説明

監視制御システム

【課題】信頼性を損なうことなくオペレータの負荷を軽減することが可能な監視制御システムを提供する。
【解決手段】送配水を行う配管系統内に存在する配管の分岐点の分岐位置、配管系統内に設置され送配水を制御する制御機器の設置位置、及び、前記制御機器の状態に関するそれぞれの情報を記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された情報に基づいて配管内に水が停滞している停滞水域を特定する停滞水域特定部と、前記停滞水域特定部により特定された停滞水域を報知する報知部と、を備えたことを特徴とする監視制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上水道設備では、信頼性の高い水配系統を実現するため、複数系統の受水・送配水管を構築し、系統の冗長化を図っていることが多いが、複数系統の同時受水や同時送配水が困難な設備も存在する。この場合、飲料水となるべく浄水処理された水が配管内に長期間停滞し、残留塩素濃度の低下を招くおそれが有る。
【0003】
残留塩素濃度の低下速度は、季節(特に、水温)に依存するため、その対策として、配管内の水を循環する運用の実施要否、実施対象箇所、及び、その手法については、オペレータの判断に委ねられていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−299576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の目的は、信頼性を損なうことなくオペレータの負荷を軽減することが可能な監視制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、
送配水を行う配管系統内に存在する配管の分岐点の分岐位置、配管系統内に設置され送配水を制御する制御機器の設置位置、及び、前記制御機器の状態に関するそれぞれの情報を記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された情報に基づいて配管内に水が停滞している停滞水域を特定する停滞水域特定部と、前記停滞水域特定部により特定された停滞水域を報知する報知部と、を備えたことを特徴とする監視制御システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本実施形態における監視制御システムの一構成例を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した停滞水域特定部による停滞水域特定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示した算定部による停滞水域水量及び停滞水処理の停滞水処理必要時間の算定方法を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示した切替部による停滞水域処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態における監視制御システムの他の構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、本実施形態における監視制御システムの一構成例を概略的に示す図である。
【0010】
図示した構成例の監視制御システムは、常用系配管と予備系配管とによって冗長化された配管系統を備える上水道設備(上水道プラント)を監視制御するシステムであり、プラント内に設置された配管系統での停滞水対策を行う停滞水対策制御装置10を具備している。なお、ここでの停滞水とは、プラント内で送配水を行う配管系統において、配管内に長期間に亘って停滞し、残留塩素濃度が基準値を下回るおそれがある水に相当する。
【0011】
停滞水対策制御装置10は、記憶部11、停滞水域特定部12、報知部13、算定部14、切替部15などを備えている。図1では、停滞水対策制御装置10が監視対象とする配管系統のモデルの一例が示されている。以下に、図示した配管系統のモデルについて説明する。
【0012】
すなわち、この配管系統には、受水側と送水側との間に、配管の分岐点A乃至G、メインバルブV1、バルブV2乃至V5、直送弁V6、第1配水池21、第2配水池22、第1送水ポンプP1、第2送水ポンプP2、電磁流量計30などが設置されている。
【0013】
メインバルブV1は、受水側と分岐点Aとの間に設置されている。第1配水池21は、分岐点Aと分岐点Bとの間に設置されている。バルブV2は第1配水池21と分岐点Aとの間に設置され、バルブV3は第1配水池21と分岐点Bとの間に設置されている。第2配水池22は、分岐点Aと分岐点Cとの間に設置されている。バルブV4は第2配水池22と分岐点Aとの間に設置され、バルブV5は第2配水池22と分岐点Cとの間に設置されている。
【0014】
第1送水ポンプP1は、分岐点Bと分岐点Dとの間に設置されている。第2送水ポンプP2は、分岐点Cと分岐点Eとの間に設置されている。分岐点Bと分岐点Cとの間、及び、分岐点Dと分岐点Eとの間は、それぞれ連結されている。また、分岐点Aと分岐点Dとの間には、第1配水池21及び第1送水ポンプP1をバイパスするバイパス経路が設置されている。直送弁V6は、分岐点Aと分岐点Dとの間のバイパス経路上に設置されている。
【0015】
電磁流量計30は、分岐点Eと分岐点Gとの間に設置されている。この電磁流量計30は、図示した配管系統からの送水量を測定するためのものである。また、図示した例では、電磁流量計30をバイパスするバイパス経路も設置されている。
【0016】
このような配管系統において、例えば、メインバルブV1、バルブV2乃至V5、直送弁V6、第1送水ポンプP1、第2送水ポンプP2は、配管系統内での送配水を制御する制御機器に相当する。本実施形態においては、特に、メインバルブV1や直送弁V6、第1送水ポンプP1や第2送水ポンプP2は、その状態を電気的に切替可能に構成されている。つまり、これらの制御機器は、例えば外部からの制御信号に基づいて、その状態を送配水停止状態から送配水状態に、あるいは、送配水状態から送配水停止状態に切替可能に構成されている。なお、バルブV2乃至V5としては、その状態を手動で切り替える構成のものを適用する場合が多いが、直送弁V6などと同様に、電気的にその状態を切替可能に構成されたものであっても良い。
【0017】
記憶部11は、配管系統内に存在する配管の分岐点の分岐位置に関する情報、配管系統内に設置され送配水を制御する制御機器の設置位置に関する情報、制御機器の状態に関する情報などをそれぞれ記憶している。分岐点の分岐位置に関する情報や、制御機器の設置位置に関する情報は、例えば、配管系統が構築された段階で入力された情報である。制御機器の状態に関する情報は、例えば、切替部15から入力された情報である。
【0018】
図示した例では、記憶部11は、分岐点の分岐位置に関する情報として、分岐点A乃至分岐点Gに関する情報、制御機器の設置位置に関する情報として、直送弁V6、第1送水ポンプP1、第2送水ポンプP2などに関する情報、制御機器の状態に関する情報として、直送弁V6が開状態(送配水状態)あるいは閉状態(送配水停止状態)であるか、第1送水ポンプP1及び第2送水ポンプP2のそれぞれが運転状態(送配水状態)あるいは停止状態(送配水停止状態)であるかに関する情報などを記憶している。
【0019】
停滞水域特定部12は、記憶部11に記憶された各種情報に基づいて配管系統を構成する配管内に水が停滞している停滞水域を特定する。この停滞水域特定部12による停滞水域の特定処理については後述する。この停滞水域特定部12は、特定した停滞水域に関する情報を報知部13に出力する。
【0020】
報知部13は、停滞水域特定部12により特定された停滞水域を報知する。この報知部13は、音声や表示によって各種情報を報知するものであって、停滞水対策制御装置10に設けられた表示部(モニタ)に情報を表示させたり、音声出力部(スピーカ)から音声により情報を出力させたりする。
【0021】
また、この報知部13は、停滞水対策制御装置10の外部、例えば、後述するようなオペレータにより操作される監視操作端末などの外部機器に対して各種情報を出力しても良い。この場合、外部機器に設けられた表示部に情報が表示されたり、外部機器に設けられた音声出力部から音声により情報が出力されたりする。
【0022】
算定部14は、停滞水域特定部12により特定された停滞水域の配管の仕様(内径及び配管長)に基づいて、停滞水域に停滞している停滞水域水量を算定する。この算定部14は、算定した停滞水域水量を報知部13に出力する。これにより、報知部13は、算定部14により算定された停滞水域水量を報知する。
【0023】
また、算定部14は、制御機器による単位時間当たりの送配水量に基づいて、停滞水域に停滞している停滞水の送水または排水を完了するまでの停滞水処理必要時間を算定する。この算定部14は、算定した停滞水処理必要時間を報知部13に出力する。これにより、報知部13は、算定部14により算定された停滞水処理必要時間を報知する。なお、この算定部14による停滞水域水量及び停滞水処理必要時間の算定方法については後述する。
【0024】
切替部15は、制御機器のそれぞれに対して、その状態を送配水停止状態または送配水状態に切り替える制御信号を出力する。このような切替部15は、停滞水処理を実施する際、停滞水域特定部12により特定された停滞水域を形成している対象の制御機器に対して、その状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力する。
【0025】
また、切替部15は、停滞水処理を実施する際、対象の制御機器に対して、その状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力してから、算定部14によって算定された停滞水処理必要時間が経過したのに基づいて、その状態を送配水状態から送配水停止状態に切り替える制御信号を出力する。あるいは、切替部15は、停滞水処理を実施する際、算定部14によって算定された停滞水処理必要時間だけ対象の制御機器に対してその状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力するように構成しても良い。
【0026】
このような切替部15は、制御機器のそれぞれの状態に対応した情報、特に、直送弁V6、第1送水ポンプP1、第2送水ポンプP2のそれぞれの状態に対応した情報(制御機器の状態が変化した時刻を含む)を記憶部11に記憶させる。
【0027】
図2は、図1に示した停滞水域特定部12による停滞水域特定処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0028】
停滞水域特定部12は、まず、配管系統内の分岐点nの直後に設置された制御機器が送配水停止状態となっているか否かを判断する(ST1)。上記モデルの配管系統では、停滞水域特定部12は、例えば、分岐点Bにおいて、その直後に設置された第1送水ポンプP1が送配水停止状態となっているか否かを、記憶部11に記憶されていた情報に基づいて判断する。
【0029】
そして、停滞水域特定部12は、内部時計を参照するなどして、分岐点nの直後に設置された制御機器が送配水停止状態となっていると判断したのに基づいて(ST1、YES)、対象制御機器が送配水停止状態となってから所定時間が経過したか否かを判断する(ST2)。上記モデルの配管系統では、停滞水域特定部12は、例えば、分岐点Bにおいて、その直後に設置された第1送水ポンプP1が送配水停止状態となってから所定時間が経過しているか否かを判断する。
【0030】
ここでの所定時間とは、配管内に停滞している水の残留塩素濃度が基準値を下回るおそれがある停滞時間である。但し、残留塩素濃度が基準値を下回るのに要する時間は水温などの環境条件によって異なり、例えば、水温が高いほど残留塩素濃度は低下しやすい。このため、ここでの所定時間は、季節や温度などによって適宜設定される。
【0031】
そして、停滞水域特定部12は、分岐点nの直後に設置された制御機器が送配水停止状態となってから所定時間が経過したと判断したのに基づいて(ST2、YES)、分岐点nから対象制御機器の設置位置を含む経路が停滞水域であると判断する(ST3)。上記モデルの配管系統では、停滞水域特定部12は、例えば、第1送水ポンプP1が送配水停止状態となってから所定時間が経過したと判断したのに基づいて、分岐点Bから第1送水ポンプP1の設置位置を含む経路(図示した例では、分岐点Bから分岐点Dまでの経路)が停滞水域であると判断する。
【0032】
一方、ステップ1において、停滞水域特定部12は、分岐点nの直後に設置された制御機器が送配水停止状態となっていないと判断したのに基づいて(ST1、NO)、分岐点nの直前に設置された制御機器が送配水停止状態となっているか否かを判断する(ST4)。上記モデルの配管系統では、停滞水域特定部12は、例えば、分岐点Eにおいて、その直前に設置された第2送水ポンプP2が送配水停止状態となっているか否かを、記憶部11に記憶されていた情報に基づいて判断する。
【0033】
そして、停滞水域特定部12は、内部時計を参照するなどして、分岐点nの直前に設置された制御機器が送配水停止状態となっていると判断したのに基づいて(ST4、YES)、対象制御機器が送配水停止状態となってから所定時間が経過したか否かを判断する(ST5)。上記モデルの配管系統では、停滞水域特定部12は、例えば、分岐点Eにおいて、その直前に設置された第2送水ポンプP2が送配水停止状態となってから所定時間が経過しているか否かを判断する。
【0034】
そして、停滞水域特定部12は、分岐点nの直前に設置された制御機器が送配水停止状態となってから所定時間が経過したと判断したのに基づいて(ST5、YES)、対象制御機器の設置位置を含む分岐点nまでの経路が停滞水域であると判断する(ST6)。上記モデルの配管系統では、停滞水域特定部12は、例えば、第2送水ポンプP2が送配水停止状態となってから所定時間が経過したと判断したのに基づいて、第2送水ポンプP2の設置位置を含む分岐点Eまでの経路(図示した例では、分岐点Cから分岐点Eまでの経路)が停滞水域であると判断する。
【0035】
停滞水域特定部12は、ステップST4において、分岐点nの直前に設置された制御機器が送配水停止状態となっていないと判断したのに基づいて(ST4、NO)、分岐点nの前後で停滞水域がないと判断する(ST7)。これにより、一つの分岐点nについての停滞水域特定処理を終了する。なお、上記の説明では、一連の処理の中で、分岐点Bを例にした停滞水域特定処理と、分岐点Eを例にした停滞水域特定処理とが混在しているが、これは上記モデルにおいて生じうる事象を具体的に説明したに過ぎず、本来は、一つの分岐点nについて、個別にステップST1からステップST7までの処理が行われる。
【0036】
上記モデルでは、配管系統における分岐点A乃至Gのそれぞれについて、ステップST1からステップST7までの停滞水域特定処理が行われる。つまり、本実施形態においては、停滞水域特定処理は、分岐点のそれぞれと配管で接続されている全ての制御機器の状態(動作状態、運転状況など)に基づき、上記のロジックを用いて行われる。
【0037】
なお、第1送水ポンプP1及び第2送水ポンプP2がともに送配水状態(運転中)であり、直送弁V6が送配水状態(全開)である場合、分岐点Aから直送弁V6を経由する分岐点Dまでの経路や、分岐点Bと分岐点Cとの間の経路などは、運用状況やこれらの制御機器の送配水量によっては、「停滞水域」となる可能性が高いが、若干の運用変更や制御機器の送水量のバランス変更などにより、これらの経路の水が流れる可能性があるので、判定上は「停滞水無し」とする。
【0038】
このような停滞水域特定処理によれば、オペレータの判断に委ねられることなく、容易にしかも確実に停滞水域を特定することが可能となり、停滞水処理の手法を立案しやすくすることが可能となる。
【0039】
図3は、図1に示した算定部14による停滞水域水量及び停滞水処理の停滞水処理必要時間の算定方法を説明するための図である。
【0040】
算定部14は、例えば、以下の式(1)に基づいて、停滞水域水量VL[m]を算定する。ここで、停滞水域の配管は、円形の断面を有するものとし、その内径がD[mm]であり、停滞水域の配管の配管長がL[m]であるものとする。
【0041】
VL=(D/2)×π×L×10−6…(1)
図示した例は、分岐点Aにおける上記の停滞水域特定処理により、直送弁V6が送配水停止状態(全閉)となってから所定時間が経過し、少なくとも『分岐点Aから直送弁V6までの経路』が停滞水域であると判断された場合を想定している。停滞水域水量VLは、分岐点Aから直送弁V6までの配管の仕様、つまり、その配管長L及びその内径Dに基づき、上記の式(1)で算定される。
【0042】
また、算定部14は、算定した停滞水域水量VLと、停滞水処理として選択された手法での停滞水処理能力、つまり、制御機器による単位時間当たりの送配水量と、に基づいて停滞水域に停滞している停滞水の送水または排水を完了するまでの停滞水処理必要時間を算定する。
【0043】
図示した例では、停滞水処理手法としては、停滞水域を形成する原因となった制御機器、つまり、直送弁V6を送配水状態に切り替えることが選択される。この直送弁V6の停滞水処理能力とは、例えば、受水側からの圧力や流量などに依存する場合もあるが、直送弁V6を全開としたときの単位時間当たりの送配水量に設定される。
【0044】
例えば、停滞水域水量VLが1000mであると算定され、直送弁V6の停滞水処理能力が毎時500mであると算定された場合には、停滞水処理必要時間は2時間であると算定される。
【0045】
このような算定方法によれば、オペレータの判断に委ねられることなく、容易にしかも正確に停滞水域水量を算定することが可能となり、また、停滞水処理必要時間も算定することが可能となる。
【0046】
図4は、図1に示した切替部15による停滞水域処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0047】
まず、切替部15は、停滞水域特定部12により停滞水域が特定されたのに基づいて(ST11、YES)、停滞水処理の手法を選択する(ST12)。つまり、切替部15は、停滞水域を形成している対象の制御機器を特定し、その制御機器の状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える手法を選択する。
【0048】
そして、切替部15は、対象の制御機器に対して、その状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力する(ST13)。図3に示した例では、切替部15は、直送弁V6が対象の制御機器であると特定し、この直送弁V6に対して、その状態を全閉状態から全開状態に切り替える制御信号を出力する。これにより、直送弁V6は全開となり、分岐点Aから直送弁V6までに停滞していた水が送水側に向けて流れるため、停滞水処理が実行される。
【0049】
そして、切替部15は、内部時計を参照するなどして、対象の制御機器に対して、その状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力してから、算定部14によって算定された停滞水処理必要時間が経過したか否かを判断する(ST14)。切替部15は、停滞水処理必要時間が経過したと判断したのに基づいて(ST14、YES)、対象の前記制御機器に対して、その状態を送配水状態から送配水停止状態に切り替える制御信号を出力する(ST15)。図3に示した例では、切替部15は、直送弁V6に対して全開状態に切り替える制御信号を出力してから、算定部14によって算定された停滞水処理必要時間(例えば、2時間)が経過したのに基づいて、直送弁V6に対して全閉状態に切り替える制御信号を出力する。これにより、停滞水処理モードから通常の運用状態に復帰する。
【0050】
図5は、本実施形態における監視制御システムの他の構成例を概略的に示す図である。
【0051】
ここでは、上水道設備に設けられた配管系統の一つを監視するとともにその配管系統の停滞水対策を行う停滞水対策制御装置10がネットワークを介して外部機器である監視操作端末40と接続された例を示している。なお、図1に示した構成例と同一の構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
ここに示した構成例では、監視操作端末40は、オペレータにより操作されるものであって、詳述しないが、各種情報を入力する入力部、各種情報を表示する表示部などを備えている。このような構成例においては、停滞水対策制御装置10の報知部13は、監視操作端末40に対して報知すべき情報を出力する。例えば、報知部13は、停滞水域特定部12により特定された停滞水域に関する情報、算定部14により算定された停滞水域水量に関する情報、算定部14により算定された停滞水処理必要時間に関する情報などを監視操作端末40に対して出力する。
【0053】
監視操作端末40では、報知部13から入力された情報をその表示部に表示する。これにより、報知部13から入力された情報を可視化することが可能となる。つまり、オペレータが日常運用時に監視している監視操作端末40において、停滞水域や、停滞水域水量、停滞水処理必要時間に関する情報を目視により確認することが可能となる。したがって、オペレータは、これらの情報に基づいて対象の配管系統を監視することが可能となり、また、当該配管系統における停滞水処理の手法を容易に立案することが可能となる。このため、オペレータの負荷の軽減を図ることが可能となる。また、オペレータの経験や勘に頼ることなく、統一された基準の下で停滞水域を特定し、停滞水処理を行うことが可能となる。
【0054】
また、図5に示した例では、停滞水対策制御装置10に備えられた切替部15は、オペレータの操作による監視操作端末40からの指令を受けることなく、図4に示したような停滞水処理を自動的に行うことが可能である。このため、オペレータの負荷をさらに軽減することが可能となる。なお、このような場合には、報知部13は、切替部15による停滞水処理の実施状況などを監視操作端末40に対して出力しても良い。これにより、監視操作端末40において、停滞水処理の実施状況をオペレータが目視により確認することが可能となる。
【0055】
なお、このような停滞水処理は、切替部15によって自動的に行うだけでなく、オペレータの操作による監視操作端末40からの指令により行っても良い。この場合、例えば、監視操作端末40では、まず、報知部13から停滞水域に関する情報が入力されると、その表示部に停滞水域を表示する。オペレータは、監視操作端末40に表示された停滞水域を確認し、監視操作端末40の入力部を操作することにより、ネットワークを介して対象の制御機器に制御信号を出力する。制御機器は、監視操作端末40から出力された制御信号に基づいて、その状態を切り替える。このようなプロセスによっても、特定された停滞水域の停滞水処理を行うことが可能である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、信頼性を損なうことなくオペレータの負荷を軽減することが可能な監視制御システムを提供することが可能となる。
【0057】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10…停滞水対策制御装置
11…記憶部
12…停滞水域特定部
13…報知部
14…算定部
15…切替部
40…監視操作端末
V6…直送弁(制御機器)
P1…第1送水ポンプ(制御機器) P2…第2送水ポンプ(制御機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送配水を行う配管系統内に存在する配管の分岐点の分岐位置、配管系統内に設置され送配水を制御する制御機器の設置位置、及び、前記制御機器の状態に関するそれぞれの情報を記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて配管内に水が停滞している停滞水域を特定する停滞水域特定部と、
前記停滞水域特定部により特定された停滞水域を報知する報知部と、
を備えたことを特徴とする監視制御システム。
【請求項2】
前記停滞水域特定部は、前記分岐点の直後に設置された前記制御機器が送配水停止状態となってから所定時間が経過したとの情報に基づいて、前記分岐点から前記制御機器の設置位置を含む経路が停滞水域であると特定することを特徴とする請求項1に記載の監視制御システム。
【請求項3】
前記停滞水域特定部は、前記分岐点の直前に設置された前記制御機器が送配水停止状態となってから所定時間が経過したとの情報に基づいて、前記制御機器の設置位置を含む前記分岐点までの経路が停滞水域であると特定することを特徴とする請求項1または2に記載の監視制御システム。
【請求項4】
さらに、前記停滞水域特定部により特定された停滞水域の配管の内径及び配管長に基づいて、前記停滞水域に停滞している停滞水域水量を算定する算定部を備え、
前記報知部は、前記算定部により算定された停滞水域水量を報知することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の監視制御システム。
【請求項5】
前記算定部は、さらに、前記制御機器による単位時間当たりの送配水量に基づいて、前記停滞水域に停滞している停滞水の送水または排水を完了するまでの停滞水処理必要時間を算定し、
前記報知部は、前記算定部により算定された停滞水処理必要時間を報知することを特徴とする請求項4に記載の監視制御システム。
【請求項6】
さらに、前記停滞水域特定部により特定された停滞水域を形成している対象の前記制御機器に対して、その状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力する切替部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の監視制御システム。
【請求項7】
前記切替部は、対象の前記制御機器に対して、その状態を送配水停止状態から送配水状態に切り替える制御信号を出力してから、前記算定部によって算定された停滞水処理必要時間が経過したのに基づいて、その状態を送配水状態から送配水停止状態に切り替える制御信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の監視制御システム。
【請求項8】
さらに、オペレータにより操作される監視操作端末を備え、
前記報知部は、前記監視操作端末に報知すべき情報を出力することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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