説明

皮膚における酸化的ストレスの評価および緩和

【課題】哺乳類における酸化的ストレスを評価する方法を提供すること。
【解決手段】かかる方法は、a)哺乳類の皮膚細胞を易酸化性部分に曝露するステップと、b)皮膚細胞を外部の攻撃に曝露するステップと、c)易酸化性部分の反応生成物を評価するステップと、を含み、評価ステップ(c)の前に、皮膚細胞は、除去される皮膚細胞が生存可能となるように哺乳類から非侵襲的に除去される。パーソナルケア組成物は、日焼け止め剤を含み、この組成物は、少なくとも約40%の酸化保護率を有する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、皮膚における酸化的ストレスの評価方法、特に、外部の攻撃からの酸化的ストレスを緩和するための局所的組成物の能力を評価する方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
生命体は、一般に、その細胞内で、種々の重大な生化学的処理に有益であり、且つ、かかる処理を支持する化学環境を維持するために努力する。外部要因により、生化学的障害を引き起こす場合があり、かつ、細胞の構成要素、例えば脂質およびDNAに損傷を及ぼす過酸化物およびフリーラジカルの生成による毒性作用の原因となる場合がある。特に、外部要因は、いわゆる「酸化的ストレス」と称される、細胞内で通常のレドックス状態の障害を引き起こす場合がある。酸化的ストレスによる特に有害な側面は、反応性酸素種(「ROS」)の生成であり、反応性酸素種としては、フリーラジカルおよび過酸化物を含む。かかる種において反応性の低い種の中には、遷移金属との酸化還元反応によって、更に攻撃的なラジカル種に変換され得るものもあり、この攻撃的なラジカル種は広範囲の細胞の損傷を引き起こす場合がある。このような酸素誘導種の殆どは、通常の好気的代謝によって低水準にて生成され、かかる種が引き起こす、細胞に対する損傷は、常に修復される。しかしながら、壊死を引き起こす深刻な水準の酸化的ストレス下では、損傷は、ATP枯渇を引き起こし、アポトーシス死の制御を妨害し、そして細胞を簡単に崩壊させる。
【0003】
酸化的ストレスは、多くの研究における主題であり、そして種々の外部要因は、細胞における酸化的ストレスの水準に影響を及ぼすと仮定されてきた。例えば、紫外線に対する長時間の曝露は、損傷ROSを形成するきっかけとなるか、または損傷ROSの形成を際だたせる場合があると考えられている。
【0004】
体内での酸化的ストレスの水準を検出し、そして低減する方法を見出すことは明らかに望ましい。しかしながら、皮膚に対する酸化的ストレスの作用を評価する従来の方法は、皮膚細胞を採取する(例えば、皮膚生検による)侵襲的方法、コストのかかる臨床研究、または生存細胞を収集する侵襲的方法を必要とする。従来の生体外方法では、種々の方法で得られる「培養された」細胞に対する外部攻撃の作用をシミュレートすることによって酸化的ストレスを評価しようと試み、これにより、完全な生物学的反応を捕捉しない作用を測定する。
【0005】
更に、従来の方法は、一般に、高価で、且つ、複雑な器械、例えば高速液体クロマトグラフィを使用することによって、除去される細胞における酸化防止剤の含有量、または測定値を定量化しようと試みる。かかる器械は、扱いにくく、簡単に移動されず、高価で、使用するために幅広い訓練を必要とし、そして検出において低い感度を有する。
【0006】
従って、出願人等は、従来技術の教示が、(a)酸化的ストレスから高い水準で保護する局所的組成物、または(b)酸化的ストレスに対して反応する生物系の能力を評価する、単純で、安価で、信頼性が高く、非侵襲的で、かつ/または更に完全な手段を提供しないことに気が付いた。従って、上述した欠点のうち1つ以上を克服することが望ましいであろう。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の一態様において、哺乳類における酸化的ストレスの評価方法が提供される。かかる方法は、a)前記哺乳類の皮膚細胞を易酸化性部分(oxidizable moiety)に曝露するステップと、b)前記皮膚細胞を外部の攻撃に曝露するステップと、c)前記易酸化性部分の反応生成物を評価するステップと、を含み、前記評価ステップ(c)の前に、前記皮膚細胞は、除去される皮膚細胞が生存可能となるように前記哺乳類から非侵襲的に除去される。
【0008】
本発明の他の態様において、パーソナルケア組成物は、日焼け止め剤を含み、この組成物は、少なくとも約40%の酸化保護率(oxidation protection factor)を有する。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の詳細な説明および特許請求の範囲から明白となるであろう。
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
当業者は、本願の明細書の記載に基づき、本発明を最大限に利用することが可能であると考えられる。以下の特定の実施形態は、単に説明しているだけであり、残りの開示部分をいかなる方法でも何ら限定するものではないと解釈されるべきである。
【0011】
特段定義しない限り、本願明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同一の意味を有する。
【0012】
本願の明細書で使用されるような、「哺乳類における酸化的ストレスの評価」は、哺乳類の細胞での反応性酸素種生成、および/またはかかる反応性酸素種を生成する能力に関する情報を得ることを意味する。反応性酸素種(ROS)は、生物系において非常に反応性であるフリーラジカルを含む。ROSの例は、過酸化物、例えばスーパーオキシドおよび過酸化水素、ならびに一重項酸素およびペルオキシ亜硝酸である。かかる情報により、例えば、皮膚の現在の健康に対する洞察(例、所定の美容上または製薬上の皮膚治療が必要かどうかを決定するため)、ならびに外部の外傷または治療に対する皮膚の反応に関する洞察を得ることが可能である。
【0013】
本発明によると、哺乳類の皮膚における酸化的ストレスは、a)哺乳類の皮膚細胞を易酸化性部分に曝露し、b)皮膚細胞を外部の攻撃に曝露し、そしてc)易酸化性部分の反応生成物を評価する、ことによって評価される。これらのステップは、(a)の後に(b)で、その後に(c)の順序にて行われる。更に、評価ステップ(c)の前、すなわち、ステップ(a)の前、またはステップ(a)と(b)との間、またはステップ(b)と(c)との間に、皮膚細胞は、除去される皮膚細胞が生存可能となるように哺乳類から非侵襲的に除去される。このように、評価ステップ(c)は、除去された、生存可能な皮膚細胞で行われる。
【0014】
〔生存可能な皮膚細胞の非侵襲的除去〕
本願の明細書で使用されるような、「生存可能な皮膚細胞の非侵襲的除去」は、角質層、および必要により表皮から除去するものの、真皮から除去しないように、被験哺乳類の皮膚から皮膚細胞を分離し、そして収集することを意味する。好ましい実施形態においては、角質層からのみ除去し、表皮からは除去しない。本願の明細書で使用されるような「生存可能な(viable)」は、皮膚細胞が、生き、発達し、または成長することが可能であり、ならびに好ましい条件下で、代謝活性、例えば酵素反応可能であることを意味する。例えば、攻撃的な溶剤に曝露することによって溶解された皮膚細胞は、生存可能ではない。
【0015】
本発明の一の実施形態において、非侵襲的除去は、表面ストリッピングするステップを含み、すなわち、生存可能な皮膚細胞が、被験者の皮膚の外面から取り除かれる。一の特に好適な実施形態において、皮膚細胞の非侵襲的除去は、哺乳類の皮膚表面を接着剤と接触させるステップであって、接着剤は、基材(substrate)に付着されている、ステップと、皮膚表面から接着剤を強制的に除去し、これにより、皮膚細胞を皮膚表面から分離し、接着剤と結合させるステップとを含む。かかる方法は、「テープストリッピング」と称されるのが一般的であり、皮膚に結合される接着剤を有する可撓性の基材が、除去されるべき皮膚と接触するように置かれる。皮膚からテープを引き離すことにより、皮膚細胞が角質層から除去される。その後、皮膚細胞は、テープから分離され得る。
【0016】
使用され得る適切なテープの例は、CuDerm Corporation(テキサス州ダラス)から市販されているD−SQUAMEを含む。
【0017】
〔易酸化性部分に対する皮膚細胞の曝露〕
皮膚上にあるか、または皮膚から除去される皮膚細胞は、最初に易酸化性部分(oxidizable moiety)に曝露される。本願の明細書で使用されるような、「部分(moiety)」は、化合物、元素(element)、ラジカル、またはイオン、またはそれらの一部を意味する。「易酸化性部分」は、反応性酸素種との反応を受けることが可能な部分を意味する。易酸化性部分は、入手可能なROSとの反応が容易に起こり、そしてROSが、他の細胞の構成要素とは対照的に、易酸化性部分と優先的に反応するように選択されるのが好ましい。
【0018】
一の望ましい実施形態において、易酸化性部分に対して皮膚細胞を曝露することにより、易酸化性部分が皮膚細胞に浸透する。本願の明細書で使用されるような、「浸透(penetration)」は、易酸化性部分が皮膚細胞の外側膜を通って、細胞の内部に移動することを意味する。皮膚細胞内への易酸化性部分の移動は、例えば、受動拡散または浸透(osmosis)によって行われても良い。
【0019】
他の実施形態において、易酸化性部分に対する皮膚細胞の曝露では、皮膚細胞に浸透し、そして皮膚細胞内で1種以上の化学種(例、酵素)と反応する化学種を準備して易酸化性部分を形成するステップを含む。
【0020】
他の実施形態において、易酸化性部分に対する皮膚細胞の曝露では、易酸化性部分が皮膚細胞に浸透することを必要とせず、むしろ皮膚細胞と流体連通することを必要とする。例えば、易酸化性部分は、皮膚細胞内で生成されるROSが、細胞膜を通って、または細胞膜に拡散し、次に、易酸化性部分と反応するように皮膚細胞の外側に位置させられても良い。
【0021】
易酸化性部分を有する特に好適な化合物が、以下に記載される。
【0022】
〔外部攻撃への曝露〕
次に、皮膚上にあるか、または皮膚から除去される皮膚細胞は、外部攻撃に曝露される。皮膚細胞がある範囲の現実の生化学反応(spectrum of realistic biochemical responses)を経験することを可能とするために、かかるステップで皮膚細胞が生存可能であることが重要である(生きている哺乳類の皮膚上にあるか、または皮膚から除去されたものの、上述したように依然として生存可能である)。例えば、生存可能な皮膚細胞において、天然の酸化防止剤、例えばグルタチオンは、生化学的に不活性化され得るので、その他の方法でROSと易酸化性部分との間で生じるだろう反応の度合いに影響を与えることが可能である。
【0023】
外部攻撃の例は、哺乳類の皮膚細胞においてROSを生成することが可能であるもの、例えば、洗浄剤(例、界面活性剤を含む皮膚および髪の毛の洗浄剤)および化粧;シェービングおよびカッティング;ならびに環境要因、例えばUV光(例、太陽光、またはUVランプおよび太陽シミュレータなどの非自然源からのUV光)、オゾン、燃焼から等の排気、汚染物質、塩素および塩素含有化合物、ならびにタバコの煙を含む。一の特に顕著な実施形態において、外部攻撃は、紫外線である。
【0024】
〔易酸化性部分の反応生成物の評価〕
外部攻撃への皮膚細胞の曝露に応じて、反応(例、化学反応)が、皮膚細胞において易酸化性部分とROSとの間で起こる。これにより、1種以上の反応生成物が生成される。
【0025】
易酸化性部分は、「ホスト化合物」における反応性基または部位であっても良い。ホスト化合物は、ROSと易酸化性部分との間における反応によって生成される少なくとも1種の反応生成物が、例えば、その反応生成物と関連する電磁信号によって検出され得るように選択されるのが好ましい。例えば、電磁放射線は、かかる反応生成物と相互作用させられることが可能であり、この電磁放射線により得られる電磁信号は、検出され、好ましくは定量化されても良い。
【0026】
従って、一の実施形態において、易酸化性部分の反応生成物の評価は、反応生成物と関連する電磁放射信号を測定するステップを含む。適切な電磁放射信号の例は、蛍光信号および発光用信号、例えば化学発光信号を含む。従って、反応生成物は、蛍光性の反応生成物であっても良い。
【0027】
特に好適なホスト化合物は、発光用、化学発光用、または蛍光用「プローブ」または「分子プローブ」と一般に称される化合物である。これらのプローブは、当該分野で知られている極めて広範な化合物から選択されても良い。プローブは、過酸化物等のROSに対して、高い水準の選択率および感度を与えるように選択されるのが望ましい。好適なプローブの一類は、屡々、「インターナルプローブ」と称され、すなわち、かかるプローブは、皮膚細胞内に拡散可能であり、皮膚細胞内でROSと反応可能である。インターナルプローブの1種は、細胞への拡散時に酵素によって変更されても良く、これにより、プローブは、蛍光信号等の電磁信号を、主としてROSとの反応時だけ生成可能となる。換言すると、かかるインターナルプローブは、蛍光性の反応生成物を生成するものの、ROSとの反応前は、蛍光性ではない。
【0028】
細胞透過性またはインターナルプローブの例は、Richard P. Haugland、およびMichelle T. Z. Spence(Invitrogen Corp. Press 2005)による“The Handbook- A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, 第10版”に列挙されるプローブを含み、以下のものが含まれる:2’、7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、2’,7’−ジクロロフルオレセイン、カルボキシ−2’,7’−ジフルオロジヒドロフルオレセインジアセテート、5−(および6−)クロロメチル−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート、アセチルエステル、カルセインアセトキシメチルエステル、ジヒドロカルセインアセトキシメチルエステル、ジヒドロローダミン123、ジヒドロエチジウム、2,3,4,5,6−ペンタフルオロテトラメチルジヒドロローザミン(dihydroethidium, 2,3,4,5,6-pentafluorotetramethyldihydrorosamine)、ビオチニル化グルタチオンエチルエステル、テトラゾリウム塩、例えばMTTおよびXTT。特に好適なインターナルプローブは、5−(および6−)クロロメチル−2’,7’−ジクロロヒドロフルオレセインジアセテート、Invitrogen社(カリフォルニア州、カールズバッド)から市販されているアセチルエステル(CM−H2DCFDA)である。
【0029】
他の好適なプローブは、いわゆる「エクスターナルプローブ」、すなわち、皮膚細胞に浸透可能ではないものの、皮膚細胞から拡散するROSと依然として反応可能であるプローブを含む。
【0030】
本発明での使用に好適な場合があるエクスターナルプローブは、Richard P. Haugland、およびMichelle T. Z. Spence(Invitrogen Corp. Press 2005)による“The Handbook- A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, 第10版”に列挙されるプローブであり、以下のものが含まれる:10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン、3’−(p−アミノフェニル)フルオレセイン、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン、R−フィコエリスリン(R-phycoerythrin)、アロフィコシアニン、フルオレセイン−標識ホスファチジルエタノールアミン、およびヘキサデカノイルアミノフルオレセイン。
【0031】
一の実施形態によると、1〜10μモルの濃度のホスト化合物を有する溶液は、非侵襲的に除去される、生存可能な皮膚細胞に曝露される。
【0032】
〔生存可能な皮膚細胞に対する外部組成物の供給〕
一の実施形態において、外部組成物は、生存可能な皮膚細胞に対して供給される。外部組成物は、細胞内でのROSの生成、またはROSを生成する細胞の能力に対する、その組成または成分の作用を測定するために塗布されるのが一般的である。外部組成物は、例えば、酸化防止剤または日焼け止め剤を含んでいても良い。
【0033】
好適な酸化防止剤は、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ベータカロテン、アルファヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、アルファヒドロキシ酪酸、アルファヒドロキシイソ酪酸、アルファヒドロキシイソカプロン酸、アトロラクチン酸(attrolactic acid)、アルファヒドロキシイソ吉草酸、ピルビン酸エチル、ガラクツロン酸、グルコヘプトン酸、グルコヘプトノ1,4−ラクトン(glucoheptono 1,4-lactone)、グルコン酸、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、グリコール酸、イソプロピルピルベート(isopropyl pyruvate)、ピルビン酸メチル、粘液酸、ピルビン酸、糖酸、糖酸1,4−ラクトン、酒石酸、およびタルトロン酸;ベータヒドロキシ酸、例えばベータ−ヒドロキシ酪酸、ベータ−フェニル乳酸、ベータ−フェニルピルビン酸;ポリフェノール;植物性抽出物、例えば緑茶、大豆製品、オオアザミ(milk thistle)、藻類、アロエ、アンゼリカ、ダイダイ、コーヒー、オウレン、グレープフルーツ、ホーレン(hoellen)、スイカズラ、ジュズダマ、ムラサキ属(lithospermum)、桑の木、シャクヤク、プエラルア(puerarua)、ナイス(nice)、ベニバナ、ならびにこれらの混合物を含む。
【0034】
好適な日焼け止め剤としては、紫外フィルター、例えば、当業者に知られていて、パーソナルケア製品において紫外線を吸収または散乱させるために一般的に使用される無機または有機(油溶性または水溶性)フィルターを含む。非限定例は、無機日焼け止め剤、例えば亜鉛およびチタンの酸化物;有機紫外フィルター、例えばベンジリデンカンファー、4−アミノ安息香酸誘導体、特に4−(ジメチルアミノ)安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸−2−オクチルエスエル、および4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルエステル;桂皮酸のエステル(esters of cinnamonic acid)、サリチル酸のエステル、ベンゾフェノンおよびベンゾイルメタンの誘導体、ベンザルマロン酸のエステル(esters of benzalmalonic acid);トリアジン誘導体;プロパン−1,3−ジオン;ケトトリシクロデカン誘導体(ketotricyclodecane derivatives);2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸;ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体;3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体;安息香酸2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシルエステルの誘導体、特に当該分野で既知の有機フィルターを含む。
【0035】
本発明の特に顕著な実施形態において、外部組成物は、酸化防止剤および日焼け止め剤を含む。
【0036】
外部組成物は、担体、例えば水、および種々の、パーソナルケア調剤に好適な
他の成分、例えば、界面活性剤、乳化剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、pH調節剤、芳香剤等を含んでいても良い。しかしながら、外部組成物は、重要な反応生成物(reaction product of interest)を評価する(例、定量的に)能力を実質的に妨げるだろう成分を含まないのが望ましい。したがって、方法が、易酸化性部分とROSとの間における反応生成物の蛍光信号を定量化するステップを含む場合、反応生成物と同一の波長で蛍光を発する成分を除外するのが望ましいであろう。
【0037】
一の実施形態において、外部組成物は、生存可能な皮膚細胞を非侵襲的に除去する前に、被験者の皮膚に局所的に塗布される。他の実施形態において、外部組成物は、皮膚細胞が皮膚から除去された後に、皮膚細胞に供給される。
【0038】
〔酸化保護率〕
一の実施形態において、外部組成物は、外部の攻撃に曝露される前に皮膚に対して局所的に塗布される。外部組成物により、外部の攻撃による作用を低下させるのが好ましい。本発明の方法を用いて、かかる外部組成物の酸化保護率(Oxidation Protection Factor)、すなわちOPFが、測定され、そして評価されうる。
【0039】
例えば、一の実施形態において、外部の攻撃は、UV放射線であり、反応生成物は、蛍光性の反応生成物であり、そして日焼け止め剤を含む外部組成物は、皮膚を紫外線に曝露する前に、皮膚に対して局所的に塗布される。
【0040】
外部組成物のOPF、すなわちXは、本発明の方法および以下の等式を用いて求められる:
OPF=100X(SN,UV−SX,UV)/(SN,UV−SN,NUV
但し、SN,UVは、外部組成物が皮膚細胞に塗布されず、その後、紫外線に曝露された場合に得られる蛍光信号を表し;
N,NUVは、外部組成物が皮膚細胞に塗布されず、UVに曝露されなかった場合に得られる蛍光信号を表し;そして
X,UVは、外部組成物Xが皮膚細胞に塗布され、その後、紫外線に曝露された場合に得られる蛍光信号を表す。
【0041】
一の実施形態において、日焼け止め剤を含むパーソナルケア組成物は、少なくとも約40%、好ましくは45%、更に好ましくは50%のOPFを有して提供される。かかるパーソナルケア組成物は、上述したように担体および/または他の好適な成分を含んでいても良い。特に、パーソナルケア組成物は、酸化防止剤を含んでいても良い。
【0042】
以下の非限定的な実施例により、本発明を更に説明する。
【0043】
〔実施例1〕
種々のニキビ抑制組成物(外部の攻撃)に起因する人体の皮膚における酸化的ストレスに関する一連の評価は、以下の通りに行われた。
【0044】
各々の場合で、一貫した基準の皮膚面を提供するために、380mmの表面積を有する22mmの長さのD−SQUAMEテープが、均一の機械的圧力で、被験者の内側の手のひら側の前腕に貼り付けられ、そして皮膚にて1分間放置された。テープが、鉗子で除去され、そして廃棄された。その後、第2のテープが同じ部位に貼り付けられ、そして、皮膚細胞を表面ストリップするために、上述の貼付および除去処理が繰り返された。この第2のテープが、食塩水(HBSS:ハンクス液(Hanks Blanaced Salt Solution))を含む12穴の組織培養プレートの底部に置かれた。4回の複製が、各被験者に対して行われた。これらのテープは、番号1A:「生成物無し」と標識され、以下に示すように評価された。
【0045】
上述の処理が繰り返された。しかしながら、第2のテープを貼り付ける前に、10重量%の過酸化ベンゾイル(Reckitt Benckiser社(イギリス、スラウ)から市販されているClearasil Maximum Strength Acne Treatment Cream)を含む組成物が、被験者の内側の手のひら側の前腕の別の部位に対して1cmあたり4mgの表面濃度で局所的に塗布された。かかるテープが、上述したように収集穴に置かれた。類似の処理が、過酸化ベンゾイル(BPO)の濃度を変更しただけで繰り返された。
【0046】
番号1Bが、10%の過酸化ベンゾイルに相当し;番号1Cが、5%の過酸化ベンゾイルに相当し(Mentholatum Co.(ニューヨーク州オーチャード・パーク)から市販されているOxy Lotion);番号1Dが、2.25%の過酸化ベンゾイルに相当していた(L' Oreal社(フランス、パリ)から市販されているAcne Response Step 3 Blemish Fighting Lotion)。
【0047】
皮膚から除去するとき、テープストリップされた細胞が、早速、CM−H2DCFDA、すなわち、皮膚細胞内でDCFHに加水分解され、ROSとの反応時に蛍光性の反応生成物、すなわちDCFを形成するホスト化合物の5μモル溶液中において30分間に亘って培養された。
【0048】
組織培養プレートが濯がれて、過剰のCM−H2DCFDAを除去した。その後、皮膚テープが、Oriel Corp.(コネティカット州ストラトフォード)から市販されている太陽シミュレータで82KJ/mに曝露された。その後、DCFに関して、以下の通りに評価された。各テープが、蛍光プローブを用いて照射した1時間後に正確に分析され、そしてMolecular Devices社(カリフォルニア州サニーベール)から市販されている、485nmの励起波長および350nmの放射(検出)波長にて設定される、分光蛍光計のプレートリーダーで読み取られた。同じくMolecular Devices社(カリフォルニア州サニーベール)により供給されるSOFTMAXソフトウエアを使用して測定される平均蛍光強度(MFI)として報告される結果が、以下の表1に示される。
【表1】

【0049】
驚くべきことに、これらの結果は、本発明の方法にしたがって蛍光性を測定することによって、異なる外部の攻撃に曝露されることにより形成されるROSの水準、例えば、皮膚に局所的に塗布される酸化化合物の種々の水準を識別することができることを示している。
【0050】
〔実施例2〕
日焼け止め剤を含む2種類の局所的組成物に関する酸化保護率、OPFが、以下の通りに測定され、そして比較された。測定は、実施例1に類似の方法で行われた。11枚の皮膚テープが、評価される各々のサンプル、ならびに2つの対照(以下に記載)に与えられた。皮膚テープが、22〜55歳の範囲の年齢で、II〜III型の肌質の男性および女性の被験者から収集された。皮膚テープが、太陽シミュレータにおいて110KJ/mに曝露された。
【0051】
比較番号2Aおよび2Bに対しては、外部組成物が塗布されなかった。Schering-Plough社(ニュージャージー州ケニルワース)から市販されている、外部組成物のCoppertone Water Babies Spectra 3 SPF 50が、比較番号2Dに対して塗布された。以下の外部組成物が、本発明により番号2Cに対して塗布された:
【表2】

【0052】
外部組成物が、5cmのプレートあたり50μLの生成物の表面被覆率でポリメチルメタクリレートのプレートに塗布された。外部組成物は、環境条件下に置かれて約5〜10分間に亘って乾燥された。プレートが、組成物を下にして、皮膚細胞を含む特定の組織培養プレートに置かれ、培養された細胞を完全に覆った。サンプル2B〜2Dの細胞が、培養プレート上のPMMAプレートと一緒に、UV線量に対して15分間曝露された。サンプル2Aは、UVに対して曝露されなかった。番号2Cおよび2DのOPFが、下式を用いて計算された:
OPF=100X(SN,UV−SX,UV)/(SN,UV−SN,NUV
但し、SN,UVは、外部組成物無しで、UVに曝露した場合の蛍光信号を表し、本実施例の場合には、84.55であり;
N,NUVは、外部組成物無しで、UVに曝露しない場合の蛍光信号を表し、本実施例の場合には、27.99であり;そして
X,UVは、外部組成物Xに関し、UVに曝露した場合の蛍光信号を表し、本実施例の場合には、55.02または63.89であった。
【0053】
結果が、以下の表2に示される。
【表3】

【0054】
驚くべきことに、結果は、酸化的ストレス、特に、UV−誘発ROSにより生成される酸化的ストレスに耐える/妨げる局所的組成物の能力を評価するために、本発明の方法が使用され得ることを示していた。更に、高いOPFにより明らかにされるように、酸化的ストレスからの高い度合いの保護を有する組成物を提供することが可能であった。特に、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45%、更に好ましくは少なくとも約50%のOPFを有するパーソナルケア組成物を提供することが可能であった。
【0055】
本発明は、その詳細な説明と共に記載されたが、上述の記載は、本発明を説明する目的であって、添付の特許請求の範囲により定められる、本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。他の態様、利点、および変更は、特許請求の範囲内にある。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) 哺乳類における酸化的ストレスを評価する方法において、
a)前記哺乳類の皮膚細胞を易酸化性部分に曝露するステップと、
b)前記皮膚細胞を外部の攻撃に曝露するステップと、
c)前記易酸化性部分の反応生成物を評価するステップと、
を含み、
前記評価ステップ(c)の前に、前記皮膚細胞は、除去される前記皮膚細胞が生存可能となるように前記哺乳類から非侵襲的に除去される、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記評価ステップ(c)は、前記反応生成物と関連する電磁信号を測定するステップを含む、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記反応生成物は、蛍光性反応生成物である、方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
前記曝露ステップ(a)は、前記易酸化性部分を前記皮膚細胞に浸透させる(causes penetration of said skin cells by said oxidizable moiety)、方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
前記皮膚細胞に対して外部組成物を提供するステップ、
をさらに含み、
前記外部組成物は、酸化防止剤、日焼け止め剤、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
(6) 実施態様5に記載の方法において、
前記提供ステップは、前記曝露ステップ(b)の前に、前記皮膚細胞に対して局所的に前記外部組成物を塗布するステップを含む、方法。
(7) 実施態様5に記載の方法において、
前記提供ステップは、前記皮膚細胞の前記哺乳類からの前記非侵襲的除去の前に行われる、方法。
(8) 実施態様5に記載の方法において、
前記提供ステップは、前記皮膚細胞の前記哺乳類からの前記非侵襲的除去の後に行われる、方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記非侵襲的除去は、前記皮膚細胞の表面ストリッピングを含む、方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記非侵襲的除去は、
前記哺乳類の皮膚表面を接着剤と接触させるステップであって、前記接着剤は、基材に付着されている、ステップと、
前記皮膚表面から前記接着剤を強制的に除去し、これにより、前記皮膚細胞を前記皮膚表面から分離し、前記接着剤と結合させるステップと、
を含む、方法。
【0057】
(11) 実施態様1に記載の方法において、
前記外部の攻撃は、前記皮膚細胞により反応性酸素種を生成する、方法。
(12) 実施態様1に記載の方法において、
前記外部の攻撃は、紫外線、煙、温度、圧力、化学物質、湿度、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
(13) 実施態様1に記載の方法において、
前記外部の攻撃は、紫外線である、方法。
(14) パーソナルケア組成物において、
日焼け止め剤、
を含み、
前記組成物は、少なくとも約40%の酸化保護率を有する、パーソナルケア組成物。
(15) 実施態様13に記載のパーソナルケア組成物において、
前記組成物は、少なくとも約45%の酸化保護率を有する、パーソナルケア組成物。
(16) 実施態様13に記載のパーソナルケア組成物において、
前記組成物は、少なくとも約50%の酸化保護率を有する、パーソナルケア組成物。
(17) 実施態様13に記載のパーソナルケア組成物において、
酸化防止剤、
をさらに含む、パーソナルケア組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における酸化的ストレスを評価する方法において、
a)前記哺乳類の皮膚細胞を易酸化性部分に曝露するステップと、
b)前記皮膚細胞を外部の攻撃に曝露するステップと、
c)前記易酸化性部分の反応生成物を評価するステップと、
を含み、
前記評価ステップ(c)の前に、前記皮膚細胞は、除去される前記皮膚細胞が生存可能となるように前記哺乳類から非侵襲的に除去される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記評価ステップ(c)は、前記反応生成物と関連する電磁信号を測定するステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記反応生成物は、蛍光性反応生成物である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記曝露ステップ(a)は、前記易酸化性部分を前記皮膚細胞に浸透させる、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記皮膚細胞に対して外部組成物を提供するステップ、
をさらに含み、
前記外部組成物は、酸化防止剤、日焼け止め剤、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記提供ステップは、前記曝露ステップ(b)の前に、前記皮膚細胞に対して局所的に前記外部組成物を塗布するステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記提供ステップは、前記皮膚細胞の前記哺乳類からの前記非侵襲的除去の前に行われる、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、
前記提供ステップは、前記皮膚細胞の前記哺乳類からの前記非侵襲的除去の後に行われる、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記非侵襲的除去は、前記皮膚細胞の表面ストリッピングを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記非侵襲的除去は、
前記哺乳類の皮膚表面を接着剤と接触させるステップであって、前記接着剤は、基材に付着されている、ステップと、
前記皮膚表面から前記接着剤を強制的に除去し、これにより、前記皮膚細胞を前記皮膚表面から分離し、前記接着剤と結合させるステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記外部の攻撃は、前記皮膚細胞により反応性酸素種を生成する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記外部の攻撃は、紫外線、煙、温度、圧力、化学物質、湿度、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
前記外部の攻撃は、紫外線である、方法。
【請求項14】
パーソナルケア組成物において、
日焼け止め剤、
を含み、
前記組成物は、少なくとも約40%の酸化保護率を有する、パーソナルケア組成物。
【請求項15】
請求項13に記載のパーソナルケア組成物において、
前記組成物は、少なくとも約45%の酸化保護率を有する、パーソナルケア組成物。
【請求項16】
請求項13に記載のパーソナルケア組成物において、
前記組成物は、少なくとも約50%の酸化保護率を有する、パーソナルケア組成物。
【請求項17】
請求項13に記載のパーソナルケア組成物において、
酸化防止剤、
をさらに含む、パーソナルケア組成物。

【公開番号】特開2008−292452(P2008−292452A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−22527(P2008−22527)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(598039367)ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・カンパニーズ・インコーポレイテッド (79)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Companies,Inc.
【住所又は居所原語表記】Grandview Road,Skillman,New Jersey 08558,United States of America
【Fターム(参考)】