説明

皮革様立毛シート

【課題】植毛加工による立毛シートにおいて、天然皮革様の優れた外観、触感および風合いと、高度な耐摩耗性を兼ね備えた皮革様立毛シートを提供する。
【解決手段】浸透防止処理2が施された繊維質基材1の浸透防止処理面に、ホットメルト樹脂からなる厚さ30〜200μmの接着層3を介して、繊度0.05〜0.6dtex、長さ0.1〜0.4mmのパイル4が植毛加工により植設されてなる皮革様立毛シートであって、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合が30〜75%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植毛加工により天然皮革様の外観を備えた立毛シートに関する。詳しくは、耐摩耗性に優れ、車両内装材、特に座席表皮材として好適に用いられる皮革様立毛シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮革様立毛シートを得る手段の一つとして、繊維質基材の表面に接着剤を介してパイル(短く切断された繊維)を植え付ける植毛加工が知られている。植毛加工によれば、緻密で、かつ、パイル長の短い立毛を基材表面に形成することができ、ヌバック調あるいはスエード調の高級感ある外観と、繊細で滑らかな触感を備えた立毛シートを製造することができる。しかしながら、接着剤によって固定されたパイルは、摩擦や衝撃によって脱落しやすく、耐摩耗性が悪いという問題があった。
【0003】
このような問題に対し、パイルの繊度や長さなどの特性値を特定することにより、耐摩耗性を改善しようとする試みが多数報告されている。例えば、特許文献1には、基材の表面に接着剤により多数の短繊維を植毛した植毛加工品において、単糸繊度0.3〜0.8d、パイル長0.4〜2.5mm、パイル長と植毛密度との積が40,000〜150,000の条件を満たす短繊維でパイルの80重量%以上を構成し、かつ、パイルを構成する短繊維を、基材の垂直方向に対して傾斜した立毛状態とすることにより、耐摩耗性および耐光性に優れたスエード調植毛加工品を得ることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、厚さ2mm以下の基布表面に、厚さ0.5mm以下の接着層を介して、長さ0.2〜0.4mmで平均繊度0.5〜2.0デニールであるセルロース系繊維からなる立毛を静電植毛により設けることにより、耐摩耗性、外観および風合いに優れたヌバック調立毛布帛を得ることが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、好ましくはゴム、プラスチックなどの成型品からなる基材に、パイル長が0.1〜2mmであり繊度が0.01〜0.7dであるパイルを植毛するに際し、該パイルと基材の接着部分において複数パイルを結束状態とすることにより、表面タッチがなめらかで、高級スエード外観を有するとともに、摩擦、摩耗などの耐久性に優れた植毛品を得ることが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および2のように、パイルの繊度や長さなどを特定するだけでは、高度な耐久性が求められる分野、例えば、車両内装用の部材として満足し得る耐摩耗性を得ることは困難であった。特に、昇降時に常に摩耗される座席表皮材としては、実用に耐えないものであった。また、特許文献3のように、パイルの根本部分が結束される構造は、基材が繊維質基材である場合には適さず、天然皮革様の柔軟な風合いを備えた立毛シートを得難いという問題があった。
【0007】
ところで、植毛加工において用いられる接着剤は、溶剤や水による溶液またはエマルジョンタイプのものが一般的である。このような接着剤の場合、パイルを植え付けた後の乾燥工程において、マイグレーションにより接着層の表面に微凹凸が形成され(図4参照)、摩擦係数が大きくなる結果、得られる皮革様立毛シートの耐摩耗性が悪くなるという問題があった。微凹凸が形成されると、接着層の厚さにバラツキが生じ、特に厚さが小さな部分では、パイルの固定さえも困難となる。また、パイルの脱落を防止するため、接着層の厚さを大きくする目的で塗布厚を大きくしようとすると、この種のタイプの接着剤は固形分が少ないため、乾燥時間を長くしなければならず、工程負荷が大きくなるという問題や、塗布厚が大きくなることでマイグレーションが起こりやすくなるという問題があった。さらに、この種のタイプの接着剤は粘度が低いため、繊維質基材に浸透し易く、風合いが硬化するという問題もあった。このように、溶液またはエマルジョンタイプの接着剤を用いる限り、繊維質基材の風合いを損なうことなく、耐摩耗性を得るに十分な厚さと、フラット表面を有する接着層を形成することは困難であった。
【0008】
以上説明したように、植毛加工による皮革様立毛シートの耐摩耗性を向上させるため、種々の検討がなされているものの、高度な耐久性が求められる分野において満足し得る耐摩耗性を備えた皮革様立毛シートは得られていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−162228号公報
【特許文献2】特開平6−116878号公報
【特許文献3】特開平10−168740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、植毛加工による立毛シートにおいて、天然皮革様の優れた外観、触感および風合いと、高度な耐摩耗性を兼ね備えた皮革様立毛シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、浸透防止処理が施された繊維質基材の浸透防止処理面に、ホットメルト樹脂からなる厚さ30〜200μmの接着層を介して、繊度0.05〜0.6dtex、長さ0.1〜0.4mmのパイルが植毛加工により植設されてなる皮革様立毛シートであって、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合が30〜75%であることを特徴とする皮革様立毛シートである。
上記皮革様立毛シートにおいて、ホットメルト樹脂は二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂であることが好ましい。
また、浸透防止処理は、離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗布し、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに繊維質基材に貼り合わせることにより浸透防止層を形成するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然皮革様の優れた外観、触感および風合いと、高度な耐摩耗性を兼ね備えた皮革様立毛シートを提供することができる。本発明の皮革様立毛シートは、衣料、鞄、靴、インテリア資材などとして、さらには高度な耐久性が求められる車両内装材、特には座席表皮材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の皮革様立毛シートは、浸透防止処理が施された繊維質基材の浸透防止処理面に、ホットメルト樹脂からなる厚さ30〜200μmの接着層を介して、繊度0.05〜0.6dtex、長さ0.1〜0.4mmのパイルが植毛加工により植設されてなる皮革様立毛シートであって、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合が30〜75%であることを特徴とするものである。
図1に本発明の皮革様立毛シートの断面概略図を、図2に本発明の皮革様立毛シートの断面電子顕微鏡写真を示す。
【0014】
繊維質基材に浸透防止処理を施すことにより、接着剤の基材への浸透を防止して、柔軟な風合いを保持するとともに、接着層の表面をフラットに形成することができるため、摩擦係数の増大およびそれに伴う耐摩耗性の低下を防止することができる。
また、接着剤として無溶媒のホットメルト樹脂を用いることにより、冷却固化時のマイグレーションが起こりにくく、接着層の表面をフラットに形成することができる。さらに、接着層の厚さを大きくして(30〜200μm)、パイルの長さに対する割合を大きくすることができるため(30〜75%)、パイルが接着層に深く埋設されて、耐摩耗性を向上させることができる。
また、パイルの繊度を0.05〜0.6dtex、長さを0.1〜0.4mmとすることにより、ヌバック調あるいはスエード調の外観と触感を表現することができる。
【0015】
本発明に用いられる繊維質基材は特に限定されるものでなく、織物、編物、不織布などの繊維質布帛や、天然皮革などを挙げることができ、目的に応じて適宜選択すればよい。なかでも、風合いの点から、編物が好ましく用いられる。繊維質布帛において繊維の材質は特に限定されるものでなく、綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、ナイロン、アクリル、ポリエステルなどの合成繊維など、従来公知の繊維を挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、高度な耐久性が求められる分野での使用を考慮すると、合成繊維が好ましく、ポリエステルがより好ましい。
また、天然皮革としては、牛、馬、豚、山羊、羊、鹿、カンガルーなどの哺乳類革、ダチョウなどの鳥類革など、従来公知の天然皮革を挙げることができる。これら天然皮革の原皮は、通常、鞣、再鞣、中和、染色、加脂、乾燥の各工程を経ることにより、クラストと称される半製品状態の皮革となる。次いで、このクラストの銀面層表面にバフィングを施した後、以下の製造工程に供される。
【0016】
本発明の皮革様立毛シートを製造するに当たっては、まず、上記繊維質基材に対し、浸透防止処理を施す。その態様は、接着剤の基材への浸透を防止することができる限り、特に限定されない。例えば、基材の一方の面にフィルムを貼り合わせたり、フィルム形成性樹脂を塗布したりすることにより、浸透防止層を別途設ける方法や、基材の全体または基材の一方の面に撥水剤などの樹脂を含浸または塗布することにより、基材そのものに浸透防止能を具備させる方法などを挙げることができる。なかでも、フィルムの貼り合わせにより浸透防止層を形成する方法が、浸透防止効果が高く、かつ、表面をフラットに仕上げることができるという点で好ましい。
【0017】
繊維質基材にフィルムを貼り合わせる方法としては、フィルムを接着剤を介して繊維質基材に貼り合わせたり(この場合、高粘度に調整した接着剤をフィルム側に塗布することにより、繊維質基材への接着剤の浸透を防止する)、フィルムを熱圧着により繊維質基材に貼り合わせたり、離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗布し、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに繊維質基材に貼り合わせたりする方法などを挙げることができる。なかでも、得られる皮革様立毛シートの風合いや耐摩耗性を考慮すると、離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗布し、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに繊維質基材に貼り合わせる方法が特に好ましい。以下、浸透防止処理として特に好ましい、前記方法について説明する。
【0018】
フィルム形成性樹脂の材質は特に限定されるものでなく、従来公知の各種合成樹脂を用いることができるが、皮革様立毛シートの風合いや耐摩耗性の点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。また、樹脂の形態としては、水系、溶剤系、無溶剤系(無溶媒系)、ホットメルト系のいずれも使用可能であるが、繊維質基材に貼り合わせる際、基材への浸透が少なく、皮革様立毛シートの風合いが良好であるという点から、ホットメルト系が好ましい。さらに、作業性、耐熱性の点から、二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂(詳細は、後述するものとする)が特に好ましい。このとき、接着層の形成に用いられるホットメルト樹脂に、ポリウレタン樹脂を選択すると、浸透防止層と接着層の密着性が向上し、高度な耐摩耗性が得ることができ好ましい。なお、浸透防止層を形成する樹脂と、接着層を形成する樹脂が同一となることを妨げない。
【0019】
離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗付する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、バーコーターまたはT−ダイコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも、均一な薄膜層の形成が可能であるという点から、ナイフコーターまたはコンマコーターを用いる方法が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる離型性基材は特に限定されるものでなく、フィルム形成性樹脂に対してそれ自体が離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよく、基材の形態としては、紙、布帛、フィルムなどを挙げることができる。例えば、フィルム形成性樹脂としてポリウレタン樹脂を用いる場合には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や、フッ素樹脂などからなる基材、あるいはこれらの樹脂を表面処理した基材を用いることができる。
離型性基材は凹凸模様を有していてもよく、このような離型性基材を用いることにより、植設されるパイルに微妙な高低差ができ、皮革様立毛シートの表面に意匠性を付与することができる。
【0021】
フィルム形成性樹脂の塗布厚は、所望するフィルムの厚さに応じて適宜設定する。すなわち、形成されるフィルムの厚さは、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。厚さが10μm未満であると、厚さの均一なフィルム形成が困難であり、接着剤の浸透を防止できない虞がある。厚さが200μmを超えると、皮革様立毛シートの風合いが硬化する虞がある。フィルム形成性樹脂の塗布厚を適宜設定することにより、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜150の厚さを有するフィルムを得る。
【0022】
離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗布した後、必要により、熱処理(乾燥を含む)などを行いフィルム形成を進めた後、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに繊維質基材に貼り合わせ、さらに必要により、熱処理(乾燥を含む)、エージング処理などを行い、フィルム形成を完了させる。
【0023】
フィルム形成後、離型性基材を剥離することにより、繊維質基材とフィルムの積層体が得られる。
【0024】
繊維質基材に浸透防止処理を施した後、特に好ましくは、離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗布し、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに繊維質基材に貼り合わせることにより、繊維質基材に浸透防止層を形成した後、次いで、繊維質基材の浸透防止処理面に、ホットメルト樹脂を塗布し接着層を形成する。
【0025】
本発明に用いられるホットメルト樹脂の材質は特に限定されるものでなく、TPR系、ポリアミド系、ポリウレタン系、エポキシ系、アクリル系など、従来公知の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、皮革様立毛シートの風合いや耐摩耗性の点から、ポリウレタン系が好ましい。さらに、作業性、耐熱性の点から、二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂(詳細は、後述するものとする)が特に好ましい。このように、接着剤として無溶媒のホットメルト樹脂を用いることにより、厚さが大きく、表面がフラットな接着層を形成することができ、耐摩耗性に優れた皮革様立毛シートとなる。
【0026】
ホットメルト樹脂には、必要に応じて、硬化剤、触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤などの任意成分を、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
繊維質基材の浸透防止処理面にホットメルト樹脂を塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、バーコーターまたはT−ダイコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも、均一な厚さの接着層の形成が可能であるという点から、バーコーターを用いる方法が好ましい。なお、ホットメルト樹脂は、温度制御可能な原料タンクにて流動可能に加熱溶融された後、ミシングヘッドにて他の原料と所定の割合で混合、撹拌されて、塗布装置に供給される。
【0028】
ホットメルト樹脂の加熱溶融温度は、樹脂の軟化温度よりも好ましくは20〜80℃、より好ましくは40〜60℃高い温度に設定する。加熱溶融温度がホットメルト樹脂の軟化温度より20℃未満で高い温度であると、樹脂の粘度が高く、塗布時の作業性が悪くなる虞がある。ホットメルト樹脂の軟化温度よりも80℃を超えて高い温度に加熱溶融すると、樹脂が劣化し、耐摩耗性が悪くなる虞がある。また、反応型樹脂にあっては、反応のコントロールが不可能となり、植毛状態にバラツキが生じる虞がある。
【0029】
ホットメルト樹脂の塗布厚は、所望する接着層の厚さに応じて適宜設定する。すなわち、形成される接着層の厚さは、30〜200μmであることが求められ、好ましくは40〜150μmである。厚さが30μm未満であると、パイルを接着層に十分に深く埋設することができず、十分な耐摩耗性が得られない虞がある。厚さが200μmを超えると、接着層の冷却固化に時間がかかり工程負荷が大きくなったり、皮革様立毛シートの風合いが硬化したりする虞がある。ホットメルト樹脂の塗布厚を適宜設定することにより、30〜200μm、好ましくは40〜150μmの厚さを有する接着層を得る。
【0030】
さらに、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合が30〜75%であることが求められ、好ましくは40〜60%である。この割合が30%未満であると、パイルが接着層に十分に深く埋設することができず、十分な耐摩耗性が得られない虞がある。この割合が75%を超えると、天然皮革様の触感が得られない虞がある。
【0031】
繊維質基材の浸透防止処理面にホットメルト樹脂を塗布した後、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに植毛加工によりパイルを植設する。
【0032】
本発明に用いられるパイルの材質は特に限定されるものでなく、綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、ナイロン、アクリル、ポリエステルなどの合成繊維など、従来公知の繊維を挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、高度な耐久性が求められる分野での使用を考慮すると、耐摩耗性、耐光性の点から合成繊維が好ましく、ポリエステルがより好ましい。
【0033】
パイルの繊度は、0.05〜0.6dtexであることが求められ、好ましくは0.1〜0.3dtexである。繊度が0.05dtex未満であると、糸切れが生じやすく、耐摩耗性、耐摩擦堅牢度、耐光性が悪くなる虞がある。繊度が0.6dtexを超えると、天然皮革様の触感が得られない虞がある。
【0034】
パイルの長さは、0.1〜0.4mmであることが求められ、好ましくは0.2〜0.3mmである。長さが0.1mmについては、現在、製造可能なパイルの下限値、具体的には、カッターにて切断可能なカットパイルの下限値であり、0.1mm未満のパイルが製造可能になればこの限りではない。パイルの長さが短くなるほど、高級感あるヌバック調の外観、触感表現を得る効果が期待されることから、今後の使用可能性が高い。一方、長さが0.4mmを超えると、接着層から突出する部分(埋設されていない部分)が長くなるため、天然皮革様の外観や触感が得られない虞がある。また、手で触れた部分のパイルが倒れて白っぽく変色して見える、所謂フィンガーマークが生じやすくなり、外観品位が悪くなる虞がある。
【0035】
上記数値範囲を満足する限り、繊度や長さの異なるパイルを2種以上組み合わせて用いてもよく、また、1種単独で用いてもよい。繊度や長さの異なるパイルを2種以上組み合わせて用いることにより、より天然皮革に近い外観や触感が得られ好ましい。
【0036】
パイルの材料は特に限定されない。例えば、パイルの材質が再生繊維や半合成繊維、合成繊維などのいわゆる化学繊維である場合、繊度が0.05〜0.6dtexである単糸から構成されるマルチフィラメントを材料とすることができる。なかでも、後処理にて極細化可能な複合繊維、例えば、海島型複合繊維や剥離分割型複合繊維を材料とし、以下の工程を経ることにより好ましく製造することができる。すなわち、(1)押切式ギロチンカッターにて切断し短繊維化する工程、(2)染色する工程、(3)アルカリ減量により極細化する工程、(4)分離性、飛翔性を向上させるため、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸化合物や、蟻酸カリウム、酢酸カリウム等の水溶性カリウム化合物などの電着処理剤を付与する工程、(5)ミスカット品を除去するため、ふるい分けする工程、などであり、これらの順序や回数は特に限定されない。例えば、繊維を染色後に短繊維化しても(2→1→3→4→5)、極細化後に短繊維化しても(2→3→1→4→5)、極細化後に染色しても(1→3→2→4→5)、ふるい分け後に染色しても(1→3→4→5→2)、いずれの順序でなされてもよく、また、ふるい分けを複数回行うことは長さの均一なパイルを得るうえで好ましく、その前工程として電着処理を行うとともに、静電植毛による場合は、最後に電着処理を行うのが一般的である。
【0037】
上記工程を経て製造されたパイルは、植毛加工により、繊維質基材の浸透防止処理面に形成された接着層に植設される。植毛方法は特に限定されるものでなく、静電植毛、散布植毛、吹き付け植毛などの方法を採用することができる。なかでも、パイルを接着層に深く埋設することができ、高度な耐摩耗性が得られるという点から、静電植毛が好ましく採用される。図3に、一般的な静電植毛装置の概略図を示す。
【0038】
接着剤としてホットメルト樹脂が塗布された繊維質基材を、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに、図3に示す静電植毛装置に投入する。
図3において、パイル投下装置5の底部に設けられた陽電極6と陰電極7との間に静電界を形成し、パイル4に陽電化を付与してパイル4を力線に沿って高速で下方に推進させる。パイル4は陰電極7上部を水平に移動する基材1の接着層3に突き刺さり、パイル4は接着層に植設される。次いで、パイルが植設された基材1は、後方の吸引装置8に導かれ、植設されなかった余剰パイルが除去される。
【0039】
植設されたパイルの密度は、5〜200g/mであることが好ましく、より好ましくは10〜100g/mである。密度が5g/m未満、もしくは、200g/mを超えると、天然皮革様の外観や触感が得られない虞がある。
【0040】
次いで、必要により、熱処理などを行った後、冷却し、ホットメルト樹脂を固化させ、さらに必要により、エージング処理などを行う。次いで、ブラッシングによりさらなる余剰パイルを除去したり、バフィングによりパイルの長さを揃えたりして、本発明の皮革様立毛シートを得る。
【0041】
本発明の皮革様立毛シートは、衣料、鞄、靴、インテリア資材などとして、さらには高度な耐久性が求められる車両内装材、特には座席表皮材として好適に用いることができる。
【0042】
以下、浸透防止層を形成する樹脂として、また、接着層を形成する樹脂として、好ましく用いられる二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂について説明する。
ポリウレタン樹脂は、周知の通り、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する高分子化合物の総称であり、一般にポリオールとポリイソシアネートを反応(架橋・硬化反応)させることによって製造される。ポリオールとポリイソシアネートの反応をほぼ完結させ、ポリマー化した状態で(すなわち、ポリウレタン樹脂として)提供される一液型に対し、二液硬化型は、使用時にポリオールとポリイソシアネートを反応させるもので、通常、ポリオールとポリイソシアネートの反応を適当なところで止めたウレタンプレポリマー(主剤)と、ウレタン硬化剤の二液からなる。また、ホットメルト性は、分子構造に起因する性質で、常温では固体ないしは基材に塗布困難な程度に粘調な状態であるが、熱を加えると溶融して液状になり、冷却により再度凝集力が発現する性質をいう。
【0043】
二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂は、無溶媒のホットメルト樹脂であるが故に、乾燥工程が不要となって、工程負荷を軽減することができる。また、浸透防止層として繊維質基材に貼り合わせる際、基材への浸透が少なく、皮革様立毛シートの風合いを硬化することがない。さらに、冷却固化時のマイグレーションが起こりにくく、均一な層形成が可能となる。この性質は、接着層の形成に特に有利で、表面をフラットに形成することができるため、摩擦係数の増大およびそれに伴う耐摩耗性の低下を招くことがない。そしてさらに、接着層の厚さを大きくして、パイルを深く埋設することができるため、耐摩耗性を向上させることができる。
【0044】
また、二液硬化型であるが故に、一液型と比較して低い温度で加工に適した粘性が得られるため、作業性や加工性が良く、工程負荷を軽減することができる。それでいて硬化後の軟化温度は高く、耐熱性に優れている。
【0045】
主剤であるホットメルトウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られ、製造時のポリオールとポリイソシアネートの比率によって、分子末端に水酸基を有するホットメルトウレタンポリオールプレポリマーと、分子末端にイソシアネート基を有するホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーの2つがある。浸透防止層の形成に用いる場合は、樹脂層が発泡しやすく、触感や風合いが良好なホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーが好ましく、接着層の形成に用いる場合は、樹脂層が発泡しにくく、耐摩耗性の低下が少ないホットメルトウレタンポリオールプレポリマーが好ましい。
【0046】
本発明に用いられるホットメルトウレタンプレポリマーは、例えば、特開2003−49147号公報、特開2005−36234号公報に記載のように、従来公知のポリオールおよびポリイソシアネートを原料とし、従来公知の方法により適宜製造することができる。
【0047】
ホットメルトウレタンプレポリマーの軟化温度は、30〜100℃であることが好ましく、より好ましくは40〜70℃である。軟化温度が30℃未満であると、硬化して得られるポリウレタン樹脂の軟化温度が低く、耐熱性や強度が不良となる虞がある。軟化温度が100℃を超えると、加工に適した粘性を得るのに高温を要し、作業性や加工性が悪く、工程負荷が大きくなる虞がある。
【0048】
次に、ウレタン硬化剤であるが、ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリオールプレポリマーを用いる場合には、ウレタン硬化剤としてポリイソシアネートを用い、ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーを用いる場合には、ウレタン硬化剤としてポリオールを用いる。これらポリオールおよびポリイソシアネートは、従来公知の化合物のなかから、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0049】
ウレタン硬化剤の使用量は、ホットメルトウレタンプレポリマー100重量部に対して、3〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは20〜40重量部である。使用量が3重量部未満であると、未反応のホットメルトウレタンプレポリマーが残り、硬化して得られるポリウレタン樹脂の物性が不良となる虞がある。使用量が50重量部を超えると、硬化反応が進みすぎて風合いが硬化したり、未反応のウレタン硬化剤が残り、硬化して得られるポリウレタン樹脂の物性が不良となったりする虞がある。
【0050】
浸透防止層の形成においては、加熱溶融状態にあるホットメルトウレタンプレポリマー(このときの加熱溶融温度は通常、30〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲で設定される)と、ウレタン硬化剤を適宜混合したもの(以下、「プレポリマー/硬化剤混合物」と表記する場合がある)を離型性基材に塗布した後、好ましくは熱処理を行う。ホットメルトウレタンプレポリマーとウレタン硬化剤の硬化反応は常温で進行するため、熱処理は必ずしも要さないが、熱処理により硬化反応が促進されるため、生産効率の点では熱処理を行うことが好ましい。特に、ホットメルトウレタンプレポリマーとしてホットメルトウレタンポリオールプレポリマーを用いる場合には、硬化反応が促進されることにより加工安定性が向上するため、熱処理を行うことが好ましい。
【0051】
このときの熱処理温度としては、選択するプレポリマーやウレタン硬化剤、任意で用いられる添加剤、塗布厚などによって適宜選択可能であるが、60〜180℃であることが好ましく、より好ましくは80〜130℃である。熱処理温度が60℃未満であると、熱処理を行うことによる反応促進効果が十分に得られない虞がある。熱処理温度が180℃を超えると、硬化反応のコントロールができず加工安定性に欠ける虞がある。
また、熱処理時間は2〜20分間であることが好ましく、より好ましくは3〜10分間である。熱処理時間が2分間未満であると、熱処理を行うことによる反応促進効果が十分に得られない虞がある。熱処理時間が20分間を超えると、硬化反応が進みすぎて繊維質基材との接着性が悪くなる虞がある。
【0052】
次いで、プレポリマー/硬化剤混合物ないしポリウレタン樹脂層が粘調性を有する状態のうちに、繊維質基材に貼り合わせ、室温まで冷却し、エージング処理することにより、プレポリマーとウレタン硬化剤の硬化反応を完結させる。
【0053】
ホットメルトウレタンポリオールプレポリマーとウレタン硬化剤の反応速度は、選択するプレポリマーや任意で用いられる添加剤(特にウレタン化触媒)の種類や量によって大きく変動するため、選択する条件によってエージング処理条件を適宜設定する必要があるが、通常、室温で1日〜1週間程度行われる。この過程で、プレポリマーとウレタン硬化剤の硬化反応が完結し、ポリウレタン樹脂フィルムよりなる浸透防止層が形成される。
【0054】
接着層の形成においても、繊維質基材の浸透防止処理面にプレポリマー/硬化剤混合物を塗布し、パイルを植設した後、好ましくは熱処理を行って硬化反応を促進する。このとき、パイルの脱落や毛倒れを防止するため、硬化反応を完結させておくことがより好ましい。次いで、室温まで冷却し、必要に応じてエージング処理する。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」は重量基準であるものとする。また、得られた皮革様立毛シートの評価は以下の方法に従った。
【0056】
[耐摩耗性]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片を、タテ方向、ヨコ方向それぞれ1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚さ10mmの大きさのウレタンフォームを添えて、平面摩耗試験機T−TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定する。綿布をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nを掛けて試験片を摩耗する。摩擦子は試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで10000回往復摩耗する。摩耗後の試験片を目視にて観察し、下記の基準に従って判定した。
5:表面状態に変化がない
4:ややパイルの脱落と毛倒れがある
3:パイルの脱落と毛倒れがある
2:パイルの脱落と毛倒れが激しい
1:パイルがほとんど脱落している
【0057】
[外観]
官能評価を行い、下記の基準に従って判定した。
○:ヌバック調あるいはスエード調の緻密な外観を有する
△:ヌバック調あるいはスエード調の外観をやや欠く
×:ヌバック調あるいはスエード調の外観が全くなく、毛布調の外観を有する
【0058】
[触感]
官能評価を行い、下記の基準に従って判定した。
○:ヌバック調あるいはスエード調の繊細で滑らかな触感を有する
△:ヌバック調あるいはスエード調の触感をやや欠く
×:ヌバック調あるいはスエード調の触感が全くなく、ざらつきのある触感を有する
【0059】
[風合い]
官能評価を行い、下記の基準に従って判定した。
○:ヌバック調あるいはスエード調の柔軟な風合いを有する
△:ヌバック調あるいはスエード調の風合いをやや欠く
×:ヌバック調あるいはスエード調の風合いが全くなく、硬い風合いを有する
【0060】
ホットメルトウレタンプレポリマーは以下のように製造した。
[製造例1]
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、数平均分子量が3000のポリエステルポリオールを10部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を11部入れて水酸基が無くなるまで80℃にて攪拌し、ホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマーを得た(軟化温度:60℃)。
【0061】
[製造例2]
60℃に保温した1リットルの4ツ口フラスコに、数平均分子量が2000のポリエステルポリオールを80部、数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを50部、数平均分子量が1000のポリエーテルポリオールを10部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を15部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し、ホットメルトウレタンポリオールプレポリマーを得た(軟化温度:40℃)。
【0062】
パイルは以下のように製造した。
[製造例3]
84dtex/300f(単糸繊度0.28dtex)のポリエステルマルチフィラメントを、ギロチンカッターにて0.2mmの長さ(カット長)に切断した。分散染料を用いて130℃で60分間染色し、還元洗浄後、pHを4に調整した電着処理液(ケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、帯電防止剤含有)に浸漬し、次いで乾燥し、さらにふるいで選別してパイルを得た。
【0063】
[製造例4]
カット長を0.1mmとした以外は、製造例3と同様にしてパイルを得た。
【0064】
[製造例5]
カット長を0.4mmとした以外は、製造例3と同様にしてパイルを得た。
【0065】
[製造例6]
84dtex/144f(単糸繊度0.57dtex)のポリエステルマルチフィラメントを用いた以外は、製造例3と同様にしてパイルを得た。
【0066】
[製造例7]
カット長を0.6mmとした以外は、製造例3と同様にしてパイルを得た。
【0067】
[製造例8]
84dtex/120f(単糸繊度0.69dtex)のポリエステルマルチフィラメントを用いた以外は、製造例3と同様にしてパイルを得た。
【0068】
[製造例9]
海成分としてポリスチレン45部、島成分としてポリエチレンテレフタレート55部からなる、繊度3dtex、30島の海島型複合繊維を用い、製造例3と同様に処理した。ふるいで選別後、酢酸10g/Lの水溶液中、120℃で30分間処理することにより海成分を除去して分割極細化後、乾燥し、繊度0.05dtexのパイルを得た。
【0069】
[製造例10]
36島の海島型複合繊維を用いた以外は、製造例9と同様にして繊度0.04dtexのパイルを得た。
【0070】
[実施例1]
処方1
ホットメルトウレタンポリイソシアネートプレポリマー 100部
(100℃に加熱溶融)
ウレタン硬化剤 15部
(40℃に加熱溶融した数平均分子量2000のポリエステルポリオール)
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、大日本インキ化学工業株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0071】
処方2
ホットメルトウレタンポリオールプレポリマー 100部
(60℃に加熱溶融)
ウレタン硬化剤 15部
(40℃に加熱溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、大日本インキ化学工業株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
【0072】
上記処方1に従い調製したプレポリマー/硬化剤混合物を、無地の離型紙(EV130TPD、リンテック株式会社製)に、コンマコーターにて厚さが100μmとなるようにシート状に塗布し、該プレポリマー/硬化剤混合物が粘調性を有する状態のうちにポリエステルトリコット布に貼り合わせ、マングルにて5kg/mの荷重で圧締し、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で1日間エージング処理して、厚さ120μmの浸透防止層を形成した。
【0073】
次いで、離型紙を剥離し、露出した浸透防止層表面に、接着剤として、上記処方2に従い調製したプレポリマー/硬化剤混合物を、No.34のバーコーターにて厚さが80μmとなるように塗布し、該プレリマー/硬化剤混合物が粘調性を有する状態のうちに、製造例3のパイルを図3に示す静電植毛装置により、密度が30g/mとなるように植設した。次いで、乾燥機にて120℃で10分間熱処理し、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で1日間エージング処理して、皮革様立毛シートを得た。形成される接着層の厚さは80μm、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合は40%であった。
【0074】
[実施例2〜9および比較例1〜7]
接着層の厚さ、パイルの繊度および長さ、ならびに、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合を表1の条件とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9および比較例1〜7の皮革様立毛シートを得た。
【0075】
[実施例10]
処方3(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)
顔料コンク液 10部
(LCC FFカラー YELLOW F3R)
フィラー剤 10部
(LCC Filler MK−45)
アクリルエマルジョン 30部
(LCC BINDER SX−707)
ウレタンエマルジョン 30部
(LCC BINDER UB−1100)
レベリング剤 2部
(LCC ASSISTER RL)
増粘剤 適量
(LCC Thickener NA−3)
水 適量
増粘剤および水の量を調整することにより、カップ粘度計(アネスト岩田株式会社製)による粘度を45秒に調整した。
【0076】
上記処方3に従い調製した樹脂液を、バフィングが終了した天然皮革(成牛皮)に、リバースロールコーターにてウェット重量が80g/mとなるように塗布し、乾燥機にて80℃で5分間熱処理して、厚さ25μmの浸透防止層を形成した。これ以降は、実施例1と同様にして皮革様立毛シートを得た。
【0077】
上記実施例および比較例の皮革様立毛シートについて、評価した結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の皮革様立毛シートの断面概略図である。
【図2】本発明の皮革様立毛シートの断面電子顕微鏡写真である。
【図3】静電植毛装置の概略図である。
【図4】従来の皮革様立毛シートの断面電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0080】
1 ・・・ 繊維質基材
2 ・・・ 浸透防止処理層
3 ・・・ 接着層
4 ・・・ パイル
5 ・・・ パイル投下装置
6 ・・・ 陽電極
7 ・・・ 陰電極
8 ・・・ 吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透防止処理が施された繊維質基材の浸透防止処理面に、ホットメルト樹脂からなる厚さ30〜200μmの接着層を介して、繊度0.05〜0.6dtex、長さ0.1〜0.4mmのパイルが植毛加工により植設されてなる皮革様立毛シートであって、パイルの長さに対する接着層の厚さの割合が30〜75%であることを特徴とする皮革様立毛シート。
【請求項2】
ホットメルト樹脂が二液硬化型ホットメルトポリウレタン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の皮革様立毛シート。
【請求項3】
浸透防止処理が、離型性基材にフィルム形成性樹脂を塗布し、該樹脂が粘調性を有する状態のうちに繊維質基材に貼り合わせることにより浸透防止層を形成するものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の皮革様立毛シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−24271(P2009−24271A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186780(P2007−186780)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】