皮膚保護用アルカリ度制御組成物及びその使用
1以上のカルボン酸多糖を含有する皮膚保護用アルカリ度制御組成物を開示する。前記組成物は、緩衝作用を提供して、これにより、水性系のpHにおける多大な増大を回避でき、及び/又は生体反応の結果としてアルカリ分が形成される水性系のpHを低減できる。この組成物は、パーソナル・ケア製品、例えば、スキンクリーム及びローション、傷ケア製品、衣類処理製品の形で使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚保護用アルカリ度制御組成物及び皮膚の保護及び/又はアルカリ度の制御のための、少なくとも1のカルボン酸多糖を含有する組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ペクチンは、植物の細胞壁と関連する複雑な多糖である。ペクチンは、ラムノース残基によって介在され、中性の糖側鎖及び非糖成分、例えば、アセチル基、メチル基及びフェルラ酸基にて変性されたα−1,4結合ポリガラクツロン酸主鎖骨格からなる。
中性の糖側鎖(アラビナン及びアラビノガラクタンを含む)は、主鎖骨格において、ラムノース残基に結合されている。ラムノース残基は、主鎖において、集合する傾向がある。そこで、結合した側鎖と共に、この領域は毛状領域と呼ばれ、主鎖骨格の残部は、従って、平滑領域と呼ばれる。
【0003】
米国特許第5,929,051号(Niら)には、植物細胞壁成分として、ペクチンが記載されている。細胞壁は、3つの層、すなわち、中層、一次細胞壁及び二次細胞壁に分けられる。中層はペクチンを最も富有する。ペクチンは、細胞壁の生長の間に生産され、蓄えられる。ペクチンは、特に、促成及び高水分含量条件下の柔らかな植物組織において豊富である。植物細胞壁において、ペクチンは、カルシウム錯体の形で存在する。カルシウム架橋の関与は、Nanji(米国特許第1,634,879号)及びMaclay(米国特許第2,375,376号)によって記載されているように、キレート剤が、細胞からのペクチンの放出を容易にするとの事実から実証される。
【0004】
Dumitri, S.:多糖類、構造の多様性及び多機能性, Marcel Dekker, Inc., New York, 1998, 416-419によれば、ペクチンは食品製品の分野で使用される。
【0005】
従来、ペクチンは、ジャム、又は同様の果実含有、又は果実風味、砂糖富有系のためのゲル化剤として使用されていた。例としては、伝統的なジャム、砂糖含量を低減したジャム、透明のゼリー、果実風味のグミ、果実香料無添加のグミ、製パン用の熱可逆性艶出し剤、製パン用の耐熱性ジャム、アイスクリームにおいて使用されるリップル、及びヨーグルト用の果実調製物がある。
【0006】
ペクチンの多くは、今日では、低pHミルク飲料(発酵飲料及び果汁及びミルクの混合物を含む)の安定化に使用されている。
【0007】
ペクチンにおけるガラクツロン酸残基は、部分的にエステル化されており、メチルエステルとして存在する。エステル化度は、エステル化されたカルボキシル基の百分率として定義される。エステル化度(「DE」)50%以上のペクチンは、高メチルエステル(「HM」)ペクチン又は高エステルペクチンと称され、DE50%未満のものは、低メチルエステル(「LM」)ペクチン又は低エステルペクチンと称される。植物材料、例えば、果物、野菜及びセルグラス(celgrass)において見られる多くのペクチンはHMペクチンである。
【0008】
ペクチンは水に可溶性であるが、多くの有機溶媒には不溶性である。非常に低いメチルエステル化度のペクチン及びペクチン酸は、事実上、カリウム塩又はナトリウム塩としてのみ可溶性である。
【0009】
ペクチンは、pH3〜4において最も安定であり、pH3以下では、メトキシ基及びアセチル基及び中性の糖側鎖が除去される。高温では、これらの反応が促進され、ガラクツロン酸主鎖骨格におけるグリコシド結合の開裂が生ずる。中性及びアルカリ性条件下では、メチルエステルはケン化され、ポリガラクツロン酸主鎖骨格は、メトキシ化ガラクツロン酸残基の非還元末端におけるグリコシド結合のβ‐脱離/開裂を介して破壊する。これらの反応も、温度の上昇によって、より迅速に進行する。ペクチン酸及びLMペクチンは、メチルエステル基が存在しないか又は限られた数しか存在しないため、中性又はアルカリ性条件に対して抵抗性である。
【0010】
ペクチンは弱酸であり、高pHよりも低pHにおいて溶解性が低い。このため、製造の間にペクチンのpHを変えることによって、低溶解性又は高溶解性のペクチンを提供できる。pHは、代表的には、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩の如き塩基の使用を介して増大されるが、他の塩基も同等に使用される。例えば、炭酸ナトリウムを使用することによって、ペクチン酸ナトリウムが生成され、炭酸ナトリウムの用量が多ければ多いほど、これにより、pHが高ければ高いほど、より多くのカルボン酸が、そのナトリウム塩に転化される。
【0011】
しかし、より高いpHでは、ペクチンは、pH調整、取扱及び貯蔵の間に、脱エステル化され始める。このように、pHは、6又はそれ以下に維持されなければならない。
【0012】
いくつかのケースでは、製造されたままのペクチンが、ブロック様式でエステル化される。国際公開WO 2004/020472号には、この現象が、ペクチンの製造のために使用された原料において、ブロック式の脱エステル化が生ずるものとして記載されており、開示は、このブロック式の脱エステル化を排除する方法に関する。
【0013】
国際公開WO 89/12648号は、ブロック式の脱エステル化ペクチンを、エステル基がランダムに分散するペクチンに転化する方法を開示している。この方法は、エステル化されていないペクチン分子の領域においてペクチン分子を分裂させるポリガラクツロナーゼの使用を含む。このように、この方法は、ブロック式エステル化された原料のペクチンよりも、より高いエステル化度を有する低分子量ペクチンを提供する。
【0014】
Kertesz, Z. I.:ペクチン質, Interscience Publishers, Inc., New York, 1951によれば、ペクチン質は全ての植物組織において生ずる。しかし、リンゴ、砂糖大根、麻、グレープフルーツ、レモン、ライム、オレンジ、ジャガイモ、及びヒマワリは、特に工業的に重要である。最近、アロエ中のペクチンも、工業的な有用性が示された。
【0015】
本発明によるペクチンは、ペクチン含有原料から抽出される必要はない。このような粗製のペクチン調製物は、米国特許第2,132,065号、米国特許第3,982,003号、米国特許第4,831,127号、国際公開WO 91/15517号、米国特許第5,354,851号、米国特許第5,403,612号、米国特許第5,567,462号、米国特許第5,656,734号及び国際公開WO 97/49734号に開示されている。
【0016】
他のエステル化カルボン酸ポリマーも含まれるが、これらに限定されない:
−Kertesz, Z. I.:ペクチン質, Interscience Publishers, Inc., New York, 251, 1951によって開示されているように、ヨウ化エチルを使用し、加熱することによって製造されたペクチンエチルエステル。加えて、ペクチン酸(pectic acid及びpectinic acid)は、完全に又は部分的に、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールにてエステル化される。酸が部分的にのみエステル化される場合、残りの遊離カルボキシル基は、無機又は有機塩基によって塩化される。エステルは、医薬、生物医学、栄養及び化粧品の分野で使用される。エステルは、米国特許第5,384,400号に開示されているように、ペクチン酸の4級アンモニウム塩及びエステル化剤(例えば、ハロゲン化物)から調製される。
−米国特許第6,624,298号に開示されているように、触媒として酵素を使用し、温和な反応条件化でケテン二量体にて製造されたエステル化多糖。使用される多糖は、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセスロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グァー、カチオン性グァー、及びヒドロキシプロピルグァーでなる群から選ばれる少なくとも1種である。
−デンプンエステル。デンプンエステルの製法は、Tessler, M. M.及びBilimers, R. L.によって、文献(デンプンエステルの調製, Journal of Environmental Polymer Degradation, 4 (1996), 85-89)に開示され、さらに、米国特許第6,605,715号に開示されている。
−米国特許第5,859,217号に記載された高分子化糖エステル。
−アルギン酸エステル。例としては、エチレングリコール及びプロピレングリコールエステル、メチルエステル、メチルエステル同族体、及び芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのエステルがある。米国特許第5,416,205号に開示されているような置換アルコール由来のエステル、例えば、2価脂肪族アルコールのエステルも含まれる。
【0017】
www.smartskincare.comによれば、汗は、汗腺(皮膚表面に開口する多数の顕微鏡的通路である)によって生産された塩辛い水性溶液である。皮脂及び汗は、皮膚表面上で混ざり合う際、これらは、しばしば酸外套と称される保護膜を形成する。皮膚はわずかに酸性である。酸外套は、皮膚を「要素」(例えば、風又は汚染物)から保護することを助けることに加えて、有害な細菌及び菌類の生長を阻害する。酸外套が破壊されるか、又はその酸度を失う場合には、皮膚は傷害を受け易く、感染し易くなる。中程度の又は高い強度のセッケン又は洗浄剤にて皮膚を洗う際の副作用として、酸外套のロスが起きる。
【0018】
米国特許第5,837,254号によれば、膣又は尿路の真菌感染症は、その根絶が困難であり、頻繁に再発するが、ほとんど命にかかわるものではない。生殖管の正常なpHは4.5〜5であり、乳酸菌によって維持される。乳酸菌及び正常なpHの不在は、ヘルペスウイルス、避妊薬、弱い免疫系、遺伝因子、ストレス及び宿主の他の因子(酵母の生育及び生殖管の真菌感染症を助長する)と同様に、カンジダ症を促進する。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、5以上のpHにおいて湿潤環境で容易に生育する。
【0019】
米国特許第5,972,321号には、体臭は、一部は、皮脂腺及びエクリン汗腺から分泌される、ある種の化学物質によるものであるが、腋の悪臭の大部分は、アポクリン腺の分泌物(微生物のための特殊な栄養物質を含有する)によるものであることが述べられている。アポクリン腺は、pH範囲5〜6.5を有し、初期には、脂質、タンパク質及び炭水化物からなるミルク様の流体を分泌する。グラム陽性細菌(ほとんどの皮膚表面で見られる物質にて生育する)は、悪臭を生産する原因であることは明らかであるが、におい生産の正確な機構は未だ不明である。
【0020】
米国特許第4,666,707号によれば、入浴塩組成物は、香料、色素、植物エキス、有機酸等を配合し、硫酸ナトリウム、ホウ砂、イオウ、塩化ナトリウム、炭酸塩等を含有する無機塩混合物とすることによって調製され、バスに、香り及び色を提供すること、又は適度に皮膚を刺激して、これにより、血液の循環、疲労及び/又は代謝の回復を目的として使用される。このような入浴塩組成物の中には、炭酸塩及び酸の組み合わせ(バス中で二酸化炭素の気泡を生成し、これによって、緊張を緩和又はリフレッシュさせ、入浴を楽しいものとする)を含有する発泡性の入浴塩組成物がある。
【0021】
米国特許第6,589,923号及び米国特許第4,335,025号によれば、セッケンにて洗浄する際、洗浄液では、pH8〜10が確立される。このアルカリ度は、皮膚の天然の酸外套(pH5〜6)を中和する。正常な皮膚では、この酸外套は比較的迅速に再形成されるが、敏感な又は既に傷害されている皮膚では、炎症が生ずる。セッケンの他の欠点は、硬水中において、ライムセッケンが形成されることである。アルカリ性であれば、セッケンは、ヒトの皮膚の天然角質層を覆う油性層を乳化し、表皮の同様に天然の酸外套(通常、約5.5〜6.5の酸性pHを有する)を中和する。表皮の酸性かつ油性の部分は容易に再生されないため(特に、年配のヒト)、特に寒い気候では、しばしば、皮膚科病学的症状、例えば、表皮のそう痒、荒れ及びひび割れを生ずる。もちろん、人口の一部は、従来のセッケンに対してアレルギー性であるか、又はその使用によって生ずる多数の反応(過敏症)について耐性でないことは、常に配慮されなければならない。
【0022】
米国特許第6,551,987号、米国特許第6,013,618号及び米国特許第5,626,852号によれば、プロフレグランスは、特定の条件下では分解してフレグランスとなる化合物である。例えば、好適な条件にさらされた場合(ヒトの皮膚の酸外套との接触)、トリス(9−デセニル)は分解して、9−デセノール及びギ酸9−デセニルを放出し、これらはいずれも、フレグランスの原料物質である。
【0023】
米国特許第6,352,700号には、皮膚の過敏及び炎症の問題を解決すると言われる生成物が存在するものの、これらは、必然的に、皮膚のpHバランス、すなわち、皮膚の酸外套に対する各種添加剤の短期間の影響力を解消できないことが述べられている。これを大局的に見ると、乾燥した又は湿潤した皮膚を拭くために使用される従来のティッシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキン及びペーパータオル製品を吟味することのみが必要である。皮膚と接触する際、ティッシュ製品は、ティッシュ中に存在する化学物質のいくつかを皮膚表面に移す。
【0024】
米国特許第6,150,405号及び米国特許第5,667,769号によれば、特に、脱毛に対処するためのいくつかのヘア・ケア製品は、ヒドロキシルスカベンジャーを含有する。
【0025】
米国特許第4,761,279号によれば、高アルカリ度の従来のシェービング用製品は、しばしば、皮膚に対して刺激的である。
【0026】
米国特許第2,253,389号には、ペクチンを製造するためにアルカリを使用することが開示されており、この場合、ゲルの形成には糖及び酸を必要としない。ゲルは、金属化合物の存在下、中性又はわずかにアルカリ性の水性媒体中の可溶性ペクチンによって形成されため、アルカリ度は、ペクチンをペクチン酸塩に転化させるほど高いものであってならないことが強調されている。得られるゲル化剤は、特に、水及びミルクのゼリーにおけるゼラチンの代用として有用である。
【0027】
英国特許第541,528号は、ペクチンを脱メチル化するには、低温で行うことの重要性を開示している。ペクチンのアルカリ加水分解を10℃〜ペクチン溶液の凝固点の温度に制御することによって、高ゲル化力及び低ゲル化温度を持つ低エステルペクチンが生成される。加水分解は水性媒体中で行われ、中和によって停止される。また、加水分解はpH12では非常に迅速であり、pH8.5では非常に遅いことも開示されている。
【0028】
米国特許第2,478,170号には、20〜30%残留酸基を持つペクチンが開示されており、このペクチンは、カルシウムイオンの添加によって、糖の添加又は添加なしでもゲル化する。アルカリは、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、有機アンモニウム塩基等であり、当該方法は、ペクチンの水溶液又はエキスを温度35℃以下及びpH10〜12に調節することを包含する。所望のメトキシ含量に達した際、pHを4に下げ、ペクチン酸を単離する。
【0029】
文献(ペクチン質, Interscience Publishers, Inc., New York, 1951において、Kertesz)は、ペクチンに対する塩基の影響を記載している。ペクチン溶液に、ペクチンを中和するために必要な量よりも多い量でアルカリを添加する際、脱メトキシ化が開始する。このプロセスはアルカリを消費し、溶液のpHが直ちに低下する。Kerteszは、他の知見を参照しており、これらの知見は、アルカリ濃度、又はアルカリによる処理期間の結果として、又は反応温度の上昇につれて、アルカリの消費が増大することを示唆している。このように、Kerteszは、このアルカリの消費は、ペクチン酸のエステル含量を決定するために利用されることを示唆している。
【0030】
特開2001−226220号には、アルコール抽出したゆずの種のペクチンを、当該ペクチン、海洋深層水及び海水又は真水を含有する皮膚ローションの製造に使用することが開示されている。このローションは、べたつきや刺激がなく、低pHであることによって特徴付けられる。従来技術では、ペクチンは水に抽出されるが、アルコールは、ペクチンを不溶化させるものと考えられていた。さらに、その明細書では、ペクチンの組成については吟味されていない。
【0031】
国際公開WO 02/143274には、各種製品、例えば、食品、医薬組成物、パーソナル・ケア製品及び飲料のための増粘剤又は乳化剤としての親水コロイドの使用が開示されている。
【0032】
国際公開WO 04/005352には、例えば、クリーム、ローション及び家庭用品におけるアミド化ペクチンの使用が開示されている。
【0033】
米国特許第6,509,311号には、ゲル化剤として、水結合剤として、乳化剤として及び安定剤としての、アルギン酸プロピレングリコールエステルを含有するゲル系が開示されている。
【0034】
緩衝作用を提供でき、これによって、水性系のpHにおける増大を回避でき及び/又は化学反応及び/又は生物学的反応の結果として、又は環境によってアルカリ分が水性系に負荷された結果として、アルカリ分が形成される水性系のpHを低下させるために使用される組成物についての要求は依然として残っている。特に、酸外套を保護する組成物についての要求があり、皮膚(ヒトの皮膚又は動物の皮膚)と接触する製品に、このような組成物を組み込むことに関する要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
このように、本発明は、1以上のカルボン酸多糖を含有する皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、前記カルボン酸多糖の少なくとも1が、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する高DEカルボン酸多糖であることを特徴とする組成物に関する。
【0036】
本発明は、さらに、皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する少なくとも1の高DEカルボン酸多糖、及びエステル化度(DE)約5%〜約70%、さらに好ましくは、約5%〜約40%、最も好ましくは、約10%〜約35%を有する少なくとも1の低DEカルボン酸多糖の混合物を含有するものであることを特徴とする組成物に関する。
【0037】
本発明は、さらに、皮膚の保護及び/又はアルカリ度制御のための、少なくとも1の皮膚保護用カルボン酸多糖の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0038】
添付図面及び本発明の好適な具体例によって、以下に、本発明を詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明による皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、ペクチンエステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロキシプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれる1以上の高DEカルボン酸多糖を含有する。
【0040】
高DEカルボン酸多糖は、存在する遊離カルボン酸基の量が少ないため、急速なpH低下を提供する。このように、急速なpH低下が必要とされる場合には、高DEカルボン酸多糖を使用すべきである。この事実は、ヒト又は動物の皮膚に適用することを目的とする製品の範囲で利用される。この用途としては、ローション、クリーム、ファンデーション、フェースマスク、ヘア・ケア製品、局部ローション、消臭剤、ストーマ製品、女性用衛生製品、洗濯用製品、入浴用塩製品、セッケン製品、フレグランス製品、ローション含有ティッシュペーパー製品、及びシェービング製品が含まれるが、これらに限定されない。さらに、このようなペクチンは、動物を処置するために、同様の製品において使用される。
【0041】
本発明による好適な具体例によれば、前記高DEカルボン酸多糖は、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである。
【0042】
ペクチンのメタノールエステルを使用することによる利点は、このようなエステルが天然のものであることにある。しかし、理論的に裏付けられてはいないが、ペクチンのメチルエステルは、脱エステル化の間に、そのアルコール部分を遊離させる傾向がある。高級アルコールとのペクチンエステルは、アルカリ脱エステル化を生ずる傾向が少ない。
【0043】
本発明のさらに好適な具体例では、前記ペクチンは、約5,000〜約140,000の範囲、好ましくは、約10,000〜約125,000の範囲、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するものである。
【0044】
後述の実施例1において示されるように、ペクチンの分子量は、アルカリの消費量又はpH低下に対しては影響を及ぼさない。しがし、ペクチンの分子量を調節することによって、最終製品に溶解又は懸濁化されるペクチンの量を調節できる。このように、実施例11により詳しく示されるように、分子量が小さいペクチンは、より容易に溶解し、得られるペクチン含有溶液の粘性は、対応するより大きい分子量のペクチンにおけるよりも低い。この事実は、好適に低粘性を有する比較的高い濃度のペクチン含有溶液、例えば、布処理用製品で使用されるものを得るために利用される。約40,000以下の分子量を有するペクチンは、許容されないような高粘性を生ずることなく、約10%以上の濃度で製造される。このようなペクチンは、製造され、10%を超えるペクチン濃度を持つ濃縮溶液として市販されている。また、約10%以上の濃度のこのようなペクチン溶液を製造できることは、このような溶液の噴霧乾燥を、経済的に実現可能なものとする。
【0045】
エステル化度は、いずれかの多糖の平均DEを表す。エステル基のランダム又はブロック式分布を達成するために多糖鎖に沿ったエステル基の分布を制御することによって、局所的に大きい又は小さいDEの多糖を得ることができる。実施例3に示されるように、ブロック式エステル基分布を有するペクチンのアルカリ消費、ランダムエステル基分布を有する対応するペクチンのアルカリ消費と同じである。しかし、2つのペクチンのpH低下は、ブロック式エステル化ペクチンについて、かなり大きく、これは、このようなペクチンが、より大きい平均DEを持つペクチンとして働くように作用することによるものである。このように、ブロック式エステル化ペクチンを多糖にて処理することによって(多糖は、ペクチンを非エステル化部位で分割する)、増大されたDEを有するより低分子量のペクチンが得られる。
【0046】
本発明による組成物の別の具体例では、多糖のエステル基はブロック様式で分布されている。
【0047】
本発明による組成物の他の具体例では、多糖のエステル基はランダム様式で分布されている。
【0048】
本発明による他の好適な具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1の高DEカルボン酸多糖及び約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1の低DEカルボン酸多糖の混合物を含有する。
【0049】
比較的低いDEを有するカルボン酸多糖は、大きいアルカリ消費能力又は緩衝能力を提供する。
【0050】
高緩衝能力による利点は、ペクチンが初期の高アルカリ濃度を中和できることにある。これは、特に、布のアルカリ洗浄力が充分には使用尽くされていない場合において利点である。このように、低DE及び高DEカルボン酸多糖を組み合わせることによって、初期のアルカリ消費緩衝作用が、pH低減を介して得られる。
【0051】
本発明による好適な具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれる。
【0052】
本発明による特別な具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである。
【0053】
本発明によるさらに特別な具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、約5,000〜約140,000、好ましくは、約10,000〜約125,000、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである。
【0054】
本発明による他の具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、エステル化アルギン酸である。
【0055】
本発明の好適な具体例では、前記エステル化アルギン酸は、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステル(置換アルコールから誘導されるエステル、例えば、2価の脂肪族アルコールのエステル、好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む)である。米国特許第5,416,205号は、好適なアルギン酸誘導体を開示しており、その全体をここで参照する。
【0056】
本発明による他の具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基はブロック様式で分布している。
【0057】
本発明による他の具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基はランダム様式で分布している。
【0058】
本発明の他の具体例では、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれる少なくとも1のカルボン酸多糖を含有する組成物が、皮膚保護用及び/又はアルカリ度の制御のために使用される。
【0059】
本発明による好適な具体例では、前記カルボン酸多糖は、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである。
【0060】
本発明による他の具体例では、前記カルボン酸多糖は、約5,000〜約140,000、好ましくは、約10,000〜約125,000、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである。
【0061】
本発明による他の具体例では、前記カルボン酸多糖は、エステル化アルギン酸である。
【0062】
本発明による他の具体例では、前記エステル化アルギン酸は、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステル(置換アルコールから誘導されるエステル、例えば、2価の脂肪族アルコールのエステル、好ましくは、エチレングリコールアルギン酸エステル又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む)である。
【0063】
本発明による他の具体例では、前記多糖のエステル基はブロック様式で分布している。
【0064】
本発明による他の具体例では、前記多糖のエステル基はランダム様式で分布している。
【0065】
本発明による他の具体例では、少なくとも1のカルボン酸多糖は、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する高DEカルボン酸多糖である。
【0066】
本発明による他の具体例では、少なくとも1のカルボン酸多糖は、約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する低DEカルボン酸多糖である。
【0067】
本発明による組成物の使用に関する他の具体例では、組成物は、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のカルボン酸多糖及び約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のDEカルボン酸多糖の混合物を含有する。
【0068】
本発明による組成物は、パーソナル・ケア製品における使用に適する。
【0069】
好適な具体例では、前記製品は、ヒトの皮膚において使用するものである。
【0070】
好適な具体例では、前記製品は、動物の皮膚において使用するものである。
【0071】
本発明による特別な具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、スキンクリーム、スキンローション、消臭剤製品、フレグランス製品、ヘア・ケア製品、シェービング製品及び入浴用塩製品でなる群から選ばれる製品において使用される。
【0072】
本発明による他の具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、女性用衛生製品及びおむつでなる群から選ばれる製品において使用される。
【0073】
本発明の特別な利点は、組成物が、適用される表面のアルカリ度を長期間制御できるとの事実にある。実施例5及び8において示されるように、カルボン酸多糖は、アルカリ分の多数回のチャレンジの際にも、アルカリ度を制御できる。この事実は、例えば、消臭剤製品、おむつ又は女性用衛生製品(これらは、繰返し、汗と接触し、汗は微生物によってアルカリ分に分解される)において利用される。このように、本発明による製品によって、長期間の有効なアルカリ度の制御が達成される。
【0074】
本発明による他の具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、ストーマ製品及び傷ケア製品でなる群から選ばれる製品において使用される。
【0075】
ストーマ製品では、ストーマ製品は、体液によるフラッシュの間、長期間、不溶性を維持しなければならないため、低溶解度多糖、例えば、低溶解度ペクチンが使用されなければならない。この特殊なケースでは、低DE及び低pHペクチンは、皮膚のpHを、最適皮膚pHの5.5近辺に維持するため、より大きいDEを有する高溶解性ペクチンと組み合わされなければならない。
【0076】
本発明のさらに他の具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、ローション含有ティッシュペーパー、布処理製品、及び洗濯リンス製品でなる群から選ばれる製品において使用される。
【0077】
材料及び方法
a)ペクチンクチンの抽出
下記の工程を使用して、ペクチンを抽出する。エステル化度を、短い又は長い抽出時間を介して、約76〜約30%の範囲で制御した。
1.容積18Lを有し、撹拌機を具備するステンレス鋼製のジャケット付容器において、水15Lを70℃に加熱した。
2.乾燥した柑橘類の皮又は乾燥したビート500gを水に添加し、62%硝酸の添加によって、pHを1.7〜1.8に調整した。
3.撹拌しながら、70℃において、所望のエステル化度に応じて2〜24時間、抽出を行った。
4.抽出後、容器の内容物を、フィルター助剤として珪藻土を使用して、Bucherロートにおいて濾過した。
5.撹拌しながら、濾過抽出物1L当たり樹脂(Amberlite SR1L, Rohm & Hass社製)50mlを添加することによって、濾過した抽出物を、20分間イオン交換させた。
6.イオン交換した抽出物を、クロスを具備するBucherロートにおいて濾過した。
7.濾過したイオン交換抽出物を、緩やかに撹拌しながら、80%イソプロパノール3溶に添加することによって沈殿させた。
8.沈殿物をナイロンクロス上で集め、手で圧縮して、できる限り多くのイソプロパノールを除去した。
9.手で圧縮した沈殿物を、60%イソプロパノール中で1回洗浄し、ついで、乾燥キャビネットにおいて、大気圧下、70℃で乾燥させた。
10.乾燥後、ペクチンを粉砕した。
【0078】
b)30%以下のエステル化度を持つペクチンの調製
1.上記a)8.の方法に従って調製した圧縮沈殿物を5℃の60%イソプロパノール中に懸濁化させた。
2.濃縮したNaOH溶液を添加し、スラリーを約1時間撹拌した。所望のDEを達成するために、NaOHの量を算定した。
3.ナイロンクロス上で固体ペクチンを分離し、pH4の60%イソプロパノール中で2回洗浄した。
4.ナイロンクロス上で固体ペクチンを分離し、70℃で乾燥し、粉砕した。
【0079】
c)各種の分子量を持つペクチンの調製
1.上記a)に従って抽出したペクチンを約80℃のイオン交換水に溶解して、5%溶液を生成した。
2.溶液を25℃に冷却した後、NH3にてpHを5.50に調整した。
3.冷溶液のサンプルを、ペクチン溶液10L当たり0〜1300μlの範囲の濃度のペクチンリアーゼにて処理した。
4.各サンプルを、撹拌しながら、25℃において1時間、その酵素調製物にて処理した。
5.処理後、pHを2.50に調整し、サンプルを80℃に10分間加熱して、酵素を不活化した。
6.最後に、イソプロピルアルコール中でサンプルを沈殿させ、イソプロピルアルコール中で洗浄し、乾燥し、粉砕した。
【0080】
d)80%以上のエステル化度を持つペクチンの調製
1.a)において調製したペクチン50gを、好適なフラスコにおいて、ジメチルアミノピリジン2.5g、メタノール100 ml及びヘプタン100 mlに添加し、混合物を−4℃に冷却した。
2.この混合物に、塩化チオニル15mlを、1滴ずつ、10分間で添加した。
3.約24時間、混合物を約21℃に加熱した。
4.固体を瀘過し、初めに60%イソプロピルアルコールにて及びついで100%イソプロピルアルコールにて計2回洗浄した。
5.固体を約70℃において乾燥させた。
【0081】
e)各種のエステル基分布を持つペクチンの調製
1.上記a)に従って抽出したペクチンを約80℃のイオン交換水に溶解して、2%溶液を生成した。
2.溶液を45℃に冷却し、NH3にてpHを4.5に調整した。
3.サンプルに、撹拌しながら、酵素調製物2〜4%を添加した:ブロック式脱エステル化用の植物エステラーゼ(Collopulin)及びランダム脱エステル化用の細菌エステラーゼ(Rheozyme)。
4.pH4.5における2%NH3での滴定を介して、エステル化度を監視した。
5.脱エステル化後、HNO3にてpHを2.5に低下させ、ついで、サンプルを80℃に10分間加熱することによって、酵素を不活化させた。
6.サンプルをイソプロピルアルコール中において沈殿させ、イソプロピルアルコール中で洗浄し、乾燥し、粉砕した。
【0082】
f)分子量(Mw)及び固有粘度(IV)の測定
このため、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を、3回検出にて使用した。
【0083】
原理:
ペクチンサンプルを、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、流体力学的容積に従って分別した。分離後、サンプルを、屈折率(RI)検出器、RALLS検出器及び差圧粘度検出器で構成されるトリプル検出器システムによって分析した。これら検出器からの情報に基いて、分子量(Mw)及び固有粘度(IV)の測定を行う。この方法を使用して得られた分子量及び固有粘度を使用して、Mark-Houwik係数を算定する。
【0084】
物:
1.ポンプ モデル515, Waters, Hedehusene, デンマーク
2.ガス除去装置, Gynkotek, Polygen Scandinavia, Arhus, デンマーク
3.カラムオーブン, Waters, Hedehusene, デンマーク
4.オートサンプラー AS-3500(サンプル調製モジュールを具備する), Dionex Denmark, Rodovre, デンマーク
5.3リニア混合床カラム, TSK-GMPWXL, Supelco, Bellefonte PA, 米国
6.液相:0.3M酢酸リチウム緩衝液, pH4.8, Fulka Chemie AG, Buchs, スイス
7.デュアル検出器, RI, 粘度計, モデル250, Viscotek, Houston, Texas, 米国
8.RALLSモデル600, Viscotek, Houston, Texas, 米国
【0085】
方法:
サンプル約2mgを2000μlのバイアルに量り入れた。ついで、次のスケジュール(すなわち、エタノール8μlを添加;ついで、酢酸塩緩衝液(0.3M, pH4.8)1300μlを添加;サンプルを75℃に加熱及び9.9分間混合)によって、オートサンプラーにおいて、サンプルを溶解させる。調製物300μlを、酢酸塩緩衝液900μlにて希釈し、ついで、9.9分間撹拌する。サンプルを周囲温度に20分間放置する。サンプル100μlを、100μlフルループにて注入し、流速は0.8ml/分である。ライン中には、2つの検出器、RALLS検出器(Viscotek)及び屈折率検出器及び粘度計からなるデュアル検出器(Viscotek)が存在する。
ペクチンについての比屈折率増加(dn/dc)を0.144にセットした。
検出器からのデータをtri-SECソフト(Viscotek)によって処理する。
【0086】
g)非アミドペクチンにおけるエステル化度(DE)及びガラクツロン酸(GA)の測定
【0087】
原理:
この方法は、アミド及び酢酸エステルを含有しないペクチンにおけるDE(%)及びGA(%)の測定に関する。
【0088】
装置:
1.化学天秤
2.ガラスビーカー(250 ml)5個
3.計量ガラス(100 ml)
4.真空ポンプ
5.吸引フラスコ
6.ガラス濾過器No. 1(Buchnerロート及び濾紙)
7.ストップウォッチ
8.試験管
9.乾燥キャビネット(105℃)
10.デシケーター
11.磁石撹拌機及び磁石
12.ビューレット(10 ml, 精度±0.05 ml)
13.ピペット(20 ml: 2個, 10 ml: 1個)
14.pHメーター/オートビューレット又はフェノールフタレイン
【0089】
化学物質:
1.二酸化炭素フリーの水(脱イオン化水)
2.イソプロパノール(IPA):60%及び100%
3.塩酸(HCL):0.5N及び濃塩酸37%
4.水酸化ナトリウム(NaOH):0.1N(小数点以下4桁で補正、例えば、0.1002)及び0.5N
5.硝酸銀(AgNO3):0.1N
6.硝酸(HNO3):3N
7.指示薬:フェノールフタレイン,0.1%
【0090】
方法‐DE(%)及びGA(%)の測定
(酸アルコール:60%IPA 100 ml+37%濃HCl 5ml)
1.ペクチン2.0000gを秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
2.酸アルコール100 mlを添加し、磁石撹拌機で10分間撹拌する。
3.乾燥し、秤量したガラス濾過器を介して濾過する。
4.ビーカーを、酸アルコール15ml×6にて完全にすすぐ。
5.濾液が塩素イオンフリーとなるまで60%IPAで洗浄する(約500 ml)
6.100% IPA 20mlにて洗浄する。
7.サンプルを、105℃で2時間半乾燥する。
8.乾燥し、デシケーター内で冷却した後、濾過器を秤量する。
9.サンプル0.4000gを正確に秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
10.二重測定のため、サンプル2個を秤量する。二重測定間の偏差は、最大でも、1.5%でなければならない。1.5%を超える場合には、テストを再度行わなければならない。
11.ペクチンを100% IPA 2mlにて湿らせ、磁石撹拌機において撹拌しながら、二酸化炭素フリーの脱イオン水約100 mlを添加する。
【0091】
(灰分フリー及び水分フリー基準の塩化物テスト:濾液10mlを試験管に移し、3N HNO3約3mlを添加し、AgNO3数滴を添加する。溶液が透明であれば、濾液は塩化物フリーであり、それ以外の場合には、塩化銀の沈殿が生ずる。)
【0092】
ついで、指示薬を使用することによって、又はpHメーター/オートビューレットを使用することによって、滴定用のサンプルを準備する。
【0093】
方法‐DE(%)のみの測定
(酸アルコール:60%IPA 100 ml+37%濃HCl 5ml)
1.ペクチン2.00gを秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
2.酸アルコール100 mlを添加し、磁石撹拌機で10分間撹拌する。
3.濾紙を具備するBuchnerロートを介して濾過する。
4.ビーカーを、酸アルコール90mlにてすすぐ。
5.60% IPA 1000 mlにて洗浄する。
6.100% IPA 30mlにて洗浄する。
7.真空吸引にて、Buchnerロート上で、サンプルを約15分間乾燥する。
8.サンプル約0.40gを秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
9.二重測定のため、サンプル2個を秤量する。二重測定間の偏差は、最大でも1.5%でなければならない。1.5%を超える場合には、テストを再度行わなければならない。
10.ペクチンを100% IPA 2mlにて湿らせ、磁石撹拌機において撹拌しながら、脱イオン水約100 mlを添加する。
【0094】
次に、インジケーターを使用することによって、又はpHメーター/オートビューレットを使用することによって、滴定用のサンプルを準備する。
注記:DE<10%のサンプルについては、このサンプルは滴定の間ゆっくりとしか溶解しないため、滴定を非常にゆっくりと行うことが非常に重要である。
【0095】
指示薬を使用する滴定:
1.指示薬フェノールフタレイン5滴を添加し、色が変化するまで0.1N NaOHにて滴定する(これを滴定量V1として記録する)。
2.撹拌しながら、0.5N NaOH 20.00 mlを添加する。正確に15分間静置する。静置する際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.撹拌しながら、0.5N HCl 20.00 mlを添加し、色が消失するまで撹拌する。
4.フェノールフタレイン3滴を添加し、色が変化するまで0.1N NaOHにて滴定する(これを滴定量V2として記録する)。
【0096】
ブラインドテスト(二重測定を行う):
1.二酸化炭素フリー又は脱イオン水(サンプル用に使用したものと同じ種類)100 mlに、フェノールフタレイン5滴を添加し、ガラスビーカー(250 ml)において、色が変化するまで、0.1N NaOHにて滴定する(1−2滴)。
2.0.5N NaOH 20.00 mlを添加し、サンプルを正確に15分間静置する。静置の際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.0.5N HCl 20.00 ml及びフェノールフタレイン3滴を添加し、色が変化するまで、0.1N NaOHにて滴定する(これを滴定量B1として記録する)。滴定用に許容される最大量は、0.1N NaOH 1mlである。1ml以上で滴定される場合には、0.5N HClを少量の脱イオン水にて希釈しなければならない。0.5N HClの添加の際、サンプルが色の変化を示した場合には、0.5N NaOHを少量の二酸化炭素フリーの水にて希釈しなければならない。水による最大許容希釈は、溶液が0.52−0.48Nとなる程度である。
【0097】
pHメーター/オートビューレットを使用する滴定:
ABU 80タイプのオートビューレットを使用する場合、下記のセッティングを適用できる。
DE(%)<10を持つサンプル ブラインドテスト
比例帯 0.5 5
遅延(秒) 50 5
速度‐V1 10 5
速度‐V2 15 5
【0098】
1.0.1N NaOHによって、pH8.5まで滴定する(結果を滴定量V1として記録する)。2.撹拌しながら、0.5N NaOH 20.00 mlを添加し、撹拌することなく、正確に15分間サンプルを静置する。静置する際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.撹拌しながら、0.5N HCl 20.00 mlを添加し、pHが一定となるまで撹拌する。
4.続いて、0.1N NaOHによって、pH8.5まで滴定する(結果を滴定量V2として記録する)。
【0099】
ブラインドテスト(二重測定を行う):
1.二酸化炭素フリー又は脱イオン水(サンプル用に使用したものと同じ種類)100 mlを、pH8.5まで、0.1N NaOHにて滴定する(1−2滴)。
2.撹拌しながら、0.5N NaOH 20.00 mlを添加し、ブラインドテスト用のサンプルを、撹拌することなく、正確に15分間静置する。静置の際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.撹拌しながら、0.5N HCl 20.00 mlを添加し、pHが一定になるまで撹拌する。
4.0.1N NaOHにてpH8.5まで滴定する(これを滴定量B1として記録する)。滴定用に許容される最大量は、0.1N NaOH 1mlである。1ml以上で滴定される場合には、0.5N HClを少量の脱イオン水にて希釈しなければならない。0.5N HClの添加の際、pHが8.5以下とならない場合には、0.5N NaOHを少量の二酸化炭素フリーの水にて希釈しなければならない。水による最大許容希釈は、溶液が0.52−0.48Nとなる程度である。
【0100】
計算:
Vt=V1+(V2−B1)
DE(エステル化度:%)={(V2−B1)×100}/Vt
DFA(遊離酸の度合:%)=100−DE(%)
GA(ガラクツロン酸の度合:%)=(194.1×Vt×N×100)/400
(ここで、194.1:GAに関する分子量;N:滴定に関して使用した0.1N NaOHについての補正規定度(例えば、0.1002N);400:洗浄し、乾燥した滴定用サンプルの質量(mg))
ペクチンの純度(%)={(酸洗浄、乾燥したサンプルの量)×100}/(サンプルの秤量した量)
【0101】
h)pH低下の測定
1.ペクチン1gを、脱イオン水100g中に、70℃及び20℃において溶解した。
2.溶液を恒温制御した水浴に入れ、絶え間なく撹拌した。
3.0.1M NaOHを、pHが9〜10となるまで添加した。
4.時間を関数としてpHを記録した。
【0102】
i)滴定曲線の測定:
1.ペクチン2gを、脱イオン水200g中に、70℃及び20℃において溶解した。
2.溶液を、25℃に恒温制御した水浴に入れ、絶え間なく撹拌した。
3.溶液に0.1M NaOHを添加し、添加した0.1M NaOHを関数としてpHを記録した。
【0103】
j)プロピレングリコールアルギン酸エステル−エステル基の定量測定を、「官能基による定量有機分析」, 4版, John Wiley and Sons Publicationの第169〜172頁に記載されたケン化法によって行う
1.IPS Technologies Inc.によって製造されたKelcoloid O, エステル化:高−約85%
2.IPS Technologies Inc.によって製造されたManucol Ester ER/K, エステル化:高−約80%
3.IPS Technologies Inc.によって製造されたKelcoloid HVF, エステル化:中位−約55%
【0104】
k)ローションの調製及びローションにおけるpH低下
ローションを下記の組成に従って調製した。
【表2.1.1】
pHが低いため、食品用等級の従来の保存料によって、ローションを保存できる。
【0105】
方法1:
1.パルミチン酸エステル及び乳化剤を混合し、乳化剤を溶融させるため75℃に加熱した。
2.ペクチン及び保存料を蒸留水に分散させ、75℃に加熱した。
3.磁石撹拌機にて撹拌しながら、熱い油相を熱い水相に添加した。
4.撹拌しながら、冷却浴において混合物を約30℃に冷却し、好適な容器に充填した。
【0106】
方法2:
1.パルミチン酸エステル及び乳化剤を混合し、乳化剤を溶融させるため75℃に加熱した。
2.ペクチンを熱い溶融物中に分散させた。ペクチンは油相に不溶性であり、従って、塊を形成することなく、その中に容易に分散する。
3.保存料を蒸留水に溶解し、溶液を75℃に加熱した。
4.磁石撹拌機にて撹拌しながら、熱い油相を熱い水相に添加した。
5.撹拌しながら、冷却浴において混合物を約30℃に冷却し、好適な容器に充填した。
【0107】
l)すすぎテスト−注記:このテストは、表示に過ぎない。pHを正確に読むことはできない。
1.ペトリ皿にはめ込むため、1片のコットンをカットした。
2.コットン片をペクチンの蒸留水溶液中に浸漬し、磁石撹拌機において約5分間撹拌した。
3.湿ったクロスを手で圧縮し、ペトリ皿に置いた。
4.クロスを、オーブン内において、50℃で一夜乾燥させた。
5.乾燥したクロスを、0.001M NaOH 2mlにて湿らせた。
6.1片の指示薬ペーパー(pH1〜11の範囲)をクロスの上に置いた。
7.指示薬ペーパーの色の変化を経時的に記録した。
下記の実施例は、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0108】
分子量の影響
乾燥したレモンの皮から製造された異なる分子量を有するが、同様のDEを持つ5種のサンプルを滴定し、それぞれ、70℃及び20℃で溶解したサンプルについて、経時的なpH低下を記録した。pH低下を30〜32℃で測定した。0.1008M NaOHを使用して、滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
1.97CP001-39-0: Mw=123,000;DE=71.4%
【表1.1】
2.97CP001-39-1: Mw=108,500;DE=71.4%
【表1.2】
3.97CP001-39-2: Mw=95,000;DE=72.3%
【表1.3】
4.97CP001-39-4: Mw=71,500;DE=71.6%
【表1.4】
5.97CP001-39-5: Mw=41,500;DE=73%
【表1.5】
図1.1は、へクチンの分子量が、アルカリ消費に対する影響を持たないことを示している。
図1.2のデータは、分子量の変化によって生ずるpH低下の変化を示唆していない。実際、これは0、ペクチンから製造されたpH制御調製物が、濃い(高分子量)又は薄い(低分子量)又は基本的に2つの局端の間の粘度を持つことができることを意味している。加えて、アルカリ消費を増大させる場合には、低分子量ペクチン調製物は、アルカリ消費調製物を粘稠過ぎるものとすることなく、ペクチン濃度を増大させることが可能である。
図1.3は、溶解温度がpH低下を変化させないことを示している。このように、分子量にかかわりなく、pH制御用のペクチン調製物は熱時又は冷時調製される。
【実施例2】
【0109】
エステル化度の影響
約9〜93%の範囲の異なるエステル化度を持つ8種のサンプルを調製した。各サンプルを、乾燥したレモンの皮から調製した。全てのサンプルを滴定し、それぞれ、70℃及び20℃で溶解したサンプルについて、経時的なpH低下を記録した。pH低下を30〜32℃で測定した。0.1008M NaOHを使用して、滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
1.DE=9.6%を持つサンプル
【表2.1】
2.DE=34.4%を持つサンプル
【表2.2−1】
【表2.2−2】
3.DE=71%を持つサンプル
【表2.3−1】
【表2.3−2】
4.DE=93.4%を持つサンプル
【表2.4】
図2.1は、1つのペクチンが、初期pHが他のpHよりも高いことによって特徴付けられることを示している。従来、ペクチンは、アルカリ金属塩基にて、3〜4又はそれ以上の範囲のpHに中和されていた。これは、主に、ペクチンを保存するためであるが、ペクチンの溶解度に対する影響も有していた。しかし、DE=9.6%に関する曲線を上方に移動させ、他の曲線と結びつける場合には、像は明瞭なものとなる:DEを増大させ、これにより、ガラクツロン酸を低減することによって、ペクチンのアルカリ消費は低減する。このように、アルカリを中和するためにペクチンを使用する場合には、エステル化度及び初期のpHは、できる限り低いものでなければならない。
この点について、さらに詳述するため、緩衝能力を、最も急勾配である滴定曲線の部分から算定して、pHを1pH単位増大させるために必要な0.1M NaOHの容量mlと定義する。
このように、図2.1から算定されるように概算の緩衝能力は次のとおりである:
DE=9.6%及びDE=34.4%:緩衝能力約26
DE=71%:緩衝能力約12
DE=93.4%:緩衝能力6未満
図2.2は、エステル化度が増大するにつれて、pH低下が劇的に増大することを示している。
図2.3は、ペクチンを20℃で溶解させる場合でも、DEの同様の劇的な影響があることを示している。図は、高DEにおいて、pHは最終的に5.5以下に低下することを示している。
これらの結果は、図2.4(図において、pH低下は初期から約130分まで続いている)においても認められる。pH低下が、ペクチン溶液が熱時又は冷時製造されたことにかかわらず同程度で生ずることは明らかである。
DE=93.4%について、pH=8に達する時間は2分であり、DE=71%については、12分かかり、DE=34.4%については、時間は35分であり、DE=9.6%については、130分かかる。pH=7とするためには、その差は大きくなる。DE=71を持つペクチンは、DE=93.4を持つペクチンよりも約9倍遅く、71%以下のDEを持つペクチンは、DE=93.4を持つペクチンと比べて、10倍以上遅い。
このように、アルカリ分発生の結果として、迅速なpHの低減を達成する必要がある場合には、できる限り高いDEを持つペクチンが好ましい。一方、pHのゆっくりとした低下が望まれる場合には、より低いDEが好ましい。特殊なDEのペクチンを選択することによって、特別な速度でpHを低減することが可能である。
他の態様は、異なるDEのペクチン調製物を合わせることである。例えば、初期アルカリ消費又は緩衝能力を達成するため、又は緩衝能力が使用される際、pHの低減を提供するために、低DEペクチン及び高DEペクチンを合わせることができる。
【実施例3】
【0110】
メチルエステル分布の影響
乾燥したレモンの皮から2種のサンプルを製造した。1つは、細菌性ペクチンエステラーゼにて脱エステル化し、これによって、メチルエステル基のランダム分布を形成した。他については、植物性ペクチンエステラーゼにて脱エステル化して、メチルエステル基のブロック式分布を形成した。サンプルを同様のDEとした。両サンプルを滴定し、それぞれ、70℃及び20℃にて溶解させたサンプルについて、経時的にpH低下を記録した。pH低下を30〜32℃で測定した。0.1008M NaOHを使用して滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
1.ランダムメチルエステル分布−DE=57.3%
【表3.1−1】
【表3.1−2】
2.ブロック式メチルエステル分布−DE=57.7%
【表3.2】
図3.1は、ペクチンにおけるメチルエステルの分布がアルカリ消費には影響を及ぼさないことを示している。
図3.2は、pH低下の速度における差を示している。また、ペクチンが熱時又は冷時溶解されていることにかかわらず、同じpH低下が達成されることも示している。
図3.3は、当初の120〜130分におけるpH低下を示し、ランダムエステル基分布は、ブロックエステル分布と比較して、pH=8に達するには、約4倍長い時間を必要とすることを示している。2つのペクチン調製物はほぼ同一の平均DEを有するため、ブロックエステル分布の、より迅速なpH低下は、エステル基の局部的濃縮によって説明される。このように、ブロックエステル分布を持つペクチンは、より高い平均DEを持つペクチンとして作用する。実際、これは、DEを増大させるために、ブロックペクチンを多糖で処理する(かかる処理は、再メチル化法を使用するよりも、高エステルペクチンを製造するための容易な手段である)ため重要である。
【実施例4】
【0111】
温度の影響
乾燥したレモンの皮から製造されたDE=71%を有する1つのサンプルについてのpH低下を、4種の異なる温度において記録した。ペクチンを70℃において溶解し、ついで、溶液を記録温度まで冷却することによってサンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
1.DE=71%を持つサンプル
【表4】
図4.1は、温度の増大によるpH低下の速度が増大することを表している。速度は、温度が約30℃を超えることによって、特に増大する。
【実施例5】
【0112】
アルカリの多段階添加の影響
乾燥したレモンの皮から製造されたDE=71%を有する1つのサンプルについてのpH低下を、温度25〜27℃において記録した。初めに、0.1M NaOH 19mlにてpHを約10に上げた。サンプルがpH6〜7に達した時点で、pHを再度約10に上げた。このために、0.1M NaOH 1.1mlが必要であった。pHが6〜7に達した時点で、pHを三度目約10に上げた。このためには、0.1M NaOH 1.2mlが必要であった。ペクチンを70℃にて溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
1.DE=71%を持つサンプル
【表5】
図5.1は、pH低下が、少なくとも3サイクル(初めに、pHを約10に増大させ、ついで、pHが低下した後、再度、約10に増大させる)後も、未変化のままであることを示している。1サイクル後、DEは約66%に低減されるが、このようなpHを低減させ続ける能力は、不完全な脱エステル化によるものである。
このように、アルカリ度がパルス状で現われる場合には、少なくとも3回については、ペクチンはアルカリ度を低減できる。実際、1つの実験(7日間で実施)では、DE=71%の1%ペクチン溶液200 mlは、0.1M NaOH溶液73mlを消費した。この期間後、DEは9.1%に低減した。
このように、ペクチン2gはNaOH 7.3ミリモル(NaOH 0.3gに相当する)を消費する。また、メタノール約0.23gが生成されたことを意味し、これは、ペクチンの酸効果と組み合わせて、ペクチンの抗微生物を説明できる。
【実施例6】
【0113】
ペクチン濃度の影響
乾燥したレモンの皮から製造されたDE=81.7%を有する1つのサンプルについてのpH低下を、温度30〜32℃において記録した。ペクチンの濃度は0.05〜2%であった。ペクチンを70℃にて溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
1.DE=81.7%を持つサンプル
【表6】
図6.1は、1%以上のペクチン濃度では、pH低下がペクチン濃度とは無関係であることを示している。しかし、非常に低いペクチン濃度でも、明確なpHにおける低下が生ずる。
【実施例7】
【0114】
水のpH低下
二酸化炭素は水に可溶性であり、この実験は、ペクチン又は他の添加剤の不存在下における、イオン交換水のpH低下を経時的に示すものである。水の温度を、恒温制御した水浴を使用することによって25℃に維持した。
1.イオン交換水
【表7】
図7.1は、約5時間の期間において、水におけるpHの「自然な」低下は約0.5pH単位であり、この誤差は許容されうるものである。
【実施例8】
【0115】
プロピレングリコールアルギン酸エステル−エステル化の影響
約55〜約85%の範囲のエステル化度を持つ3種のサンプルをテストした。全てについて滴定を行い、それぞれ、70℃及び20℃において溶解させたサンプルについて、pH低下を経時的に記録した。pH低下を30〜32℃において測定した。0.1008M NaOHを使用して滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値において、で不安定な読みを示したことを表す。
1.Kelcoloid O;エステル化:高−約85%
【表8.1】
2.Manucol Ester ER/K;エステル化:高−約80%
【表8.2】
3.Kelcoloid HVF;エステル化:中位−約55%
【表8.3】
4.アルカリの多段階添加の影響
1つのサンプル、Manucol Ester ER/KのpH低下を、温度30〜32℃において記録した。初めに、pHを0.1M NaOH 4mlにて約10に上げた。サンプルがpH5〜6に達した時点で、pHを再度約10に上げた。このためには、0.1M NaOH 2.5mlが必要であった。サンプルがpH5〜6に達した時点で、pHを三度目約10に上げた(この際、0.1M NaOH 2.0mlが必要であった)。さらに、サンプルがpH約6に達した時点で、pHを再度約10に上げた(この際、NaOH 1.5mlが必要であった)。ペクチンを70℃において溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
【表8.4】
図8.1は、PGAにおけるエステル化度の増大につれて、アルカリの消費が少なくなる。
緩衝能力を算定した:
DE約85%を持つPGA:約4.1
DE約80%を持つPGA:約5.7
DE約55%を持つPGA:約8.1
このように、PGAは、ペクチンと比べて、低い緩衝作用を提供する。
図8.2は、ペクチンについてと同様に、PGAが、エステル化度の増大につれて、より迅速なpH低下を提供することを示している。
図8.3は、プロピレングリコールアルギン酸エステルが20℃において溶解される場合にも、エステル化の同じ劇的な影響を生ずることを示している。図は、高DEにおいて、pHは最終的には5以下に低減される。
図8.4は、プロピレングリコールアルギン酸エステル溶液が熱時又は冷時製造されたかにかかわらず、pH低下は同程度であることを示している。
【実施例9】
【0116】
プロピレングリコールアルギン酸エステルへのアルカリの多段階添加の影響
1つのサンプル、Manucol Ester ER/KのpH低下を、温度30〜32℃において記録した。初めに、pHを0.1M NaOH 4mlにて約10に上げた。サンプルがpH5〜6に達した時点で、pHを再度約10に上げた。このためには、0.1M NaOH 2.5mlが必要であった。サンプルが再度pH5〜6に達した時点で、pHを約10に上げた(この際、0.1M NaOH 2.0mlが必要であった)。さらに、サンプルがpH約6に達した時点で、pHを再度約10に上げた(この際、NaOH 1.5mlが必要であった)。ペクチンを70℃において溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
【表9】
図9.1は、2サイクル後、pH低下が遅くなる傾向を示している。
【実施例10】
【0117】
ローションにおけるpH低下
上述の「材料及び方法」セクション2.1において記載した2つの方法に従って調製したローションにおけるpH低下を、DE=約81.7%のペクチンを使用して測定した。
ローション10gを蒸留水50ml中にスラリー化させ、0.1M NaOHにてpHを約10に調整した。スラリーにおけるペクチン濃度:0.125%;温度:30℃。
【表10】
油相と混合する前に、ペクチンを水相に溶解させる場合には、より迅速なpH低下が提供されると考えられる。しかし、水相に溶解されたペクチンに関する曲線がわずかに低いpHにおいて開始していることを考慮すると、2つの曲線は同一に近いものである。このように、ローションを調製する方法の一方がペクチンの作用に影響を及ぼすことを示唆するものはない。
12名のヒト(女性6名及び男性6名)によってローションをテストし、被検者から下記の特記事項を得た:
皮膚上での延展が容易である。
べたつかない。
油ぎっていない。
適用後1分内で皮膚が柔らかくなる。
皮膚の柔らかさが少なくとも24時間持続する。
適用後1分内で皮膚のかゆみが除かれる。
皮膚のかゆみが24時間内に再発しない。
運動選手の足を、少なくとも24時間、効果的に良好に維持できる
ローションを、鼻の上に発疹ができたイヌについてテストした。ローションによる1日2回の鼻の治療により、目で見て、発疹が減少した。さらに2日間同じ治療を行ったところ、発疹を見つけることが困難な程度まで減少した。
【実施例11】
【0118】
クロスのpH低下
上述の「材料及び方法」セクション2.mに記載の方法に従って、クロスを調製した。
【表11.1】
【表11.2】
【表11.3】
【表11.4】
【表11.5】
図11.1は、浸漬の間のペクチン濃度に関係なく、ペクチンの分子量に関係なく、pH低下は全く同様であることを示している。
しかし、クロスをペクチン溶液に浸漬する場合、乾燥したクロスは、より堅いものとなる。表11.6は、この結果を示している。
【表11.6】
表11.6は、分子量の増大につれて、クロスが、許容できないほど堅いものとなることなく、より多くのペクチンを含有できることを示している:
Mw=123,000では、浸漬液中の濃度0.10%以上において、許容できないほど堅いものとなる。
Mw=95,000では、浸漬液中の濃度0.20%以上において、許容できないほど堅いものとなる。
Mw=41,500及びMw=25,000では、浸漬液中の濃度0.50%以上において、許容できないほど堅いものとなる。
すすぎは、通常、水16Lを使用して行われる。リンス用量を100 mlと仮定すると、リンス中のペクチン0.01%は、1.57%ペクチン溶液に相当し、リンス中のペクチン0.05%は、7.4%ペクチン溶液に相当し、リンス中のペクチン0.10%は、13.79%ペクチン溶液に相当し、リンス中のペクチン0.20%は、26.47%ペクチン溶液に相当し、及びリンス中のペクチン0.05%は、44.44%ペクチン溶液に相当する。
このようなペクチン溶液のブルックフィールド粘度に対する効果を表11.7に示す。
【表11.7】
分子量が低下するにつれて、粘度が小さくなることに加えて、ペクチンを溶解させることは、より容易となることが明らかである。これにより、リンスが、より少ないリンス量で、より多くのペクチンを含有することが可能となる。
分子量123,000を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約2%であり、分子量95,000を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約3%であり、分子量41,500を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約10%であり、及び分子量25,000を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約12%である。
【実施例12】
【0119】
ペクチン製品の配合の影響
それぞれ、DE93.4%及び9.6%を有するペクチン製品を1:1で配合し、70℃に加熱して、配合物の1%溶液100gを調製した。25℃におけるアルカリの消費及び30〜32℃における経時的pH低下を記録した。0.1008M NaOHを使用して滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
【表12】
図12.1は、高DEペクチン及び低DEペクチンを配合することにより、そのアルカリ消費が、個々のペクチン製品のアルカリ消費の間に存在するようになることを示している。
図12.2は、経時的pH低下が、個々の成分のpH低下の間に存在するようになることを示している。
個々の成分と比べて、高DEペクチン及び低DEペクチンの配合物は、高DEペクチンに匹敵するアルカリ消費の増大を提供し、低DEペクチンに匹敵するpH低下の増大を提供する。
【実施例13】
【0120】
高エステルペクチン及び低エステルプロピレングリコールアルギン酸エステルの配合の影響
DE93.4%を有するペクチン50%及びDE55%を有するプロピレングリコールアルギン酸エステル50%の配合物を、実施例12と同様にして、70℃において溶解させ、個々の成分のアルカリ消費と比較した。
【表13】
図13.1は、アルカリ消費が、個々の成分のアルカリ消費の間に存在するようになるが、高DEペクチン及び中位DE PGAの混合物の使用は、実施例12の高DEペクチン及び低DEペクチンの混合物について観察されるものよりも、アルカリ消費の増大が小さいものとなることを示している。
図13.2は、配合物のpH低下が、個々の成分のpH低下の間に存在するようになることを示している。しかし、比較的低いエステル化のPGAでも、かなり高いエステル化のペクチンよりも迅速なpH低下を提供する。
個々の成分と比べて、配合物は、ペクチン製品単独に匹敵するアルカリ消費の増大を提供する。
【実施例14】
【0121】
高DEプロピレングリコールアルギン酸エステル及び低DEペクチンの配合の影響
DE85%を有するプロピレングリコールアルギン酸エステル50%及びDE9.6%を有するペクチン50%の配合物を、実施例12と同様にして、70℃において溶解させ、個々の成分のアルカリ消費と比較した。
【表14】
図14.1は、配合物のアルカリ消費が、個々の成分のアルカリ消費の間に存在するようになることを示している。
図14.2は、経時的なpH低下が、個々の成分のpH低下の間に存在するようになることを示している。
個々の成分と比べて、配合物は、プロピレングリコールアルギン酸エステル単独に匹敵するアルキル消費における増大及び低DEペクチン単独に匹敵するpH低下における増大を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1.1】各種分子量のペクチンのアルカリ消費を示すグラフである。
【図1.2】70℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図1.3】20℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図2.1】各種エステル化度(DE)のペクチンのアルカリ消費を示すグラフである。
【図2.2】70℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図2.3】20℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図2.4】70℃又は20℃で溶解した上記ペクチンの当初から約130分までのpH低下を示すグラフである。
【図3.1】ブロック様式で又はランダム式でエステル化した同様のDEを持つペクチンのアルカリ消費を示すグラフである。
【図3.2】70℃又は20℃で溶解した上記ペクチンのpH低下を示すグラフである。
【図3.3】上記ペクチンの当初から約100分までのpH低下を示すグラフである。
【図4】各種温度で保持したペクチンのpH低下を示すグラフである。
【図5】ペクチンへの多段回アルカリ添加の影響を示すグラフである。
【図6】pH低下に対するペクチン濃度の影響を示すグラフである。
【図7】ペクチン又は他の添加剤の添加なしでのイオン交換水のpH低下を示すグラフである。
【図8.1】各種エステル化度のアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)のアルカリ消費を示すグラフである。
【図8.2】70℃での溶解による、上記PGAに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図8.3】20℃での溶解による、上記PGAに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図8.4】70℃又は20℃で溶解した上記PGAの当初から約70分までのpH低下を示すグラフである。
【図9】アルギン酸プロピレングリコールエステルへの多段回添加の影響を示すグラフである。
【図10】水相又は油相のペクチンを含有するローションのpH低下を表すグラフである。
【図11.1】各種分子量のペクチン0.01%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.2】各種分子量のペクチン0.05%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.3】各種分子量のペクチン0.10%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.4】各種分子量のペクチン0.20%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.5】各種分子量のペクチン0.50%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図12.1】70℃で溶解したDE93.4%を有するペクチン50%及びDE9.6%を有するペクチン50%の混合物のアルカリ消費を、個々の成分のアルカリ消費と比較して示すグラフである。
【図12.2】70℃で溶解した上記混合物のpHの経時的低下を、個々の成分のpH低下と比較して示すグラフである。
【図13.1】70℃で溶解したDE93.4%を有するペクチン50%及びDE55%を有するアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)50%の混合物のアルカリ消費を、個々の成分のアルカリ消費と比較して示すグラフである。
【図13.2】70℃で溶解した上記混合物のpHの経時的低下を、個々の成分のpH低下と比較して示すグラフである。
【図14.1】70℃で溶解したDE85%を有するアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)50%及びDE9.6%を有するペクチン50%の混合物のアルカリ消費を、個々の成分のアルカリ消費と比較して示すグラフである。
【図14.2】70℃で溶解した上記混合物のpHの経時的低下を、個々の成分のpH低下と比較して示すグラフである。
【図1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚保護用アルカリ度制御組成物及び皮膚の保護及び/又はアルカリ度の制御のための、少なくとも1のカルボン酸多糖を含有する組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ペクチンは、植物の細胞壁と関連する複雑な多糖である。ペクチンは、ラムノース残基によって介在され、中性の糖側鎖及び非糖成分、例えば、アセチル基、メチル基及びフェルラ酸基にて変性されたα−1,4結合ポリガラクツロン酸主鎖骨格からなる。
中性の糖側鎖(アラビナン及びアラビノガラクタンを含む)は、主鎖骨格において、ラムノース残基に結合されている。ラムノース残基は、主鎖において、集合する傾向がある。そこで、結合した側鎖と共に、この領域は毛状領域と呼ばれ、主鎖骨格の残部は、従って、平滑領域と呼ばれる。
【0003】
米国特許第5,929,051号(Niら)には、植物細胞壁成分として、ペクチンが記載されている。細胞壁は、3つの層、すなわち、中層、一次細胞壁及び二次細胞壁に分けられる。中層はペクチンを最も富有する。ペクチンは、細胞壁の生長の間に生産され、蓄えられる。ペクチンは、特に、促成及び高水分含量条件下の柔らかな植物組織において豊富である。植物細胞壁において、ペクチンは、カルシウム錯体の形で存在する。カルシウム架橋の関与は、Nanji(米国特許第1,634,879号)及びMaclay(米国特許第2,375,376号)によって記載されているように、キレート剤が、細胞からのペクチンの放出を容易にするとの事実から実証される。
【0004】
Dumitri, S.:多糖類、構造の多様性及び多機能性, Marcel Dekker, Inc., New York, 1998, 416-419によれば、ペクチンは食品製品の分野で使用される。
【0005】
従来、ペクチンは、ジャム、又は同様の果実含有、又は果実風味、砂糖富有系のためのゲル化剤として使用されていた。例としては、伝統的なジャム、砂糖含量を低減したジャム、透明のゼリー、果実風味のグミ、果実香料無添加のグミ、製パン用の熱可逆性艶出し剤、製パン用の耐熱性ジャム、アイスクリームにおいて使用されるリップル、及びヨーグルト用の果実調製物がある。
【0006】
ペクチンの多くは、今日では、低pHミルク飲料(発酵飲料及び果汁及びミルクの混合物を含む)の安定化に使用されている。
【0007】
ペクチンにおけるガラクツロン酸残基は、部分的にエステル化されており、メチルエステルとして存在する。エステル化度は、エステル化されたカルボキシル基の百分率として定義される。エステル化度(「DE」)50%以上のペクチンは、高メチルエステル(「HM」)ペクチン又は高エステルペクチンと称され、DE50%未満のものは、低メチルエステル(「LM」)ペクチン又は低エステルペクチンと称される。植物材料、例えば、果物、野菜及びセルグラス(celgrass)において見られる多くのペクチンはHMペクチンである。
【0008】
ペクチンは水に可溶性であるが、多くの有機溶媒には不溶性である。非常に低いメチルエステル化度のペクチン及びペクチン酸は、事実上、カリウム塩又はナトリウム塩としてのみ可溶性である。
【0009】
ペクチンは、pH3〜4において最も安定であり、pH3以下では、メトキシ基及びアセチル基及び中性の糖側鎖が除去される。高温では、これらの反応が促進され、ガラクツロン酸主鎖骨格におけるグリコシド結合の開裂が生ずる。中性及びアルカリ性条件下では、メチルエステルはケン化され、ポリガラクツロン酸主鎖骨格は、メトキシ化ガラクツロン酸残基の非還元末端におけるグリコシド結合のβ‐脱離/開裂を介して破壊する。これらの反応も、温度の上昇によって、より迅速に進行する。ペクチン酸及びLMペクチンは、メチルエステル基が存在しないか又は限られた数しか存在しないため、中性又はアルカリ性条件に対して抵抗性である。
【0010】
ペクチンは弱酸であり、高pHよりも低pHにおいて溶解性が低い。このため、製造の間にペクチンのpHを変えることによって、低溶解性又は高溶解性のペクチンを提供できる。pHは、代表的には、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩の如き塩基の使用を介して増大されるが、他の塩基も同等に使用される。例えば、炭酸ナトリウムを使用することによって、ペクチン酸ナトリウムが生成され、炭酸ナトリウムの用量が多ければ多いほど、これにより、pHが高ければ高いほど、より多くのカルボン酸が、そのナトリウム塩に転化される。
【0011】
しかし、より高いpHでは、ペクチンは、pH調整、取扱及び貯蔵の間に、脱エステル化され始める。このように、pHは、6又はそれ以下に維持されなければならない。
【0012】
いくつかのケースでは、製造されたままのペクチンが、ブロック様式でエステル化される。国際公開WO 2004/020472号には、この現象が、ペクチンの製造のために使用された原料において、ブロック式の脱エステル化が生ずるものとして記載されており、開示は、このブロック式の脱エステル化を排除する方法に関する。
【0013】
国際公開WO 89/12648号は、ブロック式の脱エステル化ペクチンを、エステル基がランダムに分散するペクチンに転化する方法を開示している。この方法は、エステル化されていないペクチン分子の領域においてペクチン分子を分裂させるポリガラクツロナーゼの使用を含む。このように、この方法は、ブロック式エステル化された原料のペクチンよりも、より高いエステル化度を有する低分子量ペクチンを提供する。
【0014】
Kertesz, Z. I.:ペクチン質, Interscience Publishers, Inc., New York, 1951によれば、ペクチン質は全ての植物組織において生ずる。しかし、リンゴ、砂糖大根、麻、グレープフルーツ、レモン、ライム、オレンジ、ジャガイモ、及びヒマワリは、特に工業的に重要である。最近、アロエ中のペクチンも、工業的な有用性が示された。
【0015】
本発明によるペクチンは、ペクチン含有原料から抽出される必要はない。このような粗製のペクチン調製物は、米国特許第2,132,065号、米国特許第3,982,003号、米国特許第4,831,127号、国際公開WO 91/15517号、米国特許第5,354,851号、米国特許第5,403,612号、米国特許第5,567,462号、米国特許第5,656,734号及び国際公開WO 97/49734号に開示されている。
【0016】
他のエステル化カルボン酸ポリマーも含まれるが、これらに限定されない:
−Kertesz, Z. I.:ペクチン質, Interscience Publishers, Inc., New York, 251, 1951によって開示されているように、ヨウ化エチルを使用し、加熱することによって製造されたペクチンエチルエステル。加えて、ペクチン酸(pectic acid及びpectinic acid)は、完全に又は部分的に、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールにてエステル化される。酸が部分的にのみエステル化される場合、残りの遊離カルボキシル基は、無機又は有機塩基によって塩化される。エステルは、医薬、生物医学、栄養及び化粧品の分野で使用される。エステルは、米国特許第5,384,400号に開示されているように、ペクチン酸の4級アンモニウム塩及びエステル化剤(例えば、ハロゲン化物)から調製される。
−米国特許第6,624,298号に開示されているように、触媒として酵素を使用し、温和な反応条件化でケテン二量体にて製造されたエステル化多糖。使用される多糖は、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセスロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グァー、カチオン性グァー、及びヒドロキシプロピルグァーでなる群から選ばれる少なくとも1種である。
−デンプンエステル。デンプンエステルの製法は、Tessler, M. M.及びBilimers, R. L.によって、文献(デンプンエステルの調製, Journal of Environmental Polymer Degradation, 4 (1996), 85-89)に開示され、さらに、米国特許第6,605,715号に開示されている。
−米国特許第5,859,217号に記載された高分子化糖エステル。
−アルギン酸エステル。例としては、エチレングリコール及びプロピレングリコールエステル、メチルエステル、メチルエステル同族体、及び芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのエステルがある。米国特許第5,416,205号に開示されているような置換アルコール由来のエステル、例えば、2価脂肪族アルコールのエステルも含まれる。
【0017】
www.smartskincare.comによれば、汗は、汗腺(皮膚表面に開口する多数の顕微鏡的通路である)によって生産された塩辛い水性溶液である。皮脂及び汗は、皮膚表面上で混ざり合う際、これらは、しばしば酸外套と称される保護膜を形成する。皮膚はわずかに酸性である。酸外套は、皮膚を「要素」(例えば、風又は汚染物)から保護することを助けることに加えて、有害な細菌及び菌類の生長を阻害する。酸外套が破壊されるか、又はその酸度を失う場合には、皮膚は傷害を受け易く、感染し易くなる。中程度の又は高い強度のセッケン又は洗浄剤にて皮膚を洗う際の副作用として、酸外套のロスが起きる。
【0018】
米国特許第5,837,254号によれば、膣又は尿路の真菌感染症は、その根絶が困難であり、頻繁に再発するが、ほとんど命にかかわるものではない。生殖管の正常なpHは4.5〜5であり、乳酸菌によって維持される。乳酸菌及び正常なpHの不在は、ヘルペスウイルス、避妊薬、弱い免疫系、遺伝因子、ストレス及び宿主の他の因子(酵母の生育及び生殖管の真菌感染症を助長する)と同様に、カンジダ症を促進する。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、5以上のpHにおいて湿潤環境で容易に生育する。
【0019】
米国特許第5,972,321号には、体臭は、一部は、皮脂腺及びエクリン汗腺から分泌される、ある種の化学物質によるものであるが、腋の悪臭の大部分は、アポクリン腺の分泌物(微生物のための特殊な栄養物質を含有する)によるものであることが述べられている。アポクリン腺は、pH範囲5〜6.5を有し、初期には、脂質、タンパク質及び炭水化物からなるミルク様の流体を分泌する。グラム陽性細菌(ほとんどの皮膚表面で見られる物質にて生育する)は、悪臭を生産する原因であることは明らかであるが、におい生産の正確な機構は未だ不明である。
【0020】
米国特許第4,666,707号によれば、入浴塩組成物は、香料、色素、植物エキス、有機酸等を配合し、硫酸ナトリウム、ホウ砂、イオウ、塩化ナトリウム、炭酸塩等を含有する無機塩混合物とすることによって調製され、バスに、香り及び色を提供すること、又は適度に皮膚を刺激して、これにより、血液の循環、疲労及び/又は代謝の回復を目的として使用される。このような入浴塩組成物の中には、炭酸塩及び酸の組み合わせ(バス中で二酸化炭素の気泡を生成し、これによって、緊張を緩和又はリフレッシュさせ、入浴を楽しいものとする)を含有する発泡性の入浴塩組成物がある。
【0021】
米国特許第6,589,923号及び米国特許第4,335,025号によれば、セッケンにて洗浄する際、洗浄液では、pH8〜10が確立される。このアルカリ度は、皮膚の天然の酸外套(pH5〜6)を中和する。正常な皮膚では、この酸外套は比較的迅速に再形成されるが、敏感な又は既に傷害されている皮膚では、炎症が生ずる。セッケンの他の欠点は、硬水中において、ライムセッケンが形成されることである。アルカリ性であれば、セッケンは、ヒトの皮膚の天然角質層を覆う油性層を乳化し、表皮の同様に天然の酸外套(通常、約5.5〜6.5の酸性pHを有する)を中和する。表皮の酸性かつ油性の部分は容易に再生されないため(特に、年配のヒト)、特に寒い気候では、しばしば、皮膚科病学的症状、例えば、表皮のそう痒、荒れ及びひび割れを生ずる。もちろん、人口の一部は、従来のセッケンに対してアレルギー性であるか、又はその使用によって生ずる多数の反応(過敏症)について耐性でないことは、常に配慮されなければならない。
【0022】
米国特許第6,551,987号、米国特許第6,013,618号及び米国特許第5,626,852号によれば、プロフレグランスは、特定の条件下では分解してフレグランスとなる化合物である。例えば、好適な条件にさらされた場合(ヒトの皮膚の酸外套との接触)、トリス(9−デセニル)は分解して、9−デセノール及びギ酸9−デセニルを放出し、これらはいずれも、フレグランスの原料物質である。
【0023】
米国特許第6,352,700号には、皮膚の過敏及び炎症の問題を解決すると言われる生成物が存在するものの、これらは、必然的に、皮膚のpHバランス、すなわち、皮膚の酸外套に対する各種添加剤の短期間の影響力を解消できないことが述べられている。これを大局的に見ると、乾燥した又は湿潤した皮膚を拭くために使用される従来のティッシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキン及びペーパータオル製品を吟味することのみが必要である。皮膚と接触する際、ティッシュ製品は、ティッシュ中に存在する化学物質のいくつかを皮膚表面に移す。
【0024】
米国特許第6,150,405号及び米国特許第5,667,769号によれば、特に、脱毛に対処するためのいくつかのヘア・ケア製品は、ヒドロキシルスカベンジャーを含有する。
【0025】
米国特許第4,761,279号によれば、高アルカリ度の従来のシェービング用製品は、しばしば、皮膚に対して刺激的である。
【0026】
米国特許第2,253,389号には、ペクチンを製造するためにアルカリを使用することが開示されており、この場合、ゲルの形成には糖及び酸を必要としない。ゲルは、金属化合物の存在下、中性又はわずかにアルカリ性の水性媒体中の可溶性ペクチンによって形成されため、アルカリ度は、ペクチンをペクチン酸塩に転化させるほど高いものであってならないことが強調されている。得られるゲル化剤は、特に、水及びミルクのゼリーにおけるゼラチンの代用として有用である。
【0027】
英国特許第541,528号は、ペクチンを脱メチル化するには、低温で行うことの重要性を開示している。ペクチンのアルカリ加水分解を10℃〜ペクチン溶液の凝固点の温度に制御することによって、高ゲル化力及び低ゲル化温度を持つ低エステルペクチンが生成される。加水分解は水性媒体中で行われ、中和によって停止される。また、加水分解はpH12では非常に迅速であり、pH8.5では非常に遅いことも開示されている。
【0028】
米国特許第2,478,170号には、20〜30%残留酸基を持つペクチンが開示されており、このペクチンは、カルシウムイオンの添加によって、糖の添加又は添加なしでもゲル化する。アルカリは、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、有機アンモニウム塩基等であり、当該方法は、ペクチンの水溶液又はエキスを温度35℃以下及びpH10〜12に調節することを包含する。所望のメトキシ含量に達した際、pHを4に下げ、ペクチン酸を単離する。
【0029】
文献(ペクチン質, Interscience Publishers, Inc., New York, 1951において、Kertesz)は、ペクチンに対する塩基の影響を記載している。ペクチン溶液に、ペクチンを中和するために必要な量よりも多い量でアルカリを添加する際、脱メトキシ化が開始する。このプロセスはアルカリを消費し、溶液のpHが直ちに低下する。Kerteszは、他の知見を参照しており、これらの知見は、アルカリ濃度、又はアルカリによる処理期間の結果として、又は反応温度の上昇につれて、アルカリの消費が増大することを示唆している。このように、Kerteszは、このアルカリの消費は、ペクチン酸のエステル含量を決定するために利用されることを示唆している。
【0030】
特開2001−226220号には、アルコール抽出したゆずの種のペクチンを、当該ペクチン、海洋深層水及び海水又は真水を含有する皮膚ローションの製造に使用することが開示されている。このローションは、べたつきや刺激がなく、低pHであることによって特徴付けられる。従来技術では、ペクチンは水に抽出されるが、アルコールは、ペクチンを不溶化させるものと考えられていた。さらに、その明細書では、ペクチンの組成については吟味されていない。
【0031】
国際公開WO 02/143274には、各種製品、例えば、食品、医薬組成物、パーソナル・ケア製品及び飲料のための増粘剤又は乳化剤としての親水コロイドの使用が開示されている。
【0032】
国際公開WO 04/005352には、例えば、クリーム、ローション及び家庭用品におけるアミド化ペクチンの使用が開示されている。
【0033】
米国特許第6,509,311号には、ゲル化剤として、水結合剤として、乳化剤として及び安定剤としての、アルギン酸プロピレングリコールエステルを含有するゲル系が開示されている。
【0034】
緩衝作用を提供でき、これによって、水性系のpHにおける増大を回避でき及び/又は化学反応及び/又は生物学的反応の結果として、又は環境によってアルカリ分が水性系に負荷された結果として、アルカリ分が形成される水性系のpHを低下させるために使用される組成物についての要求は依然として残っている。特に、酸外套を保護する組成物についての要求があり、皮膚(ヒトの皮膚又は動物の皮膚)と接触する製品に、このような組成物を組み込むことに関する要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
このように、本発明は、1以上のカルボン酸多糖を含有する皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、前記カルボン酸多糖の少なくとも1が、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する高DEカルボン酸多糖であることを特徴とする組成物に関する。
【0036】
本発明は、さらに、皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する少なくとも1の高DEカルボン酸多糖、及びエステル化度(DE)約5%〜約70%、さらに好ましくは、約5%〜約40%、最も好ましくは、約10%〜約35%を有する少なくとも1の低DEカルボン酸多糖の混合物を含有するものであることを特徴とする組成物に関する。
【0037】
本発明は、さらに、皮膚の保護及び/又はアルカリ度制御のための、少なくとも1の皮膚保護用カルボン酸多糖の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0038】
添付図面及び本発明の好適な具体例によって、以下に、本発明を詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明による皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、ペクチンエステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロキシプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれる1以上の高DEカルボン酸多糖を含有する。
【0040】
高DEカルボン酸多糖は、存在する遊離カルボン酸基の量が少ないため、急速なpH低下を提供する。このように、急速なpH低下が必要とされる場合には、高DEカルボン酸多糖を使用すべきである。この事実は、ヒト又は動物の皮膚に適用することを目的とする製品の範囲で利用される。この用途としては、ローション、クリーム、ファンデーション、フェースマスク、ヘア・ケア製品、局部ローション、消臭剤、ストーマ製品、女性用衛生製品、洗濯用製品、入浴用塩製品、セッケン製品、フレグランス製品、ローション含有ティッシュペーパー製品、及びシェービング製品が含まれるが、これらに限定されない。さらに、このようなペクチンは、動物を処置するために、同様の製品において使用される。
【0041】
本発明による好適な具体例によれば、前記高DEカルボン酸多糖は、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである。
【0042】
ペクチンのメタノールエステルを使用することによる利点は、このようなエステルが天然のものであることにある。しかし、理論的に裏付けられてはいないが、ペクチンのメチルエステルは、脱エステル化の間に、そのアルコール部分を遊離させる傾向がある。高級アルコールとのペクチンエステルは、アルカリ脱エステル化を生ずる傾向が少ない。
【0043】
本発明のさらに好適な具体例では、前記ペクチンは、約5,000〜約140,000の範囲、好ましくは、約10,000〜約125,000の範囲、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するものである。
【0044】
後述の実施例1において示されるように、ペクチンの分子量は、アルカリの消費量又はpH低下に対しては影響を及ぼさない。しがし、ペクチンの分子量を調節することによって、最終製品に溶解又は懸濁化されるペクチンの量を調節できる。このように、実施例11により詳しく示されるように、分子量が小さいペクチンは、より容易に溶解し、得られるペクチン含有溶液の粘性は、対応するより大きい分子量のペクチンにおけるよりも低い。この事実は、好適に低粘性を有する比較的高い濃度のペクチン含有溶液、例えば、布処理用製品で使用されるものを得るために利用される。約40,000以下の分子量を有するペクチンは、許容されないような高粘性を生ずることなく、約10%以上の濃度で製造される。このようなペクチンは、製造され、10%を超えるペクチン濃度を持つ濃縮溶液として市販されている。また、約10%以上の濃度のこのようなペクチン溶液を製造できることは、このような溶液の噴霧乾燥を、経済的に実現可能なものとする。
【0045】
エステル化度は、いずれかの多糖の平均DEを表す。エステル基のランダム又はブロック式分布を達成するために多糖鎖に沿ったエステル基の分布を制御することによって、局所的に大きい又は小さいDEの多糖を得ることができる。実施例3に示されるように、ブロック式エステル基分布を有するペクチンのアルカリ消費、ランダムエステル基分布を有する対応するペクチンのアルカリ消費と同じである。しかし、2つのペクチンのpH低下は、ブロック式エステル化ペクチンについて、かなり大きく、これは、このようなペクチンが、より大きい平均DEを持つペクチンとして働くように作用することによるものである。このように、ブロック式エステル化ペクチンを多糖にて処理することによって(多糖は、ペクチンを非エステル化部位で分割する)、増大されたDEを有するより低分子量のペクチンが得られる。
【0046】
本発明による組成物の別の具体例では、多糖のエステル基はブロック様式で分布されている。
【0047】
本発明による組成物の他の具体例では、多糖のエステル基はランダム様式で分布されている。
【0048】
本発明による他の好適な具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1の高DEカルボン酸多糖及び約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1の低DEカルボン酸多糖の混合物を含有する。
【0049】
比較的低いDEを有するカルボン酸多糖は、大きいアルカリ消費能力又は緩衝能力を提供する。
【0050】
高緩衝能力による利点は、ペクチンが初期の高アルカリ濃度を中和できることにある。これは、特に、布のアルカリ洗浄力が充分には使用尽くされていない場合において利点である。このように、低DE及び高DEカルボン酸多糖を組み合わせることによって、初期のアルカリ消費緩衝作用が、pH低減を介して得られる。
【0051】
本発明による好適な具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれる。
【0052】
本発明による特別な具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである。
【0053】
本発明によるさらに特別な具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、約5,000〜約140,000、好ましくは、約10,000〜約125,000、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである。
【0054】
本発明による他の具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖は、エステル化アルギン酸である。
【0055】
本発明の好適な具体例では、前記エステル化アルギン酸は、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステル(置換アルコールから誘導されるエステル、例えば、2価の脂肪族アルコールのエステル、好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む)である。米国特許第5,416,205号は、好適なアルギン酸誘導体を開示しており、その全体をここで参照する。
【0056】
本発明による他の具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基はブロック様式で分布している。
【0057】
本発明による他の具体例では、前記高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基はランダム様式で分布している。
【0058】
本発明の他の具体例では、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれる少なくとも1のカルボン酸多糖を含有する組成物が、皮膚保護用及び/又はアルカリ度の制御のために使用される。
【0059】
本発明による好適な具体例では、前記カルボン酸多糖は、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである。
【0060】
本発明による他の具体例では、前記カルボン酸多糖は、約5,000〜約140,000、好ましくは、約10,000〜約125,000、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである。
【0061】
本発明による他の具体例では、前記カルボン酸多糖は、エステル化アルギン酸である。
【0062】
本発明による他の具体例では、前記エステル化アルギン酸は、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステル(置換アルコールから誘導されるエステル、例えば、2価の脂肪族アルコールのエステル、好ましくは、エチレングリコールアルギン酸エステル又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む)である。
【0063】
本発明による他の具体例では、前記多糖のエステル基はブロック様式で分布している。
【0064】
本発明による他の具体例では、前記多糖のエステル基はランダム様式で分布している。
【0065】
本発明による他の具体例では、少なくとも1のカルボン酸多糖は、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する高DEカルボン酸多糖である。
【0066】
本発明による他の具体例では、少なくとも1のカルボン酸多糖は、約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する低DEカルボン酸多糖である。
【0067】
本発明による組成物の使用に関する他の具体例では、組成物は、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のカルボン酸多糖及び約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のDEカルボン酸多糖の混合物を含有する。
【0068】
本発明による組成物は、パーソナル・ケア製品における使用に適する。
【0069】
好適な具体例では、前記製品は、ヒトの皮膚において使用するものである。
【0070】
好適な具体例では、前記製品は、動物の皮膚において使用するものである。
【0071】
本発明による特別な具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、スキンクリーム、スキンローション、消臭剤製品、フレグランス製品、ヘア・ケア製品、シェービング製品及び入浴用塩製品でなる群から選ばれる製品において使用される。
【0072】
本発明による他の具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、女性用衛生製品及びおむつでなる群から選ばれる製品において使用される。
【0073】
本発明の特別な利点は、組成物が、適用される表面のアルカリ度を長期間制御できるとの事実にある。実施例5及び8において示されるように、カルボン酸多糖は、アルカリ分の多数回のチャレンジの際にも、アルカリ度を制御できる。この事実は、例えば、消臭剤製品、おむつ又は女性用衛生製品(これらは、繰返し、汗と接触し、汗は微生物によってアルカリ分に分解される)において利用される。このように、本発明による製品によって、長期間の有効なアルカリ度の制御が達成される。
【0074】
本発明による他の具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、ストーマ製品及び傷ケア製品でなる群から選ばれる製品において使用される。
【0075】
ストーマ製品では、ストーマ製品は、体液によるフラッシュの間、長期間、不溶性を維持しなければならないため、低溶解度多糖、例えば、低溶解度ペクチンが使用されなければならない。この特殊なケースでは、低DE及び低pHペクチンは、皮膚のpHを、最適皮膚pHの5.5近辺に維持するため、より大きいDEを有する高溶解性ペクチンと組み合わされなければならない。
【0076】
本発明のさらに他の具体例では、皮膚保護用アルカリ度制御組成物は、ローション含有ティッシュペーパー、布処理製品、及び洗濯リンス製品でなる群から選ばれる製品において使用される。
【0077】
材料及び方法
a)ペクチンクチンの抽出
下記の工程を使用して、ペクチンを抽出する。エステル化度を、短い又は長い抽出時間を介して、約76〜約30%の範囲で制御した。
1.容積18Lを有し、撹拌機を具備するステンレス鋼製のジャケット付容器において、水15Lを70℃に加熱した。
2.乾燥した柑橘類の皮又は乾燥したビート500gを水に添加し、62%硝酸の添加によって、pHを1.7〜1.8に調整した。
3.撹拌しながら、70℃において、所望のエステル化度に応じて2〜24時間、抽出を行った。
4.抽出後、容器の内容物を、フィルター助剤として珪藻土を使用して、Bucherロートにおいて濾過した。
5.撹拌しながら、濾過抽出物1L当たり樹脂(Amberlite SR1L, Rohm & Hass社製)50mlを添加することによって、濾過した抽出物を、20分間イオン交換させた。
6.イオン交換した抽出物を、クロスを具備するBucherロートにおいて濾過した。
7.濾過したイオン交換抽出物を、緩やかに撹拌しながら、80%イソプロパノール3溶に添加することによって沈殿させた。
8.沈殿物をナイロンクロス上で集め、手で圧縮して、できる限り多くのイソプロパノールを除去した。
9.手で圧縮した沈殿物を、60%イソプロパノール中で1回洗浄し、ついで、乾燥キャビネットにおいて、大気圧下、70℃で乾燥させた。
10.乾燥後、ペクチンを粉砕した。
【0078】
b)30%以下のエステル化度を持つペクチンの調製
1.上記a)8.の方法に従って調製した圧縮沈殿物を5℃の60%イソプロパノール中に懸濁化させた。
2.濃縮したNaOH溶液を添加し、スラリーを約1時間撹拌した。所望のDEを達成するために、NaOHの量を算定した。
3.ナイロンクロス上で固体ペクチンを分離し、pH4の60%イソプロパノール中で2回洗浄した。
4.ナイロンクロス上で固体ペクチンを分離し、70℃で乾燥し、粉砕した。
【0079】
c)各種の分子量を持つペクチンの調製
1.上記a)に従って抽出したペクチンを約80℃のイオン交換水に溶解して、5%溶液を生成した。
2.溶液を25℃に冷却した後、NH3にてpHを5.50に調整した。
3.冷溶液のサンプルを、ペクチン溶液10L当たり0〜1300μlの範囲の濃度のペクチンリアーゼにて処理した。
4.各サンプルを、撹拌しながら、25℃において1時間、その酵素調製物にて処理した。
5.処理後、pHを2.50に調整し、サンプルを80℃に10分間加熱して、酵素を不活化した。
6.最後に、イソプロピルアルコール中でサンプルを沈殿させ、イソプロピルアルコール中で洗浄し、乾燥し、粉砕した。
【0080】
d)80%以上のエステル化度を持つペクチンの調製
1.a)において調製したペクチン50gを、好適なフラスコにおいて、ジメチルアミノピリジン2.5g、メタノール100 ml及びヘプタン100 mlに添加し、混合物を−4℃に冷却した。
2.この混合物に、塩化チオニル15mlを、1滴ずつ、10分間で添加した。
3.約24時間、混合物を約21℃に加熱した。
4.固体を瀘過し、初めに60%イソプロピルアルコールにて及びついで100%イソプロピルアルコールにて計2回洗浄した。
5.固体を約70℃において乾燥させた。
【0081】
e)各種のエステル基分布を持つペクチンの調製
1.上記a)に従って抽出したペクチンを約80℃のイオン交換水に溶解して、2%溶液を生成した。
2.溶液を45℃に冷却し、NH3にてpHを4.5に調整した。
3.サンプルに、撹拌しながら、酵素調製物2〜4%を添加した:ブロック式脱エステル化用の植物エステラーゼ(Collopulin)及びランダム脱エステル化用の細菌エステラーゼ(Rheozyme)。
4.pH4.5における2%NH3での滴定を介して、エステル化度を監視した。
5.脱エステル化後、HNO3にてpHを2.5に低下させ、ついで、サンプルを80℃に10分間加熱することによって、酵素を不活化させた。
6.サンプルをイソプロピルアルコール中において沈殿させ、イソプロピルアルコール中で洗浄し、乾燥し、粉砕した。
【0082】
f)分子量(Mw)及び固有粘度(IV)の測定
このため、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を、3回検出にて使用した。
【0083】
原理:
ペクチンサンプルを、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、流体力学的容積に従って分別した。分離後、サンプルを、屈折率(RI)検出器、RALLS検出器及び差圧粘度検出器で構成されるトリプル検出器システムによって分析した。これら検出器からの情報に基いて、分子量(Mw)及び固有粘度(IV)の測定を行う。この方法を使用して得られた分子量及び固有粘度を使用して、Mark-Houwik係数を算定する。
【0084】
物:
1.ポンプ モデル515, Waters, Hedehusene, デンマーク
2.ガス除去装置, Gynkotek, Polygen Scandinavia, Arhus, デンマーク
3.カラムオーブン, Waters, Hedehusene, デンマーク
4.オートサンプラー AS-3500(サンプル調製モジュールを具備する), Dionex Denmark, Rodovre, デンマーク
5.3リニア混合床カラム, TSK-GMPWXL, Supelco, Bellefonte PA, 米国
6.液相:0.3M酢酸リチウム緩衝液, pH4.8, Fulka Chemie AG, Buchs, スイス
7.デュアル検出器, RI, 粘度計, モデル250, Viscotek, Houston, Texas, 米国
8.RALLSモデル600, Viscotek, Houston, Texas, 米国
【0085】
方法:
サンプル約2mgを2000μlのバイアルに量り入れた。ついで、次のスケジュール(すなわち、エタノール8μlを添加;ついで、酢酸塩緩衝液(0.3M, pH4.8)1300μlを添加;サンプルを75℃に加熱及び9.9分間混合)によって、オートサンプラーにおいて、サンプルを溶解させる。調製物300μlを、酢酸塩緩衝液900μlにて希釈し、ついで、9.9分間撹拌する。サンプルを周囲温度に20分間放置する。サンプル100μlを、100μlフルループにて注入し、流速は0.8ml/分である。ライン中には、2つの検出器、RALLS検出器(Viscotek)及び屈折率検出器及び粘度計からなるデュアル検出器(Viscotek)が存在する。
ペクチンについての比屈折率増加(dn/dc)を0.144にセットした。
検出器からのデータをtri-SECソフト(Viscotek)によって処理する。
【0086】
g)非アミドペクチンにおけるエステル化度(DE)及びガラクツロン酸(GA)の測定
【0087】
原理:
この方法は、アミド及び酢酸エステルを含有しないペクチンにおけるDE(%)及びGA(%)の測定に関する。
【0088】
装置:
1.化学天秤
2.ガラスビーカー(250 ml)5個
3.計量ガラス(100 ml)
4.真空ポンプ
5.吸引フラスコ
6.ガラス濾過器No. 1(Buchnerロート及び濾紙)
7.ストップウォッチ
8.試験管
9.乾燥キャビネット(105℃)
10.デシケーター
11.磁石撹拌機及び磁石
12.ビューレット(10 ml, 精度±0.05 ml)
13.ピペット(20 ml: 2個, 10 ml: 1個)
14.pHメーター/オートビューレット又はフェノールフタレイン
【0089】
化学物質:
1.二酸化炭素フリーの水(脱イオン化水)
2.イソプロパノール(IPA):60%及び100%
3.塩酸(HCL):0.5N及び濃塩酸37%
4.水酸化ナトリウム(NaOH):0.1N(小数点以下4桁で補正、例えば、0.1002)及び0.5N
5.硝酸銀(AgNO3):0.1N
6.硝酸(HNO3):3N
7.指示薬:フェノールフタレイン,0.1%
【0090】
方法‐DE(%)及びGA(%)の測定
(酸アルコール:60%IPA 100 ml+37%濃HCl 5ml)
1.ペクチン2.0000gを秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
2.酸アルコール100 mlを添加し、磁石撹拌機で10分間撹拌する。
3.乾燥し、秤量したガラス濾過器を介して濾過する。
4.ビーカーを、酸アルコール15ml×6にて完全にすすぐ。
5.濾液が塩素イオンフリーとなるまで60%IPAで洗浄する(約500 ml)
6.100% IPA 20mlにて洗浄する。
7.サンプルを、105℃で2時間半乾燥する。
8.乾燥し、デシケーター内で冷却した後、濾過器を秤量する。
9.サンプル0.4000gを正確に秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
10.二重測定のため、サンプル2個を秤量する。二重測定間の偏差は、最大でも、1.5%でなければならない。1.5%を超える場合には、テストを再度行わなければならない。
11.ペクチンを100% IPA 2mlにて湿らせ、磁石撹拌機において撹拌しながら、二酸化炭素フリーの脱イオン水約100 mlを添加する。
【0091】
(灰分フリー及び水分フリー基準の塩化物テスト:濾液10mlを試験管に移し、3N HNO3約3mlを添加し、AgNO3数滴を添加する。溶液が透明であれば、濾液は塩化物フリーであり、それ以外の場合には、塩化銀の沈殿が生ずる。)
【0092】
ついで、指示薬を使用することによって、又はpHメーター/オートビューレットを使用することによって、滴定用のサンプルを準備する。
【0093】
方法‐DE(%)のみの測定
(酸アルコール:60%IPA 100 ml+37%濃HCl 5ml)
1.ペクチン2.00gを秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
2.酸アルコール100 mlを添加し、磁石撹拌機で10分間撹拌する。
3.濾紙を具備するBuchnerロートを介して濾過する。
4.ビーカーを、酸アルコール90mlにてすすぐ。
5.60% IPA 1000 mlにて洗浄する。
6.100% IPA 30mlにて洗浄する。
7.真空吸引にて、Buchnerロート上で、サンプルを約15分間乾燥する。
8.サンプル約0.40gを秤量し、ガラスビーカー(250 ml)に入れる。
9.二重測定のため、サンプル2個を秤量する。二重測定間の偏差は、最大でも1.5%でなければならない。1.5%を超える場合には、テストを再度行わなければならない。
10.ペクチンを100% IPA 2mlにて湿らせ、磁石撹拌機において撹拌しながら、脱イオン水約100 mlを添加する。
【0094】
次に、インジケーターを使用することによって、又はpHメーター/オートビューレットを使用することによって、滴定用のサンプルを準備する。
注記:DE<10%のサンプルについては、このサンプルは滴定の間ゆっくりとしか溶解しないため、滴定を非常にゆっくりと行うことが非常に重要である。
【0095】
指示薬を使用する滴定:
1.指示薬フェノールフタレイン5滴を添加し、色が変化するまで0.1N NaOHにて滴定する(これを滴定量V1として記録する)。
2.撹拌しながら、0.5N NaOH 20.00 mlを添加する。正確に15分間静置する。静置する際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.撹拌しながら、0.5N HCl 20.00 mlを添加し、色が消失するまで撹拌する。
4.フェノールフタレイン3滴を添加し、色が変化するまで0.1N NaOHにて滴定する(これを滴定量V2として記録する)。
【0096】
ブラインドテスト(二重測定を行う):
1.二酸化炭素フリー又は脱イオン水(サンプル用に使用したものと同じ種類)100 mlに、フェノールフタレイン5滴を添加し、ガラスビーカー(250 ml)において、色が変化するまで、0.1N NaOHにて滴定する(1−2滴)。
2.0.5N NaOH 20.00 mlを添加し、サンプルを正確に15分間静置する。静置の際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.0.5N HCl 20.00 ml及びフェノールフタレイン3滴を添加し、色が変化するまで、0.1N NaOHにて滴定する(これを滴定量B1として記録する)。滴定用に許容される最大量は、0.1N NaOH 1mlである。1ml以上で滴定される場合には、0.5N HClを少量の脱イオン水にて希釈しなければならない。0.5N HClの添加の際、サンプルが色の変化を示した場合には、0.5N NaOHを少量の二酸化炭素フリーの水にて希釈しなければならない。水による最大許容希釈は、溶液が0.52−0.48Nとなる程度である。
【0097】
pHメーター/オートビューレットを使用する滴定:
ABU 80タイプのオートビューレットを使用する場合、下記のセッティングを適用できる。
DE(%)<10を持つサンプル ブラインドテスト
比例帯 0.5 5
遅延(秒) 50 5
速度‐V1 10 5
速度‐V2 15 5
【0098】
1.0.1N NaOHによって、pH8.5まで滴定する(結果を滴定量V1として記録する)。2.撹拌しながら、0.5N NaOH 20.00 mlを添加し、撹拌することなく、正確に15分間サンプルを静置する。静置する際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.撹拌しながら、0.5N HCl 20.00 mlを添加し、pHが一定となるまで撹拌する。
4.続いて、0.1N NaOHによって、pH8.5まで滴定する(結果を滴定量V2として記録する)。
【0099】
ブラインドテスト(二重測定を行う):
1.二酸化炭素フリー又は脱イオン水(サンプル用に使用したものと同じ種類)100 mlを、pH8.5まで、0.1N NaOHにて滴定する(1−2滴)。
2.撹拌しながら、0.5N NaOH 20.00 mlを添加し、ブラインドテスト用のサンプルを、撹拌することなく、正確に15分間静置する。静置の際、サンプルをホイルにて覆わなければならない。
3.撹拌しながら、0.5N HCl 20.00 mlを添加し、pHが一定になるまで撹拌する。
4.0.1N NaOHにてpH8.5まで滴定する(これを滴定量B1として記録する)。滴定用に許容される最大量は、0.1N NaOH 1mlである。1ml以上で滴定される場合には、0.5N HClを少量の脱イオン水にて希釈しなければならない。0.5N HClの添加の際、pHが8.5以下とならない場合には、0.5N NaOHを少量の二酸化炭素フリーの水にて希釈しなければならない。水による最大許容希釈は、溶液が0.52−0.48Nとなる程度である。
【0100】
計算:
Vt=V1+(V2−B1)
DE(エステル化度:%)={(V2−B1)×100}/Vt
DFA(遊離酸の度合:%)=100−DE(%)
GA(ガラクツロン酸の度合:%)=(194.1×Vt×N×100)/400
(ここで、194.1:GAに関する分子量;N:滴定に関して使用した0.1N NaOHについての補正規定度(例えば、0.1002N);400:洗浄し、乾燥した滴定用サンプルの質量(mg))
ペクチンの純度(%)={(酸洗浄、乾燥したサンプルの量)×100}/(サンプルの秤量した量)
【0101】
h)pH低下の測定
1.ペクチン1gを、脱イオン水100g中に、70℃及び20℃において溶解した。
2.溶液を恒温制御した水浴に入れ、絶え間なく撹拌した。
3.0.1M NaOHを、pHが9〜10となるまで添加した。
4.時間を関数としてpHを記録した。
【0102】
i)滴定曲線の測定:
1.ペクチン2gを、脱イオン水200g中に、70℃及び20℃において溶解した。
2.溶液を、25℃に恒温制御した水浴に入れ、絶え間なく撹拌した。
3.溶液に0.1M NaOHを添加し、添加した0.1M NaOHを関数としてpHを記録した。
【0103】
j)プロピレングリコールアルギン酸エステル−エステル基の定量測定を、「官能基による定量有機分析」, 4版, John Wiley and Sons Publicationの第169〜172頁に記載されたケン化法によって行う
1.IPS Technologies Inc.によって製造されたKelcoloid O, エステル化:高−約85%
2.IPS Technologies Inc.によって製造されたManucol Ester ER/K, エステル化:高−約80%
3.IPS Technologies Inc.によって製造されたKelcoloid HVF, エステル化:中位−約55%
【0104】
k)ローションの調製及びローションにおけるpH低下
ローションを下記の組成に従って調製した。
【表2.1.1】
pHが低いため、食品用等級の従来の保存料によって、ローションを保存できる。
【0105】
方法1:
1.パルミチン酸エステル及び乳化剤を混合し、乳化剤を溶融させるため75℃に加熱した。
2.ペクチン及び保存料を蒸留水に分散させ、75℃に加熱した。
3.磁石撹拌機にて撹拌しながら、熱い油相を熱い水相に添加した。
4.撹拌しながら、冷却浴において混合物を約30℃に冷却し、好適な容器に充填した。
【0106】
方法2:
1.パルミチン酸エステル及び乳化剤を混合し、乳化剤を溶融させるため75℃に加熱した。
2.ペクチンを熱い溶融物中に分散させた。ペクチンは油相に不溶性であり、従って、塊を形成することなく、その中に容易に分散する。
3.保存料を蒸留水に溶解し、溶液を75℃に加熱した。
4.磁石撹拌機にて撹拌しながら、熱い油相を熱い水相に添加した。
5.撹拌しながら、冷却浴において混合物を約30℃に冷却し、好適な容器に充填した。
【0107】
l)すすぎテスト−注記:このテストは、表示に過ぎない。pHを正確に読むことはできない。
1.ペトリ皿にはめ込むため、1片のコットンをカットした。
2.コットン片をペクチンの蒸留水溶液中に浸漬し、磁石撹拌機において約5分間撹拌した。
3.湿ったクロスを手で圧縮し、ペトリ皿に置いた。
4.クロスを、オーブン内において、50℃で一夜乾燥させた。
5.乾燥したクロスを、0.001M NaOH 2mlにて湿らせた。
6.1片の指示薬ペーパー(pH1〜11の範囲)をクロスの上に置いた。
7.指示薬ペーパーの色の変化を経時的に記録した。
下記の実施例は、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0108】
分子量の影響
乾燥したレモンの皮から製造された異なる分子量を有するが、同様のDEを持つ5種のサンプルを滴定し、それぞれ、70℃及び20℃で溶解したサンプルについて、経時的なpH低下を記録した。pH低下を30〜32℃で測定した。0.1008M NaOHを使用して、滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
1.97CP001-39-0: Mw=123,000;DE=71.4%
【表1.1】
2.97CP001-39-1: Mw=108,500;DE=71.4%
【表1.2】
3.97CP001-39-2: Mw=95,000;DE=72.3%
【表1.3】
4.97CP001-39-4: Mw=71,500;DE=71.6%
【表1.4】
5.97CP001-39-5: Mw=41,500;DE=73%
【表1.5】
図1.1は、へクチンの分子量が、アルカリ消費に対する影響を持たないことを示している。
図1.2のデータは、分子量の変化によって生ずるpH低下の変化を示唆していない。実際、これは0、ペクチンから製造されたpH制御調製物が、濃い(高分子量)又は薄い(低分子量)又は基本的に2つの局端の間の粘度を持つことができることを意味している。加えて、アルカリ消費を増大させる場合には、低分子量ペクチン調製物は、アルカリ消費調製物を粘稠過ぎるものとすることなく、ペクチン濃度を増大させることが可能である。
図1.3は、溶解温度がpH低下を変化させないことを示している。このように、分子量にかかわりなく、pH制御用のペクチン調製物は熱時又は冷時調製される。
【実施例2】
【0109】
エステル化度の影響
約9〜93%の範囲の異なるエステル化度を持つ8種のサンプルを調製した。各サンプルを、乾燥したレモンの皮から調製した。全てのサンプルを滴定し、それぞれ、70℃及び20℃で溶解したサンプルについて、経時的なpH低下を記録した。pH低下を30〜32℃で測定した。0.1008M NaOHを使用して、滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
1.DE=9.6%を持つサンプル
【表2.1】
2.DE=34.4%を持つサンプル
【表2.2−1】
【表2.2−2】
3.DE=71%を持つサンプル
【表2.3−1】
【表2.3−2】
4.DE=93.4%を持つサンプル
【表2.4】
図2.1は、1つのペクチンが、初期pHが他のpHよりも高いことによって特徴付けられることを示している。従来、ペクチンは、アルカリ金属塩基にて、3〜4又はそれ以上の範囲のpHに中和されていた。これは、主に、ペクチンを保存するためであるが、ペクチンの溶解度に対する影響も有していた。しかし、DE=9.6%に関する曲線を上方に移動させ、他の曲線と結びつける場合には、像は明瞭なものとなる:DEを増大させ、これにより、ガラクツロン酸を低減することによって、ペクチンのアルカリ消費は低減する。このように、アルカリを中和するためにペクチンを使用する場合には、エステル化度及び初期のpHは、できる限り低いものでなければならない。
この点について、さらに詳述するため、緩衝能力を、最も急勾配である滴定曲線の部分から算定して、pHを1pH単位増大させるために必要な0.1M NaOHの容量mlと定義する。
このように、図2.1から算定されるように概算の緩衝能力は次のとおりである:
DE=9.6%及びDE=34.4%:緩衝能力約26
DE=71%:緩衝能力約12
DE=93.4%:緩衝能力6未満
図2.2は、エステル化度が増大するにつれて、pH低下が劇的に増大することを示している。
図2.3は、ペクチンを20℃で溶解させる場合でも、DEの同様の劇的な影響があることを示している。図は、高DEにおいて、pHは最終的に5.5以下に低下することを示している。
これらの結果は、図2.4(図において、pH低下は初期から約130分まで続いている)においても認められる。pH低下が、ペクチン溶液が熱時又は冷時製造されたことにかかわらず同程度で生ずることは明らかである。
DE=93.4%について、pH=8に達する時間は2分であり、DE=71%については、12分かかり、DE=34.4%については、時間は35分であり、DE=9.6%については、130分かかる。pH=7とするためには、その差は大きくなる。DE=71を持つペクチンは、DE=93.4を持つペクチンよりも約9倍遅く、71%以下のDEを持つペクチンは、DE=93.4を持つペクチンと比べて、10倍以上遅い。
このように、アルカリ分発生の結果として、迅速なpHの低減を達成する必要がある場合には、できる限り高いDEを持つペクチンが好ましい。一方、pHのゆっくりとした低下が望まれる場合には、より低いDEが好ましい。特殊なDEのペクチンを選択することによって、特別な速度でpHを低減することが可能である。
他の態様は、異なるDEのペクチン調製物を合わせることである。例えば、初期アルカリ消費又は緩衝能力を達成するため、又は緩衝能力が使用される際、pHの低減を提供するために、低DEペクチン及び高DEペクチンを合わせることができる。
【実施例3】
【0110】
メチルエステル分布の影響
乾燥したレモンの皮から2種のサンプルを製造した。1つは、細菌性ペクチンエステラーゼにて脱エステル化し、これによって、メチルエステル基のランダム分布を形成した。他については、植物性ペクチンエステラーゼにて脱エステル化して、メチルエステル基のブロック式分布を形成した。サンプルを同様のDEとした。両サンプルを滴定し、それぞれ、70℃及び20℃にて溶解させたサンプルについて、経時的にpH低下を記録した。pH低下を30〜32℃で測定した。0.1008M NaOHを使用して滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
1.ランダムメチルエステル分布−DE=57.3%
【表3.1−1】
【表3.1−2】
2.ブロック式メチルエステル分布−DE=57.7%
【表3.2】
図3.1は、ペクチンにおけるメチルエステルの分布がアルカリ消費には影響を及ぼさないことを示している。
図3.2は、pH低下の速度における差を示している。また、ペクチンが熱時又は冷時溶解されていることにかかわらず、同じpH低下が達成されることも示している。
図3.3は、当初の120〜130分におけるpH低下を示し、ランダムエステル基分布は、ブロックエステル分布と比較して、pH=8に達するには、約4倍長い時間を必要とすることを示している。2つのペクチン調製物はほぼ同一の平均DEを有するため、ブロックエステル分布の、より迅速なpH低下は、エステル基の局部的濃縮によって説明される。このように、ブロックエステル分布を持つペクチンは、より高い平均DEを持つペクチンとして作用する。実際、これは、DEを増大させるために、ブロックペクチンを多糖で処理する(かかる処理は、再メチル化法を使用するよりも、高エステルペクチンを製造するための容易な手段である)ため重要である。
【実施例4】
【0111】
温度の影響
乾燥したレモンの皮から製造されたDE=71%を有する1つのサンプルについてのpH低下を、4種の異なる温度において記録した。ペクチンを70℃において溶解し、ついで、溶液を記録温度まで冷却することによってサンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
1.DE=71%を持つサンプル
【表4】
図4.1は、温度の増大によるpH低下の速度が増大することを表している。速度は、温度が約30℃を超えることによって、特に増大する。
【実施例5】
【0112】
アルカリの多段階添加の影響
乾燥したレモンの皮から製造されたDE=71%を有する1つのサンプルについてのpH低下を、温度25〜27℃において記録した。初めに、0.1M NaOH 19mlにてpHを約10に上げた。サンプルがpH6〜7に達した時点で、pHを再度約10に上げた。このために、0.1M NaOH 1.1mlが必要であった。pHが6〜7に達した時点で、pHを三度目約10に上げた。このためには、0.1M NaOH 1.2mlが必要であった。ペクチンを70℃にて溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
1.DE=71%を持つサンプル
【表5】
図5.1は、pH低下が、少なくとも3サイクル(初めに、pHを約10に増大させ、ついで、pHが低下した後、再度、約10に増大させる)後も、未変化のままであることを示している。1サイクル後、DEは約66%に低減されるが、このようなpHを低減させ続ける能力は、不完全な脱エステル化によるものである。
このように、アルカリ度がパルス状で現われる場合には、少なくとも3回については、ペクチンはアルカリ度を低減できる。実際、1つの実験(7日間で実施)では、DE=71%の1%ペクチン溶液200 mlは、0.1M NaOH溶液73mlを消費した。この期間後、DEは9.1%に低減した。
このように、ペクチン2gはNaOH 7.3ミリモル(NaOH 0.3gに相当する)を消費する。また、メタノール約0.23gが生成されたことを意味し、これは、ペクチンの酸効果と組み合わせて、ペクチンの抗微生物を説明できる。
【実施例6】
【0113】
ペクチン濃度の影響
乾燥したレモンの皮から製造されたDE=81.7%を有する1つのサンプルについてのpH低下を、温度30〜32℃において記録した。ペクチンの濃度は0.05〜2%であった。ペクチンを70℃にて溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
1.DE=81.7%を持つサンプル
【表6】
図6.1は、1%以上のペクチン濃度では、pH低下がペクチン濃度とは無関係であることを示している。しかし、非常に低いペクチン濃度でも、明確なpHにおける低下が生ずる。
【実施例7】
【0114】
水のpH低下
二酸化炭素は水に可溶性であり、この実験は、ペクチン又は他の添加剤の不存在下における、イオン交換水のpH低下を経時的に示すものである。水の温度を、恒温制御した水浴を使用することによって25℃に維持した。
1.イオン交換水
【表7】
図7.1は、約5時間の期間において、水におけるpHの「自然な」低下は約0.5pH単位であり、この誤差は許容されうるものである。
【実施例8】
【0115】
プロピレングリコールアルギン酸エステル−エステル化の影響
約55〜約85%の範囲のエステル化度を持つ3種のサンプルをテストした。全てについて滴定を行い、それぞれ、70℃及び20℃において溶解させたサンプルについて、pH低下を経時的に記録した。pH低下を30〜32℃において測定した。0.1008M NaOHを使用して滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値において、で不安定な読みを示したことを表す。
1.Kelcoloid O;エステル化:高−約85%
【表8.1】
2.Manucol Ester ER/K;エステル化:高−約80%
【表8.2】
3.Kelcoloid HVF;エステル化:中位−約55%
【表8.3】
4.アルカリの多段階添加の影響
1つのサンプル、Manucol Ester ER/KのpH低下を、温度30〜32℃において記録した。初めに、pHを0.1M NaOH 4mlにて約10に上げた。サンプルがpH5〜6に達した時点で、pHを再度約10に上げた。このためには、0.1M NaOH 2.5mlが必要であった。サンプルがpH5〜6に達した時点で、pHを三度目約10に上げた(この際、0.1M NaOH 2.0mlが必要であった)。さらに、サンプルがpH約6に達した時点で、pHを再度約10に上げた(この際、NaOH 1.5mlが必要であった)。ペクチンを70℃において溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
【表8.4】
図8.1は、PGAにおけるエステル化度の増大につれて、アルカリの消費が少なくなる。
緩衝能力を算定した:
DE約85%を持つPGA:約4.1
DE約80%を持つPGA:約5.7
DE約55%を持つPGA:約8.1
このように、PGAは、ペクチンと比べて、低い緩衝作用を提供する。
図8.2は、ペクチンについてと同様に、PGAが、エステル化度の増大につれて、より迅速なpH低下を提供することを示している。
図8.3は、プロピレングリコールアルギン酸エステルが20℃において溶解される場合にも、エステル化の同じ劇的な影響を生ずることを示している。図は、高DEにおいて、pHは最終的には5以下に低減される。
図8.4は、プロピレングリコールアルギン酸エステル溶液が熱時又は冷時製造されたかにかかわらず、pH低下は同程度であることを示している。
【実施例9】
【0116】
プロピレングリコールアルギン酸エステルへのアルカリの多段階添加の影響
1つのサンプル、Manucol Ester ER/KのpH低下を、温度30〜32℃において記録した。初めに、pHを0.1M NaOH 4mlにて約10に上げた。サンプルがpH5〜6に達した時点で、pHを再度約10に上げた。このためには、0.1M NaOH 2.5mlが必要であった。サンプルが再度pH5〜6に達した時点で、pHを約10に上げた(この際、0.1M NaOH 2.0mlが必要であった)。さらに、サンプルがpH約6に達した時点で、pHを再度約10に上げた(この際、NaOH 1.5mlが必要であった)。ペクチンを70℃において溶解し、ついで、溶液を記録温度に冷却することによって、サンプルを調製した。恒温制御した水浴にて、温度を維持した。
【表9】
図9.1は、2サイクル後、pH低下が遅くなる傾向を示している。
【実施例10】
【0117】
ローションにおけるpH低下
上述の「材料及び方法」セクション2.1において記載した2つの方法に従って調製したローションにおけるpH低下を、DE=約81.7%のペクチンを使用して測定した。
ローション10gを蒸留水50ml中にスラリー化させ、0.1M NaOHにてpHを約10に調整した。スラリーにおけるペクチン濃度:0.125%;温度:30℃。
【表10】
油相と混合する前に、ペクチンを水相に溶解させる場合には、より迅速なpH低下が提供されると考えられる。しかし、水相に溶解されたペクチンに関する曲線がわずかに低いpHにおいて開始していることを考慮すると、2つの曲線は同一に近いものである。このように、ローションを調製する方法の一方がペクチンの作用に影響を及ぼすことを示唆するものはない。
12名のヒト(女性6名及び男性6名)によってローションをテストし、被検者から下記の特記事項を得た:
皮膚上での延展が容易である。
べたつかない。
油ぎっていない。
適用後1分内で皮膚が柔らかくなる。
皮膚の柔らかさが少なくとも24時間持続する。
適用後1分内で皮膚のかゆみが除かれる。
皮膚のかゆみが24時間内に再発しない。
運動選手の足を、少なくとも24時間、効果的に良好に維持できる
ローションを、鼻の上に発疹ができたイヌについてテストした。ローションによる1日2回の鼻の治療により、目で見て、発疹が減少した。さらに2日間同じ治療を行ったところ、発疹を見つけることが困難な程度まで減少した。
【実施例11】
【0118】
クロスのpH低下
上述の「材料及び方法」セクション2.mに記載の方法に従って、クロスを調製した。
【表11.1】
【表11.2】
【表11.3】
【表11.4】
【表11.5】
図11.1は、浸漬の間のペクチン濃度に関係なく、ペクチンの分子量に関係なく、pH低下は全く同様であることを示している。
しかし、クロスをペクチン溶液に浸漬する場合、乾燥したクロスは、より堅いものとなる。表11.6は、この結果を示している。
【表11.6】
表11.6は、分子量の増大につれて、クロスが、許容できないほど堅いものとなることなく、より多くのペクチンを含有できることを示している:
Mw=123,000では、浸漬液中の濃度0.10%以上において、許容できないほど堅いものとなる。
Mw=95,000では、浸漬液中の濃度0.20%以上において、許容できないほど堅いものとなる。
Mw=41,500及びMw=25,000では、浸漬液中の濃度0.50%以上において、許容できないほど堅いものとなる。
すすぎは、通常、水16Lを使用して行われる。リンス用量を100 mlと仮定すると、リンス中のペクチン0.01%は、1.57%ペクチン溶液に相当し、リンス中のペクチン0.05%は、7.4%ペクチン溶液に相当し、リンス中のペクチン0.10%は、13.79%ペクチン溶液に相当し、リンス中のペクチン0.20%は、26.47%ペクチン溶液に相当し、及びリンス中のペクチン0.05%は、44.44%ペクチン溶液に相当する。
このようなペクチン溶液のブルックフィールド粘度に対する効果を表11.7に示す。
【表11.7】
分子量が低下するにつれて、粘度が小さくなることに加えて、ペクチンを溶解させることは、より容易となることが明らかである。これにより、リンスが、より少ないリンス量で、より多くのペクチンを含有することが可能となる。
分子量123,000を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約2%であり、分子量95,000を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約3%であり、分子量41,500を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約10%であり、及び分子量25,000を持つペクチンに関して、リンスにおけるペクチンの最大濃度は約12%である。
【実施例12】
【0119】
ペクチン製品の配合の影響
それぞれ、DE93.4%及び9.6%を有するペクチン製品を1:1で配合し、70℃に加熱して、配合物の1%溶液100gを調製した。25℃におけるアルカリの消費及び30〜32℃における経時的pH低下を記録した。0.1008M NaOHを使用して滴定を行った。コメントの欄における「不安定」は、pHメーターが、高pH値で不安定な読みを示したことを表す。
【表12】
図12.1は、高DEペクチン及び低DEペクチンを配合することにより、そのアルカリ消費が、個々のペクチン製品のアルカリ消費の間に存在するようになることを示している。
図12.2は、経時的pH低下が、個々の成分のpH低下の間に存在するようになることを示している。
個々の成分と比べて、高DEペクチン及び低DEペクチンの配合物は、高DEペクチンに匹敵するアルカリ消費の増大を提供し、低DEペクチンに匹敵するpH低下の増大を提供する。
【実施例13】
【0120】
高エステルペクチン及び低エステルプロピレングリコールアルギン酸エステルの配合の影響
DE93.4%を有するペクチン50%及びDE55%を有するプロピレングリコールアルギン酸エステル50%の配合物を、実施例12と同様にして、70℃において溶解させ、個々の成分のアルカリ消費と比較した。
【表13】
図13.1は、アルカリ消費が、個々の成分のアルカリ消費の間に存在するようになるが、高DEペクチン及び中位DE PGAの混合物の使用は、実施例12の高DEペクチン及び低DEペクチンの混合物について観察されるものよりも、アルカリ消費の増大が小さいものとなることを示している。
図13.2は、配合物のpH低下が、個々の成分のpH低下の間に存在するようになることを示している。しかし、比較的低いエステル化のPGAでも、かなり高いエステル化のペクチンよりも迅速なpH低下を提供する。
個々の成分と比べて、配合物は、ペクチン製品単独に匹敵するアルカリ消費の増大を提供する。
【実施例14】
【0121】
高DEプロピレングリコールアルギン酸エステル及び低DEペクチンの配合の影響
DE85%を有するプロピレングリコールアルギン酸エステル50%及びDE9.6%を有するペクチン50%の配合物を、実施例12と同様にして、70℃において溶解させ、個々の成分のアルカリ消費と比較した。
【表14】
図14.1は、配合物のアルカリ消費が、個々の成分のアルカリ消費の間に存在するようになることを示している。
図14.2は、経時的なpH低下が、個々の成分のpH低下の間に存在するようになることを示している。
個々の成分と比べて、配合物は、プロピレングリコールアルギン酸エステル単独に匹敵するアルキル消費における増大及び低DEペクチン単独に匹敵するpH低下における増大を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1.1】各種分子量のペクチンのアルカリ消費を示すグラフである。
【図1.2】70℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図1.3】20℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図2.1】各種エステル化度(DE)のペクチンのアルカリ消費を示すグラフである。
【図2.2】70℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図2.3】20℃での溶解による、上記ペクチンに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図2.4】70℃又は20℃で溶解した上記ペクチンの当初から約130分までのpH低下を示すグラフである。
【図3.1】ブロック様式で又はランダム式でエステル化した同様のDEを持つペクチンのアルカリ消費を示すグラフである。
【図3.2】70℃又は20℃で溶解した上記ペクチンのpH低下を示すグラフである。
【図3.3】上記ペクチンの当初から約100分までのpH低下を示すグラフである。
【図4】各種温度で保持したペクチンのpH低下を示すグラフである。
【図5】ペクチンへの多段回アルカリ添加の影響を示すグラフである。
【図6】pH低下に対するペクチン濃度の影響を示すグラフである。
【図7】ペクチン又は他の添加剤の添加なしでのイオン交換水のpH低下を示すグラフである。
【図8.1】各種エステル化度のアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)のアルカリ消費を示すグラフである。
【図8.2】70℃での溶解による、上記PGAに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図8.3】20℃での溶解による、上記PGAに関するpHの経時的低下を示すグラフである。
【図8.4】70℃又は20℃で溶解した上記PGAの当初から約70分までのpH低下を示すグラフである。
【図9】アルギン酸プロピレングリコールエステルへの多段回添加の影響を示すグラフである。
【図10】水相又は油相のペクチンを含有するローションのpH低下を表すグラフである。
【図11.1】各種分子量のペクチン0.01%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.2】各種分子量のペクチン0.05%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.3】各種分子量のペクチン0.10%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.4】各種分子量のペクチン0.20%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図11.5】各種分子量のペクチン0.50%溶液に浸漬したクロスのpH低下を示すグラフである。
【図12.1】70℃で溶解したDE93.4%を有するペクチン50%及びDE9.6%を有するペクチン50%の混合物のアルカリ消費を、個々の成分のアルカリ消費と比較して示すグラフである。
【図12.2】70℃で溶解した上記混合物のpHの経時的低下を、個々の成分のpH低下と比較して示すグラフである。
【図13.1】70℃で溶解したDE93.4%を有するペクチン50%及びDE55%を有するアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)50%の混合物のアルカリ消費を、個々の成分のアルカリ消費と比較して示すグラフである。
【図13.2】70℃で溶解した上記混合物のpHの経時的低下を、個々の成分のpH低下と比較して示すグラフである。
【図14.1】70℃で溶解したDE85%を有するアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)50%及びDE9.6%を有するペクチン50%の混合物のアルカリ消費を、個々の成分のアルカリ消費と比較して示すグラフである。
【図14.2】70℃で溶解した上記混合物のpHの経時的低下を、個々の成分のpH低下と比較して示すグラフである。
【図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のカルボン酸多糖を含有する皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、前記カルボン酸多糖の少なくとも1が、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する高DEカルボン酸多糖であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
高DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロキシプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれるものである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
高DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである請求項2記載の組成物。
【請求項4】
高DEカルボン酸多糖が、約5,000〜約140,000の範囲、好ましくは、約10,000〜約125,000の範囲、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである請求項2記載の組成物。
【請求項5】
多糖のエステル基が、ブロック様式で分布している請求項4記載の組成物。
【請求項6】
多糖のエステル基が、ランダム式で分布している請求項4記載の組成物。
【請求項7】
皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する少なくとも1の高DEカルボン酸多糖、及びエステル化度(DE)約5%〜約70%、さらに好ましくは、約5%〜約40%、最も好ましくは、約10%〜約35%を有する少なくとも1の低DEカルボン酸多糖の混合物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項8】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれるものである請求項7記載の組成物。
【請求項9】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである請求項8記載の組成物。
【請求項10】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、約5,000〜約140,000、好ましくは、約10,000〜約125,000、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである請求項9記載の組成物。
【請求項11】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、エステル化アルギン酸である請求項7記載の組成物。
【請求項12】
エステル化アルギン酸が、置換アルコールから誘導されるエステル、例えば、2価の脂肪族アルコールのエステル、好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステルである請求項11記載の組成物。
【請求項13】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基が、ブロック様式で分布している請求項7記載の組成物。
【請求項14】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基が、ランダム式で分布している請求項7記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1のカルボン酸多糖を含有する組成物の、皮膚保護及び/又はアルカリ度制御のための使用。
【請求項16】
カルボン酸多糖が、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロキシプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれるものである請求項15記載の使用。
【請求項17】
カルボン酸多糖が、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである請求項16記載の使用。
【請求項18】
カルボン酸多糖が、約5,000〜約140,000の範囲、好ましくは、約10,000〜約125,000の範囲、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである請求項17記載の使用。
【請求項19】
カルボン酸多糖が、エステル化アルギン酸である請求項16記載の使用。
【請求項20】
エステル化アルギン酸が、2価の脂肪族アルコールのエステルのような置換アルコールから誘導されるエステル、好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステルである請求項19記載の使用。
【請求項21】
多糖のエステル基が、ブロック様式で分布している請求項15記載の使用。
【請求項22】
多糖のエステル基が、ランダム式で分布している請求項15記載の使用。
【請求項23】
少なくとも1のカルボン酸多糖が、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する高DEカルボン酸多糖である請求項15記載の使用。
【請求項24】
少なくとも1のカルボン酸多糖が、約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する低DEカルボン酸多糖である請求項15記載の使用。
【請求項25】
約70〜約100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のカルボン酸多糖及び約5〜約70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、約10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のカルボン酸多糖の混合物を含有する組成物の、請求項15記載の使用。
【請求項26】
ヒトの皮膚における請求項15記載の使用。
【請求項27】
動物の皮膚における請求項15記載の使用。
【請求項28】
スキンクリーム、スキンローション、消臭剤製品、フレグランス製品、ヘア・ケア製品、シェービング製品、セッケン製品、及び入浴用塩製品でなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項29】
女性用衛生製品及びおむつでなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項30】
ストーマ製品及び傷ケア製品でなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項31】
ローション含有ティッシュペーパー、布処理製品、及び洗濯リンス製品でなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項1】
1以上のカルボン酸多糖を含有する皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、前記カルボン酸多糖の少なくとも1が、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する高DEカルボン酸多糖であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
高DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロキシプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれるものである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
高DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである請求項2記載の組成物。
【請求項4】
高DEカルボン酸多糖が、約5,000〜約140,000の範囲、好ましくは、約10,000〜約125,000の範囲、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである請求項2記載の組成物。
【請求項5】
多糖のエステル基が、ブロック様式で分布している請求項4記載の組成物。
【請求項6】
多糖のエステル基が、ランダム式で分布している請求項4記載の組成物。
【請求項7】
皮膚保護用アルカリ度制御組成物であって、エステル化度(DE)約70%〜約100%、さらに好ましくは、約80%〜約100%を有する少なくとも1の高DEカルボン酸多糖、及びエステル化度(DE)約5%〜約70%、さらに好ましくは、約5%〜約40%、最も好ましくは、約10%〜約35%を有する少なくとも1の低DEカルボン酸多糖の混合物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項8】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれるものである請求項7記載の組成物。
【請求項9】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである請求項8記載の組成物。
【請求項10】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、約5,000〜約140,000、好ましくは、約10,000〜約125,000、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである請求項9記載の組成物。
【請求項11】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖が、エステル化アルギン酸である請求項7記載の組成物。
【請求項12】
エステル化アルギン酸が、置換アルコールから誘導されるエステル、例えば、2価の脂肪族アルコールのエステル、好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステルである請求項11記載の組成物。
【請求項13】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基が、ブロック様式で分布している請求項7記載の組成物。
【請求項14】
高DEカルボン酸多糖及び低DEカルボン酸多糖のエステル基が、ランダム式で分布している請求項7記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1のカルボン酸多糖を含有する組成物の、皮膚保護及び/又はアルカリ度制御のための使用。
【請求項16】
カルボン酸多糖が、ペクチンエステル、アルギン酸エステル、エステル化セルロースエーテル、エステル化ヒドロキシエチルセルロース、エステル化カルボキシメチルセルロース、エステル化グァーゴム、エステル化陽イオングァーゴム、エステル化ヒドロキシプロピルグァーゴム、デンプンエステル、及び高分子化糖エステルでなる群から選ばれるものである請求項15記載の使用。
【請求項17】
カルボン酸多糖が、ペクチンエステル、好ましくは、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式又は複素環式アルコールのペクチンエステル、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールのエステル、最も好ましくは、メタノールのエステルである請求項16記載の使用。
【請求項18】
カルボン酸多糖が、約5,000〜約140,000の範囲、好ましくは、約10,000〜約125,000の範囲、最も好ましくは、約10,000〜約40,000の範囲の分子量を有するペクチンである請求項17記載の使用。
【請求項19】
カルボン酸多糖が、エステル化アルギン酸である請求項16記載の使用。
【請求項20】
エステル化アルギン酸が、2価の脂肪族アルコールのエステルのような置換アルコールから誘導されるエステル、好ましくは、エチレングリコール又はプロピレングリコールアルギン酸エステルを含む、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式及び複素環式アルコールのアルギン酸エステルである請求項19記載の使用。
【請求項21】
多糖のエステル基が、ブロック様式で分布している請求項15記載の使用。
【請求項22】
多糖のエステル基が、ランダム式で分布している請求項15記載の使用。
【請求項23】
少なくとも1のカルボン酸多糖が、約70〜100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する高DEカルボン酸多糖である請求項15記載の使用。
【請求項24】
少なくとも1のカルボン酸多糖が、約5〜70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する低DEカルボン酸多糖である請求項15記載の使用。
【請求項25】
約70〜約100%、さらに好ましくは、約80〜約100%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のカルボン酸多糖及び約5〜約70%、さらに好ましくは、約5〜約40%、最も好ましくは、約10〜約35%の範囲のエステル化度(DE)を有する少なくとも1のカルボン酸多糖の混合物を含有する組成物の、請求項15記載の使用。
【請求項26】
ヒトの皮膚における請求項15記載の使用。
【請求項27】
動物の皮膚における請求項15記載の使用。
【請求項28】
スキンクリーム、スキンローション、消臭剤製品、フレグランス製品、ヘア・ケア製品、シェービング製品、セッケン製品、及び入浴用塩製品でなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項29】
女性用衛生製品及びおむつでなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項30】
ストーマ製品及び傷ケア製品でなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【請求項31】
ローション含有ティッシュペーパー、布処理製品、及び洗濯リンス製品でなる群から選ばれる製品における請求項15記載の使用。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
【図8】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図13】
【図13】
【図14】
【図14】
【公表番号】特表2007−534707(P2007−534707A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509876(P2007−509876)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000285
【国際公開番号】WO2005/102262
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501384791)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000285
【国際公開番号】WO2005/102262
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501384791)
【Fターム(参考)】
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