、最初に肌に印加される超音波の全ての出力および強度から、より深い組織層を保護することができる。表面におけるキャビテーションの遮蔽効果は、より深い組織層を同時に内破させる不十分な音波パワー、あるいはより深い層のむらのある組織破壊ら帰着し得る。少なくとも一つの他の実施形態において、様々な深さの皮下組織の治療は段階的に実行される。それぞれの注入に続いて、治療する組織に音波を印加することができる。少なくとも一つの実施形態において、印加する音波は弱い音圧の超音波である。一つの実施形態において、印加する音波は、診断用超音波の出力領域にある。例えば、第1段階においては、深い位置への溶液の注入が実行されると、より深い層へ音波が印加される。第2段階においては、より表面的な位置への注入が実行されると、より表面的な層に音波が印加される。徐々に表面的となる深さにおける複数段階の溶液の注入は、音波の印加、例えば溶液をそれぞれ注入した後における超音波の印加と共に実行することができる。一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5〜2.0cm浅い深さで実行される。一つの実施形態においては、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1ミリメートル浅い深さで実行される。さらに追加的な一実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約5ミリメートル浅い深さで実行される。さらに他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.0センチメートル浅い深さで実行される。の他の実施形態、さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.5センチメートル浅い深さで実行される。さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2.0センチメートル浅い深さで実行される。、さらに他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約30ミリメートル、約25ミリメートル、および約20ミリメートルの深さの段階において実行される。一つの他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約10ミリメートル、約5ミリメートル、および約2ミリメートルの深さの段階において実行される。少なくとも一つの実施形態においては、各段階の注入の間に超音波を印加するのではなく、全ての深さにおける注入の後に一連の超音波が組織に印加される。
【0132】
一つの実施形態においては、治療する組織は、皮層と深部脂肪層との間に注入を受ける。他の実施例において、治療する組織は、表面的な脂肪層と筋肉層の間に注入を受ける。さらに他の実施形態において、治療する組織は、皮層と筋肉層との間に注入を受ける。一つの実施形態において、治療する組織は、約2ミリメートル〜4.0センチメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、治療される組織は、約0.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。少なくとも一つの実施形態において、治療される組織は、約1.0ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。さらに追加的な一実施形態において、治療される組織は、約1.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、組織は約2ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。他の一実施形態において、組織は約5ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに他の実施例においては、組織は約1.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約1.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約4.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。一つの実施形態においては、単一の深さの注入あるいは組織の浸透が実行される。少なくとも一つの他の実施形態においては、複数の深さにおける注入あるいは浸透が実行される。
【0133】
溶液の注入と超音波の印加との間の時間の経過は、約0秒〜1時間の範囲とすることができる。自動制御装置228は、溶液の注入に続く超音波印加のタイミングを同期させるために用いることができる。一つの実施形態において、超音波の印加は、溶液の注入とほぼ同時である。
【0134】
一つの実施形態においては、超音波を印加する約5秒未満前に注入を実行することができる。他の実施例においては、超音波を印加する約5秒〜約20秒前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、超音波を印加する約20秒〜約60秒前に注入が実行される。さらに他の実施形態においては、超音波を印加する約1分〜5分前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、超音波を印加する約5分〜15分前に注入が実行される。もう一つの実施形態においては、超音波を印加する約15分〜30分前に注入が実行される。さらに他の実施例においては、超音波を印加する約30分〜60分前に注入が実行される。
【0135】
ここでまた図41を参照すると、本発明のさらに一つの実施形態は、2つの異なる振幅の超音波を用いて皮下組織100を崩壊させるための方法である。治療される組織には、最初に溶液210、例えば低張溶液、気体212を含む溶液、微小な泡を含む溶液、あるいは腫脹性の溶液を浸透させる。弱い音圧の超音波の範囲の第1の小さい振幅の超音波を、皮下組織内の溶液を分散させるために、治療する領域にわたって患者の肌に印加する。一つの実施形態において、この第1の小さい振幅の超音波は、皮下におけるキャビテーションによる生物学的効果を生じさせるのに充分な強さではない。少なくとも一つの実施形態において、第1の小さい振幅の超音波は、0.01〜0.7の範囲のMI(メカニカルインデックス)を有する。少なくとも他の実施形態において、第1の小さい振幅の超音波は0.05〜0.5の範囲のMIを有する。さらに他の実施形態において、第1の小さい振幅の超音波は0.075〜0.25の範囲のMIを有する。
【0136】
治療する組織への第1の小さい振幅の超音波の印加を中止した後、小さい音圧の超音波の範囲にとどまる第2の大きい振幅の超音波を治療する組織に印加する。第2の大きい振幅の超音波は、溶液が存在している場合には皮下におけるキャビテーションによる生物学的効果を生じさせるのには十分であるが、溶液が存在しない場合には組織内の細胞上にキャビテーションによる効果を直接生じさせるには不十分である振幅を有している。一つの実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は、微小な泡溶液がある場合にはキャビテーション効果を生じさせるのに十分であるが、組織内の細胞上にキャビテーション効果を直接生じさせには十分に大きくない振幅を有する。少なくとも一つの実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は0.7〜5.0の範囲のMIを有する。他の実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は1.0〜4.0の範囲のMIを有する。さらに一つの実施形態において、第2の大きい振幅の超音波は1.5〜3.0の範囲のMIを有する。
【0137】
さらに一つの実施形態において、針216は、治療する組織の最大深さにおいて皮下組織100に挿入される。溶液210、例えば微小な泡212を含んでいる溶液は、注入されると、低レベルの超音波によって組織内に分散させられる。一つの実施形態において、溶液の注入および超音波による分散はほぼ同時に実行することができる。次いで針を引き抜くと、溶液内にキャビテーションを生じさせるのに十分な第2の大きい振幅の超音波を印加する。第2の大きい振幅の超音波は、針の引き抜きとほぼ同時にあるいは針の引き抜きに続いて印加することができる。注入−分散および引抜き−内破の段階は、他の深さにおいてあるいは治療する他の領域において反復することができる。少なくとも一つの実施形態において、注入−分散および引抜き−内破の段階は、深部の脂肪領域からより表面的な脂肪領域へと反復することができる。深い部分から浅い部分へのこの累進的な注入−分散および引抜き−内破は、全ての泡の完全なキャビテーションを保証し、浅い層の泡を深い層の泡よりも前に破裂させた場合に発生し得る浅い層による「音の遮蔽」を防止する。それは、封入された泡あるいは本願明細書において議論する他の溶液において有益である。
【0138】
安定した結果を生じさせるさらに他の要因は、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間である。一つの実施形態においては、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約1秒〜約5秒である。他の実施形態においては、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約5秒〜約30秒である。さらに一つの実施形態において、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約30秒〜約30秒である。さらに他の実施形態においては、内破のための超音波を印加する前にエネルギーによって組織内の溶液を分散させる時間は約1分〜約5分である。
【0139】
一つの実施形態においては、治療する組織の破壊に続いて、破壊された組織を患者の内部に残し、例えば患者の身体によって吸収させることができる。他の実施形態においては、破壊した組織は、例えば脂肪吸引によって患者の身体から取り除くことができる。
【0140】
[例示的な方法]
ここで図42〜図58を参照し、皮下組織を治療する方法の一つの例示的な実施形態について説明する。この方法は、装置を提供することを含む。提供される装置は、入力手段、出力手段、プロセッサおよびメモリを有した制御装置を備える。提供される装置はまた、超音波発生装置、トランスデューサ、溶液のための容器内に格納される溶液、注入部材、および溶液撹拌機を備える。気体の供給源は、大気の室内空気である。図示の例示的な装置においては、トランスデューサ、溶液撹拌機、および注入部材の全てが単一構造のハンドピースに含まれている。溶液は、少なくとも一つのチューブによってハンドピースと流体的に連通している。制御装置は、少なくとも一つのワイヤによってハンドピースと電気的に通信している。少なくとも一つの図示した実施形態において、ハンドピースは、患者の治療する肌に接触するように構成されて多角形状に形付けられたベース部を有するとともに、、複数の針をさらに有している。ハンドピースは、オンオフスイッチを含むことができる。この方法はまた、患者の肌上における治療領域についての計画を含む。この計画は、ハンドピースのベース部のサイズおよび形状にマッチする連続した多角形の領域の計画を含む。この方法は、治療する皮下組織に針を前進させること、気体を含んでいる溶液を作り出すために溶液および気体を一体に攪拌すること、治療する皮下組織、例えば皮下脂肪およびセプタムに気体を含んでいる溶液を注入することを含む。超音波は、治療する組織に浸透している気体を含む溶液に印加される。一つの実施形態において、超音波は、気体を含んでいる溶液の注入と同時に印加される。超音波は、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせるキャビテーションを誘起し、少なくともいくつかの皮下組織が崩壊させる。一つの実施形態においては、破壊される皮下組織には皮下脂肪あるいはセプタムが含まれ、患者上のセルライトの外観が減少しあるいは取り除かれる。
【0141】
ここで図59を参照すると、本発明の治療方法アルゴリズムの例示的な実施形態が図示されている。この方法には、治療する患者の評価の後に治療方針を確定する臨床医が含まれる。促進剤溶液は、治療する所望の組織の位置に投与される。選択的に、促進剤溶液を分散させるために、治療する組織にエネルギーを印加することができる。次いで、促進剤を内破させるべく治療する組織にエネルギーを印加すると、治療する組織の少なくともいくつかの細胞に細胞溶解が生じる。一つの実施形態においては、このセッションが完了すると、溶解した細胞は患者の身体によって再吸収される。この治療は、適時の後の時点において反復することができる。他の実施形態において、治療用ハンドピースは、臨床医が治療を所望する追加の位置を治療するために再び配置されて、治療が再開する。さらに他の実施例においては、治療した同じ組織位置のより表面レベルに投与される溶液が再び投与されて治療が再開する。
【0142】
本発明は、組織を治療する他の方法あるいは装置と組み合わせることができる。本発明はまた、肌を引き締める手技、例えばカリフォルニア州HaywardのThermage Corporationから入手可能なThermage(商標)、カリフォルニア州BrisbaneのCutera, Inc.から入手可能なCutera Titan(商標)、あるいはカリフォルニア州Santa ClaraのLumenis, Inc.から入手可能なAluma(商標)の使用を含むことができる。
【0143】
本発明は、その精神および必須の特徴から逸脱することなしに他の形態で具体化することができる。したがって、説明した実施形態はあらゆる観点において例示的なものであって限定的なものではないことが考慮されるべきである。ある好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、当業者にとって明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照することのみによって定められることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】正常な皮下組織の一部の断面図。
【図2】正常な皮下組織のセプタムおよび脂肪を模式的に示す断面図。
【図3】正常な皮下組織のセプタムおよび脂肪組織(脂肪)の室を模式的に示す断面図。
【図4】一般にセルライトと呼ばれる異常を有した病的な皮下組織のセプタムおよび脂肪組織(脂肪)の室を模式的に示す断面図。
【図5】焦点を合わせた超音波を模式的に示す図。
【図6】焦点が合ってない超音波を模式的に示す図。
【図7】超音波の近いゾーンおよび遠いゾーンを模式的に示す図。
【図8】焦点を合わせた超音波を模式的に示す図。
【図9】焦点を合わせた超音波を模式的に示す図。
【図10】超音波の存在下における気体の泡の振動を模式的に示す図。
【図11】キャビテーション現象を受ける気体を模式的に示す図。
【図12】本発明の組立体の一実施形態を模式的に示す図。
【図13】本発明の組立体の他の実施形態を模式的に示す図。
【図14】本発明の組立体のさらに他の実施形態を模式的に示す図。
【図15】本発明の組立体のさらに他の実施形態を模式的に示す図。
【図16】本発明の組立体の斜視図。
【図17】本発明のハンドピースの斜視図。
【図18】図16の組立体のハンドピースを第1の状態で示す斜視図。
【図19】図16の組立体のハンドピースを第2の状態で示す斜視図。
【図20】図16の組立体のハンドピースを治療する患者の肌に当てた状態で示す斜視図。
【図21】気体を含む溶液を生じさせるように構成されたハンドピースを示す図。
【図22】気体を含む溶液を生じるさせるように構成されたハンドピースを示す図。
【図23】気体を含む溶液を生じるさせるように構成されたハンドピースを示す図。
【図24】本発明の組立体の一実施形態におけるパッドおよび皮下注射針を有した注入部材を示す斜視図。
【図25】図24の注入部材の一部を拡大して示す図。
【図26】パッドと皮下組織に挿入される皮下注射針とを有した注入部材の他の実施形態を示す断面図。
【図27】吸引部材を有したハンドピースを示す図。
【図28】治療する患者の表皮をいくつかの針が貫通している図27のハンドピースを示す図。
【図29】少なくとも一つのばねを有したハンドピースの斜視図。
【図30】図29のハンドピースを第1の状態で示す斜視図。
【図31】図29のハンドピースを第2の状態で示す斜視図。
【図32】いくつかの針が患者の肌を通って展開されている注入部材の実施形態を模式的に示す断面図。
【図33】周辺の針が患者の肌を通って展開されている注入部材の実施形態を模式的に示す断面図。
【図34】中央の針が患者の肌を通って展開されている注入部材の実施形態を模式的に示す断面図。
【図35】扇形に拡がった針の配列を示す斜視図。
【図36】治療する皮下組織の一部に向かって前進する針を微小な泡溶液と共に模式的に示す断面図。
【図37】図36の皮下組織内に前進した針を模式的に示す断面図。
【図38】図36の治療する皮下組織内に注入された微小な泡溶液を模式的に示す断面図。
【図39】表面の皮下脂肪層に配設された微小な泡を残して図36の皮下組織から引き抜かれた針を模式的に示す断面図。
【図40】表面の皮下脂肪層に配設された微小な泡のキャビテーションと脂肪およびセプタムの崩壊を示す、図36の皮下組織への超音波の印加を模式的に示す断面図。
【図41】2つの異なる振幅の超音波を用いて皮下組織を治療する方法のアルゴリズムを示すグラフ。
【図42】皮下組織の治療方法を示す図。
【図43】皮下組織の治療方法を示す図。
【図44】皮下組織の治療方法を示す図。
【図45】皮下組織の治療方法を示す図。
【図46】皮下組織の治療方法を示す図。
【図47】皮下組織の治療方法を示す図。
【図48】皮下組織の治療方法を示す図。
【図49】皮下組織の治療方法を示す図。
【図50】皮下組織の治療方法を示す図。
【図51】皮下組織の治療方法を示す図。
【図52】皮下組織の治療方法を示す図。
【図53】皮下組織の治療方法を示す図。
【図54】皮下組織の治療方法を示す図。
【図55】皮下組織の治療方法を示す図。
【図56】皮下組織の治療方法を示す図。
【図57】皮下組織の治療方法を示す図。
【図58】皮下組織の治療方法を示す図。
【図59】例示的な治療アルゴリズムのフローチャート。
【図60A】同心の管腔を有している針の長手方向の断面図。
【図60B】同心の管腔を有している針の水平断面図。
【図60C】並んでいる管腔を有した針の長手方向の断面図。
【図60D】並んでいる管腔を有した針の水平断面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下組織を治療する方法であって、
低い音圧の超音波の供給源を提供する段階と、
促進剤を提供する段階と、
治療する皮下組織に促進剤を配設する段階と、
皮下組織の促進剤に低い音圧の超音波を印加する段階と、を備え、
促進剤から放出されるエネルギーが皮下におけるキャビテーションによる生物学的効果を生じさせ、少なくともいくつかの皮下組織を崩壊させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記促進剤が気体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記促進剤が微小な泡であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記促進剤がパーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記促進剤が溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記促進剤が低張溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記促進剤が気体を含んでいる溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記促進剤が製薬化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
治療する皮下組織への促進剤の配設および促進剤への低い音圧の超音波の印加が同時に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
治療する皮下組織への低い音圧の超音波の印加が、治療する皮下組織への促進剤の配設から1分以内に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療する皮下組織への低い音圧の超音波の印加が、治療する皮下組織への促進剤の配設から10分以内に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
皮下組織を崩壊させるための方法であって、
微小な泡を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させる段階と、
低い音圧の超音波の出力領域にある焦点合わせされていない音波の供給源を提供する段階と、
少なくともいくつかの微小な泡に焦点合わせされていない音波を印加する段階と、を備え、
少なくともいくつかの微小な泡の崩壊から伝達されるエネルギーが、少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与えることを特徴とする方法。
【請求項13】
少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与える段階が、少なくともいくつかの皮下組織の細胞死を生じさせることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
微小な泡を含んでいる溶液を提供する段階をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
微小な泡を含んでいる溶液を発生させる装置を提供する段階をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与える段階が、少なくとものいくつかの脂肪細胞に損傷を与えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与える段階が、少なくともいくつかのセプタムに損傷を与えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が正常な組織に対して低張性であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記溶液がパーフルオロカーボンを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記溶液が腫脹性の溶液を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記溶液がリドカインをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液がリドカインをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項23】
皮下組織を浸透させる段階および音波を印加する段階が、ほぼ同時に実行されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項24】
皮下組織を浸透させる段階および音波を印加する段階が、皮下組織の少なくとも一つのより表面に近い深さにおいて反復されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項25】
皮下組織を崩壊させる方法であって、
複数の気体を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させる段階と、
約0.25MHz〜約10MHzの範囲の振動数を有するとともに10.0MPa未満のピーク負圧を有する音波の供給源を提供する段階と、
少なくともいくつかの気体に音波を印加する段階と、を備え、
前記音波の供給源から伝達されるエネルギーがいくつかの気体を破裂させて、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果および少なくともいくつかの皮下組織の崩壊を生じさせることを特徴とする方法。
【請求項26】
少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織が脂肪細胞であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織がセプタムであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記気体が気泡前駆物質を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記気体が微小な泡を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記微小な泡が封入されていることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記気体がナノサイズの泡を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノサイズの泡が封入されていることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記溶液が正常に組織に対して低張性であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記溶液がパーフルオロカーボンを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記溶液が腫脹性の溶液を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記音波は、気体の非存在下で組織のキャビテーションを生じさせるために必要な音波の振幅より小さい振幅を有していることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項37】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約10分〜約30分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項38】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約1分〜約10分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項39】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約1秒〜約1分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項40】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約0.5秒〜約10秒であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項41】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約50ミリ秒〜約1000ミリ秒であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記音波は、気体を含んでいる溶液の皮下組織への浸透と実質的に同時な時間から気体を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させた後の約15秒の時間の間に治療する皮下組織に印加されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項43】
皮膚表面の約2ミリメートルから約30ミリメートル以内の皮膚組織に浸透させることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項44】
前記音波が焦点合わせされていないことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項45】
前記気体の少なくともいくつかを崩壊させるために第2のパターンの音波を印加する前に、前記気体を定められたサイズ範囲に調整するべく非キャビテーション性の第1のパターンの音波を印加する段階をさらに備えることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項46】
前記気体の少なくともいくつかを崩壊させるべく第2のパターンの音波を印加する前に、前記溶液を分散させるべく非キャビテーション性の第1のパターンの音波を印加する段階をさらに備えることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項47】
前記崩壊させる皮下組織がセルライト症状の一因となっていることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項48】
前記崩壊させた皮下組織が身体の内部に残って身体のリンパ系に再吸収されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項49】
前記崩壊させた皮下組織が臨床医によって身体から取り除かれることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項50】
前記音波がパルス状に供給されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項51】
複数の気体を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させる段階および少なくともいくつかの気体に音波を印加する段階が、皮下組織の少なくとも一つの追加領域において反復されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項52】
前記溶液は、低い音圧の超音波による皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を強化することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項53】
前記皮下組織に浸透させる段階が、皮膚層と深部脂肪層との間の浸透を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項54】
前記皮下組織に浸透させる段階が、筋肉層と表面脂肪層との間の浸透を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項55】
前記皮下組織に浸透させる段階が異なる深さの各段階において実行され、各段階の浸透の後に音波が印加されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項56】
前記皮下組織に浸透させる段階が、約30ミリメートル、約25ミリメートルおよび約20ミリメートルの深さの段階で実行されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記皮下組織に浸透させる段階が、約15ミリメートル、約10ミリメートル、約5ミリメートルおよび約2ミリメートルの深さの段階で実行されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記皮下組織に浸透させる段階が複数の段階で実行され、その後に続く注入は、その前の段階よりも2ミリメートル〜2センチメートル表面に近い位置で実行されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記皮下の層に浸透させることが異なる深さの段階で実行され、前記深さが皮層と深部脂肪層との間に配置されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記皮下の層に浸透させることが異なる深さの段階で実行され、前記深さが表面の脂肪層と筋肉層との間に配置されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項61】
生物学的な組織を崩壊させる方法であって、
崩壊させる組織に近接して溶液を注入する段階と、
前記溶液が崩壊させる組織に近接して残存するようにする段階と、
前記溶液を低い音圧の超音波に曝す段階と、を備え、
前記組織に含まれている複数の細胞が皮下におけるキャビテーションの生物学的効果によって溶解し、かつ死滅した細胞が患者の身体によって再吸収されるようになっていることを特徴とする方法。
【請求項62】
前記溶液は、少なくとも10秒の間、治療する組織に近接して残存するようになっていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記溶液は、少なくとも30秒の間、治療する組織に近接して残存するようになっていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記溶液は、少なくとも1分の間、治療する組織に近接して残存するようになっていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記溶液が低張溶液であることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項67】
外因性のエネルギーの印加によって溶液を分散させることをさらに備えることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記溶液が低張溶液であることを特徴とする請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記溶液が促進剤を含むことを特徴とする請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記促進剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
皮下組織を崩壊させるための方法であって、
促進剤を含む溶液を皮下組織に浸透させる段階と、
前記溶液を皮下組織内に分散させるために低い音圧の超音波の圧力範囲にある第1の小さい振幅の超音波を印加する段階と、
低い音圧の超音波の圧力範囲にある第2の大きい振幅の超音波を前記組織に印加する段階と、を備え、
前記第2の大きい振幅の超音波は、前記溶液内にキャビテーションを生じさせるのに充分なパワーは有しているが、前記組織内の細胞に直接的なキャビテーションの効果を生じさせるために充分なパワーは有していないことを特徴とする方法。
【請求項72】
前記促進剤が複数の気体を含み、前記第2の大きい振幅の超音波を印加することが皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせ、それによって前記皮下組織の少なくともいくつかを崩壊させることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記溶液が腫脹性の溶液であることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記溶液が低張性の溶液であることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の小さい振幅の超音波が0.01〜0.7の範囲の機械的インデックス値を有し、かつ前記第2の大きい振幅の超音波が0.7〜5.0の範囲の機械的なインデックス値を有していることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記低い音圧の超音波は、診断用超音波によって提供される圧力範囲にあることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記低い音圧の超音波は、物理療法超音波によって提供される圧力範囲にあることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項78】
前記皮下の層に浸透させる段階が、表面の脂肪層に浸透させることを含むことを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記皮下の層に浸透させることが、深部脂肪層に浸透させることを含むことを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項80】
前記段階を少なくとも一回反復させることをさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項81】
前記段階を同一の組織領域において少なくとも一回反復する段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項82】
前記段階を同一の組織領域の異なる深さにおいて少なくとも一回反復する段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項83】
前記段階を異なる組織領域において少なくとも一回反復する段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項84】
前記溶液は、前記第2の大きい振幅の超音波を印加する前の5秒〜5分の間に前記第1の小さい振幅の超音波によって分散させられることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項85】
前記第2の大きい振幅の超音波を印加する前に、前記第1の小さい振幅の超音波を停止させる段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項86】
皮下組織を治療する方法であって、
超音波の供給源を提供する段階と、
治療する皮下組織に微小な泡を配設する段階と、
微小な泡に超音波を印加することによって少なくともいくつかの微小な泡にキャビテーションを誘起させる段階と、
前記微小な泡のキャビテーションが少なくともいくつかの組織に崩壊を生じさせる段階と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項87】
前記超音波のピーク負圧の範囲が0.1MPa〜10.0MPaの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項1】
皮下組織を治療する方法であって、
低い音圧の超音波の供給源を提供する段階と、
促進剤を提供する段階と、
治療する皮下組織に促進剤を配設する段階と、
皮下組織の促進剤に低い音圧の超音波を印加する段階と、を備え、
促進剤から放出されるエネルギーが皮下におけるキャビテーションによる生物学的効果を生じさせ、少なくともいくつかの皮下組織を崩壊させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記促進剤が気体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記促進剤が微小な泡であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記促進剤がパーフルオロカーボンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記促進剤が溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記促進剤が低張溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記促進剤が気体を含んでいる溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記促進剤が製薬化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
治療する皮下組織への促進剤の配設および促進剤への低い音圧の超音波の印加が同時に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
治療する皮下組織への低い音圧の超音波の印加が、治療する皮下組織への促進剤の配設から1分以内に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療する皮下組織への低い音圧の超音波の印加が、治療する皮下組織への促進剤の配設から10分以内に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
皮下組織を崩壊させるための方法であって、
微小な泡を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させる段階と、
低い音圧の超音波の出力領域にある焦点合わせされていない音波の供給源を提供する段階と、
少なくともいくつかの微小な泡に焦点合わせされていない音波を印加する段階と、を備え、
少なくともいくつかの微小な泡の崩壊から伝達されるエネルギーが、少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与えることを特徴とする方法。
【請求項13】
少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与える段階が、少なくともいくつかの皮下組織の細胞死を生じさせることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
微小な泡を含んでいる溶液を提供する段階をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
微小な泡を含んでいる溶液を発生させる装置を提供する段階をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与える段階が、少なくとものいくつかの脂肪細胞に損傷を与えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
少なくともいくつかの皮下組織に損傷を与える段階が、少なくともいくつかのセプタムに損傷を与えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が正常な組織に対して低張性であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記溶液がパーフルオロカーボンを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記溶液が腫脹性の溶液を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記溶液がリドカインをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液がリドカインをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項23】
皮下組織を浸透させる段階および音波を印加する段階が、ほぼ同時に実行されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項24】
皮下組織を浸透させる段階および音波を印加する段階が、皮下組織の少なくとも一つのより表面に近い深さにおいて反復されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項25】
皮下組織を崩壊させる方法であって、
複数の気体を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させる段階と、
約0.25MHz〜約10MHzの範囲の振動数を有するとともに10.0MPa未満のピーク負圧を有する音波の供給源を提供する段階と、
少なくともいくつかの気体に音波を印加する段階と、を備え、
前記音波の供給源から伝達されるエネルギーがいくつかの気体を破裂させて、皮下におけるキャビテーションの生物学的効果および少なくともいくつかの皮下組織の崩壊を生じさせることを特徴とする方法。
【請求項26】
少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織が脂肪細胞であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくともいくつかの崩壊させる皮下組織がセプタムであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記気体が気泡前駆物質を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記気体が微小な泡を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記微小な泡が封入されていることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記気体がナノサイズの泡を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノサイズの泡が封入されていることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記溶液が正常に組織に対して低張性であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記溶液がパーフルオロカーボンを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記溶液が腫脹性の溶液を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記音波は、気体の非存在下で組織のキャビテーションを生じさせるために必要な音波の振幅より小さい振幅を有していることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項37】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約10分〜約30分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項38】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約1分〜約10分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項39】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約1秒〜約1分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項40】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約0.5秒〜約10秒であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項41】
溶液を含んでいる気体の皮下組織への浸透と音波の印加との間の時間が約50ミリ秒〜約1000ミリ秒であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記音波は、気体を含んでいる溶液の皮下組織への浸透と実質的に同時な時間から気体を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させた後の約15秒の時間の間に治療する皮下組織に印加されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項43】
皮膚表面の約2ミリメートルから約30ミリメートル以内の皮膚組織に浸透させることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項44】
前記音波が焦点合わせされていないことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項45】
前記気体の少なくともいくつかを崩壊させるために第2のパターンの音波を印加する前に、前記気体を定められたサイズ範囲に調整するべく非キャビテーション性の第1のパターンの音波を印加する段階をさらに備えることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項46】
前記気体の少なくともいくつかを崩壊させるべく第2のパターンの音波を印加する前に、前記溶液を分散させるべく非キャビテーション性の第1のパターンの音波を印加する段階をさらに備えることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項47】
前記崩壊させる皮下組織がセルライト症状の一因となっていることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項48】
前記崩壊させた皮下組織が身体の内部に残って身体のリンパ系に再吸収されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項49】
前記崩壊させた皮下組織が臨床医によって身体から取り除かれることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項50】
前記音波がパルス状に供給されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項51】
複数の気体を含んでいる溶液を皮下組織に浸透させる段階および少なくともいくつかの気体に音波を印加する段階が、皮下組織の少なくとも一つの追加領域において反復されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項52】
前記溶液は、低い音圧の超音波による皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を強化することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項53】
前記皮下組織に浸透させる段階が、皮膚層と深部脂肪層との間の浸透を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項54】
前記皮下組織に浸透させる段階が、筋肉層と表面脂肪層との間の浸透を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項55】
前記皮下組織に浸透させる段階が異なる深さの各段階において実行され、各段階の浸透の後に音波が印加されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項56】
前記皮下組織に浸透させる段階が、約30ミリメートル、約25ミリメートルおよび約20ミリメートルの深さの段階で実行されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記皮下組織に浸透させる段階が、約15ミリメートル、約10ミリメートル、約5ミリメートルおよび約2ミリメートルの深さの段階で実行されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記皮下組織に浸透させる段階が複数の段階で実行され、その後に続く注入は、その前の段階よりも2ミリメートル〜2センチメートル表面に近い位置で実行されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記皮下の層に浸透させることが異なる深さの段階で実行され、前記深さが皮層と深部脂肪層との間に配置されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記皮下の層に浸透させることが異なる深さの段階で実行され、前記深さが表面の脂肪層と筋肉層との間に配置されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項61】
生物学的な組織を崩壊させる方法であって、
崩壊させる組織に近接して溶液を注入する段階と、
前記溶液が崩壊させる組織に近接して残存するようにする段階と、
前記溶液を低い音圧の超音波に曝す段階と、を備え、
前記組織に含まれている複数の細胞が皮下におけるキャビテーションの生物学的効果によって溶解し、かつ死滅した細胞が患者の身体によって再吸収されるようになっていることを特徴とする方法。
【請求項62】
前記溶液は、少なくとも10秒の間、治療する組織に近接して残存するようになっていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記溶液は、少なくとも30秒の間、治療する組織に近接して残存するようになっていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記溶液は、少なくとも1分の間、治療する組織に近接して残存するようになっていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記溶液が低張溶液であることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項67】
外因性のエネルギーの印加によって溶液を分散させることをさらに備えることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記溶液が低張溶液であることを特徴とする請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記溶液が促進剤を含むことを特徴とする請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記促進剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
皮下組織を崩壊させるための方法であって、
促進剤を含む溶液を皮下組織に浸透させる段階と、
前記溶液を皮下組織内に分散させるために低い音圧の超音波の圧力範囲にある第1の小さい振幅の超音波を印加する段階と、
低い音圧の超音波の圧力範囲にある第2の大きい振幅の超音波を前記組織に印加する段階と、を備え、
前記第2の大きい振幅の超音波は、前記溶液内にキャビテーションを生じさせるのに充分なパワーは有しているが、前記組織内の細胞に直接的なキャビテーションの効果を生じさせるために充分なパワーは有していないことを特徴とする方法。
【請求項72】
前記促進剤が複数の気体を含み、前記第2の大きい振幅の超音波を印加することが皮下におけるキャビテーションの生物学的効果を生じさせ、それによって前記皮下組織の少なくともいくつかを崩壊させることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記溶液が腫脹性の溶液であることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記溶液が低張性の溶液であることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の小さい振幅の超音波が0.01〜0.7の範囲の機械的インデックス値を有し、かつ前記第2の大きい振幅の超音波が0.7〜5.0の範囲の機械的なインデックス値を有していることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記低い音圧の超音波は、診断用超音波によって提供される圧力範囲にあることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記低い音圧の超音波は、物理療法超音波によって提供される圧力範囲にあることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項78】
前記皮下の層に浸透させる段階が、表面の脂肪層に浸透させることを含むことを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記皮下の層に浸透させることが、深部脂肪層に浸透させることを含むことを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項80】
前記段階を少なくとも一回反復させることをさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項81】
前記段階を同一の組織領域において少なくとも一回反復する段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項82】
前記段階を同一の組織領域の異なる深さにおいて少なくとも一回反復する段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項83】
前記段階を異なる組織領域において少なくとも一回反復する段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項84】
前記溶液は、前記第2の大きい振幅の超音波を印加する前の5秒〜5分の間に前記第1の小さい振幅の超音波によって分散させられることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項85】
前記第2の大きい振幅の超音波を印加する前に、前記第1の小さい振幅の超音波を停止させる段階をさらに備えることを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項86】
皮下組織を治療する方法であって、
超音波の供給源を提供する段階と、
治療する皮下組織に微小な泡を配設する段階と、
微小な泡に超音波を印加することによって少なくともいくつかの微小な泡にキャビテーションを誘起させる段階と、
前記微小な泡のキャビテーションが少なくともいくつかの組織に崩壊を生じさせる段階と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項87】
前記超音波のピーク負圧の範囲が0.1MPa〜10.0MPaの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【公表番号】特表2009−506870(P2009−506870A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530099(P2008−530099)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/033855
【国際公開番号】WO2007/030367
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/033855
【国際公開番号】WO2007/030367
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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