説明

皮膚真菌症、特に爪真菌症を治療するデバイスおよびその製造方法

爪甲真菌症および皮膚真菌症などの皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染の標的治療に好適なデバイスを提供する。デバイスは、酸化窒素(NO)放出ポリマーが感染部位に接触するように配置され、酸化窒素放出ポリマーから感染部位に治療用量の酸化窒素が放出される。酸化窒素(NO)放出ポリマーはキャリア材料と一体化され、使用時には、キャリア材料が酸化窒素(NO)の治療用量の放出を調整、制御する。さらに対応する製造方法についても提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚真菌症、特に爪真菌症および皮膚糸状菌症の治療に関する。より詳細には、人および動物の皮膚真菌症、特に爪真菌症および皮膚糸状菌症の治療のためのデバイスおよび、酸化窒素(NO)の使用を含む前記デバイスの製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
皮膚糸状菌および酵母菌は表在性真菌感染の最も一般的な原因であり、皮膚の直接的接触による数少ない感染症に属する。それらは好ケラチン性であり皮膚、髪、爪に感染する。いくらかのケースでは、糸状菌類は感染の原因であるかもしれない(多くの場合、フザリウム(Fusarium)、スキタリジウム(Scytalidium)、ヘンダーサヌラ トルロイディア(Hendersonula Toruloidea)、スコプラリオプリシス ブレビカウリス(Scopulariopsis Brevicaulis)、アスペルギルス ニダランス(Aspargillus Nidulans)、アクレモニウム(Acremonium)、エクソファリア(Exophalia)およびアルターネリア(Alterneria)が原因菌である)。皮膚糸状菌による感染は世界中で見られるが、社会経済学的因子や動物との接触などが大きな原因となって、特に発展途上国に多い。
【0003】
表在性真菌感染は、主に皮膚糸状菌である、白癬菌(Trichophyton)、表皮菌(Epidermophyton)、小胞子菌(Microsporum)が原因である。これらは、ヒト寄生性菌(例えば、直接、間接的にヒトに感染)、動物寄生性菌(例えば動物からヒトへ感染)、土壌生息性菌(たとえば土壌からヒトに感染)に属する。
【0004】
酵母菌ではカンジダ アルビカンス(Candida Albicans)が最も病原性がある。他の重要なカンジダ属には、カンジダ グラブラタ(C. glabrata)、カンジダ トロピカリス(C. tropicalis)、カンジダ クルセイ(C. krusei)、カンジダ パラシロシス(C. parapsilosis)がある。
【0005】
酵母菌による感染はカンジダ アルビカンスによるものが最も多く、膣炎、口内炎、皮膚炎、爪周囲炎、皮膚糸状菌症(運動選手の足)および爪甲真菌症などの原因ともなる。
【0006】
抗真菌の、例えばアゾール(azole)、テルビナフィン(terbinafine)、アモロルフ(amorolfine)、ニスタチン(nystatine)、シクロピロキソラミン(ciclopiroxolamine)などは、皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染部位の治療有効性に違いがある。その違いは抗真菌剤の抗菌スペクトルや薬理学的な相違に関連した違いである。これらの抗真菌剤は皮膚糸状菌感染症に好適であり、爪甲真菌症の軽症型にもある程度効果はある。
【0007】
しかし、これらの抗真菌剤は、反対の副作用の原因ともなりうる。これらの副作用は、局所的な皮膚刺激、接触アレルギー性反応、抗真菌剤中の防腐剤に対するアレルギー反応、抗真菌剤に対する薬剤抵抗性など様々な形で現れる。
【0008】
皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染の治療として、経口治療によるものがある。経口薬としては、皮膚治療のためのフルカナゾール(flukanazol)、カンジダ症の治療のためのケトコナゾール(ketokonazol)、爪や皮膚の感染治療のためのイトラコナゾール(itrakonazol)、局所的な治療が有効でないときはタービナフィン(terbinafin)などがある。
【0009】
経口治療もまた多くの副作用を表す。例えば、胃腸の調子不良、頭痛、浮腫病、味覚障害などである。また非常に希なケースであるが、経口治療により死に至る患者もあった。
【0010】
酸化窒素(NO)は、抗生物質のような一般的な治療法の代替法を提供するものとして知られる。酸化窒素は細胞の多くの機能に含まれる高反応性分子である。実際、酸化窒素は免疫システムで重要な役割を果たし、カビ、ウイルス、バクテリアなどの病原菌や一般的な微生物による侵襲に対して自己防衛としてのマクロファージによる活性化分子として用いられる。治癒の前記改善は、酸化窒素による血液血小板の活性化、凝集を阻害すること、また、インプラントの場所における炎症性反応を抑制することによる。
【0011】
酸化窒素は、抗病原菌、特に抗ウイルス作用、および抗ガン作用、治療濃度における細胞毒性、細胞増殖抑制、殺腫瘍性および殺菌性の作用などを有する。例えば白血病、リンパ腫患者の血液の悪性の細胞に対して、酸化窒素は細胞毒性作用を有する。一般の抗ガン剤に対しては、細胞が抵抗性を有するようになることがあるとしても、酸化窒素は前記血液の病気に対する化学療法薬として用いることができる。例えば多くの抗ガン剤のような悪影響がなく、酸化窒素のこのような抗病原性、抗腫瘍性は本発明の利点である。
【0012】
しかし、酸化窒素は半減期が短いために、ウイルス、バクテリア、カビ、酵母などの感染治療に用いるのは困難であった。このことは、大量投与によるマイナスの作用や、毒性が問題となる。酸化窒素は血管拡張作用があり、大量に摂取すると体内の血液循環作用を崩壊させるおそれがある。一方、酸化窒素は一旦放出されると、ほんの数秒という非常に短い半減期を有する。従って、酸化窒素の短い半減期と毒性とを管理することは、抗病原菌、抗癌剤の分野における使用を制限する要素となる。
【0013】
近年、水と接触したときに酸化窒素を放出する能力のあるポリマーが見出されている。そのようなポリマーとして、直鎖ポリエチレンイミン(L−PEI)、分岐ポリエチレンイミン(B−PEI)などのポリアルキレンイミンがあり、生体適合性が良いという利点を有する。
【0014】
他の例として米国特許5770645には酸化窒素を溶出するポリマーについて記載され、ポリマーの1200原子量当たりNOx基(Xは1または2)を少なくとも1つ有するポリマー誘導体である。1例として、遊離チオール基のニトロシル(nitrosylated)化の為に適当な条件でニトロシル化剤とポリチオレートポリマーを反応させることにより、S-ニトロシル化ポリマーが得られることが述べられている。
【0015】
アクロン(Akron)大学では、酸化窒素を溶出するL−PEI分子が開発された。この分子はインプラントのような体内に永久的にインプラントされる医療器具の表面にナノスパン(nano-spun)され、この器具がインプラントされる場合に炎症を減少させ、治癒プロセスが著しく改善されることが示されている。米国特許6737447によれば、直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼンイウムジオラートのナノファイバを用いて酸化窒素の輸送を提供する医療デバイスのコーティングについて述べられている。直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼンイウムジオラートは組織を傷つけるような障害を防止して治癒プロセスを補助し、組織、器官に対して酸化窒素を制御しつつ放出する。電気的に紡糸された直鎖ポリ(エチレンイミン)−ジアゼンイウムジオラートのナノファイバは、医療デバイスの特徴の変化を最小にしつつ、デバイスの周囲を被覆し、組織に対して酸化窒素を治療レベルで輸送する。ナノファイバの単位重量当たりの小さいサイズおよび広い表面積によって、医療デバイスの他の特性の変化を最小にしつつ、ナノファイバ被覆は単位重量当たりのより広い表面積を提供する。
【0016】
米国公開2002/0082221には、酸化窒素を放出する脂質のS-ニトロシル化物、N-ニトロシル化物およびO-ニトロシル化物およびそれらの投与方法について記載されている。この脂質は、ポリマーマトリクス内に一体化または包含することができる。すなわち、米国公開2002/0082221には脂質として記載されているのであって、酸化窒素放出ポリマーとして記載されているのではない。従って、米国公開2002/0082221のシステムでは、酸化窒素放出の脂質が必要である。また酸化窒素の放出について調整または制御することについては全く記載されていない。
【0017】
米国公開2002/0136750には、バクテリア、ウイルス、真菌類への治療のために投与すること、酸性剤と硝酸イオンまたは前駆体を含む剤形で、酸性剤と硝酸イオンが別個に分離されたキャリア内に存在する。酸性剤、硝酸イオンを含むキャリアは、混合することにより酸化窒素を放出する。しかし、酸化窒素の放出を調整または制御することについては全く記載されていない。
【0018】
ヨーロッパ特許1300424には、極めて疎水性の酸化窒素放出ポリマーが記載されている。これらのポリマーは広範囲に架橋された、ポリアミン誘導体ジビニルベンゼン ジアゼンイウムジオラート(diazeniumdiolates)である。ヨーロッパ特許1300424のポリマーは極めて疎水性であり、“水の侵入に対してかなり抵抗性があり、水中には溶解しない”ことが9頁30行に記載され、どのようにして酸化窒素が放出されるのかが明確ではない。また、酸化窒素の放出を調整または制御することについては何も開示されていない。
【0019】
米国特許5814666には、微生物による感染治療のために酸化窒素を放出する組成物について記載されている。この組成物は1以上の酸化窒素発生剤を含み、好ましくはリポソームのような小胞(vesicle)に包含されている。米国特許5814666内の湿度活性組成物はN22-である。この基がポリマーに結合されている。しかし、酸化窒素の放出を調整または制御することについては何も開示されていない。
【0020】
米国公開2004/0043068には、一実施例に酸化窒素を放出することができるポリ尿素ネットワークを含み、被膜により被覆された医療デバイスの記載がある。米国公開2004/0043068は、皮膚の治療に用いることではなく、血管系の病気およびレイナード病(Raynard's disease)(9頁の86段落)の治療について記載されている。また、酸化窒素の放出を調整または制御することについては何も開示されていない。
【0021】
国際公開WO2005/003032には、吸着された酸化窒素を放出するゼオライトについて記載されている。ゼオライトはポリマーではなく、酸化窒素の放出を調整または制御することについては何も開示されていない。
【0022】
国際公開WO2004/012874には、酸化窒素を放出する医療デバイスについて開示されている。このデバイスは、金属表面などの基質に、アミン官能化シラン残基が結合されており、これに結合した酸化窒素放出求核剤により酸化窒素が基材に結合している。しかし、酸化窒素の放出を調整または制御することについては何も開示されていない。
【0023】
米国特許6737447には、L−PEIのナノファイバを使用して酸化窒素を放出するコーティング薬剤について記載されている。しかし、酸化窒素の放出を調整または制御することについては何も開示されていない。
【0024】
さらに、前記各公報には、皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染の治療や、酸化窒素の抗病原性の可能性に関しては全く開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染(例えば爪甲真菌症、皮膚糸状菌症など)の治療または予防のための改善された、あるいはより有効なデバイスが望まれている。また、有効な薬剤に対する抵抗性の菌を生じないこと、局部的な皮膚刺激のないこと、接触アレルギー性反応のないこと、胃腸管の陰性症状や、頭痛、浮腫、味覚障害などのないことが求められる。そして特に、爪甲真菌症や皮膚糸状菌症などの病気の標的予防および治療のための改良されたデバイスが必要である。
【0026】
従って、本発明は上記問題点の一つ以上を、軽減し、緩和し、削除し、本発明の請求の範囲により提供される酸化窒素のデバイスおよびその製造方法、その使用によって、上記言及された不利な問題の一つまたはそれ以上の組合せを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一つの目的は、皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染(例えば爪甲真菌症、皮膚糸状菌症など)の標的療法のためのデバイスを提供することである。デバイスは酸化窒素(NO)放出ポリマーが患部に接触するように配置され、酸化窒素の治療用量が酸化窒素放出ポリマーから患部に向かって放出される。
【0028】
本発明の別の目的は、そのようなデバイスの製造プロセスを提供し、皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染(例えば爪甲真菌症、皮膚糸状菌症など)の標的療法のためのデバイス形成プロセスを提供することである。このプロセスには、ナノファイバ、ファイバ、ナノ粒子、ミクロスフェアなどから選択される酸化窒素放出ポリマー粒子を、コンドーム/シースに配置し、あるいはデバイスにテープ/コーティングするなどして提供することを含む。その他、酸化窒素放出ポリマー粒子は、軟膏、クリーム、ゲル、またはフォームに混合される。
【0029】
本発明は、従来技術に対して、非常に効果的な抗皮膚糸状菌性、抗酵母菌性、抗糸状菌性の標的療法を提供し、治療効果の高い点で優れた利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下には、皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染(例えば爪甲真菌症、皮膚糸状菌症など)の標的療法に有効な、本発明のデバイスの実施例としてコンドーム/シースの形態を中心に説明する。
【0031】
酸化窒素(一酸化窒素、NO)の生理学的、薬理学的な機能は、多くの注目を浴び、研究されている。酸化窒素は酸化窒素シンターゼ(NOS)によりアルギニンを基質として合成される。NOSは構成酵素cNOSに分類され、生体内に通常の状態で存在する。また、誘導酵素iNOSが、ある刺激に応答して多量に製造する。cNOSによって製造される酸化窒素濃度より、iNOSによって製造される酸化窒素濃度の方が2〜3オーダー高く、iNOSは極めて多量の酸化窒素を生産する。
【0032】
iNOSにより生産される場合に酸化窒素が多量に発生すると、酸化窒素が活性酸素と反応して外因性の微生物やガン細胞に攻撃するだけでなく、組織を傷つけ炎症の原因にもなることが知られている。一方、cNOSにより生産される少量の酸化窒素は、生体にとってサイクリックGMP(cGMP)による様々な防御機能を活性化する。例えば、血管拡張反応や、血液循環の増進、抗血小板凝固反応、抗バクテリア反応、抗ガン反応、消化管における吸収の増進、腎臓機能の調整、神経伝達物質の反応、勃起(生殖反応)、学習、食欲増進などである。従来、NOS酵素活性の阻害は、組織の炎症や障害を防止する目的で試みられてきた。それは、生体内で多量の酸化窒素が生成することに起因するものである。しかし、NOS(特にcNOS)の酵素活性(あるいは量で表される)の増進は、酵素活性の促進および酸化窒素の適量の生産による生体の前記多種の防御反応の目的のために試みられたことはなかった。
【0033】
近年、水と接触することにより酸化窒素を放出することができるポリマーが開発された。そのようなポリマーは例えばポリアルキレンイミンであり、L−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)やB−PEI(分岐鎖ポリエチレンイミン)などである。これらのポリマーは生体適合性が良いという利点を有する。また、他の利点としては、酸化窒素が他の生成物を生ぜず、望ましくない副作用もないということである。
【0034】
これらのポリマーは電気紡糸、ガス紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸などによって製造することができる。電気紡糸は、懸濁ポリマーを荷電することにより製造するものである。特徴的電圧下で、ジェットによって運ばれる電荷とともに適用された電場の相互作用により発生された張力に応じる表面から、ポリマーの細いジェットが放出される。このプロセスは、ナノファイバのような、ポリマー繊維の束を生成する。ポリマー繊維のジェットは処理すべき表面に導入される。
【0035】
さらに、米国特許6382526、同6520425、同6695992には、ポリマー繊維の各種製造プロセス、装置などが記載されている。これらの技術はガス流紡糸を基本とし、繊維を形成することのできる液体または溶液を使用してエアー紡糸の技術により形成される。
【0036】
他の例として米国特許5770645には酸化窒素を溶出するポリマーについて記載され、ポリマーの1200原子量当たりNOx基(Xは1または2)を少なくとも1つ有するポリマー誘導体である。1例として、遊離チオール基のニトロシル(nitrosylated)化の為に適当な条件でニトロシル化剤とポリチオレートポリマーを反応させることにより、S-ニトロシル化ポリマーが得られることが述べられている。
【0037】
アクロン(Akron)大学では、酸化窒素を溶出するL−PEI分子が開発された。この分子はインプラントのような体内に永久的にインプラントされる医療器具の表面にナノスパン(nano-spun)され、この器具がインプラントされる場合に炎症を減少させ、治癒プロセスが著しく改善されることが示されている。米国特許6737447によれば、医療用具のコーティングは、直鎖ポリエチレンイミン−ジアゼンイウムジオラートのナノファイバを用いた酸化窒素のデリバリーを提供する。直鎖ポリエチレンイミン−ジアゼンイウムジオラートは、制御された方法で酸化窒素を放出する。
【0038】
しかし、米国特許6737447の“制御(controlled)”とは、コーティングからどれくらいの期間酸化窒素が放出されるかを示すものである。例えば一度に放出される酸化窒素の量ではない。従って、米国特許6737447の“制御”と、本発明の“調整(regulating)”とは異なるのである。本発明による“制御または調整”は、酸化窒素の様々な放出が可能で、異なる放出履歴を達成することができることであると解釈されるべきである。
【0039】
O-ニトロシル基を含むポリマーもまた酸化窒素を放出するポリマーである。本発明の一実施例では、酸化窒素放出ポリマーはジアゼンイウムジオラート基、S-ニトロシル基、O-ニトロシル基、その他これらの組合せの基を含む。
【0040】
本発明のまた別の実施例では、酸化窒素放出ポリマーは、ポリアルキレンイミンジアゼンイウムジオラートであり、例えばL−PEI−NO(直鎖(ポリエチレンイミン)ジアゼンイウムジオラート)である。酸化窒素放出ポリマーは、ジアゼンイウムジオラート基に酸化窒素が含まれ、治療部位での酸化窒素の放出を変化させる。
【0041】
酸化窒素放出ポリマーの他の例としては、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI-セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオール スペルメート(buthanediol spermate))、ポリ(イミノカーボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロリド)、ポリジメチルシロキサン、またはこれらの組合せ、および、例えばポリサッカリド主鎖やセルロース主鎖などの不活性な主鎖に上記ポリマーをグラフトした化合物などから選択されるものがある。
【0042】
本発明の他の実施例として、酸化窒素放出ポリマーはO-誘導化NONOエートがある。この種のポリマーは、酸化窒素の放出に酵素反応が必要となる場合がある。
【0043】
酸化窒素放出ポリマーとして好適であるポリマーを別の方法で記載するならば、例えばL−PEIのように2級アミン(=N−N)基、あるいは例えばアミノセルロースのような2級アミン(=N−N)をペンダント基として有するポリマーである。
【0044】
本発明の実施例として、図1には、天然ゴム(latex)またはゴム(rubber)のコンドーム/シース10、11の形状を有するデバイスが示されている。これは上記の、例えばL−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)、B−PEI(分岐鎖ポリエチレンイミン)などのポリアルキレンイミンの酸化窒素放出ポリマーのナノフィラメントにより、内面が被覆されている。これらのポリマーは酸化窒素の放出後にも生体適合性が良いという利点を有する。
【0045】
本発明の別の実施例では、コンドーム/シースは、その内面がL−PEIのナノフィラメントにより被覆されている。
【0046】
このコンドーム/シースは適当な大きさにすることができ、つま先や指先の爪を治療するために、つま先や指を被覆するように巻かれていてもよい。これらのサイズは例えば、小指、薬指、中指、人差し指、親指などの大きさに合わせたり、足先の親指、中間の3指、小指などの大きさにすることができる。本発明のコンドーム/シースは、図3に示すように足全体をカバーするソックス30のような大きさにすることができる。皮膚糸状菌の治療ができるように、足用のコンドーム/シース、あるいは身体の他の部位を被覆する大きさにすることもできる。本発明によれば、コンドーム/シースは酸化窒素放出ナノファイバにより被覆されている。他の例では、電気またはガスジェット紡糸などにより形成されたナノフィラメントからあるいはこれを含む材料により製造されていても良い。なお、他の製造方法、例えばウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸なども本発明で採用することができる。また別の実施例として、コンドーム/シースが酸化窒素放出するミクロスフェアを含むこともできる。これらの実施例において酸化窒素放出のためにL−PEI材を採用することが好ましい。酸化窒素の放出の活性化は、足の汗、使用前のコンドーム/シースに水をスプレーすること、水を放出するように構成された水を含む袋を配置して、それを押しつけて破裂させることにより活性化することなどがある。
【0047】
本発明のある実施例による酸化窒素を放出するコンドーム/シースは、分泌された汗や、湿気で処理されあるいはこれと接触するとき、治療部位に対して酸化窒素の放出が開始される。別の言い方をすれば、本デバイスは酸化窒素放出の制御または活性化するために、適用または使用される直前に湿気または水により処理される。
【0048】
本発明の他の実施例として、コンドーム/シースは内面が酸化窒素放出ナノ粒子またはミクロスフェアにより被覆されている。これらのナノ粒子またはミクロスフェアは本発明の酸化窒素放出ポリマーから形成されている。それらは例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される適当な材料に包含されていてもよい。この実施例によるナノ粒子、ミクロスフェアが、汗の形で内部に湿気を取り込むとき、治療部位に酸化窒素の放出が始まる。
【0049】
本発明における“カプセルで包含”とは、酸化窒素放出ポリマーを3次元マトリクスにより固定することを意味し、フォーム、フィルム、ナノファイバまたはファイバの不織マット、他の酸化窒素放出ポリマーを固定できる材料、包摂するに適した他の材料により包含するものと理解するべきである。
【0050】
また、本発明の他の実施例によれば、コンドーム/シースは、プロトンドナー小胞またはプロトンドナーを封入したスポンジを含むことができる。このプロトンドナー小胞またはプロトンドナーを封入したスポンジは、酸化窒素放出性のナノ粒子、ミクロスフェアから酸化窒素の放出を活性化するために用いられる。このプロトンドナー小胞またはプロトンドナーを封入したスポンジは、本発明のコンドーム/シースの先端に配置することができる。汗を余りかかない患者にはこの実施例を適用することが好ましい。
【0051】
本発明の別の実施例における酸化窒素放出ポリマーは、水または液体を含む水などのマイクロカプセル化されたプロトンドナー(後に詳述するが)と共にあるいはこれと結合して提供される。
【0052】
例えば、従来公知の方法において、水または他の液体を含む水などの、プロトンドナーを含むマイクロカプセルとして最初に製造される。これらのマイクロカプセルは、酸化窒素放出ポリマーの上に適用される。前記適用方法としては、例えば、パターン接着(pattern gluing)などの接着により行われ、あるいは、マイクロカプセルの上に酸化窒素放出ポリマーを紡糸することもできる。こうして、酸化窒素放出ポリマーと、水または他の液体を含む水を包含するマイクロカプセルとのデバイスまたはシステムが製造される。このデバイスまたはシステムを標的部位に適用して、デバイスまたはシステムを圧縮または捻る。圧縮または捻ることによってマイクロカプセルが破壊される。その結果酸化窒素放出ポリマーが水または液体を含む水にさらされ、標的部位で酸化窒素放出ポリマーから酸化窒素の放出が開始される。本発明の他の実施例において、マイクロカプセルが破裂するまで加熱または剪断することによって、マイクロカプセル内の液体を放出することもできる。
【0053】
さらに別の実施例において、マイクロカプセルが、フィルム、テープ、シース形状とされてもよい。マイクロカプセルのフィルム、テープ、シース上に、酸化窒素放出ポリマーのフィルム、テープ、シースを接着する。このましくは前記接着をあるパターンに従って行う。そのパターンは、接着されていない領域を含み、そこでは一旦マイクロカプセルが圧縮または捻られることにより破壊されたあと、プロトンドナーが酸化窒素放出ポリマーまで輸送されるスペースを形成する。そしてプロトンドナーが酸化窒素放出ポリマーと接触したのち、酸化窒素の放出が開始される。このように、マイクロカプセルと酸化窒素放出ポリマーとのフィルム、テープ、シースでの組合せを標的部位に適用できる。この組合せが圧縮または捻られた後、標的部位が酸化窒素にさらされる。
【0054】
また別の実施例においては、酸化窒素放出ポリマーが、プロトンドナーを含むマイクロカプセルのフィルム、テープ、シースの上に、直接紡糸される。マイクロカプセルのフィルム、テープ、シースと紡糸された酸化窒素放出ポリマーとの組合せは、標的部位に適用することができる。この組合せが圧縮または捻られた後、標的部位が酸化窒素にさらされる。
【0055】
本発明のデバイスまたはシステムの他の実施例において、活性化インジケータを含むことができる。活性化インジケータは、マイクロカプセルが充分に破壊され、酸化窒素放出ポリマーに充分なプロトンドナーがさらされて有効量の酸化窒素を放出することができることを示す。この活性化インジケータは例えばプロトンドナーを着色することによって得られ、マイクロカプセル内に捕捉される。マイクロカプセルが破壊されたとき、着色されたプロトンドナーは外に放出され、酸化窒素放出ポリマーを充分に湿らせることにより色が視認されるようになる。活性化インジケータとしては他に適当な材料を選択してマイクロカプセル内に入れるか、マイクロ粒子の厚さを適当に選択してマイクロカプセルが破壊されるときに音がでるように構成することもできる。また、芳香剤をプロトンドナーに混ぜてマイクロカプセルを得ることもできる。このシステムまたはデバイスを使用したユーザは、マイクロカプセルが破壊されたのちに放出される芳香剤を嗅ぐことができるのである。
【0056】
別の実施例において、水と接触したときに色が変わる基材をデバイスと組み合わせることもできる。これにより、水カプセルまたは水小胞が破壊され、基材が変色することで、活性化を示すことができる。
【0057】
本発明の別の実施例は、デバイスまたはシステムから酸化窒素を一方向にのみ放出させることである。この種の実施例は、本発明のデバイスの一方側を、酸化窒素を殆ど通さない、または実質的に通さないものにすることである。これは、本発明のデバイスの一方の側に適用される材料を、酸化窒素を通さないものにすることで達成される。そのような材料は通常のプラスチック、例えば、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される。この実施例もまた、酸化窒素放出ポリマーとして、例えばL−PEI(または、前記詳細に説明した酸化窒素放出ポリマーまたはキャリア材料)を、例えば上記プラスチック、ラテックス、綿の表面に電気またはガスジェットにより紡糸することで容易に製造できる。
【0058】
また別の実施例として、膜を用いて前記デバイスを提供することができる。それは、デバイスの第一の側の膜を酸化窒素透過性とし、デバイスの第二の側に別の膜として、酸化窒素の透過性の低い膜または実質的に酸化窒素を通さない膜を用いることである。この実施例では、デバイスの第一の側から放出され、第二の側からの酸化窒素の放出は実質的に阻止される。従って、治療したい領域に到達する酸化窒素の量を高めることができる。
【0059】
酸化窒素放出ポリマーの活性化は、ポリマーが適当なプロトンドナー(上記のような)と接触することにより達成される。プロトンドナーの一例として、水、体液(血液、リンパ液、胆汁、その他)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、ナフトール、ポリオール、その他)、酸性緩衝液(リン酸、コハク酸、炭酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、脂肪酸、アミノ酸、その他)、またはこれらの組合せから選択される。
【0060】
プロトンドナーに界面活性剤を加えることによりデバイスの濡れを良くすることが出来る。界面活性剤は表面張力を下げ、活性化液体がデバイスを通過して輸送を容易にする。
【0061】
別の実施例では、デバイスがポリウレタンまたはポリエチレンのフォームに製造され、図2にテープまたは被覆20として示される。このポリウレタンテープまたは被覆は、つま先や指先の治療部位に局所的かつ容易に巻き付けることができる。つま先または爪側には酸化窒素放出性のL−PEIのナノ粒子、ミクロスフェア、ナノフィラメントが被覆されている。これらの粒子またはフィラメントが、汗などの湿気と接触してテープまたは被膜内にそれが浸透すると、酸化窒素の放出が開始される。
【0062】
本発明のデバイスの他の実施例において、パッチ/パッドの形態がある。パッチ/パッドは、足や手の指の間に適用することに適しており、しっかりと接触させることが困難な部位にも好適である。
【0063】
本発明の実施例として、酸化窒素を放出することにより直接、指の爪を治療することができる。酸化窒素は爪を通して拡散し、爪の下まで治療効果がある。従来法では、もし、爪甲真菌症、皮膚真菌症などの感染が爪の下にあると、爪を手術で取り除き、それから治療が始められていた。従って、本発明の例では、手術中あるいは後の患者の痛みや合併症を取り除くものである。
【0064】
勿論、本発明の他の実施例において、パッチ/パッドまたはテープ/皮膜は他の好適な材料から製造することができ、そのような材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せなどがある。本発明の実施例においては、これらの材料と酸化窒素放出ポリマーは、一体化され、共に紡糸され、あるいは表面に紡糸することができる。
【0065】
別の実施例では、ナノ粒子、ミクロスフェアは可溶性のフィルム内に一体化され、治療部位において、汗や水を含む袋または水が封入されたスポンジと接触することで、コンドーム/シースまたはテープ/被膜の中で崩壊し、酸化窒素を放出する。
【0066】
デバイスが治療部位に置かれると、爪甲真菌症、皮膚真菌症などの皮膚糸状菌、酵母菌、糸状菌による感染を予防および治療する。
【0067】
本発明の他の実施例において、デバイスは一方向にのみ酸化窒素を放出する。この種の実施例では、コンドーム/シースまたはテープ/被膜の一方の側は酸化窒素を透過しない。これは、コンドーム/シースまたはテープ/被膜の一方の側に酸化窒素を透過しない材料を適用することにより達成される。そのような材料は、通常のプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せなどから選択することができる。この実施例では、酸化窒素放出ポリマーとして、L−PEIナノファイバを、上記プラスチック、ラテックス、綿などのシース表面に、電気紡糸またはガスジェット紡糸により形成することで製造できる。他の製造方法、例えばウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸なども本発明の範囲内である。製造後、コンドームの場合は巻かれ、シースは裏返される。これは包装中、輸送中などに外部環境、例えば機械的(ポリマーの剥離など)、化学的(使用前に湿気に曝されて不活性化するなど)影響から酸化窒素放出ポリマーを保護するためである。
【0068】
本発明の別の実施例では、酸化窒素放出デバイスは、例えば調合薬、ビタミン、ニコチン、ニトログリセリンなどの薬剤放出パッチのための増進器として作用させることもできる。この実施例は、一つの治療によって2つの治癒効果を得ることができるデバイスを提供する。従って、デバイスから酸化窒素が放出されると、そのようなデバイスによって相乗効果が達成される。組成物を有するデバイスを作用させる部位で、酸化窒素は血管拡張作用を有する。組織の血管が拡張すると薬剤が浸透しやすくなり、調合薬剤による治療もよりし易くなる。また、酸化窒素により抗炎症性、抗菌性などの効果もある。よって、予想以上の治療効果が得られる。
【0069】
他の実施例として、酸化窒素放出ポリマーを粉体、ナノ粒子、ミクロスフェアなどとしてフォーム(発泡体)と組み合わせることである。フォームとしてはオープンセル構造を有することができ、プロトンドナーを酸化窒素放出ポリマーに輸送するのに適している。フォームの好適な材料は、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ラテックスなどである。
【0070】
別の実施例として、クリーム状、またはゲル状若しくはこれらの組み合わせの形態もできる。酸化窒素放出ポリマーはプロトンドナーにより活性化されるので、デバイスの使用により酸化窒素を放出開始させたいときまで、酸化窒素放出ポリマーをプロトンドナーから隔離することができる。これを遂行する一つの方法は、2つの収容部を有するシリンジを利用することである。一つの収容部にはプロトンドナーゲルが、他方の収容部にはプロトンドナーゲルを排除した、酸化窒素放出ポリマーを含むゲルを収容する。デバイスを使用する場合には、シリンジから絞りだして両方を混ぜ合わせ、プロトンドナーを含む第一のゲルが、酸化窒素放出ポリマーを含む第二のゲルと接触して、酸化窒素の放出が始まる。酸化窒素の放出はゲルまたはフォームに水を供給することにより開始することができる。この実施例の利点は、皮膚のポケットやコーナーなどであっても侵入させることができ、近い位置から酸化窒素を放出させることができることである。
【0071】
酸化窒素放出ポリマーからの酸化窒素(NO)の放出は、治療適用量であり、それは0.001〜5000ppm、あるいは0.01〜3000ppm、あるいは0.1〜1000ppm、あるいは1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100ppmである。この濃度は何処を測定するかによって様々に変化する。もし、濃度の測定を酸化窒素放出ポリマーの近くで測定すれば1000ppmもしくはそれ以上であり、組織内で測定すれば、1〜1000ppm程度に低下する。
【0072】
本発明の実施例において、デバイスからの酸化窒素の放出時間を制御、調整することが好ましい。これはデバイスに他のポリマーまたは材料を一体化させることにより達成することができる。これらのポリマーまたは材料は以下の何れの材料またはポリマーであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される材料を含むことができる。
【0073】
酸化窒素放出ポリマーから酸化窒素の放出を制御し調整するために3つの重要な要素がある。一つは、ジアゾリウムジオラート基などのプロトンドナーと、酸化窒素放出ポリマーとをいかに素早く接触させるか。一つは、酸化窒素放出ポリマーの周囲の酸性環境、そして、酸化窒素放出ポリマーの周囲の温度(高い温度は酸化窒素の放出を促進する)である。
【0074】
本発明の酸化窒素放出ポリマーの一例として、L−PEI−NOとキャリアポリマーとを混合して酸化窒素の放出を遅く、長くするものがある。別の例では、1以上のキャリアポリマーと混合することもでき、必要に応じて放出または分離を調整することができる。例えば、酸化窒素放出ポリマーの周囲環境を疎水性にすれば、初期の放出をゆっくりにすることができる。そして酸化窒素放出ポリマーの周囲環境がより親水性になったとき、第二の期間はより早い放出とすることができる。これは、例えば生分解性ポリマーを使用することによってもでき、第一の期間は低放出であって、疎水性ポリマーが分解されて、親水性ポリマーとなったら酸化窒素のより高い放出が得られる。このように、疎水性キャリアポリマーは、活性プロトンドナー例えば水や体液などは疎水性キャリアポリマーをゆっくりと侵入するから、酸化窒素の遅延放出を与える。一方、親水性ポリマーはその反対の作用がある。親水性ポリマーの一例としてポリエチレンオキシド、疎水性ポリマーの一例としてポリスチレンがある。これらのキャリアポリマーは酸化窒素放出ポリマーと混合して、電気紡糸により適当なファイバに形成することができる。当業者においては、他のポリマーも同様の目的で使用できることが理解されよう。図4は、2つの異なるポリマー混合物からの放出挙動(酸化窒素濃度 対 時間)を示した図である。親水性キャリアポリマーと酸化窒素放出ポリマーを酸性環境下で混合した場合(A)と、疎水性キャリアポリマーと酸化窒素放出ポリマーを中性環境下で混合した場合(B)である。
【0075】
一例としては、このキャリアポリマーが疎水性または親水性の特徴を有する別の材料を代わりに使用することもできる。従って、本発明における“キャリア材料”はキャリアポリマーと、親水性または疎水性の特徴を有する他の材料を意味すると解されるべきである。
【0076】
本発明の別の実施例において、L−PEI−NOなどの酸化窒素放出ポリマーからの酸化窒素の放出は、プロトンの存在により影響を受ける。これは、より酸性環境下では酸化窒素の放出が促進されることを意味する。酸化窒素放出ポリマーを活性化することにより、または酸化窒素放出ポリマーとキャリアポリマーに、アスコルビン酸溶液などの酸性液体を混合することにより、酸化窒素の放出を加速することができる。
【0077】
前記キャリアポリマーとキャリア材料は、酸化窒素の放出を調整する以外に他の特徴に影響を与えることもできる。そのような特徴としては機械的強度などである。
【0078】
キャリアポリマーまたはキャリア材料については、酸化窒素放出ポリマーがその中に一体化され、共に紡糸され、或いはその上に紡糸して、本発明の実施例のいずれについても適用することができる。前記紡糸には、電気紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸などが含まれる。このような方法により、酸化窒素放出ポリマーと、キャリアポリマーまたはキャリア材料とを含み、酸化窒素の放出特性を予め設定したポリマー混合物のファイバが製造される。これらの特徴は、異なるアプリケーションで異なる放出挙動に合わせることができる。
【0079】
本発明によるデバイス内の酸化窒素放出ポリマーは、銀、例えば水素活性化銀などと結合させることもできる。本発明に従ってデバイス内に銀を結合させ、治癒プロセスをさらに促進する。好ましくは銀はデバイスから銀イオンとして離脱できるとよい。デバイス内に結合された銀はいくつかの利点がある。そのような利点の一つは、酸化窒素放出ポリマーが標的部位で酸化窒素を治療のために放出する間、デバイスがバクテリアやウイルスの増殖を抑えることである。
【0080】
酸化窒素放出ポリマーは、前記のように2級アミンを、主鎖または側鎖に有していても良い。これにより良好な酸化窒素放出ポリマーを作ることが出来る。2級アミンは強い負電荷を有するので酸化窒素を付加し易い。もし2級アミンの近く、例えば窒素原子の隣接炭素原子に、窒素より高い電気陰性度のリガンドがあると、酸化窒素をポリマーに付加することは非常に困難である。一方、もし2級アミンの近く、例えば窒素原子の隣接炭素原子に、電気的に陽性のリガンドがあると、アミンの電気陰性度が増強されポリマーに酸化窒素を付加する可能性が高くなる。
【0081】
本発明の一つの実施例において、酸化窒素放出ポリマーは塩によって安定化することができる。例えばジアゼンイウムジオラート基のような酸化窒素の放出基は、通常陰性であり、陽性のカウンターイオン例えばカチオンは、酸化窒素放出基を安定化するために使用できる。このカチオンは、周期律表の第一または第二グループから選択されるカチオンで、例えば、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、およびSr2+などである。同じ酸化窒素放出ポリマーでも塩が異なると、異なる特徴を有する。このように目的に応じて適当な塩(カチオン)を選択することができる。カチオン安定化ポリマーの例として、L−PEI−Na(例えばL−PEIジアゼンイウムジオラートをナトリウムで安定化したもの)や、L−PEI−Ca(例えばL−PEIジアゼンイウムジオラートをカルシウムで安定化したもの)がある。
【0082】
本発明の別の実施例として、酸化窒素放出ポリマー、または酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に、吸収剤を混合するものがある。この実施例は、ポリマーまたはポリマー混合物が吸収剤によって、より早く活性化のための液体(例えば水または体液)を吸収することができるので、酸化窒素の放出が促進されるという利点がある。具体的には、酸化窒素放出ポリマー、又は酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に80%(w/w)の吸収剤を混合したもの、酸化窒素放出ポリマー、又は酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に10〜50%(w/w)の吸収剤を混合したものなどがある。
【0083】
酸化窒素の放出は水などのプロトンドナーによって活性化されるので、酸化窒素放出ポリマーまたは酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物をプロトンドナーと接触を維持することが有利である。もし長期間に渡り酸化窒素を放出することが求められれば、プロトンドナーと、酸化窒素放出ポリマーまたは、酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物との接触を維持するシステムが有効である。従って、本発明の別の実施例では、吸収剤を添加することにより酸化窒素の放出を調整することができる。吸収剤はプロトンドナー(例えば水)を吸収し、長期間に渡って酸化窒素放出ポリマーとプロトンドナーとの接触を維持する。吸収剤は、ポリアクリレート、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、綿、スターチなどである。この吸収剤は充填剤としても使用することができる。この場合の充填剤は、酸化窒素放出ポリマーまたは、酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料との混合物に所望の質感を与える。
【0084】
デバイスは、例えばL−PEIまたはL−PEIを含む他のポリマーを電気紡糸し、またはL−PEIと組み合わせて配合することにより製造できる。L−PEIは特徴的な電圧により荷電され、L−PEIポリマーファイバの束として、細いL−PEIジェットが放出される。このポリマーファイバのジェットは処理部の表面に直接あてることもできる。処理部の表面は、デバイスにとして好適な材料からなる。L−PEIの電気紡糸ファイバは材料に接着し、本発明のデバイスの上にL−PEIの被膜/層を形成する。
【0085】
上記のようにして、本発明の範囲内において、デバイスに他の酸化窒素放出ポリマーを電気紡糸することも勿論可能である。
【0086】
本発明による酸化窒素放出ポリマーの一例として、電気紡糸によって純粋な酸化窒素放出ポリマーを得ることもできる。
【0087】
酸化窒素放出ポリマーと好適な他のポリマー或いは複数のポリマーを一緒に電気紡糸することもまた、本発明の範囲内である。
【0088】
デバイスの上に酸化窒素放出ポリマーをガス流紡糸、エアー紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、ゲル紡糸することは、本発明の範囲内である。
【0089】
この製造プロセスにより、酸化窒素放出ポリマーファイバの表面が治療部位に対して広い接触面積を有するから、酸化窒素放出ポリマーを効率よく使用し、デバイスの生産コストにも効果的である。
【0090】
ここで、本発明のいくつかの可能性のある使用について以下に記載する。
【0091】
治療に使用されるとき治療用量の酸化窒素(NO)を放出するように構成された酸化窒素(NO)放出ポリマーを含むデバイスによって、爪甲真菌症、皮膚真菌症を含む感染の治療方法であって、酸化窒素放出ポリマーから治療部位に治療用量の酸化窒素を放出することにより、放出された酸化窒素(NO)を使用して身体の感染部位をさらすことを含む。
【0092】
上記による方法は、身体の手足の感染部位をコンドーム/シース、ソックス、パッチ/パッド、テープ/被膜を適用することにより前記部位をさらす(治療する)ことを含む。
【0093】
爪甲真菌症、皮膚真菌症を治療するために酸化窒素(NO)を治療用量使用する。
【0094】
本発明は、各種の適当な形態で使用することができる。本発明の実施例である要素、部品は物理的に、機能的に、論理的に適当な方法により用いることができる。実際、機能性は、単一のユニット、複数のユニット、あるいは他の機能的ユニットの一部として実行される。
【0095】
本発明は前記のように詳細な実施例に関して説明したが、ここに説明した詳細な形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は請求項の記載にのみ限定されるものであり、前記の詳細な実施例と同様の他の実施例も、ここに付加された請求項の範囲内である。
【0096】
請求項において、“含む/含んでいる”は他の要素または工程を排除していないことを意味する。さらに、個別に挙げられているが、複数の手段、要素、ステップが伴われることも許容されている。また、個々の特徴は異なる請求項に含まれても良く、これらが有効に結合され、異なる請求項に包含されることは、特徴の組合せが実現可能でないとか有利でないなどを意味するものではない。さらに、単一の関係は複数のそれを排除するものではない。“ひとつ(a)”“ひとつ(an)”“第一(first)”“第二(second)”などは複数を排除していない。請求項の引用は例を明確にするためのものであり、請求の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
本発明の目的、特徴、効果を明らかにし、図面を参照することにより、本発明の実施例を説明した。
【図1】図1は、本発明に従うコンドーム/シースの概略図である。
【図2】図2は、本発明に従うテープまたはコーティングを示す概略図である。
【図3】図3は、本発明に従うソックスを示す概略図である。
【図4】図4は、担体に酸化窒素放出ポリマーを2種類の異なる混合により得られる、2種の放出挙動を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪甲真菌症および皮膚真菌症を含む感染を治療するように構成されたデバイスであって、
前記デバイスが、治療に使用されるとき酸化窒素(NO)の治療用量の放出がされるように構成された酸化窒素(NO)放出ポリマーを含み、
酸化窒素(NO)放出ポリマーがキャリア材料と一体化され、使用時においてキャリア材料が酸化窒素(NO)の治療用量の放出を制御、調整し、
使用される前記ポリマーが酸化窒素(NO)を放出するとき、身体の感染部位が酸化窒素に曝されるように構成されたことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
酸化窒素(NO)放出ポリマーが、ジアゼンイウムジオラート(diazeniumdiolate)基、S-ニトロシル(nitrosylated)基、O-ニトロシル基、またはこれらの組合せを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
酸化窒素(NO)放出ポリマーが、ジアゼンイウムジオラート基、S-ニトロシル基、O-ニトロシル基、またはこれらの組合せにより酸化窒素(NO)を有するL−PEI(直鎖ポリエチレンイミン)であり、爪甲真菌症および皮膚真菌症を含む感染の予防または身体の感染標的部位に酸化窒素(NO)を放出するように配置される、請求項1又は2記載のデバイス。
【請求項4】
酸化窒素放出ポリマーが、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノキトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオール スペルメート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリジメチルシロキサン、またはこれらの組合せ、およびポリサッカリド(多糖)主鎖あるいはセルロース主鎖のような不活性な主鎖に前記ポリマーがグラフトされているものを含む群、より選択された、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
爪甲真菌症および皮膚真菌症を含む感染の治療のために、身体の感染部の治療に適用するのに適した、コンドーム/シース、ソックス、パッチ/パッド、テープ/被膜のいずれかの形態である、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
コンドーム/シース、ソックス、パッチ/パッド、テープ/被膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから製造され、
使用時に、感染治療のために身体の感染部の治療部位に酸化窒素(NO)を放出するように構成された酸化窒素(NO)放出ポリマーを含む請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
プロトンドナーバッグ、プロトンドナーを封入したスポンジまたはマイクロカプセル化されたプロトンドナーを含み、デバイスを活性化するときにそこからプロトンドナーが放出され、プロトンドナーと前記ポリマーが接触することで酸化窒素(NO)の放出が活性化されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスが、プロトンドナーにさらされるとき部分的に崩壊する請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
プロトンドナーが、水、血液、リンパ液、胆汁、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、フェノール、ナフトール、ポリオール、リン酸塩、コハク酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、脂肪酸、アミノ酸、またはこれらの組合せから選択される、請求項7または8記載のデバイス。
【請求項10】
プロトンドナーが界面活性剤を含み、界面活性剤がデバイスの濡れ性を向上させるために使用される請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
ポリマーが銀を含み、身体の感染部位を治療するように構成されている請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
ポリマーがナノ粒子またはミクロスフェアの形態である請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
ナノ粒子またはミクロスフェアが、ゲル、クリーム、フォーム、ヒドロゲルまたはそれらの組合せとして一体化されている請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
ナノ粒子またはミクロスフェアが、材料と一体化または好ましくは材料内に包含されており、該材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される請求項12または13記載のデバイス。
【請求項15】
キャリア材料が、材料と一体化または好ましくは材料内に包含されており、該材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリラクトン酸、スターチ、セルロース、ポリヒドロキシアルカネート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質ベースポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの組合せから選択される請求項1記載のデバイス。
【請求項16】
プロトンドナーを吸収して長期間に渡って酸化窒素放出ポリマーに接触させるように構成された吸収剤を含む請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
吸収剤が、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶性セルロース、綿、スターチから選択される、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
酸化窒素放出ポリマーがカチオンにより安定化されている請求項1記載のデバイス。
【請求項19】
カチオンが、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、またはこれらの組合せから選択される請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
酸化窒素放出ポリマーが、主鎖内またはペンダント基として2級アミンを含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項21】
2級アミンの隣接原子に、ポジティブリガンド(positive ligand)が配置されている請求項20記載のデバイス。
【請求項22】
正電リガンド(electropositive ligand)が主鎖の2級アミンの窒素原子に隣接する炭素原子に位置する請求項20記載のデバイス。
【請求項23】
デバイスが、爪甲真菌症または皮膚真菌症を治療するための構造を有する前記いずれかの請求項に記載のデバイス。
【請求項24】
爪甲真菌症または皮膚真菌症を含む感染を治療するように構成された請求項1記載のデバイスの製造プロセスであり:
感染部位を治療するために使用するとき、酸化窒素(NO)を治療用量放出するように構成された酸化窒素(NO)放出ポリマーを選択すること、
酸化窒素(NO)の治療用量の放出を調整または制御するように構成されたキャリア材料を選択すること、
デバイスの使用時に前記キャリア材料が酸化窒素(NO)の治療用量の放出を調整または制御するように、酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料を酸化窒素(NO)放出材料として結合させること、
酸化窒素放出ポリマーが酸化窒素(NO)を放出して使用されるとき、治療標的部位を酸化窒素にさらすように構成されたデバイスの、少なくとも一部として形成され、前記酸化窒素放出材料が、好適な形状あるいはキャリアの上に被覆して配置すること、
を特徴とするデバイスの製造プロセス。
【請求項25】
前記配置することが、酸化窒素放出ポリマーを電気紡糸、エアー紡糸、ガス紡糸、ウェット紡糸、ドライ紡糸、溶融紡糸、またはゲル紡糸することである請求項24記載の製造プロセス。
【請求項26】
酸化窒素(NO)放出ポリマーを選択することが、複数の酸化窒素(NO)放出ポリマーの粒子、好ましくはナノファイバ、ナノ粒子またはミクロスフェアから選択することである請求項24または25記載の製造プロセス。
【請求項27】
酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料を結合させることが、デバイスに酸化窒素放出特性を設定するために、酸化窒素放出ポリマーをキャリア材料に一体化すること、酸化窒素放出ポリマーとキャリア材料を一緒に紡糸すること、または、キャリア材料の上に酸化窒素放出ポリマーを紡糸することのいずれかを含む請求項24または25記載の製造プロセス。
【請求項28】
さらにデバイス内に銀を一体化させることを含む請求項24記載の製造プロセス。
【請求項29】
さらにマイクロカプセル内にプロトンドナー封入すること、
前記マイクロカプセルを酸化窒素(NO)放出材料に適用することを含む請求項24記載の製造プロセス。
【請求項30】
前記適用することが、マイクロカプセルの上に酸化窒素放出ポリマーを接着し、或いは紡糸することを含む請求項29記載の製造プロセス。
【請求項31】
マイクロカプセルを第一のフィルム、テープまたはシース内に形成すること、
酸化窒素放出材料の第二のフィルム、テープまたはシースを形成すること、
マイクロカプセルの第一のフィルム、テープまたはシースと、酸化窒素放出材料の第二のフィルム、テープまたはシースとを接着することを含む請求項29記載の製造プロセス。
【請求項32】
接着剤の無いスペースを含んで得られるようなパターンで接着することを含む請求項31記載の製造プロセス。
【請求項33】
マイクロカプセルを第一のフィルム、テープまたはシース内に形成すること、
プロトンドナーを含むマイクロカプセルの第一のフィルム、テープまたはシースの上に酸化窒素放出材料を直接紡糸することを含む請求項29記載の製造プロセス。
【請求項34】
酸化窒素放出材料が酸化窒素を放出するためにプロトンドナーにさらされ、マイクロカプセルが破壊されたときを示すように構成された活性化インジケータを提供することを含む請求項29記載の製造プロセス。
【請求項35】
活性化インジケータを提供することが、マイクロカプセル内に着色剤を提供することを含む請求項34記載の製造プロセス。
【請求項36】
活性化インジケータを提供することが、マイクロカプセルの材料を選択することまたは、マイクロカプセルが破壊されたとき音が発生するようにマイクロカプセルの壁の厚みを選定することを含む請求項34記載の製造プロセス。
【請求項37】
活性化インジケータを提供することが、マイクロカプセル内に芳香剤を混合することを含む請求項34記載の製造プロセス。
【請求項38】
活性化インジケータを提供することが、プロトンドナーと接触したとき色が変わる基材を提供することを含む請求項34記載の製造プロセス。
【請求項39】
爪甲真菌症および皮膚真菌症を含む感染の治療のためのデバイスの製造に用いられる酸化窒素(NO)放出ポリマーの使用であって、
身体の感染部位に使用されるとき、デバイスに付加された酸化窒素が、酸化窒素放出ポリマーから治療用量の酸化窒素(NO)として放出されることを特徴とする、酸化窒素放出ポリマーの使用。
【請求項40】
治療用量が、0.001〜5000ppm、0.01〜3000ppm、0.1〜1000ppm、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,または100ppmである請求項39記載の使用。
【請求項41】
治療のために使用されるとき酸化窒素(NO)の治療用量を放出するように構成された酸化窒素(NO)放出ポリマーを含むデバイスによって、爪甲真菌症および皮膚真菌症を含む感染の治療方法であって、
酸化窒素放出ポリマーから治療部位に治療用量の酸化窒素を放出することによって、ポリマーが酸化窒素(NO)放出に使用されるとき、身体の感染部位に酸化窒素をさらすことを特徴とする治療方法。
【請求項42】
身体の手足にある感染部位を治療すること、コンドーム/シース、ソックス、パッチ/パッドおよびテープ/被膜を手足に適用してさらすことを特徴とする請求項41記載の治療方法。
【請求項43】
爪甲真菌症および皮膚真菌症の少なくとも一方を治療または予防するための治療用量の酸化窒素(NO)の使用。
【請求項44】
手指または足指の、爪甲真菌症および皮膚真菌症の少なくとも一方を治療する請求項43記載の使用。
【請求項45】
身体の治療側における、爪甲真菌症および皮膚真菌症の少なくとも一方を治療または予防するための、酸化窒素(NO)の薬剤としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−529626(P2008−529626A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554577(P2007−554577)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050889
【国際公開番号】WO2006/084910
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507271798)ノーラブズ エービー (11)
【Fターム(参考)】