説明

皮膚掻痒感軽減用肌着

【課題】
着用することにより掻痒感を緩和・軽減することができる肌着を提供すること。
【課題手段】
ウコン抽出液で染色した繊維材料から構成されることを特徴とする皮膚掻痒感軽減用肌着。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚掻痒感軽減用肌着に関し、更に詳細には、着用することによりアトピー性皮膚炎やアレルギー皮膚炎等の皮膚疾患に起因する皮膚掻痒感を軽減することができる肌着に関する。
【背景技術】
【0002】
痒みは多くの皮膚疾患において重要な症状の一つであり、特にアトピー性皮膚炎等の疾患では、激しい掻痒感によって掻破行動が誘発される。このため、皮膚の炎症が悪化しさらに痒みがひどくなるという悪循環に陥りやすく、睡眠障害など生活に支障を来す場合もある。また掻破行動によって皮膚バリアが破壊され、感染症などの二次的な疾患を併発する場合もある。したがって痒みを抑制することは、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療において極めて重要である。
【0003】
アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療薬として、一般にステロイド剤が用いられているが、ステロイド剤には皮膚萎縮、毛細血管拡張などの副作用の問題があるため、これに代わる治療剤の開発が行われている。しかしながら、未だ安全性が高く有効な治療剤が市販されるには至っていない。
【0004】
したがって、安全性が高く、アトピー性皮膚炎などに起因する掻痒感を有効に緩和できる手段が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、着用することによって、皮膚疾患患者の掻痒感を軽減することができる肌着を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ウコン抽出液で染色された肌着を着用することにより、皮膚疾患に伴う痒みを軽減できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、ウコン抽出液で染色した繊維材料から構成されることを特徴とする皮膚掻痒感軽減用肌着である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の肌着は、着用することによって、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に伴う掻痒感を有効に緩和することができるため、安全に、睡眠の改善など患者の生活の質(QOL;Quality Of Life)を向上させ、症状の悪化を防止し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の肌着は、ウコン抽出液で染色した繊維材料から構成されるものである。
【0010】
本発明に用いられるウコン(Curcuma Longa.L)はショウガ科の多年生草本で、ウコン(秋ウコン)およびキョウオウ(春ウコン)のいずれも用いることができる。本発明に用いるウコン抽出液は、このウコンの根茎を適当な溶媒に浸漬し、60〜100℃で20分〜60分程度抽出したものを用いることができる。ウコンの根茎は、そのままでもよいが、スライスまたは粉砕して適当な大きさにして抽出に供しても良く、また乾燥・粉砕して粉末状としたものを用いても良い。このうち、粉末のものが抽出効率が高いために好ましい。ウコンを抽出するための溶媒としては、水やエタノール、プロピレングリコール等の溶剤を用いることができるが、溶剤の残存により皮膚刺激の問題が生じる場合があるため、水を用いることが好ましい。また、抽出に用いるウコンの量は、粉末の場合溶媒100質量部(以下、単に「部」と示す)に対して、通常1〜10部であり、好ましくは2〜6部である。また、染色する布帛100部に対するウコンの量は粉末の場合、通常70〜120部であり、好ましくは、90〜120部である。
【0011】
またウコンは、発酵処理により掻痒軽減効果をさらに高めることができるため、発酵処理したウコンを用いることが好ましい。ウコンの発酵処理は、公知の方法に従って行うことができ、例えば、特開2004−345986号公報に記載の方法を用いることができる。また、発酵処理されたウコンの粉末として、醗酵ウコンパウダー(琉球バイオリソース社製)が市販されているから、これを用いることもできる。
【0012】
本発明に用いる繊維材料を構成する繊維素材は、特に限定されるものではなく、綿、麻、絹およびウール等の天然繊維やレーヨン等の合成繊維が挙げられるが、ウコン抽出液による染色され易さや皮膚刺激の観点から天然繊維が好ましく、特に有機栽培された綿(オーガニックコットン)が好ましい。また繊維材料の形態としては、これらの繊維を用いて常法により製造された糸や織物、編物、不織布、フェルト等の布帛が例示できる。またこの布帛には、縫製されて肌着の形態となったものも含まれる。
【0013】
上記繊維材料を前記したウコン抽出液により染色する方法としては、特に限定されるものではないが、繊維材料に対して10〜40質量倍程度のウコン抽出液中に、繊維材料を60〜100℃で8〜15時間程度浸漬すればよい。また、染色の前処理として、常法により繊維材料を精練処理し不純物を除去してから染色することが好ましい。
【0014】
また繊維材料の染色にあたっては、媒染処理を行うことができる。媒染処理は染色の前に行う先媒染であっても、染色後に行う後媒染のいずれでもよい。媒染処理に用いる媒染剤としては、チタン媒染剤、アルミニウム媒染剤、酸媒染剤等が挙げられる。チタン媒染剤としては、硫酸チタン等が、アルミニウム媒染剤としては、ミョウバン、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等が、酸媒染剤としては、クエン酸、梅酢、氷酢酸等が例示できる。これら媒染剤の使用量は媒染剤の種類によっても異なるが、布帛100部に対し、通常5〜40部、好ましくは、10〜30部である。媒染処理は、繊維材料の約10〜40質量倍程度の水にこのような量の媒染剤を溶解し、その中に繊維材料を、34〜50℃で8〜12時間程度浸漬させればよい。
【0015】
このようにしてウコン抽出液により染色された繊維材料は、適宜水洗、乾燥後、繊維材料が糸や未縫製の布帛の場合は、常法に従って製編、製織、縫製等されて肌着が製造される。なお、本明細書において、肌着とは肌へ直接接触する繊維製品を意味し、具体的には、Tシャツ、下着、手袋、靴下、パジャマ、シーツ、マフラー、スカーフ、マスクなどが挙げられ、このうち、掻痒感軽減効果が高いことからTシャツ、下着、パジャマ等が好ましい。これらの肌着の全部または一部に、ウコン抽出液により染色された繊維材料が用いられていればよい。
【0016】
かくして得られた本発明の肌着は、着用することによって、皮膚疾患に伴う掻痒感を低減することができるものである。
【実施例】
【0017】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0018】
実 施 例 1
ウコン染色肌着の製造:
綿の布帛1kgをダンシェード−186(日東紡社製)200gを水25Lに溶解した水溶液で精練し、日なた干しで3時間乾燥させた。水25Lにミョウバン150gを溶解し、この水溶液中に、精錬された布帛を36℃で24時間浸漬し先媒染処理を行い、その後日なた干しで3時間乾燥させた。発酵ウコン粉末(商品名:醗酵ウコンパウダー;琉球バイオリソース社製)1kgを水25Lと混合して、100℃で20分間抽出してウコン抽出液を得た。この沸騰したウコン抽出液25L中に媒染処理した布帛を浸漬した。30分加熱・攪拌後加熱を止めそのまま8時間浸漬させた。その後布帛を水洗し、15分日なた干した後陰干しした。これを2回繰り返しウコン染色布帛を得た。この布帛を縫製してTシャツを製造した。
【0019】
実 施 例 2
掻痒感低減効果試験:
下記表1に示す症状の程度と年齢構成のアトピー性皮膚炎の患者23名に実施例1で得られたTシャツを2ヶ月着用して就寝してもらった(1日の着用時間6〜10時間)。その後、下記の質問項目および評価基準によって掻痒感軽減効果について評価を行ってもらい、本発明肌着の掻痒感軽減効果を調べた。その結果を表2に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
(評価方法)
質問1:ウコン染め衣類の寝心地はどうでしたか?
評 点 : 基 準
3 : いままでよりよく眠れた
2 : いままでより多少よく眠れた
1 : いままでと全然変わらない
質問2:質問1のウコン染めの「寝心地の効果」は何日間持続していましたか?
評 点 : 基 準
3 : 3週間以上
2 : 2〜3週間未満
1 : 1〜2週間未満
質問3:質問1のウコン染め衣類を着用時の患部のかゆみはこれまでと比べてどうでしたか?
評 点 : 基 準
3 : 掻く回数が少なくなった
2 : 多少、掻く回数が少なくなった
1 : いままでと全然変わらない
質問4:ウコン染め衣類を着用による患部の皮膚の状態はこれまでと比べてどうでしたか?
評 点 : 基 準
3 : とても良くなった
2 : 少し良くなった
1 : いままでと全然変わらない
【表2】

【0022】
この結果から、ウコン抽出液で染色したパジャマを着用することにより、アトピー性皮膚炎の痒みが緩和され、睡眠が改善されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、アトピー性皮膚炎やアレルギー皮膚炎などの皮膚疾患に伴う掻痒感を軽減することができ、その睡眠を改善することができる。したがって、本発明の肌着は、皮膚疾患患者の生活の質(QOL)を改善し、症状の悪化を抑制するために有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコン抽出液で染色した繊維材料から構成されることを特徴とする皮膚掻痒感軽減用肌着。
【請求項2】
ウコン抽出液が、発酵処理されたウコンの抽出物である請求項1に記載の皮膚掻痒感軽減用肌着。
【請求項3】
繊維材料を構成する繊維素材が、綿、麻、絹、ウールおよびレーヨンよりなる群から選ばれた繊維である請求項1または2に記載の皮膚掻痒感軽減用肌着。
【請求項4】
繊維材料が媒染処理されたものである請求項1ないし3のいずれかの項に記載の皮膚掻痒感軽減用肌着。
【請求項5】
媒染処理に用いる媒染剤がチタン媒染剤、アルミニウム媒染剤または酸性媒染剤よりなる群から選ばれたものである請求項4記載の皮膚掻痒感軽減用肌着。
【請求項6】
皮膚掻痒感がアトピー性皮膚炎に起因するものである請求項1ないし5のいずれかの項に記載の皮膚掻痒感軽減用肌着。

【公開番号】特開2008−303487(P2008−303487A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150391(P2007−150391)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(507186632)株式会社健食沖縄 (1)
【出願人】(507186643)
【Fターム(参考)】