説明

盗聴器検出装置および盗聴器検出方法

【課題】盗聴器が設置されている可能性がある領域を簡便に特定することが可能な盗聴器検出装置および盗聴器検出方法を提供する。
【解決手段】盗聴器検出装置1は、音声出力部21〜26と、音声出力制御部11と、受信部30と、音声比較部12と、盗聴器有無判定部13と、を備え、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26がそれぞれ異なる態様で被検出音声S1〜S6を出力するように複数の音声出力部21〜26を制御し、盗聴器有無判定部13は、受信音声と一致した被検出音声S1〜S6が複数の音声出力部21〜26のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗聴器を検出する盗聴器検出装置および盗聴器検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盗聴器の発する電波を受信して盗聴器を検出する盗聴器検出装置が、各種販売されている。このような盗聴器検出装置は、単に特定の周波数帯域の電波の強弱から盗聴器を検出する簡易的なものから、広帯域の電波を検出可能であると共に、受信した電波を音声信号に復調して盗聴された音声を聞き取ることが可能な受信機タイプのものまで、様々な種類が存在している。
【0003】
また、スピーカ等から音声を出力し、受信した電波にこの音声が含まれるか否かによって盗聴器を検出するタイプの盗聴器検出装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなタイプの盗聴器検出装置によれば、周囲が無音状態のときには電波を発しないVOX機能付きの盗聴器であっても比較的容易に検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−139768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような従来の盗聴器検出装置では、複数の部屋に盗聴器が設置されている可能性がある場合、検出装置を移動させて一部屋ずつ個別に検出作業を行わなければならず、非常に手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、部屋同士を仕切る壁が薄いような場合には、検出対象の部屋において検出装置が出力した音声に対し、隣の部屋に設置された盗聴器が反応することがあり、盗聴器が設置されている場所を特定することが困難となる場合があった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、盗聴器が設置されている可能性がある領域を簡便に特定することが可能な盗聴器検出装置および盗聴器検出方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、音声を出力する複数の音声出力部と、前記複数の音声出力部を制御して被検出音声を出力させる音声出力制御部と、電波を受信する受信部と、前記受信部が受信した電波を復調した受信音声を前記被検出音声と比較する音声比較部と、前記受信音声が前記被検出音声と一致した場合に盗聴器が存在していると判定する盗聴器有無判定部と、を備え、前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部がそれぞれ異なる態様で被検出音声を出力するように前記複数の音声出力部を制御し、前記盗聴器有無判定部は、前記受信音声と一致した被検出音声が前記複数の音声出力部のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定することを特徴とする、盗聴器検出装置である。
【0009】
(2)本発明はまた、前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なる前記被検出音声を出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、上記(1)に記載の盗聴器検出装置である。
【0010】
(3)本発明はまた、前記被検出音声は、複数の周波数の信号音を組み合わせて構成される合成信号音であり、前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なる組合せの合成信号音を被検出音声として出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、上記(2)に記載の盗聴器検出装置である。
【0011】
(4)本発明はまた、前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なる出力パターンの前記被検出音声を出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、上記(1)に記載の盗聴器検出装置である。
【0012】
(5)本発明はまた、前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なるタイミングで前記被検出音声を出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、上記(1)に記載の盗聴器検出装置である。
【0013】
(6)本発明はまた、前記盗聴器有無判定部は、前記被検出音声と一致した前記受信音声の強度に基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定することを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の盗聴器検出装置である。
【0014】
(7)本発明はまた、前記盗聴器有無判定部は、異なる前記音声出力部から出力された被検出音声と一致する複数の受信音声の強度分布に基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定することを特徴とする、上記(6)に記載の盗聴器検出装置である。
【0015】
(8)本発明はまた、予め設定した周期で前記音声出力制御部、前記音声比較部、および前記盗聴器有無判定部を動作させ、盗聴器の検出を定期的に実行する定期動作制御部を、さらに備えることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の盗聴器検出装置である。
【0016】
(9)本発明はまた、前記複数の音声出力部の中から前記被検出音を出力させる前記音声出力部を少なくとも1つ選択可能な選択操作部を、さらに備えることを特徴とする、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の盗聴器検出装置である。
【0017】
(10)本発明はまた、複数の異なる位置からそれぞれ異なる態様で被検出音声を出力するステップと、受信した電波から復調した受信音声と前記被検出音声を比較するステップと、前記受信音声と前記被検出音声が一致した場合に、前記受信音声と一致した被検出音声が前記複数の異なる位置のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定するステップと、を有することを特徴とする、盗聴器検出方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の盗聴器検出装置および盗聴器検出方法によれば、盗聴器が設置されている可能性がある領域を簡便に特定することが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る盗聴器検出装置1の構成を示した概略図である。
【図2】(a)被検出音声の構成をマトリクス表で示した図である。(b)被検出音声を異なる出力パターンの音声から構成した場合の一例を示した図である。(c)被検出音声の出力タイミングを異ならせた場合の一例を示した図である。
【図3】盗聴器の検出動作の手順を示したフローチャートである。
【図4】(a)複数の音声出力部を1つの部屋に配置した例を示した概略図である。(b)各被検出音声と一致する受信音声の強度分布の一例を示した図である。
【図5】制御部と複数の音声出力部および受信部をインターネットを介して接続した例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る盗聴器検出装置1の構成を示した概略図である。同図に示されるように、盗聴器検出装置1は、盗聴器検出装置1全体を制御する制御部10と、盗聴器に検出させる音声を出力する複数の音声出力部21〜26と、盗聴器の発する電波を受信する受信部30とを備えて構成されている。
【0022】
本実施形態では、6つの異なる部屋R1〜R6について盗聴器の検出を行うことが可能なように、各部屋R1〜R6に配置される6つの音声出力部21〜26を盗聴器検出装置1に備えた例を示している。なお、音声出力部21の個数が6に限定されないことは、言うまでもない。
【0023】
制御部10は、盗聴器検出装置1全体を制御して盗聴器検出動作を実行するものである。制御部10は、CPU、ROMおよびRAM等を備えると共に、必要に応じてフラッシュメモリやハードディスク等の記憶手段を備える演算処理装置から構成されている。また、制御部10は、CPUによるソフトウェアの実行または専用の回路から構成される機能構成として、音声出力制御部11と、音声比較部12と、盗聴器有無判定部13と、定期動作制御部14と、選択操作部15とを備えている。さらに、制御部10は、各種情報を入力するための入力部16、および各種情報を表示する表示部17を備えている。
【0024】
音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26を制御して盗聴器に検出させる被検出音声S1〜S6を出力させるものである。音声出力制御部11は、ROMやフラッシュメモリ等に記憶された音声データを参照して被検出音声S1〜S6の音声信号を各音声出力部21〜26に送信する。本実施形態では、盗聴器が検出した音声が複数の音声出力部21〜26のいずれから出力されたものであるかを識別するために、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26にそれぞれ異なる被検出音声S1〜S6を発生させるように構成されている。
【0025】
なお、音声出力制御部11は被検出音声S1〜S6のいずれを出力するかを指示する信号を各音声信号出力部21〜26に送信し、各音声出力部21〜26が受信した信号に基づいて被検出音声S1〜S6のいずれかを生成して出力するようにしてもよい。また、各音声出力部21〜26を特定の被検出音声S1〜S6のみを出力可能に構成し、音声出力制御部11は音声出力を指示する信号を各音声出力部21〜26に送信するようにしてもよい。また、音声出力制御部11は受信部30が受信した電波を復調した受信音声をそのまま出力するように指示してもよい。
【0026】
図2(a)は、被検出音声S1〜S6の構成をマトリクス表で示した図である。本実施形態では、被検出音声S1〜S6を2つの異なる周波数の信号音を合成した合成信号音から構成している。具体的には、同図に示されるように、周波数A〜Eの5つの異なる周波数をそれぞれ異なる組み合わせで合成することにより、6つの異なる被検出音声S1〜S6を構成している。例えば、被検出音声S1は周波数Aの信号音と周波数Dの信号音を組み合わせた合成信号音であり、被検出音声S5は周波数Bの信号音と周波数Eの信号音を組み合わせた合成信号音となっている。
【0027】
このように、被検出音声を合成信号音から構成することにより、多数(例えば数十〜数百個)の音声出力部に対しても異なる被検出音声を設定することが可能となる。なお、被検出音声は、3つ以上の異なる周波数の信号音を合成した合成信号音から構成されるものであってもよい。また、音声出力部の個数が少ない場合には、被検出音声を特定周波数の単一の信号音から構成してもよい。
【0028】
また、被検出音声S1〜S6は、音声出力部21〜26のいずれから出力されたものであるかを識別可能なものであればよいため、その他の形態の互いに異なる音声から被検出音声S1〜S6を構成するようにしてもよい。例えば、被検出音声S1を人間が発音する「アー」という音声から構成し、被検出音声S2を人間が発音する「イー」という音声から構成するというようにしてもよいし、被検出音声S1をバイオリンが奏でる音楽から構成し、被検出音声S2をピアノが奏でる音楽から構成するというようにしてもよい。
【0029】
さらに、被検出音声S1〜S6は、例えばモールス符号のように、出力パターンを異ならせることによって互いを識別可能に構成されるものであってもよい。図2(b)は、被検出音声S1〜S6を異なる出力パターンの音声から構成した場合の一例を示した図である。同図に示されるように、例えば被検出音声S1を短音の繰り返しから構成し、被検出音声S2を長音の繰り返しから構成し、被検出音声S3を長音と単音の交互の繰り返しから構成し、といったように、異なる出力パターンの音声から被検出音声S1〜S6を構成してもよい。
【0030】
また、被検出音声S1〜S6の出力タイミングを異ならせることにより、互いを識別可能とするようにしてもよい。図2(c)は、被検出音声S1〜S6の出力タイミングを異ならせた場合の一例を示した図である。同図に示されるように、被検出音声S1を所定時間出力した後に、所定の間隔を経て被検出音声S2を所定時間出力し、その後所定の間隔を経て被検出音声S3を所定時間出力し、といったように、被検出音声S1〜S6を異なるタイミングで出力するようにしてもよい。
【0031】
また、被検出音声S1〜S6は、人間の可聴域内の音に限定されるものではなく、人間の可聴域外の音や、若年者のみが聞き取り可能ないわゆるモスキート音等であってもよい。このように、被検出音声S1〜S6を人間(または、特定の人間)には聞き取り不可能な音から構成した場合、被検出音声S1〜S6を出力することによる周囲への影響(騒音被害等)を低減することができるため、例えば会議中にリアルタイムで盗聴器検出を行う等、盗聴器検出を実行するタイミングの選択の幅を広げることが可能となる。また、盗聴器を設置した者に気付かれることなく、盗聴器の検出を行うことが可能となる。
【0032】
また、例えば盗聴器の検出を昼間に行う場合には人間の可聴域外の音から構成した被検出音声S1〜S6を使用し、盗聴器の検出を夜間に行う場合には人間の可聴域内の音から構成した被検出音声S1〜S6を使用する等、盗聴器の検出を行うタイミングに応じて使用する被検出音声S1〜S6を変更するようにしてもよい。
【0033】
図1に戻って、音声比較部12は、受信部30が受信した電波を復調した受信音声と被検出音声S1〜S6を比較し、受信音声が被検出音声S1〜S6のいずれかと一致するか否か、すなわち受信音声が盗聴器の発した電波であるか否かを判定するものである。音声比較部12は、受信部30を制御し、例えばVHF帯やUHF帯等の所定の帯域の電波をスキャンさせると共に、所定の閾値以上の強度の電波を受信した場合にはこれを復調した受信音声とROMやフラッシュメモリ等に記憶された音声データに基づく被検出音声S1〜S6の波形を比較し、受信音声と被検出音声S1〜S6のいずれかが一致するか否かを判定するように構成されている。受信音声と被検出音声S1〜S6のいずれかが一致した場合には、その旨がRAMやフラッシュメモリ等の記憶手段に記憶される。
【0034】
盗聴器有無判定部13は、音声比較部12において受信音声と被検出音声S1〜S6のいずれかが一致した場合に盗聴器が存在していると判定し、受信音声と被検出音声S1〜S6のいずれが一致したかに基づいて、盗聴器が設置されている可能性が高い領域を特定するものである。例えば、受信音声と被検出音声S3が一致した場合には、被検出音声S3を出力した音声出力部23の近傍の領域を盗聴器が存在している可能性が高い領域として特定する。なお、本実施形態では、音声出力部21〜26が部屋R1〜R6に配置されているため、受信音声と被検出音声S3が一致した場合には、盗聴器が設置されている可能性が高い領域として部屋R3を特定する。
【0035】
盗聴器有無判定部13は、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定した場合に、表示部17にその旨を表示させると共に、必要に応じて受信音声と一致した被検出音声S1〜S6を出力した音声出力部21〜26に警報音を出力させる。さらに、音声出力部21〜26が配置された各部屋R1〜R6の入口等に設けた警報ランプを明滅させるようにしてもよく、また、外部のサーバ等の機器に盗聴器を検出した旨の情報を送信するようにしてもよい。
【0036】
定期動作制御部14は、所定の周期で定期的に盗聴器の検出を行わせるものである。定期動作制御部14は、時計機能を備えており、入力部を介して予め設定することにより、所定の時刻に音声出力制御部11、音声比較部12および盗聴器有無判定部13を動作させ、盗聴器の検出動作を実行させるように構成されている。
【0037】
定期動作制御部14により、例えば毎日定期的に盗聴器の検出動作を自動で実行することにより、盗聴器の設置をよりこまめに監視することができる。また、例えば周囲の騒音や電波等によるノイズが減少する深夜や早朝等の時間帯に盗聴器の検出動作を実行するようにすれば、検出精度を高めることが可能となる。
【0038】
選択操作部15は、入力部16を介して、複数の音声出力部21〜26の中から被検出音声S1〜S6を発生させるものを、少なくとも1つ選択することを可能とするものである。すなわち、選択操作部15は、複数の音声出力部21〜26が配置された領域(部屋R1〜R6)のうち、特定の領域のみにおいて盗聴器の検出を実行可能とするものである。選択操作部15は、入力部16を介して例えば音声出力部21および音声出力部26が選択された場合、盗聴器の検出動作において音声出力部21、26のみから被検出音声S1、S6を出力すると共に受信音声と被検出音声S1、S2のみを比較するように設定する情報をRAMやフラッシュメモリ等の記憶手段に記憶するように構成されている。
【0039】
なお、音声出力部21〜26が配置された各部屋R1〜R6の入口に、各部屋R1〜R6に配置された音声出力部21〜26を選択して盗聴器の検出動作を実行させる操作スイッチを設けるようにしてもよい。この場合、例えば部屋R4の入り口の操作スイッチを操作することにより、音声出力部24のみから被検出音声S4を出力させて部屋R4についてのみ盗聴器の検出動作を行うことができる。このようにすることで、例えば重要な会議等の直前に入り口の操作スイッチを操作することで、他の部屋を邪魔することなく、その会議等を行う部屋についてのみ盗聴器の検出を行うことが可能となる。
【0040】
入力部16は、キーボードや各種スイッチ、タッチパネル等から構成され、盗聴器検出装置1の各種設定や盗聴器の検出動作の実行等の各種操作を入力可能とするものである。入力部16は、制御部10と一体に構成されるものであってもよいし、制御部10とは別体に構成されるものであってもよい。また、入力部16には、音声出力部21〜26や音声出力部21〜26が配置された各部屋R1〜R6等に、必要に応じて配置された操作スイッチや操作パネル等も含まれている。
【0041】
表示部17は、例えば液晶表示装置等から構成され、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定した旨や、設定等に必要な各種情報を表示するものである。表示部17は、制御部10と一体に構成されるものであってもよいし、制御部10とは別体に構成されるものであってもよい。また、表示部17には、音声出力部21〜26や音声出力部21〜26が配置された各部屋R1〜R6等に、必要に応じて配置された警報ランプや表示パネル等も含まれている。
【0042】
音声出力部21〜26は、スピーカ21a〜26aをそれぞれ備えており、音声出力制御部11から送信された音声信号に基づいて被検出音声S1〜S6を出力するように構成されている。なお、音声出力部21〜26は、制御部10と無線通信するものであってもよいし、有線通信するものであってもよい。また、音声出力部21〜26は、被検出音声S1〜S6を生成する音声生成部を備え、音声出力制御部11から受信した信号に基づいて被検出音声S1〜S6のいずれかを生成するものであってもよいし、予め設定された特定の被検出音声S1〜S6のみを出力可能なものであってもよい。
【0043】
受信部30は、アンテナ30aを備えており、盗聴器の検出に必要な周波数帯域の電波を受信可能に構成されている。受信部30は、制御部10と一体に構成されるものであってもよいし、制御部10とは別体に構成され、盗聴電波を受信しやすい位置に設置されるものであってもよい。また、アンテナ30aのみを盗聴電波を受信しやすい位置に配置するようにしてもよい。
【0044】
次に、盗聴検出装置1による盗聴器の検出動作について説明する。
【0045】
図3は、盗聴器の検出動作の手順を示したフローチャートである。制御部10は、入力部16を介して検出動作開始の指示が入力された場合、または定期動作制御部14によって検出動作の開始タイミングであると判定した場合に、下記の検出動作を実行する。
【0046】
まず、検出動作の最初のステップ101では、音声出力制御部11が音声出力部21〜26を制御し、各音声出力部21〜26に被検出音声S1〜S6を出力させる。このとき、全ての音声出力部21〜26から一斉に被検出音声S1〜S6を出力してもよいし、異なるタイミングで順番に被検出音声S1〜S6を出力するようにしてもよい。
【0047】
次のステップ102では、音声比較部12が、受信部30を制御して所定の帯域の電波をスキャンさせる。そして、受信した電波が所定の閾値以上の強度である場合には、受信した電波を復調した受信音声の波形と、出力している被検出音声S1〜S6の波形を比較して一致するか否かを判定する。波形が一致した場合には、被検出音声S1〜S6のいずれと一致したか、一致した受信音声が含まれていた電波の周波数、および当該電波を受信した日時その他の必要な情報をRAMまたはフラッシュメモリ等に記憶する。
【0048】
次のステップ103では、音声出力制御部11が、音声出力部21〜26を制御して被検出音声S1〜S6の出力を停止させる。なお、異なるタイミングで順番に音声出力部21〜26から被検出音声S1〜S6を出力させる場合は、ステップ101〜103の処理は、音声出力部21〜26ごとに実行される。
【0049】
次のステップ104では、全ての音声出力部21〜26について上記ステップ101〜103の処理を予め設定した規定回数だけ実行したか否かを判定する。全ての音声出力部21〜26について上記ステップ101〜103の処理を予め設定した規定回数だけ実行した場合は、次のステップ105に進み、そうでない場合はステップ101に戻って処理を繰り返す。
【0050】
次のステップ105では、盗聴器有無判定部13が、ステップ102において記憶された情報に基づいて盗聴器の有無を判定すると共に、盗聴器が存在していると判定した場合には、予めROMやフラッシュメモリ等に記憶された音声出力部21〜26と被検出音声S1〜S6の対応表を参照して、受信音声と一致した被検出音声を出力した音声出力部を特定する。
【0051】
例えば、ステップ102において受信音声と被検出音声S3が一致した旨が記憶されている場合には、盗聴器が存在していると判定すると共に、対応表から音声出力部23を特定する。そして、音声出力部23の近傍の領域を、盗聴器が存在する可能性が高い領域として特定する。
【0052】
このとき、各音声出力部21〜26がそれぞれ異なる部屋R1〜R6に配置されている旨を示す情報が、予めROMやフラッシュメモリ等に記憶されている場合には、盗聴器有無判定部13はこの情報を参照して、例えば部屋R3を盗聴器が存在する可能性が高い領域として特定する。
【0053】
さらに、盗聴器有無判定部13は、盗聴器が存在する可能性が高い領域(部屋)を特定した場合、特定した領域(部屋)をRAMやフラッシュメモリ等に記憶すると共に、盗聴器が存在する可能性が高い領域(部屋)を特定した旨を表示部17に表示させる。また、必要に応じて、特定した音声出力部23から警報音を出力させる等の警報を行う。また、盗聴器が存在しないと判定した場合には、盗聴器有無判定部13は、その旨をRAMやフラッシュメモリ等に記憶すると共に、表示部17に表示させる。
【0054】
以上の手順により、1回の検出動作が実行される。なお、選択操作部15によって音声出力部21〜26の中のいずれかが選択されている場合は、上記ステップ101〜103の処理は選択された音声出力部21〜26についてのみ実行される。
【0055】
次に、盗聴器検出装置1のその他の形態について説明する。
【0056】
図4(a)は、複数の音声出力部21〜26を1つの部屋R7に配置した例を示した概略図である。このように、複数(この例では、6つ)の音声出力部21〜26を1つの部屋R7に配置することにより、1つの部屋R7内のいずれの領域に盗聴器が設置されている可能性が高いかを特定することができる。この場合、盗聴器が全ての被検出音声S1〜S6を検出する可能性があるため、特定の周波数の電波において各被検出音声S1〜S6と一致する複数の受信音声が発見されることとなるが、このうち、例えば被検出音声S4と一致した受信音声の強度(音圧レベル)が最も高いならば、被検出音声S4を出力した音声出力部24の近傍の領域を盗聴器が存在する可能性が高い領域として特定することができる。
【0057】
さらに、この場合、特定の周波数の電波において各被検出音声S1〜S6と一致する受信音声の強度分布を求めることで、盗聴器が存在する可能性が高い領域をより詳細に特定することが可能となる。図4(b)は、各被検出音声S1〜S6と一致する受信音声の強度分布の一例を示した図である。
【0058】
この例では、図4(a)の配置において特定の周波数の電波を復調した受信音声のうち、被検出音声S1と一致した受信音声の強度が4であり、被検出音声S2と一致した受信音声の強度が2であり、被検出音声S3と一致した受信音声の強度が1であり、被検出音声S4と一致した受信音声の強度が4であり、被検出音声S5と一致した受信音声の強度が2であり、被検出音声S6と一致した受信音声の強度が1である場合を示している。この例の強度分布からは、被検出音声S1を出力した音声出力部21および被検出音声S4を出力した音声出力部24のちょうど中間の領域を盗聴器が存在する可能性が高い領域として特定することができる。
【0059】
なお、図1に示す例において、各部屋R1〜R6を仕切る壁が薄い等の理由により、特定の周波数の電波から被検出音声S1〜S6と一致する複数の受信音声が検出された場合においても、最も強度の高い受信音声と一致した被検出音声を出力した音声出力部が配置された部屋を、盗聴器が存在する可能性が高い領域として特定するようにしてもよい。
【0060】
さらに、図1に示す例において、各被検出音声S1〜S6と一致する受信音声の強度分布に基づいて、盗聴器が存在する可能性が高い領域をより詳細に特定するようにしてもよい。この場合、例えば図1の配置において図4(b)に示す受信音の強度分布が得られた場合には、部屋R1と部屋R4の間の壁を盗聴器が存在する可能性が高い領域として特定することができる。
【0061】
なお、このように、受信音声の強度に基づいて盗聴器が存在する可能性が高い領域を特定する場合には、受信電波の周波数ごとに受信音声の強度を比較する、または受信電波の周波数ごとに受信音声の強度分布を求めることにより、盗聴器が複数設置されているときにも、複数の盗聴器のそれぞれについて存在する可能性が高い領域を特定することができる。
【0062】
図5は、制御部10と複数の音声出力部21〜26および受信部30をインターネット50を介して接続した例を示した概略図である。この例では、複数の音声出力部21〜26および受信部30を、ルータやモデム等の通信部40を介してインターネット50に接続されている。そして、制御部10はサーバ等から構成され、同様にインターネット50に接続されている。
【0063】
このように、制御部10と複数の音声出力部21〜26および受信部30をインターネット50を介して接続することにより、盗聴器の検出動作を遠隔地から制御することが可能となる。また、盗聴器監視会社Wが、複数の契約企業X〜Zにおいて定期的に盗聴器の検出を行うといった場合に、検出動作の実行を効率的に行うことができる。
【0064】
なお、制御部10と複数の音声出力部21〜26および受信部30をインターネット50を介して接続するのではなく、契約企業X〜Zに設置した盗聴器検出装置1の制御部10をそれぞれインターネット50に接続し、盗聴器監視会社Wの管理サーバ等によって各制御部10の検出動作を管理するようにしてもよい。
【0065】
ところで、このように複数の契約企業X〜Zにおいて盗聴器の検出を行う場合、例えば契約企業Xと契約企業Yが同じビルに入居する等して互いに近接しているときには、契約企業Xに設置された盗聴器の電波を契約企業Yに設置された受信部30が受信し、契約企業Yに設置された盗聴器の電波を契約企業Xに設置された受信部30が受信する可能性がある。
【0066】
このような場合においても、本実施形態では、契約企業Xに配置した音声出力部21〜26の被検出音声S1〜S6と契約企業Yに配置した音声出力部21〜26の被検出音声S1〜S6を全て異なる音声とする、または異なるパターンやタイミングで出力させることにより、契約企業X、Yのいずれにおいても盗聴器が存在している可能性が高い領域を高精度に特定することが可能となっている。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る盗聴器検出装置1は、音声を出力する複数の音声出力部21〜26と、複数の音声出力部21〜26を制御して被検出音声S1〜S6を出力させる音声出力制御部11と、電波を受信する受信部30と、受信部30が受信した電波を復調した受信音声を被検出音声S1〜S6と比較する音声比較部12と、受信音声が被検出音声S1〜S6と一致した場合に盗聴器が存在していると判定する盗聴器有無判定部13と、を備え、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26がそれぞれ異なる態様で被検出音声S1〜S6を出力するように複数の音声出力部21〜26を制御し、盗聴器有無判定部13は、受信音声と一致した被検出音声S1〜S6が複数の音声出力部21〜26のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定する。
【0068】
このような構成とすることで、盗聴器が設置されている可能性がある領域を簡便に特定することができる。具体的には、被検出音声S1〜S6をそれぞれ異なる態様で出力することにより、受信音声と一致した被検出音声が音声出力部21〜26のいずれから出力されたものであるかを識別可能であるため、例えばその音声出力部が配置された部屋を盗聴器が存在している可能性がある領域として特定することができる。すなわち、盗聴器の検出を複数の部屋について同時に行うことが可能であると共に、盗聴器が設置されている部屋を容易に特定することが可能となっている。また、1つの部屋に複数の音声出力部21〜26を配置した場合には、1つの部屋の中で盗聴器が存在している可能性がある領域を特定することができる。
【0069】
また、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26にそれぞれ異なる被検出音声S1〜S6を出力させるように複数の音声出力部21〜26を制御する。このようにすることで、被検出音声S1〜S6の識別性が高まると共に、複数の音声出力部21〜26から同時に被検出音声S1〜S6を出力することが可能となるため、盗聴器の検出をより簡便且つ迅速に行うことができる。
【0070】
また、被検出音声S1〜S6は、複数の周波数の信号音を組み合わせて構成される合成信号音であり、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26にそれぞれ異なる組合せの合成信号音を被検出音声S1〜S6として出力させるように前記複数の音声出力部を制御するようにしてもよい。このようにすることで、識別可能な被検出音声の数を増やすことができるため、より多くの音声出力部を配置して盗聴器の検出を行うことが可能となる。
【0071】
なお、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26にそれぞれ異なる出力パターンの被検出音声S1〜S6を出力させるように複数の音声出力部21〜26を制御するようにしてもよい。また、音声出力制御部11は、複数の音声出力部21〜26にそれぞれ異なるタイミングで被検出音声S1〜S6を出力させるように複数の音声出力部21〜26を制御するようにしてもよい。このように、音声出力部21〜26の周囲の環境や、盗聴器の性能等に応じた適切な形態の被検出音声S1〜S6を使用することで、盗聴器検出装置1の汎用性を高めることができる。
【0072】
また、盗聴器有無判定部13は、被検出音声S1〜S6と一致した受信音声の強度に基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定するようにしてもよい。このようにすることで、被検出音声S1〜S6と一致する受信音声が複数検出された場合においても、盗聴器が存在している可能性が高い領域を高精度に特定することができる。
【0073】
また、盗聴器有無判定部13は、異なる音声出力部21〜26から出力された被検出音声S1〜S6と一致する複数の受信音声の強度分布に基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定するようにしてもよい。このようにすることで、盗聴器が存在する可能性が高い領域をより詳細に特定することができる。
【0074】
また、盗聴器検出装置1は、予め設定した周期で音声出力制御部11、音声比較部12、および盗聴器有無判定部13を動作させ、盗聴器の検出を定期的に実行する定期動作制御部14を、さらに備えている。このようにすることで、自動的に盗聴器の検出を定期的に実行することができるため、より高いレベルで盗聴器の有無を監視することができる。
【0075】
また、盗聴器検出装置1は、複数の音声出力部21〜26の中から被検出音S1〜S6を出力させる音声出力部を少なくとも1つ選択可能な選択操作部15を、さらに備えている。このようにすることで、選択した領域についてのみ盗聴器の検出を行うことが可能となるため、盗聴器検出装置1の汎用性を高めることができる。また、重要な会議の直前に、会議を行う部屋について盗聴器の検出を行うといったことも可能となる。
【0076】
また、本実施形態に係る盗聴器検出方法は、複数の異なる位置からそれぞれ異なる態様で被検出音声S1〜S6を出力するステップと、受信した電波から復調した受信音声と被検出音声S1〜S6を比較するステップと、受信音声と被検出音声S1〜S6が一致した場合に、受信音声と一致した被検出音声が複数の異なる位置のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定するステップと、を有している。
【0077】
このような構成とすることで、盗聴器が設置されている可能性がある領域を簡便に特定することができる。具体的には、被検出音声S1〜S6をそれぞれ異なる態様で出力することにより、受信音声と一致した被検出音声が音声出力部21〜26のいずれから出力されたものであるかを識別可能であるため、例えばその音声出力部が配置された部屋を盗聴器が存在している可能性がある領域として特定することができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の盗聴器検出装置および盗聴器検出方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の盗聴器検出装置および盗聴器検出方法は、企業や各種団体等の情報セキュリティの分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 盗聴器検出装置
10 制御部
11 音声出力制御部
12 音声比較部
13 盗聴器有無判定部
14 定期動作制御部
15 選択操作部
21〜26 音声出力部
30 受信部
S1〜S6 被検出音声

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を出力する複数の音声出力部と、
前記複数の音声出力部を制御して被検出音声を出力させる音声出力制御部と、
電波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した電波を復調した受信音声を前記被検出音声と比較する音声比較部と、
前記受信音声が前記被検出音声と一致した場合に盗聴器が存在していると判定する盗聴器有無判定部と、を備え、
前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部がそれぞれ異なる態様で被検出音声を出力するように前記複数の音声出力部を制御し、
前記盗聴器有無判定部は、前記受信音声と一致した被検出音声が前記複数の音声出力部のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定することを特徴とする、
盗聴器検出装置。
【請求項2】
前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なる前記被検出音声を出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の盗聴器検出装置。
【請求項3】
前記被検出音声は、複数の周波数の信号音を組み合わせて構成される合成信号音であり、
前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なる組合せの合成信号音を被検出音声として出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、
請求項2に記載の盗聴器検出装置。
【請求項4】
前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なる出力パターンの前記被検出音声を出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の盗聴器検出装置。
【請求項5】
前記音声出力制御部は、前記複数の音声出力部にそれぞれ異なるタイミングで前記被検出音声を出力させるように前記複数の音声出力部を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の盗聴器検出装置。
【請求項6】
前記盗聴器有無判定部は、前記被検出音声と一致した前記受信音声の強度に基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の盗聴器検出装置。
【請求項7】
前記盗聴器有無判定部は、異なる前記音声出力部から出力された被検出音声と一致する複数の受信音声の強度分布に基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定することを特徴とする、
請求項6に記載の盗聴器検出装置。
【請求項8】
予め設定した周期で前記音声出力制御部、前記音声比較部、および前記盗聴器有無判定部を動作させ、盗聴器の検出を定期的に実行する定期動作制御部を、さらに備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の盗聴器検出装置。
【請求項9】
前記複数の音声出力部の中から前記被検出音を出力させる前記音声出力部を少なくとも1つ選択可能な選択操作部を、さらに備えることを特徴とする、
請求項1乃至8のいずれかに記載の盗聴器検出装置。
【請求項10】
複数の異なる位置からそれぞれ異なる態様で被検出音声を出力するステップと、
受信した電波から復調した受信音声と前記被検出音声を比較するステップと、
前記受信音声と前記被検出音声が一致した場合に、前記受信音声と一致した被検出音声が前記複数の異なる位置のいずれから出力されたものであるかに基づいて、盗聴器が存在している可能性が高い領域を特定するステップと、を有することを特徴とする、
盗聴器検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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