説明

皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート及びその使用方法

【課題】皮膜形成性塗布剤の乾燥を促進して皮膜形成までの時間を短縮し、形成された皮膜を簡便に剥離できるようにする皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート、及び、この皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも親水性高分子層を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート、並びに、(i)皮膚に皮膜形成性皮膚塗布剤を塗布して、皮膚表面に皮膜形成性塗布剤の塗膜を形成する工程、(ii)前記皮膜形成性皮膚塗布剤の塗膜上に、前記皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを貼付する工程、および(iii)前記皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートが貼付された皮膜形成性塗布剤を皮膚から剥離する工程、を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成性塗布剤の乾燥を促進して皮膜形成までの時間を短縮し、形成された皮膜を簡便に剥離できるようにする皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート、及び、この皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚上に水溶性高分子の皮膜を形成させて剥離する皮膜形成性塗布剤が種々開発されている。このような皮膜形成性塗布剤としては、例えば、ピールオフパック剤等が挙げられる。
【0003】
ピールオフパック剤は、有効成分を皮膚に浸透させることを目的とするものであり、例えば、水溶性高分子と水を含む粘性の溶液に保湿剤等の有効成分を加えて調製される(特許文献1,2等)。ピールオフパック剤中の有効成分は、ピールオフパック剤が皮膚に塗布され、剥離されるまでの間に皮膚中に浸透する。
【0004】
しかしながら、このような皮膜形成性塗布剤は、水系溶媒が蒸発することで皮膜が形成されるものであるため、皮膜形成までに長時間を要するという問題があった。また、頬と鼻の境目等の凹凸がある部位に塗布して皮膜を形成させる場合、部分的に皮膜が薄くなり、膜強度が弱くなって、剥離するときに、当該部分の皮膜に破れが生じ、皮膜が皮膚表面に残ってしまう場合があった。膜強度を上げるために塗布剤を厚く塗布すれば、皮膜形成に時間がかかってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2008−1620号公報
【特許文献2】特開昭58−216109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、皮膜形成性塗布剤の乾燥を促進して皮膜形成までの時間を短縮し、形成された皮膜を簡便に剥離できるようにする皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート、及び、この皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、皮膚上に皮膜形成性塗布剤を塗布して、皮膜形成性塗布剤の塗膜を形成し、該塗膜上に、少なくとも親水性高分子層を有するシートを貼付すると、前記塗膜の乾燥が促進されて皮膜形成性塗布剤の皮膜形成の時間が短縮されること、及び、貼付されたシートとともに皮膜形成性塗布剤の皮膜を、該皮膜が破れることなく簡便に剥離できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートが提供される
(1)少なくとも親水性高分子層を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
(2)親水性高分子層を2層以上有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
(3)最外層に透湿性支持体層をさらに有する(1)または(2)に記載の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
(4)ピールオフパック剤用剥離補助シートである(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
【0009】
本発明の第2によれば、下記(5)の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法が提供される。
(5)(i)皮膚に皮膜形成性皮膚塗布剤を塗布して、皮膚表面に皮膜形成性塗布剤の塗膜を形成する工程、(ii)前記皮膜形成性皮膚塗布剤の塗膜上に、(1)〜(4)のいずれかに記載の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを貼付する工程、及び(iii)前記皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートが貼付された皮膜形成性塗布剤を皮膚から剥離する工程、を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離シートを用いることにより、皮膜形成性塗布剤の乾燥を促進して、皮膜形成性塗布剤の皮膜形成までの時間を短縮し、形成された皮膜を該皮膜が破れることなく簡便に剥離することができる。
【0011】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離シートをピールオフパック剤用剥離補助シートとして用いる場合には、ピールオフパック剤の液だれを防止し、塗りムラを無くし、形成された皮膜を該皮膜が破れることなく、すなわち、パック剤を皮膚に残すことなく簡便に剥離(ピールオフ)することができる。
【0012】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離シートの使用方法によれば、皮膜形成性塗布剤の皮膜形成の時間を短縮でき、形成される皮膜形成性塗布剤の皮膜を皮膚に残すことなく、かつ該皮膜が破れることなく簡便に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、1)皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート、及び、2)皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法に、項分けして詳細に説明する。
【0014】
1)皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート
本発明の第1は、少なくとも親水性高分子層を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートである。
【0015】
(親水性高分子層)
親水性高分子層は、親水性高分子を主成分として含有する層である。
ここで、親水性高分子は、水溶性高分子又は水膨潤性高分子(高吸水性高分子)を意味する。
また、「主成分とする」とは、親水性高分子層が有する効果が阻害されない範囲で、他の成分を含有していてもよいという意味である。
【0016】
親水性高分子層中の親水性高分子の含有率は、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは、50〜100重量%である。親水性高分子の含有率があまりに低いと、吸水後の膜強度を保つことができないため好ましくない。
【0017】
水溶性高分子としては、例えば、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体等)、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、イソブチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等)又はこれらの塩等のカルボキシル基含有水溶性高分子;
ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン−スチレン共重合体、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等の水溶性ビニルポリマー;
ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体等の水溶性ポリアルキレンオキサイド;
メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;等が挙げられる。
【0018】
水膨潤性高分子としては、例えば、木粉、セルロース粉末等のセルロース;
デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、セルロース誘導体、カラゲーン、デキストラン、トラガカント、ゼラチン、ペクチン、ヒアルロン酸、ジェランガム、コラーゲン、カゼイン、キサンタンガム等の天然高分子;
架橋ポリアクリル酸等の架橋カルボキシビニルポリマー、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋物、架橋ポリエチレンオキサイド、これらの塩等の吸水性ポリマー;
等が挙げられる。
【0019】
架橋化は、架橋される分子の種類に応じた架橋剤によって行うことができる。例えば、カルボキシビニルポリマーは、多価金属化合物によって架橋することができる。多価金属化合物の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリミョウバン、塩化鉄ミョウバン、アンモニウムミョウバン、硫酸第二鉄、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0020】
これらの親水性高分子は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明においては、取り扱い容易性、高い強度の膜が得られる観点から、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等の水溶性高分子;デンプン及びその誘導体、架橋ポリアクリル酸等の架橋カルボキシビニルポリマー、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋物、架橋ポリエチレンオキサイド、これらの塩等の吸水性ポリマー等の水膨潤性高分子の少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0021】
親水性高分子層には、親水性高分子層が有する効果が阻害されない範囲で、用途に合わせて他の成分を含有させてもよい。他の成分としては、可塑剤、フィラー、顔料等が挙げられる。
可塑剤は、膜に柔軟性を持たせるために用いられる。具体的には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン及びソルビトール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖、ソルビトール等が挙げられる。
【0022】
フィラーは、皮膜形成性塗布剤をより乾燥しやすくするために用いられる。具体的には、タルク、シリカ等の無機フィラーが挙げられる。
顔料は、遮光性を持たせるために用いられる。具体的には、酸化チタン、べんがら等が挙げられる。
【0023】
親水性高分子層は、例えば、適当な支持シート上に、親水性高分子層形成用組成物を、グラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター等の公知の塗工装置を用いて均一に塗布、又は公知の噴霧装置を用いて均一に噴霧することにより、支持シート上に親水性高分子層形成用組成物の塗膜を形成したのち、溶媒を乾燥除去することにより形成することができる。
【0024】
用いる支持シートとしては、その表面上に親水性高分子層を形成することができるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルム;グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙等のラミネート紙等の紙を、必要に応じてシリコーン系剥離剤等で剥離処理したもの;等が挙げられる。
なお、支持シートは、積層時や皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート使用時には、剥離される。
【0025】
親水性高分子層形成用組成物は、親水性高分子、溶媒、及び所望により架橋剤等の他の成分を混合・撹拌して調製することができる。
【0026】
親水性高分子層形成用組成物の調製に用いる溶媒は、溶質の種類に応じて適宜選択することができる。その具体例としては、精製水、エタノール、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0027】
溶媒の使用量は、用いる親水性高分子の種類等にもよるが、通常、親水性高分子1重量部に対して、0.5〜50重量部、好ましくは5〜20重量部である。
【0028】
親水性高分子層形成用組成物の塗膜の乾燥温度は、通常50〜120℃、好ましくは60〜90℃である。乾燥時間は通常1〜15分間、好ましくは1〜10分間である。
【0029】
形成される親水性高分子層の坪量は、皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの層構成にもよるが、通常3〜500g/m、好ましくは10〜200g/mである。
【0030】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートとしては、少なくとも親水性高分子層を有するものであれば、その層構成に特に制限されない。
【0031】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートとしては、例えば、(1)親水性高分子層からなる単層のシート、(2)異なる2種以上の親水性高分子層からなる複層のシート、(3)1層の親水性高分子層と、透湿性支持体層からなる複層のシート、(4)異なる2種以上の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシート、等が挙げられる。
【0032】
(1)親水性高分子層からなる単層のシート
親水性高分子層からなる単層のシートとしては、前記支持シート上に形成された皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを単層のシートとして用いることができる。
また、親水性高分子が、それ自身で成膜性を有するものを、親水性高分子層からなる単層のシートとすることもできる。例えば、市販の親水性高分子を主成分とするシートを所望の厚さに積層してなるシートが挙げられる。具体的には、市販の厚みが20μmのオブラート(主成分:でんぷん)を複数枚重ね、加熱圧着して、あるいは軽く水で湿らせて圧着することにより、所望の厚み(通常、40〜160μm)を有する親水性高分子層からなる単層のシートを形成することができる。
【0033】
(2)異なる2種以上の親水性高分子層からなる複層のシート
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートは、親水性高分子層を2層以上有する複層のシートであってもよい。また、この場合、少なくとも1層の水溶性高分子(前記)を主成分とする親水性高分子層(以下、「水溶性高分子層」という。)と、少なくとも1層の水膨潤性高分子(前記)を主成分とする親水性高分子層(以下、「水膨潤性高分子層」という。)を有するものが好ましい。
【0034】
水溶性高分子層と水膨潤性高分子層からなる2層のシートを皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートとして用いる場合には、水膨潤性高分子層が最外層となるように、該皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを皮膜形成性塗布剤の塗膜上に貼り合せると、取り扱い性が向上するため好ましい。
【0035】
2種の親水性高分子層を積層する方法としては、特に制約はなく、例えば、支持シート付きの親水性高分子層の2種を、該親水性高分子層が内側に、支持シートが外側になるように重ね合わせ、上下方向より圧着する方法が挙げられる。
圧着する際の圧力は、通常1〜100N/cmである。
【0036】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートは、3層以上あるいは3種類以上の親水性高分子層が積層されたものであってもよい。例えば、水膨潤性高分子層−水溶性高分子層−水膨潤性高分子層の3層からなる皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート等であってもよい。
【0037】
3層の親水性高分子層が積層された層構成を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを製造する方法としては、例えば、前記2種類の親水性高分子層が積層された層構成を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート2枚を、同種類の親水性高分子層同士が互いに重ねあわされるようにして、貼りあわせる方法が挙げられる。
【0038】
(3)1層の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシート
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートは、前記親水性高分子層以外に透湿性支持体層を有するものであってもよい。なかでも、最外層に透湿性支持体層を有するものが好ましい。ここで最外層とは、皮膜形成性塗布剤と接触させる側の面とは反対側の面の層をいう。
【0039】
透湿性支持体層は、皮膜形成性塗布剤からの水系溶剤の蒸発を促進させ、皮膜形成までの時間をさらに短縮させる役割を果たす。また、透湿性支持体層を最外層とすることにより、親水性高分子層が有するべたつき感がなくなり、取り扱い性も向上する。
【0040】
透湿性支持体層を構成する透湿性支持体としては、紙、不織布、織布等の繊維質シート;ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ジエン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルム又はシート;及びこれらの2種以上の積層体;等が挙げられる。これらの中でも、透湿性が高く、かつ皮膚の凹凸にも追従する適度な剛軟度を有することから、不織布からなる層が好ましい。
【0041】
不織布としては、従来公知の不織布が特に制限なく用いられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;、ポリエチレンテレフタレート;ポリアミド等熱可塑性樹脂の単独樹脂から成形されるフィラメント、コア/シェル型、サイドバイサイド型等の構造の複合フィラメント等からなる不織布が挙げられる。
【0042】
透湿性支持体層の厚みは、特に限定されないが、取り扱い性や経済性等の観点から、通常、0.01mm〜3mmであるのが好ましい。
【0043】
1層の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシートを製造する方法としては、(i)透湿性支持体上に親水性高分子層形成用組成物を塗工して、前記透湿性支持体上に親水性高分子層を形成する方法、(ii)透湿性支持体に、支持シート付きの親水性高分子層を該親水性高分子層が内側になるように貼りあわせ、上下方向より圧着する方法が挙げられる。なかでも、均一な厚みの親水性高分子層を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを効率よく製造できることから、(ii)の方法が好ましい。
ここで、親水性高分子層形成用組成物、支持シート付きの親水性高分子層としては、上述したものと同様のものが使用できる。
【0044】
(4)異なる2種以上の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシート
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートは、異なる2種以上の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシートであってもよい。なかでも、最外層に、透湿性支持体層を有するものが好ましい。
【0045】
異なる2種以上の親水性高分子層としては、前記(2)異なる2種以上の親水性高分子層からなる複層のシートと同様の構成のものが挙げられる。
【0046】
また、透湿性支持体層としては、前記(3)の1層の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシートを構成する透湿性支持体層と同様のものが挙げられる。
【0047】
透湿性支持体層の厚みは、特に限定されないが、取り扱い性や経済性等の観点から、通常、0.01mm〜3mmであるのが好ましい。
【0048】
異なる2種以上の親水性高分子層と透湿性支持体層からなる複層のシートを製造する方法としては、異なる2種以上の親水性高分子層を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートと透湿性支持体とを貼りあわせ、上下方向より圧着する方法が挙げられる。
この場合、より優れた本発明の効果が得られる観点から、2種以上の親水性高分子層のうち、水溶性高分子層が透湿性支持体と重ねあわされるように両者を貼りあわせることが好ましい。
【0049】
本発明においては、上記(1)〜(4)の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの中でも、取り扱い容易性に優れ、皮膜形成性塗布剤の乾燥を促進して膜形成までの時間を短縮し、形成された皮膜が破れることなく該皮膜を簡便に剥離できることから、(2)または(3)の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートが好ましい。
【0050】
皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用前の水分含有率は、25重量%以下であるのが好ましい。水分含有率が25重量%以下の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを皮膜形成性塗布剤に貼り合せると、皮膜形成性塗布剤中の水系溶媒が皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートに迅速に移行するため、皮膜形成性塗布剤の皮膜形成の時間を短縮することができる。
【0051】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートは、ピールオフパック剤用剥離補助シートであるのが好ましい。
【0052】
本発明のピールオフパック剤用剥離補助シートをピールオフパック剤使用時に用いると、ピールオフパック剤の液だれを防止し、塗りムラを無くし、かつ、形成された皮膜が破れることなく剥離できるようにすることができる。
【0053】
2)皮膜形成性塗布剤の使用方法
本発明の第2は、(i)皮膚に皮膜形成性塗布剤を塗布して、皮膚表面に皮膜形成性塗布剤の塗膜を形成する工程、(ii)前記皮膜形成性塗布剤の塗膜上に、本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを貼付する工程、及び、(iii)前記皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート及び皮膜形成性塗布剤を皮膚から剥離する工程を有する、皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法である。
【0054】
用いる皮膜形成性塗布剤としては、ピールオフパック剤等が挙げられる。
工程(ii)において、皮膜形成性塗布剤を塗布した後には、速やかに本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを貼付するのが好ましい。
【0055】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを貼付する場合においては、該皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを、該シートの親水性高分子層が、皮膜形成性塗布剤の塗膜と重なるように貼付する。
【0056】
また、水溶性高分子層及び水膨潤性高分子層の両者を最外層に有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを用いる場合には、水溶性高分子層を、形成された皮膜形成性塗布剤の塗膜に貼り合せ、水膨潤性高分子層を最外層とすると、取り扱い性が向上するため好ましい。
【0057】
本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートは粘着性を有するため、塗布された皮膜形成性塗布剤に均一に密着する。そして、皮膜形成性塗布剤中の水系溶媒が皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートに移行し、乾燥が促進される。また、液だれや形成される皮膜のずれが防止される。
【0058】
貼付時間は、皮膜形成性塗布剤の種類や量等、皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの種類や厚み等によるが、皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを用いずに皮膜形成性塗布剤を塗布して乾燥させて皮膜を形成させる時間よりも短い時間とすることができる。
【0059】
工程(iii)において、形成された皮膜形成性塗布剤の皮膜を剥離する際には、本発明の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートが貼付されているため、皮膜形成性塗布剤の皮膜が破れることなく該皮膜を簡便に剥離することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0061】
(実施例1)
塩化カルシウム0.3重量部を精製水400重量部に溶解させ、ここに、撹拌下、ポリアクリル酸11重量部を添加し、全容を1時間撹拌した。得られた混合物に、ポリビニルアルコール34重量部を添加し、70℃で1時間撹拌後、グリセリン4.4重量部を添加し、塗工液Aを調製した。
【0062】
塗工液Aを、乾燥後の塗布量が100g/mとなるように、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの剥離処理面上に展延塗布し、80℃で加熱乾燥してシート1を作製した。
【0063】
(実施例2)
市販のオブラート(ピップフジモト社製、丸型、主成分:でんぷん)を、厚さ100μmになるように積層して圧着し、シート2を作製した。
【0064】
(実施例3)
ポリビニルアルコール10重量部を精製水80重量部に溶解させ、ここに、撹拌下、ポリ(酢酸ビニル−ビニルピロリドン)67重量部を添加した。さらに、グリセリン4重量部に、酸化チタン4重量部、タルク8.5重量部、シリカ6.5重量部、及びエタノール20重量部を分散させた分散液を添加して混合し、塗工液Bを調製した。
【0065】
塗工液Bを、乾燥後の塗布量が70g/mとなるように、剥離処理したPETフィルムの剥離処理面上に展延塗布し、70℃で加熱乾燥し、レイヤー1を作製した。
レイヤー1と、不織布(ポリエステル系繊維、米坪量:40g/m、厚さ:0.35mm)とを、レイヤー1の塗工液Bの塗膜面と不織布とが重なるように積層して圧着(圧力20N/cm)し、シート3を作製した。
【0066】
(実施例4)
実施例1と調製した塗工液Aを、乾燥後の塗布量が20g/mとなるように、剥離処理したPETフィルムの剥離処理面上に展延塗布し、80℃で加熱乾燥し、レイヤー2を作製した。
【0067】
精製水230重量部に酸化チタン2.4重量部を分散させた後、撹拌下、ポリビニルピロリドン78.0重量部を添加し、さらに30分間撹拌した。得られた混合物に、グリセリン22.0重量を添加して、塗工液Cを調製した。
【0068】
塗工液Cを、乾燥後の塗布量が50g/mとなるように、剥離処理したPETフィルムの剥離処理面上に展延塗布し、80℃で加熱乾燥し、レイヤー3を作製した。
レイヤー2とレイヤー3とを、レイヤー2の塗工液Aの塗膜面とレイヤー2の塗工液Cの塗膜面とが重なるように積層して圧着し、シート4を作製した。
【0069】
(実施例5)
実施例4と同様にしてシート4を2枚作製し、レイヤー3の塗工液Cの塗膜面側が互いに内側になるように積層して圧着し、シート5を作製した。
【0070】
次に、実施例1〜5で得られたシート(皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート)1〜5を用いて、以下の試験を行った。
なお、併せて、比較試験として、皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを使用しない場合(比較例1)、シートとして不織布(ポリエステル系繊維、米秤量:40g/m、厚さ:0.35mm、シート6)のみを使用する場合(比較例2)の試験も行った。
【0071】
(試験1)ピールオフパック皮膜剥離試験
パネラーの顔に2×2cmにカットした枠を載せ、その枠内に、下記に示すようにして調製したピールオフパック剤 1mlを均一に塗布した。その上にすばやく、2×2cmにカットした実施例1〜5及び比較例2のシート1〜6を、PETフィルムをすべて剥がし、それぞれ貼り付けた。なお、実施例3のシート3は、不織布を外側にしてレイヤー1側を、実施例4のシート4は、レイヤー2側を外側にしてレイヤー3側を貼り付けた。
【0072】
所定時間経過後(5分後、10分後、15分後)にシートを剥離し、剥離した後の2×2cmの範囲の皮膚にパックの残渣が残っている面積を確認し、2×2cmの面積中の残渣の面積の割合を算出し、以下の基準で1〜5で評価した。その結果を第1表に示す。
【0073】
5:10%より少ない
4:10%以上25%未満
3:25%以上50%未満
2:50%以上75%未満
1:75%以上
【0074】
また、剥離したときの、皮膜の破れ等を観察し、以下の基準で評価した。その結果を第1表に示す。
◎:破れなし
○:破れは生じたが一度に剥離できる程度
△:皮膜が2片以上に分離して、2回以上に分けないと剥離できない
×:皮膜が形成されておらず剥離できない
【0075】
〈ピールオフパック剤の調製〉
以下の成分を70℃で均一になるまで混練し、冷却してピールオフパック剤を調製した。
ポリビニルアルコール 15.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
グリセリン 3.0重量部
エタノール 10.0重量部
香料 0.5重量部
防腐剤 適量
精製水 66.5重量部
【0076】
【表1】

【0077】
第1表より、実施例1〜5のシートを用いた場合は、シートを用いない比較例1、シートとして不織布を用いた比較例2に比較して、短時間(5分後)で剥離してもピールオフパック剤の残渣の面積の割合が小さく、剥離時の破れも少なかった。また、実施例4,5のシートを用いると10分後には、その他の実施例のシートを用いても15分後には、ピールオフパック剤を破れなく剥離することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも親水性高分子層を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
【請求項2】
親水性高分子層を2層以上有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
【請求項3】
最外層に透湿性支持体層をさらに有する請求項1または2に記載の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
【請求項4】
ピールオフパック剤用剥離補助シートである請求項1〜3のいずれかに記載の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シート。
【請求項5】
(i)皮膚に皮膜形成性塗布剤を塗布して、皮膚表面に皮膜形成性塗布剤の塗膜を形成する工程、
(ii)前記皮膜形成性塗布剤の塗膜上に、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートを貼付する工程、および
(iii)前記皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートおよび皮膜形成性塗布剤を皮膚から剥離する工程
を有する皮膜形成性塗布剤用剥離補助シートの使用方法。

【公開番号】特開2009−235047(P2009−235047A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86702(P2008−86702)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】