説明

皮膚の存在を検知する装置

【課題】
【解決手段】
本発明の装置は、(a)同時に皮膚に接触して皮膚の所定パターンを検出するように設計されている先端部をそれぞれに有したプローブのセットを含んでおり、プローブのうち少なくとも1つはパルス式電気信号を送信するように構成されており、プローブのうち少なくとも1つ(前記の送信プローブと同一又は異なるプローブ)は送信された電気信号を受信するように構成されており、本装置はさらに、(b)受信された電気信号を検出する信号検出器と、(c)信号検出器からの少なくとも1つの検出信号から得られた値を、少なくとも1つの設定数値と比較する手段と、(d)検出された信号から得られた値が設定数値とは設定量を超えて異なるときに出力を提供する手段と、を含んでいる。この装置は、様々な皮膚状態の局所治療のため、並びに不都合な発毛を抑制するために強力パルス光線装置を制御するために利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚の存在を検知する装置に関する。典型的には、本発明は皮膚の存在を検知できないところでは、光線治療器を使用させないための安全装置として利用される装置に関する。本発明は、治療目的及び美容目的の両方において、そのような光線治療器を制御すべく利用するのに適した、皮膚の存在を検知する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの光線療法が知られている。例えば、様々な皮膚状態の局所治療のため、並びに不都合な発毛を抑制するために強力パルス光線(IPL)が利用される。
【0003】
光線が治療対象の領域に向けられることが重要であり、繊細な部位(例:眼)に向けられたり、皮膚が検知されない部位で使用されたりしないことが大切である。
【0004】
米国特許願US2004/0167502A1は対象面から放出される電磁放射線のスペクトルを調べることで人の皮膚の存在を検知する装置及び方法を開示する。そのような装置は皮膚外科治療用の装置において必要とされる光線制御とは別に、複雑な回路と光線の制御とが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の一つの目的は、前記の目的を満たす単純構造の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴によれば、皮膚の存在を検知する装置が提供される。この装置は、(a)同時に皮膚に接触して皮膚の所定パターンを検出するように設計されている先端部を、それぞれに有したプローブのセットであって、これらプローブのうち少なくとも1つはパルス式電気信号を送信するように構成されており(以降“送信プローブ”)、さらに少なくとも1つのプローブは前記の送信された電気信号を受信するように構成されている(以降“受信プローブ”)プローブセットと、(b)受信された電気信号を検出する信号検出手段と、(c)該信号検出手段からの少なくとも1つの検出信号から得られた値を、少なくとも1つの設定数値と比較する手段と、(d)前記の検出された信号から得られた値が前記の設定数値とは設定量を超えて異なるときに出力を提供する手段と、を含んでいる。
【0007】
受信プローブと送信プローブとは同じプローブであっても別々のプローブであっても構わない。もし受信プローブと送信プローブとが同一であれば、検知装置は静電容量に基づいた測定値(設定電圧に到達するまでの時間、等々)を測定する。この実施形態では、プローブセット内の全てのプローブが送信プローブと受信プローブの両方であることが望ましい。
【0008】
もし送信プローブと受信プローブとが別々のプローブであるなら、1つのプローブを送信プローブとし、残りのプローブを受信プローブとすることが望ましい。
【0009】
本発明の1つの好適な実施形態においては、プローブの先端部は1つの支持体に固定される。例えば、それら先端部に長方形のような二次元の型を構成させ、これら全ての先端部が皮膚と接触状態となるように設計される。好適には、この二次元の型は皮膚と接触状態となる放電灯のごとき強力パルス光線装置の開口部の面積よりも多少大きな面積で周囲部を提供する。このような型は典型的には縦が10mmから15mmで、横が20mmから30mmの長方形である。このような特徴を備えた構成は開口部をプローブによって妨害させない。
【0010】
好適にはプローブ自体は細長いピンの形態であり、典型的には約2mmから3mmの直径を有するものである。
【0011】
乾燥皮膚、油性皮膚及びゲルで覆われた皮膚は、導電率特性及び静電容量特性を有しており、それらは全て異なる電気特性を有しているため、許容誤差を与えるために前出の設定数値とは十分に異なる設定量とすることが望ましい。例えば、設定数値が電圧値であれば、設定範囲の最低数値は皮膚に関して知られている最小値以上とすることが望ましい。設定数値が静電容量に関連するものであるなら、設定数値は閾電圧値に到達するまでの経過時間に基づくものであることが望ましい。この経過時間はプローブが接触する皮膚の静電容量により変動する。
【0012】
本発明の検知装置は、予備設定された入力状態が充足されたとき(すなわち、設定範囲内のパラメータを有した皮膚が検知されたとき)に、強力パルス光線ユニット(装置)を起動させるマイクロプロセッサーの自動判定段階において皮膚の存在の検知のために使用される。
【0013】
検知装置の好適な利用形態は、測定されたパラメータによって、ゲル状物質が皮膚に塗布されているか否かを自動的に判定させることである。この場合、強力パルス光線の発射はそのようなゲルが塗布された状態の皮膚が検知されたときにのみ許される。
【0014】
検出値が設定範囲外であるときに提供される出力は典型的には警告である。典型的にはこの警告には可聴信号、可視信号または動作信号(装置の振動又は他の動作)が含まれる。あるいは、出力は、設定範囲を外れた値が検出されたときに強力パルス光源のスイッチを切るように設定されたフィードバック信号でもよい。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、強力パルス光源の作動を制御する方法が提供される。この方法は、それぞれが試験面上に所定パターンを形成するように試験面に同時に接触する複数の先端部を有したプローブのセットを利用するステップと、少なくとも1つのプローブからパルス電気信号を送信するステップと、少なくとも1つのプローブ(前記の送信プローブと同一又は異なるプローブ)によって信号を受信するステップと、送信されたパルス電気信号を受信するそれぞれのプローブと、対応する個別の信号検出器とを接続するステップと、各信号検出器からの検出された信号の値を少なくとも1つの設定数値と比較するステップと、比較された値が設定範囲を外れている場合に、光源の作動を停止または許可する出力を提供するステップと、を含んでいる。
【0016】
本発明の好適な実施形態を、添付図面を利用しながら例示としてさらに詳細に解説する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例による検知装置の概略図である。
【図2】本発明の検知装置に使用される4つのプローブの概略図である。
【図3】本発明の第2実施例による検知装置の回路図である。
【図4】本発明の検知装置の好適な利用例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例による検知装置に利用される典型的な閾値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1で示す本発明の第1実施例によれば、約5MHzの周波数を発生させる送信プローブ2である“アンテナ”に連結されたオシレータ1が利用される。受信プローブ3、4、5は送信プローブ2から送信される信号を受信する。各受信プローブ3、4、5は、ダイオードブリッジ等に対応する整流器6、7、8にそれぞれ接続されている。各整流器からの信号が、マイクロプロセッサー9への入力である複数チャンネルのアナログ/デジタル変換器(ADC)に送信される。同様に、オシレータから直接的に得られる信号は、受信信号が送信された信号の振幅で基準化されるようにADCに提供される。
【0019】
マイクロプロセッサーに接続されている記憶装置10は様々な皮膚タイプの導電率及び静電容量値等の基準データを含んでいる。さらに記憶装置10は異なる条件下である、例えば結合ゲルの存在下又は不在下で、様々な皮膚タイプの基準データをも含む。加えて、記憶装置10は皮膚タイプと条件とを、その皮膚タイプを治療するために必要とされる強力パルス光線量と相関させた表を含む。よって、マイクロプロセッサー9は、望まれる治療結果を提供しつつ、現実条件下で皮膚が耐え得る投射量を提供することができる。
【0020】
図2は強力パルス光線を発生させる放電管(図示せず)を含む検知装置の正面図である。この放電管はガラスブロック11で保護されている。放電管は長方形枠で囲まれた略長方形開口部12内に存在する。プローブ13aから13dはそれぞれ絶縁支持部を備え、それぞれ開口部12の角近辺の外側に配置されている。
【0021】
本発明の第2実施例による放電管(図示せず)の放電を制御する例示的な制御回路は図3に図示されており、図2で使用されている参照番号に対応したプローブ13aから13dを含む。
【0022】
図3で示す制御回路14は、電力レール16からの入力として、持続時間Tの周期パルスの連続列(train)を直接受信する処理ユニット15を含む。この入力は回路通路17aから17dを介した処理ユニット15への各後続入力のための時間基準フレームを設定するために使用される。それぞれの回路通路17aから17dは、電力レール16から電圧を入力として別々に受領するコンパレータ18をそれぞれ含む。各コンパレータ18は、それぞれの入力で電圧が、例えば約3.8Vである設定閾値に到達したとき、対応する出力を処理ユニット15へ発生させるように設計されている。
【0023】
各コンパレータ18へ入力された電圧は、それぞれのコンパレータ18に対して直列に配置されている、典型的にはそれぞれ100kΩである一組の抵抗19によって統制される。これら4つのプローブ13aから13dのそれぞれは、直列抵抗ペア19の中間に位置する回路通路17aから17dにそれぞれ別々に接続されている。図3で示す実施例ではプローブ13aから13dは図2に関して上述したように配置され、電気信号を送受信するように構成されている。
【0024】
各プローブ13aから13dの先端部は、はじめは自由空間(空気と接触状態)に置かれているため少量の静電容量を発生させるであろう。従って、電圧パルスの電力レール16への適用は、それぞれのコンパレータ18への電圧入力を、時間間隔tで閾値電圧へと増加させる。プローブ13aから13dが全て皮膚と接触しているなら、プローブ13aから13dの実効的な静電容量を増加させ、時間間隔tを増加させる。
【0025】
利用に際しては、それぞれ約5Vで持続時間が100μ秒までの電圧パルスの周期列(train)が電力レール16に対して継続的に適用される。電力レール16上の各電圧パルスの前縁(leading edge)に対応する時間で、それぞれのコンパレータ18へ入力される電圧は増加し始める。各コンパレータ18の入力電圧の増加速度は、それぞれのプローブ13aから13dが自由空間に存在するか、皮膚と接触状態にあるかによって変動する。接触状態である場合には、各コンパレータ18へ入力される電圧の増加速度はさらに皮膚の状態により変動し、結合ゲルが皮膚に塗布されているか否かによっても変動する。
【0026】
プローブ13aから13dは皮膚と結合(接触)すると、それぞれのコンパレータ18の入力電圧は、それらプローブが自由空間に配置されている場合のコンパレータの入力電圧よりもゆっくり増加する。さらに、皮膚への結合ゲルの塗布は、それぞれのコンパレータ18へ入力される電圧上昇速度をさらに減速させることが確認されている。
【0027】
処理ユニット15は、全部のプローブ13aから13dが皮膚と接触していると判断したときに放電灯(図示せず)に強力光線パルスを発生させるべく信号を出力するだけである。従って、コンパレータ18が出力状況を変化させる時間がモニターされ、電力レール16における選択された電圧パルスの前縁(leading edge)で判定されるが、各コンパレータ18に対して測定される時間が閾時間値を超過しているときのみ、処理ユニット15は放電灯(図示せず)の放電を促すであろう。この点で、それぞれのコンパレータ18は出力状況を変化させる必要がない。もし各コンパレータ18からの出力が過剰に長い立ち上がり時間のために状況を変化させないなら、その状態は、それぞれのプローブ13aから13dが皮膚と接触状態であることを追加的に示す。
【0028】
従って、電力レール16への電圧パルスの継続的な適用は、プローブ13aから13dが皮膚と接触状態であるか否かの継続的確認を提供し、少なくとも1つのプローブ13aから13dが皮膚との接触状態を中止しているなら制御回路14は放電灯(図示せず)の放電を阻止するであろう。
【0029】
図4に示す典型的なフロー図は、本発明の第1実施例又は第2実施例による強力パルス光源の作動を制御する方法の手順またはステップを連続的に図示する。
【0030】
ブロックAは第1ステップ、すなわちゲルの皮膚への塗布ステップを示している。ブロックBは第2ステップ、すなわちプローブ2から5または13aから13dの皮膚への適用ステップを示している。
【0031】
ステップCでパルス式電気信号がプローブ2から5、または13aから13dを介して送信され、ステップDでプローブ2から5、または13aから13dそれぞれに関して閾電圧値に到達するまでの時間が測定される。ステップEでその時間が、記憶された閾値と比較され、ステップFでその時間が記憶された閾値よりも長いと判断されたとき、処理ユニット10または15は制御信号を出力して放電灯(図示せず)を放電させる。逆に、ステップFでその時間が記憶された閾値より短いと判断された場合には、放電灯(図示せず)の放電は阻止される。
【0032】
選択された記憶閾値は、適用電圧パルスの周波数にある程度影響される。従って、時間を基準化させることが好ましい。(送信器および受信器の両方であるプローブ13aから13dを備えた)本発明の第2実施例による装置を利用して、ゲルを塗布した皮膚の性質によって、基準化された時間値は油性皮膚では約5.1、脱脂された皮膚で約6.3、発汗した皮膚では約6.3、ゲルを塗布した皮膚では7.0以上が測定された。
【0033】
基準以下では放電を許可しない記憶時間は、例えば約4である前述の値に基づく。この場合、プローブ13aから13dがゲルで覆われた皮膚と接触状態にない場合にも放電が許可されるであろう。あるいは、基準以下では放電を許可しない記憶出力時間を約7に設定することもでき、この場合には放電はプローブ13aから13dが、ゲルを塗布した皮膚と接触状態にある場合にのみ許可されるであろう。
【0034】
図5はコンパレータが状況に応じて変化したとき測定された基準化時間の比較を示すグラフであり、棒Xはプローブ13aから13dが自由空間に配置されているとき、棒Yはプローブ13aから13dが皮膚と接触しているとき、棒Zはプローブがゲルが塗布された皮膚に接触しているときを示している。
【0035】
基準化時間が第1閾値(棒Y)以下である場合には皮膚が存在しないことを示すものと判断され、第2閾値を超えた場合にはゲルを塗布した皮膚が存在することを示すものと判断される(棒Z)。中間の値は油性皮膚の測定値に対応する。検出値が第1閾値以下である場合、強力パルス光源の不本意な作動を防止するために警告が発信されるか、またはフィードバック信号が提供される。
【0036】
前述の説明から本発明の装置および方法は、例えばプローブの1以上の先端部が皮膚と接触していない場合に、または例えばそれらが身体のその他の部位(目または粘膜等)に接触している場合に強力パルス光源の不本意な作動を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の存在を検知する装置であって、
(a)同時に皮膚に接触して皮膚の所定パターンを検出するように設計されている先端部をそれぞれに有したプローブのセットを含んでおり、前記プローブのうち少なくとも1つはパルス式電気信号を送信するように構成されており、前記プローブのうち少なくとも1つは前記送信された電気信号を受信するように構成されており、本装置はさらに、
(b)前記受信された電気信号を検出する信号検出手段と、
(c)前記信号検出手段からの少なくとも1つの検出信号から得られた値を、少なくとも1つの設定数値と比較する手段と、
(d)前記検出された信号から得られた値が前記設定数値とは設定量を超えて異なるときに出力を提供する手段と、
を含んでいることを特徴とする装置。
【請求項2】
所定パターンはプローブの先端部によって形成される長方形を含んでいることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
プローブはそれぞれが2mmから3mmの直径を有する細長いピンを含んでいることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
プローブ内の少なくともいくつかが電気信号の送信および受信の両方を行うように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
プローブセット内の全てのプローブが電気信号の送信および受信の両方を行うように構成されていることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
プローブの1つは電気信号を送信するように構成されており、前記プローブの残りは前記電気信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
強力パルス光源と組み合わされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
出力は強力パルス光源の作動を防止するフィードバック制御を含んでいることを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
強力パルス光源の作動を制御する方法であって、
それぞれが試験面上に所定パターンを形成するように前記試験面に同時に接触する複数の先端部を有したプローブのセットを利用するステップと、
少なくとも1つの前記プローブからパルス電気信号を送信するステップと、
少なくとも1つの前記プローブによって前記信号を受信するステップと、
前記送信されたパルス電気信号を受信するそれぞれの前記プローブと、対応する個別の信号検出器とを接続するステップと、
前記各信号検出器からの検出された信号の値を少なくとも1つの設定数値と比較するステップと、
前記比較された値が設定範囲を外れている場合に、光源の作動を防止または許可する出力を提供するステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項2から8のいずれか1項に記載の装置を利用する請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−524545(P2010−524545A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503600(P2010−503600)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050278
【国際公開番号】WO2008/129324
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509287496)サイデン リミテッド (3)
【Fターム(参考)】