説明

皮膚極微細活性化システム

表皮のある領域を極微細活性化するためのシステム及び同システムを用いた方法。本システムは装置及び皮膚に有益な薬剤を含む。本装置は表皮組織を効果的に、最小の不快感で極微細活性化する。本システム及び方法は個人使用のための家庭用キットして提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚極微細活性化システム及び方法に関する。より具体的には、本発明は1本又は複数の針のシステムを用いて皮膚を無痛で極微細活性化する極微細活性化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物又は薬剤を送達させるため或いは生体組織から試料を抽出して診断のためにその試料を分析するために、針を用いることはよく知られている。そのような針の多くは血液細胞に対して直径が比較的大きい、すなわちミリメートル単位の大きな針(マクロニードル)であった。vivida−sa.co.zaウェブサイトはENVIRON Medical ROLL−CIT(登録商標)と呼ばれるマクロニードル装置を記載している。いくつかの用途では、より小径の針、すなわち、直径がマイクロメートル単位のマイクロニードルを使用することが有利である。医薬品の送達並びに生理学的パラメータ及び代謝パラメータを監視するための、針様突出部を含んだパッチに加えマイクロニードル装置が、例えば、米国特許第5879326号及び第5591139号に開示されている。米国特許第6565532号及び第6652478号は皮膚にマーキングし、半永久的な皮下化粧を施すのに用いられるマイクロニードル装置に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化粧上の利益のために皮膚を極微細活性化するシステムの必要性がある。さらに、医師がいることを必要とせず、侵襲が最小で、不快感を最小にして行うことのできる極微細活性化システム及び方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
不適な装置並びに先行技術の方法及び技術の欠点を軽減するために本発明の方法とともに先行技術のマイクロニードルを使用することができるが、他方では皮膚極微細活性化システム及び方法が開発されてきた。本発明は究極的な化粧上の利益のために皮膚の修復及び再生機能を活性化するように、皮膚表面下の適当な深さの表皮細胞を、その下側の真皮層を実質的に破壊することなく極微細活性化するシステム及び方法を含む。
【0005】
第1の態様では、本発明は、
(a)近位端とハンドル装置に結合された遠位端とを有し、前記近位端から前記遠位端まで延びる中心開口部をその中に有する、中心軸を含んだアクチュエータ装置と、アクチュエータ装置の中心開口部内の中心に着脱可能に配設することができ、遠位端を有するとともにその近位端断面の表面内で終端する円筒形ロッドを含んでおり、前記表面がそこから突出/延びる少なくとも1つの針を有しているプローブとを備えた、個人の皮膚表面を極微細活性化するための装置と、
(b)皮膚に有益な薬剤を含んだ組成物とを備えた極微細活性化システムを提供する。
【0006】
前記アクチュエータ装置は前記軸と同軸上に位置決めされた刻み付き円盤をさらに含むことが好ましく、前記刻み付き円盤はその中に中心に配設されたネジ付き開口部と、前記刻み付き円盤とネジで協働するネジ付き円筒形ドライバーロッドとを有し、前記システムは、前記中心開口部内に設けられるとともに前記円筒形ドライバーロッドに着脱可能に固定されたコレットをさらに含む。
【0007】
前記表面は1mm〜10mmの断面直径を有することが好ましい。前記少なくとも1つの針は前記プローブの前記表面を越えて50〜250μm突出することが好ましい。
【0008】
場合によっては、前記プローブの前記表面から延びる複数の針は、粘着性経皮パッチ上にアレイとして配置される。別法として、前記プローブの前記表面から延びる複数の針は経皮ローラー装置の上にアレイとして配置される。
【0009】
前記少なくとも1つの針は三角形、台形、又はこれらの組み合わせを含む幾何学断面形状を有し得る。例えば、少なくとも1つの針は錐台(frustacone)の幾何学形状を有し得る。
【0010】
前記皮膚に有益な薬剤は、レチノイド、必須脂肪酸、PPAR活性剤、植物エストロゲン、酸性皮膚に有益な薬剤、皮膚美白剤、皮脂抑制剤、収斂剤、創傷治癒剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることが好ましい。
【0011】
第2の態様では、本発明は、本発明の極微細活性化システム又はその誘導体を皮膚表面に当てることにより表皮組織を極微細活性化することによって、個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化するための方法を提供する。前記装置は表皮の下の皮膚層を実質的に穿通しないように皮膚に当てられることが好ましい。例えば、複数の針は、接着パッチなどの経皮パッチ又はローラー上にアレイとして配置され得、この針は真皮を貫通することなく無痛で表皮に当てることができる。一般に、皮膚穿通の深度は約100μmまでである。この針は皮膚表面に対して20°〜160°の角度で当てられ得る。針又は複数の針を当てる前又は後から、皮膚に有益な薬剤を1分〜24時間適用することが好ましい。
【0012】
本方法は前記皮膚表面の表皮細胞の極微細活性化が終了したときにアクチュエータ装置からプローブを解放する工程をさらに含むことが好ましい。
【0013】
前記皮膚に有益な薬剤は、レチノイド、必須脂肪酸、PPAR活性剤、植物エストロゲン、酸性皮膚に有益な薬剤、皮膚美白剤、皮脂抑制剤、創傷治癒剤、収斂剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることが好ましい。
【0014】
前記極微細活性化は、皮膚を滑らかにすること、細かい線及び皺並びにたるんだ皮膚の外観を変えること、高い弾力性を持った滑らかで張りのある肌の質感の改善、光線で損傷した皮膚の修復、硬度、輝き、ツヤ、全体的に健康な皮膚の外観、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される皮膚への利益を提供することが好ましい。
【0015】
別の態様では、本発明は極微細活性化装置及び/又は第1の態様による皮膚に有益な薬剤を含んだキットである。該キットは民生用に適しており、医師の補助を必要としない。
【0016】
さらなる態様では、以下の工程を含む本発明のシステムの極微細活性化装置を組み立てる方法が提供される。
(a)ドライバーロッドにコレットを固定する工程、
(b)コレットにプローブを挿入する工程、
(c)固定されたドライバーロッドをアクチュエータ装置の中心軸の中心開口部に挿入する工程、及び
(d)アクチュエータ装置の上に刻み付き円盤を締め付けることにより、その中にドライバーロッドを固定し、コレットにプローブを把持させるように押し込む工程。
【0017】
さらなる態様では、皮膚極微細活性化の方法が提供され、該方法は、
(a)近位端とハンドル装置に結合された遠位端とを有し、前記近位端から前記遠位端まで延びる中心開口部をその中に有する、中心軸を含んだアクチュエータ装置と、前記アクチュエータ装置の前記中心開口部内の中心に着脱可能に配設することができ、遠位端を有するとともにその近位端断面の表面内で終端する円筒形ロッドを含んでおり、前記表面がそこから突出する少なくとも1つの針を有しているプローブとを備えた、個人の皮膚表面を極微細活性化するための極微細活性化装置と、
(b)米国特許第5879326号及び第5591139号のいずれかに実質的に記載されたような装置と、
(c)それらを組み合わせたもの及び実質的同等物とから成る群から選択される装置を皮膚に適用することを含む。
【0018】
前記表面は1mm〜10mmの断面直径を有することが好ましい。本装置は繰り返して皮膚に当てることができる。
【0019】
本発明の上記及び他の特徴及び利点をより完全に理解するために、以下の好適な実施形態の説明を参照されたい。
【0020】
添付図面を参照するとともに以下の好適な実施形態の詳細な説明によって、本発明はよりよく理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、皮膚のバリア破壊及び皮膚基底細胞の極微細創傷によって、皮膚細胞の活性化がもたらされ、その結果、理論に拘束されることなく、皮膚細胞の創傷治癒及び/又は細胞交代/再生過程といった有益な化粧上の効果が皮膚にもたらされるという新しい考え方に基づくものである。本発明の皮膚極微細活性化システム及び方法は、針様突出部を有するプローブを当てて基底層表皮細胞を活性化することによって皮膚上部層を破壊することを伴う。本発明の装置及び方法を用いれば、表皮の基底層を含む表皮が破壊され、これによって皮膚の創傷治癒及び/又は細胞の再生過程が効果的に活性化される。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「含む」という用語は、「備える」、「〜から構成される」、「〜から成る」、「〜成立する」及び/又は「本質的に〜から成立する」ということを包含する。操作実施例及び比較実施例の場合を除き、又は別途明示する場合を除き、材料の量又は比率或いは反応条件、材料の物理的性質及び/又は使用を表す本記載における全数値は、「約」という言葉によって変更されるものと理解されたい。
【0023】
「表皮」という用語は、真皮上にある皮膚の血管のない外部層を指す。
【0024】
本明細書で用いられる場合「極微細活性化」という用語は、顕微鏡スケールの装置を用いて、皮膚バリア/角質層の顕微鏡スケールの機械的な皮膚の破壊又は破損及び基底層ケラチノサイトの極微細創傷をもたらす、創傷治癒及び/又は有益なバリア修復及び/又は表皮細胞の再生及び/又は交代機序若しくは過程の活性化を指す。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「皮膚」という用語は、顔、口(上皮細胞)、頚部、胸部、背中、腕、手、脚、及び頭皮の上又は中にある皮膚を含む。
【0026】
図1A及び1Bを参照すると、好適な一実施形態では、個人の皮膚表面用の極微細活性化装置10は、その中の中心部に着脱可能に配設されたプローブ14を有するアクチュエータ装置12を備えている。場合によっては、プローブ14の所望の長さ18がそこから延びるように、アクチュエータ装置12に固定することができるとともにアクチュエータ装置12の上に着脱可能且つ調節可能に位置決めすることのできる円筒形位置決めスリーブ16が設けられる。
【0027】
図1Cを参照すると、アクチュエータ装置12は、近位端22及びハンドル装置26内で終端する遠位端24を有する円筒形中心軸20を備えている。アクチュエータ装置は、以下図2に関して説明するように、軸20と同軸上に位置決めされるとともに実質的に中心にハンドル装置26の上に固定された刻み付き円盤30をさらに備えている。刻み付き円盤30は、その中の中心に配設されたネジ付き開口部31を有している。
【0028】
図2を参照すると、中心軸20はその中に位置する中心開口部32を有しており、該開口部は、近位端22では直径の大きい錐台状部分28で始まって、錐台状部分が円筒形部分内へとテーパ状になって遠位端24に向かって延びるにしたがってシート37を形成しながら、軸の近位端22から遠位端24まで延在している。コレット33がシート37に着脱可能に設けられているとともに、中心開口部32内に配設されたネジ付き円筒形ドライバーロッド35にも着脱可能に固定されており、次いでこれが、開口部31のネジ穴の協働によって刻み付き円盤30に連結され、これによって刻み付き円盤30がハンドル装置26の上に固定される。コレット33がシート37に入るときに圧縮されてプローブ14を保持するように、コレット33は分割されて圧縮可能になっている。
【0029】
図1A及び1Bを参照すると、任意の位置決めスリーブ16は中心軸20よりも径の大きい中心開口部43をその中に有する円筒形ロッド42を含んでいる。位置決めスリーブ16は、円筒形ロッド42上の選択された部分50から延びて遠位端46において終端する外側ネジ付き表面部分48を有する、近位端44及び遠位端46を備えている。位置決めスリーブ16は、ネジ付き表面部分48と協働するようにその中にネジ付き円筒形空洞を有するとともに該表面部分48に沿って調整可能に位置決めされた第1のロッキングリング52と、ネジ付き表面部分48と協働するようにその中にネジ付き円筒形空洞を有するとともに遠位端46からそれに隣接した第1のロッキングリング52までネジ付き表面48に沿って調整可能に位置決めされた第2のロッキングリング54とをさらに備えている。
【0030】
図1C及び3を参照すると、プローブ14は、遠位端36及び円盤状であり得る断面表面38で終端する近位端40を有するとともに該表面から直角に突出する少なくとも1つの針58を有する、円筒形ロッド34を含む。ロッド34は1本又は複数の針58を保持するのに適した任意の小さな大きさで、コレット33と協働するのに適した大きさであり得る。ロッド34は、約1mm〜約10mmの断面径を有することが好ましい。円筒形ロッド34及びまた表面38は、約1.5mmの断面径を有することが好ましい。
【0031】
図3を参照すると、プローブ14の表面38は平坦な表面領域56を含み、該領域56はそこから上方に延びて平坦な表面領域56に沿って無作為の構成又はパターン化された構成などの任意の構成で位置決めされた少なくとも1本の針58を有する。図4に示すように、針58の構成は製造が容易でになるために、パターン化されること、すなわち対称的であることが好ましい。
【0032】
場合によっては、本発明の好適な一実施形態によれば、各針58又は複数の針58は、表面領域56から上方に延びて1本又は複数の針58を囲繞する位置決めカラー60を備える。
【0033】
針58(1本又は複数)は任意の3次元形状であってよく、これによって各針58が鋭い先又は先端で終端する限りは垂直軸又は水平軸のいずれかに沿って任意の断面形状及び対称性を有する。よりよい活性化のためには、針58の鉛直断面形状は三角形、台形、花弁形又は丸みを帯びた三角形(すなわち、3点で交わる1本の直線と2本の丸みのある線によって区切られた三角形で、2本の丸みのある線の結合が鋭い先端を形成する)、或いは頂点が鋭い先端又は鋭角を含んだ別の形状であることが好ましい。この針は円錐又は錐台形の形状であることが好ましい。
【0034】
本発明の一態様では、表面38は1本の針58のみから成り得る。別の態様では、表面38は複数の針58又は針58のアレイから成り得る。針58の大きさ及び数は、針の穿通程度は表皮よりも深いべきではない、すなわち皮膚を活性化するのに丁度十分であるが、痛みを生じさせないという基準によって決定される。針58の長さは約50〜約250μmであることが好ましく、穿通深度は約100μmであることが好ましい。基部における針の直径は約10〜約200μm、好適には約15〜約150μm、より好適には、最も効果的な活性化のためには約15〜約120μmであり得る。針58の鋭い先すなわち先端部は約1〜約2μmの直径を有する。針58は皮膚の極微細穿通するための任意の適した材料、好適には金属(例えば、ステンレス鋼)又はSiOから作製されてよく、装置10の残りの部分はプラスチックから作製されることが好ましいが、針58を保持するとともに針に角質層に極小穴を開けさせるのに適した任意の材料であってもよい。複数の針58は、例えば、接着パッチなどの表面(38)に貼り付けられた経皮パッチ又はローラー上にアレイとして配置されてもよく、この針は真皮を貫通することなく無痛で表皮に当てることができるので、皮膚が極微細活性化される。
【0035】
図1B及び1Cを参照すると、極微細活性化装置10を組み立てるために、コレット33をドライバーロッド35に固定し、プローブ14をコレット33に挿入する。次に、ドライバーロッド35をアクチュエータ装置12の中心軸20の中心開口部32に挿入する。刻み付き円盤30をアクチュエータ装置20の上で締めてドライバーロッド35をその中に固定し、シート37内にコレット33を押し込むことによって、コレット33内でプローブ14を把持する。場合によっては位置決めスリーブ16を中心軸20を覆って滑らせて、第2のロッキングリング54がアクチュエータ装置12の中心軸20の遠位端24にある状態でプローブ14の所望の長さ18が位置決めスリーブ16の近位端44を越えて突出且つ延ばすことが可能となる。所望の長さ18は表皮下の皮膚層を実質的に穿通しないように所望の皮膚穿通度によって決定される。皮膚穿通の深度は約100μmであることが好ましい。
【0036】
使用の際、装置10は滅菌状態で送り届けられる。プローブ14を滅菌し極微細活性化装置10を組み立てた後、皮膚表面への複数回又は繰り返しの突き刺しは、マイクロニードル58を皮膚に当てるか又は皮膚表面をプローブ14の針58に接触させることにより手動又は電動手段によってなされる。マイクロニードル58が皮膚表面を突き刺す角度は、皮膚が適した深さまで穿通されるかぎり、約20°〜約160°、好適には約70°〜約110°、さらに好適には約90°すなわち皮膚表面に対して直角であってよい。突き刺す回数は最高で約300回、好適には約20〜約50回であり得る。一般には、約100μmの深さまで皮膚を穿通して、皮膚修復機能の活性化を生じさせる。理論に拘束されることなく、皮膚修復機能の活性化は基底層の皮膚細胞を破壊することによってもたらされると考えられる。
【0037】
さらに装置10の使用に関して、第2のロッキングリング54をネジ付き表面部分48に沿って調整し、第1のロッキングリング52に近付けさせるか或いは遠ざけて、これによって位置決めスリーブ16の長さを調整することができる。位置決めスリーブ16の全体の長さを調整することによって、次にプローブ14の突出の所望の長さ18が調整され、これによって皮膚に加えられる圧力を制御することが可能になるとともに、皮膚を過度に穿通することが防止される。プローブ14の表面38の平坦な表面領域56も、プローブ14が平坦な表面領域56があることで皮膚の接触部を越えて穿通しなくなるので、針58の穿通深度を制御する。場合によっては、また好適には、位置決めカラー60も、例えば表皮の厚さの違いのためのほか、皮膚がプローブ14の中心において「一ヶ所に集まる(bunching up)」のを防止するために、針58の延伸を調整することによって穿通深度の制御の機能を果たす。接触している皮膚細胞の最高約2%が傷付けられることが好ましい。皮膚極微細活性化過程が終了すると、プローブ14はコレット33から解放される。場合によってはプローブ14を使用後に廃棄することもできる。
【0038】
極微細活性化装置10によって、迅速で無痛の皮膚活性化が可能となるとともに、傷跡は一切残らない。本発明の極微細活性化方法を用いて達成される皮膚の化粧上の利益には以下のようなものが挙げられる。
小皺、皺およびたるんだ皮膚を少なくすること、
皮膚を滑らかにすること、
肌合いの改善の結果として得られる、高い弾力性を持った滑らかで張りのある皮膚、
光線の損傷を受けた皮膚を修復すること、
硬度、
並びに輝き及びツヤを伴った全体的に健康な皮膚の外観。
【0039】
発明の装置及び方法によって有利には、効果が得られ、不快感が最小になり、瘢痕が残らなくなり、皮膚を極微細活性化する能力が得られる。したがって、本装置は一個人において多様な使い方をするのに向いている。
【0040】
この技術は、単独で又は皮膚に有益な薬剤と併用して使用するための説明とともに極微細活性化装置10を含み得る家庭用の皮膚極微細活性化キットに適合させることができる。
【0041】
皮膚に有益な薬剤
皮膚に有益な薬剤はレチノイド、必須脂肪酸、PPAR活性剤、植物エストロゲン、酸性皮膚に有益な薬剤、皮膚美白剤、皮脂抑制剤、収斂剤、創傷治癒剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることが好ましい。
【0042】
レチノイド
皮膚に有益な薬剤はレチニルエステル、レチノール、レチナル酸及びレチノイン酸、好適にはレチノール又はレチニルエステルから選択される、レチノイドを含むことが好ましい。「レチノール」という用語は次のレチノールの異性体を含む:オールトランス型レチノール、シス−13−レチノール、シス−11−レチノール、シス−9−レチノール、3,4−ジデヒドロ−レチノール、3,4−ジデヒドロ−シス−13−レチノール;3,4−ジデヒドロ−シス11−レチノール;3,4−ジデヒドロ−シス−9−レチノール。好適な異性体はオールトランス型レチノール、シス−13−レチノール、3,4−ジデヒドロ−レチノール、シス−9−レチノールである。最も好適なのは広く市販されているのでオールトランス型レチノールである。
【0043】
レチニルエステルはレチノールのエステルである。本発明に使用するのに適したレチニルエステルはレチノールのC〜C30エステル、好適にはC〜C20エステル、最も好適には、より一般的に入手可能であるのでC、C、及びC16エステルである。レチニルエステルの例には、以下に限定するものではないが、パルミチン酸レチニル、ギ酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、酪酸レチニル、吉草酸レチニル、イソ吉草酸レチニル、ヘキサン酸レチニル、ヘプタン酸レチニル、オクタン酸レチニル、ノナン酸レチニル、デカン酸レチニル、ウンデカン酸レチニル、ラウリン酸レチニル、トリデカン酸レチニル、ミリスチン酸レチニル、ペンタデカン酸レチニル、ヘプタデカン酸レチニル、ステアリン酸レチニル、イソステアリン酸レチニル、ノナデカン酸レチニル、アラキドン酸レチニル、ベヘン酸レチニル、リノール酸レチニル、オレイン酸レチニルが挙げられる。
【0044】
本発明に使用するのに適した好適なエステルは、最も商業上入手し易いが故に最も安価であるので、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、及びプロピオン酸レチニルから選択される。リノール酸レチニル及びオレイン酸レチニルもその有効性から好ましい。
【0045】
レチノール又はレチニルステルは、本発明の組成物においては本組成物の約0.001〜約10重量%の量で、好適には約0.01〜約1重量%の量で、最も好適には約0.01〜約0.5重量%の量で用いられる。
【0046】
必須脂肪酸
別の好適な任意の皮膚に有益な薬剤は、必須脂肪酸(EFA)、すなわち、あらゆる細胞の形質膜形成に不可欠である脂肪酸から選択される。EFAもまた、表皮の脂質生合成を増強し表皮のバリア形成のために脂質を提供する。この必須脂肪酸はリノール酸、γ−リノレン酸、ホモ−γ−リノレン酸、コルンビン酸、エイコサ−(n−6,9,13)−トリエン酸、アラキドン酸、γ−リノレン酸、チムノドン酸、ヘキサエノン酸、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0047】
植物エストロゲン
植物エストロゲンには、8−プレニルナリンゲニン、ホップ抽出物、大豆抽出物、ヒヨコ豆抽出物、エストロゲン様フラボノイド、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシチン、ビオカニンA、ホルモノネチン及びエクオル並びにこれらの混合物、ゲニステイン及びダイゼインのアセチル及びマロニルエステル、並びにゲニステイン及びダイゼインのグルコシドといったフラボノイドが挙げられる。上記リストは限定的なものではなく、当業者には知られている他の植物エストロゲンを含んでよいことに留意されたい。本発明の組成物は約0.001重量%〜約10重量%の少なくとも1つの植物エストロゲンを含むことが好ましい。
【0048】
PPAR活性剤
適したPPAR活性剤は本明細書に援用した米国特許第6423325号に記載されている。本発明の好ましいPPAR活性剤は12−ヒドロキシステアリン酸、シス−パリナリン酸、トランス−7−オクタデセン酸、シス−5,8,11,14,17エイコサペンタエン酸、シス−4,7,10,13,16,19ドコサヘキサエン酸、共役リノール酸(シス−9、トランス−11)、コルンビン酸、リノレンエライジン酸、リシノール酸、ステアリドン酸、2−ヒドロキシステアリン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、シス−11,14−エイコサジエン酸、共役リノール酸(トランス10、シスー12)、共役リノール酸(トランス−9、トランス−11)、共役リノール酸(シス−9、トランス−11及びトランス−10、シス−12の50:50の混合物)、コリアンダー酸、リノレンエライジン酸、モノペトロセリン酸、ペトロセリン酸、リシノール酸、ステアロル酸、ニオイヒバ抽出物及びトランス−バクセン酸である。さらに適した好適なPPAR活性剤には、シス−11,14,17エイコサトリエン酸、シス−5エイコセン酸、シス−8,11,14エイコサトリエン酸、ヘキサデカトリエン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、トランス−トランス−ファルネソール酸、シス−13,16ドコサジエン酸、シス−バクセン酸、シス−11エイコセン酸、シス−13,16,19ドコサトリエン酸、シス−13−オクタデセン酸、シス−15オクタデカン酸、シス−7,10,13,16ドコサテトラエン酸、エライジン酸、γ−リノレン酸、ゲラン酸、ゲラニルゲラノイン酸、リノール酸、オレイン酸、ペトロセリニルアルコール、フイタン酸、ピノレン酸、トランス−13−オクタデセン酸、及びトリデシルサリチル酸(TDS)が挙げられる。
【0049】
酸性皮膚に有益な薬剤
酸性皮膚に有益な薬剤の例には、α−ヒドロキシ酸及びヒドロキシエステル、β−ヒドロキシ酸及びヒドロキシエステル、ジカルボン酸ないし二酸及びジカルボンエステル、ポリヒドロキシ酸及びポリヒドロキシエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適なα−ヒドロキシ酸の例には、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシオクタン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なβ−ヒドロキシ酸には、サリチル酸がある。好適なジカルボン酸又は二酸の例には、セバシン酸、マロン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。ベツリン酸は酸性皮膚に有益な薬剤の別の例であり、単独又はミノキシジルと併用して用いることができる。この酸性皮膚に有益な薬剤の量は組成物の少なくとも0.001重量%である。
【0050】
皮膚美白剤
皮膚美白剤の例には、レゾルシノール誘導体、フェルラ酸、コジック酸及びコジックエステル、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、ナイアシンアミド、ビタミンC誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。具体的には特定のレゾルシノール誘導体、特に4置換レゾルシノール誘導体が毛髪及び皮膚の利益のための化粧用組成物においてはとりわけ有用である。レゾルシノール誘導体は米国特許第6132740号及び欧州特許1134207号を含む多数の刊行物に記載されている。4−エチルレゾルシノールなどの4−アルキルレゾルシノールが好ましい。他の有効な皮膚美白用レゾルシノール誘導体には、4,6−ジ−アルキルレゾルシノールなどの4,6−ジ−置換レゾルシノール誘導体がある。
【0051】
皮脂抑制剤
他の皮膚への利点は皮脂の抑制である。皮脂抑制剤の例には、例えば、PCT国際出願WO99/18928号に開示されているような、分岐アルコールのカルボキシアルキレート及び分岐アルコールのエトキシレートが挙げられる。米国特許第2002/0015717号、米国特許第2004/0013630号、及び米国特許第2004/0018948号は、分岐アルコールのカルボキシアルキレート及び/又は分岐アルコールのエトキシレートを含んだ化粧用組成物の皮膚への局所適用によってヒト皮膚を調整するための化粧上の方法及び組成物を開示している。
【0052】
創傷治癒剤
酸化亜鉛及びグルコン酸亜鉛などの亜鉛化合物;生酵母細胞誘導体、アロエ抽出物及びアロエ植物由来の化合物;リポタイコ酸;ツボクサ抽出物;アジアチコシド;eupolin、銅ペプチド;TGF、PDGFなどの成長因子;並びにマンサク、カモミール、キンセンカ及び創傷治癒特性を有する他のものなどの天然抽出物などの創傷治癒剤と併用して極微細活性化装置10を用いることが特に有益である。
【0053】
付加的な化粧用皮膚に有益な薬剤には、本明細書に援用した米国特許第5851544号に記載されたような、二酸化炭素を注入した液体で不活性の疎水性過フッ化炭化水素が挙げられる。この組成物は皮膚への血流を増大させるので、内因性酸素及び栄養素の皮膚への送達が増大する。このような化粧用スキンケア組成物は、i)二酸化炭素を注入した、組成物の約0.1重量%〜約70重量%の、フルオロカーボンを含んでよい。このフルオロカーボンは不活性で25℃で液体で疎水性であり、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロデカリン、臭化ペルフルオロオクチル、臭化ペルフルオロデシル、ヨウ化ペルフルオロオクチル、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロ−トリブチルアミン、ビス−(F−ブチル)−エテン及びペルフルオロ−ポリメチルイソプロピルエーテルから成る群から選択される。酸素がエネルギーを供給して極微細活性化装置によって引き起こされた極微細な創傷の治癒中に細胞増殖を強化する。
【0054】
収斂剤
収斂剤の例には、これに限定するものではないが、エタノール、マンサク、亜鉛塩及びアルミニウム塩、並びにポリフェノールが挙げられる。本明細書では略してACHと呼ばれるアルミニウムクロロハイドレートは広く市販されており比較的安価であるので、本発明にとって最も好適な収斂性塩である。
【0055】
ビタミンA、B1、B2、B6、D、E、デクスパンテノール及びβカロテン、補酵素Q10、カルニチン、及び3〜約100個のアミノ酸から成るペプチドなどの他の皮膚に有益な薬剤が含まれてもよい。電気的、磁気的、又は電磁気的の皮膚刺激を用いてもよい。本発明は対数Kp(Kpはオクタノール/水分配係数)が5以上で400ダルトン以上の分子量の活性化剤又はそれらの組み合わせと併用して用いられるときにも有用である。
【0056】
任意成分
日焼け防止剤、着色剤、乳白剤、色素、香料、抗菌剤、化粧品上許容可能なビヒクル及び粉末などの任意の成分を皮膚に有益な薬剤とともに含むことができる。
【0057】
日焼け防止剤
日焼け防止剤には紫外線を阻止するのに一般的に用いられる材料を含む。例示的な化合物はPABA、桂皮酸塩及びサリチル酸塩の誘導体である。例えば、メトキシ桂皮酸オクチル及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾンとしても知られている)を用いることができる。メトキシ桂皮酸オクチル及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンは、それぞれ登録商標Parsol MCX及びBenzophenone−3として市販されている。
【0058】
使用される日焼け防止剤の正確な量は、太陽のUV照射線からの所望の防護度に応じて変化し得る。
【0059】
他の任意の成分には、着色剤、乳白剤及び色素(例えば、二酸化チタン、シリカ)並びに香料を含んでよい。含まれる場合、これらの量は組成物の0.001重量%から最大で20重量%の範囲にあり得る。
【0060】
特に水を含有した多数の化粧用組成物は潜在的に有害な微生物の成長から保護しなければならない。したがって、トリクロサンなどの抗菌剤及び保存剤が含まれるのが好ましい。適した保存剤には、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、及び種々の第四級アンモニウム化合物が挙げられる。本発明の特に好適な保存剤はメチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール及びベンジルアルコールである。保存剤は通常は組成物の0.1重量%〜2重量%の量で使用される。
【0061】
化粧品上許容可能なビヒクル
本発明の組成物は組成物が皮膚に塗布されるときにそれらが分布し易くするように、組成物中で皮膚に有益な成分のための希釈剤、分散剤又は担体として機能する化粧品上許容可能なビヒクルも含む。
【0062】
このビヒクルは水性、無水性、又は乳剤であってよい。組成物は水性又は乳剤、特に油中水又は水中油乳剤であるのが好ましい。存在する場合、水は組成物の5〜99重量%、好適には40〜90重量%、最適には60〜90重量%の範囲にある。
【0063】
適した油及び/又は皮膚軟化剤には、以下に限定するものではないが、シリコーン油、植物油、エステル、脂肪酸及び脂肪アルコール、並びに炭化水素が挙げられる。そのような油及び/又は皮膚軟化剤のレベルは組成物全体の0.5重量%〜50重量%、好適には5重量%〜30重量%の範囲にあってよい。皮膚軟化剤はそのような一般的な化学分類に基づいてエステル、脂肪酸及び脂肪アルコール、ポリオール並びに炭化水素として分類することができる。
【0064】
エステルはモノエステル又はジエステルであってよい。脂肪酸ジエステルの許容可能な例にはアジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、ジメリト酸ジイソプロピル、及びコハク酸ジオクチルが挙げられる。許容可能な分鎖脂肪酸エステルにはミリスチン酸2−エチル−ヘキシル、ステアリン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソステアリルが挙げられる。許容可能な三塩基酸エステルにはトリリノール酸トリイソプロピル及びクエン酸トリラウリルが挙げられる。許容可能な直鎖脂肪酸エステルにはパルミチン酸ラウリル、乳酸ミリスチル、エルカ酸オレイル及びオレイン酸ステアリルが挙げられる。好適なエステルには、ココ−カプリル酸塩/カプリン酸塩(ココ−カプリル酸塩及びココ−カプリン酸塩のブレンド)、酢酸プロピレングリコールミリスチルエーテル、アジピン酸ジイソプロピル及びオクタン酸セチルが挙げられる。
【0065】
適した脂肪アルコール及び脂肪酸には、10〜20個の炭素原子を有する化合物がある。特に好適な化合物はセチル、ミリスチル、パルミチン及びステアリルのアルコール及び酸などの化合物である。
【0066】
皮膚軟化剤として機能し得るポリオールには、直鎖及び分鎖のアルキルポリヒドロキシル化合物がある。例えば、プロピレングリコール、ソルビトール及びグリセリンが好ましい。ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどの重合ポリオールも有用であり得る。ブチレン及びプロピレングリコールも浸透促進剤として特に好ましい。
【0067】
皮膚軟化剤として機能し得る例示的な炭化水素は12〜30個の炭素原子の炭化水素鎖を有するものである。具体的な例には鉱油、ワセリン、スクアレン及びイソパラフィンが挙げられる。
【0068】
本発明の化粧品用組成物中の機能性成分の別の分類は増粘剤である。増粘剤は通常、組成物の0.1〜20重量%、好適には0.5重量%〜10重量%の量で存在する。例示的な増粘剤はB.F.Goodrich Company社の登録商標Carbopolで市販されている架橋ポリアクリレート材料である。キサンタン、カラゲナン、ゼラチン、カラヤ、ペクチン及びイナゴマメゴムなどのゴムを用いることができる。特定の条件下では、増粘機能はシリコーン又は皮膚軟化剤としても働く材料によって達成され得る。例えば、0.1cm/s(10センチストーク)を超えるシリコーンゴム及びステアリン酸グリセロールなどのエステルは二重機能性を有する。
【0069】
本発明の化粧用組成物に粉末を組み込んでもよい。これらの粉末には、チョーク、滑石、フラー土、カオリン、でんぷん、スメクタイト粘土、化学修飾されたケイ酸マグネシウムアルミニウム、有機修飾されたモンモリロナイト粘土、ケイ酸アルミニウム水和物、フュームドシリカ、アルミニウムデンプンオクテニルスクシネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0070】
本発明の化粧用システムの装置及び組成物は、特に、皮膚を調整及び滑らかにし、皮膚の皺又は老化を予防又は抑えるための薬剤としてヒト皮膚への局所適用製品を主として意図したものである。
【0071】
以下では、本発明のシステム及び方法の用途のいくつかの実施例を記載する。以下は本発明を実施するための最良の実施態様を説明するための本発明の原理の一例であって、限定されるものではない。
【実施例1】
【0072】
実施例1
この実施例は効果的な表皮組織の極微細活性化を提供するための本発明の極微細活性化方法の使用を例証する。
【0073】
細胞培養
トリプシン処理によって新生児包皮から分離した正常ヒトケラチノサイトを、放射線照射したマウス線維芽細胞の存在下で10%ウシ胎仔血清とともにダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Life Technologies社、ニューヨーク州グランドアイランド)で成長させて、分化ケラチノサイトコロニーを確立した。細胞をその第2継代まで培養し、後から使用するために−70℃で保存した。培養はすべて5%CO、37℃で行った。凍結した第2継代のケラチノサイトを解凍し、T75フラスコ(Corning社、ニューヨーク州コーニング)内のKGM培地(Clonetics Corp.社、カリフォルニア州サンディエゴ)に平板培養して集密培養し、後から使用するためにトリプシン処理により採取した。
【0074】
ケラチノサイトを1プレート当たり100万個で6枚のウェルプレート(Corning社)で平板培養し、集密培養した。集密したら、倍地を新鮮なKGMと交換し、0.2MのCaCl溶液の無菌アリコートを添加してカルシウム濃度を1.2mMにした。細胞をさらに24時間培養した。培地を新鮮なKGMと交換した。表面56上に設置された鍼治療用の針である針58(Peace商標、CT5P−01、中国、0.16mm×13mm)を用いて以下の様に細胞に傷を付けた。先端が整列するように5本の消毒針58を保持した。針58の突き刺しがプレート床面にわたって均一に当たるように、この針の集まりを無作為の分布パターンで0、20、50、100、及び200回細胞集密床に押し付けた。1つのウェルでは、プレート床面の上で針を引きずって、床面領域全体の上に針の集まりを1回通過させた。このウェルを「引っ掻き」ウェルと呼んだ。細胞をさらに24時間培養した。次いで、この培地を取り出して、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.85%、NaCl、10mMのNaPO、pH7.4)で洗浄し、1mlの抽出緩衝液(PBS、0.5%ラウリル硫酸ナトリウム、4Mの尿素、10mMのEDTA)で溶解した。この溶解物を用いてBCL−2(Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)用の電気泳動/ウェスタンブロッティングの標本及び抗体を作製し、ケラチン16(Labvision社、カリフォルニア州フレモント)を用い、Typhoon画像化システム(Pharmacia社)を使用することによって上記抗原を定量した。この結果を対照群の割合として表し、図5及び6に示している。
【0075】
結果からBCL−2及びケラチン16はともに、ケラチノサイトを損傷させたウェルにおいては用量依存性で上昇したことがわかった。BCL−2及びケラチン16はともに、ケラチノサイト「活性化」、すなわちそれらが創傷治癒の過程に関与する状態のマーカーであるとみなされる。
【実施例2】
【0076】
実施例2
トリプシン処理によって新生児包皮から分離した正常ヒト線維芽細胞を、10%ウシ胎仔血清とともにダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Life Technologies社、ニューヨーク州グランドアイランド)で成長させた。細胞をその第2継代まで培養し、後から使用するために−70℃で保存した。培養はすべて5%CO、37℃で行った。凍結した第2継代の線維芽細胞を解凍し、T75フラスコ(Corning社、ニューヨーク州コーニング)内のDMEM培地に平板培養して集密培養し、後から使用するためにトリプシン処理により採取した。
【0077】
線維芽細胞を12ウェルプレート当たり100万個で平板培養し、上記培養条件で集密培養した。上記のように培養したケラチノサイトを以下のように傷付けた。(実施例1に記載のような)鍼治療用の5本の針58のグループを分布が均一になるようにウェルの床面にわたって0、5、10又は20回引きずった。創傷後、細胞を24時間培養した。次いで、各ウェルから2mlの培地を採取し、1mLの培地を、線維芽細胞の入った12ウェルプレートのウェルの1つに新鮮なDEME1mlとともに平板培養した。標本は3つ作製した。次いで、プレートをさらに8、24、又は48時間培養した。次いで、上澄み培地を採取し、電気泳動及びウェスタンブロッティング法のためにアリコートを用いて、適した抗体(Chemicon社、カリフォルニア州テメキュラ)を使用してプロコラーゲン1の存在及び量を決定した。
【0078】
プロコラーゲン1はコラーゲンの前駆物質であり、創傷治癒及び真皮再生において重要な役割を担うと考えられる。図7を参照すると、結果から、創傷後8、24、及び48時間に採取した創傷したケラチノサイトからの上澄み培地は、培養線維芽細胞においてプロコラーゲン1の発現を増大することができることがわかった。
【実施例3】
【0079】
実施例3
臨床試験
年齢25〜50才の10人の被験者を臨床試験に募集して、内部審査委員会により承認されたプロトコルへのインフォームドコンセントを行った後マイクロニードル58の効果を試験した。鍼治療用針(Seirin社、0.12mm×30mm)である針58を、狭径のプラスチック管、すなわち位置決めカラー60内に針先端が位置決めカラー60の端部を越えて約250μm突出するように接着剤で固定した。この構成によって使用中の過度の穿通が防止された。このプロトコルはビヒクル単独又は0.05%又は0.1%レチノールを含んだビヒクルの背下部の皮膚上への適用を提供した。ビヒクル単独部位及び0.05%レチノール部位では、マイクロニードル58を1cm当たり100個の穿通密度で当てた。内部面積が1.5cmの接着性リングを用いて治療領域を定めた。マイクロニードル装置10をオペレータの手に持たせ、被験者の皮膚に軽く当てさせた。マイクロニードルで穿通直後に治療溶液の20μlのアリコートを関連する部位に適用した。4日間にわたって1日1回部位を治療した。5日目に研磨プローブを用いて表皮サンプルを採取し、抽出緩衝液(上記参照)に入れた。ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロッティング法を用いて、皮膚中のレチノイド活性のマーカーと考えられるタンパク質である細胞内レチノイン酸結合タンパク質II(CRABPII)が存在するかどうかサンプルを分析した。
【0080】
図8を参照すると、結果からは適用されるレチノールの濃度が上昇するにつれてCRABP IIが用量依存性に上昇することがわかった。この結果からは、マイクロニードル58+0.05%レチノール処理によって、0.05%レチノール単独処理の場合に見られたCRABP II発現を超えてCRABP II発現が統計学的に有意(p<0.05)に上昇したこと及び実際に、マイクロニードル58+0.05%レチノール処理に伴うCRABP II発現は0.1%レチノール単独処理に伴うその発現よりも大きかったこともわかった。この差も統計学的に有意であった。
【実施例4】
【0081】
実施例4
マイクロニードルによるBCL−2発現の導入
この試験は、皮膚細胞の活性化(創傷治癒状態への遷移)のマーカーであると考えられる、皮膚における生化学を上昇させる際のマイクロニードル58処理単独の効果を試験することを目的としたものであった。細胞創傷後にBCL−2バイオマテリアルの発現が増大することは活性化のマーカーであると考えられる。
【0082】
年齢25〜50才の10人の被験者を臨床試験に募集して、承認されたプロトコルへのインフォームドコンセントを行った後マイクロニードル58の効果を試験した。(上記実施例3のような)マイクロニードル58を被験者の背中の皮膚に1cm当たり100個の穿通密度で当てた。内部面積が1.5cmの接着性リングを用いて治療領域を定めた。一部位は未治療の対照例とし、他の9部位には1、3及び9日間にわたって1日1回マイクロニードル58で治療を行った。1日、3日、及び10日目に削り取った表皮研磨サンプルを採取し、上記のように処理した。1日目、未治療の対照部位及び治療後15分、5時間及び24時間の治療した別個の3部位からサンプルを採取した。3日目、それまで治療したがその日は治療しなかった一部位から、治療後15分、5時間、24時間の別々の部位から3サンプルを採取した。10日目、2部位からサンプルを採取した。そのうち1例はそれまでに治療を受けたが10日目に治療しなかったものであり、他方は治療15分後のものであった。BCL−2と呼ばれるタンパク質が存在するかどうか、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロッティング法を用いてサンプルを分析した。
【0083】
図9を参照すると、結果からは、3日治療の24時間後に被験者から採取したサンプル及び10日治療サンプルの両方に関して、BCL−2のレベルが統計学的に有意に上昇したことがわかった。これはマイクロニードル58の治療が表皮細胞における活性化を惹起したことを示唆している。臨床医はどの治療部位においても著しい炎症を認めなかった。極微細活性化部位からは表皮極微細活性化処置による瘢痕は一切見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】好適な一実施形態による組み立てられた極微細活性化装置を示す斜視図である。
【図1B】位置決めスリーブか外された状態の、図1Aの極微細活性化装置を示す分解図である。
【図1C】図1Aの極微細活性化装置のアクチュエータ装置及びプローブを示す分解図である。
【図2】図1Aの線2−2で切った断面図である。
【図3】図1Cの線3−3で切った断面図である。
【図4】図1Aの極微細活性化装置のプローブの表面を示す拡大図である。
【図5】培養ケラチノサイトにおけるBCL−2の発現への極微細活性化の影響を示すグラフである。
【図6】培養ケラチノサイトにおけるケラチン16の発現への極微細活性化の影響を示すグラフである。
【図7】創傷したケラチノサイト馴化培地で処理した線維芽細胞におけるプロコラーゲン1の発現を示すグラフである。
【図8】図1Aの極微細活性化装置及びレチノールを用いて併用処理したヒト表皮におけるCRABPIIへの影響を示すグラフである。
【図9】ヒト表皮におけるBCL−2の発現への本発明の方法及び図1Aの装置を用いた極微細活性化の影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極微細活性化システムであって、
(a)近位端(22)とハンドル装置(26)に結合された遠位端(24)とを有し、前記近位端(22)から前記遠位端(24)まで延びる中心開口部(32)をその中に有する中心軸(20)を含んだアクチュエータ装置(12)と、前記アクチュエータ装置(12)の前記中心開口部(32)内の中心に着脱可能に配設することができ、遠位端(36)を有するとともにその近位端(40)断面の表面(38)内で終端する円筒形ロッド(34)を含んでおり、前記表面(38)がそこから突出する少なくとも1つの針(58)を有しているプローブ(14)とを備えた、個人の皮膚表面を極微細活性化するための極微細活性化装置(10)と、
(b)皮膚に有益な薬剤を含んだ組成物、
とを備えた極微細活性化システム。
【請求項2】
前記アクチュエータ装置(12)は、
前記軸(20)と同軸上に位置決めされ、中心に配設されたネジ付き開口部(31)を中に有する刻み付き円盤(30)と、
前記刻み付き円盤(30)とネジで協働するネジ付き円筒形ドライバーロッド(35)とをさらに備え、
前記中心開口部(32)内に設けられるとともに前記円筒形ドライバーロッド(35)に着脱可能に固定されたコレット(33)をさらに備える、請求項1に記載の極微細活性化システム。
【請求項3】
前記表面(38)は1mm〜10mmの断面直径を有する、請求項1又は2に記載の極微細活性化システム。
【請求項4】
前記プローブ(14)の前記表面(38)から延びる複数の針(58)は、粘着性経皮パッチ上にアレイとして配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の極微細活性化システム。
【請求項5】
前記プローブ(14)の前記表面(38)から延びる複数の針(58)は、経皮ローラー装置の上にアレイとして配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の極微細活性化システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの針(58)は、三角形、台形、又はこれらの組み合わせを含む幾何学形の断面形状を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の極微細活性化システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの針(58)は、錐台(frustacone)の幾何学形状を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の極微細活性化システム。
【請求項8】
前記皮膚に有益な薬剤は、レチノイド、必須脂肪酸、PPAR活性剤、植物エストロゲン、酸性皮膚に有益な薬剤、皮膚美白剤、皮脂抑制剤、収斂剤、創傷治癒剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の極微細活性化システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの針(58)は、前記プローブ(14)の前記表面(38)を越えて50〜250μm突出する、請求項1から8のいずれか一項に記載の極微細活性化システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の極微細活性化システムを提供する工程と、
皮膚表面に前記少なくとも1つの針(58)を当てることによって前記皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する工程とを含む、個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの針(58)を当てる1分〜24時間前又はその後に、皮膚に前記皮膚に有益な薬剤を適用するさらなる工程を含む、請求項10に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項12】
前記皮膚表面の表皮細胞の極微細活性化が終了したときに、アクチュエータ装置(10)からプローブ(14)を解放するさらなる工程を含む、請求項10又は11に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項13】
前記皮膚に有益な薬剤はレチノイド、必須脂肪酸、PPAR活性剤、植物エストロゲン、酸性皮膚に有益な薬剤、皮膚美白剤、皮脂抑制剤、創傷治癒剤、収斂剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項10から12のいずれか一項に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの針(58)は前記皮膚表面に対して20°〜160°の角度で当てられる、請求項10から13のいずれか一項に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項15】
前記極微細活性化は、皮膚を滑らかにすること、小皺及び皺並びにたるんだ皮膚の外観を変えること、高い弾力性を持った滑らかで張りのある肌の質感の改善、光線で損傷した皮膚の修復、硬度、輝き、ツヤ、全体的に健康な皮膚の外観、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される皮膚への利益を提供する、請求項10から14のいずれか一項に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項16】
前記装置は、表皮下の皮膚層を実質的に穿通しないように皮膚に当てられる、請求項10から15のいずれか一項に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項17】
前記装置は100μmの深度まで皮膚の穿通を可能にする、請求項16に記載の個人の皮膚表面の表皮細胞を極微細活性化する方法。
【請求項18】
請求項1から9のいずれか一項に記載のシステムを含む、キット。
【請求項19】
消費者による前記キットの使用は医師の補助を必要としない、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
請求項2に記載のシステムの極微細活性化装置(10)を組み立てる方法であって、
(a)前記ドライバーロッド(35)に前記コレット(33)を固定する工程と、
(b)前記コレット(33)に前記プローブ(14)を挿入する工程と、
(c)前記固定されたドライバーロッド(35)を前記アクチュエータ装置(12)の前記中心軸(20)の前記中心開口部(32)に挿入する工程と、
(d)前記アクチュエータ装置(12)の上に前記刻み付き円盤(30)を締め付けることにより、その中に前記ドライバーロッド(35)を固定し、前記コレット(33)に前記プローブ(14)を把持させるように押し込む工程とを含む、方法。
【請求項21】
(a)近位端(22)とハンドル装置(26)に結合された遠位端(24)とを有し、前記近位端(22)から前記遠位端(24)まで延びる中心開口部(32)をその中に有する中心軸(20)を含んだアクチュエータ装置(12)と、前記アクチュエータ装置(12)の前記中心開口部(32)内の中心に着脱可能に配設することができ、遠位端(36)を有するとともにその近位端(40)断面の表面(38)内で終端する円筒形ロッド(34)を含んでおり、前記表面(38)がそこから突出する少なくとも1つの針(58)を有しているプローブ(14)とを備えた、個人の皮膚表面を極微細活性化するための極微細活性化装置(10)と、
(b)米国特許第5879326号及び第5591139号のいずれかに実質的に記載されたような装置と、
(c)それらを組み合わせたもの及び実質的同等物、
とから成る群から選択される装置を皮膚に適用することを含む、皮膚極微細化方法。
【請求項22】
前記表面(38)は1mm〜10mmの断面直径を有する、請求項21に記載の皮膚極微細化方法。
【請求項23】
前記装置は皮膚に繰り返し当てられる、請求項21又は22に記載の皮膚極微細化方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−529247(P2007−529247A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503248(P2007−503248)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002594
【国際公開番号】WO2005/089857
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】